- 1 -令和6年3月22日宣告 東京高等裁判所第3刑事部判決令和3年第1736号 収賄、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(被告人A)、収賄各被告事件(被告人B) 主 文5本件各控訴を棄却する。 理 由第1 事案の概要及び控訴趣意1 事案の概要本件は、10⑴ 国土交通副大臣として、国土交通大臣の命を受けて、道路、航空、北海道開発及び観光関係施策の総括等の職務に従事するとともに、内閣府副大臣として、特定複合観光施設区域(IR)の整備に関する事務について、担当する大臣を補佐する職務に従事していた被告人A及びその政策担当秘書であった被告人Bが、共謀の上、15ア C、D及びEから、a社が沖縄県及び北海道虻田郡留寿都村において特定複合観光施設の設置運営事業を行うために有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、平成29年9月1日、被告人A管理の普通預金口座に200万円の振込入金を受け(原判示第1の1)、20イ C、D及びEから前記趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、同月28日、東京都千代田区所在の衆議院第一議員会館●●●号室の被告人Aの事務所(以下「会館事務所」という。)において、現金300万円の供与を受け(原判示第1の2)、ウ C、D及びEから前記趣旨の下に供与されるものであることを知りなが25ら、同年12月27日から同月29日までの間、中華人民共和国広東省深圳 - 2 -及び同国マカオ特別行政区への旅行の招待を受け、これに要した航空運賃、宿泊代及びカジノにおける遊興費等合計182万5054円相当額の財産上の利益の供与を受け(原判示第1の3)、エ C、D、E及びFから、a社及びb株 政区への旅行の招待を受け、これに要した航空運賃、宿泊代及びカジノにおける遊興費等合計182万5054円相当額の財産上の利益の供与を受け(原判示第1の3)、エ C、D、E及びFから、a社及びb株式会社が留寿都村において前記事業を行うために有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与され5るものであることを知りながら、平成30年2月10日から同月13日までの間、被告人Aの妻子と共に留寿都村等への旅行の招待を受け、これに要した航空運賃及び宿泊代等合計76万0725円相当額の財産上の利益の供与を受け(原判示第1の4)、もっていずれも被告人Aの職務に関して賄賂を収受し、10⑵ 令和2年1月から同年2月にかけて前記⑴の各事件で起訴され、同月12日から保釈されていた被告人Aが、原判示第1の2(前記⑴イ)の収賄被告事件に関し、その現金供与の際に被告人Aがいなかった又はいなかった可能性があるなどのE及びDの記憶に反する虚偽の証言をすることの報酬として、ア G及びHと共謀の上、Eに対し、同年6月7日、那覇市内のホテルにお15いて、継続的な経済的利益の供与の申込みをし、さらに、同年7月14日、同市内のH方において、現金500万円の供与の申込みをし(原判示第2の1)、イ I及びJと共謀の上、Dに対し、同年6月27日、同市内のホテルにおいて、現金1000万円の供与の申込みをし、さらに、同年7月22日、同市20内のホテルにおいて、現金2000万円の供与の申込みをした(原判示第2の2)、という事案である。 原審において、被告人両名及びその弁護人は、本件各公訴事実を全て争い、いずれも無罪である旨主張したが、原判決は、罪となるべき事実として、お25おむね公訴事実(訴因変更後)のとおりの上記各事実を認定し、被告人Aを懲 両名及びその弁護人は、本件各公訴事実を全て争い、いずれも無罪である旨主張したが、原判決は、罪となるべき事実として、お25おむね公訴事実(訴因変更後)のとおりの上記各事実を認定し、被告人Aを懲 - 3 -役4年、追徴758万5779円(求刑・懲役5年、追徴同額)に、被告人Bを懲役2年・4年間執行猶予(求刑・懲役2年)に処した。 2 控訴趣意等本件各控訴の趣意は、被告人Aについては、弁護人K1(主任)作成の控訴趣意書及び各控訴趣意補充書(以下、これらを「Aの控訴趣意書」などとい5う。)に、被告人Bについては、弁護人K2(主任)、同K3及び同K4連名作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書(以下、これらを「Bの控訴趣意書」などという。)に各記載のとおり、いずれも訴訟手続の法令違反、事実誤認の主張であり、これらに対する答弁は、検察官田能英作成の答弁書のとおりである。 10第2 原判示第1の1(200万円の振込入金)に関する事実誤認の論旨(被告人両名関係)について1 論旨要するに、被告人Aの論旨は、被告人Aは、原判示第1の1の200万円が振込入金された事実を知らず賄賂の認識がなく、被告人Bとの共謀もない、被15告人Bの論旨は、講演料として振り込まれた上記200万円に賄賂の趣旨はない、として原判決には事実の誤認がある、というのである。 2 原判決の判断の要旨原判決は、要旨次のとおり説示し、各論旨と同様の各被告人の原審弁護人の主張を排斥して、原判示第1の1の事実を認めた。 20⑴ 原判示第1の1に至る経緯として、以下の事実が認められる。 a社は、L(CEO)の下で、平成28年末頃から、C(副社長)、D及びE(いずれも同社顧問)らが中心となって日本でのIR事業参入を目指して活動していたところ、Eは、国会 、以下の事実が認められる。 a社は、L(CEO)の下で、平成28年末頃から、C(副社長)、D及びE(いずれも同社顧問)らが中心となって日本でのIR事業参入を目指して活動していたところ、Eは、国会議員との人脈を築いて上記事業参入を支援してもらおうと考え、いわゆるIR推進法成立時の衆議院内閣委員長を務めた被25告人Aの紹介を受け、平成29年5月、L及びCらが会館事務所で被告人Aと面 - 4 -会し、a社がIR事業参入を目指していることなどを伝えた。同年6月、Eは、被告人Bに対し、50万円の講演料を提示して、沖縄県で開催されるa社主催のIR関連のシンポジウムにおける被告人Aの基調講演等を依頼し、承諾を得た。 同年8月4日、被告人Aは、上記シンポジウム後、被告人Bを伴ってL、C及5びEらと飲食した際、国土交通副大臣就任の内示を受けたなどと同人らに話した。Lらa社側は、被告人AがIR担当の副大臣になると知って、そのより強い後押しを期待し、関係を深めるため、上記講演料を200万円に増額することを決め、Eは、同月5日夜、被告人Bに対し、被告人Aの副大臣就任祝いとして講演料を50万円から200万円に増額したいと電話で伝えて被告人B10の了承を得た。同月7日の被告人Aの国土交通副大臣兼IR担当内閣府副大臣就任を受け、Eは、同月8日、副大臣就任祝いとして講演料を200万円に増額した旨を記したメッセージを被告人Bに送るなどし、同年9月1日、被告人Aが管理する株式会社c名義の預金口座に200万円を振込入金した。 ⑵ 賄賂性及び被告人Bにおけるその認識の有無15200万円の振込入金は、講演料名目であっても、上記の経緯で顕著な増額がされ、副大臣就任祝いという増額の趣旨も明示されている以上、a社がIR事業に参入するために有利かつ便宜 の認識の有無15200万円の振込入金は、講演料名目であっても、上記の経緯で顕著な増額がされ、副大臣就任祝いという増額の趣旨も明示されている以上、a社がIR事業に参入するために有利かつ便宜な取り計らいを受けるべく、直接の職務権限を有する被告人Aとの関係を深めることを主目的として供与されたもの、すなわち賄賂であったことは明らかである。講演等の対価の趣旨が併存して20いるとしても、就任祝い部分と講演料部分の区別なく一体のものとして供与された以上、その全部が不可分的に賄賂に当たる。 そして、被告人Bは、当時a社がIR事業参入を目指していることを認識しており、その上で増額の趣旨を明示したEのメッセージを閲読するなどしたと認められるから(原審乙8添付資料6)、この200万円の賄賂性を認識し25ていたことは明らかであり、これと同旨の被告人Bの検察官調書には高い信用 - 5 -性が認められる一方、就任祝いではなく講演の対価にすぎないと認識していた旨をいう被告人Bの公判供述は信用できない。 ⑶ 被告人Aの認識及び被告人両名の共謀の有無被告人Bは、検察官調書において、被告人Aに対し、シンポジウムの日時場所や内容のみならず、50万円の講演料についても平成29年6月中に報告5して了承を得ており、更に同年8月中旬頃には、副大臣就任祝いの趣旨で講演料が200万円に増額された旨報告して了承を得、入金確認後にその事実も報告したなどと述べているところ、後述するとおり、被告人Bの検察官調書は、その供述情況等に照らし、全体として信用できる上、本件に関する供述内容を具体的に見ても、増額の事実及び趣旨を被告人Aに報告したと供述する10点は、秘書が支援者から寄附や陣中見舞い等を受け取った場合には、被告人A自身が支援者に謝意を示す必要があ 件に関する供述内容を具体的に見ても、増額の事実及び趣旨を被告人Aに報告したと供述する10点は、秘書が支援者から寄附や陣中見舞い等を受け取った場合には、被告人A自身が支援者に謝意を示す必要があるため、寄附等を受けた事実及びその金額を被告人Aに報告するというA事務所の取扱いに沿う自然で合理的なものといえる。また、事前に講演料の額を報告したと供述する点も、50万円の講演料が予定されているという事実は、シンポジウム当日に被告人Aがa社側に15対し謝辞を述べるなどの適切な対応をするために必要ないし有益な情報といえるから、自然で合理的な内容といえる。他方、上記報告を否定する被告人両名の公判供述は、上記取扱いの趣旨に照らして不自然なもので、同取扱いに反して増額の事実すら報告がされなかった理由につき首肯できる説明もないから、いずれも信用できない。 20以上によると、被告人Aも、被告人Bの報告により講演料の増額の事実及びその賄賂性を認識し、その上で同人と意を通じて200万円の振込入金を受けたものと認められるから、故意及び共謀に欠けるところはない。 