令和3(行ケ)10102 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月22日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
ファイル
hanrei-pdf-90969.txt

キーワード

判決文本文20,701 文字)

令和4年2月22日判決言渡令和3年(行ケ)第10102号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和3年12月6日判決 原告プーマ エスイー 同訴訟代理人弁理士三上真毅 被告 Y同訴訟代理人弁理士大久保 秀 人 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2020-890044号事件について令和3年6月21日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告は,平成17年6月21日,別紙1記載の商標(以下「本件商標」という。)について,指定商品を第25類「Tシャツ,帽子」として商標登録 出願をし,平成19年3月6日,登録査定を受け,同年4月13日,商標権の設定登録(登録第5040036号。以下,この商標権を「本件商標権」という。)を受けた(甲1の1,1の2,105)。 ⑵ア原告は,令和2年6月1日,本件商標の指定商品中,「沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージしたTシャツ,その他のTシャツ,沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージした帽子,その他の帽子」(以下「本件指定商品」という場合がある。)の商標登録について,本件商標が商標法4条1項7号及び15号に該当することを無効理由として商標登録無効審判(無効2 沖縄をイメージした帽子,その他の帽子」(以下「本件指定商品」という場合がある。)の商標登録について,本件商標が商標法4条1項7号及び15号に該当することを無効理由として商標登録無効審判(無効2020-890044号事件。以下「本件審判」という。)を請求した(甲103,105)。 その後,本件商標権について,放棄による登録の抹消(受付日同年9月29日)がされた(甲105)。 イ特許庁は,令和3年6月21日,「本件審判の請求中,商標法4条1項15号を理由とする請求は却下する。その余の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年7月1日,原告に送達された。 ⑶ 原告は,令和3年8月31日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,その理由の要旨は,次のとおりである。 ⑴ 商標法4条1項15号を無効理由とする本件審判の請求についてア本件審判の請求は,本件商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経過した後にされたものであるから,本件審判の請求中,商標法4条1項15号を理由とする請求は,本件商標が「不正の目的で商標登録を受けた場合」(商標法47条1項括弧書き)に限りすることができる。 イ本件商標は,別紙1のとおり,「SHI-SA」の文字が横書きで大きく表示され,その右上方に,四足動物が右側から左上方に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれるとともに,上記「SHI-SA」の文字の下に2段にわたって「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」という文字が比較的小さく表記されている,文字 に描かれるとともに,上記「SHI-SA」の文字の下に2段にわたって「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」という文字が比較的小さく表記されている,文字と図形を結合してなるものである。 一方,原告(請求人)が本件商標の登録無効の理由に引用する商標(以下「引用商標」という。甲2の1,2の2)は,別紙2のとおり,二つの耳がある頭部を有する四足動物が,右から左に向かって,跳び上がるように,頭部及び前足が後足より左上の位置になる形で,前足と後足を前後に大きく開いている様子が,側面から見た姿でシルエット風に描かれている図形からなるものであり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る「PUMA」ブランドの被服,帽子等を表示する商標の一つとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名な商標となっていたと認めることができる。 しかし,①本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なるものであって,類似せず,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえないから,本件商標は,引用商標の顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させるなどの不正の目的をもって登録出願されたということはできない,②また,本件商標の登録出願の経緯において,被告による本件商標の登録出願が,他人に損害を加える目的その他の不正の目的で行われたものと認めるに足る証左もなく,その他,本件商標が不正の目的で商標登録を受けたものというべき事情は見いだせないから,被告は,不正の目的をもって本件商標の商 標登録を受けたものであると認めることはできない,③原告は,本件商標が「不正の目的」で商標登録を で商標登録を受けたものというべき事情は見いだせないから,被告は,不正の目的をもって本件商標の商 標登録を受けたものであると認めることはできない,③原告は,本件商標が「不正の目的」で商標登録を受けたものであることの根拠の一つとして,沖縄土産品や沖縄をイメージした商品との関係において,本件商標の文字部分は自他商品識別力を発揮し得ないから,動物図形部分が着目されることを挙げるが,本件商標の文字部分全体は,図形部分よりも大きく,本件商標の面積の大きな部分を占め,印象的な書体を用いて表されているものであって,本件商標の文字部分が自他商品識別力を発揮し得ないというべき事情も見いだせないし,本件商標の文字部分の構成及びこれより生じる意味並びに図形部分の形状を考え合わせると,本件商標は「シーサー」の観念及び称呼を生じるものというべきであって,文字部分が捨象され,図形部分のみが着目されるということはできない。 