平成25年(ワ)第32555号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年2月6日判決名古屋市〈以下略〉原告フルタ電機株式会社同訴訟代理人弁護士小南明也愛知県〈以下略〉被告渡邊機開工業株式会社同訴訟代理人弁護士塩見渉同塩見明同訴訟代理人弁理士涌井謙一同補佐人弁理士山本典弘同工藤貴宏 主文 1 被告は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙物件目録2記載の「固定リング」を,製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 3 被告は,別紙物件目録3記載の「板状部材」を,製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 4 被告は,第1項記載の「生海苔異物除去機」,第2項記載の「固定リング」及び前項記載の「板状部材」を廃棄せよ。 5 被告は,第1項記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対し,第3項記載の「板状部材」を取り付けてはならない。 6 被告は,原告に対して,6772万8115円及びうち3000万円に対する平成25年9月12日から,うち3772万8115円に対する平成26 年10月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 9 この判決は,第1項ないし第3項,第5項及び第6項に限り,仮に執行する 告のその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 9 この判決は,第1項ないし第3項,第5項及び第6項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 請求の趣旨(1) 主文第1項及び第4項と同旨(2) 被告は,別紙物件目録2記載の「固定リング」を,製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をしてはならない。 (3) 被告は,別紙物件目録3記載の「板状部材」を,製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をしてはならない。 (4) 被告は,別紙メンテナンス行為目録記載の各行為をしてはならない。 (5) 被告は,原告に対して,2億3000万円,及びうち3000万円に対する平成25年9月12日から,うち2億円に対する平成26年10月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (6) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 担保を条件とする仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 本件は,名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする発明についての特許権を有する原告が,被告の製造・販売・輸出等している別紙物件目録1記載の生海苔異物除去機が上記発明の技術的範囲に属し, その部品である別紙物件目録2及び3記載の各製品が上記生海苔異物除去機の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に当たり,また,上記生海苔異物除去機に対するメンテナンス行為も上記特許権の侵害行為に当たると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告の各製品の製造・販売・輸出等の差止め及びその廃棄,並びにメンテナンス行為の差止めを求めるとともに,特 も上記特許権の侵害行為に当たると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告の各製品の製造・販売・輸出等の差止め及びその廃棄,並びにメンテナンス行為の差止めを求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求又は無償実施に基づく不当利得の返還請求として,損害賠償金又は利得金の一部である2億3000万円及びうち3000万円に対する不法行為後の日であり,かつ催告(警告書の到達)の翌日である平成25年9月12日から,うち2億円に対する不法行為後の日であり,催告(平成26年10月17日付け訴え変更申立書の送達)の翌日である平成26年10月21日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠等〈略〉を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告原告は,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者であり,その他各種農業用及び各種水産用機械器具並びに各種風水力機械の製造,販売,施工などを目的とする株式会社である。 イ被告被告は,生海苔異物除去機「渡辺式異物除去洗浄機」を製造・販売している株式会社であり,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者である。 (2) 原告の有する特許権原告は,次の内容の特許権(以下,この特許権を「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)を有する。 登録番号特許第3966527号発明の名称生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止 装置出願日平成10年6月12日登録日平成19年6月8日訂正審決日平成22年2月25日なお,本件特許に関しては,上記のとおり,訂正審判事件(訂正2010-390006)の平成22年2月25日付け審決( 12日登録日平成19年6月8日訂正審決日平成22年2月25日なお,本件特許に関しては,上記のとおり,訂正審判事件(訂正2010-390006)の平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認められている。同訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許審決公報〈略〉中の特許訂正明細書(以下「本件訂正明細書等」という。)に各記載のとおりである。 (3) 本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲(請求項の数5)のうち請求項1,3及び4の記載は,それぞれ本件訂正明細書等の各該当項に記載のとおりである(以下,請求項1,3及び4記載の特許発明をそれぞれ「本件発明1」,「本件発明3」及び「本件発明4」といい,これらを総称して「本件各発明」という。)。 (4) 本件各発明の構成要件の分説本件発明1,3及び4をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A1」などという。また,構成要件B2,B’2及びB”2を併せて「構成要件B2等」という。)。 ア本件発明1A1 生海苔排出口を有する選別ケーシング,A2 (及び)回転板,A3 この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,A4 (並びに)異物排出口A5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,B 前記防止手段を, B1 突起・板体の突起物とし,B2 この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成としたC 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 イ本件発明3A1~5(前記アのA1~5と同じ)B’ (前記アのBと同じ)B’1 ( シングの円周端面に設ける構成としたC 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 イ本件発明3A1~5(前記アのA1~5と同じ)B’ (前記アのBと同じ)B’1 (前記アのB1と同じ)B’2 この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたC (前記アのCと同じ)ウ本件発明4A1~5(前記アのA1~5と同じ)B” (前記アのBと同じ)B”1 (前記アのB1と同じ)B”2 この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成としたC (前記アのCと同じ)(5) 被告の製品及び行為ア被告の生海苔異物除去機被告は,別紙物件目録1記載の,型名「WK-500」,「WK-550」,「WK-600」及び「WK-700」で示される生海苔異物除去機(以下「被告装置」という。)を製造・販売し,大韓民国に対して輸出している。 被告装置は,いずれも別紙物件目録2記載の固定リング(以下「本件固定リング」という。)及びその内側に回転自在に遊嵌された回転円板を構成部品としており,それらの個数(枚数)によって以下のように区別でき る。 ① 「WK-500」・「WK-550」:回転円板(直径:約190mm)が4枚のタイプ② 「WK-600」:回転円板(直径:約190mm)が6枚のタイプ③ 「WK-700」:回転円板(直径:約280mm)が6枚のタイプイ本件固定リング被告装置に4個又は6個付設された本件固定リングには,別紙物件目録3記載の板状部材(以下,これを「本件板状部材」といい,被告装置,本件固定リング及び本件板状部材を総称して「被告製品」という。)が各1個以上取り付けられている。 被告装置を使用して海苔製造を行う製 3記載の板状部材(以下,これを「本件板状部材」といい,被告装置,本件固定リング及び本件板状部材を総称して「被告製品」という。)が各1個以上取り付けられている。 被告装置を使用して海苔製造を行う製造業者(ユーザー)は,本件固定リングを付設した状態で海苔異物除去作業を行っているところ,被告装置においては,本件固定リングとその内側に回転自在に遊嵌された回転円板との間の極めて微少な環状隙間(クリアランス)を介して生海苔を通過させる構成となっており,回転円板の回転によって本件固定リングの側面部分が摩耗しやすいため,被告は,ユーザーに対して,補充部品として本件固定リングを供給し,また,部品交換作業を行っている。 ウ本件板状部材本件固定リングに各1個以上取り付けられた金属製の本件板状部材は,本件固定リングの上部及び側面(クリアランス側)に突出するように同リングの取付部位に設置する。そのため,ユーザーの海苔異物除去作業における被告装置の使用(回転円板の回転)によって本件板状部材が摩耗しやすくなっており,被告は,ユーザーに対して,補充部品として本件板状部材を供給し,また部品交換作業を行っている。 (6) 被告装置の構成被告装置においては,型名によって使用する回転円板の数(サイズ)が異 なるが,本件各発明との対比に際して必要な基本的構成,作用は実質的に同じと評価できる。 被告装置の構成を分説すると,以下のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「被告構成α1ⅰ」などという。)。なお,本件固定リングは,以下の「環状固定板4」(別紙図面の4)に当たり,本件板状部材は,以下の「板状部材8」(別紙図面の8)に当たる。 α1ⅰ 吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7ⅱ 及び環状固定板4 2 回転円板3 3 板状部材8 )に当たり,本件板状部材は,以下の「板状部材8」(別紙図面の8)に当たる。 α1ⅰ 吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7ⅱ 及び環状固定板4 2 回転円板3 3 板状部材8 4 異物排出口5 5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される異物選別槽A(その底部を構成する底板2を含む。)を有する生海苔異物除去機β 板状部材8につき, 1 その形状は厚さ数mm,長方形状の「板状」である。 2 板状部材8は,環状固定板4の表面4bの一部に形成された凹部に嵌め込むようにして取り付けられ,ボルトで固定される。 板状部材8の高さは環状固定板4の凹部よりも高いため,その表面部分が環状固定板4の表面4bよりも約1mm突出するよう「表面側の突出部」を形成する。また,板状部材8の側面部分は環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aよりも僅かに突出して,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」を形成する。 γ 被告装置は,底板2に環状固定板4が取り付けられていて環状固定板4の内側に円形孔が形成されていると共に,底板2に異物排出口5を備えている異物選別槽Aと,板状部材8と,モーターによって駆動される回転軸により回転する回転円板3が前記円形孔の内側に回転自在に遊嵌され,環 状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと,回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cと,前記円形孔の下側に配備されていて,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7などからなる装置形態(システム)を包含する生海苔異物除去機である。 (7) 構成要件の充足性被告装置の構成は,本件発明1,3及び4の構成要件A1,A2,A4,A5,B,B’,B”,B1,B’1,B”1をそれぞれ充足する(ただし,構成要件 去機である。 (7) 構成要件の充足性被告装置の構成は,本件発明1,3及び4の構成要件A1,A2,A4,A5,B,B’,B”,B1,B’1,B”1をそれぞれ充足する(ただし,構成要件A1の充足性の前提となる,構成要件の文言と被告装置の構成の対応関係についての主張は,後記のとおり,当事者間で異なっている。)。 (8) 被告のその他の装置ア被告は,平成9年秋頃又はこれ以降に,「WK-3型用大荒ゴミ取り機」(以下「乙5装置」という。)を製造した。 イ被告は,平成10年9月11日,「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」に係る発明を特許出願し(特願平10-258335号。以下,同出願に係る発明を「甲31の2発明」といい,同出願に係る明細書及び図面を「甲31の2明細書等」という。),同月以降,同発明の実施品である生海苔異物除去機「WK-3型Rタイプ」を発売した。 (9) 警告書の送付原告は,被告に対し,平成25年9月11日到達の内容証明郵便において,被告装置が本件特許権を侵害するものであるとして,その製造,販売,輸出等の中止と損害賠償を求める旨を通知した。 (10) 消滅時効の援用被告は,平成26年12月4日の本件弁論準備手続期日で陳述された被告準備書面(7)において,本件訴訟の提起日(平成25年12月11日)から3年を遡る平成22年12月11日以前の被告の行為に基づく原告の損害賠償請求権について,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 3 争点(1) 被告装置が本件各発明の技術的範囲に属するか否かア構成要件B2等の充足性イ構成要件Cの充足性(2) 本件各発明は特許無効審判により無効にされるべきものか否かア進歩性欠如(本件各発明につき) 的範囲に属するか否かア構成要件B2等の充足性イ構成要件Cの充足性(2) 本件各発明は特許無効審判により無効にされるべきものか否かア進歩性欠如(本件各発明につき)イサポート要件違反(本件発明1につき)(3) 先使用による通常実施権の有無ア乙5装置に係る事業に基づく先使用権イ甲31の2発明の実施である事業の準備に基づく先使用権(4) 被告の行為に対する差止請求の可否(5) 原告の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の有無及び額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件B2等の充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告装置の構成β2のとおり,被告装置の板状部材8は,その側面部分が環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aよりも僅かに突出する「側面側の突出部」を形成し,その表面部分が環状固定板4の表面4bよりも約1mm突出する「表面側の突出部」を形成しているから,突起物が,環状固定板4(選別ケーシングの一部)の円周端面又は円周面(なお,「円周面」は「円周端面」の上位概念である。)に設けられており,かつ,「クリアランス」(構成要件B”2)である環状隙間C内に存在する。 よって,被告装置の構成β2は,「この突起物を選別ケーシングの円周端面に設ける構成」(構成要件B2),「この突起物を選別ケーシングの円周面に設ける構成」(構成要件B’2)及び「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成」(構成要件B”2)のいず れにも該当するから,構成要件B2等をいずれも充足する。 (2) この点に関して被告は,被告装置のケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるから,本件各発明の「選別ケーシング」(構成要件A1, 該当するから,構成要件B2等をいずれも充足する。 (2) この点に関して被告は,被告装置のケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるから,本件各発明の「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)に該当するのは,ケーシング部材7のみであり,環状固定板4はこれに該当しないと主張する。 しかし,「選別」とは「より分けること」であり,「ケーシング」とは一般的には「容器」の意味で用いられる語である。また,本件各発明の「選別ケーシング」(実施例における「選別ケーシング33」)は,回転板との間で「クリアランス」を形成し,生海苔混合液の生海苔をその間に通過させて異物除去を図ろうとするものである(本件訂正明細書等の請求項4,段落【0019】,【0025】)。しかも,本件訂正明細書等の段落【0026】及び【図7】には,「選別ケーシング33(枠板)」と記載し,選別ケーシングが,複数の部材(【図7】では,クリアランスSを形成する「枠板」と,その周囲の部材)から形成されることを明記している。 よって,本件各発明の構成要件A1及び構成要件B2等における「選別ケーシング」とは,異物の混入した生海苔混合液から異物を除去した後の生海苔混合液を入れる容器であって,(生海苔排出口以外の)容器開口部分と回転板との間でクリアランスを形成し,生海苔混合液をそのクリアランスに通過させて異物除去を図るための部材を意味するのであり,それは複数の部材から構成される場合も含まれる。 この点,被告装置の構成におけるケーシング部材7(構成α1ⅰ)と環状固定板4(構成α1ⅱ)は,別部材ではあっても,本件各発明の技術思想との関係では一体とみなすべきであるから,両部材は,一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当する。 そして,被告は,被告装置の環状固定板4が「選別ケーシング ではあっても,本件各発明の技術思想との関係では一体とみなすべきであるから,両部材は,一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当する。 そして,被告は,被告装置の環状固定板4が「選別ケーシング」に該当しないことを唯一の根拠として,構成要件B2等の充足性を否認するが,環状 固定板4はケーシング部材7と一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当するから,被告の主張はその前提において失当である。 〔被告の主張〕(1) 「選別ケーシング」(構成要件A,B2等)と被告装置の構成との対応関係ア被告装置は,円形の孔が設けられている異物選別槽Aの底板2の当該円形の孔部に金属製の環状固定板4をネジ止め等によって取り付け,この環状固定板4の内側に円形孔が形成されている。また,環状隙間Cは,円形孔の内周壁,すなわち,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとこれに対向する回転円板3の側面部(端面)3aとの間に形成される。そして,異物選別槽A内に生海苔と海水との混合液を投入した後,回転軸モーターによって,回転円板3を回転させ,回転円板3上の混合液を同じように回転流動させつつ,吸引ポンプによる吸引を開始すると,混合液は,環状隙間Cを介してケーシング部材7内にそれぞれ強制的に吸引され,さらに,吸引ポンプ用連結口,ホースを介して,貯留槽内に投入される。 このように,被告装置の環状固定板4は,異物選別槽Aの底板2に取り付けられ,それと回転円板3で,環状間隙C(クリアランス)を形成し,異物選別槽Aに投入された生海苔混合液の異物分離をするものである。それに対し,ケーシング部材7は,その下部にあり,単に混合液の通過過程にすぎない。 したがって,被告装置の環状固定板4とケーシング部材7とは,物理的に別部材であるのみならず,機能 するものである。それに対し,ケーシング部材7は,その下部にあり,単に混合液の通過過程にすぎない。 したがって,被告装置の環状固定板4とケーシング部材7とは,物理的に別部材であるのみならず,機能的にも何ら関連はなく,両者を一体として評価する余地はない。 イ以上のとおり,被告装置においては,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7と環状固定板4とは別個の部材であるから,構成要件B2等の「選別ケーシング」,すなわち「生海苔排出口を有する選別ケーシング」 (構成要件A1)に該当するのは,被告装置における吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7のみである。 (2) 構成要件B2等を充足しないこと被告装置の突起物(板状部材8)が,環状固定板4の内周端面に設けられていることは認めるが,前記(1)のとおり,被告装置における環状固定板4は,「選別ケーシング」(構成要件A,B2等)の一部ではないから,被告装置は,構成要件B2(「突起物を前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成」)を充足しない。 また,被告装置の突起物が設けられている環状固定板4は,「選別ケーシング」(構成要件A,B2等)でも,回転板でもないから,被告装置は,構成要件B’2(「突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成」)を充足しない。 さらに,被告装置の突起物は,環状固定板4と回転円板によって形成されるクリアランスに設けられているから,構成要件B”2(「突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成」)を充足しない。 2 争点(1)イ(構成要件Cの充足性)について〔原告の主張〕(1) 本件各発明においては,「共回りを防止する防止手段」(被告装置では板状部材8)だけでは生海苔の共回りを防止できず,それを含む 争点(1)イ(構成要件Cの充足性)について〔原告の主張〕(1) 本件各発明においては,「共回りを防止する防止手段」(被告装置では板状部材8)だけでは生海苔の共回りを防止できず,それを含むシステム(装置の体系)が存在しなければ,本件各発明の意図する作用効果を奏しない。 被告装置の構成γは,「共回りを防止する防止手段」たる板状部材8などからなる共回り防止のための装置体系(システム)を包含する生海苔異物分離除去装置であるから,構成要件Cに該当する。 (2) この点に関して被告は,被告装置が「回転板と共に回る生海苔の共回りを防止する手段」を備えた生海苔異物分離除去装置であることを認めながら,被告装置が「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」(構 成要件C)ではないと主張するが,その根拠は全く示されていない。被告の主張は論旨が不明であり,反論の必要がない。 〔被告の主張〕被告装置は,板状部材8が環状固定板4の表面及び内周側部分(内周端面)4aよりも僅かに突出する構成を備えることによって,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cに目詰まりが生じることを防止できるから,構成要件A3(「この回転板と共に回る生海苔の共回りを防止する防止手段」)に該当するという意味において,被告装置は,「回転板と共に回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を備えた生海苔異物分離除去装置とはいえる。しかし,被告装置そのものは,生海苔異物分離除去装置であって,共回り防止装置ではないから,構成要件Cの「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」には当たらない。 3 争点(2)ア(進歩性欠如-本件各発明につき)について〔被告の主張〕(1) 特開平8-1 ら,構成要件Cの「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」には当たらない。 3 争点(2)ア(進歩性欠如-本件各発明につき)について〔被告の主張〕(1) 特開平8-140637号公報についてア発明の構成本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-140637号公報(以下「乙1公報」という。)には,本件各発明と同様に生海苔からの異物を分離対象とし,液が生海苔混合液である,生海苔の異物分離除去装置に係る発明(以下「乙1発明」という。)が記載されている。 乙1発明の構成は,「 第一分離除去具(70)は,ⅰ)第一回転板(81),ⅱ) 第一回転板(81)との間にクリアランスSを形成する環状固定板(74) と環状枠板(73)で構成される環状枠板部,ⅲ)環状枠板(73)を連設するための周筒部(72),ⅳ)クリアランスSを通過した海苔混合液を連設主タンク(61)に排出するガイド筒(77),及び,ⅴ)異物を排出するための管状の排出路(75)及びそれに続く排出管(76)とで構成されており,筒状混合液タンク(90)の底部周端縁に環状枠板部(73,74)の外周縁を連設し,この環状枠板部(73,74)の内周縁内に第一回転板(81)を略面一の状態で僅かなクリアランスSを介して内嵌めし,この第一回転板(81)を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンク(90)の底隅部に異物排出口(75,76)を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。」である。 イ本件各発明との一致点及び相違点乙1発明と本件各発明は,以下のとおり一致し,又は相違する。 ,76)を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。」である。 イ本件各発明との一致点及び相違点乙1発明と本件各発明は,以下のとおり一致し,又は相違する。 (一致点)生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置。 (相違点)本件各発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける構成(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成(本件発明3),又は,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成(本件発明4)とした,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を具備するのに対して,乙1発明はかかる共回り防止手段を 具備していない点。 ウ乙1発明に内在する解決すべき課題乙1発明においては,異物や生海苔がクリアランスに詰まるという解決すべき課題が,従来のものと比べて解決できたものと解されるが,「詰まりにくい」ということからして,乙1発明においてもなお,異物及び生海苔によるクリアランスの詰まりという課題が完全には解消せずに残されていると理解され,このような異物及び生海苔によるクリアランスの詰まりが発生するような状況にあっては,「共回り」が発生するものと解される。 (2) 乙5装置について乙5装置は,本件特許の出願前の平成9年秋に被告が製造し,同年10月に販売して,使用されていたものである。 乙5装置は,その写真や図面のとおり,上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽 造し,同年10月に販売して,使用されていたものである。 乙5装置は,その写真や図面のとおり,上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通しており,外槽内側には,回転軸が中心となるような配置で濾筒が設けられ,濾筒は側壁に無数の微小通水孔が形成され,濾筒の上端縁に,鍔状のフランジ部があり,回転ブラシ筒を前記回転軸に貫通させて濾筒の内側に回転可能に装入させ,回転ブラシ筒の周壁には,途中で数か所切れて連続していないらせん状のブラシが設けられ,らせん状のブラシ先端は,濾筒の内周壁に当接するように形成されており,回転ブラシ筒の上端より所定間隔下であって,回転ブラシ筒の周壁にらせん状に取り付けられているブラシの最上部より少し低い高さ位置にL型金具を設け,赤い囲み部材の上方の開放部を覆う帽状キャップの下面中央には,前記回転軸を受ける軸受孔が設けられ,短い筒状部材が帽状キャップの下面に突設され,短い筒状部材の端面には環状鍔が設けられ,帽状キャップを赤い囲み部材に取り付けた際に,該環状鍔は前記濾筒の上端縁と対向し隙間を形成するようになっており,L型金具は,濾筒の上端縁に当接するようにされ,水平方向に 延びる該隙間に挿入されているL型金具の刃部が,該隙間を移動し,該隙間に異物が詰まって,該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることがなく,回転ブラシ筒の回転につれて濾筒内を上昇した生海苔混合液は,帽状キャップの環状鍔の下面と,濾筒の上端縁との間に形成される隙間を介して押し出され,排出樋を介して出されるWK-3型用大荒ゴミ取り装置である。 このように,乙5装置は,「回転ブラシ筒」に設けた「L型金具の刃部が,該隙間を移動」することで,「隙間に異物が詰まって, して押し出され,排出樋を介して出されるWK-3型用大荒ゴミ取り装置である。 このように,乙5装置は,「回転ブラシ筒」に設けた「L型金具の刃部が,該隙間を移動」することで,「隙間に異物が詰まって,当該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなること」を防止するものである。 (3) その他の公知文献ア特開平6-121660号公報本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-121660号公報(以下「乙2公報」という。)には,本件各発明と同じ「海苔異物分離除去装置」が記載されているところ,その明細書(段落【0001】,【0013】)の記載によれば,生海苔の異物分離除去装置において,生海苔混合液が通過するスリットが異物や生海苔で詰まりやすいことは当業者に知られた事実であり,その詰まりを除去するためにスリットに接するように清掃装置を設置することも公知であったといえる。 イ特開平5-71027号公報本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-71027号公報(以下「乙8公報」という。)には,多数の小孔を備えているケージ3の内側に,ケージ3内面との間に微小隙間を保ってスクリュー羽根4が配備されており,スクリュー羽根4が回転することにより,ケージ3内面に付着する繊維屑を掻き取り,順次下方に押し下げ,この際,スクリュー羽根4の回転に伴われて繊維屑が共廻りするのを阻止する共廻り防止バー11が,ケージ3の内面に上下方向に伸びるように配置されている「繊維屑圧縮排出装置」が記載されている。 乙8公報によれば,回転体の回転に伴って処理対象物の共回りが発生することを防止するため,回転体の外周面に微小隙間を保って近接している固定体の内周面に,回転体の方に向かって突出する突条 乙8公報によれば,回転体の回転に伴って処理対象物の共回りが発生することを防止するため,回転体の外周面に微小隙間を保って近接している固定体の内周面に,回転体の方に向かって突出する突条(共廻り防止バー11)を設けることが公知であった。 ウ実開平7-40644号公報本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実開平7-40644号公報(以下「乙9公報」という。)には,「粉粒体フィーダにおける粉粒体の共回り防止用抵抗板」に関する発明が記載されているところ,乙9公報によれば,回転体の回転に伴って処理対象物の共回りが発生することを防止するため,底板の上に処理対象物の方に向かって突出する板体(抵抗板13)を設けることが公知であった。 エ実開平3-91423号公報本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実開平3-91423号公報(以下「乙10公報」という。)には,「原料供給装置」に関する発明が記載されているところ,乙10公報によれば,固定体の内側で回転する回転体の回転に伴って処理対象物の共回りが発生することを防止するため,固定体の内周面に,処理対象物の方に向かって突出する突起(突起12)を設けることが公知であった。 (4) 乙1発明に基づく容易想到性ア本件各発明と乙1発明とは,「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置。」である点で一致し,生海苔混合液から異物を分離除去する機能を有し,回転板と選別ケーシングとの間に形成されるクリアランスを介して生海苔混合液を通過させるものである点において,共通している。 また,本件各発明の目的は,「共回りの発生 離除去する機能を有し,回転板と選別ケーシングとの間に形成されるクリアランスを介して生海苔混合液を通過させるものである点において,共通している。 また,本件各発明の目的は,「共回りの発生を無くし,かつクリアラン スの目詰まりを無くす」こと(本件訂正明細書等・段落【0005】,【0029】)であるところ,乙1発明においてもなお,異物及び生海苔によるクリアランスの詰まりという課題が完全には解消せず残されていると理解されるから,本件各発明と乙1発明とは課題が共通している点がある。 イそうすると,乙1発明における「異物及び生海苔によるクリアランスの詰まりという課題」の解決を目指して,当業者が,乙1発明に,乙5装置の「回転ブラシ筒に設けたL型金具の刃部が,該隙間を移動することで隙間に異物が詰まって,当該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることを防止する」との構成を適用することを検討することに困難性はない。 そして,発明は技術的思想の創作(特許法2条1項)であるから,乙5装置の構成を乙1発明に適用するに当たっては,L型金具とこれを動かす回転ブラシ筒とを併せて隙間に異物が詰まることを防止している乙5装置の形態にとらわれることなく,乙1発明の構成に対応させて,乙1発明において「L型金具の刃部」に相当する部材が隙間の中を移動することにより,隙間に異物が詰まることを防止する構成を考えることは,当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎない。 ウまた,乙8公報ないし乙10公報は,いずれも回転体の回転に伴って生じる共回りの発生を防止するという広い意味において,本件各発明と作用機能の共通性を有する発明に関するものであるところ,上記各公報によれば,回転体の回転に伴って生じる共回りの発生を防止するために,突 じる共回りの発生を防止するという広い意味において,本件各発明と作用機能の共通性を有する発明に関するものであるところ,上記各公報によれば,回転体の回転に伴って生じる共回りの発生を防止するために,突起物を,共回りの発生を防止する上で好適な箇所に配備することは公知であったといえる。 そこで,乙5装置の「回転ブラシ筒に設けたL型金具の刃部が,該隙間を移動することで,隙間に異物が詰まって,当該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることを防止する」との構成を乙1発明に適用するに当たり,乙8公報ないし乙10公報を参考にして,「突起・板体の突起物」 を,「選別ケーシングの円周端面に設ける」構成(本件発明1),「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける」構成(本件発明3),又は,「選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける」構成(本件発明4)とすることは,本件特許出願が行われた当時,当業者に容易に想到できたことである。 そして,このようにした「生海苔異物分離除去装置」は,本件各発明における「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」に相当するものであることは,当業者に自明である。 エ以上のとおり,乙1発明に基づいて,乙5装置で公然実施されていた公知技術や乙8公報ないし乙10公報の公知技術を参照して,本件各発明の構成に至ることは,本件特許出願の当時,当業者に容易であったといえるから,本件各発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。 〔原告の主張〕(1) 乙1発明についてア乙1発明の構成乙1発明における発明の中核部分は,回転板方式の採用によって従来型で必要とされた「目詰まり洗浄 に該当し,無効とすべきである。 〔原告の主張〕(1) 乙1発明についてア乙1発明の構成乙1発明における発明の中核部分は,回転板方式の採用によって従来型で必要とされた「目詰まり洗浄装置等」を別途に設けなくても「クリアランスに生海苔が詰まりにくい」という点である(段落【0003】,【0004】,【0009】,【0023】,【0028】及び【0029】)。 したがって,乙1発明の構成は,A1 :生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び,A2 :(選別ケーシングに内嵌めし,そのケーシング表面と略面一に形成された)回転板,A3’:目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がないこと A4 :並びに異物排出口A5 :をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置となるから,乙1発明は,本件各発明における構成要件A1,A2(ただし,回転板の構成は異なる。),A4及びA5のみならず,上記A3’を付加した構成からなる生海苔異物分離除去装置である。 イ本件各発明との相違点乙1発明の構成は上記のとおりであるから,本件各発明と対比して,被告が主張する点(共回り防止手段がない点)だけでなく,「目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がないこと」(上記A3’)でも相違する。 さらに,本件各発明は,乙1発明のように「(選別ケーシングに内嵌めし,そのケーシング表面と略面一に形成された)回転板」に限定されず,回転板方式の異物除去装置に対して一般的に適用できる汎用技術であるから,乙1発明は,「内嵌め方式の回転板」を採用した生海苔異物分離除去装置である点でも,本件各発明と相違する。 (2) 乙5装置について被告は,乙5装置が本件特許出願前である平成9年10月 から,乙1発明は,「内嵌め方式の回転板」を採用した生海苔異物分離除去装置である点でも,本件各発明と相違する。 (2) 乙5装置について被告は,乙5装置が本件特許出願前である平成9年10月に販売されて,公然と実施され,その構成が公知であった旨主張するが,乙5装置が同時期に販売され,かつその当時の装置の構成が写真及び図面に示されるものと同じであったこと等については,これを裏付ける客観的証拠が存在せず,信用できない。 また,上記写真及び図面によっても,乙5装置が,被告主張のような構成を有し,機能を果たしていたとは認められない。特に,乙5装置の帽状キャップの環状鍔の下面と濾筒の上端縁との間に形成される「隙間」は,積極的に海苔混合液を通過させて異物を除去しようとするための隙間と理解することはできず,水の予備的な逃げ場として利用されているにすぎない。むしろ, 同装置においては,濾筒の周囲に微小孔が多数開けられているから,この微小孔を用いた異物分離除去装置というべきである。 よって,乙5装置が,回転ブラシ筒に設けたL型金具の刃部が隙間を移動することで,隙間に異物が詰まって,当該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることを防止する装置であるとの被告の主張は失当である。 (3) 乙1発明に基づく容易想到性前記(1)イのとおり,乙1発明は,内嵌め方式の回転板を採用したものであって,「目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がない」ものであるのに対して,本件各発明は,回転板方式一般に適用できる,共回り防止手段(構成要件A3,B,B’,B”)を備えた共回り防止装置(構成要件C)であるから,両者は全く相違している。 そして,「共回り」を防止するという技術的思想が全く開示されていない乙1発明に対して,単に,目詰まり防止手段 ,B’,B”)を備えた共回り防止装置(構成要件C)であるから,両者は全く相違している。 そして,「共回り」を防止するという技術的思想が全く開示されていない乙1発明に対して,単に,目詰まり防止手段を付加することの容易性のみを論じても全く無意味である。 この点に関して被告は,乙5装置との組合せを主張するが,そもそも乙5装置の構成は公知性が極めて疑わしい上,乙5装置(及び乙2公報)は,固定隙間を利用する従来型に関するものであるから,その構成を回転板方式に適用する動機付けは全くない。また,仮に乙5装置のL型金具を乙1発明に適用しようとすれば,L型金具を動かすための回転ブラシ筒と併せて適用する必要がある。 なお,乙8公報ないし乙10公報は,本件各発明と技術分野が異なり,また,その「共回り」も,本件各発明とは全く異なる意義で用いられているものであるから,参酌の余地はない。 したがって,被告の置換容易性に関する主張は失当である。 4 争点(2)イ(サポート要件違反-本件発明1につき)について〔被告の主張〕 本件発明1の主要な目的は,「共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くす」ことであると認められる(本件訂正明細書等・段落【0005】,【0029】)。また,その共回りの根本的な原因は,クリアランスが詰まることであり(同・段落【0003】),この「クリアランスの目詰まりを無くす」ことが本件発明1の目的であると認められる。 本件発明1に対応する発明の詳細な説明においては,「選別ケーシング33の円周端面33b」に設けられる「共回り防止手段」たる突起部(同・段落【0026】)の配置位置は,図2,図4に示されているように,クリアランスの配置位置を考慮し,「クリアランスの目詰まりを無くす」という効果を期待できる配 られる「共回り防止手段」たる突起部(同・段落【0026】)の配置位置は,図2,図4に示されているように,クリアランスの配置位置を考慮し,「クリアランスの目詰まりを無くす」という効果を期待できる配置位置になっているものと認められる。 