3 当裁判所の判断a社側からの当初の講演料の提示、副大臣就任祝いの趣旨による講演料増額25の提示及びその振込入金について、その都度被告人Aに報告して了承を得てい - 6 -た旨の被告人Bの検察官調書は、Eが被告人Bに送ったメッセージやこれに裏付けられたE証言等と整合し、A事務所の取扱いにも沿う自然で合理的な内容であることから信用でき(同検察官調書の証拠能力が、被告人Bの双極性感情障害等を踏まえても、肯定されることは後述のとおりである。)、これらの報告を否定する被告人A及び被告人Bの各原審公判供述はいずれも信用できな5いとして、被告人両名の収賄の故意及び共謀を認めた原判決の 等を踏まえても、肯定されることは後述のとおりである。)、これらの報告を否定する被告人A及び被告人Bの各原審公判供述はいずれも信用できな5いとして、被告人両名の収賄の故意及び共謀を認めた原判決の判断が不合理で誤っているとはいえず、原判決に所論がいう事実誤認はない。以下、所論を踏まえて補足する。 ⑴ 被告人Aの所論は、原判決は、A事務所の取扱いを根拠として、被告人Aに本件講演料の存在やその額を報告する必要があったなどと認定しているが、10同事務所の実態からすれば本件講演料について被告人Bが被告人Aに報告する必要はなかったし、仮に必要性があったとしても、そこから被告人Bが報告をした事実を導くことはできない旨主張する(Aの控訴趣意書68~72頁)。 しかし、原判決は、報告の必要性自体から上記報告事実を推認したものではなく、本件講演の日時場所等と共に講演料の額を被告人Aに伝えるとともに、15副大臣就任祝いとして講演料が増額されたことについても、被告人Aに伝えて了承を得たとの被告人Bの検察官調書中の供述につき、上記A事務所の取扱いの趣旨に照らしても自然かつ合理的な内容で信用できると判断して同供述どおりの事実を認定したものであるし、所論の指摘を踏まえても、その信用性判断に誤りがあるとはいえない。 20また、被告人Aの所論は、被告人BがEから講演料の増額について連絡を受けた際、被告人Aに確認せずに承諾する旨即答をしていることに照らせば、増額に係る講演料が賄賂かもしれないという警戒感を抱いたとはうかがえないし、被告人Bが被告人Aに報告したはずであるとする具体的な根拠は見出せない旨主張するが(Aの控訴趣意書72~73頁)、a社の被告人Aへの接近、25講演料増額等の経緯やA事務所の取扱いに照らせば、増額に係る講演料が賄賂 - はずであるとする具体的な根拠は見出せない旨主張するが(Aの控訴趣意書72~73頁)、a社の被告人Aへの接近、25講演料増額等の経緯やA事務所の取扱いに照らせば、増額に係る講演料が賄賂 - 7 -に当たると認識し、これを被告人Aに報告したとする被告人Bの検察官調書の信用性を認めた原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 所論はいずれも採用できない。 ⑵ 被告人Bの所論は、講演料の相場などというものはなく、200万円が講演料として高額であることを賄賂認定の根拠とした原判決の判断は誤りで5ある旨主張するが(Bの控訴趣意書32~33頁)、原判決は、講演料の多寡のみに着目したわけではなく、当初50万円とされた講演料が、副大臣就任祝いとの趣旨でその4倍に大きく増額されたことを賄賂性の認定の一根拠としているのであって、そうした原判決の判断に誤りはない。 ⑶ 各所論は、被告人Bの検察官調書は信用性を欠く旨主張するが(Aの控10訴趣意書73~77頁、Bの控訴趣意書32~34頁)、被告人Bの検察官調書は全体として信用できるとした原判決の判断が不合理といえないことは後述するとおりであるし、原判示第1の1の事実に関する供述内容を個別にみても信用できるとした原判決の判断に誤りがあるともいえない。 ⑷ その他の所論の主張も採用できず、各論旨は理由がない。 15第3 原判示第1の2(会館事務所における現金300万円の供与)に関する事実誤認の論旨及び訴訟手続の法令違反の論旨(いずれも被告人両名関係)について1 論旨各論旨は、要するに、被告人Aが、原判示第1の2の日時場所において、D20及びEと面会した事実も同人らから現金300万円の供与を受けた事実もなく、被告人両名が収賄を共謀したこともないから、原判決には事実の誤認があ 、被告人Aが、原判示第1の2の日時場所において、D20及びEと面会した事実も同人らから現金300万円の供与を受けた事実もなく、被告人両名が収賄を共謀したこともないから、原判決には事実の誤認がある、というのである。また、各論旨は、被告人Bは、検察官の取調べ当時、双極性感情障害のため入院中で思考制止等の症状があり、かつ、検察官が取調べに当たって上記症状に配慮した形跡がないことなどからして、被告人Bの検察官25調書(原審乙6ないし20、25、42及び43。以下、単に「被告人Bの検 - 8 -察官調書」という場合、これら18通の供述調書を指す。)には特信性も任意性もないのに、これらの証拠能力を肯定して原判示全事実の関係で証拠採用した原審の訴訟手続には法令違反がある旨を主張しているところ、同主張についても、便宜上この項で併せて判断する。 2 原判決の判断の要旨5原判決は、要旨次のとおり説示し、各論旨と同様の各被告人の原審弁護人の主張を排斥して、原判示第1の2の事実を認めた。 ⑴ 原判示第1の1の事件後の経緯として、以下の事実が認められる。 ア 平成29年9月中旬頃、D、E及びCは、a社のIR事業参入への支援を期待する国会議員に対し、衆議院の解散に合わせて選挙資金名目で献金をす10ることを計画し、被告人Aには最多となる500万円以上を供与するとともに、被告人Bにも50万円を交付することなどを決めた。他方、DとEは、上記献金の原資の一部を中抜きしようと企て、同月23日、Dは、Eに対し、「Aさん5 抜き200 Mさん3 抜き100 Nさん2 抜き100 O2 抜き100 Pさん1 抜き100 A秘0.5」などと被告人Aら国会議員515名に対する供与額と中抜き額等を記載したメッセージ(原審甲104添付資料3等)を送 00 Nさん2 抜き100 O2 抜き100 Pさん1 抜き100 A秘0.5」などと被告人Aら国会議員515名に対する供与額と中抜き額等を記載したメッセージ(原審甲104添付資料3等)を送信した。 イ a社は、違法な海外企業からの選挙資金供与とみられないよう、同月26日までに、香港在住のDの知人の関係先口座に約23万米ドル(約182万香港ドル相当)を送金し、上記知人が、D管理の口座へ40万香港ドルを送金20するとともに、香港を訪問したDに対し現金約142万香港ドル(2000万円余相当)を交付した。そして、Dは、上記約142万香港ドルのうち1500万円余相当を日本円に両替した上、同月27日、知人2名の協力の下に香港から日本国内に持ち込んだ。なお、Dは、日本にいる親族に対し、(上記と別の)知人が日本に持ち込む金のインゴットの売却を依頼しており、香港滞25在中に、同知人に対し、その売却代金として、上記現金約142万香港ドル - 9 -のうち500万円相当の香港ドル現金を交付する一方で、来日後の同月28日夕刻に上記親族から約500万円を受領した。 ウ 同月27日、Eは、Dに対し、上記計画に関し、「O先生13:00M先生13:30 どちらも秘書対応。A調整中」、「13:30にA事務所を予定に入れた。」「O事務所が14:00になった。」などとのメッセージ5等を順次送信した(原審甲108添付資料)。衆議院が解散される同月28日(事件当日)朝、Eは沖縄から上京し、e(和菓子屋)のようかん3セットを購入した後、午前10時台に、Dに対し、「13:30のA事務所のアポやから、13:20くらいまでに、衆議院第1議員会館で待ち合わせましょう。」と送信すると、Dが「もうちょい早めにしない?お金むき出しだよ」と10返信し、これに 対し、「13:30のA事務所のアポやから、13:20くらいまでに、衆議院第1議員会館で待ち合わせましょう。」と送信すると、Dが「もうちょい早めにしない?お金むき出しだよ」と10返信し、これに対しEが「了解しました。13:00ね」と返信した。そして、同日午後1時過ぎ頃、Eは、Dに対し、「通行証取ったから、警備の検査を通ってください。1階ロビーにいます。」というメッセージを送信した(いずれも同添付資料)。 エ D及びEは、翌29日夜、札幌市内のホテルで、所持現金残高を確認し15た上、それらを今後の使い道ごとに分けて封筒に入れ、その際、Eは3枚のメモ(うち1枚には「A 500/200」など、1枚には「A300 A秘30 Q100 F(O、 )200」などの記載がある。)を作成し、Dは、複数の100万円の札束を始めとする多額の1万円札や3枚のメモの写真を撮った(原審甲246添付資料)。また、同年11月9日、Eは、自らの携帯20電話のメモ機能を使って、「A3 O1 M1 Q1 N1 P1」とのメモを作成した(原審甲124添付資料)。 ⑵ D及びEの各証言の信用性D及びEは、公判において、両名が、平成29年9月28日午後1時30分頃、会館事務所において、被告人B同席の下、Aに対し、選挙の陣中見舞いと25して現金300万円を供与した旨を各証言した。 - 10 -ア 事件当日に至る経緯との整合性a社が、IR担当副大臣である被告人Aに対し、衆議院解散の機会に現金を供与することを計画し、同社が拠出した事実が発覚しないよう、迂回送金して海外から現金を持ち込む方法でそのための現金が用意された上、D・Eの間で、当日被告人Aと面会したという時刻にほど近い時間帯に至るまで、被告人5Aらに供与する金額及び中抜きする金額、 迂回送金して海外から現金を持ち込む方法でそのための現金が用意された上、D・Eの間で、当日被告人Aと面会したという時刻にほど近い時間帯に至るまで、被告人5Aらに供与する金額及び中抜きする金額、被告人Aとの面会や現金の取扱いに関して具体的なメッセージがやり取りされるなど、面会及び現金供与の準備が行われていることは、前記D及びEの各証言を強く裏付ける事情といえる。 イ 供与先及び金額に関する客観証拠との整合性D及びEは、事件当日、Dが準備した現金のうち300万円を被告人Aに、1050万円を被告人Bにそれぞれ交付し、さらに、同日夜、札幌市内でFと会った際、同人に呼ばれてその場に来たQ議員に100万円を交付したほか、Fに対し、M議員及びO議員分として合計200万円を預けた旨各証言している(これによると、本件当日における供与額の合計は650万円となる。)