【DRY-RUN】○ 主文 本件控訴を棄却する。 控訴人らの当審における申請を却下する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実 一 申立 控訴人ら代理人は「(1)原判決を取り消す。(2)被控訴人は、学校法人帝京第
○ 主文本件控訴を棄却する。 控訴人らの当審における申請を却下する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実一申立控訴人ら代理人は「(1)原判決を取り消す。(2)被控訴人は、学校法人帝京第一学園が千葉県市原市姉崎地区に設置を予定している仮称帝京大学医学部附属市原病院の用地造或費用及び付帯工事費用に充てるために、市原市の公金を支出してはならない。(3)被控訴人は市原市が右病院を誘致するために取得した別紙物件目録記載の土地六四筆を同学校法人に無償譲渡してはならない(当審における申請)。(4)訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は主文第一、第二項と同旨の判決を求めた。 二主張次に付加するほかは、原判決事実欄の「第二当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決四丁裏八行目の「自と」とあるのを「自ずと」と、同五丁裏九行目の「行われていており」とあるのを「行われており」と、同六丁表八、九行目及び一〇行目の「私学振興助成法」とあるのを「私立学校振興助成法」と、同八丁裏一行目の「因に」とあるのを「因みに」と、同九丁裏六行目の「債権者A外二名」とあるのを「控訴人A、同B、同C」と、同七行目の「債権者D外四名」とあるのを「その余の控訴人ら」と、同一三丁表二行目の「債務者が」とあるのを「市原市が」とそれぞれ改め、同一五丁表二行目冒頭から同丁表末行目末尾までの記載を削除する。)。 (控訴人ら) 1 被控訴人は、既に帝京大学附属病院の用地取得費用に充てるため本件公金を支出しており、市原市は別紙物件目録記載の土地六四筆(以下、本件土地という。)を取得済みである。そして、被控訴人は帝京大学附属病院の用地造成費用及び付帯工事費用に充てるため本件公金の支出を予定するとともに、本件土地を帝京 別紙物件目録記載の土地六四筆(以下、本件土地という。)を取得済みである。そして、被控訴人は帝京大学附属病院の用地造成費用及び付帯工事費用に充てるため本件公金の支出を予定するとともに、本件土地を帝京大学に無償譲渡することを予定している。 2 控訴人らは、被控訴人が本件土地を帝京大学に無償譲渡するのを未然に防止するため、昭和五八年六月二〇日市原市監査委員に対し、地方自治法二四二条一項に基づく住民監査請求をしたところ、同監査委員は同年八月一〇日付で控訴人らに対し、右監査請求は理由がない旨の監査結果を通知してきた。 3 本件土地の無償譲渡の差止を求める理由は、控訴人らの従前の主張と同様である。 4 よつて、控訴人らは被控訴人に対し、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく本件公金の支出及び本件土地の無償譲渡の差止めを求める権利を被保全権利として、本件公金を支出してはならない旨及び本件土地を無償譲渡してはならない旨の仮処分を申請する。 (被控訴人)右1ないし3の事実は認め、その法律的主張は争う。 三証拠(省略)○ 理由一控訴人らがいずれも市原市の住民であること、被控訴人は帝京大学が市原市姉崎地区に設置を予定している帝京大学附属病院の用地取得費用に充てるため本件公金を既に支出し、さらに同附属病院のための用地造成費用および付帯工事費用に充てるため本件公金の支出を予定していること、市原市は本件土地を取得済みであり、被控訴人はこれを帝京大学に無償譲渡することを予定していること、控訴人A、同B、同Cは昭和五七年一月一四日、その余の控訴人らは同年二月九日それぞれ市原市監査委員に対し、地方自治法二四二条一項に基づき、被控訴人の本件公金の支出を防止するため住民監査請求をしたところ、右監査委員は同年三月一五日付で控訴人A、同B、同Cに対し、また同年三月三〇 れ市原市監査委員に対し、地方自治法二四二条一項に基づき、被控訴人の本件公金の支出を防止するため住民監査請求をしたところ、右監査委員は同年三月一五日付で控訴人A、同B、同Cに対し、また同年三月三〇日付でその余の控訴人らに対しそれぞれ右監査請求は理由がない旨の監査結果を通知したこと、控訴人らは昭和五八年六月二〇日同様に右監査委員に対し、被控訴人の本件土地の無償譲渡を防止するための住民監査請求をしたところ、右監査委員は同年八月一〇日付で控訴人らに対し右監査請求は理由がない旨の監査結果を通知したことは当事者間に争いがない。 二控訴人らは被控訴人に対し、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく本件公金の支出及び本件土地の無償譲渡の差止め請求を本案とし、該請求権を被保全権利として本件仮処分を求める旨を申立てるので、まず地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく地方公共団体の執行機関又は職員に対する当該行為の差止めの請求権を被保全権利として右執行機関又は職員に対し右差止めの仮処分を求めることが許されるか否かについて審案する。 地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による訴訟については同条六項により行政事件訴訟法四三条三項の規定が適用されるところ、これによれば右訴訟には当事者訴訟に関する規定が準用されるが、当事者訴訟に関する規定である同法四一条によれば、当事者訴訟には執行停止の規定である同法二五条は準用されないこととなるとともに、右訴訟に関しては同法七条により、その性質に反しない限り、民事訴訟の例によると定められている。したがつて、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく訴訟に関しては民事訴訟の仮処分に関する法規も準用されると解する余地がないでもない。 