- 1 - 主文 1 本件各訴えのうち,別紙2訴え目録記載の各訴えをいずれも却下する。 2 その余の訴えに係る各事件原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は各事件原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件板橋区長が別紙3物件目録記載の建物(以下「本件建築物」という。)の建築主であるP1株式会社(以下「P1」という。)に対してした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号。以下「安全条例」という。)10条の2第1項に基づく認定処分(平成19年5月11日付け第○号。以下「本件認定処分」という。)を取り消す。 2 第2事件板橋区長は,建築基準法9条1項に基づき,P1に対し,本件建築物の除却命令,移転命令のいずれかをせよ。 第2 事案の概要本件は,東京都板橋区α及びβの地域(以下「本件地域」という。)内に居住する第1事件原告(以下,単に「原告」という。)らが,同区α×番5,×番6,×番8及び×番9の土地(以下「本件建築物敷地」という。)上に建設が予定された本件建築物(鉄筋コンクリート造地上11階地下1階建)について,板橋区長がP1に対してした安全条例10条の2第1項ただし書に基づく本件認定処分には,同項の適用ができないにもかかわらず,同項(ただし書)を適用するという違法があり,本件認定処分は本件地域が有する文化的価値及び良好な景観・住環境を破壊するとともに住民を危険にさらすとして,本件認定処分の取消しを求める(第1事件)とともに,原告らのうち4名(第2事件の原告ら)が,本件建 - 2 -築物には,都市計画法32条,33条1項2号,37条,建築基準法43条,56条6項,7項,安全条例4条,10条の2第2項2号に違反する違法があるとして,板橋区長において,建 ,本件建 - 2 -築物には,都市計画法32条,33条1項2号,37条,建築基準法43条,56条6項,7項,安全条例4条,10条の2第2項2号に違反する違法があるとして,板橋区長において,建築基準法9条1項に基づき,P1に対し本件建築物の除却又は移転の命令をすべき旨を命ずることを求める(第2事件)事案である。 1 関係法令別紙4のとおり。 2 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。いずれも証拠等により容易に認めることのできる事実であり,括弧内に認定根拠を付記している。 (1) 当事者等ア原告らは,いずれも,本件地域に居住する者であり,肩書住所地に居住する者である。原告らの居住場所と本件土地との位置関係は,別図1のとおりである(なお,同図面中の○を付した数字は,別紙1当事者目録中の各原告に付した番号に対応する。)。 原告らのうち,原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9は,本件建築物敷地の東側(北東方向から南東方向にかけて)で,本件建築物敷地から直線距離としておおむね70m以内の位置に居住する。また,原告番号2番P10,原告番号4番P11は,本件建築物敷地の,それぞれ北方向,北東方向で,本件建築物敷地から直線距離としておおむね100m前後の位置に居住し,上記以外の原告らは,本件建築物敷地から直線距離で100m以上離れた位置に居住している。(甲1)イ被告は,安全条例10条の2第1項に基づき本件認定処分をした板橋区長が区長を務める東京都の特別区(地方公共団体)である。 ウ P1は,本件建築物の建築主である。 - 3 -(2) 本件建築物とその周囲(敷地)の概要ア(ア) 本件 件認定処分をした板橋区長が区長を務める東京都の特別区(地方公共団体)である。 ウ P1は,本件建築物の建築主である。 - 3 -(2) 本件建築物とその周囲(敷地)の概要ア(ア) 本件建築物敷地(東京都板橋区α×番5,×番6,×番8及び×番9の土地)の位置及び形状は,別図2に記載のとおりである。(甲1〔図〕,甲2〔認定通知〕,乙A3)本件建築物敷地を含む本件地域は,「商業地域,防火地域」として指定されている。(乙A3)(イ) 本件地域は,北をγ街道,南をδ街道,南東を環状○号線といった自動車交通量が比較的多い幹線道路に囲まれており,本件地域の中央を南北に(γ街道とδ街道とをつなぐ)特別区道×号(片側各1車線。以下「区道×号」という。)が走っている。そして,区道×号は本件地域(本件建築物敷地の西側)においてP12株式会社ε線(以下「ε線」という。)の線路と交差し,踏切が存在するところ,当該踏切の西側のほぼ隣接する位置には,ε線ζ駅(以下「ζ駅」という。)が存在し,ζ駅の北側(かつ,本件建築物敷地の西側)にはζ駅北口駅前ロータリー(以下「北口駅前ロータリー」という。)が存在する。他方,区道×号の東側には本件建築物敷地が存在する。なお,区道×号は,上記踏切の北側において,ε線の線路敷と並行する本件建築物敷地の南西側道路と交差している。(別図2参照)イ本件建築物の概要は,別紙3物件目録記載のとおりである。 なお,本件建築物に係る駐車場等は,駐車台数36台(入居者用24台,乗客用3台,診療所用1台,隔地駐車8台)とされ,駐輪台数156台(平面ラック式104台,2段式52台),バイク置場12台とされている。 (乙A3)(3) 本件建築物に係る建築確認の経緯等ア平成19年5月10日,P1の申請に基づき,板橋区長 輪台数156台(平面ラック式104台,2段式52台),バイク置場12台とされている。 (乙A3)(3) 本件建築物に係る建築確認の経緯等ア平成19年5月10日,P1の申請に基づき,板橋区長は,東京都板橋区α×番5の一部,×番6の一部,×番8の一部及び×番9の一部を開発 - 4 -区域(開発区域の面積は1318.22㎡)とする開発行為について,許可をした。(乙B2の1)イ平成19年3月28日,P1は,板橋区長に対し,安全条例10条の2第1項ただし書の規定による前面道路の幅員に関する特例の認定の申請をしたところ,板橋区長は,同年5月11日,P1の上記申請に基づいて,P1に対し,同項ただし書に基づく本件認定処分をした。(甲2〔乙A4,乙B7の1と同じ〕,乙A3)ウそのころ,P1は,財団法人P13(以下「P13」という。)に対し,建築確認の申請をし,平成19年9月6日,P13は,P1に対し,建築確認処分(同日付け第○本建確○号)をした。(乙B1)エ平成19年12月10日,原告らは,本件認定処分の取消しを求めて板橋区建築審査会に対し審査請求をしたところ,板橋区建築審査会は,平成20年7月22日,同審査請求を棄却し(なお,審査請求をした者のうち1名の審査請求は却下されている。),原告らは,同年8月5日に裁決書を受領した。(甲3)オ平成20年12月26日,原告らは,本件訴訟(第1事件)を提起した。 平成22年2月5日,原告番号1番P14,原告番号9番P15,原告番号17番P2及び原告番号24番P9(以下,第2事件の関係において「第2事件原告ら」という。)は,第2事件(請求の趣旨2項)に係る請求の追加的併合の申立てをした。(顕著な事実)(4) 本件建築物の完成等本件建築物は,平成21年7月16日までに工事を完 いて「第2事件原告ら」という。)は,第2事件(請求の趣旨2項)に係る請求の追加的併合の申立てをした。(顕著な事実)(4) 本件建築物の完成等本件建築物は,平成21年7月16日までに工事を完了して完成し,P13は,建築主であるP1の申請に基づいて同日に検査を行い,同月30日,P1に対して検査済証を発行した。(乙B8) 3 争点(1) 本案前の争点 - 5 -ア取消訴訟における原告適格(第1事件)についてイ義務付け訴訟における原告適格(第2事件)についてウ義務付け訴訟における重大な損害等の有無(第2事件)について(2) 本案の争点ア本件認定処分の適法性(第1事件)についてイ建築基準法9条1項の命令を発しないことに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否か(第2事件)について 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)ア(取消訴訟における原告適格(第1事件))について(原告らの主張の要旨)ア本件認定処分は周辺住民に影響力を及ぼすこと被告は,安全条例10条の2第1項ただし書に基づく本件認定処分は周辺住民の権利・利益に影響を及ぼすものではないとして,周辺住民にその取消しを求める法律上の利益はない旨主張するが,同項ただし書の安全認定がされた場合には,それを理由として実質的な安全性の検討をすることなく建築確認がされている実情に照らせば,本件認定処分は,周辺住民の権利・利益に影響を及ぼすことがないということはできず,建築確認と一体的となって周辺住民の生命・身体の安全に影響を及ぼしていることから,周辺住民である原告らは本件認定処分の取消訴訟の原告適格を有する。 イ都市計画決定の遵守を確認する利益安全条例の規定は,建築基準法40条,43条第2項の規定に基づいて地域や建築物の特殊性 ら,周辺住民である原告らは本件認定処分の取消訴訟の原告適格を有する。 イ都市計画決定の遵守を確認する利益安全条例の規定は,建築基準法40条,43条第2項の規定に基づいて地域や建築物の特殊性から自動車通行の安全を考慮して規制を上乗せする規定であり,建築基準関係規定として建築確認の基準となるから,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定には,建築確認の要件を緩和する効果がある。そして,建築確認は,当該都市計画区域の都市計画決定に適合した都市空間の形成を個別の建築物及び敷地に対する規制という側面か - 6 -ら規律するものである。そうであるとすると,板橋区長による同項ただし書の安全認定が適正か否かについては,本件建築物敷地と同一の都市計画区域の住民すなわち板橋区民が法的利害を有することとなり,板橋区民であればこれを争う法律上の利益がある。 ウ駐車場の前面道路の危険性本件建築物の駐車場出入口は,本件建築物の南東側(別図2中央部の「自主管理歩道」(本件建築物南東側道路を挟んで「車乗り入れ部(タイプB)」と記載された部分)と記載された部分に相当する場所)に設置されるところ,この出入口が面する道路(本件建築物南東側道路)は狭く(幅員3. 1m程度),一方通行の規制はない。これに本件建築物の規模(地上11階建,地下1階であり,店舗や診療所が併設されている。)を考慮すれば,駐車場の前面道路の交通の安全が著しく損なわれる。そして,付近の幹線道路から本件建築物の駐車場に出入りするためには,本件建築物周辺の幅員の狭い道路を走行せざるを得ない(甲12)ところ,その途中(駐車場前面道路(本件建築物南東側道路)をε線の線路敷とは反対方向に進んだ際に交差する南北に走る道路)には,P44小学校の通学路として供用されている部分もあるから,本件建築物 2)ところ,その途中(駐車場前面道路(本件建築物南東側道路)をε線の線路敷とは反対方向に進んだ際に交差する南北に走る道路)には,P44小学校の通学路として供用されている部分もあるから,本件建築物の駐車場に出入りする自動車の走行によって,これらの道路を利用する者たち,特に通学路を利用する児童の生命・身体に対し現実の危険を生じかねない。 エ交通渋滞と原告らの不利益本件地域は,地域の住民が徒歩で移動し,地域内に通過交通を極力入れないことを想定して開発された経緯を有しているが,周辺道路の渋滞を回避するために,本件建築物が面する区道×号も抜け道として利用されており,その影響とε線の踏切の存在とが相まって渋滞を生じている。このような状況の中,本件建築物の駐車場を出入りする自動車が区道×号に流入すれば,区道×号や周辺道路の渋滞がますます悪化し,原告らの交通の利 - 7 -益を著しく侵害する。 オ国立マンション事件最高裁判決(最高裁第一小法廷平成18年3月30日判決)は,景観が客観的価値を有する場合があることを認め,私法上の法律関係において法律上保護に値するものと解されるとしているのであるから,そのことを前提とし,原告適格が認められる範囲を実質的に拡大することを意図して行政事件訴訟法に加えられた同法9条2項及びこの改正を踏まえた最高裁大法廷平成17年12月7日判決の趣旨に照らして,私法上の景観利益の保持者が原告適格を有するか否かが問われるべきである。 そして,以下の①ないし④のとおり,本件地域は歴史的,文化的,社会的価値を有するとともに,本件地域住民の「共存共助の精神」によりその良好な環境や景観が現在まで守られてきており,それが客観的価値として承認され,保護されるに至っている。 ① 本件地域は,P12株式会社が昭和11年頃から, 本件地域住民の「共存共助の精神」によりその良好な環境や景観が現在まで守られてきており,それが客観的価値として承認され,保護されるに至っている。 ① 本件地域は,P12株式会社が昭和11年頃から,内務省(当時)等の指導の下,欧米の田園都市思想を背景として住宅開発・都市計画が行われたものであり,北口駅前ロータリーを中心とし,小公園や通過交通の進入を防止する構造(クル・ド・サック)や歩行者専用道路(フットパス)等が随所に設けられ,P12株式会社が昭和13年4月に作成した「P16内規」においては,建坪(建蔽率)を原則として30%以内とし,建物の構造設備等を定めるなどした上,100坪程度の敷地に平屋の住宅を建設して分譲された。 ② 昭和13年4月には,本件地域の住人らによって,「共存共助の精神を以て会員の親睦と郷内の円満なる発達とを計るを以て目的」とする「P17会」が結成されており,現在の「共存共助の精神」の基礎が築かれている。そして,現在においても,住民らは北口駅前ロータリー等に木や花を植栽している。 - 8 -③ 平成5年には,地域住民が自主的に組織する「P18委員会」において,まちづくりと景観の維持について活発に論議され,平成9年7月に「P19憲章」が取りまとめられた。 ④ 平成16年3月,本件地域は,「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」(以下「東京しゃれた街並み推進条例」という。)に基づく歴史的・文化的な特色を継承する「街並み景観重点地区」に指定され,平成19年11月,都知事の承認を経て,「P20ガイドライン」が告示され,これにより,本件地域において,既存建築物の解体又は建築物の新築等をする場合には「P21協議会」との協議を要することとされた。 加えて,安全条例や建築基準法は,都市計画決定に適合した都市空間の形成を により,本件地域において,既存建築物の解体又は建築物の新築等をする場合には「P21協議会」との協議を要することとされた。 加えて,安全条例や建築基準法は,都市計画決定に適合した都市空間の形成を実現しようという規定であり,隣接地に居住する住民を含めた地域住民の有する生活環境保全を目的とし,景観保全もそこに包含されているものといえるから,これらの法令は周辺住民の有する景観利益を個別的利益として保護する趣旨を有している。また,関連法規である東京しゃれた街並み推進条例も,「東京の魅力の向上に資するという趣旨・目的」を掲げて,ガイドライン対象地区内では建築行為等を行う者に義務を課しているのであり,隣接地に居住する住民を含めた地域住民の有する生活環境保全を目的としており,同様の趣旨を有する。したがって,これらの趣旨を踏まえれば,安全条例及びその関連法規は,法的保護に値する,ηの景観を享受する利益をも個別的利益として保護する趣旨を含むものと解するのが相当である。 カ個々の原告に関する事実関係の要旨は,次のとおりである(別表参照)。 (ア) 原告らは,別表中の「居住開始時期」欄に記載した時点から本件地域内に居住しており(なお,具体的な居住場所は別図1のとおり。),本件地域内に建築される建築物について,都市計画に適合しているか否 - 9 -かについて利害関係を有しているほか,本件地域の街並みに愛着を有しており,日常生活においてもその景観や環境の維持・保全に努めてきている。また,原告らは,本件建築物付近にある銀行やζ駅付近(南口)の商店街において買物等を行っているところ,本件建築物によって区道×号の渋滞や,これを回避しようとする通過交通の流入,騒音・排気ガスによる住環境の悪化といった不利益を被る。 (イ) 原告らのうち,原告番号5番P22 物等を行っているところ,本件建築物によって区道×号の渋滞や,これを回避しようとする通過交通の流入,騒音・排気ガスによる住環境の悪化といった不利益を被る。 (イ) 原告らのうち,原告番号5番P22,原告番号7番P23,原告番号9番P15及び原告番号26番P24は,本件地域が東京都の東京しゃれた街並み推進条例に基づいて「街並み景観重点地区」として指定されるよう奔走し,原告番号5番P22及び原告番号9番P15は,NPO法人「P21協議会」の理事に就任するなどした。 原告番号17番P2は,その自宅が本件建築物の駐車場出入口の前面道路(本件建築物南東側道路)に面している。 原告番号5番P22,原告番号6番P25,原告番号7番P23,原告番号8番P26,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9,原告番号25番P27は,本件建築物の周辺道路(南西側区道,北東側区道又はP44小学校南側道路)を日常的に通行しており,当該周辺道路は,原告番号7番P23及び原告番号17番P2の各子供らのP44小学校への通学路にもなっている。 原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7は,本件建築物に火災が発生した場合等の災害時において,本件建築物の倒壊や延焼による二次的被害を被るおそれがある。 キしたがって,原告らは,板橋区長がした安全条例10条の2第1項ただし書に基づく本件認定処分について争う法律上の利益を有する者に当た - 10 -る。 (被告の主張の要旨)ア安全条例10条の2第1項ただし書からすると,およそ道路の利用者として有する当該道路を安全かつ円滑に利用する利益までを個 上の利益を有する者に当た - 10 -る。 (被告の主張の要旨)ア安全条例10条の2第1項ただし書からすると,およそ道路の利用者として有する当該道路を安全かつ円滑に利用する利益までを個々人の個人的利益として保護する趣旨をも含むと解することはできず,また,同項ただし書の安全認定は,その法的効力をみても,周辺住民の権利・利益には影響を及ぼすものではなく,周辺住民に安全認定の取消しを求める法律上の利益を観念することはできないから,原告らの本件認定処分についての取消訴訟の原告適格はいずれも否定される。 イ仮に上記アの点をおいて,本件認定処分の根拠である安全条例10条の2第1項(ただし書)は,当該建築物の周辺の居住者の生命,身体の安全及び財産を個々人の個人的利益として保護すべきものとする趣旨をも含むと解したとしても,同項が建築基準法43条2項に基づく建築物の敷地と道路との関係に係る制限付加規定であること,また,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定をする場合には,通行上の安全や防火上及び避難上の安全の観点から,当該「建築物の周囲の空地の状況」ないし当該建築物の「土地及び周囲の状況」を勘案すべきものとされていることからすれば,当該安全認定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者といえるためには,少なくとも,当該建築物の敷地が接する道路ないし道路状部分に直接接する建築物に居住し若しくはこれを所有する者,又は当該建築物の倒壊,火災,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し若しくは所有する者に限られるというべきである。本件認定処分についての取消訴訟の原告適格は,本件建築物敷地の駐車場出入口が直接接する道路ないし道路状部分が本件建築物敷地の南東の位置指定道路であり,また,本件建築物の高さ られるというべきである。本件認定処分についての取消訴訟の原告適格は,本件建築物敷地の駐車場出入口が直接接する道路ないし道路状部分が本件建築物敷地の南東の位置指定道路であり,また,本件建築物の高さが約35mであるから,本件建築物敷地南東側道路に接する建築物又は本件建築物敷地から - 11 -35m以内の範囲に存する建築物に居住し又は所有する者に限られる。 なお,原告らは,本件建築物に出入りする自動車交通の増加等をきっかけとする住環境の悪化を指摘するが,本件建築物に設置された駐車場のスペースは26台分であるから,原告らが指摘するような事態の発生はおよそ考えられない。 原告らは,本件地域においても,景観権あるいは景観利益として法的に保護されるとして最高裁平成19年9月18日判決等を援用するが,同判決は,不法行為の成否の場面において景観利益が民法709条に規定される「法律上保護される利益」に当たる旨判断したにすぎず,抗告訴訟における原告適格について判断したものではないから(本件においては,公有水面埋立法及び瀬戸内海環境保全特別措置法のような特殊な規定が存在するわけでもない。),同様の判断をすることはできない。また,本件地域においては,「街並み景観重点地区」に指定されているものの,その根拠となる東京しゃれた街並み推進条例自体が,「東京の魅力の向上に資する」という一般的・抽象的な趣旨・目的を掲げるにすぎず,対象地区においても,努力義務を定めるにすぎないから,対象地区内の住民らに何らかの権利が生ずるものではなく,反射的利益が生じ得るにとどまる。 また,本件認定処分における認定の要件として,地域住民らの個別的な景観利益を考慮すべきとの規定はないし,仮に,本件認定処分の根拠法令及び関係法令を広くとらえたとしても,これに当たるのは,安全条例, また,本件認定処分における認定の要件として,地域住民らの個別的な景観利益を考慮すべきとの規定はないし,仮に,本件認定処分の根拠法令及び関係法令を広くとらえたとしても,これに当たるのは,安全条例,建築基準法,同法6条の建築基準関係規定と解されるところ,これら規定には,地域住民の個別的な景観利益を保護する旨の規定は全く見当たらないから,行政事件訴訟法9条2項や最高裁平成17年12月7日判決によっても,原告らの主張する景観権ないし景観利益が行政事件訴訟法9条1項所定の法律上の利益に当たることはない。原告らは東京しゃれた街並み推進条例を目的を共通にする関連法令として指摘するが,本件の場合,東京 - 12 -しゃれた街並み推進条例の各規定が本件認定処分の処分要件ないし義務的な考慮要素を定めるものではないし,街並み環境作り制度等が普及しつつあるといった特段の事情はなく,東京しゃれた街並み推進条例が本件認定処分の「目的を共通にする関係法令」に該当することはない。 以上によれば,最高裁平成17年12月7日判決を前提として,本件認定処分の根拠となる法令等の趣旨・目的を勘案したとしても,原告番号1番P14,原告番号2番P10,原告番号3番P28,原告番号4番P11,原告番号5番P22,原告番号6番P25,原告番号7番P23,原告番号8番P26,原告番号9番P15,原告番号10番P29,原告番号11番P30,原告番号12番P31,原告番号13番P32,原告番号14番P33,原告番号15番P34,原告番号16番P35,原告番号23番P8,原告番号24番P9,原告番号25番P27,原告番号26番P24,原告番号27番P36,原告番号28番P37,原告番号29番P38,原告番号30番P39,原告番号31番P40,原告番号32番P41,原告番号33番P ,原告番号25番P27,原告番号26番P24,原告番号27番P36,原告番号28番P37,原告番号29番P38,原告番号30番P39,原告番号31番P40,原告番号32番P41,原告番号33番P42及び原告番号34番P43には,本件認定処分の取消しを求める原告適格はない。 ウ原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6及び原告番号22番P7の原告適格について,上記原告らは,法律上の利益を有する旨の結論を述べるだけで,法令の趣旨目的,当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質の考慮等についての論証をしていないから,失当というべきである。その点をおくとしても,原告番号22番P7は,本件建築物敷地の駐車場の出入口が直接接する本件建築物敷地の南東側道路に接する者にも,本件建築物敷地から約35m以内の地域に存する建築物に居住し又は所有する者にも該当しない。 (2) 争点(1)イ(義務付け訴訟における原告適格(第2事件))について - 13 -(第2事件原告らの主張の要旨)前記(1)(原告らの主張の要旨)のとおり。 (被告の主張の要旨)第2事件原告らのうち原告番号17番P2を除いた3名は,法律上の利益を有する旨の結論を述べるだけで,法令の趣旨目的,当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質の考慮等についての論証をしないなど,原告適格について具体的な主張をしていないから,上記原告らに本件建築物に係る建築基準法9条1項に基づく是正命令等の義務付けを求める原告適格はない。 また,当該原告らが原告適格について具体的な主張をしていないことをおくとしても,同項に基づく是正命令等の義務付けを求める原告適格の範囲は建築確認処分の取消訴訟の原告適格と同様に解し得るところ,本件 また,当該原告らが原告適格について具体的な主張をしていないことをおくとしても,同項に基づく是正命令等の義務付けを求める原告適格の範囲は建築確認処分の取消訴訟の原告適格と同様に解し得るところ,本件においては,当該建築物の火災等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又は,これを所有する者に限られ,本件建築物の高さが約35mであることに照らすと,当該原告ら3名に原告適格は認められない。 (3) 争点(1)ウ(義務付け訴訟における重大な損害等の有無(第2事件))について(第2事件原告らの主張の要旨)ア通行の安全等の侵害本件地域は,通過交通を排除して設計されたものであって,自動車の通行を予定しておらず,徒歩を前提とした狭い道路が大部分を占め,自動車通行量が多いγ街道(通称θ通り)とδ街道とをつなぐ区道×号は,通過交通が集中する状況にある。その上,区道×号は,ε線の踏切等によってその周辺では既に渋滞が発生するようになった。そして,本件建築物は,多数の住居のほか診療所及び商業施設の入居が予定され,多数の自動車の - 14 -出入りが見込まれるところ,本件建築物の駐車場から幹線道路に通じる区道×号に出るためには,駐車場の出入口が存在する本件建築物南東側道路から本件建築物南西側道路を経てε線の踏切直近で区道×号に流入せざるを得ず,区道×号の渋滞の悪化,恒常化を招くほか,通過交通による交通事故も多発し,子どもや高齢者を中心に危険性が高まる。 特に,本件建築物敷地周辺の道路のうち,本件建築物南東側道路,本件建築物南西側道路及び本件建築物の北東側道路はいずれも幅員が4mにも満たない道路であり,自動車交通量が大幅に増加することで,上記各道路を利用する住民の通行の安全は著しく害され,とりわけ,これら 本件建築物南西側道路及び本件建築物の北東側道路はいずれも幅員が4mにも満たない道路であり,自動車交通量が大幅に増加することで,上記各道路を利用する住民の通行の安全は著しく害され,とりわけ,これら道路を通学路としている小学生等が交通事故に巻きこまれるおそれが極めて高い。 イ災害時の被害拡大等のおそれさらに,上記のとおり,区道×号の渋滞悪化により,付近道路を含めて当該地域道路を大量の自動車が通行し,事故の危険性のほか,騒音や排気ガスによる健康悪化や住環境の悪化が引き起こされるし,区道×号の渋滞悪化に加え,当該地域の狭い道路への通過交通の流入によって,災害時や危篤時の緊急車両のアクセスが困難となり,その到着に大幅な遅れが生じるなど,同地域の住民の生命・身体等に対する被害が拡大することになるほか,本件建築物において災害が発生した場合に,本件建築物からの延焼や倒壊による二次被害を被るおそれがある。 したがって,本件地域に居住する住民は,本件建築物の建築による交通量の増加に起因する区道×号の渋滞悪化,付近道路における交通事故の多発,騒音・排気ガスによる健康や住環境の悪化,緊急車両の到着の遅れによる被害拡大等により,その生命・身体の安全を害されるという重大な損害を被る。 ウ景観利益の侵害本件地域は,住宅地域として計画・設計され,何十年にもわたって良好 - 15 -な都市景観を備えた街として維持されてきており,その住民は,この良好な住環境と景観を,現に日々の生活を通じて享受している。原告ら住民にとっては景観権又は環境利益として法的に保護されるべきものである。本件建築物は,その高さ,幅,容積等の規模に照らし,周辺の街並みと全く調和せず,η地域の景観を完全に破壊し,原告ら住民の権利ないし利益を侵害している。 エ損害を避けるため されるべきものである。本件建築物は,その高さ,幅,容積等の規模に照らし,周辺の街並みと全く調和せず,η地域の景観を完全に破壊し,原告ら住民の権利ないし利益を侵害している。 エ損害を避けるため他に適当な方法がないこと本件建築物は,都市計画法制が予定しない誤った法令適用等を前提に建築されたもので,本来,不可能な開発行為と建物建築である。そして,本来不可能な開発行為を実現してしまったことにより,原告らの通行の安全等や景観利益が侵害されているのであり,このような損害を避けるためには本件建築物を除去ないし移転するしかない。 (被告の主張の要旨)ア行政事件訴訟法37条の2第1項の非申請型の義務付け訴訟においては,「重大な損害を生ずるおそれ」があることを訴訟の要件としているところ,当該「重大な損害を生ずるおそれ」は,義務付けの訴えによって救済されることが必要とされる原告自身に認められることをいい,第三者に損害が生ずるおそれがある場合を含まないと解される。しかるに,第2事件原告らの主張は,本件地域の住民であるという一般的・抽象的な第三者が被るであろう損害の主張にとどまっている。 イ第2事件原告らが主張する「重大な損害」の内容は,「交通量の増大による区道×号の渋滞悪化」,「交通事故の多発」,「騒音・排気ガスによる住環境の悪化」などであって,これらは,一定の処分である建築基準法9条1項による撤去命令等がされないことにより生ずる損害としては,およそ考えられない損害であって,失当である。(本件建築物の駐車スペースは26台分であり,区道×号は北口駅前ロータリーに直結し,十分な幅 - 16 -員があるから,本件建築物と交通量の増加には因果関係がない。)(4) 争点(2)ア(本件認定処分の適法性(第1事件))について(原告らの主張の要 前ロータリーに直結し,十分な幅 - 16 -員があるから,本件建築物と交通量の増加には因果関係がない。)(4) 争点(2)ア(本件認定処分の適法性(第1事件))について(原告らの主張の要旨)ア条例の条文構造安全条例の規定は,建築基準法40条,43条第2項の規定に基づいて地域や建築物の特殊性から自動車通行の安全を考慮して規制を上乗せする規定であり,建築基準関係規定として建築確認処分の基準となる(建築基準法6条1項)。したがって,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定には,建築確認の要件を緩和する効果がある。 