。 この各証言は、計画段階から現金供与後に至るまで、被告人Aへの供与額が31500万円である旨の記載を度々残し(前記原審甲104、同甲246、同甲124参照)、事件翌日の夜に行われた残金確認においても、被告人A分の現金については供与済みとして扱っていたという客観証拠(同日夜にDが写真撮影した現金及び封筒等の状況等)とよく整合している。しかも、Dが準備・所持していた現金額(約2000万円)及び事件翌日の夜に確認された残金20(1370万円)に関する供述にも客観証拠による一定の裏付けが存在し、この差額も両名が供述する事件当日の供与額(合計650万円)とおおむね符合している。したがって、両名の各証言は、客観証拠のみからでも相当程度認められる現金供与計画の内容、準備現金額並びに事件翌日の夜における残金額及びその整理の状況を全体として整合的に説明するものということが25できる。 両名の各証言は、客観証拠のみからでも相当程度認められる現金供与計画の内容、準備現金額並びに事件翌日の夜における残金額及びその整理の状況を全体として整合的に説明するものということが25できる。 - 11 -ウ 証言相互間の符合前記⑵のD及びEの各証言は、事件当日、議員会館で、Dが持ち込んだ現金をEに渡し、会館事務所で、被告人Bも同席の下、Eが現金在中のe(和菓子屋)のようかんの紙袋を被告人Aに渡したとする核心部分において合致しており、相互に信用性を高め合っている。 5エ 供述経過等D及びEは、捜査段階から一貫して本件の一連の贈賄を認めている。また、自らの公判審理が開始される前に、原判示第2のとおり、多額の対価を提示されて、事件当日の会館事務所での面会の場に被告人Aがいなかったなどという証言をするよう繰り返し働きかけられたにもかかわらず応じておらず、自10身の贈賄被告事件においても従前の供述を維持し、執行猶予付きの有罪判決を受けており、証人尋問に先立ってこの判決は確定している。 オ 以上のとおり、D及びEの各証言は、その経緯、供与先及び金額等について客観的な状況や証拠に強く裏付けられている上、両名の間のみならず被告人Bの検察官調書とも、その核心部分が相互に符合し、供述経過等を見ても15虚偽供述を疑わせる具体的事情がないから、十分信用できる。 ⑶ 被告人Bの検察官調書の証拠能力及び信用性ア 被告人Bの供述情況被告人Bは、捜査段階で、原判示第1の2に関し、事件当日、会館事務所において、被告人Aが被告人Bと共にEらと面会し、Eからe(和菓子屋)の紙袋20を受け取るのを見た旨述べ、その余の賄賂の収受及び被告人Aとの共謀についても認める内容の供述をしていたのに対し、公判ではいずれも否認に転 被告人Bと共にEらと面会し、Eからe(和菓子屋)の紙袋20を受け取るのを見た旨述べ、その余の賄賂の収受及び被告人Aとの共謀についても認める内容の供述をしていたのに対し、公判ではいずれも否認に転じ、原判示第1の2に関しては、同日午後1時30分頃に被告人AがEらと面会した記憶はないなどと述べているところ、関係証拠によれば、被告人Bの供述情況に関し、以下の事実が認められる。 25(ア) 被告人Bは、平成27年9月頃から平成30年9月頃まで被告人Aの政 - 12 -策担当秘書を務めていたところ、同月から同年10月にかけ、躁病と診断されて医療保護入院となった。被告人Bは、同月の退院後、双極性感情障害と診断されて通院治療を受けていたが、令和元年7月頃から本件に関して報道機関の来訪を受けるようになって症状が悪化していき、同年12月7日以降、被告人Bは、自宅の捜索や連日の取調べを受けた。 5(イ) 同月12日、被告人Bは、当時の主治医の紹介で大学病院の精神科を受診し、上記障害により再度医療保護入院となり、令和2年2月7日まで入院(同年1月28日以降は任意入院)した。被告人Bの治療責任者たるR1医師らは、入院当初、取調べのストレスによる病状の悪化を懸念して検察官からの取調べ及び面会の要請を断ったが、被告人Bの病状が改善傾向にあったこと10などから、令和元年12月20日、R1医師及び当時の被告人Bの弁護人の立会いの下、被告人Bと検察官が試行的に面会した。R1医師は、同面会の状況を踏まえ、被告人Bは取調べに耐えられる状態にあると判断して取調べを許可し、同月23日から病院での被告人Bに対する検察官の取調べが開始され、令和2年2月上旬まで続いた。なお、入院時にあったとされる思考制止の症状15は年末に向けて改善し、取調べの中止を検討 べを許可し、同月23日から病院での被告人Bに対する検察官の取調べが開始され、令和2年2月上旬まで続いた。なお、入院時にあったとされる思考制止の症状15は年末に向けて改善し、取調べの中止を検討するほど病状が悪化しなかったため、医師側から取調べの中止を提言することはなく、被告人Bも、入院中、医師らに対して取調べの拒否や中止を申し出たことはなく、取調べ中に医療者を呼んだこともなかった。 (ウ) 被告人両名は同年1月14日に原判示第1の2及び4の各収賄事実で、20同年2月3日に同第1の1及び3の各収賄事実で各起訴されたところ、被告人Bは、同年3月、長年の友人で被告人Aとも付き合いのあったZ1に自分から連絡して同人と会食した際、同人に対し、議員会館で被告人Aと共に2対2で会い、その際、被告人Aが何か受け取り、被告人B自身も現金50万円を受け取った旨や、被告人Aの裁判では検察側の証言に立つかもしれず、気が重い旨25などを述べた(原審第13回公判Z1証言)。 - 13 -(エ) 被告人両名の共通の知人であるSは、同年2月下旬頃、被告人Bから経済的不安を訴えられ、被告人Aに被告人Bへの援助を依頼したところ、被告人Aは、同年3月末、被告人Bの生活費として現金500万円をSに預け、Sは、同年4月、現金500万円を被告人Bに交付した。また、被告人Aは、同年3月頃、Sから被告人Bの就職先の紹介を打診された際、Sに対し、仕事は自分5が持ってくるから同人の関係先で被告人Bを雇えないか、などと述べ、これを受けてSは、同年5月、自らの関係先会社に被告人Bを就職させ、同人に被告人Aから紹介された商品の営業を担当させた(原審甲191ないし193)。 イ 証拠能力及び信用性の判断(ア) 被告人Bは、検察官取調べの当時、双極性感情障害と診断さ 被告人Bを就職させ、同人に被告人Aから紹介された商品の営業を担当させた(原審甲191ないし193)。 イ 証拠能力及び信用性の判断(ア) 被告人Bは、検察官取調べの当時、双極性感情障害と診断されて入院中10であったが、その病状は取調べに耐えられる程度のものにとどまっていたと認められる。また、取調べにより被告人Bに過大な負担が生じる状況に陥ったことはないと推認され、取調べ映像からも、被告人Bの理解力、思考力及び表現力に特段の問題があったとはうかがわれない。担当医師の判断や当時の弁護人の面会状況等に照らすと、検察官において、無理な取調べを行おうとし15ていたとも考えにくく、現に、取調べ映像にも検察官の言動の問題性をうかがわせる点は見当たらない。 (イ) 被告人Bの検察官取調べは、被告人Aの秘書の職を辞した後、当時の弁護人及び家族と面会を重ね、同人らの支援を受ける中で行われた。さらに、被告人Bが、退院後ほどなく、被告人Aとも交流のあるZ1に自ら連絡を取って20検察官調書と同旨の事実を打ち明けた上で、被告人Aの公判でこれを供述することの重圧までも吐露したことにも照らせば、上記入院中の取調べは、自らの記憶に基づいて被告人Aに不利益な事実についても供述することができる心理状態の下で行われたものと認められる。これに対し、被告人Bの公判供述は、令和2年3月以降、被告人Aから大きな経済的利益を受けた後のもので、被告25人Bとしては、被告人Aの意に沿わない供述をすることに強い抵抗感を覚えた - 14 -としても無理からぬところであって、公判廷で同人の面前で供述するとなれば尚更である。これらに照らせば、被告人Bの公判供述は、被告人Aの強い影響の下、同人に不利益な供述をすることが困難な情況においてされたものと認められる。 (ウ 、公判廷で同人の面前で供述するとなれば尚更である。これらに照らせば、被告人Bの公判供述は、被告人Aの強い影響の下、同人に不利益な供述をすることが困難な情況においてされたものと認められる。 (ウ) 被告人Bは、捜査段階において、会館事務所で被告人Aが受け取った紙5袋の中身について、検察官からの再三の質問にもかかわらず、見ていない旨供述し、記憶にある部分に限って認める供述をするにとどまっている。また、被告人Bは、自らが受領した現金の交付態様について、供述を変更しているが、いずれもEの供述内容と異なっており、このように検察官の誘導によるとは考え難い変遷が生じていることは、被告人Bが、検察官の発問に迎合することな10く自らの意思でその当時の記憶に基づいて供述していたことを推認させる。 検察官調書の内容全体を見ても、現金300万円の授受に関する被告人Bの検察官調書は、客観的状況等と整合し、D及びEの各証言ともその核心部分がよく符合している。これに反する被告人Bの公判供述は、客観的状況等に関する合理的な説明というにはほど遠く、記憶がないとする部分も多い上、被告人15両名とりわけ被告人Aに不利益な事実を否定する部分は推測を述べたものにとどまっている。 (エ) 以上のほか、検察官調書に録取された供述内容も併せ考えると、検察官による供述の強制や、誘導ないし示唆への迎合等、任意性を失わせる旨弁護人が主張する事情はなかったと認めることができる。そして、取調べ終了20後に被告人Bが被告人Aから多大な経済的利益を受け、同人に不利益な供述をすることが困難な心理状態に陥った結果、公判廷では明らかに不自然で回避的な供述をするに至ったことも併せ考えれば、特信性も認められる。さらに、同検察官調書の核心部分が客観証拠やEらの供述と符合する合理的なもので 困難な心理状態に陥った結果、公判廷では明らかに不自然で回避的な供述をするに至ったことも併せ考えれば、特信性も認められる。さらに、同検察官調書の核心部分が客観証拠やEらの供述と符合する合理的なものであることなども考慮すれば、その信用性も十分認められる。 