- 1 -平成26年6月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第11958号不正競争防止法等に基づく損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成26年4月15日判決茨城県日立市<以下略>原告株式会社シンシンブロック 同所原告株式会社林物産発明研究所 東京都中央区<以下略>原告株式会社林物産 上記3名訴訟代理人弁護士上山浩井上拓東京都豊島区<以下略>被告日東商事株式会社 同訴訟代理人弁護士鈴木修 主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告株式会社シンシンブロック(以下「原告シンシンブロック」という。)に対し,600万円及びこれに対する平成25年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告株式会社林物産発明研究所(以下「原告発明研究所」という。)に対し,300万円及びこれに対する平成25年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 3 被告は,原告株式会社林物産(以下「原告林物産」という。)に対し,100万円及びこれに対する平成25年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,被告に対し,被告による別紙物件目 告林物産」という。)に対し,100万円及びこれに対する平成25年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,被告に対し,被告による別紙物件目録記載の雨水貯留浸透槽用の部材(ただし,後記のとおり商品名の変更がある。以下,商品名の変更の前後を通じ,「被告製品」という。)の製造販売に関して,不正競争防止法2条1項1号,13号及び14号所定の不正競争行為(以下,それぞれを単に「1号の不正競争行為」などという。),商標権侵害並びに不法行為による損害金の一部(原告シンシンブロックは8000万円のうち600万円,原告発明研究所は985万円のうち300万円,原告林物産は1000万円のうち100万円)及びこれらに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成25年5月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(各原告の請求については後述する。)。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証の枝番の記載は省略する。 以下同じ。)(1) 当事者ア(ア) 原告シンシンブロックは,雨水貯留浸透施設等の設計,施工,監理等を目的とする株式会社である。 (イ) 原告発明研究所は,各種無体財産の取得,保有,運用業務等を目的とする株式会社である。 (ウ) 原告林物産は,雨水貯留浸透槽用の部材を含む環境関連製品の研究,開発を行っている株式会社である。 イ被告は,石油製品の仕入れ販売,ブロック工事業等を目的とする株式- 3 -会社である。 (2) 原告らの製品,商標権等ア原告シンシンブロックは,商品名を「シンシンブロック」,ローマ字略記を「SSBB」(以下,これらを併せて「原 工事業等を目的とする株式- 3 -会社である。 (2) 原告らの製品,商標権等ア原告シンシンブロックは,商品名を「シンシンブロック」,ローマ字略記を「SSBB」(以下,これらを併せて「原告標章」という。)とする雨水貯留浸透槽用の部材(以下「原告製品」という。)を平成8年に開発し,その後販売している。原告製品は,平板部分と柱部分等から成るプラスチック製の部材で,545型,720-3A型,360-1型等様々な型があり,地下に複数配列して空間を形成し,その空間に雨水等を貯留することができるようにしたものである。(甲5)イ原告発明研究所は,別紙商標権目録記載の2件の商標権(以下,これらを「本件商標権」と,その登録商標を「本件商標」と総称する。)を有している。 ウ別紙証明書等目録記載のとおり,原告製品又は原告製品を用いた技術等につき,① 原告シンシンブロック及び原告林物産は財団法人下水道新技術推進機構(以下「下水道機構」という。)から同記載1及び2の建築技術審査証明書並びに社団法人雨水貯留浸透技術協会(以下「雨水協会」という。)から同目録記載4の技術評価認定書を,② 原告シンシンブロックは上記財団法人から同目録記載3の新技術研究成果証明書をそれぞれ取得しており,また,③ 原告林物産は建設省(当時)において同目録記載5の新技術提供システムの登録を受けている(以下,これらの証明書等を「原告証明書等」と総称する。)。(甲8)エ原告シンシンブロック及び原告林物産は,有効期間を平成19年4月1日から平成24年3月31日までとして,雨水協会から原告製品についての技術推薦書(以下「本件技術推薦書」という。)を取得した(ただし,有効期間が延長されたかについては争いがある。)。 (3) 被告の行為等- 4 -ア被告製品の製造販 会から原告製品についての技術推薦書(以下「本件技術推薦書」という。)を取得した(ただし,有効期間が延長されたかについては争いがある。)。 (3) 被告の行為等- 4 -ア被告製品の製造販売に至るまでの経緯原告シンシンブロックと被告は,平成18年から,原告シンシンブロックが被告に原告製品を販売し,被告がこれを第三者に転売する取引を行っており,平成19年1月16日,被告を原告シンシンブロックの販売代理店とする旨の代理店取引契約(甲9。以下「本件代理店契約」という。)を締結した。また,原告シンシンブロックと被告は,同年9月25日,原告製品を製造するための金型一式を原告シンシンブロックが被告に1億4300万円で譲渡する旨の売買契約(甲37。以下「本件金型売買契約」という。)を締結した。さらに,原告シンシンブロックと被告は,平成20年4月1日,後記(5)のとおり,通常実施権許諾契約(甲36,乙33。以下「本件許諾契約」という。)を締結した。 イ被告製品の製造販売等(ア) 被告は,平成20年10月頃から,他社に委託して被告製品を製造し,自ら販売している。 (イ) 被告は,被告製品の商品名を原告標章と同一の「シンシンブロック」及び「SSBB」としており,別紙被告標章目録記載の各標章(以下「被告標章」と総称する。)を被告製品並びにそのカタログ及びホームページに表示していた。被告は,平成24年秋頃,被告製品の商品名を「ジオプール」に変更したが,その後も被告製品のカタログ中に被告標章の記載が残されていた。(甲10,11,18,19)(ウ) 被告は,平成24年末までに,東京電力福島第一原子力発電所の震災事故に関する汚染水貯留施設の設置工事(雨水貯留浸透槽用の部材を用いるもの)につき,東京電力株式会社から工事を請け負った前田建 (ウ) 被告は,平成24年末までに,東京電力福島第一原子力発電所の震災事故に関する汚染水貯留施設の設置工事(雨水貯留浸透槽用の部材を用いるもの)につき,東京電力株式会社から工事を請け負った前田建設工業株式会社(以下「前田建設」という。)が部材の納入を委託した岡三リビック株式会社(以下「岡三リビック」という。)に被- 5 -告製品を納入した(以下,この工事を「本件設置工事」という。)。 ウ原告証明書等の使用被告は,上記の商品名の変更の前後を通じ,被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に,被告製品の品質を保証するものとして,原告証明書等(変更前は別紙証明書等目録記載2のもの,変更後は同2及び3のもの)を表示していた。(甲10,11)エ本件技術推薦書の有効期間に関する発言本件設置工事における部材の納入に当たって,被告は,遅くとも平成24年7月10日までに,前田建設に対し,本件技術推薦書の有効期間が同年3月31日で切れている旨の発言(以下「本件発言」という。)をした。 (4) 原告らの仮処分命令の申立て及び裁判上の和解ア 13号の不正競争行為について原告シンシンブロック及び原告林物産は,平成24年7月5日,被告に対し,被告による原告証明書等の使用が13号の不正競争行為に該当することを理由に被告製品の販売の差止め等を求める仮処分命令の申立てをした。原告シンシンブロック及び原告林物産と被告は,同月31日,裁判上の和解(甲14。