平成24(ワ)31523 特許権侵害行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年12月18日 東京地方裁判所
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判決文本文22,199 文字)

- 1 -平成26年12月18日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第31523号特許権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年10月16日判決秋田市<以下略>原告加藤建設株式会社 東京都千代田区<以下略>原告株式会社アースアンドウォーター上記両名訴訟代理人弁護士高橋邦明秋田市<以下略>被告アィ・ランドシステム株式会社東京都墨田区<以下略>被告アイランド株式会社 秋田市<以下略>被告 A秋田市<以下略>被告 B上記4名訴訟代理人弁護士丸山健脇田敬志大森孝参三浦太郎 主文 1 被告アィ・ランドシステム株式会社及び被告アイランド株式会社は,原告株式会社アースアンドウォーターに対し,別紙被告製品目録3記載の節水装置を輸入し,生産し,使用し,譲渡- 2 -し,貸し渡し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しのための展示,譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告アィ・ランドシステム株式会社及び被告アイランド株式会社は,原告株式会社アースアンドウォーターに対し,前項記載の節水装置を廃棄せよ。 3 被告らは,原告加藤建設株式会社に対し,連帯して,59万8628円並びにこれに対する被告アィ・ランドシステム株式会社,被告アイランド株式会社及び被告Aにつき平成24年12月13日から よ。 3 被告らは,原告加藤建設株式会社に対し,連帯して,59万8628円並びにこれに対する被告アィ・ランドシステム株式会社,被告アイランド株式会社及び被告Aにつき平成24年12月13日から,被告Bにつき同月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告株式会社アースアンドウォーターに対し,連帯して,35万円並びにこれに対する被告アィ・ランドシステム株式会社,被告アイランド株式会社及び被告Aにつき平成24年12月13日から,被告Bにつき同月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告らの,その1を被告らの負担とする。 7 この判決は,第1項,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 - 3 - 事実及び理由 第1 請求 1 原告加藤建設株式会社(以下「原告加藤建設」という。)の請求被告らは,原告加藤建設に対し,連帯して,1410万7775円並びにこれに対する被告アィ・ランドシステム株式会社(以下「被告アィ・ランドシステム」という。),被告アイランド株式会社(以下「被告アイランド」といい,被告アィ・ランドシステムと併せて「被告2社」という。)及び被告A(以下「被告A」という。)につき平成24年12月13日から,被告B(以下「被告B」という。)につき同月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告株式会社アースアンドウォーター(以下「原告アースアンドウォーター」という。)の請求(1) 被告らは,別紙被告製品目録1~4記載の節水装置(以下,各目録記載の節水装置を「被告製品1」などという。)を輸入し,生産し,使用し ター(以下「原告アースアンドウォーター」という。)の請求(1) 被告らは,別紙被告製品目録1~4記載の節水装置(以下,各目録記載の節水装置を「被告製品1」などという。)を輸入し,生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しのための展示,譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 (2) 被告らは,被告製品1~4を廃棄せよ。 (3) 被告らは,原告アースアンドウォーターに対し,連帯して,4885万2699円並びにこれに対する被告2社及び被告Aにつき平成24年12月13日から,被告Bにつき同月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要被告アィ・ランドシステムは,被告Aが発明した「流量制御弁」に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の設定登録を受け,その後,本件特許権は,エコライン株式会社(以下「エコライン」という。)を経て原告加藤建設に移転登録された。また,原告アースアンドウォーターは,原告加藤建- 4 -設から本件特許権につき専用実施権の設定登録を受けている。 本件は,(1) 被告2社による被告製品1~4の製造販売等が本件特許権及び専用実施権の侵害に当たり,かかる侵害行為につき被告A及び被告Bが取締役の第三者に対する責任又は独自の不法行為責任を負うとして,① 原告アースアンドウォーターが被告らに対し,特許法100条1項に基づく被告製品1~4の製造販売等の差止め,同条2項に基づく廃棄並びに民法709条,特許法102条2項,会社法429条1項及び民法719条に基づく損害賠償金3785万2699円並びにこれに対する不法行為ないし請求の後の日である各訴状送達日の翌日(被告2社及び被告Aについては平成24年12月13日,被告Bについては同月14日)から各支払済みまで民 償金3785万2699円並びにこれに対する不法行為ないし請求の後の日である各訴状送達日の翌日(被告2社及び被告Aについては平成24年12月13日,被告Bについては同月14日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,② 原告加藤建設が被告らに対し,民法709条,特許法102条3項,会社法429条1項及び民法719条に基づく損害賠償金310万7775円並びにこれに対する不法行為ないし請求の後の日である上記各訴状送達日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(以下,これらの請求を「特許権侵害に関する請求」と総称する。),(2) 被告らによる,原告らが誹謗中傷行為をしている旨を記載した文書の取引先への送付等が不正競争防止法2条1項14号所定の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に該当するとして,原告らが被告らに対し,同法4条に基づく損害金の一部として原告ごとに1100万円及びこれに対する不正競争行為の後の日である上記各訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(以下,これらの請求を「不正競争防止法に関する請求」と総称する。)