25⑷ 被告人Aの事件当日の行動等に関する原審弁護人の主張 - 15 -被告人Aが、①事件当日午後1時12分頃までに昼食会場を出たこと、②その後公用車で国土交通省に帰着し、遅くとも同日午後2時の二、三分前頃には、副大臣室で表敬訪問を受けていたことは容易に認められるところ、弁護人は、被告人Aは、①と②の間の犯行時間帯に議員会館に行っておらず、同日午後1時40分頃に国土交通省に戻った旨主張した上で、㋐A事務所の日程表5に上記Dらとの面会予定が記載されていないことや、㋑被告人Aが当時使用していたスマートフォンのヘルスケアアプリが同日午後1時40分に計測を停止していることが同主張を裏付けているというが、強固な裏付けを伴うD及びEの各証言の信用性を揺るがすものとはいえない。 なお、上記公用車の運転日報の記載(同日午後2時に帰着した旨が記され10ている。)やその正確性に関する公用運転手の供述に加え、上記表敬訪問の時刻を併せ考えると、被告人Aは、同日午後1時55分頃、国土交通省正面玄関に到着したと認めるのが相当であり、被告人Aが同日午後1時12分頃に昼食会場を後にしてから同省に到着するまでの間に会館事務所に立ち寄って、D及びEと面会することは十分可能であったといえる。現金300万円の授受を15否定する被告人Aの供述は、D及びEによる現金供与の準備及び残金の確認・整理を強く裏付ける多数の客観証拠とは相容れないものというほかなく、信用することができない。 ⑸ 以上によれば、 を15否定する被告人Aの供述は、D及びEによる現金供与の準備及び残金の確認・整理を強く裏付ける多数の客観証拠とは相容れないものというほかなく、信用することができない。 ⑸ 以上によれば、被告人Aが現金300万円の供与を受けた事実が認められる。そして、被告人Aとa社との関係性等にも照らせば、この現金供与が被20告人Aによるa社のIR事業参入への後押しを期待する趣旨でされたものであることは明白であるから、被告人両名におけるその認識はもとより、共謀も認められる。 3 当裁判所の判断事件当日、会館事務所で被告人Aと面会し、同人に現金300万円を手交し25たとするD及びEの各原審証言は、a社が衆議院解散の機会に被告人Aらへの現 - 16 -金供与を計画し、海外からの持ち込み等によってそのための現金が準備され、DとEの間で、事件当日の被告人Aとの面会時刻直前まで、A事務所における被告人Aへの現金供与に関する具体的なメッセージがやり取りされたという経緯や、事件翌日夜に撮影された現金、封筒、メモ等からうかがわれる供与用現金の確認状況によって客観的に裏付けられていること、D及びEの各証言は5相互に符合している上、両名とも捜査段階から一貫して一連の贈賄を認め、原判示第2の被告人Aらによる買収工作にも応じず各供述を維持していること等から十分に信用することができ、さらに、被告人Bの検察官調書も、D及びEの各証言と核心部分で符合し、相互に信用性を支え合っているなどとして、D及びEの各証言並びに被告人Bの検察官調書の各信用性を肯定し、他方で、10被告人Bの原審公判供述は、事件当時の出来事について記憶にないとの供述を繰り返すなど具体性に欠ける上、上記客観証拠や自らの検察官調書中の供述の合理的な説明というにはほど遠いもので信用に で、10被告人Bの原審公判供述は、事件当時の出来事について記憶にないとの供述を繰り返すなど具体性に欠ける上、上記客観証拠や自らの検察官調書中の供述の合理的な説明というにはほど遠いもので信用に値せず、事件当時、会館事務所には行かずに全国町村会館のATMに立ち寄って残高照会をしたなどとして上記面会及び現金の授受を否定する被告人Aの原審公判供述も信用できな15いとした原判決の判断に不合理なところは見当たらない。また、A事務所の予定表や被告人Aのヘルスケアアプリに関する各所論を踏まえても、被告人Aは、同日午後1時55分頃に国土交通省正面玄関に到着したと認められ、同日午後1時12分頃に昼食会場を後にしてから同省正面玄関に到着するまでの間に、会館事務所においてD及びEと面会することは可能であったとした原判決20の判断も不合理でなく、原判示第1の2の事実を認定した原判決の判断に論理則、経験則等に照らして不合理なところはない。 そして、R1医師の原審証言等に基づき、検察官調書作成当時の被告人Bの病状は取調べに耐え得る程度のものであったと認めた上で、取調べの経過及び状況のほか、原判示第1の各収賄により被告人両名が起訴され、被告人Bが25退院した後に、同被告人が、被告人Aとも交流のある知人に対して検察官調書 - 17 -と同旨の事実を打ち明けていることなどを考慮して、被告人Bの検察官調書の任意性を肯定し、さらに、被告人Bの原審公判供述は被告人Aから大きな経済的利益を受けた後のものであることなども併せ考慮して、同供述調書の特信性を肯定した原判決の判断に不合理なところはなく、同供述調書を採用した原審の訴訟手続に法令違反があるともいえない。 5以下、各所論を踏まえて補足する。 ⑴ D及びEの各証言の信用性に関する所論について 原判決の判断に不合理なところはなく、同供述調書を採用した原審の訴訟手続に法令違反があるともいえない。 5以下、各所論を踏まえて補足する。 ⑴ D及びEの各証言の信用性に関する所論について各所論は、事件当日、会館事務所において、被告人Aに現金300万円を手交した旨のD及びEの各証言は信用できないと主張する。 ア 事件当日に至る経緯との整合性等に関する所論(Aの控訴趣意書31~1034頁、Bの控訴趣意書4~6頁)について各所論は、Dらが被告人Aと面会したことを直接裏付ける客観証拠はなく、上記各証言と上記経緯が整合しているのは、被告人Aら国会議員に現金を供与する計画を立て、Eらが議員会館を訪問したことといった限度にとどまり、被告人Aと面会して現金300万円を供与した旨を述べる両名の証言部分の裏付15けとはならない旨主張するが、各所論を踏まえても、被告人Aとの面会や同人への現金供与に関して種々の準備がされていたことや事件翌日夜の供与用現金の確認状況等により、D及びEの各証言の信用性が強く裏付けられているとした原判決の判断に不合理なところはない。 イ D及びEの各証言と客観証拠との整合性に関する所論(Aの控訴趣意書2034~44頁、同令和5年7月20日付け控訴趣意補充書5~11頁、Bの控訴趣意書6~15頁)について(ア) 各所論は、Dは、捜査段階では、500万円相当の香港ドルを知人に交付したかどうか覚えていない旨供述しており、来日前に、知人に対し(日本に持ち込む金のインゴットの売却相当額として)上記香港ドルを交付した25とのDの原審証言(前記2⑴イ)が疑わしいことからすると、事件翌日夜に撮 - 18 -影された現金1370万円はDが日本に持ち込んだ現金の残り全てではなく、Dが所持金の一部を隠してEに示さな とのDの原審証言(前記2⑴イ)が疑わしいことからすると、事件翌日夜に撮 - 18 -影された現金1370万円はDが日本に持ち込んだ現金の残り全てではなく、Dが所持金の一部を隠してEに示さなかった可能性があるとして、同金額はD及びEの各証言の裏付けとならない旨主張する。 しかし、Dは、原審公判で、取調べ時には思い出せなかったものの、今は、知人に500万円相当の香港ドルを渡していたとはっきりと分かっている旨5証言しているところ(原審第5回公判D証言44頁)、原判決(14~15頁)は、Dの捜査段階における上記供述は、事件から2年余り後の、しかも事件翌日夜に撮影された現金やメモ等の写真(原審甲246添付の各資料)が未発見の段階におけるものであり、その後発見された同写真を手掛かりに記憶を喚起し整理した結果、原審公判で供述を変更するに至ったというDの説明は首10肯できるとして上記D証言に沿う事実を認定しており、各所論の指摘を踏まえても、原判決の同判断が不合理とはいえない。 (イ) 事件翌日夜に撮影された封筒やメモに関し、①各所論は、上記メモ(原審甲246添付資料5-1)のうち左端のものをみると、供与予定の合計200万円をFに預け終えたと両名が証言するM議員及びO議員に係る各記15載にのみチェックマーク(✓)が付されており、「A 500/200」の記載に同マークがないことは、被告人Aに現金を交付していないことを示していると解されるし、②被告人Aの所論は、同メモのうち右端のものにある「保留550」との記載は、各封筒(同添付資料3-1)に書かれた「保 250」及び「保 T 300」の合計額であると推認されるところ、そのうち「保20250」は、同日後に被告人両名に対して渡すかもしれない現金を意味するものと解されるなどと指摘し 書かれた「保 250」及び「保 T 300」の合計額であると推認されるところ、そのうち「保20250」は、同日後に被告人両名に対して渡すかもしれない現金を意味するものと解されるなどと指摘して、E及びDの各証言が上記メモ等とよく整合するとした原判決を論難する。 しかし、原判決(15~16頁)は、本件翌日夜の時点での供与用現金の残額は1370万円で、これを、供与未了であったN及びP分各100万円、T25分300万円、a社に予備費として報告する250万円、報告しない予備費2 - 19 -00万円並びにD及びEが領得する各210万円に分け、領得分合計420万円以外は封筒に入れて整理した旨のD及びEの各証言(原審第5回公判D証言30頁以下、同第2回公判E証言43頁以下)について、同夜撮影された現金(原審甲246資料2-1)及び4枚の封筒(それぞれ「P N」「保 250」「保 T 300」「帳 200」と記載され、厚みのある内容物が入5っている。同資料3-1)の各状態やメモの記載(「保留 550 N100P100」「D210 E210」「帳尻 200」などとの記載がある。)を合理的に説明するもので十分信用できるとした上で、上記残金確認結果からすると、供与未了分として現金入りの封筒まで用意されたNらへの供与計画分と異なり、被告人両名への供与に係る部分については供与済みと扱10われていたことが明らかであるなどと判断しており、上記メモのうち中央のものには「A300 A秘30 Q100 F(O、 )200」などとの記載があり、Dが、同メモはその時点で議員らに渡し済みの金額を書いたものである旨証言していること(原審第5回公判D証言39頁)に照らしても、原判決の上記判断に誤りはない。そして、原判決は、同メモは専らD及びEの確認、 同メモはその時点で議員らに渡し済みの金額を書いたものである旨証言していること(原審第5回公判D証言39頁)に照らしても、原判決の上記判断に誤りはない。