平成13(ワ)1038 デニーズジャパン退職金請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月18日 神戸地方裁判所
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判決文本文17,321 文字)

判決平成14年12月18日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第1038号退職金等請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,102万7528円及びこれに対する平成11年12月14日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告,その余を被告の各負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(主位的請求)被告は原告に対し,624万9419円及びこれに対する平成12年8月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 (予備的請求)被告は,原告に対し,360万7859円及びこれに対する平成11年8月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 被告の従業員であった原告が,被告がしたと主張する懲戒解雇は不存在ないし無効で,主位的に,懲戒解雇があった1年後に退職したとして,退職金,その間の賃金,夏期一時金及び遅延損害金の支払いを求め,予備的に,懲戒解雇があった際に合意で退職した,普通解雇された,或いは,諭旨解雇されたと主張して,退職金及び遅延損害金の支払を求め,懲戒解雇が有効であったとしても,それは就業規則所定の異議申立期間経過後に発効するとして,夏期一時金及び遅延損害金の支払を求めた事案 2 前提事実(証拠に基づく事実は証拠摘示する。)(1) 被告は,飲食店の経営等を営業目的とする株式会社である。 資本金は71億2500万円で,平成13年2月末現在,534店舗を有しており,役員数は17名(取締役13名,監査役4名),従業員数2万5035名(正 等を営業目的とする株式会社である。 資本金は71億2500万円で,平成13年2月末現在,534店舗を有しており,役員数は17名(取締役13名,監査役4名),従業員数2万5035名(正社員1915名,パート・アルバイトが2万3120名)である(乙2,3)。 (2) 原告は,昭和63年3月,被告会社に入社し,平成11年7月5日当時,被告豊中石橋店店長として勤務していた。 (3) 原告は,平成11年7月6日,退職日を平成11年7月5日とする退職届けを被告に提出したが,そこには,「懲戒解雇には異議申し立てはございません」との原告の自署がある。 (4) 被告は,平成11年7月6日,原告を懲戒解雇(以下「本件懲戒解雇」という。)したと主張し,退職金及びそれ以降の賃金,平成11年7月支給の夏期一時金等の賞与を支払っていない。 (5) 平成11年7月6日当時,被告における,原告の所属する社員群の就業規則には,以下の規定があった(乙11,23,24)。 34条社員が次の各号の1に該当する場合は,解雇する。 ・・・5.諭旨解雇に相当する行為があったとき6.懲戒解雇に相当する行為があったとき・・・108条社員の給料および賞与については,別に定める「資格給与規定」により支給する。 109条社員の退職金については,別に定める「退職金規程」により支給する。 144条懲戒の種類は次の通りとし,情状により併科することがある。 ・・・6.諭旨解雇・・・その旨を諭し,退職願を提出させるただし,通告してから5日以内に退職願いを提出しな がある。 ・・・6.諭旨解雇・・・その旨を諭し,退職願を提出させるただし,通告してから5日以内に退職願いを提出しないときは懲戒解雇とする。 7.懲戒解雇・・・異議申立期間を経て,即時解雇とする。 146条社員が次の各号の1に該当する行為を行った場合は,その情状により出勤停止,昇級停止または降格(降級)処分とする。 ・・・2.職務怠慢または監督,指導の不行届きにより業務に重大な支障をきたしたとき・・・6.職務上の立場を利用して不正な行為をしたとき・・・147条社員が次の各号の1に該当する行為を行った場合は懲戒解雇とする。 ただし,情状により諭旨解雇とすることができる。 ・・・18.前条に該当しその情状が重いとき・・・(6) 被告の,原告の所属する社員群の資格・給与規定には,以下の規定がある(乙30)。 56条賞与の支給は原則として夏期及び冬期の年2回とし,会社の業績および社員の勤務成績,出勤日数その他を考慮して支給する。 ただし,会社の業績を考慮して支給しないことがある。 (7) 被告における職位と業務内容(乙4)ア被告の各店舗の従業員の職位として,店長,副店長,フロントリーダー,キッチンリーダーがある。 そして,スーパーバイザーと呼ばれる管理者がおよそ10店ほどの店舗の管理を行っていた。 