主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が原告に対し,平成9年12月8日付でした,観音寺徳洲会病院の開設に対する中止勧告が無効であることを確認する。 2 被告が原告に対し,平成10年2月26日付け観音寺徳洲会病院開設許可処分に付した,上記病院の開設の中止を勧告する附款部分が無効であることを確認する。 第2 事案の概要医療法人である原告が,香川県観音寺市内に病院の新規開設を計画して,医療法7条1項に基づき,被告に対し,観音寺徳洲会病院開設の許可申請をしたところ,被告が,同法30条の7に基づき,平成9年12月8日付けで病院の開設中止を勧告し(以下「本件勧告」という。),平成10年2月26日付けで前記病院開設の許可処分(以下「本件許可処分」という。)をしたことから,原告は,本件勧告は,原告に服従義務を課する下命としての性質を有する独立の行政処分であるか,本件許可処分に付された附款のいずれかにあたり,いずれにせよ,保険医療機関の指定を受けるにあたっての原告の法的地位に著しい不利益を与え,原告の病院開設を恣意的に排除しようとの意図の下に重大かつ明白な瑕疵のある手続により行われたものであるとして,選択的に,本件勧告自体の無効確認,または本件許可処分に付された附款の無効確認を求めた。 1 前提となる事実争いのない事実,証拠(甲1ないし8,乙1,2,4,7,9,11,56及び57)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。なお,本件勧告後に法改正が行われているが,特段の記載のない限り,処分権者等は本件勧告時のものであり,法文についても同様である。 (1)被告は,香川県において,国の機関委任事務として医療法7条に基づく病院開設許可処分を,国 が行われているが,特段の記載のない限り,処分権者等は本件勧告時のものであり,法文についても同様である。 (1)被告は,香川県において,国の機関委任事務として医療法7条に基づく病院開設許可処分を,国の団体委任事務として同法30条の7に基づく勧告を行う権限を有する行政庁であり,香川県において,これらの事務は,香川県健康福祉部医務福祉総務課(現在の医務国保課。以下「県担当課」という。)が所管していた。 医療法7条(病院等の開設の許可)1項病院を開設しようとするとき,医師及び歯科医師でない者が診療所を開設しようとするとき,又は助産婦でない者が助産所を開設しようとするときは,開設地の都道府県知事(診療所又は助産所にあっては,その開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては,当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。以下,この条,第八条,第九条,第十二条,第十八条,第二十四条及び第二十七条から第三十条までの規定において同じ。)の許可を受けなければならない。 2項病院を開設した者,医師及び歯科医師でない者で診療所を開設したもの又は助産婦でない者で助産所を開設したものが,療養型病床群を設けようとするとき,若しくは病床数,療養型病床群に係る病床数,病床の種別(精神病床,伝染病床,結核病床及びその他の病床の区別をいう。以下同じ。)その他厚生省令で定める事項を変更しようとするときも,厚生省令で定める場合を除き,前項と同様とする。 3項都道府県知事は,前二項の許可の申請があった場合において,その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が第二十一条及び第二十三条の規定に基づく省令の定める要件に適合するときは,前二項の許可を与えなければならない。 (4項省略)(2)香川県は,平成6年3月,医療法の定めるところにより第2次香川県保健医療 十一条及び第二十三条の規定に基づく省令の定める要件に適合するときは,前二項の許可を与えなければならない。 (4項省略)(2)香川県は,平成6年3月,医療法の定めるところにより第2次香川県保健医療計画を策定し,香川県内における医療法30条の3第2項1号に規定する区域の1つとして,香川県西部の観音寺市,A町等の1市9町で構成される三豊保健医療圏を設定した。 同法30条の3(医療計画)1項都道府県は,当該都道府県における医療を提供する体制の確保に関する計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。 2項医療計画においては,次に掲げる事項を定めるものとする。 一主として病院の病床(次号に規定する病床及び第七条第二項に規定するその他の病床以外の病床を除く。)の整備を図るべき地域的単位として区分する区域の設定に関する事項二二以上の前号の規定する区域を併せた区域であって,主として厚生省令で定める特殊な医療を提供する病院の第七条第二項に規定するその他の病床であって当該医療に係るものの整備を図るべき地域的単位としての区域の設定に関する事項三第七条第二項に規定するその他の病床に係る必要病床数及び同項に規定するその他の病床以外の病床に係る必要病床数に関する事項(3)公正取引委員会は,平成8年12月26日,社団法人観音寺市三豊郡医師会(以下「三豊郡医師会」という。)に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条1項に基づき,病院又は診療所の開設,診療科目の追加,病床の増床,増改築等を制限する行為を行わないことなどを内容とする勧告(以下「公取委勧告」という。)をした。また,公正取引委員会は,被告に対しても同日付けで,三豊郡医師会への指導を行うよう要請した。 (4)県担当課は,平成9年5月20日,三豊郡医師会から,三豊保健医療圏内の 公取委勧告」という。)をした。また,公正取引委員会は,被告に対しても同日付けで,三豊郡医師会への指導を行うよう要請した。 (4)県担当課は,平成9年5月20日,三豊郡医師会から,三豊保健医療圏内の増床等を希望する医療機関に関する一覧表の提出を受けた。 (5)原告は,平成9年7月25日,県担当課に対し,病床数419床の病院を香川県観音寺市内に開設したいとの意向を表明し,同年9月1日付けで,開設場所を観音寺市B町,許可病床数を419床とする観音寺徳洲会病院の病院開設許可申請書を県担当課に送付した。 (6)県担当課は,上記(4)で増床を希望していた地元の8つの医療機関(以下「地元8病院」という。)との間で事前協議を行い,同年9月5日までに,当時の三豊保健医療圏における不足病床数であった469床を,地元8病院に一応配分する計画を立てた。 (7)原告は,平成9年10月24日,県担当課に対し,開設予定地を香川県観音寺市C町に,病床数を310床にそれぞれ変更したいとして,当初の病院開設計画の変更を申し出た。 (8)平成9年11月6日,香川県医療審議会が開催され,同審議会は,同月26日,被告に対し,地元8病院については増床許可相当,原告については開設中止勧告相当とする答申をした。 被告は,前記答申を受けて,同年12月2日,地元8病院に対して,合計469床の病院開設許可事項の一部変更(増床)を行い,原告に対しては,同月8日,医療法30条の7に基づき,勧告の内容を「観音寺徳州会病院の開設を中止すること。」,勧告の理由を「観音寺徳洲会病院の開設予定地である観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」とする勧告(本件勧告)をした。 医療法30条の7(病院の開設等に関する勧告)都道府県知事は,医療計画 含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」とする勧告(本件勧告)をした。 医療法30条の7(病院の開設等に関する勧告)都道府県知事は,医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合には,病院を開設しようとする者又は病院の開設者若しくは管理者に対し,都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院の開設又は病床数の増加若しくは病床の種別の変更に関して勧告することができる。 (9)原告は,平成10年1月22日,被告に対し,本件勧告には従うことができないので,医療法7条3項により速やかに病院開設の許可をするよう求めるとともに,勧告の撤回をも求めた。 これに対し,被告は,同年2月26日,上記(7)による変更後の内容について,病院の開設許可処分(本件許可処分)を行い,これと同時に,原告に対し,香川県健康福祉部長名で,留意事項として,病院の保険医療機関としての指定については,厚生省保険局長通知(昭和62年9月21日付け保発69号)があることを指摘する文書を送付した。 (10)原告は,平成11年8月26日,保険医療機関指定申請予定者として,被告に対し,行政手続法9条2項に基づき,観音寺徳洲会病院に対する保険医療機関の指定申請の許否について,情報の提供を求めた。 