しかし,本件発明1においては,構成要件B2に「この突起物を選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」と記載されているのみで,「共回りを防止する防止手段」たる「突起物」の配置位置は,クリアランスの配置位置を考慮したものになっておらず,クリアランスが形成される位置・箇所と「共回りを防止する防止手段」たる「突起物」が配備される位置との関係が記載されていないから,「クリアランスの目詰まりを無くす」という効果を期待できる配置位置になっているとはいえない。 したがって,本件発明1は「発明の詳細な説明に記載したもの」ではないから,特許法36条6項1号に違反し,無効にされるべきである(同法123条1項4号)。 〔原告の主張〕本件訂正明細書等の段落【0026】に,「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。・・・また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアラ ンスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。」と記載されているとおり,図3,4において,防止手段6を選別ケーシング33の円周端面33bに設けていることが明示されている。さらに,図7に示されたクリアランスSの位置関係(回転板34の円周端面34bと,選別ケーシング33の円周面33a(内周端面)とで形成される。)からすれば, 面33bに設けていることが明示されている。さらに,図7に示されたクリアランスSの位置関係(回転板34の円周端面34bと,選別ケーシング33の円周面33a(内周端面)とで形成される。)からすれば,当業者がこの図7を見れば,防止手段6を,回転板の円周端面34b(「円周面」の下位概念)か,選別ケーシングの円周端面(円周面33a(内周端面))のいずれかに固定することを容易に看取し得る。 このように,本件発明1はその実施例が図3,4で明示的に示され,図7等を見ても,本件発明1の課題(共回り防止)が解決できることは当業者において容易に認識できる。 また,本件訂正明細書等の記載を参酌すれば,他の要件と相まって,「突起・板体の突起物」を「選別ケーシングの円周端面に設ける構成」とすることで,本件発明1の課題が解決できると認識できることは明らかである。 5 争点(3)ア(乙5装置に係る事業に基づく先使用権)について〔被告の主張〕(1) 乙5装置に係る事業生海苔異物分離除去装置である乙5装置(WK-3型用大荒ゴミ取り機)は,平成9年秋に被告によって製造・販売され,本件特許出願(平成10年6月12日)の時点では,公然と実施されていた。 乙5装置は,生海苔混合液を狭い隙間(クリアランス)を通過させることにより,生海苔混合液に含まれている異物であって,当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する場合に,前記隙間に異物などが詰まる現象が発生することから,この問題を解決するため,前記隙間に薄い板状の部材を挿入して移動させ,前記隙間が詰まることを防止していたものである。 すなわち,乙5装置の実施形式に具現されている技術的思想は,「生海苔 の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させる いたものである。 すなわち,乙5装置の実施形式に具現されている技術的思想は,「生海苔 の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」(以下「被告技術的思想A」という。)というものである。 よって,被告は,本件各発明の内容を知らないで,自ら被告技術的思想Aを完成させ,本件特許の特許出願の際現に日本国内において,同技術的思想の実施である事業をしていた者に該当する。 (2) 被告装置が乙5装置に係る発明の範囲内であること生海苔異物分離除去装置である被告装置は,板状部材8について,その表面部分が環状固定板4の表面よりも突出する「表面側の突出部」を形成し,その側面部分が環状固定板4の内周側部分(内周端面)4aよりも僅かに突出して,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」を形成する構成を備えていることにより,環状隙間Cに目詰まりが生じることを防止できるものである。 このような,被告装置の実施形式に具現されている「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」という技術的思想は,乙5装置の実施形式に具現されていた被告技術的思想Aと同一のものである。 (3) 小括よって,被告は,本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,被告が被告装置を製造・販売等する行 装置の実施形式に具現されていた被告技術的思想Aと同一のものである。 (3) 小括よって,被告は,本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,被告が被告装置を製造・販売等する行為は,本件特許権を侵害しない。 〔原告の主張〕 (1) 乙5装置の構成及びその公知性につき乙5装置が本件特許出願時点に公知又は公用であったことは,立証されていない。被告が提出する証拠程度の立証では不十分である。 また,被告の主張によっても,乙5装置の構成自体が不明確であり,被告が主張する「隙間」(帽状キャップの環状鍔と濾筒の上端縁との間に形成されるもの)が異物除去を図るための隙間であるとは考えられないことからすれば,乙5装置において被告技術的思想Aが具現されているとはいえない。 (2) 乙5装置及び被告装置の技術的思想につき乙5装置は,回転板方式を採用するものではなく,従来型の固定隙間において,隙間に詰まった生海苔をL型金具の刃部を挿入してクリアランス内を移動させようとするものであるから,回転板方式における「共回り」を防止するという本件各発明の技術的思想を全く具現していない。 よって,仮に被告が乙5装置についての先使用権を有するとしても,そこで具現された「『固定した隙間』の詰まりを清掃する清掃装置」程度の技術的思想に関する範囲にすぎない。 一方,被告装置は,本件各発明の共回り防止手段を備える「共回り防止装置」であって,単なる目詰まり防止手段を備えた装置に尽きるものではない。 したがって,仮に乙5装置に具現されたとする被告技術的思想Aを被告装置において実施しているとしても,その実施の事実自体は,先使用権の成立とは無関係である。 被告が,被告装置に具現された発明をしたのは,それに関する特許出願(平成18年5 る被告技術的思想Aを被告装置において実施しているとしても,その実施の事実自体は,先使用権の成立とは無関係である。 被告が,被告装置に具現された発明をしたのは,それに関する特許出願(平成18年5月17日)をなし,その実施をした平成18年頃であって,本件特許の出願後である。 (3) 小括よって,被告装置に関して,被告が乙5装置に基づいて本件特許権についての先使用権を有することはない。 6 争点(3)イ(甲31の2発明の実施である事業の準備に基づく先使用権)について〔被告の主張〕(1) 甲31の2発明及びその実施である事業の準備被告は,平成10年9月11日に,「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」に係る甲31の2発明の特許出願をしたところ,同発明に係る装置は,固定盤の環状溝と回転盤の環状突条で通過路(通過間隙S)が形成されており,そこを生海苔が通過するが,その通過間隙Sに目詰まりが生ずることをウレタンゴム板を介することによって清掃(除去)するというものであった(【請求項2】,【請求項5】,段落【0007】,【0011】,【0030】ないし【0034】)。 被告は,同月,同発明の実施品である生海苔異物除去装置「WK-3型Rタイプ」を発売したが,当該装置は,「下部固定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込み,上部回転盤のウレタンゴム板は,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,環状突条のテーパ部をはみ出る部分が下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,上部回転盤の環状突条(テーパ部)と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)を清掃し,目詰まりを防止する」との技術的思想(以下「被告技術的思想B」という)を具現化していた。 被告は,平成10年4月下旬に被告技術的思想Bを完成させ,同年6月 で形成される隙間(クリアランス)を清掃し,目詰まりを防止する」との技術的思想(以下「被告技術的思想B」という)を具現化していた。 被告は,平成10年4月下旬に被告技術的思想Bを完成させ,同年6月8日には,実施装置の製造のために,異物清掃(除去)にかかる部品の設計図面(以下「乙13図面」と総称する。)を含む最終的な設計図面を完成させ,遅くとも同日には,当該装置の量産化への準備に着手していた。 ここで,甲31の2発明において発生する生海苔付着による目詰まりという現象も,本件各発明において発生する「共回り」の現象も,生海苔の状態と回転板の回転とが相まって発生するものであり,同じメカニズムである。 また,甲31の2発明における清掃手段は,本件各発明の防止手段と同様に,間隙の目詰まりを防止するためのものであって,ウレタンゴム板の突条により環状溝及び間溝を常時清掃する,すなわち突条の板を間隙(クリアランス)に干渉させ,その目詰まりを防ぐ作用効果を奏するものであるから,本件各発明の防止手段と同一である。さらに,甲31の2発明における防止手段の実施形式は,「回転盤の環状突条のテーパ部をはみ出ている回転盤側ウレタンゴム板の側縁部分が,回転盤の環状突条と固定盤の環状溝との間に形成されている隙間(クリアランス)を通過し,また,固定盤の環状溝を形成している固定盤環状部材の壁面をこする」ものであるところ,本件各発明の構成と比べると,ウレタンゴム板の取付位置が異なるが,それは単なる設計上の差異にすぎない。そうすると,本件各発明の技術的思想は,甲31の2発明の被告技術的思想Bの範囲内といえる。 よって,被告は,本件各発明の内容を知らないで,自ら完成させ,本件特許の出願日(平成10年6月12日)以前において,現にその事業の準備をしていたもの の2発明の被告技術的思想Bの範囲内といえる。 よって,被告は,本件各発明の内容を知らないで,自ら完成させ,本件特許の出願日(平成10年6月12日)以前において,現にその事業の準備をしていたものである。 (2) 被告装置が甲31の2発明の範囲内であること被告装置の実施形式に具現された発明は,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとこれに対向する回転円板3の側面部(端面)3aとの間に環状隙間Cが形成されており,その環状隙間C内に突出部が形成されていて,回転円板3を,回転中心軸を中心として円周方向に回転させ,回転円板3の上側に存在している生海苔混合液を,下側方向に向けて吸引し環状隙間C内を強制的に通過させ,環状隙間Cを通過できない大きさの異物が生海苔混合液から分離除去し,回転円板3が回転中心軸を中心として円周方向に回転する際,すなわち,回転円板3が環状固定板4に対して回転する際,環状隙間C内に突出している突出部により環状隙間Cが清掃され,環状隙間Cの目詰まりが防止される,というものである。 そして,甲31の2発明における清掃手段には,回転板方式一般に用いられる汎用技術としての「共回り防止」の技術的思想が具現されており,また,同清掃手段は,クリアランスの清掃が目的であって,「摺接」にこだわる必要はなく,弾性は相対的なものであるから,ウレタンゴム板は「突起・板状」に該当し,その設置場所は特殊な構造に限られない。 そうすると,被告装置に具現された技術的思想は,甲31の2発明に係る被告技術的思想Bと同一性を失わない範囲内のものであるから,先使用権の適用が及ぶことは明らかである。 (3) 小括よって,被告は,本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,被告が被告装置を製造,販売,使用する行為は,本 あるから,先使用権の適用が及ぶことは明らかである。 (3) 小括よって,被告は,本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,被告が被告装置を製造,販売,使用する行為は,本件特許権を侵害しない。 (4) 原告の主張に対する反論ア原告は,乙13図面が作成されただけでは甲31の2発明は完成されていないと主張するが,被告技術的思想Bは,極めて単純な構成であるから,乙13図面に基づいて製造ができないなどということはあり得ず,その発明が完成していることは明らかである。 イ原告は,被告が甲31の2発明の実施品であるWK-3型Rタイプについて,平成14年3月頃,ウレタンゴム板ではなく金属片を用いる改良により被告技術的思想Bを放棄し,平成16年3月頃以降は,WK-3型Rタイプの生海苔異物除去装置の製造・販売を完全に終了させて,全く異なる形式の装置を製造・販売するようになったから,被告装置には先使用権が成立しないと主張する。 しかし,被告が甲31の2発明の実施品であったWK-3型Rタイプの最終タイプにおいて,ウレタンゴム板ではなく,金属片を固定盤の表面に突接させる構成にしたとしても,その構成は,被告技術的思想Bの放棄で はなく,その技術的思想の一実施例である。 また,被告は,WK-3型Rタイプの製造を平成16年に中止したとしても,それ以降も生海苔異物除去装置にかかる製造販売事業を継続しており,本件訴訟の対象となる被告装置もその範疇の装置であって,被告技術的思想Bの実施品である。被告の事業は,WK-3型Rタイプの機種に限られたものではなく,同機種も含む生海苔異物除去装置分野の製造・販売,あるいは生海苔製造にかかる機械装置全般にかかる製造・販売と捉えるべきであり,被告は,このよ 事業は,WK-3型Rタイプの機種に限られたものではなく,同機種も含む生海苔異物除去装置分野の製造・販売,あるいは生海苔製造にかかる機械装置全般にかかる製造・販売と捉えるべきであり,被告は,このような事業を廃止していない。 よって,被告において,このような事業を継続している限り,甲31の2発明に基づく先使用権が成立する。 〔原告の主張〕(1) 甲31の2発明の実施である事業の準備につきア被告が本件特許の出願日(平成10年6月12日)において,甲31の2発明の実施であるWK-3型Rタイプに係る事業の準備をしていたことは,立証されていない。 イこの点,乙13図面のうち2枚の設計図面(乙13の1・2)は,甲31の2発明に係るものではなく,平成10年3月12日に特許出願した発明(甲31の1)に関する図面と理解できる。上記設計図面には「H.10.6.8日」と記載されているが,これは,その日付に作成された図面に対して,後に,甲31の2発明に係るウレタンゴム板に関する記載が追加されたものと考えられる。また,もう1枚の設計図面(乙13の3)には,日付が「H.10.6.8.月」と記載されているが,上記2枚の設計図面の日付と筆跡・体裁が異なっており,後日追加されたものと疑われる。したがって,乙13図面は,同年6月8日時点での甲31の2発明の実施である事業の準備の証拠にならない。 ウしかも,乙13図面は,甲31の2明細書等の図面とは異なっているた め,その発明とは一致せず,同設計図面だけでは意味が十分に理解できない。これらの設計図面からは,回転盤と固定盤の組み合わせによって隙間を形成しようとしていることは読み取ることができるものの,その隙間の目詰まりを清掃できる技術については,試行錯誤の状態しか読み取れない。 これらの設計図面からは,回転盤と固定盤の組み合わせによって隙間を形成しようとしていることは読み取ることができるものの,その隙間の目詰まりを清掃できる技術については,試行錯誤の状態しか読み取れない。 よって,乙13図面の完成段階では,当業者が最終的な製作図面を作れるような状態とはなっていないのであるから,被告技術的思想Bが完成していたと評価することは到底不可能である。 さらに,先使用権を認めるための「事業の準備」が認められるためには,少なくともその事業内容が確定していなければならないが,上記のとおり,乙13図面程度の記載では,発明が完成していたとはいい難く,せいぜい試行錯誤をしている段階での試作品設計のための概要を記載しているとしか理解できないから,これらの図面作成段階では,事業内容が確定していたとは到底評価し得ない。 (2) 甲31の2発明の範囲につきア甲31の2発明の実施品であるWK-3型Rタイプは,回転板方式の生海苔異物除去装置に関するものであるが,回転板方式を採用する全ての装置に対して適用できる汎用技術ではなく,その特殊な構造,すなわち,外周部に同心円状の環状溝を突設した固定盤に,この環状溝と嵌合する環状突条を有する回転盤を対向設置する構造(【請求項1】)を前提として,「清掃手段は,環状溝及び環状突条の間の溝壁と摺接する為に固定盤及び回転盤にウレタンゴム板を突設する」(【請求項6】)というものである。 このように,WK-3型Rタイプにおいては,回転板方式一般に用いられる汎用技術としての共回り防止手段についての技術的思想は具現されておらず,単に,環状溝と環状突条(テーパを設ける。)の構成を採用して,隙間調整ができるという作用効果を奏する一方で,その副作用である生海苔の付着という問題点を解決するために,ウレタンゴム板等 されておらず,単に,環状溝と環状突条(テーパを設ける。)の構成を採用して,隙間調整ができるという作用効果を奏する一方で,その副作用である生海苔の付着という問題点を解決するために,ウレタンゴム板等の弾性を有す る部材を「摺接」させて,定着した生海苔を清掃しようとする技術的思想を具現するにとどまる。 したがって,WK-3型Rタイプに具現されている甲31の2発明は,本件各発明の技術的思想とは異なるものである。 イ他方,被告装置は,本件各発明の共回り防止手段を備える「共回り防止装置」であって,単なる目詰まり防止手段を備えた装置に尽きるものでない。被告装置は,甲31の2発明のような「環状溝と環状突条(テーパを設ける。)」の対向構造を採用するものでもなければ,その構成の副作用として,生海苔が付着するという問題点を解決するために,ウレタンゴム板等の弾性を有する部材を「摺接」させて,定着した生海苔を清掃しようとする技術的思想を実施するものでもないから,被告装置は甲31の2発明を実施するものではないし,仮に実施している部分があるにしても,その実施の事実と本件各発明について先使用権を有することとは次元が異なる。 したがって,仮に被告が本件特許出願以前に甲31の2発明の実施である事業の準備をしていたとしても,被告装置は,その発明の範囲内のものではないから,被告が被告装置について先使用権を主張することはできない。 (3) 事業の放棄,断念につきア被告は,WK-3型Rタイプについて,当初(改良1型及び改良2型)は,櫛状のウレタンゴム板を突設させて溝を摺接するという手段を採用していたが,ウレタンゴムという軟弱な部材を摺接させることで,摩耗したゴムの破片等が隙間を通過してしまい,海苔の品質を悪化させるという事態が生じたた ンゴム板を突設させて溝を摺接するという手段を採用していたが,ウレタンゴムという軟弱な部材を摺接させることで,摩耗したゴムの破片等が隙間を通過してしまい,海苔の品質を悪化させるという事態が生じたため,改良を繰り返し,平成14年3月頃の改良3型では,ウレタンゴム板の摺接という手段を断念し,金属片を固定盤の表面に突設させるという極めてシンプルな構成を採用した。 よって,この時点で,被告が被告技術的思想Bを放棄したことは明らかである。 イまた,被告は,株式会社親和製作所(以下「親和製作所」という。)から提起された特許権侵害訴訟(当庁平成12年(ワ)第14499号)において,平成14年6月27日に,WK-3型Rタイプ等の製造・販売の差止め等を命じる判決を受け,その控訴審で,平成16年3月頃に親和製作所と和解したものの,これ以降,WK-3型Rタイプの製造・販売を完全に断念した。 平成16年以降に被告が製造・販売したWK-4型等は,生海苔射出方式の装置であり,減圧吸引方式のWK-3型Rタイプとは異なる構成のものであった。 ウその後,被告は,平成18年5月に被告装置(WK-500,WK-600)を発売しているが,上記のとおり,被告は,平成14年3月頃に被告技術的思想Bを放棄し,さらに,平成16年3月頃にWK-3型Rタイプの製造・販売を完全に終了させ,それ以降は全く異なった形式の装置を製造・販売していたことからすれば,仮に被告がWK-3型Rタイプにおいて被告技術的思想Bについての事業の準備をしていたと仮定しても,結果的にその事業は放棄,断念されたのであるから,その後の同一の事業に対して先使用権が成立すると解すべきではなく,ましてや被告装置という異なる事業に対して先使用権が成立する余地は全くない。 7 争点(4 にその事業は放棄,断念されたのであるから,その後の同一の事業に対して先使用権が成立すると解すべきではなく,ましてや被告装置という異なる事業に対して先使用権が成立する余地は全くない。 7 争点(4)(被告の行為に対する差止請求の可否)について〔原告の主張〕(1) 被告装置についてア被告装置は,本件各発明の技術的範囲に属するから,被告が被告装置を製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をする行為は,本件特許権の侵害に当たる。 よって,原告は,被告に対して,本件特許権に基づく侵害停止請求権として,被告装置の製造,販売,輸出,販売の申出の停止を求め,また,侵害の予防に必要な行為として,被告装置の廃棄を求める。 イ被告は,被告装置を使用して海苔製造を行っている製造業者(ユーザー)に対して,補充部品として本件固定リング及び本件板状部材を供給している。本件各発明は「生海苔の共回り防止装置」に関する発明であるところ,本件固定リング(環状固定板4)又は本件板状部材(板状部材8)だけでは「共回り防止装置」に該当しないが,本件固定リング及び本件板状部材は,それぞれ本件各発明の技術的範囲に属する物(被告装置)の生産にのみ用いる物であることは明らかである。 よって,被告が本件固定リング及び本件板状部材をそれぞれ製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をする行為は本件特許権侵害とみなされるから(特許法101条1号),原告は,被告に対して,本件特許権に基づく侵害停止請求権として,本件固定リング及び本件板状部材の製造,販売,輸出,販売の申出の停止を求め,また,侵害の予防に必要な行為として,本件固定リング及び本件板状部材の廃棄を求める。 (2) メンテナンス行為についてア原告は,被告に対し,別紙メンテナンス行為目録記載1 売の申出の停止を求め,また,侵害の予防に必要な行為として,本件固定リング及び本件板状部材の廃棄を求める。 (2) メンテナンス行為についてア原告は,被告に対し,別紙メンテナンス行為目録記載1の行為(以下「本件メンテナンス行為1」という。),すなわち,被告装置に対して本件固定リング又は本件板状部材を取り付けることの差止めを求めるとともに,同目録記載2の行為(以下,「本件メンテナンス行為2」といい,本件メンテナンス行為1及び2を併せて「本件各メンテナンス行為」という。),すなわち,被告装置に対する点検,整備,部品の交換又は修理を行うこと(ただし,本件メンテナンス行為1を除く。)の差止めを求める。 イ被告装置は,本件固定リングと回転円板で形成される極めて小さな幅(0. 1~0.5mm程度)の環状隙間Cに生海苔を通過させるものであるから, ユーザーによる1年程度の使用によって金属製部材である回転円板と本件固定リング又は本件板状部材との接触による摩耗が不可避であり,その摩耗によって精度(隙間の間隔)の維持が極めて困難となる。そのため,被告は,ユーザーからの依頼で,被告装置のメンテナンス業務を行っている。 このように,被告装置は,本件各メンテナンス行為を施すことによって,翌年度も新品と同様の状態でその性能を十分に発揮することができるのである。換言すれば,製品寿命が来て廃棄すべき製品,あるいはそのままでは被告装置の本来の性能が発揮できず新規製品に代替すべき製品に対して,本件各メンテナンス行為を施すことによって被告装置を蘇生させ,新たな被告装置を再生していると評価できるのであるから,本件メンテナンス行為1はもちろん,本件メンテナンス行為2も,複数の部品から被告装置を組み立てる行為と実質的に変わりなく,特許権者たる原 させ,新たな被告装置を再生していると評価できるのであるから,本件メンテナンス行為1はもちろん,本件メンテナンス行為2も,複数の部品から被告装置を組み立てる行為と実質的に変わりなく,特許権者たる原告の販売利益を実質的に奪う特許権侵害行為であって,特許法2条3項1号の「生産」に当たると理解すべきである。 ウ仮に本件各メンテナンス行為(特に本件メンテナンス行為2)を「生産」と評価し得ない事情があるとしても,少なくともユーザーによる被告装置の「使用」は,本件各発明の「実施」に該当するから,各ユーザーは,被告装置の使用によって本件特許権を侵害している。そして,被告による本件各メンテナンス行為は,各ユーザーの特許権侵害行為を実質的に助長するものであるから,被告は,不法行為者(特許権侵害者)を幇助した者(民法719条2項)として共同行為者とみなされる。 そして,被告による本件各メンテナンス行為が停止された場合は,各ユーザーは被告装置の使用を停止せざるを得ないから,本件各メンテナンス行為の停止によって明らかに本件特許権侵害は予防されるのである。 エよって,いずれにせよ被告が本件各メンテナンス行為を行うことは,本件特許権の侵害を構成する。 したがって,原告は被告に対して,本件特許権に基づく侵害停止請求権又は侵害予防請求権の行使として,本件各メンテナンス行為の禁止を求める。 〔被告の主張〕被告が,平成19年6月8日以降被告製品を製造・販売等していること及び被告装置のメンテナンス業務を行っていることは認める。 その余は,全て否認ないし争う。 8 争点(5)(原告の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の有無及び額)について〔原告の主張〕(1) 被告が本件特許権の設定登録日以降に被告製品を製造・販売等した ,全て否認ないし争う。 8 争点(5)(原告の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の有無及び額)について〔原告の主張〕(1) 被告が本件特許権の設定登録日以降に被告製品を製造・販売等した行為は,本件特許権を侵害する不法行為を構成し,また,被告は,原告の実施許諾を得ることなく無償で本件各発明を実施してきたのであるから,それよって不当に利得を得ている。 (2) 被告製品の売上高本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)から平成26年10月までの間の,被告装置,本件固定リング及び本件板状部材の売上高は,それぞれ以下のとおりであり,その総額は21億8479万円である。 ア被告装置19億7164万円(推定549台)イ本件固定リング2億0790万円(推定・単価3万1500円×6600個)ただし,本件固定リングの売上高が4200万1550円であるとの被告の主張については,争わない。 ウ本件板状部材525万円(推定・単価525円×1万個) ただし,本件板状部材の売上高が378万7600円であるとの被告の主張については,争わない。 (3) 実施料率本件各発明の実施に対して,原告が受けるべき金銭の額に相当する額の料率は,以下の事情を総合すれば,売上高に対して10%を下ることはない。 この点に関して被告は,実施料率にさらに寄与度を乗ずるとの算定方法を主張をするが,特許法102条3項の適用に際しては,「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」として,売上高を基準として何%を実施料率として乗ずるかを論ずれば十分であるから,被告の上記算定方法は誤りである。 ア原告と被告との関係海苔生産装置(特に生海 るべき金銭の額に相当する額」として,売上高を基準として何%を実施料率として乗ずるかを論ずれば十分であるから,被告の上記算定方法は誤りである。 ア原告と被告との関係海苔生産装置(特に生海苔異物除去装置)業界において原告,被告及び親和製作所は三つ巴の関係にあったが,原告と親和製作所との間に特許権侵害訴訟が係属している段階では,原告と被告とは話合いによる解決を協議していた。しかし,被告は,原告が訴訟提起を遅らせたことを奇貨として,原告からの提案等に対して時間稼ぎをして合意を引き伸ばし,最終的には交渉を一方的に破棄した上,本件訴えを本案とする仮処分命令申立事件(当庁平成26年(ヨ)第22019号)の決定(以下「本件仮処分決定」という。)が下されるまで,被告製品の製造・販売を一向に止めようとしなかった。これによって,被告が本来であれば得られなかった違法な利益を獲得したことは明らかである。 このような被告の態度を勘案すれば,特許権侵害を犯した後に支払うべき実施料率(判決によって認定されるべき実施料率)は,製品販売前に誠意をもってライセンス交渉を行い,通常のライセンス契約をした場合の実施料率と比較して格段に高率となることは当然である。 イ原告に実施許諾の意思がないこと 原告は,親和製作所との間の紛争期間中は,被告との話合いを目指したが,それは,被告が原告の傘下に入ること等を内容とする包括的な業務提携に関するものであり,今となっては,仮に被告が本件各発明の実施許諾を求めたとしても,競業者である被告からの,かつ海苔生産装置分野における原告の主力製品の競合品についての実施許諾の要望に応じることは絶対にない。 なお,原告は,親和製作所からの実施許諾の求めも即座に断った。 ウ原告が本件各発明 生産装置分野における原告の主力製品の競合品についての実施許諾の要望に応じることは絶対にない。 なお,原告は,親和製作所からの実施許諾の求めも即座に断った。 ウ原告が本件各発明の実施に基づく独占的利益を有すること原告は,これまで他社に対して本件各発明の実施を許諾することなく,自ら本件各発明を実施している。 また,親和製作所は,被告との特許権侵害訴訟に敗れ,海苔生産装置関連分野から撤退した。しかも,被告も,本件仮処分決定により被告装置を製造・販売することができないから,現状において,ユーザーの要求性能に適う回転板方式の生海苔異物除去装置を製造・販売している事業者は原告だけであり,原告には独占的利益が存在する。 エ本件各発明が極めて高い価値を有すること回転板方式の生海苔異物除去装置に内在する「共回り」の問題を解決するためには,本件各発明の実施が必要不可欠である。このことは,親和製作所が,原告との特許権侵害訴訟で敗訴した後,販売価格の5%のロイヤルティを提案し,それが拒否されると,自社製品の製造・販売を断念したことからも明らかである。また,海苔生産現場においても,本件各発明は高い評価を得ている。 他方,被告は,本件各発明の代替技術を有しておらず,平成18年から8年以上も本件各発明の実施品である被告装置の販売を継続しており,被告が製造・販売する生海苔異物除去装置は被告装置のみである。被告装置は,1台410万円ないし750万円と高価格であり,その売上げが被告 の売上高に貢献しており,しかも,その粗利率は少なくとも40%と推定される。さらに,被告装置は,販売後も補充部品の供給やメンテナンスによって多額の売上げを得ることができる。 (4) 実施料相当額よって, 献しており,しかも,その粗利率は少なくとも40%と推定される。さらに,被告装置は,販売後も補充部品の供給やメンテナンスによって多額の売上げを得ることができる。 (4) 実施料相当額よって,原告の損害又は損失は,被告製品の売上総額21億8479万円の約10%に相当する2億1847万円を下らない。 (5) 弁護士費用原告は,被告による特許権侵害の不法行為のために本件訴訟の提起を余儀なくされ,弁護士費用として,上記2億1847万円の約10%に相当する2100万円を下らない額の損害を被った。 (6) 小括よって,原告は,被告に対し,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得の返還請求として,上記実施料相当額(損害額又は損失額)2億1847万円の内金である2億1500万円及び上記弁護士費用相当額2100万円の内金である1500万円の合計である2億3000万円,並びにこのうち3000万円に対する平成25年9月12日(警告書到達日の翌日)から,うち2億円に対する平成26年10月21日(同月17日付け訴え変更申立書の送達日の翌日)から各支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。 〔被告の主張〕(1) 消滅時効の援用原告は被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権と不当利得返還請求権を主張するところ,被告は,このうち不法行為に基づく損害賠償請求権について,3年の消滅時効を援用する。 よって,本件訴訟の提起日(平成25年12月11日)から3年を遡る平成22年12月11日以前の行為に係る損害賠償請求権は時効により消滅し ている。 (2) 被告製品の売上高ア平成19年6月8日から平成26年10月28日までの間の被告装置の売上高が19億7164万円で 係る損害賠償請求権は時効により消滅し ている。 (2) 被告製品の売上高ア平成19年6月8日から平成26年10月28日までの間の被告装置の売上高が19億7164万円であることは認める。 イ上記期間の本件固定リングの売上高は,4200万1550円(1629個)である。 ウ上記期間の本件板状部材の売上高は,378万7600円(2569個)である。 (3) 実施料率及び寄与度実施料率に関する資料を参考にし,また,以下の諸事情を考慮すれば,被告装置全体を対象とする特許発明を観念した場合の通常認められる水準の実施料率は,4%が限度である。 さらに,被告装置全体における本件各発明の寄与度はせいぜい10%であって,本件固定リングにおける本件各発明の寄与度は25%である。なお,本件板状部材は目詰まり防止に直接寄与することから,その寄与度は100%と考える。 ア本件各発明は,生海苔異物分離除去装置全体を対象とするものではなく,回転円板と環状固定板との間に形成されるクリアランスに突起物を設けて,クリアランスの目詰まりをなくし,異物分離除去の効率化を図ろうとした,「共回り防止装置」という補助的・付属的な発明にすぎない。 イ被告装置は,生海苔・海水混合液を回転円板と環状固定板との間のクリアランスに通過させ,通過できない異物を分離・除去する装置であるところ,かかる異物分離の機能は,従来の生海苔異物分離除去装置に備わるものであり,本件各発明の構成を具備しなくても達成できるものであって,本件各発明は無関係である。 ウ被告装置では,クリアランスの目詰まり対策として,回転円板の周縁を テーパ状にし,上下方向に移動可能とすることで,クリアランスの隙間を調整する構造を備えている 関係である。 ウ被告装置では,クリアランスの目詰まり対策として,回転円板の周縁を テーパ状にし,上下方向に移動可能とすることで,クリアランスの隙間を調整する構造を備えているから,海苔生産シーズン(毎年5,6か月間)後半の,目詰まりが発生しやすくなる時期でも,同構造によりクリアランスの隙間を調整することだけで対応可能である。 シーズン終盤の「ハタキ」と呼ばれる時期(2週間ないし1か月間)は,海苔の厚く硬い根元部分まで刈り取るため,目詰まりが生じるが,この時期は,クリアランスの隙間を調整すること及び本件板状部材を用いることの二つの方法で目詰まりを防止することになる。 したがって,被告装置において本件板状部材が有用なのは,この「ハタキ」の時期に限られる。 エ上記アのとおり,本件各発明は,生海苔異物分離除去装置を対象にしたものではなく,その補助的・付属的な共回り防止装置に関するものにすぎないから,その実施料率について,生海苔異物分離除去装置である被告装置における粗利益を考慮する余地はない。 また,粗利益が40%であるとの原告の主張は,親和製作所の装置の粗利率が18.39%であったことに照らしても,当を得ない。 (4) 不当利得額ア被告装置 788万6560円〔売上高19億7164万円×実施料率4%×寄与度10%〕イ本件固定リング 42万0015円〔売上高4200万1550円×実施料率4%×寄与度25%〕ウ本件板状部材 15万1504円〔売上高378万7600円×実施料率4%×寄与度100%〕エ合計 845万8079円第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義 本件各発明に係る特 〔売上高378万7600円×実施料率4%×寄与度100%〕エ合計 845万8079円第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義 本件各発明に係る特許請求の範囲(【請求項1】,【請求項3】,【請求項4】)及び本件訂正明細書等(段落【0001】ないし【0006】,【0009】ないし【0012】,【0019】ないし【0021】,【0026】,【0029】,【0031】,【0032】)の記載によれば,本件各発明は,生海苔混合液槽の選別ケーシングの円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,従来,生海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均等なとき,生海苔が束状,ねじれ,絡みつき等の異常な状態で,生海苔が展開した状態でないとき,又は,生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態であって,生海苔の厚みが不均等であるときなどに,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうことがあったため,共回りを防止する手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置し,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐことによって,効率的・連続的な異物分離を図ろうとした共回り防止装置に関する発明であって,その防止手段である突起・板体の突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける構成としたり(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたり(本件発明3),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成としたりした(本件発明4)ものであ り(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたり(本件発明3),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成としたりした(本件発明4)ものであると,認めることができる。 2 争点(1)ア(構成要件B2等の充足性)について(1) 本件各発明のうち,構成要件B2は,「この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」,構成要件B’2は,「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」,構成要件B”2は,「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに 設ける構成とした」というものであるところ,これらの構成要件に含まれる「選別ケーシング」が,構成要件A1の「生海苔排出口を有する選別ケーシング」を指すものであることは,本件各発明の特許請求の範囲の文言からして,明らかである。 この「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)について,原告は,被告装置の「吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7」(被告構成α1ⅰ)及び「環状固定板4」(同ⅱ)が一体として,本件各発明の「選別ケーシング」に当たるから,被告装置の板状部材8が,環状固定板4の表面の一部に形成された凹部に嵌め込むようにして取り付けられ,環状固定板4の表面及び側面からそれぞれ突出して「表面側の突出部」及び「側面側の突出部」を形成している構成(被告構成β2)が,本件各発明の構成要件B2等を充足すると主張する。 (2) 「選別ケーシング」の意義ア 「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)については,本件各発明に係る特許請求の範囲において,「生海苔排出口を有する」もの(構成要件A1)であって,その円周端面又は円周面に突起物を設け(構成要件B2,B’2),あ (構成要件A1,B2等)については,本件各発明に係る特許請求の範囲において,「生海苔排出口を有する」もの(構成要件A1)であって,その円周端面又は円周面に突起物を設け(構成要件B2,B’2),あるいは,回転板との間にクリアランスを形成し,そこに突起物を設ける(構成要件B”2)ものであると規定されている。また,本件訂正明細書等には,「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリアランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タンクに導かれる。」(本件訂正明細書等・段落【0019】),「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び 逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33に寸法差部Aを設けるにようにして当該選別ケーシング33の噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリアランスSと,で構成されている。」(同・段落【0025】),「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。・・・。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠 34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(同・段落【0026】)との各記載があり,【図1】ないし【図8】には,異物分離除去装置に設けられた選別ケーシング33が回転板34との間にクリアランスを形成しており,また,選別ケーシング33の内底部の連結口31から,ホース17が良質タンク13に繋がる構成や,防止手段6が選別ケーシング33の円周面33a若しくは円周端面33b又は回転板の円周面34a若しくは円周端面34bにそれぞれ設けられている構成が記載されている。 イこれらの記載によれば,本件各発明に係る生海苔異物分離除去装置において,「選別ケーシング」とは,回転板との間でクリアランスを形成して,当該クリアランスによって異物と生海苔を分離し,生海苔を選別して通過させるとともに,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を,その内底部に設けられた連結口31(生海苔排出口)に集め,同連結口31を通じ て良質タンク13に導くための部材であって,共回りを防止するための防止手段である突起物がその円周端面33b又は円周面33aに設けられることがあるものをいうと認めるのが相当である。 また,「選別ケーシング」を上記のような部材と解釈することは,その用語が,一般的に「選り分けること」を意味する「選別」 周面33aに設けられることがあるものをいうと認めるのが相当である。 また,「選別ケーシング」を上記のような部材と解釈することは,その用語が,一般的に「選り分けること」を意味する「選別」の語と,「容器」ないし「容器形状のもの」を想起させる「ケーシング」の語とを組み合わせたものであることに照らしても妥当ということができる。 そして,本件訂正明細書等の段落【0026】及び【図7】には,選別ケーシング33が,回転板との間でクリアランスを形成する円周面33aを有する「枠板」と,これと固定されている容器形状の部材との二つの部材から成る構成が示されているから,本件各発明の「選別ケーシング」は,それがただ一個の部材で構成されている場合はもちろんのこと,複数の部材が固定されて一体となって,上記のような構造と機能を備えた部材として構成されている場合をも含むものと解するのが相当である。 (3) 「選別ケーシング」の該当性被告装置は,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7(被告構成α1ⅰ)及び環状固定板4(同α1ⅱ)と回転円板3(同α2)などが設けられた異物選別槽A(同α5)において,異物選別槽Aの底板2に環状固定板4が取り付けられており,その内側の円形孔に遊嵌された回転円板3の側面部(端面)3aと,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとで環状隙間Cが形成され,前記円形孔の下側に,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7が配備されているもの(同γ)である。また,弁論の全趣旨によれば,被告装置の異物選別槽A内に生海苔と海水との混合液を投入した後,回転軸モーターによって回転円板3を回転させ,回転円板3上の混合液を同じように回転流動させつつ,吸引ポンプによる吸引を開始すると,混合液は,環状隙間Cを介してケーシング部材7内にそ 液を投入した後,回転軸モーターによって回転円板3を回転させ,回転円板3上の混合液を同じように回転流動させつつ,吸引ポンプによる吸引を開始すると,混合液は,環状隙間Cを介してケーシング部材7内にそれぞれ強制的に吸引され,さら に,吸引ポンプ用連結口,ホースを介して,貯留槽内に投入されるものと認められる。 そうすると,被告装置においては,ケーシング部材7(被告構成α1ⅰ)及び環状固定板4(同α1ⅱ)が,一体として,生海苔を分離して選別するために回転円板3との間でクリアランスを形成し,かつ,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を集めて,吸引ポンプ用連結口からホースを介して貯留槽に導くための部材であるということができる。 しかも,ケーシング部材7と一体となる環状固定板4には,「表面側の突出部」及び「側面側の突出部」を形成する板状部材8が取り付けられている(被告構成β2)。 したがって,被告装置のケーシング部材7と環状固定板4は,一体として,本件各発明の「選別ケーシング」,すなわち,回転板との間でクリアランスを形成して,当該クリアランスによって異物と生海苔を分離し,生海苔を選別して通過させるとともに,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を,その内底部に設けられた連結口31(生海苔排出口)に集め,同連結口31を通じて良質タンク13に導くための部材であって,共回りを防止する手段である突起物がその円周端面33b又は円周面33aに設けられることがあるもの,に該当すると認めるのが相当である。 (4) 構成要件B2等の充足性上記(3)のとおり,被告装置のケーシング部材7及び環状固定板4は,一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当するところ,被告構成β2では,環状固定板4に板状部材8が取り付けられており 充足性上記(3)のとおり,被告装置のケーシング部材7及び環状固定板4は,一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当するところ,被告構成β2では,環状固定板4に板状部材8が取り付けられており,この板状部材8が環状固定板4の表面及び側面からそれぞれ僅かに突出して,「表面側の突出部」と,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」とを形成しているのであるから,かかる被告構成β2は,突起物が,ケーシング部材7及び環状固定板4からなる「選別ケーシング」の,円周端 面(構成要件B2),円周面(構成要件B’2),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランス(構成要件B”2)に設けられた構成に相当するというべきである。 よって,被告装置は,本件各発明の構成要件B2等をいずれも充足するものであると認められる。 (5) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,被告装置においては,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるから,「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)に該当するのは,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7のみであると主張し,これを前提に,「選別ケーシング」の一部でない環状固定板4に突起物が設けられている被告装置の構成は構成要件B2等を充足しないと主張する。 しかし,本件各発明の「選別ケーシング」が,複数の部材が固定されて一体となっている構成を含むことは,前記(2)イのとおりであるから,被告装置において,ケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるとしても,それらが被告装置の動作時に互いに固定されて一体的に機能している以上,ケーシング部材7及び環状固定板4が一体として「選別ケーシング」に該当することを否定すること 定板4とが別個の部材であるとしても,それらが被告装置の動作時に互いに固定されて一体的に機能している以上,ケーシング部材7及び環状固定板4が一体として「選別ケーシング」に該当することを否定することはできないというべきである。 また,前記(3)のとおり,被告装置においては,環状固定板4と回転円板3との間に環状隙間Cが形成されて,そこで生海苔と異物を分離するものであるところ,かかる「選別」は,ケーシング部材7だけでは行えないのであるから,ケーシング部材7が単体で「選別ケーシング」に相当すると解することはできない。 したがって,被告装置の環状固定板4が本件各発明の「選別ケーシング」の一部でないことを前提に,板状部材8が環状固定板4に取り付けられ構成(被告構成β2)が本件各発明の構成要件B2等を充足しないとの被告の上 記主張は採用することができない。 3 争点(1)イ(構成要件Cの充足性)について(1) 本件各発明の構成要件Cは,「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」というものであるところ,本件各発明では,この「共回り防止装置」の語は,「生海苔異物分離除去装置」(構成要件A5,C)の語とは別に用いられており,構成要件Cの上記文言に照らしても,これが,本件各発明でいう「生海苔異物分離除去装置」に内蔵され,その一部となる構成を指すものであることは明らかである。 そして,前記1のとおり,本件各発明は,クリアランスを利用して,生海苔・海水混合液から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置において,従来,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いてしまうことがあったために,共回りを防止する手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置し,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を の目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いてしまうことがあったために,共回りを防止する手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置し,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐことによって,効率的・連続的な異物分離を図ろうとした共回り防止装置に関する発明であるから,そこにおける「生海苔の共回り防止装置」(構成要件C)とは,「生海苔異物分離除去装置」(同A5,C)において,同装置に設けられた「共回りを防止する防止手段」(同A3,B)を突起・板体の突起物とし(同B1),この突起物を選別ケーシングの円周端面(同B2),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面(同B’2),あるいは,クリアランス(同B”2)に設ける構成とすることによって共回り防止の目的を達成できるようにした「装置」,を意味するものと解するのが相当である。 (2) この点,生海苔異物除去機(被告構成α5)である被告装置が,「生海苔異物分離除去装置」(構成要件A5)に該当することは争いがないところ,弁論の全趣旨によれば,生海苔異物分離除去装置(生海苔異物除去機)である被告装置においては,「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)で ある板状部材8(被告構成α3)が設けられており,その板状部材8が厚さ数mm,長方形状の「板状」であって(被告構成β1),環状固定板4の表面4b及び内周側部分(内周端面)4aよりも僅かに突出する構成を備えること(被告構成β2)によって,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cに目詰まりが生じることを防止できるものであると,認めることができる。 そうすると,生海苔異物分離除去装置である被告装置においては,上記構成を具備することによって,「共回りを防止す 状隙間Cに目詰まりが生じることを防止できるものであると,認めることができる。 そうすると,生海苔異物分離除去装置である被告装置においては,上記構成を具備することによって,「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3,B)を突起・板体の突起物とし(同B1),この突起物を選別ケーシングの円周端面(同B2)や円周面(同B’2),あるいはクリアランス(同B”2)に設ける構成とすることによって共回り防止の目的を達成できるようにした「装置」,すなわち「共回り防止装置」が備わっているということができる。 したがって,被告装置は,本件各発明の構成要件Cを充足する。 (3) この点に関して被告は,被告装置そのものは「生海苔異物分離除去装置」であって,「共回り防止装置」ではないから,構成要件Cを充足しないと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,「共回り防止装置」は,生海苔異物分離除去装置の一部の構成を指すものと解されるから,被告装置そのものが生海苔異物分離除去装置に該当するからといって,被告装置がその中の一部の構成として「共回り防止装置」を具備しないということはできない。 そして,被告装置が「共回り防止装置」に当たる構成を有すると認められることは,前記(2)のとおりであるから,被告装置が構成要件Cを充足しないとの被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(2)ア(進歩性欠如-本件各発明につき)について(1) 乙1発明の内容 乙1公報の特許請求の範囲請求項1の記載及び発明の詳細な説明の段落【0001】,【0005】,【0009】,【0020】ないし【0023】,【0025】,【0028】,【0029】の各記載並びに【図1】によれば,乙1公報には,乙1発明として,「第一分離除去具が,ⅰ) 001】,【0005】,【0009】,【0020】ないし【0023】,【0025】,【0028】,【0029】の各記載並びに【図1】によれば,乙1公報には,乙1発明として,「第一分離除去具が,ⅰ)第一回転板,ⅱ)第一回転板との間にクリアランスSを形成する環状固定板と環状枠板で構成される環状枠板部,ⅲ)環状枠板を連設するための周筒部,ⅳ)クリアランスSを通過した海苔混合液を連設タンクに排出するガイド筒,ⅴ)異物を排出するための管状の排出路及びそれに続く排出管とで構成されており,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスSを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,同筒状混合液タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置」が開示されていると認めることができる。 (2) 本件各発明と乙1発明の対比ア本件各発明及び乙1発明は,ともに生海苔異物分離除去装置に関するものであるところ,乙1発明の構成のうち,第一回転板は,本件各発明の「回転板」に,環状枠板部,円筒部及びガイド筒は,本件各発明の「生海苔排出口を有する選別ケーシング」に,筒状混合液タンクは,本件各発明の「生海苔混合液槽」に,異物を排出するための排出路及び排出管は,本件各発明の「異物排出口」に,それぞれ相当するといえる。 そうすると,乙1発明は,以下のとおり,本件各発明の構成と一致し,又は相違する。 (一致点)生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を 有する生海苔異物分離除去装置。 (一致点)生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を 有する生海苔異物分離除去装置。 (相違点)本件各発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける(本件発明4)構成とした,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を具備する生海苔の共回り防止装置であるのに対して,乙1発明はかかる共回り防止装置でない点。 イこの点に関して原告は,乙1発明が「目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がない」ものであるから,この点でも本件各発明と相違すると主張する。 確かに,乙1公報の段落【0029】には,「この異物分離除去装置を使用すれば,異物が前記クリアランスに詰まりにくいため,従来のように目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がない結果,装置の維持がしやすいとともに取扱いが簡易になり,この結果,生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができる。」との記載がある。しかし,乙1発明においては,回転板が回転しているために,クリアランスに生海苔や異物が「詰まりにくい」(段落【0009】,【0023】,【0028】及び【0029】)とはされているものの,クリアランスに生海苔や異物が「詰まることがない」とはされていないから,乙1発明が,目詰まり防止のための手段を設けることを積極的に排除することを開示しているとまでいうことはできない。そして,上記の「目詰まり洗浄装置等を別途設ける必要がない」(段落【0029】)との記載は,乙1発明 詰まり防止のための手段を設けることを積極的に排除することを開示しているとまでいうことはできない。そして,上記の「目詰まり洗浄装置等を別途設ける必要がない」(段落【0029】)との記載は,乙1発明においては,生海苔や異物が詰まりにくいために,基本的に,従来技術で設けられていたような「目詰まり噴射水によって洗浄するという洗浄装置」(段落【0 003】)等を別途に設ける必要がないことを記載したにとどまるものと解するのが相当である。 したがって,原告主張の上記の点が乙1発明と本件各発明の相違点であるとは認めることができない。 また,原告は,乙1発明が回転板を選別ケーシングに内嵌めしたものに限定しているのに対して,本件各発明では内嵌めに限定されていない点も相違点であると主張する。 しかし,本件各発明は,その請求項において,回転板を選別ケーシングに内嵌めする構成を排除しておらず,むしろ,その実施例として,回転板を選別ケーシングに内嵌めした形態が記載されている(本件訂正明細書等・段落【0026】,【図7】)のであるから,この点が乙1発明との相違点であるということはできない。 (3) 相違点の容易想到性についてア被告は,乙1発明に基づいて,乙5装置で公然実施されていた公知技術や乙8公報ないし乙10公報の公知技術を参照して,本件各発明の構成に至ることは,本件特許出願の当時,当業者に容易であったと主張する。 この点,乙5装置の構成及びその製造・販売の時期については,当事者間に争いがあるが,被告は,乙5装置を本件特許出願前の平成9年秋に製造し,同年10月に販売したと主張し,その構成について,「上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通し 成9年秋に製造し,同年10月に販売したと主張し,その構成について,「上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通しており,外槽内側には,回転軸が中心となるような配置で濾筒が設けられ,濾筒は側壁に無数の微小通水孔が形成され,濾筒の上端縁に,鍔状のフランジ部があり,回転ブラシ筒を前記回転軸に貫通させて濾筒の内側に回転可能に装入させ,回転ブラシ筒の周壁には,途中で数か所切れて連続していないらせん状のブラシが設けられ,らせん状のブラシ先端は,濾筒の内周壁に当接するよ うに形成されており,回転ブラシ筒の上端より所定間隔下であって,回転ブラシ筒の周壁にらせん状に取り付けられているブラシの最上部より少し低い高さ位置にL型金具を設け,赤い囲み部材の上方の開放部を覆う帽状キャップの下面中央には,前記回転軸を受ける軸受孔が設けられ,短い筒状部材が帽状キャップの下面に突設され,短い筒状部材の端面には環状鍔が設けられ,帽状キャップを赤い囲み部材に取り付けた際に,該環状鍔は前記濾筒の上端縁と対向し隙間を形成するようになっており,L型金具は,濾筒の上端縁に当接するようにされ,水平方向に延びる該隙間に挿入されているL型金具の刃部が,該隙間を移動し,該隙間に異物が詰まって,該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることがなく,回転ブラシ筒の回転につれて濾筒内を上昇した生海苔混合液は,帽状キャップの環状鍔の下面と,濾筒の上端縁との間に形成される隙間を介して押し出され,排出樋を介して出されるWK-3型用大荒ゴミ取り装置」であると主張する。 そこで,乙5装置が被告主張のとおりの上記構成を有するものと仮定した場合に,前記相違点が容易想到であるか否かを検討する。 介して出されるWK-3型用大荒ゴミ取り装置」であると主張する。 そこで,乙5装置が被告主張のとおりの上記構成を有するものと仮定した場合に,前記相違点が容易想到であるか否かを検討する。 イ乙1発明に係る装置と乙5装置は,いずれも生海苔の異物除去に関する技術分野の装置である点で共通するが,乙1発明に係る装置は,前記(1)のとおり,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として回転させることで,同クリアランスを通過する生海苔と異物とを分離する,回転板方式の異物分離除去装置であり,そのクリアランスは,垂直方向に延びるものである(【図1】)のに対して,乙5装置は,前記アのとおり,回転板方式の異物分離除去装置ではなく,外槽の内側に設けられた濾筒の上端縁と,帽状キャップの下面に突設した筒状部材の端面の環状鍔との間に水平方向に延びる隙間を形成し,当該隙間を介して生海苔混合液が押し出されるこ とによって,生海苔と異物とを分離する装置であって,両者の構造は大きく異なっているから,仮に乙1発明にクリアランスの目詰まりという課題が内包されており,あるいは,乙2公報等によってスリットの目詰まりを除去するための清掃装置を設けることが公知となっていたとしても,そのような課題を解決するに当たって,構造が全く異なる乙5装置の構造を組み込むことについての動機付けがあるものとは解することができない。 また,乙5装置においては,隙間を形成する濾筒の上端縁と帽状キャップの環状鍔の下面はいずれも固定されており,濾筒の内側に回転可能に装入された回転ブラシ筒に設けられたL型金具の刃部が,当該隙間に挿入され,回転ブラシ筒の ては,隙間を形成する濾筒の上端縁と帽状キャップの環状鍔の下面はいずれも固定されており,濾筒の内側に回転可能に装入された回転ブラシ筒に設けられたL型金具の刃部が,当該隙間に挿入され,回転ブラシ筒の回転に伴って当該隙間を移動することによって,当該隙間への異物の詰まりを防止するのであるから,仮に乙1発明のクリアランスの目詰まりを解消するために乙5装置の構造を組み込もうとすれば,L型金具のみならず,それを回転させるための回転ブラシ筒も併せて適用する必要があるが,乙1発明には,回転ブラシ筒に相当する部材は存在せず,しかも,乙1発明の筒状混合液タンクは,その上端縁に設置された原料供給管から生海苔海水混合液を供給し,第一回転板の遠心力によって異物を分離し,生海苔と海水のみがクリアランスを通過して下方に流れるものであるから(段落【0021】,【0023】),ここに,乙5装置の,生海苔混合液を濾筒内で上昇させる回転ブラシ筒を適用することは,困難というべきである。 さらに,仮に乙5装置のL型金具を乙1発明の装置に適用するとしても,乙5装置のL型金具は,隙間を形成する濾筒や帽状キャップの環状鍔とは別の部材である回転ブラシ筒に設けられて,当該隙間の外から当該隙間の中に挿入され,回転ブラシ筒の回転に伴って隙間を移動するものであるから,このL型金具を第一回転板と環状枠板部との間に形成されるクリアランスを有する乙1発明に組み合わせた場合には,その構造は,L型金具が 第一回転板や環状枠板部とは別の回転体に付され,クリアランスの外部から,その内部に挿入されて,当該別の回転体の回転に伴って,クリアランスを移動するものとなるにとどまり,本件各発明のように,突起・板体の突起物を,環状枠板部(選別ケーシング)の円周端面に設ける構成(構成要件B2),第一回 て,当該別の回転体の回転に伴って,クリアランスを移動するものとなるにとどまり,本件各発明のように,突起・板体の突起物を,環状枠板部(選別ケーシング)の円周端面に設ける構成(構成要件B2),第一回転板(回転板)及び/又は環状枠板部(選別ケーシング)の円周面に設ける構成(同B’2),あるいは,環状枠板部(選別ケーシング)と第一回転板(回転板)で形成されるクリアランスに設ける構成(同B”2)に至るものとは認められない。 したがって,乙1発明に乙5装置を組み合わせることは,当業者に容易なものではなく,また,仮にこれを組み合わせたとしても,本件各発明の構成に至ることはないということができる。 