したがって,本件商標は,「不正の目的」で商標登録を受けたものには該当しないというべきであるから,商標法4条1項15号を理由とする本件審判の請求は,これを却下すべきものである。 ⑵ 商標法4条1項7号該当性について本件商標は,引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって,引用商標を連想又は想起させるものでもないから,引用商標の顧客吸引力にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものということはできない。 また,本件商標の出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるなど,商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標が同号に該当するものと 認し得ないような場合に当たるなど,商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標が同号に該当するものとはいえない。 第3 原告の主張 1 取消事由1(「不正の目的で商標登録を受けた場合」(商標法47条1項括 弧書き)該当性の判断の誤り)⑴ 本件商標と引用商標の類似性の判断の誤りア引用商標の周知著名性引用商標は,別紙2のとおり,二つの耳がある頭部を有し,頭部と前足の間に間隔があり,全体に細く,先端が若干丸みを帯びた形状となった,右上方に高くしなるように伸びた尻尾を有する四足動物が,右から左に向かって,跳び上がるように,頭部及び前足が後足より左上の位置になる形で,前足と後足を前後に大きく開いている様子を,側面から見た姿で黒いシルエットとして描いた図形からなる商標である。 原告は,平成15年1月17日に引用商標の商標登録がされた以前から引用商標を継続して使用した結果(甲8,9,28,31,32,88,89(枝番のあるものは枝番を含む。)),引用商標は,本件商標の登録出願時(平成17年6月21日)及び登録査定時(平成19年3月6日)において,原告の業務に係る「PUMA」ブランドの被服,帽子等を表示する商標の一つとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名な商標となっていた。 したがって,引用商標から,「PUMA」ブランドの観念が生じ,「プーマ」の称呼が生じる。 イ本件商標と引用商標との対比(ア) 本件商標は,別紙1のとおり,「SHI-SA」の文字が横書きでやや大きく表示され,その右上方に,四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面からみた姿でシルエ 商標は,別紙1のとおり,「SHI-SA」の文字が横書きでやや大きく表示され,その右上方に,四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面からみた姿でシルエット風に描かれた動物図形を配し,「SHI-SA」の文字の下に2段にわたって「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」という文字が,比較的小さく表記されている。本件商標の動物図形の内側には,口の辺りに歯のような 模様,首の周りに飾り又は巻き毛のような模様,前足と後足の関節部分や尻尾にも飾り又は巻き毛のような模様が,白い線で描かれている。尻尾は,全体として丸みを帯びた形状で,先端が尖っている。 本件商標の構成中の「SHI-SA」の文字の下に2段にわたって記載された「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」という文字部分からは,「沖縄由来の魔除け獅子,シーサー」の意味合いが生じる。「シーサー」は,「沖縄で,瓦屋根などにとりつける素朴な焼物の唐獅子像。」(甲5)を意味すること,沖縄の観光のシンボルであることが沖縄県のインターネットホームページにも掲載されており(甲90),被告が本件商標を制作,出願する前に発行された沖縄の旅行ガイドブックには「シーサー」が沖縄の代表的な土産物として紹介され,沖縄の土産品ショップや沖縄県外で開催された沖縄の物産展では「シーサー」の置物やデザインが施された商品等が陳列されていること(甲91ないし95)からすると,「シーサー」は,沖縄の地域を代表するシンボルとして広く認識されるに至っており,沖縄以外で「シーサー」を目にすることはない。 そして,沖縄県内の店舗及びインターネットにおいて,沖縄の観光土産品として本件商標を付された観光客 を代表するシンボルとして広く認識されるに至っており,沖縄以外で「シーサー」を目にすることはない。 そして,沖縄県内の店舗及びインターネットにおいて,沖縄の観光土産品として本件商標を付された観光客向けTシャツ等を目にした通常の注意力を有する需要者,取引者は,本件商標の構成中の文字部分の「SHI-SA」,「OKInAWAnORIgInAL」,「gUARDIAnShIShI-DOg」から,直ちに沖縄の観光のシンボル「シーサー」を想起することが容易に推測されるから,上記文字部分は,当該商品が沖縄由来であることを需要者に印象付ける機能を有するにすぎず,本件指定商品中の「沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージしたTシャツ,沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージした帽子」との関係において,自他商品識別機能は発揮し得ず,出所識別標識としての称呼,観念 は生じない。 そうすると,本件商標から動物図形部分を抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。 (イ) 本件商標の動物図形と引用商標は,そのシルエット,内部に白線による模様があるかなどにおいて差異はあるものの,全体のシルエットは酷似しており,本件商標の動物図形において,内部の白い線の歯のような模様,首の回りの飾り又は巻き毛のような模様,前足と後足の関節部分の飾り又は巻き毛のような模様がシルエット全体に占める面積は,比較的小さいことからすると,本件商標と引用商標の外観全体の印象は,非常に似通っている。 また,本件商標の動物図形からは何らかの四足動物の観念が生じ,特定の称呼は生じないが,引用商標からは,「PUMA」ブランドの観念と「プーマ」の称呼が生じる点で異なるところ,本件商標の動物図形から何らかの四足動物以上に特定された観念や, 四足動物の観念が生じ,特定の称呼は生じないが,引用商標からは,「PUMA」ブランドの観念と「プーマ」の称呼が生じる点で異なるところ,本件商標の動物図形から何らかの四足動物以上に特定された観念や,特定の称呼が生じ,それが引用商標の観念,称呼と類似していない場合と比較して,その違いがより明確ではない。 