イ店長は,店舗運営の最高責任者であり,具体的な業務内容としては,店舗の売上・利益予算の設 そして,スーパーバイザーと呼ばれる管理者がおよそ10店ほどの店舗の管理を行っていた。 イ店長は,店舗運営の最高責任者であり,具体的な業務内容としては,店舗の売上・利益予算の設定及び管理,店舗従業員(スタッフ)の採用及び教育,販促活動(近隣企業の挨拶等)などを行うとともに,店舗従業員に対する遵守事項の徹底,労務管理などを行う。そして,他の従業員とともに,店舗での接客及び調理業務を行う。 副店長は,上記店長の業務を補佐するとともに,店長の不在時には店長の代行を行う,そして,他の従業員と同様に店舗での接客・調理業務を行う。 フロントリーダーは,フロント業務(接客業務)を行うほか,フロント業務を行う従業員のリーダーとして,同従業員に対するサービスの教育指導等を行う。 キッチンリーダーは,自らキッチン(調理)業務を行うほか,キッチン業務のリーダーとして,同業務が円滑に動くように,食材及びキッチンの管理,運営,クック(調理担当従業員)に対する教育指導を行う。 他に,店舗においては,アルバイト店員であるユニット社員が勤務していた。 (8) 被告店舗における遵守事項-主に現金管理(乙5)被告は,その現金管理等をはじめとする店舗の運営,管理は各店舗の従業員,ことにその責任者である店長を信頼し委ねる方式を採用しているが,そのため,店舗内における遵守事項を細かく規定し,かつその管理者である店長にその旨を店長登用時研修・店長会議等を通じて通達していた。 被告は,平成9年12月11日,「現金管理の厳守項目」を通達し,店舗従業員に対し,概略以下の事項について遵守を求めていた。 アドロア交換の回数についてレジに 被告は,平成9年12月11日,「現金管理の厳守項目」を通達し,店舗従業員に対し,概略以下の事項について遵守を求めていた。 アドロア交換の回数についてレジに多額の現金を置くことを控えるとともに,現金の違算(売上金の違算も含む。)を把握するため,24時間営業店の場合には1日最低3回以上行うこと。 イ銀行入金及び銀行両替現金報告書または売上日報の銀行入金額と銀行入金する売上額とを照合し,確認した上で,銀行入金すること。 銀行で両替をする場合には,上記銀行入金と区別がつくように封筒等に分ける。銀行入金と銀行両替を一緒に行う場合には,銀行入金専用バッグを使用する。 ウ現金違算現金違算が発生した場合には正直に違算処理する。なお,この違算処理として,具体的には,原因の調査を行い,現金過不足調査報告書を作成し,被告に提出することが必要であり,不足金について,個人のお金で埋めたり,過金を抜いて保管することは厳禁されている。 エ報告書の提出現金過不足(違算,紛失等)が生じた場合,VOID(売上金の取消処理)を行った場合,売上金未入金(売上金の銀行への未入金)の場合には,必ず発生日から2週間以内に報告書を提出することオ鍵の管理と引継現金事故防止のため,売上金投入保管庫(当日の売上金を入れる保管庫)の鍵がついている店長キーは店長が保持し,貸出は一切厳禁する。 そして,上記売上金投入保管庫以外の金庫の鍵がついているオペレーションキーは,当該時間帯の責任者(予め,時間帯の責任者として店長から指名された者)が保持し,貸し出しは一切厳禁とし,さらに引継の時は,その て,上記売上金投入保管庫以外の金庫の鍵がついているオペレーションキーは,当該時間帯の責任者(予め,時間帯の責任者として店長から指名された者)が保持し,貸し出しは一切厳禁とし,さらに引継の時は,その時間帯の責任者から次の時間帯の責任者に引き継ぐこととする。その際には,引き継いだ者が金庫内の両替準備金及びドロア準備金を確認し,金種入力(お金の種類をコンピューターに入力すること)を行うことが義務づけられている。 (9) 被告における,原告の所属する社員群の退職金規程には,以下の規定がある(乙22)。 3条・・・勤続満3年に到達した日の翌日以降継続勤務し,ナショナル・エリア社員就業規則31条により退職した場合もしくはユニット社員群に群転換した場合に,退職金を支給する。 6条① 退職金算定の基礎給は,3条により受給資格を取得した者の取得日の含まれる月から退職した月の前月までの基本給月額の総和をその月額で除した平均額とする。 ・・・19条第3条に定める受給資格者が勤続満20年未満または満45歳未満で退職したときに,本人の請求に基づき退職一時金を支給する。 20条退職一時金の支給額は,退職事由に応じて,次の各号に定める算式により計算した金額とする。 1.定年または会社都合で退職した場合退職一時金額=基本給×退職一時金乗率A(別表5)2.自己都合により退職した場合退職一時金額=基本給×退職一時金乗率B(別表6)31条次の場合には,退職金を支給しない。 ① ナショナル・エリア社員就業規則第144条に定める懲戒解雇の場合には,退職金を支給しない。 金乗率B(別表6)31条次の場合には,退職金を支給しない。 ① ナショナル・エリア社員就業規則第144条に定める懲戒解雇の場合には,退職金を支給しない。 ただし,諭旨解雇の場合は,退職金相当額の2分の1を支給する。 (10) 原告が,平成11年7月6日に原告を退職した場合の,退職金算定のための平均給与月額は19万0283円で,自己都合により退職した場合の退職一時金乗率は10.8,会社都合により退職した場合の退職一時金乗率は,14.467であって,平成12年7月5日に会社都合により退職した場合の退職一時金乗率は,16.350である(乙22,37)。 3 争点(1) 原告の退職原因(懲戒解雇の意思表示の有無,効力等)ア原告の主張(ア)a 本件懲戒解雇は存在しない。 なぜならば,告知文書の作成・交付がないし,権限ある者の意思決定も経ていない。そのことは,乙18に,人事部長やその関連権限のある誰の署名・押印もなされていないことからわかる。 b 仮に存在したとしても,(イ)記載の理由で無効であって,原告は,本件懲戒解雇から合理的期間である1年後に退職した。 c 仮に存在したとしても,(イ)記載の理由で無効であって,原告は,平成11年7月5日,被告との間で合意退職をした。 d 仮に存在したとしても,(イ)記載の理由で無効であって,その効力は,普通解雇の限度で有効である。 e 仮に存在したとしても,(イ)記載の理由で無効であって,その効力は,諭旨解雇の限度で有効である。 (イ) 懲戒事由a 被告の主張(イ)aについて e 仮に存在したとしても,(イ)記載の理由で無効であって,その効力は,諭旨解雇の限度で有効である。 (イ) 懲戒事由a 被告の主張(イ)aについては,被告のどの店も現金操作や自腹を切っての穴埋めが慣習となっていた。 また,原告が着服した事実はない。 b 被告の主張(イ)b,cについては,A副店長がタバコ売上金の違算に対し,タバコの在庫数を水増しする(架空在庫とする)ことで穴埋めしていたことは知っていたが,実際,いつどこでどのように行っていたかの詳細は知らない。 被告のこれらの点についての調査の際,指示の事実を認めたのは,長時間の尋問・睡眠不足・ストレスのため,当時の原告の記憶が定かでなかったところに,被告が,「Aはこう言っているがこれらはお前が指示したことではないのか」と誘導したからである。 c 被告の主張(イ)dについて(a) 同(a)については,A副店長が現金保管庫に入れたという10万円が紛失したものである。 (b) 同(b)については,紛失でなく,盗難にあったものである。 (c) 同(c)については,穴埋めをしたのは,被告の習慣に従った。 d 被告の主張(イ)eについては,原告が豊中石橋店に転勤した平成10年6月1日当時,朝7時から深夜2時までの営業時間であったが,約1か月過ぎた頃,本部より24時間営業に変更すると言われたところ,Bは,余人に代え難い能力があるユニット社員であったから,やむなく,そのような不正勤務に及ばせた。 そして,このような不正勤務は,被告において,常態化していた。 れたところ,Bは,余人に代え難い能力があるユニット社員であったから,やむなく,そのような不正勤務に及ばせた。 そして,このような不正勤務は,被告において,常態化していた。 e 被告の主張(イ)fについては,被告が主張する「現金投入保管庫」は,すべての店にあるわけではない。 f 被告の主張(イ)gについては,争う。 被告が指摘する点は,原告が入社してからの11年間に数々の上司が行ってきた慣習である。被告においては,サービス残業が強要されており,現金違算等のアクシデントが起きると,店長が,調査,報告書作成に長時間を要し,サービス残業をせざるをえないため,自ら解決した方が早く退社できると,穴埋めをすることとなる。 このような状況に陥るシステム(手引書・スタンダード)に問題がある。 原告の行為は,就業規則146条2号,6号にいう,「不正な行為」ではなく,「売上金を不正に使用した」ともいえず,「職務上の立場を利用して」の場合には該当せず,仮に該当しても同147条18号「その情状が重いとき」に該当しない。 イ被告の主張(ア) 懲戒解雇の経緯平成11年6月21日,豊中石橋店において,同月18日の売上金30万8043円が紛失していることが発覚し,被告監査室が調査したところ,その過程で,原告の後記懲戒事由が発覚した。 そこで,被告は,同年7月5日,原告に後記懲戒事由に該当する事実をそれぞれ確認したところ,原告も事実を認め,被告に対し,その旨の書面を提出した。 そして,被告は,同月6日,再度上記書面に記載された項目ごとに事 に後記懲戒事由に該当する事実をそれぞれ確認したところ,原告も事実を認め,被告に対し,その旨の書面を提出した。 そして,被告は,同月6日,再度上記書面に記載された項目ごとに事実を確認したところ,原告は事実について異議を申し出ることもなく認めたこと及び非違行為が頻回に及んでいることから後記懲戒事由を理由に懲戒解雇した。これに対し,原告は,同日,被告に対し,「懲戒解雇に異議申立はございません。」と懲戒解雇処分を認めている。 (イ) 懲戒事由a 原告は,店長という職位にありながら,豊中石橋店の売上金を次のように不正使用していた。 (a) 平成10年6月から8月頃にかけて,約1万円のタバコ売上金違算が発生した。原告は,部下のCに対し,顧客からのオーダーをハンディターミナルの練習用キーを使用してレジを通さずに浮いたお金(顧客から頂いたお金約1万円)で穴埋めするように指示し,これにより売上金を不正に使用した。 