平成17(わ)4796 覚せい剤取締法違反事件

裁判年月日・裁判所
平成18年6月29日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,887 文字)

主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中240日をその刑に算入する。 本件公訴事実中,第2の被告人が覚せい剤を所持したとの点については,被告人は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,法定の除外事由がないのに,平成17年8月1日ころ,大阪市内のAマンションB号室において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用した。 (証拠の標目)-かっこ内の数字は検察官請求の証拠番号を示す。 略(判示の事実認定の補足説明及び公訴事実中第2の事実について無罪とした理由)第1本件公訴事実被告人は,第1法定の除外事由がないのに,平成17年8月1日ころ,大阪市内のAマンションB号室において,フエニルメチルアミノプロパンの塩酸塩若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用し,第2みだりに,同月2日,大阪府豊中市内のC荘駐車場において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶約3.343グラムを所持したものである。 第2当事者の主張 弁護人の主張弁護人は①覚せい剤結晶甲16以下本件覚せい剤というは警,(,「」。),察官が,被告人の承諾がないのに,被告人が着用していた半ズボンのポケット に手を差し入れて,本件覚せい剤が入っていたたばこの箱を取り出したか,あるいは,ポケットの外側から同たばこの箱をつかんでポケットの外に出すように押し上げて意図的にこれを落下させ,発見に至ったもので,その採取過程に所持品検査の限界を越えた重大な違法があり本件覚せい剤及びその鑑定書甲,(5)等の証拠能力は否定されるべきであるから,公訴事実第2の覚せい剤の所持は,補強証拠を欠き,無罪である,②尿の鑑定書(甲10)は, の限界を越えた重大な違法があり本件覚せい剤及びその鑑定書甲,(5)等の証拠能力は否定されるべきであるから,公訴事実第2の覚せい剤の所持は,補強証拠を欠き,無罪である,②尿の鑑定書(甲10)は,違法な所持品検査により得られた本件覚せい剤及びその鑑定書により得られた派生証拠であり,また,本件採尿手続自体にも,被告人が任意採尿に応じるつもりであったのに,警察官が反抗的な被告人に対する制裁,嫌がらせとして強制採尿を敢行したもので,被告人の人格権を侵害する重大な違法があるから,その証拠能力は否定されるべきであり,公訴事実第1の覚せい剤の自己使用も,無罪である旨主張する。 検察官の主張検察官は,①警察官が被告人の半ズボンの上から右ポケットをつかむようにして触れた際,被告人が身をよじらせて後退したことや半ズボンが柔らかい生地でできていて滑りやすかったことなどの諸条件が重なったため,たまたまポケットからたばこ2箱が落下し,そのうち1箱に入っていた本件覚せい剤の存,,,,在が発覚したものでその所持品検査に違法はないまた②本件採尿手続は警察官の説得にもかかわらず,被告人が任意採尿に応じなかったことから,やむなく強制採尿を行ったもので,何ら違法は存しない旨主張する。 第3証拠上認められる事実被告人の公判供述証人Dの公判供述公判調書中の被告人第34回証,,(,),人E第2回同F第23回及び同G第5回の各供述部分当裁判所(),(,)(),の検証の結果被告人の検察官調書乙8警察官調書乙5 等関係各証,(),(,)拠によれば,以下の事実が認められる。 本件覚せい剤発見の経緯 (1)平成17年8月2日午後6時ころ,被告人は,大阪府豊中市内のC荘駐車場(以下「本件駐 等関係各証,(),(,)拠によれば,以下の事実が認められる。 本件覚せい剤発見の経緯 (1)平成17年8月2日午後6時ころ,被告人は,大阪府豊中市内のC荘駐車場(以下「本件駐車場」という。)に駐車中の原動機付自転車のガソリンタンクのかぎ穴に電気ドリルを当てこれを作動させ,かぎ穴に傷を付けたところ,これを目撃した者が「バイクを触っている60歳くらいの男の不審者がいる。」と警察に通報した。