平成31(行ウ)47 一時保護決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文71,725 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,100万円及びうち30万円に対する平成31年4月12日から,うち70万円に対する令和元年8月9日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その4を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成31年4月12日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要大阪府池田子ども家庭センター所長(以下「本件センター所長」といい,同センターを「本件センター」という。)は,平成30年12月21日,児童福祉法33条に基づき,原告の子(同年●●●●●生まれの女児。当時生後約1か月半。 以下「本件児童」という。)について一時保護(以下「本件一時保護」という。)をした。本件一時保護は,令和元年8月9日まで継続された。また,本件一時保護の期間中である平成31年1月4日~令和元年6月12日,原告と本件児童との面会の全部又は一部の制限(以下「本件面会制限」という。)がされた。 本件は,原告が,①本件一時保護の開始,②本件一時保護の継続,及び③本件 面会制限が違法であるなどと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,慰謝料500万円及びこれに対する違法行為の後の日(訴状送達日の翌日)である平成31年4月12日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原告は,当初,主位的に,本件一時保護の取消し及び国家賠償法1条1項に基 づく損害賠償を求め,予備的に,本件一時保護の終了決定の義務付けを求めていたが,本件 払を求める事案である。 原告は,当初,主位的に,本件一時保護の取消し及び国家賠償法1条1項に基 づく損害賠償を求め,予備的に,本件一時保護の終了決定の義務付けを求めていたが,本件一時保護が令和元年8月9日に解除されたため,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求以外の請求を取り下げた。 1 関係法令等の定め⑴ 児童の権利に関する条約 ア児童がその父母から分離されないことの確保児童の権利に関する条約9条1項は,締約国は,原則として,児童(18歳未満の全ての者。同条約1条参照)がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する旨規定する。 イ関係当事者の手続参加等の機会 児童の権利に関する条約9条2項は,全ての関係当事者は,同条1項の規定に基づくいかなる手続においても,その手続に参加し,かつ,自己の意見を述べる機会を有する旨規定する。 ウ児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係等を維持する権利児童の権利に関する条約9条3項は,締約国は,児童(18歳未満の全 ての者)の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する旨規定する。 ⑵ 児童福祉法ア児童福祉の理念等 児童福祉の理念児童福祉法1条は,全て児童(18歳に満たない者をいう。同法4条1項。特に断らない限り,以下同じ。)は,児童の権利に関する条約の精神にのっとり,適切に養育されること,その生活を保障されること,愛され,保護されること,その心身の健やかな成長及び発達並びにその自 立が図られることその他の福祉を等しく保証される権利を有する旨規定 する。 児童育成の責任児童福祉法 ること,愛され,保護されること,その心身の健やかな成長及び発達並びにその自 立が図られることその他の福祉を等しく保証される権利を有する旨規定 する。 児童育成の責任児童福祉法2条は,1項において,全て国民は,児童が良好な環境において生まれ,かつ,社会のあらゆる分野において,児童の年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考 慮され,心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない旨規定し,2項において,児童の保護者(親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護する者をいう。同法6条。以下同じ。)が児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う旨規定し,3項において,国及び地方公共団体が児童の保護者とともに児童を 心身ともに健やかに育成する責任を負う旨規定する。 児童福祉保障の原理児童福祉法3条は,同法1条,2条に規定するところは,児童の福祉を保障するための原理であり,この原理は,全て児童に関する法令の施行に当たって,常に尊重されなければならない旨規定する。 イ要保護児童を発見した者の通告義務児童福祉法25条1項本文は,要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童をいう。同法6条の3第8項)を発見した者は,これを市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村,都道府県の設置する 福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない旨規定する。 ウ児童相談所長の採るべき措置児童福祉法26条1項は,児童相談所長は,同法25条1項の規定による通告を受けた児童について,必要があると認めたときは,次の各号のいずれかの措置を採らなければならな 児童相談所長の採るべき措置児童福祉法26条1項は,児童相談所長は,同法25条1項の規定による通告を受けた児童について,必要があると認めたときは,次の各号のいずれかの措置を採らなければならない旨規定する。 児童福祉法27条の措置を要すると認める者は,これを都道府県知事 に報告すること(1号)。 (略)(2号~8号)エ都道府県の採るべき措置児童福祉法27条1項は,都道府県は,同法26条1項1号の報告のあった児童につき,次の各号のいずれかの措置を採らなければならない旨規 定する。 児童又はその保護者に訓戒を加え,又は誓約書を提出させること(1号)。 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において, 又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において,児童福祉司,知的障害者福祉司,社会福祉主事,児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害者等相談支援事業に係る職員に指導させ,又は市町村,当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター,当該都道府県以外の障害者等相 談支援事業を行う者若しくは児童福祉法26条1項2号に規定する厚生労働省令で定める者に委託して指導させること(2号)。 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し,又は乳児院,児童養護施設,障害児入所施設,児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること(3号)。 (略)(4号)オ保護者からの隔離措置児童福祉法28条1項は,保護者が,その児童を虐待し,著しくその監護を怠り,その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において (略)(4号)オ保護者からの隔離措置児童福祉法28条1項は,保護者が,その児童を虐待し,著しくその監護を怠り,その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において,同法27条1項3号の措置を採ることが児童の親権を行 う者又は未成年後見人の意に反するときは,都道府県は,次の各号の措置 を採ることができる旨規定する。 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは,家庭裁判所の承認を得て,児童福祉法27条1項3号の措置を採ること(1号)。 (略)(2号)カ一時保護 児童福祉法33条1項は,児童相談所長は,必要があると認めるときは,同法26条1項の措置を採るに至るまで,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童の一時保護を行い,又は適当な者に委託して,当該一時保護を行わせることができる旨規定する。 児童福祉法33条2項は,都道府県知事は,必要があると認めるときは,同法27条1項の措置を採るに至るまで,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童相談所長をして,児童の一時保護を行わせ,又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることが できる旨規定する。 児童福祉法33条3項は,同条1項及び同条2項の規定による一時保護の期間は,当該一時保護を開始した日から2月を超えてはならない旨規定する。 児童福祉法33条4項は,同条3項の規定にかかわらず,児童相談所 長又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,引き続き同条1項又は同条2項の規定による一時保護を行うことができる旨規定する。 児童福祉 条4項は,同条3項の規定にかかわらず,児童相談所 長又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,引き続き同条1項又は同条2項の規定による一時保護を行うことができる旨規定する。 児童福祉法33条5項本文は,同条4項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては,児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を 行おうとするとき,及び引き続き一時保護を行った後2月を超えて引き 続き一時保護を行おうとするときごとに,児童相談所長又は都道府県知事は,家庭裁判所の承認を得なければならない旨規定する。同項ただし書は,当該児童に係る同法28条1項1号の承認の申立てがされている場合等は,この限りでない旨規定する。 ⑶ 児童虐待防止法 ア目的児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)1条は,同法は,児童虐待が児童の人権を著しく侵害し,その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに,我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことに鑑み,児童に対する虐待の禁止,児童虐待の 予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務,児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより,児童虐待の防止等に関する施策を促進し,もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする旨規定する。 イ児童虐待の定義 児童虐待防止法2条は,児童虐待防止法において,「児童虐待」とは,保護者がその監護する児童について行う次に掲げる行為をいう旨規定する。 児童の身体に外傷が生じ,又は生ずるおそれのある暴行を加えること(1号)。 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為を 児童について行う次に掲げる行為をいう旨規定する。 児童の身体に外傷が生じ,又は生ずるおそれのある暴行を加えること(1号)。 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為を させること(2号)。 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置,保護者以外の同居人による上記,又は下記に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(3号)。 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応,児童が同居する家 庭における配偶者に対する暴力(配偶者〔婚姻の届出をしていないが, 事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。〕の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(4号)。 ウ児童虐待に係る通告 児童虐待防止法6条1項は,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに,これを市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない旨規定する。 エ通告を受けた場合の措置 児童虐待防止法8条2項は,児童相談所が児童虐待防止法6条1項の規定による通告等を受けたときは,児童相談所長は,必要に応じ近隣住民,学校の教職員,児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ,当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに,必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする旨規定する。 児童福祉法33条1項の規定により当該児童の一時保護を行い,又は適当な者に委託して,当該一時保護を行わせること(1号)。 ともに,必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする旨規定する。 児童福祉法33条1項の規定により当該児童の一時保護を行い,又は適当な者に委託して,当該一時保護を行わせること(1号)。 (略)(2号~4号)オ面会等の制限等児童虐待防止法12条は,児童虐待を受けた児童について児童福祉法2 7条1項3号の措置が採られ,又は同法33条1項若しくは2項の規定による一時保護が行われた場合において,児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは,児童相談所長及び当該児童について同法27条1項3号の措置が採られている場合における当該施設入所等の措置に係る同法27条1項3号に規定する施設の長は,厚 生労働省令で定めるところにより,当該児童虐待を行った保護者について, 当該児童との面会,及び当該児童との通信の全部又は一部を制限することができる旨規定する。 2 前提事実当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,次のとおりである。 ⑴ 当事者等ア原告及び本件児童原告は,昭和62年生まれの女性であり,本件児童●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の母であり,本件児童の親権者である(甲1,5,8,20)。 原告は,平成22年,大学の社会福祉学部を卒業し,大学卒業後である平成30年には社会福祉士国家試験に合格した。原告は,英語の学校の事務の仕事をしていたが,産休に入る前に退職した。(甲3,4,32,59,原告本人)原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,本件一時保護当時, 本件児童と2人で住所地に居住していた(甲8,32)。 本件児童の出生後約1か月までの本件児童及び原告の経過は良好であ 原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,本件一時保護当時, 本件児童と2人で住所地に居住していた(甲8,32)。 本件児童の出生後約1か月までの本件児童及び原告の経過は良好であり,その旨が母子健康手帳にも記載されていた(甲5)。 イ被告及び本件センター被告は,児童相談所である池田子ども家庭センター(本件センター)を 設置する地方公共団体である。 A(昭和49年生まれ。以下「A」という。)は,大学で社会福祉を学んだ後,平成9年に被告の職員に採用され,平成19年から児童相談所で勤務するようになり,平成30年12月~平成31年4月当時,本件センターの職員であった。Aは,児童福祉司として任用されている。Aは,本件 児童について,担当ケースワーカーとして関与した。E(以下「E」とい う。)は,同月以降,本件児童について,Aの後任の担当ケースワーカーとして関与した。 B(昭和54年生まれ。以下「B」という。)は,平成16年から児童相談所で勤務するようになり,平成30年12月~平成31年4月当時,本件センターの職員(総括主査)であり,数十件以上のケースを担当してい た。Bは,児童福祉司として任用され,平成28年からはスーパーバイザーとして任用されている。Bは,本件児童について,スーパーバイザーとして関与した。F(以下「F」という。)は,平成31年4月以降,本件児童について,Bの後任のスーパーバイザーとして関与した。 C(昭和33年生まれ。以下「C」という。)は,平成15年頃から児童 虐待対応に関与するようになり,平成30年12月~平成31年3月当時,本件センターの次長であった。本件センターは基本的には方針を決定する際に対応会議を行っていたところ,Cは,本件児童に関する対応会議に参加すること るようになり,平成30年12月~平成31年3月当時,本件センターの次長であった。本件センターは基本的には方針を決定する際に対応会議を行っていたところ,Cは,本件児童に関する対応会議に参加することがあった。 D(以下「D」という。)は,平成30年12月~令和元年8月当時,本 件センター所長であった。(以上につき,甲13,34,乙2,18,20,21,証人A,証人B,証人C,証人F)ウ O病院O病院(以下「O病院」という。)は,平成30年12月19日~平成31年1月4日,本件児童が入院していた病院である。本件児童の主治医は, I医師(小児科),J医師(小児科)であった。(甲7)エ G医師G(以下「G医師」という。)は,平成31年1月当時,Q大学大学院医学系研究科法医学講座准教授を務めていた医師である。G医師は,平成30年12月25日,本件センター所長のDから,本件児童の受傷原因等に ついて,鑑定の嘱託を受け,平成31年1月21日,鑑定書(以下「本件 鑑定書」という。)を作成した。(甲13,43)⑵ 本件一時保護の開始に至るまでの経緯等ア本件事故原告は,平成30年12月19日午後7時頃,自宅において,本件児童(当時生後約1か月半)を抱いた状態で,ローテーブル上の牛乳の入った グラスを片付けるために取ろうとして,本件児童を左手で抱き,グラスに右手を伸ばしたところ,本件児童を約1mの高さ(床から本件児童の後頭部までの高さ)からフローリングの床に落としてしまい,本件児童がフローリングの床に後頭部の上の方を打ち付ける事故(以下「本件事故」という。)が起きた。原告は,本件事故の直後である同日午後7時2分,119 番通報をした。(甲6,7,32,52,原告本人)イ本件児童の受診本件 の方を打ち付ける事故(以下「本件事故」という。)が起きた。原告は,本件事故の直後である同日午後7時2分,119 番通報をした。(甲6,7,32,52,原告本人)イ本件児童の受診本件児童は,平成30年12月19日午後7時57分,O病院に緊急搬送された。頭部CT検査の結果,本件児童の両側頭頂骨(左右のこめかみの辺り)に骨折が生じていること等が判明した。本件児童は,両側頭頂骨 骨折,両側硬膜外血腫・皮下血腫・左前頭部くも膜下出血と診断され,O病院のPICU(小児集中治療室)に入院することとなった。なお,本件児童には,両側頭部腫脹はみられたが,そのほかに特に外傷はなかった。 原告は,平成30年12月19日,O病院の医師に対し,本件児童を縦抱きにして腰辺りを持って立ち上がろうとした際に,本件児童が反り返り, 滑って頭から落下した旨説明した。(以上につき,甲6,7,33の2,52)ウ O病院による通告O病院は,平成30年12月21日正午頃,本件センターに対し,本件児童について通告した。通告理由は,原告が説明する受傷機転と本件児童 の外傷所見との間に整合性がないことであった。通告経緯として,O病院 は,虐待防止委員会のカンファレンスを開催したところ,骨折線が2か所あり中に脳挫傷があることは1回の転落でも起こり得るものの,骨折線がつながっていないことが問題視され,一度の受傷で2か所骨折するかどうかについて検討の余地があるため本件センターに通告することとした(その際,論文の確認はしなかった。)。(甲33の2,乙3,4,18) エ本件センターの対応会議等本件児童に関して,Aがケースワーカーとして主に担当することになり,Bがスーパーバイザーとして担当することとなった。