これに対し,被告は,同年12月13日,「観音寺徳洲会病院については,平成9年12月8日,医療法30条の7の規定による開設中止勧告を受け,これに従っていないことから,仮に保険医療機関の指定の申請があった場合は,健康保険法第43条の3第4項第2号の規定に基づき,申請に係る病床の全部について指定拒否することとなる。」と回答した。 健康保険法(平成10年法律第109号による改正後のもの。以下「改正健康保険法」という。)43条ノ3(保険医療機関及び保険薬 き,申請に係る病床の全部について指定拒否することとなる。」と回答した。 健康保険法(平成10年法律第109号による改正後のもの。以下「改正健康保険法」という。)43条ノ3(保険医療機関及び保険薬局-指定)1項保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所又ハ薬局ニシテ其ノ開設者ノ申請アリタルモノニ就キ都道府県知事之ヲ行フ2項前項ノ申請ハ病院又ハ医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第三項ニ規定スル療養型病床群(本項ニ於テ単ニ療養型病床群ト称ス)ヲ有スル診療所ニ付テハ同法第七条第二項ニ規定スル病床ノ種別(診療所ニ設置スル療養型病床群ニ係ル病床ニ付テハ同項ニ規定スル其ノ他ノ病床ト看做ス本条ニ於テ単ニ病床ノ種別ト称ス)毎ニ其ノ数ヲ定メテ之ヲ行フモノトス3項都道府県知事保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ノ申請アリタル場合ニ於テ当該病院若ハ診療所又ハ薬局ガ本法ノ規定ニ依リ保険医療機関若ハ保険薬局ノ指定若ハ第四十四条第一項第一号ニ規定スル特定承認保険医療機関ノ承認ヲ取消サレ五年ヲ経過セザルモノナルトキ又ハ保険給付ニ関シ診療若ハ調剤ノ内容ノ適切ヲ欠ク虞アリトシテ重テ第四十三条ノ七第一項(第四十三条ノ十七第九項,第四十四条第十三項及第十四項,第五十九条ノ二第八項並ニ第六十九条の三十一ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル指導ヲ受ケタルモノナルトキ其ノ他保険医療機関若ハ保険薬局トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキハ其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得4項都道府県知事第二項ノ病院又ハ診療所ニ付保険医療機関ノ指定ノ申請アリタル場合ニ於テ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得一当該病院又ハ診療所ノ医師,歯科医師,看護婦其ノ他ノ従業者ノ人員ガ医療法第二十一条第一項第一号若ハ第一号ノ 各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得一当該病院又ハ診療所ノ医師,歯科医師,看護婦其ノ他ノ従業者ノ人員ガ医療法第二十一条第一項第一号若ハ第一号ノ二又ハ第二項第一号ニ規定スル厚生省令ノ定ムル員数ヲ勘案シテ厚生大臣ノ定ムル基準ニ依リ算定シタル員数ヲ満タサザルトキ二当該申請ニ係ル病床ノ種別ニ応ジ医療法第七条の二第一項ニ規定スル地域ニ於ケル保険医療機関ノ病床ノ数ガ其ノ指定ニ依リ同法第三十条の三第一項に規定スル医療計画ニ於テ定ムル必要病床数ヲ勘案シテ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ算定シタル数ヲ超ユルコトトナルト認ムル場合(其ノ数ヲ既ニ超エタル場合ヲ含ム)ニシテ当該病院又ハ診療所ノ開設者又ハ管理者ガ同法第三十条の七ノ規定ニ依ル都道府県知事ノ勧告ヲ受ケ之ニ従ハザルトキ三其ノ他適正ナル医療ノ効率的ナル提供ヲ図ル観点ヨリ当該病院又ハ診療所ノ病床ノ利用ニ関シ保険医療機関トシテ著シク不適当ナル所アリト認ムルトキ7項都道府県知事保険医療機関ノ指定ヲ拒ミ若ハ其ノ申請ニ係ル病床ノ全部若ハ一部ヲ除キテ指定(指定ノ変更ヲ含ム)ヲ行ヒ又ハ保険薬局ノ指定ヲ拒ムニハ地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス(5項,6項,8項ないし10項省略。 なお,保険医療機関,保険病床の指定または指定拒否の主体は,平成11年法律第87号地方分権の推進を図るための関係法律の整備に関する法律146条により「厚生大臣」に,さらに平成11年法律第160号中央省庁等改革関係法施行法42条ノ4により,平成13年1月6日から「厚生労働大臣」に,それぞれ改められた。) 2 争点(1)本件勧告の処分性本件勧告が,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」にあたり,同条4項の無効等確認の訴えの対象となる「処分」にあた れた。) 2 争点(1)本件勧告の処分性本件勧告が,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」にあたり,同条4項の無効等確認の訴えの対象となる「処分」にあたるか。 (2)本件勧告の無効理由本件勧告の処分性が認められる場合,これが無効であると認められるか。 3 争点(1)(本件勧告の処分性)についての原告の主張(1)総論都道府県知事が,医療法30条の7に基づき,病院を開設しようとする者に対し開設の中止を勧告し(以下「中止勧告」という。),その後に病院開設の許可処分をした場合,中止勧告は,それ自体が下命としての性質を有する独立の行政処分であるか,病院開設の許可処分に付された附款のいずれかにあたり,そのいずれであっても,その後に行われる保険医療機関(保険病床)の指定における消極要件として,名宛人に不利益を生じさせるから,抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる。 中止勧告の処分性を検討するにあたっては,中止勧告によって,名宛人が実際に如何なる法的地位に置かれるかを重視して判断すべきであって,中止勧告が名宛人の法律上の地位に与える影響については,中止勧告に関する都道府県知事の権限を規定する法律自体に,法律効果として定められている必要はなく,法律上の地位に対する影響が他の法律から導かれる場合や,法律の合理的解釈から実際上導かれる場合であってもよく,中止勧告によって名宛人に生じる不利益が,確定的である必要もない。 (2)中止勧告が名宛人の法律上の地位に与える影響ア中止勧告と旧健康保険法との関係(ア)医療法に基づく病院の開設と,健康保険法に基づく保険医療機関の指定は,法的には別個独立の制度であるが,我が国では,国民健康保険法5条により国民皆保険制度が採用されており,保険医療機関に指定された病院でなければ患 く病院の開設と,健康保険法に基づく保険医療機関の指定は,法的には別個独立の制度であるが,我が国では,国民健康保険法5条により国民皆保険制度が採用されており,保険医療機関に指定された病院でなければ患者は来院しない。したがって,ある者が病院を開設しようとして都道府県知事から病院開設の許可を受けても,保険医療機関に指定されない限り,病院経営は実質的に不可能となる。 都道府県知事(現在は厚生労働大臣)は,保険医療機関の指定申請があった場合,健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの。以下「旧健康保険法」という。)43条ノ3第2項が定める消極要件に該当しない限り,当該申請者を保険医療機関に指定しなければならないとされていた。すなわち,旧健康保険法の制度としては,病院を開設して保険医療機関の指定を申請した者は,同項の消極要件に該当しない限り,保険医療機関としての指定を受けることのできる法的地位を有していたことになる。 