以下「13号関係和解」という。)をして,被告が被告製品の広告又は取引に用いる書類又は通信について別紙証明書等目録記載の証明,認定又は登録を受けている旨の表示をしていたことが不正競争防止法2条1項13号の要件に該当すると認めること,その損害賠償請求権については本案訴訟において解決することを て別紙証明書等目録記載の証明,認定又は登録を受けている旨の表示をしていたことが不正競争防止法2条1項13号の要件に該当すると認めること,その損害賠償請求権については本案訴訟において解決することを合意した。 イ本件商標権について(ア) 原告発明研究所は,平成24年6月1日,被告に対し,本件商標権の侵害を理由に被告製品の販売の差止め等を求める仮処分命令の申立てをした。原告発明研究所と被告は,同年8月29日,裁判上の和- 6 -解(甲16。以下「商標権関係和解」という。)をして,被告が被告製品に付した「シンシンブロック」及び「SSBB」の文字を全て消去したことを確約し,今後被告製品に上記各文字を使用しないことを合意した。 (イ) 被告は,同年10月23日,本件設置工事に関して被告製品を納品した。この被告製品には「SSBB」の文字が付されたものが含まれていた。 (5) 本件許諾契約及びその解除ア原告シンシンブロックと被告は,平成20年4月1日,契約期間を5年とする以下の内容の本件許諾契約を締結した。(甲36,乙33)(ア) 原告シンシンブロックは,本件許諾契約の期間中,被告に対し,日本国内において,雨水貯留浸透施設シンシンブロック(SSBB)(以下,本件許諾契約の適用に関して「本製品」という。)及び本製品を用いて構築する全ての施設に関し,原告シンシンブロックが現に有する契約書記載の5件の特許を含む特許の存続期間中,本製品の製造及び販売並びに本製品を使用した施設の設計,施工及び販売を行う権限を許諾する。 (イ) 本件許諾契約によって生じる原告シンシンブロックの権利及び義務は原告シンシンブロックが窓口となり全て行うものとし,本製品に関わる必要な産業財産権は原告シンシンブロックがその使用を保証する。 (ウ) 対価は,被 よって生じる原告シンシンブロックの権利及び義務は原告シンシンブロックが窓口となり全て行うものとし,本製品に関わる必要な産業財産権は原告シンシンブロックがその使用を保証する。 (ウ) 対価は,被告と原告シンシンブロックが協議の上,別途覚書に定めるものとし,被告は,毎月末日を締切日とし,当月の合計金額に消費税を加算して,翌月末日までに原告シンシンブロックの指定する銀行口座に振り込む。 (エ) 被告は,上記締切日から14日以内に,当月の販売ないし自社使- 7 -用した本製品の型式,販売数量,販売先及び対価とこれを用いて構築した施設の名称,設置場所,規模,使用目的,施工時期等の内訳を記載した実施報告書を原告シンシンブロックに送付するものとする。また,被告は,3か月ごとに次の3か月間の本製品の販売予定数量とその販売予定に係わる施設の名称,設置場所,規模,使用目的,施工時期等の内訳を記載した実施予定報告書を原告シンシンブロックに通知する。 (オ) 被告及び原告シンシンブロックは,相手方が本件契約に違反した場合,相手方にその是正を催告し,文書による催告後30日以内に相手方が当該違反を是正しないときは,本件許諾契約を解除することができる。ただし,これを解除するに当たり,被告及び原告シンシンブロックは,相互に債権債務を精算しなければならない。 イ原告シンシンブロックは,平成24年7月4日,被告に対し,本件許諾契約に定める実施報告書及び実施予定報告書の提出を被告が怠っている旨指摘し,平成20年4月1日から平成24年6月末日までの実施報告書及び同年7月から9月までの実施予定報告書の提出を求めるとともに,30日以内に履行がない場合には本件許諾契約を解除する旨の催告をした。そして,同年8月8日,被告に対し,上記催告後30日が経過しても被告が実 7月から9月までの実施予定報告書の提出を求めるとともに,30日以内に履行がない場合には本件許諾契約を解除する旨の催告をした。そして,同年8月8日,被告に対し,上記催告後30日が経過しても被告が実施報告書等を提出しないとして,本件実施契約を解除する旨の意思表示をした(以下,この解除を「本件解除」という。)。 2 原告らの請求並びに各請求に係る争点及び争点に関する当事者の主張(1) 1号の不正競争行為(出所混同惹起行為)を理由とする請求原告シンシンブロックは,被告が被告製品のカタログ,被告のホームページ及び被告製品に被告標章を使用したことが1号の不正競争行為に該当し,これにより8000万円の損害を被ったと主張して,その一部及び遅延損害金の支払を求めている。 - 8 -この請求に係る争点及び当事者の主張は,次のとおりである。 ア被告による被告標章の使用が1号の不正競争行為に該当するか(原告シンシンブロックの主張)原告シンシンブロックは,原告製品の商品名として原告標章「シンシンブロック」及び「SSBB」を使用している。原告製品には長年にわたる全国各地への納入実績が多数あり,原告シンシンブロックは新聞,雑誌等に原告製品の広告を多数出しており,原告製品はプラスチック製雨水貯留浸透槽用の部材の市場で高いシェアを占めている。したがって,原告標章が原告シンシンブロックの商品等表示として需要者に広く認識されていたことは明らかである。 被告は,遅くとも平成22年末から,被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に被告製品の商品名として被告標章を表示し,被告製品自体にも「SSBB」との刻印を施している。これらの行為が需要者に混同を生じさせるおそれがあることは明白であるから,1号の不正競争行為に該当する。 (被告の主張)雨 告標章を表示し,被告製品自体にも「SSBB」との刻印を施している。これらの行為が需要者に混同を生じさせるおそれがあることは明白であるから,1号の不正競争行為に該当する。 (被告の主張)雨水貯留浸透槽用の部材の市場における原告製品のシェアは減少の一途をたどっており,近年は広告等もされなくなっているから,今日,原告標章に周知性はない。 また,被告製品に施された刻印は,被告から被告製品の製造を受託した業者が,被告製品の管理をするために,人目に付きにくい箇所に小さく付したものであり,自他商品を識別するものとして機能することはないから,商品等表示に当たらない。 さらに,雨水貯留浸透槽用の部材は産業用,業務用商品であり,これを取り扱う業者が原告製品と被告製品を誤認混同することはない。 したがって,被告が1号の不正競争行為をしたとは認められない。 - 9 -イ本件許諾契約の効力ないし原告シンシンブロックの承諾の有無(被告の主張)(ア) 本件許諾契約a 原告シンシンブロックは,本件許諾契約により,本製品に関わる必要な産業財産権を被告が使用することを保証した。これにより,被告は「シンシンブロック」及び「SSBB」との商品名,すなわち被告標章を使用することを許諾されている。 b 原告シンシンブロックは,本件商標権を有しているのは原告発明研究所であるから,本件許諾契約により本件商標と同一又は類似の被告標章の使用が許諾されていたということはできないと主張する。 しかし,原告シンシンブロックと原告発明研究所は,いずれもその取締役及び監査役が原告シンシンブロックの代表取締役であるA及びその妻子らによって占められた同族会社であって,その所在地も基本的には同一であり,実態は一つの会社である。 そして,原告シンシンブロック及び び監査役が原告シンシンブロックの代表取締役であるA及びその妻子らによって占められた同族会社であって,その所在地も基本的には同一であり,実態は一つの会社である。 そして,原告シンシンブロック及び原告発明研究所は,原告シンシンブロックや原告林物産を権利者として原告製品に係る特許権等を取得した後,原告シンシンブロックに権利を集中して帰属させていたところ,最終的には原告発明研究所に特許権等を移転し,原告シンシンブロックに専用実施権を設定するなどしてきた。これらの行為は,原告シンシンブロックが被告を含む複数の債権者に対し10億円を超える多額の債務を負っていたため,取引上の債務のない原告発明研究所を別途設立して上記特許権を移転し,これら特許権を差し押さえられる危険を回避するためにされたものであった。また,原告シンシンブロック及び原告発明研究所は,それぞれの法人格を峻別せずに行動しており,法人格を悪用している。 