ウこの点に関して被告は,乙8公報ないし乙10公報によれば,回転体の回転に伴う共回りの発生を防止するために突起物を好適な箇所に配備することが公知であったから,これを参考にして,乙5装置の構成を本件各発明の共回り防止装置の構成にすることが容易に想到し得るものであったとも主張する。 この点,乙8公報には,多数の小孔を備えているケージ3の内側に,ケージ3内面との間に微小隙間を保ってスクリュー羽根4が配備されており,スクリュー羽根4が回転することにより,ケージ3内面に付着する繊維屑を掻き取り,順次下方に押し下げ,この際,スクリュー羽根4の回転に伴われて繊維屑が共廻りするのを阻止する共廻り防止バー11が,ケージ3の内面に上下方向に伸びるように配置されている「繊維屑圧縮排出装置」が開示されている。しかし,同装置は,繊維屑を圧縮して排出する装置であって,生海苔の異物分離除去のための乙1発明や乙5装置とは,技術分野が全く異なるものである。また,乙8公報における上記微小隙間は,異物を分離除去するためのクリアランス(隙間)ではなく,また,そこに設 けら 除去のための乙1発明や乙5装置とは,技術分野が全く異なるものである。また,乙8公報における上記微小隙間は,異物を分離除去するためのクリアランス(隙間)ではなく,また,そこに設 けられた共廻り防止バー11は,当該微小隙間の目詰まりを防止するための部材ではない。 また,乙9公報には,底板7上に間隙tを介して粉粒体供給用の内筒2が設けられ,当該間隙tから粉粒体が排出される粉粒体フィーダにおいて,当該底板7の上面に等長抵抗板13を設け,当該抵抗板13の直上に中央回転羽根4を配設することにより,回転羽根と共回りしようとする粉粒体を,圧密を起こすことなく安定して排出させるための「粉粒体フィーダにおける粉粒体の共回り防止用抵抗板」が開示されている。しかし,乙9公報記載の装置は,粉粒体フィーダであって,生海苔の異物分離除去のための乙1発明や乙5装置とは,技術分野が全く異なるものである。また,乙9公報における間隙tは,異物等を分離除去するためのクリアランス(隙間)ではなく,等長抵抗板13も,間隙tの目詰まりを防止するための部材ではない。 そして,乙10公報には,貯槽1に溜められた原料7を横送り用のフィーダ2で切り出す形式の原料供給装置において,貯槽の内部でブリッジ防止用のアジテータ4を貯槽の内周面9に沿って回転させる際,その原料7がアジテータ4と一緒に回転する共回り現象を回避するために,貯槽の内周面9に内側に向かって延びる突起12を取り付けた「原料供給装置」が開示されている。しかし,同装置は,貯槽に溜められた原料を横送り用のフィーダで切り出す形式の原料供給装置に関するものであって,生海苔の異物分離除去のための乙1発明や乙5装置とは,技術分野が全く異なるものである。また,乙10公報記載の装置には,異物を分離除去するためのクリアラン 出す形式の原料供給装置に関するものであって,生海苔の異物分離除去のための乙1発明や乙5装置とは,技術分野が全く異なるものである。また,乙10公報記載の装置には,異物を分離除去するためのクリアランス(隙間)は存在せず,突起12は,クリアランス(隙間)の目詰まりを防止するための部材ではない。 そうすると,生海苔異物除去の技術分野とは全く異なる技術分野に関する乙8公報ないし乙10公報に記載された突起物を,乙1発明や乙5装置 に適用する動機があるということはできない。また,クリアランスの目詰まりを防止するための突起物を開示していない乙8公報ないし乙10公報を参考にしても,乙1発明におけるクリアランスの目詰まりを防止するために,乙5装置のL型金具を,選別ケーシングの円周端面に設ける構成(構成要件B2),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成(同B’2),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成(同B”2)とすることに想到することは困難というべきである。 よって,乙8公報ないし乙10公報を参考にして,乙1発明に乙5装置を組み合わることが容易であったとの被告の主張は,採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件特許出願の当時,当業者において,乙1発明を主引例とし,それに乙5装置や乙8公報ないし乙10公報の公知技術を組み合わせることによって,本件各発明に想到することが容易であったとは認めることができないから,本件特許が,進歩性欠如を理由に特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。 5 争点(2)イ(サポート要件違反-本件発明1につき)について被告は,本件発明1について,同発明の目的が「クリアランスの目詰まりを無くす」ことであるが,構成要件B2では,単に とはいえない。 5 争点(2)イ(サポート要件違反-本件発明1につき)について被告は,本件発明1について,同発明の目的が「クリアランスの目詰まりを無くす」ことであるが,構成要件B2では,単に「突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」と記載されているのみで,上記目的に適う効果を期待できる配置位置となっているとはいえないから,本件発明1は「発明の詳細な説明に記載したもの」ではないと主張する。 しかし,本件発明1の「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)である突起物については,本件訂正明細書等では,「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33 bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)と記載されており,【図4】には,選別ケーシングの円周端面33bに突起物が設けられている態様が具体的に示されている。また,本件発明1のクリアランスは回転板と選別ケーシングとの間に形成されているところ,本件発明1の突起物を「選別ケーシングの円周端面」に設ければ,当該突起物は自ずとクリアランスの近傍に存在することになり,しかも,当該突起物がそのクリアランスの目詰まりを防止し,共回りを防止するものであることからすれば,本件発明1の「突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける」とは,クリアランスの近傍にあって,回転板と選別ケーシングで形成されるクリアランスに吸い込まれていかない状況を防止するような位置となる「選別ケーシングの円周端面」に突起物を設けるものと理解されるべきである。そうすると,本件発明1には,実質的に,クリアランスと共回り防止手段たる突起物の位置関係が規定されているということができる。 そして,当業者においては,本件訂 物を設けるものと理解されるべきである。そうすると,本件発明1には,実質的に,クリアランスと共回り防止手段たる突起物の位置関係が規定されているということができる。 そして,当業者においては,本件訂正明細書等の発明の詳細な説明及び図面の上記各記載から,当該突起物を「選別ケーシングの円周端面」に設けて,クリアランスの目詰まりを防止することができるような構成とすることを認識することができるといえるから,本件発明1は,その明細書及び図面において「クリアランスの目詰まりを無くす」という本件発明1の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないと認めるのが相当である。 よって,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載したものである(特許法36条6項1号)と認められるから,サポート要件違反の無効事由があるということはできない。 6 争点(3)ア(乙5装置に係る事業に基づく先使用権)について(1) 特許法79条は,「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし,又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知 得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は,その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において,その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。」として,いわゆる先使用権を規定する。 この規定の「実施又は準備をしている発明・・・の範囲」とは,特許発明の特許出願の際に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものと解されるから,先使用権の効力は,特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備 又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものと解されるから,先使用権の効力は,特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく,これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)。 そして,「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作をいうのであるが(特許法2条1項),それは,一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものであって,発明が完成したというためには,その技術内容が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることが必要であると解される(前記最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決参照)。このことからすれば,先使用権の基礎となる「発明」についても,その技術内容が抽象的な思想にとどまるものでは足りず,一定の技術的課題を解決するための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されているものでなければならないと解するのが相当である。 (2) 乙5装置に係る発明につきア前記4(3)アのとおり,乙5装置の構成及びその製造・販売の時期につい ては,当事者間に争いがあるが,被告は,同装置の構成について,「上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が ては,当事者間に争いがあるが,被告は,同装置の構成について,「上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通しており,外槽内側には,回転軸が中心となるような配置で濾筒が設けられ,濾筒は側壁に無数の微小通水孔が形成され,濾筒の上端縁に,鍔状のフランジ部があり,回転ブラシ筒を前記回転軸に貫通させて濾筒の内側に回転可能に装入させ,回転ブラシ筒の周壁には,途中で数か所切れて連続していないらせん状のブラシが設けられ,らせん状のブラシ先端は,濾筒の内周壁に当接するように形成されており,回転ブラシ筒の上端より所定間隔下であって,回転ブラシ筒の周壁にらせん状に取り付けられているブラシの最上部より少し低い高さ位置にL型金具を設け,赤い囲み部材の上方の開放部を覆う帽状キャップの下面中央には,前記回転軸を受ける軸受孔が設けられ,短い筒状部材が帽状キャップの下面に突設され,短い筒状部材の端面には環状鍔が設けられ,帽状キャップを赤い囲み部材に取り付けた際に,該環状鍔は前記濾筒の上端縁と対向し隙間を形成するようになっており,L型金具は,濾筒の上端縁に当接するようにされ,水平方向に延びる該隙間に挿入されているL型金具の刃部が,該隙間を移動し,該隙間に異物が詰まって,該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることがなく,回転ブラシ筒の回転につれて濾筒内を上昇した生海苔混合液は,帽状キャップの環状鍔の下面と,濾筒の上端縁との間に形成される隙間を介して押し出され,排出樋を介して出されるWK-3型用大荒ゴミ取り装置」であると主張する。 乙5装置が被告主張のとおりの上記構成を有するものとすると,乙5装置は,外槽の内側に設けられた濾筒の上端縁と,帽状キャップの下面に突 れるWK-3型用大荒ゴミ取り装置」であると主張する。 乙5装置が被告主張のとおりの上記構成を有するものとすると,乙5装置は,外槽の内側に設けられた濾筒の上端縁と,帽状キャップの下面に突設した筒状部材の端面の環状鍔との間に水平方向に延びる隙間を形成し,当該隙間を介して生海苔混合液が押し出されることによって,生海苔と異 物とを分離する装置において,当該隙間に異物が詰まって,隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなるという課題を解決するために,濾筒の内側に回転可能に装入された回転ブラシ筒にL型金具を取り付け,そのL型金具の刃部が当該隙間に挿入されて,回転ブラシ筒の回転に伴って当該隙間を移動することによって,当該隙間への異物の詰まりを防止するという発明を具現しているものと認めることができる。 イ他方,本件各発明の構成要件は,前記第2,2(4)記載のとおりであって,前記1のとおり,本件各発明は,生海苔混合液槽の選別ケーシングの円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4)によって,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐというものである。 そうすると,乙5装置に具現された発明は,その発明の対象となる装置の基本的構成が本件各発明に係る装置の基本的構成と て,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐというものである。 そうすると,乙5装置に具現された発明は,その発明の対象となる装置の基本的構成が本件各発明に係る装置の基本的構成と全く異なっていることが明らかであり,また,そこで,隙間(クリアランス)の目詰まりを防止するという課題を解決するために採用された技術的手段の具体的な構成も,乙5装置に係る発明と本件各発明とでは,大きく異なっているというべきである。 ウまた,被告装置は,前記第2,2(6)記載の被告構成α1ⅰないしγの構成を有し,同(7),前記2及び前記3のとおり,本件各発明の技術的範囲に属するものと認められるところ,被告装置は,本件各発明に係る装置と同 様に,回転板方式の生海苔異物除去機であり,本件各発明と同様の課題を解決するために,前記3(2)のとおり,板状部材8を厚さ数mm,長方形状の「板状」とし(被告構成β1),環状固定板4の表面及び内周側部分(内周端面)よりも僅かに突出する構成とすること(被告構成β2)によって,環状固定板4の内周側面部(内周端面)と回転円板3の側面部(端面)とで形成された環状隙間Cに目詰まりが生じることを防止しているものである。 そうすると,被告装置に係る発明は,本件各発明と同様に,その発明の対象となる装置の基本的な構成及びその課題を解決するために採用された技術的手段の具体的な構成のいずれにおいても,乙5装置に係る発明と大きく異なるといわざるを得ず,被告装置は乙5装置の実施形式に具現された発明と同一の範囲内のものということはできない。 (3) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,乙5装置の実施形式には「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間 のということはできない。 (3) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,乙5装置の実施形式には「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」との被告技術的思想Aが具現されており,被告装置も,これと同じ技術的思想を具現したものであるから,被告装置に先使用権が及ぶと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,「発明」というためには,その技術内容が抽象的な思想にとどまるものでなく,一定の技術的課題を解決するための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されていなければならないと解されるところ,被告が被告技術的思想Aとして主張する上記内容は,単に隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設けるというものにすぎず,そこには,隙間に異物などが詰まることを 防止する必要があるという課題は見受けられるものの,その技術的課題を解決するために採用される技術的手段,すなわち,詰まりを防止する手段についての基本的な構造や態様については,何ら具体的かつ客観的なものとして構成されていない。 したがって,被告が被告技術的思想Aとして主張する内容は,乙5装置に具現された技術的思想の創作としての「発明」であるということはできない。 そうすると,被告装置が,乙5装置と同様に,「隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」ものであるとしても,それをもって,被告装置が,乙5装置の実施形式に具現された発明と同一性を失わない範囲内のものであるということはできない。 (4) 小括以上によれば, を防止する手段を設ける」ものであるとしても,それをもって,被告装置が,乙5装置の実施形式に具現された発明と同一性を失わない範囲内のものであるということはできない。 (4) 小括以上によれば,乙5装置の構成についての被告の主張を前提とした場合でも,乙5装置の実施形式に具現された発明は,本件各発明とも,被告装置に係る発明とも,全く異なるものであるというべきであるから,仮に原告による本件特許出願の際に被告が乙5装置に係る事業を実施していたとしても,そのことに基づいて,被告装置に関して本件特許権についての先使用権を有するものとは認められない。 7 争点(3)イ(甲31の2発明の実施である事業の準備に基づく先使用権)について(1) 被告は,本件特許出願(平成10年6月12日)より前に,甲31の2発明に具現された被告技術的思想Bを完成させ,同年6月8日には,その実施品であるWK-3型Rタイプの設計図面(乙13図面等)を完成させて,その量産化に係る事業の準備をしていたから,被告技術的思想Bの範囲内といえる本件各発明について先使用権を有し,その先使用権は,被告技術的思想Bと同一性を失わない範囲内の被告装置にも及ぶと主張する。 (2) 甲31の2発明につき ア甲31の2明細書等の【請求項2】,【請求項5】及び【請求項6】並びに段落【0007】,【0010】,【0011】,【0030】ないし【0033】及び【0036】によれば,甲31の2発明は,外槽の下部へ,外周部に同心円状の環状溝を穿設した固定盤を固定し,この固定盤の内側に,前記環状溝と小間隙を保って嵌合する環状突条を有する回転盤を回転自在に設置し,前記回転盤の外側に,前記環状溝を通過する生海苔の排出手段を連接した生海苔異物除去装置において,環状溝と環状突条と 側に,前記環状溝と小間隙を保って嵌合する環状突条を有する回転盤を回転自在に設置し,前記回転盤の外側に,前記環状溝を通過する生海苔の排出手段を連接した生海苔異物除去装置において,環状溝と環状突条とで形成する生海苔の通過路に目詰まりが生じて,回転盤の回転が困難になったり,著しい回転抵抗を生じるなどの問題点があることから,当該通過路の清掃手段を設けることとし,その清掃手段として,環状溝及び環状突条の間の溝壁と摺接するために,固定盤及び回転盤にウレタンゴム板,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリカーボネイトその他適度の弾性を有し,耐摩耗性,耐薬品性,耐老化性の優れたプラスチック類,合成ゴム類などを突設するものとし,これにより通過間隙の目詰まりを防止するようにした発明であると認められる。 そして,証拠(略)によれば,同発明の実施品であるWK-3型Rタイプにおいては,上部回転盤の環状突条(テーパ部)と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)の目詰まりを防止するために,下部固定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込んで,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,その上部回転盤のウレタンゴム板が,環状突条のテーパ部をはみ出る部分で下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃し,その目詰まりを防止するという,具体的かつ客観的に構成された技術的手段が採用されていたことが認められる。 そうすると,前記第3,6〔被告の主張〕(1)で被告が主張するとおり,甲31の2発明の実施品であるWK-3型Rタイプにおいては,「下部固 定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込み,上部回転盤のウレタンゴム板は,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,環状突条のテーパ部をはみ出る部分が下部固定盤の環状溝 定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込み,上部回転盤のウレタンゴム板は,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,環状突条のテーパ部をはみ出る部分が下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,上部回転盤の環状突条(テーパ部)と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)を清掃し,目詰まりを防止する」という技術的思想(被告技術的思想B)が具現されていたということができる。 イ他方,本件各発明は,前記1のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4)によって,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐというものである。 