旧健康保険法43条ノ31項保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ病院若ハ診療所又ハ薬局ニシテ其ノ開設者ノ申請アリタルモノニ就キ都道府県知事之ヲ行フ2項都道府県知事保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ノ申請アリタル場合ニ於テ当該病院若ハ診療所又ハ薬局ガ本法ノ規定ニ依リ保険医療機関若ハ保険薬局ノ指定若ハ第四十四条第一項第一号ニ規定スル特定承認保険医療機関ノ承認ヲ取消サレ二年ヲ経過セザルモノナルトキ又ハ保険給付ニ関シ診療若ハ調剤ノ内容ノ適切ヲ欠ク虞アリトシテ重テ第四十三条ノ七第一項(第四十三条ノ十七第九項,第四十四条第十二項及び第十三項,第五十九条ノ二第七項並ニ第六十九条の三十一ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル指導ヲ受ケタルモノナルトキ其ノ他保険医療機関若ハ保険薬局トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキハ 二項及び第十三項,第五十九条ノ二第七項並ニ第六十九条の三十一ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル指導ヲ受ケタルモノナルトキ其ノ他保険医療機関若ハ保険薬局トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキハ其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得3項都道府県知事保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ヲ拒ムニハ地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス(4項ないし6項省略)(イ)他方,厚生省保険局長は,各都道府県知事宛に,「医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて」と題する通達(昭和62年9月21日付け保発69号厚生省保険局長通知。以下「昭和62年通知」という。)を発しており,本件勧告がなされた平成9年12月8日当時,旧健康保険法43条ノ3による保険医療機関の指定は,昭和62年通知に依拠して行われていた。 昭和62年通知によれば,中止勧告を受けた名宛人が,これに従わずに病院を開設し,当該病院について保険医療機関の指定申請をした場合,旧健康保険法43条ノ3第2項に規定する「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するものとして,保険医療機関の指定拒否または受理拒否を,地方社会保険医療協議会に諮問することとされていた。 そうすると,都道府県知事から中止勧告を受けた名宛人は,同法43条ノ3第2項の消極要件(著シク不適当ト認ムルモノナルトキ)に該当し,都道府県知事から保険医療機関の指定申請を拒否されかねない著しく不安定な法的地位に置かれることになる。すなわち,中止勧告を受けた名宛人は,中止勧告を受けていない医療機関に比して著しく不安定な立場に置かれるところ,これは中止勧告によって名宛人に生じる重大な法律上の不利益である。 イ中止勧告と改正健康保険法との関係健康保険法の改正に伴い,改正健康保険法43条ノ3第4項2号には,医療法7条の2第1項に規定する地域における よって名宛人に生じる重大な法律上の不利益である。 イ中止勧告と改正健康保険法との関係健康保険法の改正に伴い,改正健康保険法43条ノ3第4項2号には,医療法7条の2第1項に規定する地域における保険医療機関の病床の数が,その指定を行うことによって,同法30条の3第1項に規定する医療計画において定める基準病床数を勘案して厚生労働大臣の定めるところにより算定した数を超えることになると認める場合であって(その数を既に超える場合を含む。),当該病院の開設者等が,同法第30条の7の規定に依る都道府県知事の勧告を受け,これに従わないときは,厚生労働大臣は,その申請に係る病床の全部又は一部を除いて,保険医療機関の指定を行い得る旨が新たに規定され,これに伴い,昭和62年通知は廃止された。 すなわち,改正健康保険法においては,中止勧告に対する不応諾が保険病床の指定に対する消極要件であることが明文化されており,これは,中止勧告に従わない者に対し,保険医療機関の指定を拒否するという昭和62年通知に基づく旧健康保険法下の実務に,いわば実定法上の根拠を与えたものといえる。 ウ中止勧告がされた後の保険医療機関(保険病床)の指定の実務(ア)中止勧告の名宛人に対する保険医療機関(保険病床)の指定については,以下のような実務運用が行われている。 A 鹿児島県揖宿郡D町所在の山川病院について,同病院の開設者が中止勧告に不応諾で病院を開設し,保険医療機関の指定申請をしたところ,鹿児島県知事は,旧健康保険法43条ノ3第2項に基づき,保険医療機関の指定を拒否した。 B 富山県知事は,平成9年12月16日付け「病院の開設許可について」と題する書面の中で,「中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には,厚生省通知(昭和62年9月21日付保発第69号厚生省保険局長通知)において, ,平成9年12月16日付け「病院の開設許可について」と題する書面の中で,「中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には,厚生省通知(昭和62年9月21日付保発第69号厚生省保険局長通知)において,保険医療機関の指定を拒否することとされている。」と回答した。 C 熊本県の八代鏡病院の開設を計画している者が,中止勧告を受けたことから,熊本県知事に対し,行政手続法9条2項に基づき,保険医療機関の指定申請の許否についての情報の提供を求めたところ,熊本県知事は,平成11年10月20日付け「行政手続法第9条2項に基づき求められた情報の提供について」と題する書面の中で,「八代鏡病院については,医療法第30条の7の規定による県知事の中止勧告を受けて,これを拒否しているので,仮に保険医療機関の指定申請があった場合には,健康保険法第43条ノ3第4項第2号に基づき,申請に係る全病床について指定拒否することとなる」と回答した。 D 前記1(10)のとおり,原告が,観音寺徳洲会病院に対する保険医療機関の指定申請の許否について情報の提供を求めたところ,被告は,原告が本件勧告に不応諾であることから,観音寺徳洲会病院については,保険病床の指定を拒否することを明らかにした。 (イ)保険医療機関(保険病床)の指定に関する上記(ア)のような実務運用に鑑みれば,一旦都道府県知事から中止勧告がなされると,保険医療機関(保険病床)の指定は,必然的に拒否されることになる。このことは,厚生省健康政策局が,昭和61年8月30日付け局長通知において,各都道府県知事に宛てて,中止勧告の名宛人に対し社会福祉・医療事業団からの融資を行わないよう指示していることからも裏付けられる。 (ウ)以上のとおり,中止勧告を受けた名宛人は,保険医療機関(保険病床)の指定を拒否されるという重大な法律上の不利益 社会福祉・医療事業団からの融資を行わないよう指示していることからも裏付けられる。 (ウ)以上のとおり,中止勧告を受けた名宛人は,保険医療機関(保険病床)の指定を拒否されるという重大な法律上の不利益を受ける。 (3)中止勧告の法的性質ア中止勧告は,旧健康保険法の下では,62年通知とあいまって,中止勧告に従わない者を「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」として保険医療機関に指定しないことにより,名宛人に対し,病院を開設してはならないとの服従義務を課すところの下命処分としての性質を有していた。また,中止勧告の不利益処分としての性質は,中止勧告に従わない者には保険病床の指定をしないという改正健康保険法43条ノ3第4号2号により,より明確になった。 イ仮に,中止勧告の法的性質が行政指導であるとしても,行政指導に対する不服従が次の不利益処分の要件として法律上仕組まれている場合には,当該行政指導に処分性が認められるべきである。中止勧告については,これに応諾しない名宛人に対し,必然的に保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されることになっており,中止勧告への不服従が,次の不利益処分である保険医療機関(保険病床)の指定拒否の要件として法律上仕組まれているから,中止勧告には処分性が認められるべきである。 ウ被告は,「指定ヲ拒ムコトヲ得」(旧健康保険法43条ノ3第2項),「其ノ申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得」(改正健康保険法43条ノ3第4項2号)との文言から,必然的に保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されることにはなっていない旨を主張するが,前記(2)ウの実状を無視した議論であり,詭弁である。前記1(10)のとおり,仮に原告が保険医療機関の指定の申請をしたとしても,申請に係る病床の全部について指定拒否されることは確実である 張するが,前記(2)ウの実状を無視した議論であり,詭弁である。前記1(10)のとおり,仮に原告が保険医療機関の指定の申請をしたとしても,申請に係る病床の全部について指定拒否されることは確実であるから,本件勧告は,保険病床の指定についての,行政庁の最終的意思表示というべきものである。 また,行政手続法5条1項によれば,行政庁は,許認可等の審査基準を定めるべきところ,厚生労働省は,健康保険法43条ノ3にいう保険医療機関(保険病床)の指定の許否について,何ら審査基準を設けていない。