したがって,原告シンシンブロックが本件許諾契約により被告標- 10 -章の使用が許諾されていないと主張することは許されない。 (イ) 原告シンシンブロックの承諾被告は,被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に「シンシンブロック」及び「SSBB」という商品名を使用することにつき原告シンシンブロックから承諾を得ていた。また,被告は,本件金型売買契約により原告製品の金型を譲り受けて被告製品を製造していたのであり,被告製品に「SSBB」という刻印を付すことの承諾を得ていた。 (原告シンシンブロックの主張)本件許諾契約は,本件代理店契約の締結期間中に締結されたものであり,被告が原告シンシンブロックと別個独立して被告製品を製造販売することを前提とするものではなかった。 また,本件商標権を有しているのは原告発明研究所であ 理店契約の締結期間中に締結されたものであり,被告が原告シンシンブロックと別個独立して被告製品を製造販売することを前提とするものではなかった。 また,本件商標権を有しているのは原告発明研究所であるから,原告シンシンブロックとの間で締結された本件許諾契約により本件商標の使用が許諾されていたということはできない。 さらに,被告は,原告シンシンブロックが法人格を濫用していると主張するが,原告シンシンブロックと原告発明研究所はそれぞれ目的及び社会的実体を有する別法人であり,会計上の混同もないから,被告の主張は失当である。 ウ本件許諾契約が解除されたか(原告シンシンブロックの主張)(ア) 原告シンシンブロックは,被告に対し,実施報告書等の提出義務を履行するよう文書により催告したが,被告がこれを履行しなかったため,本件契約の定めに基づき本件解除の意思表示をした。 (イ) 被告は,原告シンシンブロックと被告の間の債権債務を精算するまでは本件解除の効力が生じないと主張する。 - 11 -しかし,被告は実施報告書等の提出義務を履行しなかったことにより本件許諾契約を存続させる利益を自ら放棄したというべきである。 また,実施報告書等の提出義務は対価の正確性を担保するために必須かつ本質的な義務であるから,その履行がないのに債権債務を精算するまでは解除の効力が生じないとするのは不合理である。本件許諾契約中の契約解除に当たり債権債務を精算しなければならない旨の規定は,解除の後に債権債務を精算すべき旨を規定したものと解釈するのが公平,自然であり,本件解除は有効である。 (被告の主張)本件許諾契約は,本件許諾契約を解除するに当たり相互に債権債務を精算しなければならない旨定めているところ,これは,解除の効力を生じさせるためには解除前に債権 解除は有効である。 (被告の主張)本件許諾契約は,本件許諾契約を解除するに当たり相互に債権債務を精算しなければならない旨定めているところ,これは,解除の効力を生じさせるためには解除前に債権債務を精算することを要するとしたものである。そして,被告と原告シンシンブロックの間の債権債務はいまだ精算されていないから,本件解除は効力を生じない。 エ損害及びその額(原告シンシンブロックの主張)(ア) 被告は,遅くとも平成22年末から被告標章の使用により本件設置工事を含む多数の工事案件を受注している。そして,本件設置工事において被告が被告製品を納入することによって得た利益は8000万円(納入した被告製品の数量2万㎥に,1㎥当たりの利益4000円を乗じた額)を下らないから,不正競争防止法5条2項により,同額が原告シンシンブロックの損害となる(なお,原告シンシンブロックの被告に対する1号,13号及び14号の各不正競争行為を理由とする損害賠償請求権は請求権競合の関係にある。)。 (イ) 被告は,原告シンシンブロックは原告製品を販売しておらず,被告が得た利益は全て被告の寄与によるものであるから,原告シンシン- 12 -ブロックには損害が生じていないと主張する。しかし,原告シンシンブロックは原告製品の製造を全て委託し,代理店を介して自社ブランドとして販売している。被告は原告標章と同一又は類似の被告標章を使用することにより受注に成功したものであるから,被告の主張は認められない。 (被告の主張)不正競争防止法5条2項は,損害の額の推定規定にすぎず,被告の行為によって原告シンシンブロックが損害を被ったことまでを推定するものではない。被告が平成20年10月頃から本件許諾契約に基づき被告製品の製造販売を開始して以来,原告シンシンブロック すぎず,被告の行為によって原告シンシンブロックが損害を被ったことまでを推定するものではない。被告が平成20年10月頃から本件許諾契約に基づき被告製品の製造販売を開始して以来,原告シンシンブロックは原告製品を製造販売していないから,原告シンシンブロックには損害が生じていない。 また,被告が本件設置工事において被告製品を納入できたのは,前田建設から部材の納入を受注した岡三リビックが,平成20年頃から被告製品を購入し,被告と継続的に取引をしていたこと,被告に本件設置工事に用いる部材の全量を製造販売する能力があったこと,被告が被告製品の製造を委託していた業者との間に信頼関係が築かれていたこと等の要因による。このように,被告の営業上の利益は被告の資本,営業努力など全て被告の寄与によるものであり,原告シンシンブロックの損害は認められない。 (2) 13号の不正競争行為(品質誤認惹起行為)を理由とする請求原告シンシンブロック及び原告林物産は,被告が被告製品の品質を保証するものとして原告証明書等を表示したことが13号の不正競争行為に該当し,これによりそれぞれ7000万円,1000万円の損害を被ったと主張して,その一部及び遅延損害金の支払を求めている。 この請求に係る争点及び当事者の主張は,次のとおりである。 ア被告が原告証明書等を表示したことが13号の不正競争行為に該当す- 13 -るか(原告シンシンブロック及び原告林物産の主張)(ア) 被告と原告シンシンブロック及び原告林物産は,雨水貯留槽浸透槽用の部材の製造販売に関して競争関係にある。 (イ) 原告証明書等のような証明書は,雨水貯留浸透槽用の部材を取り扱う需要者及び取引関係者において非常に重要視され,多くの場合これを取得していることが入札又は契約の申込みの条件とされてい ある。 (イ) 原告証明書等のような証明書は,雨水貯留浸透槽用の部材を取り扱う需要者及び取引関係者において非常に重要視され,多くの場合これを取得していることが入札又は契約の申込みの条件とされているところ,被告は,遅くとも平成22年末から,被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に,原告証明書等を,その証明,認定及び登録の対象に被告製品が含まれると誤認されるような態様で表示していた。 これらの行為は,被告製品の品質について誤認させるものであるから,13号の不正競争行為に該当する。 (ウ) 被告は上記不正競争行為の該当性を争う旨主張するが,原告シンシンブロック及び原告林物産との間の13号関係和解において,13号の不正競争行為に該当することを認めている。したがって,被告の上記主張は和解の既判力に反するものとして失当である。 (被告の主張)(ア) 被告と原告林物産は競争関係にない。 (イ) 被告製品は,原告シンシンブロックが原告製品の製造を委託していた業者と同一の業者により,同一の金型と同一の素材を用いて製造されたものであるから,原告製品と品質が同一である。被告は,被告製品が原告証明書等を受けている商品であると表示したのであって,これは被告製品の品質を正しく表示しているから,品質について誤認を惹起せしめることはない。 (ウ) 原告シンシンブロック及び原告林物産は被告の上記主張が和解の既判力に抵触すると主張するが,和解調書に既判力は認められないか- 14 -ら,上記同主張は失当である。 イ原告シンシンブロック及び原告林物産による承諾の有無(被告の主張)被告は,原告シンシンブロックと本件許諾契約を締結し,平成20年10月頃から原告シンシンブロックにロイヤリティを支払って被告製品を製造販売した。そして,被告は,その販売活 有無(被告の主張)被告は,原告シンシンブロックと本件許諾契約を締結し,平成20年10月頃から原告シンシンブロックにロイヤリティを支払って被告製品を製造販売した。