そして,同条2項が,「前項の表に掲げる用途以外の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場」について規定していることに照らし,同条1項別表(い)二の規定は,他の用途の建築物に附属せず,専ら自動車車庫,自動車駐車場等として使用される建築物について定めたものと解さざるを得ない。 本件建築物は,共同住宅,店舗,病院の用に供する建築物に,附属する自動車駐車場が設置されている構造であり,その附属する自動車駐車場の面積は277.86㎡である(甲2,乙A3)から,本件建築物は同項別表(い)二に当たらず,同項を適用することは許されず,本件建築物には同条2項2号が適用され,自動車の出入口が幅員5m以上の道路に面することが必要となる。なお,同条3項が「共同住宅又は寄宿舎の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場」について規定しているが,その趣旨は,居住専用の建物の場合,比較的自動車駐車場を出入りする自動車が少ないことから,前面道路の規制を緩和するものであるが,本件建築物はこれに該当しない。 したがって,本件建築物に同条1項を適用するのは誤りであって,同項ただし書に基づいて板橋区長がした本件認定処分 少ないことから,前面道路の規制を緩和するものであるが,本件建築物はこれに該当しない。 したがって,本件建築物に同条1項を適用するのは誤りであって,同項ただし書に基づいて板橋区長がした本件認定処分は取り消されなければな - 17 -らない。 イ板橋区長は,本件認定処分をするに当たり板橋警察署長の回答書(甲7)を根拠としているところ,板橋警察署長の上記回答書は一般論を述べたものにすぎず,安全条例10条の2第1項ただし書のいうような「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」等を考慮して交通の安全に支障がないと認めたわけではないし,それどころか,上記回答書は循環論法に陥っており,これを根拠とする点は誤っている。 また,そもそも本件建築物に同項の適用はないが,仮に同項が適用されるとしても,そもそも,同項本文が建物の用途や規模に応じて前面道路に一定の幅員を要求している趣旨は,自動車の出入りに際し交通の安全を図る点にあるところ,建物南東側(別図2中央部の「自主管理歩道」(本件建築物南東側道路を挟んで「車乗り入れ部(タイプB)」と記載された部分)と記載された部分に相当する場所)の自動車出入口が面する道路は狭く,幅員が3.1m,3.14mしかない部分もあって,同項の要求する6mには遠く及ばない上,本件建築物建築工事に際して自主管理道路として歩道が設置されたのは,本件建築物に接する極僅かな部分のみであって,そのほかの部分(別図2中の駐車場前面道路(本件建築物南東側道路)の自主管理歩道の東端より東側部分及び当該道路をε線の線路敷とは反対方向(上記自主管理歩道の東端より更に東側)に進んだ際に交差する南北に走る道路)は,幅員4mに満たないままである。加えて,駐車場前面道路及びそれが通じている東側道路は,いずれも一方通行の規制はなく,4m (上記自主管理歩道の東端より更に東側)に進んだ際に交差する南北に走る道路)は,幅員4mに満たないままである。加えて,駐車場前面道路及びそれが通じている東側道路は,いずれも一方通行の規制はなく,4mに満たない幅員の道路を自動車がすれ違う。さらに,本件建築物建築工事に際して駐車場出入口に接した部分に歩道が設置されているが,当該道路の駐車場側に歩道があるため,駐車場に出入りする自動車を安全に回避することができない状況である。 さらに,本件建築物南東側(駐車場前面)道路は,東側で幅員4mに満 - 18 -たない道路に通じている(甲6)ところ,当該道路は,本件建築物に出入りする自動車の走行ルートでもあるが,P44小学校の通学ルートにもなっており,当該道路を通学路とする児童にとって,極めて危険である。 したがって,本件建築物南東側(駐車場前面)道路は,「安全上支障がない」ということはできず,安全条例10条の2第1項ただし書の要件を満たさない。 よって,以上から,板橋区長は,「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」を何ら検討することなく,安全上支障がないと認定しており,板橋区長の認定は誤っている。 (被告の主張の要旨)ア本件認定処分に係る本件建築物は,その一部が,面積277.86㎡の機械式の立体(自動車)駐車場となっていることから(乙A3「機械駐車装置詳細図」),本件建築物が安全条例2章の適用対象たる特殊建築物(同条例9条4号)に該当するため,同条例10条の2第1項本文の規定により,本件建築物敷地について,幅員6m以上の道路に接し,かつ,当該道路に面して当該敷地の出入口を設けなければならないと解されるところ,本件建築物敷地の南東側には,建築基準法42条1項5号の道路(以下「本件位置指定道路」という。)があるものの(乙A し,かつ,当該道路に面して当該敷地の出入口を設けなければならないと解されるところ,本件建築物敷地の南東側には,建築基準法42条1項5号の道路(以下「本件位置指定道路」という。)があるものの(乙A6),本件位置指定道路の現況幅員はおおむね4mであって,安全条例10条の2第1項本文の要件を満たさない。 同項の規定は,主として自動車の出入りに伴う通行の安全上の観点から設けられた規定であり,同項ただし書の安全認定をする場合には,上記通行上の安全や,防火上及び避難上の安全を考慮するものとされているところ,P1からの同項ただし書の安全認定の申請を受けた板橋区長は,その裁量により,同項の規定の趣旨・目的を十分踏まえた上で,本件建築物に係る「周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」について,客観的事 - 19 -実を総合的に勘案し,安全上支障がないと判断したものであるから,本件認定処分には,裁量権の範囲の逸脱又は濫用の違法はない。 イこのような安全条例10条の2第1項の規定の趣旨・目的を踏まえて本件建築物に係る「周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」について,通行上,防火上及び避難上の安全の観点からみると,次のような事実が認められる。 (ア) 通行上の安全の観点a 本件建築物敷地の南東側には,おおむね現況幅員4mの本件位置指定道路が存在し(乙A6),これに加えて,本件位置指定道路に沿って敷地内に幅員2mの自主管理歩道が設けられ(乙A3),これにより,本件位置指定道路と自主管理歩道とは,その両者を合わせて幅員6m以上の道路状となっている上,歩行者の通行の安全も確保されている。 b 本件建築物の駐車場部分(以下「本件駐車場」という。)の南側に位置する自動車の出入口は,自主管理歩道を介して本件位置指定道路に面しているところ,本件 上,歩行者の通行の安全も確保されている。 b 本件建築物の駐車場部分(以下「本件駐車場」という。)の南側に位置する自動車の出入口は,自主管理歩道を介して本件位置指定道路に面しているところ,本件駐車場の出入口には,停止線及び回転灯を備える予定とされている。 c 本件建築物敷地の南西側道路は,本件建築物を巡る形で,ε線の線路敷に沿って延び,その端部が幅員6mの建築基準法42条1項2号の道路とつながり,さらに,上記道路は,ζ駅の駅前広場に程ない距離でつながっている区道×号に接続している。そして,本件建築物の南東側道路は,本件建築物敷地から先(東側)の道路は幅員6m未満となっているものの,行き止まりではなく通り抜けができる形状となっている。なお,本件建築物敷地の南西側道路は,本件建築物の南側角付近で本件建築物の南東側道路と接続するが,そのままε線の線路敷に沿って伸びている。 - 20 -d 本件地域の道路交通を所管する警視庁板橋警察署長は,本件建築物敷地について交通上の支障がない旨の意見を提出している。(甲7)(イ) 防火上の安全の観点a 本件建築物の南西側道路及び本件建築物の南東側道路には,災害時等においては,消防車等の緊急車両の進入が可能である。 b 本件建築物自体が,耐火建築物の構造となっている。 (ウ) 避難上の安全の観点本件建築物の周囲には道路(自主管理歩道を含む。)が設けられており,本件建築物敷地の居住者等の避難路等も確保されている上,公共的空地である北口駅前ロータリーまで有効に避難できる。 ウ以上のとおり,本件建築物敷地については,安全条例10条の2第1項本文にいう敷地が幅員6m以上の道路と接する場合と同等の通行上,防火上及び避難上の安全性が確保されていると認められるから,同項ただし書にいう「建築 本件建築物敷地については,安全条例10条の2第1項本文にいう敷地が幅員6m以上の道路と接する場合と同等の通行上,防火上及び避難上の安全性が確保されていると認められるから,同項ただし書にいう「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合」に該当するものであって,本件認定処分は適法というべきである。 エ原告らは,本件建築物については,安全条例10条の2第1項ではなく,同条第2項(3項)が適用されるべきと主張する。しかしながら,原告の主張によると,仮に,同条2項(3項)の適用がない場合に,同条1項の適用がないとすると,同条2項(3項)が適用される場合に比べて危険性がより高くなるにもかかわらず,一切安全条例の規定が適用されないこととなり不合理である。同条の構造は,1項が原則的に適用となり,一定の要件の下に同項の制限緩和規定である2項が,さらに一定の要件を充足した場合に更なる緩和規定である同条3項が適用されるという関係であると解すべきである。本件では,同条2項(3項)がいずれも適用できない以上,同条1項を適用することも当然の帰結である。 - 21 -原告らが指摘する危険性はいずれも抽象的な危惧を指摘するのみで,具体的な根拠は何ら示されていない。 (5) 争点(2)イ(建築基準法9条1項の命令を発しないことに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否か(第2事件))について(第2事件原告らの主張の要旨)ア本件建築物は建築基準法等に違反する。 (ア) 建築基準法6条,都市計画法32条違反本件建築物を予定建築物とする開発行為は,区道の管理者との協議と同意が必要であるが(都市計画法32条),これを得ることなく開発許可がされている。これを看過してされた建築確認は,建築基準法6条(及び同 件建築物を予定建築物とする開発行為は,区道の管理者との協議と同意が必要であるが(都市計画法32条),これを得ることなく開発許可がされている。これを看過してされた建築確認は,建築基準法6条(及び同法9条12号,29条1項)に違反する。 (イ) 建築基準法6条,都市計画法33条違反本件建築物を予定建築物とする開発行為は,災害の防止・通行の安全上支障のないように道路が配置されなければならない(都市計画法33条1項2号)ところ,本件建築物が接する道路は幅員4m未満の狭あいなものであり,建築基準法6条(及び同法施行令9条12号)に違反する。 (ウ) 景観利益の侵害と建築基準法6条ηの街並みは,住宅街としての良好な都市景観を誇る地域であり,法的保護を受けるべき利益が認められている。このような景観利益を侵害する高層建物である本件建築物は,都市計画法33条1項2号に適合しないので,建築基準法6条(及び同法施行令9条12号)に違反する。 (エ) 都市計画法36条,37条,建築基準法6条違反開発工事の完成と完了公告を経ないで建築が開始された本件建築物は,都市計画法36条,37条,建築基準法6条(及び同法施行令9条12号)に違反する。 - 22 -(オ) 安全条例4条,建築基準法43条違反安全条例4条1項・2項は,本件建築物については幅員6m以上の道路に10m以上の長さで接することを要求するが,本件建築物はこれに適合しない。したがって,同条,建築基準法43条2項に違反する。 (カ) 建築基準法56条違反本件建築物の北西側は通常の道路(区道×号)であって,建築基準法施行令134条の「広場」とはいえないところ,これを適用して建築基準法56条の道路斜線制限の適用を排除し得るとして建築された本件建築物は,同条に違反する。 (キ) 安 道×号)であって,建築基準法施行令134条の「広場」とはいえないところ,これを適用して建築基準法56条の道路斜線制限の適用を排除し得るとして建築された本件建築物は,同条に違反する。 (キ) 安全条例10条の2違反安全条例10条の2第2項は,附属駐車場の出入口が幅員5m以上の道路に接することを求めているが,本件建築物はこれを満たさない。 イ建築基準法等違反の重大性上記アのとおり本件建築物には法令違反があるから,区民の安全を守る責務を負う板橋区長において,上記の法令違反を看過し,本件建築物の存在を許容することは許されず,本件建築物について,建築基準法9条1項に基づく除却命令等を発することをしなければ,その裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある。 (被告の主張の要旨)ア第2事件原告らが主張する違法事由のうち,建築基準法6条,都市計画法32条,同法33条(1項2号),同法36条及び37条違反を理由とする点は,これら法令がいずれも建築基準法9条に基づく除却命令等の対象とならない法令であるから,仮にこれらの法令に違反しているとしても同条に基づく除却命令の発動の必要性とは何ら関係がない。したがって,原告らの主張のうち,これらを理由とする部分は主張自体失当である。 イ第2事件原告らの主張のうち,安全条例4条1項及び2項(建築基準法 - 23 -43条)違反を理由とする点は,本件建築物は,延べ床面積が7436. 84㎡,高さが34.87mであり,本件建築物敷地は,その南西側で本件開発道路と11.13m接している。したがって,安全条例4条に反しない。 ウ第2事件原告らの主張のうち,「広場」(建築基準法施行令134条1項)概念を不当に拡張するなどして建築基準法56条の道路斜線制限を回避しており,同条に違反するという点については,本件 ない。 ウ第2事件原告らの主張のうち,「広場」(建築基準法施行令134条1項)概念を不当に拡張するなどして建築基準法56条の道路斜線制限を回避しており,同条に違反するという点については,本件建築物が接する北西側道路はζ駅の駅前広場を含めて同法42条1項2号の道路であり,その幅員は92.8mであるから,そもそも同法56条の問題は生じない(同条が定める道路斜線規制は,建築物の「日照,採光,通風等」を確保することを目的とする制限であるから,建築物の前面にどの程度,恒久的な空地が確保されているかが問題とされるべきであって,道路の機能が問題とされるべきではない。)。 仮に北口駅前ロータリーが同法42条1項2号の道路に含まれないとしても,北口駅前ロータリーは都市計画決定に基づいて将来も広場として使用されることが予定されているため,建築基準法施行令134条1項に規定する「公園,広場,水面,その他これらに類するもの」に該当するが,「広場」概念を不当に拡張するものではないから,建築基準法56条違反はない。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点(1)ア(取消訴訟における原告適格(第1事件))について(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させる - 24 -にとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれ - 24 -にとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,当該処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)(以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 (2) 上記1(1)の観点から,本件認定処分の相手方以外の者である原告らが,本件認定処分の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。 