平成15(ワ)21277 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成18年7月31日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文16,303 文字)

平成18年7月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成15年(ワ)第21277号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成18年5月22日判決主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,平成15年9月1日以降原告の存命中,毎月末日限り24万円を支払え。 被告は,原告に対し,1億1807万7675円及びこれに対する平成15年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告の開設する病院において子宮全摘術を受けたところ,術後に急性肺血栓塞栓症を発症し,そのためにいわゆる植物人間状態となった原告が,術後に致死性の急性肺血栓塞栓症を発症したのは,術前に既に急性肺血栓塞栓症又はその原因となる深部静脈血栓症を発症していたにもかかわらず,担当医師がこれを看過してその治療をしないまま手術をしたからであるなどと主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づいて,逸失利益等の損害の賠償を求めている事案である(第1(請求)の1は医療費相当額の支払請求であり,同2のうち附帯請求は訴状送達日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払請求である。 。)なお,以下では,診療契約上の債務ないし診療上の注意義務のことを,単に 「義務」という。 前提事実(証拠原因により認定した事実については,かっこ書で当該証拠原因を掲記する。その余の事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者等原告は,昭和27年○月○日生の女性であり,平成15年2月7日,その夫であるAを成年後見人とする後見開始の審判を受けた。 被告は,千葉県△△市内に「B大学医学部附属C病院」という名称の病院(いわゆる大学病院。以下「被告病院」 生の女性であり,平成15年2月7日,その夫であるAを成年後見人とする後見開始の審判を受けた。 被告は,千葉県△△市内に「B大学医学部附属C病院」という名称の病院(いわゆる大学病院。以下「被告病院」という)を開設している。平成1。 4年当時,医師であるD(以下「D医師」という)は被告病院産婦人科に。 勤務していた。 (2)被告病院における原告の診療経過ア子宮全摘術に至るまで原告は,平成13年以前から被告病院を受診していたところ,同年8月13日,被告病院産婦人科を受診し,以後,同科において子宮筋腫に対する診療を受けるようになり,平成14年4月20日には子宮内膜試験掻爬術を受けた。 そして,原告は,同年5月25日,被告との間で,子宮筋腫の治療として子宮全摘術を受けることを目的とする診療契約を締結した上,被告病院。 ,,,産婦人科に入院したその時点で原告の年齢は50歳身長は156㎝体重は71㎏であった。原告の担当医はD医師であった。 イ子宮全摘術及びその術後(ア)原告は,平成14年5月28日,被告病院において子宮全摘術を受けた(以下,この手術を「本件手術」という。 。)本件手術は,D医師の執刀により午前11時50分から午後1時25分まで行われたが,急性肺血栓塞栓症の予防のため,術前の麻酔導入時からフロートロンDVT(以下「フロートロン」という)の装着によ。 る間歇的空気圧迫法が施行された。 (イ)原告は,本件手術後,急性肺血栓塞栓症を発症して,同日午後6時8分ころ突然呼吸が停止した。 (ウ)原告は,上記呼吸停止により脳に障害を受け,そのために大脳の機能が失われたいわゆる植物人間状態になって,現在に至っている(現在も被告病院に入院したままである。 。)ウ心電図検査等原告は,本件手術前に,平成14年4月19 に障害を受け,そのために大脳の機能が失われたいわゆる植物人間状態になって,現在に至っている(現在も被告病院に入院したままである。 。)ウ心電図検査等原告は,本件手術前に,平成14年4月19日には骨盤MRI検査を,,,同年5月1日には心電図検査を同月13日には心筋シンチグラム検査を同月23日には心エコー検査をそれぞれ受けた。 なお,原告は,被告病院において,平成13年2月26日,同年8月7日及び平成14年1月26日にもそれぞれ心電図検査を受けていた。 上記計4回の心電図検査に係る心電図が,日付順に乙A第7号証,第8号証第9号証第4号証である以下これらの心電図を日付順に本,,(,,「件心電図1「本件心電図2「本件心電図3「本件心電図4」とい」,」,」,い,併せて「本件各心電図」という。 