平成13(ワ)135 (第1事件)損害賠償請求,(第2事件)詐害行為取消等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月27日 和歌山地方裁判所
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判決文本文54,730 文字)

主文 1 被告a1は,原告に対し,2億円及びこれに対する平成13年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告a2は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成13年3月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告a3に対する請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の4と被告a1及び同a2に生じた費用を同被告らの負担とし,原告に生じたその余の費用と被告a3に生じた費用を原告の負担とする。 4 この判決は,上記1に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 主文1に同旨(2) 原告と被告a3との間で,別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件各物件」という。)について,被告a1から同a3への平成11年1月23日成立にかかる贈与契約を取り消す。 被告a3は,原告に対し,本件各物件につき,別紙登記目録記載の各所有権移転登記の詐害行為取消を原因とする抹消登記手続をせよ。 (3) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (4) 上記(1)及び(3)のうちの原告と被告a1及び同a2間の訴訟費用につき仮執行宣言 2 被告a1及び同a2(1) 原告の同被告らに対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 3 被告a3(1) 主文2と同旨(2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,b信用組合(以下「b信組」という。)の理事長であった被告a1が,その理事長としての善管注意義務ないし忠実義務に違反し,株式会社cゴルフ(現商号株式会社d。以下「cゴルフ」という。),e開発株式会社(以下「e開発」という。)及びf産業株式会社(以下「f産業」という。)に対する融資取引(以下cゴルフに対する融資 し,株式会社cゴルフ(現商号株式会社d。以下「cゴルフ」という。),e開発株式会社(以下「e開発」という。)及びf産業株式会社(以下「f産業」という。)に対する融資取引(以下cゴルフに対する融資を「本件融資A」,e開発に対する融資を「本件融資B」,f産業に対し平成7年2月13日に行った融資を「本件融資C」,同社に対し同年10月11日に行った融資を「本件融資D」といい,これらを総称して「本件各融資」ともいう。)並びにf産業に対する担保差し替え(以下「本件担保解除」といい,これと本件各融資とを総称して「本件各融資等」ともいう。)を行い,同信組に債権回収を不能ならしめるという損害を与えたことにより,同信組が,同被告に対し,各債務不履行による損害賠償請求権(中小企業等協同組合法《以下「中小協組法」という。》38条の2第1項)に基づき,本件各融資等によって回収できなくなった金員に相当する本件融資Aにつき3億7820万円,同融資Bにつき6060万8138円,同融資Cにつき6352万円,同融資Dにつき1700万円,本件担保解除につき6000万円の損害賠償請求権を有するところ,原告が,同信組からこれらの損害賠償請求権を譲り受けたとして,同被告に対しそのうち2億円(その内訳は,主位的には,本件融資Aに関する損害のうち1億円,同融資Bに関する損害のうち3000万円,同融資Cに関する損害のうち3000万円,同融資Dに関する損害のうち1000万円,本件担保解除に関する損害のうち3000万円であり,これらの請求の一部が認められない場合,予備的に,本件融資A,B,C,D及び本件担保解除に関する損害賠償請求権の順に,総額が前記請求金額の総額に至るまで順次拡張する。)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年3月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に 及び本件担保解除に関する損害賠償請求権の順に,総額が前記請求金額の総額に至るまで順次拡張する。)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年3月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。また,原告は,同信組の理事であった被告a2が,その理事としての善管注意義務ないし忠実義務に違反し,本件融資B,C,D及び本件担保解除を漫然と被告a1に稟申し,同信組に本件融資B,C,D及び本件担保解除に関し債権回収を不能とする損害を与えたことにより,同信組が,被告a2に対し,債務不履行に基づき,本件融資B,C,D及び本件担保解除に関する前記各損害につき被告a1と連帯して支払うべきである損害賠償請求権を有するところ,原告が,同信組から,この損害賠償請求権を譲り受けたとして,同a2に対し,そのうち1億円(主位的請求の内訳及び予備的請求は,同a1における本件融資B,C,D及び本件担保解除におけるものと同じである。)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年3月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(第1事件)。 さらに,原告は,被告a1に対する前記損害賠償請求権を保全するため,詐害行為取消権に基づき,同被告がその妻である被告a3に対してした本件各物件の贈与(以下「本件贈与」という。)の取消し及び本件贈与に基づく本件各物件についての各所有権移転登記の抹消登記手続を求めた(第2事件)。 これに対し,被告らは,原告主張の善管注意義務ないし忠実義務違反による債務不履行及び本件贈与の詐害行為の各成立を否認する等し,本件贈与がされた際の被告a3の善意を主張して争っている。 2 前提事実以下の事実は,争いがないか証拠(甲1,3,11の1,13,A1,A6の1ないし5,B1,B5の1ないし1 成立を否認する等し,本件贈与がされた際の被告a3の善意を主張して争っている。 2 前提事実以下の事実は,争いがないか証拠(甲1,3,11の1,13,A1,A6の1ないし5,B1,B5の1ないし10,C1,C6の1ないし11,D1,甲E2ないし5,乙8,被告a1本人)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 当事者等ア原告は,破綻金融機関等から買い取った不良債権の管理,回収等を目的とする株式会社である。 イ b信組は,組合員に対する資金の貸付等を業とする信用組合であったが,平成11年6月24日,総代会において解散するとの決議がされ,清算法人となった。 ウ被告a1は,昭和50年2月6日からb信組に勤務し,昭和61年6月に専務理事に,昭和63年4月に同信組の理事長に就任したものであり,被告a3は,その妻である。 エ被告a2は,昭和63年10月,同信組の審査部長となり,平成3年5月30日,理事に就任した。 (2) 本件各融資等の概要ア b信組のcゴルフに対する平成2年9月19日付け4億円の融資(本件融資A)b信組は,cゴルフに対し,平成2年9月19日,以下の約定で4億円を融資した(この時,cゴルフからb信組にf産業振出にかかる額面4億円の約束手形が差し入れられているが,その性格について,原告は,手形割引の形式による貸付けであると主張するのに対し,被告らは,担保のための手形差入であると主張しており,争いがある。)。 (ア) 手形の支払期日は,平成2年10月22日とされている。ただし,同融資の申込書兼稟議書には,特に今回3か月で必ず弁済するとの記載がある。 (イ) 利息年10.5パーセント(ウ) 担保物件別紙担保物件目録A記載のとおりイ b信組のe開発に対する平成6年4月19日付け8500万円の貸付け(本件融資B)b信 弁済するとの記載がある。 (イ) 利息年10.5パーセント(ウ) 担保物件別紙担保物件目録A記載のとおりイ b信組のe開発に対する平成6年4月19日付け8500万円の貸付け(本件融資B)b信組は,e開発に対し,平成6年4月19日,以下の約定で8500万円を貸し付けた。 (ア) 利息年7.8パーセント(イ) 弁済期及び弁済方法平成6年5月以降平成16年4月まで毎月25日限り元利合計100万円を支払う。ただし,平成6年5月25日の第1回弁済期は104万5119円を,平成16年4月25日の最終回弁済期は259万0009円を,それぞれ支払うものとする。 (ウ) 担保物件別紙担保物件目録B記載のとおりウ b信組のf産業に対する平成7年2月13日付け1億2000万円の貸付け(本件融資C)b信組は,f産業に対し,平成7年2月13日,以下の約定で1億2000万円を貸し付けた。 (ア) 弁済期平成8年2月13日(イ) 利息年7.5パーセント(ウ) 担保物件別紙担保物件目録C記載のとおりエ b信組のf産業に対する平成7年10月11日付け1700万円の融資(本件融資D)b信組は,f産業に対し,平成7年10月11日,以下の約定で1700万円を融資した(この時,f産業からb信組にe開発振出にかかる額面1700万円の約束手形が差し入れられているが,その性格について,原告は,手形割引の形式による貸付けであると主張するのに対し,被告らは,担保のための手形差入であると主張しており,争いがある。)。 (ア) 手形の支払期日平成8年1月31日(イ) 利息年8.0パーセント(ウ) 担保物件なしオ b信組のf産業に対する平成8年6月28日付け担保差し替え(本件担保解除)(ア) 被告a1は,b信組に対し,同信組の専務理事であった昭和62年6月25日, 0パーセント(ウ) 担保物件なしオ b信組のf産業に対する平成8年6月28日付け担保差し替え(本件担保解除)(ア) 被告a1は,b信組に対し,同信組の専務理事であった昭和62年6月25日,f産業とともに,同社の信用組合取引約定書1条に規定する取引によって同社が同信組に対して現在及び将来負担する一切の債務の根担保として,有価証券を同信組に差し入れる旨の有価証券担保差入証を提出した。 その有価証券の種類・銘柄を記載する欄には,「g」との,額面・株数・口数を記載する欄には,「210000」との記載がある。 (イ) b信組の昭和62年7月17日付け稟議書には,f産業の同信組に対する担保の解除及び差入れの件につき記載がされているところ,その差入れの中に,「g21万株」,「314」(単位は千円),「=65,940」(単位は千円)との記載がある。 (ウ) b信組の昭和62年7月28日付け稟議書には,f産業の差入有価証券の担保解除の件につき記載がされているところ,「解除」の記載の下に,「g」,「1万株」との記載が,「残」の記載の下に,「g」,「200,000」(単位は株),「329」(単位は千円),「=65,800」との記載がある。 (エ) f産業は,b信組に対し,平成8年6月24日,商業手形割引依頼書兼稟議書を提出した。その決裁条件欄には,「但し,有価証券担保差替」,「株券g20万株解除して,hの株額面500万10枚」,「額面50万2枚」,「計5,100万担保差入」との記載があり,実行日欄には,「8.6.28」との記載がある。 (3) b信組における貸付けの決裁手続の概要等ア b信組における貸付けの決裁手続の概要は,営業部貸付課において,借入希望者の申込みを受け付け,審査部において,借入希望者の担保等を審査した上,理事長において決裁をして,貸付 けの決裁手続の概要等ア b信組における貸付けの決裁手続の概要は,営業部貸付課において,借入希望者の申込みを受け付け,審査部において,借入希望者の担保等を審査した上,理事長において決裁をして,貸付けを実行することとされていた。 イ b信組においては,貸付審査委員会規定に基づき,貸付けの最終決裁者である理事長の諮問機関として,理事若干名をもって組織される貸付審査委員会が設置されていた。同委員会は,①1件の貸付金額が500万円以上,②特に現貸付金額が著しく超過すると認めた案件について,貸付けの適否を理事長に意見を答申することとされており,理事長は,その意見を尊重することとされていた。 ウ本件融資AないしDにつき,同委員会は開催されなかった。 (4) 本件贈与被告a3は,被告a1から,平成11年1月26日,本件各物件につき,同月23日贈与を原因とする別紙登記目録記載の各所有権移転登記を経由している。 (5) b信組の経営破綻b信組は,平成8年11月7日,経営改善計画を要する組合に指定された。また,同信組は,平成9年度の大幅な赤字決算によって,平成10年3月31日に経営改善計画を提出したが,債務超過の状態となり,同年6月9日,和歌山県知事から協同組合による金融事業に関する法律(以下「協金法」という。)6条1項,銀行法26条2項に基づく早期是正措置にかかる命令がされた。 しかしながら,同信組においては,経営改善計画に基づく不良債権の回収が進捗せず,1年以内の自己資本比率0パーセント以上の達成が困難な状況となった。そのため,同信組は,平成11年2月8日,和歌山県に対して,事業譲渡のあっせんを依頼し,同年3月18日,i信用金庫の協力の下で,預金保険法に基づく事業譲渡を公表した。 b信組は,同年6月24日,総代会において,不良債権等を原告に売却し, ,和歌山県に対して,事業譲渡のあっせんを依頼し,同年3月18日,i信用金庫の協力の下で,預金保険法に基づく事業譲渡を公表した。 b信組は,同年6月24日,総代会において,不良債権等を原告に売却し,残りの事業をi信用金庫に譲渡するとともに,解散するとの決議を行い,現在,清算法人となっている。 (6) b信組の原告に対する債権譲渡原告は,b信組から,平成12年2月10日,同信組が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権及び事務管理,不当利得,不法行為その他契約以外の原因に基づく権利等を,33億5663万7661円で買った。 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件各融資等の決定ないし実行の過程において,被告a1(本件各融資等)及び被告a2(本件融資Aを除く本件各融資等)に善管注意義務違反ないし忠実義務違反があったか。 (原告の主張)信用組合は,協同組合として出資者である組合員の利益を図るのはもちろんのこと,多数の預金者から預託された資金を安全に運用しなければならず,また,信用組合の有する地域社会への影響力の点からその組合財産の安全な運用に努めなければならず,組合財産の保全について高度の注意義務を負う。そして,信用組合の理事は,信用組合とは委任関係にあり,その地位に基づく善管注意義務を負い(中小協組法42条,商法254条3項,民法644条),かかる善管注意義務の当然の要請として,信用組合の理事は,法令等を遵守する義務を負う(中小協組法42条,商法254条の3)。そして,理事が,その任務を怠ったときは,信用組合に対し,連帯して債務不履行に基づく損害賠償責任を負う(中小協組法38条の2第1項)。 これを融資判断の場合についてみると,信用組合の理事は,現在及び予想し得る将来の経済情勢を踏まえつつ,融資先企業の業種,規模,業績,経営者の能 く損害賠償責任を負う(中小協組法38条の2第1項)。 