そして,被告は,その販売活動の一環として原告証明書等を被告のカタログやホームページに表示していたのであるから,このことにつき原告シンシンブロックの承諾を得ていたということができる。したがって,13号の不正競争行為に当たるとしても違法性が阻却され,又は原告シンシンブロック及び原告林物産の請求は信義則に反し,あるいは権利を濫用するものとして許されない。 (原告シンシンブロック及び原告林物産の主張)原告証明書等は雨水協会等の第三者機関が原告製品の品質を客観的に検証した結果を証するものであるから,原告シンシンブロック及び原告林物産が,他社製品の品質が自社製品の品質と同等であるとして,他社に原告証明書等の使用を許諾できるものではない。したがって,本件許諾契約その他原告シンシンブロック及び原告林物産の承諾によって被告による原告証明書等の使用が許されることはない。 ウ損害及びその額(原告シンシンブロック及び原告林物産の主張)(ア) 被告は,遅くとも平成22年末から原告証明書等を使用することによって多数の工事案件を受注しており,その中には本件設置工事も含まれる。そして,本件設置工事において被告が被告製品を納入することによって得た利益は,1号の不正競争行為について述べたのと同様,8000万円を下らないから,不正競争防止法5条2項により,同額が原告シンシンブロック及び原告林物産の損害となる。このうち,- 15 -原告シンシンブロックが被った損害は7000万円,原告林物産が被った損害は1000万円である。 (イ) 被告は,① 不正競争防止法5条2項は13号の不正競争行 の損害となる。このうち,- 15 -原告シンシンブロックが被った損害は7000万円,原告林物産が被った損害は1000万円である。 (イ) 被告は,① 不正競争防止法5条2項は13号の不正競争行為に適用されない,② 原告シンシンブロック及び原告林物産は原告製品を販売していないから損害が生じていない,③ 原告証明書等が本件設置工事その他の案件の受注に寄与していないと主張する。しかし,①については,文言上そのような解釈をする余地はない。②については,1号の不正競争行為について主張したとおり,原告製品の販売をしていた。③については,被告は被告製品が原告証明書等の対象となると誤信させて本件設置工事を受注したのであり,被告が後記のとおり主張する点は受注が事実上確定した後の事情にすぎない。したがって,被告の主張はいずれも失当である。 (被告の主張)(ア) 不正競争防止法5条2項は,同法2条1項13号に定める不正競争行為については適用されない。 (イ) 被告が本件許諾契約に基づき被告製品の製造販売を開始して以来,原告シンシンブロック及び原告林物産は原告製品を製造販売していないから,同原告らに損害は生じていない。 (ウ) 被告が被告製品を納入できたのは1号の不正競争行為について述べた要因によるものである。そして,前田建設は,被告が原告証明書等を自ら取得したものでなくても,被告製品が原告証明書等の対象製品と同等の品質であれば納入を認めるとしたのであり,被告製品が原告製品と同等あるいは同等以上であることは雨水協会も認めている。 このように,被告の営業上の利益は,被告の資本,営業努力など全て被告の寄与によるものであり,原告証明書等は寄与していないから,原告シンシンブロック及び原告林物産の損害は認められない。 - 16 -(3) 14号の不正 上の利益は,被告の資本,営業努力など全て被告の寄与によるものであり,原告証明書等は寄与していないから,原告シンシンブロック及び原告林物産の損害は認められない。 - 16 -(3) 14号の不正競争行為(虚偽事実告知行為)を理由とする請求原告シンシンブロックは,被告による本件発言が14号の不正競争行為に該当し,これにより8000万円の損害を被ったと主張して,その一部及び遅延損害金の支払を求めている。 この請求に係る争点及び当事者の主張は,次のとおりである。 ア本件発言が14号の不正競争行為に該当するか(原告シンシンブロックの主張)本件技術推薦書の有効期限は平成24年3月31日であったが,更新されたことにより平成25年3月31日まで有効となっていた。したがって,本件技術推薦書の有効期限が平成24年3月31日までとする本件発言は虚偽である。 また,本件発言は,原告製品の品質を担保する有効な技術推薦書が存在しないというものであるから,原告シンシンブロックの営業上の信用を毀損する。 そして,被告は,被告製品について本件技術推薦書を使用していたから,その更新が行われ,有効期限が存続していたことを認識していた。 仮に故意が認められないとしても,被告には事実関係を確認すべき信義則上の義務があったのであり,重過失が認められる。 したがって,被告は14号の不正競争行為につき損害賠償責任を負う。 (被告の主張)原告シンシンブロックと被告が競争関係にあること及び被告が本件発言をしたことは認めるが,これが虚偽であること及び原告シンシンブロックの営業上の信用を毀損するものであることは争う。また,被告が本件発言をしたのは,雨水協会の職員から本件技術推薦書は平成24年3月31日で期間満了になったこと及びその時点において更新されて ンブロックの営業上の信用を毀損するものであることは争う。また,被告が本件発言をしたのは,雨水協会の職員から本件技術推薦書は平成24年3月31日で期間満了になったこと及びその時点において更新されていなかったことを聞いていたからであり,被告に故意又は過失はない。した- 17 -がって,被告は損害賠償責任を負わない。 イ損害及びその額(原告シンシンブロックの主張)被告は,本件発言によって本件設置工事につき被告製品を前田建設に納品することができたのであり,1号の不正競争行為についての原告シンシンブロックの主張と同様の理由により,原告シンシンブロックの損害は8000万円を下らない。 (被告の主張)争う。 (4) 本件商標権の侵害を理由とする請求原告発明研究所は,被告が被告製品並びにそのカタログ及びホームページに被告標章を使用したことが本件商標権の侵害となり,これにより500万円の損害を被ったと主張して,その一部及び遅延損害金の支払を求めている。 この請求に係る争点及び当事者の主張は,次のとおりである。 ア被告による被告標章の使用が本件商標権の侵害となるか(原告発明研究所の主張)被告は,遅くとも平成20年10月から被告製品に刻印を付し,平成22年末からは被告標章を被告製品の商品名として被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に使用している。被告標章と本件商標は同一又は少なくとも類似しており,被告製品は本件商標権の指定商品と同じである。したがって,被告の上記各行為は本件商標権の侵害に当たる。 (被告の主張)被告は,平成24年秋頃,被告製品の商品名を「ジオプール」に変更した。この変更後のカタログに記載された「シンシンブロック」という文字は小さくて目立たず,上記カタログを見た者は,これを被告製品の- 被告は,平成24年秋頃,被告製品の商品名を「ジオプール」に変更した。この変更後のカタログに記載された「シンシンブロック」という文字は小さくて目立たず,上記カタログを見た者は,これを被告製品の- 18 -商標とは理解せず,被告製品は「ジオプール」であると理解するはずである。また,被告製品に付された刻印は,1号の不正競争行為について述べたのと同様,被告製品の製造を受託した業者が管理のために付したものであり,商標的使用には該当しない。被告が商標的に使用しているのは,商品名の変更前の被告製品のカタログ及び被告のホームページ上に使用された被告標章のみである。 イ本件許諾契約の効力ないし原告発明研究所の承諾の有無(被告の主張)(ア) 本件許諾契約本件許諾契約により原告シンシンブロックは本製品に関わる必要な産業財産権を被告が使用すること保証しているから,被告標章の使用が許諾されている。なお,原告発明研究所は本件許諾契約の当事者ではないが,1号の不正競争行為について述べたのと同様の理由により,本件許諾契約により本件商標の使用が許諾されたというべきである。 (イ) 原告発明研究所の承諾等1号の不正競争行為について述べたとおり,被告は「シンシンブロック」及び「SSBB」という商品名を使用し,被告製品に刻印を付することの承諾を得ていた。原告らは,被告が被告標章を使用することが,近い将来原告らが原告製品を販売する際に有利になると考え,被告が被告標章を使用することを歓迎していたのであって,明示的又は黙示的に被告による被告標章の使用を許諾したというべきである。 