そして、原判決は、同メモは専らD及びEの確認、15整理のために作成された極めて私的なもので、体裁も記載も整っていない上、チェックの記号自体も多義的なものであるから、同記号がないことのみをもって供与未了を示すものとみるのは無理があるなどと説示して所論①と同旨の原審弁護人の主張を排斥しており、原判決の同判断に不合理な点はない。 また、所論②について、Eは、被告人Aら以外に、T議員には陣中見舞いを渡し20たいが会えるルートがなかったので、同議員に会えた場合に備えて予備で300万円を残すとともに、今後のロビー活動上現金が必要になる場合もあるかもしれないと思って250万円を残した、これらを合わせたのが「550」である旨証言しており(原審第2回公判E証言30、45頁)、その信用性を疑わせる事情は見当たらない。各所論は採用できない。 25(ウ) 各所論は、①事件当日のE・D間のメッセージは「13:30にA事務 - 20 -所」を訪問するというものであって、「A先生」などとの表記はないから、被告人A個人との面会を指すものではない、②「Aさん5 抜き200」などとの事件前のメッセージについても、EとDとの間でやり取りされた供与計画が、中抜きも含めて、都度変更されていることからして推認力に乏しい上、一見してD及びEの各証言と整合するものではなく、検察官による証人テストの際5の検討の結果、整合するような説明が付加されたにすぎない、③平成29年11月にEが作成したメモは、事件当日から1か月以上経過した後に、なぜこのようなものを作成したのか不明であって証明力に乏しいなどとして、上記メッセ するような説明が付加されたにすぎない、③平成29年11月にEが作成したメモは、事件当日から1か月以上経過した後に、なぜこのようなものを作成したのか不明であって証明力に乏しいなどとして、上記メッセージ及びメモがD及びEの各証言を裏付けているとはいえない旨主張する。 10しかし、①及び②(メッセージ)については、所論の指摘を踏まえても、各メッセージは、事件当日午後1時30分頃に会館事務所で被告人Aに面会し現金300万円を供与した旨を述べるD及びEの各証言を強く裏付けるとした原判決の判断が不合理であるとはいえない。③(E作成のメモ)についても、「A3 O1 M1 Q1 N1 P1」という上記メモの記載内容がD及びE15が供述する国会議員らへの現金分配状況と整合しているとの原判決の評価に誤りはない上、自らの携帯電話に備忘のためにメモしたとのE証言(原審第2回公判E証言38頁)も不自然とはいえず、同メモがD及びEの各証言の信用性を裏付ける一事情になるとした原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 所論は採用できない。 20ウ D及びEの各証言と整合しない事実の評価の誤りをいう所論(Aの控訴趣意書44~49頁等、Bの控訴趣意書6、13~16、24~25頁)について各所論は、①DとEが、a社に対し、事件当日に被告人Aと面会し、同人に現金300万円を供与したことを報告したメッセージ等は存在せず、面会及び25供与が事実であれば報告の痕跡がないのは奇異である、②多忙な衆議院解散 - 21 -当日に議員と面談しようとするとは通常考えにくく、A議員の当日の予定からして、面会場所を会館事務所としたのは不自然である、③原判決は、外国企業から選挙資金の提供を受けたことが発覚すれば、社会的に批判にさらされかねないことに照らすと、入金履歴が 、A議員の当日の予定からして、面会場所を会館事務所としたのは不自然である、③原判決は、外国企業から選挙資金の提供を受けたことが発覚すれば、社会的に批判にさらされかねないことに照らすと、入金履歴が残らない方法をとるのは当然である旨説示するが、そのようなリスクを回避するため、被告人Aが現金300万円を5受領しない可能性があることを原判決は見落としているし、入金履歴についても、Eの関係先日本法人等から入金すれば問題にならないのであるから、上記原判決の説示は不合理である旨指摘する。 しかし、①(a社への不報告)については、被告人Aとの面会及び現金供与事実を述べるE及びDの各証言並びにこれらに整合する各証拠の内容や、Cらa10社側が計画どおり被告人Aに献金されたと認識していたとうかがわれること(原審甲87)に照らし、上記面会及び現金供与が実現しなかったとの疑いを生じさせるとまではいえない。②及び③(面会及び現金交付の不自然性)については、原判決(13頁)も指摘するように、Dらには解散後最も早く献金を行うことで被告人Aに強く印象を残したいとの思惑があったと認められる15から、被告人Bが検察官調書で述べるとおり(原審乙10)、Dらが、被告人Bに対し、衆議院解散当日にどうしても被告人Aに会いたいので日程調整をしてほしいなどと申し入れ、被告人B及び同人からの報告を受けた被告人Aが、DとEは陣中見舞い名目で現金を持ってくるのではないかと考えて、同日午後1時30分からの面会予定を設定することが不自然とはいえないし、そのよ20うな資金供与の趣旨等からすれば、被告人Aに直接現金を手交することが不合理であるともいえない。所論はいずれも採用できない。 エ 証言相互間の符合等に関する所論(Aの控訴趣意書49~50頁、Bの控訴趣意書15~16頁) からすれば、被告人Aに直接現金を手交することが不合理であるともいえない。所論はいずれも採用できない。 エ 証言相互間の符合等に関する所論(Aの控訴趣意書49~50頁、Bの控訴趣意書15~16頁)について被告人Aの所論は、D及びEの各証言には多くの点で不一致があり、特に被25告人Bに対する現金交付の状況や会館事務所での滞在時間に関する証言の齟齬 - 22 -は、各証言の信用性を大きく減殺させる旨主張し、被告人Bの所論は、両名の証言が核心部分で符合するのは口裏を合わせた可能性があるから重要ではないなどとして、両名の証言は信用できない旨主張する。 しかし、原判決(19頁)は、被告人Aに現金300万円を供与した旨をいうD及びEの各証言には、議員会館内でDがEに現金を渡した場所、Eが現金供5与の準備のためトイレに入った階、会館事務所での待ち時間、被告人Aとの面会の後に、別の国会議員の事務所を訪れたか否かなどの点に齟齬があることを踏まえた上で、時の経過による記憶の減退や混乱等を考慮すれば、いずれも些末な点の齟齬にすぎず、被告人Aに現金300万円を直接渡した旨などをいうD及びEの各証言の核心部分の信用性を揺るがすものではないとしており、10所論の指摘を踏まえても、原判決の同判断が不合理であるとはいえない。 オ その余の所論について(ア) 被告人Aの所論は、被告人Aとの面会に関するD及びEの各証言は極めて抽象的かつ曖昧で、体験者の供述とは考えられない旨主張するが(Aの控訴趣意書50~51頁)、原判決(19頁)は、D及びEが述べる現金供与の状15況には臨場感に乏しい面があることは否めないが、事件当日の出来事を全て鮮明に記憶していることはそもそも期待できないなどとして両名の各証言の信用性を肯定しており、そのような原判決の判 供与の状15況には臨場感に乏しい面があることは否めないが、事件当日の出来事を全て鮮明に記憶していることはそもそも期待できないなどとして両名の各証言の信用性を肯定しており、そのような原判決の判断が不合理であるとはいえない。 (イ) 各所論は、D及びEは、a社から受領した金銭の一部を横領しているこ20とは明らかであるから、両名による被告人Aへの供与分全額の横領等を疑う合理的理由はない旨の原判決の判断は不合理であると主張し、さらに被告人Bの所論は、D及びEは、事件当日、会館事務所で被告人Aと会えず現金300万円を渡すこともできなかったが、被告人Aに現金を供与していないとは説明しにくかったことから、a社に対して被告人Aに現金を供与したと説明し、渡せ25なかった現金300万円はD及びEで分けることにしたものと推察されるとも - 23 -主張する(Aの控訴趣意書51~52頁、Bの控訴趣意書12~13、17~20頁)。 しかし、中抜きの計画まで共有していたD・E間のメッセージのやり取りにおいて、互いに事実や意図を隠蔽する必要はなく、各人の認識どおりの記載がされたと考えられるところ、平成29年9月23日にDがE宛てに送信した5メッセージの記載(「Aさん5 抜き200」)等からすれば、当時、D及びEが、被告人Aに500万円を供与すると装いつつ200万円を中抜きするという認識であったことは明らかで、同時点において、被告人A分全額を領得等する意図が両名にあったということは想定できない(したがって、当初は800万円としていた被告人A分を500万円に減額した旨a社側に報告したと10述べるDの証言(原審第5回公判D証言7頁等)の信用性にも疑問はない。)とし、その後の経緯をみても、面会時刻の直前までのDとEのメッセージのやり取りや 00万円に減額した旨a社側に報告したと10述べるDの証言(原審第5回公判D証言7頁等)の信用性にも疑問はない。)とし、その後の経緯をみても、面会時刻の直前までのDとEのメッセージのやり取りや事件翌日夜の残金整理(被告人両名分が供与済みであることが前提となっている。)からすれば、同月23日の上記メッセージ後に被告人A分の現金全額の横領を思い立って実行したとも考えられないとした原判決(2015~22頁)の判断が不合理とはいえない。各所論はいずれも採用できない。 また、各所論は、D及びEが、a社に対する上記300万円の横領等の責任を免れるために虚構の贈賄をあえて認めるとは考えられないとする原判決の判断は不合理である旨主張するが(Aの控訴趣意書52~53頁、Bの控訴趣意書20~21頁)、そもそも所論のいう横領等があったとの合理的疑いが20ないことは差し置いても、a社に対する横領等よりも、IR事業という政府の大規模な施策に関し行われた外国企業から現職副大臣への贈賄の方がはるかに社会的関心の高い事案であり、その実行役とされれば、上記横領等が明るみに出た場合よりも深刻な社会的制裁を受け、社会経済生活に大きな支障をきたすであろうことは容易に予想できるから、a社に対する横領等の責任を免25れるために虚構の贈賄をあえて認めるとは考えられないとした原判決(23 - 24 -頁)の判断が不合理であるとはいえない。 