この行為は,就業規則146条6号に該当する。 (b) 平成11年6月23日,過金(顧客の会計伝票上マイナス処理しなければいけないところをせずに顧客に請求したために生じた過金違算金)2300円をタバコ売上金違算の穴埋めに使用するよう部下のA副店長(以下「A副店長」という。)に指示し,これにより売上金を不正に使用した。 この行為は,就業規則146条6号に該当する。 b タバコ売上金の違算に対し,タバコの在庫数を水増しする(架空在庫とする)ことで穴埋めするように部下のA副店長に指示し,行わせた。 すなわち,平成11年5月から6月にかけて,タバコ売上金 金の違算に対し,タバコの在庫数を水増しする(架空在庫とする)ことで穴埋めするように部下のA副店長に指示し,行わせた。 すなわち,平成11年5月から6月にかけて,タバコ売上金の違算が,同年5月20日から26日で計4500円,27日から30日で計7840円,6月1日,2日で計5040円,3日から9日で計6000円,10日から16日で計1万1000円発生したことに対し,部下のA副店長に対し,タバコの在庫数の水増しで穴埋めするように指示し,これにより,部下のA副店長及びDフロントリーダーがこれを実行した。 この行為は,就業規則146条6号に該当する。 c 部下のA副店長が,売上金によって,タバコ違算金の穴埋めをすることを黙認していた。 すなわち,部下のA副店長が,平成11年6月23日以降,売上金の中から少しずつ抜き取ったお金(3000円)でタバコ違算金の穴埋めをすることを知りつつこれを黙認した。 この行為は,就業規則146条2号,6号に該当する。 d 店長として,現金違算(金銭事故等を含む。)が発生した場合には,被告に対して報告する義務を負っているところ,次のような現金紛失事故が度重なって発生したにもかかわらず,何ら被告スーパーバイザーにも報告せず,独断で紛失金の穴埋めを行った。 この行為は,就業規則146条2号,6号に該当する。 (a) 平成10年10月14日,店舗の金庫内の両替準備金10万円が紛失していたが,被告に事故報告もせず,A副店長が持ってきた10万円で穴埋めし,後述する(b)の3万円の紛失事故(結果として紛失したのは2万円)と合わせて合計12万円を賞 庫内の両替準備金10万円が紛失していたが,被告に事故報告もせず,A副店長が持ってきた10万円で穴埋めし,後述する(b)の3万円の紛失事故(結果として紛失したのは2万円)と合わせて合計12万円を賞与支給時(同年12月)に同副店長,Eリーダー(以下「Eリーダー」という。)とともに,原告が8万円,A副店長が2万円,Eリーダーが2万円と分担して穴埋めした。 (b) 平成10年11月下旬,A副店長が,組合定期大会出席のため,両替準備金から3万円を借りて東京にいった。その返却のため,同副店長が,3万円を入れた封筒を金庫の2段目に保管するが,その後紛失した。そうであるのに,原告は,被告に事故報告もせず,(a)記載のとおり,A副店長らと穴埋めをした。 (c) 平成11年3月29日,両替準備金から2万円が紛失しているのがわかった。原告は,被告に事故報告をせず,最終的に,A副店長,Eリーダー,Dフロントリーダーとともに,原告5000円,A副店長,Eリーダー各6000円,Dフロントリーダー3000円を分担して穴埋めした。 e 原告は,ユニット社員B(以下「B」という。)の不正就業を指示した。即ち,原告は,平成10年10月から11月にかけて,Bの給与が年間103万円を超えてしまうことから,他のユニット社員であるFの名義で勤務するように不正な指示をした。 このような原告の行為は,就業規則146条6号に該当する。 f 原告は,被告の現金管理基準を徹底していなかった。 すなわち,金,土,日曜日及び祝祭日等銀行入金できない売上金は現金投入保管庫に投入すべき(現金管理の厳守項目の5の3)ところ,原告は上記売上金の保管について店舗従業員に 。 すなわち,金,土,日曜日及び祝祭日等銀行入金できない売上金は現金投入保管庫に投入すべき(現金管理の厳守項目の5の3)ところ,原告は上記売上金の保管について店舗従業員に対して徹底していなかったことから,平成11年6月18日(金)の売上金30万8043円について,従業員Bが現金投入保管庫に投入することを怠り,金庫内の中段に保管し,結果として上記売上金の紛失事故が発生した。 また,店長キーは必ず携帯すべき(現金管理の厳守項目の5の1)ところ,原告は平成11年6月当時金庫内の自分のカバンの中に入れていた。 さらに,24時間営業店である豊中石橋店においてはドロア交換を1日3回行うべき(現金管理の厳守項目の1の1)ところ,原告が同年6月19日,1回しか行っておらず,同月12日においても2回しか行っていない。 このような原告の行為は,就業規則146条2号に該当する。 g 以上,aないしfの事由から,原告は,現金違算が生じても一切被告に報告をすることもなく,売上金を不正に使用する,あるいは在庫の水増しを行うなどの不正行為を度重ねて犯し,さらに不正就業を指示するなど,被告従業員としてあるまじき行為を行っていたことから,就業規則147条18号に該当する。 (2) 本件懲戒解雇が存在し,有効であって,原告の退職原因が懲戒解雇であった場合の退職金請求の可否ア原告の主張退職金の功労報償的性格に照らせば,退職金の不支給規定を一般的に公序良俗違反(民法90条)となすことも適切でない。しかしながら,退職金の性格からは,退職金不支給規定を有効に適用できるのは,労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給の場合 不支給規定を一般的に公序良俗違反(民法90条)となすことも適切でない。しかしながら,退職金の性格からは,退職金不支給規定を有効に適用できるのは,労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給の場合)ないし減殺(一部不支給の場合)してしまう程の著しく信義に反する行為があった場合に限られるべきである。 そして,以下の点からすると,原告には,退職金が全部支払われるべきである。 (ア) 原告は,長年被告・従業員のために尽くしてきた勤務熱心な社員で,在勤12年の間に有給休暇をとった日数も1ないし2日に留まるほどであった。 (イ) 被告に対する提言も怠らず,無理な人員配置是正の努力もしてきた。 (ウ) 被告が懲戒事由とする点は,すべて,原告の私利を図ったものではない。 (エ) 被告が懲戒事由とする点は,上司からの強い指示・示唆の下にやむない方法としてとるに至ったもので,原告が自らつくり出したものではなく,他店においても,同様に行われているものであった。 (オ) 会社は無理な人員配置によって原因を作り,是正方法についても一片の書類を配布しただけでその実現のためのフォローを欠いた。 (カ) 会社に実損はない。 イ被告の主張争う。 本件においては,被告は,原告の非違行為が頻回に及んでおり,その責任は重大であることからやむなく原告を懲戒解雇したものであるから,退職金の不支給には,なんら正当性に欠けることはない。 (3) 懲戒解雇が有効な場合の夏期一時金支払請求権ア原告の主張原告は,平成11年7月6日に異議申立期間の説明を受け,そのことを知っておればその権利を行 。 (3) 懲戒解雇が有効な場合の夏期一時金支払請求権ア原告の主張原告は,平成11年7月6日に異議申立期間の説明を受け,そのことを知っておればその権利を行使し,支給日の同月9日も在籍していたに違いなく,夏期一時金支払い請求権はある。 イ被告の主張原告は,平成11年7月6日,懲戒解雇に異議申立はない旨書面で認めていたものであるから,同日の懲戒解雇は,即日効力が発生し,その後,被告が原告に対して,改めて異議申立期間を設けなかったことには問題はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に,証拠(甲2,5,7,9,10,12,13,54,乙26,証人G,原告本人,後掲各証拠)及び弁論の全趣旨を加えると,次の事実を認定することができる。 (1) 原告は,昭和63年3月被告に入社した後,サービス残業をしたことがあり,他の従業員がサービス残業をしていることを見聞きしたことがあった。 原告は,その頃,上司が,現金違算について,「現金管理の厳守項目」に従った処理,報告をせず,自分の負担で過少金を穴埋めしたり,店舗にある他の現金を流用していたことを見たことがあった。 原告は,その頃,上司が,あるアルバイト職員に多く働いて貰うため,形式上,他のアルバイト職員が働いた形として,あるアルバイト職員の年間給与を103万円以下に抑え,あるアルバイト職員が脱税することを助けていたことを見聞きした。 (なお,甲1ないし10,54,原告本人には,上記の現金の流用や不正就労は,被告において,日常的に行われていたとする部分があるが,それらの証拠によっても,被告において,どの程度の頻度ないし額の現金の流用やどの程度の頻度の不正就労が行 人には,上記の現金の流用や不正就労は,被告において,日常的に行われていたとする部分があるが,それらの証拠によっても,被告において,どの程度の頻度ないし額の現金の流用やどの程度の頻度の不正就労が行われているかを特定して認定することは困難であって,特に,乙32によると,「現金管理の厳守項目」の通達がされたことによって,公とならない現金の流用はある程度減少したと窺えることと併せ考慮すると,甲1ないし10,54,原告本人によって,被告において,原告がした現金の流用や不正就労と同程度の現金の流用や不正就労が日常的であったとまで認定することは困難である。)(2) 原告は,それらの不正行為について,被告に発覚した場合には,減給や降格の懲戒処分を受ける扱いとなっていたことを知っていた(原告本人15頁参照)。 (3) 原告は,平成10年6月から店長として豊中石橋店に勤務した。 (4) 豊中石橋店は,従前の営業時間は午前7時から午前2時までであったが,7月から24時間営業となることとなった。原告には,そのためのアルバイトを確保する責務があったが,容易に確保できなかった。 そこで,原告は,ユニット社員であるBに対し,その給与が年間103万円を超え,税務上不利になることを防ぐため,平成10年10月から平成11年にかけて,Bを,他のユニット社員であるFの名義で勤務させた。 (5) 豊中石橋店では,平成9年10月,金庫内の約35万円の現金が紛失ないし盗失した現金事故があった。 (6) 原告は,勤務時間に比して自らの処理すべき業務が多いので,現金事故について,いちいち「現金管理の厳守項目」によって定められたスーパーバイザーへの報告をすれば,サービス残業を余儀なくされると考え,現金事故については,次のように,豊中石橋 き業務が多いので,現金事故について,いちいち「現金管理の厳守項目」によって定められたスーパーバイザーへの報告をすれば,サービス残業を余儀なくされると考え,現金事故については,次のように,豊中石橋店の売上金を流用する,タバコの在庫数を水増しすることで処理し,部下の流用の事実を知りながら,黙認し,場合によっては,自分及び部下の支出によって穴埋めをし,上記報告を怠っていた。 ア原告は,豊中石橋店の売上金を次のように流用していた。 (ア) 平成10年6月から8月頃にかけて,約1万円のタバコ売上金違算が発生した。原告は,部下のCに対し,顧客からのオーダーをハンディターミナルの練習用キーを使用してレジを通さずに浮いた現金(顧客から支払を受けた現金約1万円)で穴埋めするように指示し,売上金を流用した。 (イ) 平成11年6月23日,過金(顧客の会計伝票上マイナス処理しなければいけないところをせずに顧客から金員の支払を受けたために生じた過金違算金)2300円をタバコ売上金違算の穴埋めに使用するよう部下のA副店長に指示し,これにより売上金を流用した。 イタバコ売上金の違算に対し,タバコの在庫数を水増しする(架空在庫とする)ことで穴埋めするようにA副店長に指示した。 すなわち,平成11年5月から6月にかけて,タバコ売上金の違算が,同年5月20日から26日で計4500円,27日から30日で計7840円,6月1日,2日で計5040円,3日から9日で計6000円,10日から16日で計1万1000円発生したことに対し,部下のA副店長に対し,タバコの在庫数の水増しで穴埋めするように指示し,これにより,部下のA副店長及びDフロントリーダーがこれを実行した。 ウ A副店長が,売上金によ 発生したことに対し,部下のA副店長に対し,タバコの在庫数の水増しで穴埋めするように指示し,これにより,部下のA副店長及びDフロントリーダーがこれを実行した。 ウ A副店長が,売上金によって,タバコ違算金の穴埋めをしていることを少なくとも抽象的には知りながら,それを止めなかった。 そして,A副店長は,平成11年6月23日以降,売上金の中から少しずつ抜き取ったお金(3000円)でタバコ違算金の穴埋めをした。 エ原告は,次のような現金紛失事故が度重なって発生したにもかかわらず,紛失金の穴埋めを行った。 (ア) 平成10年10月14日,店舗の金庫内の両替準備金10万円が紛失していたが,原告は,被告に事故報告もせず,A副店長が持ってきた10万円で穴埋めし,最終的には,後述する(イ)の3万円の紛失事故(結果として紛失したのは2万円)と合わせて合計12万円を賞与支給時(同年12月)に同副店長,Eリーダーとともに,原告が8万円,A副店長が2万円,Eリーダーが2万円と分担して穴埋めした。 (イ) 平成10年11月下旬,A副店長が,組合定期大会出席のため,両替準備金から3万円を借りて東京にいった。その返却のため,同副店長が,3万円を入れた封筒を金庫の2段目に保管するが,その後紛失した。原告は,(ア)記載のとおり,A副店長らと穴埋めをした。 (ウ) 平成11年3月29日,両替準備金から2万円が紛失しているのがわかったが,原告は,被告に事故報告をせず,最終的に,A副店長,Eリーダー,Dフロントリーダーとともに,原告5000円,A副店長,Eリーダー各6000円,Dフロントリーダー3000円を分担して穴埋めした。 (エ) 原告は,被告の現金管理基準を徹底していなか Dフロントリーダーとともに,原告5000円,A副店長,Eリーダー各6000円,Dフロントリーダー3000円を分担して穴埋めした。 (エ) 原告は,被告の現金管理基準を徹底していなかった。 すなわち,金,土,日曜日及び祝祭日等銀行入金できない売上金は現金投入保管庫に投入すべき(現金管理の厳守項目の5の3)ところ,原告は上記売上金の保管について店舗従業員に対して徹底していなかったことから,平成11年6月18日(金)の売上金30万8043円について,従業員Bが現金投入保管庫に投入することを怠り,金庫内の中段に保管し,結果として上記売上金の紛失事故が発生した。 また,店長キーは必ず携帯すべき(現金管理の厳守項目の5の1)ところ,原告は平成11年6月当時金庫内の自分のカバンの中に入れていた。 さらに,24時間営業店である豊中石橋店においてはドロア交換を1日3回行うべき(現金管理の厳守項目の1の1)ところ,原告が同年6月19日,1回しか行っておらず,同月12日においても2回しか行っていない。 (これらにつき,乙12,13,乙16の1ないし3。 なお,原告本人には,上記部分を否定する部分もあるが,それらの事実を認める旨被告が自署した乙12,13に照らし,採用できない。