平成25年4月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(ワ)第38602号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年3月1日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成21年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,無線通信システムに関する特許権を有する原告が,移動電話通信サービスの提供を行う被告に対し,被告の通信システムは原告の特許発明の技術的範囲に属すると主張して,民法709条,特許法102条3項に基づき,損害賠償として10億円及びこれに対する平成21年1月16日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,移動電話通信サービスに係る技術の活用を業とする会社(ルクセンブルグ法人)である。 イ被告は,移動電話通信サービスの提供等を業とする株式会社である。〔弁 論の全趣旨〕(2) 原告の特許権原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許の特許公報を末尾に添付する。)。 特許番号特許第2588498号発明の名称 「無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法」出願日平成4年7月3日優先日平成3年(1991年)7月9日登録日平成8年12月5日 〔甲1,2,弁論の全趣旨〕 無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法」出願日平成4年7月3日優先日平成3年(1991年)7月9日登録日平成8年12月5日 〔甲1,2,弁論の全趣旨〕(3) 本件特許権の出願経過等アアメリカ合衆国所在のエイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション(以下「AT&T」という。)は,平成4年7月3日,発明の名称を「無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法」とする特許出願(特願平4-198953号。パリ条約による優先日:平成3年〔1991年〕7月9日,米国)をした(甲1,乙2。以下,かかる特許出願を「本件出願」といい,本件出願に係る明細書〔乙2〕及び図面を「本件当初明細書等」という。)。 AT&Tは,平成8年7月31日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)をした(乙4)。 AT&Tは,同年12月5日,本件出願について,設定の登録(特許第2588498号。請求項の数26)を受けた(本件特許権。甲1,2。 以下,この特許を「本件特許」という。)。 イ AT&Tは,ルーセントテクノロジーズインコーポレイテッド(以下「ルーセント・テクノロジーズ」という。)に対し,本件特許権を譲渡し,その後,本件特許権は,アメリカ合衆国所在のアバヤテクノロジーエル エルシー(以下「アバヤ・テクノロジー」という。),英国領ケイマン諸島のウインドワードコーポレイション(以下「ウインドワード」という。),英国領チャネル諸島ガーンジー島所在のハイポイント(ガーンジー)リミテッド(以下「ガーンジー」という。),そして,原告に対し,順次譲渡された。〔甲1,弁論の全趣旨〕ウ原告は,平成21年1月7日,本件特許権のうち特許請求の範囲請求項11及び24について,訂正審判を請求し,特許庁は ジー」という。),そして,原告に対し,順次譲渡された。〔甲1,弁論の全趣旨〕ウ原告は,平成21年1月7日,本件特許権のうち特許請求の範囲請求項11及び24について,訂正審判を請求し,特許庁は,同年3月18日,上記訂正を認める旨の審決をした(以下「本件訂正」という。甲12。なお,本件補正及び本件訂正後の本件特許に係る明細書〔甲2,12,乙4〕及び図面を「本件明細書等」という。)。 (4) 本件発明ア本件特許に係る本件補正前の特許請求の範囲請求項6及び11の記載は次のとおりである(以下,それぞれ「本件当初発明1」,「本件当初発明2」といい,また,これらを総称して「本件当初発明」という。なお,文中の「/」は,原文における改行箇所を示す。)。 「【請求項6】サービス地域に位置する無線電話に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと,/前記の各セルに少なくとも1つは接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと,/前記複数のリンクに接続されていて,前記セルとの間で前記リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの交換システムと/を備え;/前記の各セルが,/無線電話から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線電話に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第1の手段を備え;/ さらに各交換システムが,/セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多 第1の手段を備え;/ さらに各交換システムが,/セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第2の手段を備えた/ことを特徴とする無線電話通信システム。」「【請求項11】時として複数のセルが,無線電話呼のサービスを1つの共通の移動無線電話に同時に与えることがあり;さらに交換システムの前記第2の手段が,/前記第3の手段が,前記の1つの移動無線電話に向かう出接続呼トラヒックの受信に応じて,前記セルの出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶパケットを,前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々に送り,また前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々からその呼の入トラヒックを運ぶパケットを受信し,このとき異なるセルから受信した各パケットにはその入トラヒックのコピーが入っていて,さらに送信先に送るために前記の入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する/ことを特徴とする請求項6記載のシステム。」イ本件特許に係る本件補正後の特許請求の範囲請求項6及び本件訂正後の特許請求の範囲請求項11の記載は,次のとおりである(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明2」といい,また,これらを総称して「本件発明」という。なお,文中の「/」は原文における改行箇所を,請求項6の下線部は補正箇所を,請求項11の下線部は訂正箇所をそれぞれ示す。)。 「 」,「本件発明2」といい,また,これらを総称して「本件発明」という。なお,文中の「/」は原文における改行箇所を,請求項6の下線部は補正箇所を,請求項11の下線部は訂正箇所をそれぞれ示す。)。 「【請求項6】サービス地域に位置する無線電話に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと,/前記の各セルに少なくとも1つは 接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと,/前記複数のリンクに接続されていて,前記セルとの間で前記リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの交換システムとを備え,/各セルが,/無線電話から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線電話に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第1の手段を備え,/さらに各交換システムが,/セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第2の手段を備え,当該第2の手段は,/当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換 の手段は,/当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段と,/入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段とからなることを特徴とする無線電話通信システム。」「【請求項11】時として複数のセルが,無線電話呼のサービスを1つの共通の移動無線電話に同時に与えることがあり;さらに交換システムの前記第2の手段が,前記の1つの移動無線電話に向かう出接続呼トラヒッ クの受信に応じて,前記呼の出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶパケットを,前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々に送り,また前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々からその呼の入トラヒックを運ぶパケットを受信し,このとき異なるセルから受信した各パケットにはその入トラヒックのコピーが入っていて,さらに送信先に送るために前記の入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する第3の手段を備えたことを特徴とする請求項6記載のシステム。」(5) 本件発明の構成要件ア本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。)。 A サービス地域に位置する無線電話に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと,B 前記の各セルに少なくとも1つは接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと,C 前記複数のリンクに接続されていて,前記 線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと,B 前記の各セルに少なくとも1つは接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと,C 前記複数のリンクに接続されていて,前記セルとの間で前記リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの交換システムとを備え,D 各セルが,無線電話から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線電話に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第1の手段を備え,E さらに各交換システムが, セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第2の手段を備え,F 当該第2の手段は,F1 当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段と,F2 入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換シス ムが送信する時刻を制御する手段と,F2 入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段とからなるG ことを特徴とする無線電話通信システム。 イ本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件I」などという。)。 I 時として複数のセルが,無線電話呼のサービスを1つの共通の移動無線電話に同時に与えることがあり;J-1 さらに交換システムの前記第2の手段が,J-2 前記の1つの移動無線電話に向かう出接続呼トラヒックの受信に応じて,前記セルの出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶパケットを,前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々に送り, J-3 また前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々からその呼の入トラヒックを運ぶパケットを受信し,このとき異なるセルから受信した各パケットにはその入トラヒックのコピーが入っていて,さらに送信先に送るために前記の入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する前記第3の手段を備えたことを特徴とするK 請求項6記載のシステム。 (6) 被告システム被告は,平成14年4月より,3G(第3世代)の携帯電話サービス「CDMA2000 1x」を開始した(以下,この携帯電話サービスに用いられる被告の移動電話通信システムを「被告システム」という。)。 ア被告システムの全体的構成被告システムは,概要,①BTS(BaseTransceiverStation,無線基地局),②BSC(BaseStationController,基地局制御 ア被告システムの全体的構成被告システムは,概要,①BTS(BaseTransceiverStation,無線基地局),②BSC(BaseStationController,基地局制御装置),③MSC(MobileSwitchingCenter,移動交換局)の3つの機器から成るものであり,BTSは,ユーザの使用するMS(MobileStation,移動機,携帯端末)と,無線通信方式により接続され,MSCは,PSTN(PublicSwitchedTelephoneNetwork,公衆交換電話網,公衆回線網)と,有線方式により接続される。 これらの機器の接続を図示すると,次のとおりである。 イ各機器の接続状況(ア) MSとBTS間の接続BTSは,そのサービスエリア内にある複数のMSに対して無線接続され,両者間ではCDMA2000に準拠した無線通信方式により音声信号の送受信が行われる。 MSとBTS間の音声信号の送受信は,20ミリ秒(0.02秒,1/50秒)間隔で送信されるフレーム信号を送受信することによって行われる。 (イ) BTSとBSC間の接続BSCは,複数のBTSと接続され,両者間は,パケットを送受信することによって音声信号の授受を行う。 同通信は,CDMA2000において標準化されているAbisインターフェース規格には準拠していない。 (ウ) BSCとMSC間の接続MSCは,複数のBSCと接続されており,両者間ではパルス符号変調(PCM)によりデジタル化された信号(PCM信号)が,パケット化されることなく送受信される。 (エ) MSCとPSTN間の接続BTSBTSBTSBSCBSCMSCMSMS交換システムセルBTSPSTN M信号)が,パケット化されることなく送受信される。 (エ) MSCとPSTN間の接続BTSBTSBTSBSCBSCMSCMSMS交換システムセルBTSPSTN MSCとPSTN間の音声信号の送受信は,PCM信号によって行われる。PCM信号は,PSTNのクロックタイミングに合わせて,125μ秒(0.000125秒,1/8000秒)毎に送信される。 ウ被告システムにおけるパケットの処理手順被告システムのうち,交換システム(特にBSC)のより詳細な内部構造を図示すると,次のとおりとなる(以下,同図面を「全体図」という。)。 (ア) 被告システムにおける入トラヒックのパケット処理の手順入方向(携帯電話からPSTNへの方向。逆方向ともいう。)において,携帯電話からの電波送信は,無線インターフェースを介してBTSによって受信される。これらの電波送信は,処理,パケット化され,T1回線を通じてAggregationPoint に送信される。B点のAggregationPoint から,パケットはC点のIPスイッチに送信される。IPスイッチは,交換システム内の全てのVPUおよびSDUに接続されており, パケットを適切なSDUおよびVPU基板に送信する。 入方向において,SDUは音声パケットを選択し,C’点のIPスイッチに返送する。次いで,IPスイッチは,復号化のために音声パケットをE点のVPUに送信する。VPUは,音声パケットを復号化し,音声トラヒックをPCMサンプルの形式にフォーマットし,PCMサンプルを1個ずつT1タイムスロットに入れ,MSCに連続的に送信する。 次いで,MSCは,これらのPCMサンプルを同様の方法でPSTNに送信する。要約すると,音声パケットは,入方向において,以下の サンプルを1個ずつT1タイムスロットに入れ,MSCに連続的に送信する。 次いで,MSCは,これらのPCMサンプルを同様の方法でPSTNに送信する。要約すると,音声パケットは,入方向において,以下の経路をたどる。 BTS → AggregationPoint → IP スイッチ → SDU → IP スイッチ→ VPU → MSC→PSTN(イ) 被告システムにおける出トラヒックのパケット処理の手順出方向(PSTNから携帯電話への方向。順方向ともいう。)で,G’点でMSCはPSTNからPCMサンプルを受信し,VPUに送信する。VPUは,PCMサンプルを符号化し,音声パケットの形式にフォーマットし,音声パケットをC’’点のIPスイッチに送信する。次いで,IPスイッチは,ハンドオフ中に音声パケットをさらに処理・複製するため,これらのパケットをC’点でSDUに送信する。SDUは,D点で,処理されたパケットをIPスイッチに返送し,IPスイッチは,パケットをB’点のAggregationPoint に送信する。AggregationPoint は,B点で,パケットを正しいBTSに送信し,BTSは,最終的に無線インターフェースを介して音声トラヒックを送り出す。要約すると,音声パケットは,出方向において以下の経路をたどる。 PSTN → MSC → VPU → IP スイッチ → SDU → IP スイッチ → AggregationPoint → BTS 〔丁1,弁論の全趣旨〕エオフィス・ワイズ設備について (ア) 音声通信に関する被告システムは,「OFFICEWISE」との名称で利用者に提供されるサービスにおいて使用される設備(以下,同サービスを「オフィス・ワイズ」といい,同サービスにおいて使用される設備 声通信に関する被告システムは,「OFFICEWISE」との名称で利用者に提供されるサービスにおいて使用される設備(以下,同サービスを「オフィス・ワイズ」といい,同サービスにおいて使用される設備を「オフィス・ワイズ設備」という。)を含む。同設備は,被告補助参加人株式会社日立製作所(以下「補助参加人日立製作所」という。)が納入した。 (イ) オフィス・ワイズとは,被告と契約した利用者(法人)のオフィスビルなど特定のエリア内で,携帯電話によるエリア内通信を低額で提供するサービスである。 (ウ) オフィス・ワイズ設備は,各契約利用者の構内にそれぞれ設置される設備(CON)と,被告構内に設置される設備(CEN)とから成るものであり,両設備はWAN(WideAreaNetwork)と呼ばれる広域通信網を介して接続される。 上記CONには,エリア内に位置する携帯電話への送受信を担う基地局として機能する装置及びそれらと通信的に接続され基地局制御装置として機能する装置が含まれる。〔丙2,弁論の全趣旨〕(7) 構成要件の充足被告システムは,本件発明1の構成要件F1,F2,本件発明2の構成要件J3を除くその余の構成要件を充足する。〔弁論の全趣旨〕。 3 争点(1) 被告システムは本件発明の技術的範囲に属するか(2) 本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるかア無効理由1(要旨変更による出願日繰下げを前提とする新規性・進歩性の欠如)イ無効理由2(サポート要件違反) ウ無効理由3(実施可能要件違反1)エ無効理由4(実施可能要件違反2)オ無効理由5(乙12を主引例とする進歩性欠如)カ無効理由6(乙26の2を主引例とする進歩性欠如)(3) オフィス・ 3(実施可能要件違反1)エ無効理由4(実施可能要件違反2)オ無効理由5(乙12を主引例とする進歩性欠如)カ無効理由6(乙26の2を主引例とする進歩性欠如)(3) オフィス・ワイズ設備に対する権利行使の可否(4) 損害の発生及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告システムは本件発明の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1) 本件発明1-構成要件F1,F2の充足性ア本件発明1の技術的意義本件発明1は,①交換システムからセルに送信された出トラヒックを運ぶパケットの,セルにおける受信時刻が非決定論的(不規則で予測できない)に変動するところ,セルからの規則的な送信時刻の前の所定の時間枠(所定のウィンドウ時間)に,セルでパケットが受信されるよう,交換システムからの送信時刻を制御する手段(構成要件F1),及び,②セルから交換システムに送信された入トラヒックを運ぶパケットの,交換システムにおける受信時刻が非決定論的に変動するところ,交換システムからの規則的な送信時刻の前の所定の時間枠(所定のウィンドウ時間)に,交換システムでパケットが受信されるよう,交換システムからの送信時刻を制御する手段(構成要件F2)を有する交換システムを含む無線電話通信システムを提供したものである。 本件発明1は,構成要件D,Eに,セルと交換システムとの間でパケットが「統計的に多重化された形式で」送受信されると規定されていることからも明らかなように,セルないし交換システムでのパケットの受信時刻が非決定論的に変動することを前提としている。これに対して,セルから 無線電話,及び交換システムからPSTNに向けてのパケットないしトラヒックの送信は,規則的(例えば20ミリ秒毎)である(第50欄20行~2 することを前提としている。これに対して,セルから 無線電話,及び交換システムからPSTNに向けてのパケットないしトラヒックの送信は,規則的(例えば20ミリ秒毎)である(第50欄20行~24行,第41欄16行~23行。なお,PCMサンプルの送信間隔も,125μ秒毎で規則的である。)。しかしながら,規則的に送信すべきパケットが不規則に受信されると,例えば,パケットの受信が遅すぎて,パケットの送信予定時刻に送信することができなかったり,パケットの受信が早すぎて,送信前にパケットを保管する場所であるバッファがあふれてしまったり,ということが起こり得る。 本件発明1は,このようなシステムの問題点を解決するために,出トラヒック(構成要件F1),入トラヒック(構成要件F2)ともに,セルからの,あるいは交換システムからの送信時刻の一定時間前にパケットの受信が期待される時間の範囲として「所定のウィンドウ時間」を設け,当該「所定のウィンドウ時間」内にパケットが受信されるよう,交換システムが当該送信時刻を双方向で制御する構成を採用したものである。かかる技術思想は,クレームの構成要件F1及びF2に端的に示されており,また呼の確立時,呼の確立後,及びソフトハンドオフ時にわたる詳細な実施例が,本件明細書等の段落【0080】ないし【0105】,及び【図19】ないし【図22】に記載されている。 イ構成要件の解釈(ア) 「所定のウィンドウ時間」a 「ウィンドウ時間」の意味本件発明1において「ウィンドウ時間」とは,「パケットの受信が期待される時間の範囲」を意味する。このことは,「所定のウィンドウ時間内に・・・(パケットが)受信されるように」とのクレームの文脈,本件明細書等中の「時間枠1302」(第50欄37行,【図19】,【図21】)や「時間 」を意味する。このことは,「所定のウィンドウ時間内に・・・(パケットが)受信されるように」とのクレームの文脈,本件明細書等中の「時間枠1302」(第50欄37行,【図19】,【図21】)や「時間枠1404」(第54欄5行~6行, 【図20】,【図22】)の用いられ方,及びこれらの時間枠がパケットを「受信することが望ましい(好ましい)」時間(第50欄38行,第54欄6行~7行)とされていることからして明らかである。 また,本件発明1の「ウィンドウ時間」は,バッファの存在を前提とする。なぜなら,本件発明1の「ウィンドウ時間」は,受信後にパケット(ないしトラヒック)の送信が行えるよう,送信時刻の前に設定されるものであり,仮にウィンドウ時間内の早い時点でパケットが受信されれば,パケット(ないしトラヒック)の送信時刻まで,システムは当該パケットを保持しておかねばならず,当該保持には,バッファが必要だからである。 入トラヒックの制御に関する本件明細書等に記載された実施例においても,バッファ603を有するプロセッサ602において「ウィンドウ時間」が設定され,プロセッサ602からPSTNに向けての送信時刻まで,バッファ603でパケットが保管されている(本件明細書等の段落【0066】,【0067】及び【図11】参照)。【図11】のフローチャートに記載のとおり,プロセッサ602は,LANバス・インタフェース601のバッファ620からパケットを受信(ステップ902)すると,構成要件F2の制御に必要なクロック調整(ステップ912【図18】)を行った上で,ボコーダへの送信時刻まで,トラヒック・フレームをバッファ603に格納する(ステップ922,944)。ここでバッファ603がなければ,プロセッサ602は,早期に受信して【図11】の処理を終えた で,ボコーダへの送信時刻まで,トラヒック・フレームをバッファ603に格納する(ステップ922,944)。ここでバッファ603がなければ,プロセッサ602は,早期に受信して【図11】の処理を終えたパケットをためる場所がなく,処理後直ちに送信することを余儀なくされるから,パケットを送信予定時刻に送信することも,送信時刻を制御することも不可能となる。 本件発明1の「ウィンドウ時間」が幅のある時間であって,パケッ トを送信時刻よりも一定程度早期に受信することを予定した時間枠である以上,「ウィンドウ時間」は,バッファが存在しなければ機能しないものである。このことは,上記のとおり,技術常識から導き出すことができる。 b 「所定の」の意味「所定の」とは「予め定まっていること」をいう。「ウィンドウ時間」が「所定の」ものであるとは,具体的には,パケットないしトラヒックの送信時刻との時間的関係及び時間幅(要するに,始点と終点)が予め特定されていることをいう。 「所定の」という文言は,「1個の」という意味まで含むものではないから,複数の「所定の」ウィンドウ時間も存在し得る。ただし,本件発明1の制御に当たり,複数の「ウィンドウ時間」のどれを任意に選んでもよいということでは,パケットの受信が期待される時間の範囲としての「ウィンドウ時間」の意味がなくなってしまうため,複数の「ウィンドウ時間」がある場合には,どのような場合に,いずれのウィンドウ時間を用いるかが予め決まっていること(制御のフローチャートに沿っていけば,一義的にどのウィンドウ時間を用い,次のパケットの送信時刻を調整するかが決まること)も必要である。 (イ) 「受信」「送信する時刻」a 被告解釈の誤り構成要件F2の「受信」並びに構成要件F1及びF2の「送信する時刻」につい 次のパケットの送信時刻を調整するかが決まること)も必要である。 (イ) 「受信」「送信する時刻」a 被告解釈の誤り構成要件F2の「受信」並びに構成要件F1及びF2の「送信する時刻」について,被告は,後記のとおり,専らクレームの「で」,「から」,「が」との助詞及びクレーム用語の統一性を理由に,これらが交換システムの入口のインターフェースでの受信,交換システムの出口のインターフェースでの送信時刻であると解釈すべきである旨主張する。 