ア(ア) 安全条例は,建築基準法43条2項による建築物の敷地及び建築物と道路との関係についての制限の付加等について規定するものである(安全条例1条参照)。 建築基準法43条1項本文は,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的として定められた建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準(同法1条参照)の一つとして,都市計画区域及び準都市計画区域内において,建築 保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的として定められた建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準(同法1条参照)の一つとして,都市計画区域及び準都市計画区域内において,建築物の敷地は,同法にいう道路(同法42条。同法43条1項各号に掲げるものを除く。)に2m以上接しなければならないものとし,いわゆる接道義 - 25 -務を規定しているところ,その趣旨は,道路の有する機能に照らし,十分な幅員を有するなど一定の要件を満たす道路に有効に接しない敷地上に建築物が建築されると,当該建築物及びその周辺において,平時から交通上の不便が生じるとともに,日照,通風,採光等が良好に保たれ難いだけでなく,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険が大きく,また,避難の安全が十分に確保され難く,消火活動にも支障を生じるなど種々の支障を生じるのが通常であることから,このような交通上,安全上,防火上及び衛生上の支障を生じるのを防ぐことを目的として,建築物を建築しようとする者に対し,原則として,建築物の敷地が幅員4m以上の道路(同法42条1項参照)に接することを義務付けることとしたものと解される。これによって,当該建築物に係る避難,通行又は防火上の安全等を確保し,ひいては,その周辺に存する建築物やその居住者の安全等にも寄与することになる。 また,同法43条2項は,「地方公共団体は,…(略)…延べ面積(…(略)…)が1000平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により,前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては, 路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により,前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては,条例で,必要な制限を付加することができる。」と規定しているところ,これは,一定の用途や規模を有する建築物の場合,それらの建築物の敷地が同条1項の規定する幅員4m(特定の区域内では6m)(同法42条1項参照)の道路に2m接すればよいという制限だけでは,平常時における通行の確保並びに火災等の災害の発生時における迅速かつ適切な避難,消火及び救助活動ができないおそれがあることから,地方公共団体の条例で,建築物の用途又 - 26 -は規模の特殊性に応じて,各地方の実情に合わせて必要な制限を付加することができる旨規定したものと解するのが相当である。 上記規定を受けて,安全条例10条の2は,自動車駐車場のような安全条例に規定する特殊建築物(安全条例9条参照)の敷地は,その用途に応じて,一定の幅員以上の道路に接し,かつ,当該道路に面して当該敷地の自動車出入口を設けなければならない(安全条例10条の2第1項本文)などと定めている。こうした規定が設けられたのは,上記建築基準法43条2項の趣旨も考慮すると,そのような特殊建築物について,その用途や規模に応じて,平常時における通行を確保するためだけではなく,火災等の災害が発生した場合における避難,消火及び救助活動を迅速かつ適切に行うため,すなわち,当該建築物について避難及び通行の安全を図り,ひいては,その周辺に存する建築物やその居住者の安全等にも寄与するためであると解するのが相当である。 そして,安全条例10条の2第1項ただし書は,「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により」知事等が「安全上支 建築物やその居住者の安全等にも寄与するためであると解するのが相当である。 そして,安全条例10条の2第1項ただし書は,「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により」知事等が「安全上支障がないと認める」(いわゆる安全認定)場合には,同項本文の規定を適用しないこと(同項本文の規定による制限を緩和すること)を認めているところ,同項本文の上記趣旨,目的等をも考慮すれば,同項ただし書が知事等の認定に当たり「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況」を勘案すべきものとしているのは,当該建築物が火災等により炎上するなどの事態が生じた場合に,これに隣接する建築物等やその居住者等に重大な被害が及ぶことのないことをも考慮するためであると解するのが相当である。 (イ) 以上のような建築基準法43条2項の趣旨,安全条例10条の2第1項本文及び同項ただし書の趣旨や目的,同項ただし書が知事等の認定を通して保護しようとしている利益の内容や性質等を考慮すると,同項 - 27 -ただし書は,同項ただし書の安全認定に係る建築物の火災等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益として特に保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 (ウ) そうすると,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定に係る建築物の火災等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,当該認定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。 イ前記前提事実及び証拠(甲1,甲2,乙A19)によれば,本件建築物は,その高さが34.87mであること,本件建築物と原告 の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。 イ前記前提事実及び証拠(甲1,甲2,乙A19)によれば,本件建築物は,その高さが34.87mであること,本件建築物と原告らの住所の位置関係は別図1のとおりであって,原告らのうち,原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9が本件建築物敷地から直線距離でおおむね70m以内の位置に居住し,これら以外の原告らは本件建築物敷地から直線距離で100m以上離れた位置に居住していることが認められる。そして,建築物の炎上,倒壊等により直接被害が及ぶ範囲は,(乙A3によれば,本件建築物敷地は東方向に行くに従って低くなっており,これを受けて本件建築物南東側道路は東方向に行くに従って低地となっていることが認められ,この点を踏まえて検討したとしても)その敷地から当該建築物の高さの2倍の程度の距離と解されるから(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例2条4号,6条ないし9条,安全条例6条2項等参照),その範囲内に居住していると認められる上記8名の原告(70m以内に居住する者)は,安全条例10条の2第1項ただし書の認定に基づく許可に係る建築物の炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定 - 28 -範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者に当たるといえる(なお,被告は,上記の直接的な被害を受けることが予想される範囲を建物高さの水平距離に求めるが,東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例2条4号,6条ないし9条,安全条例6条2項等に照らせば狭きに失するといわざるを得ない。)。したがって,原告番号17 の水平距離に求めるが,東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例2条4号,6条ないし9条,安全条例6条2項等に照らせば狭きに失するといわざるを得ない。)。したがって,原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9は,本件認定処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものとして,その取消訴訟における原告適格を有する。 他方,上記(70m以内に居住する者)以外の原告らについては,本件全証拠によっても,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定に係る建築物の炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者に当たらない。したがって,原告らのうち上記8名以外の者は,本件認定処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するということはできず,その取消訴訟における原告適格を有しない。 ウ(ア) 以上に対し,原告らは,<ア> 本件認定処分については,都市計画決定の遵守を確認するという意味において都市計画区域の住民には法的利害がある,<イ> 本件建築物の駐車場の前面道路は幅員が狭く,当該前面道路を始めとした周辺道路(小学校の通学道路として指定されている。)の交通安全を害するし,本件地域は通過交通の流入を極力排する構造が採られていたにもかかわらず,本件建築物の駐車場に出入りする車両等によって,周辺道路の渋滞が悪化し,交通の障害となるほか,排気ガス等による健康障害を引き起こし,原告らに不利益を及ぼす,<ウ>本件地域は従来から景観に配慮して街並みが形成されてきており,私法上の法律関係において法律上保護に値するものであるし,建築基準法 - 29 -や安全 引き起こし,原告らに不利益を及ぼす,<ウ>本件地域は従来から景観に配慮して街並みが形成されてきており,私法上の法律関係において法律上保護に値するものであるし,建築基準法 - 29 -や安全条例は,都市計画決定に適合した都市空間の形成を実現しようとする規定であり,関連法規である東京しゃれた街並み推進条例を併せてみても,隣接地に居住する住民を含めた地域住民の有する生活環境保全を目的としていることは明らかであり,景観保全もこれに含まれると解されるから,地域住民の景観利益を個別的利益として保護する趣旨を含んでいるなどと主張する。 (イ) <ア>について上記(1)及び(2)アにおいて説示したところからすれば,原告らの上記<ア>の主張を採用することができないことは明らかである。 (ウ) <イ>について確かに,前記イのとおり,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定に係る建築物の炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者(前記8名の原告)については,同項ただし書に基づいて知事等がする安全認定の取消しを求めるにつき法律上の利益を有していることを否定することはできない。 しかしながら,前記(2)のとおり,安全認定の根拠規定である同項(ただし書)は,建築物の用途及び規模等に応じて前面道路の幅員を規律して,本件建築物及びその周辺における避難又は通行の安全等を確保しようとするものであるから,それによって保護される周辺の避難又は通行の安全とは,当該建築物の用途及び規模と前面道路の幅員確保との相関によって保護されるになじむものに限られると解される。そうであるとすると,同項(ただし書)が一般的公益を離れて個別的に利益を保護している範囲にも本件建築物の用途及び規模並びに前 路の幅員確保との相関によって保護されるになじむものに限られると解される。そうであるとすると,同項(ただし書)が一般的公益を離れて個別的に利益を保護している範囲にも本件建築物の用途及び規模並びに前面道路からの距離に応じた限界があるというべきであるし,前面道路を離れた道路(区道×号)等における自動車の渋滞や排気ガスの発生に伴う環境悪化・健康被 - 30 -害等といった侵害からの保護される利益については,建築される建築物の用途及び規模並びに前面道路の幅員等を規制することにより保護される関係が認められないから,同項(ただし書)が個別的に保護する対象には当たらないといわざるを得ない。また,上記の前面道路を離れた道路(区道×号)等における自動車の渋滞や排気ガスの発生に伴う環境悪化・健康被害等の発生については,周辺の道路事情・交通規制,環境等に左右されるものであり,建築される建築物の用途・規模に応じた前面道路の幅員の規制によって抑制できるものということもできない。 したがって,同項ただし書は,前面道路を離れた道路における交通渋滞や排気ガスの発生に伴う環境悪化・健康被害等により侵害ないし危険にさらされることのない利益までをそれが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできず,原告らの上記<イ>の主張を採用することはできない。 (エ) <ウ>についてa なるほど,都市の景観は,それが,良好な風景として,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成する場合には,客観的価値を有するものというべきであり,また,このような良好な景観に近接する地域内に居住し,その恵沢を日常的に享受している者は,良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであって,これらの者が有す また,このような良好な景観に近接する地域内に居住し,その恵沢を日常的に享受している者は,良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであって,これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(景観利益)は,「景観権」という権利性を有するものとまでは認められないものの,法律上保護に値するものと解される(最高裁平成17年(受)第364号同18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号948頁参照)。 そして,証拠(甲19ないし21,甲26(ただし,以下の認定に反する部分を除く。),甲28,甲30(ただし,以下の認定に反す - 31 -る部分を除く。))