これを融資判断の場合についてみると,信用組合の理事は,現在及び予想し得る将来の経済情勢を踏まえつつ,融資先企業の業種,規模,業績,経営者の能力及び保有資産並びにこれらを前提とする当該企業の経営状況全般のほか,予定されている返済資金の調達方法とその方法による調達の見込み,従前の融資金の返済状況,当該融資の必要性,当該融資にかかる担保の性質,内容,価値等の諸事情を総合勘案して,融資金の回収が確実であると判断されない場合には,当該融資を決定し,実行してはならないという善管注意義務を負うこととなる。このことは,b信組の理事らにおいても当然妥当する。 しかしながら,後記アないしエで詳述するとおり,被告a1及び同a2は,かかる善管注意義務に違反し,本件各融資(ただし,被告a2については,本件融資B,C,Dのみ)を行うに当たり,これらがいずれも融資限度額を超過したいわゆる大口融資規制(協金法6条,銀行法13条)に違反する融資取引であることを認識し又は認識可能であり,また,これらの融資の相手方がいずれもb信組から不動産担保で商品不動産購入資金や運転資金等の融資を受けていた不動産関連業者であり,いわゆるバブル経済の崩壊によりその財務状況が悪化し,同信組に対する債務を延滞するに至っていたこと,融資の相手方の返済原資及び返済計画が明確でなく,その返済可能性に多大な疑問があったばかりか,これらの融資の回収に必要な担保も提供されていなかったことを認識し又は認識し得たにもかかわらず,被告a2においては,本件融資B,C,Dにつきこれを漫然と稟申し,同a1においては本件各融資を漫然と決裁し,同信組に実行させたものであり,これらの同被告らの行為は,善管注意義務に違反するものである。 また,後記オのとおり,被告a1は ,Dにつきこれを漫然と稟申し,同a1においては本件各融資を漫然と決裁し,同信組に実行させたものであり,これらの同被告らの行為は,善管注意義務に違反するものである。 また,後記オのとおり,被告a1は,f産業のb信組の融資にかかる債務のために差し入れられていたgの株式(以下「本件株式」という。)を目的とする担保を,f産業が前記のとおり融資の返済が困難な状況であることを認識し又は認識し得たにもかかわらず,担保解除し,これに替えて同社が価値のない株式を差し入れることを許可(本件担保解除)し,同b2は漫然とこれに賛成したものであるから,同被告らによる本件担保解除も善管注意義務違反にほかならないというべきである。 ア本件融資Aについて(ア) 大口融資規制違反本件融資Aの取引形態は,手形割引の形式を利用した貸付けである。 手形割引による融資は,平成5年4月以前においては,大口融資規制の対象となる与信残高に含まれなかった。しかし,同規制の対象となる与信残高に算入されない割引手形とは,正常な商取引の裏付けのある商業手形の割引のことであり,融通手形の割引はなお与信残高に算入されるべきであり,実際にも算入することとされていた。本件融資Aにおいて割り引かれた約束手形は,f産業がcゴルフに対して振り出したものであるところ,この両社は,いずれもjが実質的に支配するグループ会社である上,この両社の間には商取引がなかったから,上記手形が,融通手形であることは明らかである。 ところで,本件融資Aにかかる資金は,f産業のk銀行に対する借入債務5億円の返済資金の一部として費消されたものであり,被告a1もこのことを認識していたのであるから,本件融資Aは,cゴルフを迂回したf産業への融資であるとみるべきである。そして,本件融資Aがされた平成2年度におけるb信組の特定の取 されたものであり,被告a1もこのことを認識していたのであるから,本件融資Aは,cゴルフを迂回したf産業への融資であるとみるべきである。そして,本件融資Aがされた平成2年度におけるb信組の特定の取引先への融資限度額は,8033万4612円であるところ,同信組のf産業に対する同年6月30日当時の貸付残高の合計は,7億3100万円にのぼっており,明らかに大口融資規制に違反するものである。 仮に,本件融資Aをcゴルフに対する融資であるとみても,同信組は同社に対し同融資前において既に1億7000万円を融資していたものであるから,いずれにせよ,大口融資規制に違反することに変わりはない。 (イ) 返済可能性が著しく低いこと本件融資Aにおいて割り引かれた約束手形は,前記(ア)のとおり,融通手形であり,商取引の裏付けを伴わない。しかも,振出人のf産業のb信組に対する借入残高は,前記(ア)のとおり,7億3100万円にのぼる上,その債務は割り引かれた手形の支払期日延長が繰り返されており,実質的に延滞状態にあった。 また,cゴルフは,本件融資Aのされた約2年前の昭和63年11月7日に設立された株式会社であり,同融資当時の同社の資産は,簿価4884万円の不動産のみであった。また,同社の収益は,平成2年3月末日時点で,受取利息3万7512円があるのみで他に収入はなく,当期未処理損失,次期繰越損失186万5578円を計上し,同日時点で借入金3870万円,繰越欠損金186万円を抱え,27万6888円の資本欠損状態であった。 さらに,同社は,平成2年8月3日,f産業振出の額面1億7000万円の約束手形につき,b信組に割引を依頼し,融資残額を増加させていた。 このような状況にかんがみると,cゴルフが,新たに4億円を借り入れてこれを返済できるような状況になかったことは明 面1億7000万円の約束手形につき,b信組に割引を依頼し,融資残額を増加させていた。 このような状況にかんがみると,cゴルフが,新たに4億円を借り入れてこれを返済できるような状況になかったことは明らかであるし,同社において,特に返済を可能とする返済原資を有してはいなかった。 (ウ) 著しい担保不足b信組が,cゴルフに対し,本件融資Aに際して徴求した不動産担保物件(別紙担保物件目録A記載のとおり)の当時における見積額合計は,2億6079万9500円,担保評価額はその7割に相当する1億8255万9650円であった。したがって,本件融資Aの融資金額4億円と対比すると,2億1744万0350円の担保不足の状態にあった。 (エ) 被告a1の認識ないし認識可能性平成2年2月19日基準の和歌山県定例検査において,b信組は,貸出金分類額は約9億円,欠損見込額3億2873万円と依然として大きいこと,さらに5000万円以上の大口貸出先が48.9パーセントを占めること,融通手形割引を急増させ,大口の信用供与を隠蔽していることを指摘され,その是正を強く求められていた。またb信組は,j支配にかかるいわゆるjグループの傘下にあるf産業,cゴルフとの間で取引を継続していたのであるから,被告a1においては,上記(ア)ないし(ウ)の事実関係ひいては本件融資Aが回収困難であることを認識し又は認識することが可能であった。 イ本件融資Bについて(ア) 大口融資規制違反b信組の融資限度額は,平成5年度において1億0819万9626円,平成6年度において1億3160万5764円であったところ,本件融資Bのされた同年4月19日に近い同年1月時点における同信組のe開発に対する融資等残額は,1億8500万円であったから,同融資は,上記融資限度を超過し,大口融資規制に違反するもの ったところ,本件融資Bのされた同年4月19日に近い同年1月時点における同信組のe開発に対する融資等残額は,1億8500万円であったから,同融資は,上記融資限度を超過し,大口融資規制に違反するものであった。 (イ) 返済可能性が著しく低いことe開発は,平成4年3月期において,未処理損失2732万5860円を発生させ,平成6年3月期決算においては,営業損失5513万1000円,未処理損失7853万0609円となり,以後平成11年3月期までかかる赤字状態は改善されていない。 e開発のb信組に対する本件融資B実施前の残債務1億8500万円の内容は,昭和61年9月3日付け手形割引6500万円(当初は,l有限会社振出しの額面6000万円の手形2口であったものが,その後の一本化,内入れの結果,前同日に6500万円に減額され平成2年1月にf産業振出しの約束手形に差し替えられた。),昭和63年3月29日付け手形割引2000万円(f産業振出し),平成2年1月31日付け手形割引1億円(f産業振出し)であり,いずれも期日に決済されず,1か月ごとに期限延長が繰り返されてきたものである。 また,f産業及びjがb信組において割り引いたe開発振出しの手形は,平成元年ころから,期日に決済されなくなり,期限延長が繰り返されていた。 その上,jグループのその他の関連会社の財務状況も劣悪であり,b信組に対して実質債務不履行かつ保全不足状態にあり,同社の信用力は極めて乏しかった。 (ウ) 資金使途の妥当性の欠如本件融資Bは,別紙担保物件目録B記載の各物件(以下「甲物件」という。)を開発,宅地化し,m鉄鋼へ転売することを前提として,同物件の購入資金を融資したものであり,その担保評価も,かかる開発,宅地化を前提としたものであった。 しかし,甲物件の本件融資B決裁当時の状況は,不 開発,宅地化し,m鉄鋼へ転売することを前提として,同物件の購入資金を融資したものであり,その担保評価も,かかる開発,宅地化を前提としたものであった。 しかし,甲物件の本件融資B決裁当時の状況は,不動産登記簿上の地目は田,現況は山林であり,進入路が存在せず,正確な場所の特定も困難であり,同融資に際しての担保物件調査においては,現状では担保としては適していない旨指摘している担保不適格物件であった。 そのため,甲物件の開発,宅地化,転売を前提として購入資金を融資するのであれば,かかる開発,宅地化,転売の見込みについての具体的現実的かつ明確な見通しがなければならない。 しかし,同融資決裁当時,e開発からm鉄鋼への甲物件の転売時期,転売代金は何ら具体的に決まっておらず,さらに,甲物件の開発,宅地化の見通しについても,具体的な開発内容,資金計画等について,b信組において,検討したり,資料を徴求していなかった。また,同融資決裁に当たっては,甲物件の隣地の開発計画についても言及されているが,この開発については,開発許可取得後1年以上経過していたにもかかわらず工事着手届が提出されておらず,許可にかかる開発がされるかどうかについて重大な疑義があった。しかし,同信組は,同融資決裁に当たり,この開発の実現可能性について何らの資料も徴求しなかった。 (エ) 著しい担保不足前記(ウ)のとおり,本件融資Bの決裁に当たっては,担保物件である甲物件を開発造成後宅地として担保評価し,見積額1億9247万0600円,担保評価額1億3472万9420円とした。しかし,前記(ウ)のとおり,甲物件を造成後宅地として評価する正当な根拠は何ら存在しない。したがって,前記(ウ)のとおり,現状では担保不適格物件である甲物件の評価額が,融資金額8500万円を下回ることは明らかであり,同 おり,甲物件を造成後宅地として評価する正当な根拠は何ら存在しない。したがって,前記(ウ)のとおり,現状では担保不適格物件である甲物件の評価額が,融資金額8500万円を下回ることは明らかであり,同融資は,著しい担保不足の融資であった。 (オ) 被告a1及び同a2の認識ないし認識可能性b信組は,e開発及びjグループ各社に対する既存融資口を管理し,また,これらの会社の返済期限延長に反復継続して応じていたものであるから,被告a1及び同a2は,前記(ア)ないし(エ)で述べた事情を認識し又は認識することができた。したがって,同被告らにおいて,本件融資Bの回収が困難であることも認識し又は認識することが可能であった。 ウ本件融資Cについて(ア) 大口融資規制違反b信組の平成6年度当時の融資限度額は1億3160万5764円であったところ,本件融資Cが実行された平成7年2月当時における同信組のf産業に対する融資等残高は13億9850万円であり,同融資は,明らかに法令の定める大口融資規制に違反するものであった。 (イ) 返済可能性が著しく低いこと本件融資Cの返済については,前提事実(2)ウのとおり,1年後の一括返済とされていたが,返済原資は特定されていなかった。そして,f産業は,値上がりを見込んで購入していた多数の不動産を保有していたところ,バブル経済の崩壊により不動産価格が暴落し,これらの不動産を処分できないでいた。 また,f産業は,昭和61年ころから和歌山県那賀郡丙町大字丁字戊215-2他の予定面積合計34万平方メートルの土地につき住宅団地を造成し,販売予定宅地522区画を分譲する計画に取り組み,平成2年11月には,丁ハイタウン造成工事の名称で和歌山県知事の開発許可を受けた。 同造成工事については,k銀行がメインバンクとなり,同行関連会社等から 売予定宅地522区画を分譲する計画に取り組み,平成2年11月には,丁ハイタウン造成工事の名称で和歌山県知事の開発許可を受けた。 同造成工事については,k銀行がメインバンクとなり,同行関連会社等から合計300億円の融資を受け,同行のために開発予定地に極度額234億円の根抵当権が設定されていた。同造成工事は,平成6年11月に完成し,平成7年3月より宅地販売が開始されたが,バブル経済崩壊後の地価の暴落により,同造成工事は完成以前から採算の取れないことが明らかであり,そのためf産業が経営破綻することも確実であった。 さらに,f産業は,平成3年7月1日から平成4年6月30日までの決算において,支払利息を計上しないなどの粉飾をしたにもかかわらず,8200万円の資本欠損を生じ,2億5100万円の経常赤字となり,その後,同社は債務超過状態が続き,経常利益が黒字に転ずることもなかった。そして,本件融資Cの直近の決算期である平成5年7月1日から平成6年6月30日の決算において,同社の借入金は短期329億円,長期6900万円とされ,資本は4億8900万円の欠損,3400万円の経常赤字とされた。 そして,b信組は,f産業が上記のとおり債務超過となった平成4年以降も,同社の持ち込む手形の割引を繰り返すなどして,本件融資Cを実行する時点までに,同社に対する融資残高が,手形割引額が10億5400万円,手形貸付額が3億4450万円の合計13億9850万円となっていた。 (ウ) 虚偽の資金使途本件融資Cの資金使途は,土地造成費用等とされていたが,当時,f産業において土地造成計画は存在しておらず,この資金使途は虚偽であった。現に,同融資により融資された金員のうち,5100万円については,ノンバンクの抵当権を解除するために費消され,残額は,株式会社n興産に対する支払などに は存在しておらず,この資金使途は虚偽であった。現に,同融資により融資された金員のうち,5100万円については,ノンバンクの抵当権を解除するために費消され,残額は,株式会社n興産に対する支払などに充てられた。 (エ) 著しい担保不足b信組は,別紙担保物件目録C記載の各物件を,一律に1坪当たりの単価を10万円として,時価合計1億8113万円とし,担保評価額をその6割の1億0867万8000円とした。 しかし,そもそも,上記担保評価額は,本件融資Cの貸付金額を下回るものである。さらに,上記各物件のうち,土地2筆は宅地,1筆山林であるが,残りは,田1筆,畑8筆と農地であった。同信組は,これらの物件を宅地見込地として評価したが,上記各物件を宅地造成する具体的な計画をf産業は有しておらず,さらに,上記各物件の中心にある同目録8記載の土地においては現に耕作がされていた。 したがって,上記各物件は,同信組のした担保評価よりも低い担保評価額にならざるを得ず,同融資の担保として著しく不足していたというべきである。 (オ) 被告a1及び同a2の認識ないし認識可能性b信組は,jグループ各社及びf産業に対する既存融資口を管理し,また,同社らからの返済期限延長に反復継続して応じていたのであるから,被告a1及び同a2が,前記(ア)ないし(エ)の事実関係,さらには本件融資Cにかかる債権回収が当初より困難になることを認識し又は認識することが可能であった。 エ本件融資Dについて(ア) 大口融資規制違反本件融資Dは,本件融資Aと同様(前記ア(ア)),融通手形の手形割引の形式を利用したf産業への貸付けにほかならない。そして,b信組の平成7年3月当時の融資限度額は1億3363万6254円であったところ,本件融資Dのされた平成7年10月当時における同信組の同社に対する融 式を利用したf産業への貸付けにほかならない。そして,b信組の平成7年3月当時の融資限度額は1億3363万6254円であったところ,本件融資Dのされた平成7年10月当時における同信組の同社に対する融資等残高は18億4830万円であった。