令和4(行ケ)1 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年10月25日 名古屋高等裁判所 棄却
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判決文本文20,285 文字)

- 1 -主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨令和4年7月10日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の愛知県選挙区、岐阜県選挙区及び三重県選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要等 1 本件は、令和4年7月10日に施行された参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について、愛知県選挙区、岐阜県選挙区及び三重県選挙区(以下、併せて「本件各選挙区」という。)の選挙人である原告らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下、数次の改正の前後を通じ、平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め、「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実当事者間に争いのない事実、当裁判所に顕著な事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 本件選挙の施行本件選挙は、令和4年7月10日、平成30年法律第75号(以下「平成30年改正法」という。)による改正(以下「平成30年改正」という。)後の公職選挙法14条1項、別表第3の参議院定数配分規定(以下「本件定数配分規定」という。)に基づき施行された。 当事者原告Aは本件選挙の愛知県選挙区の、原告Bは本件選挙の岐阜県選挙区 - 2 -の、原告Cは本件選挙の三重県選挙区の各選挙人である。 本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は、選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県 - 2 -の、原告Cは本件選挙の三重県選挙区の各選挙人である。 本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は、選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神奈川県選挙区は3.03(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、愛知県選挙区は2.41、岐阜県選挙区は2.59、三重県選挙区は2.32であった(乙1)。 3 争点本件定数配分規定が憲法に違反し無効か。 4 争点についての当事者の主張の要旨 原告らの主張ア本件定数配分規定は、憲法56条2項、1条、前文第1項第1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反しており、憲法98条1項により無効である。 イ参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、本件選挙当時の各選挙区間の議員1人当たりの有権者数較差3.03は、衆議院のそれより後退しており、本件選挙は違憲である。 ウ最高裁平成26年(行ツ)第155号、第156号等同年11月26日判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」という。)では、①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不均衡状態に至っているか否かを審査し、②上記の状態に至っている場合に、当該選挙までの期間にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否かを審査して、違憲性を判断しているが、上記②の審査基準は、憲法98条1項に違反する。 エ令和3年に設置された参議院改革協議会において、各会派は、平成2 - 3 -5年以降継続的に行われてきた選挙制度改革の実現に向 しているが、上記②の審査基準は、憲法98条1項に違反する。 エ令和3年に設置された参議院改革協議会において、各会派は、平成2 - 3 -5年以降継続的に行われてきた選挙制度改革の実現に向けて、具体案を作成し、かつ、これらにつき議論することを怠っており、立法府は、本件選挙の時点で、もはや都道府県を選挙区の単位とする選挙制度の仕組み自体を見直すなど、是正を指向する姿勢を失っており、最高裁令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)に照らしても、本件選挙は違憲状態である。 オ本件選挙が違憲無効とされても、社会的不都合又は社会的混乱は生じないから、事情判決の法理によっても、本件選挙は、憲法98条1項により、その効力を有しない。 被告らの主張ア国会の定めた定数配分規定が違憲と評価されるのは、参議院の独自性その他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており、かつ、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 イ参議院議員の選挙区選挙において、都道府県を選挙区割りの基本単位としていることは、国会による裁量権の行使として合理性があるところ、平成27年法律第60号による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)により、最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)及び平成26年大法廷判決が指摘した、投票価値に関する違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、その後の平成30年改正により、投票価値の不均衡が更に是正さ 平成24年大法廷判決」という。)及び平成26年大法廷判決が指摘した、投票価値に関する違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、その後の平成30年改正により、投票価値の不均衡が更に是正された。 最高裁平成29年(行ツ)第47号同29年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)及 - 4 -び令和2年大法廷判決においても、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にはなかった旨判断された。本件選挙時においても、最大較差は3.03にとどまるなど、平成28年7月10日に施行された参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」といい、この通常選挙を「平成28年選挙」という。)当時及び令和元年7月21日に施行された通常選挙(以下「令和元年選挙」という。)当時と比較して投票価値の不均衡が大きく拡大した状況は認められなかった上、国会は、現在も参議院選挙制度改革の検討を継続する方針を示し、再び過去にあったような大きな較差を生じさせることのないよう配慮しているところである。こうした事情を併せ考慮すると、本件選挙当時、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らして看過し得ない程度にまで達しているとはいえないから、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとは認められない。 ウ万一、本件選挙当時、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると判断されることがあるとしても、国会において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定に基づく選挙区間における投票価値の不均衡が前記状態にまで至っていたことを認識し得たとは到底いえないから、国会が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識 の間に、本件定数配分規定に基づく選挙区間における投票価値の不均衡が前記状態にまで至っていたことを認識し得たとは到底いえないから、国会が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得た時期が開始していたとは認められない。