。)エ被告病院における平成13年8月13日以降の原告の診療経過の概要は,別紙1(診療経過一覧表)のとおりである。 ()(,,,,) 肺血栓塞栓症について甲B9 証人E同F弁論の全趣旨ア肺血栓塞栓症とは,肺動脈が塞栓子により閉塞する疾患であり,全身の静脈系のどこかにできた血栓が塞栓化し肺動脈に移動してこれを閉塞するものである。 肺血栓塞栓症の原因となる血栓の大部分は,下肢をはじめとする深部静脈で生ずる(深部静脈血栓症。このことから,肺血栓塞栓症と深部静脈)血栓症を併せて静脈血栓塞栓症として論じることがある。 肺血栓塞栓症の多くは,塞栓子により肺動脈が閉塞することによって急 性に経過する(急性肺血栓塞栓症)が,塞栓が長期間残存することによって器質化し慢性化することもある(慢性肺血栓塞栓症。 )本件で生じたような短時間で死亡や意識消失といった重篤な状態を生ずる急性肺血栓塞栓症を る(急性肺血栓塞栓症)が,塞栓が長期間残存することによって器質化し慢性化することもある(慢性肺血栓塞栓症。 )本件で生じたような短時間で死亡や意識消失といった重篤な状態を生ずる急性肺血栓塞栓症を,致死性急性肺血栓塞栓症という。 イ急性肺血栓塞栓症では,肺動脈が閉塞することによって,以下のような病態を呈する。 ①肺動脈の血流が遮断されることにより,肺の当該部分において,肺自体の換気は保たれるが,血液中と空気との間での酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)が障害され,低酸素血症が生ずる。 ②肺動脈の血流による栄養及び酸素の供給が絶たれ,肺実質組織の障害。 ,として出血と浮腫が起きるこれによって非可逆的な障害が生じた場合これを肺梗塞という。ただし,肺は肺動脈と気管支動脈の2つの血管系により養われているため,肺血栓塞栓症によって必ずしも肺梗塞を発症するわけではない。 ,。 ③肺動脈の閉塞により機械的に肺血管抵抗が増加し肺高血圧を生ずるその結果,肺動脈に血液を送り出す心臓の右室に負荷がかかり,拡大や壁運動の低下を示す(右心不全。高度な肺高血圧を生じた場合には,)急激な右心不全から低心拍出症候群,末梢循環不全,ショック,失神,最悪の場合は突然死を来す。 (4)術後急性肺血栓塞栓症の予防についてアガイドラインについて(乙B1,弁論の全趣旨)一般に,入院患者については,手術や長期臥床といった要因により静脈,,血栓塞栓症を生じやすく急性肺血栓塞栓症を生ずることが多いことからこれを予防する必要がある。 我が国においては,平成16年2月に,日本婦人科学会を含む多数の学会が参加する肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイ ドライン作成委員会が「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓,症)予防ガイドライン(以下,単に「 人科学会を含む多数の学会が参加する肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイ ドライン作成委員会が「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓,症)予防ガイドライン(以下,単に「ガイドライン」という)を作成」。 した(そのダイジェスト版が乙B第1号証である。その記載内容を一。)部抜粋すると,以下のとおりである。 (ア)注意点及び対象となる患者①本ガイドラインは,作成当時で入手可能な限りの日本人のデータを収集して,それに基づいて策定したものであるが,現存する日本人に関するデータはいまだランダム化された試験がほとんどなく,データの信頼性も自ずと低いものとなるため,欧米のガイドラインのように十分なエビデンスに基づいたものではなく,静脈血栓塞栓症の予防を考慮する際の1つの指針に過ぎないことを十分念頭に置く必要がある。 ②本ガイドラインは,主に日本人の成人(18歳以上)の入院患者を対象とした静脈血栓塞栓症の一次予防を目的に策定されており,既に静脈血栓塞栓症が認められる場合の二次予防に関しては言及していない。 (イ)ガイドラインの実施方法aリスクレベル,(),ガイドラインでは疾患や手術処置のリスクレベルを低リスク中リスク,高リスク,最高リスクの4段階に分類し,各々に対応する予防法を推奨した(別紙2の1。対象患者の最終的なリスクレベル)は,疾患や手術(処置)そのもののリスクの強さに,付加的な危険因子(別紙2の2)を加味して,総合的にリスクの程度を決定する。例えば,強い付加的な危険因子を持つ場合には,それだけでリスクレベルを一段階上げるべきであり,弱い危険因子の場合でも複数個重なればリスクレベルを上げることを考慮する。 b予防法の種類及び実施方法別紙2の3のとおり。 (ウ)婦人科手術におけ けでリスクレベルを一段階上げるべきであり,弱い危険因子の場合でも複数個重なればリスクレベルを上げることを考慮する。 b予防法の種類及び実施方法別紙2の3のとおり。 (ウ)婦人科手術における静脈血栓塞栓症の予防法別紙2の4のとおり(なお,原則として一般外科手術のリスク分類及び予防法に準ずるとしているが,これは別紙2の5のとおり。 。)イフロートロンの使用について(甲B8)フロートロンの説明書には,禁忌事項として「すでに深部静脈血栓症,に罹患している患者」が掲げられている。 原告の主張(1)本件手術後に致死性急性肺血栓塞栓症を発症した機序ア(第1次的主張)原告は,本件手術前の平成14年5月初めころ既に急性肺血栓塞栓症を発症していたところ,これと本件手術が行われたことにより発生した血栓とが結合して肺動脈の3分の2以上が閉塞する致死性急性肺血栓塞栓症を発症したものである。 本件手術前の平成14年5月初めころ既に急性肺血栓塞栓症を発症していたことは,次の諸点からして明らかである。 ①本件心電図4(平成14年5月1日)においてV1ないしV4の陰性T波が出現しており,これは,急性肺血栓塞栓症発症後の典型的な心電図である。 なお,本件心電図1ないし3においてもV1ないしV3の陰性T波が出現しており,これらは,その当時においても急性肺血栓塞栓症を発症していたことを示している。そもそも,急性肺血栓塞栓症は繰り返し発症して悪化していく疾患であり,致死性急性肺血栓塞栓症のほとんどは急性肺血栓塞栓症が反復した結果によるものである。 ②原告は,次のような事情があったことから,肺血栓塞栓症のリスクが 高く,ガイドラインにいう最高ランクに該当していた。 a50歳であって,子宮筋腫ができる年齢としては高齢であった。 b身長156㎝に対 は,次のような事情があったことから,肺血栓塞栓症のリスクが 高く,ガイドラインにいう最高ランクに該当していた。 a50歳であって,子宮筋腫ができる年齢としては高齢であった。 b身長156㎝に対し体重71㎏と肥満であった。 c数回の手術歴があり,本件手術前の平成14年4月20日には子宮内膜試験掻爬術を受けていた。 dホルモン補充療法を受けていた。 ③本件のように手術終了時から4時間35分という短時間で致死性急性肺血栓塞栓症を発症することは,手術が行われたことにより発生した血栓だけによる塞栓ではあり得ず,その血栓と手術前に既に発症していた急性肺血栓塞栓症とが結合したことによるものとしか考えられない。 イ(第2次的主張)仮にそうでないとしても,原告は,本件手術前に深部静脈血栓症を発症しており,これと本件手術が行われたことにより発生した血栓とが結合して肺動脈の3分の2以上が閉塞する致死性急性肺血栓塞栓症を発症したものである。 本件手術前に深部静脈血栓症を発症していたことは,上記アの②及び③の点(ただし,②のうち「肺血栓塞栓症のリスク」を「深部静脈血栓症のリスク」と,③のうち「手術前に既に発症していた急性肺血栓塞栓症」を「手術前に既に発症していた深部静脈血栓症」とそれぞれ読み替える)。 からして明らかである。 (2)義務違反及びこれと結果との因果関係ア(第1次的主張―上記(1)アの場合)被告ないしD医師は,本件手術を行う前において,上記(1)アの①及び②の事実ないし所見を認識していたのであるから,原告が既に急性肺血栓塞栓症を発症しているものと診断し(その診断は,本件心電図4の所見だけからでも容易にできる,あるいは,少なくとも,そのことを疑っ。) て胸部造影CT検査を行うことによりその診断をして,その治療(ヘパリン,プラスミノ と診断し(その診断は,本件心電図4の所見だけからでも容易にできる,あるいは,少なくとも,そのことを疑っ。) て胸部造影CT検査を行うことによりその診断をして,その治療(ヘパリン,プラスミノゲンアクチベータ等の血栓溶解薬による血栓の溶解等)をしておくべき義務を負っていた。 しかるに,被告ないしD医師は,上記義務を怠り,そのまま本件手術を行った。 上記義務が尽くされていれば,原告は,本件のような致死性急性肺血栓塞栓症を発症することはなく,植物人間状態になることもなかった。 イ(第2次的主張―上記(1)イの場合)既に深部静脈血栓症を発症している患者にフロートロンを使用することは禁忌である。 被告ないしD医師は,本件手術を行う前において,上記(1)アの②の点(ただし「肺血栓塞栓症のリスク」を「深部静脈血栓症のリスク」と,読み替える)を認識していたのであるから,原告が既に深部静脈血栓症。 を発症していることを疑って,Dダイマー(血液検査)又は血管エコー等の検査を行うことによりその診断をした上,その治療(ヘパリン,プラス),ミノゲンアクチベータ等の血栓溶解薬による血栓の溶解等をしておくか少なくとも,本件手術の際にフロートロンの使用を避けるべき義務を負っていた。 しかるに,被告ないしD医師は,上記義務を怠り,そのまま,しかもフロートロンを使用した上で,本件手術を行った。 