しかし,かかる解釈は誤りである。 第一に,特許発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲の記載に基づいて」(特許法70条1項)定めるべきこととされているところ,「特許請求の範囲の記載」には,クレーム全体の記載や文脈も当然含まれるから,クレームのほんの一部分にすぎない「で」,「から」,「が」といった助詞が,どんな意味を有するかということから発明の技術的範囲を決することはできない。また,クレームの用語の意義を解釈するにあたっては,「明細書の記載及び図面を考慮」(同条2項)するべきであるから,明細書の記載や,そこに現れた技術思想を一切無視したクレーム解釈を行うことは許されない。クレーム解釈は,明細書の記載や図面,及びそこに現れた技術思想を考慮し,クレーム全体の記載に基づいて行うべきである。 第二に,「交換システムで受信」「交換システムが(から)送信」と言った場合には,実際には交換システムの受信機能を有する部分,及び交換システムの送信機能を有する部分が受信・送信を行うものであるが,そのような場合に「交換システム」との用語を用いてはならないとか,用いるとクレーム用語の統一性が図れなくなるということもない。「交換システムの一部が有する機能」は,すなわち,「交換システムが有する機能」であり,「交換シス ステム」との用語を用いてはならないとか,用いるとクレーム用語の統一性が図れなくなるということもない。「交換システムの一部が有する機能」は,すなわち,「交換システムが有する機能」であり,「交換システムの外部から内部手段での受信」は「交換システムでの受信」であって,「交換システムの内部手段から外部への送信」も「交換システムからの送信」である。 被告はこれに対し,「交換システム内の一構成要素」から外部へ送信する時刻は,「交換システムから送信する時刻」とはいえないと主張する。しかし,被告の主張は喩えていうならば,「人間」から声が出る瞬間と言った場合には,「口」から外へ声が出る瞬間を言うのであって,「声帯」から声が出る瞬間は含まれない,というようなもの である。声が実質的には「声帯」から出るものであり,かつ「声帯」や「口」から声が出るのはいずれも「人間」から声が出ているということに間違いはないということを考えれば,被告の主張がいかに不合理なものであるかは,明らかである。 b 構成要件F2の「受信」の正しい解釈構成要件F2の「受信」という文言は,その文言だけを見ると,交換システムの「どの部分」での受信かについては限定がない。もっとも,交換システム内のボコーダにおいてパケットはPCMサンプルに変換され,ボコーダを通過した後に受信されるものは「パケット」ではなくなってしまうため,構成要件F2の「パケットが・・・受信」は,パケットが受信される,ボコーダ以前の場所での受信である。 またクレームには,「所定のウィンドウ時間内に・・・受信されるように」とあることから,「受信」とは,「ウィンドウ時間」と比較すべき受信時刻が(タイム・スタンプなどで)測定される場所(なお,後述する本件明細書等の実施例のように,タイム・スタンプが付される場所と うに」とあることから,「受信」とは,「ウィンドウ時間」と比較すべき受信時刻が(タイム・スタンプなどで)測定される場所(なお,後述する本件明細書等の実施例のように,タイム・スタンプが付される場所とは限らない)での受信である。受信時刻と比較される「ウィンドウ時間」は前述のとおり,バッファの存在を前提とするものであるから,「受信」の後には,バッファが存在している必要がある。 c 構成要件F1及びF2の「送信する時刻」の正しい解釈構成要件F1及びF2の「送信する時刻」という文言も,その文言だけを見ると,交換システムの「どの部分」から送信する時刻であるのかについては限定がない。構成要件F2の「送信される時刻」の直前にある「から」という助詞も,「起点となる場所・時を示す」(広辞苑第六版・甲44)ものにすぎず,当該助詞からは,「交換システムから送信」が交換システムを起点とした送信であるということが理解できても,それ以上に,交換システムの具体的に「どの部分」を起 点とした送信であるかを導くことはできない。 もっとも,クレームには,「所定のウィンドウ時間内に・・受信されるように・・・送信する時刻を制御する」とあることから,「送信する時刻」とは,「それを制御することにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」でなければならないことが明らかである。 「それを制御することにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」とは,具体的には,構成要件F1に関して言えば,セルにおけるパケットの受信時刻に関する情報に基づいて制御される送信時刻である。本件明細書等の実施例では,「ウィンドウ時間」が設定されている「チャネル要素245」に対応するチャネル・コントローラ244が,交換シ ケットの受信時刻に関する情報に基づいて制御される送信時刻である。本件明細書等の実施例では,「ウィンドウ時間」が設定されている「チャネル要素245」に対応するチャネル・コントローラ244が,交換システムの「SPU264」にパケットの送信時間の調整の必要性を示しており,これに基づいて制御される「SPU264」からの送信時刻がこれに当たる(第51欄3行~13行及び段落【0084】)。 また,構成要件F2に関して言えば,例えば,ウィンドウ時間と一定の時間的関係になく,制御されてもウィンドウ時間が連動して動く関係にないような交換システムの送信時刻は,構成要件F2の「送信する時刻」ではない。本件明細書等の実施例では,交換システムの「プロセッサ602」の送信時刻の少し前に「所定のウィンドウ時間」が設定され,当該「所定のウィンドウ時間」が「プロセッサ602」の送信時刻に連動して動くことにより,「所定のウィンドウ時間内にパケットが受信されるように」,当該送信時刻の制御が可能となっている(段落【0090】) 。 なお,上記のような送信時刻制御と受信との関係性が存在する限り,セルの受信場所と交換システムの送信場所(構成要件F1),及びセ ルの送信場所と交換システムの受信場所(構成要件F2)との間に,当該受信場所・送信場所のユニットとは異なるユニットが存在していてもよい。そのようなユニットが存在していれば,そこで生じる遅延変動もふまえて制御がなされるだけである。本件明細書等の実施例でも,セルとSPU264の間には,【図4】の「セル相互接続モジュール(CIM)」が存在している。 d 構成要件F2の「送信する時刻」はボコーダの前の送信場所での送信時刻であること構成要件F2の「送信する時刻」を,「交換システムの出口のインターフェースから送信 (CIM)」が存在している。 d 構成要件F2の「送信する時刻」はボコーダの前の送信場所での送信時刻であること構成要件F2の「送信する時刻」を,「交換システムの出口のインターフェースから送信する時刻」と形式的に解釈することは,技術常識からしても不合理である。なぜなら,PSTNに接続されている交換システム(これが本件発明の「交換システム」に該当することは,クレームに「ボコーダ」との記載がなくとも,当業者にとって明らかである。)にあっては,ボコーダへは,原則として20ミリ秒毎にパケットないしフレームが規則的に供給される(PSTNに125μ秒毎にPCMサンプルを供給することが求められていることによる。)ところ,ボコーダより前に送信時刻の制御がなされなければ,パケットの遅れにより,ボコーダに音声データが供給されない事態が生じ得るからである。したがって,かかる技術常識を理解している当業者が,制御対象である「送信する時刻」を,「交換システムの出口のインターフェースから送信する時刻」と形式的に解釈することはあり得ない。 (ウ) 「受信されるように」(調整量)a 調整量は,パケットがウィンドウ時間内に受信されるだけの量である必要はないこと本件発明1の「ウィンドウ時間」は,パケットの受信が期待される時間の範囲であるところ,本件発明1においては,調整を行った結果, 次のパケットが必ず「ウィンドウ時間」内に受信されることまでは求められていない。「ウィンドウ時間」内に受信されるように,繰り返し調整を行うということでもよく,1回当たりの調整量に限定はない。 クレーム上は,「受信されるように」との文言があるが,これは制御の「目的」を規定したものであり,クレームを充足するためには,かかる目的に向けた制御を行っていることが必要であるとして に限定はない。 クレーム上は,「受信されるように」との文言があるが,これは制御の「目的」を規定したものであり,クレームを充足するためには,かかる目的に向けた制御を行っていることが必要であるとしても,必ずしも1回の調整で即,目的が達成されることまでを要求するものではない。 また,本件明細書等の実施例に開示された制御の態様(段落【0083】,【0093】,【0102】等)からしても,調整量は,パケットがウィンドウ時間内に受信されるだけの量でなければならないとは解されない。 b 調整量を決定する際の基準となった受信パケットのBTSと,制御後の送信時刻に送信するパケットのBTSとが一致する必要はないこと被告は,後記のとおり,ソフトハンドオフ時に複数のパケットが受信される場合に,調整量を決定する際の基準となった受信パケットのBTSと,実際に送信される入トラヒックのBTSが一致する必要がある旨主張する。 しかし,ソフトハンドオフの際には,同一内容のパケットを複数受信するのに対し,送信時刻と,その送信時刻に送信する入トラヒックはそれぞれ一つだけである。そして,複数ある受信パケットのうち「最も遅延しているパケット」の受信時刻を基準として送信時刻の調整を行うこととした場合,「ウィンドウ時間内に当該パケットが受信されるように送信時刻が調整」されていれば,その時点で,構成要件F2の充足である。すなわち,「最も遅延しているパケット」についてみ れば,そのパケットの「送信時刻」は,当該パケットがウィンドウ時間内に「受信されるように」制御されていることに疑問の余地はない。 その上でさらに,調整後の送信時刻に,最も遅延していたパケットのセルに対応する入トラヒックが送信されるかどうかは,構成要件F2の規定外である。 被告の主張は,「送信時刻 ることに疑問の余地はない。 その上でさらに,調整後の送信時刻に,最も遅延していたパケットのセルに対応する入トラヒックが送信されるかどうかは,構成要件F2の規定外である。 被告の主張は,「送信時刻を制御」するという構成要件に,さらに「送信時刻の制御後,送信時刻の調整を行う基礎となったパケットのセルに対応する入トラヒックを送信する」という構成要件を付加するものであって,不当である。 (エ) 「制御」a 「制御」とは,「機械や設備が目的通り作動するように操作すること」である(広辞苑第五版)。本件発明でいえば,「ウィンドウ時間内に受信されるように」という部分が,この制御の「目的」に該当する。 しかし,「制御」という用語自体は,「制御の頻度」について限定するものではない。したがって,本件発明1の「制御」がクロック毎になされなければならないという理由はない。 また,「制御」という用語は,操作を行う必要があるか否かの「判断」を行うことも含むが,いかなる判断基準に基づいて,「ウィンドウ時間内に受信されるような」作動のための操作をシステムが行うべきかについて,限定するものではない。 よって,「受信されるように・・・制御」という文言から,「調整の要否の判断基準」や「調整量」の限定は導かれない。 b また,被告は「制御」の内容を実施例に限定すべきと主張するが,そのような理由はない。 ウ構成要件F1の充足性 (ア) 被告システムの構成被告システムの交換システムの一部であるBSC(BaseStationController)の構造は,下図のとおりである。 SDU(SelectionandDistributionUnit)VPU(VocoderProcessingUnit)被告システ ,下図のとおりである。 SDU(SelectionandDistributionUnit)VPU(VocoderProcessingUnit)被告システムでは,セルにおいて,無線電話への送信予定時刻よりも,交換システムから送信されたパケットの受信時刻が早かったか,遅かったかを測定し,当該送信予定時刻と受信時刻との差をPATE(PacketArrivalTimeError)値として,交換システムにフィードバックしている。そして,交換システムのSDUは,PATE値に基づき,セルへのパケットの送信時刻を早めたり,遅くしたりする制御を行っている。 また,被告システムのセルには,以下の二つの「所定のウィンドウ時間」が存在する。 ① 平均PATE差分値(八つの連続するパケットのPATE値の差の平均値)が5ミリ秒未満の場合(パケットの到達時刻の変動が小さいとき)には,セルのパケット送信予定時刻の6ミリ秒前をゼロとして,その±5ミリ秒の範囲② 平均PATE差分値が5ミリ秒以上の場合(パケットの到達時刻の変動が大きいとき)には,セルのパケット送信予定時刻の14ミANANANANANANANAN入トラヒックトラヒックトラヒックトラヒックMSCMSCMSCMSCを介してしてしてしてPSTNPSTNPSTNPSTNと接続接続接続接続セルとセルとセルとセルと接続接続接続接続 リ秒前をゼロとして,その±8ミリ秒の範囲そして,被告システムでは,1フレーム毎にカウントが1つずつ減るタイマーがあり,カウントが0の時に,① 平均PATE差分値が5ミリ秒未満の場合(パケットの到達時刻の変動が小さいとき),調整平均PATE値(八つの連続す は,1フレーム毎にカウントが1つずつ減るタイマーがあり,カウントが0の時に,① 平均PATE差分値が5ミリ秒未満の場合(パケットの到達時刻の変動が小さいとき),調整平均PATE値(八つの連続するパケットのPATE値の平均値に6ミリ秒を足したもの)が上記±5ミリ秒の範囲であったときは,SDUはパケットの送信時刻を調整しない。他方,調整平均PATE値が上記±5ミリ秒の範囲外であったときは,SDUにおいて,当該調整平均PATE値分,ミリ秒単位で,パケットの送信時刻を早めたり,遅くしたりする制御を行い,② 平均PATE差分値が5ミリ秒以上の場合(パケットの到達時刻の変動が大きいとき)には,調整平均PATE値(八つの連続するパケットのPATE値の平均値に14ミリ秒を足したもの)が上記±8ミリ秒の範囲であったときは,SDUはパケットの送信時刻を調整しない。他方,調整平均PATE値が上記±8ミリ秒の範囲外であったときは,SDUにおいて,当該調整平均PATE値分,ミリ秒単位で,パケットの送信時刻を早めたり,遅くしたりする制御を行う。 このように,八つの連続するパケットのセルにおける平均受信時刻が,遅延変動の大小に応じて決められた「所定のウィンドウ時間」を外れた場合,SDUは,当該「所定のウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように,次のパケットの送信時刻を調整する。 (イ) 充足性a 構成要件F1には,制御の頻度に関する限定はないから,カウントが0の時にしか構成要件F1の制御を行わないとしても,充足性に影響はない。 b セルには,二つの「ウィンドウ時間」があるが,いずれも送信予定時刻との時間的関係及び時間幅(要するに,始点と終点)が予め特定されており,また,どのような場合に,いずれのウィンドウ時間を用いるかも予め決ま は,二つの「ウィンドウ時間」があるが,いずれも送信予定時刻との時間的関係及び時間幅(要するに,始点と終点)が予め特定されており,また,どのような場合に,いずれのウィンドウ時間を用いるかも予め決まっている(制御のフローチャートに沿っていけば,一義的にどのウィンドウ時間を用い,次のパケットの送信時刻を調整するかが決まっている)から,「所定の」ウィンドウ時間に当たる。 c 複数のパケットの受信時刻の平均に基づいて,調整の要否を決定し,また,調整量を決定することは,本件明細書等の段落【0083】の記載から当業者が容易に実施できる,本件発明1の実施態様の一つである。 d 構成要件F1における「送信する時刻」,すなわち,セルにおけるパケットの受信時刻に関する情報に基づいて制御される送信時刻は,被告システムでは「SDU」の送信時刻である。SDUは,SDUとセルとの間に存在するアクセス・ノードで生じる遅延変動もふまえて,パケットがセルにおける「所定のウィンドウ時間」内に受信されるように,送信時刻の調整を行っている。 e 以上より,被告システムは,構成要件F1を充足する。 エ構成要件F2の充足性(ア) 被告システムの構成aVPU被告システムのVPUは,非決定論的にパケットを受信する一方で,ボコーダに20ミリ秒毎にパケットを送信する必要があり,構成要件F2の技術思想を用いて解決すべき課題の存する,「不規則な受信と規則的な送信」が伴う場所である。 VPUにおいては,パケットの送信予定時刻よりも6ミリ秒ないし2ミリ秒早いところの4ミリ秒の時間幅を「所定のウィンドウ時間」 として設定している。この「所定のウィンドウ時間」内にパケットが受信されている場合,VPUはパケットの送信時刻を調整しないが,① 4回連続,パケットが「所定 幅を「所定のウィンドウ時間」 として設定している。この「所定のウィンドウ時間」内にパケットが受信されている場合,VPUはパケットの送信時刻を調整しないが,① 4回連続,パケットが「所定のウィンドウ時間」よりも早く受信された場合は,パケットの送信時刻を1ミリ秒早くし,② 2回連続,パケットが「所定のウィンドウ時間」よりも遅く,かつ送信予定時刻以前に受信された場合は,パケットが送信予定時刻の2ミリ秒前に受信されるように送信時刻を遅らせ,③ パケットが送信予定時刻に遅れた場合は,次のパケットが送信予定時刻の3ミリ秒前に受信されるように送信時刻を遅らせる。 bSDU被告システムのSDUは,非決定論的にパケットを受信する一方で,VPUに20ミリ秒毎にパケットを送信する必要があり,構成要件F2の技術思想を用いて解決すべき課題の存する,「不規則な受信と規則的な送信」が伴う場所である。 SDUにおいては,パケットの「選択処理開始タイミング」(≒送信予定時刻)の8ミリ秒前の「受信予定タイミング」の±1ミリ秒の時間幅を「所定のウィンドウ時間」として設定している。この「所定のウィンドウ時間」内にパケットが受信されている場合,SDUはパケットの送信時刻を調整しないが,① 4回連続,パケットが「所定のウィンドウ時間」よりも早く受信された場合には,パケットの選択処理開始タイミング(自ずと送信時刻)を1ミリ秒早くし,② 2回連続,パケットが「所定のウィンドウ時間」よりも遅く受信された場合には,パケットが選択処理開始タイミングの8ミリ秒前(すなわち,「受信予定タイミング」)に受信されるように,選択処理開始タイミング(自ずと送信時刻)を遅らせる。 (イ) 充足性a 被告は,「VPU(SDU)の制御アルゴリズムは・・・2 (すなわち,「受信予定タイミング」)に受信されるように,選択処理開始タイミング(自ずと送信時刻)を遅らせる。 (イ) 充足性a 被告は,「VPU(SDU)の制御アルゴリズムは・・・2種類の閾値を使用するものであるが,一方を始点とし,他方を終点とする所定の時間枠を使用するものではない。」と述べ,被告システムにおいて「所定のウィンドウ時間」に基づく制御はない旨主張する。 しかし,前記のとおり,VPU及びSDUに設定された時間幅は,SDUとVPUにおけるパケットの受信が期待される時間の範囲であり,受信するパケットの早い遅いにかかわらず,所定のものとして定まっているから,「所定のウィンドウ時間」(被告のいう「2種類の閾値」は「ウィンドウ時間」の始点と終点に相当する。)であることは明らかである。被告の主張は,所詮「ウィンドウ時間」を「2種類の閾値」と言い替えてみたというにすぎず,理由がない。 b 構成要件F2の「受信」とは,「ウィンドウ時間」と比較すべき受信時刻が測定される場所での受信であり,被告システムでは,「SDU」での受信,及び「VPU」での受信である。 c 構成要件F2の「送信する時刻」,すなわち「それを制御することにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」とは,被告システムにおいては,「SDU」からの送信時刻,及び「VPU」からの送信時刻である。SDUは,SDUとセルとの間に存在するアクセス・ノードで生じる遅延変動もふまえて,パケットがSDUにおける「所定のウィンドウ時間」内に受信されるように,送信時刻の調整を行っている。また,VPUは,アクセス・ノード及びSDUで生じる遅延変動もふまえて,パケットがVPUにおける「所定のウィンドウ時間」内に受信されるように,送信時刻の調 されるように,送信時刻の調整を行っている。また,VPUは,アクセス・ノード及びSDUで生じる遅延変動もふまえて,パケットがVPUにおける「所定のウィンドウ時間」内に受信されるように,送信時刻の調整を行っている。 d 構成要件F2においては,送信時刻の調整が必要と判断された場合 の調整量に限定はなく,細かい調整を繰り返すことも,「ウィンドウ時間内に受信されるように」に当たる。したがって,パケットの受信がウィンドウ時間よりも早い場合に,1ミリ秒ずつの細かい調整がなされるとしても,構成要件F2を充足する。 e 構成要件F2においては,送信時刻の「調整の要否の判断基準」に限定はなく,4回連続,又は2回連続,パケットがウィンドウ時間を外れた場合にのみ調整を行うこととするのは,当業者による本件発明1の実施態様のバリエーションの一つである。 f 以上より,被告システムのSDUもVPUも,それぞれ構成要件F2を充足する。 (2) 本件発明2-構成要件J3の充足性被告システムのSDUは,ソフトハンドオフ時に複数のセルから受信した同一内容の複数パケットのうち,最も品質のよいパケットを選択して送信するものである。 したがって,被告システムが構成要件J3を充足することは明らかである。 〔被告の主張〕(1) 本件発明1-構成要件F1,F2の充足性につきア構成要件F1の非充足(ア) 被告システムは,「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」を制御する手段を有していないから,被告システムは構成要件F1を充足しない。 a 構成要件の解釈「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」と特許請求の範囲に記載されている以上,交換システムが,パケットをその外部に送信する時刻が,制御手段によって認識さ a 構成要件の解釈「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」と特許請求の範囲に記載されている以上,交換システムが,パケットをその外部に送信する時刻が,制御手段によって認識されることが要件となる。交換システムの内部の機器間における内部的送信の時 刻が「交換システムが送信する時刻」ではないことは明らかである。 したがって,本件発明の構成要件F1における「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」とは,「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムからその外部へ送信する時刻」を意味するものであり,当該送信時刻は,交換システムの外に出トラヒックを運ぶパケットが出される時刻,換言すれば,出トラヒックを運ぶパケットが交換システムのインターフェース(交換システムの出口として機能するインターフェース)から交換システムの外部に送信される時刻を意味する。 b 非充足性被告システムにおいては,BSCとMSCから成るものが「交換システム」に該当し,BSCのインターフェースからパケットがBSCの外部に送信される時刻が「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」に相当するところ,被告システムにおいては,出トラヒックの場合,BSC内のSDUがパケットの送信時刻の制御(調整)を行っている。 しかしながら,ここで,SDUによる制御の対象となるのは,あくまでSDUからIPスイッチに対してパケットが送信される時刻であって,BSCのインターフェースからパケットがBSCの外部に送信される時刻ではない。 また,SDUから送信されたパケットは,IPスイッチに送信され(全体図におけるD-C’),IPスイッチは,パケットをAggregationPoint に対して送信する(同C-B’)。Aggrega また,SDUから送信されたパケットは,IPスイッチに送信され(全体図におけるD-C’),IPスイッチは,パケットをAggregationPoint に対して送信する(同C-B’)。AggregationPoint からインターフェースを経由してパケットはBSC外に送信される(同B-A’)。この,BSCのインターフェースからBSC外にパケットが送信される時刻については,SDUは,何ら制御を行っていない。 また,パケットがBSC外に送信されるまでの上記D-C’間及び上記C-B’の通信はいずれもパケット送信が行われており,その送信に要する時間は一定ではないから,SDUからパケットが送信される時刻と,BSCのインターフェースからパケットがBSCの外部に送信される時刻を同視することもできない。 このように,被告システムにおいては,BSCのインターフェースからパケットがBSCの外部に送信される時刻はSDUによって制御されていないから,被告システムは「出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻」を制御する手段を有しておらず,構成要件F1を充足しない。 (イ) 被告システムは,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように・・・制御する」手段を有していないから,被告システムは構成要件F1を充足しない。 a 構成要件の解釈構成要件F1は,セルにおいて「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように」,出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を「制御する」,という構成を含むものである。 ここで,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように」,「制御する」というのは,要するに,送信パケットの受信が所定のウィンドウ時間を外れると当該送信パケットが当該所定の ある。 ここで,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように」,「制御する」というのは,要するに,送信パケットの受信が所定のウィンドウ時間を外れると当該送信パケットが当該所定のウィンドウ時間内に受信されるように制御する制御アルゴリズムを用いることを意味するものと解される。 構成要件F1における「制御」の対象は,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」である。換言すれば,「制御」の内容は,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する 時刻」の調整である。 また,時刻の調整である以上,かかる調整の方法は,以下の三つのステップにより構成される。 ④-1 「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無を判断する。 ④-2 ④-1において,調整の必要があると判断された場合に,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)を決定する。 ④-3 ④-2において決定された調整の量だけ,実際に送信時刻を変更する。 そして,構成要件F1は,上記④-1及び④-2の各ステップについて,以下の制御アルゴリズムを採用するものと解される。 ④-1 「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無を判断する。