令和4(行ウ)112 難民不認定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月4日 大阪地方裁判所
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判決文本文50,559 文字)

- 1 -主文 1 本件訴えのうち、裁決の取消しを求める部分を却下する。 2 大阪出入国在留管理局長が令和3年2月1日付けで原告に対してした、原告を難民と認定しない旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第2項と同旨 2 法務大臣が令和4年5月13日付けで原告に対してした、令和5年法律第56号による改正前の出入国管理及び難民認定法61条の2の9に基づく原告の 審査請求を棄却する裁決を取り消す。 第2 事案の概要チュニジア共和国(以下「チュニジア」)という。)の国籍を有する外国人男性である原告は、チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に家族から暴力を受け、警察官に助けを求めても逮捕を示唆され保護を受けられなかった ことなどから、帰国すると同性愛者であることを理由に迫害を受けるおそれがあるとして、出入国管理及び難民認定法(令和5年法律第56号による改正前のもの。以下「入管法」という。)61条の2第1項に基づき難民認定申請(以下「本件申請」という。)をしたが、大阪出入国在留管理局長(以下「大阪入管局長」という。)から、難民の認定をしない処分(以下「本件不認定処分」とい う。)を受けた。原告は、本件不認定処分につき審査請求(以下「本件審査請求」という。)をしたが、法務大臣から、本件審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受けた。 本件は、原告が、被告を相手に、原告は難民に該当するなどと主張して、本件不認定処分及び本件裁決の取消しを求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の各証拠又は弁論の全趣旨により - 2 -容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) チュニジア 案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の各証拠又は弁論の全趣旨により - 2 -容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) チュニジアの一般情勢及び同性愛行為に対する処罰規定の存在等アチュニジアは、アフリカ大陸の北部に位置する国である。国土は約16万3610㎢、人口は約1193万6000人(令和3年推定)、国教はイスラム教(ほとんどがスンニ派)である。公用語はアラビア語であるが、 フランス語も通用する。首都はチュニスで、その人口は約240万2000人(令和3年推定)であるが、その他の主要都市の一つにスースがあり、その人口は約77万4000人(令和2年推定)である。政治体制は共和制が敷かれており、大統領と首相に権力が分散しているところ、大統領は直接選挙制で選ばれ、現在の大統領は、B(2019年〔令和元年〕10月 23日就任)である。(乙15)イチュニジアでは、同性間の合意による性交(ソドミー)は犯罪とされており、有罪となった場合、3年以下の懲役刑に処せられる(チュニジア刑法230条。以下、この規定を「同性間性交処罰規定」ということがある。)。 また、チュニジアでは、「倫理及び公衆道徳の侵害」が犯罪行為とされ、 有罪となった場合、6か月の懲役刑及び1000ディナール(2019年〔令和元年〕当時のレートでアメリカドルに換算すると347ドル)の罰金刑に処せられる(チュニジア刑法226条。以下、この規定を「倫理侵害処罰規定」ということがある。)。(以上につき、甲5、乙16、17)(2) 原告(乙1) 原告は、●●●●年(●●●年)●月●日にチュニジアで出生した、チュニジア国籍を有する外国人男性である。なお、原告は、後記3(1)イのとおり、 5、乙16、17)(2) 原告(乙1) 原告は、●●●●年(●●●年)●月●日にチュニジアで出生した、チュニジア国籍を有する外国人男性である。なお、原告は、後記3(1)イのとおり、自らがゲイであると主張している。 以下、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル及びトランスジェンダー並びにそのように思われている人々等を「LGBT」と総称する。性的マイノリ ティの人々を指す呼称としては、LGBTのほか、インターセックス、これ - 3 -らのいずれにも当てはまらない性的マイノリティとしてクイア(Queer)又はクエスチョニング(Questioning)を加え、「LGBTQI」、「LGBTIQ」、「LGBTQI+」(「+」とは、LGBTQIのほかにも様々なセクシャリティがあり得ることを意味する。)などと呼称されることもある。 (3) 原告の入国状況及び在留状況等(乙2~7) ア原告は、令和元年12月31日、成田国際空港に到着し、在留資格「短期滞在」、在留期間を90日とする上陸許可を受けて本邦に上陸した。 イ原告は、令和2年3月9日、在留資格を「特定活動」(指定する活動を「本邦に在留し難民認定申請又は審査請求を行っている者が行う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」 とするもの)、在留期間を2月とする在留資格変更許可を受け、その後、同年6月10日までに、2回にわたり在留期間更新許可を受けた。 原告は、令和2年11月2日、在留資格を「特定活動」(指定する活動を「本邦に在留し難民認定申請又は審査請求を行っている者が行う、本邦の公私の機関に雇用されて行う報酬を受ける活動」とするもの)、在留期 間を6月とする在留資格変更許可を受け、その後、 する活動を「本邦に在留し難民認定申請又は審査請求を行っている者が行う、本邦の公私の機関に雇用されて行う報酬を受ける活動」とするもの)、在留期 間を6月とする在留資格変更許可を受け、その後、令和3年9月6日までに、2回にわたり在留期間更新許可を受けた。 ウ原告は、令和4年6月10日、在留資格を「特定活動」(指定する活動を「本邦から出国するための準備のための活動及び日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」とするもの)、 在留期間を3月とする在留資格変更許可を受けた。 (4) 本件不認定処分及び本件裁決に至る経緯(甲1~3、乙8~14)ア原告は、令和2年1月9日(本邦到着の9日後)、難民認定申請(本件申請)をし、大阪出入国在留管理局難民調査官は、同年12月21日、原告から本件申請に係る事情を聴取した(以下「本件事情聴取」という。)。 イ大阪入管局長は、令和3年2月1日付けで、原告に対し、難民の認定を - 4 -しない処分(本件不認定処分)をし、同月19日、原告にこれを通知した。 ウ原告は、令和3年2月19日、本件不認定処分に対する審査請求(本件審査請求)をし、口頭意見陳述を申し立てた。 エ難民審査参与員は、令和4年1月25日付けで、「申述書に記載された事実その他の申立人(原告)の主張に係る事実が真実であっても、何らの 難民となる事由を包含していない。」として、口頭意見陳述を実施しない旨決定(以下「本件不実施決定」という。)し、これを原告に通知した。 オ法務大臣は、令和4年5月13日付けで、本件審査請求を棄却する旨の裁決(本件裁決)をし、同年6月10日、原告にこれを通知した。 (5) 本件訴えの提起(顕著な事実) 通知した。 オ法務大臣は、令和4年5月13日付けで、本件審査請求を棄却する旨の裁決(本件裁決)をし、同年6月10日、原告にこれを通知した。 (5) 本件訴えの提起(顕著な事実) 原告は、令和4年7月29日、本件訴えを提起した。 2 争点(1) 本件不認定処分の取消請求関係原告の難民該当性(争点1)(2) 本件裁決の取消請求関係 本件裁決の違法事由の有無(争点2) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(原告の難民該当性)(原告の主張)ア難民の意義及び立証責任等について (ア) 難民の要件となる「迫害」とは、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧に限定されず、国家の保護の欠如を伴う基本的人権に対する持続的又は系統的危害をいうと解すべきである。すなわち、「迫害」に当たるか否かの判断においては、広く経済的・社会的自由や精神的自由に対する抑圧や侵害も検討されなければならず、脅威にさらされている基本的人権(自 由)の性質と、当該基本的人権に科される制限の程度及び損害の重大性 - 5 -とを複合的に分析して判断されるべきである。 また、迫害を受ける「十分に理由のある恐怖」とは、主観的な「恐怖」に十分な理由があることであり、当該申請者が置かれた状況に合理的な勇気を有する者が立ったときに、「帰国したら迫害を受けるかもしれない」と感じ、国籍国への帰国をためらうであろうと評価し得る場合には、 その恐怖に「十分な理由」があるということができるのであって、客観的な迫害の発生確率等を問題にすることは無意味である。 (イ) 難民の申請をする者は、迫害を避けるために本国を捨て、保護の確証のない外国において十分な支援を得られないで できるのであって、客観的な迫害の発生確率等を問題にすることは無意味である。 (イ) 難民の申請をする者は、迫害を避けるために本国を捨て、保護の確証のない外国において十分な支援を得られないでいるのであり、難民申請に係る事実の発見の作業において、民事事件で活用される通常の立証基 準をそのまま用いることは合理性のない結論をもたらす危険がある。この点に加え、①難民認定手続は訴訟手続のような対審的性質を有しないこと、②難民認定手続における審査対象は「迫害のおそれについての恐怖」という将来予測的な事実であること、③難民認定手続が難民の保護を目的としており、入管法61条の2の14第1項の規定内容も踏まえ れば、難民認定機関は、認定者であると同時に申請者に対する協力者であることが要求されることなども踏まえれば、難民認定に係る立証責任及び立証基準の在り方については格別の考慮が必要である。 すなわち、難民認定手続においては、難民申請に係る関連事実を確認し評価する義務は、申請者と難民認定機関とで分かち合うのであり、あ る要件に該当する事実の証明ができなかった場合に誰がその不利益を被るかという意味での立証責任の問題は存在しないというべきである。 また、難民該当性に関して申請者が主張する事実につき、その存否に疑いがある場合には申請者の利益になるように判断することが必要であり、当該事実について、難民認定機関が真実ではないとの確信の域に達 しない限り、当該主張に信ぴょう性がないと結論付けられるべきではな - 6 -い(いわゆる「灰色の利益」)。 イ原告が難民に該当することについて別紙1「原告準備書面6(令和6年3月7日付け)」の「第1 同性愛者に対するチュニジアの本国情報について」から「 い(いわゆる「灰色の利益」)。 イ原告が難民に該当することについて別紙1「原告準備書面6(令和6年3月7日付け)」の「第1 同性愛者に対するチュニジアの本国情報について」から「第5 原告は、その国籍国の保護を受けられない者に該当すること」まで(1~22頁)に記載の とおり。 原告の主張の要旨は、原告はいわゆるゲイであるところ、①チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に、家族から、自宅に監禁された上で暴力を受けたり、車でひき殺されそうになったりしたことから、帰国すると家族により殺害されるなど生命身体の危険があり、そのことについて 警察の保護を受けることもできないおそれがある、②チュニジアでは同性間の性交(ソドミー)が処罰の対象とされており、帰国すると同性愛者であることを理由に逮捕等されるおそれがあるというものである。 (被告の主張)別紙2「被告最終準備書面(令和6年3月15日付け)」の「第1の2(1) 難民該当性の判断枠組みについて」(3~5頁)及び「第2 本件難民不認定処分が適法であること」(7~23頁)に記載のとおり。 原告の難民該当性に係る被告の主張の要旨は、①そもそも原告が同性愛者であることを理由に原告の家族から迫害を受けるおそれがあるとは認められず(原告が家族から迫害を受けたとして主張する事実はいずれも立証されて いるとはいえず)、仮に原告が家族から迫害を受けるおそれがあるとしても、チュニジア政府が、同性愛者であることを理由とする私人間の違法行為等を放置・助長しているような特別な事情があるとはいえない、②チュニジアにおいて、原告が同性愛者であることを理由に逮捕される現実的なおそれがあるとは認められないというものである。 (2) 争点2 ・助長しているような特別な事情があるとはいえない、②チュニジアにおいて、原告が同性愛者であることを理由に逮捕される現実的なおそれがあるとは認められないというものである。 (2) 争点2(本件裁決の違法事由の有無) - 7 -(原告の主張)別紙1「原告準備書面6(令和6年3月7日付け)」の「第6 裁決の違法」(22~23頁)に記載のとおり。 原告の主張の要旨は、本件審査請求は、原告の供述の信用性評価と証拠文書の審査により難民該当性の判断が左右される事案であり、入管法61条の 2の9第6項の規定により読み替えて適用される行政不服審査法31条1項ただし書の「申述書に記載された事実その他の申立人の主張に係る事実が真実であっても、何ら難民となる事由を包含していない」場合には当たらないにもかかわらず、本件不実施決定がされたことは違法であり、本件裁決には手続的瑕疵があるから、本件裁決は違法であるというものである。 (被告の主張)別紙2「被告最終準備書面(令和6年3月15日付け)」の「第3 本件棄却裁決に手続上の瑕疵はなく、本件棄却裁決が適法であること」(23~25頁)に記載のとおり。 被告の主張の要旨は、本件審査請求は、入管法61条の2の9第6項の規 定により読み替えて適用される行政不服審査法31条1項ただし書の「申述書に記載された事実その他の申立人の主張に係る事実が真実であっても、何ら難民となる事由を包含していない」場合に該当するから、本件不実施決定は適法であり、本件裁決に手続的瑕疵はないというものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告の難民該当性)について(1) 難民の意義及び難民該当性の立証責任等についてア難民の意義(ア) 入管法2 的瑕疵はないというものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告の難民該当性)について(1) 難民の意義及び難民該当性の立証責任等についてア難民の意義(ア) 入管法2条3号の2は、入管法における「難民」の意義について、難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)1条の規定又は難民 の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)1条の規定により - 8 -難民条約の適用を受ける難民をいうと規定する。