また,本件センターでは,基 ,4,18) エ本件センターの対応会議等本件児童に関して,Aがケースワーカーとして主に担当することになり,Bがスーパーバイザーとして担当することとなった。また,本件センターでは,基本的には方針を決定する際に対応会議を行っていたところ,本件児童に関する対応会議には,本件センター所長のD,本件セン ターの次長のCが参加することがあった。 本件センターは,平成30年12月21日,上記ウのO病院からの通告を受けて,対応会議を行った。対応会議の後,B及びAは,同日,O病院に赴き,O病院の医師から,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然である旨の説明を受けた。(乙18,20,証人A) オ本件一時保護の開始本件センター所長のDは,平成30年12月21日,児童福祉法33条に基づき,緊急保護を理由として,本件児童についてO病院に委託して一時保護をすることとし,本件一時保護を開始した(甲2)。 カ本件児童の受傷原因等についての鑑定の嘱託 本件センター所長のDは,平成30年12月25日,G医師に対し,本件児童の受傷原因等について,鑑定を嘱託した(甲13,乙4)。 G医師は,平成30年12月28日,Aに対し,電話で,速報として,本件児童の受傷内容と原告が説明する1回の落下との間には矛盾があり,虐待が疑われる旨述べた(乙4,証人A)。 キ O病院入院中の面会 原告は,本件一時保護が開始されてから本件児童がO病院を退院するまで(平成30年12月21日~平成31年1月4日),PICUに入院中の本件児童に連日付き添った。この間,原告と本件児童との面会が制限されることはなかった。(甲8)⑶ 本件一時保護の継続,面会制限 ア本件一時保護の継続等本件児童は,平成31年 中の本件児童に連日付き添った。この間,原告と本件児童との面会が制限されることはなかった。(甲8)⑶ 本件一時保護の継続,面会制限 ア本件一時保護の継続等本件児童は,平成31年1月4日,O病院を退院することとなったが,本件センター所長のDは,本件一時保護を継続することとし,同日,児童福祉法33条に基づき,P乳児院(大阪市a 区所在。以下「本件乳児院」という。)に委託して本件児童の一時保護を継続した。 本件センターは,平成31年1月4日,本件児童と原告との面会の全部を制限することとした。B及びAは,同日,原告に対し,その旨を伝えたが,その際,本件乳児院の名称・住所等は開示しなかった。(以上につき,甲46,56,乙18,証人A,証人B,原告本人)イ本件鑑定書の受領 本件センター所長のDは,平成31年1月22日,G医師が作成した鑑定書(本件鑑定書)を受領した(乙4)。 本件鑑定書は,全部で12頁の書面であり,そのうち,実質的な鑑定結果の記載は合計2頁(3~4頁目)であった。その他には,1頁目は表紙,2頁目は本件児童の氏名及び本件センターからの嘱託事項の記載, 5~12頁目は添付資料(本件児童の頭部CT検査の画像4枚,平成30年12月25日の家庭訪問時の写真10枚・記録1枚)であった。 本件鑑定書の実質的な鑑定結果の記載部分(3~4頁目)は,「A.説明」及び「B.意見」で構成されており,それぞれ,次のとおり記載されていた。なお,本件鑑定書には文献の引用の記載はなかった。(以上に つき,甲13) a 「A.説明」部分の記載内容⒜ 「1.損傷の医学的診断」「少なくとも以下の損傷を認める。まず,左側頭後頭および右頭頂後頭の頭皮下に血腫を認める[左側頭後頭・右頭頂 ,甲13) a 「A.説明」部分の記載内容⒜ 「1.損傷の医学的診断」「少なくとも以下の損傷を認める。まず,左側頭後頭および右頭頂後頭の頭皮下に血腫を認める[左側頭後頭・右頭頂後頭頭皮下血腫]。次に,前文に一致してそれぞれ頭頂骨に骨折を認め,左では冠 状縫合に前後にほぼ垂直および鱗状縫合後ろ1/3付近から冠状縫合にほぼ平行かつこれら2者の合流点付近からやや後ろ上へ向かう3条の,右では前後にやや後ろ上へ向かい前では冠状縫合に後ろでは矢状縫合へほぼ到達する,いずれも明瞭な線状の骨折を認める[左右頭頂骨骨折群]。さらに,大脳鎌付近の硬膜下に出血・血腫を,お よび左前頭極のくも膜下に出血を認める[大脳鎌付近硬膜下出血・血腫,左前頭極くも膜下出血]」⒝ 「2.各損傷の時期・成傷機転・程度」「いずれも撮影の1日程度以内にほぼ連続的に生じたと考えられる。左側頭後頭頭皮下血腫・左頭頂骨骨折はかなり広い面をもつ鈍 体との,および右頭頂後頭頭皮下血腫・右頭頂骨骨折群はある程度限られた面をもつ鈍体との,いずれも強い打撲で生じたと考えられる。大脳鎌付近硬膜下出血・血腫,左前頭極くも膜下出血は,頭部をかなり大きなエネルギーで揺さぶられて生じたと考えられる。」⒞ 「3.各損傷の自・他為の別」 「本児の運動能力等を考慮すると,他為によることは明らかである。」b 「B.意見」部分の記載内容「虐待の可能性が考えられる。」ウ引き続いての一時保護を承認する旨の審判(本件審判) 引き続いての一時保護の承認の申立て 本件センター所長のDは,平成31年2月18日,児童福祉法33条5項本文に基づき,大阪家庭裁判所に対し,引き続いての一時保護の承認の申立てをした。 上記の申立 保護の承認の申立て 本件センター所長のDは,平成31年2月18日,児童福祉法33条5項本文に基づき,大阪家庭裁判所に対し,引き続いての一時保護の承認の申立てをした。 上記の申立てにおいて,当初の一時保護の目的・理由は現時点においても継続して認められるとされ,一時保護継続の理由としては,調査(児 童及び親権者に対する調査)継続中であることが挙げられていた。(以上につき,甲19)引き続いての一時保護を承認する旨の審判(本件審判)大阪家庭裁判所は,平成31年3月19日,引き続いての一時保護を承認する旨の審判(以下「本件審判」という。)をした。本件審判は,同 日頃,申立人(本件センター所長)及び本件児童親権者母(原告)に告知された。 本件審判の理由の概要は,次のとおりである。 すなわち,上記の申立ては相当であると認めるものの,原告の供述する事故の態様と本件児童の受傷状況は必ずしも矛盾せず,原告に虐待 を疑わせる事情は見当たらないことを踏まえると,本件鑑定書の内容の信用性の再検討等を行うことが相当であり,本件鑑定書の内容の信用性の検討及び家庭引取りに向けた準備等の期間として,引き続いての一時保護を承認する,というものであった。(以上につき,甲20)エ本件訴訟の提起 原告は,平成31年3月29日,本件訴訟を提起した。 オ乳児院への入所の承認の申立て(本件施設入所承認申立て)本件センター所長のDは,平成31年4月18日,大阪家庭裁判所に対し,児童福祉法28条1項1号に基づき,本件児童を乳児院に入所させることの承認の申立てをした(以下,この申立てを「本件施設入所承認申立 て」という。)(甲23)。 大阪家庭裁判所は,令和元年5月24日の第1回審問期日において, 童を乳児院に入所させることの承認の申立てをした(以下,この申立てを「本件施設入所承認申立 て」という。)(甲23)。 大阪家庭裁判所は,令和元年5月24日の第1回審問期日において,本件センター所長の代理人弁護士に対し,本件児童の家庭引取りに向けた取組を現段階で開始することを指示した(甲25)。 カ本件一時保護の解除本件センター所長のDは,令和元年8月9日,本件一時保護を解除した (甲22)。 ⑷ 原告と本件児童との面会ア面会を一部認める方針の決定本件センターは,平成31年2月6日,原告と本件児童との面会を一部認める方針を決めた(乙16)。 イ予防接種への同行原告は,平成31年2月27日,本件児童の予防接種に同行した。 ウ本件センター内での面会原告は,平成31年3月20日,本件センター内において,本件児童と面会した。 エ本件乳児院の名称等の開示,本件乳児院内での面会本件センターは,令和元年5月8日,本件乳児院内での原告と本件児童との面会を認めることとし,原告に対し,本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示した。そして,本件センターは,同年6月12日以降,原告と本件児童との毎日の面会を認めた。(乙21,証 人F) 3 争点⑴ 本件一時保護の開始は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争点1)⑵ 本件一時保護の継続は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争 点2) ⑶ 本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争点3)⑷ 損害の発生とその数額(争点4) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件一時保護の開始は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について 項の適用上違法であるか否か(争点3)⑷ 損害の発生とその数額(争点4) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件一時保護の開始は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の主張)ア児童福祉法33条に基づく一時保護が許される場合について一時保護は,児童が父母から分離されない権利(児童の権利に関する条約9条1項,児童福祉法1条参照)という重大な権利の侵害を伴う処分であるから,真にやむを得ない場合に,必要最小限の範囲で,相当な方法で のみ許されるものであり,広範な裁量が認められるものではないと解される。 児童福祉法33条に基づく一時保護は,同法26条1項又は同法27条1項の措置を行うまでの暫定的な措置であり,児童の安全を図ることを重要な目的とするものであるから,一時保護が許されるのは,一時保護をし た状態でなければ,児童の安全を確保できず,保護者に監護させることが不適当であるか否かの把握ができない場合に限られると解すべきである。 イ本件における一時保護の必要性について本件児童の受傷の原因は事故であることが明らかであったこと本件児童の受傷の原因は原告が本件児童を誤って落としてしまった事 故であるところ,原告は本件事故の内容について一貫した説明を行っており,原告の説明内容と本件児童の受傷内容は整合する。また,原告は,知的能力が高く,性格も冷静で,およそ暴力的な傾向はないし,医師である父との関係は良好で,経済的な不安もなかった。これらの事情に照らせば,本件児童の受傷の原因は,原告が説明する態様による事故であ ることが明らかであった。そして,これらの事情は,本件一時保護の開 始の時点で明らかであった。 したがって,本件一時保護の開始の時点で,原告による虐待の 告が説明する態様による事故であ ることが明らかであった。そして,これらの事情は,本件一時保護の開 始の時点で明らかであった。 したがって,本件一時保護の開始の時点で,原告による虐待の存在が具体的に疑われないことは明らかであった。 在宅による調査で足りたことまた,本件児童は,平成30年12月19日にO病院に緊急搬送され, 同日,O病院に入院した。このような状態で,原告が本件児童に対して危害を加えることはあり得ないから,本件センターは,一時保護を行うことなく,原告の自宅の訪問や原告からの聞き取り及び医学的な調査を行うことで足りた。 本件児童の安全は十分に確保されていたこと 本件児童は,平成30年12月19日,本件事故により受傷した後,原告の119番通報により直ちにO病院に搬送され,入院することとなった。本件児童が入院したPICUは個室であり,原告と本件児童の2人で落ち着いて過ごすことができた一方で,本件児童の症状に変化があればすぐに医師及び看護師による対応が可能な状態であった。 したがって,本件一時保護が開始された同月21日の時点で,本件児童の安全は確保されており,本件センターの職員も,本件児童の安全が確保されていると認識していた。 本件児童の入院期間中に調査を完了し得たこと本件児童はO病院のPICUに入院しており,上記のとおり本件児童 の安全は十分に確保されていたから,本件一時保護を開始するまでに,原告と本件児童との関わりの様子や原告の家庭環境等の必要な調査を完了することは可能であった。そして,本件一時保護を開始するまでに必要な調査が行われていたならば,原告に本件児童を監護させることが不適当でないことは,本件一時保護を開始するまでに容易に判明したとい える。 。そして,本件一時保護を開始するまでに必要な調査が行われていたならば,原告に本件児童を監護させることが不適当でないことは,本件一時保護を開始するまでに容易に判明したとい える。 まとめ(本件一時保護の開始は国家賠償法1条1項の適用上違法であること)以上の事情に照らせば,本件一時保護の開始の時点において,一時保護をした状態でなければ,本件児童の安全を確保できず,原告に監護させることが不適当であるか否かの把握ができなかったということはでき ず,本件一時保護を行う必要性はなかった。 したがって,本件一時保護は,開始の時点において,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告の主張)ア児童福祉法33条に基づく一時保護が許される場合について 児童相談所長は,必要があると認めるときは,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童の一時保護を行うことができる(児童福祉法33条)。すなわち,一時保護は,児童の安全を迅速に確保するために,円滑・迅速に開始されなければならないのであり,児童相談所長には 広範な裁量権が与えられているものと解される。 イ本件における一時保護の必要性について本件センターが平成30年12月21日にO病院から受理した通告の内容は,本件児童は頭頂骨の左右2か所を骨折しており,原告の説明する受傷機転と本件児童の受傷内容との間に不自然さが認められるというも のであった。 また,本件児童は頭蓋骨骨折という重篤な負傷をしており,受傷原因も特定されていなかったところ,一般に,乳児の頭部外傷は死亡の危険性も高いため,本件センターは,0歳児に頭部外傷が生じたケースについては,細心の注意と慎重さをもって う重篤な負傷をしており,受傷原因も特定されていなかったところ,一般に,乳児の頭部外傷は死亡の危険性も高いため,本件センターは,0歳児に頭部外傷が生じたケースについては,細心の注意と慎重さをもって対応に当たっている(厚生労働省の委員会資 料〔乙22~25〕によると,平成25年~平成29年に虐待死した児童 の年齢は0歳が最も多く,直接死因は頭部外傷が最も多かった。また,同期間において,重症を負った児童の年齢も0歳が最も多く,その直接の受傷要因も頭部外傷が最も多かった。)。 さらに,本件事故状況に関する原告の説明は,片手抱きの状態から本件児童を取り落とし,1回の落下により受傷したというものであり,直ちに 受け入れることができる内容ではなかった。 加えて,平成30年12月21日の時点においては,医学的な調査や保護者との面接等の必要な調査が十分にされていない段階であった。 以上の事情を踏まえると,本件一時保護を開始した時点において,原告の意向により本件児童を退院させないようにするために,本件児童につい て一時保護をする必要性があったといえる。 したがって,本件センター所長が本件一時保護を開始したことは,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものではなく,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑵ 争点2(本件一時保護の継続は国家賠償法1条1項の適用上違法である か否か)について(原告の主張)ア一時保護の継続が許される場合一般に,一時保護は継続的な事実行為であるから,一時保護の継続中において,一時保護の要件を満たしているか否かについては常に判断をする ことが求められ,一時保護の要件を満たしていないと判断される場合には,直ちに一時保護を解除しなければならない。 本件におい おいて,一時保護の要件を満たしているか否かについては常に判断をする ことが求められ,一時保護の要件を満たしていないと判断される場合には,直ちに一時保護を解除しなければならない。 本件においては,平成31年1月22日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるし(後記イ),また,仮にそうでないとしても,同年3月19日以降の本件一時保護の継続は,同項の適用上 違法である(後記ウ)。 イ平成31年1月22日以降の本件一時保護の継続は国家賠償法1条1項の適用上違法であること本件鑑定書の内容の不合理性本件センター所長は,平成31年1月22日に本件鑑定書を受領し,本件鑑定書を根拠として,本件一時保護の継続が必要であると判断した。 しかし,本件鑑定書の内容は不合理であり,その不合理さは,医療の専門家でなくても一見して容易に判断することができた。 すなわち,本件鑑定書は,㋐実質的な鑑定意見を僅か16行分しか記載しておらず,参考とした文献等の引用もしていなかった,㋑本件児童の受傷がいずれもCT等の画像の撮影の1日程度以内にほぼ連続的に生 じたと考えられるなどと記載していたが,その根拠が何ら示されていなかった,㋒本件児童が頭部をかなり大きなエネルギーで揺さぶられて生じたと記載していたが,揺さぶり(SBS仮説)については,揺さぶりによって三徴候(硬膜下血腫,網膜出血,脳浮腫)を生じ得るとすることに対する根本的な疑問が呈されていたほか,仮に三徴候があったとし ても,その原因は揺さぶりであると推定することはできないという強い批判が提起されている状況であった,㋓「大脳鎌付近硬膜下出血・血腫,左前頭極くも膜下出血」をもって揺さぶりがあったと結論付けていたが,本件児童に大脳鎌付近の硬膜下 と推定することはできないという強い批判が提起されている状況であった,㋓「大脳鎌付近硬膜下出血・血腫,左前頭極くも膜下出血」をもって揺さぶりがあったと結論付けていたが,本件児童に大脳鎌付近の硬膜下出血・血腫は認められず,誤った画像読影に基づいて鑑定意見が述べられていた,㋔一般に,乳児の頭蓋骨は変 形性に富み,一回の打撃で複数の骨折,血腫を生ずるものであり,帽状腱膜下血腫は移動するものであるところ,これらに対する理解に欠けていた,㋕生後約1か月の乳児が極めて短時間の間に複数回にわたって鈍体によって強い力でたたかれ,揺さぶられたとの鑑定内容であったが,本件児童の脳実質に損傷はなく,軽微な脳挫傷等の外傷にとどまってい たという客観的な受傷状況と合致していなかった。 したがって,本件鑑定書の内容が不合理であることは明らかであった。 平成31年1月21日の時点で調査は完了していたこと本件センターの職員は,平成31年1月21日までに原告と複数回にわたって面接を行い,平成30年12月25日には家庭訪問を完了していた。原告は,面接で回答を拒否することもなく,面接に協力的であっ た。原告の養育能力,本件児童に対する愛情に具体的な問題はなく,本件センターの職員も,このことを十分に認識していた。 また,本件センター所長は,平成31年1月29日時点で,本件児童を乳児院に入所させる方針を固めていた。 これらの事情に照らせば,本件センター所長は,平成31年1月21 日までに必要な調査を完了していたと認められる。 平成31年1月22日までに再発防止策を講ずることも可能であったこと本件センターがいう再発防止策の内容は不明であるが,仮に,本件センターが令和元年6月に提示した支援計画(乙1)が再発防止策である と 月22日までに再発防止策を講ずることも可能であったこと本件センターがいう再発防止策の内容は不明であるが,仮に,本件センターが令和元年6月に提示した支援計画(乙1)が再発防止策である とすれば,当該支援計画の内容は平成31年1月22日までにほとんどが完了しており,完了していないものも同日までに完了させることが可能なものであった。 また,原告は,本件児童の入院期間(平成30年12月19日~平成31年1月4日)の間に,自宅のリビングにジョイントマットとラグを 敷くなどの再発防止策を既に講じていた。 まとめ(平成31年1月22日以降の本件一時保護の継続が国家賠償法1条1項の適用上違法であること)以上のとおり,本件センター所長は,平成31年1月22日に本件鑑定書を受領したところ,本件一時保護の継続の根拠となった本件鑑定書 の内容はおよそ信用に値しないものであり(上記),同月21日までに 必要な調査は完了しており(上記),また,同月22日までに,再発防止策を講じていたか,又は講ずることが可能であった(上記)。 したがって,平成31年1月22日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 ウ平成31年3月19日以降の本件一時保護の継続は国家賠償法1条1項 の適用上違法であること平成31年3月19日にされた本件審判は,原告の供述する事故態様と本件児童の受傷内容は必ずしも矛盾しないこと等から,原告の本件児童に対する虐待は疑われないとし,本件鑑定書については,本件児童の受傷が事故によるものである可能性も含めて,本件鑑定書の内容の信用性を複数 の医学的知見や本件児童の受傷前後の事実関係を踏まえて改めて検討することが相当であると説示していた。本件審判は,その説示内容に照らせ るものである可能性も含めて,本件鑑定書の内容の信用性を複数 の医学的知見や本件児童の受傷前後の事実関係を踏まえて改めて検討することが相当であると説示していた。本件審判は,その説示内容に照らせば,本件鑑定書の内容に対する疑義をもってその信用性を再検討すべきであることを指摘するものであった。