このことは,中止勧告の名宛人に対しては,当然に保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されることを前提とするものである。 (4)救済の必要性病院の開設者が保険医療機関の指定を申請するには,省令の定めにより,医療法27条の病院の使用許可を受ける必要がある。すなわち,病院の建物を建築し,医療器材を備える等の物的設備を備え,法所定の医師,看護婦を雇用する等の人的設備を備えることが,保険医療機関の指定申請の前提となる。 被告は,中止勧告を受けた名宛人が保険医療機関の指定申請を行い,保険病床の指定拒否等の不利益処分がされれば,これに対する取消訴訟で争えば足りる旨を主張するが,仮の救済規定のないわが国の行政事件訴訟法の下では,名宛人は,病院の物的,人的設備を整えた上,保険病床の指定のないまま,取消判決の確定まで争わなければならないから,実際には,著しく過重な経済的負担のため,病院の開設を断念せざるを得ない。 名宛人の上記不利益については,中止勧告の段階でその違法性を争わせる以外に救済の方法はなく,また,そのようにしても,何らの不都合も生じない。 4 争点(1)(本件勧告の処分性)についての被告の主張(1)総論一般に,処分性の有無を判断する際には,①行政庁の行為であるかど 救済の方法はなく,また,そのようにしても,何らの不都合も生じない。 4 争点(1)(本件勧告の処分性)についての被告の主張(1)総論一般に,処分性の有無を判断する際には,①行政庁の行為であるかどうか,②行政庁が法律の授権に基づいて優越的な意思の主体として一方的に意思決定をし,その結果について相手方の受忍を強制できる効果を持つかどうか(行為の公権力性の有無),③その行為が国民の権利義務や法律上の地位に直接具体的な影響を及ぼすものといえるか(法律上の地位に対する影響)といった観点からの検討を加え,これらがいずれも満足されて初めて,当該行為が抗告訴訟の対象としての行政処分と認められるべきものである。 そして,法律による行政の原則に鑑みれば,行政処分の趣旨,目的,要件,効果等の処分の性質に関わる事情は,当該処分の根拠となった実定行政法規によって定められるべきであり,上記①ないし③については,その行為の根拠となる実定行政法規の解釈から判断すべきである。 一般に,行政行為としての勧告は,事実行為であって,確定的な法的効果を発生させるものではなく,相手方の法律上の地位ないし権利義務に直接の影響を及ぼすものではないから,原則として処分性を否定すべきものである。しかし,その後に代執行や直接強制が行われることがほぼ確実になるなど,その後に予定される行政行為によって名宛人の法律上の地位に直接具体的な影響が生じる場合(すなわち,当該事実行為とその後の行政行為との間に法的見地からみた関連性,必然性がある場合)には,処分性を肯定することがあり得る。 原告は,勧告等の事実行為によって名宛人がいかなる法的地位に立たされるかによって行政処分性を判断すべきであると主張するが,如何なる法的地位に立たされるかの判断の中核となるのは,結局,当該事実行為がその後の行政行為 の事実行為によって名宛人がいかなる法的地位に立たされるかによって行政処分性を判断すべきであると主張するが,如何なる法的地位に立たされるかの判断の中核となるのは,結局,当該事実行為がその後の行政行為との間に法的必然性があるか,事実上の関係があるにすぎないかであり,単に事実行為により不利益を被ることがあるというだけでは,当該事実行為に処分性を認めることはできない。 (2)中止勧告の処分性改正健康保険法43条ノ3第4項2号によれば,中止勧告に対する名宛人の不応諾は,保険医療機関の指定申請に対し,不利益処分を行い得る場合の要件の1つとされている。しかし,名宛人が不応諾の場合に,都道府県知事が必ず保険病床の全部または一部を除外して指定しなければならないものとは規定されておらず,仮に都道府県知事が指定拒否を相当と判断した場合でも,地方社会保険医療協議会が指定相当と議決すれば,都道府県知事が指定拒否をしたり,病床を制限することはできない。 また,同じく保険医療機関の指定拒否について定めていた旧健康保険法43条ノ3第2項も,中止勧告に対する名宛人の不応諾自体を指定拒否の要件とは定めていないし,昭和62年通知の通達実務においても,名宛人が不応諾の場合に必ずしも指定が拒否されることにはなっていない。また,そもそも,昭和62年通知は,旧健康保険法43条ノ3第2項の文言の解釈指針について定めた行政通達にすぎないから,法理論上,これが旧健康保険法43条ノ3第2項の解釈,適用や,保険医療機関の指定手続の法的性質に影響を与えるということもありえない。 以上を総合すれば,医療法及び健康保険法の諸規定を検討しても,中止勧告によって名宛人の法的地位に影響が及ぶと解することはできず,名宛人の権利義務に直接の影響が生じるとも認められない。また,名宛人が中止勧告に応諾し ば,医療法及び健康保険法の諸規定を検討しても,中止勧告によって名宛人の法的地位に影響が及ぶと解することはできず,名宛人の権利義務に直接の影響が生じるとも認められない。また,名宛人が中止勧告に応諾しない場合,保険医療機関(保険病床)の指定拒否がなされる可能性が高いことは否定できないが,条文構造上,必然的に保険医療機関(保険病床)の指定拒否がされることにはならず,中止勧告に対する不応諾が,必ずしも後にされる不利益処分の要件として法律上仕組まれていると解することはできない。 このような事情からすると,中止勧告は,それ自体としては法的拘束力を持たない行政指導であり,国民の権利義務ないし法律上の地位に直接具体的な影響を及ぼすものではないし,中止勧告に不応諾であっても必ず保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されるわけではないから,中止勧告を受けることで生じる名宛人の地位の変化は事実上のものにすぎない。 医療法,健康保険法その他保険医療機関(保険病床)の指定に係る諸法令を概観しても,中止勧告に独自に不服申立てや取消訴訟の提起によって有効性を争う方途を認めた規定が存在しないことからも,医療法及び健康保険法は,中止勧告を行政処分として取り扱うとの立法政策を採用していないものと解するのが相当である。 (3)原告のその他の主張に対する反論ア原告の主張(1)について原告は,被告が本件許可処分に際して,本件勧告に対する不応諾及び昭和62年通知を根拠に,保険医療機関の指定を拒否する旨予告したとして,このことを理由に,本件勧告は,本件許可処分に付せられた附款である旨主張する。 しかし,平成10年2月26日付け病院開設許可の内容(甲第4号証)からも明らかなように,本件許可処分には何らの附款も付されていない。また,保険医療機関の指定を行うかどうかは,保険医療機 主張する。 しかし,平成10年2月26日付け病院開設許可の内容(甲第4号証)からも明らかなように,本件許可処分には何らの附款も付されていない。また,保険医療機関の指定を行うかどうかは,保険医療機関の指定申請が現実になされた段階で,健康保険法の趣旨に基づいて個別に判断されるものであるから,保険医療機関の指定拒否が予め通告されたとしても,本件勧告が,本件許可処分の附款となるわけではない。 イ原告の主張(3)に対して原告は,保険医療機関の指定申請に対し,許否を判断する基準がないことを,中止勧告の処分性を肯定すべき理由として主張する。しかしながら,原告が指摘する行政手続法5条1項は,行政庁に対して許認可等に係る審査基準の設定を義務づけることで,裁量権の恣意的な逸脱または濫用の危険を手続的側面から抑制し,行政運営における公正の確保と手続的透明性の向上を図ることを目的とする手続規定であって,同条にいう審査基準も,行政庁が自ら合理的と判断するところにより措定される内部的基準にすぎない。そうすると,同法にいう審査基準がないことをもって,中止勧告に処分性がある根拠とすることはできない。 ウ原告の主張(4)に対して原告の主張はいわゆる成熟性の議論と思われるが,根拠法規が当該行為にどのような法的地位に対する直接具体的な影響を結び付けているかの検討を離れて,いわゆる成熟性の有無,程度を論ずることによって行政処分性が認められ得ると主張するのであれば,そもそも,主張自体が失当である。また,成熟性による処分性の議論とは,同一あるいは一連の手続の中のどの段階で抗告訴訟の提起を認めるべきかという問題であるが,本件にいう中止勧告は,医療法7条による病院開設許可の手続の過程で行われる事柄であって,同手続は原告に対する本件許可処分により終結している。これに対し, 訴訟の提起を認めるべきかという問題であるが,本件にいう中止勧告は,医療法7条による病院開設許可の手続の過程で行われる事柄であって,同手続は原告に対する本件許可処分により終結している。これに対し,保険医療機関の指定は病院の開設許可とは別個の手続であるから,中止勧告については,保険医療機関の指定申請に至る経緯として考慮されるとしても,あくまで別個の手続でしかない。