及び弁論の全趣旨によれば,① 本件地域は,P12株式会社が昭和11年頃から,内務省(当時)等の指導の下,住宅開発・都市計画が行われたものであり,北口駅前ロータリーを中心とし,小公園や通過交通の進入を防止する構造(クル・ド・サック)や歩行者専用道路(フットパス)等が随所に設けられ,P12株式会社が昭和13年4月に作成した「P16内規」においては,建坪(建蔽率)を原則として30%以内にすることや建物の構造設備について言及がされ,同月には,本件地域の住人らによって,「共存共助の精神を以て会員の親睦と郷内の円満なる発達とを計るを以て目的」とする「P17会」が結成されていたこと,② 平成元年ころから住民有志等が中心となってηの在り様が幾度となく論議され,平成9年7月に最大公約数的結論として「P19憲章」が取りまとめられたこと,③ 平成16年3月,本件地域は,東京しゃれた街並み推進条例に基づく歴史的・文化的な特色を継承する「街並み景観重点地区」に指定され,平成19年11月,都知事の承認を経て,「P20ガイドライン」が告示され,これにより,本件地域において しゃれた街並み推進条例に基づく歴史的・文化的な特色を継承する「街並み景観重点地区」に指定され,平成19年11月,都知事の承認を経て,「P20ガイドライン」が告示され,これにより,本件地域において,既存建築物の解体又は建築物の新築等をする場合には「P21協議会」との協議を要することとされたことなどの事実が認められる。これら事実に照らせば,上記「P20ガイドライン」の告示は本件認定処分(平成19年5月11日)後にされているものの,その検討は本件認定処分以前からされていたものとうかがわれるところであって,本件認定処分時においても,本件地域における歴史性,社会性等の価値と共に,当該地域における景観の価値は相当程度客観的に評価されており,本件地域の景観は,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成するものとして一定の客観的価値を有していたことは否定することができない。 - 32 -b しかしながら,本来,景観といっても,その対象となる内容及び範囲を一義的に画することが直ちにできるものではなく,その価値は,そもそも見る者の主観的な評価に係る要素が多い。前記のように,その景観に客観的価値があるとして景観利益が肯定され得る場合であっても,その景観利益は,景観の性質,態様によっても異なり得るし,社会の変化に伴って変化し得るものであって,これが侵害された場合に被侵害者の生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではなく(前掲最高裁平成18年3月30日第一小法廷判決参照),景観(利益)阻害の有無や程度も,健康被害や日照・通風阻害等とは異なり主観的な価値判断に依拠する部分が大きい。また,景観利益は,連続的かつ無限定な広がりを有し得る周辺地域の居住者や来訪者等の不特定多数者からの眺め,風景をその対象とするものであり,客体の面 は異なり主観的な価値判断に依拠する部分が大きい。また,景観利益は,連続的かつ無限定な広がりを有し得る周辺地域の居住者や来訪者等の不特定多数者からの眺め,風景をその対象とするものであり,客体の面からも主体の面からも,処分の結果が直接影響を及ぼすことになる範囲が性質上当然に特定されるというものではなく,法律上保護すべき範囲は必ずしも明白ではない。このような景観利益の内容,性質等からすれば,上記(1)の諸点を参酌,勘案するとしても,処分を定めた行政法規及びその関連法令により,周辺住民のために良好な景観の整備保全が図られることを目的としていることを読み取ることができ,保護すべき景観の内容,範囲,保護の態様等が具体的にうかがわれることになるのでなければ,処分を定めた行政法規が景観利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解することは困難である。 c しかるところ,本件認定処分の根拠規定である安全条例10条の2第1項ただし書は,上記(2)アで説示したとおり,建築物の種類・用途とその規模,形態等に応じて出入口が接する道路の幅員を確保することとした同項本文と同程度に安全上支障のない状況を確保することに - 33 -より,当該建築物について避難及び通行の安全を図るとともに,これを通じて,周辺の他の建築物の居住者等の前記のような具体的利益の保護をも図るものであるが,良好な景観の形成(整備保全)を図ることにつながり得る法令上の基準がなく,保護すべき具体的景観の範囲,具体的な保護の態様等を特に定めた規定もない。建築基準法43条,42条等をみても同様であるし,同法の目的も,国民の生命,健康及び財産の保護を図ること(1条)にあり,前記のような性質を有する景観利益を一般的公益を超えて を特に定めた規定もない。建築基準法43条,42条等をみても同様であるし,同法の目的も,国民の生命,健康及び財産の保護を図ること(1条)にあり,前記のような性質を有する景観利益を一般的公益を超えて個別具体的に保護することをその趣旨・目的としているとみることはできない。 また,本件地域は東京しゃれた街並み推進条例の対象とされており,街並み景観ガイドラインの対象となる重点地区内で建築行為等を行おうとする者は,あらかじめ当該街並み景観ガイドラインを運用する協議会と協議を行うよう努めなければならないなどとされ(30条1項),上記協議を経ない建築行為等を行おうとする者に対しては,所定の要件の下に必要な指導又は助言を行うこと(32条)などが規定されているものの,これら規定と安全条例10条の2第1項ただし書における「安全上支障がないと認める」という安全認定の処分要件とが何らかの具体的関連性を有しているとは認め難い上,前記条例自体が,「東京の魅力の向上に資する」という一般的・抽象的な趣旨・目的を掲げ(1条),対象となる重点地区においても,上記のような努力義務を定めるにすぎない(上記のとおり,本件認定処分時においては,P20ガイドラインは承認されてもいなかった。)から,対象重点地区内の住民らに何らかの法的権利を生じさせるものでもないし,前記のような景観利益を個別具体的に保護するものと解することもできない。 そうすると,安全条例10条の2の趣旨・目的を考慮し,これに関 - 34 -係するものとして,建築基準法43条,42条等に加えて東京しゃれた街並み推進条例の趣旨・目的等を参酌したとしても,一般的公益としてはともかく,一定範囲の地域住民の具体的な景観を享受する利益を個別的に保護する趣旨を含むものとは解されない。 もとより,前掲最高裁平成18 推進条例の趣旨・目的等を参酌したとしても,一般的公益としてはともかく,一定範囲の地域住民の具体的な景観を享受する利益を個別的に保護する趣旨を含むものとは解されない。 もとより,前掲最高裁平成18年3月30日第一小法廷判決は,不法行為の成否の場面において,景観利益が民法709条に規定される「法律上保護される利益」に当たると判示したものであり,景観利益をもって直ちに安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定に係る抗告訴訟の原告適格を認める根拠とすることができるとしたものではない。 d したがって,安全条例10条の2第1項ただし書等の規定により,安全認定に係る計画建築物の周辺住民の景観利益が個別的に保護されていると解することはできず,これらの利益は一般的公益として保護されているにとどまるというべきである。そして,原告適格の有無は,前記(1)のとおり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むか否かという観点から判断すべきところ,安全認定の根拠法規である安全条例,建築基準法等の趣旨・目的を考慮したとしても,安全認定において地域住民の景観利益が個別的に保護されていると解されないことは以上に判断したとおりであるから,原告らの上記主張<ウ>は採用することができない。 エなお,被告は,本件認定処分の原告適格に関し,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定の法的効力につき,当該安全認定が,建築主に対して建築確認申請手続における一定の地位を与えるものにすぎず,建築確認と結合して初めてその効果を発揮することに着目し,周辺住民の権利・ - 35 -利益には影響を及ぼさないものと解されるとして,周辺住民である原 手続における一定の地位を与えるものにすぎず,建築確認と結合して初めてその効果を発揮することに着目し,周辺住民の権利・ - 35 -利益には影響を及ぼさないものと解されるとして,周辺住民である原告らには,その取消しを求める法律上の利益を観念することはできず,本件認定処分の取消訴訟の原告適格は認められない旨主張する。 しかし,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定は,前記ア(イ)のとおり,建築基準法43条2項による制限の付加として定められた建築物の用途及び規模等に応じた前面道路の幅員等の規律(安全条例10条の2第1項本文)を,一定の要件の下において適用しないこととして,その制限を緩和することを認めるものであるから,建築主に対して建築確認申請手続における一定の地位を与えるにとどまらず,建築基準法9条1項に基づく違反是正命令を発する上においても法律上の障害となり得るものと解されるのであって,周辺住民の権利・利益に影響を及ぼさないということはできない。そして,安全条例10条の2第1項ただし書の安全認定は,元々は建築確認と一体的に行われていたものであって,安全認定がされた場合には,これを前提として建築確認を経るなどして建築行為等が進められ,接道義務に関する要件が緩和された建築物が出現することがほぼ確実となるものであるから,安全認定は周辺住民の権利・利益に影響を及ぼさないとする前提に誤りがあるといわざるを得ず,安全認定自体を独立して争う利益を否定することもできないから,上記主張を採用することはできない。 (3) 以上によれば,原告らのうち,原告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9は,本件認定処分の取消訴訟の原告適格を 告番号17番P2,原告番号18番P3,原告番号19番P4,原告番号20番P5,原告番号21番P6,原告番号22番P7,原告番号23番P8,原告番号24番P9は,本件認定処分の取消訴訟の原告適格を有するが,その他の原告らは,本件認定処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するとはいえないから,その取消訴訟の原告適格を有しないといわざるを得ない(したがって,上記原告ら(8名)を除いた原告らによる本件認定処分の取消しを求める訴えの部分は,いずれも - 36 -不適法である。)。 2 本案前の争点(1)イ(義務付け訴訟における原告適格(第2事件))について(1) 第2事件原告ら4名の義務付けの訴え(以下「本件義務付けの訴え」という。)は,建築基準法9条1項に基づいて建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物(以下「違反建築物」という。)の除却等を命令すること(以下において,同項に基づく違反建築物の除却等の必要な措置を採ることの命令を「除却命令等」という。)の義務付けを求めるものであるところ,同項は,建築確認や完了検査といった手続上の規制だけでは違反建築物の出現を防止するのに不十分であり,最終的に違反を是正するための手段が必要であることから,規制の実効性を確保するために,特定行政庁において,建築基準法令の規定等に違反した建築物(違反建築物)又は建築物の敷地について,除却命令等を発令することができる旨規定し,警察行政上の措置を行う権能を特定行政庁に与えたものと解される。そして,建築基準法(関係法令を含む。)は,違反建築物の敷地の隣接地その他の近隣に居住する者に対し,是正命令の権限の行使について申請権を認めていないことからすると,上記権限の行使を求める本件義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号に ,違反建築物の敷地の隣接地その他の近隣に居住する者に対し,是正命令の権限の行使について申請権を認めていないことからすると,上記権限の行使を求める本件義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号に規定する,いわゆる非申請型の義務付けの訴えに当たる。 そして,同法37条の2第3項は,行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り,訴えを提起することができる旨規定しているところ,その法律上の利益の有無の判断については,取消訴訟における原告適格の判断に係る同法9条2項の規定が準用されることからすれば(同法37条の2第4項),「法律上の利益を有する者」とは,一定の処分がされることにより保護されることが法律上予定されている利益を有する者をいうのであって,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,そ - 37 -れが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合は,このような利益も法律上保護することが予定されているというべきであり,その判断に当たっては,同法9条2項の諸要素を参酌,勘案すべきものと解される。 (2) 上記(1)の観点から,本件建築物の周辺住民である第2事件原告ら4名が,除却命令等を発することの義務付けを求める原告適格を有するか否かについて検討する。 ア建築基準法は,建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものであり(1条),同法9条1項は,上記(1)のとおり,建築確認や完了検査といった手続上の規制だけでは違反建築物の出現を防止するのに不十分であり,最終的に違反を是正するための手段が必要であるこ るものであり(1条),同法9条1項は,上記(1)のとおり,建築確認や完了検査といった手続上の規制だけでは違反建築物の出現を防止するのに不十分であり,最終的に違反を是正するための手段が必要であることから,規制の実効性を確保するために,警察行政上の措置を行う権能を特定行政庁に与えたものと解される。 また,同法の定める規制内容をみると,建築物の構造耐力の基準(20条),大規模の建築物の主要構造部に係る耐火構造物の基準(21条),敷地等と道路との基準・制限(42条,43条),容積率の制限(52条),第1種低層住居専用地域及び第2種低層住居専用地域内における建築物の高さの制限(55条),前面道路の幅員及び隣地境界線からの水平距離に応じた建築物の高さの制限(56条),日影による中高層建築物の高さの制限(56条の2),高度地区内の建築物の高さの制限(58条)等が定められているが,これらの規定の趣旨は,当該建築物の安全性を確保し,その居住者の生命,身体の安全及び健康の保護を図るとともに,当該建築物とその周辺の建築物との間に適度な空間を確保するなどして,日照,通風及び採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにし,さらに,地震及び火災等により当該建築物が倒壊し,又は炎上す - 38 -るなどの事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことを防止することにあると解される。 