そして,上記イのとおり,本件鑑定書の内容は一見して不合理なものであったから,本件鑑定書の内容を示し て他の医師から意見を聴取すれば,本件鑑定書の信用性は否定されていたと考えられる。 そして,本件審判は,引き続いて一時保護を行うことを承認するものの,引き続いての一時保護を,本件鑑定書の内容の信用性の検討,及び家庭引取りに向けた準備等の期間として位置付けていた。それにもかかわらず, 本件センター所長は,本件審判の内容を無視してこれらに取り組まず,乳児院への入所の承認の申立ての資料準備のためだけに漫然と一時保護を継続した。 したがって,本件審判がされた平成31年3月19日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告の主張) ア本件一時保護を継続した状態における調査の必要性本件一時保護開始後の調査の継続の必要性本件センターは,本件一時保護の開始後も原告からの聞き取り等の調査を継続していた。一般に,聞き取り調査においては,受傷状況だけでなく,これまでの養育状況と今後の養育状況,家庭環境等を多角的に調 査し,今後,虐待が生ずるおそれ(身体的虐待のみでなく,ネグレクト等の他の類型の虐待のおそれも含む。)がないか,重大なけが等が生ずるおそれがないかについて検討することになる。原告は,本件事故前,本件児童と2人きりの生活をしていたため,育児のストレスをため込んでしまうおそれ,虐 待のおそれも含む。)がないか,重大なけが等が生ずるおそれがないかについて検討することになる。原告は,本件事故前,本件児童と2人きりの生活をしていたため,育児のストレスをため込んでしまうおそれ,虐待や不適切な養育がされても誰からも制止・発見され ないおそれ等の不安要素があった。また,本件児童は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原告にも悩み等があるのではないか,それが原因で本件児童に危険が生ずるおそれがないかという点も懸念された。さらに,原告は,本件事故前,本件児童を片手で縦抱きにすることがよくあったが,これは首もすわっていない乳児に対する養育として は危険なものであり,このことからも,本件センターは,本件児童について,他に危険な養育状況がないかという点も慎重に見極める必要があった。 調査等には期間を要すること本件センターは,本件児童の受傷原因についての鑑定を経ても,本件 児童の受傷の原因は確定できず不明な状態にあったため,一時保護を解除して家庭復帰させるとしても,受傷の原因調査,安全な養育環境の調整,本件センターを始めとする支援機関と原告との信頼関係の構築を十分に行うことが必要であると判断した。もっとも,本件センターは,本件児童の受傷の原因が確定できなかったため,家庭内の安全,再発防止 の判断は容易ではなかった。原告との面談,原告と本件児童との面会の 様子の観察を繰り返す中で,同様のけがが生じないことを見極めていかなければならなかった。また,本件センターは,本件児童の福祉を十分に図るためには,けがが生じないというだけでは足りず,ネグレクト等の不適切な養育に陥るようなことがないか注意深く観察し,検討する必要があった。 また,一般に,家庭復帰のための再統合プログラムについても, ,けがが生じないというだけでは足りず,ネグレクト等の不適切な養育に陥るようなことがないか注意深く観察し,検討する必要があった。 また,一般に,家庭復帰のための再統合プログラムについても,十分な時間をかけて慎重に進める必要がある。まずは,保護者との面談や面会を重ね,問題がなければ,次に,保護者と児童とで外出を行い,徐々に外出の時間を長くしつつ,職員の立会い時間を少なくしていき,最後に,外泊に進み,徐々に外泊の時間を長くしていくといった段階を踏む 必要がある。 一般に,0歳児の頭部外傷は極めて危険であり,再発した場合には死亡又は重大な障害が生ずるおそれが高いことから,再発した場合の結果の重大さは深刻である。このため,まずは一時保護を解除して家庭復帰をさせて問題があれば再度一時保護をするといった冒険的な進め方はで きず,慎重に時間をかけて調査及び再統合プログラムを進める必要がある。 このように,一般に,家庭復帰に向けた調査は拙速に進められるべきではなく,慎重に行う必要があり,そのための期間を要するものであった。 イ引き続いての一時保護及び乳児院への入所の必要性本件一時保護の当初の期間(平成30年12月21日~平成31年2月20日の2か月)の満了が近づいた同年1月下旬の時点において,本件児童の受傷機転が特定されていないために再発防止が十分に図ることができず,本件児童が短期間で家庭復帰に至ることは見込めなかった。 そのため,本件センターは,本件児童について,一旦,乳児院に入所さ せて調査や再統合プログラムを実施する必要があると判断し,乳児院に入所させる方針を決定した。そして,本件センターは,乳児院への入所について原告の同意が得られなかったため,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院へ 合プログラムを実施する必要があると判断し,乳児院に入所させる方針を決定した。そして,本件センターは,乳児院への入所について原告の同意が得られなかったため,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立てが必要であると判断した。 その上で,上記申立ての準備には1~2か月程度は必要であったため, 本件センター所長は,平成31年2月18日,児童福祉法33条5項本文に基づき,引き続いての一時保護の承認の申立てをした。 ウ本件審判について本件児童の受傷原因に関する説示について本件審判は,「1日以内に両側頭頂骨のみに線状の骨折を生じさせるよ うな複数回の有形力を行使したと考える方がかえって不自然である」旨説示する。 しかし,本件児童の受傷原因としては,例えば,原告が本件児童を衝動的に左右に振り回し,壁やベビーベッド等に連続してぶつけてしまったようなケースも考えられる。本件審判は,このようなケースの可能性 まで否定しているとみることはできないから,上記説示部分は,意味不明である。 そもそも,本件審判は,引き続いての一時保護の可否について審査したものであり,短期間の審理しかされておらず,提出された資料も限定的であって,本件児童の受傷の原因について十分な検討がされた上での 判断とはいえない。 本件鑑定書に関する説示について本件審判は,本件鑑定書の内容の信用性の再検討を行うことが相当である旨説示する。これを受けて,本件センターは,他の医師等に鑑定や意見を求めることを検討した。 しかし,仮に,本件児童の受傷は事故の可能性があるとの鑑定や意見 を取得しても,「虐待の可能性」があるとの本件鑑定書の意見があるという状況に変わりはないと考えられた(なお,本件鑑定書は,記載の分量は少な ,本件児童の受傷は事故の可能性があるとの鑑定や意見 を取得しても,「虐待の可能性」があるとの本件鑑定書の意見があるという状況に変わりはないと考えられた(なお,本件鑑定書は,記載の分量は少ないものの,法医学教室における精査を経た上でされた鑑定の結果が記載されたものであるから,その内容が完全に否定されることは考え難かった。)。また,仮に,他の医師等に鑑定や意見を求めたとしても, 本件児童の受傷原因について確定的な判断を得ることは困難であったと考えられ,虐待の可能性を肯定又は否定する曖昧な鑑定書又は意見書が増えるだけであって,余計に混乱する結果になるだけであると考えられた。さらに,仮に,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生じ得るとの鑑定書又は意見書を取得したとしても,1回の落下が虐待による可能 性まで否定することができない。 他方で,仮に,本件児童の受傷の原因が事故であった可能性が高いと考えられたとしても,本件事故は首のすわらない乳児を落として頭蓋骨骨折が生じたという重大な事故(原告の監護の下で本件児童に重篤な傷害が発生したもの)であって,本件児童は虐待を受けたといい得るし, 少なくとも本件児童の福祉を大きく侵害したといえるから,家庭復帰に向けた安全性の十分な確認が必要であり,慎重に時間をかけて調整することが必要であった。また,新たな鑑定や意見の依頼,作成には一定程度の時間を要するし,新たな鑑定や意見によって虐待の有無が明らかとなった場合,それまでと原告に対する接し方や面会の在り方も異なって くるため,鑑定や意見の結果が出るまで本件センターの対応の仕方を定めにくくなるとの問題もあった(本件では,面会の再開はより遅れていた可能性がある。)。 以上のような考慮から,本件センターとしては,新たな鑑定や意見 見の結果が出るまで本件センターの対応の仕方を定めにくくなるとの問題もあった(本件では,面会の再開はより遅れていた可能性がある。)。 以上のような考慮から,本件センターとしては,新たな鑑定や意見を取得することに時間と労力をかけるよりも,面会を進め,家庭復帰に向 けた調整に時間と労力を割くこととした。 家庭引取りに向けた準備に関する説示について本件審判は,引き続いての一時保護を,家庭引取りに向けた準備等の期間として承認する旨説示する。 しかし,引き続いての一時保護の承認の審判は,引き続いての一時保護の目的について限定を付することができないから,本件センターは上 記説示に法的に拘束されるものではない。また,本件センターは,引き続いての一時保護の期間である2か月以内に家庭復帰を実現させることも検討したが,本件児童が重大な傷害を負っていたこと等から,2か月以内での家庭復帰は困難であると判断した。 本件審判の指摘を踏まえた検討をしたこと 以上のとおり,本件センターは,本件審判の指摘を踏まえて検討しつつ,児童福祉の専門機関として,本件児童の最善の利益を図るため,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立てを行うこととした。 エ乳児院への入所の承認の申立てについて 本件センターは,家庭復帰をさせると本件児童の安全は確保できず,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の要件である「児童の福祉を害する場合」に該当すると判断した。そして,本件センターは,家庭復帰のためには,より慎重に調査と再統合プログラムの実施を進める必要があり,引き続いての一時保護の期間内(平成31年2月21日~同年4 月20日の2か月)に実現するめどは立っていなかった。 そこで,本件センターは,一旦, と再統合プログラムの実施を進める必要があり,引き続いての一時保護の期間内(平成31年2月21日~同年4 月20日の2か月)に実現するめどは立っていなかった。 そこで,本件センターは,一旦,本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断して,児童福祉法28条1項1号に基づき,本件児童を乳児院に入所させることの承認の申立てをした(本件施設入所承認申立て)。 オ本件一時保護の解除に至る経緯について 本件センターは,本件施設入所承認申立ての後も,原告と本件児童との面会を続けるなど,家庭復帰のための調整を続けていた。 そして,令和元年5月24日の審問期日において,家庭裁判所から,原告への支援の実施と本件児童の家庭復帰について乳児院への入所を承認する審判を待たずに家庭復帰に向けた取組を進めることの指示があり,本 件センターとしては家庭復帰に向けた取組を進めることには異論はなかった。 そこで,本件センターは,家庭復帰に向けた取組を進めることとし,同年8月9日,本件一時保護を解除し,家庭復帰が実現した。 カ本件一時保護の継続はやむを得なかったこと 本件児童の受傷は,目撃者がおらず,本件児童がその原因を語ることはできなかったのであるから,その原因を確定することは極めて困難であった。また,本件センターは,本件事故が家庭内での乳児の頭蓋骨骨折というものであったため,平成31年2月頃の時点で,本件事故が,保護者の故意によるものか,不注意によるものか,保護者の監護に特に問題がなか ったか,について,受傷内容だけから判断することができなかった。なお,仮に,本件鑑定書に対する他の医師の意見を取得して,1回の落下により2か所の頭蓋骨骨折を生ずる可能性が示されたとしても,その1回の落下が原告の故意によるもの けから判断することができなかった。なお,仮に,本件鑑定書に対する他の医師の意見を取得して,1回の落下により2か所の頭蓋骨骨折を生ずる可能性が示されたとしても,その1回の落下が原告の故意によるものか,原告の不注意によるものか,それ以外の要因によるものかが明らかになるわけではないと考えられた(上記ウ)。この ように,本件児童の受傷機転を特定することは極めて困難であったから,本件センターとしては,あらゆる可能性を想定して支援・指導方針を検討しなければならず,慎重を期するため,支援・指導が長期化することはやむを得ない状況にあった。 一般に,児童相談所は,一時保護の継続,面会制限等について判断する に際して,過去に生じた出来事に照らしながら,将来にわたり,保護者の 監護の下で児童の安全,安心を図ることができるかを慎重に見極めなければならない。このような将来予測の面に鑑みると,児童相談所が行う各種対応が必要最小限度でなければならないことを厳格に求め,保護者の意向に沿う対応を行うことによる危険や不安が具体化していなければならないとすると,児童相談所が一時保護や面会制限をちゅうちょし,ひいては 児童の安全が損なわれる結果を招くことになる。したがって,児童相談所の対応の是非を検討するに当たっては,こうした将来予測の困難性を十分に踏まえる必要がある。 キまとめ(本件一時保護の継続が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないこと) 本件センター所長が,令和元年8月9日まで本件一時保護を継続した判断は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものではなく,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑶ 争点3(本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の 囲を逸脱し,又はこれを濫用するものではなく,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑶ 争点3(本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の主張)ア行政指導としてされた本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であること本件センターの職員は,原告に対し,本件面会制限は行政指導の一環であると説明した。行政指導は,飽くまで相手方の任意の協力によってのみ 実現されるものであることに留意しなければならず(行政手続法32条1項),このことは,児童福祉司による指導にも同様に当てはまる。そして,一般に,子を一時保護された保護者が,児童相談所の指導に協力しないと一時保護が解除されないのではないかと強い不安を抱くことは当然であるから,指導に対する任意の協力があるか否かは,慎重に判断されなけれ ばならない。現に,原告は,児童相談所の指導に従わないと危険な保護者 であると思われることを恐れて,本件児童との面会を何度も求めることはできなかったのであるから,指導として面会制限をする基礎がなかったことは明らかである。 そして,原告は,本件児童がO病院を退院して本件乳児院への委託一時保護がされた平成31年1月4日から,本件児童との面会を制限されるよ うになったところ,同日から一貫して,本件センターの職員に対し,本件児童に会いたいと伝えていた。 したがって,児童虐待防止法12条1項に基づく行政処分としての面会制限によらず,行政指導としてされた本件面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 イ本件面会制限は児童虐待防止法12条1項の要件を満たさず国家賠償法1条1項の適用上違法であること児童の権利に関する条約9条3項は,締約国は,児童の最善の利益に 適用上違法である。 イ本件面会制限は児童虐待防止法12条1項の要件を満たさず国家賠償法1条1項の適用上違法であること児童の権利に関する条約9条3項は,締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重す る旨規定し,児童と保護者との面会の権利の尊重を求めている。 そして,上記の面会の権利に対する例外である「児童の最善の利益に反する場合」を具体化した規定が児童虐待防止法12条1項であるところ,同項は,児童虐待を受けた児童について,施設入所の措置又は一時保護が行われた場合に児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必 要と認めるときに面会の全部又は一部を制限することができる旨規定する。 すなわち,児童虐待がされた場合ですら,面会制限は例外的に認められるにすぎない。また,一般に,児童相談所は,親子再統合に向けて努力する義務を負っているのであるから(児童虐待防止法4条1項,11条1項),積極的に面会交流を実現する努力義務を負っている。そうすると,児童虐 待防止法12条1項が定める面会制限の要件は,厳格に適用されなければ ならない。 本件において,本件センターは,本件児童がO病院を退院して本件乳児院への委託一時保護となった平成31年1月4日以降,原告と本件児童との面会を制限するようになったところ,原告は本件児童に対して虐待を加えておらず,また,本件乳児院への委託一時保護中において,原告と本件 児童との面会を制限する必要性を基礎付ける事情は一切なかったのであるから,児童虐待防止法12条1項の要件を満たさなかったことは明らかである。 したがって,本件面会制限は,国家賠償法1 本件 児童との面会を制限する必要性を基礎付ける事情は一切なかったのであるから,児童虐待防止法12条1項の要件を満たさなかったことは明らかである。 したがって,本件面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 ウ本件児童の一時保護の委託先を開示しなかったことが国家賠償法1条1 項の適用上違法であること一時保護は行政処分であるから,児童相談所長は,一時保護をする場合には,行政事件訴訟法46条及び行政不服審査法82条が定める事項を書面で教示しなければならないほか,処分の内容として,一時保護の場所又は委託先を通知する必要がある。ただし,児童虐待防止法12条3項が定 める要件を満たす場合は,これを通知することを要しない。 本件において,原告は本件児童を虐待しておらず,原告に本件児童の一時保護の委託先を知らせても,原告が本件児童を連れ戻すおそれはなく,本件児童の保護に支障を来すおそれもなかったから,児童虐待防止法12条3項が定める要件を満たさなかった。それにもかかわらず,本件センタ ー所長は,平成31年1月4日(本件児童の一時保護を本件乳児院に委託した日)~令和元年5月8日(委託先を開示した日),原告に対し,本件児童の一時保護の委託先を開示しなかった。 したがって,本件センター所長が原告に本件児童の一時保護の委託先を開示しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告の主張) ア児童相談所長による面会制限の権限について児童相談所長は,一時保護が行われた児童で親権を行う者のある者について,監護のため必要な措置を採ることができるところ(児童福祉法33条の2第2項),監護のため必要な措置として,一時保護をする児童が保護者と面会することについて,その時間,頻度,方法,児 ある者について,監護のため必要な措置を採ることができるところ(児童福祉法33条の2第2項),監護のため必要な措置として,一時保護をする児童が保護者と面会することについて,その時間,頻度,方法,児童相談所職員の立 合の要否等を決定することができる。 他方,児童虐待防止法12条1項に基づく行政処分としての面会制限を行うと,児童相談所と保護者との支援関係が硬直化し,対立の構図が深まり,かえって親子の再統合に支障を来すおそれがある。また,厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」においても,面会についての児童相談所の 方針に保護者の理解や納得が得られないときは,まず指導を試み,保護者が指導に応じない場合は,行政処分としての面会制限を行うことになるとしている。 そうすると,本件において,原告の意に反して面会が実施されていない期間はあるものの,その間,行政処分としての面会制限措置が採られてい なかったとしても,そのことをもって,本件面会制限が国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。 イ平成31年1月4日~同年2月5日の面会制限について平成31年1月4日(本件児童がO病院を退院した日)~同年2月27日(原告が本件児童の予防接種に付き添った日),原告と本件児童との面会 は行われなかった。 これは,本件センターが,本件児童の監護に関する必要な措置として,この間の母子面会を見合わせるという判断をしたものである。そして,その理由は,①本件児童がO病院を退院すれば本件児童を連れて帰ることができると考えていたであろう原告と,退院後も一時保護が必要であると考 えていた本件センターとの意向の相違が顕著かつ明確になり,本件センタ ーへの反発を深めることへの懸念,②場合によっては,本件児童の強引な引取りや面会要 退院後も一時保護が必要であると考 えていた本件センターとの意向の相違が顕著かつ明確になり,本件センタ ーへの反発を深めることへの懸念,②場合によっては,本件児童の強引な引取りや面会要求等を迫ることへの懸念,③それにより本件の調査が進まなくなるおそれがあることへの懸念,④施設側が受入れに消極的になったり,本件児童の生活状況の安定が乱されたりすることへの懸念である。 