令和5(行ヒ)142 固定資産価格審査決定取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所 令和4(行コ)66
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判決文本文13,916 文字)

- 1 - 主文 1 原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。 2 大阪市固定資産評価審査委員会がした審査の決定の取消しを求める被上告人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人馬場昭彦、上告復代理人米田雅人の上告受理申立て理由について 1 本件は、大阪市に所在する2棟の非木造家屋(木造家屋以外の家屋をいう。 以下同じ。)に係る固定資産税の納税義務者である被上告人が、大阪市長により決定され家屋課税台帳に登録された上記各家屋の平成30年度の価格を不服として大阪市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ、これを棄却し又は減額した価格を定める決定(以下「本件各審査決定」という。)を受けたため、上告人を相手に、本件各審査決定の取消し等を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ア地方税法は、家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を、当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(341条5号により適正な時価をいうものとされている。)で家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されたもの(以下、これらの台帳に登録された価格を「登録価格」という。)とし(349条1項)、市町村長は、388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない(403条1項)旨を規定する。なお、平成30年度は上記の基準年度に当たる。 イ固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成30年総務省告示第229号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)は、家屋の評 する。なお、平成30年度は上記の基準年度に当たる。 イ固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成30年総務省告示第229号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)は、家屋の評価に令和5年(行ヒ)第142号固定資産価格審査決定取消等請求事件令和7年2月17日第二小法廷判決- 2 -ついて、木造家屋及び非木造家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとし(第2章第1節一)、一棟の家屋に増築された部分(以下「増築部分」という。)があるときは、原則として、当該家屋を増築部分とその他の部分(以下「既存部分」という。)とに区分して評点数を付設するものとする(同節四)旨を定めている。 評価基準は、非木造家屋の評点数は、当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として、これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとした上で(第2章第3節一1)、非木造家屋の損耗の状況による減点補正率については、原則として経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)によるものとし、経年減点補正率は、通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであって、非木造家屋の構造区分に従い、非木造家屋経年減点補正率基準表(別表第13。以下「本件基準表」という。)に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとする(同節五1⑴)旨を定めている。 本件基準表は、家屋の用途の別に従い、①鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」という。)及び鉄筋コンクリート造(以下、SRC造と併せて「SRC造等」という。)、②煉瓦造、コンクリートブロック造及び石造、③鉄骨造(以下「S造」と い、①鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」という。)