そして,上でみた同法1条の掲げる目的に加え,同法9条1項の趣旨目的,同法の定める規制内容の趣旨からすれば,特定行政庁に,違反建築物について警察行政上の措置として除却命令等を発令する権限を与えた同項は,その居住者の生命,身体の安全等及び財産としてのその建築物の保護を図るとともに,(a)当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及 て警察行政上の措置として除却命令等を発令する権限を与えた同項は,その居住者の生命,身体の安全等及び財産としてのその建築物の保護を図るとともに,(a)当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物について,その居住者の生命,身体の安全等及び財産としてのその建築物を,(b)当該建築物により日照,通風を阻害される周辺の他の建築物について,その居住者の健康を,それぞれ個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,①当該建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者及び②当該建築物により日照,通風を阻害される周辺の他の建築物に居住する者は,それぞれ当該建築物について除却命令等の義務付けを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その義務付け訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 イこれを本件についてみるに,まず,上記①の点については,前記1(2)イにおいて説示したとおり,本件義務付けの訴えに係る第2事件原告らのうち,原告番号17番P2及び原告番号24番P9が本件建築物敷地から直線距離でおおむね70m以内の位置に居住していること(その余の第2事件原告らは,本件建築物敷地から直線距離で100m以上離れた位置に居住している。)が認められ,建築物の炎上,倒壊等により直接被害が及ぶ範囲はその敷地から当該建築物の高さの2倍の程度の距離と解されるから(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例2条4号,6条ないし9条,安全条例6条2項等参照),その範囲内に居住し - 39 -ていると認められる原告番号17番P2及び原告番号24番P9は,本件建築物の炎上 紛争の予防と調整に関する条例2条4号,6条ないし9条,安全条例6条2項等参照),その範囲内に居住し - 39 -ていると認められる原告番号17番P2及び原告番号24番P9は,本件建築物の炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者に当たるということができ,本件建築物の除却命令等の義務付けを求めるにつき法律上の利益を有するものとして,本件義務付けの訴えの原告適格を有する。 他方,その余の第2事件原告らについては,本件全証拠によっても,本件建築物の炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者に当たらない。 また,上記②の点については,本件においては,第2事件原告らから,日照,通風が阻害される旨の具体的主張はなく,本件全証拠によっても,前記2名を除くその余の第2事件原告らについて,本件建築物により日照,通風を阻害されるものとは認められない。 なお,第2事件原告らは,本件地域に居住する者には自然的環境,文化的環境,社会的環境等に関する景観利益が認められ,本件建築物によって上記利益が侵害される旨主張するが,建築基準法9条1項がこのような景観利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むとは解されないことは,上記1(2)ウ(エ)において説示したのと同様であって,上記主張を採用することはできない。 ウしたがって,原告番号17番P2及び原告番号24番P9には本件義務付の訴えの原告適格を認めることができるものの,その余の第2事件原告らについては,本件義務付けの訴えの原告適格は認められないといわざるを得ない。(したがって,上記原告番号17番P 番P9には本件義務付の訴えの原告適格を認めることができるものの,その余の第2事件原告らについては,本件義務付けの訴えの原告適格は認められないといわざるを得ない。(したがって,上記原告番号17番P2及び原告番号24番P9を除いた第2事件原告らによる本件義務付けの訴えは,いずれも不適法である。) - 40 - 3 本案前の争点(1)ウ(義務付け訴訟における重大な損害等の有無(第2事件))について上記2のとおり,原告番号17番P2及び原告番号24番P9を除いた第2事件原告らは,本件義務付けの訴えの原告適格が認められないから不適法といわざるを得ないため,以下においては,上記の原告適格が認められる2名(以下,本項及び5項において,本件義務付けの訴えの原告適格が認められる2名の原告を「第2事件原告ら」と表記する。)について,更に検討して判示するものである。 (1) 上記のとおり,本件義務付け訴えは,非申請型の義務付け訴訟(行政事件訴訟法3条6項1号)であるところ,同訴訟は,「処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り」訴えを提起することができる(同法37条の2第1項)とされている。これは,法令上申請権のない者が一定の処分を求めることは,その分野の行政実体法が予定していないことであり,法令上の申請権がない場合に,行政庁に対し一定の処分をすべき旨を義務付けることは,法令上の申請権がない者にあたかも申請権を認めたのと同様の結果となることから,義務付けの訴えによる救済の必要性が高い場合に限り,このような内容の訴訟上の救済を認めるという趣旨で設けられたものであり,上記趣旨を踏まえれば,「重大な損害を生ずるおそれ」があるというには,義務付けの訴えによって救済されることが必 高い場合に限り,このような内容の訴訟上の救済を認めるという趣旨で設けられたものであり,上記趣旨を踏まえれば,「重大な損害を生ずるおそれ」があるというには,義務付けの訴えによって救済されることが必要であると主張する原告自身に重大な損害を生ずるおそれがあることが必要であると解され(同条3項,4項参照),第三者に重大な損害を生ずるおそれがあるにとどまる場合はこれに当たらず,また,重大な損害が生ずるか否かの判断は,「一定の処分」と「重大な損害を生ずるおそれ」との間に,一定の処分がされなければ重大な損害を生ずるおそれがある一方,その処分がされればそのおそれが解消されるという因果関係があることを前提として,損害の回復の困難の程度を考慮し,併せ - 41 -て,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質を勘案して行うのが相当である(同条2項参照)。 (2)ア第2事件原告らは,上記「重大な損害」の内容として,前記第2の4(3)(第2事件原告らの主張の要旨)のとおり,①通行の安全等の侵害(渋滞悪化,交通事故の増加,騒音・排気ガス等による住環境の悪化),②災害時の被害拡大等のおそれ(上記①の渋滞に伴う緊急車両の到着遅延,本件建築物の消火活動の困難性に起因する本件建築物の倒壊等による二次災害,避難時の混乱激化),③景観利益の侵害を主張し,うち①及び②については,除却命令等がされないことにより本件地域(αβ)に居住する住民の生命,身体を害するおそれがあると主張する。 イ第2事件原告らが主張するこれらの各事情の中で,上記②のうち本件建築物の消火活動の困難性に起因する本件建築物の倒壊等による二次災害のおそれについては,仮に火災等の災害が発生した場合を想定すると,本件建築物の周辺における一定の範囲に居住する者の生命,身体や当該範囲に所在する建築物の 性に起因する本件建築物の倒壊等による二次災害のおそれについては,仮に火災等の災害が発生した場合を想定すると,本件建築物の周辺における一定の範囲に居住する者の生命,身体や当該範囲に所在する建築物の所有者の利益を侵害するおそれとなり得ることは否定できず,上記範囲の者においては除却命令等がされないことによる重大な損害が生じるおそれを観念し得るところである。そして,個々の原告にこの種の損害,すなわち,「重大な損害」を生ずるおそれがあるかという点は,訴訟要件(行政事件訴訟法37条の2第1項参照)と解されるから,第2事件原告らからは必ずしも明確な主張がされているとはいい難い部分も存するものの,この点について職権をもって検討するに,上記2のとおり,ここでいう第2事件原告ら,すなわち原告番号17番P2及び原告番号24番P9については,本件建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者に当たる上,ここで想定される被害は生命,身体にも及び,事後の回復に委ねることを相当とするものとも解されないことに - 42 -照らせば,これをもって重大な損害を生じるおそれとして認めることができ,また,このような損害を避けるために他に適当な方法があるともいえないというべきである。 したがって,第2事件原告らが主張する上記②の事情のうち,本件建築物の消火活動の困難性に起因する本件建築物の倒壊等による二次災害のおそれについては,行政事件訴訟法37条の2第1項所定の要件を基礎付けるものということができる。(なお,第2事件原告らの主張するその余の事情については,第2事件原告らの原告適格を基礎付ける法律上の利益と関係のないものである上(前記2(2)参照),渋滞悪化等の一般的,抽象的な懸念を ができる。(なお,第2事件原告らの主張するその余の事情については,第2事件原告らの原告適格を基礎付ける法律上の利益と関係のないものである上(前記2(2)参照),渋滞悪化等の一般的,抽象的な懸念をいうにすぎず,個々の第2事件原告との関係において,どのような内容・程度の侵害又はそのおそれが生じているかについては具体的に明らかではないか,仮に上記の損害(侵害)を生ずるおそれがあるとしても,複合的要因により発生するものであるから,それが除却命令等がされないことによって生じ,除却命令等がされることによって解消されるという因果関係をにわかに肯定することもできないなど,これらの事情をもって,除却命令等がされないことによる「重大な損害」として認めることはできない。)(3) 以上によれば,第2事件原告ら(原告番号17番P2及び原告番号24番P9)については,上記(2)のとおり,除却命令等の「処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,その損害を避けるために他に適当な方法がないとき」に当たるということができる。 4 争点(2)ア(本件認定処分の適法性(第1事件))について(1) 安全条例10条の2第1項の適用の有無についてア安全条例10条の2第1項は,同項の表(い)二に掲げる自動車車庫又は自動車駐車場(床面積が50㎡を超えるものに限る。)の用途に供する特殊建築物(安全条例9条4号参照)について,その本文において,その - 43 -敷地が同項の表(い)に定める6m以上の幅員を有する道路に接してなければならず,かつ,かかる接道部分に自動車の出入口を設けなければならないとし,同項ただし書において,知事が安全上支障がないと認定した場合は,敷地が,同項本文が定める上記幅員に満たない道路にしか接道していなくてもよい旨定める。これ に自動車の出入口を設けなければならないとし,同項ただし書において,知事が安全上支障がないと認定した場合は,敷地が,同項本文が定める上記幅員に満たない道路にしか接道していなくてもよい旨定める。これに対し,同条2項は,同条1項の表に掲げる用途以外の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場がその用途に供する部分の床面積が所定の規模以下であり,所定の幅員以上の道路に面するなどの同項各号所定の要件を満たす場合には,同条1項の適用を除外することとし,さらに,同条3項は,「共同住宅又は寄宿舎の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場」に対する同条2項の適用について,その要件を更に一定程度緩和する旨の読替えをしている。 そうすると,同条は,自動車車庫又は自動車駐車場(以下「自動車車庫等」という。)について,それが他の建築物に附属するものであるか否かを問わず,同条1項の表(い)二の適用があり,上記の規制に服するものとする一方,自動車車庫等が他の建築物に附属する場合に主たる建築物が同条1項の表に掲げる用途以外の用途に供するものであるときには,同条2項各号のいずれかに該当する限り(当該主たる建築物が「共同住宅又は寄宿舎の用途に供する建築物」であるときは,同条3項による読替え後の同条2項各号のいずれかに該当する限り),同条1項の適用を除外すべきことを定めたものと解される。なお,同条3項の「共同住宅は又は寄宿舎の用に供する建築物」の該当性につき,当該建築物の用途が共同住宅又は寄宿舎以外の用途をも混在する場合において,当該他の用途に供する部分の床面積が延べ面積(自動車及び自転車の駐車の用に供する部分の面積を除く。)の5分の1以下であり,かつ,200㎡以下であるときに限り,同項の「共同住宅又は寄宿舎の用途に供する建築物」に該当す る部分の床面積が延べ面積(自動車及び自転車の駐車の用に供する部分の面積を除く。)の5分の1以下であり,かつ,200㎡以下であるときに限り,同項の「共同住宅又は寄宿舎の用途に供する建築物」に該当するものと解 - 44 -されている。(乙A2〔80頁~81頁〕参照)イ上記の解釈を踏まえて本件をみると,証拠(甲2,乙A3,乙A4,乙A6,乙B2の1・2,乙B8)によれば,本件建築物は,主要な用途が共同住宅・店舗・診療所(ただし,患者の収容施設のないものに限る。)であり,① 延べ面積7436.84㎡,② 自動車駐車場の用途に供される部分の床面積277.86㎡,③ 店舗・診療所に供される床面積358.93㎡であること,④ その敷地に設ける自動車の出入口が面する道路の幅員が4mであり,当該道路と並行する幅員2mの自主管理歩道もあるが,これらは他の幅員6m以上の道路に有効に通じていないことが認められる。 以上の事実によれば,本件建築物は,① 自動車駐車場の用途に供される部分(床面積277.86㎡)を有するから,安全条例10条の2第1項の表(い)二に該当すると解されるところ,② 自動車駐車場を除く主要な用途が共同住宅の用途だけでなく店舗・診療所の用途を混在しており,しかも,店舗・診療所の用途に供する部分の床面積が200㎡を超えていることから,安全条例10条の2第3項の適用はなく,かつ,③ その敷地に設ける自動車の出入口が面する道路の幅員が4mであり,これが幅員6mの道路と有効に通じていないため,同条2項2号又は3号の適用もないこととなる。そうすると,本件建築物は,同条1項本文の適用があるから,同項ただし書の安全認定を受けない限り,幅員6m以上の道路に接し,かつ,当該道路に面して当該敷地の自動車の出入口を設けなければならないことになる すると,本件建築物は,同条1項本文の適用があるから,同項ただし書の安全認定を受けない限り,幅員6m以上の道路に接し,かつ,当該道路に面して当該敷地の自動車の出入口を設けなければならないことになるものと認められる。 ウ以上に対し,原告らは,安全条例の規定は,建築基準法40条,43条第2項の規定に基づき,地域や建築物の特殊性から自動車通行の安全を考慮して規制を上乗せする規定であり,安全条例第10条の2第2項が,「前項の表に掲げる用途以外の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は - 45 -自動車駐車場」について規定していることに照らし,同条1項の表(い)二の規定は,他の用途の建築物に附属せず,専ら自動車車庫,自動車駐車場棟として使用される建築物について定めた規定であり,他の用途の建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場の場合には同条1項の適用はなく,同条2項(3項)の適用によるべきであると主張する。 