しかしながら、地方自治法二四二条の二第一項一号の訴訟は、もともと個人的利益の保護を目的とするもの 項一号に基づく訴訟に関しては民事訴訟の仮処分に関する法規も準用されると解する余地がないでもない。 しかしながら、地方自治法二四二条の二第一項一号の訴訟は、もともと個人的利益の保護を目的とするものではなく、しかも該訴訟において被告となるのは、地方公共団体の執行機関としての長又は職員であつて、地方公共団体自体又は長個人もしくは職員個人が被告となるわけではない。これら地方公共団体の執行機関たる長又は職員は本来は民事実体法上権利能力を有しないものであり、ただ地方自治法二四二条の二第一項一号によりその訴訟上被告となることが認められているにすぎないのであつて、これを離れて民事訴訟法上一般に権利能力を有するとされるものではないから、右の者を相手方として個人的利益の保護を目的とする民事訴訟法上の仮処分を求めうるとするのは相当でない。また地方自治法二四二条の二第一項ただし書によれば同項一号の請求においては、当該行為の事前の差止め自体を目的とするものではなく、その行為により地方公共団体に財産上回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合に限り訴えを提起できる旨規定しており、したがつてこの請求は実質上同項の他の各号の請求に対する保全訴訟たる性格を有するものと解される。そうすれば、このような性格を有する請求についてさらにその請求を本案とする保全訴訟を認めることは法の趣旨に合致しないといわなければならない。さらに、地方自治法二四二条の二第一項一号の差止請求権は同条項の住民訴訟によつてのみ行使できる権利であり、本案判決の確定をよつてはじめて当該執行機関又は職貝の違法行為を差止めるという形成的な法的効果が生じるわけであるが、その判決確定の以前に、確定判決があつたと同様の法的状態を生じさせるような仮処分を許すことは妥当でない。以上の諸点を総合考慮すると、地方自治法二四 差止めるという形成的な法的効果が生じるわけであるが、その判決確定の以前に、確定判決があつたと同様の法的状態を生じさせるような仮処分を許すことは妥当でない。以上の諸点を総合考慮すると、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく地方公共団体の執行機関又は職員に対する当該行為の差止めの請求権を被保全権利として右執行機関又は職員に対し当該行為の差止めの仮処分を求めることは許されないと解すべきである。 してみれば、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく請求権を被保全権利として、控訴人らの被控訴人に対し本件公金の支出及び本件土地の無償譲渡の差止めを求める本件仮処分申請は、いずれも不適法として却下を免れない。 三よつて、被控訴人に対し本件公金の支払の差止めを求める控訴人らの仮処分申請を却下した原判決は結局相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、被控訴人に対し本件土地の無償譲渡の差止めを求める当審における控訴人らの仮処分申請を却下することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官岡垣學磯部喬大塚一郎)別紙物件目録(省略)(原裁判等の表示)○ 主文一債権者らの本件申請をいずれも却下する。 二訴訟費用は債権者らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の申立一債権者ら債務者は、学校法人帝京第一学園が千葉県市原市姉崎地区に設置を予定している仮称帝京大学医学部附属市原病院の用地取得費用、用地造成費用および付帯工事費用に充てるために市原市の公金を支出してはならない。 二債務者主文同旨第二当事者の主張(申請の理由)一債権者らは、いずれも市原市の住民である。 二債務者の本件公金支出の予定債務者は、学校法人帝京第一学園(以下「帝京大学」という。)が市原市姉崎地区に設置を 第二当事者の主張(申請の理由)一債権者らは、いずれも市原市の住民である。 二債務者の本件公金支出の予定債務者は、学校法人帝京第一学園(以下「帝京大学」という。)が市原市姉崎地区に設置を予定している仮称帝京大学医学部附属市原病院(以下「帝京大学附属病院」という。)の用地取得費用、用地造成費用、および付帯工事費用に充てるため、市原市の公金(以下「本件公金」という。)を支出することを予定している。 すなわち、 1 市原市議会は、昭和五六年三月一一日定例議会で「帝京大学医学部附属病院の早期誘致に関する決議」を可決した。 2 市原市は、右決議に基づき、帝京大学との間で昭和五六年一一月一〇日次のような「総合病院の新設に関する基本約定書」を締結した。 (一) 設置場所は市原市姉崎とする。 (二) 用地取得等については、市原市が約六万五〇〇〇平方メートルを取得し、整地したうえ、帝京大学に対し無償譲渡する。 (三) 付帯工事については、市原市が病院用地に至るまでの取付道路、上下水道および排水路の整備を行う。 3 市原市は、右基本協定に続き、細目を定める付属協定を締結にて、右病院用地取得等の費用および付帯工事の費用として二〇億円以上を支出することを予定しており、そのうち一二億一三二二万七〇〇〇円については昭和五七年度予算に病院対策費として計上している。 4 市原市議会は、右予算承認に伴い、昭和五七年六月開催の市議会で公金支出の前提となる一部用地の買収契約につき承認がなされる見込みである。 三本件公金支出の違法性 1 本件公金の支出は、私立学校に対するものであるから、憲法八九条後段に違反する。 憲法八九条は「公金その他の公の財産は、公の支配に属しない教育の事業に対し、これを支出してはならない」と規定しているが、「公の支配」とは「その事業の予算を定め、そ から、憲法八九条後段に違反する。 