したがって,少なくとも平成31年1月4日~同年2月5日(本件セン ターが原告と本件児童との面会を一部認める方針を決定した日)の面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ウ平成31年2月6日~同月27日(1回目の面会)について本件センターは,平成31年2月6日,原告と本件児童との面会を一部認める方針を決定した。そして,原告は,同月27日,本件児童の予防接 種に同行する形で,本件児童と面会した(このときの面会は,面会としての実質を有するものであった。)。そうすると,同月6日~同月27日においては,面会及び予防接種の同行に向けた調整期間に当たり,面会制限がされていたわけではない。 仮に,平成31年2月6日~同月27日について面会制限に当たるとし ても,予防接種の同行の日が平成31年2月27日となったのは,原告が予防接種の実施に当たって本件児童の父と相談したり,本件児童の住民票の所在地外の医療機関で予防接種を行うことを希望したりするなど,その調整等に期間を要したためであるから,予防接種の同行という形での面会が同日となったことには正当な理由がある。 したがって,平成31年2月6日~同月27日に面会制限はされておらず,また,仮に,面会制限に当たるとしても,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 エ平 当な理由がある。 したがって,平成31年2月6日~同月27日に面会制限はされておらず,また,仮に,面会制限に当たるとしても,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 エ平成31年2月27日(1回目の面会)~同年3月20日(2回目の面会)について 平成31年2月27日以降については,原告と本件児童との面会が実施 された。 2回目の面会は,平成31年3月20日に実施されており,1回目の面会が実施された同年2月27日から約3週間後となっている。これは,本件センターの職員と原告との面接等を経て,同年3月20日の2回目の面会に至ったものである(なお,本件センターにおいては,一般に,親子再 統合に向けた面会は,本件センターの職員と保護者のみの面接を行い,既に行った面会の振り返りやこれから行う面会の目的や在り方について検討・協議することになる。)。また,同日の時点では,本件児童の一時保護の委託先を開示する段階に至っていなかったため,原告と本件児童との面会は本件乳児院以外の場所で行う必要があり,頭部を負傷した本件児童の 移動の負担等も考慮して,無理のないスケジュールを調整する必要があった。さらに,本件センターの職員は,本件児童の移送,面会への同席をする必要があったところ,多数の事案を抱えており,本件に割くことのできる時間に限りがあった。そうすると,2回目の面会が1回目の面会から約3週間後となったことは,やむを得ないものといえるから,国家賠償法1 条1項の適用上違法であるとはいえない。 オ平成31年3月20日以降について平成31年3月20日(2回目の面会実施日)~同年5月8日(委託先の開示日)において,予防接種や健康診断への同行も含めて,1週間から2週間に1回の頻度で面会が実施され,6 年3月20日以降について平成31年3月20日(2回目の面会実施日)~同年5月8日(委託先の開示日)において,予防接種や健康診断への同行も含めて,1週間から2週間に1回の頻度で面会が実施され,6日間のうちに2回の面会と1回 の予防接種への同行がされたこともあった(平成31年4月19日,同月22日,同月24日)。 そして,令和元年5月8日に原告に対して本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示して以降は,およそ5日に1回の頻度で面会がされ,同年6月12日以降は本件乳児院において毎日面会が 実施された。そして,同日以降は,本件センターの職員の立会いは1週間 に1回程度となった。 カ本件児童の一時保護の委託先を開示しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないこと児童相談所長による一時保護の委託先を開示する時期を決定する権限について 児童相談所長は,一時保護が行われた児童で親権を行う者のある者について,監護のため必要な措置を採ることができるところ(児童福祉法33条の2第2項),監護のため必要な措置として,児童の居所を指定する権限があり,これに伴い,児童の居所(一時保護の委託先)を保護者に対して開示する時期を決定する権限を有しているというべきである。 もっとも,当該権限は,合理的な範囲で行使されなければならない。 仮に,児童虐待防止法12条3項の要件を満たさない限り,保護者に一時保護の委託先を開示しなければならないとすると,虐待のない保護者に対しては常に児童の所在を知らせなければならなくなるなど,児童相談所の対応を余りに硬直化させ,かえって児童の安全を図ることがで きなくなる。 一時保護の委託先を開示することができる場合一時保護の委託先の開示 を知らせなければならなくなるなど,児童相談所の対応を余りに硬直化させ,かえって児童の安全を図ることがで きなくなる。 一時保護の委託先を開示することができる場合一時保護の委託先の開示がされると,保護者は一時保護の委託先の施設に電話をかけて児童の様子を聞き出そうとしたり,必要な情報が得られないと電話が長時間に及ぶこともあり,また,児童との面会を求めた り,施設の近くで待ち伏せをしたり,強引な引取りに及ぶこともある。 そして,一時保護の委託先である施設は,社会福祉法人が母体となっている民間の施設であることが多いから,施設の職員が児童相談所の方針に納得していない保護者に対応することは困難であること,施設に入所する他の児童の安全や施設の業務の平穏を図らなければならないから, 施設名の開示や施設での面会には慎重な配慮を要する。 そのため,児童相談所において安定した面会を継続できる状態にあり,その様子を児童相談所が観察し,保護者が児童相談所の設定する面会のルールに従う実績を積み重ねた上で,施設での面会が可能な状態に至った場合に初めて,保護者に対して一時保護の委託先を開示することができる。 本件について本件センターは,令和元年5月8日,原告に対し,本件児童の一時保護の委託先を開示した。 本件では,平成31年2月27日に予防接種に同行する形で面会を開始した後,令和元年5月8日までの間に,8回の面会を経て,本件児童 の一時保護の委託先を開示しても問題ないとの判断に至ったものである。 本件児童は家庭内において重篤な頭部外傷を負った以上,原告に衝動性や怒りのコントロール等に課題があるという懸念は容易には払拭できず,原告に一時保護の委託先を開示しても問題がないと慎重に見極める必要があった。また,本件乳 て重篤な頭部外傷を負った以上,原告に衝動性や怒りのコントロール等に課題があるという懸念は容易には払拭できず,原告に一時保護の委託先を開示しても問題がないと慎重に見極める必要があった。また,本件乳児院に安心感を与えるためにも,本件センター の職員と原告との面接,本件センターにおける原告と本件児童との面会を重ねることを要した。 したがって,平成31年5月8日まで本件児童の一時保護の委託先を原告に開示しなかったことは,やむを得ないものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 キまとめ(本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないこと)以上のように,本件センターは,本件児童の安全に配慮し,慎重さを保ちながら,原告の要望にも耳を傾け,面会の頻度や1回当たりの面会時間を増やすことにより親子交流を深化させることに努めてきたものである。 原告が要望する限り,毎日の面会を認めなければならないとすると,本件 センターに過度の負担を負わせることになる。 以上によれば,本件センターがした原告と本件児童との面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑷ 争点4(損害の発生とその数額)について(原告の主張) 不必要な本件一時保護,施設名の秘匿を伴う本件面会制限による原告の苦しみは一生消えることはなく,金銭によって慰謝されるものではないが,次のア~ウの事情に照らせば,原告が受けた精神的苦痛は非常に甚大であることは明らかであり,これを慰謝するに足りる慰謝料は500万円を下ることはない。 ア本件児童との授乳を通した愛着形成の機会が奪われたこと乳児期は母子の健康にとって極めて重要な時期であり,授乳は子に栄養等を与えるとともに,母子のきずなを深め,子 を下ることはない。 ア本件児童との授乳を通した愛着形成の機会が奪われたこと乳児期は母子の健康にとって極めて重要な時期であり,授乳は子に栄養等を与えるとともに,母子のきずなを深め,子どもの心身の健やかな成長・発達を促す上で極めて重要な行為である。本件センターは,このことに当然配慮しなければならない。しかし,本件センターは,違法で画一的な面 会制限を行い,また,原告が搾乳した母乳を本件乳児院に持ち込むことを求めたことに対して何らの配慮も行わず,授乳の機会を奪った。本件センターは,令和元年6月に至って毎日の授乳を提案したが,本件児童は乳頭混乱を起こしており,直接の授乳ができなくなっていた。このように,原告と本件児童は,乳児期の授乳を通してきずなを深める権利を奪われた。 イ本件児童と過ごす日常のほか,特別な行事の機会も奪われたこと不必要な一時保護,面会制限によって,原告と本件児童の普通でかけがえのない日常が奪われたほか,お食い初めやお宮参りも許されず,これらの特別な行事の機会も奪われた。また,原告は,画一的な面会制限のために,本件児童の4か月健診のために提出する受診票の記載を本件センター に頼むほかなく,自身で記載することができず,つらく,悔しい思いをし, 時には死にたいと思うこともあった。さらに,本件児童は,本件一時保護がされるまでは,原告に抱かれていないと眠ることはできなかったのに,本件一時保護が解除されてからは,一人で寝たいという様子に変わっていた。これらによる原告,本件児童の苦しみは計り知れない。 ウ本件一時保護により,本件児童が不適切な養育環境に置かれたこと 本件児童の頭部が絶壁となったこと本件児童は,乳児院での集団生活の中で寝かされていることが多かったことから,頭部が 。 ウ本件一時保護により,本件児童が不適切な養育環境に置かれたこと 本件児童の頭部が絶壁となったこと本件児童は,乳児院での集団生活の中で寝かされていることが多かったことから,頭部が絶壁となっていた。原告が本件児童と過ごしていれば,本件児童をたくさん抱いて過ごすことができたから,絶壁は生じなかったものである。 不適切なチャイルドシートの使用本件センターの職員は,一時保護期間中の平成31年3月27日の予防接種の際,生後6か月未満の乳児を乗せるのに適切ではないチャイルドシートに本件児童を乗せていた。また,当該チャイルドシートは生後15か月以下の乳児に使用する場合には前向きで設置することは許され ないのに,前向きで設置されていた。 さらに,原告は,代理人を通じて,適切なチャイルドシートを使用することを求めるなどしたにもかかわらず,本件センターの職員は,平成31年4月3日の本件児童の4か月検診の際も,製造年が古く,かつ,肩パッドが片方しかされておらず,メーカーが使用を勧めないと説明す るチャイルドシートを使用した。 これらの本件センターの職員の行為は,本件児童の生命・身体に危険であることを認識しながら,あえて本件児童を危険な状態に置くものであって,養育力不足にとどまらず,故意の虐待と同視し得るものである。 予防接種の推奨期間内に予防接種を受けさせなかったこと 本件センターは,乳児に対する予防接種の推奨期間内に本件児童に予 防接種を受けさせなかった。予防接種のスケジュールについて考えていた原告の養育下では起き得なかったことである。 本件児童におむつかぶれが生じたこと本件児童について本件乳児院に委託一時保護がされていた際,本件児童に重度のおむつかぶれが生じた。原告は,本件乳児 た原告の養育下では起き得なかったことである。 本件児童におむつかぶれが生じたこと本件児童について本件乳児院に委託一時保護がされていた際,本件児童に重度のおむつかぶれが生じた。原告は,本件乳児院への委託一時保 護の当初から本件センターの職員におむつの差し入れを依頼しており,本件乳児院ではおむつの差し入れを受け付けていたにもかかわらず,本件センターの職員は,本件乳児院への確認を怠り,おむつの差し入れを認めなかった。おむつの差し入れが認められるようになった平成31年4月以降,本件児童のおむつかぶれが改善していったことからすれば, 本件児童の肌に合わないおむつが使用されていた可能性が高く,本件センターの職員が本件乳児院への確認を怠らなければ,本件児童のおむつかぶれは生じなかったはずである。 本件児童の左前額部の接触事故本件乳児院での一時保護期間中の平成31年3月31日,本件児童が 仰向けでいたところに他の児童が後ろに反り返り,その後頭部が本件児童の左前額部に当たるという事故があった。病院を受診し,打撲に関しては特に問題ないとの診断であったが,一度頭部に衝撃を受けて受傷している中で,再度衝撃を受けることがあれば非常に危険である。 何よりも,上記事故について本件センターから原告に対する報告は一 切なく,平成31年4月3日の4か月検診及び同月9日のO病院での受診の際にも,本件センターの職員から上記事故に関して質問がされることはなかった。そうすると,上記事故の事実は,故意に隠蔽されたといえる。 (被告の主張) ア母乳育児の希望に対して配慮したこと 本件センターの職員は,本件乳児院に対し,原告が母乳育児を希望していることを伝えており,実際にも,平成31年2月27日に原告が本件児童の予防接種 ア母乳育児の希望に対して配慮したこと 本件センターの職員は,本件乳児院に対し,原告が母乳育児を希望していることを伝えており,実際にも,平成31年2月27日に原告が本件児童の予防接種に付き添った際,原告が本件児童に授乳することを認めており,本件乳児院にもそのことを報告していた。 イ特別な行事を行う機会について 本件センターの職員は,原告が要望した本件児童の手形・足形をとることなどについて,可能な範囲で応じたものの,原告の要望の全てに応えることは現実的に困難であった。 一時保護中に行事の機会がある程度失われるのは,やむを得ないことである。 ウ本件センターによる監護状況が不適切ではないことについてチャイルドシートの使用についてチャイルドシートの使用については,安全に十分配慮して使用しており,具体的に危険な状況や問題は生じなかった。 本件児童の左前額部の接触事故について 本件乳児院において事故があったことは事実であるが,本件センター側の記録には記載がないため,その事故の詳細は不明である。本件児童が病院を受診しても症状はなく,医師も問題ないと診断したため,特に記録に残していないものと考えられる。 また,本件センターが上記事故を故意に隠蔽したという事実はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件一時保護の開始は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について⑴ 判断枠組み児童福祉法は,児童相談所長は,必要があると認めるときは,同法26条 1項の措置を採るに至るまで,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図る ため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童の一時保護を行うことができる旨定め(同法33条1項),都道府県知 ,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図る ため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童の一時保護を行うことができる旨定め(同法33条1項),都道府県知事は,必要があると認めるときは,同法27条1項の措置を採るに至るまで,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童相談所長 をして,児童の一時保護を行わせ,又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる旨定める(同法33条2項)。一時保護の「必要があると認めるとき」に当たるか否かについては,児童の福祉の保障の観点から検討されることを必要とするから(同法3条参照),一時保護を行うか否かの判断は,児童福祉に精通した児童相談所長の合理的な裁量に委ねられてい ると解される。 そうすると,児童相談所長の裁量権の行使としての一時保護は,その判断が著しく不合理であって裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものと認められる場合に限って,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。 ⑵ 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件事故に至るまでの経緯原告は,●●●●●●●●●●●●●大阪市b 区の医院において,本件 児童を出産した(前記前提事実⑴ア,甲5)。 原告及び本件児童は,平成30年11月12日に退院し,大阪市c 区の当時の住居で過ごすなどした後,同年12月17日,大阪府d 市の現在の住居に転居した。本件児童の出生後約1か月までの本件児童及び原告の経過は良好であり,その旨が母子健康手帳にも記載されていた。(前記前提事 実⑴ア,甲8,乙4) イ 府d 市の現在の住居に転居した。本件児童の出生後約1か月までの本件児童及び原告の経過は良好であり,その旨が母子健康手帳にも記載されていた。(前記前提事 実⑴ア,甲8,乙4) イ本件事故原告は,平成30年12月19日午後7時頃,自宅において,本件児童(当時生後約1か月半)を抱いた状態で,ローテーブル上の牛乳の入ったグラスを片付けるために取ろうとして,本件児童を左手で抱き,グラスに右手を伸ばしたところ,本件児童を約1mの高さからフローリングの床に 落としてしまい,本件児童がフローリングの床に後頭部の上の方を打ち付ける事故(本件事故)が起きた。原告は,本件事故の直後である同日午後7時2分,119番通報をした。(前記前提事実⑵ア,甲6)ウ本件一時保護に至るまでの経緯O病院への救急搬送 本件児童は,平成30年12月19日午後7時57分,O病院に緊急搬送された。 O病院における検査結果等は次のとおりである。(以上につき,前記前提事実⑵イ,甲6,7,33の2,原告本人)a 平成30年12月19日の頭部CT検査 平成30年12月19日の本件児童の頭部CT検査の結果,本件児童の両側頭頂骨に骨折が生じていること等が判明した。すなわち,上記検査の報告書によれば,所見として,①㋐両側の頭頂骨に線状骨折を認める,左側は3本の骨折線が中央で合流している,両側とも骨折直下から少量の頭蓋内出血を示す高吸収を認める(おそらく頭蓋内骨 膜下血腫〔硬膜外血腫〕と思われる。乳児期は骨と骨膜がはがれやすく血腫は骨に沿って進展する傾向がある。),㋑左側前頭極の脳表には少量の軟髄膜出血(くも膜下出血)を認める,㋒硬膜下血腫(あるいは液貯留)の有無はCTでは評価困難であるが,右側頭頂部には硬膜下液貯留 血腫は骨に沿って進展する傾向がある。),㋑左側前頭極の脳表には少量の軟髄膜出血(くも膜下出血)を認める,㋒硬膜下血腫(あるいは液貯留)の有無はCTでは評価困難であるが,右側頭頂部には硬膜下液貯留が存在する可能性があるのでMRIで評価されたい,㋓頭蓋 外では,上記骨折部分(両側頭頂部)に頭血腫が認められる,②脳実 質内には明らかな異常吸収域は認められない,③脳室系,くも膜下腔系に明らかな異常は認められない,④頚椎,頭蓋-頚椎移行部には明らかな異常は指摘できない,とされ,診断として,「Linearfractureinbilateralparietalbonewithintracranialhematoma」(脳出血を伴う両側頭頂骨の線状骨折),とされた。 bPICUへの入院本件児童は,両側頭頂骨骨折,両側硬膜外血腫・皮下血腫・左前頭部くも膜下出血と診断され,O病院のPICUに入院することとなった。なお,本件児童には,両側頭部腫脹はみられたが,そのほかに特に外傷はなく,眼底出血も認められなかった。 c 原告の説明原告は,平成30年12月19日,119番通報時には,本件児童を抱いていたところ誤って落としてしまい後頭部を打った旨説明し,O病院の医師に対し,本件児童を縦抱きにして腰辺りを持って立ち上がろうとした際に,本件児童が反り返り,滑って頭から落下した旨説 明した。 d 平成30年12月20日及び同月28日の頭部MRI検査平成30年12月20日及び同月28日に本件児童の頭部MRI検査が行われた。同月20日の検査報告書によれば,所見として,①両側の頭頂部頭皮に頭血腫を認める(矢状縫合を越えて進展する部位が あり帽状腱膜下血腫も伴っているものと思われる。),②頭蓋 RI検査が行われた。