を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等- 5 -ア原告加藤建設は土木建築工事の設計,施工,監理,請負等を業とする株式会社,原告アースアンドウォーターは節水・節電装置の製造,販売及びその装置の取付施工等を業とする株式会社である。C(以下「C」という。)は,原告加藤建設の代表者である。 イ被告アィ・ランドシステムは不動産の売買,斡旋,仲介,賃貸及び管理に関する業務等を業とする株式会社,被告アイランドは節水装置 社である。C(以下「C」という。)は,原告加藤建設の代表者である。 イ被告アィ・ランドシステムは不動産の売買,斡旋,仲介,賃貸及び管理に関する業務等を業とする株式会社,被告アイランドは節水装置の販売,施工及び管理に関する業務等を業とする株式会社である。 被告Aは平成26年5月7日まで被告アィ・ランドシステムの代表者であった者であり,被告Bは被告アイランドの代表者である。 ウエコラインは,節水・節電装置の製造,販売,施工等を業とする株式会社である。その代表取締役は平成22年7月30日まではCであり,同日被告Aが代表取締役に就任したが,原告加藤建設の招集による平成23年4月12日開催の株主総会において被告Aを解任する旨の決議がされた。エコラインは,同年6月22日の株主総会決議により解散し,清算手続に入っていたが,平成24年1月26日に破産手続開始決定を受け,破産管財人が選任された。(甲6,乙15~17)エ D(以下「D」という。)は,平成23年10月頃まではエコラインないし被告アイランドの代理店として活動していたが,それ以降は原告アースアンドウォーターの節水装置の販売に携わっている。(甲48)(2) 本件特許権ア本件特許権(特許第4100693号,発明の名称「流量制御弁」,平成16年9月7日出願,平成20年3月28日登録)は,被告Aによる発明につき,被告アィ・ランドシステムが特許出願をして特許登録されたものであり,その後,被告アィ・ランドシステムからエコラインへの平成21年11月2日受付の移転登録がされ,さらに,エコラインから原告加藤建設への平成23年6月1日受付の移転登録がさ- 6 -れた。原告アースアンドウォーターは,原告加藤建設から,地域を日本国内全て,内容を本権利に関する全てとする本件専用実施権の設定を ら原告加藤建設への平成23年6月1日受付の移転登録がさ- 6 -れた。原告アースアンドウォーターは,原告加藤建設から,地域を日本国内全て,内容を本権利に関する全てとする本件専用実施権の設定を受け,同年9月29日受付による設定登録を受けた。(甲7)イ被告アィ・ランドシステムは,2005年(平成17年)8月25日,本件特許権の特許出願による優先権を主張して韓国において特許出願をし,2008年(平成20年)2月12日,その特許登録を受けている(以下,この特許権を「本件韓国特許権」という。)。本件韓国特許権は,現在に至るまで被告アィ・ランドシステムに帰属している。(甲10,乙57の2)ウ本件特許権の特許請求の範囲請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本件発明」という。)。 「 水栓の口端に接合される接合金具と水を吐出する吐出金具との間に形成される通水室に,制水駒を内在させて流量を調節し,前記通水室の下端に網状の流速緩和体を設けて成る流量制御弁において,前記制水駒は,その中心を通る直径上に対称に蝶羽根を設けて成る制水盤と,該制水盤に重畳されて前記蝶羽根間に露出される盤面内でその中心に点対称状に所要形状で所要数の通水孔を開口して成る通水盤とから成り,該制水駒が前記接合金具に内嵌するブッシュを介して前記通水室に内設されて成る流量制御弁。」エ本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりとなる(以下,各構成要件を「構成要件A-①」などという。)。 A-① 水栓の口端に接合される接合金具とA-② 水を吐出する吐出金具との間にA-③ 形成される通水室に,A-④ 制水駒を内在させて流量を調節し,- 7 -B 前記通水室の下端に網状の流速緩和体を設けて成る流量制御弁において,C-① 吐出する吐出金具との間にA-③ 形成される通水室に,A-④ 制水駒を内在させて流量を調節し,- 7 -B 前記通水室の下端に網状の流速緩和体を設けて成る流量制御弁において,C-① 前記制水駒は,C-② その中心を通る直径上に対称に蝶羽根を設けて成る制水盤と,C-③ 該制水盤に重畳されて前記蝶羽根間に露出される盤面内でその中心に点対称状に所要形状で所要数の通水孔を開口して成る通水盤とから成り,D 該制水駒が前記接合金具に内嵌するブッシュを介して前記通水室に内設されて成るE 流量制御弁。 (3) 被告2社による節水装置の製造販売被告2社(被告アィ・ランドシステムが製造元,被告アイランドが総販売元とされている。甲13)は,平成23年6月20日から同年9月26日までの間,株式会社大商に対して73個,マルシチ米穀株式会社に対して23個,社会福祉法人山形公和会みこころの園に対して100個の節水装置を販売し,合計297万2779円を売り上げた(以下,これらの販売先を「大商外2社」と総称し,販売した節水装置を「大商外2社への販売品」という。)。大商外2社への販売品は,別紙被告製品目録3記載の構成を備えている。 (4) 被告2社による告知行為等ア Cと被告Aの間にはエコラインの経営権をめぐる紛争があった(前記(1)ウ参照)。また,原告ら,被告ら並びにエコライン及びその破産管財人の間には,本件特許権の帰属をめぐる争いがある。 イ被告アイランドは平成24年7月30日付け「お客様各位」と題する書面(甲17。以下「甲17書面」という。)を少なくとも大商外2社に送付し,被告アィ・ランドシステムは同月吉日付け「お知らせ」と題- 8 -する書面(甲18。以下「甲18書面」という。)を少なくとも大商外2社を含む合計13 」という。)を少なくとも大商外2社に送付し,被告アィ・ランドシステムは同月吉日付け「お知らせ」と題- 8 -する書面(甲18。以下「甲18書面」という。)を少なくとも大商外2社を含む合計13社の取引先又は代理店とエコラインの元従業員らに配布した。 甲17書面には,「D氏からの誹謗中傷ともいえる行為があり」,「貴施設にご導入頂いた節水装置商材は,韓国での特許取得に基づいて,韓国で製造したもので元々特許侵害とは一切関係ありません。」