憲法八九条は「公金その他の公の財産は、公の支配に属しない教育の事業に対し、これを支出してはならない」と規定しているが、「公の支配」とは「その事業の予算を定め、その執行を監督し、さらに人事に関与するなど、その事業の根本的な方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力」(宮澤俊義著芦部信喜補訂全訂日本国憲法コンメンタール七四一頁)であると解すべきである。しかるに、帝京大学は私立学校であるが、私立学校は私立、私有、私営たることをその基本的性格としており、公の支配に属していないことは明らかであるから、私立大学に対する公的助成はすべて憲法上許されず、債務者が、私立学校である帝京大学に対し行おうと予定している本件公金の支出は憲法八九条に違反する。 2 私立学校に対する公的助成が、憲法上認められることがありうるとしても、それには憲法八九条後段の趣旨から自と限界があると解されるところ、本件公金の支出はその憲法的限界を逸脱したもので、違憲である。 (一) 憲法八九条後段の趣旨は、単に国費、公費の濫費の防止や私的な慈善・教育等の事業の自主性に対する公権力による干渉の危険の排除というだけでなく、その前提において思想・良心および学問における公権力の公正・中立性を財政面から確保し、実現することを目的とする制度的保障規定として理解すべきである。他方、憲法はその二六条で国民の教育を受ける権利を定め、これを実質的に保障するため教育の充実を図る必要があり、この観点から、私立学校に対する公的助成が認められるとしても、憲法八九条後段の限界のもとに憲法二六条の教育を受ける権利を実質的に保障するため教育の充実という要請を真に満たす場合に限られるべきである。 換言すれば、私立学校に対する公的助成は、教育振興の目的に限定されるべきであるとともに、これ 六条の教育を受ける権利を実質的に保障するため教育の充実という要請を真に満たす場合に限られるべきである。 換言すれば、私立学校に対する公的助成は、教育振興の目的に限定されるべきであるとともに、これを与える側の思想・良心・学問に対する公正・中立性をいささかも損なうことなく、これを受ける側の自主性をおびやかすことがないような制度的な保障のもとに、行われるべきである。そのためには、私立学校に対する助成は、予め設定された一定の基準に基づき、一律的かつ平等に行われなければならない。 従つて、現在行われている私立学校に対する経常的経費についての公的補助は右の要請を満たして行われていており、違憲になるものではないが、本件公金の支出のように、特定の私立大学に対し巨額な公的助成をすることは、憲法八九条後段に違反するものであつて許されない。 (二) 右のとおり市原市の帝京大学に対する本件公金の支出は、地域医療の振興を目的としており、教育振興を主たる目的としていないうえ、帝京大学に対してのみ巨額な援助がなされ、しかもその助成につき市原市がなんら監督権を有していないのであるから、私学助成の許される憲法八九条後段の限界をはるかに逸脱しており、違憲である。 3 本件公金の支出は、私立学校法五九条、私学振興助成法に違反している。 (一) 私立学校法五九条、私学振興助成法によれば、国または地方公共団体が私立学校(学校法人)に対し助成できる場合は、教育振興に主たる目的がある場合に限られており、教育振興を主たる目的としない場合にはこれを行うことができない。 市原市の帝京大学に対する本件公金の支出は、主として地域医療の振興を目的としてなされる助成であつて、教育の振興を目的としていないから、まず助成の目的において右各法律に違反している。 (二) 次に助成の態様についていえば、右各 件公金の支出は、主として地域医療の振興を目的としてなされる助成であつて、教育の振興を目的としていないから、まず助成の目的において右各法律に違反している。 (二) 次に助成の態様についていえば、右各法律によれば、私立学校に対する助成は原則として所轄庁が行うことを前提としている。その理由は、私立学校の管理・運営・教育振興については所轄庁が専らこれに関与し必要な監督権を有しているが、所轄庁以外の庁は当該私立学校の管理・運営等についてなんら関与せず、監督権も有していないからである。私立大学の所轄庁は文部大臣であり、私立高等学校以下は都道府県知事であり、このため、私立大学に対しては国が、私立高等学校以下に対しては地方公共団体がそれぞれ助成しているのである。 従つて、地方公共団体が私立大学に対し多額の助成をすることは、右各法律の趣旨に照らし許されないと解すべきであるから、市原市の帝京大学に対する本件公金の支出は助成の態様の観点からいつても右各法律に違反している。 (三) さらに、右各法律は、私立学校に対し経常的助成のみを行うことを原則としており、本件公金の支出のような資本的助成を禁止しているものと解すべきである。 4 本件公金の支出は、憲法一四条の定める平等原則に違反し、違憲である。 (一) 市原市の帝京大学に対する本件公金の支出は、医学部のない私立大学に対し助成を行うものでない点で、平等原則に反する。 (二) 次に、本件公金の支出は、市原市で既に医業を開設する者あるいは今後開設しようとする者を不当に差別するもので、この点でも平等原則に反する。 5 本件公金の支出は、著しく不当であり、違法である。 (一) 市原市には帝京大学附属病院のような大規模な病院を緊急に誘致する必要はない。 市原市の行政当局は、単に市原市の人口と医師数・病床数を比較し、他の市町村に 出は、著しく不当であり、違法である。 (一) 市原市には帝京大学附属病院のような大規模な病院を緊急に誘致する必要はない。 市原市の行政当局は、単に市原市の人口と医師数・病床数を比較し、他の市町村に比べ医師充足率が劣つていることを大規模病院誘致の主たる理由としている。しかしながら、医療需要は単純に人口数に比例して増大するものでなく、人口構成とりわけ老令人口比率の分析を抜きにしてはその正確な把握は不可能である。市原市は人口急増地域であり、その流入人口の大半は若年層であることから、老令人口が少ないという特徴を有している。このため、市原市の昭和五五年度の一般病床利用率は七四パーセントであり、全国平均の八一・四パーセントを大きく下回つている。 因に、病床利用率の高い県は鹿児島、大分、高知等の過疎県で、いずれも若年層が流出して老令人口比率の高い県である。