同月20日の検査報告書によれば,所見として,①両側の頭頂部頭皮に頭血腫を認める(矢状縫合を越えて進展する部位が あり帽状腱膜下血腫も伴っているものと思われる。),②頭蓋内ではSWI(磁化率強調画像)で左側前頭葉の脳表軟髄膜及び高位円蓋部前頭葉,頭頂葉脳表に散在する低信号を認める,左側側頭部脈絡裂(海馬体は下外方に圧排)に出血を認める(外傷性脳表軟髄膜〔くも膜下〕出血と思われる。),③両側頭頂部の頭蓋内には少量の硬膜外血腫(出 血)を認める(進展の様相から硬膜下血腫は否定的である。),④脳実 質内に明らかな異常信号域は認められない,とされた。同月28日の検査報告書によれば,所見として,①脳実質内に明らかな異常信号域は認められない,②側脳室は前回よりも特に前角で僅かに拡張している,前頭部くも膜下腔も僅かに開大している(pseudo-atrophy〔偽萎縮〕の状態と思われる),③前回認められた,左側脈絡裂,高位円蓋部 脳表の軟髄膜(くも膜下)出血は今回も残存しているが,著明に減少している,④頭血腫は吸収されほぼ消失している,とされた。 e 平成30年12月21日の全身骨レントゲン検査平成30年12月21日に全身骨レントゲン検査が行われたが,異常は認められなかった。 O病院による通告O病院は,平成30年12月21日,本件センターに対し,本件児童についての通告をした。 上記通告の内容は,①平成30年12月19日に緊急搬送された本件児童は,両側の頭頂骨骨折,頭蓋内出血等がある,②保護者(原告)は, 本件児童を抱いている状態から約1mの高さから取り落としたと説明している,③しかし,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるというものであった。(以上 ②保護者(原告)は, 本件児童を抱いている状態から約1mの高さから取り落としたと説明している,③しかし,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるというものであった。(以上につき,前記前提事実⑵ウ,甲55,乙18,証人A,証人B,証人C)本件センターにおける対応会議 本件センターは,平成30年12月21日,上記のO病院による通告を受けて,対応会議を実施した。上記対応会議には,本件センター所長のD,次長のC,B及びAの4名が参加した。上記対応会議では,本件児童が生後約1か月半の乳児であるところ,虐待の死亡事例で最も多い年齢層は0歳児であり,死因として最も多いのは頭部外傷によるもの であること,本件児童の受傷状況等を踏まえて,本件児童の安全を確保 するため,本件児童について一時保護をする方向で進める方針が確認された。(乙18,20,証人A,証人C)主治医との面接B及びAは,平成30年12月21日,O病院に赴き,本件児童の主治医と面接をした。B及びAは,同日,本件児童の主治医から,①本件 児童には両側の頭頂骨骨折,頭蓋内出血等がある,②保護者(原告)は本件児童を抱いている状態から約1mの高さから取り落としたと説明している,③しかし,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然に感じる旨の説明を受けた。(乙18,20,証人A,証人B,証人C) 本件児童の様子の観察Bは,平成30年12月21日,O病院に入院していた本件児童の様子を確認した。しかし,Bは,その際,本件児童の全身にけががあるなどの明らかな虐待の形跡を確認することができなかった。(証人B)原告との面接 B及びAは,平成30年12月21日,O病院において,原告と面接 ,その際,本件児童の全身にけががあるなどの明らかな虐待の形跡を確認することができなかった。(証人B)原告との面接 B及びAは,平成30年12月21日,O病院において,原告と面接をした。原告は,本件児童が受傷した状況について,本件児童を抱いている状態から約1mの高さから落としてしまった旨の説明をした。B及びAは,同日,原告との面接をした後,原告に対し,本件児童について一時保護をする旨を告げた。 また,B及びAは,平成30年12月21日頃,一般的な調査として,市役所に対して住民票の有無,児童虐待の相談歴の有無を調査し,保健センター等で家族の状況等を調査するなどしたが,特段不自然な点は見当たらなかった。(以上につき,甲2,33の2,乙3,4,18,20,原告本人,証人A,証人B,証人C) エ 0歳児の頭部外傷の危険性 厚生労働省の委員会資料によると,平成25年~平成29年に虐待死した児童の年齢は0歳が最も多く,直接死因は頭部外傷が最も多かった。また,同期間において重症を負った児童の年齢も0歳が最も多く,その直接の受傷要因も頭部外傷が最も多かった。(乙22~25)⑶ 本件について 上記⑵の認定事実(ウ~,)によれば,本件センター所長のDは,平成30年12月21日にO病院から通告を受け,本件児童が生後約1か月半の乳児であること,本件児童が頭部を骨折する重大な受傷をしていること等を踏まえて,本件児童の安全を確保するため,本件一時保護を開始したことが認められる。 そして,上記⑵の認定事実(ウ~,)によれば,本件センター所長のDは,本件一時保護を開始する時点頃までにおいて,次の事実を認識していたことが認められる。すなわち,①本件児童は,平成30年12月19日にO病院 認定事実(ウ~,)によれば,本件センター所長のDは,本件一時保護を開始する時点頃までにおいて,次の事実を認識していたことが認められる。すなわち,①本件児童は,平成30年12月19日にO病院に緊急搬送されたが,両側頭頂骨骨折等の傷害を負っていたこと,②O病院は,同月21日,本件児童の保護者(原告)は本件児童の受傷は1 回の落下により生じたと説明していたが,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるなどとして,本件児童について本件センターに通告したこと,③本件児童の主治医は,同日の面接において,通告内容と同様の説明をしたこと,④原告は,同日の面接において,本件児童の受傷は1回の落下により生じた旨を説明したこと,を認識していたことが認められ る。本件センター所長のDが認識していた上記①~④の事実に加え,本件一時保護開始当時,本件児童は生後約1か月半の乳児であり,本件児童の受傷内容は両側頭頂骨骨折(頭蓋骨骨折)等という重大な傷害であり,0歳児の頭部外傷は死亡や重症の危険性が比較的高いといえること(上記⑵の認定事実エ参照)を考慮すると,本件センター所長が,本件児童の安全を確保する 必要があるとして,本件一時保護を開始したことは不合理であるということ はできない。そうすると,本件センター所長の裁量権の行使としての本件一時保護は,その判断が著しく不合理であって裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものということはできない。 したがって,本件センター所長が本件一時保護を開始したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑷ 原告の主張についてア児童福祉法33条に基づく一時保護が許される場合について原告は,前記第2の4⑴の(原告の主張)欄のアのとおり,①児童福祉法3 用上違法であるとはいえない。 ⑷ 原告の主張についてア児童福祉法33条に基づく一時保護が許される場合について原告は,前記第2の4⑴の(原告の主張)欄のアのとおり,①児童福祉法33条に基づく一時保護は,児童が父母から分離されない権利(児童の権利に関する条約9条1項,児童福祉法1条参照)という重大な権利の侵 害を伴う処分であるから,真にやむを得ない場合に,必要最小限の範囲で,相当な方法でのみ許されるものであり,広範な裁量が認められるものではない,②同法33条に基づく一時保護は,通告を受けた児童相談所長が同法26条又は同法27条の措置を行うまでの暫定的な措置であり,児童の安全を図ることを重要な目的とするものであるから,一時保護が許される のは,一時保護をした状態でなければ,児童の安全が確保できず,保護者に監護させることが不適当であるか否かの把握ができない場合に限られる旨主張する。 しかし,一時保護は児童及び保護者の権利に対する重大な制約を伴うものであるものの,児童の福祉を保障する観点から,一時保護を行う権限は 適時・適切に行使される必要があるのであって,一時保護の要否の判断についての児童相談所長の裁量権の範囲を狭く解すると,一時保護を行う権限の行使が委縮し,児童の福祉を十分に保障することが困難となるおそれがある。このことも踏まえると,上記⑴で説示したとおり,一時保護の要否については,児童福祉に精通した児童相談所長の合理的な裁量に委ねら れていると解するのが相当である。 そして,上記⑶で認定・判断したとおり,本件では,本件センター所長が本件児童の安全を確保するために一時保護が必要であるとしてした本件一時保護は不合理であるということはできないから,本件一時保護の開始は,国家賠償法1条 ・判断したとおり,本件では,本件センター所長が本件児童の安全を確保するために一時保護が必要であるとしてした本件一時保護は不合理であるということはできないから,本件一時保護の開始は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 イ本件における一時保護の必要性について原告は,前記第2の4⑴の(原告の主張)欄のイのとおり,①本件一時保護の開始の時点で判明した事情に照らせば,本件児童の受傷の原因は原告が説明する態様による事故であることが明らかであったこと,②本件児童は,O病院に入院しており,原告が本件児童に危害を加えることなどあ り得ないから,在宅での調査で足りたこと,③本件児童が入院していたPICUは個室であり,本件児童の安全は確保されていたこと,④本件一時保護を開始するまでに,原告と本件児童との関わりの様子や原告の家庭環境等の必要な調査を完了し,本件児童を原告に監護させることが不適当でないことは容易に判明したといえることから,本件一時保護の開始は,必 要性がなく,国家賠償法1条1項の適用上違法である旨主張する。 しかし,上記①(本件児童の受傷原因)については,本件センターは,平成30年12月21日にO病院から本件児童についての通告を受け,同日に本件一時保護をしたところ,上記⑵の認定事実によれば,同日の時点では,本件センター所長は,O病院が,1回の落下により頭部に2か所の 骨折が生ずるのは不自然である旨指摘していること等を認識していたものの,本件児童の受傷が虐待により生じたものではないと判断するに足りる事情は認識していなかったことが認められ,また,同日のうちに合理的な調査を尽くして虐待がないと判断するに足りる事情を認識することは困難 ,本件児童の受傷が虐待により生じたものではないと判断するに足りる事情は認識していなかったことが認められ,また,同日のうちに合理的な調査を尽くして虐待がないと判断するに足りる事情を認識することは困難であったというべきである。そうすると,本件一時保護の開始の時点で, 本件児童の受傷の原因は原告が説明する態様による事故であることが明ら かであったなどということはできない。 また,上記②(在宅調査で足りたこと)及び③(本件児童の安全確保)については,本件児童がO病院に入院している間に原告が本件児童に危害を加えることは考え難かったものの,保護者によっては,入院中の児童を児童相談所に断りなく退院させることもあり得たこと,本件一時保護を開 始した平成30年12月21日の時点において,本件センター所長は原告がどのような人物であるかを十分に把握することが時間的に困難であったこと,本件児童は生後約1か月半の乳児であり,本件児童の受傷内容が重大であったこと等に照らせば,本件一時保護を開始した時点において,本件児童の安全を確保する必要性はあり,かつ,本件児童の退院後において も安全を確保する必要性は継続することが見込まれたといえるから,本件児童の退院後における安全を確保するために,本件児童の入院中においても,本件児童について一時保護をする必要があるとした本件センター所長の判断が不合理であるということはできない。 そして,上記④(原告に関する調査)については,本件センターは,平 成30年12月21日にO病院から本件児童についての通告を受けたばかりであったのであるから,同日のうちに必要な調査を完了させることは困難であったというべきである。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 ⑸ 小括 を受けたばかりであったのであるから,同日のうちに必要な調査を完了させることは困難であったというべきである。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 ⑸ 小括 以上によれば,本件センター所長が本件一時保護を開始したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 2 争点2(本件一時保護の継続は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について⑴ 判断枠組み 児童福祉法は,同法33条1項及び同条2項の規定による一時保護の期間 は,当該一時保護を開始した日から2か月を超えてはならないが(同条3項),児童相談所長は,必要があると認めるときは,引き続き一時保護を行うことができる旨規定し(同条4項),引き続き一時保護を行うことが児童の親権者等の意に反する場合においては,家庭裁判所の承認を得なければならない旨規定する(同条5項)。引き続いての一時保護の要件である「必要があると認 めるとき」に当たるか否かについては,児童の福祉の保障の観点から検討されることを必要とするから(同法3条参照),引き続いての一時保護を行うか否かについての判断(一時保護をいつまで継続するかについての判断を含む。)は,児童福祉に精通した児童相談所長の合理的な裁量に委ねられていると解される。 他方,一時保護は,児童を保護者から強制的に引き離す行為であり,これにより,児童の行動の自由等の権利が制限されるほか,保護者の親権の行使等も制限されるものであり,児童及び保護者の権利に対する重大な制約を伴うものであるから,児童相談所長は,一時保護を不必要に継続してはならず,一時保護の必要性が失われた場合には,速やかに一時保護を解除しなければ ならない。また,一時保護は,飽くまで児童福祉法26条1項又は るから,児童相談所長は,一時保護を不必要に継続してはならず,一時保護の必要性が失われた場合には,速やかに一時保護を解除しなければ ならない。また,一時保護は,飽くまで児童福祉法26条1項又は同法27条1項に規定する措置を採るか否かを決定するまでの暫定的な措置として認められるものであるから,児童相談所長は,一時保護の期間中においては,上記の措置を採るか否かを決定するために必要かつ十分な調査を尽くした上,合理的な期間内に,上記の措置を採るか否かを決定する必要がある。 このように,児童福祉法33条4項が定める,引き続いての一時保護の要件である「必要があると認めるとき」とは,児童の福祉の保障の観点から検討されることを必要とするが,他方で,一時保護は,一時保護がされる児童の自由等を制限するとともに保護者の権限をも制限する行為でもあるから,不必要に継続されるべきではなく,「必要があると認めるとき」の解釈を無限 定に広く解釈すべきではないといえる。そうすると,児童相談所長は,同条 に基づく一時保護を開始した後において,一時保護の必要性が失われたと判断すべき基礎となる事実を認識した場合,又は,必要な調査を尽くしていれば,当該事実を認識し得た場合には,速やかに一時保護を解除しなければならないと解するのが相当である。すなわち,児童相談所長が,一時保護の必要性が失われたと判断すべき基礎となる事実を認識した時点,又は認識し得 た状態に至った時点から,社会通念上相当な期間が経過した後においては,もはや一時保護を継続することは許されず,上記裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして,上記の社会通念上相当な期間が経過した後における一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 ⑵ 認定事 記裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして,上記の社会通念上相当な期間が経過した後における一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 ⑵ 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件一時保護の開始から本件乳児院への委託一時保護がされるまでの経緯(平成30年12月21日~平成31年1月4日) 本件一時保護の開始本件センター所長は,平成30年12月21日,本件一時保護を開始した(本件児童は,同日の時点で,O病院に入院中であった。)。B及びAは,同日,原告に対し,本件児童について一時保護をすることを告げた。また,原告に対し,本件児童を勝手に退院させないこと,O病院の 規則に従うことを指示した。原告は,上記指示を了解した。(乙4,証人A,証人B)診療情報提供の依頼Aは,平成30年12月21日,O病院に対し,本件児童の診療情報の提供を依頼した(甲21)。 原告の自宅の訪問 C及びAは,平成30年12月25日,原告の自宅を訪問し,十数分程度,本件児童が受傷した状況について原告から説明を受けた。原告は,同日,C及びAに対し,本件事故の状況について,寝ている本件児童を左手で抱き上げてソファから立ち上がり,右手でローテーブルの上のマグカップを取ろうとしたところ,バランスを崩し,本件児童を落とした 旨説明した。 このとき,Aは,原告の自宅の様子について,特に問題を感じなかった。(以上につき,甲13,21,51,乙4,18,20,証人A,証人B,証人C)鑑定の嘱託 本件センター所長のDは,平成30年12月25日,G医師に対し,本件児童の受傷原因等についての鑑定を嘱託 甲13,21,51,乙4,18,20,証人A,証人B,証人C)鑑定の嘱託 本件センター所長のDは,平成30年12月25日,G医師に対し,本件児童の受傷原因等についての鑑定を嘱託した(甲13,乙4)。 G医師の速報G医師は,平成30年12月28日,Aに対し,電話で,速報として,原告の説明する状況(1回の落下)では本件児童の受傷結果の説明がつ かない旨述べた(前記前提事実⑵カ,甲55,乙4,18,証人A,証人B,証人C)。 平成30年12月28日の対応会議本件センター所長のD,C及びAは,平成30年12月28日,対応会議を行い,原告の本件児童への関わり方に問題はみられないものの, 本件児童の受傷原因が不明であるため,本件児童の退院後も本件児童の一時保護を継続する方針を確認した(乙18,証人A)。 本件児童の退院本件児童は,平成31年1月4日,O病院を退院した。本件センター所長は,同日,本件児童についての一時保護を本件乳児院に委託した。 Aは,平成31年1月4日,原告と面接し,本件児童について一時保 護を継続すること,本件児童との面会はさせられないことを伝えた。また,Aは,同日,原告に対し,本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示しなかった。このとき,原告は,驚いた様子で,涙を流したが,声を荒げるなどの感情的な言動をすることはなかった。(以上につき,甲21,54,56,乙4,18,証人A,証人B) 診療録の入手本件センターは,平成31年1月頃までに,O病院から,本件児童に関する診療録(画像を含む。)を受領した(甲7,21,乙18,証人A)。 イ本件乳児院への委託一時保護がされてから本件センターが乳児院への入所の方針を決定 1年1月頃までに,O病院から,本件児童に関する診療録(画像を含む。)を受領した(甲7,21,乙18,証人A)。 イ本件乳児院への委託一時保護がされてから本件センターが乳児院への入所の方針を決定するまでの経緯(平成31年1月4日~同年2月22日) 平成31年1月9日の面接原告は,平成31年1月9日,原告の当時の代理人であったM弁護士(以下「M弁護士」という。)と共に,本件センターを訪れ,B,A及び被告代理人弁護士(N弁護士)と面接をした。 M弁護士は,平成31年1月9日,B及びAに対し,原告と本件児童 との面会制限の法的根拠は何か,面会制限をする必要性はあるかを尋ねるとともに,原告と本件児童との面会を求め,そのためのルール作りをしてもらいたい旨を要望した。 これに対し,Aは,平成31年1月9日,M弁護士に対し,本件児童の受傷原因が特定されておらず,医師(G医師)から1回の落下では頭 部の2か所の骨折は生じないとの回答があったことから,現時点では,本件児童の安全が確保されておらず,安心できる材料が蓄積されるまで,面会はできない旨回答するとともに,本件センターとしてセカンド・オピニオンを取ることは考えていない旨回答した。また,Aは,安心できる材料とは,原告に本件児童が受傷した状況を思い出し,事故であると 確信でき,事故の再発防止策を講ずることである旨を回答した。 原告は,平成31年1月9日,本件センターの職員に対し,更に聞き取りをしてもらいたい旨話した。(以上につき,甲58,59,乙18,証人A,証人B)。 平成31年1月16日の面接B及びAは,平成31年1月16日,本件センターにおいて,原告と 面接し,平成30年12月19日に本件児童が受傷する前後の状況等につ ,証人A,証人B)。 平成31年1月16日の面接B及びAは,平成31年1月16日,本件センターにおいて,原告と 面接し,平成30年12月19日に本件児童が受傷する前後の状況等について聴取した。