また、国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当なものではなかったとはいえないから、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 - 5 -前記前提事実、当裁判所に顕著な事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 参議院議員の選挙制度の仕組み(乙5、6)ア参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、前者については全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方、後者については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていること(46条)に応じて、各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し、定数を偶数としてその最小限を2人とする方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。 イ昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数が2人増えたほかは、平成6年法律第47号による公職 年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数が2人増えたほかは、平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで、上記定数配分規定に変更はなかった。 なお、昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により、参議院議員選挙について、いわゆる拘束名簿式比例代表制が導入され、参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区別されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたにすぎない。 - 6 -ウその後、平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により、比例代表選出議員の選挙制度が、いわゆる非拘束名簿式比例代表制に改められるとともに、参議院議員の総定数が10人削減されて242人とされ、比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。 平成19年までの選挙区間の最大較差の推移等ア参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下、各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この人口の最大較差をいう。)は2.62倍であったが、人口変動により拡大を続け、平成4年7月に施行された通常選挙(以下「平成4年選挙」という。)当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この選挙人数の最大較差をいう)が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減する措置により 当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この選挙人数の最大較差をいう)が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減する措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減する措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」という。)における4選挙区の定数を4増4減する措置の前後を通じて、平成7年から平成19年までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。(乙5ないし7)イしかるところ、最高裁判所大法廷は、定数配分規定の合憲性に関し、最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下「昭和58年大法廷判決」という。)において、後記2の基本的な判断枠組みを示した後、平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大 - 7 -法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙については、上記の状態に至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年7月に施行された通常選挙のいずれについても、最高裁判所大法廷は、上記の状態に至っていたか否かにつき明示 定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年7月に施行された通常選挙のいずれについても、最高裁判所大法廷は、上記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することなく、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁(以下「平成18年大法廷判決」という。)、最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁(以下「平成21年大法廷判決」という。))。もっとも、平成18年大法廷判決においては、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、平成21年大法廷判決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、選挙区間における投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあり、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 平成22年7月施行の通常選挙に係る平成24年大法廷判決等 - 8 -平成22年7月11日、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき、平成24年大法廷判決は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとしたもの の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき、平成24年大法廷判決は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとしたものの、長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし、それにもかかわらず平成18年改正後は投票価値に大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま平成22年選挙に至ったことなどの事情を総合考慮すると、同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した(乙7)。 平成24年大法廷判決の言渡し後、平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された(以下「平成24年改正」という。)。同法の内容は、平成25年7月に施行される通常選挙に向けた 改正する法律(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された(以下「平成24年改正」という。)。同法の内容は、平成25年7月に施行される通常選挙に向けた改正として選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減するものであり、 - 9 -その附則には、平成28年に施行される通常選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、結論を得るものする旨の規定が置かれていた。 平成25年7月21日、平成24年改正による定数配分規定の下での初めての通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった(乙7)。 平成25年9月、参議院において平成28年に施行される通常選挙に向けた参議院選挙制度改革について協議を行うため、選挙制度の改革に関する検討会の下に選挙制度協議会が設置された。同協議会においては、平成26年4月に選挙制度の仕組みの見直しを内容とする具体的な改正案として座長案が示され、その後に同案の見直し案も示された。