これに対し、千葉県、埼玉県が最も病床利用率が低くなつているのは、人口急増地域であるため、流入人口が若年層であることにより老令人口比率が低いことに起因している。特に、市原市は、千葉県内でも老令人口が少なく、右の病床利用率の低さから考えても、現状の医療供給体制に付加して、帝京大学附属病院のような大規模病院を巨額な公金を支出してまで誘致する緊急の必要性はない。 (二) 外部から大規模病院を誘致せず、既に存する市民病院を拡充強化すること、あるいは地元医師会の経営による病院を建設することなど、公費負担の少ない代替案も十分考えられるところであり、加えて市原市内の千葉労災病院、県立鶴舞病院等、隣接市である千葉市内の千葉大学医学部附属病院の効率的利用を図るなどすれば、十分市原市民の医療需要に対応する体制の整備は可能である。 (三) 他方、巨額な公金を支出して帝京大学附属病院を誘致しても、学校法人に対しては固定資産税、 医学部附属病院の効率的利用を図るなどすれば、十分市原市民の医療需要に対応する体制の整備は可能である。 (三) 他方、巨額な公金を支出して帝京大学附属病院を誘致しても、学校法人に対しては固定資産税、事業税等は課税されないから、市原市の税収の増加は全く期待できず、わずかに雇用者数の増加が期待できるだけであるから、公金の有効な使用とはいえない。 (四) しかも、市原市は、財政状態が逼迫しており、巨額な公金を支出して帝京大学附属病院の誘致を行うことは地方財政法二条、八条の趣旨に反する著しく不当な公金支出で、違法である。 四本案訴訟の提起と仮処分の必要性 1 債権者A外二名は、昭和五七年一月一四日、債権者D外四名は、同年二月九日、本件公金の支出を未然に防止するため、市原市監査委員に対し地方自治法二四二条一項に基づき住民監査請求を行つたところ、債権者A外二名に対しては同年三月一五日付で、債権者D外四名に対しては同年三月三〇日付で監査請求は理由がない旨の監査結果がそれぞれ通知された。 2 そこで、債権者ら八名は、右監査結果に不服があるので、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づき、債務者を被告として千葉地方裁判所に対し本件公金の支出の差止めを求める訴訟を提起した(千葉地方裁判所昭和五七年(行ウ)第六号事件として係属)。 3 しかしながら、債務者は、右訴訟提起にもかかわらず、本件公金の支出を強行しようとしている。もし、債務者が本件公金の支出をしてしまうと、右訴訟は訴の利益を欠いて訴却下の判決に至らざるをえなくなり、また本件公金支出がなされた後に市原市に生じた損害を回復することは不可能ないし困難である。 五よつて、債権者らは、債務者に対し地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく本件公金の支出の差止めを求める権利を被保全権利として本件公金を支出してはなら 害を回復することは不可能ないし困難である。 五よつて、債権者らは、債務者に対し地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく本件公金の支出の差止めを求める権利を被保全権利として本件公金を支出してはならない旨の仮処分決定を求める。 (申請の理由に対する答弁)一申請の理由一の事実は認める。 二申請の理由二の事実は、次に主張する事実に符合する限度で認め、その余の事実は否認する。 1 千葉県の医療水準は、埼玉県、沖縄県に次いで全国最下位から三番目にあたり、このため久しく住民から医療の充実が要望されていた。千葉県知事は、これに応えるため、市原市を含む県下の市町村に対し昭和四九年九月二〇日付をもつて「地域医療協議会の設置について」と題する依頼文書を発し、これによつて、県下の市町村単位に、市町村の当局者、医師歯科医師代表者、学識経験者、および住民代表の四者構成の医療協議会が設置され、市原市においても市原市医療協議会が発足した。医療過疎県の千葉県にあつて、特に市原市は医療過疎状態にあり、市原市医療協議会は、昭和五三年三月三一日債務者に対しこのような医療過疎を解消する方策として、「昭和五二年度答申書」を提出し、その中で総合病院の設置について、第一案として公私立医科大学附属病院、第二案として公共性のある総合病院を誘致すべきことを答申した。 市原市当局は、右答申に基づいて、首都圏の公共性のある総合病院および一四の私立大学に対し市原市進出の意向を打診したが、前者については諸般の事情で実現せず、後者については進出の意向はあつても市原市において用地を含めて病院を建設して大学に貸付けることや病院の運営費を助成することを要求したりして、結局具体化するに至らず、ようやく昭和五五年八月ころ帝京大学がこれらの大学のうち最も市原市に有利な条件で大学附属病院を設置してよいという 学に貸付けることや病院の運営費を助成することを要求したりして、結局具体化するに至らず、ようやく昭和五五年八月ころ帝京大学がこれらの大学のうち最も市原市に有利な条件で大学附属病院を設置してよいという意向を示した。 そこで、債務者は、市原市医療協議会に対し帝京大学附属病院を誘致することの可否およびこれを誘致して設置することに伴う諸条件等の調査を審議することを依頼した。市原市医療協議会は、昭和五六年二月二七日債務者に対し「帝京大学医学部附属病院の誘致について(答申)」という答申書を提出した。 他方、市原市議会は、昭和五六年三月一一日「帝京大学医学部附属病院の早期誘致に関する決議」を全員一致で可決した。 2 債務者は、市原市医療協議会の右答申書および市原市議会の右決議を受けて、帝京大学と交渉を重ねた結果、昭和五六年一一月一〇日帝京大学との間で「総合病院の新設に関する基本約定書」を締結した。その主な内容は、帝京大学は、昭和六〇年五月大学附属病院として内科ほか一一の診療科目を有する総合病院を設置し、特別施設として二四時間体制の救急センター、人工透析等を設けるとともに、定員四〇名の高等看護学院を付置すること、市原市は、債権者主張のような負担(申請の理由二2記載の負担)をすることである。 