また,原告は,Aに対し,本件児童が受傷した状況について,1回落下した旨を改めて説明し,自らの不注意であって,本件児童にけがをさせてしまい申し訳ないと話した。このとき,Aは,原告が119番通報をするまでの経緯について,特に不審に感じることはな かった。(甲21,乙4,証人A)平成31年1月21日の面接F及びAは,平成31年1月21日,本件センターにおいて,原告と面接し,原告から,原告の家族や成育歴のほか,本件児童の父と原告との関係性(本件児童の父が医師であること,精神的・経済的に原告を支 えていること等),本件児童の監護態勢(原告が実家に戻って母や弟夫婦のサポートのある中で本件児童を養育することができること等)について聴取した。 また,原告は,平成31年1月21日,Aに対し,本件児童の予防接種について相談をした。これに対し,Aは,予防接種のスケジュールを 組んで提案する旨回答した。 このとき,Aは,原告について,乳児に推奨される予防接種の種類や時期等の乳児の養育に関する知識を一生懸命得ていると感じた。また,原告が本件児童に対する愛情を持っていることも理解していた。 (以上につき,甲21,32,59,乙18,証人A,原告本人) 本件鑑定書の受領 本件センターは,平成31年1月22日,本件鑑定書を受領した(甲13,21,乙4)。 乳児院への入所が必要であるとの判断本件センターは,平成31年1月下旬頃,本件児童を児童福祉法27条1項3号に規定する乳児院に入所させる 日,本件鑑定書を受領した(甲13,21,乙4)。 乳児院への入所が必要であるとの判断本件センターは,平成31年1月下旬頃,本件児童を児童福祉法27条1項3号に規定する乳児院に入所させることが必要であると判断した。 本件センターが本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断した理由は,①原告が説明する1回の落下により本件児童の頭部2か所に骨折が生ずるのは不自然であること,②本件児童のような乳児の頭部外傷は死亡や重度の後遺障害が生ずるおそれが高く危険であることの2点であった。 また,仮に,家庭引取りを実現するとしても,乳児院への入所をした上で再発防止策を講ずる必要があったこと,通常,本件センター内での面会,乳児院での面会,本件センターの職員が付き添う親子での外出,本件センターの職員が付き添わない親子での外出,自宅での外泊という段階を踏んで支援を行っているところ,これを当初の一時保護の期間内 (平成31年2月20日まで)に完了することはできない見込みであったことから,本件センターは,いずれにしても乳児院への入所が必要であると判断した。(以上につき,証人A,証人B,証人C)ウ引き続いての一時保護の承認の申立てから本件審判がされるまでの経緯(平成31年1月22日~同年3月19日) 一時保護の期間を延長する必要があるとの判断本件センターは,平成31年1月下旬頃,本件児童を乳児院に入所させることについて原告から同意を得られないことが予想されたため,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立ての準備をするために,本件児童について一時保護の期間を延長する必要がある と判断した(乙18,20,証人A,証人C)。 入所方針の伝達と原告の不同意A への入所の承認の申立ての準備をするために,本件児童について一時保護の期間を延長する必要がある と判断した(乙18,20,証人A,証人C)。 入所方針の伝達と原告の不同意Aは,平成31年1月29日,原告と面会し,原告に対し,本件鑑定書の内容の説明をするとともに,本件児童を乳児院に入所させる方針であること(支援は年単位になること等)を伝えた。原告は,乳児院への入所に同意しなかった。(甲21,59,乙18,20,証人A,証人C, 原告本人)平成31年2月12日の原告代理人とB及びAとの面接原告代理人弁護士ら(K弁護士,L弁護士)は,平成31年2月12日,本件センターを訪れ,本件鑑定書の開示を求めたほか,B及びAに対し,1回の落下で2箇所の頭蓋骨骨折が起こり得る旨が記載された医 学論文を渡した(乙4,18,20,証人A,証人C)。 引き続いての一時保護に同意しない旨の回答Aは,平成31年2月14日,引き続いての一時保護についての原告の意向を確認するため,原告に電話した。原告は,引き続いての一時保護に同意しない旨回答した。(甲57,乙4,18,証人A) 引き続いての一時保護の承認の申立て本件センター所長は,平成31年2月18日,児童福祉法33条5項に基づき,大阪家庭裁判所に対し,本件児童について引き続いての一時保護の承認の申立てをした。 本件センター所長は,上記の申立てに係る報告書において,「引き続い ての一時保護の必要性」として,「本件は家庭内で起こった重篤な事象であり,鑑定医は母の説明では今回の受傷との整合性がないとしている。 そのため今すぐ本児が在宅で生活することは困難であり,当センターとしては受傷機転及び再発予防のための課題を明らかにしたうえで,愛着 であり,鑑定医は母の説明では今回の受傷との整合性がないとしている。 そのため今すぐ本児が在宅で生活することは困難であり,当センターとしては受傷機転及び再発予防のための課題を明らかにしたうえで,愛着形成に配慮し,家族再統合支援を行うため,施設入所が必要と考えてい る。」と記載し,「今後の支援の見通し」として,「池田子ども家庭センタ ーとしては施設入所が必要と判断している。施設入所について保護者の同意が得られなければ,児童福祉法第28条第1項第1号の申し立てを検討したい。」と記載した。(以上につき,甲19,乙3,4,18,証人A,証人B)平成31年2月27日の予防接種の同行 原告は,平成31年2月27日,本件児童の予防接種に同行した。原告は,本件児童を抱っこしたり,授乳したりするなどできた。Aは,このときの原告の様子に特に問題を感じなかった。(甲32,59,乙4,18,証人A,証人B,原告本人)H意見書等の提出 原告代理人弁護士らは,平成31年3月5日頃までに,大阪家庭裁判所に対し,上記の事件に関し,同月4日付け答弁書,同日付け報告書2,同日付け報告書3,H医師(R大学脳神経外科准教授・R大学附属病院S病院教授)作成に係る同月5日付け意見書(以下「H意見書」という。)等を提出した(甲11,12,18,51,乙4)。 a 平成31年3月4日付け報告書2の概要平成31年3月4日付け報告書2は,乳児には1回の低位落下で複数の骨折が生じ得ることを示す医学文献の存在を報告するものであり,次の6本の論文を添付するものであった(甲12)。 ⒜ ポール・K・クラインマン編『子ども虐待の画像診断』(平成28 年)⒝ マンディ・A・オハラ「乳幼児の両側頭蓋骨骨折:虐待小児科との相 の6本の論文を添付するものであった(甲12)。 ⒜ ポール・K・クラインマン編『子ども虐待の画像診断』(平成28 年)⒝ マンディ・A・オハラ「乳幼児の両側頭蓋骨骨折:虐待小児科との相談において診断上考慮すべきこと」(平成30年)⒞ M・ジョーンズほか「乳児頭部への衝撃の生体力学を調査するための身体モデルの開発と検証」(平成29年) ⒟ 中村紀夫『頭部外傷急性期のメカニズムと診断』(昭和61年) ⒠ 中村紀夫「小児頭部外傷の剖検所見と臨床」(昭和45年)⒡ 太田富雄総編集『脳神経外科学Ⅱ〔改訂11版〕』(平成24年)b 平成31年3月4日付け報告書3の概要平成31年3月4日付け報告書3は,原告が同日の段階で事故再発防止のために自宅居間の床面にラグ下のマットを敷設していること等 を報告するものであった(甲18)。 cH意見書の概要H意見書には,「生体力学的には,小児期の頭蓋骨は外力を受けた際に『たわむ』独特な構造をしており,頭蓋骨骨折を引き起こす生体力学も,この特徴に影響される。特に,乳児期の薄い頭蓋骨は進展性に 富む物質で接合されており,それゆえに頭蓋骨は変形性に富み,頭頂骨損傷の場合,とりわけその傾向が強い。その結果,頭頂骨骨折では,矢状縫合を超え,両側性骨折となることもあり,さらには,左右の骨折線の連続性が認められないこともある」,「よって,母親が供述する,抱っこをしていて誤って患児を床面に落とした外傷機転によっても, 両側の頭頂骨骨折が同時に一期的に生じる可能性は十分にある」,「本事案は,誤って児を落下させたことによる,頭蓋骨多発骨折の可能性が強」いなどと記されていた。(甲11,乙4)審問期日の実施大阪家庭裁判所は,平成31年3月7日,上記 は十分にある」,「本事案は,誤って児を落下させたことによる,頭蓋骨多発骨折の可能性が強」いなどと記されていた。(甲11,乙4)審問期日の実施大阪家庭裁判所は,平成31年3月7日,上記の事件に関する審問 期日を実施した。その概要は,次のとおりである。(甲13,21,52)a 本件児童親権者母(原告)の審問結果本件児童親権者母(原告)は,裁判官の質問に対し,本件事故状況,引き続いての一時保護に対する意見等を陳述した。 b 申立人(本件センター所長)に対する指示 上記事件の担当裁判官は,上記期日において,申立人(本件センタ ー所長)に対し,鑑定書の提出等を求めた。これに対し,申立人(本件センター所長)は,平成31年3月18日,大阪家庭裁判所に対し,①本件鑑定書,O病院の診療録を提出するとともに,②本件児童の受傷についてこれまでに行った調査の概要,③本件児童の受傷について今後の調査の予定がないこと,④同年4月20日までに児童福祉法2 8条1項に基づく施設入所の承認の申立てをする予定であることを記載した報告書を提出した。 G医師からの意見聴取Aは,平成31年3月頃,G医師に対し,原告側から提出された意見書,医学論文のコピー(乳児の頭蓋骨は衝撃を受けると「たわむ」とい う特性があるため1回の落下により頭蓋骨に2か所の骨折が生ずることはあり得る旨の内容のもの)を送付し,G医師から意見を聴取した。その際,G医師は,Aに対し,当該論文の信用性は乏しい旨の回答をしたが,その根拠となる論文等は示さなかった。(甲21,乙20,証人A,証人C) エ本件審判の内容大阪家庭裁判所は,平成31年3月19日,本件児童についての引き続いての一時保護を承認する旨の審判(本件審判)をし は示さなかった。(甲21,乙20,証人A,証人C) エ本件審判の内容大阪家庭裁判所は,平成31年3月19日,本件児童についての引き続いての一時保護を承認する旨の審判(本件審判)をした。本件審判の理由は,次のとおりである。(甲20)申立てが相当であること 本件センター所長からの引き続いての一時保護についての承認申立事件について,その申立てを相当と認める。 原告の供述する事故の態様と本件児童の受傷状況は必ずしも矛盾しないこと等乳児の頭蓋骨の特性を踏まえると,原告の供述する事故の態様と受傷 状況は必ずしも矛盾しない。他方で,本件児童に両側頭頂骨骨折,同骨 折部に一致する頭皮下血腫及び急性硬膜外血腫並びに左前頭葉及び頭頂葉表面のごく軽微な脳挫傷以外の目立った身体的外傷はなく,これらの受傷はいずれもO病院を受診した1日程度以内にほぼ連続的に生じたものと考えられるところ,1日以内に両側頭頂骨のみに線状の骨折を生じさせるような複数回の有形力を行使したと考える方がかえって不自然で ある。 原告に虐待を疑わせる事情は見当たらないことまた,本件一時保護の前後において原告に虐待傾向は一切みられず,本件児童の受傷直後の行動や医療機関への説明も一貫しており虐待を疑わせるものではない。 本件鑑定書の内容の信用性の再検討等を行うことが相当であること本件センター所長においては,本件児童の受傷が事故によるものである可能性も含めて,本件鑑定書の内容の信用性を複数の医学的知見や本件児童の受傷前後の事実関係を踏まえて改めて検討するとともに,本件児童と原告との面会交流については早期に再開することが相当であると 思料する。 引き続いての一時保護を承認する趣旨本件鑑定書の内容の信用性の検討及 を踏まえて改めて検討するとともに,本件児童と原告との面会交流については早期に再開することが相当であると 思料する。 引き続いての一時保護を承認する趣旨本件鑑定書の内容の信用性の検討及び家庭引取りに向けた準備等の期間として,引き続いての一時保護を承認する。 オ本件審判から本件施設入所承認申立てまでの経緯(平成31年3月19 日~同年4月18日)本件センターが他の医師に鑑定や意見を求めなかったこと本件センターは,本件審判の内容を踏まえて,他の医師に鑑定や意見を求めることを一応検討した。しかし,本件センターは,他の医師に鑑定や意見を求めるなどして,本件鑑定書の内容の信用性を改めて検討し なかった。その理由は,次のとおりである。 すなわち,本件センターは,①1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるとの本件鑑定書の指摘が存在する以上,他の医師の鑑定書や意見書を取得しても,「虐待の可能性が考えられる。」との本件鑑定書の指摘内容が完全に否定されることはあり得ない(すなわち,本件児童の受傷の原因が虐待でないことは確定することができない) と考えた。また,本件センターは,②仮に,1回の落下により頭部に2か所の骨折が起こり得るとの鑑定書や意見書を取得しても,これらと本件鑑定書のいずれを信用することができるかを判断することができる知識等が本件センターにはないと考えた。さらに,本件センターは,③仮に,本件児童の受傷の原因が虐待でないことが確定したとしても,本件 児童が重大な受傷をしている以上,原告に不適切な養育があることに変わりはないから,本件児童を乳児院に入所させる方針を変更することはないと考えた。(乙18,20,証人A,証人B,証人C)。 鑑定等を依頼することができる いる以上,原告に不適切な養育があることに変わりはないから,本件児童を乳児院に入所させる方針を変更することはないと考えた。(乙18,20,証人A,証人B,証人C)。 鑑定等を依頼することができる医師の存在本件センターは,本件審判の当時,G医師以外にも,鑑定を依頼する などの協力を得ていた医師が複数名存在し,他の医師に鑑定や意見を求めることについて,特段の支障はなかった。 本件センターの職員は,本件以前からG医師に鑑定を依頼することが複数回あったところ,G医師は法医学教室に所属しており,法医学教室での精査を経て鑑定がされること等から,G医師の鑑定は基本的に信用 できるものであって,疑問を差し挟む余地はないものと考えていた。また,Cは,G医師について,基本的には虐待の疑いを持って鑑定をすることが多いため虐待の疑いがあるとする鑑定意見を示すことが多い医師であると認識していた。(以上につき,証人A,証人B,証人C)本件訴訟の提起 原告は,平成31年3月29日,本件訴訟を提起した(前記前提事実 ⑶エ)。 B及びAの異動B及びAは,平成31年4月15日,人事異動により本件センターから転出した。同日からは,本件児童について,Eがケースワーカーとして担当することとなり,Fがスーパーバイザーとして担当することとな った。(乙21,証人F)本件施設入所承認申立て本件センター所長は,平成31年4月18日,大阪家庭裁判所に対し,児童福祉法28条1項1号に基づき,本件児童を乳児院に入所させることの承認の申立てをした(本件施設入所承認申立て)。 Aは,本件施設入所承認申立てに先立ち,平成31年4月12日,児童記録を作成した。(以上につき,前記前提事実⑶オ,甲23,乙4,1 との承認の申立てをした(本件施設入所承認申立て)。 Aは,本件施設入所承認申立てに先立ち,平成31年4月12日,児童記録を作成した。(以上につき,前記前提事実⑶オ,甲23,乙4,18,証人A)カ本件施設入所承認申立てから本件一時保護が解除されるまでの経緯(平成31年4月18日~令和元年8月9日) 本件乳児院の名称・住所等の開示本件センターは,令和元年5月8日,原告に対し,本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示した(乙21,証人F)。 担当裁判官による家庭引取りの促し 本件施設入所承認申立てに係る事件の担当裁判官は,令和元年5月24日の第1回審問期日において,本件センター所長に対し,本件児童について家庭引取りを進めるよう促した。これに対し,本件センター所長は,上記期日において,上記裁判官に対し,家庭引取りのためには,本件センターでの面会から始めて最後は外泊を行うという過程を経る必要 がある旨を説明した。(甲25,乙21,証人F)。 家庭引き取りに向けた支援計画の提示本件センターは,令和元年6月12日,本件児童の家庭引取りに向けた支援計画を作成した。同支援計画によると,家庭引取りは同年9月上旬となることが予定されていた。(乙1)支援計画の改訂 本件センターは,令和元年7月16日,本件児童の家庭引取りに向けた支援計画(上記)を改訂した。同支援計画によると,家庭引取りは令和元年8月9日を予定しているとされていた。(乙6)令和元年8月2日の対応会議本件センターは,令和元年8月2日,本件一時保護の解除についての 対応会議を行った(甲55)。 本件一時保護の解除本件センター所長は,令和元年8月9日, 元年8月2日の対応会議本件センターは,令和元年8月2日,本件一時保護の解除についての 対応会議を行った(甲55)。 本件一時保護の解除本件センター所長は,令和元年8月9日,本件一時保護を解除した(甲22)。 本件施設入所承認申立ての取下げ 本件センター所長は,令和元年8月13日,本件施設入所承認申立てを取り下げた(乙2)。 ⑶ 本件についてア本件審判(平成31年3月19日)までの本件一時保護の継続が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かについて 上記⑵の認定事実(ア,,イ~)によれば,本件センターは,本件一時保護の開始後,原告との面接や本件鑑定書の取得等の調査を行った結果,平成31年1月下旬頃,本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断したが,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立ての準備のために必要であるとして,同年2月18日,大 阪家庭裁判所に対し,引き続いての一時保護の承認の申立てを行い,本件 一時保護を継続したことが認められる。 そうすると,本件センターは,平成31年1月下旬の時点で,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立てを行うために必要な調査は完了していたと認められる。 もっとも,本件センターは,平成31年1月下旬の時点においては,本 件児童の受傷原因について明らかにすることができておらず,また,本件児童の受傷の原因は虐待の可能性がある旨の本件鑑定書を取得していたというのであるから(上記⑵の認定事実ア),その当時においては,本件センター所長が,本件児童について虐待の可能性があるため,本件児童の安全を確保する緊急の必要があるとして,一時保護を継続したことは不合 理であるとはいえな 事実ア),その当時においては,本件センター所長が,本件児童について虐待の可能性があるため,本件児童の安全を確保する緊急の必要があるとして,一時保護を継続したことは不合 理であるとはいえない(なお,本件センター所長は,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立てを行うための準備の期間を確保する目的で,引き続いての一時保護の承認の申立てをしたが〔上記⑵の認定事実ウ〕,本件児童を乳児院に入所させる方針を決定していた同年1月下旬の時点において,本件一時保護の期間〔同年2月20日まで〕 が満了するまで約1か月間の期間があったこと,上記⑴で説示したとおり,児童福祉法33条に基づく一時保護は,同法26条1項又は同法27条1項に規定する措置を採るまでの暫定的な措置であることに照らせば,上記申立てが一時保護の制度の趣旨に適合する申立てであったかについては疑問がある。本件審判〔前記前提事実⑶ウ,上記⑵の認定事実エ〕は, その説示内容にも鑑みると,引き続いての一時保護の期間が,本件鑑定書の内容の信用性の検討及び家庭引取りのための準備等の期間として利用されるのであれば,本件児童の福祉に反するものではなく,上記の制度の趣旨にも適合するとして,引き続いての一時保護を承認したものと解される。もっとも,このことをもって,本件児童の安全を確保する緊急の必要 性が失われるものではないから,同日の時点で,本件センター所長におい て速やかに本件児童の一時保護を解除すべきであったということはできない。)。 そして,上記⑵の認定事実によれば,平成31年2月18日に引き続いての一時保護の承認の申立てがされた後,同年3月19日に本件審判がされるまでにおいて,本件鑑定書の内容の信用性に明らかな疑いが生じたな ど,本件児 定事実によれば,平成31年2月18日に引き続いての一時保護の承認の申立てがされた後,同年3月19日に本件審判がされるまでにおいて,本件鑑定書の内容の信用性に明らかな疑いが生じたな ど,本件児童の一時保護の必要性が失われるに至る事情は見当たらない。 そうすると,本件センター所長は,本件審判において本件鑑定書の内容の信用性を再検討するよう指摘を受けるまで,一時保護の必要性はなお継続していると判断して本件一時保護を継続したことは,不合理であるということはできない。 