原告発明研究所の請求は,このような従前の経過に反するものであり,信義則に反し,あるいは権利の濫用として許されない。 (原告発明研究所の主張)1号の不正競争行為についての原告 いうべきである。 原告発明研究所の請求は,このような従前の経過に反するものであり,信義則に反し,あるいは権利の濫用として許されない。 (原告発明研究所の主張)1号の不正競争行為についての原告シンシンブロックの主張のとおり,本件許諾契約は,被告が被告製品の製造販売をすることを前提とするも- 19 -のではなかった。また,本件商標権を有しているのは原告発明研究所であるから,原告シンシンブロックとの間で締結された本件許諾契約により本件商標権が許諾されていたということはできない。 ウ本件許諾契約の解除(原告発明研究所の主張)1号の不正競争行為に関する原告シンシンブロックの主張のとおり,本件許諾契約は解除された。 (被告の主張)1号の不正競争行為に関する主張のとおり,本件解除は効力を生じない。 エ損害及びその額(原告発明研究所の主張)被告は,遅くとも平成22年末から,被告標章を使用することによって本件設置工事を含む多数の工事案件を受注しており,その売上高は2億円(納入した被告製品の数量2万㎥に,1㎥当たりの売上高1万円を乗じた額)を下らない。そして,本件商標は周知であってブランド力を有することからすれば,その相当な実施料率は2.5%を下回らない。 したがって,商標法38条3項により,原告発明研究所が被った損害は少なくとも500万円となる。 (被告の主張)被告が被告標章を使用していた当時,被告標章の認知度は低かったこと,被告が被告標章を使用した方法及び態様は限定的であること,被告製品の販売先は原告シンシンブロックが原告製品を販売していた販売先と同じであり,被告標章が被告製品の販売に格別貢献したものではないことといった事情からすれば,被告標章が被告製品の販売に寄与したとはいえないから,損害賠償請求は認 ックが原告製品を販売していた販売先と同じであり,被告標章が被告製品の販売に格別貢献したものではないことといった事情からすれば,被告標章が被告製品の販売に寄与したとはいえないから,損害賠償請求は認められない。 - 20 -(5) 商標権関係和解の違反を理由とする請求原告発明研究所は,被告が商標権関係和解に違反したことが不法行為となり,これにより485万円の損害を被ったと主張して,その一部及び遅延損害金の支払を求めている。 この請求に係る争点及び当事者の主張は,次のとおりである。 ア被告が商標権関係和解違反に基づく責任を負うか(原告発明研究所の主張)被告は,商標権関係和解の後である平成24年10月23日,本件設置工事に関して「SSBB」の刻印が付された被告製品を納品した。かかる行為は,商標権関係和解の明白かつ重大な違反であり,被告に故意があることは明白であるから,被告は不法行為による損害賠償責任を負う。 (被告の主張)商標権関係和解に反する行為があったといえるのは,その行為につき故意又は重過失がある場合に限るべきである。 被告が上記刻印が付された被告製品を納入したのは,刻印の消去作業を依頼していた下請会社の作業員が誤って混入させたことによるものであって,被告に故意はない。上記刻印が消去されずに納品された被告製品の数は前田建設の報告では納入個数4800のうちの18個,また,在庫のうち刻印が付されたままであったのは被告の調査では6万8800個のうち32個とわずかでしかなく,被告は商標権関係和解を誠実に履行していたのであり,被告には軽過失があるに止まる。 さらに,上記で述べたことからすれば,被告の違法性は極めて小さく,違法性が阻却されるべきである。 以上のことから,被告が損害賠償責任を負うことはない。 であり,被告には軽過失があるに止まる。 さらに,上記で述べたことからすれば,被告の違法性は極めて小さく,違法性が阻却されるべきである。 以上のことから,被告が損害賠償責任を負うことはない。 イ損害及びその額- 21 -(原告発明研究所の主張)(ア) 主位的主張原告発明研究所は,被告が商標権関係和解を遵守しているかを確認するため,被告製品が保管されていると考えられる茨城県及び近隣各県内の場所を幾日にもわたり捜索し,監視しなければならなかった。 これによって原告発明研究所が費やした費用(ガソリン代(燃費6ないし4km/lとして計算),ETC代及び人件費(1時間2万5000円ないし2万円として計算))は,被告による商標権関係和解違反と相当因果関係のある損害であり,その額は485万円を下らない。 (イ) 予備的主張被告は,商標権関係和解により被告製品から被告標章を全て消去することを確約することで,原告発明研究所が仮処分で求めていた本件設置工事への被告製品の納入の差止めを回避するという利益を得ている。この額は,上記刻印を消去せずに納入した被告製品の数量に1㎥当たりの利益4000円を乗じた額を下らないところ,被告はその数量を明らかにしない。そこで,このような被告の対応を踏まえて,民事訴訟法248条により相当な損害額が認められるべきである。 (被告の主張)(ア) 主位的主張について原告発明研究所がしたとする調査の必要性,内容,合理性,調査員の人数等の主張立証がない上,ガソリン代及び人件費に関する主張も法外である。原告発明研究所がしたとする調査は原告発明研究所が理由のない疑念を抱いたことによるものであるから,その調査費用は相当因果関係のある損害とは認められない。 (イ) 予備的主張について争う。 - 明研究所がしたとする調査は原告発明研究所が理由のない疑念を抱いたことによるものであるから,その調査費用は相当因果関係のある損害とは認められない。 (イ) 予備的主張について争う。 - 22 -第3 当裁判所の判断 1 1号の不正競争行為(出所混同惹起行為)を理由とする請求について(1) 原告シンシンブロックが,被告による被告標章(原告標章と同一又は類似の標章)の使用が1号の不正競争行為に当たるとして損害賠償を求めるのに対し,被告は,原告標章の周知性等を争うほか,被告標章の使用につき原告シンシンブロックの許諾ないし承諾を得ていた旨主張するので,この被告の主張の当否につき検討することとする。 (2) 前提となる事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告製品は,平成8年に原告シンシンブロックが開発したものであり,プラスチック製の雨水貯留浸透槽用の部材としてパイオニア的な存在とされている。平成8年から平成18年までの間(なお,平成21年掲載の広告には原告標章は用いられていない。),原告シンシンブロック及び原告林物産は新聞及び雑誌に原告製品の広告を掲載しており,原告製品は新聞や雑誌の記事にも度々取り上げられた。また,原告製品を用いた槽の技術については,原告シンシンブロック及び原告林物産が平成9年に雨水協会の技術評価認定(これが更新されたものが別紙証明書等目録記載4の認定である。)を,原告林物産が平成12年に建設省(当時)の新技術情報提供システム(NETIS)の登録(同目録記載5)を,原告シンシンブロック及び原告林物産が平成18年に下水道機構の建設技術審査証明(同目録記載1。同2はその変更である。)及び平成19年に雨水協会の技術推薦(本件技術推薦書)を,それぞれ受けた。 原告製品は,全国 ンブロック及び原告林物産が平成18年に下水道機構の建設技術審査証明(同目録記載1。同2はその変更である。)及び平成19年に雨水協会の技術推薦(本件技術推薦書)を,それぞれ受けた。 原告製品は,全国各地の雨水貯留浸透槽の工事に広く納入され,平成20年頃まで上記部材の市場で3割程度のシェアを占めていた。(甲5,8,23,24,34)イ原告シンシンブロックと被告は,平成18年2月頃,原告シンシンブ- 23 -ロックが被告に原告製品を販売し,被告がこれを岡三リビック等に転売する継続的な取引を開始した。原告シンシンブロックは製造を他社に委託しており,委託先が原告シンシンブロック所有の金型を用いて原告製品を製造していた。ところが,原告シンシンブロックは財務状況が悪く,委託先への代金の支払にも窮していたため,被告は,原告シンシンブロックの求めに応じ,数千万円の金銭を貸し付ける,原告製品製造のための金型を買い取ってその代金を支払う(平成19年9月25日付け本件金型売買契約)などの支援を行った。