そうすると,本件各発明と甲31の2発明とは,生海苔混合液を入れる槽の中で固定された部材の円周面と回転体の円周面との間に形成される環状のクリアランス(通過路)を利用して,異物を除去する生海苔異物分離除去装置において,当該クリアランス(通過路)に目詰まりが発生することを防止するための手段を設けた発明であるとの点で共通するといえる。 しかし,本件各発明は,その防止手段である突起・板体の突起物を回転板や選別ケーシングの円周面(円周端面)に設ける構成を含んでいるが,本件訂正明細書等の 発明であるとの点で共通するといえる。 しかし,本件各発明は,その防止手段である突起・板体の突起物を回転板や選別ケーシングの円周面(円周端面)に設ける構成を含んでいるが,本件訂正明細書等の【図4】及び【図6】から明らかなように,本件各発明においては,クリアランスを形成する一方の選別ケーシングに設けられた突起物は,クリアランスを形成する他方の回転板に摺接するものではな く,同様に,回転板に設けられた突起物も,他方の選別ケーシングに摺接するものとはされていない。すなわち,本件各発明は,クリアランスを形成する選別ケーシング又は/及び回転板の円周面(円周端面),あるいはクリアランス自体に突起物が設けられるものであるが,当該突起物がクリアランスを形成する選別ケーシングや回転板に摺接することなしに,クリアランスの目詰まりを防止することができる発明であるといえる。 これに対して,前記アのとおり,甲31の2発明の実施品であるWK-3型Rタイプに具現された被告技術的思想Bは,上部回転盤にはめ込まれたウレタンゴム板が,下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃するというものであるから,甲31の2発明が採用する技術的手段と本件各発明が採用する技術的手段とは,その具体的な構成において互いに異なるものであるというべきであり,これは単なる実施形式の違いということはできない。 したがって,本件各発明の技術的思想とWK-3型Rタイプに具現された技術的思想が同一であるということはできない。 ウこの点に関して被告は,清掃手段はクリアランスの清掃が目的であるから,「摺接」にこだわる必要はなく,弾性は相対的なものであると主張する。 しかし,甲31の2発明及びその実施品であるWK-3型Rタイプに具現 は,清掃手段はクリアランスの清掃が目的であるから,「摺接」にこだわる必要はなく,弾性は相対的なものであると主張する。 しかし,甲31の2発明及びその実施品であるWK-3型Rタイプに具現された被告技術的思想Bが,はめ込まれたウレタンゴム板が環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃し目詰まりを防止するというものであることは,被告自らが主張するところであるばかりか,前記アで認定した甲31の2発明及びその実施品であるWK-3型Rタイプの技術内容,及び,甲31の2明細書等において「清掃手段は,環状溝及び環状突条の間の溝(間溝)壁と摺接する為に固定盤及び回転盤にウレタンゴム板を突設したものである」(段落【0007】),「前記において は,ウレタンゴム板を用いたが,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリカーボネイトその他適度の弾性を有し,耐摩耗性,耐薬品性,耐老化性の優れたプラスチック類,合成ゴム類などを使用することができる。」(段落【0010】)と記載されており,清掃手段が溝壁への「摺接」を前提とし,そのために適度な弾性を有し,摩耗に耐えるものであるとされていることに照らせば,甲31の2発明及びその実施品であるWK-3型Rタイプの技術的思想が「摺接」を前提としないものであると解することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ以上によれば,甲31の2発明は,本件各発明とは異なる発明であるから,仮に被告が本件特許出願の前に,自ら甲31の2発明を完成させていたとしても,被告は,本件各発明に関し,「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし・・・た者」に当たるということはできない。 さらに,本件各発明の技術的範囲に属する被告装置についても,目詰まりを防止する 件各発明に関し,「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし・・・た者」に当たるということはできない。 さらに,本件各発明の技術的範囲に属する被告装置についても,目詰まりを防止するための手段である本件板状部材は,ウレタンゴム等の弾性素材ではなく金属製であって,環状固定板の表面及び側面から僅かに突出して,「表面側の突出部」及び環状隙間内の「側面側の突出部」を形成しているにすぎず(被告構成β2),当該突出部が回転円板に摺接するように構成されているものではないから,被告装置は,甲31の2発明の実施形式に具現化された発明と同一の範囲内のものということはできない。 したがって,この点で,被告が,被告装置に関して,甲31の2発明に基づき本件特許権に係る先使用権を有するものとは認められない。 (3) 甲31の2発明の実施である事業の準備につきア特許法79条の「発明の実施である・・・事業の準備」とは,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度 において表明されていることを意味するものと解するのが相当である(前記最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決参照)。 イ被告は,平成10年4月下旬に甲31の2発明に係る被告技術的思想Bを完成させ,同年6月8日には,甲31の2発明の実施品であるWK-3型Rタイプの設計図面(乙13図面等)を完成させて,その量産化に係る事業の準備をしていたと主張する。 証拠(略)によれば,被告が,平成10年3月までに,基本的な構造として,3本の環状の溝が同心円状に形成されている下部固定盤と,その下部固定盤の3本の環状溝に対して上側から嵌合される3本の環状の突条を同心円状に備えてい 被告が,平成10年3月までに,基本的な構造として,3本の環状の溝が同心円状に形成されている下部固定盤と,その下部固定盤の3本の環状溝に対して上側から嵌合される3本の環状の突条を同心円状に備えている上部回転盤によって,同心円状に6条の環状の隙間を作り,その隙間に生海苔と海水との混合液を強制的に通過させることにより,その隙間を通過できない異物を除去する構造を有する生海苔異物分離除去装置を開発し,同月12日,これを「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」の発明(以下「甲31の1発明」という。)として特許出願(特願平10-061497号)したこと,被告が同年4月19日の「海苔生産機械・資材展」及び同年6月6日の「浅海増殖研究発表全国大会・機械資材展示会」に,自社の生海苔異物分離除去装置を出品し,同年7月28日頃までに機械名称を「WK-32」とする装置用の端子台接続図を作成したこと,その後,被告は,甲31の1発明と同じ基本構造を有するがその環状隙間に清掃手段を付加するなどした甲31の2発明について,同年9月11日に特許出願(特願平10-258335号。発明の名称「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」)をしたこと,同月18日に白石海苔機械センターに対して,「WK-3型Rタイプ」と称する生海苔異物分離除去装置を販売したことが,それぞれ認められる。 そして,この点に関して,当時被告の工場長であった渡邊功は,その陳述書において,平成10年3月下旬に,甲31の1発明の実施品の試作機 の試運転を行ったが,環状隙間に生海苔が詰まって満足な運転ができなかったことから,当該隙間を清掃する部材を設けることを考え,下部固定盤に溝を作り,そこにウレタンゴム板を挿入した改良試作機を作ったこと,同年4月19日の展示会にこの改良試作機を出品したりしたが, なかったことから,当該隙間を清掃する部材を設けることを考え,下部固定盤に溝を作り,そこにウレタンゴム板を挿入した改良試作機を作ったこと,同年4月19日の展示会にこの改良試作機を出品したりしたが,なお目詰まり防止効果が不十分であったため,同月下旬には,下部固定盤だけでなく,上部回転盤にも溝を設け,そこにウレタンゴム板を挿入することで,環状隙間に生海苔が詰まることを防止できる装置(WK-3型Rタイプ)の試作機を完成させたこと,この装置を同年6月6日の展示会に出品するとともに,同月8日には,ウレタンゴム板のサイズを,上部回転盤用が「4×20×50」(mm),下部固定盤用が「4×20×49」(mm)と確定させて,最終的な設計図面(乙13図面を含む。)を作成したこと,その後同年9月11日に,この甲31の2発明を特許出願するとともに,同月頃,その実施品をWK-3型Rタイプとして発売したことを,それぞれ陳述する。 ウしかし,本件においては,被告が平成10年9月11日までに甲31の2発明を完成させて,同日これを特許出願したことは認めることができるものの,被告が同年4月下旬までに同発明を完成させたこと,同年6月6日の展示会に出品されたのが同発明の実施品(WK-3型Rタイプ)の試作機であったこと,同月8日に同実施品の最終的な設計図面が完成したこと等については,いずれも客観的な裏付けを欠くといわざるを得ない。 この点,確かに,乙13図面である3枚の設計図面には,いずれも作成日付を表す「H.10.6.8」(「平成10年6月8日」を意味すると認められる。)との記載があり,そこには,WK-3型Rタイプに用いられる上部回転盤,下部固定盤,その他の部品及び上部回転盤と下部固定盤にそれぞれ挿入するウレタンゴム板の各設計図が記載されている。そして,この下 )との記載があり,そこには,WK-3型Rタイプに用いられる上部回転盤,下部固定盤,その他の部品及び上部回転盤と下部固定盤にそれぞれ挿入するウレタンゴム板の各設計図が記載されている。そして,この下部固定盤の設計図には,ウレタンゴム板をはめ込むための溝が図示 されており,その長さが「71」(mm)と記載されている。 もっとも,被告は,同設計図とは別に,「H.10.6.8」との作成日付が記載された下部固定盤の設計図を提出しているところ,これらの2枚の設計図の記載内容に照らすと,両設計図は,その基本的な部分が同じ内容であって,一方の設計図が他方の設計図をコピーして作成されたか,あるいは,両設計図がそれぞれ他の設計図からコピーして作成されたものであると考えられる。しかし,乙42の設計図に記されたウレタンゴム板をはめ込むための溝の長さは,乙13の2の設計図に記された溝の長さより短く,「53」(mm)と記載されている。 この違いについて,前記渡邊功は,その陳述書で,溝の長さが53mmである乙42の設計図が当初のものであり,乙13の2の設計図の溝の長さ(71mm)は,その作成日付「H.10.6.8」より後に書き込まれたものであると説明するところ,その説明によれば,少なくとも乙13の2の設計図は,平成10年6月8日に作成された図面を元にして,同日付より後に,ウレタンゴム板をはめ込むための溝を加筆して作成されたものであることが明らかである。そして,このことに照らすと,その他の乙13図面や乙42の設計図についても,同日付に作成された図面を元にして,同日付より後に,ウレタンゴム板やそれをはめ込むための溝を加筆して作成された可能性が高いといわざるを得ない。 また,被告は,甲31の2発明に係る特許出願(平成10年9月11日)に先立って,同年 て,同日付より後に,ウレタンゴム板やそれをはめ込むための溝を加筆して作成された可能性が高いといわざるを得ない。 また,被告は,甲31の2発明に係る特許出願(平成10年9月11日)に先立って,同年3月12日に,甲31の2発明の生海苔異物除去装置と同じ基本構造を備えるが,その清掃手段(ウレタンゴム板)を有しない生海苔異物除去装置についての特許出願(甲31の1)をしているところ,これら二つの特許出願に用いられた上部回転盤の図(甲31の1・【図3】及び甲31の2・【図3】)と下部固定盤の図(甲31の1・【図4】及び甲31の2・【図4】)は,甲31の2発明に係るウレタンゴム板をは め込むための溝の有無を除き,それぞれ同じものであるから,乙13図面に含まれる上部回転盤の設計図,下部固定盤の設計図,その他の部品の設計図及びもう1枚の下部固定盤の設計図は,上記のとおり加筆された可能性があるウレタンゴム板やそれをはめ込むための溝についての記載部分を除くと,いずれも平成10年3月12日に特許出願された甲31の1発明の実施品のための設計図であると考えることもできる。そうであれば,被告は,これらの設計図に記載された日付である同年6月8日の時点では,同年3月12日に出願した甲31の1発明の実施品に係る設計図面を作成したにすぎないこととなり,この時点で,後の同年9月11日に出願された甲31の2発明を完成させ,その発明の実施である事業の準備をしていたということにはならない。 さらに,上記のとおり,乙13の3の下部固定盤の設計図(溝の長さは71mm。)より前に作成されたとされる乙42の下部固定盤の設計図に記載された溝の長さは53mmであり,乙13図面のうち1枚には,下部固定盤用の長さ49mmのウレタンゴム板の図が記載されており,前記渡邊功も,被 り前に作成されたとされる乙42の下部固定盤の設計図に記載された溝の長さは53mmであり,乙13図面のうち1枚には,下部固定盤用の長さ49mmのウレタンゴム板の図が記載されており,前記渡邊功も,被告が確定した下部固定盤用のウレタンゴム板のサイズが「4×20×49」であったと陳述するところ,証拠(略)によれば,被告が,長さ49mmの下部固定盤用ウレタンゴム板として用いるウレタンゴム(3辺の寸法は,4mm×20mm×49mm)を購入したのは,平成10年8月3日が最初であり,その際,被告は,同サイズのウレタンゴムを2個購入し,その後,同月11日から29日の間に同サイズのウレタンゴム合計230個を購入したことが認められるが,他方,それ以前においては,被告は,同年6月29日に,3辺の寸法が4mm×100mm×1000mmである大きいサイズのウレタンゴムを購入しているにすぎないと認められる。そうすると,被告が,下部固定盤に長さ53mmの溝を設け,そこに長さ49mmのウレタンゴム板をはめ込むことを決定したのは,被 告が上記の大きいサイズのウレタンゴムを購入した平成10年6月29日よりも後のことであったと考えるのが自然である。 加えて,仮に前記イの渡邊功の陳述どおりであれば,被告は,甲31の2発明について,その特許出願(平成10年9月11日)以前に,試作機を展示会(同年6月6日)に出品して,同発明を公知にしたことになるが,これは,当時既に多数の特許出願の経験を有していた被告の行動として合理的なものとはいえない。 以上認定の諸事情に照らせば,渡邊功の前記陳述のうち,甲31の2発明が平成10年4月下旬までに完成されたこと,同発明の実施品(WK-3型Rタイプ)の試作機を同年6月6日の展示会に出品したこと,及び,同月8日に同実施品の最終的 渡邊功の前記陳述のうち,甲31の2発明が平成10年4月下旬までに完成されたこと,同発明の実施品(WK-3型Rタイプ)の試作機を同年6月6日の展示会に出品したこと,及び,同月8日に同実施品の最終的な設計図面が完成されたことに関する部分は,いずれも客観的な裏付けを欠くものであり,しかも,その内容も不自然というべきであって,採用することができない。 そして,本件においては,このほかに,被告が,平成10年6月8日の時点で,上部回転盤及び下部固定盤に溝を設け,そこに清掃手段であるウレタンゴム板をはめ込んだ構成を有する甲31の2発明に係る装置を完成させ,その最終的な設計図面を作成するなどして,その発明の実施である事業の準備をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 エ以上によれば,被告が,原告による本件特許出願(平成10年6月12日)の際,現に甲31の2発明について即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていたものとは認めることができないから,その「事業の準備」をしていたということもできない。 よって,この点からも,被告が,本件特許権について甲31の2発明に基づく先使用権を有するものであるとは認めることができない。 (4) 小括 前記(2)及び(3)によれば,その余の点について判断するまでもなく,甲31の2発明の実施である事業の準備に基づいて本件特許権についての先使用権を有するとの被告の主張は理由がない。 8 争点(4)(被告の行為に対する差止請求の可否)について(1) 被告製品につき前記第2,2(7),前記2及び前記3によれば,被告装置は,本件各発明の技術的範囲に属するものと認められる。また,被告装置においては,本件固定リングが,本件 について(1) 被告製品につき前記第2,2(7),前記2及び前記3によれば,被告装置は,本件各発明の技術的範囲に属するものと認められる。また,被告装置においては,本件固定リングが,本件各発明の選別ケーシングの一部に当たり,その表面には本件板状部材を取り付けるための凹部が形成されており,その凹部にはめ込まれてボルトで固定された本件板状部材が,本件各発明における「共回りを防止する防止手段」として機能しているのであるから,本件固定リング及び本件板状部材は,いずれも,本件各発明の実施品に当たる被告装置の生産にのみ用いるものであり,特許法101条1号の間接侵害品に該当するということができる。 よって,被告が,被告装置を製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出をする行為並びに本件固定リング及び本件板状部材を製造し,販売し,又は販売の申出をする行為は,本件特許権の侵害行為又は侵害とみなされる行為に当たるから,原告は,被告に対して,これらの行為の差止めを求めることができる(同法100条1項)。 また,原告は,上記各侵害の予防に必要な行為として,被告製品の廃棄を求めることができる(同法100条2項)。 なお,原告は,このほか,本件固定リング及び本件板状部材を輸出する行為についても,侵害とみなされる行為であると主張して,その差止めを求めるが,同法101条1号は「輸出」について何ら規定をしておらず,これを侵害とみなされる行為であるということはできないから,その差止請求は理由がない。 (2) 本件各メンテナンス行為につきア特許製品について加工や部材の交換をする行為であっても,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も考慮して,その行為によって当該特許製品と同一性を欠く特 ア特許製品について加工や部材の交換をする行為であっても,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も考慮して,その行為によって当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許製品の「生産」(特許法2条3項1号)として,侵害行為に当たると解するのが相当である。ここで,当該特許製品の属性としては,製品の機能,構造及び材質,用途,耐用期間,使用態様が,加工及び部材の交換の態様としては,加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである。 イ本件メンテナンス行為1(ア) 原告は,本件メンテナンス行為1,すなわち,被告装置に対して本件固定リング又は本件板状部材を取り付ける行為が,それぞれ「生産」(特許法2条3項1号)に当たり,本件特許権を侵害すると主張して,その差止めを求めている。 (イ) この点,本件板状部材の取付けについては,前記3(2)のとおり,生海苔異物分離除去装置である被告装置において,「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)である本件板状部材が,厚さ数mm,長方形状の「板状」であって,本件固定リングの表面及び内周側部分よりも僅かに突出して,本件固定リングと回転円板との間に形成された環状隙間に突出部を形成することによって,環状隙間の目詰まりを防止する構成となっており,このような構成が本件各発明の「共回り防止装置」(構成要件C)に該当すると認められるところ,本件板状部材は,被告装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するから,このような摩耗によって上記突出部を失い,目詰まり防止の効果を喪失した本件板状部材は, 当すると認められるところ,本件板状部材は,被告装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するから,このような摩耗によって上記突出部を失い,目詰まり防止の効果を喪失した本件板状部材は, もはや本件各発明の「共回りを防止する防止手段」に当たらないというべきであり,また,そのようにして「共回りを防止する防止手段」を失った被告装置は,「共回り防止装置」に当たる構成を有しないものというべきである。 そうすると,そのように「共回りを防止する防止手段」及びそれを含む「共回り防止装置」の構成を有しない被告装置について,新しい本件板状部材を取り付けて,新たに突出部を設ける行為は,それにより本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を備えた「共回り防止装置」を新たに製造するものであるということができるから,その行為は,特許法2条3項1号の「生産」に当たるというのが相当である。 よって,原告は,被告に対し,同法100条1項に基づき,被告装置に対して本件板状部材を取り付ける行為の差止めを求めることができる。 (ウ) 一方,本件固定リングも,被告装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するものであるが,本件固定リングが摩耗したとしても,本件固定リング自体は「共回りを防止する防止手段」ではなく,また,本件固定リングの摩耗によって,例えば環状隙間の間隔が広がり,生海苔異物分離除去装置である被告装置の異物分離除去の機能に支障が出るとしても(この場合は,クリアランスの目詰まりが起こりにくくなり,目詰まり防止の必要性は低くなると考えられる。),そのことは,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐという,本件各発明の「共回り防止装置」が果たす機能とは無関係であるというべきである。