そうすると,本件ではそもそも事件の成熟性は問題とならない。 もっとも,原告の主張は,要するに,病院を開設してからでは危険負担が大きすぎ,勧告の段階で名宛人にこれを争う余地を肯定しなければ,実効的な救済にならないとの趣旨と理解される。 しかし,本件では,保険医療機関の指定申請に対する処分が別途の手続としてその後に予定されており,指定拒否処分に対する抗告訴訟を提起して勝訴すれば,指定処分を受け得る可能性が回復され,勝訴判決の拘束力に従って再度される処分において指定を得れば,既に建設している病院施設において保険医療機関としての医療活動を行うことは可能である。したがって,中止勧告が,保険医療機関の指定申請に対する最終的な拒否の態度表明にあたるとはいえない。 また,健康保険法は,病院開設者に対し,施設の完成,医療機器・医療従事者の確保,病院の使用許可(医療法27条)の後に保険医療機関の指定申請を行うべきものとしているが,上記のように,準備を了した段階に至って指定を拒否されるに伴うリスクは,原告だけのものではなく,保険医療機関の指定申請をする者が等しく負うものであり,そのことが直ちに中止勧告に行政処分性を認める根拠とはならない。 エ結論以上によれば,本件勧告は,原告の法律上の地位や権利義務に直接影響を及ぼすものとはいえず,処分性を認めることはできない。また,本件勧告は本件許可処分 政処分性を認める根拠とはならない。 エ結論以上によれば,本件勧告は,原告の法律上の地位や権利義務に直接影響を及ぼすものとはいえず,処分性を認めることはできない。また,本件勧告は本件許可処分の附款とはいえない。 5 争点(2)(本件勧告の無効理由)についての原告の主張(1)本件勧告が不公平な手続に基づくものであること行政処分は,公平・公正な手続により行われるべきであり,病院開設等の病床申請が競合した場合,各申請者を処理する手続が不公平であり,行政庁の恣意や独断を疑わせるものがあれば,これに基づく行政処分は違法であり,さらに,重大な手続違反が明白であれば,当該行政処分は無効と評価されるべきである。 本件では,原告が病院開設の許可を申請した平成9年9月1日の時点で,三豊保健医療圏における不足病床数は469床であり,原告の他に病院の開設や増床申請は一切なされていなかったにもかかわらず,被告は,原告に劣後して同月10日から同月30日にかけて増床申請をした地元8病院に対しては,増床を許可しておきながら,原告には本件勧告をした。 このような手続は著しく不公平であり,重大な手続違反があることが明白であるから,本件勧告は無効である。 (2)公的医療機関に対する増床配分の違法性医療法は,私人による病院開設等の許可申請については,「その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が第二十一条及び第二十三条の規定に基づく省令の定める要件に適合」する以上,申請を許可すべきものとしているが(同法7条3項),公的医療機関による病院開設等の許可申請に対しては,当該申請により当該保健医療圏の必要病床数を超える場合には申請を許可しないことができるものと定める(同法7条の2)。すなわち,同法は,私人による病院開設等の自由を保障するために,公的医療機関による病院 申請により当該保健医療圏の必要病床数を超える場合には申請を許可しないことができるものと定める(同法7条の2)。すなわち,同法は,私人による病院開設等の自由を保障するために,公的医療機関による病院開設等の自由を制限している。 ところが,被告は,原告その他の私人が競合して病院開設等を申請していたのに,公的医療機関である三豊総合病院及び永康病院に増床を許可し,原告に対しては,本件勧告をした。 したがって,私人による病院開設等の自由を保障する医療法の趣旨に反する重大かつ明白な瑕疵があるから,本件勧告は無効である。 (3)本件勧告が行政手続法に違反すること被告は,本件勧告に際し,わずかに「開設予定地である観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」との理由を付すにとどまり,地元8病院に先行して病院開設を申請した原告が,本件勧告を受けることになった具体的な理由や,病床配分を決定した経緯等を,何ら明らかにしていない。 したがって,本件勧告については,行政庁の恣意を防止して判断の公平を担保するため,拒否処分の理由を示すよう求めた行政手続法8条に照らし,重大かつ明白な瑕疵があるから,無効というべきである。 (4)被告の裁量論について医療法に基づく地域医療計画の策定の技術的方法については,厚生省健康政策局長通知をもって全国一律に定められており,同法30条の7に基づく都道府県知事の勧告についても,前記通知によって審査基準が定められているから,被告の裁量といったものは存在しない。裁量処分であることを理由に,権限の逸脱,濫用が重大明白である場合に限り無効であるとする被告の主張は失当である。 6 争点(2)(本件勧告の無効理由)についての被告の主張(1)総論裁量性のある行政処分については,裁量 由に,権限の逸脱,濫用が重大明白である場合に限り無効であるとする被告の主張は失当である。 6 争点(2)(本件勧告の無効理由)についての被告の主張(1)総論裁量性のある行政処分については,裁量権の逸脱濫用があった場合に限りこれを違法とすべきであり,行政処分が無効とされるのは,行政処分が違法であるにとどまらず,その瑕疵が重大かつ明白である場合に限られる。 したがって,本件勧告が仮に行政処分にあたるとしても,これを無効と評価し得るのは,被告が医療法30条の7の規定により認められる裁量権を著しく逸脱・濫用したという重大な瑕疵があり,かつ,その瑕疵が本件勧告時において外形上客観的に明白であると評価できる場合に限られると解すべきである。 (2)本件勧告の経緯ア公正取引委員会の勧告公正取引委員会は,平成8年12月26日,三豊郡医師会が,昭和54年以降,同医師会員による増床等を制限していた事実を認め,同医師会に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条1項に基づき,病院または診療所の開設,診療科目の追加,病床の増床,増改築等を制限する行為を行わないことなどを内容とする勧告を行い,被告に対しても,同医師会への指導を要請した。 県担当課は,前記勧告を受けて,平成9年初めから改善策を協議し,同年3月19日,社団法人香川県医師会(以下「県医師会」という。)に対し,医療法上の申請等の手続は保健所に直接行うこととするよう通知した。 イ増床の配分県担当課は,平成8年10月以降,三豊保健医療圏内の複数の病院が,増床を計画していることを知り,また増床希望の申入れを受けたことから,同医療圏において,形式上は469床の病床不足状態となっているが,医師会による制約がなければ,既に増床等が行われていた可能性があると考えた。そして,地域住民にとって 増床希望の申入れを受けたことから,同医療圏において,形式上は469床の病床不足状態となっているが,医師会による制約がなければ,既に増床等が行われていた可能性があると考えた。そして,地域住民にとっても不都合であるなどの事情を考慮し,増床が制約されていたこれらの地元医療機関の救済(増床許可)を,前記勧告を踏まえた事件処理と位置づけた。 県担当課は,地元医療機関に対する説明会及びヒアリングを行ったが,増床希望が不足病床数を上回っていたことから,平成9年9月5日ころまでに病床の仮配分を終え,地元8病院は,これに従って,同月末までに,病床数変更のための許可申請書を県担当課に提出した。 この間,原告は,同年7月25日,県担当課に対し,病床数を419床とする病院を新規に観音寺市内に開設したいとの意向を表明し,同年9月1日付けで,病院開設許可申請書を観音寺保健所に郵送した。 県担当課としては,従来制約されていた地元医療機関の増床を実現することは,公取委の勧告に係る事件処理であり,速やかに実現する必要がある反面,原告は419床の病院開設許可に固執する姿勢を示したことから,調整は困難であると考え,地元8病院に病床を配分した。 ウ本件勧告及び本件許可処分原告は,同年10月24日,県担当課に対し,病床数を419床から310床に,開設予定地を観音寺市B町内から同市C町内にそれぞれ変更し,敷地面積,階層等の構造概要のほか,医師数,看護婦数についても変更したい旨の申し出を行い,同年9月1日付けの申請書の差し替えを求めた。県担当課は,本来であれば,新たな申請にあたると思料したが,原告が,同年11月6日開催予定の県医療審議会への諮問を希望したことから,申請書の修正(差替え)を認めることとした。 原告に対するヒアリングの際にも,原告が,300床以下に削減する予 ると思料したが,原告が,同年11月6日開催予定の県医療審議会への諮問を希望したことから,申請書の修正(差替え)を認めることとした。 