,「D氏やアースアンドウォーターは,韓国の特許商材及び日本での特許商材を,すべて特許侵害として関係各位に発信しております。」,「日本国内の特許権について,外形上特許権の名義は加藤建設に,専用実施権はアースアンドウォーターになっておりますが,特許権の裁判は現在係争中でございます。」,「D氏やアースアンドウォータからの誹謗中傷は事実無根であり,特許権侵害を決めつけることは軽率と考えております。」,「D氏及びアースアンドウォーターの妨害とはいえ」との記載がある。 また,甲18書面には,「加藤建設株式会社の所有名義の特許権について,種々情報が飛び交っているようです。」,「アースアンドウォーターの社員の方々が,節水装置の導入をご検討している施設に対し,誹謗中傷とも取れる言動が繰り返されております。しかしながら,彼らの誹謗中傷は,全く事実と異なります。」,「現在のところ外形的には加藤建設株式会社の名義となっております特許権について」との記載がある。 ウ本件特許権の帰属に関しては,本件口頭弁論終結時点において,① 被告アィ・ランドシステムが,原告らに対し,同被告からエコラインへの譲渡契約の債務不履行解除等を理由として本件特許権の移転登録手続等を求める訴訟(東京地方裁判所平成24年(ワ)第7971号特許権移転 告アィ・ランドシステムが,原告らに対し,同被告からエコラインへの譲渡契約の債務不履行解除等を理由として本件特許権の移転登録手続等を求める訴訟(東京地方裁判所平成24年(ワ)第7971号特許権移転登録手続等請求事件),② エコラインの破産管財人が,原告らに対し,エコラインから原告加藤建設への譲渡契約につき否認権を行使してその- 9 -取消し等を求める訴訟(被告Aによる詐害行為取消訴訟につきエコラインの破産手続開始決定を受けて受継及び訴え変更がされたもの。秋田地方裁判所平成25年(ワ)第130号の2詐害行為取消請求事件),③被告アィ・ランドシステムが,上記破産管財人に対し,同被告からエコラインへの譲渡契約が錯誤により無効であるとして,被告アィ・ランドシステムが本件特許権を有することの確認を求める訴訟(秋田地方裁判所平成26年(ワ)第36号特許権確認請求事件)が係属している。 (乙36,38~43) 2 争点(1) 特許権侵害に関する請求についてア被告2社が製造販売する節水装置の構成イ被告製品3についての均等による特許権侵害の成否ウ被告製品2及び4についての間接侵害の成否エ権利濫用の成否オ被告A及び被告Bの責任カ損害の額(2) 不正競争防止法に関する請求についてア被告2社による原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無イ被告A及び被告Bの責任ウ権利濫用の成否エ損害の額 3 争点に関する当事者の主張(1) 特許権侵害に関する請求ア争点(1)ア(被告2社が製造販売する節水装置の構成)(原告らの主張)- 10 -被告2社は,大商外2社への販売品(被告製品3)以外にも節水装置を販売しており,その中には被告製品1(本件発明と同一の構成を有するもの),被告 節水装置の構成)(原告らの主張)- 10 -被告2社は,大商外2社への販売品(被告製品3)以外にも節水装置を販売しており,その中には被告製品1(本件発明と同一の構成を有するもの),被告製品2(被告製品1のうち通水室の下端に設けられた網状の流速緩和体,すなわち本件発明の構成要件Bに相当する構成を欠くもの)及び被告製品4(被告製品3のうち本件発明の構成要件Bに相当する上記構成を欠くもの)の構成を有するものが存在する。 (被告らの主張)被告らが製造販売している節水装置のうち,大商外2社への販売品以外のものは,制水盤が蝶羽根ではなく扇形であり,通水孔が点対称に開放されない点で被告製品1~4の構成と異なっている。また,大商外2社への販売品は,被告製品3の構成を備えるが,より正確には,接合金具にV型のテーパが形成され,制水駒が接合金具のV型のテーパに圧入されている。 イ争点(1)イ(被告製品3についての均等による特許権侵害の成否。なお,被告製品3が本件発明の構成要件D以外の各構成要件を充足すること及び構成要件Dを文言充足しないこと並びに均等成立のための要件のうち置換容易性以外の点を満たすことは争いがない。)(原告らの主張)本件発明が構成要件Dにおいて「該制水駒が,前記接合金具に内嵌するブッシュを介して,前記通水室に内設されて成る」ことを規定するのに対し,大商外2社への販売品は,ブッシュを使用せず,通水盤を接続金具に固定している点で両者は相違する。 しかし,ブッシュは,流量制御とは関係がない部材であり,ブッシュを省くことでコスト削減につながるのであるから,制水駒のうち通水盤を,ブッシュを介さず,直接接合金具に固定することは,当業者からみて容易に到達することのできる技術である。 - 11 -(被告らの主張)大商 ト削減につながるのであるから,制水駒のうち通水盤を,ブッシュを介さず,直接接合金具に固定することは,当業者からみて容易に到達することのできる技術である。 - 11 -(被告らの主張)大商外2社への販売品は,接合金具の内部に嵌合するブッシュが存在せず,接合金具の内部にV型のテーパが形成されている点,制水駒が,通水室の内部に設けられるのではなく,接合金具に圧力を加えて押し込まれている点で,本件発明の構成要件Dと相違する。 そして,ブッシュを削減することにより製品コストを安くすることができる。また,ブッシュは,軸や筒状の部材などにはめ込み,隙間を埋めたり緩衝に用いる円筒形・ドーナツ形をした機構部品であるが,接合金具とブッシュ,ブッシュと制水駒の嵌合部分に隙間が生じるため水密を十分に保つことができない。これに対し,被告2社は,ブッシュを削減し,接合金具を圧入することにより,圧着部分に隙間が生じる余地をなくすことができた。これらのことからすると,当業者であれば誰もが構成要件Dを上記構成に置き換えることを容易に想到できたとはいえない。 ウ争点(1)ウ(被告製品2及び4についての間接侵害の成否)(原告らの主張)被告製品1は被告製品2に,被告製品3は被告製品4に流速緩和体を付けることで製造されるから,被告製品2は被告製品1の,被告製品4は被告製品3の生産に用いる物である。また,被告製品2及び4は日本国内において広く一般に流通しているものではなく,本件発明の課題の解決に不可欠な構成要件A,C~Eの構成を有するものである。そして,被告らは被告製品2及び4が本件発明の実施に用いられることを知っていた。 したがって,被告製品2及び4の製造販売行為は特許法101条2号の要件を満たす。 (被告らの主張)- 12 -争う。前記の 被告製品2及び4が本件発明の実施に用いられることを知っていた。 したがって,被告製品2及び4の製造販売行為は特許法101条2号の要件を満たす。 (被告らの主張)- 12 -争う。前記のとおり被告らは被告製品2及び4を製造販売していない。 