したがって,同融資は,大口融資規制に明らかに違反するものであった。 (イ) 返済可能性が著しく低いこと本件融資Dの支払期日は,差し入れられた手形の支払期日と同じ融資実行の3か月後とされていたが,前記ウ(イ)のとおり,f産業は赤字経営の状態にあり,平成6年7月1日から平成7年6月30日までの決算においても,短期の借入金375億円,8億6015万円の資本欠損,3億7055万円の経常赤字という状態であり,b信組からの融資も事実上延滞状態にあったから,同社は,およそ本件融資Dに対する返済が可能な財務状態ではなかった。 (ウ) 資金使途が不明確であること本件融資Dの資金使途は,稟議書にも明らかにされておらず,不明であった。 (エ) 著しい担保不足前提事実(2)エ(ウ)のとおり,本件融資Dにおいては新規の担保設定がされておらず,従前,f産業がb信組に差し入れていた担保があるのみであった。しかし,前記ウ(エ)のとおり,その担保評価は過大であった上,仮に,同信組の担保評価を前提としても,既存担保の合計は14億8200万円であり,同信組の同社に対する融資総額18億4800万円には不足していた。したがって,本件融資Dは,実質的に無担保でされたものであった。 (オ) 被告a1及び同a2の認識ないし認識可能性前記ウ(オ)のとおり,b信組は,f産業及び同社を含むjグループ各社の既存融資口を管理し,また,同社らからの返済期限延長に反復継続して応じていたのであるから,被告a1及び同a2が,前記(ア)ないし(エ)の事実関係,さらに 信組は,f産業及び同社を含むjグループ各社の既存融資口を管理し,また,同社らからの返済期限延長に反復継続して応じていたのであるから,被告a1及び同a2が,前記(ア)ないし(エ)の事実関係,さらには本件融資Dにかかる債権回収が当初より困難になることを認識し又は認識することが可能であった。 オ本件担保解除について(ア) 事実経過b信組は,昭和62年5月,f産業の依頼に基づき,o株式会社が振り出した額面6500万円の約束手形を割り引き,その後,同手形の決済につき期限の延長を繰り返していた。 被告a1は,その所有する本件株式21万株を上記手形割引の担保として同信組に差し入れた。そのうち1万株については,同年7月28日,担保解除された。 同信組は,平成8年6月28日,上記手形を決済し,同日,e開発が振り出した6000万円の約束手形を割り引いた。その際,同信組は,本件株式20万株を担保解除し,e開発振出しにかかる上記手形を割り引くに当たり,hの株式1020株(額面額合計5100万円)を新たに担保とした。 (イ) 本件担保解除の善管注意義務違反該当性本件株式20万株の本件担保解除当時の時価は,7560万円(1株当たり378円)であった一方,hの株式は,同社が非上場企業であることから,換価性に難がありその評価が困難であるため,売却先が予定されているなどの特段の事情がない限り,担保としての適格性を欠くものであった。 その上,同社は,関西国際空港の建設に伴い,その対岸にある大阪府泉佐野市に建設が予定されていたりんくうタウンにおいて,商業業務ゾーンの開発を行うことを目的として平成元年10月に設立された株式会社であったが,平成3年秋ころのバブル経済崩壊に伴い,りんくうタウンに進出を予定していた企業の大半が計画を見直す状況となり,遅くとも平成7年以降,同 ことを目的として平成元年10月に設立された株式会社であったが,平成3年秋ころのバブル経済崩壊に伴い,りんくうタウンに進出を予定していた企業の大半が計画を見直す状況となり,遅くとも平成7年以降,同社は,実質的に経済活動を停止し休眠会社となっていたものであり,その株式に価値はなかった。 被告a1は,本件担保解除により,自ら差し入れたgの株式の担保を解除して自らの利益を得る一方,b信組に対し損害を与えたものであり,これは明らかに背任行為であり,善管注意義務に違反するものである。 また,被告a2は,本件担保解除がb信組に損害を与えるものであることを認識しており,これに反対すべき善管注意義務があったにもかかわらず,同解除に賛成したものであり,同a1と同様,善管注意義務に違反したものというほかはない。 なお,仮に,被告a1が,本件株式の株券をb信組に担保提供したにすぎないとしても,同被告と同信組との間には,本件株式21万株を同被告において提供するという債権的な合意はあったのであり,同被告はこれに基づき本件株式の株券を同信組に引き渡す義務があり,また,同a2は,監督官庁である和歌山県から,本件株式の株券が同信組に担保提供されていないことを指摘されていたのであるから,理事としての善管注意義務に基づき,同a1に対し,本件株式の株券を同信組に引き渡すよう要求する義務があったというべきである。そうであるにもかかわらず,前記のとおり,被告a1の決裁及び同a2の賛成により,本件担保解除が行われた以上,同被告らは善管注意義務違反を免れることはできないというべきである。 (被告らの主張)ア信用組合の理事の注意義務信用組合の理事には,その職務の執行に当たり善管注意義務が課せられているが,民商法上の善管注意義務の内容及び程度は,法律上具体的に定義されたものではな (被告らの主張)ア信用組合の理事の注意義務信用組合の理事には,その職務の執行に当たり善管注意義務が課せられているが,民商法上の善管注意義務の内容及び程度は,法律上具体的に定義されたものではなく,当該法人の性格等により大きな違いが存在するものであるから,信用組合の理事に課せられる善管注意義務の内容及び程度を決するに当たっては,信用組合の目的や実際上の役割を十分にしんしゃくする必要がある。 そして,信用組合は,組合員の金融の円滑化を図り,もって組合員の相互扶助を図る目的で設立されるものであり,国民経済一般の金融の円滑化を図り利潤を上げようとする営利法人である銀行とは異なる。したがって,信用組合の理事の善管注意義務は,銀行の取締役の善管注意義務とも異なることとなる。すなわち,銀行においては,株主のために利益を上げる要請及び国民一般から預金を寄託されており,その確保に配慮しなければならないという要請から,できる限り利益を上げることができるように,貸付先を選別し,最も利益が上がると考えられる貸付けから実行しなければならないこととなるのに対し,信用組合においては,利益が上がるかという見地だけではなく,組合員の相互扶助の見地も考慮して貸付けを実行することとなるのであるから,信用組合の理事において,銀行の取締役の貸付けに当たっての注意義務のように,利益及び安全性の観点のみで貸付先を決定するような義務を課すことは,信用組合の本質にかんがみ妥当でない。 また,銀行の取締役は,主に銀行実務担当の出身者で占められており,金融実務に精通しているのに対し,信用組合の理事は,そのほとんどが組合員であり,金融実務の経験のない者で占められており,銀行の取締役との間に能力の差異があることを否定することはできない。かかる現実にかんがみると,信用組合の理事に銀行の取 の理事は,そのほとんどが組合員であり,金融実務の経験のない者で占められており,銀行の取締役との間に能力の差異があることを否定することはできない。かかる現実にかんがみると,信用組合の理事に銀行の取締役と同程度の注意義務を課すことは,不可能を強いることになる。 したがって,信用組合の理事の注意義務の内容及び程度は,銀行の取締役のそれよりも緩やかなものにならざるを得ないというべきである。 イ大口融資規制違反と善管注意義務違反の関係大口融資規制は,規制の内容を柔軟に改変することができるように,多数の政令委任事項が含まれており,しかも,通達によって解釈の変更がされることも多い。また,規制違反に対する罰則も定められていない。 以上によれば,大口融資規制は,法令による規制ではあるものの,その実質は,行政指導を一般化・明確化したものというべきであって,これに違反したことが直ちに善管注意義務違反に当たるということはできない。 ウ被告a1及び被告a2のb信組における善管注意義務の範囲原告は,被告a1及び同a2において,本件融資AないしDを行うに当たり,担保不動産の価値の調査だけでなく,融資の相手方の財務内容等も調査する義務があったと主張する。 しかし,同被告らがb信組に勤務し始めた当時,同信組の理事らは,かかる調査をすることなく融資を決定していたのであり,かかる調査義務は,同信組と理事らとの間の委任契約の内容とはなっていなかったということができる。 したがって,同被告らにおいて,担保価値の調査を超えて,融資相手方の財務内容等を調査する注意義務はなかったものである。 エバブル経済の影響被告a1がb信組の理事長に就任した昭和63年以降,バブル経済を迎えて預金量が約80億円から最大で約280億円と増加し,金利が上昇したことも併せて,その運用方法に苦慮するこ 。 エバブル経済の影響被告a1がb信組の理事長に就任した昭和63年以降,バブル経済を迎えて預金量が約80億円から最大で約280億円と増加し,金利が上昇したことも併せて,その運用方法に苦慮することとなった。特に信用組合においては,貸出先が組合員に限定されているため,優良の融資先に比較的高額の融資をする必要に迫られた。 また,バブル経済の下で,金融緩和政策が採られた結果,銀行は,貸出量を増加させ,従来信用組合が取引相手としていた中小企業にも貸付けを実行し,さらには,生産的な設備投資への融資だけでは資金を運用することができず,非生産的な不動産投機への融資をも行うようになった。そのため,銀行の補完的な役割を担う信用組合としては,不動産投機への融資を増加させざるを得なくなり,不動産業,建設業向けの貸付けが増加した。 b信組におけるかかる貸付けの増加は,監督官庁である和歌山県も黙認するところであった。その後,予測不可能なバブル経済の崩壊及びこれに続く不動産投機への融資の大部分の不良債権化は,国の金融締め付けの結果であり,被告a1及び同a2の善管注意義務違反に起因するものではない。 オ被告a2の善管注意義務についてb信組において,融資をするか否かの決定は,理事長と専務理事によってされており,理事会で決定されるものではなかった。そのため,本件各融資等がされた当時,単なる職員理事にすぎなかった被告a2は,その決定には関与していなかったのであり,同被告において,本件各融資等の決定に関して善管注意義務が発生する余地はない。 カ本件各融資等に関する個別的な主張(ア) 本件融資Aについてa 本件融資Aの性格及び弁済期本件融資Aは,手形割引の形式で行われたものであるが,その実体は,手形を担保とした貸付けであった。したがって,約束手形上の支払期日は,融 (ア) 本件融資Aについてa 本件融資Aの性格及び弁済期本件融資Aは,手形割引の形式で行われたものであるが,その実体は,手形を担保とした貸付けであった。したがって,約束手形上の支払期日は,融資の返済期日としての意味を持つものではなかった。b信組とcゴルフは,cゴルフが融資された資金を用いて,購入した土地を開発,分譲し,それを売却した時を返済期とし,同社が上記土地の売却代金から返済するという合意をしたのである。同融資において差し入れられた約束手形は,前記約定の支払日に至るまで,券面上の支払日になると,cゴルフが利息を支払うのと引換えに,新しい手形に差し替えられていたのであるから,手形の差し替えを支払の猶予とみることはできない。 なお,稟議書に3か月程で必ず弁済するとの記載がされているのは,cゴルフにおいて,3か月後にk銀行に借入れを一本化し,借換えを行うことを予定していたからである。 b 本件融資Aの資金使途b信組は,cゴルフに対し,本件融資Aとして,当時f産業が開発していた丁ハイタウン近隣の土地をcゴルフが宅地造成するための費用として貸し付けたものである。そして,同融資にかかる金員の一部は,f産業のk銀行に対する返済金として使用されたのであるが,これは,別紙担保物件目録A記載の不動産すなわち同融資にかかる金員を使って宅地造成する土地に設定されていた同銀行のf産業に対する貸金等の債権を担保するための1番根抵当権を抹消するという目的があったのであり,広い意味で同土地の開発,造成のための費用であったということができる。 したがって,本件融資Aは,大口融資規制潜脱のための迂回融資ではない。また,cゴルフに金銭を貸し付けた後,その金銭の使途について同社を完全に拘束することは不可能である。 ccゴルフの財務内容及び返済原資cゴルフは,本 は,大口融資規制潜脱のための迂回融資ではない。また,cゴルフに金銭を貸し付けた後,その金銭の使途について同社を完全に拘束することは不可能である。 ccゴルフの財務内容及び返済原資cゴルフは,本件融資A当時,設立後間もない会社であった上,土地開発,分譲を目的としていたのであるから,土地の開発を終えて分譲するまで,自らにおいて返済原資を有していなかったとしてもやむを得ない。もっとも,同社においては,k銀行からの借入れによって,本件融資Aを返済することが予定されていたのであるから,同社自身が返済原資を有していなくても,本件融資Aの返済については特に問題はなかった。 d 担保評価b信組は,cゴルフに対し,本件担保物件目録A記載の各土地を同社が宅地造成し分譲するための資金として,本件融資Aを実行したのであるから,宅地造成後の価格を基礎として評価することも許されるところ,本件融資Aの決定に際してされた同各土地に対する担保評価は,田としての売買価格を参考にしてされたものであり,cゴルフにおいて同各土地を宅地造成した場合の価格よりは低額となっている。そのために,一見すると,本件融資Aに際しての担保徴求が不十分であるかのように見えるが,同各土地を宅地として評価すれば,平成2年9月当時の評価で総額6億7440万円ないし7億8680万円であり,担保としての評価額は4億9000万円程度となる。したがって,本件融資Aの融資金4億円を充分に担保していることとなる。 (イ) 本件融資Bについてa 返済可能性についてe開発の財務状況については,jが,b信組との間で,本件融資Bにかかるe開発の貸金債務につき,同社と連帯保証契約を締結しており,同人の経営関与が期待されたことから,信用できたものであった。 また,同融資前のe開発のb信組に対する残債務については,本 本件融資Bにかかるe開発の貸金債務につき,同社と連帯保証契約を締結しており,同人の経営関与が期待されたことから,信用できたものであった。 また,同融資前のe開発のb信組に対する残債務については,本件融資Aと同様,不動産の開発,分譲が達成された後に返済するという合意があり,約束手形はその担保にすぎず,手形面上の支払期日は弁済期としての意味を有していなかったのであるから,手形の差し替えにより外見上支払の猶予がされているように見えたとしても,同社の財務状況が悪く,本件融資Bの返済可能性が低かったということはできない。 b 本件融資Bの資金使途被告a1及び同a2は,e開発が,甲物件を開発,造成する計画について,具体的な計画を示した図面や甲物件の隣接土地の開発,造成をしていたp株式会社の差し入れた書面を徴求するなどして調査したものである。その結果,被告a1は,本件融資Bの稟議書に,正確な売却等不明であるとの意見を記載した。その上で,同被告は,同融資を,手形を担保としない証書貸付けとして,開発の進行に関係なく,返済額を毎月100万円の120回払として,元本を含めた返済を求めるよう計画を立てたのである。 また,同融資当時は,まだバブル経済の崩壊が顕著になっていた時期ではなかったから,pの着工が遅れていたことをもって,開発計画自体に重大な疑義があったということはできない。 そして,e開発が,甲物件を開発すれば,宅地として評価することができるから,その担保価値は十分あるということができた。したがって,転売の具体的な計画が明確でないことをもって,資金使途が妥当でなかったということはできない。 c 担保評価甲物件は,p所有にかかる隣接土地と一体として開発する予定であったから,担保評価に当たり,正確な位置の特定を要するものではなかった。したがって,甲物 でなかったということはできない。 