したがって、入管法にいう「難民」とは、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有 するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」(難民条約1条A(2)、難民議定書1条2項)をいうことになる。 そして、上記の「迫害」とは、生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害を意味し、主に、通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって、生命又は身体の自由の侵 害又は抑圧をいうものと解するのが相当であり、また、上記の「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」は、当該人において迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情だけではなく、通常人が当該人の立場に置かれたならば迫害の恐怖を抱くような客観的な事情が存在していることが必要であると解される(難民 該当性判断の手引〔甲21〕2~4頁参照)。 また、難民に該当するためには、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ために、 であると解される(難民 該当性判断の手引〔甲21〕2~4頁参照)。 また、難民に該当するためには、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ために、当該申請者が「その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」であることが必要となると ころ、「迫害」の主体が国籍国の国家機関である場合には、原則として、「その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」に当たると解される。他方で、「迫害」の主体が国籍国の国家機関以外の者である場合には、当該国籍国の国家機関が当該迫害を受ける者に対し効果的な 保護を与えることを拒否している場合(例えば、当該政府が当該迫害を - 9 -助長、放置又は黙認しているとき。)や効果的な保護を与えることができない場合に、「その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」に当たると解される(難民該当性判断の手引〔甲21〕15頁参照)。 (イ) 以上に対し、原告は、迫害を受ける「十分に理由のある恐怖」とは、 主観的な「恐怖」に十分な理由があることであり、当該申請者が置かれた状況に合理的な勇気を有する者が立ったときに、「帰国したら迫害を受けるかもしれない」と感じ、国籍国への帰国をためらうであろうと評価し得る場合には、その恐怖に「十分な理由」があるということができるなどと主張するが、原告の難民該当性の判断枠組みに係る主張のうち、 上記(ア)で述べたところに反する部分は、いずれも独自の見解といわざるを得ないものであって、採用することができない とができるなどと主張するが、原告の難民該当性の判断枠組みに係る主張のうち、 上記(ア)で述べたところに反する部分は、いずれも独自の見解といわざるを得ないものであって、採用することができない。 イ難民該当性の立証責任等について(ア) 難民該当性の立証責任については、入管法61条の2第1項の文理のほか、難民認定処分が授益処分であること等に鑑み、原告がこれを負担 すべきものと解するのが相当である。 そして、難民該当性を基礎付ける事実の立証の程度については、証拠に基づいて事実についての主張を真実と認めるべきことの証明を要することは通常の場合と同様であり、その立証の程度を通常の場合と比較して緩和すべき理由はないというべきである。 (イ) これに対し、原告は、種々の事情を指摘した上で、難民認定に係る立証責任及び立証基準の在り方については格別の考慮が必要である旨主張し、具体的には、①難民申請に係る関連事実を確認し評価する義務は申請者と難民申請機関とで分かち合うのであり、ある要件に該当する事実の証明ができなかった場合に誰がその不利益を被るかという意味での立 証責任の問題は存在しない、②難民該当性に関して申請者が主張する事 - 10 -実につき、その存否に疑いがある場合には申請者の利益になるように判断することが必要であり、当該事実について、難民申請機関が真実ではないとの確信の域に達しない限り、当該主張に信ぴょう性がないと結論付けられるべきではない(灰色の利益)などと主張するが、原告が指摘する事情を踏まえてもなお、難民該当性の立証責任及び立証の程度につ いて上記(ア)で述べたところと別異に解すべき理由はないというべきであって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 難民該当性に関する原告 該当性の立証責任及び立証の程度につ いて上記(ア)で述べたところと別異に解すべき理由はないというべきであって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 難民該当性に関する原告の主張の要旨及び検討の順序原告は、難民該当性につき、要旨、原告はゲイであるところ、①チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に、家族から、自宅に監禁された上 で暴行を受けたり、車でひき殺されそうになったりしたことから、帰国すると家族により殺害されるなど生命身体の危険があり、そのことにつき警察の保護を受けることもできないおそれがある、②チュニジアでは同性間の性交(ソドミー)が処罰の対象とされており、帰国すると同性愛者であることを理由に逮捕されるおそれがあると主張する。 そこで、以下、チュニジアにおけるLGBTを取り巻く状況に関する各種報告や報道等の内容を概観し(後記(3))、その報告等の内容を踏まえて同国のLGBTを取り巻く状況をどのように評価すべきか検討し(後記(4))、難民該当性に関する原告の供述の信用性を検討し(後記(5))、これらを踏まえ、原告がチュニジアに帰国した場合に迫害を受けるおそれがあるといえるか否 かについて検討する(後記(6))。 (3) チュニジアにおけるLGBTをめぐる状況に関する報告等の内容各項掲記の証拠によれば、各年のチュニジアにおけるLGBTを取り巻く状況に関し、次のような報告等がなされていることが認められる。 ア 2017年(平成29年)、ドイツ連邦共和国のハインリッヒ・ベル財 団は、「チュニジアは何故、今でも同性愛を犯罪とするのか?」と題する - 11 -声明(乙17。以下「ドイツ財団声明」という。なお、以下、各報告等のうち特定の部分のみを摘示する場合 ル財 団は、「チュニジアは何故、今でも同性愛を犯罪とするのか?」と題する - 11 -声明(乙17。以下「ドイツ財団声明」という。なお、以下、各報告等のうち特定の部分のみを摘示する場合には、「ドイツ財団声明①」のように標記する。)を発表した。この声明には、次の記述がある。 ① 「チュニジアのLGBTIQにとって、警官の停止命令の乱用や、法執行機関の手による恣意的な逮捕は当たり前で、その一方、チュニジア のメディアの中では、反同性愛のヘイトスピーチや、同性愛嫌悪の暴力の煽動が頻繁に見られる。チュニジアの独立高等視聴覚通信機関(HAICA)は、いくつかの苦情を受け取った後、2015年10月、あるテレビ局に対して、同性愛嫌悪の発言に関する警告を出しており、それが反LGBTIQコミュニティの暴力に対する、公的機関による最初の 反応とみなすことができる。しかし、法的な刑罰の可能性が欠如していることと、国会議員を含む多くの官僚や政治家たちが、LGBTIQコミュニティに対する敵意に満ちた発言の一因となっている事実が、国全体にはびこる同性愛嫌悪のヘイトスピーチの常態化を助長している。一般的な不処罰の風潮がある中、反同性愛のヘイトクライムの数は増加し ていることが、地元および国際的なメディアで報道されている。ちょうど昨年の9月、ジャーナリストたちは、チュニスとケフで起きた、同性愛の男性についての、2つの殺人事件をそれぞれ報じた。しかし、かなりの割合の反同性愛暴力は報道されていない。・・・さらに、チュニジアの法律では、LGBTIQコミュニティに対して実行された犯罪を含め、 ヘイトクライムの被害者には、限られた選択肢しか残されていない。攻撃は「暴行」または「殺人」として処罰することができる一方、チュニジア刑法には、 Qコミュニティに対して実行された犯罪を含め、 ヘイトクライムの被害者には、限られた選択肢しか残されていない。攻撃は「暴行」または「殺人」として処罰することができる一方、チュニジア刑法には、ヘイトクライムを具体的に定義したり、犯罪とする条項が何も含まれていない。」② 「政府によるLGBTIQコミュニティの弾圧は、チュニジア刑法第 230条の下で一般的に正当化されており、それは同意のある同性の2 - 12 -人の成人間の性行為を、最高3年の懲役刑で処罰する。さらに具体的には、同法のフランス語版は、「ソドミー」を犯罪としているが、一方、アラビア語版は「男性と女性」両方の同性愛を禁じている。・・・第230条に加えて、チュニジア当局は反LGBTIQ的抑圧を正当化する、刑法のその他いくつかの条項をよりどころとしており、それには第226 a条(「公序良俗に反する行為」を犯罪化)、第228条(「強制わいせつ行為」を犯罪化)、および第231条(「勧誘行為」と「売春」を犯罪化)を含む。」③ 「数多くの誹謗中傷攻撃と日常的な威嚇行為にもかかわらず、チュニジアのLGBTIQ擁護者と人権活動家たちは、ほとんど引き下がる気 配を見せていない。・・・2017年5月の普遍的・定期的レビュー(UPR)では、活動家たちが重要かつ象徴的な勝利を収めた。チュニジア政府代表が性的指向を根拠とした差別を、初めて正式に認めたのだ:「性的指向を根拠にした差別について、憲法の下、あらゆる形態の差別、憎悪、および憎悪の扇動は憲法違反である。いかなる性的指向の人も、完 全な権利を有する・・・。性的指向を根拠として、だれかに対して行われたいかなる侵略行為も犯罪であり、起訴される可能性がある。」政府代表は第230条の廃止には、言及を一切しなかっ 向の人も、完 全な権利を有する・・・。性的指向を根拠として、だれかに対して行われたいかなる侵略行為も犯罪であり、起訴される可能性がある。」政府代表は第230条の廃止には、言及を一切しなかったものの、彼が事実を認めたことだけでも、より広範な法改正を推し進めるという、LGBTIQ団体の決意を増大させた。」 ④ 「代表者のUPRコメントにもかかわらず、第230条が近い将来消えてなくなる可能性はほとんどない。2015年6月、エジプトのテレビのインタビューで、チュニジア大統領Cは、チュニジアのソドミー法をはっきりと擁護しており、彼の対談者に、第230条が取り消されることはないだろうと断言した。しかし、このインタビューの2年後の2 017年8月、C大統領は、個人の権利と男女平等を保証する任務を担 - 13 -った委員会の設立を発表した。進歩的な国会議員(MP)で有望なチュニジア人フェミニストのDが議長を務めるこの委員会には、チュニジアにおける個人の自由と男女平等の状況について、包括的な報告書を作成するために、また対応する法改正を提案するために、6ヶ月が与えられた。」 イアメリカ合衆国国務省「チュニジア人権報告書 2018年版」(乙18)(以下、いずれの年のものかを問わず、同国国務省が作成した「チュニジア人権報告書」及び「国別人権報告書:チュニジア」を、「米国国務省報告」と総称し、これらのうちいずれかの年のものにつき、「米国国務省報告(2018版)」などという。)には、次の記述がある。 ① 「人権問題として、・・・同意に基づく同性間の性行為の犯罪化による、治安部隊による逮捕及び継続的な武力の使用や強制的な肛門検査を含む虐待、レズビアン、ゲイ、両性愛者、性同一性障害者及び半陰陽(LGBTI)の人を て、・・・同意に基づく同性間の性行為の犯罪化による、治安部隊による逮捕及び継続的な武力の使用や強制的な肛門検査を含む虐待、レズビアン、ゲイ、両性愛者、性同一性障害者及び半陰陽(LGBTI)の人を標的とする社会的暴力及び暴力の脅しなどが挙げられる。」(1頁) ② 「法律で定義されていない用語である「風紀」又は「社会的良識」を乱すと見なされる公の場での演説は、依然として犯罪行為として扱われている。・・・数回のデモの中で、LGBTIの個人の権利の象徴であるレインボー・フラッグについて当局がとった政策は一貫性に欠けている。 当局は2018年1月にチュニスにおける個人の自由拡大を要求するデ モを承認した。しかし、当局は繰り返し、組織委員にレインボー・フラッグを掲げないことを求め、許可に条件を付けた。認められたデモの最中に参加者が旗を掲げると、警察は「参加者自身の安全のため」、繰り返し群衆を追い払った。2018年8月13日にチュニス中心部で実施された、基本的な自由と平等を支持するデモの際、活動家はレインボー ・フラッグを掲げたが、治安部隊が象徴的な演説を制限する事件も制限 - 14 -を試みることもなかった。」(9頁)③ 「法律は、ソドミーを刑法上の犯罪としている。・・・NGOによると、当局は時にソドミーを禁止する法律を利用して、性的活動及び性的指向について尋問するために拘束することがある。また、報告によると外見のみで判断されることがある。NGOの報告によると、「倫理及び 公衆道徳の侵害」を刑事犯罪とし、6か月の禁固刑及び1000ディナール(370ドル)の罰金刑を科す刑法の条項に基づき、LGBTIの者が標的にされている。市民社会団体のADLIの報告によると、2018年年初から10月までにホモセクシュアリティ 刑及び1000ディナール(370ドル)の罰金刑を科す刑法の条項に基づき、LGBTIの者が標的にされている。市民社会団体のADLIの報告によると、2018年年初から10月までにホモセクシュアリティの容疑で120人が逮捕及び起訴されている。」(22頁) ④ 「チュニスの医療命令国家評議会(NationalCounciloftheMedicalOrder)は2017年に、世界保健機関(WorldHealthOrganization)と国連が拷問行為にあたるとしている強制的な肛門及び性器検査の実施を止めるよう医師に要請する声明を発表した。