主文 被告人両名はいずれも無罪。 理由 第1本件各公訴事実等 本件各公訴事実の要旨は次のとおりである。 詐欺被告人aことAは,自ら取締役を務める有限会社U1等の名義で株式会社Wの株主から一株当たり40万円で同社の未公開株(以下「W株」という。)を100株購入した際,その購入資金の融資を受けたC(当時45歳)には一株当たり100万円でこれを購入する旨申し向けるなどして8000万円の融資を受けていたところ,Cから,CのためにW株購入を手配するよう依頼されたことから,これを利用して株式購入代金等名下にCから金員を詐取しようと企て,ア平成13年6月上旬ころから同月15日ころまでの間,数回にわたり,場所不詳から大阪市淀川区(以下略)所在のfビルの株式会社Xe営業所等にいたCに電話をするなどして,Cに対し,真実はWの株主からW株50株を2000万円で購入するのに,その情を秘し,これをU1が6000万円で購入して同一価格でCに譲渡するように装い,「Wの株主から50株を6000万円で売ってもらえることになりました。その株主は50株を6000万円で手放すんですよ。ですから僕にその50株の中から手数料として15株ください。僕が買うからCさんも割安で買えるんじゃないですか。U1がそのWの株主から購入した上でCさんに譲渡することにします。」旨嘘を言い,Cをしてその旨誤信させ,よって,同月18日,同区(以下略)所在の株式会社g銀行h支店のC名義の預金口座から東京都新宿区(以下略)所在の株式会社i銀行j支店の被告人A名義の預金口座に,前記W株代金として6000万円を振込入金させ, イ同年6月27日ころから同月28日ころまでの間,場所不詳から同市淀川区(以下略)所在のk602号室の当時のC方にいたCに電話し,さらに,同市北区(以下略)所在 て6000万円を振込入金させ, イ同年6月27日ころから同月28日ころまでの間,場所不詳から同市淀川区(以下略)所在のk602号室の当時のC方にいたCに電話し,さらに,同市北区(以下略)所在のlホテルにおいて,Cに対し,真実はWの株主からW株100株を4000万円で購入するのに,その情を秘し,これをU1が1億2000万円で購入して同一価格でCに譲渡するように装い,「Wの株主から100株を1億2000万円で売ってもらえることになりました。僕がU1の名前でこの前と同じように買うことにしますから。」,「僕に手数料として2000万円ください。Wの株主が売却するそのままの金額でCさんに譲渡するんですから,僕には1円も入らないんです。それに,僕はそのWの株主にいろいろとしてあげているんです。お金も使ってるんですよ。1000万円分は借入れ分の減額でいいですけど,半分の1000万円は現金でください。」旨嘘を言い,Cをしてその旨誤信させ,よって,同年7月2日,前記C名義の預金口座から前記被告人A名義の預金口座に前記W株代金として1億2000万円を,同年10月1日,同様に前記手数料として1000万円を,それぞれ振込入金させ,ウ同年7月10日ころから同月13日ころまでの間,数回にわたり,前記C方にいたCに電話するなどして,Cに対し,真実はWの株主からW株150株を6000万円で購入するのに,その情を秘し,これをU1が1億8000万円で購入して同一価格でCに譲渡するように装い,「Wの株主から150株を1億8000万円で譲ってくれることになりました。今回もU1の名前で買いますから。」,「Cさん,1億8000万円分割で支払うことでどうですか。もう150株は売ってもらえることになっているんですから。前回みたいに僕に手数料2000万円ください。僕には儲け U1の名前で買いますから。」,「Cさん,1億8000万円分割で支払うことでどうですか。もう150株は売ってもらえることになっているんですから。前回みたいに僕に手数料2000万円ください。僕には儲けがないんですから。僕の借入れ分を減額することでいいです。」旨嘘を言い,Cをしてその旨誤信させ,よって,前記C名義の預金口座から前記被告人A名義の預金口座に,同月25日8000万円,同年8月31日50 00万円,同年10月1日5000万円の合計1億8000万円を前記W株代金として振込入金させ,もって,人を欺いて財物を交付させた。 恐喝未遂被告人Aは,C(当時50歳)から株式代金の返還及び貸付金の返済等合計約4億円を請求されていたものであるが,被告人A及び同Bは,分離前相被告人E1及び同E2と共謀の上,Cに1000万円を支払うことで,その余の支払いを免れようと企て,平成18年6月7日午後6時ころから同日午後6時30分ころまでの間,大阪市天王寺区(以下略)所在のmホテル2階ラウンジにおいて,E2が,Cに対し,「今日署名せなんだらE1やBに連れて行かれるで。そうなったら,わしにはもう止められへんで。」などと申し向け,E1が,Cに対し,「おい,どないするんじゃ。」と語気鋭く申し向けて,その生命,身体等に危害を加えかねない気勢を示してCを畏怖させて,Cをして,「Cが被告人Aに対して有していた貸付金の残債権の元本1700万円につき,被告人AがCに1000万円を支払うことにより,その残債権700万円の請求を放棄し,CのW株取得に関し,Cは被告人Aに対する請求権はなく,前記1000万円の支払いにより,Cと被告人A間に債権・債務関係のないことを確認する。」旨記載された確認書と題する書面の「住所,甲」欄に「C」等と記載させた上,「C」と刻した印鑑を押捺させ 権はなく,前記1000万円の支払いにより,Cと被告人A間に債権・債務関係のないことを確認する。」旨記載された確認書と題する書面の「住所,甲」欄に「C」等と記載させた上,「C」と刻した印鑑を押捺させ,Cをして前記各請求を断念させて,財産上不法の利益を得ようとしたが,Cが前記書面への署名・押捺後も,被告人Aに対する上記各請求を断念することがなかったためその目的を遂げなかった。 検察官は,証人C,同J弁護士,同E2らの各公判供述は信用できるなどとして,被告人らによる本件各公訴事実記載の犯行はその証明が十分である旨主張する。 これに対し,被告人Aは,本件詐欺については,Cに対し,Wの代表取締役 であるFからW株を一株40万円で購入することは伝えていた,前記1アないしウにあるような文言を言ったことはないし,手数料を要求したこともなく,金銭を騙し取ろうとしたことはないなどと供述し,本件恐喝未遂についても,そもそも恐喝未遂の対象となる債権はなく,被告人Bらと共謀したこともないなどと述べており,被告人Aの弁護人も,これを前提に,被告人Aは本件各公訴事実について無罪である旨主張する。また,被告人Bは,本件恐喝未遂について,恐喝の共謀をしたことも恐喝行為をしたこともない旨述べており,被告人Bの弁護人も,これを前提に,被告人Bは無罪である旨主張する。そこで,以下,順次検討する。 第2被告人Aに対する詐欺の公訴事実について 前提となる事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 Cは,平成6年ころ,知人を介して被告人Aと知り合い,交際が始まった。 被告人Aは,本件当時,U1の取締役を務め,また,有効に成立していない実体のない会社である有限会社U2の代表者名も使用していた。 Wは,医療施設経営のコンサルティング等を業務内容とする株式会社で,株式の 人Aは,本件当時,U1の取締役を務め,また,有効に成立していない実体のない会社である有限会社U2の代表者名も使用していた。 Wは,医療施設経営のコンサルティング等を業務内容とする株式会社で,株式の譲渡については,取締役会の承認を条件とする株式譲渡制限に関する規定が設けられていた。Wには,一時は株式上場の話もあったが,資本参加していた商社の撤退等から資金繰りがつかなくなり,平成13年秋に民事再生手続開始の申立てがなされ,平成14年7月18日,再生手続廃止の決定がなされた。Fは,本件当時Wの代表取締役であった。 平成13年ころ,被告人Aは,W株を購入したいと考え,Cに対し,5000万円の融資を申し込んだ。Cは,平成6年ころ被告人Aに貸し付けた5000万円について,まだ約1500万円が返済されていなかったことから,これを差し引いて,その残額を交付するなどと返答した。被告人Aは,約1500万円が差し引かれるとW株購入資金が不足してしまうことから,最終 的に合計8000万円の融資をCに申し込んだ。その際,被告人Aは,Wの事業内容や,W株が将来高騰する見込みがあることについてCに説明をした。 被告人A及びCは,Cが被告人Aに金8000万円を貸し渡し,このうち5000万円については,全額を平成13年2月26日に,残る3000万円については,被告人AがCに対して負っている債務の残額を差し引き,その残額を同年3月15日までにそれぞれ振り込むこと,利息は年6分の割合とすること,添付の「合意書」の約定について合意することなどが記載された同年2月23日付け金銭消費貸借契約証書を取り交わした。「合意書」には,被告人A及びU1が,購買するW株のうち5株を手数料としてCに無償で譲渡すること,被告人Aの財産をCに譲渡する旨の遺言書を作成すること,期限までに返済がな 借契約証書を取り交わした。「合意書」には,被告人A及びU1が,購買するW株のうち5株を手数料としてCに無償で譲渡すること,被告人Aの財産をCに譲渡する旨の遺言書を作成すること,期限までに返済がない場合は,W株50株,被告人Aの所有する株式会社Vの株式(以下「V株」という。)200株並びに被告人A及びU1が所有する土地建物の所有権をCに移転すること,債務返済完了までの間はその所有権を他に移転したりしないことなどが記載されていた。 被告人Aは,同年3月2日,その所有するV株200株,W株50株,被告人A名義の預貯金及び所有する現金全てをCに遺贈する旨の遺言公正証書を作成した。 Cは,同年2月26日に5000万円を,同年3月19日に約1500万円を被告人A名義の銀行預金口座に振込送金し,被告人Aは,同年2月27日,Fから,U1及びU2名義でW株を一株40万円でそれぞれ50株ずつ購入した。 そして,Cは,上記融資依頼を受けた後,被告人Aに対し,C自身もW株を購入したい旨伝え,被告人Aに対し,W株購入の手配を依頼した。 平成13年6月ころ,被告人Aは,Cに対し,W株を購入できることになったと告げ,U1名義で被告人Aが購入したW株のうち35株を代金6000万円でCに譲渡することを約した。そこで,同月15日,Cは,その旨の 株式譲渡契約書を作成して被告人Aに送付し,被告人AとCは,株券番号3B0091号から同3B0095号(合計50株)のW株のうち35株を,U1がCに6000万円で譲渡すること,上記50株のうち5株を,前記の8000万円の金銭消費貸借契約の手数料として,U1がCに無償で譲渡すること,W株の名義変更が期限内になされなかった場合,U1が消滅した場合又は被告人Aが死亡した場合には,V株200株,W株100株(本件譲渡金で被告人Aが購入 の手数料として,U1がCに無償で譲渡すること,W株の名義変更が期限内になされなかった場合,U1が消滅した場合又は被告人Aが死亡した場合には,V株200株,W株100株(本件譲渡金で被告人Aが購入しなければならない50株を含む)並びにU1及び被告人A名義の土地建物をCに名義変更すること,本件契約書はU1が新たにW株50株を購入することを条件とすること,同条件に反した場合には,被告人A及びU1が金1億円をCに支払うことなどが記載された同月18日付け株式譲渡契約書を取り交わした。 Cは,同月18日,6000万円を被告人A名義の銀行預金口座に振込送金し,被告人Aは,同月20日,Fから,U1名義及びU2名義でW株を一株40万円でそれぞれ50株ずつ購入し,合計4000万円を支払った。 続いて,被告人Aは,平成13年6月27日,Cに対し,U1名義で購入するW株100株を代金1億2000万円で譲渡することを約し,同日付け株式譲渡契約書を取り交わした。同契約書には,期限内に株券番号3B0091号から3B0094号の40株を含むW株合計140株をC又はCの会社名義に変更すること,期限内に名義変更がなかった場合,U1が消滅した場合又は被告人Aが死亡した場合には,V株200株,W株200株(本件譲渡金でU1が購入しなければならない100株を含む),U1及び被告人A名義の全ての土地建物をCに名義変更すること,本件契約書はU1が新たにW株100株を購入することを条件とすること,同条件に反した場合,被告人A及びU1は,金2億円をCに支払うことなどがワープロで記載されており,また,Cが,本件株式譲渡の手数料として,同年8月末日までに被告人Aに1000万円を支払い,Cが被告人Aに対して有している貸金債権か ら1000万円を差し引くことと,W株の代金額については,手 り,また,Cが,本件株式譲渡の手数料として,同年8月末日までに被告人Aに1000万円を支払い,Cが被告人Aに対して有している貸金債権か ら1000万円を差し引くことと,W株の代金額については,手書きで記載されていた。 Cは,同年7月2日,W株代金1億2000万円を,同年10月1日,手数料1000万円をそれぞれ被告人A名義の銀行預金口座に振込送金し,被告人Aは,同年7月3日,Fから,U1名義及びU2名義でW株を一株40万円でそれぞれ100株ずつ購入し,代金合計8000万円を支払った。 