エ争点(1)エ(権利濫用の成否)(被告らの主張)以下のとおり,エコラインから原告加藤建設への本件特許権の移転登録及び原告加藤建設から原告アースアンドウォーターへの専用実施権の設定登録は,いずれもその登録原因となる法律行為について瑕疵があることが明らかである。したがって,特許に無効理由がある場合と同様に,原告らには保護すべき利益がなく,特許権侵害に関する請求は権利の濫用に当たり許されない。 (ア) エコラインは,平成23年5月31日頃,原告加藤建設に対し,本件特許権を含む4件の特許権を1300万円で譲渡したが,本件特許権の評価額は8509万8199円であり,本件特許権を消費ないし散在しやすい金銭に換えることは詐害行為に該当する。エコラインも原告加藤建設も,上記譲渡契約の際,エコラインが債務超過に陥っていることを当然に認識していた。そして,エコラインの破産後,その破産管財人は,上記譲渡契約及びこれが有効であることを前提とする専用実施権の設定契約につき否認権を行使した。 (イ) 被告アィ・ランドシステムからエコラインへの本件特許権の譲渡契約に関し,被告アィ・ランドシステムは,エコラインの監査役らが支払仮装を行っていることを知らず,真実はその譲渡代金の支払を受けられないのに適正に支払われるものと誤信していた。被告アィ・ランドシステムは,平成23年11月3日,譲渡代金支払債務の不履行があるとして上記譲渡契約を解除し,さらに,エコラインの破産管財人に対し,上記譲渡契約を詐欺により取り ものと誤信していた。被告アィ・ランドシステムは,平成23年11月3日,譲渡代金支払債務の不履行があるとして上記譲渡契約を解除し,さらに,エコラインの破産管財人に対し,上記譲渡契約を詐欺により取り消す旨の意思表示をした。 そして,原告加藤建設の代表者であるCは上記エコラインの監査役と通謀して支払仮装に関与しており,原告加藤建設及びその支配を受け- 13 -ている原告アースアンドウォーターはいずれも背信的悪意者に該当するから,上記解除又は取消しの効力を争うことができない。 (原告らの主張)争う。 オ争点(1)オ(被告A及び被告Bの責任)(原告らの主張)被告Aは被告アィ・ランドシステムの代表取締役として同社に対し,被告Bは被告アイランドの代表取締役として同社に対しそれぞれ忠実義務,善良なる管理者の注意義務を負うところ,被告A及び被告Bはいずれも任務の遂行に当たって悪意ないし重過失があるので,会社法429条1項に基づき,被告2社の本件特許権の侵害行為につき取締役の対第三者責任を負う。 また,被告A及び被告Bは,原告らに対して恨みや悪感情を抱いており,腹いせや嫌がらせの意図をもって,又は法令適用を誤って本件特許権及び専用実施権の侵害行為をしたものといえるから,かかる侵害行為につき独自の不法行為責任を負う。 そして,被告らは,密接に関連し,意思を同じくするものであるから,共同不法行為責任を負う。 (被告らの主張)争う。被告A及び被告Bは,個人として節水装置の販売等を業としておらず,同被告らが独自に特許権侵害をする余地はない。 カ争点(1)カ(損害の額)(原告らの主張)(ア) 原告加藤建設は平成23年6月1日に本件特許権を取得し,原告アースアンドウォーターは同年9月29日に専用実施権の設定を受けたが,被告らは カ争点(1)カ(損害の額)(原告らの主張)(ア) 原告加藤建設は平成23年6月1日に本件特許権を取得し,原告アースアンドウォーターは同年9月29日に専用実施権の設定を受けたが,被告らは少なくとも大商外2社への販売品を販売するなどして- 14 -本件特許権の侵害行為により利益を上げている。 被告アイランドの平成23年10月1日から平成24年9月30日までの売上額は5650万5000円であり,仮に原告加藤建設が被告らに実施を許諾した場合の実施料は上記売上額の5%である282万5250円となる。また,被告アイランドの上記期間の粗利額は3441万1545円である。したがって,上記期間に原告加藤建設に生じた損害の額は282万5250円となり(特許法102条3項),原告アースアンドウォーターに生じた損害の額は3441万1545円と推定される(同条2項)。これらに加え,原告らにはそれぞれ各自の損害額の10%に相当する弁護士費用相当の損害金(原告加藤建設につき28万2525円,原告アースアンドウォーターにつき344万1154円)が生じている。 (イ) 仮に上記主張が認められないとしても,被告らは,大商外2社への販売品を製造販売することにより合計297万2779円を売り上げており,その実施料は,売上額の5%に相当する14万8638円となる。したがって,原告加藤建設には少なくとも14万8638円の損害が生じている(特許法102条3項)。 (被告らの主張)争う。 (2) 不正競争防止法に関する請求ア争点(2)ア(被告2社による原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)(原告らの主張)(ア) 被告2社は,甲17書面及び甲18書面において,原告加藤建設による本件特許権の行使及び原告アースアンドウォーターによる専 の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)(原告らの主張)(ア) 被告2社は,甲17書面及び甲18書面において,原告加藤建設による本件特許権の行使及び原告アースアンドウォーターによる専用実施権の行使が誹謗中傷行為ないし妨害行為であるとして取引先に告- 15 -知しているが,原告らは本件特許権等を有しているから,上記告知行為は原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる。 (イ) 被告2社は,本件特許権に基づく独占的実施権が原告らに帰属するにもかかわらず,甲17書面において本件発明に係る韓国での特許が日本国内で効力を有する旨を記載するほか,取引先を訪問し,被告2社が韓国での特許や国際特許なるものを保有していることを表示したカタログを示しつつ,通水盤にある通水孔の数やミゾの大きさを変えながら,「ここが特許です」などと説明し,被告2社が製造販売する節水装置が本件特許権に基づくものである旨の告知をした。かかる告知は虚偽であり,原告らが本件特許権に関して日本国内において独占的効力を有するという原告らの営業上の信用を害する。 (ウ) したがって,上記(ア)及び(イ)の告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当する。 (被告らの主張)(ア) 被告らと敵対するエコラインの代表清算人や原告アースアンドウォーターらが被告らの営業活動を妨害したことや,被告アィ・ランドシステムが訪問した取引先に被告Aを誹謗中傷する書面が郵送されてきたことは事実である。