人権団体及びLGBTIに重点を置くNGOは、裁判官は任意検査を拒否する者を有罪と仮定す ることが多いため、この声明はこうした検査に対する抑止効果も、ソドミー禁止法に基づいて禁固刑に処せられる人を減らす効果もないと述べている。チュニジアのLGBTIの権利を擁護するNGO、シャムス・アソシエーションの報告によると、警察による身体的な強制を伴う肛門検査は減少しているが、警察及び裁判所職員が個人の検査拒否をホモセ クシュアリティの「証拠」として利用することが頻繁に発生しているため、強制的な肛門検査の件数は増加している。」(22頁)⑤ 「LGBTIの者は依然として殺害や強姦の脅しを含む、差別と暴力に直面しているが、社会的な偏見及びソドミー禁止法に基づく起訴の恐怖から問題を報告することを躊躇している。2018年5月、LGBT Iの権利団体は共同で、300人のLGBTIを対象に、経験した暴力 - 15 -の種類と暴力の加害者及び発生場所について調べた調査結果を発表した。この調査によると、調査対象者の50パーセント以上が実際の性的指向又はその疑いから、公共の場で侮辱され 験した暴力 - 15 -の種類と暴力の加害者及び発生場所について調べた調査結果を発表した。この調査によると、調査対象者の50パーセント以上が実際の性的指向又はその疑いから、公共の場で侮辱されたことがあると答えている。 また、過去6年間に同じ理由で身体的な脅し又は攻撃を受けたと報告した者は24パーセントであった。」(22頁) ⑥ 「雇用、住宅、教育又は医療の利用における性的指向又は性自認に基づく公式の差別の報告は依然としてないが、LGBTIの者に対する体系的なサービスの拒否及び社会経済的な差別の幅広い事例証拠があることがこの調査から明らかである。調査の回答者の約25パーセントはLGBTIの状況のために就労を拒否されたことがあり、10パーセント がLGBTIの状況を理由に診療又は検査を少なくとも1回拒否されたことがあると報告している。」(22頁)ウアメリカ合衆国国務省「チュニジア人権報告書 2019年版」(米国国務省報告〔2019版〕、乙16)には、次の記述がある。 ① 「深刻な人権問題として・・・レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、ト ランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人々を標的とする社会的暴力及び暴力の脅し、同意に基づく同性間の性行為の犯罪化に起因する逮捕や治安部隊による虐待、などが挙げられる。」(1頁)② 「政治プロセスに女性及びマイノリティー・コミュニティの構成員が参加することを禁じる法律はなく、実際に参加しており、例えば201 9年9月15日の大統領選挙の第1回の投票には2名の女性が立候補していた。・・・チュニジアにとっては初めて、ゲイであることを公言する候補者1名が大統領選への立候補を届け出たが、結局、出馬に必要な支持者の基準を満たすことができなかった。」(17頁) 性が立候補していた。・・・チュニジアにとっては初めて、ゲイであることを公言する候補者1名が大統領選への立候補を届け出たが、結局、出馬に必要な支持者の基準を満たすことができなかった。」(17頁)③ 「法律は、ソドミーを刑法上の犯罪としている。・・・NGOによる と、当局は時にソドミーを禁止する法律を利用して、性的活動及び性的 - 16 -指向について尋問するために拘束することがある。また、報告によると外見のみで判断されることがある。NGOの報告によると、「倫理及び公衆道徳の侵害」を刑事犯罪とし、6か月の刑及び1000ディナール(347ドル)の罰金刑を科す刑法の条項に基づき、LGBTIの者が標的にされている。」(25頁) ④ 「LGBTIの人々は、依然として殺害や強姦の脅しを含む差別と暴力に直面しているが、社会的な偏見及びソドミー禁止法に基づく起訴の恐怖から問題を報告することを躊躇している。2019年7月18日、スース第一審裁判所は、2人の若い男性に対し、同性愛関係を犯罪と定める1913年刑法の第230条に基づきそれぞれ18か月の刑を言い 渡した。NGOのシャムス・アソシエーション(ShamsAssociation)によると、被告の1人は勾留中に性的指向を理由にセクシャル・ハラスメントの被害に遭ったと報告している。」(25頁)⑤ 「人権団体及びLGBTIに重点を置くNGOは、裁判官が引き続きソドミー禁止法に基づき個人を投獄しており、また、自主的に検査を受 けることを拒否した場合は有罪を認めたものと裁判官がみなすため、肛門検査を強要していることになると述べた。・・・NGO団体の連合、CivilCollectiveforIndividualLiberties は、・・・「2017年以来の 官がみなすため、肛門検査を強要していることになると述べた。・・・NGO団体の連合、CivilCollectiveforIndividualLiberties は、・・・「2017年以来の、肛門検査を行わないというチュニジア当局の約束にもかかわらず、裁判所は依然としてこの検査を命じている」と述べた。」(25頁) ⑥ 「2019年中、少数の政治家がLGBTIコミュニティの人々の権利拡大のために支持を表明した。2018年10月、国民代表議会の10名の議員が、同性愛の非犯罪化、性同一性を認めること、及び同性愛嫌悪を処罰することを提案する法案を提出した。2019年2月11日、ナフダ党の幹部、Eは、依然として肛門検査が行われていることを、人 権及び個人の尊厳の侵害であると非難した。2019年4月3日、 - 17 -MachrouTounes 党のF党首は、シャムス・アソシエーションの代表者らと面会し、LGBTIの権利に対する支持を公的に表明した。」(26頁)⑦ 「雇用、住宅、教育へのアクセス又は医療における性的指向又は性同一性に基づく公式の差別の報告は依然としてなかった。」(26頁) エ 2020年(令和2年)における各種報告(ア) アメリカ合衆国国務省「チュニジア人権報告書 2020年版」(米国国務省報告〔2020版〕、乙22)には、次の記述がある。 ① 「重大な人権問題の例として・・・レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー及びインターセックスの人々を標的とする社 会的暴力及び暴力の脅威、合意の上での同性同士の性行為を刑事犯罪とする規定による結果的な治安部隊による逮捕や虐待・・・」(1頁)② 「法律ではソドミーを刑事犯罪としている。・・・複数のNGOによると、当 暴力の脅威、合意の上での同性同士の性行為を刑事犯罪とする規定による結果的な治安部隊による逮捕や虐待・・・」(1頁)② 「法律ではソドミーを刑事犯罪としている。・・・複数のNGOによると、当局は時々、ソドミー禁止法を用いて人々を拘禁し、性的活動や性的指向を質問していたが、報告によると時には外見だけで判断す ることもあった。複数のNGOによると、一部の事例ではレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー及びインターセックス(LGBTI)者が「道徳性又は公衆道徳の侵害」を刑事犯罪とする刑法条項の下で標的にされ、その場合、懲役6か月及び1000ディナール(369ドル)の罰金に処せられる。」(29頁) ③ 「LGBTI者は依然、殺害や強姦の脅威を含む、差別や暴力に直面していたが、社会的汚名やソドミー法の下で訴追される不安から、彼らは問題の報告を阻まれていた。」(29頁)④ 「(2020年)1月13日、チュニス市街地の第7警察署所属の警察官1人と共犯者2人が、申立てによると3人のトランスジェンダ ー女性をテーザー銃と拳を使って襲撃した。LGBTI権利団体のダ - 18 -ムジ(Damj)によると、彼らはGというあだ名の1人に内出血と頭蓋骨骨折を含む重症を負わせた。・・・ダムジによると、Gは警察官1人を(2020年)1月11日にセックス労働者に対する嫌がらせの容疑で告訴しており、2日後にチュニスで友人と一緒に歩いていたところ、同じ警察官に遭遇した。警察官は他の2人と一緒に、その前の告 訴の仕返しに彼女を襲撃した。内務省は関係した主犯の警察官を停職処分とし、内部捜査を開始した一方、司法省検事総長室(GeneralProsecutors’ Office)は別の刑事捜査を開始した。(2020年) 女を襲撃した。内務省は関係した主犯の警察官を停職処分とし、内部捜査を開始した一方、司法省検事総長室(GeneralProsecutors’ Office)は別の刑事捜査を開始した。(2020年)6月17日のダムジの説明によると、エル・ケフの裁判所は同性同士の性的関係を刑事犯罪とする第230条の下で3件の事件で懲役刑を 言い渡した。ある事件では警察官による虐待を告訴した人物が、同性愛及び警察官の感情を害する行為を刑事犯罪とする条項の下で告訴された。」(29頁)⑤ 「(2020年)7月28日、上訴裁判所はソドミーで告発された男性2人の有罪判決を支持したが、量刑を懲役1年に減刑した。エル ・ケフ第一審裁判所は当初、(2020年)6月3日に男性2人に同性愛を理由に懲役2年を言い渡していた。 ダムジとASF(国境なき弁護士団〔LawyerswithoutBorders〕)によると、2019年に第230条の下で121人が有罪とされ、これらの有罪判決の大部分で肛門検査が根拠に使われた。(2020年) 3月から9月にかけて、ダムジは公の場でのトランスジェンダー者に対する暴力事件を21件、拷問を10件、及び拘禁施設での治安部隊によるいじめを2件登録した。また当局は、「ソドミー」、「不道徳の計画的な申告」及び「公職者の侮辱」をそれぞれ刑事犯罪とする第230条、第226条及び第125条の下、トランスジェンダー者とゲ イの男性に12件の懲役刑も言い渡した。複数の人権団体及びLGB - 19 -TIに焦点を当てるNGOによると、判決は多くの場合、自発的に検査に応じることを拒否した者を有罪と想定することから、人々は肛門検査に応じることを強要されたと感じていた。」(30頁)⑥ 「LGBTI問題について発言する人 ると、判決は多くの場合、自発的に検査に応じることを拒否した者を有罪と想定することから、人々は肛門検査に応じることを強要されたと感じていた。」(30頁)⑥ 「LGBTI問題について発言する人々にとっての表現、結社、又は平和的集会の自由を制限する法律はない。とは言え、2019年2 月、シャムズ協会(ShamsAssociation)の約款では同協会がゲイの権利を明示的に唱道することを認めていないという政府の申立てを覆した2016年の判決を、政府は上訴した。2016年の事件に加え、政府は「チュニジア社会は文化的にも法的にも同性愛を拒絶する」と述べ、そしてシャムズ協会が「チュニジアの法律と文化を否定する活 動を実施することにより」政令第3号第3条に違反した、と述べた。 2019年5月、チュニス上訴裁判所はシャムズ協会に有利な裁定を下し、シャムズはLGBTIの権利の唱道によって法律に違反したわけではない、と指摘した。(2020年)2月21日、最高上訴裁判所(SupremeCourtofAppeals)は、市民社会団体としての法的地位を 確認する最終判決を、LGBTI権利を唱道するシャムズ協会に言い渡し、そしてシャムズが同性愛者の権利を唱道することによって結社に関する法律に違反したという国の主張を棄却した。」(30頁)⑦ 「引続き、雇用、住宅供給、教育へのアクセス又は医療における性的指向又はジェンダー同一性に基づく公的な差別に関する情報はな い。」(30頁)(イ) 難民研究フォーラム「LGBTへの迫害状況/国別レポート」(2020年版)(甲6、以下「難民研究フォーラムレポート(2020版)」という。)には、次の記述がある。 ① 「同性愛嫌悪に基づくLGBTへの暴力が2011年以降増加して /国別レポート」(2020年版)(甲6、以下「難民研究フォーラムレポート(2020版)」という。)には、次の記述がある。 ① 「同性愛嫌悪に基づくLGBTへの暴力が2011年以降増加して おり、少なくとも年間80件以上発生していると報告されている。ア - 20 -ムネスティ・インターナショナルの調査によると、被害者が警察から更なる暴力を受けることもあり、ほとんどの被害者が、被害を申し出ていない。また、・・・同性愛者の逮捕は、外見や行動などの性別の固定観念に基づいて行われることが多いとの報告がある。」② 「2017年5月2日、国連人権理事会でのチュニジアの人権状況 の評価において、チュニジア政府が、成人の同性間の合意に基づく性交渉を犯罪化しており、同性間の性交渉の罪に問われた人々に対して、肛門検査を強要していることが問題視された。チュニジアの刑法第230条は、ソドミーを3年以下の懲役で処罰している。植民地時代の同性行為を禁止する法律を維持しているが、実際は適用していない国 が多くある中、チュニジアは同性間の合意に基づく行為を積極的に起訴しており、2015年から2017年の間で少なくとも9名の男性とトランスジェンダーの女性が有罪判決を受けた。」③ 「チュニジア人学生のH氏は、2015年12月に南部の都市カイロアンで、警察にソドミーの容疑で逮捕され、法医学者による強制肛 門検査を受けたことをHRWに訴えた。」④ 「2015年、同性間で性的関係を持ったとして、22歳の学生が懲役1年を言い渡された。この男性は、性交渉の証拠を提出するために肛門検査を強制させられた。この件をめぐり、チュニジアでは同性愛に関する議論が活発化した。・・・メディアのインタビューに応じ たI法務大臣は、男性間 。この男性は、性交渉の証拠を提出するために肛門検査を強制させられた。この件をめぐり、チュニジアでは同性愛に関する議論が活発化した。・・・メディアのインタビューに応じ たI法務大臣は、男性間の性行為と女性間の同性愛を犯罪とする刑法230条は、チュニジア憲法で保証されている私生活の権利を侵害しており廃止すべきであると認めた。しかし、これまで法改正は行われていない。」オ 2021年(令和3年)における報告及び報道 (ア) アメリカ合衆国国務省「2021年国別人権報告書:チュニジア」(米 - 21 -国国務省報告〔2021版〕、甲5)には、次の記述がある。 ① 「以下の信頼できるレポートを含む重大な人権問題が報告されている・・・レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスの人々を対象とした暴力または暴力の脅威を伴う犯罪;成人間の合意に基づく同性の性的行為の犯罪化・・・」 ② 「法律は、成人間の合意に基づく同性の性的行為を犯罪としている。 法律のフランス語版では「ソドミー」という言葉のみが使用されているが、優先されるアラビア語版では、男性間および女性間の同性愛行為について具体的に言及している。有罪判決には最高3年の懲役が科せられる。