原告に対するヒアリングの際にも,原告が,300床以下に削減する予定はない旨を述べたことから,被告は,累積していた地元医療機関の増床希望を無視して原告の希望のみを実現することはできないと考え,県医療審議会の審議,答申を経て,同年12月2日,地元8病院に対する増床の許可を行い,同月8日,原告に対し本件勧告を行った。 平成10年1月22日,原告から県担当課に対し,病院開設中止勧告に対する不応諾通知と,勧告の撤回要求があり,被告は,同年2月26日,原告の病院開設許可申請に対する本件許可処分を行った。 (3)本件勧告の適法性ア中止勧告の裁量性医療法30条の7によれば,都道府県知事が中止勧告をするにあたっては,①「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」に,②「勧告することができる」ものとされており,都道府県知事に,必要性という適法要件の認定判断の場面及び中止勧告を行うか否かの判断の場面において,一定の要件裁量及び効果裁量が認められていることは明らかである。 また,医療法30条の7が,都道府県知事の勧告の制度を設けた趣旨は,いわゆる病床過剰地域における病院の開設や増床,病床の種別の変更に関し勧告することができるものとして,無秩序な病床の増加が行われることがないよう企図するものであり,その目的実現に必要な範囲で,都道府県知事の裁量が認められることは明白である。 医療法は,必要病床数を超えることとなる申請が競合した場合,都道府県知事がこれを不許可とし,あるいは勧告を行うことができると規定するものの,その際の手続については特に規定するところはないが,諸事情を総合的に勘案した上で,都道府県知事の裁量により, た場合,都道府県知事がこれを不許可とし,あるいは勧告を行うことができると規定するものの,その際の手続については特に規定するところはないが,諸事情を総合的に勘案した上で,都道府県知事の裁量により,競合する各病院に対する病床の配分を決定し,その結果,当該地域の必要病床数を超えることとなる場合には,都道府県医療審議会の意見を聴いた上で,中止勧告を行うことになるのである。 原告は,中止勧告を行うにあたって,都道府県知事に裁量の余地はない旨を主張するが(前記5(4)),実定行政法規の文言自体が行政庁の裁量を認める内容となっている場合に,法規範性のない行政通達や,行政庁の運用如何により,裁量性がなくなるということはあり得ず,原告の主張は失当である。 イ本件勧告の適法性以上の経緯に照らすと,被告は,三豊保健医療圏における適正な医療体制を実現,確保するため,被告に許された合理的な裁量権の範囲内で,地元8病院に対しては増床を配分し,原告に対しては中止を勧告したものであるから,本件勧告は,医療法30条の7にいう「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」との要件を具備するということができる。 また,原告の病院設置許可申請に係る案件は,適法に設置,開催された県医療審議会で審議された上,中止勧告相当との答申がなされたものであって,「都道府県医療審議会の意見を聴くこと」との要件も具備されている。 そうすると,原告に対して本件勧告を行った被告の判断には十分な合理性があり,裁量権の逸脱,濫用は認められないから,仮に本件勧告に処分性が認められるとしても,本件勧告を無効と評価することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件勧告の処分性)について(1)総論行政事件訴訟法3条2項,4項は,無効等確認訴訟を含む抗告訴訟の対象を「行政庁の処分そ を無効と評価することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件勧告の処分性)について(1)総論行政事件訴訟法3条2項,4項は,無効等確認訴訟を含む抗告訴訟の対象を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に限っているが,これは,行政庁が,直接国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定することが法律上認められている行為については,正当な権限を有する機関によって取り消されるまでは一応これを有効なものと扱う一方,その効力については,特別な手続である抗告訴訟において争わせる趣旨と解される(最高裁昭和30年2月24日第1小法廷判決・民集9巻2号217頁,同昭和39年10月29日第1小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。他方,法律の規定に基づく行政庁の行為であっても,直接国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定する効果がないものについては,抗告訴訟の対象としての適格性,すなわち処分性がなく,公定力等,行政処分としての性質も有しないことになる。 本件は,被告が原告に対してした,医療法30条の7に基づく病院開設の中止勧告(本件勧告)の無効確認を求める訴えであるから,訴えが適法とされるためには,中止勧告が,名宛人の法律上の地位ないし権利義務に直接何らかの影響を及ぼすか否か,すなわちその処分性の有無をまず検討すべきことになる。 (2)手続の概観中止勧告の処分性について検討するのに必要な限度で,関係する手続について概観することとする。なお,本件勧告の処分性の有無については,本件勧告当時の法制度に照らし検討すべきものであるが,原告が,今後,保険医療機関の指定申請(以下単に「指定申請」という。)に及んだ場合,改正健康保険法が適用されることから,必要な範囲で,改正健康保険法にも言及することとする。 ア医療計画医療法は,医 が,今後,保険医療機関の指定申請(以下単に「指定申請」という。)に及んだ場合,改正健康保険法が適用されることから,必要な範囲で,改正健康保険法にも言及することとする。 ア医療計画医療法は,医療を提供する体制の確保を図り,もって国民の健康の保持に寄与することを目的とし,病院等の医療提供施設その他において,その機能に応じ,医療を効率的に提供すること等を理念として,その体制の確保を国及び地方公共団体の責務と定める法律である(同法1条,1条の2,1条の3)。 この目的等に照らし,都道府県は,当該都道府県における医療を提供する体制の確保に関する医療計画を定めるものとされ(同法30条の3),この医療計画において,主として病院の病床の整備を図るべき地域的単位として区分する区域の設定に関する事項,二以上の前記区域を併せた区域であって,主として省令で定める特殊な医療を提供する病院の療養病床又は一般病床であって当該医療に係るものの整備を図るべき地域的単位としての区域の設定に関する事項,療養病床及び一般病床に係る基準病床数,へき地の医療,医師及び歯科医師並びに薬剤師,看護婦その他の医療従事者の確保に関する事項その他について定めることとされている(同法30条の3第2項各号)。 また,前記区域の設定及び基準病床数の標準については,省令で定めることとされているが(同条4項),急激な人口の増加が見込まれることその他の政令で定める事情があるときは,基準病床数に関し,省令の標準によらないことができるとされている(同条5項以下)。 イ病院の開設許可病院を開設しようとする者は,開設地の都道府県知事の許可を受けなければならないが(医療法7条),申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が同法21条及び23条の規定に基づく省令の要件に適合するときは,都道府県知事は する者は,開設地の都道府県知事の許可を受けなければならないが(医療法7条),申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が同法21条及び23条の規定に基づく省令の要件に適合するときは,都道府県知事は許可を与えなければならない(同法7条4項)。ただし,営利を目的とする病院開設に対しては,許可を与えないことができるとされる(同条5項)。 また,公的医療機関等については,当該申請に係る病院の所在地を含む地域における病院の病床が,医療計画において定めるその地域の基準病床数に既に達しているか,又は当該病院の開設によってこれを超えることになると認めるときは,許可を与えないことができるとされるが(同法7条の2),それ以外の病院については,医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合に,都道府県知事が,病院を開設しようとする者に対し,都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院の開設に関して勧告することができるとされるにとどまる(同法30条の7)。 