更に,原告本人は,乙12,13を記載したのは,連日の長時間の被告の取調によって,意識が朦朧としていたからである旨供述するが,それを裏付ける証拠はなく,採用できない。)(7) 原告は,上記のような現金事故の全部ないし一部は,A副店長が,被告の金員を盗んだものと疑っていた。 (8) 原告は,平成11年6月21日,被告の売上金30万8043円が盗難にあったので,直属の 告は,上記のような現金事故の全部ないし一部は,A副店長が,被告の金員を盗んだものと疑っていた。 (8) 原告は,平成11年6月21日,被告の売上金30万8043円が盗難にあったので,直属の上司であるHスーパーバイザーに連絡したところ,Hスーパーバイザー及び被告本社監査室所属のIが,当日,豊中石橋店に訪れ,その調査に当たった。その後,数日間に亘り,IがA副店長ら原告の部下に,関連する事実の確認をしたところ,上記(4)が,発覚した。 (9) そこで,被告人事部勤労厚生総括マネージャーGが,同年7月5日,I同席の下,原告に(4),(6)記載の事実を確認したところ,原告も記憶が曖昧であるがそうであると思うと事実を認め,Gに対し,(6)記載の事実を認める「業務週報」を作成し,提出し(乙13),(4),(6)の事実を認める「始末書」を作成し,提出した(乙14)。 なお,その頃,原告は,(4),(6)記載の事実も認めた「事故・苦情報告書」を作成し,被告に提出した(乙12)。 (10) そして,被告人事部勤労厚生総括マネージャーGは,同月6日,再度(4),(6)について項目ごとに事実を確認したところ,原告は事実について異議を申し出ることもなく認めたこと及び非違行為が頻回に及んでいるとの判断で,前記懲戒事由を理由に懲戒解雇した。これに対し,原告は,同日,被告に対し,「懲戒解雇に異議申立はございません。」と懲戒解雇処分を認めた。 そして,原告が提出した始末書の裏面にある処分表には,原告への決定処分案が「懲戒解雇」である旨の記載があり,被告社長,被告常務,Gの決済印が押印されている。 (乙14,18。 なお,甲7,原告本人には,Gが,「懲戒解雇に異議申立はございません。」と書けば,自己 る旨の記載があり,被告社長,被告常務,Gの決済印が押印されている。 (乙14,18。 なお,甲7,原告本人には,Gが,「懲戒解雇に異議申立はございません。」と書けば,自己都合退職扱いとすると述べたので,乙18にその旨書いたとする記載,供述があるが,「懲戒解雇に異議申立はございません。」との記載内容は,自己都合退職と矛盾する他,上記の原告本人の供述は,極めて曖昧であって,更には,その供述中には,当時は懲戒解雇を受けたと考えていたとする部分もある(17,18頁)から,上記記載,供述は,これに反する乙26,証人Gに照らし,到底採用できない。)(11) 原告代理人弁護士Jは,平成11年12月10日発送で,遅くとも同月13日に被告に到達したと推認できる内容証明郵便で,本件主位的請求債権(但し賃金部分についてはその相当額の解決金)の支払を求めた(乙19)。 2 当裁判所の判断(1) 懲戒解雇の意思表示の存否1(10)認定の事実からすると,Gは,被告人事部担当者として,原告に対し,懲戒解雇の意思表示をしたことは明らかである。 したがって,その意思表示は存在した。 なお,原告は,懲戒解雇の意思表示が文書でされていないとか,退職届である乙18に,決済印の押印がないとかを理由に,被告の懲戒解雇の意思表示はなく,決定権限のある者の合意がなかった旨反論するが,懲戒解雇の意思表示は要式行為ではないから,書面による必要や決済印の必要がないことは明らかであるし,1(10)認定の事実からすると,原告を懲戒解雇とする旨の処分表に,被告社長,被告常務の決済印があることからして,権限のあった者が同意していたことが明らかであるばかりか,現に,本件において,被告が原告に対する懲戒解雇の意思表 ると,原告を懲戒解雇とする旨の処分表に,被告社長,被告常務の決済印があることからして,権限のあった者が同意していたことが明らかであるばかりか,現に,本件において,被告が原告に対する懲戒解雇の意思表示の存在を主張していることからして,権限のあった者が同意していたことに疑いを鋏む余地はない。 したがって,原告のこの反論は,採用できない。 (2) 懲戒解雇の意思表示の効力1(4),(6)記載の事実に,原告が店長で,被告豊中石橋店の最終責任者であって,その店舗内において被告内の通達を最も守るべき地位にあったこと,原告の非違行為は店長就任直後からの長期間に亘ること,その間,紛失ないし盗難にあった1回当たり金員の額は,10万円であって,多額なものであること,それらを糊塗するような原告の不正な金員の流用によって,最終的には,平成11年6月の38万円を超える多額の現金の紛失を誘発したことに鑑みると,1(4),(6)の事実が,被告が主張するように就業規則146条2号ないし6号に該当し,かつ,同148条記載の「情状の重い場合」に該当するから,被告のした懲戒解雇の意思表示は有効と解される。 