また,被告2社が本件発明の技術的範囲に属しない節水装置を設置しているにもかかわらず,原告らが,被告らが本件特許権を侵害していると断定してその旨告知していることも事実である。 (イ) 被告アィ・ランドシステムが本件韓国特許権の特許権者であることは事実であり,カタログ上のそ らず,原告らが,被告らが本件特許権を侵害していると断定してその旨告知していることも事実である。 (イ) 被告アィ・ランドシステムが本件韓国特許権の特許権者であることは事実であり,カタログ上のその旨の記載は虚偽でない。また,本件韓国特許権に関する事実は,被告らの権利に関する事実の告知であり,原告らに関する虚偽の事実ではないから,原告らの信用を毀損するものではない。 - 16 -イ争点(2)イ(被告A及び被告Bの責任)(原告らの主張)被告Aは被告アィ・ランドシステムの設立当時からの代表取締役であるとともに筆頭の株主であり,被告アィ・ランドシステムは被告Aの意思決定の影響が及ぶ会社であった。また,被告Bは,被告Aにくみし,被告Aと意思を共通にする者である。被告Aは,本件特許権が被告アィ・ランドシステムに帰属していることを望み,エコラインの取引先に営業活動をして原告らと競争関係に入っていた。そして,上記ア(原告らの主張)の虚偽事実の告知がされたことについて少なくとも過失があるから,被告A及び被告Bは不正競争防止法2条1項14号違反の責任を負う。 (被告らの主張)争う。被告A及び被告B個人は,原告らと競争関係にない。 ウ争点(2)ウ(権利濫用の成否)(被告らの主張)原告らが虚偽であると主張する告知行為は本件特許権が原告加藤建設に帰属することを前提とするものであるが,原告加藤建設への本件特許権の移転登録及び原告アースアンドウォーターへの専用実施権の設定登録の原因となる法律行為に瑕疵があることは明らかである。したがって,原告らに保護されるべき利益はなく,不正競争防止法に関する請求は権利を濫用するものとして許されない。 (原告らの主張)争う。 エ争点(2)エ(損害の額)(原告らの主張)原告らは被告ら 原告らに保護されるべき利益はなく,不正競争防止法に関する請求は権利を濫用するものとして許されない。 (原告らの主張)争う。 エ争点(2)エ(損害の額)(原告らの主張)原告らは被告らによって信用を毀損されたのであり,これによる無形- 17 -損害は各社の年間売上高の少なくとも10%に相当し,原告加藤建設について2億2000万円,原告アースアンドウォーターについて4000万円となる。原告らは,これらの損害の一部として各1000万円及び弁護士費用相当額の損害金各100万円の支払を請求する。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 特許権侵害に関する請求について(1) 争点(1)ア(被告2社が製造販売する節水装置の構成)についてア被告2社が被告製品3(大商外2社への販売品)の節水装置を製造販売したことは争いがない。原告らが,被告2社はこれに加え被告製品1,2及び4の構成(すなわち,制水盤に蝶羽根が設けられたもの)を有する節水装置を製造販売した旨主張するのに対し,被告らは,被告2社が製造販売する節水装置は制水盤が蝶羽根ではなく扇形となっている旨主張する。 イそこで判断するに,原告らは,上記のとおり主張しながら,被告らが大商外2社への販売品以外に制水盤が蝶羽根となっている節水装置を実際に販売したことをうかがわせる客観的証拠を何ら提出していない(節水装置という対象製品の性質上,被告2社による販売品を原告らが入手することは困難でないと解される。)。一方,証拠(乙31~33,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,被告2社においては,制水盤について蝶羽根の部分を扇形とする設計を行ったことが認められる。そうすると,被告2社が被告製品1,2及び4の構成を有する節水装置を製造販売したと認めるに足りる証拠はないとい 告2社においては,制水盤について蝶羽根の部分を扇形とする設計を行ったことが認められる。そうすると,被告2社が被告製品1,2及び4の構成を有する節水装置を製造販売したと認めるに足りる証拠はないというべきである。 ウ以上によれば,特許権侵害に関する請求のうち,被告製品1,2及び4に関する部分は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。ま- 18 -た,前記前提事実(2)ア及び(3)のとおり,大商外2社への販売品が販売されたのは平成23年6月20日から同年9月26日までの間であり,同期間においては原告アースアンドウォーターはいまだ専用実施権の設定を受けていなかったから,同原告の損害賠償請求も理由がないことになる。 (2) 争点(1)イ(被告製品3についての均等による特許権侵害の成否)についてア被告製品3は,本件発明の構成要件A①~C及びEを充足するものであるが,本件発明が制水駒を接合金具に内嵌するブッシュを介して通水室に内設するものであるのに対し(構成要件D),ブッシュを設けることなく制水駒を接合金具に形成されたV型のテーパに圧入することによって通水室に内設する構成を採用しているから,構成要件Dを文言上充足しない。 原告らは,被告製品3は上記のとおり特許請求の範囲に記載された構成と異なるが,① ブッシュを介して内設することは本件発明の本質的部分ではなく,② これを被告製品3のように置き換えても本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③ そのように置き換えることに本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が被告製品3の製造時点において容易に想到することができたものであり,④ 被告製品3が本件特許権の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に る通常の知識を有する者(当業者)が被告製品3の製造時点において容易に想到することができたものであり,④ 被告製品3が本件特許権の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考することができたものではなく,かつ,⑤ 被告製品3が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないから,被告製品3は特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属する(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)と主張するのに対し,被告らは原告らの主張のうち上記③の点のみを争っている。 - 19 -イそこで判断するに,本件発明における通水室は,水栓の口端に接合される接合金具と水を吐出する吐出金具との間に形成され(構成要件A①~③),上端(入水側)と下端(出水側)が開口された筒状の空間を指すものと解される(明細書(甲8)の段落【0007】,【図2】参照)。また,構成要件Dの「ブッシュ」は,特許請求の範囲の文言上,接合金具に内嵌され,上記通水室に制水駒を内設させるものとされているが,明細書の発明の詳細な説明の欄をみてもその具体的な構成やブッシュを設けることによる作用効果に関する記載は見当たらない。そして,構成要件Cに記載の構成から成る制水駒を通水室に内設することにより,1個の制水駒によって多様の流量制御に対応することができるという本件発明の技術的意義(明細書の段落【0003】~【0005】参照)に照らすと,制水駒は,上記形状の通水室内に下端から落ちることなく止まるよう,また,制水駒と通水室の間から水漏れがしないよう,通水室内に固定されていることを要すると解すべきものとなる。 ところで,通水室に制水駒を固定するに当たっては,これらを直接結 ちることなく止まるよう,また,制水駒と通水室の間から水漏れがしないよう,通水室内に固定されていることを要すると解すべきものとなる。 ところで,通水室に制水駒を固定するに当たっては,これらを直接結合するか,他の部材を介して間接的に結合するかのいずれかであるところ,本件発明は後者を採用したものであるが,ブッシュを介在させることの技術的意義は明細書に記載されていない。また,物を製造するに当たり,製造原価を削減する,工程を減らし工期を短くするなどの目的で部品の数を減らすことは,当業者であれば当然に考慮すべき事柄と解される。そうすると,本件発明の特許請求の範囲及び明細書の詳細な説明の記載に接した当業者であれば,ブッシュを省略し,制水駒を通水室に直接結合する構成への設計変更を試みるものと考えられる。そして,本件発明の実施例に示されたとおり,通水室の断面及び制水駒の形状が円形であること,通水室には上端から下端方向に水が流れることからすれば,制水駒が下端から落ちることなく,かつ,制水駒と通水室の間から水が漏れないように両者を- 20 -固定するため,接合金具の内側を下端側が狭まったV型のテーパ状に形成し,その円周部分に円盤状の制水駒を直接圧入するように構成することは,当業者にとって容易に想到できたものと考えられる。 ウ以上によれば,被告製品3(大商外2社への販売品)は,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属すると判断するのが相当である。 (3) 争点(1)エ(権利濫用の成否)について被告らは,被告アィ・ランドシステムからエコラインへ及びエコラインから原告加藤建設への本件特許権の譲渡契約にはいずれも瑕疵があり,真の権利者は被告アィ・ランドシステムであるから,原告らの本件特許権及び専用実施権につき保護すべき利益はなく,特許権侵害に関 コラインから原告加藤建設への本件特許権の譲渡契約にはいずれも瑕疵があり,真の権利者は被告アィ・ランドシステムであるから,原告らの本件特許権及び専用実施権につき保護すべき利益はなく,特許権侵害に関する請求は権利の濫用に当たり許されない旨主張する。 そこで判断するに,特許権の移転及び専用実施権の設定については登録が効力要件とされているところ(特許法98条1項1号,2号),本件特許権については原告らがこれらの登録を受けているのであるから,被告らの上記主張を直ちに採用することはできない。そして,上記各譲渡契約の効力に関しては前記前提事実(4)ウの各訴訟が係属中であり,本件訴訟に提出された証拠(上記各訴訟の訴状及び準備書面,書証等)を総合しても,原告らに保護すべき利益がなく,特許権侵害に関する請求が権利の濫用となると認めることはできない。したがって,被告らの主張は失当というべきである。 (4) 争点(1)オ(被告A及び被告Bの責任)について以上によれば,被告2社による被告製品3の製造販売が本件特許権の侵害に当たり,被告2社に対して,原告加藤建設は損害賠償請求を,原告アースアンドウォーターは専用実施権に基づく差止め及び廃棄の請求をすることができると認められる。 原告らは,被告2社のほか,被告A及び被告Bも本件特許権の侵害行為に- 21 -つき独自の不法行為責任を負い,又は会社法429条1項の責任を負う旨を主張する。 そこで,まず独自に特許権侵害をしたとの主張について判断するに,節水装置の製造販売の主体は被告2社であり,被告A又は被告Bが個人として本件発明の実施行為をしたものでないことは明らかである。したがって,被告A及び被告Bの独自の特許権侵害行為を認めることはできない。 次に会社法429条1項に関する主張について判断するに,被 人として本件発明の実施行為をしたものでないことは明らかである。したがって,被告A及び被告Bの独自の特許権侵害行為を認めることはできない。 次に会社法429条1項に関する主張について判断するに,被告らによる大商外2社への販売品の販売当時,被告Aは被告アィ・ランドシステムの,被告Bは被告アイランドの各代表取締役であったところ(甲4,5),証拠(甲8,13,証人D,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは本件発明の発明者であってその内容を熟知しており,平成23年6月頃から被告2社による節水事業を行うべく主体的に活動していたこと,被告Bは,エコラインの元従業員であり,退職後,被告Aが主要株主である被告アイランドの代表者に就任したこと,被告製品3については被告アィ・ランドシステムが製造元,被告アイランドが販売元となっていたが,被告Bは販売先等を把握していなかったことが認められる。 上記事実関係によれば,被告Aは,被告アィ・ランドシステムが大商外2社へ被告製品3を販売することが本件特許権の侵害行為となることを認識していたとみることができる。また,被告Bは,その認識を欠いていたとしても,被告Aの意を受けて漫然と行動したことにより,被告アイランドによる特許権侵害行為を招来したものであり,少なくとも重大な過失があったと解すべきである。そうすると,被告A及び被告Bは,原告加藤建設が被告2社による特許権侵害により被った損害につき,会社法429条1項の責任を負うと解するのが相当である。 (5) 争点(1)カ(損害の額)についてア前記前提事実(3)のとおり,被告2社は大商外2社へ被告製品3を販売す- 22 -ることにより合計297万2779円を売り上げた。なお,被告2社がこれ以外に被告製品3を製造販売したと認めるに足りる証拠はない。 イ本 り,被告2社は大商外2社へ被告製品3を販売す- 22 -ることにより合計297万2779円を売り上げた。なお,被告2社がこれ以外に被告製品3を製造販売したと認めるに足りる証拠はない。 