主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告がA株式会社に対して東京都江東区α××番及び××番所在のマンション建設に関する公共施設整備協力金残金2億9923万4000円の支払を請求しないことが違法であることを確認する。 第2事案の概要本件は,東京都江東区(以下「江東区」という。)の住民である原告らが,A株式会社(以下「A」という。)が江東区α××番及び××番に建設を予定しているマンション(以下「本件マンション」という。)について,江東区マンション等建設指導要綱(平成14年4月15日14江都住第64号。以下「本件指導要綱」という。)に基づき,江東区とAとの間において覚書が交換され,これによりAが江東区に対して本件指導要綱所定の公共施設整備協力金5億5500万円の支払を約束したとした上で,Aは上記協力金のうち2億5576万6000円を支払ったのみで,残金2億9923万4000円の支払をしていないところ,被告がAに対し当該残金の請求をしないことは違法に地方公共団体の有する財産の管理を怠る事実に当たると主張して,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,上記請求をしないことが違法であることの確認を求める事案である。 前提事実 本件の前提となる事実は,以下のとおりである。いずれも当事者間に争いのない事実又は証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実であるが,括弧内に認定根拠を付記している。 (1)江東区マンション等建設指導要綱の内容本件に関連する本件指導要綱の内容は,次のとおりである(甲1)。 (目的)第1条この要綱は,一定規模以上のマンション,ワンルームマンション及び業務用建築物の建設事業を行う事業者に対して,江東区住宅基本条例(平成 件指導要綱の内容は,次のとおりである(甲1)。 (目的)第1条この要綱は,一定規模以上のマンション,ワンルームマンション及び業務用建築物の建設事業を行う事業者に対して,江東区住宅基本条例(平成5年12月江東区条例第55号)に基づき区が必要な指導を行い,事業者と区が協働して,良好な住宅・住環境の整備と市街地環境の形成を促進し,安全で快適なまちづくりの推進に寄与することを目的とする。 (適用範囲)第3条この要綱は,次の各号の1に係る事業について適用する。 (1)マンション等建設事業計画戸数が20戸以上(括弧内省略)かつ,地上階3以上のマンション又はワンルームマンションの建設事業(以下省略)(事前協議)第9条事業者は,この要綱に定める事項について,法令に基づく申請前に,あらかじめ区と協議しなければならない。 (覚書等の締結)第10条この要綱に基づいて,区と事業者との間で協議した事項については,覚書等を締結するものとする。 事業者は,覚書等の内容について入居者,管理組合等への周知を図るものとする。 (緑地の整備)第16条事業者は,次のとおり敷地内に緑地を整備するものとする。 敷地面積×(1-建ぺい率×8/10)×緑化率(以下省略)(自動車駐車場の設置)第18条事業者は,マンション及びワンルームマンション建設事業において,次の表に定める基準により,歩行者等の通行の安全を考慮して,自動車駐車場(以下「駐車場」という。)を敷地内に設置しなければならない。 (以下省略)(自転車置場の設置)第19条事業者は,マンション及びワンルームマンション建設事業において,次の表に定める基準により,自転車置場を敷地内に設置しなければならない。 (以下省略)(公共施設整備等の協力の要請)第33条区は,公共施設への受入を計画的に進 ルームマンション建設事業において,次の表に定める基準により,自転車置場を敷地内に設置しなければならない。 (以下省略)(公共施設整備等の協力の要請)第33条区は,公共施設への受入を計画的に進めるため,マンション建設を含んだ,概ね20ha以上の開発を計画しているものに対して,計画段階で,概ね1ha以上の学校用地の提供等の協力を求めるものとする。 区は,事業者に対して,用地提供,公共施設整備,民設民営での施設整備等について,協力を求めるものとする。 (公共施設整備協力金の要請)第34条区は,マンション建設事業者に対して,マンション建設により必要となる公共施設への受入等の対策を講じるため,次に定める基準により公共施設整備協力金(以下「協力金」という。)を求めるものとする。 住宅戸数金額30戸以上125万円/戸×(住宅戸数-29戸) 区は,前条により,マンション建設事業者から用地,施設の無償提供等があった場合,前項に定める金額を減じることができるものとする。 (勧告及び公表)第39条この要綱に基づく協議が整わない場合は,区は,この要綱の目的を達成するため,事業者に対して必要な措置をとることを勧告することができる。 区は,事業者が正当な理由がなく勧告に応じないときは,事業者の氏名,勧告,協議の経過等の内容を江東区報等に公表することができる。 (2)江東区マンション等建設指導要綱施行細目の内容本件に関連する江東区マンション等建設指導要綱施行細目(平成14年4月15日14江都住第65号。以下「本件施行細目」という。)の内容は,次のとおりである(甲2)。 (趣旨)第1条この細目は,江東区マンション等建設指導要綱(平成14年4月14江都住第64号。以下「要綱」という。)の施行について,必要な事項を定めるものとする。 次のとおりである(甲2)。 (趣旨)第1条この細目は,江東区マンション等建設指導要綱(平成14年4月14江都住第64号。以下「要綱」という。)の施行について,必要な事項を定めるものとする。 (公共施設整備協力金の減額)第7条要綱第34条第2項に定める公共施設整備協力金を減額できる用地又は施設は,次のとおりとする。 (1)幼稚園,小学校,中学校(2)保育園,児童館,学童クラブ(3)道路,公園(4)その他区長が認めるもの(3)事実経過アAの担当者は,平成14年3月,江東区都市整備部住宅課(以下「住宅課」という。)を訪れ,住宅課の担当者に対して,Aが江東区α××番及び××番の土地を取得し,本件マンションを建設することを計画している旨申し出た。 当時,江東区では,多数の住宅建設等によって就学児童数が急増し,小学校の教室等が不足するなどの問題が生じていたことから,住宅課の担当者は,Aの担当者に対して,江東区のマンション対策について説明し,今後の具体的な計画に当たっては,江東区のマンション対策の一環としての行政指導に従うことなどを求めた。(弁論の全趣旨)イ江東区のBの理事長外774名は,平成14年5月13日,被告に対し,本件マンションの建設予定地内にある旧Cのれんが造りの工場を活用した「水彩都市江東」にふさわしい建物とコミュニティを誕生させることやβ川の活用等により新しい街づくりを実現することなどを求める要望書を提出した。 これを受けて,住宅課では,本件マンションの建設に際しての行政指導において,上記要望をできる限り配慮することなどの方針を決定した。 (乙5,弁論の全趣旨)ウAは,被告に対し,平成14年11月26日,本件指導要綱9条に基づく事前協議申請書を提出した。同申請書には,本件マンションの計画地及び 配慮することなどの方針を決定した。 (乙5,弁論の全趣旨)ウAは,被告に対し,平成14年11月26日,本件指導要綱9条に基づく事前協議申請書を提出した。同申請書には,本件マンションの計画地及び建物名称(仮称)が記載されるとともに,計画概要,案内図,公図の写し,配置図,各階平面図,公開スペース及び緑地の求積図及び求積表等の書面が添付されており,同計画概要では,計画戸数が住宅473戸とされていた。(乙6)エ江東区及びAは,平成15年4月16日付けで,本件指導要綱10条に基づき,「マンション等の建設に関する覚書」と題する書面(以下「本件覚書」という。)を交換した。本件覚書は,25箇条から成っており,その要旨は,以下のとおりである。(甲3)(総則)第1条Aは,本計画の実施に当たり,各種法令,要綱等の規定を遵守し,良好な住宅・住環境の推進に寄与するよう努めること。 (水辺環境・道路の整備)第3条Aは,β川に設置されている水辺の散歩道について,江東区と協議の上,本計画により設置される公開スペース及び敷地北側の区道γ線との連続性を考慮し,「水辺(潮風)の散歩道の移管の手引き」(平成13年5月31日付け江土管発第128号決裁)により修景整備を行うこと。 Aは,区道γ線について,江東区と協議の上,本計画により設置される公開スペース及びβ川に設置されている水辺の散歩道との連続性を考慮し,「道路移管の手引き」(平成13年5月31日付け江土管発第128号決裁)により道路改修を行うこと。 (歴史的な経緯への配慮)第4条Aは,本計画地の歴史的な経緯に配慮するため,江東区と協議の上,Cに係る銘盤を公開スペース内に設置すること。 Aは,敷地西側の公開空き地及び緑地の整備について,従前堀割があったことを考慮し,江東区と協議の上,整備するこ 経緯に配慮するため,江東区と協議の上,Cに係る銘盤を公開スペース内に設置すること。 Aは,敷地西側の公開空き地及び緑地の整備について,従前堀割があったことを考慮し,江東区と協議の上,整備すること。 (歴史的工作物の設置)第5条Aは,本計画地に存在していたCのれんが工作物について,江東区と協議の上,前条に定める整備との整合性を確保しつつ,本計画地内の公開スペースに自己の責任において設置すること。 (景観への配慮)第6条Aは,敷地内の施設配置に当たり,β川及びδ橋からの景観に配慮すること。 (地区集会所の地域開放)第9条Aは,本計画地内に設置する地区集会所の地域開放について,江東区と協議すること。 (学童クラブの設置)第10条Aは,学童クラブの設置について,江東区と協議すること。 オ本件マンションの建設工事,並びに本件覚書によりAが行うものとされ た①β川水辺の散歩道改良工事(3条1項),②区道改良工事(3条2項),③公開空き地及び緑地整備工事(4条2項),④れんが遺構保存及び設置工事(5条,4条1項)並びに⑤水辺からの景観修景及び地域開放集会室整備工事(3条1項,9条)は,平成17年3月31日までに完了した。 Aは,同日,被告に対して,寄附金額を2億5576万6000円とする「寄付申込書」を提出した。 上記寄附金額は,本件マンションについて本件指導要綱34条1項に基づき算出された公共施設整備協力金(以下「本件協力金」という。)