NGOによると、当局は時折法律を使用して、性的行動や 性的指向に関して人を拘留し、尋問している。NGOの報告によると、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックス(LGBTQI+)の個人は、「道徳または公衆道徳の侵害」を犯罪とする刑法の規定の対象となり、懲役6か月の刑及び1000ディナールの罰金(370ドル)が課せられる。」 ③ 「LGBTQI+の個人は、死やレイプの脅迫や社会的汚名を含 徳の侵害」を犯罪とする刑法の規定の対象となり、懲役6か月の刑及び1000ディナールの罰金(370ドル)が課せられる。」 ③ 「LGBTQI+の個人は、死やレイプの脅迫や社会的汚名を含む差別や暴力に直面し続け、起訴の恐れから、差別的な暴力や脅迫を報告することを思いとどまらせている。人権団体は、警察によるLGBTQI+の個人の逮捕の増加、および社会的嫌がらせの事例を報告した。申し立てには、一部の警察組合が1月と2月にLGBTQI+の 参加者を標的にして、自宅の住所や写真をオンラインで投稿し、オンラインのヘイトスピーチを行ったという報告が含まれていた。・・NGOであるDamjAssociation によると、当局はこの年、「ソドミー」、「道徳または公衆道徳の侵害」、「公務員の侮辱」を刑法の規定に基づいて28人のLGBTQI+の人々に刑を宣告した。」 ④ 「1月8日、警察は、トランスジェンダーの女性であるJと他の4 - 22 -人のトランスジェンダーの個人を公然猥褻と公衆道徳の妨害の罪で逮捕した。DamjAssociation は、1月12日、逮捕を非難し、Jおよびその他のLGBTQI+の拘留中の個人の釈放を求める声明を発表した。組織は、警察官がJの要請にもかかわらず、弁護士へのアクセスを拒否したと述べた。1月23日、スースの第一審裁判所は5人全員 を釈放し、彼らに対するすべての告訴を取り下げた。」⑤ 「自称クィア活動家のKが1月と2月に反政府抗議に参加した後、一部の警察関係者は彼女の写真をFacebook グループに投稿し、彼女の逮捕を求めた。2月27日、Kはチュニスのダウンタウンにある警察署に行き、彼女が嫌がらせや尾行をしたと主張する治安部隊のメンバ ーを告発した。伝えられると ebook グループに投稿し、彼女の逮捕を求めた。2月27日、Kはチュニスのダウンタウンにある警察署に行き、彼女が嫌がらせや尾行をしたと主張する治安部隊のメンバ ーを告発した。伝えられるところによると、彼女が警察署の警官と口頭で口論した後、警察は彼女を逮捕した。3月4日、チュニス裁判所は公務員を侮辱したとして彼女に懲役6か月の刑を言い渡した。Kの支持者たちはチュニス裁判所の外で小さな抗議を行い、市民社会組織は彼女の逮捕を非難し、彼女の釈放を求めた。3月17日、チュニス 控訴院はKに200ディナール(75ドル)の罰金を科し、彼女の釈放を命じた。6月24日、彼女はフランスに亡命を求めるために国を離れると発表した。」⑥ 「3月22日、DamjAssociation の会長であるLは、3月10日に4人の身元不明の人物がLGBTQI+の権利擁護を理由に彼を標的 として物理的に暴行したと報告した。Lは、加害者とそれを阻止しなかったとされる治安当局について検察庁に苦情を申し立てた。DamjAssociation によると、10月21日、チュニスのダウンタウンで2人の警官がLを再び襲撃した。公の報道によると、警官はLの体と顔に何度も打撃を与えた。政府はこの事件について公にコメントしなかっ た。12月1日、国家警察の監察官は事件の調査を開始し、警察の虐 - 23 -待の報告に関連する文書と声明を収集するためにDamj の支援を要請した。」⑦ 「雇用、住居、教育へのアクセス、または医療における性的指向または性同一性に基づく公式の差別に関する情報は引き続きなかった。」(イ) 報道機関「AP通信」は、2021年(令和3年)12月10日、「チ ュニジアのLGBT活動家に対する警察の暴行がパターン化」と 一性に基づく公式の差別に関する情報は引き続きなかった。」(イ) 報道機関「AP通信」は、2021年(令和3年)12月10日、「チ ュニジアのLGBT活動家に対する警察の暴行がパターン化」と題するインターネット記事(甲7。以下「AP通信記事」という。)を配信した。この記事には、次の記述がある。 ① 「チュニジアの著名なLGBTQ活動家が、2人の男から、地面に投げつけられ、殴打され、蹴られるという暴行を受けたと報告した。 2人のうち1人は警察官の制服を着ており、襲撃中彼らは、警官によるこれまでの虐待に対し苦情を申し立てるという「屈辱的な」企てへの罰だと言っていた。・・・10月21日にチュニジアの首都で起きた襲撃事件では、L氏の顔と体にみみずばれや傷跡が残った。彼は首の傷で呼吸困難になり、加害者はノートパソコン、携帯電話、財布を 持ち去ったという。警察はL氏の証言について公式にコメントしていないが、彼の弁護士は警察の内部調査が進行中であると言っている。」② 「警察による暴力は、チュニジアでLGBTQの人々が経験する数多くの問題の一つである。オブザーバーによると、警察官は咎められることなく彼らを殴打し、その行動はますます大胆になってきている。 この北アフリカの国では、同性愛の行為はいまだ犯罪行為であり、最高3年の禁固刑に処される。・・・チュニジアのレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィアの人々に対する態度は改善の兆しがあるものの、活動家によれば、COVID-19の大流行で同国経済が振るわない中、今年の反政府デモを機に警察がより大胆 になったとのことである。」 - 24 -③ 「チュニジア革命以降、民主化が進んだとはいえ、同国は依然として社会的に保守的で、同性愛の非 い中、今年の反政府デモを機に警察がより大胆 になったとのことである。」 - 24 -③ 「チュニジア革命以降、民主化が進んだとはいえ、同国は依然として社会的に保守的で、同性愛の非犯罪化を推進する政治的意志はほとんどない。LGBTQのチュニジア人は、生活の様々な場面で恥辱や虐待を受けている。多くの人々が家族から追放され、失業やホームレスに直面している。警察はいまだに、ソドミー疑われる人々の肛門検 査を行うことができる。」カ 2022年(令和4年)以降の報告及び報道(ア) アメリカ合衆国国務省「2022年国別人権報告書:チュニジア」(米国国務省報告〔2022版〕、甲12、13)には、次の記述がある。 ① 「重大な人権問題には、次の信頼できる報告が含まれていた。・・・ レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスの人を標的とした暴力または暴力の脅迫を伴う犯罪。成人間の合意に基づく同性間の性行為を犯罪とする法律とその法律の執行・・・」② 「法律は、成人同士の同意に基づく同性間の性行為を犯罪としてい るが、警察は、性行為を伴なわないLGBTQI+のアイデンティティも犯罪であるかのように法を執行している。成人同士の同性間の性行為で有罪判決を受けた場合、最高で3年の懲役刑が科される。NGOによると、当局はこの法律を利用し性行為や性的指向に関して人を拘束し尋問することがあり、時には外見だけで判断されることもあっ たという。NGOの報告によると、LGBTQI+の人々が「道徳または公序良俗の侵害」を犯罪とする刑法の条文で標的にされるケースもあり、有罪になると6ヶ月の懲役と罰金が課される。刑法の曖昧な表現と、公序良俗の法的定義がないため、何をもって道徳や公序 々が「道徳または公序良俗の侵害」を犯罪とする刑法の条文で標的にされるケースもあり、有罪になると6ヶ月の懲役と罰金が課される。刑法の曖昧な表現と、公序良俗の法的定義がないため、何をもって道徳や公序良俗の犯罪とするか、警察の大きな裁量が認められている。NGO 「DemocracyfortheArabWorldNow」が6月に発表した報告書の中 - 25 -で、LGBTQI+の権利を擁護するNGO「Shams」の共同設立者で代表を務める弁護士・活動家のM氏は、・・・刑法に基づき、LGBTQI+の人に対する事件が毎年約120件発生していると述べた。人権団体は、LGBTQI+の人々の逮捕が増加し、社会的な嫌がらせの事例も増えていると報告した。・・・LGBTQI+の権利NGO であるDamjAssociation によると、5月と6月に、警察は14人をソドミー罪で、45人のノンバイナリーの人々を「公衆道徳」に関する罪で逮捕した。これらのケースでは、外見に関する認識、手をつなぐなどの無邪気な愛情表現、警察にLGBTQI+であることを自認した後に逮捕されたと報告されている。・・・一部の個人は起訴され、有 罪判決を受けると2ヶ月から1年の懲役刑が言い渡されたが、その他のケースは年末になっても継続中である。」③ 「警察やその他の政府関係者は、LGBTQI+の人々やそのような虐待を報告する人々に対して暴力を行い、それを容認した。LGBTQI+の人々は、殺害やレイプの脅迫を含む差別や暴力、社会的ス ティグマに直面し、訴追を恐れて暴力や脅迫を報告することを躊躇した。・・・当局や医療関係者は、特にゲイ男性に対して、同性間の性行為の証拠を収集するためと称して、強制的に肛門検査を行う行為を続けていた。人権団体は、こ 訴追を恐れて暴力や脅迫を報告することを躊躇した。・・・当局や医療関係者は、特にゲイ男性に対して、同性間の性行為の証拠を収集するためと称して、強制的に肛門検査を行う行為を続けていた。人権団体は、この検査は侵襲的で屈辱的であり、科学的価値がないとして広く批判しているが、禁止する法律はない。」 (イ) LGBT関連団体によるイベントの開催に関する記事2022年(令和4年)9月、報道機関「AL-MONITOR」は、チュニジアにおいて、同月、LGBTの権利を擁護する協会である「モージュディン」が、「モージュディン・クイア映画祭」(MQFF)を開催したとするインターネット記事(乙23。以下「イベント開催記事」とい う。)を配信した。この記事には次の記述がある。 - 26 -① 「開会式は、2022年9月にチュニスの市街地にある映画館で、和気あいあいとしたリラックスした雰囲気の中で行われた。参加者約340名の多くがチュニジア人の若者だったが、彼らは、挨拶やおしゃべりを交わしながら、MQFF の開幕を心待ちにしていた。」② 「MQFF は、刑法第230条に基づいて依然として同性愛を犯罪とみ なして懲役3年以下の刑に処するチュニジアに、重要かつ象徴的な影響を与えた。今回のMQFF が、同性愛を不法とする立場を支持することを繰り返し公言してきたB大統領に対する挑戦的な態度の表れとなったことは間違いない。・・・MQFF 開催の背景には、B大統領が2021年7月25日に権力を掌握して以来1年間、大統領の権限を拡大し、 (例外として一時期、アラブ諸国で民主化が進められたものの)事実上、国全体を支配下に置き、独裁政治に戻すことで変革を推し進めた結果、チュニジアが苦労して手に入れた民主主義による利益が帳消しにされたという として一時期、アラブ諸国で民主化が進められたものの)事実上、国全体を支配下に置き、独裁政治に戻すことで変革を推し進めた結果、チュニジアが苦労して手に入れた民主主義による利益が帳消しにされたという背景がある。7月に国民投票で承認された新たな憲法では、権利や自由を保証するための保護策が弱体化している。また、 同憲法では、チュニジアがイスラム教のウンマ(コミュニティ)の一部であると定め、戒律に基づいて権利の制限(性差別など)を正当化する際に適用することができる規定を新たに設けている。現在の独裁政治への回帰を踏まえると、MQFF スタッフが最優先すべきことは、MQFF来場者のために会場の安全を確保できるよう、十分に配慮することだ った。」③ 「警察官が処罰を受けることなく暴力を振るうことを可能にする、LGBTを犯罪化する風潮の中で、LGBTのチュニジア人を対象とした警察による攻撃は今も続いており、一層激しさを増している。B大統領が定める憲法についての国民投票が行われる数日前に起きた抗 議行動の期間中、同性愛者の権利を主張する活動家に対する弾圧が強 - 27 -化されたことも確認されている。」(ウ) 訴追されたLGBTの者に対する裁判所の判断に係る記事① 2022年(令和4年)11月、報道機関「RIGHTSAFRICA」は、チュニジアの高等裁判所が、同国の反同性愛法(同性間性交処罰規定)について、国際条約及び同年7月25日に新たに採択 されたチュニジア憲法に反して違憲であるとする見解を公表したとするインターネット記事(乙24。以下「違憲判決記事」という。)を配信した。これによれば、チュニジアの憲法裁判所によって覆されない限り、同性間性交処罰規定は引き続き有効とされるものの、同規定によって「起訴さ ーネット記事(乙24。以下「違憲判決記事」という。)を配信した。これによれば、チュニジアの憲法裁判所によって覆されない限り、同性間性交処罰規定は引き続き有効とされるものの、同規定によって「起訴されている被告が大審院による新たな見解を答弁に引 用することが可能になる。」とされている。 ② 2023年(令和5年)1月、報道機関「Africanews」は、チュニジアにおいて、2015年(平成27年)、6名の学生が同性間性交処罰規定に違反したとの容疑で逮捕、起訴され、有罪を宣告(当初は懲役3年であったが、その後40日の拘留に減刑されたと されている。)された後、2018年(平成30年)に大審院により有罪判決が覆され、控訴審に差し戻された事件について、控訴裁判所が、上記学生らのうち1名(クィア活動家であるとされている。なお、他の5名は、いずれも海外に亡命したとされている。)に関する起訴を「無効」とする判決を下したことを報じる内容のインターネット記 事(乙25。以下「起訴無効判決記事」という。)を配信した。ただし、この記事は、末尾において、「チュニジアでは、2011年の革命以来、LGBT+活動家たちが日の目を見るようになってきた。それでも、このような抑圧的な法律が存在し、依然として彼らが暴力的かつ社会的な根絶の対象となっていることから、LGBT+活動家た ちが不安定な状況に置かれていることに変わりはない。」としている。 - 28 -(4) 報告内容を踏まえたチュニジアにおけるLGBTを取り巻く状況の評価ア LGBTを取り巻く状況の評価(ア) 前提事実(1)イのとおり、チュニジアにおいては、同性間の合意による性行為(ソドミー)を犯罪行為として、3年以下の懲役に処する旨の同性間性交処罰規定が置かれ GBTを取り巻く状況の評価(ア) 前提事実(1)イのとおり、チュニジアにおいては、同性間の合意による性行為(ソドミー)を犯罪行為として、3年以下の懲役に処する旨の同性間性交処罰規定が置かれているほか、「倫理及び公衆道徳の侵害」を 犯罪行為として、6か月の懲役及び1000ディナールの罰金に処する旨の倫理侵害処罰規定が置かれている。 