このように,本件商標の動物図形は,引用商標の基本的構成と共通しており,当該構成から生じる共通の印象から,全体として時と処を別にして離隔的に観察した場合,看者に外観上酷似した印象を与えるものであるから,本件商標の動物図形と引用商標は高い類似性がある。 (ウ) 登録5392943号商標(以下「被告標章」という。甲61)は,別紙3のとおり,本件商標の構成中の動物図形に外郭線を加え,首の回り飾りのような模様をわずかに変更した態様からなる標章である。 本件商標の動物図形と被告標章は,単に,外郭線を加え,首の回り飾りのような模様をわずかに変更した差異を有するにすぎず,四足動物の 基本的態様,構図,特徴は同一である。 知的財産高等裁判所は,平成31年3月26日,被告標章についての商標登録無効審判請求を不成立とした審決(無効2016-890014号事件)の審決取消訴訟において,被告標章と引用商標との間に外観上の差異は認められるものの,外観全体の印象は相当似通ったものであるため,「混同を生ずるおそれ」があるとして,被告標章の商標登録が引用商標との関係において商標法4条1項15号に違反することを理由に審決を取り消す旨の判決(平成29年(行ケ)第10206号事件。甲62)をした。その後,特許庁は,無効2016-890014号事件について更に審理を行い,令和元年7月24日,被告標章が同号に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする審決( 06号事件。甲62)をした。その後,特許庁は,無効2016-890014号事件について更に審理を行い,令和元年7月24日,被告標章が同号に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする審決(以下「別件無効審決」という。)をし,別件無効審決は,同年9月2日,確定した(甲63)。 ウまとめ以上によれば,本件商標と引用商標は,文字部分の相違により,商標全体として,外観,称呼及び観念において差異があるとしても,本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標との間に高い類似性が認められ,本件商標は引用商標のデザインの一部を変更してなるものとの印象を与えるから,引用商標の周知著名性と相俟って,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の構成中の動物図形に着目し,引用商標を連想又は想起させ,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。 そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なるものであって,類似せず,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえないとした本件審決の判断は誤りである。 ⑵ 「不正の目的」の判断の誤りア前記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る「PUMA」ブランドの被服,帽子等を表示する商標の一つとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名であったこと,本件商標の動物図形と引用商標には高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることからすると,本件商標の登録出願は,引用商標の顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させる「不正の目的 同一又は類似の商品に使用された場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることからすると,本件商標の登録出願は,引用商標の顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させる「不正の目的」で行われたものである。 イ被告は,被告標章の商標登録を無効とする別件無効審決が確定した後も,被告標章をより強調したTシャツを販売している(甲67ないし73)。 また,被告は,被告の沖縄県内の店舗(甲20)及びインターネット(甲18)において,アダルトグッズのコンドームに被告標章を表示して販売している(甲74ないし76)。これによってスポーティーで洗練され,ファッショナブルな引用商標のブランドイメージ,名声が著しく毀損されている。 これらの被告の行為は,被告標章に接する取引者,需要者に,原告の著名な引用商標を連想・想起させ,著名商標の持つ顧客吸引力にただ乗りし,ブランドイメージの毀損を招く,不正の目的によるものである。 ウ原告は,本件審判において,令和2年5月31日付け審判請求書において,「被請求人は,周知著名な請求人の引用商標に化体した顧客吸引力に便乗,毀損することを狙って被請求人標章を制作し,それがあからさまにならないよう,不正の目的において,文字を組み合わせた本件商標を制作,出願した」ことを主張立証し(甲103),これに対し被告は,令和2年9月28日付け上申書をもって,「被請求人は,請求人の主張を認め,請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ,本件商標権が遡及 消滅することを争わない。」と述べた(甲104)。このように本件審判において被告が不正の目的で本件商標を制作し,登録出願をしたことは当事者間に争いがない事実であった。 また,被告作成の平成19年9月12日付け「商標登録第5040036号について①」と に本件審判において被告が不正の目的で本件商標を制作し,登録出願をしたことは当事者間に争いがない事実であった。 また,被告作成の平成19年9月12日付け「商標登録第5040036号について①」と題する書面(甲41)には,商標の制作経緯等に関し,「2003年(平成15年)年末ごろ,弊社も新アイテムとして『シーサー』を分かりやすく,そして現代の若者にも受け入れられるデザインをコンセプトにしようと改めてデザインを構想しました。2004年(平成16年)3月ごろ,コンセプトであげた『分かりやすく・シンプルに』と言うことでデザインに当時では珍しいピクトグラム(道路標識や公共施設,非常口など図柄だけで意味を表現するデザイン)を取り入れてはどうか? と,社内で議論しました。