の額である5億5500万円から,上記①から⑤までの各工事価格相当額の合計額である2億9273万4000円及び同相当額の算定を行った建設コンサルタントに対する報酬額650万円を減じたものであった。なお,本件指導要綱34条1項に基づく本件協力金の額の算出過程は,次のとおりである。(甲4,5,弁論の全 円及び同相当額の算定を行った建設コンサルタントに対する報酬額650万円を減じたものであった。なお,本件指導要綱34条1項に基づく本件協力金の額の算出過程は,次のとおりである。(甲4,5,弁論の全趣旨)125万円×(473戸-29戸)=5億5500万円カ江東区は,平成17年3月31日,前記「寄付申込書」に係る寄附を受領することを決定し,同年4月27日,2億5576万6000円を受領した(乙2,4)。 (4)本件訴えの提起に至る経過ア原告らは,いずれも江東区の住民である(弁論の全趣旨)。 イ原告らは,平成18年5月26日,江東区監査委員に対して,江東区とAとの間において,本件指導要綱に基づき本件覚書が交換され,Aが江東 区に対して本件協力金として5億5500万円の支払を約束したとした上で,被告がAに対し,上記金員のうち2億5576万6000円を納付させるにとどまり,残金2億9923万4000円の請求を怠っていると主張して,被告がAに対して当該残金を請求することを求める住民監査請求を行った(甲6)。 ウこれを受けて,江東区監査委員は,原告らに対し,平成18年6月22日付けで,本件指導要綱に基づく協力金の納付は事業者の任意によるものであって,江東区に本件協力金に係る債権が発生しているということはできず,したがって,当該協力金は地方自治法237条1項に規定する財産に該当しないから,前記住民監査請求は不適法であるとして,これを却下する旨を通知し,この通知は,同月23日に原告らに到達した(甲7,弁論の全趣旨)。 エ原告らは,平成18年7月19日,地方自治法242条の2第1項に基づき,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 本件の争点(1)本件訴えの適法性。具体的には,本件訴えは,住民訴訟の対象たる財産管理行為に当たら 19日,地方自治法242条の2第1項に基づき,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 本件の争点(1)本件訴えの適法性。具体的には,本件訴えは,住民訴訟の対象たる財産管理行為に当たらない行為を対象とする,あるいは,怠る事実の違法確認請求の対象となる財産を欠くなどの理由により,不適法であるか。 (2)被告がAに対し本件協力金として2億5576万6000円を納付させるにとどまり,残金の請求をしないことが,違法に地方公共団体の有する財産の管理を怠ることに当たるか。 当事者の主張 (1)本件訴えの適法性について(被告の主張)ア住民訴訟は,違法な財務会計上の行為又は怠る事実を予防又は是正し,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであるから,怠る事実の違法確認請求の対象は,財務的処理を直接の目的とする性質を有する公金の賦課又は徴収若しくは財産の管理を怠る事実に限られ,財務的処理を直接の目的としない事項については,仮に財産的損害を生じることがあるとしても,原則として住民訴訟の対象とならない。 本件指導要綱は,その1条において,「この要綱は,一定規模以上のマンション(…中略…)の建設事業を行う事業者に対して,(…中略…)区が必要な指導を行い,(…中略…)良好な住宅・住環境の整備と市街地環境の形成を促進し,安全で快適なまちづくりの推進に寄与することを目的とする。」と定められているとおり,事業者に対する行政指導を行うための内部基準であり,また,公共施設整備協力金の納付を求める等の行為は,マンション建設により必要となる公共施設への受入れ等の対策を講じるため,江東区が事業者に対して行う行政指導の1つである。 そうすると,本件指導要綱に基づく行政指導は,公共施設整備協力金の納付を求める等の行為を含め,良好な住 となる公共施設への受入れ等の対策を講じるため,江東区が事業者に対して行う行政指導の1つである。 そうすると,本件指導要綱に基づく行政指導は,公共施設整備協力金の納付を求める等の行為を含め,良好な住宅・住環境の整備と市街地環境の形成を促進し,安全で快適な街づくりの推進に寄与することを目的として行うものであって,財務的処理を直接の目的とする性質を有するものではないから,仮に,本件指導要綱に基づく行政指導により,公共施設整備協力金の納付につき,江東区と事業者との間で合意が成立したとしても,当 該合意に基づく公共施設整備協力金の納付を受けることを怠ることは,住民訴訟の対象たる財産管理行為に当たらない。 したがって,本件訴えは,不適法である。 イまた,公共施設整備協力金に関し,江東区が事業者に対し,財産(債権)を有していると評価されるためには,公共施設整備協力金の納付に係る具体的手続において,江東区と事業者との間に何らかの契約関係が成立することが前提とされているところ,江東区と事業者との間に何らかの契約関係が成立していると評価することは困難である。 