上記義務が尽くされていれば,原告は,本件のような致死性急性肺血栓塞栓症を発症することはなく(フロートロンについてみると,その使用が深部静脈血栓症の血栓を血管から剥離させて肺動脈へと至らせた,植。)物人間状態になることもなかった。 (3)損害ア逸失利益7814万2298円 原告は,千葉県△△市の職員として勤務し,平成13年には年748万8750円の給与を支 へと至らせた,植。)物人間状態になることもなかった。 (3)損害ア逸失利益7814万2298円 原告は,千葉県△△市の職員として勤務し,平成13年には年748万8750円の給与を支給されていたところ,本件で植物人間状態になったことにより,労働能力を完全に失った。ただし,平成17年8月までは,同市職員の共済組合から給与の8割を支給された。したがって,原告の逸失利益は,次の①ないし④の合計額である。 ①平成17年8月まで1178万3022円実際に勤務していれば受給していたであろう給与と実際に受給した給与(8割)との差額②平成17年8月から60歳(定年)まで4399万1164円748万8750円×5.8743③60歳から67歳まで1269万1930円279万8600円×(10.4094-5.8743)④退職金967万6182円イ過去の治療費263万7067円ウ将来の医療費平成15年9月から月額24万円を要する。 エ慰謝料a後遺障害慰謝料2800万円b入院慰謝料963万円オ控除額1033万7675円国民年金の障害基礎年金として,平成17年8月から月額99万3100円が支給される。そこで,次の数式による1033万7675円を控除する。 99万3100円×10.4094カ弁護士費用1000万円 被告の主張 (1)本件手術前に急性肺血栓塞栓症を発症していなかったことは,以下の諸点からして明らかである。 ①本件心電図4について陰性T波は,急性肺血栓塞栓症の場合に限って出現するわけではなく,健康な者の場合でも出現する。 急性肺血栓塞栓症に特徴的な心電図所見はQT延長を伴った陰性T波と頻脈であるところ,本件心電図4では,QT延長も頻脈も認められない。 ②本件各心電図につい けではなく,健康な者の場合でも出現する。 急性肺血栓塞栓症に特徴的な心電図所見はQT延長を伴った陰性T波と頻脈であるところ,本件心電図4では,QT延長も頻脈も認められない。 ②本件各心電図について,,本件各心電図にはいずれも陰性T波が出現しているところこのことはその陰性T波の出現が急性肺血栓塞栓症によるものではないことを示している。その理由は,以下のとおりである。 急性肺血栓塞栓症により出現する陰性T波は,発症から24時間経過後に出現し,早ければ発症の1週間後に,遅くとも発症の4週間後には消失する。そして,本件各心電図の検査は,いずれも肺血栓塞栓症を疑って行われたものではない(肺血栓塞栓症とは無関係な理由で行われたものである。そうすると,仮に原告主張の如く本件各心電図の陰性T波が急性。)肺血栓塞栓症によるものであるとすれば,4回とも,肺血栓塞栓症とは無関係に心電図検査を行ったところ,たまたま,急性肺血栓塞栓症の発症から24時間後で1週間ないし4週間以内の間であったということになるが,このような偶然はおよそ想定することができない(なお,他に2回の人間ドックの時にも陰性T波が出現していたのであるから,なおさら偶然に過ぎる。 。)また,本件各心電図では,QT延長も頻脈も認められない。 さらに,心電図に陰性T波が出現するような急性肺血栓塞栓症は,重症であり(V1ないしV3の陰性T波に加えて胸部誘導全体のST―T異常が見られる場合は,特に重症である,多くは呼吸困難等の自覚症状を。) 伴うところ,本件各心電図にはV1ないしV3の陰性T波に加えて胸部誘導全体のST―T異常が見られるにもかかわらず,本件各心電図の検査の当時,そのような自覚症状はなかった。 しかも,重症の急性肺血栓塞栓症を見過ごすと,次に急性肺血栓塞栓症を発症し T波に加えて胸部誘導全体のST―T異常が見られるにもかかわらず,本件各心電図の検査の当時,そのような自覚症状はなかった。 しかも,重症の急性肺血栓塞栓症を見過ごすと,次に急性肺血栓塞栓症を発症したときには致命的になるといわれるにもかかわらず,仮に原告の主張を前提とすると,重症の急性肺血栓塞栓症を発症した後,致命的になるどころか何ら重篤な症状が出現することもないまま更に3回も急性肺血栓塞栓症を発症したということになる。 ③自覚症状について急性肺血栓塞栓症を発症すると,自覚症状として,呼吸困難が高頻度で認められるし,他に胸痛,咳漱,失神等が認められるが,本件手術前において原告にはそのような自覚症状は全くなかった。 ④心電図検査以外の検査について急性肺血栓塞栓症の場合,心エコー検査で右心負荷の所見が認められるところ,本件の平成14年5月23日の心エコー検査では,右心負荷の所見は認められなかった。 また,本件の同年4月19日の骨盤MRI検査で,下大静脈及び腸骨静脈に深部静脈血栓症の病変は認められなかった。 ⑤急性肺血栓塞栓症発症のリスクについて50歳は高齢ではないし,肥満やエストロゲン治療(原告主張のホルモン補充療法とは,これのことである)は,血栓のリスク要因とはいって。 も,それほど強いものではない。 (2)深部静脈血栓症について原告の肥満及び手術歴(子宮内膜掻爬術)は,深部静脈血栓症のリスク因子でないとはいえないが,それらがない者と比較すればリスクがあるという程度のものである。 本件手術を行うに際し,事前に深部静脈血栓症の有無を確認するためにDダイマーや血管エコー等の検査をしなければならないというまでの義務はない。 第3当裁判所の判断 前記前提事実に証拠(各項に掲げるもの)及び弁論の全趣旨を併せると,以下の事実が認 認するためにDダイマーや血管エコー等の検査をしなければならないというまでの義務はない。 第3当裁判所の判断 前記前提事実に証拠(各項に掲げるもの)及び弁論の全趣旨を併せると,以下の事実が認められる(以下,証人の名は略す。 。)(1)急性肺血栓塞栓症は,以下のような症状及び所見を呈する(甲B7,9ないし12,乙B6,9,証人E,同F,鑑定の結果。 )①臨床症状として,大部分の症例に呼吸困難が生じる。急性肺血栓塞栓症による呼吸困難は,程度が比較的重い。そのほか,失神,胸痛,咳嗽等も見られることがある。 ②心エコー検査においては,右心負荷の所見として,右室拡大,右室壁運動の低下等の所見が見られることが多い。 ③心電図については,胸部誘導においてV1ないしV3の陰性T波を生ずることがある。この所見は,右室負荷の回復期に見られ,発症の概ね1日後に出現し(それまではST上昇が見られる,一般的には1ないし4。)週間後までに消失するとされている。心電図に変化を生ずるような急性肺血栓塞栓症は,かなり重症である。 また,急性期には頻脈になる傾向がある。 (2)本件手術を行う時点において,原告につき以下のような検査結果及び症状等が明らかとなっていた(各項に掲げる証拠。 )ア心電図所見(乙A4,7ないし9,弁論の全趣旨)本件心電図4(平成14年5月1日)ではV1ないしV4の陰性T波が出現し,本件心電図1ないし3ではV1ないしV3の陰性T波が出現していた。 イ心エコー所見(乙A6,13) 平成14年5月23日の心エコー検査では,右室拡大などの右心負荷の所見も認められず,ほぼ正常と判定された。なお,この際,微軽度の肺動脈弁閉鎖不全が認められた。 ウ心筋シンチ所見(乙A5,13)同月13日の心筋シンチグラム検査において,前壁中隔 などの右心負荷の所見も認められず,ほぼ正常と判定された。なお,この際,微軽度の肺動脈弁閉鎖不全が認められた。 ウ心筋シンチ所見(乙A5,13)同月13日の心筋シンチグラム検査において,前壁中隔領域に虚血の所見が認められた。 エ症状(乙A13)原告は,被告病院における同月8日の問診に対し,①胸痛はない,②年に2,3回,夜中の2時から3時ころ,胸が息苦しくなって覚醒し,30,,。 分くらいで治るが寝たままだと苦しい③階段でハアハアすると答えた 本件手術前に急性肺血栓塞栓症を発症していたか否かについて(1)原告は,前記第2の2(原告の主張)の(1)アの①ないし③のような点を根拠に挙げて,原告が本件手術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していた旨主張し,原告側のいわゆる協力医であるE医師も,その意見書(甲B7,12,15)に同旨の意見を記載し,かつ,証人として同旨の証言をしている(以下,このE医師の意見書の意見及び証言を併せて「E意見」という。なお,証拠(甲B9,10,乙B1,9)によれば,E医師は,肺血栓塞栓症について多数の著書及び論文を著しており,ガイドラインの作成にも関与したことが認められる。 。)しかしながら,次項の諸点及び鑑定の結果に照らして,E意見は採用することができない(なお,本件において実施された鑑定は,G大学医学部附属病院のH医師,I大学医学部附属病院のJ医師及びK大学医学部附属病院のL医師を鑑定人とするいわゆるカンファレンス鑑定である。以下,個別の鑑定人の意見をいうときは,例えば「H鑑定意見」というようにいうこととする。 。)(2)E意見について ア本件各心電図について()(「」。)ア前記前提事実及び上記1の認定事実以下前提事実等というに証拠(乙A4,7ないし9,鑑定の結 する。 。)(2)E意見について ア本件各心電図について()(「」。)ア前記前提事実及び上記1の認定事実以下前提事実等というに証拠(乙A4,7ないし9,鑑定の結果)を併せると,本件各心電図は,いずれもV1ないしV3(本件心電図4ではV1ないしV4)の陰性T波が出現していて,ほぼ同様の波形であると認められるところ,E意見は,本件各心電図はいずれも上記のような陰性T波が出現していることからして急性肺血栓塞栓症の発症を示すものであると言う。 (),,(,,),イしかしながらまず 証拠 乙B6 鑑定の結果によれば陰性T波(V1ないしV3の陰性T波あるいはV1ないしV4の陰性T波を含む)は,急性肺血栓塞栓症の場合に限って出現するわけではな。 く,健康な成人の場合でも出現することがあり,V1ないしV3(あるいはV1ないしV4)の陰性T波が出現しているからといって,それだけで直ちに急性肺血栓塞栓症の発症をいうことはできないと認められる。 かえって,証拠(乙B6,7,鑑定の結果)によれば,急性肺血栓塞,(()栓症の場合に出現する陰性T波にはQT延長補正QT時間QTc>0.44秒)を伴うことが多いと認められるところ,証拠(乙A4,7ないし9,鑑定の結果)によれば,本件心電図1ないし4では,QTcが順に0.402秒,0.402秒,0.404秒,0.415秒であって,いずれもQT延長を伴わないことが認められる。なお,乙A3号証によれば,本件手術後に急性肺血栓塞栓症を発症した後の平成14年5月30日の原告の心電図では,QTcが0.493秒であって,QT延長を伴うことが認められ,原告において急性肺血栓塞栓症を発症した際にQT延長が生じない体質ではないことが窺われる。 また,前記のと 年5月30日の原告の心電図では,QTcが0.493秒であって,QT延長を伴うことが認められ,原告において急性肺血栓塞栓症を発症した際にQT延長が生じない体質ではないことが窺われる。 また,前記のとおり,急性肺血栓塞栓症の発症の際には頻脈になる傾向があるところ,証拠(乙A4,7ないし9,B6,鑑定の結果)によ れば,本件心電図1ないし4では,心拍数が順に毎秒61回,52回,56回,47回であって,いずれも頻脈ではなく,本件心電図2ないし4においてはむしろ洞性徐脈であることが認められる。 (ウ)そして,本件各心電図の陰性T波がいずれも急性肺血栓塞栓症によるものであるというE意見を前提にすると,以下のとおり,不自然ないし不合理であって,自然かつ合理的に説明できない点が生ずる。 a前記のとおり,急性肺血栓塞栓症により出現する陰性T波は,発症の概ね1日後に出現し,一般には1週間ないし4週間後までに消失するとされているところ,証拠(乙A1,13,18,19,B10,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,本件各心電図の検査は,いずれも肺血栓塞栓症を疑って行われたものではない(肺血栓塞栓症とは無関係な理由で行われたものである)ことが認められる。 。 そうすると,E意見を前提にすれば,平成13年2月から平成14年5月1日までの間に,肺血栓塞栓症とは無関係な理由で計4回の心電図検査を行ったところ,たまたま,4回とも,急性肺血栓塞栓症の発症から概ね1日後で1週間ないし4週間以内の間であったということになるが,このような事態は,偶然に過ぎて,容易に想定し難い。 かえって,陰性T波は健康な者の場合にも出現することがあること及び本件各心電図がほぼ同様の波形であることや,本件全証拠を検討してみても原告の心電図に陰性T波が出現しなかったことがあると認めるに足りる えって,陰性T波は健康な者の場合にも出現することがあること及び本件各心電図がほぼ同様の波形であることや,本件全証拠を検討してみても原告の心電図に陰性T波が出現しなかったことがあると認めるに足りる証拠はない(なお,証拠(乙A12,13)によれば,原告は,平成12年と平成13年の2回,人間ドックを受診して心電図検査を受けたことが認められる)ことをも併せ考慮すると,3名の。 鑑定人が揃って指摘するとおり,本件各心電図の陰性T波は,原告に恒常的に認められる所見であるか,あるいは,肺血栓塞栓症とは別の()。 疾患心疾患等によるものとみるほうがより自然かつ合理的である なお,E意見は,急性肺血栓塞栓症による陰性T波は適切な治療をしなければ4週間を超えて持続することもあると言うが,仮にそうであるとしても,その陰性T波がいつまでも持続するというのではないから,その程度の差はあるにしても上記のとおり偶然に過ぎるという点に変わりはない。 b前記のとおり,心電図に陰性T波が出現するような急性肺血栓塞栓症は,かなり重症であって,多くは呼吸困難の自覚症状を伴うのであるし,証拠(証人E,鑑定の結果)によれば,急性肺血栓塞栓症は,これを繰り返すと,重症化するものであり,重症の急性肺血栓塞栓症を見過ごすと,次に急性肺血栓塞栓症を発症したときには致命的になるとさえいわれていることが認められる。 しかして,本件全証拠を検討してみても,本件各心電図の検査が行われた当時,原告に呼吸困難の自覚症状があったと認めるに足りる証拠はなく(本件心電図4の検査が行われた当時のことについては,後記のとおりである,また,証拠(乙A4,7ないし9,鑑定の結。)果)によれば,本件各心電図を日付順に見ると,陰性T波の深さ,QTc及び心拍数等において,特に悪化の傾向は示しておら については,後記のとおりである,また,証拠(乙A4,7ないし9,鑑定の結。)