しかし,安全条例9条は,この章(第2章特殊建築物)の規定は,次に掲げる用途に供する特殊建築物に適用するとし,その一つとして,自動車車庫等で,その用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるものを定め,それが他の用途に供する建築物に附属するものであるか否かを問わずに適用対象としている。また,安全条例10条の2第1項の表(い)二も,そのような区別をすることなく,自動車車庫等を掲げている。 一方,同条2項及び3項は,他の用途に供する建築物に附属する自動車車庫等が所定の要件を満たす場合においては,1項の規定を適用しないと定めている以上,そのような附属自動車車庫等が所定の要件を満たさない場合には1項が適用されることを前提としているものと解するのが文理上自然である。仮に,所定の要件を満たさない場合に1項の適用がないものとすると,危険 のような附属自動車車庫等が所定の要件を満たさない場合には1項が適用されることを前提としているものと解するのが文理上自然である。仮に,所定の要件を満たさない場合に1項の適用がないものとすると,危険性がより高くなるにもかかわらず安全条例上の規制は及ばないことになってしまい,同条の趣旨に反することは明らかである。 以上によれば,同条の構造は前記のように解すべきであり,原告らの上記主張を採用することはできない。 (2) 安全条例10条の2第1項ただし書の適用についてア(ア) 上記(1)に説示したとおり,本件建築物には安全条例10条の2第1項本文の適用があるから,本件認定処分が適法か否かは,同項ただし書の適用を前提として,知事等において安全上支障がないと認定したことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるといえるか否かによることとなる。 - 46 -そして,同項の趣旨は,建築物の用途又は規模いかんにより,その敷地に出入りする車両の種類や当該車両が有する危険性が異なり得るし,また,その敷地に出入りする車両数が増加し得ることから,その敷地への自動車の出入りの規模に着目し,その規模に見合った平常時における円滑な通行や災害時における避難,消火及び救助活動のための通路の確保を図ったことにあると解されるところ,同項ただし書は,同項本文(建築物の用途・規模等に応じて接道し自動車の出入口を設けなければならない道路の幅員を定める。)を適用しない例外について定めるものであるから,同項ただし書にいう「安全上支障がない」というのは,上記の同項の趣旨を踏まえれば,同項本文が求める接道の基準を満たすことで確保されるのと同程度に,平常時の円滑な通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障を来さないような状況にあると判断できる場合であることを要するとい 本文が求める接道の基準を満たすことで確保されるのと同程度に,平常時の円滑な通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障を来さないような状況にあると判断できる場合であることを要するというべきである(なお,その判断においては,敷地の現状のみならず当該敷地の利用計画も勘案されると思料される。)。もっとも,その判断の性質や建築物の周囲の空地の状況その他の土地及び周囲の状況により安全上支障がないと認める場合というその規定の仕方等からすると,その判断は,知事の専門的かつ技術的な裁量に委ねられていると解される。 (イ) そうすると,本件では,本件敷地につき認められる状況により,安全条例10条の2第1項本文が求める接道の基準を満たすこと(上記のように,そのためには原則として路地状部分に6mの幅員の通路があることを要する。)で確保されているのと同程度に,平常時の通行のみならず災害時における避難,消火及び救助活動に支障がない状況にあると判断することが,事実の基礎を欠くか,又はその前提とした事実に対する評価が明白に合理性を欠くなどして,合理性を持つ判断として許容される限度を超えるものであるか否かという観点から検討する必要があ - 47 -る。 イ前記前提事実,証拠(甲2,甲7,甲23,乙A3,乙A6,乙A14,乙B2の2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (ア) 本件建築物は,敷地面積1272.01㎡,建築面積892.00㎡,延べ面積7436.84㎡,駐車場面積277.86㎡であり,主要用途を共同住宅・店舗・診療所とし,鉄筋コンクリート造地上11階地下1階の構造を有し,駐車場出入口を含めて3つの出入口を備えている。(甲2,乙A16)なお,上記駐車場は機械式(3列10台又は2列8台の機械式)の立体駐 療所とし,鉄筋コンクリート造地上11階地下1階の構造を有し,駐車場出入口を含めて3つの出入口を備えている。(甲2,乙A16)なお,上記駐車場は機械式(3列10台又は2列8台の機械式)の立体駐車場であり,地下2階部分から地上2階部分を有している。(乙A3)(イ) 本件敷地に係る法規制は,商業地域防火地域として指定されており,建蔽率100%,容積率500%である。(乙A3)(ウ) 本件建築物の南西側には,幅員4mの道路(車道)と幅員2mの歩道が並行しているところ,これらのうち,区道×号に接する部分から道路中心線(上記車道と歩道を合わせた中心線)上において約23.5mにわたる部分は,歩道と車道とを合わせて幅員6mの開発道路(建築基準法42項1項2号道路)であり,それ以降(東側)は自主管理歩道と位置指定道路(同項5号道路)であって,これら(道路及び歩道)の南西側には,道なりにε線の線路敷が並行している。また,本件建築物の南東側には,幅員4mの本件位置指定道路(車道。同号道路)と幅員2mの自主管理歩道が並行しているところ,本件位置指定道路及び自主管理歩道は,本件建築物に接する部分のほぼ中程の位置で鈍角に屈曲しており(別図2参照),当該屈曲部分に駐車場とその出入口が設けられている。(甲2,乙A3,乙A14,乙A15,乙B2の2) - 48 -なお,本件建築物敷地の南東側道路の上記屈曲部付近にいて,現況道路(車道)の幅員が4mに満たないもの(3.99m)とする計測結果も存在する(なお,甲6によれば上記計測結果よりも更に狭い幅員の道路が存在したとうかがわれるが,甲6の計測日が平成19年7月であることに照らし,その後拡幅等が行われたものとうかがわれる。)。(甲23)(エ) 本件建築物の南西側道路は,区道×号と交差し,区道×号を 存在したとうかがわれるが,甲6の計測日が平成19年7月であることに照らし,その後拡幅等が行われたものとうかがわれる。)。(甲23)(エ) 本件建築物の南西側道路は,区道×号と交差し,区道×号を介して北口駅前ロータリーへとつながっている。他方,本件建築物の南東側道路は,ε線の線路敷方向からみると本件建築物の東端付近まで自主管理歩道が伸びており,その東端の部分までは幅員2mの自主管理歩道と幅員4mの本件位置指定道路(車道)が並行しているものの,以東は自主管理歩道(歩道)はなく,道路の幅員も狭くなり3.8m程度となる(本件敷地の南東側道路は行き止まりではなく,車両を含めて通り抜けができ,本件敷地を含む区画は,区道×号と本件敷地の南西側道路及び南東側道路とそれにつながる周囲の道路により周回することができる形状となっている。)。(乙A3,乙B2の2)(オ) 本件建築物の駐車場は,出入口付近の車路の幅員が約5.6m(ただし,本件建築物の柱が存する場所においては,それに相当する部分を除く。)であり,出入口には停止線及び回転灯が設置されている。(乙A3)(カ) 本件地域の道路交通を所管する警視庁板橋警察署長は,本件建築物敷地について交通上の支障がない旨の意見を板橋区に提出している。 (甲7)ウ以上のとおり,本件建築物敷地の南東側道路は,区道×号から本件建築物敷地南西側道路及び近隣の道路を経由することで,本件建築物を含む区画を1周することができ,本件建築物敷地の駐車場出入口付近においては, - 49 -幅員2mの歩道と幅員4mの道路(車道(位置指定道路)。なお,本件建築物敷地南東側道路(車道)においては,その幅員が3.99mの部分がある旨の計測結果も存在するところであるが,この点についての考慮は後述する。)が並行しており,合わせ (位置指定道路)。なお,本件建築物敷地南東側道路(車道)においては,その幅員が3.99mの部分がある旨の計測結果も存在するところであるが,この点についての考慮は後述する。)が並行しており,合わせて幅員6mの道路に接し,かつ,当該道路に面して本件建築物敷地の自動車の出入口が設けられている。そして,本件建築物敷地の駐車場出入口から区道×号に至るまでは,本件建築物敷地南東側道路及び本件建築物敷地南西側道路を経ることで幅員6mの道路(車道部分の幅員4m)を通行して移動することができる。本件建築物敷地の駐車場出入口からは,幅員2mの歩道を横断しなければ本件建築物敷地南東側道路に至ることはできない構造ではあるものの,駐車場出入口には駐車場からの出庫に備えて停止線と回転灯が設置され,自動車の運転者に対しては歩行者の有無等の安全確認を促しつつ,歩道の歩行者等に対しては駐車場からの出庫がある旨注意喚起をする構造を有している。加えて,本件建築物の構造は鉄筋コンクリート造であって,いわゆる耐火構造を有している上,本件建築物が駐車場出入口を含めて3つの出入口を備えていることや上記のとおりの本件建築物南東側道路及び本件建築物南西側道路の幅員と周辺の道路の形状に照らせば,仮に本件建築物において火災等の災害が発生した場合においても,本件建築物の居住者等はこれらの道路を経由して北口駅前ロータリー等へ避難することができ,また,これらの道路を利用して消火活動等を行うことが可能である(原告らは,仮に本件建築物において火災が発生した場合には,本件建築物の周辺道路の幅員では消防車の進入,消火活動ができず,消火活動の遅れから周囲にまでその被害が拡大するおそれがある旨主張するが,本件建築物が耐火構造であり,自動車駐車場の位置は地上2階部分にとどまることからすると,仮に本件 車の進入,消火活動ができず,消火活動の遅れから周囲にまでその被害が拡大するおそれがある旨主張するが,本件建築物が耐火構造であり,自動車駐車場の位置は地上2階部分にとどまることからすると,仮に本件建築物において火災等の災害が発生したとしても,直ちに周辺に被害が及ぶとは考えがたい上,本件建築物の西側に隣接する区道×号にはしご車等 - 50 -の大型の消防車を駐車させて消火活動,救助活動等を行い,他方,本件建築物南西側道路及び本件建築物南東側道路から,その道路の幅員に応じた規模の消防車や消火栓等を活用して消火活動等を行うことも可能と解される。)。そして,本件地域の道路交通を所管する警視庁板橋警察署長から,本件建築物敷地について交通上の支障がない旨の意見も得られている。そうであるとすると,仮に本件建築物敷地南東側道路(車道)の一部において,その現況幅員が4mに足らず,3.99mしかなかったとしても(なお,甲23の2葉目の上から5段目に当該部分を計測した際の写真が存在するところ,その右側の写真中に道路の境界線を示す金属鋲の存在がうかがわれる一方,計測位置は,上記金属鋲からずれており,かつ,道路との境界を示すものとうかがわれる,いわゆるL字ブロックが途切れた場所であることからすると,その正確性に全く疑問の余地がないとは言い切れない。),道路位置指定線と現況道路との施工上の誤差にすぎないとも評価し得るところであるし(位置指定道路(建築基準法42条1項5号)が,私道の存否ないし位置を明確にしてその廃止変更を困難にするとともに,道路としての機能を発揮させるために指定を受けていることからすると,同項3号の「道路」とは異なり,僅かな部分において現況が4m以上の幅員を有しない場合に位置指定道路として指定を受けた趣旨を必然的に全うできないということは せるために指定を受けていることからすると,同項3号の「道路」とは異なり,僅かな部分において現況が4m以上の幅員を有しない場合に位置指定道路として指定を受けた趣旨を必然的に全うできないということはできず,上記0.01mの差(0.25%の不足)をもって上記趣旨を没却するとも解されない。),上記幅員の不足の程度に加え,他の場所においてはそのような幅員の不足もうかがわれない上,上記のとおり駐車場出入口には自動車の運転者及び歩行者に対して注意喚起をする設備が存在することなどの事情に照らせば,本件安全条例10条の2第1項本文にいう敷地が幅員6m以上の道路と接する場合と同等の通行上,防火上及び避難上の安全性が確保されているとみることが,事実の基礎を欠いていたり,その前提とした事実に対する評価が明白に合理性を - 51 -欠くなどして,合理性を持つ判断として許容される限度を超えるものということはできないから,板橋区長において,同項ただし書にいう「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合」に該当するものとして認定した本件認定処分にその裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められない。 エ以上に対し,原告らは,仮に本件建築物に安全条例10条の2第1項が適用されるとしても,本件建築物敷地南東側道路の幅員は同項の要求する6mには遠く及ばないし,その一部に幅員が4mに満たない部分が存在し,警視庁板橋警察署長の意見も「東京都建築安全条例に基づき施工すれば」交通の安全に支障がない旨の一般論を述べるにすぎないことから,板橋区長が同項ただし書を適用して本件認定処分をしたことが違法である旨主張する。 しかし,上記警視庁板橋警察署長の意見は「駐車場出口に停止線,回転灯等を備え」ることを明記しているから,単なる ら,板橋区長が同項ただし書を適用して本件認定処分をしたことが違法である旨主張する。 しかし,上記警視庁板橋警察署長の意見は「駐車場出口に停止線,回転灯等を備え」ることを明記しているから,単なる一般論を述べたものということはできないし,道路幅員等に関する原告ら主張の点を考慮しても,上記ウのとおり板橋区長の本件認定処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められない以上,原告らの上記主張を採用することはできない。 (3) したがって,他に本件認定処分について違法事由となり得る事情の存在はうかがわれない以上,本件認定処分は適法であるというべきである。 5 争点(2)イ(建築基準法9条1項の命令を発しないことに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否か(第2事件))について(1) 前記2(2)のとおり,建築基準法9条1項は,特定行政庁において,「建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地」について除却等を命ずることができる旨規定しているところ,特定行政庁がこれを命ずるに当たっては,まず,建築物等が上 - 52 -記の建築基準法令の規定等に違反していることが前提となる。次に,仮にこれが肯定される場合においては,同法が規定する行政目的達成のために,建築基準法令の規定等に違反する建築物又は建築物の敷地について,①違反の内容及び程度,②違反によって阻害される行政目的の内容及び程度,③違反により周辺住民の受ける被害の内容及び程度,④(是正)命令により建築主の受ける不利益の程度,⑤建築主による自発的な違反解消の見込みなどの諸般の事情を考慮した上で,その合理的な判断に基づいて,誰に対し,どのような内容の(是正)命令を発するか,いつ(是正)命令を発令するか,どのような手続を経て(是正)命令 発的な違反解消の見込みなどの諸般の事情を考慮した上で,その合理的な判断に基づいて,誰に対し,どのような内容の(是正)命令を発するか,いつ(是正)命令を発令するか,どのような手続を経て(是正)命令を発令するかなどを決してするものであり,これらの各判断は,特定行政庁の裁量に委ねられているものと解される。