しかるところ、上記(3)で摘示した各報告内容によれば、チュニジアにおいて、LGBTの人々は、警察から、同性間性交処罰規定の下で、性的活動及び性的指向について尋問するなどのために逮捕等の身体拘束を 受けることがあり、かかる逮捕等については、その者の「外見だけで」判断されることがあるとか、「外見や行動など性別の固定観念に基づいて行われることが多いとの報告がある。」などとされている。また、LGBTの人々は、そのような性的指向を有すること自体が倫理侵害処罰規定にいう「倫理及び公衆道徳の侵害」であるとの法適用の下で、処罰 を受けることがあるとされている。さらに、チュニジアは、同性間の性行為を禁止する法律を維持する国の中でも、同性間の性行為について積極的に起訴する傾向があるとされており(例えば、チュニジア刑法に基づき、LGBTQI+の人々に対する事件が毎年約120件発生している旨の報告がある。)、しかも、これらの有罪判決の多くは、肛門検査の 結果が重要な証拠とされることが多いところ、裁判官は、任意の肛門検査を拒否する者を有罪と仮定することが多いため、LGBTの人々は、事実上肛門検査を強要されたことになるなどとされている(以上につき、ドイツ財団声明①②、米国国務省報告〔2018版〕③④、同〔2019版〕③④⑤、同〔2020版〕②⑤、難民研究フォーラムレポート〔20 20版〕①~④、 とになるなどとされている(以上につき、ドイツ財団声明①②、米国国務省報告〔2018版〕③④、同〔2019版〕③④⑤、同〔2020版〕②⑤、難民研究フォーラムレポート〔20 20版〕①~④、米国国務省報告〔2021版〕②③、AP通信記事②、 - 29 -米国国務省報告〔2022版〕②③参照)。そして、これらの報告等の内容の信用性に疑いを生じさせるような事情は見受けられない。 これらによれば、チュニジアにおいては、同性愛行為の処罰規定である同性間性交処罰規定がその効力を維持している上、同性愛の性的指向を有することが、倫理侵害処罰規定に定められた「倫理及び公衆道徳の 侵害」に当たるとの法適用がされていることが認められ、LGBTの人々は、これらの規定等の下で、身体拘束を伴う強制捜査や訴追の対象となり得るものと認められる。また、警察による逮捕等については、「外見だけで」判断されることがあるとか、「性別の固定観念に基づいて行われることが多い」との報告内容があることからすれば、第三者をして LGBTであることをうかがわせるような振る舞いや行動(例えば、同性愛であることをうかがわせる服装をすることや、同性のパートナーと手をつなぐ等の愛情表現をすること、警察官に対して自身が同性愛者であることを申告することなど)を行っただけでも、逮捕等の対象となり得る状況にあるものと推認せざるを得ない。そして、これらのことは、 本件不認定処分時(令和3年2月1日)においても同様の状況であったと認められる。 (イ) また、上記(3)で摘示した各報告内容によれば、チュニジアにおいて、LGBTの人々に対する差別や暴力が重大な人権問題となっているとされており、これらの暴力等は、警察官等の公職にある者もこれを行うこ とがあるとされている。そ 内容によれば、チュニジアにおいて、LGBTの人々に対する差別や暴力が重大な人権問題となっているとされており、これらの暴力等は、警察官等の公職にある者もこれを行うこ とがあるとされている。そして、LGBTの人々は、このような差別や暴力の問題に直面しているものの、同性間性交処罰規定等による起訴のおそれなどから、被害を受けていることの報告を躊躇しているとの報告がある(以上につき、ドイツ財団声明①、米国国務省報告〔2018版〕①⑤、同〔2019版〕①④、同〔2020版〕①③④、難民研究フォー ラムレポート〔2020版〕①、米国国務省報告〔2021版〕①③⑤ - 30 -⑥、AP通信記事①~③、米国国務省報告〔2022版〕①③、イベント開催記事③参照)。 これらによれば、チュニジアにおいて、LGBTの人々は、社会的な嫌悪の対象となっており、警察官等の公職にある者による加害も含め、第三者からの暴力等の被害の危険にさらされていると認められる上、上 記(ア)のとおり、警察等の捜査機関が、同性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定を適用し、LGBTの者を積極的に起訴する傾向にあるため、これらの暴力等の問題について警察等の国家機関による保護を受けることが困難な状況にあるものと推認することができる。そして、これらのことは、本件不認定処分時(令和3年2月1日)においても、同様の状況 であったと認められる。 イ被告の主張について(ア) 被告は、チュニジアにおいて、同性間の性交(ソドミー)が刑事犯罪とされているとしても、①チュニジア政府自身が、性的指向を根拠として行われたいかなる侵略行為も犯罪であり、起訴される可能性があると 述べていること、②国政レベルで同性愛を非犯罪化すること等の動きがみられること、③実際にチュ ア政府自身が、性的指向を根拠として行われたいかなる侵略行為も犯罪であり、起訴される可能性があると 述べていること、②国政レベルで同性愛を非犯罪化すること等の動きがみられること、③実際にチュニジア政府がLGBTに対する私人からの違法行為等を未然に防ごうとしており、性的指向ないし性同一性を理由とした、雇用、住居、教育へのアクセスないし医療に係る差別に関する情報がないこと、④チュニジアにおいて、国の権能の一つである司法権 は独立して正常に作用しており、特に上級裁判所においては、LGBTについて寛容な判断を示す姿勢が認められること、⑤警察官の私怨による疑いがあるLGBTに係る犯罪行為について、チュニジアの警察の組織立った関与は認められず、LGBTの人々やその権利団体関係者に対し、警察権が不当に行使されるなどの濫用は認められないことを指摘し、 これらによれば、チュニジアにおいて原告が同性愛者であることを理由 - 31 -に直ちに迫害を受けるおそれがあるとは認められない旨主張する。 (イ) まず、上記①についてみると、ドイツ財団声明③によれば、チュニジア政府は、2017年(平成29年)5月に発表した普遍的・定期的レビュー(UPR)において、「性的指向を根拠にした差別について、憲法の下、あらゆる形態の差別、憎悪、および憎悪の扇動は憲法違反である。 いかなる性的指向の人も、完全な権利を有する・・・。性的指向を根拠として、だれかに対して行われたいかなる侵略行為も犯罪であり、起訴される可能性がある。」との見解を表明したと報告されている。 しかし、ドイツ財団声明においても、「代表者のUPRコメントにもかかわらず、第230条(同性間性交処罰規定)が近い将来消えてなく なる可能性はほとんどない。」とされているし(ドイ れている。 しかし、ドイツ財団声明においても、「代表者のUPRコメントにもかかわらず、第230条(同性間性交処罰規定)が近い将来消えてなく なる可能性はほとんどない。」とされているし(ドイツ財団声明④)、上記アで述べたとおり、ドイツ財団声明の発出以降に発表された各種報告や記事等においても、チュニジアにおいて、LGBTの人々が警察等により逮捕や訴追の対象とされていることや、差別や暴力の対象となっているものの、同性間性交処罰規定等による訴追を恐れて問題の報告を躊 躇せざるを得なくなっていることが引き続き述べられているのであって、上記のチュニジア政府によるUPRでのコメントがされたことをもって、チュニジア政府がLGBTの人々に対する効果的な保護を図っているとも、チュニジアにおけるLGBTの人々をめぐる状況が改善しているとも評価することはできない。 (ウ) また、上記②についてみると、米国国務省報告(2019版)②⑥によれば、チュニジアの政治プロセスにマイノリティ・コミュニティの構成員が参加することを禁じる法律はなく、2019年(令和元年)9月に実施された大統領選挙において、ゲイであることを公言する候補者1名が立候補を表明した(ただし、同人は、出馬に必要な支持者の基準を 満たすことができなかったとされる。)とか、同年中、少数の政治家が - 32 -LGBTコミュニティの人々の権利拡大のために支持を表明し、2018年(平成30年)10月には、国民代表議会の10名の議員が、同性愛の非犯罪化、性同一性を認めること、及び同性愛嫌悪を処罰することを提案する法案を提出したなどという内容が報告されている。 しかし、上記の事情は、チュニジアにおけるLGBTの人々に係る人 権状況を改善することを目指した政治的な動き び同性愛嫌悪を処罰することを提案する法案を提出したなどという内容が報告されている。 しかし、上記の事情は、チュニジアにおけるLGBTの人々に係る人 権状況を改善することを目指した政治的な動きであるとみることができるものの、これらの結果、同性間性交処罰規定が実際に改正又は廃止されたわけではなく、実際、上記アで摘示した報告内容等をみても、これらの動きが報告された後も、依然として、警察等によるLGBTの人々に対する逮捕・訴追の問題や、LGBTの人々に対する差別や暴力の問 題が引き続き報告されている。しかも、2019年(令和元年)10月にチュニジアの大統領に就任したB大統領が、同性愛を不法とする立場を支持することを繰り返し公言しているところ、同大統領が、2021年(令和3年)7月以降、非常事態宣言を発令したり、2022年(令和4年)7月に新たな憲法を制定したりするなどして、権力を拡大してい ること(前提事実(1)ア、イベント開催記事②、甲14、乙21)に照らすと、同性間性交処罰規定等が今後改正又は廃止される可能性は乏しいものとみられる。そうすると、被告が指摘する上記の政治的な動きをもって、チュニジアにおけるLGBTの人々をめぐる状況が改善されたと評価することはできない。 (エ) また、上記③についてみると、米国国務省報告(2018版)②によれば、チュニジアの当局は、2018年(平成30年)1月にチュニスで行われた個人の自由拡大を要求するデモを承認し、デモの最中に参加者がLGBTの個人の権利の象徴であるレインボー・フラッグを掲げると、警察は、「参加者自身の安全のため」、繰り返し群衆を追い払った とか、同年8月13日に実施された基本的な自由と平等を支持するデモ - 33 -の際、活動家がレインボー・ ラッグを掲げると、警察は、「参加者自身の安全のため」、繰り返し群衆を追い払った とか、同年8月13日に実施された基本的な自由と平等を支持するデモ - 33 -の際、活動家がレインボー・フラッグを掲げたが、治安部隊が象徴的な演説を制限することを試みることもなかったなどと報告されている。 しかし、上記の報告内容全体をみると、「法律で定義されていない用語である「風紀」又は「社会的良識」を乱すと見なされる公の場での演説は、依然として犯罪行為として扱われている。」、「数回のデモの中 で、LGBTIの個人の権利の象徴であるレインボー・フラッグについて当局がとった政策は一貫性に欠けている。」などとも報告されているのであって、上記報告内容に係る事例が存在することをもって、チュニジア政府が私人による違法行為等からLGBTの人々を保護しようとしていると評価することには無理がある。この点を措いても、上記アで 摘示したとおり、チュニジアにおいては、2019年(令和元年)以降も、警察等によるLGBTの人々に対する逮捕や訴追の問題や、LGBTの人々に対する差別や暴力等の問題が引き続き報告されており、かえって、上記(ウ)で述べたとおり、同性愛を不法とする立場を支持する大統領が権力を拡大しようとする動きがみられることや、警察等に関して も、特に2021年(令和3年)以降、LGBTの個人の逮捕が増加し、LGBTの人々に対する警察による暴力が激しさを増しているとの報告もみられること(米国国務省報告〔2021版〕③、AP通信記事②、米国国務省報告〔2022版〕②、イベント開催記事③)からしても、チュニジア政府がLGBTの人々に対する私人からの違法行為等に対 し効果的な保護を与えていると評価することはできない。 ま 務省報告〔2022版〕②、イベント開催記事③)からしても、チュニジア政府がLGBTの人々に対する私人からの違法行為等に対 し効果的な保護を与えていると評価することはできない。 また、米国国務省報告(2019版)⑦、同(2020版)⑦及び同(2021版)⑦によれば、チュニジアにおいて、性的指向ないし性同一性を理由とした、雇用、住居、教育へのアクセスないし医療に係る公的な差別の情報は引き続きなかった旨が報告されている。 しかし、雇用、住居及び教育へのアクセスないし医療に関し、「公的」 - 34 -に性的マイノリティの人々を差別するか否かの問題と、LGBTの人々に対して刑罰法規を適用して逮捕及び訴追するか否かの問題とは異なる次元の問題であり、上記の報告内容は、チュニジアにおけるLGBTを取り巻く状況に関する上記アの認定判断を左右するに足りない(かえって、上記ア(イ)で摘示したとおり、チュニジアにおいて、LGBTの人 々は差別ないし暴力の対象となっており、起訴等を恐れて問題の報告を躊躇しているとの報告内容がみられることからすれば、LGBTの人々に対する雇用、住居及び教育へのアクセスや医療に関して「公的」な差別が確認されていないのは、それだけLGBTの人々が自己の性的指向を秘匿して生活せざるを得ない状況となっていることによるものであ るとも考え得る。)。 (オ) さらに、上記④についてみると、米国国務省報告(2021版)④によれば、2021年(令和3年)1月8日、警察は、トランスジェンダーの者ら5名を公然わいせつ及び公衆道徳の妨害の罪で逮捕したが、同月23日、スースの第一審裁判所は、5人全員を釈放し、同人らに対す る全ての告訴を取り下げたとの報告がされている。また、違憲判決記事 ら5名を公然わいせつ及び公衆道徳の妨害の罪で逮捕したが、同月23日、スースの第一審裁判所は、5人全員を釈放し、同人らに対す る全ての告訴を取り下げたとの報告がされている。また、違憲判決記事によれば、2022年(令和4年)11月、チュニジアの高等裁判所は、同性間性交処罰規定につき、同年7月に新たに採択された憲法に反して違憲であるとする判断を示したとされているほか、起訴無効判決記事によれば、2023年(令和5年)1月、同性間性交処罰規定に違反した として起訴され、有罪判決が言い渡された学生に係る刑事事件につき、ケルアンの控訴裁判所は、大審院から事件の差戻しを受けた結果、起訴が「無効」であるとの判決を下したとされている。 しかし、そもそも、本件で判断すべきは、本件不認定処分時(令和3年2月1日)において原告が難民であると認められるか否かであるとこ ろ、上記判決のうち、違憲判決記事及び起訴無効判決記事に係る2件の - 35 -判決は、いずれも本件不認定処分及びこれを不服としてされた本件審査請求に係る本件裁決(令和4年5月13日)の後になされたものにすぎない。