果)によれば,本件各心電図を日付順に見ると,陰性T波の深さ,QTc及び心拍数等において,特に悪化の傾向は示しておらず,ほぼ同様の波形であることが認められる。 ,,,,そうするとE意見を前提にすれば原告は本件手術前において特に呼吸困難の自覚症状や心電図所見の悪化を伴うことなく重症の急性肺血栓塞栓症を4回も繰り返したということになるが,このような事態は,上記知見に照らして,容易に想定し難い(鑑定人3名の意見も同旨である。 。)イ症状等について前記のとおり,急性肺血栓塞栓症では,大部分の症例で比較的程度の重い呼吸困難が生じ,そのほかに失神,胸痛,咳嗽等も見られることがある ところ,原告の場合,本件手術前において,前記1(2)エの②,③のような症状があったことを除くと,上記の呼吸困難等の症状があったと認めるに足りる証拠はない。 そして,前記1(2)エの②,③のような症状についてみると,鑑定の結果によれば,そのような症状は,急性肺血栓塞栓症の場合に見られる典型的な症状である呼吸困難とは必ずしも一致せず,原告が肥満であったことなど急性肺血栓塞栓症とは別の原因から十分に説明がつくものであることが認められる。 なお,前記1(1)②のとおり,急性肺血栓塞栓症を発症した場合,心エコー検査において,右室拡大等の右心負荷の所見が見られることが多いところ,前記1(2)イのとおり,原告について平成14年5月23日に実施された心エコー検査では,右室拡大等の右心負荷の所見は認められなかった。 ウ他の原因の可能性について証拠(乙B7,証人F,鑑定の結果)によれば,陰性T波は,肺血栓塞栓症に特有のものではなく,心筋の虚血等によっても生ずると認められるところ, 所見は認められなかった。 ウ他の原因の可能性について証拠(乙B7,証人F,鑑定の結果)によれば,陰性T波は,肺血栓塞栓症に特有のものではなく,心筋の虚血等によっても生ずると認められるところ,原告の場合,前記1(2)ウのとおり,平成14年5月13日に行われた心筋シンチグラム検査において,前壁中隔領域の虚血の所見が認められたのであるから,本件各心電図上の陰性T波についても,前壁中隔の心筋虚血によるものである可能性もあるといえる(J鑑定意見。 )この点について,E意見は,乙B第7号証の文献を引用して,V1ないしV3の陰性T波でV2がピークになっているものは,急性肺血栓塞栓症の所見であって,心筋の虚血とは考え難いと言う。しかし,鑑定の結果によれば,E意見が言うようにV1ないしV3の陰性T波でV2がピークになっているものは急性肺血栓塞栓症の所見であるとの医学的知見は確立していないことが認められる(なお,J鑑定意見によれば,心臓の向いてい る方向には個人差があることから,前壁中隔の虚血の所見がV3ではなく隣接するV2に現れたとしても必ずしも不自然ではないと認められる。 。)また,上記ア(ウ)aに判示したとおり,本件の陰性T波は,特に疾患によるものではなく,原告に恒常的に認められる所見である可能性もあるといえる。 エ本件においては,術後数時間という短時間で致死性急性肺血栓塞栓症を発症したのであるが,それだけでは,術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していたものと推認することはできない(そのように推認することができるような医学的知見は見当たらない。なお,後記のとおり,術前に深。)部静脈血栓症を発症していた可能性も考えられる。 (3)以上のとおりであって,本件手術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していたというE意見は採用することができず 。なお,後記のとおり,術前に深。)部静脈血栓症を発症していた可能性も考えられる。 (3)以上のとおりであって,本件手術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していたというE意見は採用することができず,他に,本件全証拠を検討してみても,そのような発症があったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件手術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していたことを前提とする原告の第1次的主張は,その余の点について検討するまでもなく理由がないというべきである。 なお,仮に本件手術前に既に急性肺血栓塞栓症を発症していたものであるとしても,上記(2)で検討したところ(ただし,エの点は除く)によれ。 ば,D医師において,本件手術前に,そのような発症を疑うことができたとか疑うべきであったということはできない(鑑定人3名の意見も同旨である。 。) 