及び鉄筋コンクリート造(以下、SRC造と併せて「SRC造等」という。)、②煉瓦造、コンクリートブロック造及び石造、③鉄骨造(以下「S造」という。)(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)、④S造(骨格材の肉厚が3㎜を超え4㎜以下のもの)、⑤S造(骨格材の肉厚が3㎜以下のもの)の五つの構造別区分ごとに、それぞれ経過年数に応じた経年減点補正率を定めている。経年減点補正率は、いずれの構造別区分においても、一定の数値(0.2000)に達するまでは、経過年数の増加に伴い減少するが、上記数値に達した後は、経過年数が増加しても変わらないものとされている(以下、本件基準表において経年減点補正率が上記数値に達する経過年数を「所定経過年数」という。)。 評価基準には、複数の構造により建築されている家屋(以下「複合構造家屋」と- 3 -いう。)に本件基準表をどのように適用するかについての具体的な定めはない。 ウ上告人は、評価基準に定める固定資産の評価方法の具体的な取扱いについて、固定資産評価実施要領(以下「実施要領」という。)を定めている。 平成3年度の実施要領は、複合構造家屋について、原則として、主たる構造に応ずる経年減点補正率を適用することとして差し支えなく、この場合の主たる構造は、それぞれの部分の占める床面積その他適当と認められる基準に基づいて定めるものとしていた。 平成18年度の実施要領は、複合構造家屋についての経年減点補正率の適用は、原則として、主たる構造により一棟単位で行うこととし、主たる構造の判断は、最も大きな床面積を占める構造によるものとしており(以下、複合構造家屋について、このようにして判断された主たる構造に応じた経年減点補正率を適用する方法を「床面積方式」といい、主たる構造の判断 断は、最も大きな床面積を占める構造によるものとしており(以下、複合構造家屋について、このようにして判断された主たる構造に応じた経年減点補正率を適用する方法を「床面積方式」といい、主たる構造の判断方法を同年度の実施要領のとおりに改めたことを「平成18年改正」という。)、平成30年度の実施要領も同様の取扱いを定めている。なお、平成18年度及び平成30年度の実施要領は、複合構造家屋が当該年度において新たに課税の対象となる家屋以外の家屋(以下「在来分家屋」という。)である場合に適用すべき経年減点補正率の求め方について特別の定めを置いていない。 ⑵ア被上告人は、平成30年度の固定資産税の賦課期日である平成30年1月1日当時、第1審判決別紙1物件目録(ただし、1の専有部分の建物の表示中家屋番号を「島屋六丁目428番の11」と訂正したもの)記載1の区分建物(不動産登記法2条22号)の属する一棟の建物(以下「本件建物1」という。)については区分所有者として、同記載2の建物(以下「本件建物2」といい、本件建物1と併せて「本件各建物」という。)については所有者としてそれぞれ登記されていた。 イ本件建物1は、平成13年6月30日に新築され、平成20年4月22日に一部増築された25階建ての非木造家屋である。本件建物1のうち増築部分を除く部分(以下「本件既存部分」という。)は、1階から5階まではSRC造及びS- 4 -造、6階から25階まではS造で構成されており、本件既存部分の合計床面積のうち、少なくとも58%程度をS造の部分が占めている。 ウ本件建物2は、平成8年3月28日に新築された地下1階付き9階建ての非木造家屋である。本件建物2は、地下1階から地上3階まではSRC造及びS造、地上4階から9階まではS造で構成されており、合計床面積のうち、80 、平成8年3月28日に新築された地下1階付き9階建ての非木造家屋である。本件建物2は、地下1階から地上3階まではSRC造及びS造、地上4階から9階まではS造で構成されており、合計床面積のうち、80%程度をS造の部分が占めている。 ⑶ア大阪市長は、平成30年4月2日、本件建物1の平成30年度の価格を101億5367万2000円と、本件建物2の同年度の価格を24億0083万2000円とそれぞれ決定し、これらを家屋課税台帳に登録した。 大阪市長が上記各価格を決定するに当たり、本件既存部分及び本件建物2に適用した経年減点補正率(以下「本件各補正率」という。)は、いずれも、本件基準表の定める経年減点補正率のうち構造別区分をSRC造等とするもの(以下「SRC造等経年減点補正率」という。)である。なお、本件建物1の上記価格を決定するに当たりその増築部分に付設された評点数が、評価基準に従って算出されたものであることは当事者間に争いがない。 イ被上告人は、平成30年6月18日、上記アの各価格を不服として審査の申出をしたところ、大阪市固定資産評価審査委員会は、平成31年3月20日、本件建物1につき審査の申出を棄却する決定をするとともに、本件建物2の価格を22億8059万2000円(以下、本件建物1の上記アの価格と併せて「本件各登録価格」という。)とする決定をした(本件各審査決定)。