そこで,(スポーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたことから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシングウェア』『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして図③のように大まかなデザインができあがりました。空想上の生物なので,伝統工芸の焼き物や民芸雑貨などをシルエット(影)にしてみたものの形状はまだ複雑でシンプルを追求すると(プーマ)風なデザインになっていました。しかし,デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは? 等の意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図④になりました」,「その後,何度かデザインを変更して図⑤~⑦を経て現在は図⑧(平成17年から発売)になっています。」との記載がある。上記記載によれば,本件商標(図⑦の動物図形部分を図③に置き換えたもの)は,「世界的に有名な「プーマ」等の動物をモチーフに ⑦を経て現在は図⑧(平成17年から発売)になっています。」との記載がある。上記記載によれば,本件商標(図⑦の動物図形部分を図③に置き換えたもの)は,「世界的に有名な「プーマ」等の動物をモチーフにしたデザインを参考にして」制作されたものであること,動物図形(図③)について「プーマ風なデザイン」 であることを自白している。 このように本件審判においては,被告の上記自白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯がある。 エ以上のとおり,①本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標との間に高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあること,②被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があること,③本件審判において,被告の自白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯があることを総合考慮すれば,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させる不正の目的で本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたものといえる。 そうすると,本件商標の登録出願の経緯において,被告による本件商標の登録出願が,他人に損害を加える目的その他の不正の目的で行われたものと認めるに足る証左もなく,その他,本件商標が不正の目的で商標登録を受けたものというべき事情は見いだせないから,被告は,不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認めることはできないとした本件審決の判断は,誤りである 本件商標が不正の目的で商標登録を受けたものというべき事情は見いだせないから,被告は,不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認めることはできないとした本件審決の判断は,誤りである。 ⑶ 小括以上のとおり,本件商標は「不正の目的」で商標登録を受けた場合(商標法47条1項括弧書き)に該当するから,同法4条1項15号を理由とする本件審判の請求を却下した本件審決の判断は誤りである。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り) 商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,商標の構成自体に公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがなくとも,当該商標を使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれる。この「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くもの」には,商標に接する取引者,需要者に,他人の著名商標を連想・想起させ,著名商標の持つ顧客吸引力にただ乗りし,その希釈化を招くなど,不正の目的をもって出願したものが含まれ,かかる商標は,「使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する」ものでもある。そして,同号の該当性は,当該商標の指定商品又は指定役務との関係において判断されものではない。 前記1のとおり,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させる不正の目的で本件商標の商標登録出願をし,本件商標の商標登録を受けたものである。 すなわち,本件商標と引用商標は,文字部分の相違により,商標全体として, 示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させる不正の目的で本件商標の商標登録出願をし,本件商標の商標登録を受けたものである。 すなわち,本件商標と引用商標は,文字部分の相違により,商標全体として,外観,称呼及び観念において差異があるとしても,本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標との間に高い類似性が認められ,本件商標は引用商標のデザインの一部を変更してなるものとの印象を与えるから,引用商標の周知著名性と相俟って,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の構成中の動物図形に着目し,引用商標を連想又は想起させ,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。