その後は上記委託先が被告の所有となった金型を用いて原告製品の製造を続けたものの,原告シンシンブロックの財務状況が更に悪化したので,委託先と原告シンシンブロック及び被告が協議した結果,被告が製造を委託する主体となり,委託先への代金の支払も被告がするものとされた。その際,原告製品に関して原告シンシンブロック及びその関連会社が有していた特許権等が被告による製造販売の妨げとならないようにするとともに,被告が支払う対価(ロイヤリティ)を原告シンシンブロックの債務の弁済に充てることを目的として,原告シンシンブロックと被告は,平成20年4月1日,原告シンシンブロックが被告に対し特許権等の産業財産権の実施及び使用を許諾する旨の本件許諾契約を締結した。原告シンシンブロ 充てることを目的として,原告シンシンブロックと被告は,平成20年4月1日,原告シンシンブロックが被告に対し特許権等の産業財産権の実施及び使用を許諾する旨の本件許諾契約を締結した。原告シンシンブロックの被告に対する債務の額は平成21年3月末時点で約5億4000万円に達しており,原告シンシンブロックは他の取引先にも多額の債務を負っていた。被告と原告シンシンブロックは,同月31日,債権回収に関する合意をし,上記債務を10年間の分割により弁済することなどを約した。 (甲36,37,乙1~7,33)ウ本件許諾契約の締結後は,被告が「シンシンブロック」,「SSBB」との商品名の雨水貯留浸透槽用の部材の製造を他社に委託し,委託先がそれまで原告製品の製造に用いていた金型を用いて同一の方法及び- 24 -材料により上記部材を製造し,その納入を受けた被告が岡三リビック等にこれを販売することとなった。これが被告製品であり,被告は,その一部に「SSBB」との刻印を施し,カタログ及びホームページに被告標章を表示していた。また,その販売に当たり,被告製品の品質を保証するため,上記アの技術評価認定等と,平成22年に原告シンシンブロックが取得した下水道機構の新技術研究成果証明(別紙証明書等目録記載3)を,カタログ及びホームページに掲載するなどして利用した。被告によるこれらの行為について原告らが異議を述べることはなく,かえって原告シンシンブロックは上記証明を受けるための試験費用の負担を被告に求め,被告はこれを支払った。(甲8,10,18,19,乙20,21)エ東日本大震災の発生後,東京電力福島第一原子力発電所における汚染水の処理のため,雨水貯留浸透槽用の部材の需要が急増し,平成24年1月頃,東京電力株式会社が本件設置工事の発注をすることが明らかにさ 東日本大震災の発生後,東京電力福島第一原子力発電所における汚染水の処理のため,雨水貯留浸透槽用の部材の需要が急増し,平成24年1月頃,東京電力株式会社が本件設置工事の発注をすることが明らかにされた。原告発明研究所は,同年2月24日付けの内容証明郵便により,被告に対し,被告製品の取扱い及び商標「シンシンブロック」の使用の中止を求めた。また,原告シンシンブロックは,同年8月8日,本件許諾契約を解除する旨の意思表示をした。(甲13,35,乙32)(3) 上記事実関係によれば,原告シンシンブロックが従前販売していた原告製品と被告が本件許諾契約の締結後に販売した被告製品は,製品の形状,材質等も,商品名も同一の雨水貯留浸透槽用の部材であることが明らかである。そして,原告シンシンブロックは,被告に対し,本件金型売買契約によりその製造に用いる金型を譲渡し,本件許諾契約により産業財産権の実施及び使用を許諾しているのであるから,被告が,原告製品と同一の被告製品に,原告標章と同一又は類似の被告標章を使用することを認めていたと判断するのが相当である。 - 25 -(4) これに対し,原告シンシンブロックは,① 本件許諾契約は,本件代理店契約の期間中に締結されたものであり,被告が原告シンシンブロックと別個独立して被告製品を製造販売することを前提としていない,② 本件許諾契約により使用が許諾されたとしても,本件解除により許諾は効力を失った旨主張するが,以下のとおり,いずれも採用することができない。 ア原告シンシンブロックが被告に対し雨水貯留浸透槽用の部材「シンシンブロック」の製造販売を許諾したことは,本件許諾契約の条項上明らかであり(甲36,乙33参照),その後,被告が被告製品の製造委託及び販売を行い,原告シンシンブロックがこれに対し何ら異議を述べ ンシンブロック」の製造販売を許諾したことは,本件許諾契約の条項上明らかであり(甲36,乙33参照),その後,被告が被告製品の製造委託及び販売を行い,原告シンシンブロックがこれに対し何ら異議を述べていなかったことに照らしても,上記①の主張は失当というほかない。 イ本件許諾契約は,相手方の契約違反を理由として解除することができる旨定めるとともに,「本契約を解除するにあたり,甲乙相互に債権,債務を精算しなければならない。」と定めている(甲は被告,乙は原告シンシンブロックを指す。甲36,乙33)。そして,契約が解除された場合,契約当事者の間にはその後も原状回復その他債権債務を精算すべき関係が残るのは当然であるから,上記の条項は,解除の効力を生じさせるためには解除の前に債権債務を精算することを要すると定めたものと解するのが合理的であり,「解除するにあたり」との文言もこのような解釈に沿うとみることができる。 さらに,上記(1)ア及びイに認定したところによれば,原告シンシンブロックは被告に対し多額の債務を負っており,被告がこれを回収する手段の一つとして本件許諾契約を締結したと解されるのであり,被告においては,債権を回収する前に本件許諾契約が解除され,被告製品の製造販売ができなくなるとすると,多大な不利益を被ることになる。そうすると,上記条項は,そのような事態を避けるため,債権債務を精算しなければ本件許諾契約を解除することができないと定めたものと解する- 26 -のが相当である。 そして,証拠(乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告と原告シンシンブロックの間の債権債務はいまだ精算されていないと認められるから,本件解除は効力を生じないというべきである。 したがって,上記②の主張も採用することができない。 (5) 以上によれば,少 ンシンブロックの間の債権債務はいまだ精算されていないと認められるから,本件解除は効力を生じないというべきである。 したがって,上記②の主張も採用することができない。 (5) 以上によれば,少なくとも本件許諾契約が期間満了となる平成25年3月31日まで(前提となる事実(5)参照)は,被告は被告製品に被告標章を使用することができたということができる。一方,本件において原告シンシンブロックが1号の不正競争行為を理由とする損害賠償請求の対象とするのは本件設置工事における被告製品の納入行為であるところ,証拠(乙51)及び弁論の全趣旨によれば,その納入は平成24年11月までに完了したと認められる。また,原告シンシンブロックは,平成25年4月以降に被告が被告標章を使用したことにより損害を被ったとの主張立証は何らしていない。 したがって,1号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 2 13号の不正競争行為(品質誤認惹起行為)を理由とする請求について(1) 被告は,被告製品の販売に当たり原告証明書等を使用したことが不正競争防止法2条1項13号に該当することを争うが,13号関係和解(甲14)において,その使用が同号の要件に該当することを認めているので,和解の効力(民法696条参照)により同号の該当性自体は争えないと解すべきである。もっとも,13号関係和解は,原告シンシンブロック及び原告林物産の承諾その他抗弁事由の存否や,損害の発生等に触れるものではなく,同原告らの被告に対する損害賠償請求権については本案訴訟において解決するものとしている。そこで,これらの点につき検討することとする。 - 27 -(2) 証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば,雨水貯留浸透槽用の する損害賠償請求権については本案訴訟において解決するものとしている。そこで,これらの点につき検討することとする。 - 27 -(2) 証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば,雨水貯留浸透槽用の部材を用いる工事においては,発注者が,当該部材が雨水協会又は下水道機構の認定等を受けていることを調達の条件としている場合が多いと認められる。 