調整の必要性の有無の判断は,所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信されているか否かを確認することによって行われ,所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信されていない場合に,調整の必要があると判断される。 ④-2 ④-1において,調整の必要があると判断された場合に,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)を決定する。調整の量(調整時間)は,その調整をするこ ④-2 ④-1において,調整の必要があると判断された場合に,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)を決定する。調整の量(調整時間)は,その調整をすることで「所定のウィンドウ時間内に(送信パケットが)受信される」だけの量となるように決定される。 このことは,本件明細書等の段落【0081】の記載からも明らかである。 したがって,例えば,ある制御アルゴリズムが,上記④-1のステップにおいて,所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信されていないにもかかわらず,送信時刻の調整が不要であると判断するものであるような場合には,当該制御アルゴリズムは,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように」制御するアルゴリズムであるとはいえない。 また,ある制御アルゴリズムが,前記④-1のステップにおいて所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に送信時刻の調整の必要があると判断したとしても,前記④-2のステップにおいて,「出トラヒックを運ぶパケットを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)が,その調整をすることで所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信されるだけの量となるように決定されるものではない場合(例えば,誤差の大小にかかわらず調整の量が常に一定である場合)には,かかる制御アルゴリズムは,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように」制御するアルゴリズムであるとはいえない。 これらの制御アルゴリズムは,本件発明とは技術思想が異なるものであるといわざるを得ない。 b 非充足性被告システムにおいては,SDUが,PATE値(BTSにおいてパケットが受信された時刻と,BTSから当該パケットが移動局に 件発明とは技術思想が異なるものであるといわざるを得ない。 b 非充足性被告システムにおいては,SDUが,PATE値(BTSにおいてパケットが受信された時刻と,BTSから当該パケットが移動局に向けて送信されることが予定されている時刻との差)に基づいて,SDUからパケットが送信される時刻の制御(調整)を行っている(丁1,第13,14項)。 しかし,SDUが行う送信時刻の調整は,単に,BTSにおける受信される時刻がある一定の時間の枠内に入っているか否かのみによっ て,調整の要否を判断している訳ではなく,前記④-1のステップを有しない。また,調整量を,その調整をすることで「所定のウィンドウ時間内に送信パケットが受信される」だけの量となるように決定するものでもなく,④-2のステップを有しない。 なお,被告システムにおいては,VPUもパケットの送信時刻の制御(調整)を行っているが,VPUによる送信時刻の制御は,パケットがSDU(BTSではなく)において受信された時刻と,SDUが行った,SDUからパケットが送信される時刻の制御(調整)の内容に基づいて行われており(丁1,第26項),パケットがBTSにおいて受信された時刻は,VPUによる送信時刻の制御においては考慮されない(SDUが行う送信時刻の調整のアルゴリズムは,「所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように・・・制御する」構成要件F1とは,技術思想からして根本的に異なるというべきである。)。したがって,VPUは前記④-1のステップを行っていないから,VPUによる送信時刻の制御が,構成要件F1を充足しないことは明らかである。 イ構成要件F2の非充足(ア) 被告システムは,「入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」を制御する手段を有していないから,被 刻の制御が,構成要件F1を充足しないことは明らかである。 イ構成要件F2の非充足(ア) 被告システムは,「入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」を制御する手段を有していないから,被告システムは構成要件F2を充足しない。 a 構成要件の解釈(a) 「交換システム」について本件発明における「交換システム」とは,複数のセルと公衆電話網(PSTN)との間でそれぞれ複数のトランクを介して接続され,少なくとも,出線を選択し,入線出線間の経路の設定を行なう一連の動作を実行する機能を持つシステムである。そのため,本件発明 における「交換システム」は,複数のセル及び公衆電話網(PSTN)と接続するためのインターフェースを有している必要がある。 本件明細書等に記載された実施例においては,デジタル・セルラ交換機201が,複数のセルと接続された複数の汎用DS1インターフェース252及び公衆電話網に接続された複数のDS1インターフェース132の双方を備えていることにより,本件発明における「交換システム」といえる。 このように,本件システムにおける「交換システム」とは,「複数のセルと公衆電話網(PSTN)との間でそれぞれ複数のトランクを介して接続され,少なくとも,出線を選択し,入線出線間の経路の設定を行なう一連の動作を実行する機能を持つシステムであって,複数のセル及び公衆電話網(PSTN)と接続するためのインターフェースを有するもの」を指すものである。 (b) 「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻・・・入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」について「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻」と特許請求の範囲に記載されている以上,交換システムが,パケットをその外部 トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」について「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻」と特許請求の範囲に記載されている以上,交換システムが,パケットをその外部に送信する時刻が,制御手段によって認識されることが要件となる。交換システムの内部の機器間における内部的送信の時刻が「当該交換システムから送信される時刻」でないことは明らかである。 交換システムが送信する時刻を制御する」というためには,「交換システムが(外部へ)送信する時刻」に関し,「制御がなかったならば(交換システムから)送信されていたはずの時刻」(「時刻」は,時分秒等で特定される。)を把握し,如何なる時刻に修正すべ きかを決定して,その決定された時刻となるように,送信する時刻を意図的に制御しなければならない。 例えば,交換システムが公衆電話網に対して入トラヒックを125μ秒毎の一定の送信タイミングで送信するものである場合に,交換システムの内部機器において行われた送信時刻の変更に伴い,特定の入トラヒックが,125μ秒毎で一定の送信タイミングのいずれのタイミングで交換システムから送信されるかが結果的に変更されたからといって,それは,交換システムから外部へ送信するタイミングをどの時刻にすべきかについての決定に基づく制御ではない。 構成要件C,D,E,F1において,「伝える」,「送り」,「受信する」,「送り出し」,「送信する」,「受信される」という各文言は,本件発明1の「セル」ないし「交換システム」における「外部への送信」又は「外部からの受信」を意味している。このような解釈からすれば,構成要件F2における「送信される」,「受信される」,「送信する」という文言についても,「交換システム」から「外部への送信」ないし「交換システム」にお 信」を意味している。このような解釈からすれば,構成要件F2における「送信される」,「受信される」,「送信する」という文言についても,「交換システム」から「外部への送信」ないし「交換システム」における「外部からの受信」を意味すると解するのが相当であり,構成要件F2についてのみ「交換システム内部の送受信」を意味すると解釈するのは,特許法70条1項の解釈原則に反するものといわなければならない。 特に,構成要件F1とF2は,いずれも,「当該第2の手段は」という主語からなる文言であり,構成要件F1における「送信」と「受信」という文言と,構成要件F2における「送信」と「受信」という文言について,矛盾した解釈をすることは許されない。しかも,構成要件F1とF2は,いずれも,「当該交換システムが送信」という文言を含むものであり,これらの文言は,同様に,「交換システム」から「外部へ送信する」と解するのが相当である。 そして,構成要件F2における「当該交換システムから送信される」という文言も,「当該交換システムが送信する」と同様に,「交換システム」から「外部へ送信する」と解するのが相当である。 そうすると,「当該交換システムから送信される時刻」,「当該交換システムが送信する時刻」とは,「当該交換システムからその外部へ送信する時刻」であり,当該送信時刻は,交換システムの外に入トラヒックが出される時刻であって,交換システムのインターフェース(交換システムの出口として機能するインターフェース)から外部に送信する時刻と解するのが相当である。 なお,受信時刻についても同様に「交換システムで受信」される時刻がウィンドウ時間内に入るように制御するのであるから,交換システムで受信される時刻が特定されなければならず,そのためには,受信箇所が特定されてい 時刻についても同様に「交換システムで受信」される時刻がウィンドウ時間内に入るように制御するのであるから,交換システムで受信される時刻が特定されなければならず,そのためには,受信箇所が特定されていなければならない。そして,「交換システムで受信」と記載されている以上,受信時刻は,交換システムが初めて受信する箇所,つまり,交換システムの入口であるインターフェースにおける受信時刻と解するのが相当である。 b 非充足性被告システムにおいては,BSCとMSCからなるものが「交換システム」に該当するところ,MSCのインターフェースからPCMサンプルがMSCの外部に送信される時刻が,「入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」に相当する。 そして,MSCのインターフェースからPCMサンプルがMSCの外部に送信される時刻は,PSTNの送信タイミングに同期しており,125μ秒間隔で一定である。これをMSC(ないしBSC)において変更することはない。BSC内のVPUによるバッファからパケットを取り出すタイミングの制御,及び,SDUによるパケットの選択 処理開始タイミングの制御(以下,VPUにおけるパケット取り出しタイミングとSDUにおけるパケットの選択処理開始タイミングとを併せて「パケット処理開始タイミング」という。)にもかかわらず,MSCのインターフェースからPCMサンプルがMSCの外部に送信される時刻は125μ秒間隔で一定であり,何らの影響も受けない(交換システムの内部機器において行われた送信時刻の変更にともない,特定の入トラヒックが,125μ秒毎で一定の送信タイミングのいずれのタイミングで交換システムから送信されるかが結果的に変更されたからといって,それは,交換システムから外部へ送信するタイミングをどの時刻にすべきかについて 125μ秒毎で一定の送信タイミングのいずれのタイミングで交換システムから送信されるかが結果的に変更されたからといって,それは,交換システムから外部へ送信するタイミングをどの時刻にすべきかについての決定に基づく制御ではない。)。 したがって,被告システムにおいては,「入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻」を制御していない。 (イ) 被告システムは,「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信されるように・・・制御する」手段を有していないから,被告システムは構成要件F2を充足しない。 a 構成要件の解釈構成要件F2は,交換システムにおいて「所定のウィンドウ時間内に」入トラヒックを運ぶパケットが「受信されるように」,入トラヒックを交換システムが送信する時刻を「制御する」,という構成を含むものである。 ここで,「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信されるように」「制御する」というのは,要するに,入トラヒックを運ぶパケットの受信が所定のウィンドウ時間から外れると,当該パケットが当該所定のウィンドウ時間内に受信されるように制御する制御アルゴリズムを用いることを意味するものと解される。 そして,構成要件F2においては,「制御」の対象は「入トラヒッ クを交換システムが送信する時刻」であり,換言すれば,「制御」の内容は「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整である。 また,時刻の調整である以上,かかる調整の方法は,以下の三つのステップにより構成されると解される。 ④-1 「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無を判断する。 ④-2 ④-1において,調整の必要があると判断された場合に,「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整 ラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無を判断する。 ④-2 ④-1において,調整の必要があると判断された場合に,「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)を決定する。 ④-3 ④-2において決定された調整の量だけ,実際に送信時刻を変更する。 そして,構成要件F2は,上記④-1及び④-2の各ステップについて,以下の制御アルゴリズムを採用するものと解される。 ④-1 「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無の判断は,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認することによって行われ,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されていない場合に,調整の必要があると判断される。 ④-2 「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)は,その調整をすることで「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信される」だけの量となるように決定される。 したがって,例えば,ある制御アルゴリズムが,前記④-1のステップにおいて,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されていないにもかかわらず,送信時刻の調整は不要である と判断するものであるような場合には,当該制御アルゴリズムは,「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信されるように」制御するアルゴリズムであるとはいえない。 また,例えば,ある制御アルゴリズムが,前記④-1のステップにおいて所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認するものであったとしても,前記④-2のステップにおいて,「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)が,その ウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認するものであったとしても,前記④-2のステップにおいて,「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)が,その調整をすることで所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されるだけの量となるように決定されるものではない場合(例えば,誤差の大小にかかわらず調整の量が常に一定である場合)には,かかる制御アルゴリズムは,「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信されるように」制御するアルゴリズムであるとはいえず,本件発明とは技術思想が異なるものであるといわざるを得ない。 b 非充足性被告システムにおいては,入トラヒックの場合,VPU及びSDUの双方が,パケット処理開始タイミングの制御(調整)を行っている。 しかし,以下に述べるとおり,VPU及びSDUが行うパケット処理開始タイミングの調整の方法(アルゴリズム)は,いずれも「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信されるように・・・制御する」ものであるとはいえない。 (a) VPUが行うパケット処理開始タイミングの調整について第一に,VPUは,そもそも「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」を認識・把握していない。 すなわち,「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」とは,要するに,入トラヒックを運ぶパケットが,交 換システムのインターフェースにおいて外部より受信される時刻を意味するところ,被告システムにおいては,入トラヒックを運ぶパケットは,BTS(交換システム外)からBSC(交換システム内)に対して送信されるから,結局,BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻が,「入トラヒ ては,入トラヒックを運ぶパケットは,BTS(交換システム外)からBSC(交換システム内)に対して送信されるから,結局,BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻が,「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」に相当する。 しかしながら,VPUはあくまで,VPUがパケットを受信する時刻を認識・把握し,これに基づいて制御を行っているにすぎず,BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻を認識・把握してはいない。また,パケットがBSCのインターフェースにおいて受信された後,VPUに至るまで,全体図におけるB’-C間,同C’-D間,同D-C’間及び同C’’-E間においてパケット送信が行われており,その送信に要する時間は一定ではないから,VPUにおけるパケットの受信時刻と,BSCのインターフェースにおけるパケットの受信時刻を同視することはできない。 このように,VPUはそもそも「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」を把握していないから,構成要件F2の前記③のステップ(入トラヒックが交換システムで受信される時刻の認識・把握)を行っていないし,また,同④-1のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無の判断は,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信されているか否かを確認することによって行われる。)も行っていないから,被告システムは構成要件F2を充足しない。 第二に,VPUは,連続する2個のパケットの入力バッファにお ける格納時間がいずれも2ミリ秒未満である場合に初めて,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整の必要があると判断する。 したがって,例えば,連続する2個のパケットのうち,1個目 ファにお ける格納時間がいずれも2ミリ秒未満である場合に初めて,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整の必要があると判断する。 したがって,例えば,連続する2個のパケットのうち,1個目のパケットの格納時間が2ミリ秒未満であったとしても,その時点では調整の必要性ありとの判断がなされることはない。また,連続する2個のパケットのうち,2個目のパケットの格納時間が2ミリ秒未満であったとしても,1個目のパケットの格納時間が2ミリ秒以上であった場合には,VPUは,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整は不要であると判断することになる。 また,同様にVPUは,連続する4個のパケットの入力バッファにおける格納時間が全て6ミリ秒を超える場合に初めて,パケット処理開始タイミングを早める調整の必要ありと判断する。 したがって,例えば,連続する4個のパケットのうち,1ないし3個目のパケットの格納時間が6ミリ秒を超えたとしても,その時点では調整の必要ありとの判断がなされることはない。また,連続する4個のパケットのうち,4個目のパケットの格納時間が6ミリ秒を超えたとしても,1ないし3個目のパケットの格納時間の少なくとも1個が4ミリ秒以下であった場合には,VPUは,パケット処理開始タイミングを早める調整は不要であると判断することになる。 このように,VPUの制御アルゴリズムは,連続する複数のパケットに着目して,それらがいずれも時間枠の範囲外であった場合に初めて,調整の必要があると判断するものである。 これに対し,構成要件F2における制御アルゴリズムの前記④-1のステップは,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に 調整の必要があると判断するものであり,連続する複数のパ の前記④-1のステップは,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に 調整の必要があると判断するものであり,連続する複数のパケットに着目するものではない(なお,連続する複数のパケットに着目して,それらがいずれもウィンドウ時間外に受信されたものである場合に送信時刻の調整を行うという構成は,本件明細書等には何ら開示・示唆されていない。)。 したがって,VPUの制御アルゴリズムは,構成要件F2における制御アルゴリズムの前記④-1のステップ(所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に調整の必要があると判断する。)を行っておらず,両者の技術思想は根本的に異なるといわざるを得ず,被告システムは構成要件F2を充足しない。 第三に,VPUは,入力バッファにおける格納時間が2ミリ秒未満であるか否かに関しては,連続する2個のパケットについてこれを判断するのに対し,入力バッファにおける格納時間が6ミリ秒を超えるか否かに関しては,連続する4個のパケットについてこれを判断する。 換言すれば,入力バッファにおける格納時間が6ミリ秒を超えるか否かという閾値は,連続する4個のパケットについて適用されるものであり,連続する2個のパケットのみでは,かかる閾値に基づく判断はなされない。他方,入力バッファにおける格納時間が2ミリ秒未満であるか否かという閾値は,連続する2個のパケットについて適用されるものであり,かかる閾値に基づく判断を行うに当たり,連続する4個のパケット全てに着目するものではない。 このように,複数のパケット(パケット群)に着目した場合であっても,VPUにおいて,特定のパケット群に対して適用される,6ミリ秒の時点 当たり,連続する4個のパケット全てに着目するものではない。 このように,複数のパケット(パケット群)に着目した場合であっても,VPUにおいて,特定のパケット群に対して適用される,6ミリ秒の時点を始点とし,2ミリ秒の時点を終点とする,所定の 時間枠を観念することはできない。 換言すれば,VPUの制御アルゴリズムは,入力バッファにおける格納時間が6ミリ秒を超えるか否かという閾値と,入力バッファにおける格納時間が2ミリ秒未満であるか否かという閾値の,2種類の閾値を使用するものであるが,一方を始点とし,他方を終点とする所定の時間枠を使用するものではない。 したがって,VPUは「所定のウィンドウ時間」に基づく制御を行うものではないから,構成要件F2を充足しない。 第四に,VPUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合,パケット処理開始タイミングは,必ず1ミリ秒ずつ早まる。 したがって,例えば,連続する4個のパケットの入力バッファにおける格納時間が10ミリ秒であった場合,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」の始点であるパケット処理開始タイミングより6ミリ秒前の時点よりも,さらに4ミリ秒早くパケットを受信していることになるが,この場合であっても,パケット処理開始タイミングは1ミリ秒しか早まらない。その結果,その後もパケットの受信タイミングに変化がないとすれば,依然として,パケット処理開始タイミングより9ミリ秒早くパケットを受信することになり,「ウィンドウ時間」の始点以降に受信することにはならない。 このように,VPUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合に,その調整量を,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように決定する制御アルゴリズムを採用するものではない。 Uは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合に,その調整量を,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように決定する制御アルゴリズムを採用するものではない。したがって,VPUは,構成要件F2の前記④-2のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)は,その調整をすることで 「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信される」だけの量となるように決定される。)を有さず,構成要件F2を充足しない。 以上のとおり,VPUが行うパケット処理開始タイミングの調整は,構成要件F2を充足しない。 (b) SDUが行うパケット処理開始タイミングの調整について第一に,SDUは,そもそも「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」を認識・把握していない。 すなわち,「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」とは,要するに,入トラヒックを運ぶパケットが,交換システムのインターフェースにおいて外部より受信される時刻を意味するところ,被告システムにおいては,入トラヒックを運ぶパケットは,BTS(交換システム外)からBSC(交換システム内)に対して送信されるから,結局,BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻が,「入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信される時刻」に相当する。 