c 担保評価甲物件は,p所有にかかる隣接土地と一体として開発する予定であったから,担保評価に当たり,正確な位置の特定を要するものではなかった。したがって,甲物件が担保として不適格であったとはいえない。 (ウ) 本件融資Cについてa 丁ハイタウン造成工事の採算可能性バブル経済の崩壊の影響は,和歌山県においては,平成8年以降顕著な地価の下落という形で発現したのであり,平成6年ないし7年当時は,まだその影響は小さかった。したがって,この時点において,丁ハイタウン造成工事が採算の取れない工事となっていたこと及びそれによりf産業が破綻することが確実であったとは到底いえない。 そして,本件融資Cがされた平成7年2月の時点においては,同造成工事が完了し,これから分譲が始まるという時期であり,被告a1及び同a2としては,これからf産業に売却代金が入り,同社が大きく成長すると期待していた。 なお,同造成工事については,k銀行及びその関連会社が,f産業に対して巨額の融資を行っていたのであり,同被告らは,地元の大銀行である同銀行が融資を行っていることから,安心して融資をしていたのであり,同社が同銀行に対して支払を延滞していたという事情は知らなかった。 bf産業の財務内容と返済原資f産業は,前記aのとおり,k銀行及びその関連会社から巨額の融資を受け,丁ハイタウン造成工事など大規模な宅地開発を行っていたのであり,同造成工事については,本件融資Cがされた平成7年2月以降において,分譲地の売却に伴い多額の資金を回収することが見込まれていたのであるから,前記分譲前の財務内容が悪化していたことをもって,同社が破綻に直面していたということはできない。 被告a1及び同a2は,同造成工事及び分譲地の売却によって,同社の業績は好転し れていたのであるから,前記分譲前の財務内容が悪化していたことをもって,同社が破綻に直面していたということはできない。 被告a1及び同a2は,同造成工事及び分譲地の売却によって,同社の業績は好転し,その売却代金から同融資の返済をすることを見込んでいたのであり,その予測は,前記のとおり,不当なものではない。 c 本件融資Cの資金使途本件融資Cは,別紙担保物件目録C記載の各土地の宅地開発をする目的ということで,f産業から申込みを受けたものであり,現に,同土地のうち3筆については,造成工事が開始されていた。 d 担保評価被告a1及び同a2は,別紙物件目録C記載の各土地の担保評価をするに当たり,1坪当たり10万円として求めた時価の6割に相当する1億0800万円を担保評価額とした。 しかし,同土地が,f産業の計画どおり,宅地開発され,分譲されれば,その評価額は,1坪当たり約30万円になると考えられた。そして,同土地のうちq所有にかかる耕作地についても,同被告らは,1年後までに,f産業がその所有権を取得するとの話を聞いていたのであり,同土地の造成工事の具体的計画があるものと判断していた。 また,本件融資当時の同土地の不動産鑑定評価は,1億2600万円であり,融資金額の1億2000万円を超過している。 以上によれば,同土地が,同融資の担保として著しく不足していたということはできない。 (エ) 本件融資Dについてa 本件融資Dの性格及び弁済期本件融資Aと同様,同融資Dは,手形割引の形式で行われたものであるが,実体は,約束手形を担保とした貸付けであった。したがって,約束手形上の支払期日は,融資の返済期日としての意味を持つものではなく,b信組とf産業は,融資された資金を用いて,購入した土地を開発,分譲し,それを売却した時を返済期とし,同社が上記土地の売 って,約束手形上の支払期日は,融資の返済期日としての意味を持つものではなく,b信組とf産業は,融資された資金を用いて,購入した土地を開発,分譲し,それを売却した時を返済期とし,同社が上記土地の売却代金から返済するという合意をしたのである。同融資において差し入れられた約束手形は,前記約定の支払日に至るまで,券面上の支払日になると,f産業から利息の支払を受けるのと引換に,新しい手形に差し替えられていたのであるから,かかる手形の差し替えは,f産業に対する支払猶予には当たらない。 b 担保を徴求しなかった理由本件融資Dに際しては,従来の担保で十分であると考えられたため,新たな担保の徴求を行わなかった。すなわち,b信組のf産業に対する同融資当時の貸付総額約18億円のうち,株式会社r社振出しにかかる額面合計7億円の約束手形については,同社が上場企業であり,その支払が確実視されることから,特に担保が必要ではないと判断されたのであり,これを除外すれば,本件融資Dを無担保で実行したとしても,当時f産業の債務を担保するために設定されていた担保物件総額14億円の範囲内に収まっていたのである。したがって,b信組において,f産業に対し,本件融資Dに際し,新たに担保を徴求する必要はなかった。 (オ) 本件担保解除についてa 事実経過本件融資A及びDと同様,b信組は,f産業との間で,手形割引の形式を利用して,貸付けを行っており,担保として約束手形を徴求したものであり,手形の決済につき期限の延長をしたものではない。 また,被告a1は,本件株式の株券を証券会社に預けていたことから,その預かり証を同信組に担保として差し入れたものである。 b 本件株式の株券の預かり証の担保提供の意義株式を担保提供するに当たっては,株券の占有を移転する必要があること,株券の預かり証 たことから,その預かり証を同信組に担保として差し入れたものである。 b 本件株式の株券の預かり証の担保提供の意義株式を担保提供するに当たっては,株券の占有を移転する必要があること,株券の預かり証は,免責証券にすぎず,担保としての機能を果たすものではないことからすれば,単に預かり証を差し入れただけでは,被告a1がb信組に対し本件株式を担保提供したという法律効果は発生しない。また,仮に,担保提供の法律効果があったとしても,預かり証のみでは,担保の実行をすることもできないから,担保としての意味はおよそない。 また,gの株価は,同社の業績不振により,下落を始めていたから,本件株式の担保価値も低下していた。 以上により,被告a1としては,b信組に損害を与えないようにするために,本件担保解除をした上,hの株式を担保提供させたのである。 chの株式の担保価値hは,周辺の各地方公共団体出資の第三セクター方式の株式会社であり,平成8年当時も事業を継続していた。そして,同社が解散した際の残余財産分配金を巡り,吸収合併の動きもあって,同社の株式の担保価値は上昇していた。 したがって,同社の株式の価値がないことを前提とする原告の主張は理由がない。 (2) 本件各融資等によってb信組に生じた損害の額(原告の主張)ア本件融資Aについての損害額本件融資Aに関しては,4億円全額について,債権の回収がされていない。 他方,別紙担保物件目録A記載の各不動産の現在の評価額は,2180万円である。したがって,差し引き3億7820万円が損害額となる。 イ本件融資Bについての損害額本件融資Bの現在の融資残高は6433万6338円であり,甲物件の現時点における評価額は372万8200円である。したがって,差し引き6060万8138円が損害額となる。 ウ本件融資Cについ 害額本件融資Bの現在の融資残高は6433万6338円であり,甲物件の現時点における評価額は372万8200円である。したがって,差し引き6060万8138円が損害額となる。 ウ本件融資Cについての損害額本件融資Cに関しては,1億2000万円全額について返済がされていない。他方,別紙担保物件目録C記載の各不動産の現在の評価額は,5648万円である。したがって,差し引き6352万円が損害額となる。 エ本件融資Dについての損害額本件融資Dに関しては,1700万円全額について返済がされていない。そして,前提事実(2)エ(ウ)のとおり,同融資に当たり,何らの担保も差し入れられていない。したがって,1700万円全額が損害額となる。 オ本件担保解除についての損害額b信組が,f産業から平成8年6月28日に割り引いたe開発振出しにかかる6000万円の約束手形は,決済されず,他方,hの株式は,換価不能の状態にある。他方,gの株式20万株の株価は,7560万円であったから,本件担保解除をしなければ,b信組は,前記6000万円全額を回収することができた。したがって,損害額は,6000万円となる。 (被告らの主張)ア本件融資A,B,Cについて原告は,本件融資A,B,Cについて,融資残高から前記各融資に当たり徴求した担保不動産の現時点における評価額を差し引いたものを損害額とする。 しかし,不動産の価格は,予測不能なバブル経済の崩壊により,大幅に下落しているのであるから,この下落によって生じた損害については,被告a1及び同a2の善管注意義務違反との間に因果関係がない。 イ本件担保解除について前記(1)の被告らの主張カ(オ)aのとおり,本件担保解除の対象は,本件株式ではなくその株券の預かり証にすぎず,担保としての価値はない。したがって,本件担保解除に がない。 イ本件担保解除について前記(1)の被告らの主張カ(オ)aのとおり,本件担保解除の対象は,本件株式ではなくその株券の預かり証にすぎず,担保としての価値はない。したがって,本件担保解除によって,損害が発生する余地はない。 (3) 本件贈与が詐害行為に当たるか。 (原告の主張)ア本件贈与の客観的詐害性本件贈与は,不動産登記簿記載のとおり,平成11年1月23日にされたものであり,その当時,被告a1には,本件各物件以外にみるべき資産がなかった。また仮に,本件贈与が,被告a3主張のとおり,平成10年秋ころにされたとしても,その時点においても被告a1には本件各物件以外にみるべき資産はなかった。 したがって,本件贈与は,これに先立ち発生した本件融資等に関する被告a1に対する損害賠償請求権をb信組から譲り受けた原告をはじめとする同被告の総債権者を詐害する行為である。 イ被告a1の本件贈与の詐害性認識(ア) 債務者が当該行為を詐害行為であると認識していたというためには,特定の債権者を害することまで認識する必要はなく,一般の債権者を害することを認識していれば足りるところ,本件贈与が,被告a1の唯一の重要な財産である本件各物件につき,無償で同被告の妻である被告a3に対し行われたことに照らすと,被告a1は,本件贈与の際,これによって同被告の債権者を害することを知っていたものである。 (イ) さらに,本件各融資等は,前記(1)の原告の主張のとおり,b信組最大の劣悪債務者であるjグループ各社との間の取引のうち,被告a1の善管注意義務違反が明白なものであった。また,和歌山県知事が,b信組に対し,平成10年6月9日,1年以内に自己資本比率0パーセント以上を達成しなければならないとの早期是正に関する命令を出したこと,同年11月11日の同信組理事会にお た。また,和歌山県知事が,b信組に対し,平成10年6月9日,1年以内に自己資本比率0パーセント以上を達成しなければならないとの早期是正に関する命令を出したこと,同年11月11日の同信組理事会において自己資本比率0パーセント以上を達成することは現状において困難であるとの認識が示されていたこと,被告a1が平成11年1月ないし2月の時点で同信組の事業継続を断念し,同年2月8日に同県に対し事業譲渡の斡旋依頼をしたことを自認していることからみれば,本件贈与の時点において,b信組の破綻は確実であり,被告a1においてもそのことを認識していたものである。そして,破綻金融機関の経営者に対する民事責任の追及は平成8年8月から開始されており,いわゆる金融安定化関連法の成立した平成10年以降その責任追及が本格化した。 以上の各事実に照らすと,被告a1において,本件贈与の際,b信組が破綻し,同信組又は同信組から債権譲渡を受けた原告から,本件各融資等に関する善管注意義務違反を理由として,損害賠償請求を受けることを認識していたことは明らかである。 (被告a3の主張)ア本件贈与の客観的詐害性の欠如被告a1と同a3は,別紙物件目録記載の土地を昭和50年6月27日に購入し,同目録記載の建物を同年8月15日に建築するために,同年6月27日,s銀行から連帯して1700万円を借りた。そして,昭和50年当時の同a1の収入が月額7万円にすぎないところ,上記借入金の返済は,月額約15万円ないし16万円にのぼるものであったため,その返済は,主として月額15万円ないし20万円と同被告よりも収入の多かった同a3がしていたものである。したがって,本件各物件の実質的所有権は,そもそも同a3にあったというべきであり,かかる実質的所有権の帰属に登記上の表示を合わせたにすぎない本件贈与 よりも収入の多かった同a3がしていたものである。したがって,本件各物件の実質的所有権は,そもそも同a3にあったというべきであり,かかる実質的所有権の帰属に登記上の表示を合わせたにすぎない本件贈与及びこれに基づく所有権移転登記は,客観的に同a1の責任財産を減少させる詐害行為には該当しない。 イ被告a1の詐害意思の欠如(ア) 本件贈与の動機被告a1は,平成8年ころ,b信組の出資金を増加させるため,他の理事に依頼して新たに出資をしてもらったが,その後同理事が死亡し,その相続人から同被告に対して出資金を返還するよう求められ,同被告は,同理事に無理に依頼して前記出資をさせた経緯から,それを返還することとし,その原資として,同a3から金銭を借り入れた。同a1は,このほかにも同a3から金銭を借り入れており,また,前記アのとおり,本件各物件を取得するに当たっては,同被告の金銭的な支援を受けており,本件各物件の実質的な所有権は同被告にあるとの認識を有していた。そのため,同a1は,同a3に対する本件各物件の贈与を以前から考えていた。 その後,被告a1は,平成10年秋ころ,検査入院先の病院において胆のうがんの疑いがあると診断されたが,b信組の経営改善を指揮するため,この時手術を受けなかった。同a1は,万が一自分が死亡した場合に,本件各物件の相続について紛争が生ずることを避けるため,本件各物件を同a3に対して生前贈与する必要があった。そこで,そのころ,同a1は,同a3に対し,本件贈与をしたのである。 以上のとおり,本件贈与には,正当な動機があったのであり,債権者を害する目的でされたものではない。 (イ) b信組の破綻及び責任追及を受けることの認識の欠如被告a1に対し債権を主張するのは原告のみであるから,本件詐害性の認識の有無は,被告a1が,本件贈与当時 を害する目的でされたものではない。 (イ) b信組の破綻及び責任追及を受けることの認識の欠如被告a1に対し債権を主張するのは原告のみであるから,本件詐害性の認識の有無は,被告a1が,本件贈与当時,第1事件にかかる原告の同被告に対する損害賠償請求権の存在を認識していたか否かに帰着するものである。しかし,以下に述べるとおり,本件贈与当時,b信組の経営破綻はまだ確実のものとはいえず,同被告は,その当時,前記損害賠償請求権の存在を認識していなかったというべきである。 a 本件贈与がされたのは,前記(ア)で述べたとおり,平成10年秋ころのことであるが,その当時,b信組は,早期是正措置命令に基づく1年以内の自己資本0パーセント以上を果たすためにさまざまな措置を執っていたのであり,まだ,同信組の破綻が決定的であるという状況にはなかった。 b 被告a1に対する第1事件による責任の追及は,b信組が破綻した平成11年3月から2年を経過した平成13年3月7日に提起されたものであり,平成11年12月に設置された経営責任調査委員会が平成12年2月21日に調査報告書を提出してからも1年以上が経過していた。また,金融機関破綻後も,必ずしもその経営者に対する民事責任の追及がされているわけではなく,また,民事責任が追及される場合には,同時に刑事訴追もされていることから,それは相当悪質な事案であったのであり,本件とは事案を異にするものであった。 c 本件融資Aは,本件贈与から約9年前の平成2年にされたものであり,その余の本件融資等もいずれも本件贈与から相当前にされたものであるから,日々融資等の決裁を行っていたb信組の理事長の被告a1において,本件融資等に善管注意義務があったか否かなど思い及ぶということはあり得ない。 (4) 被告a3が本件贈与当時,本件贈与が詐害行為に から,日々融資等の決裁を行っていたb信組の理事長の被告a1において,本件融資等に善管注意義務があったか否かなど思い及ぶということはあり得ない。 (4) 被告a3が本件贈与当時,本件贈与が詐害行為に当たることを知らなかったか。 (被告a3の主張)被告a3は,平成10年秋ころにされた本件贈与の際,その贈与によって同a1の債権者を害することを知らなかった。 また,仮に本件贈与が原告主張のとおり平成11年1月23日にされたとしても,その際,同a3は,本件贈与が同a1の債権者を害することを知らなかった。 すなわち,被告a3は,本件各物件を取得した昭和50年から,同a1に対して,本件各物件の所有権移転登記手続をするよう求めていたものであり,b信組の経営破綻及びそれに続く同被告への民事責任の追及とは無関係にかかる要求をしていたし,同a3は,ごく普通の主婦であり経済事情にも詳しくなかったのであるから,金融再生法などの制定により金融機関の経営者に対する民事責任の追及が厳しくされるようになったなどということを認識していなかったのであり,さらに,同a1は,家庭において仕事の話をしていなかったのであるから,同a3が,b信組の経営破綻さらには同a1に対する本件融資等にかかる損害賠償請求権の存在を認識していたとは考えられない。 (原告の主張)ア詐害行為の受益者の善意ないし悪意の対象は,当該詐害行為が債務者の一般債権者を害することであり,特定の債権ないし債権者の存在を知らなかったとしても,一般債権者を害することを知っていれば,善意とはならないと解すべきところ,本件贈与が夫婦関係にあり,同居している被告a1と同a3の間で無償でされたことに照らすと,同被告が,本件贈与の際,それが同a1の一般債権者を害することを知らなかったとは到底考えられない。 イまた,以下の各事 夫婦関係にあり,同居している被告a1と同a3の間で無償でされたことに照らすと,同被告が,本件贈与の際,それが同a1の一般債権者を害することを知らなかったとは到底考えられない。 イまた,以下の各事実に照らすと,被告a3が,本件贈与の際,その贈与によって同a1の債権者であるb信組(原告が債権を譲り受ける前)を害することを知らなかったとは到底考えられない。 (ア) 本件贈与は,被告a1の妻である被告a3に対し,b信組の破綻に近接した平成11年1月23日に無償でされたものであり,その詐害性は強度なものである。したがって,特段の事情がない限り,同被告において,その贈与が詐害行為であることを認識していたものと事実上推定される。 (イ) バブル経済の崩壊後,金融機関の破綻が相次ぎ,日本経済において深刻な金融不安が生じていた。当初,破綻金融機関に対しては個別的な行政対応がされていたが,金融機関の破綻は止まず,抜本的な対応が必要とされたことから,平成10年10月,いわゆる金融再生法が制定された。同法においては,破綻金融機関の経営者責任の追及が明記され,その結果,破綻金融機関の経営者は,莫大な損害賠償責任を負う可能性が極めて高くなっていた。 これらの事情については,金融不安が高まる中,国会審議も含めて日々マスメディアによって報道がされていたのであり,公知の事実となっていた。 したがって,被告a3においてかかる事情を知っていたことは明らかである。 (ウ) 前記(ア)のとおり,被告a3は,b信組の理事長である同a1の妻である。 そして,同信組が経営破綻すれば,同被告の経営者としての責任が追及される可能性があることは容易に認識できることであり,その場合には,本件各物件を中核とする同被告の財産が法的手続により処分される可能性が高いことも容易に認識できるところである。 者としての責任が追及される可能性があることは容易に認識できることであり,その場合には,本件各物件を中核とする同被告の財産が法的手続により処分される可能性が高いことも容易に認識できるところである。 (エ) 被告a1は,平成8年ころb信組の理事及び監事に対し,同信組の出資金を増加させるために,追加出資をするよう依頼し,同人らをしてかかる追加出資をさせたが,その後,同人ら又はその相続人らから出資金の返還を求められ,同a3に事情を説明して,金銭を借り入れてこれを返還した。この出資金返還請求は,同a1が,他の理事及び監事又はその相続人らから,同信組の経営責任を追及されていたことにほかならないから,その事情を同被告から聞いていた同a3は,同a1が,経営責任を追及されていることを認識していたのであり,第1事件ないし他の理由による同被告に対する経営責任の追及の可能性が高いことも当然に認識していた。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告a1及び同a2の善管注意義務違反の有無)について(1) 被告a1及び同a2がb信組に対して負う善管注意義務の内容信用組合の理事は,組合に対し,善管注意義務を負う(中小協組法42条,商法254条3項,民法644条)から,同義務に違反し,信用組合に損害を与えた場合には,連帯してその損害を賠償しなければならない(中小協組法38条の2第1項,この規定は,理事が連帯債務を負うという点で,債務不履行の特則を定めたものと解される。)。 ところで,信用組合は,協金法の適用を受けるが,同法は,協同組織による金融事業の健全な経営を確保し,預金者その他の債権者及び出資者の利益を保護することにより一般の信用を維持し,もって協同組織による金融の発達を図ることを目的としている(同法1条)。そして,同法は,6条において銀行法の一部規定を準用 金者その他の債権者及び出資者の利益を保護することにより一般の信用を維持し,もって協同組織による金融の発達を図ることを目的としている(同法1条)。そして,同法は,6条において銀行法の一部規定を準用し,信用組合の健全な経営を確保するため,銀行と同様の種々の義務を課すとともに,監督官庁に強力な監督権限を認め,財務内容の悪化した信用組合に対し,業務停止等の措置を執ることができるものとしている。このように,信用組合が,協金法等により種々の規制を受けるのは,不特定多数の者から預金を集めることが予定されているため,これら預金者を保護する必要があるほか,身近な金融機関として地域住民や企業に信用の供与等をしているため,万一これが破綻すれば,地域社会において信用秩序が混乱し,その結果,甚大な悪影響が及ぶこととなるので,その経営の健全性を保つ必要が高いためであると解される。 かかる見地にかんがみると,信用組合には特殊な社会的責任があるということができるから,その経営者である理事は,出資者のみならず,預金者,地域社会さらには国に対し,その経営ないし財務体質を健全に保つ法的義務があると解される。そして,これを融資実行の決裁について適用すれば,信用組合の理事は,貸付金がその後確実に回収され信用組合が損害を被らないよう調査を尽くし担保措置を講ずるなどすべきであり,仮に当該融資が信用組合に損害を与えるものであれば,その旨を積極的に進言し,融資実行を阻止すべき義務を負うものであるということができる。 (2) 大口融資規制違反が善管注意義務違反に当たるか。 協金法6条1項は,銀行法13条の「銀行の同一人(当該同一人と特殊の関係のある者に対する信用の供与を含む。)に対する信用の供与等の額は,当該銀行の信用供与限度額を超えてはならない。ただし,信用の供与を受けている者が合 行法13条の「銀行の同一人(当該同一人と特殊の関係のある者に対する信用の供与を含む。)に対する信用の供与等の額は,当該銀行の信用供与限度額を超えてはならない。ただし,信用の供与を受けている者が合併をし又は営業を譲り受けたことにより銀行の同一人に対する信用の供与限度額を超えることになる場合その他政令で定めるやむを得ない理由がある場合において,大蔵大臣(本件各融資当時)の承認を受けたときはこの限りでない。」という大口融資規制の規定を信用組合について準用している。同規制の趣旨は,金融機関が同一貸付先に対し,自己の消却力を超える過大な資産を貸し付けることによって,その貸付先とともに倒産する危機に陥ることを防止する点にある。前記(1)のとおり,信用組合の理事には,信用組合の財務体質を健全に保つ法的な義務があるところ,同規制は,理事の融資の際に生ずるかかる義務を明確にしたものであると解される。さらに,信用組合の理事には法令遵守義務がある(中小企業等協同組合法42条,商法254条の3)から,大口融資規制が法令による規制である以上,これに反する貸付をすることは許されず,また,これに反する貸付けがされないよう監視すべき義務があり,仮に,これに反する事態が生じている場合には,速やかにこれを是正する義務を負うというべきである。 したがって,被告a1及び同a2において,大口融資規制に反する貸付けを稟申し又は決裁した場合には,その違法性を阻却する特段の事情が認められない限り,同被告らは,理事の任務に違反したというべきである。 これに対し,被告らは,信用組合の理事の善管注意義務の内容及び程度は,銀行の取締役のそれよりも緩やかなものにならざるを得ないし,被告a1の理事長就任前のb信組の融資取引の実情に照らすと,同信組と理事との間の委任契約において,融資決裁に際し 注意義務の内容及び程度は,銀行の取締役のそれよりも緩やかなものにならざるを得ないし,被告a1の理事長就任前のb信組の融資取引の実情に照らすと,同信組と理事との間の委任契約において,融資決裁に際し銀行と同程度の調査及び注意義務を負うと解することはできないとの主張を前提として,大口融資規制違反は,法令による規制ではあるものの,その実質は行政指導を一般化・明確化したものにすぎず,同規制に違反したことが直ちに善管注意義務違反に当たるとはいえないと主張する。 しかし,前記(1)説示のとおり,信用組合には特殊な社会的責任があり,その意味においては,その与える影響の範囲に差があるとはいえ,銀行と同様であること,協金法が銀行法の規定を準用し信用組合に銀行同様の義務を課すという法的構造に照らすと,信用組合の理事の善管注意義務を銀行の取締役のそれと比較して緩和することはできないし,b信組に限り善管注意義務を緩和することもできないといわざるを得ない。また,大口融資規制の具体的な限度額が政令ないし信用組合基本通達等の通達を通して定められるとしても,前記説示のとおり,法令によって規制がされている以上,強制力を欠く行政指導と同列に論ずることはできない。したがって,被告らの上記主張は失当である。 また,被告らは,バブル経済による資金運用の必要及びb信組の財務状況を改善する必要があったことから,同信組においては大口融資は不可欠なものであり,監督官庁である和歌山県もこれを黙認していたと主張し,被告a2の陳述書(乙9)並びに同a1及び同a2各本人の供述中には,これに沿う供述記載ないし供述部分がある。 しかし,証拠(甲8の1ないし3)によれば,和歌山県商工労働部長は,b信組の理事長である被告a1に対し,平成2年6月18日,平成4年3月30日及び平成8年3月15日の少なく ないし供述部分がある。 しかし,証拠(甲8の1ないし3)によれば,和歌山県商工労働部長は,b信組の理事長である被告a1に対し,平成2年6月18日,平成4年3月30日及び平成8年3月15日の少なくとも3度にわたり,f産業などに対する大口融資規制違反の指摘をし,これを改善するよう求めたことが認められ,この事実によれば,和歌山県がb信組による大口融資規制違反に該当する融資取引を黙認していたとの被告a1及び同a2の上記部分は措信できない。また,バブル経済下における資金運用の必要性及び経営改善の必要性のみで,大口融資規制違反の融資取引を正当化することはできない。したがって,この点における被告らの主張も失当である。 (3) 被告a2の理事としての責任について被告らは,b信組において,融資をするか否かの決定は,理事長と専務理事によってされており,理事会で決定されるものではなく,本件融資B,C,D及び本件担保解除の当時,職員理事にすぎなかった被告a2は,その決定に関与していなかったのであるから,同被告が,前記各融資及び本件担保解除につき,善管注意義務を負担する余地はないと主張する。 しかし,前提事実(1)エ及び証拠(乙8,9,被告a2本人,同a1本人)によれば,被告a2は,本件融資B,C,D及び本件担保解除において,理事兼審査部長として,融資及び担保解除の可否について,稟議書その他の資料を実質的に検討の上被告a1に稟申し,同信組の理事長である同被告の最終決裁によって融資が実行されたことが認められる。かかる事実関係にかんがみると,同信組における融資取引の実質的な決裁権者は,理事長である被告a1と審査部長を兼務する理事の同a2であったということができる。 したがって,同被告が融資決裁に関与していないことを前提として,同被告が善管注意義務を負担することは 的な決裁権者は,理事長である被告a1と審査部長を兼務する理事の同a2であったということができる。 したがって,同被告が融資決裁に関与していないことを前提として,同被告が善管注意義務を負担することはないとする被告らの主張は,その前提を欠き,失当である。 (4) 本件各融資等の個別の善管注意義務違反の有無について前記説示を前提にして,以下,本件各融資等について,被告a1及び同a2に善管注意義務違反が認められるかを検討する。 ア本件融資Aについて(ア)a 証拠(甲7,8の1ないし3,9の2,11の2,21の2,3,A1,被告a2本人,同a1本人)及び弁論の全趣旨によれば,cゴルフとf産業は,平成2年当時,いずれもj,t,uが取締役ないし監査役としてその経営に関与していたものであること,f産業とcゴルフとの間には実質的な取引関係がなかったこと,cゴルフは,本件融資Aの前に,b信組から1億7000万円の手形割引の形式で融資を受けていたこと,本件融資Aは,f産業振出にかかる約束手形の手形割引の形式を利用して,b信組がcゴルフに対し,4億円を返済期を3か月後の平成2年12月19日と定めて貸し付けたものであること,監督官庁である和歌山県商工労働部長が,b信組の代表理事であった被告a1に対し,平成2年6月18日付けで,大口貸出は,その不良化が経営に直接影響を及ぼすことになりかねないから小口融資をなおざりにすることのないよう配慮するよう求めるとともに,手形貸付を割引に変更している例が多く,不適切な取扱いは大口信用供与を隠蔽するものであるから,かかる取扱いを止める旨の指摘がされていること,平成2年度におけるb信組の出資金が5億1924万1000円,法定準備金が42万1000円,特別積立金が38万1000円,退職給与積立金が22万円,前期繰越金がマイナ める旨の指摘がされていること,平成2年度におけるb信組の出資金が5億1924万1000円,法定準備金が42万1000円,特別積立金が38万1000円,退職給与積立金が22万円,前期繰越金がマイナス2億4912万6424円,当期利益金が5026万3254円,貸倒引当金が6098万5247円,退職給与引当金が1928万7985円であり,以上の合計額4億0167万3062円の2割に相当する8033万4612円が同年度における大口融資規制にかかる信用供与限度額であることが認められる。 ところで,平成5年4月1日より前の時点においては,大口融資規制の対象となる融資額から手形割引による取引額は控除されていたところ,その趣旨は,商業手形の割引であればその手形が適時に決済されることを前提とするものであるから,取引の裏付けがなく,適時に決済されるか疑いのある融通手形の割引については,かかる控除をすることは許されないと解される。そして,前記認定にかかる和歌山県商工労働部長からの指摘により,一般にかかる運用がされていることを被告a1において認識していたことが認められる。 以上の各事実によれば,被告a1においては,平成2年6月18日ころの時点において,大口融資規制に違反する貸付けが存在すること,また,手形割引の形式を利用した融資取引は,大口融資規制を潜脱するものであることを認識していたことが認められる。