さらに,被告人Aは,平成13年7月25日,Cに対し,W株150株を代金1億8000万円で譲渡することを約し,同日付け株式譲渡契約書が取り交わされた。同契約書には,期限内にW株290株をC名義に変更すること,期限内の名義変更がなかった場合,U1が消滅した場合又は被告人Aが死亡した場合には,V株200株,W350株(本件譲渡金でU1が購入しなければならない150株を含む)並びにU1及び被告人A名義の土地建物の所有権をCに移転すること,本件契約書はU1が新たにW株150株を購入することを条件とすること,同条件に反した場合,被告人A及びU1は,金2億円をCに支払うこと,Cは,被告人Aに対し,手数料として,Cが被告人Aに対して有している貸金債権から2000万円を差し引くこと,「本件株式(W株)が上場後,丙(C)が株券を保有している間に丙が乙(被告人A)に渡した株式譲渡金及び手数料の計4億円の元金額を株価が下回った場合,平成13年6月18日より,年利30%計算の利息を付け,4億円を元金返済決定後2年以内に返済することを甲(U1)と乙は,丙に約束する」こと(以下この部分の条項を「損失補てん条項」という。)などが記載されていた。 また,Cは,平成13年8月27日,被告 4億円を元金返済決定後2年以内に返済することを甲(U1)と乙は,丙に約束する」こと(以下この部分の条項を「損失補てん条項」という。)などが記載されていた。 また,Cは,平成13年8月27日,被告人Aとの間で,同日付け「株式譲渡合意書及び金銭貸借契約書」と題する書面を交わし,被告人Aに「融資金返済早見表」(元金50,000,000円とするもの)を交付した。 「株式譲渡合意書及び金銭貸借契約書」には,同年7月25日付け株式譲渡 契約書記載の譲渡金については,同日に8000万円,同年8月31日までに5000万円,同年10月1日までに6000万円をCが被告人Aに振り込むこと,同年8月末日までにCが被告人AにW株譲渡の手数料として1000万円を支払うこと,被告人AがCから同年2月23日に借り受けた8000万円の借用金から,W株譲渡の手数料として1000万円を差し引くこと,上記8000万円の借用金については,W株譲渡の手数料合計3000万円を元本から差し引いた上,同年9月末日から被告人Aが支払いをする旨合意したこと,この合意書は同年7月25日付け株式譲渡契約書記載の条項を補足するものであることなどが記載され,また,添付された返済早見表には,年利6パーセントの割合で利息が付された返済予定が記載されていた。 Cは,同月25日に8000万円,同年8月31日に5000万円,同年10月1日に6000万円(前記の手数料1000万円を含む)を被告人A名義の銀行預金口座に振込送金し,被告人Aは,同年7月27日,Fから,U1名義でW株150株を6000万円で譲り受けた。 前記のW株購入後,被告人Aは,Fに依頼して,FがCにW株290株を一株100万円で売却した旨の株式譲渡契約書及び手数料1億2000万円の領収証を作成してもらい,これをCに交付した。 Cの 。 前記のW株購入後,被告人Aは,Fに依頼して,FがCにW株290株を一株100万円で売却した旨の株式譲渡契約書及び手数料1億2000万円の領収証を作成してもらい,これをCに交付した。 Cの供述についてCは,被告人AがFからW株を一株40万円で購入することは聞かされていなかったなどとして,当公判廷において,大要,以下のとおり公訴事実に沿う供述をしている。 ア平成13年ころ,被告人Aから,借金を一本化したいので5000万円貸してほしいと頼まれた。当時,平成6年に貸し付けた5000万円の残金約1500万円の清算が残っていた。そこで,「保証人,若しくは担保を出してくれ。」と求めたところ,被告人Aから所有する土地建物の登記簿等を見せられたが,担保にはなりそうになかった。 イまた,被告人Aは,「Wという医療関連の未公開株を買いたい。一株100万を50株購入したい。」と話していた。被告人Aからは,Wについて,「高齢者用の介護付マンション運営や病院運営とか,これからの高齢化社会に向けて,ものすごく時代に合った医療関連の株である。」などという説明を受け,Wに関する新聞,雑誌,ビデオ等の資料ももらった。 被告人Aは,W株について,「人から金を借りて買う株がだめなわけないじゃないですか。上場しないわけないじゃないですか。上場すればヤフー以上の株値になる。」などと言っており,そのような被告人Aの説明から,W株が値上がりすることは間違いなく,一株2000万円くらいにはなると思っていた。 ウ未返済の約1500万円の清算が条件であると伝えると,被告人Aは,「清算をすると株を購入できない。もう3000万円出してくれ。計8000万円貸してくれ。」などと答え,8000万円出してくれれば毎月100万円ずつ返せるというようなことも言っていた。被告人Aが,「 「清算をすると株を購入できない。もう3000万円出してくれ。計8000万円貸してくれ。」などと答え,8000万円出してくれれば毎月100万円ずつ返せるというようなことも言っていた。被告人Aが,「融資にあたってV株を200株担保に出す。W株3株を譲渡する。」と言うので,「それだったら5株出せよ。」と言って,W株5株を謝礼として譲り受ける約束をした。また,遺言書の作成も条件とした。 同年2月26日に5000万円を送金すると,被告人Aから,株を購入したという報告があり,W株50株分の株券のコピーがファックスで送られてきた。 エ同年4月から5月にかけて,大阪に来た被告人Aから,「この株はものすごく人気があって,WのF社長は,経団連の会長が来ても会わないで逃げている。優良な会社の会長,社長クラスがW株を購入に訪れている。それでFは,最近は会社で誰にも会わないようにしている。」などと言われ,日経新聞の資料,切り抜き,説明会の通知書等を見せられた。そこで,「(W株を)購入するんであればどうすればいいの。」と尋ねると,被告 人Aが,「F社長からはもう売ってもらえない。持っている人から譲り受けるということなら可能性がある。」と言ったので,他の株主から購入できないか当たってくれるよう頼んだ。 オ同年6月に入ってから,被告人Aから,「Yの(社長)夫人から,50株を6000万円で売ってもらうことで了解が取れました。」と聞かされた。高いと思ったが,被告人Aからは,「こういうものは手放す方の言い値なんです。上場して一株3000万円以上になるようなものですから,一株120万円は高くないんです。手放す人なんてもういない。」などと言われた。そして,被告人Aは,「自分は手数料とかゼロなんだから株をくださいよ。夫人から幾らかもらえるとかそういうものじゃなくて, 一株120万円は高くないんです。手放す人なんてもういない。」などと言われた。そして,被告人Aは,「自分は手数料とかゼロなんだから株をくださいよ。夫人から幾らかもらえるとかそういうものじゃなくて,僕はただ働きになるから,15株分礼金としてちょうだい。」と言っていた。 カ同年6月下旬ころ,被告人Aから,「今度は,Wの取締役から譲り受けることになった。100株を1億2000万円で購入できる。」などと聞かされた。この時も「それは手放す人の言い値だ。」と言われた。 それで,購入金額や手数料について記載していない株式譲渡契約書を作成して,被告人Aに会い,もう一度価格交渉してほしいと頼んだが,結局駄目だった。被告人Aからは,「手数料をもらっていないんだから,僕には現金2000万円ちょうだい。」などと言われ,「8000万円を人から借りてて,2000万円を現金でくれ。それ,行儀悪いだろう。8000万円の中から引いてくださいというのが当たり前だろう。」と答えると,被告人Aが,「じゃあ1000万円でいいから現金でちょうだい。あとの1000万円は8000万円から引いてください。」と言ったので,その場で株式譲渡契約書に購入金額と手数料を支払う旨を手書きで記載した。 キ同年7月中旬,被告人Aから,再び「同じWの取締役のメンバーからW株150株を1億8000万円で買えることになった。」と言われた。この話はいったん断ったが,被告人Aからは,「Cさんが最後に150株を 買ってくれれば僕の点数が上がる。Wは,近くWリースという新会社を作る。Cさんがあと150株買ってくれたら僕は(その新会社の)創業メンバーに入り込める。芸能界みたいな浮き沈みの激しい業界にはへきえきしてます。僕は,創業メンバーとして創業手当をもらってやっていきたいんです。Cさん,お願いだから最後 たら僕は(その新会社の)創業メンバーに入り込める。芸能界みたいな浮き沈みの激しい業界にはへきえきしてます。僕は,創業メンバーとして創業手当をもらってやっていきたいんです。Cさん,お願いだから最後だから買ってくれ。」などと重ねて言われた。 その後も,翌日の午前零時ころから6時ころまで,被告人Aから携帯電話や自宅に執拗に電話があり,寝られなかったので,最終的に電話に出て「分割ならどうなんだ。」と答えた。被告人Aは,この時も「自分は一円も手数料をもらえない。だから2000万円ちょうだい。」と言っており,結局,8000万円の貸金から2000万円を差し引くこととして契約書を交わすことにした。 ク同年7月末以降に,東京の白金台にある飲食店nで,W株150株の代金のうち,未払い分についての支払時期を決めた。その際,被告人Aから,手数料1000万円が未払いであると言われ,「株式譲渡合意書及び金銭貸借契約書」に平成13年10月1日分支払金額として印字してあった「金五千万円」の「五」という数字を,手書きで「六」と書き換えた。 平成13年ころにnを訪れたのはこの1回だけであり,その際,被告人A以外の人物と同席したり,W株の話をしたりしたことはなかった。 ケ同年11月,被告人Aから,「FがCさんと直接契約したいと言ってるから,これまでの株式譲渡契約書を全部持ってきてくれ。」などと言われた。しかし,相談したK弁護士からも契約書の返還については反対され,契約書は返還することはできない旨の答弁書を同弁護士の名義で作成して被告人Aに送付した。 被告人Aから渡されたFとの間の株式譲渡契約書には,一株100万円と記載されていたことから,既に支払った株式代金との差額を返還してく れるように言うと,被告人Aは,「この7000万円はWの取締役のG1やG2らの手数料だ 間の株式譲渡契約書には,一株100万円と記載されていたことから,既に支払った株式代金との差額を返還してく れるように言うと,被告人Aは,「この7000万円はWの取締役のG1やG2らの手数料だ。」と言い,7000万円は返してもらえなかった。 被告人Aに「言い値というのは手数料を含めての言い値だろう。これは3億6000万円で返ってくるのが当たり前じゃないのか。手数料が別だというのはちょっとおかしいんじゃないか。」と言うと,被告人Aは,「あくまでもそれは譲り渡してくれた人の手数料だ。新たに買うわけじゃないから,交換しただけのことだ。」との返答であった。そこで,7000万円の領収証と被告人Aの手数料4000万円の領収証を交付するよう求めると,約2か月後,1億2000万円の領収証が届いた。金額が合わないと思ったが,多い分には構わないと思った。 コなお,その当時,被告人Aからは,U2の存在について聞かされたことはなかった。 Cの公判供述の信用性について,以下検討する。 アCは,被告人Aから融資の依頼を受けた際の状況,W株購入の手配を依頼した経緯及び被告人Aとの各契約締結に至る交渉状況,Fとの間の契約書が作成された経緯等について,具体的かつ詳細な供述をしており,前記の前提となる事実に照らしても,特に矛盾するところはない。 そして,被告人AがU1名義でのみW株を購入する旨説明していたとする点,W株の購入を被告人Aから強く持ちかけられたとする点,被告人Aとの契約締結に至る経緯や被告人Aに手数料の交付等を約束した状況について述べている部分は,いずれも前記のCと被告人A及びU1間の株式譲渡契約書等の記載と整合するところがある。 また,上記各株式譲渡契約書には,W株の名義変更についての期限の定めや,その違約罰,被告人Aの死亡等の場合におけるW株の扱いな Cと被告人A及びU1間の株式譲渡契約書等の記載と整合するところがある。 また,上記各株式譲渡契約書には,W株の名義変更についての期限の定めや,その違約罰,被告人Aの死亡等の場合におけるW株の扱いなどについて記載されており,このような記載からは,Cが,当初からW株を確実に取得することに執着していたことがうかがわれる。しかるに,平成13 年6月18日付け株式譲渡契約書には,前記違約罰等によって譲渡するW株として,被告人AがU1名義で購入したW株50株についてのみ株券番号が示されているほか,同年6月18日付け,同月27日付け及び同年7月25日付け各株式譲渡契約書には,いずれもU1が新たに指定した株数を購入することを条件とする旨が記載されている。各契約当時,被告人AはU2名義でもW株を購入していたのであり,CがU2名義での購入を知っていたとすれば,W株を確実に取得することに執着していたCが,各株式譲渡契約書において,U2名義で購入したW株の扱いについて一切触れていないというのはいささか不自然である。したがって,前記各株式譲渡契約書の記載は,被告人AがU2名義でW株を購入していたことは知らなかった旨のC供述と整合するものといえる。 