しかしながら,SDUはあくまで,SDUがパケットを受信する時刻を認識・把握し,これに基づいて制御を行っているにすぎず,BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻を認識・把握してはいない。また,パケットがBSCのインターフェースにおいて受信された後,SDUに至るまで,全体図におけるB’-C間及 BSCのインターフェースにおいてパケットを外部から受信する時刻を認識・把握してはいない。また,パケットがBSCのインターフェースにおいて受信された後,SDUに至るまで,全体図におけるB’-C間及びC’-D間においてパケット送信が行われており,その送信に要する時間は一定ではないから,SDUにおけるパケットの受信時刻と,BSCのインターフェースにおけるパケットの受信時刻を同視することはできない。 このように,SDUはそもそも「入トラヒックを運ぶパケットが 交換システムで受信される時刻」を把握していないから,構成要件F2の前記③のステップ(入トラヒックが交換システムで受信される時刻の認識・把握)を行っていないし,また,同④-1のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の必要性の有無の判断は,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが交換システムで受信されているか否かを確認することによって行われる。)も行っていないから,被告システムは構成要件F2を充足しない。 第二に,SDUは,連続する2個のパケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて遅い場合に初めて,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整の必要があると判断する。 したがって,例えば,連続する2個のパケットのうち,1個目のパケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも2ミリ秒遅かったとしても,その時点では調整の必要性ありとの判断がなされることはない。また,連続する2個のパケットのうち,2個目のパケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも2ミリ秒遅かったとしても,1個目のパケットの受信時刻が受信予定タイミングの前後1ミリ秒以内であれば,SDUは,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整は不要であると判断することになる。 また も2ミリ秒遅かったとしても,1個目のパケットの受信時刻が受信予定タイミングの前後1ミリ秒以内であれば,SDUは,パケット処理開始タイミングを遅らせる調整は不要であると判断することになる。 また,同様にSDUは,連続する4個のパケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて早い場合に初めて,パケット処理開始タイミングを早める調整の必要ありと判断する。 したがって,例えば,連続する4個のパケットのうち,1ないし3個目のパケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも2ミリ秒早かったとしても,その時点では調整の必要性ありとの判断がなされることはない。また,連続する4個のパケットのうち,4個目の パケットの受信時刻が受信予定タイミングより2ミリ秒早かったとしても,1ないし3個目のパケットの少なくとも1個の受信時刻が受信予定タイミングの前後1ミリ秒以内であった場合には,SDUは,パケット処理開始タイミングを早める調整は不要であると判断することにある。 このように,SDUの制御アルゴリズムは,連続する複数のパケットに着目して,それらがいずれも時間枠の範囲外であった場合に初めて,調整の必要があると判断するものである。 これに対し,構成要件F2における制御アルゴリズムの前記④-1のステップは,所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に調整の必要があると判断するものであり,連続する複数のパケットに着目するものではない(なお,連続する複数のパケットに着目して,それらがいずれもウィンドウ時間外に受信されたものである場合に送信時刻の調整を行うという構成は,本件明細書等には何ら開示・示唆されていない。)。 したがって,SDUの制御アルゴリズムは,構成要件F2における制 もウィンドウ時間外に受信されたものである場合に送信時刻の調整を行うという構成は,本件明細書等には何ら開示・示唆されていない。)。 したがって,SDUの制御アルゴリズムは,構成要件F2における制御アルゴリズムの前記④-1のステップ(所定のウィンドウ時間内に入トラヒックを運ぶパケットが受信されているか否かを確認し,受信されていない場合に調整の必要があると判断する。)を行っておらず,両者の技術思想は根本的に異なるといわざるを得ず,被告システムは構成要件F2を充足しない。 第三に,SDUは,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて遅いか否かに関しては,連続する2個のパケットについてこれを判断するのに対し,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて早いか否かに関しては,連 続する4個のパケットについてこれを判断する。 換言すれば,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて早いか否かという閾値は,連続する4個のパケットについて適用されるものであり,連続する2個のパケットのみでは,かかる閾値に基づく判断はなされない。他方,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて遅いか否かという閾値は,連続する2個のパケットについて適用されるものであり,かかる閾値に基づく判断を行うに当たり,連続する4個のパケット全てに着目するものではない。 このように,複数のパケット(パケット群)に着目した場合であっても,SDUにおいて,特定のパケット群に対して適用される,受信予定タイミングより1ミリ秒早い時点を始点とし,受信予定タイミングより1ミリ秒遅い時点を終点とする,所定の時間枠を観念することはできない。 換言すれば,SDUの制御アルゴリズムは,パケットの受信時刻が受信予定タイ 1ミリ秒早い時点を始点とし,受信予定タイミングより1ミリ秒遅い時点を終点とする,所定の時間枠を観念することはできない。 換言すれば,SDUの制御アルゴリズムは,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて早いか否かという閾値と,パケットの受信時刻が受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて遅いか否かという閾値の,2種類の閾値を使用するものであるが,一方を始点とし,他方を終点とする所定の時間枠を使用するものではない。 したがって,SDUは「所定のウィンドウ時間」に基づく制御を行うものではないから,構成要件F2を充足しない。 第四に,SDUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合,パケット処理開始タイミングは,必ず1ミリ秒ずつ早まる。 したがって,例えば,連続する4個のパケットの受信時刻が,全 て受信予定タイミングより4ミリ秒早かった場合,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」の始点である受信予定タイミングの1ミリ秒前の時点よりも,さらに3ミリ秒早くパケットを受信していることになるが,この場合であっても,パケット処理開始タイミングは1ミリ秒しか早まらない。その結果,その後もパケットの受信タイミングに変化がないとすれば,依然として,パケット処理開始タイミングより3ミリ秒早くパケットを受信することになり,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」の始点以降に受信することにはならない。 このように,SDUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合に,その調整量を,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように決定するアルゴリズムを採用するものではない。したがって,SDUは,構成要件F2の前記④-2のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時 )「ウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように決定するアルゴリズムを採用するものではない。したがって,SDUは,構成要件F2の前記④-2のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)は,その調整をすることで「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信される」だけの量となるように決定される。)を有さず,構成要件F2を充足しない。 第五に,SDUは,ソフトハンドオフ中,同一の周期内において複数のBTSについてパケット処理開始タイミングの調整を行う必要があると判断した場合には,最も遅延しているBTSに着目して調整量を決定する(早める調整が必要なBTSと遅くする調整が必要なBTSがある場合には,遅くする調整を優先する。)が,SDUが選択するパケットは遅延の程度とは関係なく,SDUは最も品質の良いパケットを選択する。 例えば,BTS1,BTS2及びBTS3の3個のBTSがBS Cと接続されているソフトハンドオフを想定する。あるパケット処理開始タイミングにおいて,BTS1についてパケットを4回連続で受信予定タイミングより2ミリ秒早く受信しており,BTS2についてパケットを2回連続で受信予定タイミングより2ミリ秒遅く受信しており,BTS3についてパケットを2回連続で受信予定タイミングより3ミリ秒遅く受信していた場合,個々のBTSに着目した場合には,BTS1についてはパケット処理開始タイミングを1ミリ秒早める調整,BTS2についてはパケット処理開始タイミングを2ミリ秒遅らせる調整,BTS3についてはパケット処理開始タイミングを3ミリ秒遅らせる調整が必要となる。しかしながら,実際に行われる調整は,最も遅延しているBTS,すなわちBTS3に着目して行われ,パケット処理開始タイミン S3についてはパケット処理開始タイミングを3ミリ秒遅らせる調整が必要となる。しかしながら,実際に行われる調整は,最も遅延しているBTS,すなわちBTS3に着目して行われ,パケット処理開始タイミングを3ミリ秒遅らせる調整が行われる。 他方,各BTSから送信されるパケットのうち,BTS1から送信されるパケットの質が常に最良であった場合には,SDUは,BTS1から送信されたパケットをパケット選択処理タイミングにおいて選択し続ける。これは,前述のように,最も遅延しているBTS3の遅延に着目してパケット処理開始タイミングの調整が行われた後も同様である。したがって,この場合にBTS3に着目して行われるパケット処理開始タイミングの調整量の決定は,「SDUが選択するBTS1からのパケットが,受信予定タイミングよりも1ミリ秒を超えて早く受信されている」という状態を解消するように決定されるものではない(むしろ,受信予定タイミングからのずれを拡大させるように,調整量が決定される。)。 なお,SDUが選択するパケットを送信したBTSと,パケット処理開始タイミングの調整量を決定する際に着目したBTSが同一 である場合も考えられるが,それは,偶々,当該BTSから送信されたパケットの質が最良であったという偶然の事情によるものにすぎない。 このように,SDUにおけるパケット処理開始タイミングを,SDUが選択したパケットがSDUから送信される時刻と同視したとしても,SDUは,SDUから送信されるパケットが受信予定タイミングの前後1ミリ秒以内にSDUにおいて受信されるようにパケット処理開始タイミングの調整量を決定するものではない。換言すれば,SDUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合に,その調整量を,(原告が主張するところの)「ウィ 受信されるようにパケット処理開始タイミングの調整量を決定するものではない。換言すれば,SDUは,パケット処理開始タイミングを早める調整を行う場合に,その調整量を,(原告が主張するところの)「ウィンドウ時間」内にパケットが受信されるように決定するアルゴリズムを採用するものではない。したがって,SDUは,構成要件F2の前記④-2のステップ(「入トラヒックを交換システムが送信する時刻」の調整の量(調整時間)は,その調整をすることで「所定のウィンドウ時間内に(入トラヒックを運ぶパケットが)受信される」だけの量となるように決定される。)を有さず,構成要件F2を充足しない。 以上のとおり,SDUが行うパケット処理開始タイミングの調整は,構成要件F2を充足しない。 (2) 本件発明2-構成要件J3の充足性につき構成要件J3は,「入りトラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する」構成であり,本件明細書等に記載された実施例にも「何れのパケットの方がよいか判断するために,(現在はバッファ603に記憶されている)最初に受信された予想どおりのパケットを取り出して,両方のパケットの空中CRCおよび信号品質の表示を比較する」(段落【0070】)と記載されているように,パケットごとに比較した上でその中の最良のものを選 択する。 これに対し,被告システムでは,最も電波状態の良いBTSを選択するのであるから,構成要件J3を充足しない。 2 争点(2)ア(無効理由1〔要旨変更による出願日繰下げを前提とする新規性・進歩性の欠如〕)について〔被告の主張〕(1) 旧特許法41条の解釈論平成5年法律第26号附則2条2項により本件特許権について適用される同法による改正前の特許法(昭和34年法律第121号。以下「旧特許法」という。)41条は 主張〕(1) 旧特許法41条の解釈論平成5年法律第26号附則2条2項により本件特許権について適用される同法による改正前の特許法(昭和34年法律第121号。以下「旧特許法」という。)41条は,「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす。」と規定する。ここで,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,同記載の範囲及び当業者に自明の事項の範囲を意味する。 本件発明1の構成要件F2(「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」)は,平成8年7月31日付けの本件補正(乙4)により追記された構成要件であるところ(以下,構成要件F2に係る構成を「本件構成」という。なお,本件特許の特許請求の範囲の文言は,特許請求の範囲の記載から一義的に構成要件F2の意味内容を把握することができる。そして,「交換システムから送信」,「交換システムで受信」については,これが「交換システムの出口から外への送信」,「交換システムの入口での外からの受信」を意味することは,前記1〔被告の主張〕(1)イのとおりである。),以下に詳述するとおり,願書に最初に添付した明細書又は図面(乙2。本件当初明 細書等)に記載した事項の範囲内ではない。 (2) 本件当初明細書等の開示本件当初明細書等(乙2)において,構成要件F2に関連する記載は,段落【0088】ないし【0102】並びに【図20】,【図22】,【図5】及び【図6】である(なお,段落【0093】 細書等の開示本件当初明細書等(乙2)において,構成要件F2に関連する記載は,段落【0088】ないし【0102】並びに【図20】,【図22】,【図5】及び【図6】である(なお,段落【0093】ないし【0102】には,構成要件F1に関する記載も含まれている。)。 しかしながら,本件当初明細書等に記載された技術は,【図20】等に示されているとおり,「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への,入トラヒックの送信時刻の制御である。 ここで,「プロセッサ602」及び「ボコーダ604」は,いずれも「交換システム」に含まれる「音声符号器モジュール220」の内部に存在する「音声処理ユニットSPU264」の構成要素であるから(【図5】,【図6】参照),「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への入トラヒックの送信時刻は,「交換システム」に含まれる構成要素間の入トラヒックの送信時刻の制御であり,交換システム内における入トラヒックの送信時刻の制御である。本件当初明細書等には,「交換システム」からの送信の制御に関する記載は一切存在しない。 したがって,本件当初明細書等においては,「・・・入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」(構成要件F2)が開示されていない。 なお,【図20】及び段落【0088】ないし【0092】は,「入トラヒック」の送信時刻の制御について説明しており,構成要件F2に関係するので,以下,検討する。 ここに開示されている制御は,プロセッサ602が「ボコーダ604への前のフレーム伝送の送信時刻1406の少し後で現在のフレームの送信時刻tmin1401の少し前にある時間枠1402の中で,各パケットを受信する こと」を目的として(段落【0089】),以下のような制御を行うことである。すなわち, 現在のフレームの送信時刻tmin1401の少し前にある時間枠1402の中で,各パケットを受信する こと」を目的として(段落【0089】),以下のような制御を行うことである。すなわち,「プロセッサ602がパケットを受信する時刻1404を枠1402の中に安全に位置付けるために,プロセッサ602は,ボコーダ604にフレームを送る時間を調節しなければならない期間1410を決定する。次に,プロセッサ602は,適応同期回路611にコマンドを送り,対応するサービス回路612に対する受信割り込み信号RX_INT_X を指定した量だけ調節させる。回路611は,これに応じて,受信した割り込み信号を指定された期間1410だけ変更する。このように,プロセッサ602からボコーダ604へのフレーム送信時刻が,時刻1406から時刻1407へと変更され,これによって,プロセッサ602におけるパケット受信時刻1404が,枠1402の内側に移される。・・・フレーム送信時刻を時刻1406から時刻1407に移すことができるためには,プロセッサ602は,ボコーダ604に,そのフレーム受信時刻を時刻1408から時刻1409に変更させる必要がある。ボコーダ604は,内部の入力クロック621の出力を用いてフレームの受信時刻を調節する。出力クロック622と同様に,入力クロック621もクロック600の入力信号に同期している。従って,プロセッサ602は,ボコーダ604にコマンドを送り,クロック600入力信号に対する入力クロック621信号のオフセットを前記の期間1410だけ調節させる。ボコーダ604は,これを行うことによって,そのフレーム受信時刻を時刻1408から時刻1409へと変更する。」という制御である(段落【0090】,【0091】)。 例えば,【図20】のプロセッ る。ボコーダ604は,これを行うことによって,そのフレーム受信時刻を時刻1408から時刻1409へと変更する。」という制御である(段落【0090】,【0091】)。 例えば,【図20】のプロセッサ602における左から1ないし3個のパケット受信時刻1404(Rx)はいずれも遅すぎて,前のフレーム伝送の送信時刻1406(Tx)の少し後で現在のフレームの送信時刻tmin1401の少し前にある時間枠1402の内に入っていない。そこで,以下の①な いし⑤のような制御を行う。 ① プロセッサ602は,調節する(シフトする)期間1410を決定する。 ② 割り込み信号RX_INT_X のクロックタイミングを指定された期間1410だけシフトする(遅らせる)。 ③ プロセッサ602における送信時刻(Tx)のクロックタイミングを,送信時刻1406(Tx)のクロックタイミングから送信時刻1407(Tx)のクロックタイミングへとシフトする(遅らせる)。 ④ 送信時刻(Tx)のクロックタイミングをシフトする(遅らせる)ことにより,前のフレーム伝送の送信時刻1406(Tx)の少し後で現在のフレームの送信時刻tmin1401の少し前にある時間枠1402をシフトする(遅らせる)。 ⑤ その結果,プロセッサ602における左から4,5個のパケット受信時刻1404(Rx)は,時間枠1402の内に入るようになる。 【図20】及び段落【0088】ないし【0092】には,プロセッサ602からボコーダ604への送信時刻のクロックタイミングを遅らせる制御が記載されているが,【図17】から明らかなとおり,クロックタイミングを早めることによりパケット受信時刻1404(Rx)が時間枠1402の内に入るようにする制御も可能である。 したがって,本件当初明細書等に記載されてい 図17】から明らかなとおり,クロックタイミングを早めることによりパケット受信時刻1404(Rx)が時間枠1402の内に入るようにする制御も可能である。 したがって,本件当初明細書等に記載されている,構成要件F2に関する「制御」とは,クロックタイミングをシフトする(遅くする又は早くする)制御であると解される(なお,本件当初明細書等における,構成要件F1に関する記載は,段落【0080】ないし【0087】及び【0093】ないし【0102】並びに【図19】及び【図21】である(なお,段落【0093】ないし【0102】には,構成要件F2に関する記載も含まれている。)。 これらの記載を参酌して,構成要件F1の意義を検討すれば,本件当初明細書等に記載されている,構成要件F1に関する「制御」は,構成要件F2と 同様に,クロックタイミングをシフトする(遅くする又は早くする)制御であると解される。)。 (3) 出願日の繰り下がり以上のとおりであるから,本件発明1及び2における「入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」(構成要件F2)は本件当初明細書等に記載されておらず,また,当業者に自明の事項の範囲でもない。 旧特許法40条は,「願書に添附した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたときは,その特許出願は,その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。」と規定している。 したがって,平成8年7月31日付けの本件補正は要旨変更に該当するから,本件発明1及び2の出願日は,同補正日である平成8年(1996年)7月31日に繰り下がる。 (4) 公知文献の存在本件発明の出願日が平成8年(1996年)7月31 正は要旨変更に該当するから,本件発明1及び2の出願日は,同補正日である平成8年(1996年)7月31日に繰り下がる。 (4) 公知文献の存在本件発明の出願日が平成8年(1996年)7月31日に繰り下がる結果,本件発明との関係において,対応米国特許第5195090号(特許日平成5年〔1993年〕3月16日)の明細書(乙6。以下「乙6文献」という。)が公知文献となる。そして,乙6文献には,本件発明の全ての構成が記載されている。 (5) 帰結本件発明は,乙6文献に記載された発明ないし乙6文献に記載された発明に基づいて容易に想到できた発明であり,特許法29条1項3号ないし同条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許は旧特許法123条1項1号に該当し,無効とされるべきである。 〔原告の主張〕 (1) 本件当初明細書等には,「交換システム」が(音声呼の)入トラヒックを送信するに際し,当該「交換システム」は,その内部において,「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への送信時刻のクロックタイミングのシフトを通じて,その時刻を制御することが記載されている。そして,特許請求の範囲の文言及び本件当初明細書等の記載によれば,「送信の時刻を制御する」という構成要件F2の技術的事項は,公衆送信網へ向けての送信タイミングを,入トラヒックの送信タイミングのために交換システムにおける内部調整によって決定すること,すなわち,入トラヒックを運ぶパケットを交換システムでそれ以降の送信に先行して確実に受信するために,入トラヒックの送信タイミングを交換システムにおける内部調整によって決定することを含むものである(特許請求の範囲の文言と本件当初明細書等の記載によれば,構成要件F2は,交換システムにおける内部調整を包含す ックの送信タイミングを交換システムにおける内部調整によって決定することを含むものである(特許請求の範囲の文言と本件当初明細書等の記載によれば,構成要件F2は,交換システムにおける内部調整を包含するものと解釈することが適切である。すなわち,①交換システム内のボコーダは,125μ秒毎のクロックを有する公衆回線網の要求に合わせて,公衆回線網に向けてPCMサンプルを125μ秒毎に規則的に供給しているところ,交換システムの出口を含め,ボコーダ以降は,「パケットの受信時刻の非決定論的(予測不能)な変動」というものが存在せず,そもそもパケットの受信時間に幅を持たせる必要,すなわち「ウィンドウ時間」を設ける必要がない。「ウィンドウ時間」がなければ,「それを制御することにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」も存在し得ない。言い換えるならば,ボコーダ以降の交換システムは,従来の回線交換網のようにPCMサンプルの決定論的な通信が行われる部分であるところ,従来の回線交換網には,パケットの非決定論的な受信が行われることを前提(課題)とする構成要件F2のような送信時刻の制御は不要である。そうすると,構成要件F2の制御対象となる送信時刻は,課題が存在する,ボコーダより前の送信時刻であるはずであり,交換システムの出口の送信時刻では あり得ない,というのが,当業者の自然に理解するところである。また,②構成要件F2の送信時刻の制御は,「個々の呼の入トラヒック」についてなされる必要があるが,交換システムはその入線と出線においては,多重化された「複数の呼のトラヒック」を送受信するように設計されている。そのため,構成要件F2の制御は,トラヒックを多重化〔PCMサンプルの場合は時分割多重〕するための「マルチプレクサ」〔本 ては,多重化された「複数の呼のトラヒック」を送受信するように設計されている。そのため,構成要件F2の制御は,トラヒックを多重化〔PCMサンプルの場合は時分割多重〕するための「マルチプレクサ」〔本件当初明細書等の実施例では,【図6】の集中ハイウェイ607がこれに相当する。〕の前に行う必要がある。「送信する時刻」の後に「マルチプレクサ」が必要である以上,「送信する時刻」は「交換システムの出口(外部との境界点)から送信する時刻」ではあり得ない。なお,交換システムにおいて「多重化」が必要であるということは,クレームに記載する必要がないほど,本件出願日当時の技術者にとって当たり前のことであった。)。 (2) 予備的主張(間接的制御)百歩譲って,「送信」は「通過させる」という程度の意味と考えて良いと仮定し,「交換システムが送信」あるいは「交換システムから送信」が「交換システムの出口が送信」あるいは「交換システムの出口から送信」と読めると考えたとしても,本件当初明細書等は,「出口」でのトラヒックの送信時刻(通過時刻)の制御を開示しているから,本件発明が無効となることはない。 