この点を措いても、これらの判決は、いずれも一部の下級審裁判所による判断にとどまり、これらをもってチュニジアの上級裁判所がLGBTについて寛容な判断を示す傾向があると直ちにいうことはでき ないし、同性間性交処罰規定の効力が左右されるものでもなく(違憲判決記事においても、同性間性交処罰規定は引き続き有効とされている。)、LGBTの人々が同性間性交処罰規定に基づく処罰の対象となり得ることを否定するに足りない(実際に、2021年〔令和3年〕及び2022年〔令和4年〕においても、一定数のLGBTの個人が、同 性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定に違反した 処罰の対象となり得ることを否定するに足りない(実際に、2021年〔令和3年〕及び2022年〔令和4年〕においても、一定数のLGBTの個人が、同 性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定に違反したとして有罪判決を受けたとの報告がみられる。米国国務省報告〔2021版〕③及び同〔2022版〕②参照)。また、一部の下級審裁判所が、同性間性交処罰規定等に違反したとして起訴された事件について、LGBTの人々に有利な判断を下したからといって、警察等がLGBTの人々に対する逮捕や 訴追に消極的になるとは限らず(起訴無効判決記事も、その末尾において、抑圧的な法律が存在することで、依然としてLGBTの人々が暴力的かつ社会的な根絶の対象となっており、不安定な状況に置かれていることに変わりはないとしている。)、上記(エ)で述べたとおり、2021年(令和3年)以降、LGBTの個人の逮捕が増加しているとか、LG BTの人々に対する警察による暴力が激しさを増しているとの報告もみられることも踏まえれば、上記の判決がされたことをもって、LGBTの個人に対する逮捕や訴追のおそれが消滅したとはいえない。 なお、米国国務省報告(2020版)⑥によれば、チュニジアの最高上訴裁判所は、シャムズ協会(ShamsAssociation)につき市民社会団体 としての法的地位を確認し、同協会が同性愛者の権利を唱道することに - 36 -よって結社に関する法律に違反したという国の主張を棄却する旨の判決を言い渡したとされている。 しかし、この判決は、シャムズ協会の市民社会団体としての法的地位の有無や、同協会が同性愛者の権利を唱道することについての法律違反の有無が判断されたにとどまるものであるし、上記アで摘示したとお り、2021年(令和3年)以 協会の市民社会団体としての法的地位の有無や、同協会が同性愛者の権利を唱道することについての法律違反の有無が判断されたにとどまるものであるし、上記アで摘示したとお り、2021年(令和3年)以降も、LGBTの人々に対する逮捕・訴追の問題が引き続き報告されていることに照らしても、かかる判決は、チュニジアにおいてLGBTの人々が逮捕や訴追の対象となり得るとの上記ア(ア)の判断を左右しない。 (カ) そして、上記⑤の点についてみると、米国国務省報告(2020版) ④によれば、2020年(令和2年)1月13日、警察官ら3名が3人のトランスジェンダー女性を襲撃する事件が発生したところ、被害者のうち1名は、上記警察官をセックス労働者に対する嫌がらせの容疑で告訴しており、上記警察官はその告訴の仕返しとして上記事件を起こしたとされ、内務省は、関係した主犯の警察官を停職処分とし、内部捜査を 開始したとされている。また、米国国務省報告(2021版)⑥及びAP通信記事①によれば、2021年(令和3年)10月21日、チュニジアのLGBTの権利団体であるダムジ(DamjAssociation)の会長である者が、2人の男から暴力を受けるという事件が発生したところ、その加害者のうちの1人は警察官の服装を着ており、その襲撃中、加害者 らは、被害者に対し、「警官によるこれまでの虐待に対し苦情を申し立てるという「屈辱的な」企てへの罰だ」と言っていたとされているが、被害者の弁護士によれば、上記事件について警察による内部調査が進行中であるとコメントしたとされている。 確かに、これらの報告や報道に係る警察官によるLGBTの人々に対 する襲撃事件は、いずれも警察官が被害者から告訴や苦情を受けたこと - 37 -に対し メントしたとされている。 確かに、これらの報告や報道に係る警察官によるLGBTの人々に対 する襲撃事件は、いずれも警察官が被害者から告訴や苦情を受けたこと - 37 -に対し、被害者らに対して私的な恨みを抱いた上での暴力であることがうかがわれ、チュニジア警察の組織的な関与はうかがわれず、チュニジア政府は、これらの襲撃事件について内部調査を実施していることが認められる。しかし、警察官によるLGBTの人々に対する暴力についてチュニジア政府が内部調査等の対処をするか否かと、警察官がLGBT の人々に対して逮捕等の身体拘束や訴追に及ぶか否かとは異なる次元の問題である上、そもそも、米国国務省報告によれば、2018年(平成30年)から2022年(令和4年)までのいずれの年に係るものにおいても、警察、治安部隊及び拘置所による私人への虐待に対するチュニジア政府の調査は透明性に欠け、しばしば長い遅延と手続上の障害に 遭遇したなどと報告されていること(甲5、12、乙16・1頁、18・1頁、22・1頁)からしても、上記事件について内部調査が行われたからといって、チュニジア政府がLGBTの人々に対する暴力等に関して効果的な保護を与えていると推認することはできない。そして、チュニジアにおいて、LGBTの人々が警察等による逮捕等の身体拘束や 訴追の対象となり得ることや、同性間性交処罰規定等による訴追の恐怖から、差別や暴力等の被害を報告することを躊躇せざるを得ない状況に置かれていることは、上記アで述べたとおりである。 (キ) 以上のほかにも、被告は、2022年(令和4年)9月頃、チュニジアにおいて、LGBTの権利を擁護する協会が、「モージュディン・ク イア映画祭」というイベントを開催していること(イベント (キ) 以上のほかにも、被告は、2022年(令和4年)9月頃、チュニジアにおいて、LGBTの権利を擁護する協会が、「モージュディン・ク イア映画祭」というイベントを開催していること(イベント開催記事参照)を指摘する。 しかし、かかる事情も、本件不認定処分(令和3年2月1日)及び本件裁決(令和4年5月13日)の後の事情にすぎない。この点を措いても、上記イベントの開催に対してチュニジア政府がどのように対応した か(上記イベントの開催を承認したか否かや、開催者及び参加者に対す - 38 -る逮捕等がされたか否かなど)は証拠上明らかではないし、むしろ、イベント開催記事によれば、上記イベントの開催は、同性愛を不法とする立場を支持することを公言してきた大統領に対する「挑戦的な態度」を表明する活動であるとされ、チュニジアにおける独裁政治への回帰を踏まえると、イベントの主催者側が最優先すべきことは、「来場者のため の会場の安全を確保できるよう、十分に配慮することだった。」とされていることからしても、上記イベントが開催されたことをもって、チュニジア政府がLGBTの人々の権利を積極的に承認又は保護していると認めることはできず、上記アで述べたLGBTの人々をめぐる状況に係る認定判断を左右するに足りる事情ともいえない。 (ク) したがって、被告の指摘する事情は、いずれもチュニジアにおけるLGBTの人々をめぐる状況に係る上記アの認定判断を左右するに足りるものではなく、被告の上記(ア)の主張は採用することができない。 (5) 原告の供述の信用性についてア原告の供述の要旨 原告は、原告本人尋問において、要旨次のとおり供述する。 原告は、ゲイである。原告は、チュニジアにおいて、 (5) 原告の供述の信用性についてア原告の供述の要旨 原告は、原告本人尋問において、要旨次のとおり供述する。 原告は、ゲイである。原告は、チュニジアにおいて、共通の友人を介して知り合った男性(以下「A」と仮称する。)と交際することとなった。Aと交際する際は、チュニジアの社会において、ゲイの性的指向は望まれないことであることから、原告とAとの恋愛関係を周囲に気付かれないよう に、路上を歩く際に手をつないだり肩を組んだりせず普通の友人関係を装うなどしていた(チュニジアでは、2人の男性が肩を組んで必要以上に親しげにしていることは通常あり得ない。)。しかし、2018年(平成30年)頃、原告とAが一緒に過ごすために借りていた部屋に行くために階段を上っている途中、原告とAの家族の共通の知人に、Aと肩を組んで歩い ているところを見られたことで、Aとの関係が原告及びAの家族に知られ - 39 -ることとなった。(原告本人3~5、16~17頁)原告の父、弟及びおじは、原告とAとの交際を知るや、原告を自宅の部屋に監禁状態にし、原告に対し、暴言や誹謗中傷の言葉を浴びせかけたり、原告の顔や肩、胸、背中、生殖器など、原告の身体のあらゆる場所を殴ったり蹴ったり、プラスチック製のホースで打ち付けたりした。原告の母も、 父らによる暴力を止めてくれなかった。監禁状態にあった期間については、解放された後、当時勤めていた会社から、正当な欠勤理由なく10日以上休んだ旨が記載された手紙を受け取ったり、上司と連絡を取った際、およそ15日間欠勤していると言われたりしたことから、10日あるいは15日以上であると思う。原告は、原告の家族に対し、異性愛者に戻る、Aと の交際関係を絶つなどと誓ったことで、監禁 取った際、およそ15日間欠勤していると言われたりしたことから、10日あるいは15日以上であると思う。原告は、原告の家族に対し、異性愛者に戻る、Aと の交際関係を絶つなどと誓ったことで、監禁状態から解放された。Aも、原告との交際が家族に発覚したことで、家族から暴力を受けたと聞いている。(原告本人5~6、16~19、30~31、35~36、38頁)監禁状態から解かれた後、当初はAとの関係を絶っていたが、しばらくして交際関係に戻った。その後、監禁される前に比べても更に気をつけて Aとの交際を続けていた(例えば、一緒に出かけるときも、時間差をつけて家を出るなどの工夫をした。)が、2019年(令和元年)9月から10月頃、原告とAが一緒に過ごすために借りた部屋(監禁される前に借りていた部屋とは別の部屋である。)の前を、Aと一緒に歩いているところを原告とAの家族の共通の友人に見られたことで、再び関係が知られること となった。原告は、Aとともに、それまで住んでいた実家のあるビセルトを離れ、スースという町に逃げた。スースでは、原告が借りた部屋でAと一緒に生活していた。(原告本人6~7、19~21、32~33頁)スースに逃げた後のある日(原告とAがスースに逃亡してから約1か月が経った頃である。)、原告とAが、片側一車線の道路の左側の車道側に 原告が、一段高い歩道側にAが立つ形で並んで歩いていると、チュニジア - 40 -では車両は右側通行であるにもかかわらず、道路の左側の反対車線を走行し、不自然なほどに原告らに向かってくる車両の音に気付いたため、原告は、左足を歩道側に乗り上げて避けるような体勢をとって後ろを振り返ると、原告らに近づいてくる車両に原告の父、弟及びおじが座っているのが見え、その瞬間に原 らに向かってくる車両の音に気付いたため、原告は、左足を歩道側に乗り上げて避けるような体勢をとって後ろを振り返ると、原告らに近づいてくる車両に原告の父、弟及びおじが座っているのが見え、その瞬間に原告の右腕に近づいてきた車両のミラーが接触した。(原 告本人7~8、21~23、33~34、36~38頁)原告とAは、スースにある大きな警察署に行き、家族に追跡されてひき殺されそうになったことを話して保護を求めた。しかし、警察官から、そのような攻撃を受けた理由を聞かれ、ゲイであることや、Aと交際していることを話したところ、警察官らは、途端に態度を変え、原告に対し、誹 謗中傷の言葉を投げかけたり、ガラスの瓶を肛門に突っ込んでやるとか、拷問する、投獄するなどと言ってきたりした。原告は、このとき初めてチュニジアでは同性愛を処罰する法律があることを知った。原告とAは、このような警察官の対応に恐怖を覚え、いち早くチュニジアから出ようと考え、ビザの取得の必要がなく、簡易に入国手続を済ますことができる国を インターネットで検索し、そのような国として日本に行くことを考えた。 (原告本人8~10、24~25、31~32、34~35頁)その後、原告とAは、スースで借りた部屋に引きこもるようにして生活しつつ、友人に依頼して日本行きの航空チケットを入手し、令和元年の年末(12月31日)に一緒に本邦に上陸した。令和2年の年初に最寄りの 出入国在留管理局が開庁するのを待って同局に書類を取りに行き、同年1月9日に本件申請をした。(原告本人10、26、32頁)イ原告の供述の信用性(ア) 原告の供述のうち、原告がゲイであり、チュニジアでAと交際していたとする部分は、本件申請の時点から一貫して主張し又は供述している ( 人10、26、32頁)イ原告の供述の信用性(ア) 原告の供述のうち、原告がゲイであり、チュニジアでAと交際していたとする部分は、本件申請の時点から一貫して主張し又は供述している (乙8、9)上、原告とAは一緒に本邦に上陸し、Aは、本件申請に係る - 41 -本件事情聴取の際にも原告と一緒に難民調査官の下に出頭していること(乙9)からしても、その信用性に疑いを差し挟む余地はないというべきである(被告も、原告の供述のうち上記の部分については特段争っていない。)。 (イ) 原告の供述のうち、①家族から監禁状態にされた上で暴行を受けたと の部分、②家族が運転する車両でひかれそうになったとの部分、③原告が警察署に行って保護を求めたところ、ゲイであるために暴言を吐かれ投獄を示唆されるなどしたとの部分(以下、順に「原告供述①」などと表記する。)は、これを直接裏付ける客観的な証拠等が存在するわけではなく、被告もその信用性を争っている。 しかし、上記(3)及び(4)で述べたとおり、チュニジアにおけるLGBTをめぐる状況に関する報告等によれば、同国のLGBTの人々は、その性的指向を理由に身体拘束を伴う強制捜査や訴追の対象となり得るとされ、社会的な嫌悪の対象となっており、警察官等の公職にある者も含めて、第三者からの暴力等の被害の危険にさらされているというのであ るから、原告供述③の内容は、こういった報告内容と整合するものといえるし、原告供述①及び②の内容も、イスラム教を国教とするチュニジアの状況等に照らして、あり得ることと考えられる。 また、原告は、家族から上記のような危害を加えられたり、警察署に行って保護を求めたところ投獄を示唆されたりしたという趣旨の主張や 供述を、本件申請の当初から行っており( とと考えられる。 また、原告は、家族から上記のような危害を加えられたり、警察署に行って保護を求めたところ投獄を示唆されたりしたという趣旨の主張や 供述を、本件申請の当初から行っており(乙8、9)、具体的なエピソードに係る原告の上記供述は、その根幹部分において、本件申請時からおおむね一貫しているといえる。