同決定において本件建物2の価格が変更されたのは、再建築費評点数の変更によるものであり、適用すべき経年減点補正率については上記アのものから変更されていない。 ⑷ 被上告人は、本件既存部分及び本件建物2については、それらの最も大きな床面積を占める構造であるS造(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)に応じた経年減点補正率を適用すべきであり、SRC造等経年減点補正率を適用してされた 既存部分及び本件建物2については、それらの最も大きな床面積を占める構造であるS造(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)に応じた経年減点補正率を適用すべきであり、SRC造等経年減点補正率を適用してされた本件各登録価格の決定は違法であると主張している。 - 5 - 3 原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件各審査決定につき、いずれもその一部を取り消すべきものとした。 本件各補正率は、複合構造家屋に適用する経年減点補正率につき、家屋自体の自重を支え基礎と一体となっている地下階又は低層階(以下、併せて「低層階」という。)を構成する構造のうち所定経過年数の最も長いものをもって主たる構造と捉え、当該構造に応じた経年減点補正率を一棟単位(一棟の家屋に増築部分がある場合にあっては、原則として、増築部分又は既存部分単位。以下同じ。)で適用する方法(以下「低層階方式」という。)を前提とするものである。しかし、低層階方式は、構造ごとの構造耐力に応じた各構造の損傷、損耗等による価値減少を、減価補正の程度に可能な限り反映するものとはいえず、経年減点補正率に係る評価基準の定めの内容、趣旨に沿ったものとはいえない。 また、上告人は、平成18年改正によって、大阪市に所在する複合構造家屋に適用する経年減点補正率の求め方を、基本的に床面積方式に統一しているにもかかわらず、本件各建物と、床面積方式を採用した複合構造家屋との間で、経年減点補正率の求め方に関して異なる取扱いをし、かつ、それを平成18年改正の下においても継続したことは、大阪市内における評価の統一性の要請からみて、もはや合理的とはいえない。 以上によれば、本件既存部分及び本件建物2について低層階方式を選択したことは、評価基準が許容した範囲内の合理的なものとはいえないから、低層階方式に従 性の要請からみて、もはや合理的とはいえない。 以上によれば、本件既存部分及び本件建物2について低層階方式を選択したことは、評価基準が許容した範囲内の合理的なものとはいえないから、低層階方式に従って求めた経年減点補正率を適用して決定された本件各登録価格は、評価基準によって決定される価格であるとはいえない。そして、本件各登録価格は、評価基準によって決定される価格であるといえる床面積方式に従って求めた経年減点補正率を適用して算定された価格(本件建物1につき90億0767万8000円、本件建物2につき18億6185万3000円)を上回っているから、本件各審査決定はいずれも違法である。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次- 6 -のとおりである。 ⑴ア家屋の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には、その登録価格の決定は違法となるところ(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)、評価基準は、非木造家屋の評価に当たり適用すべき経年減点補正率につき、当該非木造家屋の構造区分に従い、本件基準表に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとするが、非木造家屋が複合構造家屋である場合に適用すべき経年減点補正率の具体的な求め方を定めていない。 イそこで、本件各登録価格の決定に当たり、複合構造家屋である本件既存部分及び本件建物2にSRC造等経年減点補正率を適用したことが評価基準に反するか否かについて検討すると、本件基準表の定める経年減点補正率は、通常の維持管理を行うものとした場合においてその年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定められたものであり、所定経過年数は、非木造家屋の構造別区分 討すると、本件基準表の定める経年減点補正率は、通常の維持管理を行うものとした場合においてその年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定められたものであり、所定経過年数は、非木造家屋の構造別区分に応じた、構造耐力の減少や損傷による劣化等の物理的要因により定まる耐用年数(家屋が使用に耐えなくなるまでの年数をいう。以下同じ。)