このため,本件商標を本件指定商品に使用する場合,引用商標の出所表示機能が希釈化され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては原告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるから,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して登録出 願し,その商標登録を受けたものであり,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(同法1条)に反するものであって,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するというべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するから,これを否定した本件審決の判断は誤りである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(「不正の目的で商標登録を受けた場合」(商標法47条1項括弧書き)該当性の判断の誤り)について⑴ 本件商標と引用商標の類似性の判断の誤りの有無についてア本件商標について本件商標は,別紙1のとおり,横書きで大きく表示された「SHI-SA」の黒色の文字部分 の誤り)について⑴ 本件商標と引用商標の類似性の判断の誤りの有無についてア本件商標について本件商標は,別紙1のとおり,横書きで大きく表示された「SHI-SA」の黒色の文字部分と,その下に比較的小さく表記された「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」の二段書きの黒色の文字部分と,上記「SHI-SA」の文字部分の右上方に,四足動物が右側から左上方に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれた図形とを結合してなる結合商標である。本件商標の図形部分(動物図形)は,口の辺りに歯のようなものが描かれ,首の部分に飾り又は巻き毛のような模様が,前足と後足の関節部分にも飾り又は巻き毛のような模様が描かれ,尻尾は全体として丸みを帯びた形状で先端が尖っており,飾り又は巻き毛のような模様が描かれている。 イ引用商標及びその周知著名性について(ア) 引用商標は,別紙2のとおり,二つの耳がある頭部を有する四足動物が,右から左に向かって,跳び上がるように,頭部及び前足が後足より左上の位置になる形で,前足と後足を前後に大きく開いている様子が, 側面から見た姿で,黒いシルエット風に描かれている図形からなる商標である。引用商標の動物の尻尾は全体に細く,右上方に高くしなるように伸び,その先端だけが若干丸みを帯びた形状となっている。 (イ) 証拠(甲8,9,28,31,32,88,89(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成14年4月24日,指定商品を第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」として,引用商標の登録出願をし,平成15 ,原告は,平成14年4月24日,指定商品を第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」として,引用商標の登録出願をし,平成15年1月17日,その商標登録を受けたこと,原告は,引用商標の登録以前から,Tシャツに引用商標と同様の図形を付した商品を販売し,帽子を掲載したカタログの表紙に引用商標と同様の形を白抜きしてその内部に横線を配した図形を記載し,Tシャツを掲載したカタログの表紙に引用商標と同様の形を白抜きにした図形を「PUmA」の文字の近辺に記載するなどし,その登録後も,スポーツウェアや帽子に引用商標と同様の形の図形を付した商品を販売し,それらの商品の雑誌の広告に引用商標と同様の形の図形を「PUmA」の文字の近辺に記載するなどして,「PUMA」ブランドの商品の販売事業を展開してきたことが認められる。 上記認定事実によれば,引用商標は,本件商標の登録出願時(平成17年6月21日)及び登録査定時(平成19年3月6日)において,原告の業務に係る「PUMA」ブランドの被服,帽子等を表示する商標の一つとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名であったことが認められる。 そして,引用商標から,「PUMA」ブランドの観念が生じ,「プーマ」の称呼が生じるものと認められる。 ウ本件商標と引用商標との対比について(ア) 原告は,沖縄県内の店舗及びインターネットにおいて,沖縄の観光 土産品として本件商標を付された観光客向けTシャツ等を目にした通常の注意力を有する需要者,取引者は,本件商標の構成中の文字部分の「SHI-SA」,「OKInAWAnORIgInAL」,「gUARDIAnShIShI-DOg」から,直ちに沖縄の観光のシンボル「シーサー」を る需要者,取引者は,本件商標の構成中の文字部分の「SHI-SA」,「OKInAWAnORIgInAL」,「gUARDIAnShIShI-DOg」から,直ちに沖縄の観光のシンボル「シーサー」を想起することが容易に推測されるから,上記文字部分は,当該商品が沖縄由来であることを需要者に印象付ける機能を有するにすぎず,本件指定商品中の「沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージしたTシャツ,沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージした帽子」との関係において,自他商品識別機能は発揮し得ず,出所識別標識としての称呼,観念は生じないことからすると,本件商標から動物図形(図形部分)を抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許される旨主張する。 a そこで検討するに,本件商標は,別紙1のとおり,中央部に大きく表示された「SHI-SA」の黒色の文字部分が,その下に比較的小さく表記された「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAnShIShI-DOg」の二段書きの黒色の文字部分が配置され,上記「SHI-SA」の文字部分のうちの「SA」の文字の右側から上方を囲むように動物図形が配置されており,また,本件商標における文字部分全体の面積は動物図形の面積よりも大きいことを看取できる。 本件商標の「SHI-SA」の文字部分から,「シーサー」の称呼が生じ,また,「OKInAWAnORIgInAL」の文字部分から,「オキナワンオリジナル」の称呼が生じ,「沖縄のオリジナル」の意味を,「gUARDIAnShIShI-DOg」の文字部分から,「ガーディアンシシドッグ」の称呼が生じ,「保護者」及び「獅子犬」の意味をそれぞれ読み取ることができる。加えて,「シーサー」 は,一般に,「魔除けの一種。沖縄で,瓦屋根などにとりつける素 ら,「ガーディアンシシドッグ」の称呼が生じ,「保護者」及び「獅子犬」の意味をそれぞれ読み取ることができる。加えて,「シーサー」 は,一般に,「魔除けの一種。沖縄で,瓦屋根などにとりつける素朴な焼物の唐獅子像。」(甲5)を意味することからすると,「SHI-SA」の文字部分から,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が生じる。 