3 市原市は、右基本約定書に基づいて、姉崎地区において約六万五〇〇〇平方メートルの土地を取得して、これを帝京大学に対し病院用地として無償譲渡することとなり、初年度である昭和五七年度予算に一二億一三二二万七〇〇〇円を計上し、用地の取得、造成等の費用に充てることとなつた。 三申請の理由三の主張は争う。 1 申請の理由三1の主張は争う。 私立大学は公の支配に属するものであり、債務者が私立大学である帝京大学に対しその附属病院を誘致するため用地を提供し、附帯工事を施工することは違憲 理由三の主張は争う。 1 申請の理由三1の主張は争う。 私立大学は公の支配に属するものであり、債務者が私立大学である帝京大学に対しその附属病院を誘致するため用地を提供し、附帯工事を施工することは違憲ではない。私立学校振興助成法の助成に関する規定が憲法八九条に違反するというのであれば、長年私立大学に対して行われてきた多額の補助金は違憲違法であるという由々しい結果となる。債権者らの主張は、学校教育法、私立学校法等に基づいて私立学校に対する所轄庁による規制が設けられていない時期における私立学校に対する公的助成については適合する余地がありうるにしても、現行法の下では適合しないものである。 2 申請の理由三2の主張は争う。 3 申謂の理由三3の主張は争う。 (一) 私立学校に対する公的助成は教育振興の目的に限定されるべきであるとの債権者らの主張は争う。本件公金の支出の根拠および目的は、私立学校振興助成法一〇条に基づく助成、すなわち教育振興目的と地方自治法二三二条の二の規定に基づく補助、すなわち医療過疎対策として地域医療振興目的の双方であり、両者の関係については、一方が主で他方が従という関係にはなく、密接不可分の関係にあるものである。 (二) 私立学校に対する公的助成は所轄庁のみが行うことができ、市原市が所轄庁でなく従つてなんら監督権を有しない帝京大学に対し助成を行うことは違法であるとの債権者らの主張は争う。所轄庁は、自ら行つたものでない助成について、私立学校振興助成法一二条、一三条に定める所轄庁としての監督権を行使することができると解すべきである。 (三) 私立学校に対する公的助成は経常的経費についてのみ行われることを原則としており、本件公金の支出のような資本的助成はできないとの債権者らの主張は争う。私立学校振興助成法は、四条で私立学校に対し教育ま 私立学校に対する公的助成は経常的経費についてのみ行われることを原則としており、本件公金の支出のような資本的助成はできないとの債権者らの主張は争う。私立学校振興助成法は、四条で私立学校に対し教育または研究にかかる経常的経費について公的補助をすることができる旨定めるほか、一〇条で広く国または地方公共団体は学校法人に対し補助金を支出し、または通常の条件よりも有利な条件で、貸付金をし、その他の財産を譲渡し、もしくは貸付けることができる旨を定めているのであつて、本件公金の支出は同法一〇条の沿革および文理に照らし適法である。 4 申請の理由三4の主張は争う。 5 申請の理由三5の主張は争う。 四申請の理由四の事実に対し 1 申請の理由四1の事実は認める。 2 申請の理由四2の事実は認める。 3 申請の理由四3は争う。 (債務者の主張)債権者が債務者に対し差止めを求めている本件公金の支出は予算の支出行為であるが、予算の支出行為は純然たる行政行為であるから、行政事件訴訟法四四条の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事訴訟法による仮処分をすることができない。」という規定に照らし、本件仮処分申請は不適法である。 (債権者らの反論)本件公金の支出は、行政処分でもなく、また公権力の行使に当たる行為でもないから、本件仮処分申請は行政事件訴訟法四四条に触れるところはなく、適法である。 第三証拠(省略)○ 理由一債権者らがいずれも市原市の住民であることは当事者間に争いがない。 二本件公金支出の決定に至るまでの経緯原本の存在および成立に争いのない疎甲第五号証の一、二、成立に争いのない疎乙第五ないし第一二号証、証人Eの証言、ならびに弁論の全趣旨によれば、次の事実を一応認めることができ、この認定に反する証拠はない。 1 千葉県の医療水準は、人 疎甲第五号証の一、二、成立に争いのない疎乙第五ないし第一二号証、証人Eの証言、ならびに弁論の全趣旨によれば、次の事実を一応認めることができ、この認定に反する証拠はない。 1 千葉県の医療水準は、人口に対する医師数についてみる限り、全国都道府県のうち最下位から三番目にあたる。すなわち、昭和五五年一二月現在の人口一〇万人当たりの医師数は、全国平均一二七・三人であるのに対し、埼玉県七七・六人、沖縄県七八・八人であり、次いで千葉県八三・九人となつている。このため、千葉県は人口に対する医師数の少なさから医療過疎県であるとされ、住民からも医師数の増加という意味での医療の充実が要求されていた。千葉県は、これに応えるため、市原市を含む県下の市町村に対し保健所単位に地域医療を確保するための各種の問題を検討解決することを目的として市町村の行政当局者、医師歯科医師代表者、学識経験者および住民代表の四者から構成される地域医療協議会を設置するよう指導し、市原市にもこれによつて市原市医療協議会が発足した。 市原市は、千葉県内にあつても、医療過疎地域に属し、人口一〇万人当たりの医師数は全国平均一二七・三人、千葉県八三・九人であるのに対し、市原市は六二・八人であり、人口一〇万人当たりの病院一般病床数は全国平均七六五・九床、千葉県四六〇床で、市原市は五〇〇・九床(県内二六市のうち一四位)、一般診療所病床数は全国平均二四六・二床、千葉県一四五・六床であるのに対し、市原市は一一六床(県内二六市のうち二二位)である。市原市では、特に皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科の分野での専門医が極端に少なく、医師数一三六人のうち右の分野の専門医について保健所届出数でみると、いずれも一名ないし三名にすぎない。 2 市原市医療協議会は、市原市の右のような医療過疎状態を解消する方策として昭和五 極端に少なく、医師数一三六人のうち右の分野の専門医について保健所届出数でみると、いずれも一名ないし三名にすぎない。 