すなわち,公共施設整備協力金の納付に係る具体的手続については,本件指導要綱及び本件施行細目の各規定から明らかなように,特段の定めはなく,江東区においては,本件指導要綱に基づく江東区の行政指導に応じた事業者が,「寄付申込書」を江東区に提出し,江東区が現実に寄附金を授受することをもって終了するという取扱いがされている。このような手続からすると,公共施設整備協力金の納付は,事業者による一方的な寄附の差入れと評価せざるを得ないから,江東区と事業者との間に,公共施設整備協力金の納付について何らかの契約関係が成立すると評価することは困難である。 仮に,公共施設整備協力金の法的性格を私法上の贈与契約と解した 評価せざるを得ないから,江東区と事業者との間に,公共施設整備協力金の納付について何らかの契約関係が成立すると評価することは困難である。 仮に,公共施設整備協力金の法的性格を私法上の贈与契約と解したとしても,上記の具体的手続からすれば,事業者による「寄付申込書」に記載された金額以外に,江東区と事業者との間に,公共施設整備協力金について,何らかの債権債務が発生する余地はない。すなわち,事業者による「寄付申込書」の提出と江東区による現実の寄附金の授受をもって終了す る公共施設整備協力金の手続からすれば,上記「寄付申込書」の提出が「贈与契約の申込みの意思表示」であり,上記寄附金の授受が「贈与契約の承諾の意思表示」と解さざるを得ない。 そうすると,本件でいえば,Aが金額2億5576万6000円の「寄付申込書」を提出し,江東区がこれを受領したことをもって,江東区とAとの間の契約関係はすべて終了し,上記金額以外の債権は,江東区には存在しない。 なお,原告らは,本件覚書を根拠に,江東区とAは,Aが江東区に対し,本件協力金として5億5500万円の支払を約束したと主張するが,本件覚書には本件協力金の支払に関する取決めは全くない。 したがって,江東区は,Aに対し,本件協力金に係る債権を有していないから,本件訴えは,怠る事実の違法確認請求の対象となる財産を欠き,不適法である。 ウさらに,地方自治法240条2項は,普通地方公共団体の長は,地方公共団体が有する債権について,政令の定めるところにより,その督促,強制執行その他その保全及び取立てに関し必要な措置をとらなければならない旨定めているが,寄附金に係る債権については,同条4項6号で,同条2項の規定を適用しないとしている。これは,地方財政法4条の5が,地方公共団体は,住民等に対し,直接であると間接である ければならない旨定めているが,寄附金に係る債権については,同条4項6号で,同条2項の規定を適用しないとしている。これは,地方財政法4条の5が,地方公共団体は,住民等に対し,直接であると間接であるとを問わず,寄附金を割り当てて強制的に徴収するようなことをしてはならない旨定めていることにもかなうものである。 このように,公共施設整備協力金のような寄附金については,仮に,地 方公共団体が寄附金に係る何らかの債権を有するに至ったとしても,地方自治法は,地方公共団体の長が寄附金に係る債権を管理することを予定しておらず,むしろ,地方財政法4条の5の規定の趣旨からすれば,強制的に徴収することを禁止しており,そうである以上,地方公共団体の財源として依存すべきではない寄附金に係る債権の管理は,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とする住民訴訟の対象たる財産管理行為に当たらないというべきである。 したがって,本件訴えは,不適法である。 (原告らの主張)ア本件協力金の納付を求める行為は,Aが支払を約束している以上,協力金に係る債権の行使にほかならない。そして,金銭債権の行使が財務的処理を直接の目的とする性質を有することは,地方自治法が「第3款債権」の項目を「第9節財産」の中に置いていることからも自明である。 したがって,本件協力金の納付を求める行為は,財産の管理に当たる。 このように本件協力金の納付を求める行為が財産の管理に当たるか否かを判断するに当たっては,「本件協力金の納付を求める行為」そのものについて,財務的処理を直接の目的とする性質を有するか否かが検討されなければならない。被告の主張するように判断の対象を本件指導要綱に基づく行政指導にすり替えてしまうのは誤りである。 本件協力金の支払約束がある場合に本件協力金の納付を求める行為は, るか否かが検討されなければならない。被告の主張するように判断の対象を本件指導要綱に基づく行政指導にすり替えてしまうのは誤りである。 本件協力金の支払約束がある場合に本件協力金の納付を求める行為は,本件協力金に係る債権の行使であり,当該債権は支払約束により発生したものであるところ,その支払約束は,本件指導要綱とかかわり合うもので はあっても,本件指導要綱とは別個の法律要件として存在する。そうである以上,支払約束から発生した本件協力金に係る債権の行使が,財産の管理に当たるか否かを検討するに当たっては,もはや本件指導要綱の目的等に拘泥する必要は全くなく,そのような判断姿勢は誤りというほかない。 したがって,被告の前記主張は,本件協力金の納付を求める行為をすべて本件指導要綱に基づく行政指導としてとらえる前提が誤りであるほか,支払約束に基づいて本件協力金の納付を求める行為について,これを財産の管理に当たらないとする結論も誤っている。 