そして,①本件商標の動物図形が「SHI-SA」の文字部分の近接した位置に上記文字部分のうちの「SA」の文字を囲むように配置された配置態様,②上記文字部分及び動物図形の大きさ,③「シーサー」の形状には,様々なものがあるが,その特徴としては,たてがみや首飾り,剥き出した牙,渦巻くような毛並み,太くふっくらとした尻尾等があるところ(甲6),本件商標の動物図形には,首の部分に飾り又は巻き毛のような模様,前足及び後足の関節部分に飾り又は巻き毛のような模様があり,尻尾は全体として丸みを帯びた先端が尖った形状等であり,上記特徴と概ね一致することからすると,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」を図形化して表示したものと看取するものと認められる。 もっとも,本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標とは,四足動物が右から左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,跳躍の角度,前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度,胸・背中から足にかけての曲線の描き方について似通った印象を与えることから,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,他方で,上記①ないし③の事情に照らすと,「SHI-SA」の文字部分があることによって,本件商標の動物図形からは,引 本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,他方で,上記①ないし③の事情に照らすと,「SHI-SA」の文字部分があることによって,本件商標の動物図形からは,引用商標から生じる「PUMA」ブランドの観念や「プーマ」の称呼は生じないものと認められるから,本件商 標の動物図形と引用商標とに似通っている点があることは,需要者が本件商標の動物図形は沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」を図形化して表示したものと看取するとの上記認定を左右するものではない。 そうすると,本件商標の動物図形と「SHI-SA」の文字部分は,外観上は区別できるものではあるが,これを分離して観察することは取引上不自然であるというべきである。 したがって,本件商標から動物図形(図形部分)を抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは相当ではない。 b 原告は,本件商標から動物図形(図形部分)を抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することができることの根拠として,本件商標の構成中の文字部分の「SHI-SA」,「OKInAWAnORIgInAL」,「gUARDIAnShIShI-DOg」から,直ちに沖縄の観光のシンボル「シーサー」を想起することが容易に推測されるから,上記文字部分は,当該商品が沖縄由来であることを需要者に印象付ける機能を有するにすぎず,本件指定商品中の「沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージしたTシャツ,沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージした帽子」との関係において,自他商品識別機能は発揮し得ず,出所識別標識としての称呼,観念は生じないことを挙げる。 しかしながら,本件商標の文字部分全体は,本件商標の動物図形よりも大きく,本件商標の面積の大きな部分を いて,自他商品識別機能は発揮し得ず,出所識別標識としての称呼,観念は生じないことを挙げる。 しかしながら,本件商標の文字部分全体は,本件商標の動物図形よりも大きく,本件商標の面積の大きな部分を占め,別紙1のとおり,印象的な書体を用いて表されているものであり,本件商標の文字部分が本件指定商品(沖縄の観光土産用又は沖縄をイメージしたTシャツ及び帽子のほか,「その他のTシャツ」及び「その他の帽子」を含む。) との関係において自他商品識別力を発揮しないというべき事情は認められない。 また,前記aのとおり,「SHI-SA」の文字部分から,「シーサー」の称呼及び沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が生じ,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は,上記「SHI-SA」を図形化して表示したものと看取するものと認められるから,本件商標の文字部分が捨象され,動物図形のみが着目されるということはできない。 c 以上によれば,原告の前記主張は採用することができない。 (イ) 以上を前提に本件商標と引用商標を対比すると,本件商標と引用商標の外観は,四足動物が右から左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った点があるものの,引用商標には本件商標において大きな構成部分である文字部分を有していないという顕著な相違があり,両商標の外観は明らかに異なること,本件商標から「シーサーオキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ」の称呼が生じ,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が生じるのに対し,引用商標からは,「プーマ」の称呼が生じ,「PUMA」ブランドの観念が生じるから,両商標は,称呼及び観念において異なるものである。 以上の 伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が生じるのに対し,引用商標からは,「プーマ」の称呼が生じ,「PUMA」ブランドの観念が生じるから,両商標は,称呼及び観念において異なるものである。 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても異なるものであり,本件商標と引用商標が本件指定商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできないから,本件商標と引用商標は,類似しない。