このため,同日午後6時10分ころ,豊中南警察署地域課のE巡査部長及びH巡査長がパトカーで本件駐車場付近にまで臨場した。 (2)E巡査部長は,パトカーを降り,本件駐車場に行ったところ,原付の横に若い男2人と被告人がいた。被告人は,上半身裸で灰色の半ズボンをはき,帽子をかぶり,軍手をはめていた。E巡査部長は,原付のタンクの上のキャップが壊れているのを見て,被告人に,「壊したんか。」と尋ねた。被告人は,「鍵を回していたら壊れた。バイク屋に聞いたら,ドリルで壊すしかないと言われた。近くのアパートの2階に住んでいる男に頼まれたんや。」などと答えた。座席の上には電気ドリルがあった。E巡査部長は,横にいた男に,「鍵を壊したのを見たのか。」と尋ねると,男は「見た。」と答え,更に,「バイクの持ち主は私の知っとる人や。」,「電話をかけたら,鍵を壊してくれということを頼んだことはないと聞いた。」と述べた。なお,被告人は,Iと偽名を名乗るなどした。 他方,同警察署庄内交番勤務のF巡査とJ巡査長も,本部からの指令に基づき,単車で本件駐車場に赴き,同日午後6時13分ころ,本件駐車場に到着した。 (3)E巡査部長F巡査らは被告人が器物損壊か原付窃盗を行おうとした疑,,。 ,,いがあると考えたしかしすぐに原付の所有者と連絡が取れなかったためパトカーの中で ,本件駐車場に到着した。 (3)E巡査部長F巡査らは被告人が器物損壊か原付窃盗を行おうとした疑,,。 ,,いがあると考えたしかしすぐに原付の所有者と連絡が取れなかったためパトカーの中で被告人から詳しく事情を聞こうと,駐車場内に停めたパトカ被告人が同行を拒否したり,抵抗したりはしなかっーまでの同行を求めたところ,た。 この段階で,E巡査部長らは,原付の所有者が被害届を出すかどうかも分からないことなどから,被告人を器物損壊や窃盗未遂で現行犯逮捕あるいは緊急逮捕することなどは考えていなかった。 パトカーへ移動中,E巡査部長は,被告人の履いていた半ズボンの左ポケットに,厚さ1cmくらいのお札の柄の入った束があるのを見て驚き,「これは何や。」と言うと,被告人は,これを出して,「ドン・キホーテで売っているメモ帳や。」と言った。次いで,帽子を取って見せるように言うと,被告人は,これにも応じたが,異状はなかった。 (4)その後,F巡査は,被告人のズボン右ポケットに膨らみがあるのに気付いた。そこで,パトカーの後方において,被告人の右前方にF巡査が,左後方にE巡査部長がいる状態で,警察官らは,被告人に対し,上記半ズボンの右ポケットの中身を見せるように言ったが,被告人はこれに応じなかった(その後の経緯については争いがある。)。 (5)その後,同日午後6時20分ころ,被告人の半ズボンの右ポケットから出てきたたばこ2箱のうち1箱から,その外装フィルムに挟まれたチャック付きポリ袋入りの本件白色結晶が発見された。これを簡易鑑定した結果,覚せい剤の陽性反応を示したことから,同日午後6時43分,被告人は,覚せい剤所持の現行犯人として逮捕された。なお,警察官らは,本件覚せい剤発見後は,被告人のズボンのポケット内についての所持品検査は行わなかった。 覚 を示したことから,同日午後6時43分,被告人は,覚せい剤所持の現行犯人として逮捕された。なお,警察官らは,本件覚せい剤発見後は,被告人のズボンのポケット内についての所持品検査は行わなかった。 覚せい剤発見後の状況 (1)本件覚せい剤が発見された際,被告人は,本件覚せい剤について,自分のものではなく,また,自分から任意に提出したものではない旨述べていた。 (2)刑事課盗犯係であるD警察官らは,本件当日午後7時ころから,上記1(1)の原付について,所在場所や物件等の写真撮影を行った後,器物損壊事件としてその所有者から被害届を受理し,一般的な初動捜査を行った。 後に被告人がバイクを盗むために壊したということで被疑事実が窃盗(3),,未遂に切り替えられた。しかし,被告人から被害者へ1万円の被害弁償がされ,窃盗未遂での起訴はされなかった。 本件採尿の経緯 (1)被告人は上記のとおり同年8月2日午後6時43分覚せい剤所持の,,,現行犯人として逮捕され,豊中南署に引致されたが,当初,自己の氏名をIなどと詐称し,生年月日等もうその供述をしていた。照会の結果,詐称の事実が発覚したため,警察官らは,被告人の指紋を採取し,その照合結果や同署の警察官に被告人を知る警察官がいたことなどから,同日中には被告人の身元を確認し,これに伴い被告人に覚せい剤取締法違反の前科3犯があることを把握するに至った。 ,,,(2)翌3日G巡査部長は午前10時過ぎから被告人の取調べを行ったが被告人は黙して語らず,また,同巡査部長が被告人に尿の提出を促したところ,これについても,被告人は,黙したまま応じようとしなかった。なお,G巡査部長らは,覚せい剤の所持の被疑者には,通常,その使用が疑われることから,尿検査を慣行的に行っていた。そこで 出を促したところ,これについても,被告人は,黙したまま応じようとしなかった。なお,G巡査部長らは,覚せい剤の所持の被疑者には,通常,その使用が疑われることから,尿検査を慣行的に行っていた。そこで,G巡査部長らは,同日午後から強制採尿のため令状請求の手続を採り,その疎明資料として,覚せい,,剤所持での現行犯人逮捕手続書並びに本件覚せい剤の発見状況取調べ状況簡易鑑定結果,氏名詐称の事実及び被告人の前科前歴等に関する各捜査報告書等を添え,強制採尿のための捜索差押許可状及び注射痕を確認するための身体検査令状の請求を大阪簡易裁判所に行い,同日同裁判所裁判官の上記各令状(なお,捜索差押許可状には,捜索差押についての条件として「(1),,,,,まず司法警察職員が被疑者に対し一定の容器内に排尿するように命じその自然排泄を待って採尿すること。(2)上記(1)の方法によることができないときは,医師をして,被疑者の膀胱内に採尿管を挿入する方法により採尿させること」という旨の記載がある)の発付を得た。 。 。 (3)G巡査部長らは捜索差押許可状を示し再度自然排尿を促したが依然,,,として,被告人が黙したままであったため,強制採尿を実施するため,被告人をK病院に搬送し,同日午後3時30分ころから,被告人に令状を示して被告人に水を3杯く強制採尿の手続に着手した。同所において,K医師が, を促したところ,被告人は,いったんこれに応じる姿勢らい与え,自然排尿採尿容器を洗浄し,さらに水を飲むなどした。そして,被告人は,を見せ,同日午後4時11分ころから排尿を試みる動作をした。しかし,約25分間にわたり,一向に排尿しなかったため,同日午後4時46分ころ,L警部補の指示によりK医師が採尿管を挿入する方法により,強制採尿を実施した。 時11分ころから排尿を試みる動作をした。しかし,約25分間にわたり,一向に排尿しなかったため,同日午後4時46分ころ,L警部補の指示によりK医師が採尿管を挿入する方法により,強制採尿を実施した。 なお,被告人は,同日は朝から排尿していなかった。 本件後の状況被告人は,同年8月4日,公訴事実第2の覚せい剤所持の被疑事実で勾留され,同月23日,本件で起訴された。 第4本件所持品検査の状況について 被告人及びFの供述内容(1)被告人の公判供述要旨右ポケットに手を差F巡査は,触るで,などと述べることなく,いきなりし入れ,たばこ2箱を取り出した。その前に,上から触られたかどうかははっきりしない。ポケットに手を差し入れられたところは直接見ていなかったが,手が内側に入った感覚とズボンが下がるような感覚があったので,手をたばこが地面に落ちたことはない。警察官にたばこを入れられたと思った。 お,右手で持って示されたが,1箱だったか2箱だったか覚えていない(な被告人は第8回公判においてたばこの箱はたぶん横向きでポケットに入,,「れていた」旨供述する。 。 。)(2)F巡査の供述要旨私が,被告人の右ポケットの膨らみに気付き,中身を出して見せるように求めると,被告人は「こんなことされるの初めてや「なんでこんなこと,。」,されなあかんねんなどと言って応じなかった私は被告人に対し触。」,。 ,,「。」。 ,,,るでと告げたすると被告人は私たちの脇をすり抜けるようにして小走りに近い感じで逃走を図った。E巡査部長が回り込んで立ちふさがり, パトカーの左後方付近で被告人を止めた。被告人の右前方に,私がいる位置関係になった。 さらに,私は,被告人が,凶器となるものを持っているかも知れないと思。 , 査部長が回り込んで立ちふさがり, パトカーの左後方付近で被告人を止めた。被告人の右前方に,私がいる位置関係になった。 さらに,私は,被告人が,凶器となるものを持っているかも知れないと思。 ,,「。」,った私はその場で所持品検査をしようと考え被告人に触るでと二三回告げた。被告人は,文句を言っていたが,明示的な拒否はしなかった。 