イ本件指導要綱34条1項によれば,江東区は,Aに対して5億5500万円を求めるものとされ,Aは,本件覚書において,本件指導要綱の規定を遵守することを約束している。このような本件覚書の交換により,Aが,江東区に対し,本件指導要綱によって求められる協力金の支払に応じること,すなわち5億5500万円の支払約束をしていることは明白である。 当該支払約束により,江東区は,Aに対し,5億5500万円の債権を取得するのである。 この点について,東京都狛江市が事業者との間で締結した協定に基づいて事業者に対し開発負担金の支払を求めた事案において,裁判所は,「本件指導要綱には…(中略)…各整備費(注・負担金のこと)の算定根拠となる数字が示されていた」こと,「(事業者から狛江市に提出された書面に)本件各負担金の支払を求めた原告(注 において,裁判所は,「本件指導要綱には…(中略)…各整備費(注・負担金のこと)の算定根拠となる数字が示されていた」こと,「(事業者から狛江市に提出された書面に)本件各負担金の支払を求めた原告(注・狛江市のこと)の指示に従う旨の被告(注・事業者のこと)の回答が記載されていた」ことなどから,負担金の支払約束があったものと認定している(東京地裁平成元年6月1 2日民事第30部判決・判例タイムズ723号206頁)。すなわち,裁判例においても,指導要綱及びそれに基づく協定の締結を一体として,負担金の支払約束が認定されているのである。 Aは,本件覚書において,被告が事業者に対し計算式から導かれる一義的な金額の協力金の支払を求める旨規定した本件指導要綱34条1項についても,これを遵守する旨約束しているのであるから,当該金額について支払約束をしたことは明白である。 本件協力金の納付に係る手続を実体に即して考察するならば,本件指導要綱に基づく行政指導として,本件協力金の支払につき申込みの誘引がされ,これを受けてAが本件覚書を締結したことにより,本件協力金につき支払約束,すなわち贈与契約が成立したと見るべきである。この点について,「寄付証書」が存在すればその趣旨はより明確になるが,たとえ「寄付証書」が存在しなくとも,本件指導要綱及び本件覚書の規定から,Aが被告に対して支払を約束した本件協力金の額は確定することができるから,支払約束の成立が否定されるいわれはない。 以上の次第であるから,本件覚書における支払約束により,江東区はAに対して5億5500万円の債権を有している。 ウ本件協力金は,江東区における会計上,「寄附金」として処理されている。しかし,本件協力金が地方自治法240条4項6号に当たるか否かは,法の趣旨に従って「寄附金」の意義を確定した上 を有している。 ウ本件協力金は,江東区における会計上,「寄附金」として処理されている。しかし,本件協力金が地方自治法240条4項6号に当たるか否かは,法の趣旨に従って「寄附金」の意義を確定した上で判断されるべきであり,会計上「寄附金」として処理されているからといって,それが直ちに法律上も「寄附金」に当たるとすることはできない。 地方自治法240条4項6号が「寄附金に係る債権」を訴求権のない債権とした趣旨は,「『寄附金に係る債権』は,債務者の自発的意思に基づくもので贈与契約としての法的拘束力を与えることが適当でないことや地方自治体の財源として依存すべきでないこと」によるものとされている。 また,当該規定は,地方財政法の割当的寄附金等の禁止(同法4条の5)とも歩調を合わせている。 そうであるならば,地方自治法上の「寄附金」とは,その性質上,たとえ支払約束があってもそれに法的拘束力を認めるべきでないもの,すなわち,義務を履行するか否かについても,真に義務者の自発的又は任意的な意思に係るものであることが要請されるというべきである。 そこで,本件協力金の性質について見ると,事業者は,本件協力金を支払う旨を約束しなければ,江東区により勧告を受け,更に勧告に応じなければ,氏名等を公表されるという不利益を課される(本件指導要綱39条1項,2項)。このようにして納付される本件協力金が,真に義務者の自発的又は任意的な意思に係るものといえるかは甚だ疑問である。また,本件指導要綱が定められてから,平成15年度には2億1250万円,同16年度には14億5980万2000円,同17年度には9億0488万円の公共施設整備協力金が納付され,江東区の財政における貴重な財源となっている実情からすれば,本件協力金の支払約束に法的拘束力を認めるべきでないという理由も 2000円,同17年度には9億0488万円の公共施設整備協力金が納付され,江東区の財政における貴重な財源となっている実情からすれば,本件協力金の支払約束に法的拘束力を認めるべきでないという理由も何ら見出せない。 以上の次第であるから,本件協力金は,地方自治法240条4項6号が想定する「寄附金」とは性質を異にするものであり,「寄附金」には当た らないというべきである。 (2)被告がAに対し本件協力金として2億5576万6000円を納付させるにとどまり,残金の請求をしないことが,違法に地方公共団体の有する財産の管理を怠ることに当たるか(原告らの主張)本件において,本件協力金の額を減額処理した手続は,本件指導要綱に基づくことなく,建設コンサルタントの報酬額分を減額する点に問題がある上,事業者であるAの関連会社に減額分を算出させ,その額が適正なものか否かについて江東区側で全く確認をしなかったというずさん極まりないものである。