所論のその他の主張を検討しても、D及びEの各証言の信用性を肯定した原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 ⑵ 被告人Bの検察官調書に関する所論(Aの控訴趣意書53~66頁、Bの控訴趣意書22~24頁、同控訴趣意補充書)について5ア 被告人Bの検察官調書は刑訴法321条1項2号の特信性を欠くなどと主張する被告人Aの所 書に関する所論(Aの控訴趣意書53~66頁、Bの控訴趣意書22~24頁、同控訴趣意補充書)について5ア 被告人Bの検察官調書は刑訴法321条1項2号の特信性を欠くなどと主張する被告人Aの所論について所論は、検察官の取調べを容認したR1医師は、取調べにより病状が悪化したなどとは認めたくない立場にあることなどからすると、同医師の証言に依拠し、原審弁護人請求のR2医師の意見を証拠価値に乏しいとして排斥した原10判決の判断は誤っている旨主張する(Aの控訴趣意書54~66頁)。 しかし、原判決(27~28、32頁)は、R1医師は、精神科医として双極性感情障害につき豊富な臨床経験を有し、直接の診療を含む十分な基礎資料に基づいて証言したと認められる上、上記取調べの録音録画を見ると、被告人Bは、検察官の質問を適切に理解して、相応の時間内に質問とかみ合った15内容の供述をしており、その状況はR1医師が述べる病状と整合しているとして同医師の証言に信用性を認める一方、R2医師の見解は、カルテの記載と取調べ状況の映像のみを基礎資料とし、主に前者を重視して被告人Bの病状を考察した結果を述べたものであることや、被告人Bの入院前の病状に関する記載を入院中のそれと解釈するなど事実経過に関するカルテの記載を一部誤解し20(原審弁28の12頁、同第17回公判R1証言27~28頁等参照)、見解自体も上記映像に現れた被告人Bの言動と整合しないこと(原審第21回公判R2証言36、41頁等)などから証拠価値に乏しいと説示しており、所論を踏まえても、原判決の同判断に不合理なところはない。 所論は、被告人Bには、取調べ開始後の令和2年1月から逸脱(自慰)行為25をするなどの精神的不調が見られ、その症状は、取調べ開始後に著しく悪化 - 25 -して に不合理なところはない。 所論は、被告人Bには、取調べ開始後の令和2年1月から逸脱(自慰)行為25をするなどの精神的不調が見られ、その症状は、取調べ開始後に著しく悪化 - 25 -していることは明らかである旨主張するが、R1医師は、上記逸脱行為について、客観的に見てうつ症状の悪化はなかったので発散行為の一つと捉え、取調べを続けることを認めたなどと証言しており(原審第17回公判R1証言25頁)、同証言に依拠して被告人Bの病状は取調べに耐えられる程度にとどまっていたと認めた原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 5所論はまた、被告人Bのカルテ(診療記録、原審弁26)をみると、同月27日(3頁)には、思考制止が目立ち、冷静な判断力を有しているとは言いがたい旨記されており、思考制止等の症状は同月中ほとんど改善していなかったなどと主張する。しかし、多職種合同カンファレンスに係る上記記載については、R1医師が、医療保護入院を継続するための必要な文言として記し10たもので、必ずしも当時の被告人Bの病状を表していない旨証言しており(上記R1証言28~29頁)、同人のカルテ(原審弁26)には、多職種による検討の結果、医療保護入院を相当とした場合の理由の記載については、しばしば定型的な記載がされ(例えば、同月6日(6頁)や同月20日(2頁)にも上記と同一文言が記載されている。)、同月27日のカルテ(3頁)に15は、上記記載のほか、不眠症状と焦燥感は改善傾向にある旨も記載されていることなどを踏まえると、医療保護入院の継続のためやや誇張とも解し得る記載がされた旨の上記R1証言は、臨床の現場での実態を率直に述べたものとして首肯できるとした原判決(28頁)の判断が不合理であるとはいえない。 所論は、仮に、取調べによって被告人Bの病状が特 し得る記載がされた旨の上記R1証言は、臨床の現場での実態を率直に述べたものとして首肯できるとした原判決(28頁)の判断が不合理であるとはいえない。 所論は、仮に、取調べによって被告人Bの病状が特に悪化したとはいえず、20その限りでは無理な取調べがあったとまではいえないとしても、被告人Bは、検察官の取調べ当時、双極性感情障害により医療保護入院中で、同障害の主要な症状である思考制止及び焦燥感があり、質問を理解して自分の記憶を喚起して応答するということがおよそ期待できない状態にあったのであり、検察官の言いなりになって、供述調書の内容が頭に入らないまま署名したであ25ろうと推認できるなどと主張する。しかし、所論の指摘を踏まえても、被告 - 26 -人は、当時、双極性感情障害と診断されて入院加療中であったものの、担当医師が被告人Bの改善状況や検察官との試行的面会の情況等を踏まえて取調べを許可したという経緯や、取調べ開始後に病状の悪化が認められなかったことからすれば、当時の被告人Bの病状は、取調べに耐えられる程度にとどまっていたと認められるとした原判決(28頁)の判断が不合理であるとはいえ5ない。 なお、所論は、供述状況を立証趣旨として請求された被告人Bの検察官調書(原審乙36ないし40)及び同人の取調べの録音録画記録媒体は、任意性を奪い、不当な誘導等を行って得られた供述を録取したものである上、録音録画は取調べのごく一部のみを記録したにすぎず、著しく不当な偏見を与え10ることになりかねないもので、法律的関連性を欠いているから、これらを採用して取り調べた原審の訴訟手続にも法令違反があるとも主張するが、上記録音録画等の立証趣旨及び採用経過からすれば、原審裁判所は、上記録音録画等を被告人Bの検察官調書の証拠能力及び信用性を検 れらを採用して取り調べた原審の訴訟手続にも法令違反があるとも主張するが、上記録音録画等の立証趣旨及び採用経過からすれば、原審裁判所は、上記録音録画等を被告人Bの検察官調書の証拠能力及び信用性を検討するための資料として採用し取り調べられたものと解され、関連する所論の指摘を踏まえて検討15しても、原審の訴訟手続に所論がいう法令違反はない。 イ 被告人Bの検察官調書は任意性を欠く旨の同被告人の所論について所論は、被告人Bは、被告人Aの秘書として激務を続けたのに、病気を発症するとその職を失い、退職金等も支給されないという冷たい仕打ちを受け、そのような状況下で検察官の取調べを受けたことから、検察官のストーリー20等を自己の記憶に刷り込んでしまったのであり、その検察官調書には任意性が認められない旨主張するが(Bの控訴趣意書22~24頁)、仮に被告人Bが秘書を辞めた経緯等に所論指摘の側面があったとしても、被告人Bの検察官調書作成当時の同人の病状が取調べに耐えられる程度のものであったことなどからすれば、被告人Bが検察官のストーリーどおりに供述したなどとはいえ25ず、その任意性を肯定した原判決の判断は左右されない。 - 27 -ウ 被告人Bの検察官調書の信用性等についてその他の各所論を検討しても、原審の訴訟手続に法令違反があるとは認められない。また、被告人Bの各検察官調書の内容が、関係各証拠からうかがわれる本件各犯行当時の客観的状況やD、Eらの証言とよく符合しており、被告人Aに殊更不利益な虚偽を述べているともうかがわれないこと、前記のとおり、5被告人Bが、被告人両名に対する各収賄の起訴及び自らの退院の後に、被告人Aとも交流のある知人に対し、本件当日の収賄事実について検察官調書と同旨の事実を述べていること等に照らし、その のとおり、5被告人Bが、被告人両名に対する各収賄の起訴及び自らの退院の後に、被告人Aとも交流のある知人に対し、本件当日の収賄事実について検察官調書と同旨の事実を述べていること等に照らし、その信用性を肯定した原判決の判断にも誤りはない。 ⑶ 日程表及びヘルスケアアプリの計測データ等に関する所論について10被告人Aの所論は、A事務所の日程表及び被告人Aの携帯電話のヘルスケアアプリは、被告人Aが事件当日午後1時30分頃に会館事務所に行っていないことを示しているにもかかわらず、原判決が上記各客観証拠の証明力を排斥したのは不合理である旨主張し、被告人Bの所論も、上記日程表を作成した秘書の証言に依拠して原判決の認定を論難する。 15ア 日程表に関する所論(Aの控訴趣意書7~14頁、同令和6年1月30日付け控訴趣意補充書、Bの控訴趣意書24~26頁)について各所論は、A事務所で作成された本件当日の日程表(原審甲199添付資料)にはD及びEとの面会予定の記載はないところ、当日は衆議院解散の日で、多くの予定をこなす必要があることからすると、日程表作成者の記載漏れがあ20ったとは考えにくいし、上記面談予定の記載が漏れていたとすれば、日程表に基づき動き回っていた被告人Aが上記予定に気づくことはないから、いずれにせよ、現金300万円の供与があったとされる時刻に被告人Aが会館事務所にいたはずはないなどと主張する。 しかし、原判決(34~35頁)は、所論と同旨の原審弁護人の主張に対25し、日程表は予定を記載したもので、行動記録ではないこと、当時被告人Aの - 28 -公設第一秘書で、上記日程表の作成管理を行っていたUも、日程表に記載のない来客との面会も行われていたことを否定しておらず(原審第8回公判U証言3頁)、被告人Bも、 当時被告人Aの - 28 -公設第一秘書で、上記日程表の作成管理を行っていたUも、日程表に記載のない来客との面会も行われていたことを否定しておらず(原審第8回公判U証言3頁)、被告人Bも、捜査段階においては、上記面会の予定について、前日に自らが調整したことを自認した上で、自ら又はUの失念により日程表の記載が漏れた可能性がある旨供述していること(原審乙43)などを指摘して、日5程表への不記載は必ずしも面会事実の不存在を示すものではなく、強固な裏付けを伴うD及びEの各証言の信用性を揺るがすものではないと判断しており、被告人Bが、本件面会における陣中見舞い名目の現金供与を想定していたとみられること(原審乙10)等に照らすと、Dらとの面会予定が日程表に記載されなかったことが不自然とはいえないことに鑑みても、原判決の上記判断が10不合理とはいえない。 