より具体的には,プロセッサ602が行う特定のトラヒックのボコーダ604に向けた送信時刻の制御は,同じ特定のトラヒックの「出口」での送信時刻(通過時刻)に全く同じ変化を与え,同じ「制御」をもたらすこととなり,これは本件当初明細書等に実質的に開示されている。すなわち,プロセッサ602がボコーダ604に向けた特定のトラヒックの送信時刻の「制御」を行う場合,ボコーダ604以降のトラヒックの流れは決定論的であることから,必然的に,同じトラヒックが交換システムの「出口」を通過する時刻 も全く同じに「制御」されるのであり,その制御はいずれも,ウィンドウ時間内でのパケット受 ックの流れは決定論的であることから,必然的に,同じトラヒックが交換システムの「出口」を通過する時刻 も全く同じに「制御」されるのであり,その制御はいずれも,ウィンドウ時間内でのパケット受信を目的とするものである。したがって,「出口」との要旨認定をした場合にも,「ウィンドウ時間内に・・・受信されるように・・・当該交換システムが送信する(当該交換システムの出口を通過する)時刻を制御」する構成は,本件当初明細書等に開示されている。 (3) 以上によれば,いずれにしても,被告が主張する本件発明の構成要件F2(入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段)は,本件当初明細書等に記載されているから,構成要件F2を付加した平成8年7月31日付けの本件補正は何ら要旨を変更するものではなく,本件特許の出願日は繰り下がらない。 したがって,出願日の繰り下がりを前提として,本件発明が新規性及び進歩性を欠如するとの被告の主張は理由がない。 3 争点(2)イ(無効理由2〔サポート要件違反〕)について〔被告の主張〕平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要求して,いわゆるサポート要件を定めているところ,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであ 解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 これを本件についてみるに,構成要件F2は,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信す る時刻を制御する手段」である。 そして,本件明細書等(甲2)の記載は,本件当初明細書等の記載と実質的に同一である。両者は,平成8年7月31日付けの本件補正書(乙4)において,段落【0034】における先行技術文献の記載を形式的に変更した点においてのみ相違する。 したがって,前記2〔被告の主張〕(2)で既に述べたとおり,本件明細書等の【図20】及び【図22】並びに段落【0088】ないし【0093】,【0095】ないし【0102】に開示されている入トラヒックの送信時刻の制御は,いずれも「交換システム」に含まれる「音声符号器モジュール220」内の「音声処理ユニットSPU264」の構成要素である(【図5】,【図6】)ところの,「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への,入トラヒックの送信時刻の制御である。 すなわち,本件明細書等に開示されている入トラヒックの送信時刻の制御は,「交換システム」に含まれる「音声符号器モジュール220」内の「音声処理ユニットSPU264」の構成要素間の入トラヒックの送信時刻の制御である。 したがって,本件明細書等には,「交換システム」からの送信時刻の制御に関する記載は一切存在しない。 よって,本件明細書等においては,「・・・入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」(構成要 本件明細書等には,「交換システム」からの送信時刻の制御に関する記載は一切存在しない。 よって,本件明細書等においては,「・・・入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」(構成要件F2)が開示されていない。 さらに,構成要件F2においては,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信」されるように制御されていなければならない。しかし,【図20】,【図22】及び発明の詳細な説明には,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻」が記載されていないため,その前に設けられる「所定のウィンドウ時間」内に交換システムが入トラヒックを受信することは記載されていない。 以上のとおり,本件明細書等には,特許請求の範囲に記載された事項と対応する事項が発明の詳細な説明に記載されていないし,更に,発明の詳細な説明の各記載ないし出願時の技術常識に照らし当業者が当該発明の課題を解決できると認識できると認めるに足る事情も存在しないから,本件発明1及び2はサポート要件違反の無効理由を有する。 〔原告の主張〕「交換システム」からの送信は,「交換システム」の内部手段から外部に向けての送信を含むのであり,本件明細書等には,「交換システム」が(音声呼の)入トラヒックを送信するに際し,当該「交換システム」は,その内部において,「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への送信時刻のクロックタイミングのシフトを通じて,当該「交換システム」から送信される時刻を制御することが記載されている。 したがって,本件明細書等には,特許請求の範囲に記載された事項と対応する事項が発明の詳細な説明に記載されているということができるから,本件発明がサポート要件違反の 制御することが記載されている。 したがって,本件明細書等には,特許請求の範囲に記載された事項と対応する事項が発明の詳細な説明に記載されているということができるから,本件発明がサポート要件違反の無効理由を有するとの被告の主張は理由がない。 4 争点(2)ウ(無効理由3〔実施可能要件違反1〕)について〔被告の主張〕平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項は,「発明の詳細な説明にはその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない」と規定して,いわゆる実施可能要件を定めている。そして,審査基準によれば,「容易にその実施をすることができる」とは,出願時の技術常識からみて,出願に係る発明が正確に理解でき,かつ再現(追試)できる程度をいう。 これを本件についてみるに,本件明細書等(甲2)中の発明の詳細な説明及び図面は,本件当初明細書等(乙2)中の発明の詳細な説明及び図面と同一で ある。 そして,前記3〔被告の主張〕で既に述べたとおり,本件明細書等の詳細な説明及び図面に開示されている入トラヒックの送信時刻の制御は,「交換システム」に含まれる「音声符号器モジュール220」内の「音声処理ユニットSPU264」の構成要素間の入トラヒックの送信時刻の制御であって,「交換システム」からの送信時刻を制御するものではない。 したがって,本件明細書等には,「交換システム」からの送信時刻の制御に関する記載は一切存在しない。 よって,本件明細書等には,出願時の技術常識からみて,本件発明(構成要件F2)を正確に理解でき,かつ再現(追試)できる程度の記載があるとは認められないから,本件発明は実施可能要件違反の無効理由を有する。 〔原告の 書等には,出願時の技術常識からみて,本件発明(構成要件F2)を正確に理解でき,かつ再現(追試)できる程度の記載があるとは認められないから,本件発明は実施可能要件違反の無効理由を有する。 〔原告の主張〕「交換システム」からの送信は,「交換システム」の内部手段から外部に向けての送信を含むのであり,本件明細書等には,「交換システム」が(音声呼の)入トラヒックを送信するに際し,当該「交換システム」は,その内部において,「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への送信時刻のクロックタイミングのシフトを通じて,当該「交換システム」から送信される時刻を制御することが記載されている。 したがって,本件明細書等には,出願時の技術常識からみて,本件発明(構成要件F2)を正確に理解でき,かつ再現(追試)できる程度の記載があるということができるから,本件発明が実施可能要件違反の無効理由を有するとの被告の主張は理由がない。 5 争点(2)エ(無効理由4〔実施可能要件違反2〕)について〔被告の主張〕本件特許の特許請求の範囲においてはボコーダについての明確な記載はない。しかしながら,原告の主張に基づけば,本件発明においては,本件明細書 等に記載された機能を実現するボコーダが不可欠であると解される。 本件明細書等(甲2)においてはボコーダに関連して,「各ボコーダ604は,カルコム社(QualcommInc.)のQCELP低ビット・レート可変速音声符号化/復号アルゴリズムを実施するAT&Tの16Aデジタル信号プロセッサ(DSP)を用いて実施される。」(段落【0055】)と記載する。すなわち,本件明細書等は,本件発明において使用されるボコーダにおいて,QCELPアルゴリズムを使用する旨開示する。 しかし,QCELPアルゴリズムは本件特許 。」(段落【0055】)と記載する。すなわち,本件明細書等は,本件発明において使用されるボコーダにおいて,QCELPアルゴリズムを使用する旨開示する。 しかし,QCELPアルゴリズムは本件特許の優先日(平成3年〔1991年〕7月9日)において公開されていない。被告が知るQCELPアルゴリズムを説明する文献として最も早く公開された文献は,平成4年5月21日に公開された「ANOVERVIEWOFTHEAPPLICATIONOFCODEDIVISIONMULTIPLEACCESS(CDMA) TODIGITALCELLULARSYSTEMSANDPERSONALCELLULARNETWORKS」と題する文献(乙45。以下「乙45文献」という。)である。 したがって,当業者といえども,本件特許の優先日において,本件明細書等の発明の詳細な説明に基づいて,どのようにすればQCELPアルゴリズムを採用したボコーダを実現し,本件発明を実施すればよいか到底理解することはできない。 以上のとおり,本件特許の発明の詳細な説明は,特許請求の範囲に記載された発明を当業者が容易に実施できる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載したものではないから,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項に規定の要件を満たしておらず,本件特許は,同法123条1項3号の規定により無効とされるべきである。 〔原告の主張〕被告は,原告の主張に基づけば,本件発明においては,本件明細書等に記載された機能を実現するボコーダが不可欠であると解されるところ,本件明細書等が,本件発明において使用されるボコーダにおいて,QCELPアルゴリズ ムを使用する旨開示するが ,QCELPアルゴリズムは,本件特許の優先日(平成3年〔1991 されるところ,本件明細書等が,本件発明において使用されるボコーダにおいて,QCELPアルゴリズ ムを使用する旨開示するが ,QCELPアルゴリズムは,本件特許の優先日(平成3年〔1991年〕7月9日)において公開されていないから,本件特許の発明の詳細な説明は,特許請求の範囲に記載された発明を当業者が容易に実施できる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載したものではなく,実施可能要件を満たしていないと主張する。 しかし,本件発明1は,構成要件F1及びF2において,交換システムの第2の手段が備える手段が機能的に特定されており,当該機能を奏する手段を備えることが不可欠の要件とされており,本件発明1においてボコーダを備えることは不可欠の構成要件とはなっていない。また,上記機能を奏する手段であれば,本件明細書等に記載されたボコーダ以外のものであっても,本件発明1の実施は可能となる。ちなみに,被告が,本件明細書等が本件発明において使用するボコーダにおいてQCELPアルゴリズムを使用する旨開示するとの根拠として引用する記載には,「ボコーダ604は,当分野において周知である。具体的には,各ボコーダ604は,カルコム社(QualcommInc.)のQCELP低ビット・レート可変速音声符号化/復号アルゴリズムを実施するAT&Tの16Aデジタル信号プロセッサ(DSP)を用いて実施される。」と記載されているのであって,QCELP低ビット・レート可変速音声符号化/復号アルゴリズムを実施するボコーダは単なる一例として挙げられたものであることが明らかであり,本件明細書等に記載された,それ以外の周知のボコーダによって本件発明1の実施は可能である。本件明細書等において,QCELP低ビット・レート可変速音声符号化/復号アルゴリズムを実施するボコーダ以 り,本件明細書等に記載された,それ以外の周知のボコーダによって本件発明1の実施は可能である。本件明細書等において,QCELP低ビット・レート可変速音声符号化/復号アルゴリズムを実施するボコーダ以外の実施可能性は排除されていないのである。また,本件明細書等において,ボコーダは,音声の圧縮及び伸張の機能を与えるものであって,プロセッサから受信したトラヒック・フレームをPCMサンプルに変換し,また受信したPCMサンプルをトラヒック・フレームに変換してプロセッサに送信し,必要に応じて,PCMサンプルのサンプル数を増減する等の機能を有するものであり, このような機能を奏する周知のボコーダであれば,本件発明1の実施は可能である。 このように,本件発明において,本件発明1の構成要件F1及びF2が特定する機能を奏する手段として,QCELPアルゴリズム以外を使用する周知のボコーダを使用することが記載され,またボコーダ以外のものが排除されているわけでもないのであるから,本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は,当業者が容易に実施することができるのであって,実施可能要件に違反するということはできない。特許請求の範囲に記載された発明について,明細書に記載された一実施例が,本件特許出願当時(優先権主張出願にあっては優先日当時),仮に実施不能であったとしても,その出願時の技術常識を考慮して,実施可能要件の有無が判断されることは,特許実用新案審査基準に記載されているとおりである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 6 争点(2)オ(無効理由5〔乙12を主引例とする進歩性欠如〕)について〔被告の主張〕(1) 乙12発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙12(特表平2-503379号公報。平成2年1 2を主引例とする進歩性欠如〕)について〔被告の主張〕(1) 乙12発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙12(特表平2-503379号公報。平成2年10月11日公表。以下「乙12公報」という。)には,それぞれ,次の発明が開示されている(以下「乙12発明」という。)。 ア本件発明1との対比においてA’ サービス地域に位置する移動局に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のトランシーバと,B’ 前記の各トランシーバに少なくとも1つは接続されるように前記複数のトランシーバに接続された複数のケーブルと,C’ 前記複数のケーブルに接続されていて,前記トランシーバとの間で 前記ケーブルを介して移動局の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの移動無線交換機及び中央装置とを備え,D’ 各トランシーバが,移動局から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶメッセージ情報を,前記の接続された少なくとも1つのケーブルに送り,さらに移動局に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのケーブル上で個々の呼の出トラヒックを運ぶメッセージ情報を受信する線路制御装置を備え,E’ さらに各中央装置が,トランシーバによってサービスされる移動局に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶメッセージ情報を前記トランシーバに接続された少なくとも1つのケーブル上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記トランシーバに接続された少なくとも1つのケーブル上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶメッセージ情報を受信し,F 当該中央装置は,F1’ トランシーバにおい の着信先に送るために,前記トランシーバに接続された少なくとも1つのケーブル上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶメッセージ情報を受信し,F 当該中央装置は,F1’ トランシーバにおいて中央装置の指定した時刻にトランシーバが移動局へ送信できるように,中央装置からトランシーバへの伝送遅延を考慮し,中央装置からトランシーバへの送信タイミングを決定する手段を備える,G’ ことを特徴とする移動無線システム。 イ本件発明2との対比においてI 時として複数のトランシーバが,無線電話呼のサービスを1つの共通の移動局に同時に与えることがあり;J1 さらに前記中央装置が,J2 前記の1つの移動局に向かう出接続呼トラヒックの受信に応じて, 前記呼の出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶメッセージ情報を,前記の1つの移動局に前記サービスを同時に与えている前記トランシーバの各々に送り,J3 また前記の1つの移動局に前記サービスを同時に与えている前記トランシーバの各々からその呼の入トラヒックを運ぶメッセージ情報を受信し,このとき異なるトランシーバから受信した各メッセージ情報にはその入トラヒックのコピーが入っている手段を備えたことを特徴とするK システム。 (2) 本件発明1と乙12発明との対比ア相違点本件発明1と乙12発明とを対比すると,両発明は次の点で相違する。 (ア) 相違点①本件発明1においては,セルと交換システムの間で送受信される「情報」が「パケット」であって,「統計的に多重化された形式」で送受信されるのに対して,乙12発明においては,セルと交換システムの間で送受信される「情報」が「パケット」であること,及び,「統計的に多重化された形式」でセルと交換システムの間で送受信されることについて明示 るのに対して,乙12発明においては,セルと交換システムの間で送受信される「情報」が「パケット」であること,及び,「統計的に多重化された形式」でセルと交換システムの間で送受信されることについて明示の記載はない点(イ) 相違点②乙12発明において,交換システムの第2の手段が,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」(構成要件F2)を備えることについて明示の記載がない点イ容易想到性 (ア) 相違点①についてデジタル電話システムにおいて,統計多重化された音声パケットを送受信することは,本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙8(米国特許第4587652号明細書。以下「乙8文献」という。),乙11(JohnBellamy「最新ディジタル電話通信-実用技術と最新動向-」。以下「乙11文献」という。),乙13(米国特許第4866704号明細書。以下「乙13文献」という。),乙20の1・2(米国特許第4764919号明細書,特開昭63-65735号公報。以下「乙20の1・2文献」という。),乙21(米国特許第5018136号明細書。以下「乙21文献」という。),乙26の1・2(米国特許第4916691号明細書,特開平2-244850号公報。以下「乙26の1・2文献」という。)に記載されており,デジタル電話システムの技術分野において慣用技術であるといえる。 したがって,乙12公報に記載されたセル方式デジタル移動無線システムに関する発明において,セルと交換システムの間で情報を送受信する構成によって,統計多重化された音声パケット通信という慣用技 る。 したがって,乙12公報に記載されたセル方式デジタル移動無線システムに関する発明において,セルと交換システムの間で情報を送受信する構成によって,統計多重化された音声パケット通信という慣用技術を用いることにより,相違点①に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が極めて容易に推考し得るものである。 (イ) 相違点②について原告のクレーム解釈に基づけば,受信パケットの統計多重効果による遅延変動に順応する交換機システムにおけるバッファは構成要件F2に相当することになるところ,デジタル電話システムにおいて,統計多重化された音声パケット通信においてバッファを用いることは,本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙13文献,乙21文献及び甲27の2公報(乙11文献と同じ)に記載され ており,デジタル電話システムの技術分野において慣用技術であるといえる。 したがって,乙12公報に記載されたデジタル電話システムに関する発明における交換システムに,慣用技術である統計多重化された音声パケット通信のためのバッファを付加して統計多重効果による遅延変動に順応する構成とすることで,本件発明1の構成することは,当業者が極めて容易に推考し得るものである。 (3) 本件発明2と乙12発明との対比ア相違点本件発明2と乙12発明とを対比すると,両発明は次の点で相違する。 (ア) 相違点①本件発明2においては,セルと交換システムの間で送受信される「情報」が「パケット」であるのに対して,乙12発明においては,「送信情報」であって「パケット」であるか否かについては明示の記載がない点(イ) 相違点③交換システムの第2の手段が,異なるセルから受信した各情報に入っている入りトラヒックのコピーを,さらに 信情報」であって「パケット」であるか否かについては明示の記載がない点(イ) 相違点③交換システムの第2の手段が,異なるセルから受信した各情報に入っている入りトラヒックのコピーを,さらに送信先に送るために入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択することについて明示の記載がない点イ容易想到性(ア) 相違点①について相違点①に係る構成については,前記のとおり慣用技術である。 したがって,乙12公報に記載されたセル方式デジタル移動無線システムに関する発明において,セルと交換システムの間で情報を送受信する構成において,統計多重化された音声パケット通信という慣用技術を 用いることにより,相違点①に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が極めて容易に推考し得るものである。 (イ) 相違点③について交換システムにおいて異なるセルから受信した各情報に入っている入りトラヒックのコピーを,さらに送信先に送るために入トラヒックの受信されたコピーの中の一つのみを選択することは,本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙14(国際公開91/07020号。平成3年〔1991年〕5月16日公開。以下「乙14文献」という。),乙15(A.SalmasiandKS.Gilhousen「ONTHESYSTEMDESIGNASPECTSOFCODEDIVISIONMULTIPLEACCESS(CDMA)APPLIEDTODIGITALCELLULARANDPERSONALCOMMUNICATIONSNETWORKS」41stIEEEVEHICULARTECHNOLOGYCONFERENCE,May19-22,1991。平成3年〔1991年〕5月19日公開。 OMMUNICATIONSNETWORKS」41stIEEEVEHICULARTECHNOLOGYCONFERENCE,May19-22,1991。平成3年〔1991年〕5月19日公開。),乙16(RichardC.Bernhardt「MacroscopicDiversityinFrequencyReuseRadioSystems」IEEEJOURNALONSELECTEDAREASINCOMMUNICATIONS,VOL.SAC-5,NO.5,JUNE 1987。 昭和62年〔1987年〕6月公開。)及び乙17(B.RashidzadehandP.Mabey「PROSPECTSFORACOMMONAIRINTERFACEFORCELLULARANDCORDLESSSYSTEMS」MobileRadioandPersonalCommunications,11-14December 1989。平成元年〔1989年〕12月11日公開。)に記載されており,移動無線システムの技術分野において慣用技術である。 さらに,乙12発明の交換システムにおいて,異なるセルから受信した各情報に入っている入りトラヒックのコピーを,さらに送信先に送るために入トラヒックの受信されたコピーの中の一つのみを選択することは,当業者が当然に採用すべき事項である。 したがって,乙12発明において,異なるセルから受信した各情報に入っている入りトラヒックのコピーを,さらに送信先に送るために入ト ラヒックの受信されたコピーの中の一つのみを選択する構成とすることは,当業者が極めて容易に推考し得るものである。 (4) 帰結以上のとおり,本件発明は,乙12発明,乙13文献に記載された技術的事項及び慣用技術に たコピーの中の一つのみを選択する構成とすることは,当業者が極めて容易に推考し得るものである。 (4) 帰結以上のとおり,本件発明は,乙12発明,乙13文献に記載された技術的事項及び慣用技術に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 〔原告の主張〕(1) 乙12発明乙12発明は,1個のセル(本件発明の「サービス地域」に相当する。)について2個の基地局送信機が使われるといった特殊な構成を採用しつつ,異なる基地局送信機から発信された同じメッセージ情報を持つ無線信号が,セル内における移動局の位置に応じて当該移動局と各々の基地局送信機との相対的距離が異なること等によって生じる,各基地局と移動局との間の無線区間における無線波のずれの問題を解決することを目的として,異なる基地局送信機から移動局に送られる信号の到着時間差を相殺するように,基地局の中央装置に設けられた線路制御装置1が送信時間シフト装置2Aと2Bの可変遅延時間を制御し,もって,移動局に無線波が到達する時間のずれが少なくなるように制御するものである。 (2) 乙12発明と本件発明との差異乙12発明と本件発明とは,次のように相違する。 すなわち,乙12発明は,セル内における移動局と基地局との相対的位置等による基地局と移動局との間の無線区間における無線波のずれの問題を解決することを目的としている。ここで,乙12発明が問題としている無線波のずれは,一つのセル内における移動局の位置,すなわち,当該セル内における,建物のような構造物や,岩や丘のような自然の障害物の存在,二つの 基地局送信機との移動局の位置に伴う相対的距離のほか,基地局の中央装置と二つの基地局送信機とを結ぶ わち,当該セル内における,建物のような構造物や,岩や丘のような自然の障害物の存在,二つの 基地局送信機との移動局の位置に伴う相対的距離のほか,基地局の中央装置と二つの基地局送信機とを結ぶケーブルの長さ(第2図におけるLma,Lmb)によって生じる。