2 市原市医療協議会は、市原市の右のような医療過疎状態を解消する方策として昭和五三年三月三一日債務者に対し「昭和五二年度答申書」を提出し、その中で、「医療体制の将来構想について」と題したうえ、基本的な考え方としては市民願望の総合病院を誘致することを前提に検討すべきであり、総合病院としては第一案は公私立医科大学附属病院、第二案は公共性のある総合病院を誘致すべきであるとし、誘致の方法としては「関係機関に強力にアプローチする必要がある。市は早急にこの方針を、基本計画に組入れ行政市民一体のプロジエクトチームを編成し、土地先行取得、など受入れ態勢を具体化し積極的に取組むべきである。」との意見を述べた。そこで、市原市は、環境衛生部などが中心となつて、総合病院の設置について改めて協議検討し、まず、市立による総合病院については医療スタツフを充足させることが困難であるほか、全国の地方自治体の運営する病院の例をみると、医療費用が医療収益をはるかに上回り、毎年巨額の経常的な赤字が出ており、市原市が総合病院を直接運営することは財政負担が著しく、不相当であるという結論になつた。次に、総合病院を誘致することにしてどのような病院を誘致するかについて検討し、第一順位としては国公立医科大学の附属病院、第二順位としては私立医科大学の附属病院、第三順位としては公共性のある総合病院ということになつた。市原市は、第一順位の国公立医科大学の附属病院の誘致については、昭和五四年一〇月ころ国、その他関係官庁に照会したところ、国公立医科大学の附属病院はもはや不拡大方針であるということであつたので、これを断念した。次に、二、三の私立大学と折衝したところ、私立大学から大学の 年一〇月ころ国、その他関係官庁に照会したところ、国公立医科大学の附属病院はもはや不拡大方針であるということであつたので、これを断念した。次に、二、三の私立大学と折衝したところ、私立大学から大学の財政難から誘致を受けるについてなんらかの助成して欲しい旨要望され、市原市は、この段階で私立大学の附属病院を誘致するにはそれ相当の財政的負担が必要であるという認識に立ち、昭和五五年三月市原市医療協議会に諮り、病院の規模を約四〇〇床と想定し、その敷地を約五万平方メートルとし、その用地の提供、造成、上下水道の設備等を図ることなど市原市としての誘致条件を設定した。市原市は、右の誘致条件に基づき、首都圏内の各私立大学に当たつて市原市進出の意向を打診したが、右の誘致条件のほか一定期間の病院運営費の助成を求めたり、病院の建設も市原市が建築したうえそれを貸与することを求めたりしたため、妥結に至らず、わずかに帝京大学だけが市原市の右誘致条件に最も近い条件で市原市に附属病院を設置してよいという意向を示した。 3 そこで、債務者は、市原市医療協議会に対し帝京大学附属病院を誘致することの可否およびこれを誘致し設置することに伴う諸条件等の調査を依頼した。市原市医療協議会は、これを受けて昭和五六年二月二七日債務者に対し「帝京大学医学部附属病院の誘致について(答申)」と題する答申書を提出し、その中で、結論として帝京大学附属病院を「誘致することはやむをえない」としたうえで、地域医療との具体的協調策および帝京大学が不履行の場合の担保責任の二点について慎重に検討対処することを要望した。 他方市原市議会は、昭和五六年三月一一日「帝京大学医学部附属病院の早期誘致に関する決議」を可決した(この点は当事者間に争いがない。)が、右可決は全員一致でなされた。右決議の内容は、「医療施設の充実は 他方市原市議会は、昭和五六年三月一一日「帝京大学医学部附属病院の早期誘致に関する決議」を可決した(この点は当事者間に争いがない。)が、右可決は全員一致でなされた。右決議の内容は、「医療施設の充実は二二万市原市民にとつて、長年の切なる願望であり現下における市政の最大課題であることは明瞭である。よつて、医療協議会の答申にそつて地域医療との具体的協調策を推進し、帝京大学医学部附属病院を誘致するよう要請する。」というものであつた。 4 債務者は、市原市医療協議会の右答申書および市原市議会の右決議を受けて、帝京大学と交渉を重ねた結果、病院の規模を五〇〇床とし、高等看護学院を設置することにしたことなどにより、市原市の提供する敷地が五万平方メートルから約六万五〇〇〇平方メートルに変つたほかは、ほぼ市原市の設定した前記誘致条件で折り合いがつき、昭和五六年一一月一〇日帝京大学との間で「総合病院の新設に関する基本約定書」を締結した。 右基本約定書によつて市原市が負担する主な債務内容は債権者が申請の理由二2で主張するとおりであり(右基本約定書締結の点とこの点は当事者間に争いがない。)、帝京大学が負担する主な債務内容は債務者が申請の理由に対する答弁二2で主張するとおりであるが、基本約定書のその他の条項で重要な点は次のとおりである。 (一) 目的について、市原市の市民に対する高度の医療の供給および地域医療水準の向上をめざし、あわせて医学教育の振興に寄与することを目的とすることが一応うたわれていること(二) 帝京大学は、市原市に別に提出した「帝京大学医学部附属市原病院計画書」に従つて病院を建設し、管理運営することになつており、右計画書は病院進出の目的、病院の規模、診療科目および科別の病床数、医療スタツフ、医療機器、特別施設その他につき具体的かつ詳細に記載されてお 書」に従つて病院を建設し、管理運営することになつており、右計画書は病院進出の目的、病院の規模、診療科目および科別の病床数、医療スタツフ、医療機器、特別施設その他につき具体的かつ詳細に記載されており、かつ右計画書に変更の必要が生じたときは、市原市と帝京大学とは協議することになつていること(三) 土地の提供は市原市が無償でこれを行い、病院およびこれに付属する医療施設等の建設はすべて帝京大学がこれを行うものとするが、右土地の譲渡の時期については、帝京大学が病院を完成し、診療を開始した(診療の開始は昭和六〇年五月一日を目途とする旨約定されている。)