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 不正の目的の判断の誤りの有無について 原告は,①本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標には高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあること,②被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があること,③本件審判において,被告の自白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯があることを総合考慮すれば,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」で本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたものである旨主張する。 アそこで検討するに,①については,引用商標は原告の業務に係る周知著名な商標ではあるが,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,本件商標と引用商標は,類似しない。 また,本件商標の動物図形と引用商標は,四足動物が右から左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いて 標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,本件商標と引用商標は,類似しない。 また,本件商標の動物図形と引用商標は,四足動物が右から左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った点があることから,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,「SHI-SA」の文字部分が近接した位置にあることによって,本件商標の動物図形からは,引用商標から生じる「PUMA」ブランドの観念や「プーマ」の称呼は生じないものと認められること(前記(1)ウ(ア)a)に照らすと,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するからといって,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させる「不正の目的」があったものと認めることはできな い。 イ ②については,証拠(甲61ないし63)によれば,知的財産高等裁判所は,別紙3のとおりの構成からなる被告標章についての商標登録無効審判請求を不成立とした審決(無効2016-890014号事件)の審決を取り消す旨の判決をした後,特許庁が被告標章が商標法4条1項15号に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする別件無効審決をし,別件無効審決は,令和元年9月2日,確定したことが認められる。 しかしながら,本件商標と被告標章の外観は,四足動物が右から左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った点があるものの,被告標章には本件商標において大きな構成 左に向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った点があるものの,被告標章には本件商標において大きな構成部分である文字部分を有していないという顕著な相違があり,両商標は,外観,称呼及び観念において異なり,類似しないことに照らすと,原告が主張する被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があるからといって,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」があったものと認めることはできない。 ウ ③については,商標登録無効審判の審判手続においては,職権で証拠調べをすることができ,当事者が申し立てない理由についても審理することができるなどの職権探知主義が採用され(商標法56条において準用する特許法150条1項,153条1項),自白法則は適用されないから(商標法56条において準用する特許法151条が準用する民事訴訟法179条の規定から「当事者が自白した事実は証明することを要しない」とした部分の準用が除かれている。),商標登録無効審判の請求人は被請求人 が商標登録の無効理由を基礎づける事実について自白した場合であっても,当該事実を証拠によって証明する必要がある。また,被請求人には特許庁がした審決を取り消す権限がなく,商標登録無効審判に処分権主義の適用はないから,被請求人は,請求人の請求を認諾することはできないものと解される。 しかるところ,原告が③の根拠として挙げる被告作成の令和2年9月28日付け上申書(甲104)には,「被請求人は,請求人の主張 から,被請求人は,請求人の請求を認諾することはできないものと解される。 しかるところ,原告が③の根拠として挙げる被告作成の令和2年9月28日付け上申書(甲104)には,「被請求人は,請求人の主張を認め,請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ,本件商標権が遡及消滅することを争わない。」との記載があるが,上記記載中の「請求人の主張を認め」にいう「請求人の主張」を基礎づける具体的な事実が特定されていないから,上記記載をもって被告が具体的事実について自白したものと認めることはできないのみならず,具体的事実を証明する供述証拠として評価することもできない。また,上記記載中の「請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ…争わない。」との部分は請求の認諾の趣旨のものとうかがわれるが,商標登録無効審判においては請求の認諾はできないから,上記部分を斟酌することはできない。 次に,原告が③の根拠として挙げる被告作成の平成19年9月12日付け「商標登録第5040036号について①」と題する書面(甲41)には,商標の制作経緯等に関し,「2003年(平成15年)年末ごろ,弊社も新アイテムとして『シーサー』を分かりやすく,そして現代の若者にも受け入れられるデザインをコンセプトにしようと改めてデザインを構想しました。2004年(平成16年)3月ごろ,コンセプトであげた『分かりやすく・シンプルに』と言うことでデザインに当時では珍しいピクトグラム(道路標識や公共施設,非常口など図柄だけで意味を表現するデザイン)を取り入れてはどうか?と,社内で議論しました。そこで,(スポーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたこ とから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシングウェア』『プーマ』など,動 論しました。