ここで,前二者によって生じる無線波のずれは,セル内における移動局の相対位置に依存して,セル内を移動する位置によって変動するものであり,ケーブルの長さは移動局の位置とは無関係であって固定のものである。 そして,乙12発明は,前記無線区間における無線波のずれの問題を解決するため,1個のセルについて2個の基地局送信機が使われるといった特殊な構成を採用し,2個の基地局送信機と移動局との間でパラレルに送受信された同じ情報について,セル内における移動局の相対位置等に起因した無線区間における無線波のずれを,基地局の中央装置に設けられた線路制御装置1が相殺するように制御しているのである。乙12発明では,二つの同じ情報は,移動局に同時刻に到着するようにその制御がなされているのであって,この同じ二つの情報について,移動局への到着予定時刻を制御することは記載されていない。 これに対し,本件発明は,セル(基地局)と交換システムとの間の有線区間における統計的に分散されたパケット交換方式における音声品質の向上を目的としている(段落【0010】)。本件発明は,シリアルに流れる音声パケットが変動を伴って遅延するという課題に対処すべく,交換システムが,所定のウィンドウ時間内に受信されるように出トラヒックまたは入トラヒックを運ぶパケットの送信時刻を制御する手段を備えることを特徴としている(本件発明1の構成要件F1及びF2)。 以上により,乙12発明は,2個の基地局送信機と移動局との間でパラレルに送受信された同 クを運ぶパケットの送信時刻を制御する手段を備えることを特徴としている(本件発明1の構成要件F1及びF2)。 以上により,乙12発明は,2個の基地局送信機と移動局との間でパラレルに送受信された同じ情報についてのセル内における移動局の相対位置に起因する固定のずれを解消するものであり,本件発明は,セル(基地局)と交換システムとの間でシリアルに流れる音声パケットの遅延が個々に変動し得 ることを解消するものであって二つの同じ情報に対する制御ではないから,両者は,その適用の場面及び対象が全く異なり,全く異なる課題を解決するためになされ,その課題を解決するために特有の構成要件を備えたものである(乙12発明は本件発明とはその解決しようとする課題が全く異なるのであるから,両発明がその基本的な構成を全く異にするのはむしろ当然のことである。)。 (3) 被告が提示する慣用技術について被告は,乙8文献,乙11文献,乙13文献,乙20の1・2文献,乙21文献,乙26の1・2文献を提示し,統計多重化された音声パケット通信は慣用技術であると主張するとともに,乙13文献,乙21文献,甲27の2(乙11文献と同じ)を提示し,統計多重化された音声パケット通信においてバッファを用いることは慣用技術である,と主張する。 そして,被告は,統計多重化された音声パケット通信が慣用技術であることを理由として,乙12発明との相違点①に係る本件発明1の構成とすること,及び,統計多重化された音声パケット通信においてバッファを用いることが慣用技術であることを理由として,乙12公報に記載されたディジタル電話システムに関する発明における交換システムに,慣用技術である統計多重化された音声パケット通信のためのバッファを付加して統計多重効果による遅延変動に順応する構成とすることで に記載されたディジタル電話システムに関する発明における交換システムに,慣用技術である統計多重化された音声パケット通信のためのバッファを付加して統計多重効果による遅延変動に順応する構成とすることで,相違点②に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が極めて容易に推考し得るものである,と主張する。 しかしながら,統計多重化された音声パケット通信においてバッファを用いることが慣用技術であったとしても,乙12発明を本件優先日前に見た当業者にとって,当該バッファを乙12発明に付加させるという動機を与える手がかりは,慣用技術や乙12発明のどこにもなく,したがってまた,乙12発明のどこにバッファを設けてどのように利用するかを具体的に想起させるヒントも,慣用技術や乙12発明のどこにも存在しない。被告が提示する 慣用技術を乙12発明に付加することに当業者が動機付けられることはない。 まずこの点で,被告の主張は大きく誤っている。 また,仮に,乙12公報に記載されたデジタル電話システムに関する発明における交換システムに,慣用技術である統計多重化された音声パケット通信のためのバッファを付加することができたとしても,統計多重効果による遅延変動に順応する構成,すなわち,本件発明の構成要件F1及びF2に係る構成を想到することはできない。 乙12発明における基地局の制御は,無線区間における無線波のずれの問題を解決するために向けられたものであって,基地局と交換システムとの間の有線区間,とりわけ統計多重化される両者の間における音声パケット交換方式における音声品質の向上を対象としたものではない。乙12発明に,単に,慣用技術とされる統計多重化された音声パケット通信においてバッファを付加しただけでは,乙12発明が解決した無線区間における無線波のずれの問題が解消さ 上を対象としたものではない。乙12発明に,単に,慣用技術とされる統計多重化された音声パケット通信においてバッファを付加しただけでは,乙12発明が解決した無線区間における無線波のずれの問題が解消されるだけであって,当業者が,基地局と交換システムとの間において統計多重化される音声パケット交換方式における音声品質の向上を図る本件発明の構成要件F1及びF2に想到することはない。 相違点②についての被告の主張は,乙12発明に慣用技術であるバッファを組み合わせれば本件発明の構成要件F2が得られると主張しているに等しいが,本件発明の構成要件F2は,まず,手段の「内容」として,「交換システムが入トラヒックを送信する時刻を制御する」ことを規定し,これに付加して,当該送信時刻の制御の「目的」として,「送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に,交換システムで受信されるように」するということを規定している。統計多重化された音声パケット通信において用いられるバッファが慣用技術であったとしても,そのバッファは,本件発明の構成要件F2が規定するかかる要件を備えるように利用されるものではない。したがって,当該バッファを乙12発明に組み合わせたとしても,本件発明の構 成要件F2を得ることはできない。本件発明は,構成要件F1及びF2において,交換システムが,所定のウィンドウ時間内に受信されるように出トラヒックまたは入トラヒックを運ぶパケットの送信時刻を制御する手段を備えることを特徴としているところ,「ウィンドウ時間」は「バッファ」の存在を前提とするが,「ウィンドウ時間」は「バッファ」と等しいわけではないのである。 以上のとおり,本件発明の構成要件F1及びF2は,被告が提示する慣用技術を乙12発明に付加したとしても得ることはできない。 7 争点(2)カ ウ時間」は「バッファ」と等しいわけではないのである。 以上のとおり,本件発明の構成要件F1及びF2は,被告が提示する慣用技術を乙12発明に付加したとしても得ることはできない。 7 争点(2)カ(無効理由6〔乙26の2を主引例とする進歩性欠如〕)について〔被告の主張〕(1) 乙26の2発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙26の2(特開平2-244850号公報。平成2年9月28日公開。以下「乙26の2公報」という。)には,セルを小さくすることによってハンドオーバーが頻繁に発生する無線電気通信システムにおいて,ハンドオーバーの処理のための交換機の負荷増大に伴う問題を解決することを目的とする,次の発明が開示されている(以下「乙26の2発明」という。)。 A’ サービス地域に位置する無線端末に無線端末の呼サービスをそれぞれ提供する複数のベース・ステーションと,B’ 前記の各ベース・ステーションに少なくとも1つは接続されるように前記複数のベース・ステーションにベース・ステーション・インターフェース・ユニット(BIU)を介して接続された複数の通信リンクと,C’ 前記複数のリンクに接続されていて,前記ベース・ステーションとの間で前記リンクを介して無線端末の呼トラヒックを双方向に中継線インターフェース・ユニット(TIU)を介して伝える,セリュラ制 御ユニット(CIU)に接続された広域通信網(WAN)とを備え,D’ 各ベース・ステーションに接続されたBIUが,無線端末から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線端末に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信の ヒックの無線受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線端末に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する手段を備え,E’ さらにWANに接続されるTIUが,ベース・ステーションによってサービスされる無線端末に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記ベース・ステーションに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記ベース・ステーションに接続された少なくとも1つのリンク上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する手段を備えるG’ ことを特徴とする無線電気通信システム。 (2) 乙28発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙28(GSMRecommendation 08.60〔Ver.2.2.0〕及びそのCoveringNote。 昭和63年11月22日〔ただし,CoveringNote は平成元年2月2日〕公開。以下「乙28文献」という。)には,システムのスイッチを入れたときやハンドオーバーが検出された場合に,BTSにおいて最小のバッファ遅延を得ることを目的とする,次の発明が開示されている(以下「乙28発明」という。)。 F’ BSCに含まれるTRAUは, F1’ BSCに含まれるTRAUが送信する送信フレームの着信先であるMSにサービスするBTSにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信フレ 。)。 F’ BSCに含まれるTRAUは, F1’ BSCに含まれるTRAUが送信する送信フレームの着信先であるMSにサービスするBTSにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信フレームが受信されるようにダウンリンクの音声を運ぶフレームを当該BSCに含まれるTRAUが送信する時刻を制御する手段を含む。 (3) 乙42発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙42(特開昭60-27255号公報。昭和60年2月12日公開。以下「乙42公報」という。)には,デジタル通信システムにおいて,音声パケットの不規則な伝送遅延による受信局におけるバッファオーバーフロー及びバッファアンダーフローを防ぐことを目的とする,次の発明が開示されている(以下「乙42発明」という。)。 F’ バッファ制御装置は,F2’ 音声信号を運ぶパケットがバッファから送信される時刻の前の,当該バッファがバッファオーバーフローする時間とバッファアンダーフローする時間との間の期間内に当該バッファで受信されるように音声信号を当該バッファが送信する時刻を制御する手段を含む。 (4) 乙14発明本件特許の優先日(平成3年7月9日)より前に頒布された刊行物である乙14文献には,ハンドオフの改善された制御による低いサービス中断によってシステム全体の信頼性に著しい改良を与えることを目的とする,次の発明が開示されている(以下「乙14発明」という。)。 I’ 時として複数のセル位置が,無線電話呼のサービスを1つの共通の自動車ユニットに同時に与えることがあり;J1’ さらに移動電話交換局(MTSO)が,J2’ 1つの自動車ユニットに向かう出接続呼トラヒックの受信に応じ て,呼の出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶフレームを, えることがあり;J1’ さらに移動電話交換局(MTSO)が,J2’ 1つの自動車ユニットに向かう出接続呼トラヒックの受信に応じ て,呼の出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶフレームを,前記の1つの自動車電話に前記サービスを同時に与えている前記セル位置の各々に送り,J3’ また前記の1つの自動車ユニットに前記サービスを同時に与えている前記セル位置の各々からその呼の入トラヒックを運ぶフレームを受信し,このとき異なるセル位置から受信した各フレームにはその入トラヒックのコピーが入っていて,さらに送信先に送るために前記の入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する手段を備えたセル電話システム。 (5) 本件発明1と乙26の2発明との対比ア相違点本件発明1と乙26の2発明とを対比すると,次の点で相違する。 (ア) 相違点A乙26の2公報に記載された発明においては,構成要件F1に相当する構成を備えることについて明示の記載はない点(イ) 相違点B乙26の2公報に記載された発明においては,構成要件F2に相当する構成を備えることについて明示の記載がない点イ容易想到性相違点Aに係る構成は乙28文献に記載され,相違点Bに係る構成は乙42公報に記載されているから,乙26の2発明に乙28発明及び乙42発明を組み合わせることにより,本件発明1に想到することは当業者にとって容易である。 (6) 本件発明2と乙26の2発明との対比ア相違点 本件発明2と乙26の2発明とを対比すると,乙26の2発明は構成要件I及びJ1~J3について明示の記載がない点で相違する(相違点C)。 イ容易想到性相違点Cに係る構成は乙14文献に記載されており,乙26の2発明に乙14発明を組み合わせること 発明は構成要件I及びJ1~J3について明示の記載がない点で相違する(相違点C)。 イ容易想到性相違点Cに係る構成は乙14文献に記載されており,乙26の2発明に乙14発明を組み合わせることにより,本件発明2に想到することは極めて容易である。 (7) 帰結以上のとおり,本件発明2は,乙26の2発明,乙28発明,乙42発明及び乙14発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 〔原告の主張〕(1) 乙26の2発明について乙26の2公報には,ベース・ステーションと中央局との間では,入トラヒック及び出トラヒックのいずれもが,統計的に多重化された形式で送られることが記載されていないのであるから,被告が主張する構成D’,構成E’が開示されているということはできない。 (2) 乙28発明について乙28文献には,BTSにおいて所定のウィンドウ時間内に送信フレームの受信を許容するようにBSCのTRAUが送信する時刻を制御することが記載されておらず,被告が主張するF1’の構成が開示されていない。 (3) 乙42発明について乙42公報は,受信局内のバッファにロードされたパケットが,バッファ制御装置により当該バッファから出力装置(スピーカ)に送られる際の制御,すなわち出トラヒックを運ぶパケットの受信局内における制御が記載されているだけであって,本件発明1の構成要件F2と異なり,入トラヒックに 関する送信制御を記載しているわけでも,また,交換システムにおける送信制御を記載しているわけでもない。したがって,乙42公報には,被告が主張するF2’の構成は開示されていない。 (4) 被告は,本件発明1と乙26の2発明とを対 けでも,また,交換システムにおける送信制御を記載しているわけでもない。したがって,乙42公報には,被告が主張するF2’の構成は開示されていない。 (4) 被告は,本件発明1と乙26の2発明とを対比して一致点を認定した後,相違点A,B,すなわち,本件発明1の構成F1,F2に相当する構成を備えることについて明示の記載がない点において相違すると主張する。 しかし,乙26の2公報には,構成F1,F2に相当する構成が記載されていないことに加えて,前記したとおり,被告が主張するD’,E’の構成が記載されておらず,また,乙28文献には被告が主張するF1’,乙42公報には被告が主張するF2’がいずれも記載されていない。よって,乙26の2発明に乙28発明,乙42発明を組み合わせたところで,本件発明の全ての構成を得ることはできないし,また,そもそも乙26の2発明に乙28発明,乙42発明を組み合わせることもできない。被告の主張は,乙26の2発明,乙28発明及び乙42発明の認定についてそもそも誤りがある上,各引用発明の組み合わせの容易想到の判断についても誤っている。したがって,上記引例に基づいて本件発明1の進歩性を否定できないことは明らかである。 (5) 本件発明1の特許性が否定されない以上,その従属項に係る発明である本件発明2の特許性も否定されないこともまた明らかである。 8 争点(3)(オフィス・ワイズ設備に対する権利行使の可否)について〔補助参加人日立製作所の主張〕補助参加人日立製作所は,AT&Tとの間で,昭和63年(1988年)にパテント・ライセンス・アグリーメント(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結した(発行日は同年1月1日。なお,平成7年〔1995年〕11月に一部修正されている。)。 本件ライセンス契約により,AT&Tは, センス・アグリーメント(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結した(発行日は同年1月1日。なお,平成7年〔1995年〕11月に一部修正されている。)。 本件ライセンス契約により,AT&Tは,補助参加人日立製作所に対し,● (省略)●を約した。 原告は,本件特許権に関し,AT&Tの本件ライセンス契約上の義務を承継した。 したがって,原告は,被告がオフィス・ワイズ設備を使用する行為について本件特許権を行使することが許されず,被告の同行為について本件特許権の侵害が成立する余地はない。 〔原告の主張〕原告は,補助参加人日立製作所とAT&Tとが昭和63年(1998年)に本件特許権に関する本件ライセンス契約を締結した事実自体を争うものではない。 しかしながら,オフィス・ワイズ設備は,被告システムを構成するMSCと接続され,被告システムの一部として使用されるものであるところ,本件ライセンス契約においては,●(省略)●とされている(本件ライセンス契約4. 02条)。 したがって,補助参加人日立製作所の主張は理由がない。 9 争点(4)(損害の発生及びその額)について〔原告の主張〕(1) 被告による本件発明の実施被告は,3GPP2規格に準拠した移動電話通信サービスの利用者への提供を行っているところ,前記のとおり,被告が,本件発明を実施することなく同規格に準拠した移動電話通信サービスを提供することは不可能である。 (2) 被告の売上高今日までに,被告が本件発明を実施して利用者にサービスを提供することによって得た収入は,12兆円を下らない。 (3) 過去の不法行為に基づく損害賠償請求権の譲り受けAT&Tは,平成8年3月29日,ルーセント・テクノロジーズに対して, 自己が有する本件特許権侵害に基づく過 12兆円を下らない。 (3) 過去の不法行為に基づく損害賠償請求権の譲り受けAT&Tは,平成8年3月29日,ルーセント・テクノロジーズに対して, 自己が有する本件特許権侵害に基づく過去・現在・将来全ての損害賠償請求権を債権譲渡した。ルーセント・テクノロジーズは,平成12年9月29日,アバヤ・テクノロジーに対して,同損害賠償請求権を債権譲渡した。アバヤ・テクノロジーは,平成20年3月13日,ウインドワードに対して,同損害賠償請求権を債権譲渡した。ウインドワードは,同日,ガーンジーに対して,同損害賠償請求権を債権譲渡した。ガーンジーは,同日,原告に対して,同損害賠償請求権を債権譲渡した。 したがって,原告は,平成20年8月31日まで本件特許権の特許権者として特許登録原簿に記載されていたAT&Tが有していた,被告が本件システムの使用を開始した平成14年4月から平成20年8月31日までの,被告による本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を有している。また,平成20年9月1日からは,原告が,特許登録原簿上の本件特許権の特許権者であるため,原告は,同日以降の被告による本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を有している。 (4) 損害の額特許法102条3項に基づき,特許権者は,当該特許権を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求できるところ,被告の不法行為により受けた損害の額は,上記譲受債権額を含めると,少なくとも10億円を下らない。 (5) 損害賠償請求権よって,原告は被告に対して,少なくとも10億円の損害賠償請求権を有する。 〔被告の主張〕原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 本件事案の性質に鑑み,無効理由1ないし 権よって,原告は被告に対して,少なくとも10億円の損害賠償請求権を有する。 〔被告の主張〕原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 本件事案の性質に鑑み,無効理由1ないし3に関する争点(2)アないしウから判断する。 1 本件補正の要旨変更該当性(1) 本件発明の要旨認定ア発明の要旨の認定は,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかである等の特段の事情がない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。 イこれを本件についてみるに,本件当初発明1は,①「無線電話通信システム」が複数の「セル」と,複数の「通信リンク」とともに少なくとも一つの「交換システム」を備える構成,②「セル」が「サービス地域に位置する無線電話」に対して「無線電話の呼サービス」を「提供する」機能を有する構成,③「交換システム」が「セル」との間で「リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える」機能を有する構成,④「セル」が備える「第1の手段」と「交換システム」が備える「第2の手段」とにより,無線電話からの音声の呼トラヒック(入トラヒック)の無線受信に応じて,セルが「入トラヒックを運ぶパケット」をリンクに送り,これを交換システムがその着信先に送るために受信する構成,⑤呼の出トラヒックを受け取ったことに応じて,交換システムが「出トラヒックを運ぶパケット」をリンクに送り,これをセルが無線送信のために受信する構成,⑥セル及び交換システムとリンクとのパケットの送受信は,「パケットを統計的に多重化された形式」で 換システムが「出トラヒックを運ぶパケット」をリンクに送り,これをセルが無線送信のために受信する構成,⑥セル及び交換システムとリンクとのパケットの送受信は,「パケットを統計的に多重化された形式」で行われる構成を有していることは,特許請求の範囲の記載から明らかである。 ウ次に,本件補正は,本件当初発明に,「交換システム」が備える「第2 の手段」につき,さらに,①「当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する」機能を担う手段と「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する」機能を担う手段(本件構成)を有すること,②出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する目的は,交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるようにするためであること,③入トラヒックを交換システムが送信する時刻を制御する目的は,入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に交換システムで受信されるようにするためであることを特定するものである。 エそして,本件発明における「無線電話通信システム」が備える「交換システム」は,特許請求の範囲の記載において,システムを構成する内部機器等の具体的構成を限定するものではないが,一定の形状や構造を有する実体を有することが前提となっていることは明らかである(クレー システム」は,特許請求の範囲の記載において,システムを構成する内部機器等の具体的構成を限定するものではないが,一定の形状や構造を有する実体を有することが前提となっていることは明らかである(クレームの構成上,構成要件F2における「当該交換システム」という文言が構成要件Cの「交換システム」を受けたものであり,かつ,かかる「交換システム」が,無線電話通信システム全体において,構成要件Aの「複数のセル」及び構成要件Bの「複数の通信リンク」と同列に扱われていることは,いずれも明らかというべきである。)。 また,本件発明における「送信」及び「受信」という文言も,本件特許の特許請求の範囲の記載における「伝える」,「送り」,「受信する」, 「送り出し」,「送信する」,「受信される」という各文言と同様に,「外へ(送信)」及び「外から(受信)」という意義を当然に含んでいるということができる。出トラヒックに関する「セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出」すとの記載における「受け取り」及び「送り出し」についても,「外部からの受信」及び「外部への送信」を意味するものと解されるから,本件構成についても,同様に解するのが相当である。 したがって,特許請求の範囲の記載において,送信及び受信の主体が一定の形状や構造を有する意義を持つ「交換システム」であると記載されている以上,その文言解釈上,「交換システム」による「送信」及び「受信」は,「交換システム」の内部手段と区別された外への出口及び外からの入口において行われると解するのが第一義的な解釈であり,少なくとも,そのような構成を含まない 交換システム」による「送信」及び「受信」は,「交換システム」の内部手段と区別された外への出口及び外からの入口において行われると解するのが第一義的な解釈であり,少なくとも,そのような構成を含まないものと解する余地はない。 オ以上によると,本件構成における「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」については,第一義的には,これを「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」を意味するものと解するのが相当である。 そして,本件発明2は,本件発明1を引用し,第2の手段がさらに出トラヒック及び入トラヒックの「コピー」に係る所定の機能を担う第3の手段を備える構成に限定するものであるから,同様に,上記手段を有するも のである。 カもっとも,本件構成における「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」が,専ら上記オのように「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」を指すのか,換言すれば,本件構成が,交換システムの出入口における送受信の制御に限られ,交換システムの内部手段における送受信の制御を一切排除する趣旨かどうかまでは,特許 送信する時刻を制御する手段」を指すのか,換言すれば,本件構成が,交換システムの出入口における送受信の制御に限られ,交換システムの内部手段における送受信の制御を一切排除する趣旨かどうかまでは,特許請求の範囲の文言上必ずしも一義的に明確に理解することができるとまではいえず,したがって,発明の要旨を認定するに際して,明細書又は図面を参酌することは許されるというべきである。 