後に、土地の譲渡を行うものとし、登記手続もこの時点で行うこと(四) 帝京大学は、市原市から譲り受けた土地を所有権移転登記後一〇年間は第三者に譲渡することができず、または他の目的に使用することはできないこと(五) 帝京大学がその責に帰すべき事由によつて病院建設を遅滞したときは、市原市はこの基本約定を解除し、かつそれによる損害賠償を請求することができること 5 市原市は、右基本約定書に基づいて、姉崎地区において約六万五〇〇〇平方メートルの土地を取得して、これを帝京大学に対し病院用地として無償譲渡することとなり、初年度である昭和五七年度予算に一二億一三二二万七〇〇〇円を計上し(予算に右金額を計上したことは当事者間に争いがない。)、用地の取得、造成等の費用に充てることになつた。債務者は、右用地の取得、造成等に必要な予算の議決、その契約締結のための議決、土地の無償譲渡のための議決の各手続について一部はこれを既に履践し、その余は今後の事務の進捗に応じてこれを履践することになつている。 三本件公金支出の根拠成立に争いのない疎甲第一ないし第三号証、証人Eの証言、ならびに弁論の全趣旨によれば、市原市には私立学 践し、その余は今後の事務の進捗に応じてこれを履践することになつている。 三本件公金支出の根拠成立に争いのない疎甲第一ないし第三号証、証人Eの証言、ならびに弁論の全趣旨によれば、市原市には私立学校に対する助成措置を規律している条例、規則はなく、帝京大学に対する本件公金の支出は、私立学校振興助成法一〇条および地方自治法二三二条の二の双方に根拠を置くものであることを一応認めることができるが、前項認定の事実関係によれば、市原市の主観的意図としてはもちろんのこと客観的にみても、本件公金の支出は、その目的および根拠については、地方自治法二三二条の二に基づき市原市の地域医療の振興目的のためになされるもので、帝京大学に対する助成を行い、これにより教育振興を図るという目的は極めて附随的でしかないことを推察することができる。 四本件仮処分申請の適法性について債務者は、本件仮処分申請は行政事件訴訟法四四条に違反し、不適法である旨主張するが、本件公金の支出は、帝京大学に対し病院敷地として無償提供する土地についてその取得、造成等のため土地所有者と売買契約を結んでその売買代金を支払い、土地造成業者と土地造成工事の請負契約を結んでその請負代金を支払うなどのためになされるものであるから、純粋な私法的行為であり、行政庁の処分に当たらないことはもとより公権力の行使たる行為にも当たらず、民事訴訟法による仮処分によつて差止めを求めることができる行為であり、債務者の右主張は失当である。 五本件公金支出の違法性の有無について 1 債務者の帝京大学に対する本件公金の支出は、第二、第三項で認定したように、主として市原市という地域の医療振興の目的のために、帝京大学という教育の事業に附帯して医療の事業を行う学校法人に対し行われるものと理解されるところ、私立医科大学が行う附属病院の 項で認定したように、主として市原市という地域の医療振興の目的のために、帝京大学という教育の事業に附帯して医療の事業を行う学校法人に対し行われるものと理解されるところ、私立医科大学が行う附属病院の経営は、確かに医学教育に直結した部分を含むものではあるが、医療機関としての性格をはるかに強く有するものであつて、国または地方公共団体が私立医科大学の附属病院に対しその医療機関としての機能性に着目して医療の振興を図るという公益目的のために補助金を交付することは、憲法八九条後段に抵触するものとはいえない。 従つて、債務者が市原市の医療過疎対策として帝京大学附属病院の医療機関としての機能性に着目して市原市という医療過疎地域の医療需要に応え、医療水準の向上を図るという公益目的を達成するために帝京大学附属病院を誘致して地方自治法二三二条の二に基づき、かつ所定の手続を履んで用地の無償提供等のために公金を支出することは、憲法や、法律になんら違反するものではない。 2 次に、本件公金の支出は、附随的にしろ、帝京大学の行う教育の事業に対する助成という面を有することは否定しえないので、以下この点から本件公金支出の違憲、違法性の有無について判断する。 (一) まず、債権者らは、私立学校は公の支配に属さないから、私立学校である帝京大学に対する公金の支出は憲法八九条後段に違反すると主張する。しかしながら私立学校といえども学校教育法、私立学校法、私立学校振興助成法その他によつて学校の管理運営等につき各種の公的支配が及んでいるのであつて、特定の私立学校の特定の思想・信念・学問を助成する意図を有するような場合はともかく、私立学校に対し支出された公金の使途につき管理支配が及んでいる限りは、私立大学に対する助成が憲法八九条後段に違反するということはできない。 そこで、市原市が帝京大 る意図を有するような場合はともかく、私立学校に対し支出された公金の使途につき管理支配が及んでいる限りは、私立大学に対する助成が憲法八九条後段に違反するということはできない。 そこで、市原市が帝京大学に対し無償提供する病院用地につきその使用処分等に対する市原市による管理支配がどの程度及びうるかについてみるに、第二項4で認定したように、市原市と帝京大学との間で取交された基本約定書によれば、帝京大学は無償提供を受ける病院用地の使用処分等につき同所(二)ないし(五)に掲記された各種の管理支配を受けることを認諾しているのであつて、本件公金の支出は憲法八九条後段にいう公の支配に属さない教育の事業に対する公金の支出に該当するものではない。 (二) 次に債権者らは、私立学校に対する助成が憲法上容認されるとしてもそれは予め設定された一定の基準に基づき、一律的かつ平等に行われなければならないと主張するが、私立学校振興助成法一〇条はそもそも本件公金の支出のような特定の私立学校に対する特定目的のための一回的な助成をも予定しているのであり、憲法上も当該学校法人に対し各種の公的支配が及び、助成によつて提供された財産の使用処分につき管理支配が及んでいる限りは、特定の私立学校に対し特定目的のための一回的な助成を行う場合に、常に法令その他により予め設定された基準に基づき、一律的かつ平等に行われなければならないということはなく、要は助成内容の合理性の有無の問題にすぎず、第二項認定の事実関係に照らして考えるならば、債務者の帝京大学に対する本件公金の支出が特に不合理であるとは認められない。 (三) 債権者は、教育の事業に対し公金の支出を行う場合には、少なくとも教育振興のみを目的とするか、少なくとも教育振興を主たる目的とすることを要し、教育振興以外の目的を主たる目的とすることは ない。 (三) 債権者は、教育の事業に対し公金の支出を行う場合には、少なくとも教育振興のみを目的とするか、少なくとも教育振興を主たる目的とすることを要し、教育振興以外の目的を主たる目的とすることは憲法上許されないと主張するが、右主張は独自の見解に基づくものであつて採用できない。前判示のとおり、本件公金の支出は、教育振興を目的とするほかに、地域医療の振興をも目的とするものであるが、地域医療の振興を目的とする面に関する限り帝京大学の行う医療の事業に対する助成であつて教育の事業に対する助成とはいえず、憲法八九条後段の問題はなんら生じえない。 (四) 債権者らは、市原市は帝京大学の所轄庁でなくなんら監督権を有していないから、帝京大学に対する本件公金の支出は違法であると主張する。 しかしながら、前判示のように、市原市は、帝京大学との間で取交わした基本約定書によつて無償提供する病院用地の使用処分等につき各種の管理支配権限を有している(市原市が帝京大学全体に対する管理監督権を持つことは本件公金支出の目的からいつて不必要かつ不相当である。)ほか、所轄庁である文部省が帝京大学全体に対し必要な監督権を行使しうる以上、市原市が所轄庁としての監督権を有しないからといつて、本件公金の支出が違法となるものではない。 (五) 債権者らは、さらに、私立学校に対する助成は経常的経費に限られ、本件公金支出のような資本形成的な助成は私立学校法、私立学校振興助成法の禁止するところであると主張するが、私立学校振興助成法一〇条の文理に照らし考えるならば、右主張は独自の見解に基づく主張であるといわざるをえず、採用できない。 3 債権者らは、本件公金の支出は、医学部のない私立大学に対する関係、あるいは市原市内の開業医等に対する関係で、憲法一四条の定める平等原則に違反し、違憲であると主張 といわざるをえず、採用できない。 3 債権者らは、本件公金の支出は、医学部のない私立大学に対する関係、あるいは市原市内の開業医等に対する関係で、憲法一四条の定める平等原則に違反し、違憲であると主張するが、債権者らの右主張は本来比較すべきでないものを比較して平等でないというものであり、畢竟独自の見解に基づく主張であつて採用できない。 4 最後に、本件公金の支出は著しく不当であり、違法であるとの債権者らの主張について判断する。 (一) 債権者らは、市原市には帝京大学附属病院のような大規模な病院を誘致する必要性はないと主張して、その理由として市原市は若年者人口が多く、このため病床利用率が低い点を指摘するが、債権者らの指摘するような点が認められるとしても、第二項で認定したように、市原市の医師数が現在総人口に対し不足しているなどの状況があるのであるから、市原市が現在のみならず将来の医療需要を踏まえて大規模な総合病院を誘致することは行政庁としての裁量行為であり、かつ右裁量行為が著しく不合理であるとはいえない。 (二) 次に、債権者らは、外部から大規模病院の誘致をしなくとも、他に代替手段があると主張するが、市原市が現在および将来の医療需要に対処するため外部から大規模病院を誘致するか、それとも既に存する病院を拡充強化すること、あるいは地元医師会経営の病院を新設することなどによつて代替させるかは正に行政庁としての裁量行為であり、しかも第二項で認定した事実から明らかなように、市原市は市民の医療需要に応えるための方策について市原市医療協議会に再度にわたつて意見を求めてその答申に基づき、あるいは市議会の決議に基づき、慎重な手続を経て、外部から大規模病院として帝京大学附属病院を誘致することに決定しており、裁量行為としてなんら不合理性を見出すべき点は存しない。 ( てその答申に基づき、あるいは市議会の決議に基づき、慎重な手続を経て、外部から大規模病院として帝京大学附属病院を誘致することに決定しており、裁量行為としてなんら不合理性を見出すべき点は存しない。 (三) 債権者らは、学校法人に対しては非課税であることから固定資産税、事業税等の税の増収は見込みえず、公金の有効な使用とはいえないと主張するが、本件公金の支出は市原市民の現在および将来の医療需要に応えるためになされるものであつて、そもそも税の増収などを目的とするような企業の誘致ではないのであるから、債権者らの右主張は失当である。 (四) さらに、債権者らは、市原市がその財政困難下において帝京大学附属病院を誘致するために巨額の公金を支出することは地方財政法二条、八条に違反する旨主張するが、第二項で認定した事実から明らかなように、市原市は大規模病院を設置する必要性があると判断した後市原市にとつて最も財政的負担の少ない方法として、市直営の病院とはせず、外部から総合病院を誘致するが、病院用地の無償提供等はするもののその運営費の補助はしないことで、首都圏の数多くの私立医科大学と折衝を重ね、結局において帝京大学附属病院を誘致することに決定するなど、市原市の財政状態を十分考慮して最も有利な方法を選択すべく検討し努力したといえるのであつて、本件公金の支出が地方財政法二条、八条に違反する点はないものということができる。 5 以上判示のとおり、本件公金の支出には違憲性、違法性を認めることができず、かつその疎明に代えて保証を立てさせて仮処分命令を発することも相当ではないから、結局本件公金の支出が違法であることを理由としその差止めを求める債権者らの本件仮処分申請はいずれも理由がなく却下を免れない。 六よつて、債権者らの本件仮処分申請は理由がないのでいずれも却下することと 結局本件公金の支出が違法であることを理由としその差止めを求める債権者らの本件仮処分申請はいずれも理由がなく却下を免れない。 六よつて、債権者らの本件仮処分申請は理由がないのでいずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
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