したがって,本件審判がされた平成31年3月19日までの本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 イ本件審判(平成31年3月19日)以降の本件一時保護の継続が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かについて本件センターが,本件審判の指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容 の信用性を再検討しなかったことの合理性の有無a 本件センターが,本件審判の指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかったこと上記⑵の認定事実(エ)のとおり,平成31年3月19日にされた本件審判は,①引き続いての一時保護を承認するものの(エ),②㋐ 乳児の頭蓋骨の特性(衝撃によりたわむこと)を踏まえると,原告が説明する事故態様(1回の落下)と本件児童の受傷内容は必ずしも矛盾せず,他方で,本件児童の受傷内容等からすると,1日以内に複数回の強度の有形力を行使したとみるのは不自然であり(エ),㋑また,原告に虐待を疑わせる事情は見当たらないから(エ),㋒本件鑑定書 の内容の信用性を複数の医学的知見や本件児童の受傷前後の事実関係 を踏まえて改めて検討すること,及び家庭引取りに向けた準備を進めるのが相当であり(エ),③ から(エ),㋒本件鑑定書 の内容の信用性を複数の医学的知見や本件児童の受傷前後の事実関係 を踏まえて改めて検討すること,及び家庭引取りに向けた準備を進めるのが相当であり(エ),③これらの期間として,引き続いての一時保護を承認する(エ),というものである。すなわち,本件審判は,本件鑑定書の内容の信用性に疑いがあるとして,本件センターに対し,本件鑑定書の内容の信用性について複数の医学的知見を踏まえるなど して再検討することを指摘するものである(以上の点は本件審判書から明らかであり,本件センター所長は,本件審判の告知を受けた時点で,直ちに本件審判の内容を十分に理解することができたものと認められる。)。 しかし,本件センターは,本件鑑定書の内容の信用性を再検討する ことなく,本件児童を乳児院に入所させることが必要であるとの方針を維持し,平成31年4月18日,児童福祉法28条1項1号に基づく乳児院への入所の承認の申立てを行い(本件施設入所承認申立て),本件一時保護を継続した(上記⑵の認定事実オ,)。児童福祉法33条5項本文は,一時保護は,児童及び親権者等の重大な権利を制約 する行為であるにもかかわらず,裁判所による司法審査を経ずに開始され,長期化のおそれもあることから,一時保護が不相当に長期化することを防止するために,2か月を超えて引き続き一時保護を行うことが,児童の親権者等の意に反する場合においては家庭裁判所の承認を得なければならないこととした趣旨であると解されるところ,本件 センターが,本件審判の上記指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかったことは,上記の同項の趣旨に反するというべきである。 そこで,本件センターが本件鑑定書の内容の信用性について再検討をしな 判の上記指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかったことは,上記の同項の趣旨に反するというべきである。 そこで,本件センターが本件鑑定書の内容の信用性について再検討をしなかったことの合理性の有無について,bにおいて検討する。 b 本件センターが本件鑑定書の内容の信用性の再検討をしなかったこ との合理性の有無について上記⑵の認定事実(オ)のとおり,本件センターが,本件審判の指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかった理由は,①1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるとの本件鑑定書の指摘が存在する以上,他の医師の鑑定書や意 見書を取得しても,本件鑑定書の指摘内容が完全に否定されることはあり得ないこと(すなわち,本件児童の受傷の原因が虐待でないことは確定することができないこと),②仮に,1回の落下により頭部に2か所の骨折が起こり得るとの鑑定書や意見書を取得しても,これらと本件鑑定書のいずれを信用することができるかを判断する知識等が本 件センターにはないこと,③仮に,本件児童の受傷の原因が虐待でないことが確定したとしても,本件児童が重大な受傷をしている以上,原告に不適切な養育があることに変わりはないから,乳児院への入所の方針が変更することはないこと,である。 しかし,上記①(本件鑑定書の指摘内容が完全に否定されることは あり得ないこと)について,本件審判は,乳児の頭蓋骨の特性に関する医学的知見や原告に虐待傾向が一切みられないこと等の具体的な理由を挙げた上で,虐待の可能性がある旨を指摘する本件鑑定書の内容の信用性について疑いがあるとして,その再検討を指摘しているものである(上記⑵の認定事実エ)。そして,上記理由は,審理の経過を踏 まえ げた上で,虐待の可能性がある旨を指摘する本件鑑定書の内容の信用性について疑いがあるとして,その再検討を指摘しているものである(上記⑵の認定事実エ)。そして,上記理由は,審理の経過を踏 まえたものであって(上記⑵の認定事実ウ),正当な指摘であるということができる。他方で,本件鑑定書においては,「損傷の医学的診断」から「各損傷の…成傷機転・程度」を導く検討過程の医学的説明が十分にされているとはいい難い上,上記の医学的知見や原告に虐待傾向が一切みられないことを検討した形跡はみられず(前記前提事実⑶イ), 平成31年3月頃に本件センターがG医師から意見聴取をした際にも, G医師の見解の根拠となる論文等は示されていなかったというのである(上記⑵の認定事実ウ)。さらに,原告に虐待傾向が一切みられないことについては,同年3月当時の,本件センターの担当職員の認識とも合致するものであった(上記⑵の認定事実ア~ウ。このことは,本件一時保護の解除後に,本件センターの職員のEも認めているとこ ろである〔甲34〕。)。そうすると,このような状況の下で,本件センターが本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかった理由として挙げるもの(上記⑵の認定事実オ)は,いずれもその根拠が乏しいものというべきであり,本件センターは,本件審判において中立公平な司法機関から具体的かつ合理的な根拠をもって本件鑑定書の内容の信用 性について再検討する必要がある旨指摘されたにもかかわらず,その指摘を真摯に検討せず当初の方針を修正することもしないまま本件鑑定書に安易に依拠していたものといわざるを得ない。 また,上記②(判断能力の欠如)については,本件センターが本件一時保護を継続した主な理由は,本件児童の受傷原因が確定できず, 虐待の可能性が否定 安易に依拠していたものといわざるを得ない。 また,上記②(判断能力の欠如)については,本件センターが本件一時保護を継続した主な理由は,本件児童の受傷原因が確定できず, 虐待の可能性が否定できないことであり(上記⑵の認定事実イ,オ),その主な根拠が本件鑑定書であるというのであり,他方で,本件センターは,本件審判の当時,G医師以外にも,鑑定を依頼するなどの協力を得ていた医師が複数名存在し,他の医師に鑑定や意見を求めることについて,特段の支障はなかったというのである(上記⑵の認 定事実オ)から,本件センターの職員に十分な医学的知識等がないというのであれば,本件センター所長は,なおさら本件鑑定書の内容の信用性を検討するために,本件審判で指摘されたとおり,他の医師に鑑定や意見を求めるなどして複数の医学的知見を獲得して,本件一時保護の継続の必要性について十分に検討すべきであったということ ができる。すなわち,本件センターの職員に十分な医学的知識等がな いのであれば,少なくとも,中立公平な司法機関が具体的かつ合理的な根拠をもって示した本件審判の指摘を受けた段階においては,特定の医師の見解を絶対視することは避けるべきであったといえる。そうすると,本件センターに十分な医学的知識等がないことは,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しないことを正当化するものとはいえない。 そして,上記③(原告に不適切な養育があること)については,本件事故当時,原告が本件児童を片手で縦抱きにしていたことは,生後約1か月半であった本件児童に対する取扱いとして適切であったとはいい難いものの(このことは,原告も,本件事故直後から一貫して自らに不注意があったことを自認しているところである。),このような 取扱いが直ちに「虐待」(児童福 取扱いとして適切であったとはいい難いものの(このことは,原告も,本件事故直後から一貫して自らに不注意があったことを自認しているところである。),このような 取扱いが直ちに「虐待」(児童福祉法28条1項,児童虐待防止法2条)に当たるものではないというべきであるし,その一事をもって,原告に本件児童を「監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」(児童福祉法28条1項)に該当するということはできない。また,本件一時保護中の調査によっても原告に虐待傾向があるなどの問題は 一切みられず,原告の本件児童に対する関わり方にも問題はみられず,原告は本件センターの調査にも協力してきたというのであるから(上記⑵の認定事実ア~ウ。このことは,本件一時保護の解除後に,本件センターの職員のEも認めているところである〔甲34〕。),原告に対して適切な指導を行うことによって,同様の事故を防止することは十 分可能であった。すなわち,一時保護や乳児院への入所による親子分離を継続した状態で原告に対して指導や再発防止策を講ずる必要性があったということはできない。そうすると,本件事故当時,原告が本件児童を片手で縦抱きにしていたことをもって,原告に本件児童を「監護させることが著しく当該児童の福祉を害する」ということはできな かったというべきであるから,「虐待」がなかったとしても本件児童を 乳児院に入所させる必要があったとして,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかったことを正当化することはできない。 なお,仮に,本件センターが他の医師に鑑定や意見を求めるなどの検討を行っていたとすれば,そのために一定の期間を要したことになる。しかし,上記検討をすることなく,児童福祉法28条1項1号に 基づく施設入所の承認の申立てがされると,一時 や意見を求めるなどの検討を行っていたとすれば,そのために一定の期間を要したことになる。しかし,上記検討をすることなく,児童福祉法28条1項1号に 基づく施設入所の承認の申立てがされると,一時保護の期間の制限がなくなり(同法33条5項ただし書参照),かえって家庭引取りまでの期間が事実上長期化すること(本件では,上記検討がされずに,本件施設入所承認申立てがされ,結果として,本件一時保護は令和元年8月9日まで〔一時保護開始から約8か月半〕継続した。)等に鑑みると, 上記検討のために一定の期間を要したことはやむを得ないというべきである。 したがって,本件センターが,本件審判の指摘にもかかわらず,本件鑑定書の内容の信用性を再検討しなかったことは不合理である。 本件センターが,本件審判後も本件一時保護を継続した理由の合理性 の有無上記⑵の認定事実(イ,オ)によれば,本件センターが,本件審判後も本件一時保護を継続した理由は,本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断していたことに尽きるところ,本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断した理由は,平成31年1月下 旬頃に乳児院への入所の方針を決定して以来,①虐待の可能性が考えられること,②仮に虐待でなくても,本件児童の受傷の原因は,原告が本件児童を片手で縦抱きをしていたことにあるから,本件児童の福祉を害するというものであったと認められる。 そこで,本件センターが本件審判後も本件一時保護を継続した理由の 合理性の有無について検討すると,上記①(虐待の可能性が考えられる こと)については,本件センターが虐待の可能性があると考えていた主な根拠は本件鑑定書であるところ,本件審判により,本件鑑定書の内容の信用性について疑問があるとして再 虐待の可能性が考えられる こと)については,本件センターが虐待の可能性があると考えていた主な根拠は本件鑑定書であるところ,本件審判により,本件鑑定書の内容の信用性について疑問があるとして再検討することを指摘されていたにもかかわらず,その再検討を行わなかったのであるから,本件鑑定書の存在をもって,本件児童を乳児院に入所させることが必要であると判断 することは不合理である(上記)。本件鑑定書のほかに,虐待の可能性を示す根拠としては,1回の落下により頭部に2か所の骨折が生ずるのは不自然であるとのO病院からの通告内容及びO病院の医師の説明内容があるものの,上記に説示したところに照らせば,当該通告内容及び説明内容は,本件審判後において,虐待の可能性を示す十分な根拠とな り得ないというべきである。 そして,上記②(原告が本件児童を片手で縦抱きにしていたこと)については,上記で説示したとおり,本件事故当時,原告が本件児童を片手で縦抱きにしていたことをもって,原告に本件児童を監護させることが本件児童の福祉を害するものとはいえない。 したがって,上記①(虐待の可能性が考えられること)及び②(原告が本件児童を片手で縦抱きにしていたこと)は,本件一時保護を継続する理由として不合理である。 本件一時保護を解除すべき義務以上によれば,本件センターが,本件審判の指摘にもかかわらず,本 件鑑定書の内容の信用性について再検討を行わなかったこと,本件審判後も,本件一時保護を継続した理由は,いずれも不合理である(上記,)。 そして,本件審判の説示内容に加え,本件鑑定書の内容は極めて簡略であり,虐待の可能性があるとの結論に至った理由が十分に記載されて おらず,医学文献等の参考資料も添付されていなかったこと( そして,本件審判の説示内容に加え,本件鑑定書の内容は極めて簡略であり,虐待の可能性があるとの結論に至った理由が十分に記載されて おらず,医学文献等の参考資料も添付されていなかったこと(前記前提 事実⑶イ)にも照らせば,本件センターが,本件審判の指摘に従い,他の医師に鑑定や意見を求めて,本件鑑定書の内容について再検討していれば,原告の供述する事故態様と本件児童の受傷状況とが必ずしも矛盾しないことが明らかになっていた蓋然性が高かったというべきである(なお,原告の供述する事故態様と本件児童の受傷状況が矛盾する可能 性が僅かでも残れば一時保護の必要性が失われないというものではないことは,上記⑴で説示したとおりである。)。また,上記1⑵の認定事実,上記⑵の認定事実によれば,本件センターが本件審判までに行った調査によっても,本件鑑定書の内容以外に,原告に虐待を疑うべき事情は一切判明しなかったことが認められる。そうすると,本件センターが,本 件審判がされた後,速やかに他の医師に鑑定や意見を求めていれば,本件児童を乳児院に入所させる必要性がなく,ひいては,本件一時保護を継続する必要性はないことを認識することができたといえる。 そして,仮に,本件センターが,本件審判後,速やかに他の医師に鑑定や意見を求めていたならば,本件センターがG医師に鑑定を依頼して 電話で速報として意見を聴取するまでの期間は3日程度であったこと(上記⑵の認定事実ア)に照らすと,本件センター所長は,遅くとも,本件審判日(平成31年3月19日。本件審判は同日頃に本件センター所長に告知された〔前記前提事実⑶ウ〕。)の2週間後である同年4月2日には,他の医師の意見等を聴取した上で,原告の供述する事故態様 と本件児童の受傷状況とが必ずしも矛 は同日頃に本件センター所長に告知された〔前記前提事実⑶ウ〕。)の2週間後である同年4月2日には,他の医師の意見等を聴取した上で,原告の供述する事故態様 と本件児童の受傷状況とが必ずしも矛盾しないことが明らかになり,本件一時保護の必要性がないと認識することができたというべきである。 そして,仮に,本件センターが,同日から速やかに本件一時保護の解除に向けた手続を行っていたならば,本件センター所長は,遅くとも,同日から約2週間後(本件審判日の1か月後)である同月19日には,本 件一時保護を解除することができたというべきである。 そうすると,本件センター所長は,遅くとも平成31年4月19日までに,本件一時保護を解除すべき義務を負っていたというべきである。 本件一時保護を解除すべき義務に違反したことそれにもかかわらず,本件センター所長は,平成31年4月19日に本件一時保護を解除せず,令和元年8月9日まで本件一時保護を継続し た(上記⑵の認定事実カ)。 そうすると,本件センター所長は,本件児童について一時保護の必要性が失われたと判断すべき基礎となる事実を認識し得た状態に至った時点(本件審判日の2週間後である平成31年4月2日)から,社会通念上相当な期間が経過した後である同月19日においては,もはや一時保 護を継続することは許されず,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして,同日後における一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 小括以上によれば,本件センター所長が,平成31年4月19日~同年8 月9日に本件一時保護を継続したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 ⑷ 原告の主張についてア原告は,前記第2の4⑵の(原告の主張)欄のイのと 19日~同年8 月9日に本件一時保護を継続したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 ⑷ 原告の主張についてア原告は,前記第2の4⑵の(原告の主張)欄のイのとおり,①本件鑑定書の内容が不合理であることは一見して容易に判断することができたこと, ②本件センターは平成31年1月21日の時点で調査を完了させていたこと,③同月22日までに再発防止策を講ずることも可能であったことから,本件センター所長は,同日までに本件一時保護を解除すべき義務を負っており,同日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である旨主張する。 しかし,本件鑑定書の内容は,結論に至る理由が十分に記載されておら ず,内容が極めて簡略であるなどの問題はあるものの,医学の専門家ではない本件センターの職員が,本件審判において本件鑑定書の内容の信用性に対する疑いが指摘されるまでは,「虐待の可能性が考えられる。」との本件鑑定書の結論に疑いを持つことが容易であったということはできない。 そうすると,引き続いての一時保護の承認の申立てが適切であるとはいえ なかったという問題はあるものの(上記⑶ア),平成31年1月22日の時点で,本件児童の受傷の原因は虐待である可能性があり,本件児童の保護を継続する必要があるとした本件センター所長の判断は,不合理であるということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,前記第2の4⑵の(原告の主張)欄のウのとおり,本件審判がされた平成31年3月19日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である旨主張する。 しかし,上記⑶イで説示したとおり,本件審判において指摘された本件鑑定書の内容の信用性の再検 れた平成31年3月19日以降の本件一時保護の継続は,国家賠償法1条1項の適用上違法である旨主張する。 しかし,上記⑶イで説示したとおり,本件審判において指摘された本件鑑定書の内容の信用性の再検討等には一定の期間を要するから,本件審判 がされた平成31年3月19日の時点で,直ちに本件一時保護を解除すべきであったということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 被告の主張についてア被告は,前記第2の4⑵の(被告の主張)欄のイのとおり,本件児童の 安全性を確保するためには,①原告との面談,原告と本件児童との面会の様子の観察を繰り返す中で再度同様の受傷が生じないか見極めていく必要があり,②ネグレクト等の不適切な養育に陥るようなことがないか注意深く観察・検討する必要があり,③家庭復帰のための再統合プログラムについても十分な時間をかけて段階的に進める必要があった旨主張する。 しかし,上記①(再発防止の見極めの必要性)については,上記⑶で説 示したとおり,本件センターが本件一時保護の必要性の主な根拠としていた本件鑑定書の内容については,本件審判においてその信用性に疑いが指摘された以上,本件センターとしては,原告との面談,原告と本件児童との面会の様子の観察を繰り返すといった安心感を得るための主観的な方策のみならず,本件鑑定書の内容の信用性について複数の医学的知見に基 づく再検討を行うといった客観的な方策をとるべきであり,本件審判後に速やかに他の医師に鑑定や意見を求めていれば,本件一時保護の必要性がないことを認識することができたというべきである。 上記②(ネグレクト等の検討)については,上記⑵で認定した事実関係によれば,平成31年4月19日までの段階で,原告がネグレクト等の不 護の必要性がないことを認識することができたというべきである。 上記②(ネグレクト等の検討)については,上記⑵で認定した事実関係によれば,平成31年4月19日までの段階で,原告がネグレクト等の不 適切な養育を行っていなかったことは明らかになっていたというべきである。 