そして,1号の不正競争行為について前記1(2)のとおり認定した事実経過に照らせば,原告製品と被告製品は同一の製品といえるのであり,原告シンシンブロックは両製品の品質が同等であると認識していたと解されるから,原告シンシンブロックは,原告製品について雨水協会及び下水道機構から取得した原告証明書等を,被告が被告製品の販売又はその申出をするに当たり使用することを認めていたと解することができる。 もっとも,原告証明書等は,雨水協会等の第三者機関が原告製品の品質を証するものであるから,原告製品以外の製品に使用した場合には,これを取得した原告シンシンブロックの承諾があったとしても,13号の不正競争行為としての違法性が否定されることはないと考えられる。しかし,本件における上記事実関係,殊に,原告シンシンブロックが被告に対し多額の債務を負担しており,その回収手段の一つとして本件許諾契約を締結したこと,その締結後は被告が被告製品を販売するものとされ,その販売活動のために原告証明書等の使用が認められたこと,原告証明書等の取得のための費用の一部を被告が負担したことに照らせば,原告シンシンブロックが,被告に対し,被告による原告証明書等の使用により損害を被ったと主張してその賠償を請求することは,信義則に違反し,又は権利の濫用に当たり許されないと判断するのが相当である。 (3) 次に,原告林物産についてみるに,証拠(甲1 証明書等の使用により損害を被ったと主張してその賠償を請求することは,信義則に違反し,又は権利の濫用に当たり許されないと判断するのが相当である。 (3) 次に,原告林物産についてみるに,証拠(甲1~3,乙39,40)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの関係について,① 原告らは,A(原告シンシンブロック及び原告林物産の代表者),その妻のB(原告発明研究所の代表者)及び両名の子のC(原告シンシンブロックの元代表- 28 -者)並びに同人らの親族を多数役員とする同族会社であること,② 原告シンシンブロックと原告発明研究所は本店所在地を共通にしており,原告林物産も平成23年8月1日に移転するまでは本店所在地がこれらと同一であったことが認められる。このような原告林物産と原告シンシンブロックの関係に照らすと,原告林物産は,被告による被告製品の販売及びそのための原告証明書等の使用につき原告シンシンブロックと同様の認識を有していたとみることができる。そうすると,原告林物産の請求も信義則違反又は権利の濫用として許されないと判断すべきものである。 (4) 以上によれば,少なくとも本件許諾契約が期間満了となる平成25年3月31日までは,被告が13号の不正競争行為による損害賠償義務を負うことはないと解される。そして,本件設置工事における被告製品の販売が平成24年11月までに完了したこと,平成25年4月以降の原告証明書等の使用により損害を被ったとの主張立証がないことは,1号の不正競争行為についての前記説示と同様である。 したがって,13号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロック及び原告林物産の各損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 3 14号の不正競争行為(虚偽事実告知行為)を理由とする請求について(1 する原告シンシンブロック及び原告林物産の各損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 3 14号の不正競争行為(虚偽事実告知行為)を理由とする請求について(1) 雨水貯留浸透槽用の部材の販売につき原告シンシンブロックと被告が競争関係にあること,被告が,本件設置工事における被告製品の販売に当たり,原告シンシンブロック及び原告林物産が原告製品につき雨水協会から取得していた本件技術推薦書の有効期間が平成24年3月31日で切れている旨の本件発言をしたことは,当事者間に争いがない。 また,証拠(甲34)及び弁論の全趣旨によれば,本件技術推薦書の有効期間は,当初は平成19年4月1日から平成24年3月31日までであったが,その後平成25年3月31日まで延長されたことが認められる。 - 29 -そして,上記部材の調達に関しては雨水協会の承認等が重要視されていること(上記2(2)参照)に照らすと,本件発言は,被告と競争関係にある原告シンシンブロックの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するものとして,14号の不正競争行為に当たるということができる。 (2) そこで,14号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求の当否についてみるに,証拠(甲13,35,乙16,32,38,51)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア東京電力株式会社は平成24年1月末頃に本件設置工事の入札予告をし,同年2月20日頃に前田建設がこれを受注した。前田建設は本件設置工事に用いる雨水貯留浸透槽用の部材を岡三リビックに発注し,これを受注した岡三リビックはその全量を被告から被告製品(当時の商品名はシンシンブロック)を購入して調達することを予定していた。 イ原告発明研究所は,同月24日付けの内容証明 三リビックに発注し,これを受注した岡三リビックはその全量を被告から被告製品(当時の商品名はシンシンブロック)を購入して調達することを予定していた。 イ原告発明研究所は,同月24日付けの内容証明郵便により,被告に対し,特許権及び商標権に基づいて被告製品の取扱い及び「シンシンブロック」の商標の使用を中止するよう通知した。また,原告シンシンブロックは,そのころ,岡三リビックに対し受注を辞退するよう求めるとともに,前田建設に対し原告製品の調達に向けて営業活動を行った。被告は,トラブルを避けるため被告製品の商品名を「ジオプール」に変更した上,前田建設に対し予定どおり納入することができるよう働きかけた。 前田建設は,最終的に,被告製品を取り扱う岡三リビック及び原告製品を取り扱う物林株式会社と他の1社に,本件設置工事に用いる雨水貯留浸透槽用の部材を3分の1ずつ(それぞれ約2万㎥)発注することとした。 ウ前田建設は,被告製品の納入を受けることの条件として,これが雨水協会の技術推薦を受けていることの確認を求めた。被告は,本件技術推薦書の有効期間が同年3月31日で切れていること(本件発言)を前提- 30 -に,同年7月10日,前田建設に「御承認変更願」を提出して,商品名「ジオプール」の被告製品は本件技術推薦書の対象である「SSBB」と品質が同一である旨述べ,本件設置工事に使用する製品を「SSBB」から「ジオプール」に変更することの承認を求めた。また,同月31日,雨水協会から,「ジオプール」は本件技術推薦書の対象である「シンシンブロック」と同等品以上であると認める旨の品質確認書の交付を受けた。被告は,そのころ,上記の変更願について前田建設の承諾を得た。 エ被告は,同年8月初め頃から11月3日頃までの間,合計約2万2000㎥の被告製品を,岡 あると認める旨の品質確認書の交付を受けた。被告は,そのころ,上記の変更願について前田建設の承諾を得た。 エ被告は,同年8月初め頃から11月3日頃までの間,合計約2万2000㎥の被告製品を,岡三リビックを通じて前田建設に納入した。 (3) 原告シンシンブロックは,被告は本件発言をしたことで本件設置工事に被告製品を納入することができたのであるから,不正競争防止法5条2項により,被告が本件設置工事によって得た利益の額が原告シンシンブロックの損害の額であると推定される旨主張する。 そこで判断するに,同項は不正競争行為により損害が発生したと認められる場合にその額を推定する規定であるところ,上記認定の事実関係によれば,前田建設との関係では本件発言の前から原告製品,被告製品及び他社製品を3分の1ずつ納入することになっていたというのであって,本件発言がなかったとすれば前田建設が部材の調達先を変更し,被告が被告製品を納入することができず,その分を原告シンシンブロックが納入することになったと認めるに足りる証拠はない。