原告は,この点について,被告においては,往々にして,原告と同様の処理が行われていたこと,原告は自分が現金を着服などするため,このような不正処理を行ったわけではないことを主張して,懲戒解雇の効力を争うが,被告においてそのような処理が行われていた頻度,額を確定するに足りる証拠の提出はなく,そのような処理がされていたとしても,本件において,原告がした頻度,1回の額を超えるような不正処理が日常化していたことまでは認めることができないこと,原告自身,それらと同様な処理が被告において発覚した場合には,それに対し,懲戒処分が課されてい て,原告がした頻度,1回の額を超えるような不正処理が日常化していたことまでは認めることができないこと,原告自身,それらと同様な処理が被告において発覚した場合には,それに対し,懲戒処分が課されていたことを知っていたことからすると,被告において,公になっていない現金の不正流用がある程度あったとしても,そのことが,現に公となった,前記認定の頻度,期間,額の不正流用等の原告の非違行為を理由とする懲戒解雇を無効とする事情とはならない。 (3) 退職金請求の可否退職金の功労報償的性格からすると,退職金不支給規定を全面的に有効に適用できるのは,労働者のそれまでの勤続の功を不支給部分に相当する程抹消してしまう程の著しく信義に反する行為があった場合に限られるべきである。 そして,本件においては,原告は,昭和63年に被告に勤務して,11年以上順調に勤務し,店長となって,被告の店舗の経営の責任を果たしていたものであること,他方,原告の上記非違行為は,前記のとおり,懲戒解雇に相当するものではあるものの,横領等によって直接的に自らの利益を図った悪質な行為ではなく,発覚した過程も,38万円余の現金の紛失について,原告が被告に申告したことによるものであること,前記認定の豊中石橋店の正社員,アルバイト社員の比率や原告が店長に就任する以前に豊中石橋店では現金事故があったこと,原告が豊中石橋店に就任直後,24時間営業に変更されたため,原告の業務には困難な面があったことは容易に推認できることに鑑みると,原告の非違行為は,退職金不支給規定を全面的に有効に適用できる程のものとまでは言い難く,諭旨解雇に準じて,その退職金を自己都合退職の半額に止めるべき程度の非違行為であったと解するのが相当である。 したがって,原告の退職金請求は に有効に適用できる程のものとまでは言い難く,諭旨解雇に準じて,その退職金を自己都合退職の半額に止めるべき程度の非違行為であったと解するのが相当である。 したがって,原告の退職金請求は,その限度で理由がある。 (4) 夏期一時金支払請求権の有無ア弁論の全趣旨によると,原告が,平成11年の夏期一時金支払を受けるためには,同年7月9日,被告に在職していたことを要すると認められるところ,1(10)認定の事実からすると,原告は,平成11年7月6日,被告に対し,同日にされた懲戒解雇に異議申立をしない旨申告し,異議申立権を放棄したものであるから,同日退職の効力は生じたと認められ,原告は,その支払を受ける要件を満たしていない。 したがって,原告は,平成11年の夏期一時金の請求はできない。 イなお,原告は,同月6日,Gは,原告に対し,就業規則144条7号記載の異議申立期間の説明をしなかったが,仮に,原告が,その異議申立期間の説明をすれば,異議申立をしない旨の申告を被告にしておらず,懲戒解雇の効力が生じるのは,異議申立期間の経過を待つこととなり,夏期一時金支払のための要件である同月9日の在職を満たすこととなったものであるから,原告は,夏期一時金の請求ができる旨主張する。 その主張の真意は判然としないが,仮に,異議申立権の放棄の意思表示が錯誤に基づくもので無効であるとの趣旨だとしても,その錯誤は動機の錯誤にすぎず,表示もされていないので,それを理由に,その意思表示は無効とはいえない。また,実質的に検討しても,上記定めは就業規則にされており,原告は,その内容を知るべきものであるから,その記載内容の不知やその点の説明の不足を根拠に,自らのした異議申立権の放棄の意思表示の効力を否定 また,実質的に検討しても,上記定めは就業規則にされており,原告は,その内容を知るべきものであるから,その記載内容の不知やその点の説明の不足を根拠に,自らのした異議申立権の放棄の意思表示の効力を否定することはできない。 (5) そうすると,原告は,平成11年7月6日に,懲戒解雇されたことによって,被告の従業員としての地位を失ったと認められるので,原告の請求のうち,賃金及び夏期一時金の支払を求める部分については,理由がなく,退職金の支払を求める請求については,諭旨解雇に準じ,自己都合退職によって算定した額の2分の1である102万7528円(19万0283円×10.8÷2)及びそれに対する退職金規程19条で定めた請求日の翌日である平成11年12月14日から支払済まで商事法定利率である年6パーセントの割合で算定した遅延損害金の支払いを求めることで理由がある。 3 そうすると,原告の請求は,主文の限度で理由がある。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判官水野有子

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