また、原告は、原告本人尋問において、監禁状態にあった際の状況(暴行等の態様、食事や排せつの方法、部屋の状況など)、車でひかれそうになった際の状況、警察署に行って保護 を求めた際の状況等につき、相当具体的に供述しており、これらの内容 - 42 -につき、明らかに不自然と思われる部分や、作り話であることが疑われるような部分も見当たらない。 さらに、原告は、令和元年12月31日に本邦に上陸し、令和2年1月9日には本件申請を行っている(前提事実(3)ア及び(4)ア)ところ、原告が本邦に上陸したのは年末年始の期間であったから、原告は来日後 速やかに難民認定申請(本件申請)をしたものといえる。このように、原告が入国後直ちに難民認定申請を行っていることは、原告がチュニジアにおいて危険な出来事に遭遇し、恐怖を感じていたことを裏付けているといえる。 以上によれば、原告の供述のうち、①家族から監禁状態にされた上で 暴行を受けたとの部分、②家族が運転する車両でひかれそうになったとの部分、③原告が警察署に行って保護を求めたところ、ゲイであるために暴言を吐かれ投獄を示唆されるなどしたとの部分(原告供述①~③)についても、上記(ア)と同様、全体として信用することができるというべきである。 ウ被告の主張について(ア) 原告供述①の信用性について被告は、原告供述①(家族から監禁状態にさ (ア)と同様、全体として信用することができるというべきである。 ウ被告の主張について(ア) 原告供述①の信用性について被告は、原告供述①(家族から監禁状態にされた上で暴行を受けた旨の供述)は、監禁状態にあったとされる期間についての主張や供述が理由なく変遷しており、被害を誇張して供述する傾向も見受けられること に加え、原告がこの段階では警察に保護を求める行動をとっていないことも考慮すれば、信用できない旨主張する。 確かに、証拠(乙9)及び弁論の全趣旨によれば、原告の家族から監禁状態にされ暴行を受けた期間等につき、原告は、①本件事情聴取の際には、「父と弟Nと隣に住む叔父から、30分から45分ぐらい拳で殴 られ続けました。」、「その後、10日くらい家から出してもらえません - 43 -でした。」などと供述していた一方で、②本件訴訟の訴状においては、家族に「1か月以上にわたり」監禁され、毎日父や兄弟(後に「弟」に訂正)から暴行を受けた旨主張していることが認められ、その期間について主張と供述が食い違っている。 しかし、原告は、外から鍵をかけられる窓のない部屋に閉じ込められ ていたというのであるから(原告本人15、18頁)、閉じ込められていた期間を正確に特定できないことは必ずしも不自然ではないし、仮に訴状段階の主張(原告訴訟代理人への説明)に不正確な点や誇張が含まれていたとしても、そのことから直ちに、そのエピソード全体を作り話とみるべきものではない。かえって、原告は、少なくとも家族から監禁 状態にされた上で暴行を加えられた旨の主張や供述を、本件申請段階から一貫して行っており、この点に関する原告本人尋問における供述内容も相当具体的なものであることは前述のとおりである。 から監禁 状態にされた上で暴行を加えられた旨の主張や供述を、本件申請段階から一貫して行っており、この点に関する原告本人尋問における供述内容も相当具体的なものであることは前述のとおりである。また、監禁状態にあったとされる期間についても、原告本人尋問において、「10日あるいは15日以上」と供述しているところ、その内容は、本件事情聴取 の際の供述内容(10日くらい)とおおむね整合しており、そのように考える根拠として挙げる事情も、会社からの手紙や上司の発言などといった、具体的かつ合理的なものである(原告本人6頁)。これらの点からすれば、家族に監禁されていた期間に係る主張と供述の食違いを考慮しても、原告供述①は全体として信用するに足りるというべきである。 また、原告が警察に保護を求める行動をとっていないという点についてみても、原告は、当時、外から鍵をかけられる窓のない部屋に閉じ込められ、携帯電話を与えられていなかったと供述しているところ(原告本人15、18頁)、この供述自体に不自然さはないし、このような当時の状況を前提とすれば、原告がその時点で警察に助けを求めなかった ことが不自然とはいえない。また、原告は、原告の家族に対し、異性愛 - 44 -者に戻る、Aとの交際関係を絶つなどと誓ったことで監禁状態から解放されたというのであるから、家族による監禁や暴行に至った理由や経緯も考慮すると、原告が解放された後に警察に保護を求めなかったとしても、特に不自然とはいえない。 したがって、被告が指摘する事情は、家族に監禁状態にされた上で暴 行を加えられたという原告供述①の信用性を否定するに足りないというべきである。被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告供述②の信用性につ は、家族に監禁状態にされた上で暴 行を加えられたという原告供述①の信用性を否定するに足りないというべきである。被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告供述②の信用性について被告は、原告供述②(スースにおいて原告の家族が運転する車両にひかれそうになった旨の供述)について、①規模の大きなスースという都 市において、原告の家族が原告を発見し、その路上において原告を自動車でひき殺そうとするという経緯自体が不自然極まりない、②原告は、車両にひかれそうになった際の状況につき、車両があまりにもスピードを出して大きな音で近づいてきたと述べる一方で、原告がびっくりして後ろを振り向いた瞬間、その車両に原告の家族が乗っているのがすぐに 分かった旨供述するところ、当該車両が高速度で走行していたのであれば、当該車両に乗車している者を識別することは困難であるから、原告の上記供述は不自然である、③チュニジアにおいては、自動車は右側通行であるところ、片側一車線の道路を進行方向に向かって左側の歩道寄りの車道を歩いていた原告の右ひじに、右後方から車両のサイドミラー が当たったという状況は、当該車両が対向車線を乗り越えて原告に向かってきたこととなり、およそ現実離れした挙動といわざるを得ず、不自然である、④原告は、本件事情聴取において、車両に乗っている家族は、「逃がすな。殺せ。」と叫び追いかけてきた旨の供述をしていたところ、原告本人尋問においては、原告の家族から「逃がすな、殺せ」という声 は聞いていないなどと述べており、合理的な理由なく供述が変遷してい - 45 -る、⑤当該車両が路上を歩行する原告と高速度で接触したのであれば、多少の接触であっても相当な受傷は免れないと考えられるところ、原告は、原告 ており、合理的な理由なく供述が変遷してい - 45 -る、⑤当該車両が路上を歩行する原告と高速度で接触したのであれば、多少の接触であっても相当な受傷は免れないと考えられるところ、原告は、原告の家族が運転する車両と接触した際、特段負傷していない旨供述しているのであって、この点でも不自然であるとして、原告供述②は信用できない旨主張する。 まず、上記①の点についてみると、確かに、原告がAと共に逃亡したとされるスースは、人口約77万4000人(令和2年推定)の大きな都市であり(前提事実(1)ア)、全く手がかりなく原告を探し出すのは容易ではないと思われるが、例えば、原告が友人や知人と連絡を取っていれば、そこから居住地域等の情報が漏れることはあり得るし、父がその 人脈等を利用して原告の居住地域等の情報を得ることもあり得るし、Aの家族や知人からそのような情報が漏れることもあり得るから、原告の家族が原告をスースの路上で発見することがあり得ないとはいえないし、不自然であるともいえない。 上記②の点についてみると、原告は、車両にひかれそうになった際の 状況につき、道路の左側の反対車線を走行し、不自然なほどに原告に向かってくる車両の音に気付いたため、歩道側に乗り上げるような形で後ろを振り返ったと供述しており(上記ア)、振り返った際に、原告の家族の車両であることや、車両内の父や弟の姿を確認することができたとしても不自然ではない。また、被告は、車両が高速度で走行していたの であれば、乗車している者を識別することは困難であるというが、原告が身の危険を感じるほどの速度であっても、同時に、車両内の父や弟の姿を識別し得ることは十分あり得るといえ、原告の供述が不自然とはいえない。 上記③の点につい は困難であるというが、原告が身の危険を感じるほどの速度であっても、同時に、車両内の父や弟の姿を識別し得ることは十分あり得るといえ、原告の供述が不自然とはいえない。 上記③の点についてみると、原告の供述を前提とすれば、原告の父や 弟は、原告に危害を加えようとして車両を接近させたと考えられること - 46 -に加え、原告が車両にひかれそうになった当時の道路の交通量は少なかったと原告が供述していること(原告本人22頁)も踏まえれば、原告の父や弟が乗っている車両が対向車線を乗り越えて原告に向かってきたことが、およそ現実離れした不自然な挙動であるとはいえない。 上記④の点についてみると、確かに、原告は、本件事情聴取の際には、 「逃がすな。殺せ。」という声を聴いた旨供述していたが(乙9)、原告本人尋問の際には、そのような声は聞いていない旨供述している(原告本人36頁)。しかし、原告は、原告本人尋問において、車両にひかれそうになって逃げている最中に、追いかけろという言葉を聞いたとも供述しており(同37~38頁)、いずれも通訳を経た供述であることや、 原告本人尋問は本件事情聴取から約3年が経過していることも考慮すると、原告の供述内容が不自然に変遷しているとはいえない。 上記⑤の点についてみても、車両にわずかに接触した程度であれば、車両の速度が速くても、打撲程度で済み、骨折等の大怪我をしないことはあり得るといえ、特段不自然とはいえない。 以上によれば、被告が指摘する事情は、原告の家族が乗る車両にひかれそうになったという原告供述②の信用性を否定するに足りないというべきである。被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 弟とのメッセージのやり取りについて 家族が乗る車両にひかれそうになったという原告供述②の信用性を否定するに足りないというべきである。被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 弟とのメッセージのやり取りについて被告は、原告が令和4年6月頃に弟と通信した際のメッセージのやり 取りに係る証拠(スマートフォンのスクリーンショット。甲4、16)について、①通信の相手方名が原告の弟の名前と一部一致するものの、原告が使用するコミュニケーションアプリの設定次第で、相手方の表示を弟の名前に設定することができるから、当該通信が真に原告と弟ら家族との通信であるかには疑義がある、②上記やり取りの時点で、原告は Aとの交際を終了していたにもかかわらず、原告は、上記やり取りにお - 47 -いて、原告とAとの交際が終了したことについて何ら伝えておらず、不自然であるなどと主張する。 しかし、弟とのメッセージのやり取り(甲4)の存在や内容を殊更考慮にいれなくとも、原告の供述(原告供述①~③)は全体として信用することができるというべきであり、被告が指摘するような疑義や不自然 さがあるからといって、そのことから直ちに、原告の供述の信用性が否定されるものではない。 また、被告が指摘する事情についてみても、上記①の点については、設定次第で相手方の表示を弟の名前にすることができるというものにすぎず、実際に原告がそのような設定をしたとか、虚偽の証拠を作出した ことをうかがわせる具体的な事情や不自然な点があるわけではない。また、上記②の点については、原告と相手方(弟)とのやり取りをみると、弟は、Aとの交際が続いているからではなく、原告が同性愛者(ゲイ)であることから、原告を許さないと述べているように見え、原告が、Aとの交際が終 点については、原告と相手方(弟)とのやり取りをみると、弟は、Aとの交際が続いているからではなく、原告が同性愛者(ゲイ)であることから、原告を許さないと述べているように見え、原告が、Aとの交際が終了したことを伝えることなく、「私を許してほしい」など と懇願していたことは、やり取りの全体的な内容から見て必ずしも不自然とはいえない。 したがって、弟とのメッセージのやり取り(甲4)に被告が指摘するような疑義や不自然さがあるからといって、原告の供述の信用性が否定されるものではないし、被告が指摘する事情は、上記やり取りの信用性 を否定するに足りるものでもない。被告の上記主張は採用することができない。 (エ) 弟とのビデオ通話の動画について被告は、原告が令和5年7月頃に原告の弟とビデオ通話を用いて会話している状況を撮影したとする動画(甲20)について、①原告は、会 話の相手方が弟であることについて、何ら客観証拠を提出していないし、 - 48 -第三者をして原告の弟であるとすることも可能であるから、通話の相手方が原告の弟であるとは認められない、②上記ビデオ通話を行う経緯につき、原告は、原告訴訟代理人弁護士が勧めた旨供述するが、そもそも上記(ウ)のメッセージのやり取りの際に、原告の弟は原告に対し暴言を吐いていたのであるから、あえて更に関係が悪化するような通話をする合 理的な理由は見当たらず、ましてや、それを代理人弁護士が勧めること自体にわかに信じ難い(さらに、当該ビデオ通話は、本件訴訟に有益な証拠を得るべくあえて行われたものであることもうかがえる。)、③上記ビデオ通話における原告と相手方との会話をつぶさに検討しても、原告の弟が、原告が同性愛者であることを理由として原告に脅迫をしてい 証拠を得るべくあえて行われたものであることもうかがえる。)、③上記ビデオ通話における原告と相手方との会話をつぶさに検討しても、原告の弟が、原告が同性愛者であることを理由として原告に脅迫をしてい るとは認められないなどと主張する。 しかし、弟とのビデオ通話の動画(甲20)の存在や内容を殊更考慮にいれなくとも、原告の供述(原告供述①~③)は全体として信用することができるというべきであり、被告が指摘するような疑義や不自然さがあるからといって、そのことから直ちに、原告の供述の信用性が否定 されるものではない。 また、上記①の点については、確かに、上記ビデオ通話の相手方が原告の弟であることを裏付ける客観的な証拠はないが、家族から迫害を受けたとする原告が、チュニジアから家族写真等を送ってもらうことは難しいと思われ、上記のような客観的な証拠を提出できないのはやむを得 ない面がある。また、第三者をして原告の弟であるとすることも可能であるとする被告の指摘についても、抽象的な可能性を指摘するにとどまり、上記ビデオ通話においてそのようななりすましが行われた具体的な根拠があるわけではないし、上記ビデオ通話の際には、原告訴訟代理人弁護士や通訳人もその場に立ち会っており(甲20)、そのような場で、 第三者に原告の弟のふりをしてもらうといったような、証拠の捏造とも - 49 -いうべき行為が行われるとも考えにくい。 