さらに,Cの,被告人Aにまだ手数料1000万円を払ってもらっていないと言われ,「株式譲渡合意書及び金銭貸借契約書」に印字された「五」の文字を「六」と手書きで書き換えた旨の供述は,平成13年8月27日付け「株式譲渡合意書及び金銭貸借契約書」に同年10月1日分支払金額として印字してあった「金五千万円」の「五」という文字に右下がりの斜線が引かれ,その左下に手書きの文字で「六」と記載されていることと符合している。 このように,Cの供述は,株式譲渡契約書の記載等の客観的証拠に相当程度整合する内容となっている。 イこの 下がりの斜線が引かれ,その左下に手書きの文字で「六」と記載されていることと符合している。 このように,Cの供述は,株式譲渡契約書の記載等の客観的証拠に相当程度整合する内容となっている。 イこの点に関して,被告人Aの弁護人は,①被告人Aに8000万円を融資した際にCが聞いたという被告人Aの借入金の使途からすれば,融資金額は約6500万円となるはずであり,Cの供述は被告人Aに8000万円を融資した事実と矛盾する,②被告人Aから,金融会社の社長夫人あるいはWの取締役らからW株を購入する旨説明されたとする点は,被告人Aにおいて購入先について虚偽を述べる必然性がない上,容易に虚偽である ことが露見する事柄であり,不自然である,③FとCとの間の株式譲渡契約書及びW名義の領収書の作成経緯についての供述は,同契約書及び領収書記載の株式価格及び手数料の額が合計4億1000万円となっており,Cが計算違いのために思い込んでいた合計金額と一致していて不自然であり,株式の取得経費として計上する納税上の利益を有するCの方から作成を求めたと考えるのが自然である,④C及び被告人Aがnで会った経緯についての供述は,Cとnのオーナーに面識がなかったこと,オーナーに会うためにはもっと確実な方法があったことなどからすれば不自然であるなどとして,Cの供述は信用できないと主張する。 しかし,①の点については,被告人Aが,株式購入資金と併せて他の目的でも融資を受けようとして,株式購入費用を上回る金額の借入を申し込むことは特に不自然なことではない。②の点についても,W株の入手が困難であることがCのW株購入への意欲を高める要素となっており,株価は売り主の言い値であると説明していることからすれば,そのような株を入手でき,かつそれなりの株価を提示できる立場の者を入手先として説明 難であることがCのW株購入への意欲を高める要素となっており,株価は売り主の言い値であると説明していることからすれば,そのような株を入手でき,かつそれなりの株価を提示できる立場の者を入手先として説明する方が自然であるから,被告人Aが入手先について虚偽を述べる理由はあり得るように思われる。Cが譲渡主とされる者と面識がないことなどからすれば,虚偽の購入先を述べても直ちに発覚するとは考えられず,被告人Aが購入先について虚偽を述べたとしても特段不自然とはいえない。③の点についても,被告人Aが前記領収書等を作成する際,事前にCに株式価格等を確認したとすれば,領収書等の金額がCが思い込んでいた合計4億1000万円となっていたとしてもおかしくはないし,また,Cに納税上の利益があるとしても,W株を直接Fからは購入できないと聞かされていたというCが,平成13年10月ころになって突然Fとの間の契約書作成を求めたというのは逆に不自然である。④の点についても,Cは,nのオーナーと面識がある被告人Aを介して会話することを考えていたというの であり,また,Cは,オーナーに会う目的のみを有していたものではないことからすれば,C自身がオーナーと面識がなく,より確実に会う方法が他にあったとしても,その供述内容自体はそれほど不自然なものとはいえない。 ウこれらからすると,弁護人らの前記各主張はいずれも直ちには採用することができない。ただし,Cが,nでは被告人A以外の人物と同席したりしたことはなかったと述べる点については,後述するとおり,その信用性には疑義がある。 被告人Aの供述についてこれに対して,被告人Aは,W株を一株40万円でFから購入していたことはCに告げていたとして,当公判廷において,大要,以下のとおり供述している。 ア後にWの取締役になるG3か 告人Aの供述についてこれに対して,被告人Aは,W株を一株40万円でFから購入していたことはCに告げていたとして,当公判廷において,大要,以下のとおり供述している。 ア後にWの取締役になるG3からW株について話を聞き,Fを紹介してもらった。FからもWについて聞き,テレビで評論家と対談しているビデオや雑誌等のインタビュー記事を見せてもらい,W株を売ってほしいと頼んだ。Fが所有するW株100株を,一株40万円で売ってもらえることになり,その購入代金の4000万円と他の用途に充てる1000万円について,平成13年初めころ,Cにその融資を依頼した。 イCからは,その5000万円から以前Cから受けていた融資の未返済分千五,六百万円を差し引くと言われたが,「それでは足りません。よかったら金額を8000万円に,3000万円上乗せしてもらえませんか。」と頼み,最終的に遺言書を作ることなどを条件に8000万円借りることになった。用途を聞かれたので,医療関係の会社の株を購入するというふうに話した。聞いていたとおりに,2年後くらいには上場する予定であることを話した記憶があり,株価についても三,四十倍になるというふうに言われていると告げた可能性はある。その際,一株40万円であることは Cに伝えた。 すると,Cからは,「もっと購入できないのか。」と言われ,「紹介しますから,Cさん,御自分で購入したらいいじゃないですか。」と答えた。 ウその後,Cから,「調べたが,自分で入手するのは困難だから,aちゃんが買ったのを売ってくれ。」などと言われた。その際,Cは,自分が渡していないWの資料やパンフレットを持っており,Wの役員の名前を出して,「その人は持っていないのか。持っていたらとにかく買って欲しい。 半分は購入するから,aちゃん購入するようにがんばってよ。」と 渡していないWの資料やパンフレットを持っており,Wの役員の名前を出して,「その人は持っていないのか。持っていたらとにかく買って欲しい。 半分は購入するから,aちゃん購入するようにがんばってよ。」とも言っていた。初めは売りたくないと言って断ったが,「売ってくれないなら8000万円を引き上げる。3倍で買うから。それだったら損はないじゃないか。」とCから言われ,結局Fに話を持っていった。Fには,何度かお願いをし,株を売ってもらうことができた。 エCからは,また買い足してほしいなどと言われ,全部で3回譲渡契約をしたが,契約書はいつもCが作成してきた。貸しているお金から1000万円引くから,上場した後にフェラーリも付けるからなどとも言われた。 契約書を書くときに,思い付いたようにボールペンで書き足すこともあった。 これを削ってくれとか,こうしてほしいとかは言えなかった。契約書を作るとき,内容の読み合わせに近いことはあったが,Cに不信感は抱いていなかったし,自分自身W株には自信があったので,意識はしていなかった。損失補てん条項についても,上場すると信じていたので,こんなのは問題になることはないだろうと思っていた。どうしてこんな条項を入れてくるのかとも思わなかった。 被告人Aの公判供述の信用性について,以下検討する。 アまず,被告人Aが,Cから,Cが自己名義で購入できないとして,被告人AがU1名義でW株を購入してCに譲渡することを求めてきたなどと述 べている点は,前記各株式譲渡契約書において,Wが株式上場した日から3日以内に指定数のW株をCの名義に変更することや,条件に違反した場合について多額の違約金が定められていることと整合している。 この点,検察官は,被告人Aが,被告人Aを介さずにW株を入手することができなかった旨をCから聞かされ,改めて 更することや,条件に違反した場合について多額の違約金が定められていることと整合している。 この点,検察官は,被告人Aが,被告人Aを介さずにW株を入手することができなかった旨をCから聞かされ,改めてW株を入手するよう頼まれたと供述する点は,他の株主から購入するのであれば,Cが一株120万円より安く入手することは可能なのであるから,この点の被告人Aの供述は不自然である旨主張する。しかし,Wは株式譲渡制限のある株式非公開会社であるから,Cが同社の登記や株式入手の一般的方法等について一応の調査をした結果,被告人Aを介さずに入手することを諦めたという可能性は十分考えられる上,Cにとっては,従前から交際があり,融資もしている被告人Aを介在させることにより,被告人Aに対して責任を追及できるなどの利益も考え得るのであるから,この点の被告人Aの供述が不自然であるとはいえない。 イまた,検察官は,被告人Aが,Cから強くW株購入の手配をするよう依頼され,W株の代金額や手数料の額等についてはCから提示されたと供述する点は,各株式譲渡契約書に,損失補てん条項等の被告人Aにとって著しく不利な条件が記載されていることと整合しない旨主張する。 しかしながら,被告人Aは,遺言書まで作成し,ようやくCから8000万円の融資を受けたばかりであり,それ以前よりCから融資を受けるなどしていたことも考えれば,Cの要求を強く拒むことが難しい立場にあったものということができる。そして,条件の一部については,8000万円の融資を受けた際に既に付されていたもので,格別新たな負担を課すものではない。被告人Aに具体的な不利益が生じるのは,債務不履行,被告人Aの死亡又はU1の消滅,W株の将来価値の見込み違いが生じた場合といった,被告人Aからすればいずれも直ちには想定し難い事態に関するも はない。被告人Aに具体的な不利益が生じるのは,債務不履行,被告人Aの死亡又はU1の消滅,W株の将来価値の見込み違いが生じた場合といった,被告人Aからすればいずれも直ちには想定し難い事態に関するも のであって,被告人Aが損失補てん条項等の自己に不利な条件が付されることについて深刻に受け止めていなかったとしても必ずしも不自然ではない。 平成13年7月25日付け株式譲渡契約書において初めて損失補てん条項が書き加えられた点についても,損失補てん条項を新たに設けたのは,CがW株に大金を投資するものであることから,上場後の株価が自己の出損額を下回った場合に,その損失補てんを被告人Aに求めようとしたものであり,被告人AとCのどちらがW株の譲渡を求めたかということと論理的に結びつくものではない。かえって,Cは,その時点ではW株代金を一括で支払う余裕のない経済状況であったにもかかわらず,分割払いの方法でW株を購入しているのであり,かかる事実は,Cの方がW株購入を強く望んでいたという被告人Aの供述とむしろ整合するものということができる。 ウ次に,検察官は,被告人Aが高額の転売利益や手数料を取得すること自体が不自然であり,被告人Aはその点について説明できていないと主張する。 しかし,被告人AがW株の売却を渋っていたところ,Cから3倍でもいいから売却するように求められたという価格決定の過程についての説明は,そもそも未公開株については取引価格の相場が形成されていないことに加え,被告人A及びCが当時見込んでいたW株の将来価値の大きさ(Cの供述によれば一株2000万円程度)に鑑みれば,一株120万円という譲渡価格が持つ意味は相対的に小さく,それ自体が直ちに不自然な説明であるとはいえないし,転売利益のほかに手数料の取決めをしたことも,Cが,W株の売却に消 0万円程度)に鑑みれば,一株120万円という譲渡価格が持つ意味は相対的に小さく,それ自体が直ちに不自然な説明であるとはいえないし,転売利益のほかに手数料の取決めをしたことも,Cが,W株の売却に消極的な被告人Aに対し,様々な条件を提示して働きかけたものとみれば,必ずしも不合理なものではない。 エ検察官は,平成13年6月27日付け株式譲渡契約書に手書きでW株の 代金及び手数料が記載されていることは,契約内容は一方的にCが決めた旨の被告人Aの供述と整合しない旨主張する。 しかし,同契約書に手書きで記載された事項は,W株の代金と手数料の金額及び支払方法であり,被告人Aが取得する利益はそれらの額に左右されることからすれば,代金額及び手数料の両者が記載されていない契約書が被告人Aとの実質的な交渉がなされる前に作成され,その後に,Cが,手数料等の条件を提示し,被告人Aの了解を得て手書きで書き加えたという可能性は十分に考えられる。W株売却に消極的な被告人Aの気を引くような条件を,Cが契約書署名のその場で新たに付加したということもあり得るように思われ,前記のような手書きの記載があることと,被告人Aの供述とは直ちに矛盾するものではない。 オ検察官は,被告人Aが,手数料については全てCが提案してきたと供述する点は,各株式譲渡契約書等の手数料の記載において,支払い方法等が3回とも異なっていることと整合しないと主張する。 しかし,この点については,Cが,その都度,自己の利益や経済状態等を考慮して異なる申し出をしたとすれば,それ自体特段不自然なことではない。 