ウ旧健康保険法における保険医療機関の指定病院等が,健康保険の被保険者に,診察,薬剤又は治療材料の支給,処置,手術その他の治療等の療養の給付をするためには,保険医療機関の指定を受けなければならず,保険医療機関の指定は,病院等の開設者の申請により,都道府県知事が行うが(旧健康保険法43条,43条の3第1項),指定申請にあたっては,前記病院の開設許可を得て,病院の施設及び人員を用意し,都道府県知事の検査を受けて使用許可証の交付を受けることが前提となる(医療法27条)。 都道府県知事は,指定申請に対し,当該病院等に以下の①ないし③の事由がある場合,指定を拒むことができる(「其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得」,旧健康保険法43条の3第3項)。 ① 保険医療機関の指定等を取り消され2年を経過しないとき② 保険給付に関し診療等の内 いし③の事由がある場合,指定を拒むことができる(「其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得」,旧健康保険法43条の3第3項)。 ① 保険医療機関の指定等を取り消され2年を経過しないとき② 保険給付に関し診療等の内容の適切を欠くおそれがあるとして,重ねて指導を受けたとき③ その他保険医療機関として著しく不適当と認められるときまた,都道府県知事は,指定申請に対し,指定しようとするときは地方社会保険医療協議会に諮問しなければならず(同法43条の14第2項),指定を拒否しようとするときは,地方社会保険医療協議会の議によることを要するとされている(同法43条の3第3項)。このため,都道府県知事は,同協議会に諮問し,指定拒否の答申を得た場合であっても,指定をすることができるのに対し,都道府県知事としては指定拒否を相当と思料する場合であっても,その旨の同協議会の議決がなければ,指定を拒否することはできないと解される。 なお,中止勧告を受けた名宛人が,これに従わずに病院を開設し,当該病院について指定申請をした場合,上記③に規定する「保険医療機関として著しく不適当と認められるとき」に該当するものとして,保険医療機関の指定拒否または受理拒否を地方社会保険医療協議会に諮問することとする昭和62年通知が存したことは,前述のとおりである。 エ改正健康保険法における保険医療機関の指定厚生労働大臣は,指定申請に対し,当該病院等に以下の①ないし③の事由がある場合,保険医療機関の指定を拒むことができる(「其ノ指定ヲ拒ムコトヲ得」,改正健康保険法43条の3第3項)。 ① 保険医療機関の指定等を取消され,5年を経過しないとき② 保険給付に関し診療等の内容が適切を欠くおそれありとして,重ねて指導を受けたとき③ その他保険医療機関として著しく不適当と認められるときまた,病院又は 指定等を取消され,5年を経過しないとき② 保険給付に関し診療等の内容が適切を欠くおそれありとして,重ねて指導を受けたとき③ その他保険医療機関として著しく不適当と認められるときまた,病院又は診療所が保険医療機関の指定を申請する際には,病床の種別ごとにその数を定めてこれを行わなければならず(同条2項),厚生労働大臣は,以下の④ないし⑥の事由に該当するときは,その申請に係る病床の全部又は一部を除いて,保険医療機関の指定を行うことができる(「其ノ申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得」,同条4項)。 ④ 当該病院等の医師,歯科医師,看護婦その他の従業者の人員が,厚生労働大臣の定める基準により算定した員数を満たさないとき⑤ 医療法7条の2第1項に規定する地域における保険医療機関の病床の数が(病床の種別ごとに算定する。),その指定を行うことによって,同法30条の3第1項に規定する医療計画において定める基準病床数を勘案して厚生労働大臣の定めるところにより算定した数を超えることになると認める場合であって(その数を既に超える場合を含む。),当該病院の開設者等が,同法第30条の7の規定に依る都道府県知事の勧告を受け,これに従わないとき⑥ その他適正なる医療の効率的なる提供を図る観点より,当該病院等の病床の利用に関し,保険医療機関として著しく不適当なところがあると認めるときなお,旧健康保険法と同様,厚生労働大臣は,保険医療機関の指定をする場合に,地方社会保険医療協議会に諮問することを要し(改正健康保険法43条の14第2項),保険医療機関の指定を拒み,あるいは申請に係る病床の全部若しくは一部を除いて指定をするには,地方社会保険医療協議会の議によることを要する(同法43条の3第7項)。 (3)処分性についての検討上記法制度を前提 関の指定を拒み,あるいは申請に係る病床の全部若しくは一部を除いて指定をするには,地方社会保険医療協議会の議によることを要する(同法43条の3第7項)。 (3)処分性についての検討上記法制度を前提に,中止勧告の処分性について検討する。 ア医療法の関係中止勧告は,医療法7条の病院開設許可申請に対し,同法30条の7に基づいてなされるものであるから,まず,医療法上の手続の関係で処分性を肯定することができるかを検討するに,前記(2)イのとおり,都道府県知事は,病院の開設許可申請に対し,施設の構造設備等が要件に適合するときは,許可を与えなければならず,営利を目的とする病院開設について,許可を与えないことができるとされているにとどまり,中止勧告が発せられたこと,あるいは中止勧告に対する名宛人の不応諾が,病院開設許可の可否に影響を及ぼす旨の規定は存しない。本件勧告についても,原告がこれに応じない旨を明らかにした後,被告が本件許可処分をしたことは,前記第2の1(9)のとおりである。 また,中止勧告が,病院の使用許可(同法27条)等,医療法上のその他の手続に影響を及ぼす旨の規定はなく,中止勧告に対する不服申立てを認める旨の規定もない。 したがって,中止勧告は,病院の開設許可等,医療法に基づく手続の関係では,文字どおり,行政指導としての勧告の性質を有するに止まり,名宛人の法律上の地位ないし権利義務に具体的な影響を及ぼすものではないというべきである。 イ健康保険法の関係次に,中止勧告が,保険医療機関の指定等,健康保険法に基づく手続の関係で,名宛人の法的地位に影響を与えると認められるかについて検討する。 (ア)まず,本件勧告当時,中止勧告を受けた者が,勧告に応じることなく当該病院の開設を行い,使用許可を得て指定申請に及んだ場合,中止勧告またはこれに対 位に影響を与えると認められるかについて検討する。 (ア)まず,本件勧告当時,中止勧告を受けた者が,勧告に応じることなく当該病院の開設を行い,使用許可を得て指定申請に及んだ場合,中止勧告またはこれに対する不応諾が,直接,保険医療機関の指定の障害事由となる旨の法律の規定はなく,病院の新規開設の事案では,旧健康保険法43条の3第3項が定めるもののうち,前記(2)ウ③の事由(保険医療機関として著しく不適当と認められるとき)を理由とする指定拒否が問題になるものと解される。 この場合,指定申請を受けた都道府県知事としては,中止勧告を発したにもかかわらず,申請者がこれに応じずに病院を開設したことをもって,保険医療機関として著しく不適当と評価することができるかを判断すべきことになる。そして,この判断にあたって,都道府県知事は,中止勧告の前提となる医療計画の内容,当該病院開設計画の内容,医療計画の達成の推進のために特に必要があると認め中止勧告を発した理由,申請者において中止勧告に応じなかった理由,指定をした場合に保険医療制度が受けると予想される影響等の一切の事情を,医療計画,中止勧告及び保険医療機関指定の各制度趣旨に照らし,総合的に検討すべきものと思われる。 その結果,中止勧告を受け,これに応じなかったことについて,保険医療機関として著しく不適当とまで評価することができず,他に指定を拒むべき理由もない場合には,都道府県知事は指定をすべきことになるし,都道府県知事において,保険医療機関として著しく不適当と評価する場合であっても,地方社会保険医療協議会が指定拒否を相当とする旨の決議をしなければ,指定を拒否できないことは,既に述べたとおりである。 以上で検討したところによれば,医療法に基づく中止勧告を受けたとしても,名宛人の指定申請が当然に不適法となったり 相当とする旨の決議をしなければ,指定を拒否できないことは,既に述べたとおりである。 以上で検討したところによれば,医療法に基づく中止勧告を受けたとしても,名宛人の指定申請が当然に不適法となったり,指定申請が当然に拒否されるわけではないから,中止勧告に対する不応諾が保険医療機関の指定の消極要件に当たるということはできない。したがって,旧健康保険法に基づく保険医療機関の指定手続の関係で,中止勧告が名宛人の法的地位に影響を及ぼすということはできない。 (イ)なお,原告が今後指定申請に及んだ場合,改正健康保険法が適用されることから,この点についても検討するに,中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合,直接に同法43条の3第4項2号に該当する点で,旧健康保険法との相違点がある。