そこで,私は,被告人の右ポケットを,指先を下に向け,下から何回かつかむような形で,右手で触っていった。触ったときに,上に柔らかい箱のよう。 。 。 なものを感じた下の方に硬いものがあったライターではないかと思ったすると,被告人は,身をよじらせて一歩後退し,私も手で追いかけたので,中のものがせり上がってポケットから地面に落ちた。たばこ2箱であった。 この時,私は,左手で被告人の腰の辺りを押さえていた。 ,,,私が被告人のズボンのポケットに手を入れて取り出したのではないし意図的にたばこを外に出させようとしたものではない。 当裁判所の検証の結果(1)当裁判所の第7回公判期日における検証の結果によれば以下の事実が認められる。 被告人が事件当時着用していた半ズボンの右ポケットは,最下部から最上部までの深さが約28cmである。同ズボンの側部に開口部があるが,右ポケット開口部下端からの横幅は,半ズボン前側は約14cm,半ズボン後側は約13cm,開口部下端から最下部(中央部)までの深さは約15cm,右ポケット開口部の長さは約16cmである。半ズボンの素材は,薄手のトレーナー生地で柔らかい。 本件たばこと同種のたばこの箱の大きさは,未開封の状態で,長さ約8. 7cm,幅約5.3cm,厚さ約2.1cmである。 (2)当裁判所の第8回公判期日における検証の結果によればF巡査を立会人,として,同人にその供述するた の箱の大きさは,未開封の状態で,長さ約8. 7cm,幅約5.3cm,厚さ約2.1cmである。 (2)当裁判所の第8回公判期日における検証の結果によればF巡査を立会人,として,同人にその供述するたばこの落下状況の再現実験をさせたところ, 以下の事実が認められた。 たばこ2個のみを半ズボンに縦に入れたところ,たばこは3回の試行中1度も落下しなかった。これに加えて小銭(161円。100円,50円,10円,1円硬貨各1枚)と鍵(被告人は,当時,右ポケット内に同金額の小銭と鍵を入れていた旨供述し,逮捕後,警察署において,実際に,同金額の小銭と鍵を所持していたを入れたところたばこを縦に入れた場合たば。),,こは3回の試行中2回,2箱が落下し,残り1回は1箱も落下せず,たばこを横に入れた場合は,3回とも1箱も落下しなかった。更に加えて,ライターを入れたところ,たばこを縦に入れた場合,3回の試行中2回たばこ1箱のみが落下し,残り1回は1箱も落下せず,たばこを横に入れた場合は,3F巡査は,右ポケット内には,ライターと思回とも1箱も落下しなかった(われる物が入っていたと供述しているから,同人の供述に最も近いのは,た。 ばこ,小銭,鍵,ライターをポケットに入れた場合である。)類似の半ズボン(本件半ズボンより堅い素材であるもの)を使用し,たばこ2箱,鍵,小銭を入れた場合,たばこは3回の試行中1回も落下しなかっ。 たなお,上記検証の際,F巡査が,被告人役が後退するのに合わせてこれを,,右手で追うのみならず左手を被告人役の臀部に添えてその後退を抑えつつたばこの箱によるポケットの膨らみに右手指を引っかけてこれを下から上に動かし,たばこの箱をせり上げる状況が確認された。 当裁判所の判断(1)F巡査がポケット内に手を入れて本件たばこの箱 えつつたばこの箱によるポケットの膨らみに右手指を引っかけてこれを下から上に動かし,たばこの箱をせり上げる状況が確認された。 当裁判所の判断(1)F巡査がポケット内に手を入れて本件たばこの箱を取り出したか否かについてこの点について,被告人はこれを肯定する供述をするが,F巡査は否定する。 そこで,この点について検討すると, ①被告人の,ポケットに手を差し入れられた状況についての供述は,手を差し入れられたところを見ているわけではなく,そのように思うといったそれ自体あいまいなものであること②被告人は,第3回公判廷では,F巡査から右ポケットを見せるように言われたこともないと供述しながら,第4回公判廷では「はっきり覚えていないが右ポケットを見せるように言われたかも知れない。ポケットの上からつかまれたこともあるかも分からない旨供述するに至っており重要。」,な点について供述の変遷があり,最終的には,F巡査がポケットの外側からポケットの内部のものをつかんだことを完全に否定するには至っていないことなどを併せ考えると,F巡査が右ポケット内に手を入れて本件たばこの箱を取り出したとの被告人の供述は信用できず,更に,F巡査は,ポケット内に手を入れなくても,内容物をポケットの外側からつかみ,これを上にせり上げ,外に出すことも可能であることなどに照らすと,F巡査がポケット内に手を入れて本件たばこの箱を取り出したとの疑いを容れる余地はない。 (2)F巡査がポケットの外側から中のたばこの箱をつかんで外に押し上げて,意図的に落下させたか否かについてF巡査は,本件たばこの箱を意図的に外に出させようとしたことはないと供述する。 しかし,①本件半ズボンのポケットの大きさ及び深さは前記のとおりであって,と開口部下端から最下部(中央部)までの深さ F巡査は,本件たばこの箱を意図的に外に出させようとしたことはないと供述する。 しかし,①本件半ズボンのポケットの大きさ及び深さは前記のとおりであって,と開口部下端から最下部(中央部)までの深さりわけたばこの箱の大きさと関係,F巡査の供述によっても被告人がポケットを触られた際,身をよのじって1歩後退した程度しか動いていないという状況及び前記再現実験の結果からすれば,本件半ズボンの素材や開口部の大きさ,ポケットにはたばこ2箱の下に小銭,鍵,ライターが入っていた可能性が高いことを考慮 しても,F巡査が供述したような態様で,たまたまたばこが2箱とも落下する可能性は低く,むしろ,同巡査が,外表から手を触れる行為(フリスク)にかこつけて,右手指を動かして,ポケット内のたばこをせり出したことが疑われること②F巡査は,ポケットを下からつかむような形で触った旨供述するが,同巡査の身長は168cm,被告人の身長は約164ないし165cmであって,両名の身長からしても,わざわざポケットを下から上へ触る必要性は乏しい上,ポケットを表面から押さえれば,硬いものが入っていれば認識できるのであるから,単に凶器の捜検のために触ったとしては,態様が不自然であること③F巡査は,右ポケット外側から触ったところ,中に硬いものがあったと供述しているところ,比較的柔らかいとみられるたばこの箱の中にあった覚せい剤の発見後,それから,ポケット内部にあったはずの硬いものの捜検も行うことなくパトカーに被告人を乗車させているが,覚せい剤が発見されたからといって警察官らが自身の安全確保のための凶器の捜検を忘れるというのは不自然な点があり,F巡査の述べる所持品検査の目的自体には,そのまま信用し難いものがあることなどを併せ考えると,F巡査の供述のうち,ポケットを触ったは の安全確保のための凶器の捜検を忘れるというのは不自然な点があり,F巡査の述べる所持品検査の目的自体には,そのまま信用し難いものがあることなどを併せ考えると,F巡査の供述のうち,ポケットを触ったはずみでたま同巡査がポケットの内容物を外たまたばこが落ちたとする点は信用できず,に押し出す意図で,ポケットを下からつかみ,これによりたばこの箱が落下したと弁護人の主張を排斥することはできない。 第5本件覚せい剤(甲16)及びその鑑定書(甲5)等の証拠能力について,,前記のとおりF巡査が被告人のポケットの内容物を下からつかんで押し上げ意図的に落下させて,本件覚せい剤を発見したという合理的な疑いが残るから,この事実が認められることを前提として,甲5及び16号証等の証拠能力の有無を検討する。 上記認定事実からすれば,他人の原動機付自転車のかぎ穴を電動ドリルで壊そうとしていた被告人には器物損壊ないし窃盗未遂等の犯罪を犯した嫌疑があったとみられ,これを解明するため,被告人に対し職務質問を継続し,これに付随して所持品検査を行う必要性,緊急性があったと認められる。 もっとも,このような所持品検査は,原則として任意に対象者の承諾を得て行わなければならないことはもとより,本件では,被告人は1度は右ポケット内の所持品の提示を拒絶したものの,なお,警察官らは時間をかけて被告人を説得する余地があったこと,被告人にかけられていた嫌疑は原付の器物損壊ないし窃盗未遂という必ずしも重大とはいえない事案であったこと,被告人の当時の服装(上半身裸で,下は半ズボンのみで,相当程度の大きさの凶器を隠し持つことを疑わせる事情はないこと)などにかんがみると,この段階での所持品検査は,着衣の外側から手を触れ,形状を確認する限度で許容されたというべきである。 この点,F巡査 当程度の大きさの凶器を隠し持つことを疑わせる事情はないこと)などにかんがみると,この段階での所持品検査は,着衣の外側から手を触れ,形状を確認する限度で許容されたというべきである。 