そこで,本件明細書等の記載を検討するに,証拠(甲2)によれば,本件明細書等の実施例における入トラヒックの送信時刻の調整については,本件明細書等の段落【0088】ないし【0105】,【図20】及び【図22】に記載されており,特に段落【0089】,【0090】には,「時間枠1402」を用いて「プロセッサ602からボコーダ604へのフレーム送信時刻」を「時刻1406から時刻1407へと変更」する旨が記載されていることが認められるところ,これらの記載によれば,上記調整は,「デジタル・セルラ交換機201」【図2】の内部の「音声符号器モジュール220」の更に内部に存在する「プロセッサ602」【図6】がパケットを受信するとともに,当該「プロセッサ602」から「音声符号器モジュール220」の内部に存在する「ボコーダ604」へ「トラヒック・フレーム」を送信する時刻を変更することにより行われているものと認めることができる。 他方,本件明細書等の段落【0055】には,「各ボコーダは、プロセッサ602からバッファ603を介して圧縮された音声のトラヒック・フレームを規則的な間隔で(例えば,20ミリ秒ごとに)受信し,そのトラヒック・フレームを所定数(例えば,160バイト)のパルス符号変調(PCM)された音声標本へと伸張する。各バイトは,この例では125μ秒の期間(これを(「チッ ば,20ミリ秒ごとに)受信し,そのトラヒック・フレームを所定数(例えば,160バイト)のパルス符号変調(PCM)された音声標本へと伸張する。各バイトは,この例では125μ秒の期間(これを(「チックタック」の)「チック」と称する)を有する。」との記載があり(乙2),かかる記載によれば,ボコーダは,入トラヒックを125μ秒ごとの規則的な間隔で公衆回線網へ送るものと認められる。 そうすると,本件明細書等の実施例には,交換システムの出口から外部に送信する時刻を制御する構成に関する記載はなく,専ら,交換システムの内部から内部への入トラヒックの送信時刻を調整する構成に関する記載がされているものと認められる。 そして,当業者の観点からすれば,本件特許の特許請求の範囲の記載が上記のような実施例に記載されている構成を敢えて排除しているとは考え難いことからすると,本件構成は,第一義的には,交換システムの出入口における送受信の制御を意味するものと解されるとしても,本件明細書等の実施例に記載されているような,交換システムの内部手段における送受信の制御をも包含すると認められ,したがって,本件構成における「交換システムから送信される」,「交換システムで受信される」,「交換システムが送信する」の各文言は,交換システムの出入口における送受信の制御のみならず,交換システムの内部における送受信の制御という動作をも含んでいると解するのが相当である。 (2) 本件当初明細書等に記載された技術的事項ア本件当初明細書等の記載内容本件当初明細書等には,次の事項が記載されている(乙2)。 (ア) 産業上の利用分野 ・「・・・本発明は,無線通信システムに関し,さらに詳細には,セルラ無線電話通信システムに関する。」(段落【0001】)(イ) 従来の技術 ている(乙2)。 (ア) 産業上の利用分野 ・「・・・本発明は,無線通信システムに関し,さらに詳細には,セルラ無線電話通信システムに関する。」(段落【0001】)(イ) 従来の技術・「セルラ無線電話システムにおいて,複数の無線セル(基地局とも称する)が,地理的な範囲全体に分散して配置され,それぞれが,セル地域と称するその付近に位置する無線電話に無線電話サービスを提供する。」(段落【0003】)・「セルにおける各無線装置は,電話網への独自のトランク接続を一般に必要とするので,1つの無線装置から他の無線装置に呼を渡すには,新たな無線装置およびトランクが元の通信網トランク接続に接続されるように移動電話交換構造を再編成する必要がある。通常のシステムでは,システム全体の容量は,システムが処理し得る最初の無線装置対通信網トランク接続の量およびシステムが実行しなければならない再編成(即ち,渡し処理)の量の関数である。再編成には,システムの制御構造が介在する必要であり,かつトランクの再編成に要する時間が長いことにより,これらのシステム制御構造の複雑さが増加する。 CDMAシステムは,通常の渡し処理に必要な速度より速い速度の「ソフト渡し」のために第2の無線接続の確立を必要とし,これによって,従来の設計のシステムの処理能力および再編成能力を超えて,重い負担をかける。」(段落【0008】)(ウ) 発明が解決しようとする課題・「・・・本発明は,従来の技術の以上およびその他の問題および不都合を解決することにより移動無線電話システムの容量を拡張することを目的とする。」(段落【0009】)(エ) 課題を解決するための手段・「・・・本発明により,基地局(セル)と無線電話の呼処理および交 換装置との間の通信を伝えるためにパ 拡張することを目的とする。」(段落【0009】)(エ) 課題を解決するための手段・「・・・本発明により,基地局(セル)と無線電話の呼処理および交 換装置との間の通信を伝えるためにパケット交換技術を用いる無線アクセス(セルラ無線電話などの)システムのための新たなシステム・アーキテクチャを導入する。無線アクセス音声通信の通話量は,通話が為されているときに,事実上,必然的に決まる(決定論的である)が,システムのアーキテクチャは,非決定論的で統計的に分散されたパケット交換方式によって音声の質を劣化することなく通話を伝えることができるように,1通りに編成される。」(段落【0010】)・「無線電話の呼のトラヒックは,セルと交換システムとの間をパケット状態で転送され,呼および交換システムを相互接続する通信リンク上で複数の呼のパケットが統計的に多重化される。統計的に多重化されたパケットの伝送により,リンクの帯域幅が高効率に使用され,CDMA無線電話システムのトラヒック処理に必要とされる処理効率および呼処理容量が得られる。さらに,パケットの転送は,フレーム中継方式を用いて行われるが,この方式により,伝送の端点を除くシステムのすべてのノードにおけるパケット・プロトコルの処理を排除することによって無線電話システムの転送効率および処理効率は,著しく高まる。」(段落【0012】)(オ) 実施例・「・・・図2のシステムは,複数の地理的に散在するセル202を備え,それらの各々が,その付近の移動無線電話203に無線電話サービスを提供する。・・・すべての移動無線電話203およびセル202の動作は,例えば全地球的測位システムの衛星によって発生・放送されるタイミング信号のような共通のマスター・クロックに同期させる。セル202間の相互接続,お すべての移動無線電話203およびセル202の動作は,例えば全地球的測位システムの衛星によって発生・放送されるタイミング信号のような共通のマスター・クロックに同期させる。セル202間の相互接続,およびセル202と公衆電話網100との間の相互接続は,デジタル・セルら交換機201によって2段階に行われる。まず,個々のセル202が,DCS201の1つ以上の セル相互接続モジュール(CIM)209にトランク207によって接続される。さらに,個々のDCS201のセル相互接続モジュール209が,そのDCS201の各音声符号器モジュール(SCM)220に光ファイバ光学的パケット交換トランク210によってそれぞれ接続される。デジタル・セルラ交換機201は,図1と同様に,それぞれ電話網100に複数のトランク106によって接続され,トランク106と機能的に等しいトランク206によって互いに直接接続される。交換機201の動作は,公衆電話網100のマスター・タイミング信号(図示せず)に同期されている。さらに,図1と同様に,セル202およびデジタル・セルラ交換機201は,これらが制御リンク108によって接続されるECP複合装置134の制御下で動作する。同様に,DCS201の種々のモジュール209および220が,共通のDCSコントローラ261に制御リンク208によって接続されて,その制御下で動作する。」(段落【0030】)・「圧縮された呼のトラヒックおよび信号が,バイト構成の情報の区分ごとの形式でチャネル要素245とクラスタ・コントローラ244との間で伝送される。各チャネル要素245は,例えば20ミリ秒ごとのように規則的な間隔でバイト構成の情報の1区分を送受信する。クラスタ・コントローラ244は,DCS201に送るために,バイト構成の情報の各区 送される。各チャネル要素245は,例えば20ミリ秒ごとのように規則的な間隔でバイト構成の情報の1区分を送受信する。クラスタ・コントローラ244は,DCS201に送るために,バイト構成の情報の各区分を水準3のプロトコルを含むLAPDプロトコル形式にフォーマットする。」(段落【0037】)・「セルラ・コントローラ244により,複数のチャネル要素245がTDMバス140に結合される。各クラスタ・コントローラ244は,割り当てられた入力および出力の「パイプ」を通してTDMバス140上で通信を行う。・・・クラスタ・コントローラ244の動作の結果として,それらが送受信したフレームは,TDMバス140上に統 計的に多重化され,これによって,TDMバス140の帯域幅のトラヒック処理能力は,他の伝送方式を超えて大幅に増大する。」(段落【0040】)・「図4にセル相互接続モジュール(CIM)209を示す。セル相互接続モジュール209は,具体的にはAT&TのDefinity 通信システムのユニバーサル・モジュールにある。このモジュール209には,コントローラ251の制御下で動作するローカル・エリア・ネットワーク・バス(LANBUS)250が含まれる。汎用DS1インタフェース252により,トランク207がLANバス250に接続される。各インタフェース252には,DS1インタフェース242のDS1設備インタフェース回路と同じ動作をするDS1トランク・インタフェース442,および集中ハイウェイ400によって相互に接続されたパケット処理要素(PPE)が含まれる。」(段落【0045】)・「PPE(パケット処理要素)401は,集中ハイウェイ400とLANバス250との間でLAPDフレームの中継機能を果たす。」(段落【0046】)・「セル相 が含まれる。」(段落【0045】)・「PPE(パケット処理要素)401は,集中ハイウェイ400とLANバス250との間でLAPDフレームの中継機能を果たす。」(段落【0046】)・「セル相互接続モジュール209のLANバス250には,拡張インタフェース253も接続されている。各拡張インタフェース253によって,光ファイバ・トランク210がLANバス250に結合される。拡張インタフェース253は,単に経路選択要素として作用する。」(段落【0047】)・「デジタル・セルラ交換機201の音声符号器モジュール220を図5に示す。・・・モジュール220には,TDMバス130およびLANバス250と全く同様のLANバス260が含まれる・・・。・・・TDMバス130は,DS1インタフェース132およびトランク106によって公衆電話網100に接続される。・・・拡張インタ フェース263によって,セル相互接続モジュール209からのファイバ・トランク210が,LANバス260に接続される。DCS201の各セル相互接続モジュール209は,そのDCS201の各音声符号器モジュール220に接続されている。DCS201どおしの間の相互接続は,トランク106を通して公衆電話網100によって与えられる。」(段落【0048】。本件当初明細書等には,段落【0048】が2個存在するが,そのうち2個目のものを指す。)・「本明細書において音声符号器ユニット(SPU)264と称する複数の呼処理ノードによって,バス260および130が相互接続される。」(段落【0049】)・「セル相互接続モジュール209および音声符号器モジュール220の動作の結果として,それらの間で伝送中のフレーム310は,トランク210上に統計的に多重化され,このトランク上でフレー 049】)・「セル相互接続モジュール209および音声符号器モジュール220の動作の結果として,それらの間で伝送中のフレーム310は,トランク210上に統計的に多重化され,このトランク上でフレーム中継されるので,トランク210によって与えられる帯域幅のトラヒック伝送容量は,回路交換などの他の伝送方式を超えて大いに増大する。」(段落【0050】)・「説明用の音声処理ユニット(SPU)264を図6に示す。各SPU264は,LANバス・インタフェース601を含む。インタフェース601は,所与の基板アドレス311を求めてLANバス260を進むフレーム310を監視し,求めるアドレス311を有するものを捕捉する。LANバス・インタフェース601は,バッファ620を含む。LANバス・インタフェース601は,フレーム310を捕捉すると直ちに,それにタイム・スタンプを追加し,それをバッファ620に格納してプロセッサ602に割り込み指示を出す。」(段落【0052】)・「・・・1つのセルに対し,そのセルの期間中またはハード渡しが起 こるまで,サービス回路612が1つ割り当てられる。各サービス回路612は,独自の自動処理回路を持つ。しかし,すべてのサービス回路612が,時分割ベースでプロセッサ602のサービスを受ける。 プロセッサ602は,SPU264のすべてのサービス回路612に対して,フレーム選択およびプロトコル処理の機能を果たす。」(段落【0053】)・「エコー・キャンセラー606は,電話網からのトラヒックを集中ハイウェイ607から受信し,電話網に向かうトラヒックを集中ハイウェイ607に送り出す。集中ハイウェイ607は,64Kbps のタイムスロットを伝送する受動直列TDMバスである。」(段落【0059】)・「TDMバス・ し,電話網に向かうトラヒックを集中ハイウェイ607に送り出す。集中ハイウェイ607は,64Kbps のタイムスロットを伝送する受動直列TDMバスである。」(段落【0059】)・「TDMバス・インタフェース608により,集中ハイウェイ607がTDMバス130に接続される。インタフェース608は,集中ハイウェイ607とバス130との間でタイムスロット交換(TSI)機能を果たす。この動作は,回路600によって発生されるクロック信号によってタイミングがとられ,変換維持ユニット609によって制御される。ユニット609は,その音声符号器モジュール220のコントローラ231の指示のもとで,各セルごとに集中ハイウェイ607からバス130へタイムスロットを割り当てる機能を果たす。」(段落【0060】)・「回路611によって出力されるTX_INT_X(判決注:送信割り込み信号)およびRX_INT_X(判決注:受信割り込み信号)の変移には,ボコーダ604のクロック621および622の出力信号に相応の変移を起こさせることにより,図21および22の例において,ボコーダ604のトラヒック・フレーム送信時刻を時刻1309から時刻1509に変化させ,かつボコーダ604のトラヒック・フレーム受信時刻 を時刻1409から時刻1609に変化させ,このようにしてボコーダ604の動作をプロセッサ602の時間変移された動作に揃えることが必要となる。しかし,この揃える瞬間に,ボコーダ604は,割り込み信号を進めるべきかまたは遅らせるべきかの判断によって,20msec に相当する通常の160の標本の代わりに,それぞれ159または161のPCM標本を回路605から収集するだけの時間がたってから呼トラヒックのトラヒック・フレームをプロセッサ602に送らなければな に相当する通常の160の標本の代わりに,それぞれ159または161のPCM標本を回路605から収集するだけの時間がたってから呼トラヒックのトラヒック・フレームをプロセッサ602に送らなければならず,さらに通常の160の代わりにそれぞれ159または161のPCM標本の期間内に呼トラヒックのフレームを回路605に出力しなければならない。この状態を補償するために,プロセッサ602は,回路611に命じて,図21および22にそれぞれ示したこのサービス回路612に対する信号TX_INT_X およびRX_INT_X に時間転移を起こさせるようにすると同時に,プロセッサ602は,この同じサービス回路612のボコーダ604に命じて,そのPCM出力から1つのPCM標本バイトを落とすようにさせ,さらにそのPCM入力において付加的に1つのPCM標本バイトを生成させる。ボコーダ604がこれらを行うと,この場合も結果として,ボコーダ604のトラヒック・フレームの入力および出力の動作が,PCM標本の出力および入力の動作にそれぞれ揃うようになる。」(段落【0097】)・「クロック回路600は,TDMバス130に接続されていて,通常の要領でこれからタイミング情報を引き出す。そして,この情報を種々の速度のクロック信号の形で分配する。・・・TDMバス130の動作は,電話網100に同期されているので,クロック回路600により,種々の要素の動作が電話網100のマスター・クロックに同期する。」(段落【0062】) ・「電話網100から移動無線電話203へのトラヒックの流れに対する初期のタイミング調整の状況を図19に示す。・・・すべての移動無線電話203およびすべてのセル202のすべてのチャネル要素245の動作は,全地球的測位衛星によって放送される信号など クの流れに対する初期のタイミング調整の状況を図19に示す。・・・すべての移動無線電話203およびすべてのセル202のすべてのチャネル要素245の動作は,全地球的測位衛星によって放送される信号などの共通のタイミング信号によって駆動され同期化される。これから,各セル202が20msec のセル・クロック1000信号を獲得し,このクロック1000が誘引となって,20msec ごとに時刻1300において,呼に関係する各チャネル要素245が,対応する移動電話203への送信を行う。」(段落【0080】)・「時刻1300に呼トラヒックを送ることができるためには,チャネル要素245が,時刻1300の最低でもある最小の期間だけ前の時刻tmin1301には,呼トラヒックを受信しなければならない。チャネル要素245は,前の送信の時刻1300のわずか後で現在の送信に関する前記の受信期限1301のわずか前に存在する時間枠1302の期間内に,送信情報を受信することが望ましい。このように,時間枠1302により,小さな時間的変動に対して余裕が与えられる。 しかし,呼が確立されつつあるときは,その呼を扱うチャネル要素245が,送信するための呼トラヒックのパケットをSPU264から何時受信するかは不明である。これは,既に述べたように,移動電話交換機201の動作が,セル202のクロックとは異なるクロックによって制御され,このクロックが,セル・クロック1000から独立していて,これに同期していないからである。」(段落【0081】)・「しかし,呼が確立される途上にあるときは,プロセッサ602がチャネル要素245から情報パケットを受信する時刻は不明である。これは,前記のように,チャネル要素245もプロセッサ602からパケットを何時受信するか不明だからである。従って, ,プロセッサ602がチャネル要素245から情報パケットを受信する時刻は不明である。これは,前記のように,チャネル要素245もプロセッサ602からパケットを何時受信するか不明だからである。従って,チャネル要素2 45とSPU264との間で呼の経路が最初に確立され,さらにこれらの間で空のトラヒックが流れ始めると,チャネル要素245からのパケットは,枠1402の外側にある時刻1404,さらに最悪の場合には,時刻tmin1401の後の時刻1404にプロセッサ602によって受信される。プロセッサ602は,チャネル要素245がパケットを送信する時刻1403を変更することはできないので,それらのパケットをプロセッサ602が受信する時刻1404も変更できない。プロセッサ602は,ボコーダ604にフレームを送る時刻1406を変更できるだけである。従って,時刻1404が枠1402の外にある場合,プロセッサ602がパケットを受信する時刻1404を枠1402の中に安全に位置付けるために,プロセッサ602は,ボコーダ604にフレームを送る時間を調節しなければならない期間1410を決定する。次に,プロセッサ602は,適応同期回路611にコマンドを送り,対応するサービス回路612に対する受信割り込み信号RX_INT_X を指定した量だけ調節させる。回路611は,これに応じて,受信した割り込み信号を指定された期間1410だけ変更する。このように,プロセッサ602からボコーダ604へのフレーム送信時刻が,時刻1406から時刻1407へと変更され,これによって,プロセッサ602におけるパケット受信時刻1404が,枠1402の内側に移される。」(段落【0090】)・「図23は,移動電話203において発生した呼に対してパケット交換(される)呼経路を確立す プロセッサ602におけるパケット受信時刻1404が,枠1402の内側に移される。」(段落【0090】)・「図23は,移動電話203において発生した呼に対してパケット交換(される)呼経路を確立するための制御信号を示す。移動電話203では,アクセス・チャネル上で呼び出される電話の電話番号を伝えるORIGINATION 信号(具体的には,1つ以上のデジタル・メッセージ)を送信することによって呼を開始する。・・・ORGINATION 信号は,セル202の中の1つにおいてDCMAアクセス・チャネルとして設計 されたチャネル要素245によって受信され,これによって,メッセージとしてそのクラスタ・コントローラ244に送られ,さらにこれによって,そのセル202のコントローラ241に渡される。各コントローラ241は,その呼を送るための自由なCDMA空中チャネルを指定した後,指定したチャネルの対応するチャネル要素245の識別情報と共に前記のメッセージを通常の要領でECP複合装置134に送る。」(段落【0110】)・「DCSコントローラ261は,前記のSETUP メッセージ(判決注:呼び出された電話番号を伝えるとともに選択されたSCM,トランク群及びサービス回路を特定するメッセージ)を受信すると,これに応じて,選択されたSCM220のコントローラ231に,特定されたトランク106群のトランク106(DS0チャネル)を捕捉させ,その捕捉されたトランク106上に呼び出された電話番号をパルス出力させる。選択されたトランク106は,TDMバス130上の特定のタイムスロットに応答する。また,DCSコントローラ261は,選択されたサービス回路612を収容している音声処理ユニット264の変換維持プロセッサ609に,前記のDS0チャネルをTDMバス1 定のタイムスロットに応答する。また,DCSコントローラ261は,選択されたサービス回路612を収容している音声処理ユニット264の変換維持プロセッサ609に,前記のDS0チャネルをTDMバス130からTDMバス・インタフェース608を介して選択されたサービス回路612に割り当てられた集中ハイウェイ607のそのタイムスロットに接続させることにより,そのサービス回路612に問題の呼を処理するように指示する。」(段落【0114】)イ本件当初明細書等に記載された技術的事項の範囲本件当初明細書等の実施例におけるDCS(DCS201)が,本件当初発明における「交換システム」に相当するところ,「交換システム」の「入トラヒックを運ぶパケット」の受信及び着信先への送信に係る時刻の制御については,本件当初明細書等の記載(段落【0088】~【010 5】,【図20】,【図22】)のうち,特に段落【0090】によれば,DCS中の音声符号器モジュール(SCM220)の内部にある音声処理ユニット(SPU264)のさらに内部にあるプロセッサ602によって,そのプロセッサからボコーダ604に送信される時刻を制御するものである。そして,上記DCS中の音声符号器モジュール(SCM220)の内部にある音声処理ユニット(SPU264)内には,ボコーダ以降にTDMバスへのインターフェース等が存在するから,プロセッサからボコーダへの送信が,「交換システム」の「出口」からの送信であるということはできない。 また,前記段落【0059】,【0060】,【0097】及び【図22】によれば,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御することにより,ボコーダ以降における着信先への「送信」の時刻の変化が生じるものであるが,これは,交換システムの出口からの送信において 図22】によれば,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御することにより,ボコーダ以降における着信先への「送信」の時刻の変化が生じるものであるが,これは,交換システムの出口からの送信において,PCMサンプルが125μ秒毎の一定の送信タイミングのいずれのタイミングで送信されるかが,ボコーダより前に行われた送信時刻の制御に伴って,結果的に変更されるにすぎず,「125μ秒毎」に「一定」という枠を外れて送信タイミングを合目的的に任意に変更できるものではない。よって,このような変更をもって送信時刻の制御(原告が主張するところの間接的制御)が行われていると解することはできない。 さらに,本件当初明細書等によると,本件当初発明は,伝送の端点を除くシステムの全てのノードにおけるパケット・プロトコルの処理を排除することを課題とする(段落【0012】)ものであり,DCSにおいては,プロセッサにおいてパケット・プロトコルが終了する(段落【0052】,【0053】)から,プロセッサ以降の部分において,所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるための制御を行うことは,通常,不可能である。パケット・プロトコル終了以降において,所定のウィンド ウ時間内に当該送信パケットが受信されるための制御を行うことが,本件出願日当時,周知技術であったということもできない。 以上によると,本件当初明細書等に記載された時刻の制御は,交換システムの内部構成におけるプロセッサからボコーダに送信する時刻を制御することを意味するものであって,「交換システム」の「出口」から「送信」する「時刻」を制御するものについては何らの記載もなく,また,示唆もないというべきである。 (3) 要旨変更について旧特許法41条の規定中,「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載 ら「送信」する「時刻」を制御するものについては何らの記載もなく,また,示唆もないというべきである。 (3) 要旨変更について旧特許法41条の規定中,「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということができるというべきところ,上記明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項は,必ずしも明細書又は図面に直接表現されていなくとも,明細書又は図面の記載から自明である技術的事項であれば,特段の事情がない限り,「新たな技術的事項を導入しないものである」と認めるのが相当である。そして,そのような「自明である技術的事項」には,その技術的事項自体が,その発明の属する技術分野において周知の技術的事項であって,かつ,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができ,その技術的事項が明細書に記載されているのと同視できるものである場合も含むと解するのが相当である。 これを本件においてみるに,前記のとおり,本件発明は,「交換システム」が備える「第2の手段」において,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該 交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する」構成(本件構成)を有するものである。 