なお、被告人Bの所論は、Uが、原審公判において、①事件当日、Eらは会館事務所を訪れていないと思われ、②被告人Aが同日昼頃に会館事務所に戻った記憶もない旨証言していることを指摘するが、原判決(35頁)は、①は日程表への不記載からの推測にすぎず、②は記憶がないという趣旨にとどま15っており、上記供述に独立の証拠価値は認められないとしており、そのような原判決の判断に不合理なところは見当たらない。 イ ヘルスケアアプリの計測データに関する所論(Aの控訴趣意書14~30頁、同令和5年3月17日付け控訴趣意補充書1~4頁、同令和5年7月20日付け控訴趣意補充書1~4頁)について20被告人Aの所論は、被告人Aが当時使用していたスマートフォン(iPhone)のヘルスケアアプリは、事件当日午後1時40分頃から約40分間、計測を停止しているから、被告人Aは同日午後1時40分頃には歩行して Aの所論は、被告人Aが当時使用していたスマートフォン(iPhone)のヘルスケアアプリは、事件当日午後1時40分頃から約40分間、計測を停止しているから、被告人Aは同日午後1時40分頃には歩行しておらず、被告人Aが述べるとおり、国土交通省副大臣室に到着し着席していたと認められるとして、原判決が説示するように、被告人Aが、同日午後1時12分25頃に昼食会場を出た後、国土交通省到着までの間に会館事務所に立ち寄り、D - 29 -及びEと面会することはあり得ない旨主張する。 しかし、原判決(35~36頁)は、所論と同旨の原審弁護人の主張に対し、上記ヘルスケアアプリの詳細な作動条件等を明らかにする証拠はないなどと指摘しつつ、事件当日の同アプリのデータ(原審弁17)を具体的にみても、①同アプリが計測結果を記録しているのに、被告人Aが着席するなどし5て歩行していなかった時間帯が複数あり、また、②同アプリは、午後0時5分頃から午後0時25分頃まで計測を停止しているところ、この時間帯は衆議院本会議の終了直後から両院議員総会の開催中に相当しており、被告人Aがスマートフォンを手放していたとも、徒歩移動が全くなかったとも考えにくい上、同総会中は着席、離席及び移動を繰り返していた旨述べる被告人Aの原10審公判供述とも整合しない旨指摘して、同データは、計測時間と停止時間のいずれも被告人Aの動静を正しく反映しておらず、その行動状況に関する認定を左右するほどの証明力を有しないと判断している。 これに対し、同所論は、重要なのは、同アプリが計測を停止している時間帯について、被告人Aが歩行していないといえるか否かであるとした上で、同15アプリの計測停止時間帯に係る上記②の説示に対し、原判決が引用する被告人Aの原審第22回公判供述は不正確なもので る時間帯について、被告人Aが歩行していないといえるか否かであるとした上で、同15アプリの計測停止時間帯に係る上記②の説示に対し、原判決が引用する被告人Aの原審第22回公判供述は不正確なものであって、控訴審で被告人供述による立証を予定しているとおり、実際には、衆議院本会議場の出口近くに座っていた被告人Aは、午後0時5分頃までに両院議員総会の会場に移動して席に着き、午後0時25分頃まで着席していたなどと主張する。 20しかし、答弁書(15~16頁)でも指摘されているとおり、被告人Aは、原審第21回公判(A供述32頁)においては、検察官の質問に対し、代議士会、衆議院本会議、両院議員総会の各会議中は着席していた旨簡潔に応答していたのに、同第22回公判(A供述65~67頁)において、弁護人の質問を受けて前回公判における上記供述を覆し、上記各会議は議員が一同に集ま25る機会ゆえ、議員同士声を掛けたり、立ち話をしたりするために、自分も席 - 30 -を立ったり移動したりして動き回っていた旨を具体的かつ詳細に述べるに至っており、原審第22回公判における被告人供述は、その内容や経緯からして、弁護人とも協議の上十分に記憶を喚起してなされたものとみられるのであって、同供述は記憶違いであったなどとして正反対の事実を主張する上記所論は採用に値しない。 5また、所論に鑑み、同アプリの計測停止時間帯について更に検討しても、㋐同アプリが計測を停止している当日午後1時40分頃から午後2時20分頃までの間、被告人Aは歩行していないとの所論の主張は、原判決(36~37頁)も説示するとおり、当日午後の被告人Aの国土交通省帰着時刻が、被告人Aの公用車運転手Vの証言(原審第8回公判。同省帰着時刻については、帰10着後約一、二分で自分の電波時計を見 決(36~37頁)も説示するとおり、当日午後の被告人Aの国土交通省帰着時刻が、被告人Aの公用車運転手Vの証言(原審第8回公判。同省帰着時刻については、帰10着後約一、二分で自分の電波時計を見て5分刻みで記載しており、当日の運転日報には帰着時刻が午後2時との記載があるから、同帰着時刻は午後1時50分台である旨証言している。この点、被告人Aは、同日午後1時40分頃から午後2時前まで秘書官と打合せをしていたなどと述べているが、多忙な中で十数分を費やす必要のある用務か定かでない上、同打合せの事実を裏付15ける証拠はないことに鑑みても、上記V証言は信用できる。)等により午後1時55分頃であると認められ、被告人Aは、少なくとも同帰着後副大臣室に至るまで歩行したと推認されることと整合しないし、㋑同アプリが当日午後2時30分頃から午後3時57分頃まで計測を停止している点も、被告人Aが当日午後2時半前後に国土交通省を公用車で出て地元のdで降りて、遊説した20り取材を受けたりしたと認められること(原審第18回公判A供述40頁以下、同第21回公判同35頁以下、同甲199添付の日程表)と整合しない。このように、関係証拠によれば、同アプリが計測を停止している時間帯においても、被告人Aは歩行するなどしていた時間帯があることが認められるから、所論が主張するように同アプリの計測停止時間帯には被告人Aは歩行していな25いなどとはいえず、同旨の原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 - 31 -その他、被告人Aの所論は、同アプリが歩行を検知していないときに被告人Aは歩行していないか否かを判断する上で、同アプリの作動原理、作動条件等は必要でない、(上記①の説示に対し)同アプリは、小刻みな停止を逐一まんべんなく休止時間として記録するわけではない、 きに被告人Aは歩行していないか否かを判断する上で、同アプリの作動原理、作動条件等は必要でない、(上記①の説示に対し)同アプリは、小刻みな停止を逐一まんべんなく休止時間として記録するわけではない、などと原判決の説示を論難するが、各指摘を踏まえても、事件当日の同アプリの計測データには被告5人Aの実際の動静と整合しない部分があること等を指摘し、同データによって原判決の認定は左右されないとした判断に誤りはない。なお、同所論は、同アプリが計測した歩数や歩行距離のデータからすれば被告人Aが議員会館に寄ることはあり得ないとも主張するが、同データが被告人Aの歩行状況を正確に反映しているとはいえないから、所論は前提を欠く。 10所論はいずれも採用できない。 ⑷ 結論その他の所論を検討しても、原判決に原判示第1の2に関する事実誤認はなく、原審の訴訟手続に所論がいう法令違反もない。各論旨は理由がない。 第4 原判示第1の3(深圳・マカオ旅行)及び4(ルスツ旅行)に関する15事実誤認の各論旨について1 論旨要するに、被告人Aの論旨は、被告人Aには各旅行の費用を負担する認識があり、収賄の認識も被告人Bとの共謀もない、被告人Bの論旨は、深圳・マカオ旅行の費用はA事務所において支払済みであり、ルスツ旅行の費用は請求が20あれば支払うつもりであったし、被告人両名の共謀もない、として、原判決には事実の誤認がある、というのである。 2 原判決の判断の要旨原判決は、要旨次のとおり説示し、各論旨と同様の各被告人の原審弁護人の主張を排斥して、原判示第1の3及び4の各事実を認めた。 25⑴ 関係証拠によれば、各旅行について、以下の事実が認められる。 - 32 -ア Lは、平成29年10月、Dらと共に会館事務所を訪れて深圳所在 判示第1の3及び4の各事実を認めた。 25⑴ 関係証拠によれば、各旅行について、以下の事実が認められる。 - 32 -ア Lは、平成29年10月、Dらと共に会館事務所を訪れて深圳所在のa社本社とマカオのカジノに被告人Aを招待したいと述べ、被告人Aは応諾した。 被告人両名は、同年12月27日から同月29日まで深圳・マカオ旅行に参加したが、旅費等を支払うことはなく、また、Lは、同月27日夜、被告人Aを始めとする旅行参加者らに対し、カジノで使用するチップを自ら配り、同5月28日には、ショッピングに同行し、被告人Aが購入したエルメスの財布の代金を支払った。 イ a社との提携を検討していたb株式会社常務取締役のZ2は、上記深圳・マカオ旅行に同行し、同旅行中に、被告人Aに対し、ルスツリゾートに招待したいと述べ、被告人Aは妻子と共に旅行することになった。Eと日程等を調整10した被告人Bは、平成30年1月、Eから、往復の航空券はEが手配する旨や、都内・羽田空港間のお車代として、1人当たり片道1万円を用意する旨などを記したメッセージを受信し(原審甲130添付資料2)、同年2月、被告人Aの家族と共にルスツ旅行に参加したが、被告人両名は、原判示の旅費等を支払わなかった。 15⑵ 深圳・マカオ旅行の費用負担に対する認識上記旅行は、被告人AがIR担当内閣府副大臣に就任し、原判示第1の1及び2のとおり、a社が2回にわたって被告人Aに合計500万円を供与した後に、Lの誘いによって実行されたものであり、同社の本社とマカオのカジノが主要な目的地であることなどに照らせば、a社がIR事業に参入するために有20利かつ便宜な取り計らいを受けるべく、IR事業につき直接の職務権限を有する被告人Aを無償で接待する意図の下に同旅行を行おうとしてい 地であることなどに照らせば、a社がIR事業に参入するために有20利かつ便宜な取り計らいを受けるべく、IR事業につき直接の職務権限を有する被告人Aを無償で接待する意図の下に同旅行を行おうとしていることを被告人両名が事前に容易に推察できる状況であったと認められる。旅行の内容も贅沢ぶりが際立っており、L自身が被告人Aのショッピングに同行しその代金まで負担しているから、被告人両名、特に被告人Aが旅行中にこの意図を見25て取ることは一層容易であったといえる。