この点,F巡査が殊更ポケットの内容物を押し出す意図で,下からつかみ触ることは,所持品検査として承諾なく許される着衣外部からの接触を装って,ポケットの内容物を取り出すのと同じ効果を狙ったものといえ,プライバシー侵害の程度において実質的にポケットに手を差し入れる行為と変わるところはなく,捜索に類する行為であって,所持品検査の限界を越え,違法なものである。 ポケットに手を差し入れるという一見して違法な方法でしかも,F巡査が,はなく,同一の効果をもたらすが,偶然落下したとして適法性を装いやすい,意図的にポケットの内容物を落下させるという方法を採ったことも,かえって令状主義潜脱の意図を疑わせるものである。 したがって,本件所持品検査自体は,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大なものであって,これにより得られた本件覚せい剤(甲16)を証拠として許容することは,将来における違法捜査抑制の見地からしても相当でな いと認められるから,その証拠能力を否定すべきである。 そして,本件覚せい剤の鑑定書(甲5)も,本件覚せい剤と密接な関連を有することは明らかであるから,同様にその証拠能力を否定すべきである。 なお,本件では,警察官が現場に臨場した際,通報者と目される男性が現場にいて,同人は被告人がバイクのかぎを壊しているのを見たなどと申告し,その後,器物損壊(のちに窃盗未遂)被疑事件として捜査が行われたものの,本件所持品検査の時点において,同所有者は現場におらず,同人に頼まれたとの被告人の弁解の真偽が不明であり,器物損壊ないし窃盗未遂の罪の成否自体が不明確であって,被 疑事件として捜査が行われたものの,本件所持品検査の時点において,同所有者は現場におらず,同人に頼まれたとの被告人の弁解の真偽が不明であり,器物損壊ないし窃盗未遂の罪の成否自体が不明確であって,被告人について,現行犯人逮捕ないし緊急逮捕の要件を充足していたとは認め難い。したがって,本件所持品検査について,単に法執行の方法を誤ったにすぎないものとして,重大な違法がないと評価することはできない。 第6尿の鑑定書(甲10)の証拠能力について 波及効による違法について前記の通り,本件所持品検査については,令状主義を没却するような重大な違法があり,これによって発見された本件覚せい剤等を証拠として許容することが将来における違法捜査抑制の見地から相当でないところ,被告人の強制採尿は,その所持品検査によって得られた覚せい剤所持事実で現行犯逮捕され,その身柄拘束中になされていること,そして,上記覚せい剤の存在を疎明資料として捜索差押許可状が発付され,これに基づき実施されたものであるが,一次証拠の証拠能力が否定された場合,派生証拠の証拠能力も当然に否定されるものではなく,派生証拠の証拠能力は,先行手続の違法の重大性,先行手続と後行手続の捜査目的の異同や関連性の程度を考慮して,将来における違法捜査抑制の見地から,当該証拠の排除相当性を検討するべきである。 そこで,この点について検討すると,①本件所持品検査における権利侵害の内容は,ポケットという限局された範 囲でのプライバシー侵害にとどまり,強度の人権侵害を伴うものとまではいえないから,それだけで,その後の派生証拠について一切の利用を禁止するほど極めて重大な違法があったとはいえないこと②本件は,器物損壊ないし窃盗未遂の疑いありとして所持品検査が行われる中で,被告人の覚せい剤所持が発覚し,さら 後の派生証拠について一切の利用を禁止するほど極めて重大な違法があったとはいえないこと②本件は,器物損壊ないし窃盗未遂の疑いありとして所持品検査が行われる中で,被告人の覚せい剤所持が発覚し,さらに覚せい剤を所持していた者はその使用も疑うという捜査慣行に従い,強制採尿が実施された結果,覚せい剤の使用の証拠となるべき被告人の尿が得られたものであること③本件所持品検査当時には,警察官が被告人の覚せい剤の使用を捜査の目的としていたものとはみられないこと,本件採尿手続が上記所持品検査に関わっていないG巡査部長らが,同手続の翌日,司法審査を経た捜索差押許可状の発付も得て行ったものであることにかんがみると,先行する所持品検査と採尿手続はその捜査目的の異同や関連性の程度に照らし,これを当然には一連のものとも評価できないことなどに照らすと,将来における違法捜査抑制の見地からも,覚せい剤使用関係の証拠まで排除することが相当とは認められない。 