カ検察官は,被告人Aは,Cに,W株を一株40万円で購入することを伝えていたと供述するが,公正証書及び株式譲渡契約書の記載内容からして,Cなりに貸金等の確実な回収に腐心していたことがうかがえるにもか 検察官は,被告人Aは,Cに,W株を一株40万円で購入することを伝えていたと供述するが,公正証書及び株式譲渡契約書の記載内容からして,Cなりに貸金等の確実な回収に腐心していたことがうかがえるにもかかわらず,Cが,被告人AがW株を一株120万円でCに譲渡した際の差額分から何ら債権回収を図っていないのは不自然であると主張する。 しかし,Cは,公正証書等の記載において,被告人Aらの預貯金及び現金を全て担保としており,W株をCに売ることによって被告人Aが得た差額分も当然この預貯金等には含まれることになる。そして,当該預貯金等については,公正証書等記載の株式や不動産と異なり,その費消・処分に ついて特段の留保が付けられておらず,手数料のうち1000万円についても,何ら留保を付けずに被告人Aに交付されていることなどからすれば,被告人AがW株譲渡によって得る差額については,被告人Aの利得として,その自由な処分に委ねる意思であったと見る余地があり,その処分等を制限する記載がないことはそれほど不自然なことはない。 キこれに対し,前述のとおり,W株を確実に取得することに執着していたと認められるCが,各株式譲渡契約書において,U2名義で購入したW株について一切触れていないというのは,融資金でU1が新たにW株を購入することが株式譲渡契約の条件とされており,それによってW株の確保は図られているとも考えられること,U2は,設立手続が未了で登記されておらず,法人の印鑑証明が得られないことなどを考慮しても,いささか不自然なものといわざるを得ない。 ク以上によれば,被告人Aの供述には,U2名義でのW株の購入に関していささか不自然な点が存在するものの,それは,客観的証拠等に照らして明らかに矛盾し,不合理であるとまではいうことができない程度のものにとどまっており 告人Aの供述には,U2名義でのW株の購入に関していささか不自然な点が存在するものの,それは,客観的証拠等に照らして明らかに矛盾し,不合理であるとまではいうことができない程度のものにとどまっており,それ以外の点においては,被告人Aの供述に基づいて,その視点から各株式譲渡契約書等の記載内容を理解することも可能である。 被告人Aが,全体として客観的証拠と矛盾することのない内容を具体的に供述していることなどからすれば,その供述内容の信用性を直ちに全面的に排斥することは困難である。 Hの供述についてHは,当公判廷において,概要以下のように供述する。 ア約10年くらい前に,nで被告人Aと出会った。当時歯科医をしていたので,一度被告人Aの歯の治療をしたことがあったが,それ以外は,nでたまたま会った際に同席する程度であった。平成12年ころ,nで被告人Aと会った際,被告人Aから,W株について,「すごいいい株がある。4 0万円の株だけど,僕が売るとしたら3倍の120万円で売る。会社はもうその株を持ってなくて,僕の持ってるのを(売る)。」などと言われた。 イ後日,それほどたたない時期に,nで,被告人AからCを紹介され,3人で同席してW株の話をした。それ以外に何の話をしたかは記憶にない。 聞き役という感じで,自分からは余り発言しなかったと思う。その際,CがW株を億単位で買ったという話を聞いた。被告人Aの言っていることを疑うようで,本人がいる前では聞けなかったが,被告人Aが席を外したので,その時に,Cに「40万円の株を120万円で買って,これもうかるんですか。」などと聞くと,Cは,「これ上場したら損はないで。上場したら,これは何十倍にもなるから,これは買った方がいい。」と答えた。 その後,もう1度nで被告人AとCに会ったことがあり,そのときは挨拶をし 。」などと聞くと,Cは,「これ上場したら損はないで。上場したら,これは何十倍にもなるから,これは買った方がいい。」と答えた。 その後,もう1度nで被告人AとCに会ったことがあり,そのときは挨拶をしただけで別の席に着いた。 ウ平成19年6月ころ糖尿病のために目が見えなくなった。被告人Aが逮捕されたことは聞いていたが,自分のことで精一杯だったので,平成20年6月に見舞ってくれた被告人Aから話を聞くまで(本件の)詳しい事情は知らなかった。 このように,Hは,CがW株を購入して間もない時期に,W株を一株40万円で被告人Aが購入していたことを知っていたことをうかがわせるCの言動について供述するものである。以下,その信用性について検討する。 アHは,被告人A及びCからW株の価格について聞いた際の会話内容について具体的に供述しており,その供述内容に特段不自然ないし不合理な点は見受けられない。また,Hは,自己の記憶にないことはその旨率直に供述しており,その供述内容からしても,殊更被告人Aに有利な虚偽の供述をしている様子はうかがえない。 イこれに対し,検察官は,初対面のCと1時間弱も同席し,その間専ら被告人AとCが話をしているのを聞いているだけだったとするH供述は不自 然であると主張する。しかし,Hは,nに一人でいた際に,被告人Aに紹介されて初対面のCと同席したというのであり,わずか1時間足らずという同席時間や,W株が話題になっていたという会話内容等からしても,Hが主に聞き役に回っていたとしても何ら不自然ではない。 ウまた,検察官は,Hは,Cに「40万円の株を120万円で買って,これもうかるんですか。」と聞いた際の会話内容だけを明確に供述する一方,それ以外の会話内容については曖昧な供述をしており,W株の話だけを過度に強調した不自然な供述である 円の株を120万円で買って,これもうかるんですか。」と聞いた際の会話内容だけを明確に供述する一方,それ以外の会話内容については曖昧な供述をしており,W株の話だけを過度に強調した不自然な供述であると主張する。しかし,HがCと話をしたのは七,八年前のことであり,印象的な出来事以外の点について記憶が大きく減退することは十分考えられるところである。 エ検察官は,Hは,Cがいくらで誰からW株を購入したか特段の知識もないのに,Cが一株40万円のところを一株120万円で買っているものと思った旨供述しており,この点も不自然であると主張する。しかし,Hは,Cと会う前に,被告人Aから,W株の価格や,被告人AがW株を手放す際の価格,W株が入手困難であることなどを聞いていたのであるから,Hが,被告人AからCが一株120万円でW株を購入しているものと思い込んでいたとしても不自然なことではない。 オ検察官は,Hは,初対面のCに対し,被告人Aが席を外したときを選んで,「40万円の株を120万円で買って,これもうかるんですか。」などと聞く必要はなく,供述に不自然な作為性が認められると主張する。しかし,Hは,そのような聞き方をした理由について,3倍の値段で購入して利益があるのか疑問に思っていたが,被告人Aの前では聞くことができず,何億円分ものW株を購入したCに,高額の投資をする根拠を被告人Aのいない場で尋ねてみたと説明しているのであって,その供述内容はむしろ自然なものといえる。 カ以上からすれば,Hの供述は,少なくともその核心部分については,直 ちに排斥し難い信用性を有しているものと認められる。そして,Hの供述は,CにW株一株が40万円であることを伝えていたとする被告人Aの供述に符合する一方,平成13年ころにnに行ったのは1回だけであり,被告人A以外の人 性を有しているものと認められる。そして,Hの供述は,CにW株一株が40万円であることを伝えていたとする被告人Aの供述に符合する一方,平成13年ころにnに行ったのは1回だけであり,被告人A以外の人物と同席したことも,W株の話をしたこともなかったとするC供述と相反するものであって,この点に関しては,Cの供述の信用性に疑義がある。 欺罔行為の有無以上によれば,被告人Aが,U1名義で購入したW株をCに譲渡することとし,Fから一株40万円で購入することを秘して,Cに対し,W株の所有者からW株を一株120万円で譲り受けることができること,被告人Aは譲渡主に支払う金額と同一価格でCにW株を譲渡するものであり,この譲渡によって被告人A自身には何の利得もないことから手数料を支払ってほしいことなどを申し向け,Cがその旨誤信したとするCの供述は,それ自体として見れば,客観的証拠ともそれなりに整合しており,一定の信用性が認められるとはいえる。 しかしながら,他方において,Cの供述に反する内容の被告人Aの供述も,その視点から客観的証拠を検討すると,各株式譲渡契約書等の記載内容と基本的に矛盾ないし抵触しないものとなっており,直ちに排斥し難い信用性を有している。これにHの前記供述を加味して考えると,Cの供述に全幅の信頼を寄せることはできず,そうすると,Cの供述どおりの欺罔文言の存在を認めることにはなお合理的疑いが残るものといわざるを得ない。 第3被告人A及び同Bに対する恐喝未遂の公訴事実について前記のとおり,本件恐喝未遂の公訴事実につき,検察官は,被告人AとCとの間には,本件2項恐喝未遂の対象となる債権(以下「前提債権」という。)が存在し,被告人A及び同Bと,E1及びE2との間においては恐喝の共謀が遂げられていた旨主張している。そこで,以下,前提債権及び共 間には,本件2項恐喝未遂の対象となる債権(以下「前提債権」という。)が存在し,被告人A及び同Bと,E1及びE2との間においては恐喝の共謀が遂げられていた旨主張している。そこで,以下,前提債権及び共謀の有無の点を中心に検討する(被告人Bの恐喝の実行行為の点については共謀の有無を論 じる中で言及する。)。 前提債権の有無まず,検察官は,損失補てん条項は,CがW株に関連して被り得るすべての損害を補てんする趣旨のものであり,株式が上場されないままWが倒産した場合にも当然に適用されると主張する。 しかしながら,株式譲渡契約書には「上場後」と明記されていることに加え,W株の値動きがあるのは上場後であると認識していたと述べるC供述からは,被告人AもCも,W株が上場されないまま会社が倒産するなどという事態は想定していなかったことが認められるのであって,上場前に損失が出るということが全く予想されていなかったことからすれば,被告人AとCとの間において上場前にWが倒産した場合も含めた損失補てんについて意思の合致があったと認めることはできない。 次に,検察官は,被告人Aの欺罔行為により株式譲渡契約が締結されているから,Cは詐欺による取消又は法律行為の要素に錯誤があることによる無効に基づき,交付した金員の返還請求権を有していると主張する。 この点について,本件の公判前整理手続において,検察官は,詐欺による取消及び錯誤無効の主張はしておらず,これに対する弁護人らの主張も明示されていなかったものである。検察官が公判段階に至って卒然とこのような主張の追加をすることは,争点及び証拠を整理し,充実した公判審理を遂げるという公判前整理手続制度の趣旨に照らして相当とは解されないところであるが,いずれにしても,被告人Aに詐欺罪が成立しないことは前述のとおりであり,詐 ,争点及び証拠を整理し,充実した公判審理を遂げるという公判前整理手続制度の趣旨に照らして相当とは解されないところであるが,いずれにしても,被告人Aに詐欺罪が成立しないことは前述のとおりであり,詐欺又は錯誤を理由とする株式代金及び手数料の返還請求は認められない。 また,検察官は,Cが平成13年2月23日被告人Aに貸し付けた8000万円の貸金について,利息を約定どおり年6パーセント(月0.5パーセント)とし,平成18年5月末日まで被告人Aから毎月100万円(合計6 300万円)の返済がなされたとすると,同年6月7日時点の未返済額は3569万7892円であったとする計算結果(甲4)に基づき,同額についてCの被告人Aに対する債権が存在していたと主張する。 しかし,Cと被告人Aは,W株譲渡の手数料として,平成13年6月27日に1000万円を,同年7月25日に2000万円をそれぞれ上記貸金の残額から差し引く旨合意しているのであり,前記計算結果はその前提を誤っている。そして,手数料の合計額3000万円及びこれに対するその後の利息相当額を前記計算結果から控除すると,遅くとも平成18年6月7日までに上記貸金は消滅していたものと認められる。この点,検察官は,上記合意はWの倒産により当然にその根拠が失われたというのが当事者の合理的意思というべきであるなどと主張するが,直ちに採用することはできない。 以上からすれば,前提債権の存在は認められず,その存在を前提とする本件2項恐喝罪は成立しないことに帰するが,なお,本件の審理経過に鑑み,以下,恐喝の共謀の有無の点についても当裁判所の判断を示しておくこととする。 共謀の有無関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 アCは,平成15年夏から平成17年初めころまでの間,被告人Aに対し,W株の購入に当たっ いても当裁判所の判断を示しておくこととする。 共謀の有無関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 アCは,平成15年夏から平成17年初めころまでの間,被告人Aに対し,W株の購入に当たって被告人Aに支払った代金及び手数料相当額(以下併せて「本件債権」という。)を返還するよう求める電子メールを繰り返し送信した。 