このような減額手続の在り方自体,区の財務行政の適正な運営という観点からすれば,非常に問題のある違法なものといわざるを得ない。 また,本件施行細目7条においては,本件指導要綱34条2項に定める公共施設整備協力金を減額することができる用地又は施設を限定列挙しているから,減額が許されるのは,むしろ本件施行細目7条所定の「用地又は施設」の無償提供がある場合に限られるというべきである。同条4項の「その他区長が認めるもの」という定めも,区長が認める「用地又は施設」の無償提供がある場合に減額を認めるという趣旨であり,減額を認めるかどうかを区長が認めるという趣旨に解するのは誤りである。 そして,本件においては,公開空き地の整備工事等などが減額の対象とされているが,本件施行細目7条からはこのような工事費を減額するという趣旨は全く読 を区長が認めるという趣旨に解するのは誤りである。 そして,本件においては,公開空き地の整備工事等などが減額の対象とされているが,本件施行細目7条からはこのような工事費を減額するという趣旨は全く読み取れないのであるから,このような工事費を減額するのは違法である。 さらに,本件における減額処理には,①公開空き地及び緑地整備工事に関しては,区民に全く開放されていない緑地部分までもが減額の対象とされていること,②集会室整備工事に関しては,集会室が江東区の区分所有とされていないこと,③れんが遺構保存及び設置工事に関しては,積算額が4000万円と異常に高額であることなどの問題点がある。 以上によれば,被告が行った減額処理は,違法といわざるを得ない。 (被告の主張)本件協力金の受領については,本件指導要綱に基づいて適切に行われたものであって,何ら違法な点は存在しない。 また,原告らは,被告が本件指導要綱34条2項に基づくことなく本件協力金の額を減額したものと主張するが,同項は,マンション建設事業者が区の公共事業や公益事業に協力した場合にその貢献度を公共施設整備協力金の算定の際に考慮しようとする趣旨であり,必ずしも「用地,施設の無償提供」の場合に限定されているものではない。 しかも,そもそも前記のとおり,江東区は,Aに対し,本件協力金に係る債権を有していないから,財産の管理を怠る事実に該当することはない。 第3争点に対する判断 本件協力金に係る債権の有無について(1)ア事案にかんがみ,まず,江東区がAに対し本件協力金に係る債権を有しているか否かについて検討する。 イ証拠(甲3から5まで,乙2から4まで,6)及び弁論の全趣旨によると,公共施設整備協力金の納付手続は,通常の場合には,次のとおりであ ることが認められる。 (ア)事業者は ついて検討する。 イ証拠(甲3から5まで,乙2から4まで,6)及び弁論の全趣旨によると,公共施設整備協力金の納付手続は,通常の場合には,次のとおりであ ることが認められる。 (ア)事業者は,建築確認申請や開発行為の許可申請等の法令に基づく申請前に,江東区に対し,事前協議申請書を提出する。 (イ)江東区と事業者との間において,覚書を交換する。 (ウ)上記覚書の交換とほぼ同じ時期に,事業者が江東区に対して「寄付証書」を提出する。 なお,平成17年度当初から使用されている「寄付証書」の用紙(乙3)には,不動文字により,「下記の金額を,公共施設整備協力金として,竣工時(平成年月頃)に寄付します。ついては,後日のため,この寄付証書を差し入れます。なお,金額については,竣工時に精査した上で確定することとします。」との文言が記載され,その下に,金額を記載する欄があり,その内訳として,「(住宅戸数-29戸)×125万円」と記載されている。 (エ)江東区は,建物の竣工の前後に,事業者に対し,「公共施設整備協力金相殺額の決定について」と題する書面を交付し,江東区の希望する公共施設整備協力金の額を通知する。 (オ)事業者は,江東区に対し,「寄付申込書」を提出する。 (カ)江東区において,公共施設整備協力金としての寄附金の受入れの決定を行う。 (キ)江東区が事業者に対して納入通知書を交付する。 (ク)事業者は,上記納入通知書により公共施設整備協力金を払い込む。 ウ前記前提事実並びに証拠(甲3から5まで,乙2から4まで,6,1 0)及び弁論の全趣旨によると,本件協力金の納付手続の経過は,①平成14年11月26日,事業者であるAが江東区に対し事前協議申請書を提出したこと,②同15年4月16日,江東区とAとの間において,本件覚書が交換され 趣旨によると,本件協力金の納付手続の経過は,①平成14年11月26日,事業者であるAが江東区に対し事前協議申請書を提出したこと,②同15年4月16日,江東区とAとの間において,本件覚書が交換されたが,そのころ,Aは,「寄付証書」の提出を拒否したこと,③同17年3月31日ころ,江東区は,Aに対して,「公共施設整備協力金相殺額の決定について」と題する書面を交付し,江東区がAに対して納付を希望する額が2億5576万6000円であることを通知したこと,④同月31日,Aが江東区に対し,金額が2億5576万6000円と記載された「寄付申込書」を提出し,江東区において,本件協力金に係る寄附金として,上記金額を受領する旨の決定がされたこと,⑤同年4月20日,Aが江東区から交付を受けた納入通知書により上記金員を金融機関に払い込んだこと,⑥同月27日,江東区が上記金員を受領したものであること,⑦事業者から江東区に対して「寄付証書」が提出されていない事例は,同18年12月11日時点で,本件以外に7事例あるが,これらの事例においては,いずれも公共施設整備協力金の納付に当たり,事業者から「寄付申込書」が提出されていることが認められる。 