本件採尿手続固有の違法について前記の通り,被告人は,現行犯逮捕以降,氏名を詐称し,取調べにも黙秘を続けていた上,警察官は,令状発布後警察署でも被告人に自然排尿を促し,さらに,搬送先の病院でも自然採尿を促し,医師も自然採尿するよう説得したのに,これに応じなかったものである。また,一度は被告人は,病院において,自然採尿に応じる姿勢を示したが,充分に水を飲み,朝から排尿していなかったのに,結局25分間にわたり排尿しておらず,もはや自然排尿によって尿を採取することは期待できなかったといえる。そうすると,本件強制採尿は,他警察官が反抗的な被告人に対すに適当な手続のないやむを得ない措置であり,る制裁,嫌がらせとして強制採尿を敢行したと疑う余地はない。 したがって,本件採尿手続には固有の違法は存しないものと認められ 他警察官が反抗的な被告人に対すに適当な手続のないやむを得ない措置であり,る制裁,嫌がらせとして強制採尿を敢行したと疑う余地はない。 したがって,本件採尿手続には固有の違法は存しないものと認められる。 小括以上によれば,本件尿の鑑定書(甲10)の証拠能力については,肯定すべきである。 第7 結論 覚せい剤の使用について本件公訴事実中,覚せい剤の使用については,被告人が自白しており,かつ本件尿の鑑定書の証拠能力が肯定されるから,当公判廷で取調べた関係各証拠により,罪となるべき事実のとおり認定できる。 覚せい剤の所持について本件公訴事実中,覚せい剤の所持については,被告人は自白しているが,上記のとおり,本件覚せい剤(甲16)及びその鑑定書(甲5)の証拠能力が認められず,被告人が所持した物が覚せい剤であったという点については,これを裏付けるに足りる補強証拠が存しないことになるので,犯罪の証明がないことに帰する。 よって,刑事訴訟法336条により,本件公訴事実中,覚せい剤の所持については,被告人に対し,無罪の言い渡しをする。 (累犯前科) 事実 平成14年3月4日大阪地方裁判所宣告覚せい剤取締法違反罪により懲役1年10月平成15年12月4日刑の執行終了 証拠 前科調書(検察官請求番号乙11)(法令の適用)罰条覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条累犯加重刑法56条1項,57条 未決勾留日数の算入刑法21条(本件では,被告人に対し無罪部分である公訴事実第2の事実に対して勾留がなされ,有罪部分である判示第1の事実について勾留はなされていない。しかし,両事実は併合して起訴され,以後併合審理されてきたものであって,被告人の公訴事実第2の勾留による身柄拘束の効果は現実には公訴事実第1の事実について 示第1の事実について勾留はなされていない。しかし,両事実は併合して起訴され,以後併合審理されてきたものであって,被告人の公訴事実第2の勾留による身柄拘束の効果は現実には公訴事実第1の事実についても及んでいたことは明らかである。よって,無罪とした公訴事実による適法な勾留日数は他の有罪とした公訴事実の勾留日数として計算できるものと解せられるから,未決勾留日数中240日を本件の刑に算入することとする)。 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(有罪部分の量刑の理由)本件は,判示のとおり,被告人が覚せい剤を自己使用したという事案である。 被告人は,身体が楽になるなどという理由で覚せい剤を使用した旨述べており,犯行の動機に特に酌むべき点はない。被告人は,同種前科3犯を含む前科多数を有し,累犯となる前刑も覚せい剤の使用によるものであって,被告人と覚せい剤との結びつきは深い。 以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきである。 そうすると,被告人は,今後は覚せい剤を断って定職に就くと述べていることなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑が相当である。 (求刑懲役3年,覚せい剤没収なお,公訴事実第2の覚せい剤の所持は無罪であり本件覚せい剤甲16は覚せい剤取締法41条の8第1項本文にいう罪,(),「」,。)に係る覚せい剤にあたらないからこれを没収することはできないと解される平成18年6月29日大阪地方裁判所第8刑事部 横田信之裁判長裁判官裁判官内田貴文裁判官大伴慎吾

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