そして,前記(1)のとおり,本件発明の要旨の認定に関しては,本件構成における「入ト されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する」構成(本件構成)を有するものである。 そして,前記(1)のとおり,本件発明の要旨の認定に関しては,本件構成における「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」にいう「交換システムから送信される」,「交換システムで受信される」,「交換システムが送信する」の各文言は,交換システムの出入口における送受信の制御のみならず,交換システムの内部における送受信の制御という動作をも含んでいると解されるものの,その文言解釈上,第一義的には,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される。 これに対し,本件当初発明にはこのような記載はもともと存せず,本件構成のうち上記解釈される部分は本件補正によって新たに追加された構成である。 そして,前記(2)のとおり,本件当初明細書等に記載された時刻の制御の内容は,交換システムの内部構成におけるプロセッサからボコーダに送信される時刻を制御するものであるところ,当該制御によっては,入トラヒックについて交換システムの出口が送信する時刻を制御することはできず,さらに,パケット・プロトコルを終了させるプロセッサ以降において,所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるための制御を行うことが,本件出願日当時,周知技術であったということもできない。 したがって,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御する技術的事項を開示するに 内に当該送信パケットが受信されるための制御を行うことが,本件出願日当時,周知技術であったということもできない。 したがって,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御する技術的事項を開示するにすぎない本件当初明細書等には,本件構成のうち,交換システムの出口から送信する時刻を制御する技術的事項については何ら記載さ れておらず,また,本件当初明細書の記載から自明である技術的事項であるということできない。 以上によると,本件補正は,本件当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとは認められないから,本件補正は,旧特許法41条所定の「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということはできず,要旨変更に該当するものというほかない。 (4) 原告の主張についてア原告は,特許請求の範囲の文言と本件当初明細書等の記載によれば,構成要件F2は,交換システムにおける内部調整を意味するものと解釈することが適切であるとし,その理由として,交換システム内のボコーダは,125μ秒毎のクロックを有する公衆回線網の要求に合わせて,公衆回線網に向けてPCMサンプルを125μ秒毎に規則的に供給しているところ,交換システムの出口を含め,ボコーダ以降は,「パケットの受信時刻の非決定論的(予測不能)な変動」というものが存在せず,そもそもパケットの受信時間に幅を持たせる必要,すなわち「ウィンドウ時間」を設ける必要がないこと,「ウィンドウ時間」がなければ,「それを制御することにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」も存在し得ないこと,言い換えるならば,ボコーダ以降の交換システムは,従来の回線交換網のようにPCMサンプルの決 とにより,ウィンドウ時間内にパケットが受信されることとなるような関係にある送信時刻」も存在し得ないこと,言い換えるならば,ボコーダ以降の交換システムは,従来の回線交換網のようにPCMサンプルの決定論的な通信が行われる部分であるところ,従来の回線交換網には,パケットの非決定論的な受信が行われることを前提(課題)とする構成要件F2のような送信時刻の制御は不要であること,そうすると,構成要件F2の制御対象となる送信時刻は,課題が存在する,ボコーダより前の送信時刻であるはずであり,交換システムの出口の送信時刻ではあり得ない,というのが,当業者の自然に理解するところである旨主張する。 しかし,そもそも,本件発明は入トラヒックについて交換システムに至るまでの通信(セルから交換システムへの通信)がパケットによるものであることを要件としているものの,交換システムより先の通信がパケット以外の形態による通信であることや,当該通信が非決定論的なものでないことを何ら要件とするものでなく,出願当時の技術常識に照らし,およそそのような通信しかあり得ないというのが当業者の理解であるということを認めるに足りる的確な証拠もない。また,パケット・プロトコル終了以降において,所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるための制御を行うことが,本件出願日当時周知技術であったとはいえないにしても,少なくとも,現在では,プロセッサ,ボコーダ及び出口のインターフェースを一つの回路に集積することで交換システムの出口からの送信時刻を制御することも理論的には可能であるということは原告自身も認めているところであって当事者間に争いがなく,そうであるとすれば,仮に出願当時そのような技術が周知技術ではなく,あるいは実用化されるには至っていなかったとしても,出願当時, ということは原告自身も認めているところであって当事者間に争いがなく,そうであるとすれば,仮に出願当時そのような技術が周知技術ではなく,あるいは実用化されるには至っていなかったとしても,出願当時,構成要件F2の制御対象となる送信時刻はボコーダより前の送信時刻であり交換システムの出口の送信時刻ではあり得ないというのが当業者の自然に理解するところであるとまではいえず,ほかにそのように認めるべき的確な証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,構成要件F2が交換システムにおける内部調整を意味するものと解釈することが適切であるとする理由として,さらに,構成要件F2の送信時刻の制御は,「個々の呼の入トラヒック」についてなされる必要があるが,交換システムはその入線と出線においては,多重化された「複数の呼のトラヒック」を送受信するように設計されている,そのため,構成要件F2の制御は,トラヒックを多重化〔PCMサンプルの場合は時分割多重〕するための「マルチプレクサ」〔本件当初明細書等に記載された実 施例では【図6】の集中ハイウェイ607がこれに相当する。〕の前に行う必要がある,「送信する時刻」の後に「マルチプレクサ」が必要である以上,「送信する時刻」は「交換システムの出口(外部との境界点)から送信する時刻」ではあり得ない,なお,交換システムにおいて「多重化」が必要であるということは,クレームに記載する必要がないほど,本件出願日当時の技術者にとって当たり前のことであった旨主張する。 しかし,交換システムが必ずマルチプレクサを備えるものであることは,本件発明の特許請求の範囲に何ら記載されておらず,マルチプレクサが必要な場合には,交換システムの出口から送信する時刻を制御することがおよそ不可能であるという マルチプレクサを備えるものであることは,本件発明の特許請求の範囲に何ら記載されておらず,マルチプレクサが必要な場合には,交換システムの出口から送信する時刻を制御することがおよそ不可能であるという前提が正しいと認めるに足りる的確な証拠もない。 また,仮に交換システムにおいて多重化の機能が必要であるとしても,それが直ちに交換システムの内部における送信時刻の制御しかあり得ないということには結びつかないというべきである(むしろ,プロセッサ,ボコーダ及び出口のインターフェースを一つの回路に集積することで交換システムの出口からの送信時刻を制御することも理論的には可能であると認められることは前記のとおりである。)。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,百歩譲って,「送信」は「通過させる」という程度の意味と考えて良いと仮定し,「交換システムから送信」,「交換システムが送信」が「交換システムの出口から送信」,「交換システムの出口が送信」と読めると考えたとしても,本件当初明細書等は,「出口」でのトラヒックの送信時刻(通過時刻)の制御を開示しているから,本件発明が無効となることはないとも主張する。 しかし,かかる間接的制御の主張が採用できないものであることは,前記(2)イで説示したとおりである。 したがって,原告の上記主張もまた採用することができない。 2 争点(2)ア(無効理由1〔要旨変更による出願日繰下げを前提とする新規性・進歩性の欠如〕)について(1) 前記1のとおり,本件補正は要旨の変更に該当するから,旧特許法40条により,本件出願は,本件補正書が提出された平成8年7月31日にされたものとみなされる。 (2) 弁論の全趣旨によれば本件発明の対応米国特許であると認められる乙6文献には,以下 ら,旧特許法40条により,本件出願は,本件補正書が提出された平成8年7月31日にされたものとみなされる。 (2) 弁論の全趣旨によれば本件発明の対応米国特許であると認められる乙6文献には,以下の事項が記載されている(文中の「/」は,原文における改行箇所を示す。)。 「6. Aradio-telephonecommunicationssystemcomprising: /apluralityofcellseachprovidingradio-telephonecallservicestoradiotelephoneslocatedinazoneservedbythecell; /apluralityofcommunicationslinksconnectedtothepluralityofcells, atleastonelinkconnectedtoeachcell; /atleastoneswitchingsystemconnectedtothepluralityoflinksforconveyingradio-telephonecalltraffictoandfromthecellsoverthelinks; /eachcellincludingfirstmeansresponsivetoradioreceptionofincomingvoicecalltrafficfromradiotelephones, fortransmittingpacketscarryingtheincomingtrafficofindividualcallsontheconnecte ephones, fortransmittingpacketscarryingtheincomingtrafficofindividualcallsontheconnectedatleastonelinkinstatistically-multiplexedform, andfurtherforreceivingpacketscarryingoutgoingvoicecalltrafficoftheindividualcallsontheconnectedatleastonelinkinstatistically-multiplexedformforradiotransmissionoftheoutgoingtraffictotheradiotelephones; and /eachswitchingsystemincludingsecondmeansresponsivetoreceiptofoutgoingvoicecalltrafficdestinedforradiotelephonesservedbyacell, fortransmittingpacketscarryingtheoutgoingtrafficoftheindividualcallsinstatistically-multiplexedformontheat leastonelinkconnectedtothecell, andfurtherforreceivingpacketscarryingincomingvoicecalltrafficoftheind ctedtothecell, andfurtherforreceivingpacketscarryingincomingvoicecalltrafficoftheindividualcallsinstatistically-multiplexedformontheatleastonelineconnectedtothecellfortransmissionoftheincomingtraffictodestinationsoftheincomingtraffic, /thesecondmeansincluding /meansforcontrollingtimeinstantsofswitchingsystemtransmissionfromtheswitchingsystemofthepacketscarryingtheoutgoingtraffictoensurereceiptofthetransmittedpackets, atacellservingauserterminalforwhichthetransmittedpacketsaredestined, withinpredeterminedwindowsoftime, and /meansforcontrollingtimeinstantsofswitchingsystemtransmissionfromtheswitchingsystemoftheincomingtraffictoensurethatthepacketscarryingtheincomingtraff theswitchingsystemoftheincomingtraffictoensurethatthepacketscarryingtheincomingtrafficwillhavebeenreceivedattheswitchingsystemwithinpredeterminedwindowsoftimepriortothetimeinstantsoftheirtransmissionfromtheswitchingsystem.」(和訳:請求項6.サービス地域に位置する無線電話に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと,/前記の各セルに少なくとも1つは接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと,/前記複数のリンクに接続されていて,前記セルとの間で前記リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの交換システムとを備え,/各セルが,無線電話から入って来る音声の呼トラヒックの無電受信に応じて,個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを,統計的に多重化された形式で,前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り,さらに無線電話に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために,接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第1の手段を備え,/さらに各交換システムが,セルによってサービスされる無線電話に向かって出て 行く音声呼トラヒックを受け取り,これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記セルに接続された じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し,さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために,前記セルに接続された少なくとも1つのライン上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第2の手段を備え,/当該第2の手段は,当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段と,/入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで入トラヒックを運ぶパケットが受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段とからなる/ことを特徴とする無線電話通信システム。)「21. Thesystemofclaim 20 wherein: /apluralityofthecellsoccasionallysimultaneouslyprovideradio-telephonecallservicestoacommononemobileradio-telephone; and/eachthirdmeansinclude/meansresponsivetoreceiptofoutgoingcalltrafficofthehandledcallanddestinedfortheonemobileradio-telephone, forreplicatingthereceivedoutgoingcalltr callanddestinedfortheonemobileradio-telephone, forreplicatingthereceivedoutgoingcalltraffic, packetizingeachreplicaoftheoutgoingcalltraffic, andaddressingthepacketsofeachreplicatoadifferentoneofthecellsthataresimultaneouslyprovidingtheservicestotheonemobileradio-telephone, andfurtherforreceivingpacketscarryingincomingcalltrafficofthehandledcallfromeachoneofthecellsthataresimultaneouslyprovidingtheservicestotheonemobileradiotelephone, thepacketsreceivedfromdifferentcellseachcarryingacopyoftheincomingtraffic, depacketiz ingthepacketsreceivedfromthedifferentcells, andselectingonlyoneofthedepacketizedcopiesoftheincomingtrafficfortransmissiontothedestination.」(和訳:請求項21.請 ofthedepacketizedcopiesoftheincomingtrafficfortransmissiontothedestination.」(和訳:請求項21.請求項20に記載のシステムであって,/時として複数のセルが,無線電話呼のサービスを1つの共通の移動無線電話に同時に与えることがあり,/さらに,各第3の手段が,前記移動無線電話に向かう処理される呼の出呼トラヒックの受信に応じて,当該受信された出呼トラヒックをコピーし,出呼トラヒックの各コピーをパケット化し,前記1つの移動無線電話にサービスを同時に与えている複数のセルのうちの異なる1つへ各コピーのパケットをアドレス指定し,さらに,前記処理される呼の入呼トラヒックを運ぶパケットであって,異なるセルから受信される当該パケットはそれぞれ前記入トラヒックのコピーを運ぶものであるパケットを,前記1つの移動無線電話にサービスを同時に与えている複数のセルの各々から受信し,前記異なる複数のセルから受信されたパケットのパケット化を解除し,そして,パケット化解除された前記入トラヒックのコピーのうちの1つだけを宛先への送信のために選択する手段を備える,/ことを特徴とするシステム。)(3) 上記記載によれば,本件発明1が乙6文献の特許請求の範囲の請求項6に記載された発明と同一であることは明らかである。 また,乙6文献の特許請求の範囲の請求項6に記載された発明の第2の手段が同請求項21に記載された発明の第3の手段を備えるようにすることは,出願当時の技術常識に照らし当業者が容易に想到できたものと認められる。 (4) 以上によれば,本件発明1は,乙6文献の特許請求の範囲の請求項6に記載された発明と同一であり,本件発明2は,同請求項6に記載された発明及び同請求項21に 容易に想到できたものと認められる。 (4) 以上によれば,本件発明1は,乙6文献の特許請求の範囲の請求項6に記載された発明と同一であり,本件発明2は,同請求項6に記載された発明及び同請求項21に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから,本件特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 よって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 3 争点(2)イ(無効理由2〔サポート要件違反〕)について(1) 本件特許権に適用される平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項1号は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定し,いわゆるサポート要件を記載要件として要求しているところ,このように法がサポート要件を要求する趣旨は,仮に特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明に記載若しくは開示された技術的事項の範囲を超えるような場合に,そのような広範な技術的範囲にまで独占権を付与することになれば,当該技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的を逸脱するため,そのような特許請求の範囲を許容しないものとしたというものであるから,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。 (2) これを本件についてみるに,本件補正は,本件当初明細書等の発明の詳細な説明については,段落【0034】における先行技術文献に関する記載を変更したものにすぎず,本件当初明細書等の発明の詳細な説明と,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は,その技術内容に係る記載において異なるものではない。そうすると,本件発明における構成要件F2(本件構成)のうち,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信さ れるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,前記1(2)のとおり,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,かつ,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもなく,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから,本件発明は,平成6年法律第116号附則6条でなお従前の例によるとされる特許法36条5項1号のサポート要件を満たしておらず,本件発明1及び2に係る特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 よって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 4 争点(2)ウ(無効理由3〔実施可能要件違反1〕)について(1) 本件特許権に適用される平成6年法律第116号によ 4条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 4 争点(2)ウ(無効理由3〔実施可能要件違反1〕)について(1) 本件特許権に適用される平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項は,「発明の詳細な説明にはその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない」と規定し,いわゆる実施可能要件を記載要件として要求しているところ,このように法が実施可能要件を要求する趣旨は,有用な技術的思想の創作である発明を公開した代償として独占権が与えられるという特許制度の目的を担保するため,発明の詳細な説明に当該請求項に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載を求めるというものと認められるから,実施可能要件を満たすためには,出願当時の技術常識からみて,当業者が,出願に係る発明を正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載がなければならず,その結果,所期の作用効果を奏することができるものであることを要すると解するのが相当である。 (2) これを本件についてみるに,前記3のとおり,本件当初明細書等の発明の詳細な説明と,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は,その技術内容に係る記載において異なるものではなく,したがって,本件発明における構成要件F2(本件構成)のうち,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,入トラヒッ 内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,入トラヒックを交換システムの出口が送信する時刻を制御する技術的事項につき,出願当時の技術常識からみても,当業者がそれを正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載があるとはいえないから,本件発明は,平成6年法律第116号附則6条でなお従前の例によるとされる特許法36条4項の実施可能要件を満たしておらず,本件発明1及び2に係る特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 よって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 5 結論以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林 保 裁判官 田中孝一 裁判官 寺田利彦 (別紙)当事者目録 ルクセンブルグ国エルー<以下略>原告ハイポイントエスアーエールエル同訴訟代理人弁護士片山英二 服部 誠同訴訟復代理人弁護士岡本尚美同訴訟代理人弁理士小林純子 萩原 誠同補佐人弁理士黒川 恵 相田義明東京都新宿区<以下略>被告K 弁護士岡本尚美 同訴訟代理人弁理士小林純子 萩原誠 同補佐人弁理士黒川恵 相田義明 東京都新宿区<以下略> 被告KDDI株式会社 同訴訟代理人弁護士辻居幸一 渡辺光 高石秀樹 奥村直樹 同補佐人弁理士那須威夫 谷口信行 工藤嘉晃 東京都千代田区<以下略> 被告補助参加人株式会社日立製作所 同訴訟代理人弁護士城山康文 岩瀬吉和 後藤未来 アメリカ合衆国イリノイ州<以下略> 被告補助参加人モトローラソリューションズインコーポレーテッド 同訴訟代理人弁護士窪田英一郎 柿内瑞絵 乾裕介 今井優仁 野口洋高 中岡起代子 熊谷郁 同補佐人弁理士矢作隆行 以上 特許公報添付省略
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