上記③(再統合プログラムを段階的に進める必要性)については,上記⑶で説示したとおり,本件一時保護の継続の理由であった,①虐待の可能性が考えられること,②仮に虐待でなくても,本件児童の受傷の原因は, 原告は本件児童を片手で縦抱きをしていたことは,いずれも不合理であるというべきであるから,遅くとも,本件一時保護を解除すべきであった平成31年4月19日の時点では,本件一時保護の必要性(すなわち,親子分離の必要性)がそれ自体失われていたのであるから,再統合のためのプログラムの必要性もそれ自体失われていたというべきである。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 イ被告は,前記第2の4⑵の(被告の主張)欄のウのとおり,本件審判は1日以内に両側頭頂骨のみに線状の骨折を生じさせるような複数回の有形力を行使したと考える方がかえって不自然である旨説示するが,当該説示部分は意味不明であり,そもそも,引き続いての一時保護の可否について 審査したものであり,また,本件児童の受傷原因について十分な検討がさ れた上での判断とはいえない旨主張する。 しかし,①本件児童の受傷内容は,頭部の左右2か所の骨折(両側頭頂骨骨折),これらの骨折部に一致する頭皮下血腫及び急性硬膜外血腫並びに左前頭葉及び頭頂葉表面のごく軽微な脳挫傷のみであったこと(前記前提事実⑵イ,上記1⑵の認定事実ウ),②原告は本件児童の受傷の直後に1 19番通報をす 致する頭皮下血腫及び急性硬膜外血腫並びに左前頭葉及び頭頂葉表面のごく軽微な脳挫傷のみであったこと(前記前提事実⑵イ,上記1⑵の認定事実ウ),②原告は本件児童の受傷の直後に1 19番通報をするなど,原告の行動に不自然さはなかったこと(前記前提事実⑵ア,上記1⑵の認定事実イ),③本件審判時点までの本件センターの調査の結果として,原告に虐待傾向が一切みられなかったこと(上記1⑵の認定事実,上記⑵の認定事実)等に照らせば,原告が本件児童に対して1日以内に複数回の有形力を行使したと考えるのは不自然であるとはいえ ず,本件審判の説示には合理性があり,不適切な判断であるなどとはいえない(なお,被告は,本件児童の受傷原因としては,例えば,原告が本件児童を衝動的に左右に振り回し,壁やベビーベッド等に連続してぶつけてしまったようなケースも考えられる旨主張するところ,本件児童の受傷内容に照らせば,そのような虐待行為が原因であった可能性は考え難いが, 仮に,本件センターがそのような可能性があると考えたのであれば,なおさら本件審判において指摘されたとおり,医学的な観点からの検討を行うべきであったということができ,被告も認めるように本件センターは十分な医学的知識等を有さないというのであれば,医学の専門家である医師に依頼して医学的知見を獲得すべきであったといえる。もとより,本件審判 は,本件鑑定書の内容の信用性に疑いがある旨を指摘しているのであるから,本件鑑定書を作成したG医師とは別の医師に依頼するのが相当である。)。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑹ 小括 以上によれば,本件センター所長が,平成31年4月19日~同年8月9 日に本件一時保護を継続したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であ 記主張は採用することができない。 ⑹ 小括 以上によれば,本件センター所長が,平成31年4月19日~同年8月9 日に本件一時保護を継続したことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 3 争点3(本件面会制限は国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について⑴ 判断枠組み 児童の権利に関する条約9条3項は,締約国は,児童(18歳未満の全ての者)の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する旨規定し,親子分離がされている場合であっても,原則として,親子の面会の権利等を尊重することを締約国に求めている。そし て,児童虐待防止法12条は,児童虐待を受けた児童について同法33条1項又は同条2項の規定による一時保護が行われた場合等において,児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは,児童相談所長は,厚生労働省令で定めるところにより,当該児童虐待を行った保護者について,当該児童との面会及び当該児童との通信の全部又は一部 を制限することができる旨規定し,上記の児童の権利に関する条約9条3項が定める面会の権利の尊重についての例外に当たる場合を規定している。 他方で,児童福祉法13条4項は,児童福祉司は,児童相談所長の命を受けて,児童の保護その他児童の福祉に関する事項について,相談に応じ,専門的技術に基づいて必要な指導を行うなど児童の福祉増進に努める旨規定し, 児童相談所長の命を受けた児童福祉司による行政指導の権限について定めている。そして,上記の「必要な指導」には,一時保護を受けた児童とその保護者との面会制限も含まれると解される。そうすると,同 児童相談所長の命を受けた児童福祉司による行政指導の権限について定めている。そして,上記の「必要な指導」には,一時保護を受けた児童とその保護者との面会制限も含まれると解される。そうすると,同法33条に基づく一時保護中の面会の制限は,同法13条3項に基づく児童相談所長の命を受けた児童福祉司による行政指導として行われることも考えられる。 もっとも,行政指導としての面会制限は,行政手続法が定める行政指導に 関する規定に適合するものでなければならない。同法32条1項は,行政指導の一般原則として,行政指導の内容は飽くまで相手方の任意の協力によってのみその内容が実現されるものである旨規定するところ,これは,行政指導の内容が事実上の強制によって実現されてはならないことを確認的に規定したものと解される。そうすると,行政指導として面会制限は,保護者の任 意の協力によって実現されたにとどまらず,保護者への事実上の強制によって実現されるに至った場合には,児童相談所の人的・物的態勢によっては面会の実施が困難であるなどの特段の事情がない限り,上記の行政指導の一般原則のほか,児童の権利に関する条約の趣旨にも違反するものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法であると解される。 ⑵ 認定事実前記前提事実,上記1⑵の認定事実,上記2⑵の認定事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア O病院入院中の面会本件センターは,本件児童がO病院に入院中,PICUは常駐するスタ ッフが多く,何か問題があれば医師や看護師の助けを求められるため,原告と本件児童との面会を制限しなかった(乙18,証人A)。 イ O病院退院後本件児童は,平成31年1月4日,O病院を退院した。 本件センター所長は,平成3 や看護師の助けを求められるため,原告と本件児童との面会を制限しなかった(乙18,証人A)。 イ O病院退院後本件児童は,平成31年1月4日,O病院を退院した。 本件センター所長は,平成31年1月4日,本件児童について本件乳児 院に一時保護を委託した。 Aは,平成31年1月4日,原告と面接し,本件児童について委託一時保護をすること,本件児童との面会はさせられないと伝え,原告と本件児童との面会制限(本件面会制限)を開始した。また,本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示しなかった。(以上につき, 甲21,56,乙4,18,証人A,証人B) ウ平成31年1月7日の電話原告は,平成31年1月7日,Aに電話し,本件面会制限の法的根拠について尋ねた。これに対し,Aは,原告に対し,行政指導の一環である旨説明した。(甲59,証人A,原告本人)エ平成31年1月9日の面接 原告は,平成31年1月9日,M弁護士と共に,本件センターを訪れ,B及びAと面接をした。M弁護士は,原告と本件児童との面会制限の法的根拠は何か,面会制限をする必要性はあるかを尋ねるとともに,原告と本件児童との面会を求め,そのためのルール作りをしてもらいたい旨を要望した。これに対し,Aは,本件児童の受傷原因が特定されておらず,医師 (G医師)から1回の落下では頭部の2か所の骨折は生じないとの回答があったことから,現時点では,本件児童の安全が確保されておらず,安心できる材料が蓄積されるまで,面会はできない旨回答した。また,Aは,安心できる材料とは,本件児童が受傷した状況を原告が思い出し,事故であると確信でき,事故の再発防止策を講ずることである旨を回答した。原 告は,本件センターの職員に対し,更に聞 た。また,Aは,安心できる材料とは,本件児童が受傷した状況を原告が思い出し,事故であると確信でき,事故の再発防止策を講ずることである旨を回答した。原 告は,本件センターの職員に対し,更に聞き取りをしてもらいたい旨話した。(上記2⑵イ,甲58,59,乙18,証人A,証人B,原告本人)。 オ平成31年1月10日の電話原告は,平成31年1月10日,Aに電話し,本件児童が生後2か月になったので予防接種をさせたい旨を話した(甲59,乙18,証人A,原 告本人)。 カ平成31年1月21日の面接F及びAは,平成31年1月21日,本件センターにおいて,原告と面接した。原告は,Aに対し,本件児童の予防接種について相談をした。これに対し,Aは,原告に対し,予防接種のスケジュールを組んで提案する 旨回答した。(甲21,証人A) キ平成31年2月6日の対応会議C,B及びAは,平成31年2月6日,対応会議を行い,①一時保護の委託先の秘匿が保たれるなら,原告と本件児童との面会を認めること,②本件センターの職員が,本件児童を予防接種に連れて際に原告の同行を認める方針を決めた。Aは,同日頃,この方針を原告に伝えた(乙16,証 人A,証人B)。 ク平成31年2月14日の電話Aは,平成31年2月14日,引き続いての一時保護についての原告の意向を確認するため,原告に電話した。原告は,Aに対し,「やっぱり私としては帰していただきたい」,「例えば,実家で住むとか…環境は整えるこ とはできる」,「帰すことが不安だとおっしゃるのであれば,私も色々調べて,…この前母子寮に入れないのか,みたいなお話をしたじゃないですか」などと話した。(甲57,乙4,18,証人A)ケ平成31年2月27日の予防接種の が不安だとおっしゃるのであれば,私も色々調べて,…この前母子寮に入れないのか,みたいなお話をしたじゃないですか」などと話した。(甲57,乙4,18,証人A)ケ平成31年2月27日の予防接種の同行原告は,平成31年2月27日,本件児童の予防接種に同行した。原告 は,本件児童を抱っこしたり,授乳したりするなどすることができた(上記2⑵ウ,甲32,59,乙4,18,証人A,証人B,原告本人)。 コ平成31年3月20日の面会原告は,平成31年3月20日,本件センターにおいて,本件児童と面会をした。 原告は,平成31年3月20日以後,令和元年5月8日まで,予防接種や健康診断への同行も含めて,本件センター等において,1週間に1回又は2週間に1回の頻度で,本件児童と面会した。(以上につき,甲29,59,乙19,原告本人)サ本件乳児院の名称・住所等の開示 本件センターは,令和元年5月8日,本件乳児院内での原告と本件児童 との面会を認めることとし,原告に対し,本件児童の一時保護の委託先である本件乳児院の名称・住所等を開示した。そして,本件センターは,同年6月12日以降,原告と本件児童との毎日の面会を認めた。(乙21,証人F)⑶ 本件について 上記⑵の認定事実(イ,ウ)によれば,本件センターは,平成31年1月4日,本件児童を本件乳児院に委託一時保護したことに伴い,行政指導として,原告と本件児童との面会の全部を制限することとし,原告に本件乳児院の名称・住所等を開示せず,本件面会制限を開始したが,同日においては,原告はこれに応じない旨の意思を表明しなかったことが認められる。他方で, 上記⑵の認定事実(ウ~オ)によれば,原告は,同年1月7日には,Aに電話で,面会制限の法的根拠 したが,同日においては,原告はこれに応じない旨の意思を表明しなかったことが認められる。他方で, 上記⑵の認定事実(ウ~オ)によれば,原告は,同年1月7日には,Aに電話で,面会制限の法的根拠について尋ね,同月9日のB及びAとの面会においては,同席したM弁護士が,原告と本件児童との面会を求め,そのためのルール作りをしてもらいたい旨を要望したが,Aは現時点では面会をさせられない旨回答したことが認められる。また,上記⑵の認定事実(ク)によれ ば,その後も,原告は,同年2月14日,Aに電話で,「やっぱり私としては帰していただきたい」などと話し,本件一時保護に同意できない意思を明確に表明したことが認められる。そして,本件児童が一時保護され,本件児童の一時保護の委託先の名称・住所等が開示されていなかった原告としては,本件センターの職員から本件児童との面会の要望を断られると,それ以上に 採り得る手段はなかったといえる。 これらの事情に照らせば,原告は,平成31年1月9日のB及びAとの面会の時点において,同席したM弁護士を通して,本件児童との面会を求める意思を明確に表明したが,本件センターはこれを拒否し,本件面会制限を継続させたといえる。そうすると,本件面会制限は,遅くとも,同日の時点に おいて,事実上の強制により実現されるに至ったというべきであり,本件セ ンターの人的・物的態勢により面会の実施が困難であったなどの特段の事情があったということもできない。 そして,本件面会制限が事実上の強制により実現された状態は,平成31年2月27日まで解消されなかったというのであるから(上記⑵の認定事実ケ),同日まで継続したというべきである(同日以降の面会の一部制限が,事 実上の強制により実現されたと認めるに足りる証拠はない。 2月27日まで解消されなかったというのであるから(上記⑵の認定事実ケ),同日まで継続したというべきである(同日以降の面会の一部制限が,事 実上の強制により実現されたと認めるに足りる証拠はない。)。 したがって,平成31年1月9日~同年2月27日の本件面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 ⑷ 被告の主張についてア被告は,前記第2の4⑶の(被告の主張)欄のアのとおり,児童相談所 長は,児童福祉法33条の2第2項の監護のための必要な措置として,一時保護をする児童と保護者との面会を制限する権限がある旨主張する。 しかし,行政処分としての親子の面会制限は児童虐待防止法12条において規定されている以上,強制的に親子の面会制限を実現するためには,同条によらなければならないものと解されるから,児童福祉法33条の2 第2項にいう「監護のための必要な措置」は,強制によって実現できるものではないと解するのが相当である。そうすると,児童相談所長が児童と親権者との面会を制限することが同項にいう「監護のための必要な措置」に含まれると解し得るとしても,親権者の任意の協力によって実現されなければならないと解するのが相当である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イ被告は,前記第2の4⑶の(被告の主張)欄のイのとおり,本件面会制限は,本件児童がO病院を退院すれば本件児童を連れて帰ることができると期待していたであろう原告と本件センターとが対立し,本件センターによる調査,支援等に支障が生ずることを防ぐために必要であり,国家賠償 法1条1項の適用上違法であるとはいえない旨主張する。 しかし,上記⑴で説示したところによれば,行政処分としての面会制限は,その必要性の有無 ることを防ぐために必要であり,国家賠償 法1条1項の適用上違法であるとはいえない旨主張する。 しかし,上記⑴で説示したところによれば,行政処分としての面会制限は,その必要性の有無にかかわらず,事実上の強制によって実現されてはならないと解されるところ,本件では,上記⑵で認定・説示したとおり,平成31年1月9日の時点で,本件面会制限は事実上の強制により実現されるに至っており,本件センターの人的・物的態勢により面会の実施が困 難であったなどの特段の事情があったということはできないから,同日以降の本件面会制限は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ被告は,前記第2の4⑶の(被告の主張)欄のウのとおり,①本件セン ターは,平成31年2月6日,原告と本件児童との面会を一部認める方針を決定したから,同日~同月27日においては,面会及び予防接種の同行に向けた調整期間に当たり,面会制限がされていたわけではない,②仮に,同月6日~同月27日について面会制限に当たるとしても,予防接種の調整等に期間を要したためであるから,予防接種の同行という形での面会が 同日となったことには正当な理由がある旨主張する。 しかし,本件センターが平成31年2月6日に原告と本件児童との面会を一部認める方針を決定したからといって,同日から直ちに原告が本件児童との面会を自由に行うことができたわけではなく,面会制限が事実上強制された状態は同月27日まで継続していたというべきであるから,同月 6日~同月27日において面会制限がされていなかったとか,面会制限をすることについて正当な理由があったなどということはできない。 したがって,被告の上記主張は採用すること あるから,同月 6日~同月27日において面会制限がされていなかったとか,面会制限をすることについて正当な理由があったなどということはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 小括以上によれば,平成31年1月9日~同年2月27日の本件面会制限は, 国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである(なお,本件セン ターが本件児童の一時保護の委託先の名称・住所等を開示しなかったことは,面会制限の一態様というべきであって,同項の適用上違法な同日以降の本件面会制限による損害額の算定において考慮されるべき事情である。)。 4 争点4(損害の発生とその数額)について原告は,平成31年4月19日以降の違法な一時保護の継続によって,令和 元年8月9日に一時保護が解除されるまでの約3か月半にわたって,違法な親子分離の状態を余儀なくされ,また,平成31年1月9日以降の一時保護の委託先の非開示を伴う違法な面会制限によって,同年2月27日に予防接種に同行するまで,約1か月半の間,親子の交流の機会すら絶たれた。これにより,原告は,本来であれば得られたはずの母子の愛着形成の機会を失った。また, 本件児童は生後間もない乳児であり(本件児童は同年1月の段階で生後約2か月であった。),原告にとっては本来であれば本件児童と共に過ごしながら本件児童の毎日の成長を見守るというかけがえのない時間が失われてしまった。このことは,その性質上,事後的な一時保護の解除や面会制限の解消によって決して回復されるものではない。これらの事情に加え,本件に現れた一切の事情 を考慮すれば,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,違法な一時保護の継続につき70万円,違法な面会制限につき30万円が相当である。 5 文書提出命令 これらの事情に加え,本件に現れた一切の事情 を考慮すれば,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,違法な一時保護の継続につき70万円,違法な面会制限につき30万円が相当である。 5 文書提出命令申立て(大阪地方裁判所令和2年(行ク)第80号事件)について原告の上記申立ては,証拠調べの必要性を欠くから,これを却下することと する。 6 まとめ以上によれば,①本件一時保護の開始は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないが(上記1),平成31年4月19日~同年8月9日の本件一時保護の継続は,一体として国家賠償法1条1項の適用上違法であり(上記 2),平成31年1月9日~同年2月27日の本件面会制限は,一体として同項 の適用上違法であるというべきであり(上記3),原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,違法な一時保護の継続につき70万円,違法な面会制限につき30万円が相当である(上記4)。 そして,被告の原告に対する損害賠償債務は合計100万円であり,被告は,このうち70万円(違法な一時保護の継続に係る慰謝料)については,令和元 年8月9日から,このうち30万円(違法な面会制限に係る慰謝料)については,平成31年2月27日から,それぞれ遅滞の責任を負うというべきである。 その上で,原告は,被告に対して500万円及びこれに対する平成31年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めているから,原告の請求は,被告に対して100万円及びうち30万円に対する平成31年 4月12日から,うち70万円に対する令和元年8月9日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結論よって,原告の請求は 円に対する令和元年8月9日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結論 よって,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官新宮智之 裁判官山田慎悟

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