これらの案は、基本的には、議員1人当たりの人口の少ない一定数の選挙区を隣接区と合区してその定数を削減し、人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ、同協議会において、上記の各案や参議院の各会の提案等をめぐり協議が行われたが、各会派の意見が一致しなかったことから、同年12月26日、各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。 このような協議が行われている状況の中で、平成25年選挙につき、平成26年大法廷判決は、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による前記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の 議が行われている状況の中で、平成25年選挙につき、平成26年大法廷判決は、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による前記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については平成24年改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず、したがって、平成24年改正法による上記の措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著し - 10 -い不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 平成27年改正に至る経緯やその内容等ア選挙制度の改革に関する検討会は、前記⑸の報告書の提出を受けて協議を行ったが、各会派が一致する結論を得られなかったことから、平成27年5月29日、各会派において法案化作業を行うこととされた。そして、各会派における検討が進められた結果、各会派の見解は、人口の少ない選挙区について合区を導入することを内容とする①「4県2合区を含む10増10減」の改正案と②「20県10合区による12増12減」の改正案とにおおむね集約され、同年7月23日、上記の各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。 上記①の改正案に係る法律案は、選挙区選出議員の選挙区及び定数 2減」の改正案とにおおむね集約され、同年7月23日、上記の各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。 上記①の改正案に係る法律案は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われる通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。(乙6、乙8の1・2)イ平成27年7月28日、上記①の改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。)が成立し、同年11月5日に施行された。平成27年改正の結果、 - 11 -平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった(乙7)。 平成28年選挙の施行等ア平成28年7月10日、平成27年改正後の定数配分規定の下での初めての平成28年選挙が施行された。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった(乙7、乙8の3)。 イ平成29年大法廷判決は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、人口の少ない選挙区について、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな格差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してき 期間にわたり投票価値の大きな格差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則において、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を規定しており、今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、同規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとした。 平成30年改正に至る経緯やその内容等ア平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほ - 12 -か、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった。全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下など様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める「参議院選挙における合区の解消に関する決議」を採択した。また、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会においても、合区の早急な解消に向けた決議等が行われ、多くの地方議会でも同様の決議等が行わ を採択した。また、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会においても、合区の早急な解消に向けた決議等が行われ、多くの地方議会でも同様の決議等が行われた。(乙8の4~6、21の8、24の2、25の1、26の1、27の3、28の1、29の2)イ平成28年選挙施行後の平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査を行う「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。選挙制度に関する専門委員会は、参議院選挙制度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又は選挙区の単位を都道府県に代えてより広域の選挙区(以下「ブロック選挙区」という。)とすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかし、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがある状況であった。 同委員会は、平成30年5月、参議院改革協議会に対し、これらの協議結果についての報告書を提出した。(乙9ないし13、14の1・2、 - 13 -15、19、20)ウ平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合 13、14の1・2、 - 13 -15、19、20)ウ平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分すること、及び比例代表選出議員の定数を4人増員するとともに、政党等が優先的に当選人となるべき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。その後、各会派代表者懇談会における協議等が行われたが、各会派間の意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(以下「参議院特別委員会」という。)において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてブロック選挙区による選挙を導入することを内容とする法律案等が提出された。同年7月11日、参議院特別委員会において、上記の自由民主党の提案内容に沿った公職選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。(乙16の1~7、17ないし20)エ平成30年7月18日、上記法律案どおりの平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。平成30年改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった(乙7)。 令和元年通常選挙の施行等ア令和元年7月21日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での初めての令和元年選挙が施行された。令和元年選挙当時の選 の最大較差は2.99倍となった(乙7)。 令和元年通常選挙の施行等ア令和元年7月21日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での初めての令和元年選挙が施行された。令和元年選挙当時の選挙区間の最 - 14 -大較差は3.00倍であった(乙4の1、乙7)。令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県でもそれぞれ過去最低の投票率となった(乙4の2、乙22の6・7)。