を基礎として、機能的要因や経済的要因により定まる耐用年数などをも考慮して定められたものと解される。 ウ前記事実関係等によれば、本件既存部分は、1階から5階まではSRC造及びS造、6階から25階まではS造で構成され、合計床面積のうち少なくとも58%程度をS造の部分が占めており、本件建物2は、地下1階から地上3階まではSRC造及びS造、地上4階から9階まではS造で構成され、合計床面積のうち80%程度をS造の部分が占めているところ、このような複合構造家屋であっても、使用に耐えなくなったものとしてこれを取り壊すかどうかについては、基本的に一棟単位で判断されることになるものと考えられる。 そして、家屋に作用する荷重や外力が、最終的には低層階を構成する構造によって負担されることになることからすれば、上記のような構造の本件既存部分及び本件建物2については、それらの低層階を構成する構造のうち耐用年数が最も長いも- 7 -のの耐用年数が経過しない限り、その余の構造の部分の補修等によってなおその建物としての効用の維持を図ることができるものと考えられるのであり、上記の取壊しに係る判断が、低層階を構成する構造のうち最も耐用年数が長いものに着目してされるものとみることも、不合理とはいえない。 そうすると、所定経過年数が非木造家屋の構造区分に応じた耐用年数を反映したものであることをも考慮すると、本件既存部分及び本件建物2について、それら してされるものとみることも、不合理とはいえない。 そうすると、所定経過年数が非木造家屋の構造区分に応じた耐用年数を反映したものであることをも考慮すると、本件既存部分及び本件建物2について、それらの低層階を構成する構造のうち所定経過年数の最も長いものに応じた経年減点補正率をもってその評価に当たり適用すべき経年減点補正率とすることも、上記イの評価基準の定める経年減点補正率の趣旨に照らして合理性を欠くものとはいえず、評価基準上許容されるものというべきである。 エ以上によれば、本件各登録価格を決定するに当たり、本件既存部分及び本件建物2について、それらの低層階を構成する構造のうち所定経過年数の最も長いものに応じたSRC造等経年減点補正率を適用したことが、評価基準に反するものということはできない。 ⑵ ところで、平成30年度の実施要領は、複合構造家屋に適用すべき経年減点補正率を原則として床面積方式に従って求めるべきものとしている。もっとも、同実施要領は、複合構造家屋が在来分家屋である場合について特別の定めを置いていないところ、この場合にまで適用すべき経年減点補正率の求め方を一律に床面積方式に改めなければならないものとすれば、上告人における固定資産の評価事務に大きな負担が生ずることが想定される上、大阪市に所在する複合構造家屋の平成30年度の価格の決定に当たり、在来分家屋についても一律に床面積方式に従って適用すべき経年減点補正率が求められているといった事情があることもうかがわれない。そうすると、上記実施要領は、上記の場合にまで、一律に床面積方式に従って適用すべき経年減点補正率を求めるものとすることを定めたものではないと解するのが相当であり、上記説示したところに照らし、このような上告人における取扱いが不合理であるともいえない。 - 8 - て適用すべき経年減点補正率を求めるものとすることを定めたものではないと解するのが相当であり、上記説示したところに照らし、このような上告人における取扱いが不合理であるともいえない。 - 8 -したがって、本件各登録価格を決定するに当たり、建築当初から低層階方式に従って適用すべき経年減点補正率が求められていたことがうかがわれる本件既存部分及び本件建物2について、低層階方式に従って求められるSRC造等経年減点補正率を適用したことは、上記実施要領に反するものではなく、これが平等原則に違反するものということはできない。 5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、本件各審査決定の取消しを求める被上告人の請求はいずれも理由がないから、第1審判決を取り消し、同請求をいずれも棄却すべきである。 よって、裁判官草野耕一の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 裁判官草野耕一の反対意見は、次のとおりである。 私は、多数意見とは異なり、本件上告を棄却すべきであると思料する。本件上告を棄却することは、被上告人の納税者としての正当な利益を擁護するためにはもちろんのこと、豊かで公正な社会の形成に資する税制度を構築する上においても避けてはならない司法判断であると考えるからであるが、そう考える理由を明らかにすべく、以下においては租税法の解釈のあり方に関する一般的な考察から論を進めることにしたい。 