そうすると,特定行政庁の裁量に委ねられたこのような行為に関し,具体的事情の下において,当該権限が付与された趣旨及び目的に照らし,当該権利を行使しないことが著しく不合理であり,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認められるような特段の事情があるかどうかが問題となる。 (2) 都市計画法32条等違反の主張について上記の「建築基準法令の規定」とは,建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定をいう(同法6条1項参照)から,それに違反するというのは,同法又はこれに基づく命令若しくは条例の定める実体規定(いわゆる単体規定又は集団規定)に違反していることに限られ,建築基準法令以外の法令の違反は,同法6条の確認(建築確認)及び同法7条の検査の対象となるものであっても,同法9条1項の規定による命令(除却命令等)の対象とはならないと解される。(乙A11,乙A12)そうであるとすると,第2事件原告らにおいては,前記第2の4(5)(第2事件原告らの主張の要旨)のとおり,建築基準法令の違反であるとして種々の違法事由を主張するところではあるものの,同法6条を介して主張する都市計画法32条(公共施設の管理者の同意等)違反の主張,同法33条(開 - 53 -発許可の基準(道路,景観利益))違反の主張,同法36条(開発行為に関する工事完了の検査),同法37条(開発行為に関する工事完了の公告前の建築制限等)違反の各主張は,いずれも建築基準法令における実体規 許可の基準(道路,景観利益))違反の主張,同法36条(開発行為に関する工事完了の検査),同法37条(開発行為に関する工事完了の公告前の建築制限等)違反の各主張は,いずれも建築基準法令における実体規定(いわゆる単体規定又は集団規定)に該当しない以上,同法9条1項の除却命令等を基礎付ける法令違反の主張としては,失当といわざるを得ない。 (3) 安全条例4条,建築基準法43条違反の主張についてア第2事件原告らは,本件建築物敷地は安全条例4条の要件を満たさないと主張する。 イ安全条例4条は,建築基準法43条2項に基づき同条1項に関して制限を付加した規定であり,知事において安全上支障がないと認める場合を除いては,延べ面積が3000㎡を超え,かつ,建築物の高さが15mを超える建築物の敷地は,幅員6m以上の道路に10m以上道路に接しなければならない旨定める(安全条例4条)ところ,ここにいう道路については,建築基準法43条1項各号において除外された道路(自動車のみの交通の用に供する道路等)は含まれないものの,その他に制限はない。 前記前提事実,証拠(乙A3,乙B2の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,本件建築物敷地は,少なくとも,本件建築物南西側道路のうち開発道路部分(前記4(2)イ(ウ)参照)において,幅員6mを有する本件開発道路と11.13m接していることが認められる。そうであるとすると,本件建築物敷地は,幅員6m以上の道路に10m以上にわたって接しており,安全条例4条(1項,2項)に違反するとは認められない。 本件開発道路のうち,本件建築物敷地に接する幅員2mの部分は歩道として整備されているが,道路交通法等の規制においては,歩道と車道を区別して観念される場合があるものの,同法は,道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図り 地に接する幅員2mの部分は歩道として整備されているが,道路交通法等の規制においては,歩道と車道を区別して観念される場合があるものの,同法は,道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図り,及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする(同法1条)のに対し,建築基準法は,建築物の - 54 -敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とし(同法1条),それぞれ法の目的を異にしているのであって,上記建築基準法の目的を実現するためには歩道を道路から除外する必然性もないというべきである。 ウしたがって,本件建築物敷地が安全条例4条に違反するということはできず,同条違反があることを根拠として除却命令等の義務付けを求める第2事件原告らの上記主張は失当である。 (4) 建築基準法56条違反の主張についてア建築基準法56条は,建築物の高さ制限として,①道路による高さ制限(道路斜線制限),②隣地境界線からの高さ制限(隣地斜線制限)及び③真北方向からの高さ制限(北側斜線制限)を規定するところ,原告らは,①道路斜線制限に関し,本件建築物敷地北西側の区道×号が接する北口駅前ロータリーが建築基準法施行令134条1項に規定する「広場」に当たることを前提として,前面道路の反対側の境界線が北口駅前ロータリーの北西側の境界線であるとして道路斜線制限に適合している旨判断されていることについて,前提とされている北口駅前ロータリーを同項に規定する「広場」に当たると解した点に違法があるから,結果として道路斜線制限に違反している旨主張する。 イしかしながら,道路斜線制限が設けられている趣旨が建築物の「日照,採光,通風等」の確保という点にあることからす たると解した点に違法があるから,結果として道路斜線制限に違反している旨主張する。 イしかしながら,道路斜線制限が設けられている趣旨が建築物の「日照,採光,通風等」の確保という点にあることからすると,建築物の面前において,どの程度の空間が確保されているかが問われるべきであって,その空間の種別や機能が問われるべき場面ではない。建築基準法施行令134条1項が「前面道路の反対側に公園,広場,水面その他これらに類するものがある場合においては,当該前面道路の反対側の境界線は,当該公園,広場,水面その他これらに類するものの反対側の境界線にあるものとみな - 55 -す。」旨規定しているのも上記の趣旨と解される。 そうであるとすると,北口駅前ロータリーを建築基準法施行令134条1項に規定する「広場」に当たるとして道路斜線制限の適用を検討することに違法があるということはできない。そして,このような前提の下では,本件建築物の高さ34.87mに対し,本件建築物敷地からその前面道路の反対側の境界線(ここにおいて,前面道路の反対側に広場等に当たる北口駅前ロータリーが存在することから,その反対側(北西側)の境界線)までの距離は92.8mであることが認められ(乙B6),道路斜線制限(敷地と前面道路との境界線上において,本件建築物敷地からその前面道路の反対側の境界線までの距離に1.25ないし1.5の数値を乗じて算出される高さの位置と前面道路の反対側の境界線とを結んだ線を建築物の高さの制限とする。)に反していないことは明らかであり,他に道路斜線制限に反していることをうかがわせる事情は認められないし,他の高さ制限に違反していることをうかがわせる事情も認められない。 ウしたがって,建築基準法56条に違反することを根拠として除却命令等の義務付けを求める第2事 をうかがわせる事情は認められないし,他の高さ制限に違反していることをうかがわせる事情も認められない。 ウしたがって,建築基準法56条に違反することを根拠として除却命令等の義務付けを求める第2事件原告らの上記主張は失当である。 (5) 安全条例10条の2違反の主張について第2事件原告らは,安全条例10条の2第2項は,本件建築物に附属する自動車駐車場の出入口が幅員5m以上の道路に接することを求めているにもかかわらず,本件建築物はこれを満たさない旨主張するが,この主張に理由がないことは前記4において説示したとおりである。 したがって,安全条例10条の2第2項に違反することを根拠として除却命令等の義務付けを求める第2事件原告らの上記主張は失当である。 (6) 建築基準法42条違反の主張について第2事件原告らは,当初,弁論分離前の相被告であるP13に対して,本件建築物に係る建築確認の取消しを求める訴えを提起していたところ,建築 - 56 -確認の違法の根拠の一つとして,本件建築物(建築計画)が建築基準法42条に違反する旨主張しており,併せて本件建築物南東側道路の幅員が4mに満たない旨主張していることから,この点について検討するに,上記4及び5(4)のとおり,本件建築物敷地南東側道路の車道部分は,建築基準法42条1項5号道路(本件位置指定道路)として4mの幅員を有しているとうかがわれるし,仮に,第2事件原告らが主張するとおり,本件建築物南東側道路において,道路位置指定線と異なり,その車道部分の現況幅員が4mに足らず,3.99mしかない部分が存在するとしても,前記4(2)ウのとおり,第2事件原告らの上記主張を根拠付ける測定結果については,測定上の誤差や道路施工上の誤差によって上記0.01mの差が生じた可能性が高く,仮に実際に4mの が存在するとしても,前記4(2)ウのとおり,第2事件原告らの上記主張を根拠付ける測定結果については,測定上の誤差や道路施工上の誤差によって上記0.01mの差が生じた可能性が高く,仮に実際に4mの現況幅員が確保されることが必要であると解するとしても,その不足の程度は0.01mにすぎず,その場所も限られている(本件建築物南東側道路は,第2事件原告らが指摘する箇所を除いては4mの幅員が確保されている。)ことに加え,上記幅員が不足するとされる場所においても2mの幅員を有する自主管理歩道が設けられて車道と区別された歩道が存在し,それぞれの通行区分が設けられていることからすれば,当該事情の下においては,板橋区長において除却等を命ずることをしないことが著しく不合理であるということはできず,その裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められるような特段の事情があるということもできないから,いずれにせよ第2事件原告らの上記主張は失当というべきである。 (7) よって,本件において,板橋区長が本件建築物につき除却命令等を発令すべきことが根拠法令の規定から明らかであるとも,除却命令等を発令しないことが裁量権の範囲を逸脱し若しくはこれを濫用したものであるともいうことはできないから,その義務付けを求める第2事件原告らの請求には理由がない(行政事件訴訟法37条の2第5項参照)。 6 結論 - 57 -以上によれば,原告らの本件各訴えのうち,別紙2訴え目録記載の各訴えについては,いずれも不適法であるから,これらを却下することとし,その余の訴えに係る各事件原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官林 史高 裁判官新宮智之 - 58 -(別紙2)訴え目録本件各訴えのうち,原告番号1番P14,原告番号2番P10,原告番号3番P28,原告番号4番P11,原告番号5番P22,原告番号6番P25,原告番号7番P23,原告番号8番P26,原告番号9番P15,原告番号10番P29,原告番号11番P30,原告番号12番P31,原告番号13番P32,原告番号14番P33,原告番号15番P34,原告番号16番P35,原告番号25番P27,原告番号26番P24,原告番号27番P36,原告番号28番P37,原告番号29番P38,原告番号30番P39,原告番号31番P40,原告番号32番P41,原告番号33番P42及び原告番号34番P43に係る各訴え - 59 -(別紙4)関係法令以下,各条文等のうち,本件に関係のある部分のみを略記する。 (1) 安全条例ア 9条(適用の範囲)この章の規定は,次に掲げる用途に供する特殊建築物に適用する。 (ア) 略 (1号ないし3号の2)(イ) 自動車車庫,自動車駐車場若しくは自動車修理工場(自動車整備場を含む。以下同じ。)で,これらの用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるもの,自動車洗車場(スチームクリーナー又は原動機を用いる洗浄機を使用するものに限る。以下同じ。),自動車教習所,自動車ターミナル(自動車ターミナル法(昭和34年法律第136号)2条4項に規定する自 の,自動車洗車場(スチームクリーナー又は原動機を用いる洗浄機を使用するものに限る。以下同じ。),自動車教習所,自動車ターミナル(自動車ターミナル法(昭和34年法律第136号)2条4項に規定する自動車ターミナルをいう。以下同じ。)又はタクシー,ハイヤー等の営業所(敷地内に自動車の駐車の用に供する部分を有するものに限る。 以下同じ。)(以下「自動車車庫等」という。) (4号)(ウ) 略 (5号ないし17号)イ 10条の2(前面道路の幅員)(ア) 次の表に掲げる用途に供する特殊建築物の敷地は,用途に応じて,同表に掲げる幅員以上の道路に接し,かつ,当該道路に面して当該敷地の自動車の出入口を設けなければならない。ただし,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合は,この限りでない。 (1項) 用途幅員 - 60 -(い) 一 (略)二自動車車庫,自動車駐車場,自動車修理工場(床面積が50㎡を超えるものに限る。),自動車洗車場又は自動車教習所三ないし九 (略)6m(ろ) 一ないし七 (略)12m (イ) 前項の表に掲げる用途以外の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場が,次のいずれかに該当する場合においては,同項の規定は,適用しない。 (2項)a 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が200㎡以下の場合において,その敷地に設ける自動車の出入口が幅員4m以上の道路に面し,かつ,交通の安全上支障がないとき。(1号)b 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以下の場合において,その敷地に設ける自動車の出入口が幅員5m以上の道路に面するとき。(2号)c 略(3号) 号)b 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以下の場合において,その敷地に設ける自動車の出入口が幅員5m以上の道路に面するとき。(2号)c 略(3号)(ウ) 略(3項)(2) 建築基準法9条1項(違反建築物に対する措置)特定行政庁は,建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については,当該建築物の建築主,当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理者若しくは占有者に対して,当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付けて,当該建築物の除却,移転,改築,増築,修繕,模様替,使用禁止, - 61 -使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。(1項)(3) 特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(平成11年東京都条例第106号)2条の表19の項の上欄ホ)により,安全条例10条の2第1項ただし書の規定による前面道路の幅員に関する特例の認定は,特別区においては区長が行うこととなる(地方自治法283条1項,252条の17の2第1項)。
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