しかしながら,この場合においても,厚生労働大臣としては,前記(ア)と同様の判断過程を経た上で,申請に係る病床の全部を指定除外とする,一部について指定除外とする,あるいは病床の指定除外をせず,申請どおり指定するとのいずれかの判断をしなければならないのであって,地方社会保険医療協議会の議決のない限り,病床の除外指定ができないことも,旧健康保険法と同様である。 したがって,改正健康保険法の下においても,中止勧告があれば,当然に不利益処分がなされるということにはなっていない。 (ウ)以上検討したところによれば,中止勧告は,旧健康保険法に基づく保険医療機関の指定手続の関係で,名宛人の法律上の地位又は権利関係に影響を及ぼすものではないというべきである。 また,原告が,改正健康保険法の下で指定申請に及んだとしても,当然に保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されることにはならないから,本件勧告後の健康保険法の改正は,上記結論を左右するものではない。 (4)原告の主張について処分性につ 申請に及んだとしても,当然に保険医療機関(保険病床)の指定が拒否されることにはならないから,本件勧告後の健康保険法の改正は,上記結論を左右するものではない。 (4)原告の主張について処分性についての原告の主張について検討する。 ア原告は,62年通知や実務慣行から,中止勧告が発せられた場合に,指定申請を受けた行政庁(都道府県知事または厚生労働大臣)の裁量といったものは存在せず,保険医療機関(保険病床)の指定は当然に拒否されるから,中止勧告は,名宛人の法的地位に影響を及ぼす行政処分である旨を主張する。 しかしながら,医療法及び健康保険法の法律上の枠組みが既に述べたものである以上,指定申請を受けた行政庁としては,前記(3)イ(ア)及び(イ)で述べたような判断の過程を経なければならないのであって,通達や実務慣行を理由に,これを別異に解することはできない。したがって,中止勧告があれば指定申請が必ず拒否される,あるいは中止勧告への不応諾が,不利益処分の要件として法律上仕組まれているとの原告の主張は採用できない。中止勧告が発せられれば,指定申請が拒否される可能性が高いとしても,これは事実上の問題に過ぎず,このことを理由に,中止勧告の処分性を認め得るものではない。 イ原告は,中止勧告は,保険医療機関の指定を拒否する旨の,行政庁の最終的判断を示すものであると主張する。 しかしながら,この問題に対する処分行政庁の最終的判断は,現実に指定申請があり,前記(3)イ(ア)及び(イ)で述べた判断の過程を経た後に,指定または指定拒否の判断として示されることが予定されているのであって,指定拒否の判断が示されれば,これを抗告訴訟で争い得ることは当然であるし,抗告訴訟が提起された場合も,審理の対象は明確である。 これに対し,中止勧告の時点では,そもそも指定申請自 ているのであって,指定拒否の判断が示されれば,これを抗告訴訟で争い得ることは当然であるし,抗告訴訟が提起された場合も,審理の対象は明確である。 これに対し,中止勧告の時点では,そもそも指定申請自体が存在せず,中止勧告及びこれに対する不応諾という事実を保険医療機関指定の手続においてどのように評価するかという,前記(3)イ(ア)及び(イ)で述べたような行政庁の判断自体が行われておらず,具体的な処分として何を選択するかについての行政庁の判断も示されていない。 結局,中止勧告がされたに過ぎない状態と,指定申請に対する拒否処分がされた状態とは,法的には異なるというべきであるから,単に前者がなされれば後者に至る可能性が高いことをもって,両者を同視することはできず,中止勧告が,保険医療機関(保険病床)の指定を拒否する旨の行政庁の最終的判断にあたるということはできない。 ウ原告は,病院の開設者が指定申請に及ぶためには,病院の物的,人的設備を整える必要があり,その後に指定申請が拒否された場合には著しい不利益を受けることから,病院の開設自体を断念せざるを得ず,これを解消するためには,中止勧告の段階でその違法性を争わせる以外になく,また,そのようにしても,何らの不都合も生じない旨を主張する。 しかしながら,中止勧告がされたに過ぎない段階では,名宛人が中止勧告を正当としてこれに応じる,施設の構造設備や人員が要件に適合しないために病院の設置許可や使用許可が得られない,あるいは財政上の理由その他により,名宛人が病院の開設自体を断念するといった様々な可能性があり,そもそも名宛人が指定申請に及ぶか否かも未確定である。そうすると,中止勧告がされたに過ぎず,指定申請もされていない段階では,名宛人が保険医療機関の指定を受ける関係で不利益を受けるといっても,これを具 もそも名宛人が指定申請に及ぶか否かも未確定である。そうすると,中止勧告がされたに過ぎず,指定申請もされていない段階では,名宛人が保険医療機関の指定を受ける関係で不利益を受けるといっても,これを具体的,現実的なものと解することができるかは疑問といわざるを得ない。 また,原告の主張に与して,指定申請手続に著しい不利益が及ぶことを理由に,中止勧告の適法性について実体判断をしたとしても,判決後に,名宛人が,中止勧告とは別の理由で病院の開設を断念するなど,実際には指定申請に及ばなかった場合,当該判決は,結局のところ,行政行為の違法の有無を抽象的に判断したに過ぎないものとなってしまう。 さらに,中止勧告に処分性を認める以上,これを不服とする者は,期間内にその取消しを求めなければ,その後,これを争い得ないことになるし,中止勧告に対する取消訴訟を提起したとしても,その訴訟係属中に,中止勧告に対する不応諾を理由とする指定拒否処分がされた場合,前訴訟の帰趨が不明である以上,後者に対する取消訴訟をも提起せざるを得ないことになるため,中止勧告それ自体に対する取消訴訟と,中止勧告を前提とする指定拒否処分に対する取消訴訟とが,別異の訴訟物として係属するという複雑な状態が生じる。 かえって,中止勧告は行政処分には当たらないと解した場合,指定申請を受けた行政庁としては,中止勧告の前提となった事実の存否や,中止勧告の当否自体を,自らの判断の前提として改めて検討することができるし,抗告訴訟を審理する裁判所も同様に,中止勧告の当否を含め,全体を一個の訴訟手続で判断し得ることになる。このように考えると,原告が主張するほど単純に,中止勧告の処分性を肯定しても,何らの不都合も生じないとまで言い切ることはできないと思われる。 (5)結語指定申請に対する拒否処分を待たなけれ なる。このように考えると,原告が主張するほど単純に,中止勧告の処分性を肯定しても,何らの不都合も生じないとまで言い切ることはできないと思われる。 (5)結語指定申請に対する拒否処分を待たなければこれを争い得ないとした場合,中止勧告を受けた者が事実上不利益な立場に置かれることはそのとおりであろう。しかしながら,これまで検討したところによれば,医療法及び健康保険法が既に検討したような制度を採用する以上,保険医療機関(保険病床)の指定を受けることができないことに対する不服は,中止勧告に対する抗告訴訟ではなく,指定拒否処分に対する抗告訴訟において争うことを,法は予定しているものと考えざるを得ない。 2 結論(1)本件勧告の無効確認を求める訴えについて前記1で検討したとおり,医療法30条の7に基づく中止勧告は,抗告訴訟の対象となる行政処分とは認められないから,本件勧告の無効確認を求める訴えは,不適法というべきである。 (2)本件許可処分に付した,病院の開設中止を勧告する附款部分の無効確認を求める訴えについて本件許可処分は,前記第2の1(9)のとおり,原告の申請内容をそのまま認めるものであって,不利益処分の要素を含むものではない。その際に,香川県健康福祉部長名で,62年通知がある旨の留意事項の指摘がされているが,これによって本件許可処分の効力が制約されたり,本件許可処分が負担付きのものになったと解することはできない。将来の健康保険法に基づく指定申請の際に,不利益処分がされる可能性があることを理由に,本件勧告が,病院開設許可処分の附款であると解すべき法律上の根拠はない。 したがって,本件許可処分に附款が付されているとの主張自体が失当といわざるを得ないから,その附款部分のみの無効確認を求める訴えは,不適法である。 (3)以上によれば,争点( べき法律上の根拠はない。 したがって,本件許可処分に附款が付されているとの主張自体が失当といわざるを得ないから,その附款部分のみの無効確認を求める訴えは,不適法である。 (3)以上によれば,争点(2)(本件勧告の無効理由)について判断するまでもなく,本件訴えは,いずれも不適法として却下すべきであるから,主文のとおり判決する。 高松地方裁判所民事部裁判長裁判官窪田正彦裁判官谷有恒裁判官空閑直樹
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