また、上記②の点についてみると、原告とその弟との関係が修復困難なものであるとすれば、更なる関係悪化を懸念するよりも、原告が難民として認められるよう、弟との実際の関係を示す証拠を作成したいと考えることはあり得るし、原告訴訟代理人弁護士が、原告に対し、そのよ うに勧めることもあり得 る関係悪化を懸念するよりも、原告が難民として認められるよう、弟との実際の関係を示す証拠を作成したいと考えることはあり得るし、原告訴訟代理人弁護士が、原告に対し、そのよ うに勧めることもあり得る。また、上記ビデオ通話が、本件訴訟に有益な証拠を得るべく行われたものであるからといって、上記ビデオ通話の信用性が失われるものでもない。 さらに、上記③の点についてみると、確かに、上記ビデオ通話において、通話の相手方(原告の弟)から、原告が同性愛者(ゲイ)であること を理由に原告を殺害する旨の発言はされていないが(甲20)、原告の「ゲイなのは私個人の問題です。」という発言や、弟の「お前は私たちの恥だ。」という発言など、やり取りの全体の趣旨からすれば、原告と弟とのいさかいの原因は、原告が同性愛者(ゲイ)であることを理由とするものと考えて不自然ではない。 したがって、弟とのビデオ通話の動画(甲20)に被告が指摘するような疑義や不自然さがあるからといって、原告の供述の信用性が否定されるものではないし、被告の指摘する事情は、上記動画の信用性を否定するに足りるものでもない。被告の上記主張は採用することができない。 (6) 迫害のおそれの有無等について ア 「特定の社会的集団の構成員」該当性について上記(5)のとおり、原告は同性愛者(ゲイ)であると認められ、かつ、上記(4)アで認定したとおり、チュニジアにおいては、同性愛者を処罰する同性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定が存在する。 そして、同性愛の性的指向は、それ自体人間の尊厳の根源を成すもので、 その放棄が要求されるべきではない特性に該当するところ、上記のとおり、 - 50 -チュニジアにおいては、かかる同性愛の性的指向 同性愛の性的指向は、それ自体人間の尊厳の根源を成すもので、 その放棄が要求されるべきではない特性に該当するところ、上記のとおり、 - 50 -チュニジアにおいては、かかる同性愛の性的指向を有する人々に対し、他の人々と区別して、その性的指向を理由に処罰する規定を設けているのであるから、かかる事情のもとでは、同性愛の性的指向を有する原告は、チュニジアにおいて、「特定の社会的集団の構成員」に該当するというべきである(難民該当性判断の手引〔甲21〕9~10頁参照)。 イ家族による迫害を受けるおそれの有無について(ア) 上記(5)で述べたとおり信用することができる原告の供述によれば、原告は、チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に家族から監禁状態にされた上で暴行を受けたり(原告供述①)、家族が運転する車両にひかれそうになったりする危害を加えられた(原告供述②)というの であるから、原告が帰国した場合に、家族から同性愛者であることを理由に同様の危害を加えられる現実的なおそれがあると認められる。 このような家族からの危害は、非国家主体による迫害であるといえるが、上記(4)ア(イ)で説示したとおり、チュニジアにおいては、LGBTの人々を処罰する同性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定が存在する 上、警察等の捜査機関がこれらの規定を適用し、LGBTの者を積極的に起訴する傾向にあるため、LGBTの人々が自己の直面する暴力等の問題について警察等の国家機関に報告して保護を受けることが困難な状況にあるものと認められ、かかる状況に照らせば、チュニジア政府は、LGBTの人々に対する非国家主体による迫害に対して効果的な保護を 与えることを拒否していると評価するのが相当である。そして、このことは、 と認められ、かかる状況に照らせば、チュニジア政府は、LGBTの人々に対する非国家主体による迫害に対して効果的な保護を 与えることを拒否していると評価するのが相当である。そして、このことは、上記のとおり信用できる原告の供述によれば、原告は、スースの警察署に行き、家族に追跡されてひき殺されそうになったことについて保護を求めたが、原告がゲイであることを申告するや、警察官から、拷問や投獄を示唆する発言を受けるなどして保護を受けることができなか ったこと(原告供述③)からも裏付けられている。 - 51 -したがって、原告は、チュニジアに帰国すると、家族から同性愛者であることを理由に危害を加えられる現実的なおそれがあり、かつ、そのことについて国籍国であるチュニジアの保護を受けることができないものと認めるのが相当である。 (イ) 以上に対し、被告は、チュニジア政府が同性愛者であることを理由と する私人間の違法行為等を放置・助長しているような特別な事情はないとか、原告の供述を前提としても、同性愛者である原告に対する違法行為等が放置・助長されているとは認められないなどと主張する。 しかし、チュニジアの一般情勢に関して被告が主張するところを採用することができないことは、上記(4)イで詳述したとおりであるし、上記 (ア)で述べたところによれば、被告が指摘する事情を踏まえても、原告は、家族からの迫害について国籍国であるチュニジアの保護を受けることができないと認めるのが相当であるから、被告の上記主張は採用することができない。 また、被告は、チュニジアの法律は、国内での移動等の自由を尊重し ているところ、原告は、家族から暴行等の危害を加えられるとしても、チュニジア国内で家族の影響が全く及ば できない。 また、被告は、チュニジアの法律は、国内での移動等の自由を尊重し ているところ、原告は、家族から暴行等の危害を加えられるとしても、チュニジア国内で家族の影響が全く及ばない場所に移動することにより、家族からの迫害を避けることが可能であると主張する。 しかし、上記(5)のとおり信用できる原告の供述によれば、原告は、実家のあるビセルトからスースに逃げたものの、原告の家族が原告を追跡 して原告に危害を加えたというのである。このことに加え、原告が、父は有力な農家で、多くの友人がおり、その中には国家機関、公共機関に関わるような友人もいる旨供述していること(原告本人15頁)に照らせば、原告がチュニジアに帰国した際、原告の家族が居住する実家のあるビセルト以外の場所に居住したとしても、原告の家族から危害を加え られる現実的なおそれがあることを否定することができない。したがっ - 52 -て、被告の上記主張は採用することができない。 ウ国家機関による迫害(同性愛者であることを理由とする逮捕等)のおそれの有無について(ア) 上記(4)ア(ア)で詳述したところによれば、チュニジアにおいては、同性愛行為の処罰規定である同性間性交処罰規定がその効力を維持してい るほか、同性愛の性的指向を有することが、倫理侵害処罰規定に定められた「倫理及び公衆道徳の侵害」に当たるとの法適用がされており、LGBTの人々は、これらのチュニジア刑法の規定等の下で、同性愛等の性的指向を有することを理由に、身体拘束を伴う強制捜査や訴追の対象となり得るものである上、警察による逮捕等については、第三者をして LGBTであることをうかがわせるような振る舞いや行動(例えば、同性愛であることをうかがわせる服装 を伴う強制捜査や訴追の対象となり得るものである上、警察による逮捕等については、第三者をして LGBTであることをうかがわせるような振る舞いや行動(例えば、同性愛であることをうかがわせる服装をすることや、同性のパートナーと手をつなぐ等の愛情表現をすること、警察官に対して自身が同性愛者であることを告げることなど)を行ったというだけでも、その対象となり得る状況にあるものと認められる。このことは、上記(5)のとおり信用で きる原告の供述によれば、原告は、警察官に対し、家族に追跡されてひき殺されそうになったことについて保護を求めたものの、原告がゲイであることを申告するや、警察官から、投獄を示唆する発言を受けたこと(原告供述③)からも裏付けられている。 したがって、原告は、チュニジアに帰国した場合、同性愛者であるこ とを理由に、国籍国であるチュニジアから逮捕等の身体拘束や訴追を受ける現実的なおそれがあると認めるのが相当である。 (イ) これに対し、被告は、チュニジアのLGBTをめぐる状況を踏まえると、原告が同性愛者であることを理由に警察から逮捕される現実的なおそれがあることは認められないし、原告の供述を前提にしても、警察官 は、原告から同性愛者であるとの申告を受けたのに、原告を逮捕してい - 53 -ない上、原告は、同性愛者であることが警察に発覚した後も、自己名義の旅券で何の問題もなくチュニジアを出国できたのであるから、原告がチュニジアに帰国しても、同性愛者であることを理由に逮捕等の身体拘束をされる現実的なおそれがあるとは認められない旨主張する。 しかし、チュニジアのLGBTをめぐる状況に係る被告の主張を採用 することができないことは、上記(4)イで詳述したとおりである。 ま 実的なおそれがあるとは認められない旨主張する。 しかし、チュニジアのLGBTをめぐる状況に係る被告の主張を採用 することができないことは、上記(4)イで詳述したとおりである。 また、上記(1)アで詳述したとおり、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには、当該人において迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情だけではなく、通常人が当該人の立場に置かれたならば迫害の恐怖を抱くよ うな客観的な事情が必要であるが、それを超えて、国籍国において当該人が実際に迫害を受けたことが必要とされるものではない。また、チュニジアにおいて原告が実際に逮捕されていなかったり、問題なく出国することができたりしたからといって、チュニジアのLGBTをめぐる状況に照らせば、今後も逮捕等がされるおそれがないということにはなら ないのであり、原告が同性愛者であることを理由に逮捕等の身体拘束をされる現実的なおそれがないと評価することはできない。 そして、上記(ア)で詳述したとおり、チュニジアにおいては、同性間性交処罰規定や倫理侵害処罰規定が単に存在するというのみならず、警察等の国家機関が、これらを実際に適用して、LGBTの人々に対し、逮 捕等の身体拘束や訴追に及んでおり、しかも、逮捕等の身体拘束は、第三者をしてLGBTであることをうかがわせるような振る舞いや行動を行ったというだけでも、その対象となり得るのであって、かかる法適用状況を踏まえると、原告がチュニジアに帰国した場合に同性愛者であることを理由に逮捕等の身体拘束や訴追を受けるおそれは、単なる抽象的 な危険にとどまるものではなく、具体的かつ現実的な危険として存在し - 54 -ていると評価するのが相当で 同性愛者であることを理由に逮捕等の身体拘束や訴追を受けるおそれは、単なる抽象的 な危険にとどまるものではなく、具体的かつ現実的な危険として存在し - 54 -ていると評価するのが相当である。 なお、上記チュニジアの一般情勢等を前提とすれば、原告は、チュニジアに帰国した場合でも、同性愛者であることをうかがわせるような振る舞いや行動を抑制又は秘匿するようにすれば、迫害を回避することができるとも思われる。しかし、性的マイノリティであるという事情は、 人間の尊厳にとって根源的なものであり、申請者が自らの事情を公然と明らかにしているかに関わらず、変更又は放棄を強要されるべきではなく、原告に対し、同性愛者としての振る舞いや行動を抑制することを期待することは相当でないから、上記のような理由で、原告の迫害のおそれを否定することはできない(難民該当性判断の手引〔甲21〕11頁 参照)。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (7) 本件不認定処分の適法性についてのまとめ以上によれば、原告は、チュニジアに帰国した場合、家族から同性愛者であることを理由に危害を加えられる現実的なおそれがあり、かつ、そのこと につき国籍国であるチュニジアの保護を受けることができないものと認められる(上記(6)イ)のみならず、同性愛者であることを理由に逮捕等の身体拘束や訴追を受ける現実的なおそれがあると認められる(上記(6)ウ)。したがって、原告は、チュニジアに帰国した場合に、同性愛者であることを理由に迫害を受ける主観的恐怖を有しており、かつ、通常人が原告の立場に置かれ た場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していると認められるから、原告は、本件不認定処分の時点で、難民に該当 に迫害を受ける主観的恐怖を有しており、かつ、通常人が原告の立場に置かれ た場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していると認められるから、原告は、本件不認定処分の時点で、難民に該当する(なお、これまで説示したところによれば、原告が難民に該当することは、現時点においても変わるところはない。)。これに反する被告の主張は、これまで述べたところに照らし、いずれも採用することができない。 したがって、原告は難民であるから、原告を難民と認定しなかった本件不 - 55 -認定処分は違法であり、取消しを免れない。 2 本件裁決の取消請求について上記1のとおり、本件不認定処分は違法であり、主文第2項のとおり取り消されるべきである。そうすると、原告が本件不認定処分の取消しを求めてした本件審査請求を棄却する旨の本件裁決につき、その取消しを求める利益は消滅 したというべきである。 したがって、本件訴えのうち本件裁決の取消しを求める部分(第1の2)は不適法であり、却下すべきである。 第4 結論 よって、本件訴えのうち本件裁決の取消しを求める部分は不適法であるから これを却下し、原告の本件不認定処分の取消請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 なお、訴訟費用の負担については、本件不認定処分が取り消されるべきものであることにより、本件裁決の取消しを求める利益が消滅したことを考慮した。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地 淳 裁判官牛濵裕輝 裁判官新宮智之は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官徳地 裁判官牛濵裕輝 裁判官新宮智之は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官徳地淳

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