そこで,(スポーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたこ とから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシングウェア』『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして図③のように大まかなデザインができあがりました。空想上の生物なので,伝統工芸の焼き物や民芸雑貨などをシルエット(影)にしてみたものの形状はまだ複雑でシンプルを追求すると(プーマ)風なデザインになっていました。しかし,デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは?等の意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図④になりました」,「その後,何度かデザインを変更して図⑤~⑦を経て現在は図⑧(平成17年から発売)になっています。」との記載がある。しかし,上記記載中の「『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にし」た,「(プーマ)風なデザインになっていました」旨の部分は,これに引き続く「デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは?等の意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図④になりました」との記載と併せて読めば,図③の動物図形は,『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして『シーサー』を表現する意図で作成されたものとうかがわれるから,被告が周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させる「不正の目的」で本件商標(図⑦の動物図形部分を図③に置き換えたもの)の登録出願をし,その商標登録を受けたことを認め,あるいはこれを裏付 化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させる「不正の目的」で本件商標(図⑦の動物図形部分を図③に置き換えたもの)の登録出願をし,その商標登録を受けたことを認め,あるいはこれを裏付ける趣旨の記載であると評価することはできない。 したがって,上記書面から,被告に上記「不正の目的」があったものと認めることはできない。 エよって,原告の前記主張は採用することができない。 (3) 小括以上によれば,本件商標は「不正の目的」で商標登録を受けたものに該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから, 原告主張の取消事由1は,理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について原告は,本件商標と引用商標は,文字部分の相違により,商標全体として,外観,称呼及び観念において差異があるとしても,本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標との間に高い類似性が認められ,本件商標は引用商標のデザインの一部を変更してなるものとの印象を与えるから,引用商標の周知著名性と相俟って,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の構成中の動物図形に着目し,引用商標を連想又は想起させ,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといえるため,本件商標を本件指定商品に使用する場合,引用商標の出所表示機能が希釈化され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては原告の業務上の信用を毀損させるおそれがある,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して登録出願し,その商標登録を受けたものであり,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法 益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して登録出願し,その商標登録を受けたものであり,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(同法1条)に反するものであって,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するというべきであるとして,本件商標は,商標法4条1項7号に該当する旨主張する。 しかしながら,前記1で説示したとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても異なるものであり,本件商標と引用商標が本件指定商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできないから,本件商標と引用商標は,類似せず,また,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を 希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」があったものと認めることはできないから,原告の上記主張は,その前提において採用することができない。 したがって,原告主張の取消事由2は,理由がない。 3 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は棄却されるべきものであるから,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小林康彦 裁判官小川卓逸 (別紙1) 本件商標 (別紙2) 引用商標 登録第4637003号商 川卓逸 (別紙1) 本件商標 (別紙2) 引用商標 登録第4637003号商標登録出願日平成14年4月24日設定登録日平成15年1月17日指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」商標権者原告 (別紙3) 被告標章 登録第5392943号商標登録出願日平成20年4月12日設定登録日平成23年2月25日指定商品第25類「Tシャツ,帽子」商標権者被告

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る