そうすると,本件固定リングが摩耗したにす る。),そのことは,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐという,本件各発明の「共回り防止装置」が果たす機能とは無関係であるというべきである。そうすると,本件固定リングが摩耗したにすぎない被告装置について,その固定リングを交換し,新たな固定リングを取り付けたとしても,それによって,被告装置が既に備えている「共回り防止装置」と同一性を欠く,新たな「共回り防止装置」が製造されたということはできないから,かかる行為が本件各発明の「共回り防止装置」を新たに製造する行為であ ると評価することはできない。 よって,被告装置に対して本件固定リングを取り付ける行為の差止めを求める原告の請求は理由がない(もっとも,本件固定リングの交換と同時に本件板状部材をも交換することになる場合は,前記(イ)のとおり,その本件板状部材の交換が「生産」に該当し,許されない。)。 ウ本件メンテナンス行為2原告は,本件メンテナンス行為2,すなわち,被告装置に対する点検,整備,部品の交換又は修理を行うこと(ただし,本件板状部材又は本件固定リングの取付け行為を除く。)も「生産」に当たるとして,その差止めを求めている。 しかし,本件各発明は「共回り防止装置」についての発明であり,前記3のとおり,被告装置は「共回り防止装置」に相当する構成を有するものであるが,この「共回り防止装置」を具備する被告装置について,これを点検し,整備し,部品を交換し,又は,修理をしたとしても,その行為によって,被告装置が有する「共回り防止装置」と同一性を欠く,新たな「共回り防止装置」が製造されたということはできないのであるから,これらの行為を本件各発明に係る物の「生産」と評価することはできない。 よって,本件メンテナンス行為2についての差止めを求める原告の 「共回り防止装置」が製造されたということはできないのであるから,これらの行為を本件各発明に係る物の「生産」と評価することはできない。 よって,本件メンテナンス行為2についての差止めを求める原告の請求は理由がない。 エ原告の主張に対する判断(ア) この点に関して原告は,被告装置が本件固定リングと回転円板とで形成される極めて小さな幅の環状隙間に生海苔を通過させるものであるから,ユーザーによる1年程度の使用によって金属製部材である回転円板と本件固定リング又は本件板状部材との接触による摩耗が不可避であり,その摩耗によって隙間の間隔の維持が極めて困難となるところ,そのような被告装置にメンテナンスを施すことによって,翌年度も新品と同様 の状態でその性能を十分に発揮することができるから,そのようなメンテナンスを新たな被告装置の再生と評価できると主張する。 しかし,本件各発明は,クリアランスを利用した回転板方式の生海苔異物分離除去装置の発明ではなく,あくまで,その発明を先行技術として,そこに「共回りを防止する防止手段」を設けた「共回り防止装置」を具備することによって,先行技術が有する「共回り」の課題を解決することとした発明にすぎないのであるから,被告装置において,本件固定リングと回転円板とで形成された環状隙間による異物分離除去機能が発揮されており,また,メンテナンスによって被告装置の同機能が維持されていることは,先行技術を用いることにすぎず,本件各発明の実施とは無関係であるといわざるを得ない。前記イ(ウ)のとおり,被告装置の環状隙間が広がる結果,異物分離除去の機能が低下したとしても,それは,本件各発明である「共回り防止装置」が果たす機能の問題ではないから,その環状隙間の間隔の調整等のメンテナンスによって異物分離 置の環状隙間が広がる結果,異物分離除去の機能が低下したとしても,それは,本件各発明である「共回り防止装置」が果たす機能の問題ではないから,その環状隙間の間隔の調整等のメンテナンスによって異物分離除去の機能を回復させたとしても,それによって,被告装置に備わっていた「共回り防止装置」と同一性を欠く,新たな「共回り防止装置」が製造されたということはできない。 よって,被告装置に対する本件固定リングの交換やその他の点検,整備,部品の交換又は修理を行うことを本件各発明に係る物の「生産」と評価することはできない。 (イ) また,原告は,仮に本件各メンテナンス行為(特に本件メンテナンス行為2)が「生産」に当たらないとしても,被告による本件各メンテナンス行為は,ユーザーによる被告装置の「使用」(特許法2条3項1号の実施行為)を幇助する行為(民法719条2項)に当たり,本件各メンテナンス行為の停止によって各ユーザーが被告装置の使用を停止せざるを得なくなるから,本件特許権の侵害が予防されるとして,侵害予 防請求権に基づいて本件各メンテナンス行為の禁止を求めると主張する。 しかし,本件各発明の技術的範囲に属する被告装置を使用することが本件各発明の「実施」に当たり,本件特許権を侵害するものであるとしても,当該使用をしているのは,ユーザーであって,被告ではない。そうすると,仮にユーザーが所有する被告装置に被告がメンテナンスを施すことがユーザーによる侵害行為(被告装置の使用)に対する幇助と評価し得るとしても,そもそも侵害行為又は侵害とみなされる行為を自ら行っていない被告に対して,その行為の差止めを求めることはできないというべきである。 なお,原告の上記主張は,被告によるメンテナンスがユーザーの侵害行為に繋がるおそれがあるとして, れる行為を自ら行っていない被告に対して,その行為の差止めを求めることはできないというべきである。 なお,原告の上記主張は,被告によるメンテナンスがユーザーの侵害行為に繋がるおそれがあるとして,その侵害のおそれを理由に,特許法100条1項の侵害予防請求権として被告によるメンテナンスの差止めを求めるものとも解されるが,同項の侵害予防の請求は,あくまで侵害するおそれがある者に対して,当該侵害行為の予防を請求するものであるから,仮に被告がメンテナンスを行わないことでユーザーによる侵害行為(被告装置の使用)が防止されるという関係が存するとしても,その侵害行為を自ら行うわけでない被告に対し,しかも,侵害行為に該当しないメンテナンスについて,侵害予防請求権に基づく差止めを求めることができないことは明らかである。 9 争点(5)(原告の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の有無及び額)について(1) 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」とは,特許権者等が侵害者から得べかりし実施料相当額と解されるから,原則として,侵害品(直接侵害品又は間接侵害品)の売上高を基準とし,そこに,当該特許発明自体の価値や当該特許発明を当該製品に 用いた場合の売上げ及び利益への貢献などを斟酌して相当とされる実施料率を乗じて算定するのが相当である。 また,不当利得返還請求については,特許法102条3項所定の「受けるべき金銭の額に相当する額」は,上記のとおり,本来,侵害者がその特許発明の実施に当たり特許権者に対して支払うべきであった実施料相当額であるから,侵害者がこれを支払うことなく特許発明を実施した場合は,その実施により,侵害者は同額の利得を得,特許権者は同額の損失を受けたものと評価することが可能である。 払うべきであった実施料相当額であるから,侵害者がこれを支払うことなく特許発明を実施した場合は,その実施により,侵害者は同額の利得を得,特許権者は同額の損失を受けたものと評価することが可能である。したがって,この「受けるべき金銭の額に相当する額」,すなわち実施料相当額が,不当利得(民法703条)における受益者の利得の額に相当し,かつ,権利者の「損失」の額に相当すると認めるのが相当である。 以上を前提に,本件における損害賠償額ないし不当利得額を検討する。 (2) 被告製品の売上高につきア被告装置本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)から平成26年10月28日までの間の被告装置の売上高が19億7164万円であることは,当事者間に争いがない(なお,原告は「平成26年10月まで」と主張して,その最終日を明示しないが,被告は最終日を同月28日として上記売上高を認めていることから,この範囲で当事者間に争いがないものと認める。この算定期間については,以下の本件固定リング及び本件板状部材についても同様である。)。 イ本件固定リング原告は,本件固定リングの売上高が2億0790万円(推定・単価3万1500円×6600個)であると主張しつつも,本件固定リングの売上高が4200万1550円(1629個)であるとの被告の主張を争わないとし,その余の主張立証を行わないから,本件固定リングの売上高は, 争いのない4200万1550円であると認められる。 ウ本件板状部材原告は,本件板状部材の売上高が525万円(推定・単価525円×1万個)であると主張しつつも,本件板状部材の売上高が378万7600円(2569個)であるとの被告の主張を争わないとし,その余の主張立証を行わないから,本件板状部 525万円(推定・単価525円×1万個)であると主張しつつも,本件板状部材の売上高が378万7600円(2569個)であるとの被告の主張を争わないとし,その余の主張立証を行わないから,本件板状部材の売上高は,争いのない378万7600円であると認められる。 (3) 実施料率につきア本件各発明の実施について原告が受けるべき金銭の額(特許法102条3項)に関し,原告は,被告装置,本件固定リング及び本件板状部材のそれぞれの売上高に対して10%を下らないと主張する。一方,被告は,本件各発明の実施料率が4%であるとしつつ,さらにそこに寄与度(被告装置につき10%,本件固定リングにつき25%,本件板状部材につき100%)を乗じるべきと主張しており,実質的には,上記受けるべき金銭の額が,売上高に対し,被告装置につき0.4%,本件固定リングにつき1%,本件板状部材につき4%であると主張する。 イ証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 本件各発明は,混合液タンクの環状枠板部と回転板との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔混合液から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスに目詰まりが発生して,異物分離作業の能率低下等を招いてしまうことがあったことから,選別ケーシングの円周端面(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面(本件発明3),あるいは,上記クリアランスに(本件発明4),突起物を設けることにより,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぎ,効率的・連続的な異物分離を図ろうとした発明であると認められるから,クリアランスを利用する回転 板方式の生海苔異物分離除去装置自体は,本件各発明以前から公知の技術であって,本件各発明の技 的・連続的な異物分離を図ろうとした発明であると認められるから,クリアランスを利用する回転 板方式の生海苔異物分離除去装置自体は,本件各発明以前から公知の技術であって,本件各発明の技術的意義は,その既成の装置に,クリアランスの目詰まりをなくし共回りの発生を防止するための突起物(共回りを防止する防止手段)を付加した点にあるといえる。 原告は,本件各発明の実施品に当たる生海苔異物分離除去装置を製造し,販売している。 (イ) 被告装置において,本件各発明における「共回りを防止する防止手段」に相当する部材は,本件固定リングに取り付けられた本件板状部材である。本件板状部材は,厚さ数mmの長方形状の部材で,本件固定リングにボルトで取り付けられているが(被告構成β1,2),被告装置の使用(回転円板の回転)によって摩耗しやすいため,着脱して交換されることを予定した消耗品である。本件板状部材の売上げは,2569個で378万7600円であり,その単価は約1474円にすぎない。 本件板状部材を取り付けるための本件固定リングも,回転円板の回転によって側面部分が摩耗しやすいため,着脱して交換されることを予定したものであり,その売上げは,1629個で4200万1550円であり,その単価は約2万5783円である。 一方,被告装置の平均販売価格は,機種ごとに異なるものの,概ね357万円から777万円程度であり,本件板状部材や本件固定リングの単価に比して,極めて高額なものとなっている。 (ウ) 被告装置において,本件板状部材はクリアランスの目詰まりを防止するために有効であり,被告は,平成18年6月以降,平成26年10月31日付け本件仮処分決定によりその販売等が仮に差し止められた頃まで,本件板状部材を付した被告装置の販売を継続してきた。また を防止するために有効であり,被告は,平成18年6月以降,平成26年10月31日付け本件仮処分決定によりその販売等が仮に差し止められた頃まで,本件板状部材を付した被告装置の販売を継続してきた。また,前記(イ)のとおり,本件固定リング及び本件板状部材を被告装置の補充部品として販売し,売上げを得てきた。なお,被告は,被告装置以外の生海苔 異物分離除去装置をほとんど取り扱っていない。 (エ) 被告装置においては,クリアランスの目詰まり対策として,回転円板の周縁をテーパ状にし,回転円板を上下方向に移動可能とすることで,クリアランスの隙間を調整する構造を備えており,この調整構造で隙間を大きくすることによって,目詰まりの発生を一定程度防止することができる。もっとも,隙間を大きくしすぎると,異物分離に支障が生じてしまい,特に,海苔生産シーズン(年のうち5,6か月間)の終盤の「ハタキ」と呼ばれる時期(2週間ないし1か月間)は,海苔の厚く硬い根元部分まで刈り取るために,目詰まりが生じやすくなることから,本件板状部材による目詰まりの防止が有用となる。 (オ) 生海苔異物分離除去装置の市場では,かつて原告,親和製作所及び被告が三つ巴で競合していたが,親和製作所は,原告から提起された本件特許権に基づく特許権侵害差止等請求事件(当庁平成22年(ワ)第24479号,知的財産高等裁判所平成24年(ネ)第10092号)で敗訴したことに伴い,平成25年5月に原告に対して,親和製作所の装置について販売額の5%のライセンス料を支払うことを提案したものの,原告がこれを拒否したため,その後同年7月に,両者間で,親和製作所の生海苔異物分離除去装置を含む海苔機械関連機器の製造・販売に係る営業を原告に譲渡することが合意された。 また,原告は,親和製作所との これを拒否したため,その後同年7月に,両者間で,親和製作所の生海苔異物分離除去装置を含む海苔機械関連機器の製造・販売に係る営業を原告に譲渡することが合意された。 また,原告は,親和製作所との上記訴訟の係属中,被告に対して,業務提携等の提案を行っていたが,当時,原被告間の協議がまとまることはなかった。本件訴訟においては,原告は,本件特許権を被告に実施許諾する意思を有しておらず,被告に対して被告装置の製造・販売等の中止を求めており,本件仮処分決定によって仮の差止めを得ている。 (カ) 「実施料率〔第5版〕」(発明協会研究センター編,2003年。)においては,「農業・林業・漁業の技術」を含む「他に分類されない製 造業・産業の技術」に関する実施料率別契約件数について,最頻値が5%であるとされている。また,「国有特許権等(経済産業省所管)の実施権設定について」(経済産業省技術振興課,平成21年6月22日。)においては,国有特許権等の実施料の設定について採用される実施料率の基準となる率(基準率)を,業種別の売上高試験研究費率とすることとされており,農林水産業における売上高試験研究費率は,3.88%であるとされている。このほか,「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編」(株式会社帝国データバンク,平成22年3月。)においては,国内アンケートの結果,「農業」の技術分野における特許権のロイヤルティ料率の平均値が3.0%であったとされている。 ウ上記イで認定した諸事情を総合的に斟酌すると,本件各発明の実施料率は,被告装置については3%とするのが相当であり,本件固定リング及び本件板状部材については,原告主張のとおり,10%とするのが ウ上記イで認定した諸事情を総合的に斟酌すると,本件各発明の実施料率は,被告装置については3%とするのが相当であり,本件固定リング及び本件板状部材については,原告主張のとおり,10%とするのが相当である。 (4) 原告が受けるべき金銭の額につきア被告装置被告装置の売上高である19億7164万円に,本件各発明の実施料率である3%を乗じると,原告が受けるべき額は,5914万9200円となる。 イ本件固定リング本件固定リングの売上高である4200万1550円に,本件各発明の実施料率である10%を乗じると,原告が受けるべき額は,420万0155円となる。 ウ本件板状部材 本件板状部材の売上高である378万7600円に,本件各発明の実施料率である10%を乗じると,原告が受けるべき額は,37万8760円となる。 エ合計よって,本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)から平成26年10月28日までの間の被告による本件特許権の実施に基づいて,原告が被告から受けるべき金銭の額は,上記アないしウの合計額である6372万8115円となる。 (5) 消滅時効につき前記第2,2(9)及び(10)のとおり,原告は,平成25年9月11日に,被告に対し,被告装置が本件特許権を侵害するとしてその損害賠償を求める通知をし,その後,当該通知から6か月以内である同年12月11日に本件訴訟を提起したところ,本件訴訟において,被告は,本件特許権の侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権について3年の消滅時効を援用しており,原告もそれを争っていない。 そうすると,特許権侵害の不法行為に基づく原告の被告に対する損害賠償請求権は,上記通知から3年を遡る平成22年9月10日までの侵害行 て3年の消滅時効を援用しており,原告もそれを争っていない。 そうすると,特許権侵害の不法行為に基づく原告の被告に対する損害賠償請求権は,上記通知から3年を遡る平成22年9月10日までの侵害行為に係る分については,時効により消滅したものと認められる(民法147条1号,153条,724条)。 前記(4)のとおり,平成19年6月8日から平成26年10月28日までの間の損害賠償額は6372万8115円であるところ,これを期間により按分すると,消滅時効にかかる平成22年9月10日までの額が2811万1180円,消滅時効にかからない同月11日以降の額が3561万6935円となる。前者については,不法行為に基づく損害賠償請求権としては時効により消滅しているため,不当利得返還請求権として認容すべきこととなる。 (6) 弁護士費用につき 原告は,本件訴訟の提起・追行を原告訴訟代理人弁護士に委任し,その弁護士費用を支出していると認められるところ,本件事案の内容,事案の難易,訴訟の経緯等の諸般の事情を考慮すると,被告の特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は400万円であると認めるのが相当である。 (7) 小括以上によれば,原告は,被告に対し,平成22年9月10日まで実施行為に係る不当利得の返還請求として2811万1180円,同月11日から平成26年10月28日までの実施行為に係る不法行為に基づく損害賠償請求(弁護士費用相当額を含む。)として3961万6935円の各支払を求めることができる(合計額は6772万8115円。)。 なお,これに対する遅延損害金は,上記合計額のうち3000万円に対しては,原告の請求に従い,不法行為後の日であり,かつ催告の翌日である平成25年9月12日から起算 計額は6772万8115円。)。 なお,これに対する遅延損害金は,上記合計額のうち3000万円に対しては,原告の請求に従い,不法行為後の日であり,かつ催告の翌日である平成25年9月12日から起算することとし,残りの3772万8115円に対しては,損害賠償の対象となる不法行為期間の最終日である平成26年10月28日から起算することとする。 10 結論以上によれば,原告の請求は,被告装置の製造・販売・輸出・販売の申出並びに本件固定リング及び本件板状部材の製造・販売・販売の申出の各差止めとこれらの製品の廃棄を求め,本件板状部材を被告装置に取り付ける行為の差止めを求め,また,主文第6項記載の金員の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。なお,主文第4項について仮執行宣言を付すのは相当でなく,また,主文第1項ないし第3項,第5項及び第6項について仮執行免脱宣言を付すのは相当でないから,いずれも付さないこととする。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官今井弘晃 裁判官足立拓人 別紙物件目録 1 下記の型名の「生海苔異物除去機」記型名「WK-500」型名「WK-550」型名「WK-600」型名「WK-700」 別紙物件目録 2 物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに用いる「固定リング」(別紙図面(1)及び(2)記載の4(環状固定板)) 別紙物件目録 3 物件目録2記載の「固定リング」の凹部に取り付け可能な「板 に用いる「固定リング」(別紙図面(1)及び(2)記載の4(環状固定板)) 別紙物件目録 物件目録2記載の「固定リング」の凹部に取り付け可能な「板状部材」(別紙図面(1)及び(2)記載の8(板状部材)) 別紙図面 別紙メンテナンス行為目録 1 物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して,物件目録2記載の「固定リング」又は物件目録3記載の「板状部材」を取り付ける行為 2 物件目録1記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して行う下記の行為。ただし,上記1の行為を除く。 記 (1) 点検 (2) 整備 (3) 部品の交換 (4) 修理
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