それにもかかわらず,同被告は,本件融資Aにおいて,信用供与限度額の約5倍に当たる4億円を,既に1億7000万円の融資を受けていることが稟議書(甲A1)からも明らかなcゴルフに対し,同社と役員構成が近似しかつ実質的な取引関係に欠けるf産業振出にかかる融通手形を割り引く形式で貸し付けたものであり,かかる大口融資規制違反の違法性を阻却するような特段の事情が存在 なcゴルフに対し,同社と役員構成が近似しかつ実質的な取引関係に欠けるf産業振出にかかる融通手形を割り引く形式で貸し付けたものであり,かかる大口融資規制違反の違法性を阻却するような特段の事情が存在することにつき被告らの主張・立証はない。したがって,同被告に本件融資Aにつき大口融資規制に違反した善管注意義務違反があることは明らかである。 b 証拠(甲11の1,2,12,A2,被告a2本人)及び弁論の全趣旨によれば,cゴルフは,昭和63年11月7日に設立された株式会社であり,平成2年3月期において,資産は簿価4884万3000円の不動産のみであり,収益は営業外収益の3万7000円のみ,当期未処理損失186万5000円,借入金3870万9000円を計上し,27万6000円の資本欠損の状態にあったこと,本件融資Aに際して担保提供された別紙担保物件目録A記載の各土地の時価合計は,b信組の評価においても2億6079万9500円と同融資の融資金額4億円よりも約1億4000万円も低額であること,本件融資Aに際し,差し入れられたf産業振出の約束手形は,平成2年当時,cゴルフ以外にもe開発がb信組に対し同種の手形を割引の形式で差し入れていたが,相次いで支払期が延期されていたことが認められる。 以上の各事実によれば,cゴルフは,平成2年当時において,4億円の貸金債務を返還するだけの資産的裏付けがなく,また,その業績もほとんどないに等しい状態であったといわざるを得ず,また,担保不動産も時価で評価したとしても被担保債権を保全するには1億4000万円近く足らず,差し入れられた約束手形の支払期日における支払の可能性もほとんどなかったものといわざるを得ない。そして,これらの事情は,b信組においてcゴルフの貸借対照表及び損益計算書を調査し,併せて同信組におけるf産 れられた約束手形の支払期日における支払の可能性もほとんどなかったものといわざるを得ない。そして,これらの事情は,b信組においてcゴルフの貸借対照表及び損益計算書を調査し,併せて同信組におけるf産業関連の融資取引の状況,稟議書及び不動産物件調査書を確認すれば容易に知り得たものである。そうであるにもかかわらず,本件融資Aを決裁し,b信組において実行させた被告a1には,上記の点についても善管注意義務違反があったといわなければならない。 (イ)a 被告らは,本件融資Aについては,不動産の開発造成が終了し,それが分譲された時が返済期であったと主張する。 しかし,証拠(甲A1,乙9,被告a2本人)によれば,本件融資Aについては,cゴルフから,k銀行から3か月後に同社が融資を受け,それによって本件融資Aにかかる債務を返済するという返済計画が申し入れられており,これを前提として,融資決裁をしたことが認められる。したがって,同融資の弁済期を不動産売却時とすることを前提に,前記認定を否定する被告らの主張は採用の限りでない。 b 被告らは,前記aのとおり,cゴルフがk銀行から3か月後に融資を受け,これによって本件融資Aにかかる債務を弁済するという計画であったからcゴルフの経営状況,財産状態を調査しなくても,同融資の返済可能性は十分にあったと判断されたものであると主張する。そして,証拠(乙8,9,調査嘱託の結果,被告a2本人,同a1本人)によれば,k銀行は,f産業に対し,総額233億2281万8902円にのぼる融資をしていること,k銀行が同社を全面的に支援していたとの認識を有していたことが認められる。 しかし,証拠(被告a2本人,同a1本人)によれば,被告a1の前記認識の根拠は,専らf産業ないしcゴルフの関係者の発言に基づくものにすぎないこと,本件融資Aの の認識を有していたことが認められる。 しかし,証拠(被告a2本人,同a1本人)によれば,被告a1の前記認識の根拠は,専らf産業ないしcゴルフの関係者の発言に基づくものにすぎないこと,本件融資Aの3か月後にk銀行がcゴルフないしf産業に融資をする見込みがどの程度あるかについては特段の調査をしていなかったことが認められる。そうだとすると,3か月後にされるk銀行からの融資によって,cゴルフが本件融資Aにかかる債務を返済するとの見込みは,客観的な裏付けを欠くものといわざるを得ず,かかる見込みによって融資決裁をしたことによって,善管注意義務違反を免れることはできない。 c 被告らは,本件融資Aの担保として提供された別紙担保物件目録A記載の各土地について,同土地が宅地造成された場合には,その担保評価額は4億9000万円にのぼることとなるから,必ずしも融資金額よりも低い担保評価額で同融資をしたものではないと主張する。 しかし,企業に対する融資における担保が,企業が収益を上げるまでに,企業を巡る内外の環境に不測の事態が生ずることがあるから,予測外の事態によって計画どおりに事業展開できない場合に備えるために提供されるものであることにかんがみると,事業展開が不首尾に終わった場合に備えて,原則として,事業展開前すなわち融資前の状態において担保評価すべきであり,事業展開し開発した後の状態で担保評価することが許されるのは,事業展開すなわち当該土地の開発,造成のされる見込みが相当程度高い場合に限られるべきである。 これを本件についてみると,証拠(甲A6の6,A7の1ないし4,被告a2本人,同a1本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告a1は,cゴルフによる別紙担保物件目録A記載の各土地の開発造成計画及び費用の詳細については確認しておらず,他方,本件融資Aにかかる融 し4,被告a2本人,同a1本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告a1は,cゴルフによる別紙担保物件目録A記載の各土地の開発造成計画及び費用の詳細については確認しておらず,他方,本件融資Aにかかる融資金4億円のうち相当額が,f産業のk銀行に対する貸金債務を弁済し,同土地上に設定された根抵当権を消滅させるために使用される計画であったこと,かかる計画は当初から審査部長であった被告a2において認識されており,同a1においても認識可能であったことが認められる。そうとすると,同土地が開発造成される見込みが,同土地を開発造成後の状態において担保評価することが許される程度にあったということはできない。 以上によれば,仮に被告らの前記主張のとおり,被告a1が宅地開発造成後の土地の評価額を基礎として本件融資Aを決裁したとしても,善管注意義務違反を免れることはできない。 イ本件融資Bについて(ア)a 証拠(甲7,8の2,甲B1,被告a2本人)及び弁論の全趣旨によれば,b信組の平成6年度における出資金は5億5105万4000円,法定準備金は42万1000円,特別積立金は38万1000円,退職給与積立金は22万円,前期繰越金はマイナス9591万8039円,当期利益金は9873万6650円,貸倒引当金は7137万9919円,退職給与引当金は3163万4102円,国債価格変動引当金は12万0190円であり,その合計額6億5802万8822円の2割に相当する1億3160万5764円が信用供与限度額となること,本件融資Bに先立つe開発のb信組に対する融資残額は1億7212万8000円であり,前記信用供与限度額を超過していること,和歌山県商工労働部長が,同信組の理事長である被告a1に対し,平成4年3月30日付けでした検査に基づく指示には,e開発を貸出先とする取引等 万8000円であり,前記信用供与限度額を超過していること,和歌山県商工労働部長が,同信組の理事長である被告a1に対し,平成4年3月30日付けでした検査に基づく指示には,e開発を貸出先とする取引等が大口貸出であるとの指摘を受けていたこと,同指示は同信組内において回覧されていたこと,被告a2は,本件各融資等について,大口融資規制違反であることを認識していたことが認められる。 以上の各事実によれば,本件融資Bが大口融資規制違反に当たり,これを被告a2においては認識し,同a1においては少なくとも稟議書の記載から容易に認識し得たにもかかわらず,本件融資Bを決裁し,実行したものということができる。そして,同融資の決裁,実行に大口融資規制違反に対する違法性を阻却するような特段の事情が存在することについての被告らの主張・立証はない。 したがって,同被告らは,本件融資Bの稟申及び決裁により,善管注意義務に違反したというべきである。 b また,証拠(甲12,B1,B2,B4,B6の1ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,e開発は,平成4年3月期において,当期未処理損失2732万5000円を計上し,平成5年3月期において当期未処理損失6559万円を計上し,平成6年3月期において当期未処理損失7853万円,営業損失5513万1000円を計上したこと,同社振出にかかる多数の約束手形は,j及びf産業の依頼によりb信組において割り引かれていたが,手形面上の期日には決済されず支払期日の延期がされていたこと,本件融資Bに際して担保提供された別紙担保物件目録B記載の各土地(甲物件)に近接するp所有の各土地には,同社に対するvの債権を担保するために極度額13億円の根抵当権が設定されていたが,平成6年3月30日,同根抵当権が,k銀行を経由して,共同債権買取機構に譲渡されたこ )に近接するp所有の各土地には,同社に対するvの債権を担保するために極度額13億円の根抵当権が設定されていたが,平成6年3月30日,同根抵当権が,k銀行を経由して,共同債権買取機構に譲渡されたこと,同融資当時,被告a1の調査によっても,e開発とpによる同土地及び甲物件の開発造成及び売却の計画は不明であったこと,同土地のb信組における評価額は1億9247万0600円と同融資の融資金額を超過していたが,その一方で,同土地は位置確認が困難で現状では担保としては適していないとされているにもかかわらず,宅地として造成されたことを前提として,前記評価額が決められたこと,平成12年11月20日付けの株式会社w作成の不動産鑑定評価書によれば,同土地は標高120メートルと高く,眺望に優れるが地勢が急峻であるため開発が困難な土地であり,現況の農地であることを前提に評価すると,平成6年4月1日当時の時価が771万円とされていることが認められる。 以上の各事実によれば,e開発の財務状態は,決算書類上損失を計上していただけでなく,手形の決済もできない状態であったのであるから,到底本件融資Bにかかる貸付金の返済ができるような財務状態ではなかった。また,e開発と甲物件及びその隣接地を共同開発するとされているpも,平成3年3月30日の時点で,v及びk銀行において同社に対する債権を共同債権買取機構に譲渡するほど財務状態が悪化していたと考えられることに照らすと,同融資の資金使途とされる甲物件の開発についても必ずしも具体的な計画であったとは考え難い。さらに,前記ア(イ)説示のとおり,不動産の担保評価に当たっては,開発の見込みが相当程度高くない限り,現況において評価すべきところ,同融資においては,前記のとおり,開発の見込みが高かったとみることはできない。そして,現況 のとおり,不動産の担保評価に当たっては,開発の見込みが相当程度高くない限り,現況において評価すべきところ,同融資においては,前記のとおり,開発の見込みが高かったとみることはできない。そして,現況を前提とした場合,その地勢が急峻であること及び位置確認が困難であったということに照らすと,およそ担保としては不適格であったといわざるをえない。 そして,これらの事情は,e開発の決算書類,本件融資Bにかかる稟議書,不動産担保物件調査書を検討し,併せて,b信組における手形の決済状況を確認すれば,容易に判明するものであった。それにもかかわらず,かかる調査をすることなく,本件融資Bを審査部長兼理事として稟申した被告a2及び最終的に決裁をし,b信組をして同融資を実行させた同a1には,この点についても善管注意義務違反があったといわざるを得ない。 (イ)a 被告らは,e開発のb信組に対する本件融資Bより前の貸金債務ないし手形割引にかかる債務については,不動産の開発,分譲後に弁済するという約定があったのだから,手形の支払期日の延期がされていたとしても,直ちに同社の財務状態が同融資の返済可能性が低いと評価されるものではなかったと主張する。 しかし,b信組とe開発との間で被告らが主張するような弁済期の約定がされたことを認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)b認定の各事実に照らすと,e開発の財務状態が,本件融資Bの返済が可能であったとみることはできないから,被告らの主張は失当である。 b 被告らは,本件融資Bにおいては,e開発の代表取締役であったjが連帯保証しており,同人の経営関与が期待されたことから,同社の財務状況についても信用できたと主張する。 しかし,証拠(甲7,26,27)及び弁論の全趣旨によれば,jは,本件融資B当時,b信組に対し,10億円を超える貸 同人の経営関与が期待されたことから,同社の財務状況についても信用できたと主張する。 しかし,証拠(甲7,26,27)及び弁論の全趣旨によれば,jは,本件融資B当時,b信組に対し,10億円を超える貸金等残債務を負い,その返済は実質的に延滞するとともに,それを担保するに足りる資産も有しておらず,同人死後の平成11年10月8日には,同人の相続財産の破産申立てがされるに至ったことが認められる。そうとすると,同人の連帯保証によっても,本件融資Bの返済可能性があったと考えることは到底できない。 c 被告らは,甲物件の開発計画があることを前提として,本件融資Bの資金使途に問題はなく,かつ,その担保評価は開発後の宅地として評価されるべきであると主張する。 しかし,前記(ア)b説示のとおり,被告a1の調査によっても,同土地の開発,売却についての詳細は不明確であったことが認められるのであり,これに前記(ア)説示の各事実を併せると,同土地の開発計画が具体的なものであったということはできない。したがって,前記ア(イ)cと同じ理由で,被告らの上記主張も失当であるといわざるをえない。 ウ本件融資Cについて(ア)a 前記イ(ア)a認定の事実,証拠(甲8の2,C1,被告a2本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成6年度におけるb信組の信用供与限度額が1億3160万5764円であったところ,本件融資C以前のb信組のf産業に対する融資残額は13億9850万円であること,平成4年3月30日付けの和歌山県商工労働部長からb信組代表理事であった被告a1への検査に基づく指示についてにおける指摘事項でも,f産業への大口融資規制違反の融資取引が問題とされていたこと,被告a2において,本件融資Cが同規制違反であることを認識していたことが認められる。 以上の各事実によれば,f産業に対す ける指摘事項でも,f産業への大口融資規制違反の融資取引が問題とされていたこと,被告a2において,本件融資Cが同規制違反であることを認識していたことが認められる。 以上の各事実によれば,f産業に対する本件融資Cが,大口融資規制に違反することは,稟議書の記載に照らしても明らかであり,この違法性を阻却するような特段の事情が存在することについての被告らの主張・立証はないから,同融資を最終的に決裁した被告a1及び理事兼審査部長として同融資のかかる問題性を認識しながら稟申した同a2には,善管注意義務違反があったというべきである。 