エ以上のような本件協力金の納付手続の経過を踏まえ,江東区とAとの間に本件協力金5億5500万円の支払約束が成立したと認めることができるかについて検討する。 本件指導要綱は,その1条において,「この要綱は,一定規模以上のマンション,ワンルームマンション及び業務用建築物の建設事業を行う事業者に対して,江東区住宅基本条例(括弧内省略)に基づき区が必要な指導 を行い,事業者と区が協働して,良好な住宅・住環境の整備と市街地環境の形成を促進し,安全で快適なまちづくりの推進に寄与することを目的とする。」と定めていることなどから,一定 づき区が必要な指導 を行い,事業者と区が協働して,良好な住宅・住環境の整備と市街地環境の形成を促進し,安全で快適なまちづくりの推進に寄与することを目的とする。」と定めていることなどから,一定規模以上のマンション等の建設事業を行う事業者に対して,江東区において適切な行政指導を行うための内部基準と見るのが相当であり(最高裁昭和63年(オ)第890号平成5年2月18日第一小法廷判決・民集47巻2号574頁参照),したがって,本件協力金の納付を求めるなどの行為は,事業者による学校用地の提供,事業者による用地提供,公共施設の整備等と並んで,マンション建設により必要となる公共施設への受入れ等の対策を講じるため,江東区が事業者に対して行う行政指導の1つと認められる。 そして,本件協力金については,本件指導要綱34条1項において,江東区は,事業者に対し,一定のマンションを対象に,所定の算式により導かれる金額の本件協力金を求めるものとする旨定められているが,これは,建設省から各都道府県知事等に対して発せられた「『宅地開発等指導要綱の見直しに関する指針』について」(平成7年11月7日建設省経民発第45号,建設省住街発第94号。乙8)において,「事業者に一定の協力を求める行政指導を行う場合にあっては,行政運営の公正の確保と透明性の向上を図るため,行政指導の内容及び手続について,明文化するとともに公表することとし,内規等の根拠が不明確なものに基づいて負担を求めることは適当でないこと。例えば『○○については市長と別途協議』のような不明確な内容の条項を根拠に負担を求めることは適当ではなく,仮に個々の事例ごとに弾力的な対応をせざるを得ない場合があるとしても,協 力を求める内容の上限を設定し,又は標準的な内容を明示する等,運用に当たっての公正の確保と透 を求めることは適当ではなく,仮に個々の事例ごとに弾力的な対応をせざるを得ない場合があるとしても,協 力を求める内容の上限を設定し,又は標準的な内容を明示する等,運用に当たっての公正の確保と透明性の向上を図るための適切な措置を講じること。」などの指針が示されていることや,本件指導要綱34条2項において,「区は,前条により,マンション建設事業者から用地,施設の無償提供等があった場合,前項に定める金額を減じることができるものとする。」とされ,これを受けて,本件施行細目7条において,「要綱第34条第2項に定める公共施設整備協力金を減額できる用地又は施設は,次のとおりとする。(1)幼稚園,小学校,中学校,(2)保育園,児童館,学童クラブ,(3)道路,公園,(4)その他区長が認めるもの」とされ,事案により公共施設整備協力金を減額することができるとされていることを考慮すると,本件指導要綱34条1項は,行政指導における公正の確保と透明性の向上を図るため,江東区が事業者に対して求めるものとされる公共施設整備協力金の額の上限について,その算出基準を規定したものと認めるのが相当であって,事業者の納付すべき公共施設整備協力金の額を一義的に定めたものと認めることはできないというべきである。 さらに,本件覚書についても,その1条の文言は,Aは,本計画の実施に当たり,各種法令,要綱等の規定を遵守し,良好な住宅,住環境の推進に寄与するよう努める旨の抽象的かつ一般的なものであって,遵守すべきとされる法令や要綱は何ら具体的に特定されていない上,本件覚書は25箇条という比較的多くの条項から成るにもかかわらず,本件協力金について具体的に言及されている条項は全く存在しないことに照らすと,本件覚書の交換によりAが江東区に対して本件指導要綱34条1項の基準に従っ て 較的多くの条項から成るにもかかわらず,本件協力金について具体的に言及されている条項は全く存在しないことに照らすと,本件覚書の交換によりAが江東区に対して本件指導要綱34条1項の基準に従っ て算出される額の本件協力金の納付を約束したと認めることは困難である。 以上の点に加えて,本件協力金の納付手続の経過,殊に,Aが江東区に対して「寄付証書」の提出を拒否したことを考慮すると,本件覚書の交換によりAが江東区に対し本件指導要綱34条1項の基準に従って算出される額の本件協力金の支払に応じたものと,すなわち,5億5500万円の支払約束をしたものと認める余地は全くないというべきである。 