イまた,Cは,L弁護士に本件債権の請求について相談し,L弁護士は,平成15年9月17日,被告人Aに対し,4億1000万円の返還等について相談したい旨を記載した「通知書」を送付した。被告人Aは,L弁護士の事務所を数回訪れるなどしてCからの請求について交渉を重ねた上,M弁護士に対し,Cに1億2000万円を分割払いで支払うことなどを条 件とした和解条項案の作成を依頼し,M弁護士は,平成16年2月27日,和解条項案(覚書)をL弁護士に送信した。 ウところが,Cは,平成17年ころ,Oに本件債権の取立てを依頼し,Oの指示に従って,本件債権をPという人物に対して仮装譲渡するなどした。 エ被告人Aは,同年6月ころ,J弁護士に対し,Cから不当な取立てを受けて困っていると相談し,Cの告訴を検討するなどしていた。その後,J弁護士にCとの和解交渉を依頼したが,J弁護士は,Cとの交渉に関与することには消極的であり,最終的にまとまった和解内容についての書面作成のみを引き受けた。 オJ弁護士は,平成18年4月以降,CがWの株式取得により被った損害について,Cは被告人Aに対し何らの損害賠償請求権がないことを確認する旨等が記載された「確認書」(作成日につき「平成18年4月」と記載され,「日」の欄は空白のもの)3通を作成した。 カJ弁護士は,その後,被告人AがCから融資を受けた8000万円について,既払い分及び「本日現金300万円の支払をした につき「平成18年4月」と記載され,「日」の欄は空白のもの)3通を作成した。 カJ弁護士は,その後,被告人AがCから融資を受けた8000万円について,既払い分及び「本日現金300万円の支払をしたこと」により,その残金額が1400万円となったこと,この1400万円については,被告人Aが毎月100万円分割で支払うこと,CがW株取得により被った損害については,Cは被告人Aに対し何らの損害賠償請求権がないことを確認することなどが記載された「確認書」(作成日につき「平成18年6月」と記載され,「日」の欄は空白のもの)を作成し,被告人Aに送付した。 キJ弁護士は,被告人Aからの電話を受けて,上記「確認書」を修正して,被告人Aが1000万円をCに支払ったこと,Cが本件債権の未返済額を放棄すること,CがW株取得により被った損害については,Cは被告人Aに対し何らの損害賠償請求権がないことを確認することなどを記載した「確認書」を改めて作成し,同月5日,被告人Aに送付した。 クJ弁護士は,同日,被告人Bの使用するファックス番号に,「B様」宛同日付「FAX送信書」を送信した。同送信書には,「d氏からの連絡により,C殿にご用意をお願いしたいものについて,お知らせします。1C殿の実印,2同印鑑証明書,3運転免許証の写し,4金1000万円の領収書」などと記載されていた。 ケ同月7日,Cはmホテル2階ラウンジで上記「確認書」に署名押印した。 その席には,J弁護士のほか,会社経営者のE2,被告人Aの依頼を受けた俳優のdことDが立ち会い,近くの席には被告人Bと暴力団構成員のE1がいた。 コその後,Cは,同人が経営する会社のアルバイト従業員であったQに対し,CがPに仮装譲渡した本件債権をさらにQが譲り受けたように装うよう協力を求め,平成18年6月7日 暴力団構成員のE1がいた。 コその後,Cは,同人が経営する会社のアルバイト従業員であったQに対し,CがPに仮装譲渡した本件債権をさらにQが譲り受けたように装うよう協力を求め,平成18年6月7日付けの確認書は法的に無効である旨が記載されたP名義の同月30日付け書面,QがE2に対して本件債権の回収を委任した旨を記載した同年7月1日付け委任状のほか,PがQに対して本件債権を譲渡した旨の弁護士N作成名義の債権譲渡通知書及び被告人A宛の請求書を作成した。 サそして,Cは,Qに対し,愛知県半田市で行われたジュエリーの展示会にいる被告人Aに上記請求書等の書類を手渡すよう依頼した。Qは,同月2日,Cの知人とともに,上記展示会場に入り,被告人Aに請求書等を手渡した。その後,被告人Bは,Qに対し,被告人Aへの取立てをとがめる電話を掛けた。 シ被告人Aは,妻Rに対し,3700万円を被告人A名義の銀行口座から引き出すよう依頼し,同月4日,Rがその引き出しを行った。そのうち2700万円については,同月6日,被告人Bが受け取った。 ス被告人Aは,同日,「今回の事は,本当に有り難うございました。。。 感謝しています。自分も反省し,こんな失敗を二度と起こさない様にしま す。。。今まで色々嫌な思いをさせてしまったり!誤解をさせてしまったりで。。。不祥な弟分ですけど,末永く宜しくお願い致します。」という内容のメールを被告人Bに送信した。 平成18年6月7日のmホテル2階ラウンジでの状況等そこで,まず,被告人Bの言動を中心に,恐喝の実行行為があったとされるmホテル内での状況について検討する。 アCの供述についてCは,当公判廷において,被告人Bの言動等について,以下のように供述している。 E2から,被告人Aとは5億で話がまとまったと聞かされ,実印等を持って平 の状況について検討する。 アCの供述についてCは,当公判廷において,被告人Bの言動等について,以下のように供述している。 E2から,被告人Aとは5億で話がまとまったと聞かされ,実印等を持って平成18年6月7日午後6時ころmホテル2階ラウンジに行くと,E2とE2の事務所で顔を合わせたことのあるE1がいた。E1には軽く黙礼だけして通り過ぎ,E2とともに移動すると,10年ほど前に金銭上の問題でいさかいのあった被告人Bがいて,その隣(別紙「見取り図」〔別紙は省略〕記載の35という番号の付されたテーブル。〔以下「35番テーブル」といい,同様に同見取図記載の番号に対応するテーブルを「○番テーブル」と呼称する。〕)に座るようE2に促された。 うつむいていると,被告人Bが,私の顔をのぞき込むようにして,「覚えてるか,社長,久しぶりやのう。あのときは社長のおかげで損させられた。その後追い込みかけたか。かけんかったやろう。家行ったか。 行けへんかったやろう。」などとドスの利いた声で言ってきた。被告人Bには,「弁護士とあのとき話し合ったじゃないですか。」などと返答したが,「おれの金じゃ,あれは。」などと言い返された。 その後,E2から別のテーブル(33番テーブル)に座るように言われ,J弁護士の向かいの席に座った。J弁護士の隣にはDが座っており,私の隣にはE2が座った。J弁護士と名刺交換した後,Dから,「Cさ ん久しぶりです。3年前,S2の紹介で電話したdです。」などと言われた。 J弁護士から書類(確認書及び事実経過と題する書面)を渡され,10分以上かけて何度も読み返した。J弁護士に「内容が違う。この内容では聞いてません。サインできません。」などと言うと,J弁護士は,「このとおりで聞いています。」と答えた。また,E2に対しても,「これ違うじゃないです も読み返した。J弁護士に「内容が違う。この内容では聞いてません。サインできません。」などと言うと,J弁護士は,「このとおりで聞いています。」と答えた。また,E2に対しても,「これ違うじゃないですか,全く。」などと言ったが,E2はそっぽを向いたままで答えなかった。 気付くと,E1と被告人Bが立ち上がって私らのいるテーブルの近くに来ており,それぞれ腕組みをして私の方をにらんでいた。 E2に肩をたたかれて別の席(78番テーブル)に移動した。E2に「裏切ったな。何やこれは。」などと言うと,E2は,「Aとは話をしとる。6月23日に3000万円が振り込まれることになっている。C社長の回収で立て替えてる分をE1に借りた。今日1000万円受け取らなかったら,どうやってE1に250万円渡すんや。今日E1に250万円渡さなければE1に連れて行かれる。BもC社長に話があると言っている。」などと言ってきた。 偶然を装って,テーブルに置かれていたろうそくの火で書類を焼き,「書類が焼けたので後日にしてほしい。」と言ったが,E2からは,「今日中に250万円渡さなければE1に連れて行かれるで。Bも話をしたがっている。私はもう知らん。何されるか分からんで。」などと言われ,さらに,E1もそばに来て,「どないするんじゃい。」などと恫喝してきた。 J弁護士のいる席に戻り,書類が燃えた旨をJ弁護士に伝えて後日署名することを申し出たが,J弁護士からは,「Aの確認書に署名捺印頂ければ結構です。」と言われ,結局J弁護士が所持していたもう一通の 確認書に署名押印した。J弁護士とDが席を立った後,被告人Bが来て,「因果応報じゃ。あれはおれの金じゃ。」などと言ってきた。 E1から促され,エスカレーターで1階に降りた。1階の喫煙テーブルで,E2から「250万円出してくれ。」などと言わ 立った後,被告人Bが来て,「因果応報じゃ。あれはおれの金じゃ。」などと言ってきた。 E1から促され,エスカレーターで1階に降りた。1階の喫煙テーブルで,E2から「250万円出してくれ。」などと言われて250万円を渡し,この金はE1に渡された。その後,E2の事務所に行き,E2からは,「Aとは話が付いてる。3000万円振り込まれる。(残りの750万円について)半分よこしてくれるか。今までも社長の立替相当やってるから。」などと言われ,375万円をE2に渡した。 Cは,mホテルでの被告人Bとの会話内容,33番テーブル付近に来た際の被告人B及びE1の様子,33番テーブルから移動した後のE2とのやりとり,確認書に署名した後のE1,E2,被告人B及び自らの言動等について具体的かつ詳細に供述しており,その供述内容には基本的に特段不自然ないし不合理な点はない。 これに関して,被告人Bの弁護人は,Cが確認書に署名押印する前に被告人BがCに話しかけたとする点は,そのような行動が和解に支障をきたす可能性を考えれば不自然である旨主張する。しかしながら,被告人Bが前記のような話をすることによって,Cが確認書等の記載に異議を述べることを躊躇させるなどして和解契約を円滑に締結させるなどの効果も考えられるのであるから,直ちに不自然であるとはいえない。また,Cの供述は,mホテルでの被告人Bの着席位置や,Cが署名等を渋っていると,被告人Bが近くに来てCの方をにらんだことなどについてJ弁護士及びE2の各供述と,E2及びE1から脅迫を受けたと供述する点は,その脅迫内容も含めてE2及びE1(捜査段階)の各供述とそれぞれ合致しており,相互にその信用性を補強し合っている。 以上からすれば,Cの上記供述は基本的に信用することができる。 イJ弁護士の供述について J弁護士は,当 びE1(捜査段階)の各供述とそれぞれ合致しており,相互にその信用性を補強し合っている。 以上からすれば,Cの上記供述は基本的に信用することができる。 イJ弁護士の供述について J弁護士は,当公判廷において,次のように供述している。 平成18年6月7日,mホテルでDと落ち合い,2階のラウンジに行った。Dに被告人Bを紹介され,五,六分話をした後,DからCに支払う現金1000万円の入った紙袋を渡された。Dと並んで33番テーブルに着くと,被告人Bは35番テーブルの奥側に,J弁護士らの方を向いて座った。 一,二分ほど,現金があるかどうか確かめるために下を向くなどしていて,顔を上げると目の前にCとE2が立っていた。Cに名刺を渡して挨拶を交わした後,確認書及び事実経過と題する書面を差し出した。Dは,Cに「お久しぶりです。」などと挨拶していた。Cは,差し出された確認書等を見て,「これは内容が違う。」などと二,三回口にしていた。 そのとき,被告人Bが,Dの横辺りに移動してきて,腰を少し曲げて前屈みになるような体勢でCをにらみつけた。その後,E2がCを促して席を立った。Cが初めに席に着いてからE2と共に席を立つまでの時間は10分程度であった。 CとE2が戻ってくると,Cは,確認書等に納得できないというような表情を見せており,最初に手渡した確認書について,「間違ってろうそくで焼いてしまった。」と言うので,同じ文書を2通作るつもりであったことから,もう一通の確認書を差し出した。Dは,Cに対し,「ここで決めてしまった方がいいんじゃないんですか。」などと言っており,結局,Cは,その場で確認書に署名押印した。 J弁護士は,mホテルにおけるC,E2,被告人B,D及びJ弁護士自身の言動等について具体的かつ詳細な供述をしており,その供述内容に特段不自然ないし不合 ,結局,Cは,その場で確認書に署名押印した。 J弁護士は,mホテルにおけるC,E2,被告人B,D及びJ弁護士自身の言動等について具体的かつ詳細な供述をしており,その供述内容に特段不自然ないし不合理な点はない。 mホテルでの被告人Bの着席位置のほか,Cが署名を渋っていると, 被告人BがDの横に来てCをにらんだこと,その後CとE2が連れ立って席を立ったことについては,C及びE2の各供述並びにE1の捜査段階供述に合致している。J弁護士は,被告人Aが所属していたプロダクションの顧問弁護士であり,被告人Aの依頼によって本件に立ち会っており,その供述内容をみても,殊更被告人らに不利な虚偽供述をしている様子はうかがえない。 以上からすれば,J弁護士の上記供述は信用することができる。 ウE2及びE1の各供述についてE2及びE1も,被告人Bのmホテル内での言動について,C及びJ弁護士の各供述に沿う供述をしている(ただし,E2については公判供述,E1については捜査段階供述)。 