1 租税法は、形式的には行政法の一分野にすぎないが、①税収という国家の主要かつ恒久的な財源を生み出す制度として国家の死命を制する重要性を有しており、その一方において、②国民の経済活動に対して重大な 1 租税法は、形式的には行政法の一分野にすぎないが、①税収という国家の主要かつ恒久的な財源を生み出す制度として国家の死命を制する重要性を有しており、その一方において、②国民の経済活動に対して重大な影響を及ぼす制度として(正しくこれを用いれば)豊かな社会の形成を促し得る反面、(その運用を誤れば)これを妨げるおそれを内包している。さらに、③租税の徴収は納税者たる国民にとっては財産の喪失という不利益を甘受することを意味する事態であり、憲法は、国民が「法律の定めるところにより」納税の義務を負う(30条)と定める一- 9 -方において、租税の根拠となる規範の制定・変更は国会が定める法律(あるいは法律の定める条件)によることを明示的に要求している(84条)。 このうち、租税法の上記②の性格からは、立法論・解釈論の双方において、「税制度の内容が不明確であることによって社会の生産活動に不測の損害や委縮効果をもたらさないように課税要件を明確なものとする」という理念(以下、この理念を「課税要件の明確性」という。)の可及的実現が求められ(上記③の憲法上の要請も、こうした課税要件の明確性の要請を内包しているものと解される。)、財産税である固定資産税についても、課税標準を明確なものとすることによって、課税要件の明確性を可及的に満足させることは可能である。そして、課税要件の明確性を可及的に満足させることは、現代社会においてもなお主要な生産財である固定資産を課税対象とする固定資産税を有意義な税制度として存続せしめる上で焦眉の課題であり、そうである以上、固定資産税に係る法令を解釈するに当たっては、できる限り規定の文理に忠実な解釈を行うことをもって原則とすべきである。その上で、文理からだけでは一義的な解釈を行い得ない場合には、文理から推認し得る立法趣旨や精緻な論理 令を解釈するに当たっては、できる限り規定の文理に忠実な解釈を行うことをもって原則とすべきである。その上で、文理からだけでは一義的な解釈を行い得ない場合には、文理から推認し得る立法趣旨や精緻な論理分析に依拠しつつできる限り合理的な解釈を試みるとともに、解釈の結果導き出された準則が納税者において容易には予測することのできないものであるときは、税務当局の責任において、当該準則を納税者に対してあらかじめ公表し、もって納税者に不測の損害が発生することがないようにしなければならないと解すべきである。 2 本件の核心的争点は、本件各登録価格を決定するに際して用いた経年減点補正率の算定方式が評価基準の解釈を誤った違法なものであったか否かであるが、評価基準は、非木造家屋に適用すべき経年減点補正率をその「構造区分に従い」求めるものとするのみで(第2章第3節五)、複合構造家屋たる非木造家屋(以下、単に「複合構造家屋」という。)に適用すべき経年減点補正率の具体的な算定方式(以下、単に「算定方式」という。)を明示していない。しかしながら、地方税法は、市町村長は「固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければな- 10 -らない」としているのであるから(403条1項)、上記の点を根拠として算定方式の選択が税務当局の自由な選択に委ねられていると解することはできず、複合構造家屋に適用する経年減点補正率の算定方式を決定するに当たっては、評価基準の関連規定の文理と文理から推認し得る立法趣旨や精緻な論理分析に依拠しつつできる限り合理的な解釈を試みなければならないというべきである。 以下では、考え得るいくつかの算定方式について検討を加えた上で本件で用いられた算定方式について法的評価を述べることとする。 3⑴ まず考えられる算定方式として、構造別方式(対象とな うべきである。 以下では、考え得るいくつかの算定方式について検討を加えた上で本件で用いられた算定方式について法的評価を述べることとする。 3⑴ まず考えられる算定方式として、構造別方式(対象となる複合構造家屋を構造ごとに区分し、それぞれの構造部分の評点数を当該構造部分に対応する経年減点補正率を用いて計算する算定方式)がある。同方式は、①「構造区分に従い」経年減点補正率を求めるものとする評価基準の前記規定の趣旨に合致する上、②経年減点補正率を乗ずることとなる再建築費評点数については、複合構造家屋の場合にそれぞれの構造に応じた非木造家屋評点基準表を用いて算定することを明示的に要求している評価基準の規定(第2章第3節二1⑶)に整合する点で合理性を有する。もっとも、評価基準は、部分別に求めた再建築費評点数を「合計して」当該家屋自体の再建築費評点数を求めるものとしており(第2章第3節二6)、複合構造家屋については、構造ごとの再建築費評点数を合計して求められた家屋全体の再建築費評点数に一つの経年減点補正率を乗じて家屋全体の評点数を求める算定方式(以下、かかる算定方式を総称して「一棟方式」という。)の方が、評価基準の文理により適合しているともいえる。 ⑵ そこで、いかなる一棟方式が評価基準の諸規定に照らして合理的な算定方式といえるか検討するに、各構造に対応する経年減点補正率を構造ごとの床面積の大きさに応じて加重平均した値をもって家屋全体に適用されるべき経年減点補正率とするもの(以下、この算定方式を「平均一棟方式」という。)が、上記⑴①、②の評価基準の規定やその趣旨に合致し、最も合理的な一棟方式であると考えられる。 他方、これまでの課税実務において多く用いられてきた一棟方式は、家屋全体の- 11 -中で最も大きな床面積を占める構造(以下「最大床 定やその趣旨に合致し、最も合理的な一棟方式であると考えられる。 他方、これまでの課税実務において多く用いられてきた一棟方式は、家屋全体の- 11 -中で最も大きな床面積を占める構造(以下「最大床面積構造」という。)に対応した経年減点補正率を家屋全体の経年減点補正率とするというもの(以下、この算定方式を「床面積方式」という。)であることがうかがわれる。そして、床面積方式を正当化する根拠としてしばしば喧伝されてきた論理は、①複合構造家屋であっても、家屋の取壊しは基本的には一棟を単位として判断されることから、経年減点補正率の適用は一棟単位で判断すべきであり、そうである以上、②複合構造家屋における経年減点補正率の適用は、主たる構造により一棟単位で構造種別を定めた上で行うことが望ましいところ、③複合構造家屋については、最大床面積構造について、その部分が傷んだ場合、当該家屋を建て替える場合が比較的多いといえるというものである(以上の論理のうち①及び②の部分を、以下においては「主たる構造論」という。)。 しかしながら、評価基準の解釈論として主たる構造論に合理性があるとは考え難い。なぜならば、①評価基準上、所定経過年数が満了しても経年減点補正率は20%の値を保持し、以後この値は減少しないものとされていることに鑑みるならば、所定経過年数の満了以前における経年減点補正率の算定は対象家屋が当該期間中に取り壊されることはないことを前提として定められていると解すべきであり、そうである以上、複合構造家屋に適用すべき経年減点補正率を考えるに当たって家屋の取壊しの問題を考慮要素とすることに合理性があるとはいい難く、加えて、②「主たる構造」という概念は外延のみならず内包そのものが曖昧であり、このように曖昧な概念を解釈論の中核に据えることは、説得力のある解釈論を導き 考慮要素とすることに合理性があるとはいい難く、加えて、②「主たる構造」という概念は外延のみならず内包そのものが曖昧であり、このように曖昧な概念を解釈論の中核に据えることは、説得力のある解釈論を導き出す上で有効でないばかりか、恣意的・詭弁的な解釈を正当化する温床ともなりかねないからである。 ⑶ では、主たる構造論に依拠することなくして、平均一棟方式以外の一棟方式(以下「他の一棟方式」という。)に合理性を見いだし得る根拠はあるだろうか。 思うに、他の一棟方式の合理性を根拠付け得る唯一の理由は、構造別方式や平均一棟方式は計算が複雑すぎて地方団体の評価事務が煩雑になってしまうという実務上- 12 -のものであろう。コンピュータによる数理計算が普及した現代においてこの実務上の理由にいかほどの説得力があるのか疑問なしとしないが、少なくとも本件既存部分及び本件建物2に関して最初に登録価格が決定された当時においては、構造別方式や平均一棟方式を用いた計算は、地方団体にとって少なからぬ負担であったかもしれない。 そこで、計算の簡素化を根拠として合理性を肯定し得る他の一棟方式にはいかなるものがあり得るのか検討するに、他の一棟方式としては、低層階方式のほか、①最短方式(最も所定経過年数の短い構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全体の経年減点補正率とする方式)、②床面積方式、③最長方式(最も所定経過年数の長い構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全体の経年減点補正率とする方式)などが考えられる。 このうち、最短方式は、納税者に最も有利な算定方式であり、不合理な算定方式と評価すべき理由はない。また、床面積方式を用いた場合には、概して、同方式により算定される経年減点補正率は平均一棟方式により算出される経年減点補正率からさほどかい離するものではなく、生じ な算定方式と評価すべき理由はない。また、床面積方式を用いた場合には、概して、同方式により算定される経年減点補正率は平均一棟方式により算出される経年減点補正率からさほどかい離するものではなく、生じ得るかい離が納税者にとって必ずしも不利に働くとも限らない。したがって、主たる構造論により床面積方式を正当化することはできないとしても、計算の簡素化という実務的理由をもって他の一棟方式の採用を正当化する理由となると考える限り、床面積方式は合理的な算定方式といい得るだろう。 他方、最長方式によれば、最も所定経過年数の長い構造に対応する経年減点補正率(納税者にとって最も不利な経年減点補正率)が、当該構造の占める割合がいかに小さくても、家屋全体に適用されることになる。