オこれに対して,原告らは,東京都狛江市が事業者との間で締結した協定に基づいて事業者に対し開発負担金の支払を求めた事案において,裁判所は,「本件指導要綱には…(中略)…各整備費(注・負担金のこと)の算定根拠となる数字が示されていた」こと,「(事業者から狛江市に提出された書面に)本件各負担金の支払を求めた原告(注・狛江市のこと)の指示に従う旨の被告(注・事業者のこと)の回答が記載されていた」ことなどから,負担金の支払約束があった旨認定しているとして,裁判例においても,指導要綱及びそれに基づく協定の締結を一体として,負担金の支払約束が認定されているなどと主張する(前掲東京地裁平成元年6月12日民事第30部判決)。 しかしながら,上記事案は,事業者が納付すべき負担金の金額等をめぐって,事業者と同市の担当者との間で調整が行われ,事業者において,負担金の支払を求めた同市の指示に従う旨の回答が記載された書面を作成し,これを同市に提出したというものであって,本件とは事実関係が異なるから,原告らの上記主張は失当というべきである。 カ以上のとおり,Aが本件覚書の交換により江東区 う旨の回答が記載された書面を作成し,これを同市に提出したというものであって,本件とは事実関係が異なるから,原告らの上記主張は失当というべきである。 カ以上のとおり,Aが本件覚書の交換により江東区に対して本件指導要綱 34条1項の基準による本件協力金として5億5500万円の支払を約束したものと認める余地は全くなく,さらに,前記ウの事実経過に照らすと,その他の事情によりAと江東区との間で本件協力金として5億5500万円の支払が約束されたと認めることもできないから,江東区は,Aに対し,本件協力金に係る債権を有していないことが明らかである。 (2)そうすると,江東区は,Aに対し,本件協力金に係る債権を有していないのであるから,江東区がAに対し,本件協力金の残金2億9923万4000円の支払を請求しないことが,違法に地方公共団体の有する財産の管理を怠るものであるということはできない。 本件訴えの適否等について本件訴えは,本件協力金5億5500万円の支払義務を負っているAが,そのうち2億5576万6000円を支払ったのみで,残金2億9923万4000円の支払をしていないにもかかわらず,被告がAに対してその支払請求をしないことは財産の管理を怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づいて提起された訴えである。このような訴えが提起されている場合において,現にAが江東区に2億5576万6000円を支払い,被告は更に2億9923万4000円の支払請求をAに対してしていないという本件の事実関係の下では,江東区がAに対して上記残金の支払請求権を有しているか否かという点は本案の問題というべきであって,財産の管理を怠る事実として主張されている上記支払請求をしないという不作為自体は存在しているというべきであるから,本件訴えが怠る事実 請求権を有しているか否かという点は本案の問題というべきであって,財産の管理を怠る事実として主張されている上記支払請求をしないという不作為自体は存在しているというべきであるから,本件訴えが怠る事実の不存在などの理由により不適法であるということはできない(最高裁平成13年12月13日第一小法廷判決・ 民集55巻7号1500頁参照)。換言すれば,支払請求をしないことが財産の管理を怠る事実として問題とされている場合に,当該支払請求権が発生しているか否かという点は,原則として,本案の問題というべきであり,同請求権が発生していない場合は,当該請求をしないという不作為が何ら違法とはならないということであって,請求棄却の本案判断がされるべきものである。 さらに,本件指導要綱に基づく行政指導が財務的処理を直接の目的とするものではないこと,及び本件協力金の強制的な徴収が禁止されていることを理由に,本件協力金に係る債権の管理が住民訴訟の対象たる財産管理行為に当たらないとする被告の主張は,前記の本件指導要綱の内容や公共施設整備協力金の納付手続等に照らし,失当というべきである。 したがって,本件訴えは地方自治法242条の2第1項3号に基づく適法な訴えというべきであって,この点に関する被告の本案前の主張はいずれも採用することができない。しかしながら,前記1のとおり,江東区は,原告らが財産の管理を違法に怠るものとして主張する当該財産であるところのAに対する2億9923万4000円の本件協力金残金の支払請求権を有していないのであるから,上記判示のとおり,被告が同支払請求をしないことが違法であるということはできず,原告らの請求はいずれも理由がないものとして棄却されるべきものである。 第4 結論 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき, をしないことが違法であるということはできず,原告らの請求はいずれも理由がないものとして棄却されるべきものである。 第4 結論 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦裁判官市原義孝裁判官島村典男
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