すなわち,E2は,「Cを連れて35番テーブルにいた被告人Bのもとに行くと,被告人Bは,Cに対し,『おう久しぶりやな。バングラディッシュにえらい損させられたけど,請求も行っとらんし,家もマンションも行ったことないやろ。』などと言った。」「(その後)被告人Bが,自分から見てDの右付近に,E1が左隣のテーブル付近にそれぞれやって来て,一,二分間,立ってCの方をにらんでいた。」「(Cが署名した後)被告人Bは,少し移動して電話を掛けていた。被告人Bに呼ばれて電話を替わった。被告人Bは,電話を替わる際,『今終わった。 Cは大分びびっとったぞ。E2社長に替わるわ。』などと言っていた。 電話の相手は被告人Aで,『どうも本当にありがとうございました。今度飲みに行きましょうよ。』などと言われた。 替わる際,『今終わった。 Cは大分びびっとったぞ。E2社長に替わるわ。』などと言っていた。 電話の相手は被告人Aで,『どうも本当にありがとうございました。今度飲みに行きましょうよ。』などと言われた。」と述べており,他方,E1は,「mホテル2階ラウンジに行くと,被告人Bがすでに来ており,E2と自分に『予定どおり頼みますわ。もう弁護士が来てますから,Cが来たら連れてきてください。』などと言った。」「Cが書類に署名した後,被告人Bは,ラウンジの端の方に移動して携帯電話で話をしてお り,E2がそこに近付いていき,その電話で話をしていた。その後,C及びE2と一緒に1階のロビーに向かう際,E2が,小声で『今,aと話をした。aはお礼を言ってました。』などと言ってきた。」と述べている。 E2の供述は,J弁護士から確認書等を渡された後のCの言動,Cが33番テーブルに着席した際の被告人Bの着席位置,その後の被告人Bの行動等については,J弁護士の供述と,J弁護士らのいる席に行く前に被告人BにCを引き合わせたことや,その際の被告人Bの言動,Cと二人で席を立って話をした際の状況,Cに申し向けた文言,Cが署名押印した後の被告人Bの言動等については,Cの供述及びE1の捜査段階供述とそれぞれ合致している。 また,E1の捜査段階供述は,mホテルでのE2,被告人B,Cらの言動等について具体的であり,C,E2及びJ弁護士の各供述とそれぞれその基本的部分において合致している。 したがって,E2及びE1の上記各供述も基本的に信用することができる。 なお,E1の公判供述は,上記の捜査段階供述と異なり,質問の大半に対して曖昧な供述に終始しており,mホテルに赴いた経緯等について供述内容も一貫していない。そこには真摯に事実を述べようとする態度はおよそ看取できず,特に被告人Bに不 査段階供述と異なり,質問の大半に対して曖昧な供述に終始しており,mホテルに赴いた経緯等について供述内容も一貫していない。そこには真摯に事実を述べようとする態度はおよそ看取できず,特に被告人Bに不利になり得る事柄について供述を回避しようとする姿勢が顕著にうかがわれる。したがって,E1の公判供述は信用することができない。 エDの供述についてこれに対し,Dは,当公判廷において,「被告人BとE1が近付いてきたことはなかった。」「CとE2が話をしている際,被告人Bは,35番テーブルに座り,テーブルに肘を突いて33番テーブルよりも左側 を向いていた。」「Cらが席を立った後,トイレに行こうとした際,被告人Bからどうしたのか聞かれ,どうなってるんだろうなという趣旨で両手を上に持ってくるようなジェスチャーで答えた。」などと供述している。 しかしながら,Dの供述は,33番テーブルにCが着席するまでの状況や,Cが着席した後の被告人B及びE1の行動について,J弁護士や,C,E2,E1(捜査段階)の各供述と相反するもので,被告人Bの本件への関与を過小なものにしようとする供述といえる。Dの被告人Aらとの交友関係に加え,後述するようにDが被告人Bを本件に関与させる契機を提供していることからすれば,Dが上記のような消極的な供述をする理由は十分にあるように思われ,この点に関するD供述には信用性を認めることができない。 オ被告人Bの供述について被告人Bも,「CとE2が席を立ったので,33番テーブルの近くに行ったが,それまでは同テーブルには近付いていない。自分は,話が終わるタイミングを計るために,35番テーブルの補助いすにCらに顔を見られぬよう背を向けて座っていた。」「Cに声をかけたのは,和解がまとまった後である。」「本件当日,mホテルから被告人Aに電話を が終わるタイミングを計るために,35番テーブルの補助いすにCらに顔を見られぬよう背を向けて座っていた。」「Cに声をかけたのは,和解がまとまった後である。」「本件当日,mホテルから被告人Aに電話を掛けたことはない。」などとして,C供述等に現れたような自らの言動を否定する供述をしている。 しかしながら,被告人Bの供述も,J弁護士や,C,E2,E1(捜査段階)の各供述と相反するもので,信用性に乏しいものといわざるを得ない。 カ以上のとおり信用できるC,J弁護士,E2及びE1(捜査段階)の各供述からすれば,以下の事実が認定できる。 Cは,平成18年6月7日,mホテル2階ラウンジに行くと,E2か ら促され,まず被告人Bのいる35番テーブルに座った。被告人Bは,Cの顔をのぞき込むようにして,「あのときは社長のおかげで損させられた。その後追い込みかけたか。かけんかったやろう。家行ったか。行けへんかったやろう。」などと言った。 その後,Cが,J弁護士らのいる33番テーブルに着き,J弁護士から渡された確認書に署名をしないでいると,被告人B及びE1がCの近くに来て,被告人BはCから見て右前方,E1は左方向にそれぞれ立ち,Cの方をにらんだ。 CとE2が78番テーブルに席を移動した後,E2は,「今日1000万円受け取らなかったら,どうやってE1に250万円渡すんや。今日E1に250万円渡さなければE1に連れて行かれる。BもC社長に話があると言っている。」などと言い,E1もそばに来て,「どないするんじゃい。」などと言った。 被告人Bは,Cが確認書に署名押印し,J弁護士とDが席を立った後,Cの傍に来て,「因果応報じゃ。あれはおれの金じゃ。」などと言った。 被告人Bは,掛けていた電話を,「今終わった。Cは大分びびっとったぞ。E2社長に替わるわ。」などと言っ J弁護士とDが席を立った後,Cの傍に来て,「因果応報じゃ。あれはおれの金じゃ。」などと言った。 被告人Bは,掛けていた電話を,「今終わった。Cは大分びびっとったぞ。E2社長に替わるわ。」などと言ってからE2に渡し,E2は,電話の相手から,「どうも本当にありがとうございました。今度飲みに行きましょうよ。」などと言われた。 本件に至る経緯及び本件後の状況等次に,恐喝の共謀成立の前提となる,本件に至る経緯及び本件後の状況等について,関係者らの供述の信用性を中心に検討する。 アCの供述についてCは,当公判廷において,以下のとおり供述している。 平成15年ころから,被告人Aに対し,W株購入のために支払った代金や手数料相当額として,合計4億円程度の支払いを求めるようになっ た。被告人AとCの共通の知人であるS1,S1を介して知り合ったS2らを介して,被告人Aに支払いを求めた。S2が被告人Aの窓口という人と話していた電話を替わってもらったところ,その電話の相手はDだった。Dから先に経費を出してくれなどと要求されたことから,交渉は断った。 被告人Aに対する債権取立ての交渉をL弁護士に打診したが,「民事訴訟で争った場合1億2000万円くらいになるのではないか。和解を勧められるだろう。」などと言われたことから,L弁護士への依頼も断ることにした。その後,平成16年2月には,M弁護士からL弁護士宛に,8000万円の貸金の残金を含めて1億2000万円の支払で解決したいという内容の通知があったが,これにも応じなかった。 平成17年ころ,債権の取立てを依頼したOから,「Aが所属するプロダクションの会長のいわば番頭役にあたるTという人に頼めば,債権を回収できる。Pという人に一旦仮装の債権譲渡をしてほしい。」などと言われ,同年4月1日,その旨の債権譲渡承諾書を ,「Aが所属するプロダクションの会長のいわば番頭役にあたるTという人に頼めば,債権を回収できる。Pという人に一旦仮装の債権譲渡をしてほしい。」などと言われ,同年4月1日,その旨の債権譲渡承諾書を作成した。被告人AからCの口座に振り込みがあるとのことだったが,結局取立ては成功しなかった。 平成18年4月ころ,E2に対し,被告人Aに株式購入代金等の返還を求めていることなどを話し,資料のコピーを渡した。このときは取立てを依頼しておらず,E2に対しても,電話とか話合いとかはしないよう言った。 同年5月中旬ころ,E2から,「(被告人Aと)話し合って大体まとまったよ。大体5億円でまとまった。被告人Bと被告人Aが懇意にしているので,そのルートで話し合った。」などと言われ,「その額であれば僕も了承するのでお願いします。」と返答して,正式に取立てを依頼した。また,E2には,被告人Bとの間で以前に金の問題でトラブルが あったことは伝えたが,E2からは,「被告人Bはおれより格下だから気にせんでいい。」などと言われた。 同年6月6日ころ,「8000万円の貸金の残金と,未公開株の損金を含めて5億円で話がついた。和解書を巻く(取り交わす)ので6月7日(午後)6時にmホテル2階(ラウンジ)に来てくれ。」などと言われた。被告人Aが,同月23日に3000万円を支払い,その後分割払いで5億円を支払う,分割回数等は決まっておらず,後日交渉するという話であった。 本件後,同月8日に弁護士に被害を相談したところ,Pからなら被告人Aに請求できると言われ,Pの了解を得ずに,PからQに債権譲渡した旨の書類を作成した。E2が被告人Aとは話がついていると言うので,被告人Aに確かめようと思い,同年7月2日,Qと共に被告人Aのいる半田市に向かい,たまたま途中で出会った知人のIにも Qに債権譲渡した旨の書類を作成した。E2が被告人Aとは話がついていると言うので,被告人Aに確かめようと思い,同年7月2日,Qと共に被告人Aのいる半田市に向かい,たまたま途中で出会った知人のIにも一緒に行ってもらうことにした。 Iと2人でジュエリー展示会場に入ったQからは,この件についてはすべて被告人Bに頼んでいると被告人Aから言われたとの報告を受けた。 その後,Qからは,「被告人Bから電話がきて,PやCとの関係などを聞かれた。」とも聞いた。 Cは,本件債権の取立状況,当日mホテルに赴いた経緯,その後Qを取立てに行かせた経緯及び状況等について具体的かつ詳細に供述しており,その供述内容に特段不自然ないし不合理な点はない。 Cの供述は,E2が被告人Aに本件債権の請求をした経緯,mホテルに集まるよう言われた際のE2の言動等についてE2の供述と,本件後にQとともにジュエリー展示場付近に赴いた経緯,被告人AのQに対する対応やその後の被告人BからQに対する電話の内容についてQの供述と,それぞれ合致している。 以上からすれば,本件前後の経緯について述べるC供述の基本的部分は信用することができる。 イJ弁護士の供述についてJ弁護士は,当公判廷において以下のとおり供述している。 平成18年2月か3月ころ,被告人Aから電話があり,8000万円の借受金について,残額の確認と,今後の支払いを約束すればCもW株に関してはあまり強いことは言わずに話がまとまりそうだと言われ,これを受けて同年4月以降,CがW株取得により被った損害について,Cには何らの損害賠償請求権がないことなどを確認する確認書を作成した。 被告人Aからは,Cとの和解交渉にはDに協力してもらっていると聞いていた。Dからは,W株に関して被告人Aに責任がないことを簡潔明瞭に確認する書面にするよう求 ないことなどを確認する確認書を作成した。 被告人Aからは,Cとの和解交渉にはDに協力してもらっていると聞いていた。Dからは,W株に関して被告人Aに責任がないことを簡潔明瞭に確認する書面にするよう求められたので,被告人Aに対し,事実関係を確認した上で債権を放棄する旨を記載する形が適切であるなどと説明し,了解を得た。当初はW株の取引に関する事柄だけが内容だったが,Cからの借受金についても追記した。 同年5月末か6月初めころ,被告人Aから,8000万円の残額の返済について,和解の当日にまず300万円を支払い,残債務については返済を継続するとの説明を受けた。その内容を確認書にまとめて被告人Aに送付したところ,ほどなく被告人Aから電話があり,「実は,Cさんが,300万円という中途半端なお金よりも,1000万まとまったお金を出してくれれば,ほかの借り入れた部分のお金に関しては免除してもいいという話が決まりました。」として,確認書を作り替えてほしいという要請があった。それで,同年6月5日ころ,手書きで文言を修正した上,それを事務員にワープロで打ち直してもらって確認書を完成させた。 そのころ,Dから,和解の当日にCに用意してもらう必要書類等を 「B」という人にファックスで連絡するよう言われた。Dによると,「B」という人は「この件での取りまとめというか,中に入ってくれる人だから」との説明であった。 J弁護士は,前述のとおり,被告人AからCによる本件債権の取立てについて相談され,その後和解のための書面を作成した経緯等について具体的かつ詳細な供述をしており,その供述内容に特段不自然ないし不合理な点はない。