以上によれば、被告人両名は、同 - 33 -旅行がa社側の費用負担による無償接待旅行であることを認識していたものと強く推認され、同旅行に同行したWらが、同旅行を被告人Aのための接待旅行と考えていたことも、この推認を裏付けるものといえる。また、D及びEの各証言並びに被告人Bの検察官調書によると、被告人Bは、被告人Aの了承を得た上、出発直前に被告人Aの後援会口座から128万円を引き出して旅行代金5を支払ったかのように仮装を図ったと認められ、この事実によっても、被告人両名が、同旅行はa社側が費用を負担する無償の接待旅行であると認識していたことが強く裏付けられている。上記旅行の費用は同事務所側で負担するものと認識していたなどとする被告人両名の各公判供述は信用できず、被告人両名のいずれも故意及び共謀に欠けるところはない。 10⑶ ルスツ旅行の費用負担に関する認識ルスツ旅行は、a社の提携相手であるb株式会社幹部が、無償接待の意図が明らかな深圳・マカオ旅行の最中に被告人Aを誘ったことに端を発するものである上、被告人Aの希望により、その家族の分も含め、往復の交通手段、最上級客室への宿泊及び現地における飲食遊興等が丸抱えで提供されたものであ15ることも併せ考えれば、被告人両 に端を発するものである上、被告人Aの希望により、その家族の分も含め、往復の交通手段、最上級客室への宿泊及び現地における飲食遊興等が丸抱えで提供されたものであ15ることも併せ考えれば、被告人両名は、ルスツ旅行が、b株式会社及びa社がIR事業に参入するために有利かつ便宜な取り計らいを受けるべく、直接の職務権限を有する被告人Aを無償で接待する意図の下に行われ、その費用は両社の側において負担するものと認識していたことが強く推認される。被告人Bが、東京における空港へのタクシー代として片道1人1万円を支払う旨の連20絡をEから受けていたことは、被告人Bに係る上記推認を一層強固にするものであり、これらの推認に反する被告人両名の公判供述は、同旅行に至った経緯及び旅行の内容にそぐわない不自然なもので信用できない。被告人両名の収賄の故意及び共謀に欠けるところはない。 3 当裁判所の判断25原判示第1の3及び4に関する原判決の上記判断に論理則、経験則等に照 - 34 -らして不合理なところはなく、原判決に所論がいう事実誤認はない。 以下、所論を踏まえて補足する。 ⑴ 各所論は、被告人A又はA事務所において、各旅行の費用を負担するつもりであったとして種々指摘するが(Aの控訴趣意書77~92頁、Bの控訴趣意書34~37頁)、深圳・マカオ旅行については、a社が、ルスツ旅行に5ついては、a社及びb株式会社が、被告人Aら一行の旅行費用を負担して招待したもので、原判示第1の3及び4の各費用を被告人Aらが負担していないことは明らかである上、被告人Aが、被告人Bに対し、上記各費用の支払について指示や確認を行った形跡が見当たらないことに照らしても、前記2のとおり説示して、各所論と同旨の弁護人の主張を排斥した原判決の判断は左右され10ない Aが、被告人Bに対し、上記各費用の支払について指示や確認を行った形跡が見当たらないことに照らしても、前記2のとおり説示して、各所論と同旨の弁護人の主張を排斥した原判決の判断は左右され10ない。 また、各所論は、深圳・マカオ旅行直前に被告人Aの後援会口座から被告人Bが128万円を引き出したのは仮装ではなく、同金額が旅行費用としてa社側に支払われた蓋然性が高いなどと主張する(Aの控訴趣意書89~91頁、Bの控訴趣意書35~36頁)。しかし、原判決(51~53頁)は、被告人15Bが、平成29年12月7日にD及びEと面談した際、被告人Aが代金を支払った形にするようDから提案され、上記旅行代金を支払った形にすべく被告人Aの後援会口座から128万円を下ろしておく旨被告人Aに報告してその了承を得、上記口座から128万円を引き出し保管したこと、被告人Bが、同旅行後の平成30年3月、平成29年度のA後援会の収支報告書に記載するため、20Eに対し、同旅行代金の領収書の発行を依頼し、Eは、同旅行とは無関係の会社の名義を使って、各領収金額128万円の領収書2通(付された番号が異なる。原審甲127添付資料3-1、2)を作成し、被告人Bに交付したこと(原審乙15等)を認定した上で、深圳・マカオ旅行直前の同後援会口座からの引出額が128万円であったのに対し、後日被告人BからEへの依頼によ25り128万円の領収書が2通作成されており、引出額と領収書記載額の合計 - 35 -とが大きく食い違っている点は、これらが支払を仮装するための行為であったとして初めて合理的に理解できるし(原審乙15参照)、上記食い違いの原因が領収書作成時点におけるEの失念である旨の説明(原審第2回公判E証言86頁)も、そもそも代金支払がなかったことを前提とすれば首肯でき 初めて合理的に理解できるし(原審乙15参照)、上記食い違いの原因が領収書作成時点におけるEの失念である旨の説明(原審第2回公判E証言86頁)も、そもそも代金支払がなかったことを前提とすれば首肯できるなどと説示して、被告人Bは、被告人Aの了承を得た上、出発直前に上記後援5会口座から128万円を引き出して旅行代金の支払の仮装を図ったと認められるとしており、原判決の同判断に誤りはない。 この点、所論は、領収書のうち1通はW分であるから金額に食い違いはなく、このことは、X1(会館事務所の事務員)が、Eから同旅行の請求書を2つ渡され、そのうち1つがW分であった旨証言していることにより裏付けら10れている(原審第12回公判X1証言27頁)とも主張するが、上記X1の証言は、東京都選挙管理委員会に提出済みの収支報告書に、上記領収書2通分の合計256万円がA後援会の旅費として記載されていること(原審乙15添付資料5。被告人Aの地元事務所事務員X2が作成)と整合しないこと等からにわかに信用し難く、各所論と同旨の原審弁護人の主張に対し、上記X1の証言15は、請求書の受領時期やその体裁も、被告人Bへの引継ぎ方法も覚えていないという曖昧なもので、裏付けもなく信用できないとした原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 ⑵ 被告人Aの所論は、深圳・マカオ旅行の際、被告人Aは、Lからカジノ用のチップを受け取っていない旨主張する(Aの控訴趣意書87~88頁)。 20しかし、原判決(55頁)は、所論と同旨の原審弁護人の主張に対し、被告人Aに誘われて深圳・マカオ旅行に同行したWは、旅行1日目の夜、旅行参加者全員がカジノの入口付近にいた際、Lが被告人Aから順にチップを配布し、自身もチップ2枚を受け取ったとして、その状況を具体的かつ詳細に供述しており、その内 行に同行したWは、旅行1日目の夜、旅行参加者全員がカジノの入口付近にいた際、Lが被告人Aから順にチップを配布し、自身もチップ2枚を受け取ったとして、その状況を具体的かつ詳細に供述しており、その内容は、被告人Bの検察官調書及びYの原審証言と符合している25上、a社側が他の招待客のみにチップを供与し、IR担当副大臣の被告人Aに - 36 -供与しないとは考え難く、自然かつ合理的であることから、Wの原審証言は信用できるとして、被告人Aがチップを受領したものと認められる旨判断しており、その判断に不合理なところはない。 また、被告人Aの所論は、被告人Aとしては、エルメスの財布の購入代金をLに支払ってもらったのはその場の雰囲気を壊したくなかったからで、後日、5Lに上記代金相当の返礼をするつもりであったから、賄賂との認識はなかった旨主張する(Aの控訴趣意書88~89頁)。しかし、深圳・マカオ旅行の被告人Aらの費用はA事務所で全て負担するものと認識していた旨の被告人Aの原審公判供述が上記のとおり信用できないこと等からすれば、財布の購入代金について、後日代金相当の返礼をするつもりであったとする被告人Aの供述10部分もにわかに信用し難い上、原判決(56頁)は、上記のとおり、同旅行中に被告人Aに供与された財物及び役務の全てが賄賂に当たると認められる以上、上記財布の代金負担のみを取り出して論じるのは失当であるとして、所論と同旨の原審弁護人の主張を排斥しており、そのような原判決の判断に誤りがあるともいえない。 15さらに、被告人Aの所論は、ルスツ旅行で被告人Aが受けた宿泊の利益に関する原判決の算定を論難するが(Aの控訴趣意書92~93頁)、原審弁護人の主張と同趣旨の所論を踏まえても、被告人Aらが宿泊したホテルを管理するb株式会社幹 ルスツ旅行で被告人Aが受けた宿泊の利益に関する原判決の算定を論難するが(Aの控訴趣意書92~93頁)、原審弁護人の主張と同趣旨の所論を踏まえても、被告人Aらが宿泊したホテルを管理するb株式会社幹部のZ2の供述(原審甲74)に基づき、被告人Aらの宿泊の利益の経済的価値は、同ホテルの最上級客室に同じ日程で宿泊した場合のそれを20下回るものではないなどとして、その価額を合計23万1331円と認定した原判決(57頁)の判断に不合理なところはない。 その他所論が種々主張する点も採用できず、各論旨は理由がない。 第5 原判示第2の1及び2(証人等買収)に関する事実誤認の論旨(被告人A関係)について25論旨は、要するに、被告人Aの証人等買収の故意及び共謀を認めた原判決に - 37 -は事実誤認があるというのであるが、原判示第2の各罪となるべき事実を認めた原判決の判断に不合理なところはなく、原判決に事実誤認はない。 所論は、被告人Aは、原判示第1の2で、E及びDから現金300万円の供与を受けた事実はなく、IやGに対し、当日Eらとは会っていないと言い続けたのも、Eらに真実を述べてもらいたいとの意思からであって、被告人Aには、5証人等買収の故意も共謀もない旨主張するが(Aの控訴趣意書93~94頁)、原判示第1の2記載のとおり、D及びEが、被告人Aに対して現金300万円を供与した事実が認められることは既に述べたとおりであるから、所論は前提を欠き、採用できない。 論旨は理由がない。 10第6 結論よって、刑訴法396条により本件各控訴を棄却する。 令和6年3月25日東京高等裁判所第3刑事部 15裁判長裁判官 安 東 章 裁判官 楡 井 英 夫 20 各控訴を棄却する。 令和6年3月25日東京高等裁判所第3刑事部 15裁判長裁判官 安 東 章 裁判官 楡 井 英 夫 20 裁判官 中 島 経 太
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