また,本件発言を受けた前田建設において,原告製品は雨水協会の技術推薦を受けていないと誤信して原告シンシンブロックに対する信用を喪失したり,原告製品の発注を取り消したりした事実はうかがわれない。そうすると,本件発言により原告シンシンブロックが何らかの損害を被ったと認めることはできないから,不正競争防止法5条2項の適用をいう原告シンシンブロックの主張はその前提- 31 -を欠くというほかない。 (4) したがって,14号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 4 本件商標権の侵害を理由とする請求について(1) 被告標章と本件商標は,称呼(しんしんぶろっく とする原告シンシンブロックの損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 4 本件商標権の侵害を理由とする請求について(1) 被告標章と本件商標は,称呼(しんしんぶろっく,えすえすびいびい)を共通にしており,類似するものと解される。そして,被告製品は本件商標権の指定商品(地下に埋設し雨水を貯留することのできるプラスチック製建築専用材料等)に含まれるから,被告が被告製品並びにそのカタログ及びホームページに被告標章を使用した行為は,本件商標権を侵害するものということができる。 (2) そこで,原告発明研究所の被告に対する損害賠償請求が認められるかどうかについて検討する。 被告が被告製品に被告標章を使用することを原告シンシンブロックが認めていたことは,1号の不正競争行為について説示したとおりである。また,前記2(3)において認定した原告発明研究所と原告シンシンブロックの関係に照らすと,原告発明研究所は,被告による被告製品の販売及びそのための被告標章の使用につき,原告シンシンブロックと同様の認識を有していたとみることができる。さらに,後記5のとおり,商標権関係和解の違反が発見された際には原告シンシンブロックが被告と交渉しているのであって,原告発明研究所は本件商標権に関する被告との対応を原告シンシンブロックに委ねていたものと推認される。 これらの事情を総合すると,原告発明研究所が,被告標章が本件商標に類似するとして被告に対し本件商標権に基づく権利を行使することは,信義則に違反し,又は権利の濫用として許されないと判断することが相当である。 (3) したがって,商標権侵害を理由とする原告シンシンブロックの損害賠- 32 -償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 5 商標権関係和解の違反 ることが相当である。 (3) したがって,商標権侵害を理由とする原告シンシンブロックの損害賠- 32 -償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 5 商標権関係和解の違反を理由とする請求について(1) 被告が,原告発明研究所との間の商標権関係和解において,被告製品に付した被告標章を全て消去し,今後は被告標章を使用しないと確約したこと,その後納入した被告製品に被告標章が付されたものあったことは当事者間に争いがなく,被告が和解条項に違反したことは明らかである。また,被告は過失(軽過失)があったことを認めているから,被告は原告発明研究所に対し不法行為責任を負うと解すべきである。 これに対し,被告は,故意又は重過失がある場合にのみ責任を負うべき旨主張するが,商標権関係和解(甲16)には被告の主張に沿う条項は存在せず,被告の主張を採用することはできない。 (2) 商標権関係和解違反による損害につき,原告発明研究所は,主位的に,和解条項違反の有無等を調査するための費用相当額,予備的に,被告が被告標章を付して譲渡した被告製品の数量に応じて民事訴訟法248条により認定される額が認められるべきである旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲27~33,39,乙35)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,平成24年6月に本件商標権の侵害を理由とする仮処分命令の申立てを受けたため,同年7月20日頃から,下請業者に依頼して被告製品に付された「SSBB」の刻印を消去する作業を行った。そして,全ての在庫品につき刻印が消去されたものと認識した上で,同年8月29日,商標権関係和解を成立させた。被告は,その後に製造委託先から納品を受けた大量の被告製品についても,上記刻印の消去作業を行った。 イ原告シンシン 刻印が消去されたものと認識した上で,同年8月29日,商標権関係和解を成立させた。被告は,その後に製造委託先から納品を受けた大量の被告製品についても,上記刻印の消去作業を行った。 イ原告シンシンブロックは,平成24年10月23日,本件設置工事において前田建設に納入された被告製品に「SSBB」の刻印が付されたものがあることを発見した。 - 33 -ウ原告シンシンブロックは,被告に対し,同月25日到達の内容証明郵便により,商標権関係和解の違反を指摘して3日以内に対応について報告するよう求めた。被告は,同月29日,原告シンシンブロックに対し,被告側で調査をして後日報告する旨回答した。 エ被告は,同年11月2日,原告シンシンブロックに対し,被告の調査結果によれば「SSBB」の刻印が付された被告製品は前田建設に納入した4800個のうちの18個,在庫6万8800個のうちの32個であり,これら50個を廃棄した旨報告した。 (3) 上記事実関係に基づき,まず,主位的主張についてみると,被告による商標権関係和解違反の事実が認められた以上,原告発明研究所において違反の有無及びその範囲等に関して調査を行う必要が生じたとみることができるから,現実に調査に要した費用があるとすれば,これをもって被告の違反行為によって生じた損害であると認めることが可能である。 しかし,原告発明研究所は,これを立証するための証拠として,平成24年10月7日から11月1日にかけて調査のために車両を走行したという高速道路の区間及び距離とその料金,車両の燃費,調査に当たったという原告シンシンブロック代表者の人件費等の数字を羅列した表(甲38,41)を提出するのみで,その裏付けとなる客観的資料を何ら提出していない。また,これに記載された時給2万5000円又は2万円という人件 原告シンシンブロック代表者の人件費等の数字を羅列した表(甲38,41)を提出するのみで,その裏付けとなる客観的資料を何ら提出していない。また,これに記載された時給2万5000円又は2万円という人件費は,その額自体合理性を認め難いものであり,算定の根拠も不明である。 これに加え,被告が原告シンシンブロックから和解条項違反の指摘を受けると速やかに調査及び報告を行ったと認められることに鑑みると,原告らの側で現実に調査を行う必要性は低かったと考えられる。 以上によれば,本件の関係証拠上,調査のために要した費用の額はもとより,原告発明研究所ないしその他の原告らが和解条項違反に関する調査を行ったという事実自体も認めるに足りる証拠がないというほかなく,し- 34 -たがって,原告発明研究所の主位的主張を認めることはできない。 (4) 次に,予備的主張についてみるに,商標権侵害を理由とする損害賠償請求であれば,被告が譲渡した数量に応じた損害額が認められるものであるが,そのような請求が信義則違反等として許されないことは前記4のとおりである。そして,本件の証拠上認め得る和解条項違反の被告製品の個数が50個にとどまることを勘案すると,被告の違反行為により原告発明研究所に損害が生じたと認めるに足りないと解される。そうすると,民事訴訟法248条はその適用の前提を欠くことになるので,原告発明研究所の予備的主張も失当というべきである。 (5) したがって,商標権関係和解違反を理由とする原告発明研究所の請求も認めることができない。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないので,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官 主文 原告らの請求はいずれも理由がないので,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官髙橋彩 裁判官植田裕紀久(別紙省略)
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