確認書の作成経緯やその被告人Aへの送付状況,Dの依頼で被告人Bにファックス送信したことなどは,「確認書」と題する書面5通,補正済みの確認書を送付す その供述内容に特段不自然ないし不合理な点はない。確認書の作成経緯やその被告人Aへの送付状況,Dの依頼で被告人Bにファックス送信したことなどは,「確認書」と題する書面5通,補正済みの確認書を送付する旨の平成18年6月5日付け「書類送付の件」と題する書面及び同日付けJ弁護士作成の「B様」宛て「FAX送信書」の各記載とも整合している。また,J弁護士には,その供述内容からしても,殊更被告人らに有利な虚偽供述をしている様子はうかがえない。 以上からすれば,J弁護士の供述は信用することができ,その供述するとおりの事実経過が認められる。 ウDの供述についてDは,当公判廷において,被告人Aからの依頼でこの件の交渉に関与するようになり,その過程でE1やE2の存在を知ったとして,次のように供述している。 数人の知人にE1やE2について尋ねたところ,被告人Bに心当たりがあるということであり,後日,被告人Bから,「E1って,おれの思うとったE1やったで。今,E2知っているかと電話したら,ちょうどE2の事務所にE1がおるという話やった。」などと聞かされた。 被告人Bには,「Cが,債権も確定しないのに,いろいろな人間を送り込んで被告人Aに嫌がらせをしている。」などと伝え,E2の連絡先を聞いた。E2に電話を掛けると,E2は,「Cに入ってくるお金の窓 口は全部自分がやっている。」などと言っていた。 E2からは,当初4億円程度請求されていたが,W株の売買に関する債権については一切支払わない旨を伝えていると,やがて請求金額が1億円になり,それも断ると請求金額が5000万円になった。被告人Aに対しては,借り入れた8000万円から支払済みの6300万円を差し引いた1700万円を支払うことを提案したところ,被告人Aからは,毎月100万円に分割して支払うのであれば了解 円になった。被告人Aに対しては,借り入れた8000万円から支払済みの6300万円を差し引いた1700万円を支払うことを提案したところ,被告人Aからは,毎月100万円に分割して支払うのであれば了解するとの返答であった。 そこで,E2に対し,Cが,被告人Aから1700万円の支払いを分割で受ける代わりに,その余の請求を行わないという条件を提示したところ,1日空けてから,E2から,Cも了承したとの電話が入った。続いて,その日の午後1時か2時ころ,E2から,「そんな眠い話できんから,まとめた金できないのか。」などと言われ,「1700を削ってもらえるならa氏にも言いましょう。」と答え,結局,1000万円を一括で支払うということになった。ところが,E2からは,「今日の4時までに持ってきてくれ。あんた,1000万で話切ったんだから,今すぐ持ってこいや。持ってこなdさん大変なことになるよ。」などと言われたことから,交渉を中断しようとすると,E2は,日を改めて6月7日にmホテルで会うという提案をしてきた。 被告人Aに対し,1000万円を一括で支払う話になったと報告すると,被告人Aから立替払いを依頼され,これに応じることにして1000万円を準備した。6月7日のmホテルの件は,被告人Bにも伝えたが,被告人Bにファックス送信するようJ弁護士に依頼したことはない。 Dの供述は,E2らとの交渉経過を述べる点,とりわけ1700万円を分割で支払う案が修正され,最終的に1000万円を一括で支払うことで話がまとまった経緯に関する供述部分については,かなりの具体性と迫真性を伴うものであり,前記のJ弁護士らの供述及び「確認書」が 完成するに至るまでの経過とも整合的であって,相応の信用性を肯認することができる。Dは,被告人Aの依頼を受けて1000万円を自ら調達してJ弁護 のであり,前記のJ弁護士らの供述及び「確認書」が 完成するに至るまでの経過とも整合的であって,相応の信用性を肯認することができる。Dは,被告人Aの依頼を受けて1000万円を自ら調達してJ弁護士に渡し,現にmホテルでの交渉の場にも同席していることからしても,E2らとの本件債権を巡る交渉に相当深く関与していたことがうかがえる。検察官は,Dの供述はそれ自体不自然であり,関係者の証言とも合致しない旨主張するが,にわかに採用できない。 ただし,被告人Bの関与について,「被告人Bにファックス送信するようJ弁護士に依頼したことはない。」と述べる点に限っては,J弁護士の供述及び同弁護士が送信した「B」宛の「FAX送信書」と整合しておらず,前述したところと同様に,被告人Bの不利益を回避しようとする姿勢がうかがえ,信用性に乏しいものといわざるを得ない。 エE2の供述についてE2は,当公判廷において,以下のとおり供述している。 平成18年3月ころ,Cから,被告人Aとの間に未公開株購入を巡る金銭トラブルがあると聞き,契約書等を見せてもらった。被告人Aの携帯電話に電話を掛けてメッセージを残しておいたところ,同年5月ころ,E1から,「被告人Bの方からちょっと話がある。いっぺん会うてくれへんか。」などという話があり,E1及び被告人Bと喫茶店で会った。 被告人Bは,「未公開の株はもう飛んどんねん。もう払う必要ない。 自分(B)も三,四年前に(Cに)損をさせられたが,請求にも行っていない。なのにCはいろんな人間を使って請求をしている。」などと言っていた。その場では話が付かず,その後も被告人Aに対する取立てを続け,留守番電話に,強い口調で取立てのメッセージを残した。 すると,E1から,「また電話したんか。あんだけ動かんときと言うたやないか。」などと言われ,再びE1, ず,その後も被告人Aに対する取立てを続け,留守番電話に,強い口調で取立てのメッセージを残した。 すると,E1から,「また電話したんか。あんだけ動かんときと言うたやないか。」などと言われ,再びE1,被告人Bと3人で喫茶店で会うことになった。被告人Bからは,「やっぱり事件になるぞ,警察ざた になるから,もうせんとってくれ。」などとはっきり言われた。これを聞いてもう事件になると思った。 その場で,被告人Bに電話があり,被告人Bは,「今,ようテレビに出とる,ジュエリーやっとるaからだ。」と言って携帯電話の画面を見せてきた。画面には,漢字で「a」か「A」と書いてあった。被告人Bは,いったん喫茶店の外に出て,戻ってくると,「1000万でもう和解しよう。また日にち言うから頼むわな。」などと言ってきた。被告人AがCに1000万円を支払うことで,残りの債権をなかったことにするという話であった。 そこで,「こんなんではあのおっさんも絶対納得せんやろう。」と言うと,被告人Bは,「そんなん大丈夫や。連れてきたらもう何もない。 わしの顔見たら,わしも話する。」などと言った。E1も,「これ事件になるん違うか。」と言ったが,被告人Bは,「そんな心配ない。弁護士も来るし,一切心配ない。」と答えた。また,被告人Bは,「(Cが受け取る)1000万円からお礼もろうたらええな。」などと言ってきた。 被告人Bらと別れた後,Cに対し,「被告人Aが5億円ぐらい払うてくれるから,もう心配ない。印鑑も皆持ってきて,書類を整えて,日にちが決まったらすぐそっちへ行く。6月末ぐらいに1回,3000万円ぐらいと,あとはまた分けて振り込んでくるから。」などと自分で考えて嘘を言った。 事件の二,三日前,被告人B及びE1と3人でmホテルで会った。被告人Bから,Cに印鑑や印鑑証明等を持ってくる 00万円ぐらいと,あとはまた分けて振り込んでくるから。」などと自分で考えて嘘を言った。 事件の二,三日前,被告人B及びE1と3人でmホテルで会った。被告人Bから,Cに印鑑や印鑑証明等を持ってくるよう伝えて欲しいと頼まれ,その旨をCに伝えた。 E2の供述は,それが真実であれば,被告人Bが恐喝をE2らに持ちかけたことになり,被告人Aも恐喝の共謀に関与していることを相当程 度推認させるものといえる。 しかしながら,E2の供述によれば,被告人B及びE1と2回目に喫茶店で会った際,E2は被告人Bから一方的に1000万円という金額の提示を受けたもので,それ以前の段階では被告人Aが支払うべき金額についての具体的な交渉は一切なかったことになる。それは,J弁護士が,1700万円を分割で支払うことなどを内容とした確認書を作成し,これを被告人Aに送付した後,1000万円を一括して支払うことになり,確認書を作り直したとするJ弁護士の供述及びこれと合致する客観的証拠(平成18年6月付けの確認書〔手書きでの訂正があるもの。被告人Aが,Cに対し,1700万円を分割で支払う旨の記載を1000万円を一括して支払う条件に修正する旨の手書きの記載がある。〕,同月5日付けJ弁護士作成の書面〔補正済みの確認書を送付する旨の記載がある。〕)と明らかに整合しない。また,前述のように,E2との交渉にはDが介在しており,J弁護士らだけでなく,Cの供述中にもDの存在には触れられているが,E2の供述中にはDの関与についての言及が全くないというのも不可思議である。 そうすると,他方において,Cが持参すべき物を,事件の二,三日前に被告人Bから伝えられたとする点は前記「FAX送信書」と整合していること,mホテルに赴くに当たってCに説明した内容等についてはCの供述と合致していること,本 ,Cが持参すべき物を,事件の二,三日前に被告人Bから伝えられたとする点は前記「FAX送信書」と整合していること,mホテルに赴くに当たってCに説明した内容等についてはCの供述と合致していること,本件以前に喫茶店等で被告人B及びE1と話をした状況について供述する点は,E1の捜査段階供述と合致していることなど,E2供述の信用性を基礎付けるように見える一定の事情が存在することを考慮しても,E2の供述は,被告人Bが何ら経緯を説明するでもなく卒然と1000万円での解決を持ち出してきたとするなど,その供述中に現れた被告人Bの本件恐喝への関与の態様は,いかにも唐突であり,不自然な感を免れない。そもそも,E2は,Cからの要請を 受けてC側の立場で交渉に臨みながらその態度を一変させ,被告人Aが5億円を支払うことで話がまとまったかのような虚言まで弄してCをmホテルに呼び出した上,ホテルでは自ら率先してCを脅してJ弁護士から1000万円を受領させ,その中から375万円を取得しているのであって,かかるE2の行動傾向をも併せ考えると,E2が本件恐喝への被告人Bの関与の度合いを殊更に増幅して供述している可能性が否定できない。 これらによると,喫茶店での2回目の会合が果たして実際に存在したかどうかも含め,被告人Bの言動に関するE2の上記供述の信用性には重大な疑義があるものといわざるを得ない。 オE1の供述についてE1も,捜査段階において,以下のとおり供述していた。 平成18年5月中旬ころ,Bから電話があり,「E2という男を知っていますか。aのところに,Cという男の債権取立てについて,E2という男が電話をしてきて,aが困っているんですよ。そのE2という人と話をさせてくれませんか。」などと言われ,「知ってますよ。喫茶店にE2を呼び出します。」などと答え,数日 債権取立てについて,E2という男が電話をしてきて,aが困っているんですよ。そのE2という人と話をさせてくれませんか。」などと言われ,「知ってますよ。喫茶店にE2を呼び出します。」などと答え,数日後に,E2及びBと3人で喫茶店で会った。 その後,同年5月下旬から6月初めころに,Bから電話があり,「Cがaに請求している債権は1000万円でチャラにしようと思っています。それでチャラにできたら,E1さんとE2さんとで分けたらいい。 和解の場には,弁護士も来て,Cに署名させる。Cは,自分(B)やE1さんが来てくれたら署名しよると思いますねん。E2さんともう一回会わせてもらえませんか。」などと言われた。 そこで,再度E2を呼び出して,3人で会った。Bは,E2に対し,「実は,この件は1000万円でチャラにしようとしてますねん。それ でうまいこといったら,社長(E2)とE1さんとでその金を分けてもらおうと思ってますねん。それに和解の現場には弁護士も入れようと思ってます。」などと言った。 そのとき,Bの携帯電話が鳴り,Bは,その画面をE2に見せて「aから電話が掛かってきた。」などと言い,席を離れた。Bは,席に戻ると,「今,aと話したんやけど,6月7日午後6時に,mホテルにaの弁護士が1000万円を持ってくることになっているんですわ。それで,Cにその1000万円を渡して,和解の書類に署名させて印鑑を押させたら終わりですわ。1000万円は社長とE1さんで分けたらいいでしょう。せやから社長,なんとか一緒にやってくれまへんか。社長にうまいこと言うてもろうて,Cをmホテルに連れてきてもらいたいんですわ。」などと言った。 Bに対し,「そんな1000万円のはした金でCは納得せんでしょ。」と聞くと,Bは,「そやから,わしらが行くんですわ。弁護士が来るから,何ぼ mホテルに連れてきてもらいたいんですわ。」などと言った。 Bに対し,「そんな1000万円のはした金でCは納得せんでしょ。」と聞くと,Bは,「そやから,わしらが行くんですわ。弁護士が来るから,何ぼでも言い逃れができますわ。そのための弁護士ですわ。」などと答えた。自分もこの話に乗ることにして,E2及びBに対し,「そやけど事件にならんように,うまいことせんとあかんで。」などと言った。 