イ本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額(特許権102条3項)につき,原告らは売上額の5%が相当であると主張するところ,本件発明が節水装置の構成に関するものであり,1個の制水駒によって多様の流量制御に対応できるという従来技術にない効果を奏すること(甲8)に加え,被告らが原告らの主張を争うとするのみで具体的な額ないし割合を何ら主張しないことを勘案すると,上記5%をもって相当ということができる。そうすると,本件特許権侵害による原告加藤建設の損害額は14万8638円であると認められる。 ウ本件事案の内容,審理の経過等に鑑みれば,特許権侵害に関する請求と相当因果関係があるものとして被告らに負担させるべき弁護士費用の額は10万円を相当と認める。 (6) 特許権侵害に関する請求のまとめしたがって,原告アースアンドウォーターは,被告2社に対し,被告製品3の製造販売等の差止め及び廃棄を求めることができ,原告加藤建設は,被告らに対し,24万8638円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 2 不正競争防止法に関する請求について(1) 争点(2)ア(被告2社による原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について原告らは,被告らが,① 甲17書面及び甲18書面により,原告らによる本件特許権の行使が誹謗中傷に当たる旨告知したこと,② 甲17書面により本件韓国特許権が日本国内で効力を有する旨告知するとともに,取引先に対し,カタログを示しながら口頭で被告2社の り,原告らによる本件特許権の行使が誹謗中傷に当たる旨告知したこと,② 甲17書面により本件韓国特許権が日本国内で効力を有する旨告知するとともに,取引先に対し,カタログを示しながら口頭で被告2社の販売する節水装置が特許発- 23 -明の実施品である旨の説明をしたことが原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知であると主張するので,以下各告知行為について検討する。 ア上記①の告知行為について(ア) 前記前提事実に加え,証拠(甲17,18,48,乙23,35,証人D,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 本件特許権については,平成23年6月1日にエコラインから原告加藤建設への移転登録,同年9月29日に原告アースアンドウォーターへの専用実施権の設定登録がされたが,被告2社は,その頃,被告製品3を含む節水装置の製造販売を行っていた。原告らは,被告らに対し,本件特許権及び専用実施権を侵害することを禁止する旨の警告を行った。また,同年10月頃以降,原告アースアンドウォーターの節水装置を取り扱っていたDも,関係する顧客らに対し,原告らの上記警告を伝えた。さらに,原告アースアンドウォーターは,同年11月頃,節水装置の取扱業者等の関係者各位宛に,被告アイランドの主張(同被告が特許のライセンスを保有しているとの主張,被告アィ・ランドシステムが本件韓国特許権に基づき製造した物を販売しているので原告アースアンドウォーターの特許権を侵害していないとの主張)は誤りであり,このような日本国内の特許のライセンスを有しない会社とは関わりを持たないようお願いする旨の通知書を送付した。 b 被告らは,上記aの原告らの行為に対抗するため,平成24年7月頃,被告アイランドにおいて甲17書面を,被告アィ・ランドシステムにおいて甲18書面 を持たないようお願いする旨の通知書を送付した。 b 被告らは,上記aの原告らの行為に対抗するため,平成24年7月頃,被告アイランドにおいて甲17書面を,被告アィ・ランドシステムにおいて甲18書面を,それぞれ取引先等に配布した。その記載内容は前記前提事実(4)イのとおりであり,甲17書面には「D氏からの誹謗中傷ともいえる行為」,「D氏やアースアンドウォータからの誹謗中傷は事実無根であり」,「D氏及びアースアンドウォーターの妨害」等の,甲18書面には「株式会社アースアンドウォーターの社- 24 -員の方々が(中略)誹謗中傷とも取れる言動が繰り返されております」等の記載がある。 (イ) 上記事実関係によれば,甲17書面及び甲18書面は,「被告2社には本件発明を実施する権利がなく,被告2社による節水装置の製造販売は特許権侵害になる」旨の警告や通知をした原告らの行為が被告2社に対する誹謗中傷に当たる旨の事実を告知するものということができる。 ところで,被告2社による本件特許権の侵害行為が認められることは前記1において認定判断したとおりであり,特許権侵害に関する請求につき説示したところによれば,原告らによる上記警告等は特許権者又は専用実施権者として登録された者による正当な権利行使の範囲を出るものではないと解される。そうすると,これが誹謗中傷であるとする被告2社による上記告知は虚偽であるといわざるを得ない。そして,このような記載内容に照らせば,これが原告らの営業上の信用を害することは明らかと解される。 したがって,上記①の告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当すると認められる。 (ウ) これに対し,被告らは,原告らによる誹謗中傷があったのは事実であると主張し,その根拠として,前記(ア)aの原告アースアンドウォーター作成の通知書( 2条1項14号に該当すると認められる。 (ウ) これに対し,被告らは,原告らによる誹謗中傷があったのは事実であると主張し,その根拠として,前記(ア)aの原告アースアンドウォーター作成の通知書(乙23)のほか,エコラインの代表清算人作成の平成23年9月29日付け及び同年10月3日付け各文書(乙21,22),同年9月5日に発送された作成者不明の文書(乙24),原告ら代理人作成の平成24年9月24日付け及び同年10月17日付け各文書(乙25,26。以下,上記各文書をそれぞれ「乙21文書」などという。)が被告らの取引先等に送付されていることを挙げる。 しかし,被告らが甲17書面又は甲18書面において誹謗中傷行為をしたとする者はD及び原告アースアンドウォーターの従業員であるから,- 25 -vエコラインの作成した乙21文書及び乙22文書が誹謗中傷行為の存在を裏付けるものとはいえず,このことは作成者不明の乙24書面も同様である。また,乙25文書及び乙26文書は甲17書面及び甲18書面が作成された平成24年7月よりも後に作成されたものであるから,これらも甲17書面及び甲18書面に記載された誹謗中傷行為の存在の裏付けとなるものではない。 したがって,被告らの上記主張を採用することはできない。 