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった(乙4の3、乙22の8・9)。 イ令和2年大法廷判決は、令和元年選挙が平成29年大法廷判決の言渡しの後に成立した平成30年改正法における本件定数配分規定の下で実施されており、その投票価値の不均衡については、同判決の判示した事情も踏まえた検討がされるべきであるとした上で、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに維持していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないものの、平成30年改正の経緯及び内容等を踏まえると、平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、その実現は漸進的にならざるを得ない面があるから、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとし、このような事情を総合すれば、令和元年選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと し、このような事情を総合すれば、令和元年選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑾ 令和元年選挙後の参議院選挙制度改革に向けた取組み等ア全国知事会は、令和元年7月24日、「徳島県が全国最低の投票率38. 59%を記録するとともに、前回最下位だった高知県を除き、鳥取県、島根県、徳島県の3県では過去最低の投票率を更新する結果を招くなど、 - 15 -合区を起因とした弊害はさらに深刻度を増している」等と指摘し、合区の確実な解消を強く求める意見を表明する決議を行った(乙22の3の1ないし3、乙24の7)。このような合区を解消し、都道府県単位による代表が国政に参加することができる選挙制度を求める動きは、その後も続いた(乙24の8・9、乙25の6ないし8、乙26の4ないし8、乙27の6ないし9、乙28の7ないし11、乙29の5ないし7、乙31の236ないし243・250ないし252・255ないし257)。 イ参議院では、令和3年5月14日、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するために参議院改革協議会が設置され、同月から令和4年6月までの間、合計13回にわたって、各会派からなる14名の協議員によって、参議院の在り方、参議院議員選挙制度の改革、議員の身分保障等に関する検討が行われた。参議院改革協議会では、参議院の在り方に関して、学者や元最高裁判所裁判官の参考人から、意見や提言を聴取したほか、各協議員間で意見交換が重ねられ、多様な民意の反映、地方代表的な性格、参議院の独自性の発揮という視点から各会派の考えるところが整理された。その上で、参議院議員選挙制度について、各会派からは、投票価値 協議員間で意見交換が重ねられ、多様な民意の反映、地方代表的な性格、参議院の独自性の発揮という視点から各会派の考えるところが整理された。その上で、参議院議員選挙制度について、各会派からは、投票価値の平等を最大限に尊重すべきであることに異論は出なかったが、多様な民意や参議院議員の地域代表的な性格を具体化するための選挙制度の在り方について、選挙区と比例区から議員を選出する現行制度を維持すべきとの意見、完全比例区制を導入すべきとの意見、都道府県選挙区制とブロック制に移行すべきとの意見等が出され、最終的に各会派の意見の一致には至らなかった。同協議会は、令和4年6月8日付けで、論点に関する議論を整理した報告書をとりまとめて議長に提出し、本件選挙後、参議院選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について、速やかに協議を開始し、更に議論を継続することが確認された - 16 -(甲154、乙34)。 ウ令和4年5月及び6月に開かれた参議院憲法審査会において、参議院選挙制度に関し、合区問題を中心として、大学教授2名から意見を聴取するとともに、各会派からなる協議員による意見交換が実施された。意見交換において、各会派から、合区の解消を求める意見に加え、全国11ブロックに分けた大選挙区制の導入を求める意見、比例代表を中心とした選挙制度への見直しを求める意見などが述べられ、二院制を採用した憲法の趣旨を踏まえ、いかなる具体的な選挙制度によって、その趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させるかについて議論が行われた(乙35の1・2)。 ⑿ 本件選挙の施行等令和4年7月10日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での通常選挙として、本件選挙が施行された。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.03倍であった。本件選挙において、合区の対象 の施行等令和4年7月10日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での通常選挙として、本件選挙が施行された。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.03倍であった。本件選挙において、合区の対象となった徳島県の投票率は全国最低となり、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回った。(乙2) 2 判断の枠組みについて憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするのかについての決定を国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が - 17 -一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用して衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。前記1においてみた参議院の選挙制度の仕組みは、このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選出するものとし、後者については都道府県を各選挙区 国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選出するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び昭和25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法をはじめとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そ - 18 -して、いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異 ける参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものである。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実態等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 これに対し原告らは、本件定数配分規定は、憲法56条2項、1条、前文第1項第1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反しており、憲法98条1項により無効である旨主張する。しかしながら、前記⑴で説示したとおり、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 また、原告らは、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値 - 19 -の れることになっても、憲法に違反するとはいえない。したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 また、原告らは、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値 - 19 -の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、本件選挙当時の各選挙区間の議員1人当たりの有権者数較差3.03は、衆議院のそれより後退しているとして、本件選挙は違憲である旨主張する。しかしながら、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものであることは前記⑵で説示したとおりであり、選挙制度の仕組みが異なる以上、衆議院議員の選挙における投票価値と参議院議員の選挙における投票価値を単純に比較することはできない。したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 さらに、原告らは、平成26年大法廷判決が採用した2段階の判断枠組みが憲法98条1項に違反する旨主張するが、独自の見解であり、採用することはできない。 3 本件選挙について 本件選挙は、平成29年大法廷判決の言渡し後に成立した平成30年改正法による改正後の本件定数配分規定の下で施行されたものであるところ、同法は、総定数を増やした上で、選挙区選出議員については、平成27年改正による4県2合区を維持したまま、埼玉県選挙区を2人増員することを内容とするものであった。 平成27年改正により導入された合区は、総定数を大幅に増やす方法を採ることにも制約があった中、半数改選という憲法上の要請を踏まえて各選挙区の定数を偶数で設定しつつも選挙区間の較差を縮小することを可能とするも 改正により導入された合区は、総定数を大幅に増やす方法を採ることにも制約があった中、半数改選という憲法上の要請を踏まえて各選挙区の定数を偶数で設定しつつも選挙区間の較差を縮小することを可能とするものであったが、その対象となった県における投票率の低下及び無効投票率の上昇と合区との関連性を指摘し、その解消を強く望む意見も存在した。このような状況の下、平成28年選挙施行後、参議院改革協議会の下に設置さ - 20 -れた選挙制度に関する専門委員会において、一票の較差、選挙制度の枠組み、議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について議論が行われ、合区制度の是非や、都道府県を単位とする選挙区に代えてブロック選挙区を導入すること等の見直し案についても幅広く議論が行われた。しかしながら、選挙制度改革に関する具体案について各会派の意見の隔たりは大きく、一致する結論を得ることができないまま、令和元年選挙に向けて平成30年改正法が成立したものである。このような経緯もあり、同法の内容は、選挙区選出議員に関する従来からの選挙制度の基本的な仕組み自体を変更するものではないが、上記のとおり合区の解消を強く望む意見も存在する中、平成27年改正により縮小した較差を再び拡大させないよう合区を維持することとしたのみならず、長らく行われてこなかった総定数を増やす方法を採った上で埼玉県選挙区の定数を2人増員し、較差の是正を図ったものである。その結果、平成27年改正による5倍前後から約3倍に縮小した選挙区間の較差(平成28年選挙当時は3.08倍)は、令和元年選挙当時3.00倍、本件選挙当時は3.03倍といずれも僅かであるが減少した。 前記1のとおり、平成29年大法廷判決は、平成27年改正法附則7条が次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討 選挙当時は3.03倍といずれも僅かであるが減少した。 前記1のとおり、平成29年大法廷判決は、平成27年改正法附則7条が次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を規定していること等を指摘した上で、平成27年改正は、長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに、更なる較差の是正を指向するものと評価することができるとし、このような事情を総合すれば、平成28年選挙当時の選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと判示した。そして、前記1のとおり、令和2年大法廷判決は、令和元年選挙が平成29年大法廷判決の言渡しの後に成立した平成30年改正法における本件定数配分規定の下で実施されており、その投票価値の不均衡については、同判決の判示した事情も踏まえ - 21 -た検討がされるべきであるとした上で、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに維持していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないものの、平成30年改正の経緯及び内容等を踏まえると、平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、その実現は漸進的にならざるを得ない面があるから、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとし、このような事情を総合すれば、令和元年選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違 差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないとし、このような事情を総合すれば、令和元年選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと判示した。本件選挙は、平成29年大法廷判決の言渡しの後に成立した平成30年改正法における本件定数配分規定の下で、令和2年大法廷判決の後に実施されており、その投票価値の不均衡については、平成29年大法廷判決及び令和2年大法廷判決の判示した事情を踏まえた検討がされるべきである。 そこで検討すると、令和2年大法廷判決において、平成30年改正法において立法府における取組が大きな進展を見せているとはいえないと指摘されたにもかかわらず、令和2年大法廷判決後もそれが大きな進展を見せているとはいえず、本件選挙当時において、令和元年選挙当時と比較すれば僅かに選挙区間の較差が大きくなったことが認められる。しかしながら、平成30年改正は、その改正の経緯及び内容等を踏まえると、参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持してではあるが較差を是正し、平成28年選挙当時の最大較差3.08倍を、令和元年選挙及び本件選挙において、いずれも僅かながら縮小させており、数十年にわたって5 - 22 -倍前後で推移してきた最大較差を縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができる。また、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は 。また、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面がある。そして、立法府において、令和3年5月14日、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するために参議院改革協議会が設置され、令和4年6月までの間、各会派からの14名の協議員によって、参議院の在り方、参議院議員選挙制度の改革、議員の身分保障等について、合計13回にわたって議論が重ねられ、最終的に各会派の意見の一致には至らなかったものの、本件選挙後には、参議院選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について速やかに協議を開始し、更に議論を継続することが確認された上、同年5月及び6月に開かれた参議院憲法審査会においても、二院制を採用した憲法の趣旨を踏まえ、いかなる具体的な選挙制度によって、その趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させるかについて議論が行われている。そうすると、立法府において、未だ、較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない。 以上のような事情を総合すれば、本件選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 これに対し、原告らは、令和3年に設置された参議院改革協議会において、各会派は、平成25年以降継続的に行われてきた選挙制度改革の実現に向けて、具体案を作成し、かつ、これらにつき議論することを怠っており、立法府は、本件選挙の時点で、もはや都道府県を選挙区の単位とする選挙制度の仕組み自体を見直す 的に行われてきた選挙制度改革の実現に向けて、具体案を作成し、かつ、これらにつき議論することを怠っており、立法府は、本件選挙の時点で、もはや都道府県を選挙区の単位とする選挙制度の仕組み自体を見直すなど、是正を指向する姿勢を失っており、令和2年大法 - 23 -廷判決に照らしても、本件選挙は違憲状態である旨主張するが、上記⑴に照らし、採用することはできない。 4 以上のとおりであるから、本件定数配分規定は、本件選挙当時、憲法に違反するに至っていたということはできない。 また、原告らのその余の主張について検討しても、上記判断を左右するに足りないといわざるを得ない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 裁判長裁判官土田昭彦 裁判官西野光子 裁判官秋吉信彦

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