b また,前記認定の事実,証拠(甲12,C2,C5,被告a2本人,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,f産業は,平成4年6月期の決算において,2億5117万3000円の経常損失,8231万8000円の資本欠損を計上し(ただし,支払利息を0円として計上しているので,実際の損失はさらに増加するものと推認される。),平成5年6月期の決算において,当期損失3億7242万5000円を計上し,平成6年6月期の決算において,資本の欠損は4億8960万6000円,長期借入金6974万3000円,短期借入金329億9774万4000円を計上し,本件融資C当時,債務超過の状態に陥っていたこと,本件融資Cの時点におけるb信組に対するf産業の債務総額は13億9850万円であったこと,同社が開発造成してきた丁ハイタウン造成工事の結果については,同開発造成地の価格が,平成7年12月1日の時点で,一般向けの分譲であれば合計158億1300万円,一括売却であれば115億9000万円であった一方,k銀行は,平成8年3月31日時点において,同土地に極度額234億円の根抵当権を設定し,同社に対し,233億2281万8902円の貸金債権を有していたこ 却であれば115億9000万円であった一方,k銀行は,平成8年3月31日時点において,同土地に極度額234億円の根抵当権を設定し,同社に対し,233億2281万8902円の貸金債権を有していたこと,b信組における別紙担保物件目録C記載の各土地の評価額総額は,宅地開発される予定であることから,1坪当たり10万円として合計1億8113万円であり,担保評価としてはその6割の1億0867万8000円と本件融資Cの貸付金額1億2000万円を下回っていること,同融資の資金使途は土地造成費用とされていたが,被告a2及び同a1においてその具体的な開発費用や開発計画を把握しておらず,また,前記土地(面積合計5997.40平方メートル)のうち同目録3,4,10記載の各土地(面積合計1116平方メートル)については,一部平坦な部分もあるが大部分が傾斜した山林であり,林地として最有効使用されるものであること,そのため,平成12年11月20日付けのw作成の不動産鑑定評価書によれば,前記土地の平成7年2月1日時点における時価総額は1億2609万円であることが認められる。 以上の各事実によれば,f産業は,本件融資C時点において,債務超過の状態にあり,b信組に対する貸金等の債務の総額も13億9850万円と多額であり,同社の進めていた丁ハイタウン造成工事においても収益を望むことが困難な状況にあったものであり,他方,同融資の担保提供物件の担保評価額をみても,同信組における評価を基礎としても,同融資を完全に保全するには至らず,また,同土地の具体的な土地造成等の計画が明確となっていないことから,同信組の評価よりも低い担保価値しか有しない可能性が高いものであった。そして,被告a2及び同a1においては,かかる事実関係を,稟議書及び不動産担保物件調査書を検討し,さらに,f産 ていないことから,同信組の評価よりも低い担保価値しか有しない可能性が高いものであった。そして,被告a2及び同a1においては,かかる事実関係を,稟議書及び不動産担保物件調査書を検討し,さらに,f産業の決算書類,b信組における取引状況を検討すれば,比較的容易に把握できたにもかかわらず,これを怠り,本件融資Cを稟申及び決裁し,同信組に実行させたものである。したがって,同被告らのかかる融資決裁は,この点についても善管注意義務違反に該当するものといわざるを得ない。 (イ)a 被告らは,f産業による丁ハイタウン造成工事は,採算の取れないものではなかったことを前提として,土地分譲により同社の経営状況が好転する可能性は十分あったと主張する。 しかし,前記説示のとおり,丁ハイタウン造成工事にかかる不動産の評価額は,平成7年12月1日時点において,同土地に設定された根抵当権の極度額及びその根抵当権者であるk銀行の同社に対する貸金債権を担保するに足りない額であったから,同社の経営状況が好転する可能性は客観的に低かったものということができる。また,前記説示のとおり,同社のb信組に対する貸金等の債務の額が莫大なものであり,同社の決算書類上の債務超過の程度も甚大であったことに照らすと,同社の経営状況及び財務状況が好転する合理的な予測はおよそ困難であったというべきであり,被告らの主張は失当である。 b 被告らは,当時,被告a1及び同a2は,k銀行がf産業に対し巨額の資金を融資し,同社を全面的に支援していたと認識しており,同社がその貸金債務の支払を遅延していたことを知らなかったから,同社の経営状況は,本件融資Cを返済することができる程度にあったと認識していた旨主張する。 しかし,前記(ア)bのとおり,同社のb信組に対する残債務の額及び返済状況に照らすと,仮に被告 かったから,同社の経営状況は,本件融資Cを返済することができる程度にあったと認識していた旨主張する。 しかし,前記(ア)bのとおり,同社のb信組に対する残債務の額及び返済状況に照らすと,仮に被告a1及び同a2が前記のような認識を有していたとしても,本件融資Cの融資決裁が善管注意義務違反に当たるという認定判断を覆すには足らないというべきである。 c 被告らは,f産業が別紙担保物件目録C記載の各土地を開発造成し,分譲することを目的として,本件融資Cを申し込んだことから,同各土地の担保評価に当たっては,宅地として開発造成されたことを前提として評価すべきであると主張する。 しかし,前記(ア)bのとおり,被告a1及び同a2においてf産業が同各土地を開発するという具体的な計画については明らかではなかったことに照らすと,前記ア(イ)cと同じ理由で,被告らの上記主張も失当である。 エ本件融資Dについて(ア)a 証拠(甲7,D1,被告a2本人)によれば,平成7年度におけるb信組の出資金は5億4430万5000円,法定準備金は42万1000円,特別積立金は38万1000円,退職給与積立金は22万円,前期繰越金は281万8611円,当期利益金は963万7291円,貸倒引当金は7352万6201円,退職給与引当金は3662万1302円,国債価格変動引当金は25万0865円であり,この合計6億6818万1270円の2割に相当する1億3363万6254円が信用供与限度額であること,本件融資D以前のf産業の同信組に対する債務合計が18億4830万円であったこと,被告a2は,同融資が大口融資規制違反であることを認識していたことが認められる。 以上の各事実及び前記ウ(ア)a認定の事実によれば,本件融資Dが大口融資規制違反の融資であることは明らかであり,また,被告a 2は,同融資が大口融資規制違反であることを認識していたことが認められる。 以上の各事実及び前記ウ(ア)a認定の事実によれば,本件融資Dが大口融資規制違反の融資であることは明らかであり,また,被告a2はその事実を認識し,同a1も少なくともその事実を容易に認識できるにもかかわらず,同融資を稟申し決裁したものであり,他方,同規制違反の違法性を阻却する特段の事情があることについての被告らの主張・立証はない。したがって,これが被告a1及び同a2の善管注意義務違反に当たることは明らかである。 b また,前記認定の事実,証拠(甲12,D1,乙8,9,被告a2本人,同a1本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件融資Dは,手形割引の形式により,b信組がf産業に対し返済期を手形支払期日である平成8年1月31日に1700万円の金銭を貸し付けるという趣旨の融資取引であること,f産業は,同融資に先立ち,b信組に対し,18億4830万円の債務を負担しており,また,同融資と同時に,9億4000万円の手形割引による融資取引において支払期の延長を求めていたこと,同社は平成7年6月期の決算において8億6015万8000円の資本の欠損を計上し,当期未処理損失として10億2671万8000円を計上したこと,同融資に際して何らの担保も徴求されなかったこと,同社が同信組のために同融資までに設定した担保は,b信組の評価によれば,有価証券が6500万円相当,不動産が13億7400万円相当,ゴルフ会員権が4300万円相当であり,その合計額は14億8200万円であったことが認められる。 以上の各事実によれば,本件融資Dの融資金額が1700万円とf産業のb信組に対する債務総額と比較すると少額であったとしても,同社がこれを返済できるような財産状態でなかったこと,既往の担保によっても,本件融 事実によれば,本件融資Dの融資金額が1700万円とf産業のb信組に対する債務総額と比較すると少額であったとしても,同社がこれを返済できるような財産状態でなかったこと,既往の担保によっても,本件融資Dにかかる債権が担保されていないことは明らかであり,かかる状況において,何らの新規担保を徴求することなく,同融資を稟申及び決裁し,b信組に実行させた被告a2及び同a1には,善管注意義務違反があったことは明らかである。 (イ)a 被告らは,本件融資Dは,本件融資Aその他既往の手形割引の形式をとった融資取引と同様,返済期を不動産売却時とした消費貸借契約であり,手形は担保にすぎないと主張する。 しかし,前記(ア)b認定のf産業の財務状態にかんがみると,同社において支払能力がなかったことは明らかであるから,被告らの主張は同a1及び同a2の善管注意義務違反の成立に消長を来すものではない。 b 被告らは,f産業の運転資金として同融資を実行し,もって,同社の倒産を回避し,既往の債務の返済を促進する必要があったと主張する。 しかし,同社の同信組及びk銀行に対する前記債務の額に照らすと,同融資によって,同社の既往債務の支払促進はおろか倒産の回避をすることすら不可能に近いというほかはなく,被告らの主張は失当である。 c 被告らは,f産業がb信組に割り引いた手形のうち7億円は,上場企業でありその支払が確実視されたr社振出にかかる約束手形であることから,同融資以前に設定された担保合計14億8200万円(ただし,これはb信組自身の評価したものである。)によって,既往の融資債務及び本件融資Dにかかる債務の担保は可能であったとして,同融資に際して,担保を徴求する必要はなかったと主張する。 しかし,証拠(甲D2)によれば,f産業が手形割引の形式でb信組に差し入れたr社の手形の 本件融資Dにかかる債務の担保は可能であったとして,同融資に際して,担保を徴求する必要はなかったと主張する。 しかし,証拠(甲D2)によれば,f産業が手形割引の形式でb信組に差し入れたr社の手形の総額は,1億9500万円であることが認められ,これによれば,仮に,同社振出の手形の支払が確実であったとしても,なお,f産業の信組に対する残債務は16億5330万円にのぼり,評価額合計が最大で14億8200万円の既往の担保によって,本件融資Dまで保全されていたとみることはできない。 したがって,被告らの主張は失当である。 オ本件担保解除について(ア) 前提事実(2)オ,証拠(甲E2ないしE4,乙9,被告a2及び同a1各本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告a1は,昭和62年6月25日,b信組に対し,f産業がb信組との融資取引において負担する債務を担保するため,本件株式21万株(同年7月28日に1万株について担保解除されたため,同日以降は20万株)を提供することを約し,そのころ,証券会社において同株式の株券を保管する旨の預かり証を同信組に差し入れたこと,同信組においては同株式の株価をもってその担保評価額とみていたことが認められる。以上の各事実によれば,被告a1と同信組との間の前記約定は,単に株券の預かり証を担保提供するための約定ではなく,同株式の価値をもって担保提供し,同被告において同株券をb信組に差し入れる義務を負う旨の合意であったと認められる。 そして,証拠(甲7,9の4,E5,被告a2及び同a1各本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告a1は,本件担保解除当時,1株当たり378円,総額7560万円であった本件株式20万株によってf産業のb信組に対する融資取引上の債務を担保するとのb信組と同被告との間の合意を解除し,これに代えてf産業が所持する 解除当時,1株当たり378円,総額7560万円であった本件株式20万株によってf産業のb信組に対する融資取引上の債務を担保するとのb信組と同被告との間の合意を解除し,これに代えてf産業が所持するhの株式1020株額面合計5100万円を担保に差し入れさせたこと,同社は非上場企業であり本件担保解除当時休眠状態にあったことが認められる。 以上の各事実によれば,本件担保解除は,被告a1がf産業のb信組に対する債務を担保するために差し入れていた時価総額7560万円の本件株式を自ら担保解除し,それに代えて,換価が困難な非上場企業のしかも休眠状態にあり,実質的に無価値といわざるを得ないhの株式を担保提供させたものである。これは,被告a1においては,自らの利益のために同信組のf産業に対する担保を減少させる背任行為にほかならず,同被告の善管注意義務違反は明らかである。また,証拠(被告a2本人)によれば,被告a2は,同a1が担保提供したはずの本件株式の株券がb信組に差し入れられていないことを監督官庁である和歌山県から指摘されていたことが認められる。したがって,同a2としては,同信組の担保の保全を図るため,同a1に対し,同株券を同信組に差し入れるよう求める善管注意義務があったというべきであり,そうであるにもかかわらず,本件担保解除に賛成の稟申をした同被告には,善管注意義務違反があったといわざるを得ない。 (イ)a 被告らは,被告a1が担保として差し入れたのは,単なる預かり証にすぎず,gの株式自体ではないと主張し,これを前提として,担保提供の効果はなかったと主張する。 しかし,前記(ア)認定のとおり,b信組は,本件株式の株価を前提として担保評価をしていたこと,また,単なる無価値な預かり証を担保提供することにおよそ意味がないことに照らすと,同被告と同信組との る。 しかし,前記(ア)認定のとおり,b信組は,本件株式の株価を前提として担保評価をしていたこと,また,単なる無価値な預かり証を担保提供することにおよそ意味がないことに照らすと,同被告と同信組との間の担保差入れの合意は,前記のとおり解するのが当事者の合理的意思にかなうものであり,被告らの主張は到底採用できない。 b 被告らは,gの株価は下落しており,担保価値も下落したと主張する。 しかし,前提事実(2)オ及び前記(ア)認定のとおり,本件担保解除当時においては,いまだ7560万円の担保価値があったものであり,これをb信組において適時に処分すれば,本件担保解除と同時にされた6000万円の手形割引にかかる債権を回収できたのであるから,被告らの主張は採用できない。 c 被告らは,hは,平成8年当時も事業を継続しており,また,同社が解散した際の財産分配金を巡り,吸収合併の動きなどもあって,同社の株式の価値が上昇していたと主張する。そして,被告a2及び同a1もこれに沿う証言をする。 しかし,前記(ア)認定のとおり同社は休眠状態にあったのであり,また,同被告らの証言によっても,同社が解散し,財産分配をするとの同被告らの主張及び証言には何らの具体的な根拠がなかったことが認められるから,被告らの上記主張は失当である。 2 争点(2)(損害額)について(1) 本件融資Aに関する損害額証拠(甲A1,A3ないしA5)及び弁論の全趣旨によれば,本件融資A以前において,b信組は,cゴルフに対し,1億7000万円の手形割引にかかる貸金債権を有していたこと,現時点におけるcゴルフのb信組に対する貸金残債務元本の合計は,5億3769万4860円であること,本件融資Aに際して担保提供された別紙担保物件目録A記載の各土地の時価合計が2180万円を下回らないことが認め るcゴルフのb信組に対する貸金残債務元本の合計は,5億3769万4860円であること,本件融資Aに際して担保提供された別紙担保物件目録A記載の各土地の時価合計が2180万円を下回らないことが認められる。以上によれば,cゴルフは,本件融資Aについては全く返済していない(同社の返済分は全て本件融資Aの前にされた1億7000万円の貸金債務に充当される。)ことになる。 したがって,本件融資Aによって生じた損害額は,融資額4億円から担保不動産の時価2180万円を控除した3億7820万円である。 (2) 本件融資Bに関する損害額証拠(甲B3,B4)によれば,e開発のb信組に対する本件融資Bの残元本債務は6433万6338円であること,同融資の際に担保提供された別紙担保物件目録B記載の各土地の時価合計は372万円を下回らないことが認められる。 したがって,本件融資Bによって生じた損害額は,前記残元本債務額から同各土地の時価合計を控除した6061万6338円のうち原告主張の6060万8138円を下回ることはない。 (3) 本件融資Cに関する損害額証拠(甲C4,C5)及び弁論の全趣旨によれば,f産業は,本件融資Cにつき全く弁済していないこと,同融資の際担保提供された別紙担保物件目録C記載の各土地の時価合計は,5648万円を下回らないことが認められる。 したがって,本件融資Cによって生じた損害額は,元本債権全額である1億2000万円から各土地の時価合計額を控除した6352万円である。 (4) 本件融資Dに関する損害額弁論の全趣旨によれば,f産業は,本件融資Dの返済を全くしていないことが認められる。そして,前提事実(2)エ(ウ)のとおり,同融資に当たっては,何らの担保提供もされていない。 したがって,同融資によって生じた損害額は,同融資の元本債権全額に相当す 全くしていないことが認められる。そして,前提事実(2)エ(ウ)のとおり,同融資に当たっては,何らの担保提供もされていない。 したがって,同融資によって生じた損害額は,同融資の元本債権全額に相当する1700万円である。 (5) 本件担保解除に関する損害額前記1(4)オ(ア)のとおり,本件担保解除当時の本件株式の株価は,1株当たり378円であること,hは,本件担保解除当時休眠会社であったこと,同社はいわゆる非上場企業であること,本件担保解除時においてf産業から手形割引の名目でb信組に差し入れられたe開発振出の約束手形は支払不能となっていることが認められる。 以上の各事実によれば,本件担保解除の時点において,被告a1が差し入れていた本件株式20万株の時価合計は7560万円であり,これをb信組において適時に処分すれば,前記手形割引にかかるf産業に対する6000万円の債権担保は十分可能であったものということができる。それにもかかわらず,本件担保解除により,非上場企業であり換価が困難な上,本件担保解除当時hは休眠状態にあり,実質的に無価値である同社の株式に担保を切り替えたことにより,上記6000万円の回収が不可能となったということができる。 したがって,本件担保解除による損害は,6000万円である。 (6)ア被告らは,本件融資A,B,Cについて,担保不動産の時価が予測できないバブル経済の崩壊により大幅に下落していることに照らすと,地価下落分の損害と被告a1及び同a2の本件融資A,B,Cの決裁ないし稟申との間には因果関係がないと主張する。 しかし,本件融資Aについての被告a1,同融資B,Cについては同被告及び同a2の決裁及び稟申並びに各融資の実行自体が,前記1説示のとおり,善管注意義務違反の債務不履行に該当する以上,その融資金額全額がこれによって Aについての被告a1,同融資B,Cについては同被告及び同a2の決裁及び稟申並びに各融資の実行自体が,前記1説示のとおり,善管注意義務違反の債務不履行に該当する以上,その融資金額全額がこれによって生じた損害であるというべきであり,他方,現在までに回収された金額及び担保不動産の時価をその損害額から控除するのは,その限度で損害が填補されたとみることができるからである。したがって,現に損害が填補されたと評価し得る担保不動産の時価以上に,その損害額から控除する理由はない。 イ被告らは,本件担保解除につき,被告a1が差し入れたのは,gの株券の預かり証にすぎず,その担保としての価値はないから,本件担保解除によって損害は生じなかったと主張する。 しかし,前記1(4)オ(ア)のとおり,被告a1は,b信組に対し,本件株式20万株を担保として差し入れるとの合意をし,同被告は,その合意に従い,当該株券をb信組に引き渡す義務を負っていたものである。かかる義務を消滅させた本件担保解除により,同信組は,同被告から,本件株式の引渡しを受け,それを担保として把握することができなくなったのであるから,同株式の当時の価格により担保されるべきであった融資金額6000万円をもって損害とみるのが相当であり,被告らの主張は失当である。 3 争点(3)(本件贈与の詐害行為性)について(1) 客観的な詐害性証拠(甲16の1・2,34,乙1の1・2,3,5,10,被告a1及び同a3各本人)によれば,以下の各事実を認めることができる。 ア被告a1は,昭和50年6月27日,x株式会社から,本件各物件を買い受け,同日,そのうちの別紙物件目録1記載の土地につき同会社からその旨の所有権移転登記を,同目録2記載の建物につき所有権保存登記を経由した。 同a1と同a3は,株式会社s銀行(当時)から 各物件を買い受け,同日,そのうちの別紙物件目録1記載の土地につき同会社からその旨の所有権移転登記を,同目録2記載の建物につき所有権保存登記を経由した。 同a1と同a3は,株式会社s銀行(当時)から1700万円を連帯して借り受け,本件各物件の上記売買代金に充てた。この借受金の返済は,当時同a1の倍以上の給与収入を得ていた同a3の収入で賄われた。 同a3は,その当時から,同a1が上記所有権移転登記を経由したことを承知していた。 イ被告a1は,上記の事情があったこともあって,本件各物件を,被告a3に贈与することとし,同a1と同a3は,平成11年1月23日付けで同a1から同a3に本件各物件を贈与する旨の書面を作成し,そのころ,同書面を含む登記に必要な書類を司法書士に交付して,その旨の所有権移転登記手続をすることを委任し,その結果,同a3は,同月26日,本件各物件につき,同月23日贈与を原因とする所有権移転登記を経由した。 被告a1には,上記当時,本件各物件のほかに,見るべき財産はなかった。 以上の各事実によれば,被告a1と同a3との合理的意思としては,本件各物件の所有権を同a1に帰属させるものであったことは明らかであるから,同a1が本件各物件を買い受けて所有したというべきであり,また,同被告らは,平成11年1月23日付け上記書面を作成し,もって,同a1は同a3に本件各物件を贈与した(本件贈与)というべきであって,乙8,10(被告a1及び同a3の陳述書)及び同被告ら各本人の供述中,この認定に反する部分は,以上の客観的な事実経過に矛盾するから,これを採用することはできず,他にこの認定に抵触する証拠はない。 (2) 被告a1の詐害意思ア前記1認定のとおり,被告a1は,本件融資A,B,C,Dがいずれも大口融資規制違反でされたことを認識していたもので ることはできず,他にこの認定に抵触する証拠はない。 (2) 被告a1の詐害意思ア前記1認定のとおり,被告a1は,本件融資A,B,C,Dがいずれも大口融資規制違反でされたことを認識していたものである。また,証拠(甲7,乙8,被告a1本人)によれば,同被告が,前記1認定のb信組のf産業に対する貸金等の債権の返済が,遅くとも平成8年ころから始まった地価の下落及びjの病状悪化及び死亡により,困難になったことを認識していたことが認められる。 以上の各事実によれば,被告a1において,本件贈与の際,b信組の同被告に対する損害賠償請求権の存在を認識していたものと認められる。これに,前記(1)のとおり,本件贈与が同被告の唯一の財産を無償で譲渡するものであったことからすれば,被告a1は,本件贈与時において,それが,同被告の債権者を害することを認識していたと認められる。 イこれに対し,被告a3は,①本件贈与には正当な動機があり,詐害意思はなかった,②本件贈与当時,被告a1は,b信組の破綻及び自らが本件損害賠償請求を受けることを認識していなかったと主張する。 しかし,詐害行為取消権の要件としての詐害意思とは,当該行為が自己の総債権者にとっての引当てとなる責任財産を減少させ,もって,債権者を害することを認識していることで足り,害意等の積極的な意思までは要しないと解されるから,被告a1において,本件贈与に正当な動機があったとしても,前記認定のとおり,それが債権者を害することを認識していた以上,詐害意思の存否に消長を来すものではない。 また,理事の信用組合に対する善管注意義務違反に基づく損害賠償義務は,信用組合が破綻するか否かにかかわらず発生するものであり,また,同被告の損害賠償請求を受けないという認識は,自身がb信組の理事長であることから,同被告が理事長を辞 意義務違反に基づく損害賠償義務は,信用組合が破綻するか否かにかかわらず発生するものであり,また,同被告の損害賠償請求を受けないという認識は,自身がb信組の理事長であることから,同被告が理事長を辞任したり,本件のように損害賠償債権が債権譲渡されるような事情がない限り,事実上,同信組から損害賠償請求を受けないということを認識していたにすぎず,同被告が同信組に対する損害賠償義務自体を認識していることを覆すものではないというべきである。 4 争点(4)(被告a3の善意)について(1) 証拠(乙6ないし8,10,13ないし19,被告a1及び同a3各本人)によれば,以下の各事実を認めることができる。 ア被告a1は,平成4年ころから胆のうの痛みを感じ,日本赤十字社和歌山医療センターに通院をして治療を受け,胆のう腺筋症ないし胆石症の診断を受け,胆のうがんの疑いもある旨の指摘を受け,医師から平成10年8月ころ手術を勧められ,同年11月には検査入院をした(なお,同a1は,平成13年1月10日に胆のう摘出手術を受けたが,その事前説明で,医師から,がんの可能性も否定できないといわれた。)。 イ被告a1は,上記のことと,前記3(1)アの事情もあって,被告a3からの求めに応じ,本件各物件を同a3に贈与することとし,平成11年1月23日,同a1の妻である同a3に本件各物件を贈与する旨の本件贈与をした。 その当時,被告a1には,b信組に対する前記損害賠償債務のほかに,これといった債務は存在せず,同a3において,同a1に上記債務があることを知らなかった。 (2) 原告は,上記認定に反し,本件贈与は,b信組のi信用金庫への事業譲渡が公表された平成11年3月18日に近接した同年1月23日に無償でされたものであるから,被告a3の悪意すなわち本件贈与が詐害行為であることを認 記認定に反し,本件贈与は,b信組のi信用金庫への事業譲渡が公表された平成11年3月18日に近接した同年1月23日に無償でされたものであるから,被告a3の悪意すなわち本件贈与が詐害行為であることを認識していたことが事実上推定されるべきところ,①バブル経済の崩壊後金融不安が発生したことから,平成10年10月,破綻金融機関の経営者責任の追及が明記された金融再生法が制定され,経営者が損害賠償責任を追及される可能性は高まったものであり,このことは,マスメディアを通じて公知の事実となっていたこと,②被告a3は,同a1の妻であり,b信組が経営破綻すれば,同a1に対する責任追及がされることを容易に推測できた,③被告a1は,平成8年ころb信組の理事及び監事に対し,同信組の出資金を増加させるために,追加出資をするよう依頼し,同人らに追加出資をさせたが,その後,出資金の返還を求められた際,同被告は,同a3に事情を説明して,同被告から金銭を借り入れて,この出資金を返還しており,これは,同a1が,他の理事,監事及びその相続人らから,その経営責任を追及されていたことにほかならないので,かかる事情を聞いていた同a3は,同a1が他にも経営責任を追及される可能性があることも認識していたものであると主張する。そして,前提事実(4),(5),前記1,3認定の各事実及び証拠(甲29,32の1ないし22,35,乙8,10,被告a1本人,同a3本人)によれば,本件贈与は,b信組がi信金への事業譲渡すなわち経営破綻を公表した平成11年3月18日の54日前とごく近接した時期にされたこと,同a1は,平成10年4月27日及び同年11月11日の理事会において,b信組が自己資本比率0パーセント以上を達成するのは困難であり,経営破綻を意味する事業譲渡の可能性があることをも表明していたこと, a1は,平成10年4月27日及び同年11月11日の理事会において,b信組が自己資本比率0パーセント以上を達成するのは困難であり,経営破綻を意味する事業譲渡の可能性があることをも表明していたこと,同a1において同被告のb信組に対する損害賠償義務の存在を認識していたこと,同a3は,同a1から,破綻したy信用組合の優良債権をb信組が譲り受け,新しい組合を作り,同被告がその理事長になるとの話を聞いたこと,平成7年後半以降,信用組合を含む金融機関の破綻に際してその経営者に対する民事責任,刑事責任の追及がされるようになり,平成10年には,金融再生法の制定について破綻金融機関の経営者の経営責任を厳格に問うべきであるとの議論がされていることが報道されていたこと,被告a1は,b信組の理事であったz(平成11年2月12日死亡)の妻子からzの死期が迫ったころに,同人が同信組に出資した金銭を返還するよう求められたため,同a3に事情を説明し,同被告から2000万円を借り入れて,zの妻子に対して出資金相当額を返還したこと,同a1は,zのほかにも,理事ないしその遺族から出資金の返還を求められ,これを同a3からの借入金で支払ったことまでは認めることができる。 しかしながら,本件贈与がされた平成11年1月23日当時は,b信組の破綻及びその理事長である被告a1に対する経営責任追及の可能性については,甲32の1ないし22の新聞記事には,同信組の破綻及び同被告の責任追及について直接触れられたものはなく,上記報道においても,金融機関の破綻が直ちに経営者の責任追及に直接結び付くとまではいわれていなかったこと,zやその他の理事ないしその家族に対する出資金の返還は,b信組では年度途中の脱退及び出資金の払戻しが認められず(中小協組法18条,甲7の9頁参照),したがって,被告a1に はいわれていなかったこと,zやその他の理事ないしその家族に対する出資金の返還は,b信組では年度途中の脱退及び出資金の払戻しが認められず(中小協組法18条,甲7の9頁参照),したがって,被告a1において法的義務がないにもかかわらず,zやその他の理事ないしその家族からの求めによって実施されたものであり,これを直ちに同被告の経営責任と結びつけることはできないことに照らすと,たとえ,被告a3が,夫である同a1から,b信組の経営状況について上記認定のとおり聞き及んでいたとしても,直ちに同被告の経営責任について認識するに至ることは困難であったといわざるを得ない。したがって,上記各事実によっても,被告a3が,本件贈与当時,それが詐害行為であることを認識していなかったという前記認定を覆すには足らないというべきである。 5 結論以上によれば,被告a1は,原告に対し,本件融資Aによる前記損害3億7820万円のうち1億円,同融資Bによる前記損害6060万8138円のうち3000万円,同融資Cによる前記損害6352万円のうち3000万円,同融資Dによる前記損害1700万円のうち1000万円,本件担保解除による前記損害6000万円のうち3000万円の合計2億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな平成13年3月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があり,被告a2は,上記のうち同融資Aに関する部分を除いた合計1億円及びこれに対する前同様の日であることが本件記録上明らかな同月16日から支払済みまで前同割合による遅延損害金を支払うべき義務があり(同被告らの上記義務は不真正連帯債務である。),これらの義務の履行を求める原告の同被告らに対する主位的請求は理由があるからこれを認容し,原告の被告a3に対する よる遅延損害金を支払うべき義務があり(同被告らの上記義務は不真正連帯債務である。),これらの義務の履行を求める原告の同被告らに対する主位的請求は理由があるからこれを認容し,原告の被告a3に対する請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官間史恵裁判官成田晋司

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