術前に深部静脈血栓症の有無を確認すべき義務について(1)原告は,前提事実等のとおり,身長156㎝に対し体重71㎏という肥満であったし,本件手術の約1か月前の平成14年4月20日に子宮内膜試験掻爬術を受けており,また,ホルモン補充療法を受けていたのであるところ,前記前提事実(4)アの知見及び鑑定の結果によれば,上記のような 事情が存在した原告については,深部静脈血栓症の発症のリスクがそれなりに存在し,その程度はともかくとして,本件手術前に既に深部静脈血栓症を発症していた可能性もあるものと認められる(なお,50歳という年齢は,「高齢」とはいえず,リスク因子に当たらないと認められる。 。)そして,鑑定の結果によれば,少なくとも現在では,深部静脈血栓症の発症のリスクがそれなりに高い患者に対して本件のような手術を実施するに当たっては,術前に深部静脈血栓症の発症の有無を確認するためにDダイマー(血液検査)や血管エコー くとも現在では,深部静脈血栓症の発症のリスクがそれなりに高い患者に対して本件のような手術を実施するに当たっては,術前に深部静脈血栓症の発症の有無を確認するためにDダイマー(血液検査)や血管エコー等の検査を実施しているという大学病院も存在することが認められる。 (2)しかしながら,ガイドラインを参考にして,上記のように原告に認められる各リスク因子のリスクの程度を検討するに,肥満は弱いリスク因子にしかすぎないし(別紙2の2,手術歴はガイドライン中にリスク因子とし)て掲げられていないぐらいであり,ホルモン補充療法については,L鑑定意,。 見によれば本件で行われたものについてはリスクが強くないと認められるなお,鑑定人3名も,これらのリスク因子を総合しても本件手術は中リスク(本件手術の術式自体(良性疾患の開腹手術)のリスクと同様)とするのであって,上記のリスク因子をそれほど強いものとは考えていないことが認められる。 そして,証拠(乙B6,鑑定の結果)によれば,K大学病院では,平成17年10月から,その当時作成されたマニュアルに基づいて,血栓のリスク,(,が高い患者については術前にDダイマー検査を行うようになったがなお本件のような場合に行われるかどうかは定かでない,I大学病院やG大。)学病院では,現在においても,少なくとも循環器内科においてそのようなマニュアルがないなど,大学病院においてさえ,現在でも,現に深部静脈血栓症の症状が現れているよう場合は別として(L鑑定意見によれば,深部静脈血栓症の症状として,足の腫れ,むくみ,痛み等が出現することがあると認 められるところ,本件では,そのような症状が現れていたと認めるに足りる証拠はない,本件のような場合に術前に深部静脈血栓症の有無を確認す。)るための検査が必ずしも行われてい ることがあると認 められるところ,本件では,そのような症状が現れていたと認めるに足りる証拠はない,本件のような場合に術前に深部静脈血栓症の有無を確認す。)るための検査が必ずしも行われているわけではなく,まして,本件手術が行われた平成14年5月当時においては,本件のような場合に術前に深部静脈血栓症の発症の有無を確認するための検査を行うということは大学病院の医(,()療水準としても確立していなかったことが認められるなお前提事実 のとおり,本件手術は,ガイドライン作成前に実施されたものである。 。)他に,本件全証拠を検討してみても,本件手術当時において,被告病院のような大学病院の医療水準として,本件のような場合に術前に深部静脈血栓症の発症の有無を確認するための検査を行うべきものということが確立していたと認めるに足りる証拠はない。なお,フロートロンの説明書(甲B第8号証)においては「すでに深部静脈血栓症に罹患している患者」には禁忌,とするにとどまり,乙B第1号証においても「使用開始時に深部静脈血栓,症の存在を否定できない場合,すなわち手術後や長期臥床後から装着する場合には,深部静脈血栓症の有無に配慮し十分なインフォームド・コンセントの下に使用して,肺血栓塞栓症の発症に注意を払う」とされており,フロートロンの使用(間歇的空気圧迫法の実施)に当たっては,必ずしも深部静脈血栓症の有無を確認すべきであるとはされていない。 そうすると,被告ないしD医師において,本件手術を実施するに当たり,術前に深部静脈血栓症の発症の有無を確認するための検査を行うべき義務があったということはできない(鑑定人3名の意見も同旨である。 。)(3)したがって,本件手術前に深部静脈血栓症を発症していることを疑って検査をすべきであったことを前提 ための検査を行うべき義務があったということはできない(鑑定人3名の意見も同旨である。 。)(3)したがって,本件手術前に深部静脈血栓症を発症していることを疑って検査をすべきであったことを前提とする原告の第2次的主張は,その余の点について検討するまでもなく理由がないというべきである。 以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部貝阿彌誠裁判長裁判官片野正樹裁判官西田祥平裁判官

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