イ前記②の告知行為について(ア) 証拠(甲13,17,48,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,被告2社は平成23年5月23日頃以降,取引先に対し,被告2社の製造販売する節水装置は本件韓国特許権に係る製品であり,我が国における特許権侵害とは関係がない旨,上記節水装置の通水盤にある通水孔の数やミゾの大きさが特許発明に当たる旨を告知して,節水装置の販売活動をしていたことが認められる。一方,原告らの製造販売する節水装置が特許発明の実施品ではないなどと 上記節水装置の通水盤にある通水孔の数やミゾの大きさが特許発明に当たる旨を告知して,節水装置の販売活動をしていたことが認められる。一方,原告らの製造販売する節水装置が特許発明の実施品ではないなどといった事実を告知したことはうかがわれない。 (イ) そこで,上記告知行為が不正競争防止法2条1項14号に該当するかどうかについてみるに,その告知内容は,専ら被告2社が製造販売する節水装置が韓国の特許制度による保護を受けるかという点に関するものであり,これが虚偽であるとしても,原告らの特許権の日本国内における効力又は原告らの製造販売する節水装置の品質等に関係するものでないことは明らかである。そうすると,上記告知行為により原告らの営業上の信用が害されたと認めるに足りないから,上記告知行為は同号所定の不正競争に当たらないと解すべきである。 (2) 争点(2)イ(被告A及び被告Bの責任)について原告らが被告A及び被告Bも不正競争防止法2条1項14号違反の主体と- 26 -なる旨主張するのに対し,被告らは,被告A及び被告Bは個人であって「競争関係にある他人」に当たらない旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲4,5,17,18,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,被告2社はいずれも資本金の額を1000万円とし,節水装置の製造販売業をしていること,被告Aは,エコラインの代表取締役を解任された後,節水装置の製造販売業を行うべく被告2社による事業を立ち上げ,その後被告2社を実質的に支配していること,被告Aは被告アィ・ランドシステムの代表取締役として甲18書面を自らの名義で作成し,被告Bも,被告Aと意を通じて,被告アイランドの代表取締役として甲17書面を自らの名義で作成していることが認められる。これらのことからすれば,被告A及び被告Bは原告らとの競 面を自らの名義で作成し,被告Bも,被告Aと意を通じて,被告アイランドの代表取締役として甲17書面を自らの名義で作成していることが認められる。これらのことからすれば,被告A及び被告Bは原告らとの競争行為を現に行っているということができる。 そして,以上に説示したところによれば,甲17書面及び甲18書面の送付による前記虚偽事実の告知をしたことにつき被告A及び被告Bには少なくとも過失があったと認められる。 したがって,被告A及び被告Bは,被告2社と共に不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為について責任を負うと解することができる。 (3) 争点(2)ウ(権利濫用の成否)について被告らは,原告らが主張する告知行為は本件特許権に係るものであり,本件特許権の移転登録及び専用実施権の設定登録の原因となる法律行為に瑕疵があることは明らかであるから,原告らに保護されるべき利益はなく,不正競争防止法に関する請求は権利を濫用するものとして許されない旨主張する。 しかし,特許権侵害に関する請求につき前記1(3)で判示したところと同様の理由により,被告らの上記主張を採用することはできない。 (4) 争点(2)エ(損害の額)について以上によれば,被告らは,原告らに対し,被告らに対する誹謗中傷行為- 27 -があった旨を甲17書面及び甲18書面により告知したことにつき不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償責任を負うと認められる。 そこで,その損害額について判断するに,上記告知行為は原告らが誹謗中傷行為を行ったとの虚偽の事実を取引先13社に告知したものであり(なお,これ以外に告知したと認めるに足りる証拠はない。),その表現に照らしても,原告らの信用を毀損する程度は低いものではないと解されるが,他方において,原告らに売上減少その他現 告知したものであり(なお,これ以外に告知したと認めるに足りる証拠はない。),その表現に照らしても,原告らの信用を毀損する程度は低いものではないと解されるが,他方において,原告らに売上減少その他現実に損害が生じたことはうかがわれない上,証拠(甲17,18,乙21~24)及び弁論の全趣旨によれば,甲17書面及び甲18書面は,原告らが取引先に対して被告2社との取引をしないように働き掛けたため,これに対抗して自己の立場を主張することを目的とするものと認められ,誹謗中傷されていることを告知することに主眼を置くものとは解し難い。そうすると,本件におけるこれらの事情を考慮すれば,上記告知行為による信用毀損の損害の額としては,原告ごとに30万円を相当と認める。また,上記告知行為と相当因果関係のある弁護士費用の額としては原告ごとに5万円が相当である。 (5) 不正競争防止法に関する請求のまとめしたがって,原告らは,被告らに対し,被告らが甲17書面及び甲18書面においてD及び原告アースアンドウォーターが被告らを「誹謗中傷」した旨を告知したことにつき,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づき,原告ごとに35万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 3 まとめ以上によれば,原告加藤建設の請求は被告らに対して59万8628円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で,原告アースアンドウォーターの請求は被告2社に対して被告製品3の製造販売の差止め及び廃棄- 28 -並びに被告らに対して35万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 第4 結論よって,主文のとおり判決する。なお,主文2項の仮執行宣言については,相 主文 びに被告らに対して35万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 理由 第4 結論よって,主文のとおり判決する。なお,主文2項の仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官髙橋彩 裁判官植田裕紀久(別紙省略)

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