英米の法律家は苛斂誅求なる法律を評してしばしば「ドラコニアン」という言葉を口にするが(「古代アテネのドラコンの法典のように過酷な」という意味である。)、最長方式はまさしくドラコニアンな算定方式であり、これをもって合理的な一棟方式であるとは到底いえない。 ⑷ 以上を踏まえて、低層階方式について検討するに、多数意見は、低層階(地- 13 -下階又は低層階)を構成する構造のうち所定経過年数の最も長い構造に対応する経年減点補正率を家屋全体に適用する算定方式のことを「低層階方式」と定義している。低層階方式をこのように定義する限り、その帰結はほとんど常に最長方式の帰結と同じであり(最も所定経過年数の長い構造が低層階以外で用いられるのは例外的な場合だけであろう。)、そうである以上低層階方式は最長方式と同様にドラコニアンな算定方式であって、これをもって合理的な算定方式と解することは到底できない。 もっとも、低層階方式は、その適用範囲を限定することによって、これを合理的な算定方式とする余地があるよう ドラコニアンな算定方式であって、これをもって合理的な算定方式と解することは到底できない。 もっとも、低層階方式は、その適用範囲を限定することによって、これを合理的な算定方式とする余地があるように思える。なぜならば、①家屋に作用する重力や外力に対する負担は高層階よりも低層階の方が相対的に大きいであろうから、②家屋の損耗の進行を抑える上においては高層階より低層階の方が重要性が高く、③しかりとすれば、家屋全体に適用すべき経年減点補正率を算定するに当たっても、高層階よりも低層階の構造に対してより大きなウエイトを与えて計算を行うこと自体は合理的であると思えるからである。そこで、計算の簡素化の観点も踏まえた現実的な算定方式として、例えば、「家屋全体の下方から5分の2を占める各階が全て同じ構造である場合には、たとえその構造が最大床面積構造ではなくてもその構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全体に適用する経年減点補正率とする」ことにすれば、それは床面積方式と比肩し得る程度に合理的な算定方式といえるかもしれない(以下、このように低層階の方が高層階よりも損耗の進行を抑える上で重要であることをしんしゃくした上で計算の簡素化の要請をも満足させている算定方式を総称して「穏やかな低層階方式」といい、これと区別するために、多数意見の定義する低層階方式を「厳しい低層階方式」といい、両者を併せて単に「低層階方式」という。)。しかしながら、穏やかな低層階方式は、その具体的な算定方式が一義的に定まるものではない上、これをいかに定めるかによってその帰結は異なったものとならざるを得ない。例えば、上記に掲げた例における「5分の2」を「3分の1」としたり、あるいは、「各階が全て同じ構造」を「各階の床面積の半分以- 14 -上が全て同じ構造」としてもなお合理的な算定方式で るを得ない。例えば、上記に掲げた例における「5分の2」を「3分の1」としたり、あるいは、「各階が全て同じ構造」を「各階の床面積の半分以- 14 -上が全て同じ構造」としてもなお合理的な算定方式であると評価する余地はあるかもしれないが、その帰結は上記に例示した算定方式の帰結とは明らかに異なる。要するに、穏やかな低層階方式は、具体的な算定方式が示されない限り、納税者はその内容を合理的に予測することができないものであり、この点においてこれまでに述べてきた算定方式とは性格を大きく異にする。したがって、穏やかな低層階方式に基づいてなされた価格の決定が適法といえるためには、前記1のとおり、税務当局がその具体的算定方式をあらかじめ公表していることをもってその必要条件としなければならない。 4 以上の検討を踏まえて本件をみると、大阪市長が本件既存部分及び本件建物2に関して最初に登録価格を決定した際に用いた算定方式は、低層階方式であったとうかがわれる。しかるところ、上告人は、当該決定を行うに先立って、複合構造家屋に用いる低層階方式が具体的にいかなるものであるのかを納税者に対して一切公表していない。したがって、大阪市長が実際に採用した低層階方式が厳しい低層階方式であったのであればもちろんのこと、たとえそれが穏やかな低層階方式であったとしても、それによってなされた上記登録価格の決定は違法であり、そうである以上、当初の登録価格の決定の計算に依拠しつつこれと同じ算定方式を用いてなされた本件各登録価格の決定もまた違法である。よって、原審の判断は正当であり、本件上告はこれを棄却すべきである。 (裁判長裁判官尾島明裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官岡村和美) これを棄却すべきである。 裁判長裁判官尾島明 裁判官三浦守 裁判官草野耕一 裁判官岡村和美

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