署名の前日か前々日ころ,B及びE2とmホテルのラウンジで会った。 Bは,E2に対し,Cをmホテルに連れてくることの確認と,実印,印鑑証明,運転免許証のコピー等Cに持参させるものの話をしていた。このとき,Bは,署名の席には,aの代わりにDが来ると言っていた。 E1の捜査段階の供述は,E2の上記供述と概ね合致するものであり,その意味で相互に信用性を補強し合う面がなくはない。 しかしながら,E2について述べたのと同様に,J弁護士の供述及び同弁護士作成の確認書等の客観的な証拠と整合していない上,それまで の交渉経過について何ら言及されることなく,被告人Bが,電話でE1にCの債権を1000万円でチャラにしようと思っている旨をいきなり告げてきたとするなど,全体として相当に不自然である。E1も1000万円の中から250万円を取得しているのであって,E2の供述におけるのと同様の理由に加え,E1の公判廷における前述のような供述態度にも照らすと,E1の上記捜査段階供述についてもたやすく信用することはできない。 カ被告人B及び同Aの各供述について被告人Bび同Aは,公判廷において,いずれも恐喝の共謀への関与を否定する供述をしている。それは,当裁判所の判断と結論において一致するものであるが,その供述内容は,全面的に信用できるものとまではいえない面がある。以下,いくつかの点につい れも恐喝の共謀への関与を否定する供述をしている。それは,当裁判所の判断と結論において一致するものであるが,その供述内容は,全面的に信用できるものとまではいえない面がある。以下,いくつかの点について付言しておくこととする。 被告人Bは,「E2,E1と喫茶店で会ったのは1回だけであり,本件の1日か2日前,Cと被告人Aとの間で1000万円で話が決まり,和解するとDから聞かされた。当日mホテルに赴いたのは,以前にバングラディシュ人のZとの取引に関連してCから損をさせられたことがあり,一度Cの顔を見てみたかったからである。」などと述べているが,その供述中,被告人Bが,被告人AらとE2らとの間の交渉には関わっていない旨供述する点は,J弁護士が被告人Bに送信した「FAX送信書」の記載と整合していない。また,被告人AとCとの間の金銭トラブルについて,その詳細は聞いていなかったと供述する点は,Cから受けた債権取立について相談されていたとする捜査段階の供述から特段の理由なく供述内容を後退させているものであって,その信用性にも疑義がある。 被告人Aの供述についても,J弁護士に確認書の作成を依頼した経緯 やE2らとの交渉経過について述べるところは,全体としてJ弁護士やDらの供述と整合しているが,被告人BがE2らとの交渉には関与していないと供述する点は,前同様にJ弁護士から被告人Bに宛てた「FAX送信書」の存在と整合していない。また,DがE2と知り合った経緯についても,被告人Bを通じて知り合ったと述べるDの供述とは異なる供述をしているが,この点についてDが虚偽を述べる理由はないと思われることからすると,被告人Aには被告人Bの関与の程度を殊更に低く述べている様子がうかがえる。これらからすると,本件直後に被告人Bとは電話連絡をしていないと述べる点なども 偽を述べる理由はないと思われることからすると,被告人Aには被告人Bの関与の程度を殊更に低く述べている様子がうかがえる。これらからすると,本件直後に被告人Bとは電話連絡をしていないと述べる点なども含め,被告人Aの供述についても,その信用性に疑義のある部分がなくはない。 被告人A,同B間の金員の授受についてア検察官は,Rが使用していたシステム手帳(甲40)に,「3,000Bお礼」等の記載があることを論拠として,これにより被告人Aが,被告人Bに対して本件恐喝の謝礼として3000万円を支払ったことが認められ,被告人A,同B及びE2らとの間における共謀が推認されると主張する。 しかしながら,同システム手帳の記載中,謝礼の趣旨と取られる上記文言は一回出てくるのみである上,上記のようにその記載自体かなり曖昧なものであり,この記載からそこに書かれている金員の全てが謝礼の趣旨であるとも一義的に読みとることは困難である。Rが本件に関与した形跡がないことからして,その記載はRが被告人Aの言葉を簡単に書き留めたに過ぎないものと考えるのが自然であることからすれば,それが恐喝の謝礼の趣旨であることの証明力の程度は必ずしも高いとはいえない。 イこれに対し,被告人Bは,「平成18年5月ころ,Dから,被告人Aに貸していた金の返済金300万円を受け取った。」と述べ,Dも,「同年7月ころ,被告人Aから,『今日大阪に行くなら,Bさんにちょっと言付 けてもらいたいものがある。返したときに,借用証なりをあれしてもらいたいけど,もしないなら,この文書を一筆取ってもらえないか。』と言われ,現金と覚書を手渡された。」と述べるなど,被告人B及びDは,これらの金銭の授受はいずれも被告人Bが被告人Aに貸していた貸金(3000万円)の返済の趣旨であったと供述しており,その供述内容 と言われ,現金と覚書を手渡された。」と述べるなど,被告人B及びDは,これらの金銭の授受はいずれも被告人Bが被告人Aに貸していた貸金(3000万円)の返済の趣旨であったと供述しており,その供述内容は被告人Aの供述とも合致している。そして,これらの供述は,被告人Bが同年5月15日に300万円を領収した旨が記載されている領収書(甲7添付の資料符8号)及び被告人Bが被告人Aから2700万円を受領し,これにより両者間に債権債務がないことを確認する旨が記載されている同年7月6日付け覚書(甲7添付の資料符7号)の存在によって裏付けられている。 しかるところ,この領収書と覚書については,捜査機関が被告人Aから任意提出を受けたとする押収経緯に特段不審な点は見受けられず,その記載内容からしても,後日被告人らに有利な証拠として用いるために殊更に作成されたことをうかがわせるような形跡も見あたらない。加えて,被告人A名義の普通預金口座通帳(甲22)には,同年7月4日に3700万円が出金された旨の記載があり,その右横に手書きで「c,dちゃん」と付記されているが,この3700万円という金額は,Cに交付した1000万円(Dが立て替えていたもの)とDを介して被告人Bに返済したとされる2700万円の合計額に一致しており,覚書の日付が同月6日となっていることとも整合的である。 これらによれば,上記Dらの各供述の信用性を排斥することは困難であるといわざるを得ず,検察官の上記主張はにわかに採用することができない。 被告人B及び同Aの共謀の有無以上を前提に,本件恐喝に関する被告人B及び同Aの共謀の有無について判断する。 ア被告人Bについて検察官は,被告人Bが,E2及びE1との間で,被告人B及びE1が立ち会って,mホテルにおいてCに無理矢理署名させる旨を喫茶店で話 及び同Aの共謀の有無について判断する。 ア被告人Bについて検察官は,被告人Bが,E2及びE1との間で,被告人B及びE1が立ち会って,mホテルにおいてCに無理矢理署名させる旨を喫茶店で話したことなどから,少なくともその時点において恐喝の事前共謀が成立したと主張する。しかしながら,前述のとおり,かかる点についてのE2及びE1の各供述は信用性に疑義があり,同供述のとおりの事実経過をそのまま認定することはできない。 なるほど,前記認定のDがJ弁護士に対して行った被告人Bに関する説明や,J弁護士作成の「B」宛「FAX送信書」の存在等からは,被告人BがE2に連絡を取るなどして本件債権を巡る交渉にある程度関与していた様子がうかがえる上,被告人Bが,平成18年6月7日にmホテルに赴き,J弁護士に会う直前のCに対し,過去の金銭トラブルの話をしてその際のCの言動をとがめる発言をしていること,確認書への署名を渋るCの近くまで行ってにらみつけていることなど,恐喝の実行行為の一部とも目されかねない行動に及んでいることは否定できないものの,他方,1000万円を一括払いすることで交渉をまとめることになった経緯に関するE2やE1の供述が信用できず,被告人Bが具体的にどのように交渉に関与したのか証拠上明らかにならない状況下にあっては,上記のような事情はいずれも,被告人Bにおいて,E2らがCに対し恐喝行為を行うことを事前に認識かつ認容し,ともに恐喝行為を行う意思を有していたことを直ちに推認させるものとまではいえない。被告人Bが上記のようなにらみつける行為に出たことについては,Cの煮え切らない態度に単に立腹しただけと見る余地もあり,これをもって恐喝の実行行為ということはできず,E2及びE1と被告人Bとの間に恐喝の共謀が存したというにはなお合理的な疑いが残る については,Cの煮え切らない態度に単に立腹しただけと見る余地もあり,これをもって恐喝の実行行為ということはできず,E2及びE1と被告人Bとの間に恐喝の共謀が存したというにはなお合理的な疑いが残るものといわざるを得ない(なお,被告人Bの上記行為を脅迫罪の単独犯と評価するのも困難 である。)。 イ被告人Aについて検察官は,前記認定のとおり,Cが執拗に4億円余りの請求をし,被告人Aからの1億2000万円での和解の申し出にも応じなかったことから,通常の交渉では和解がまとまるはずはなく,被告人Aもその旨認識していたなどと主張する。しかしながら,被告人Aは,自己の認識している範囲でM弁護士及びJ弁護士に事情を随時説明し,Cを刑事告訴するなどの対応についても助言を受けていたものであり,J弁護士に,確認書等の作成を依頼し,本件当日もmホテルでの立ち会いを求めていることなどからすれば,被告人Aにおいて,Cに対抗するについて直ちに脅迫等を用いなければ交渉がまとまりえないものと認識する状況にあったとまではいえない。 また,検察官は,被告人Aが,喫茶店でE1及びE2と会っていた被告人Bに電話を掛けているほか,本件直後にも,被告人Bから,「Cはだいぶびびっとったぞ。」などと電話で報告を受け,電話を替わったE2にお礼を言っていることからすれば,被告人AはCに債権放棄をさせるやりとりに関与していたことが認められると主張する。しかしながら,前記のとおり,E2及びE1の各供述には信用性に疑いがあり,被告人Aが喫茶店にいる被告人Bに真実電話を掛けたのか疑問が残る上,仮に掛けたとしてもその具体的な会話内容は不明である。また,本件直後の電話内容についても,被告人BとCとの従前のトラブルを被告人Aも知っていたとすれば,Cが被告人Bに会ったこと自体で「びびっとっ 仮に掛けたとしてもその具体的な会話内容は不明である。また,本件直後の電話内容についても,被告人BとCとの従前のトラブルを被告人Aも知っていたとすれば,Cが被告人Bに会ったこと自体で「びびっとった。」と受け取ったとしても不自然ではなく,E2との会話内容もごく儀礼的なものにすぎず,単に仲介の労を労う意味で被告人Aがそのような趣旨の発言をしたものと考えても不自然ではない。 さらに,検察官は,本件和解交渉において最も利益を得るのは被告人 Aであり,E2らが,独断で犯罪行為に及ぶリスクを犯してまで被告人Aのために本件に及ぶはずがないなどと主張する。しかしながら,被告人Bにおいては,被告人Aからの依頼を受けずとも親しい被告人Aのためにと考えて一定の行動をすることはあり得ることと思われるし,また,E2及びE1においては,Cに1000万円を受領させた上,その中から目先の利益を得ようと目論み,独断でCを威迫する行為に及んだとしてもあながち不自然ではなく,その際,自らの刑責を軽減させようとの意図から,被告人Bの関与の度合いを殊更に増幅させて述べている可能性が否定できない。 検察官は,被告人Bは,本件直後に,Qに取立てをとがめる電話を掛けるなど,脅迫を用いて債権の取立てを断念させようとしていたのであり,これはCに対して脅迫を用いて応じさせた債権放棄を維持させるものであることと考えられることからも,被告人Aが,被告人Bに対し,Cを脅してでも債権放棄をさせる依頼をしていた事実を推認することができると主張する。しかしながら,被告人Aとしては,Cに1000万円を支払うことで和解が成立したと理解していたところ,再び暴力団関係者らしき人物が取立てに来たことから,暴力団組織の会長と面識のある被告人Bに相談したとみても特に不自然ではなく,また,被告人Bが,取立 支払うことで和解が成立したと理解していたところ,再び暴力団関係者らしき人物が取立てに来たことから,暴力団組織の会長と面識のある被告人Bに相談したとみても特に不自然ではなく,また,被告人Bが,取立ての執拗さに立腹して自らの判断でQに電話を掛けるということも十分考えられるところである。 ウまとめ以上によれば,被告人B及び同Aについて本件恐喝の事前共謀あるいはmホテルでの現場共謀を認めるには,なお合理的疑いが残るものといわざるを得ない。 第4 結論 以上の次第で,本件各公訴事実は犯罪の証明がないことに帰着するから,刑 事訴訟法336条により被告人両名につき無罪の言い渡しをする。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aにつき懲役8年,被告人Bにつき懲役4年)平成20年12月26日大阪地方裁判所第5刑事部中川博之裁判長裁判官仁藤佳海裁判官村木洋二裁判官 (別紙)見取り図(省略)
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