令和2年11月4日判決言渡し令和元年(行コ)第302号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第219号) 主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨。 第2 事案の概要(略称は,原判決のものを用いる。) 1 本件は,競馬の勝馬投票券(馬券)の的中による払戻金に係る所得(本件競馬所得)を得ていた被控訴人が,平成24年分から平成26年分までの所得税(平成25年分及び平成26年分については復興特別所得税を含む。以下同じ。)について,本件競馬所得を一時所得として確定申告をした後,本件競馬所得が雑所得に該当するとしてそれぞれ更正の請求(本件各更正の請求)をしたところ,A税務署長から,いずれの更正の請求についても更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件各通知処分)を受けたことから,本件各通知処分の取消しを求める事案である。 2 原審は,本件各通知処分のうち,平成25年分の所得税に係るものはその全部が違法であり,平成24年分及び平成26年分の所得税に係るものは原判決別紙4記載の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分につき更正をすべき理由がないとする部分が違法であるとして,被控訴人の請求のうち,上記違法部分の取消しを求める部分を認容し,その余をいずれも棄却した。 これに対し,控訴人がその敗訴部分を不服として控訴した。 3 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決3頁24 行目の「競売」を「競馬」に改めるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第 2 事案の概要等」2及び3 て控訴した。 3 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決3頁24 行目の「競売」を「競馬」に改めるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第 2 事案の概要等」2及び3に記載のとおりであるからこれを引用する。 4 当審における控訴人の主張⑴ 馬券の的中による払戻金に係る所得の所得区分が,「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」(所得税法34条1項)として雑所得に該当するかは,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるところ(最高裁平成27年判決,最高裁平成29年判決),原判決は,本件競馬所得のうち,通常馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「通常馬券に係る所得」という。)が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当すると判断した。しかしながら,継続的行為に該当するといえるためには,馬券の購入行為の「期間」,「回数・頻度」,「その他の態様」としての「方法」,「選別」及び「購入額」などの考慮要素から,「偶然性の影響の減殺や長期間に及ぶ全体的な収支から利益を考えるという長期的視点」に立った購入態様であると評価できるか否かによって決されるべきものである。回収率(期待回収率)が100%を超えるように馬券を選別して購入し続けることで,実際の回収率が100%を超えた値に収束するには,それ相応の長期間,多数回,頻繁に馬券を購入しなければならず,そうすると,馬券の「購入額」についても,極めて多額のものでなければならない。したがって,継続的行為該当性の判断においては,「その他の態様」としての馬券の購入額が重要な考慮要素となっているというべきである。 被控訴人の通常馬券の購入額をみると,平成22年分から平成26年分までの5年間 為該当性の判断においては,「その他の態様」としての馬券の購入額が重要な考慮要素となっているというべきである。 被控訴人の通常馬券の購入額をみると,平成22年分から平成26年分までの5年間でみた場合,約3200万円から約9700万円という規模であったことが認められるが,被控訴人の通常馬券の購入額の規模は,①継続的行為該当性が肯定された先例の各最高裁判決では馬券の購入額が約3億4500万円(民事事件で判明する年分を含めると約9900万 円)から約21億7400万円であったのに対して,②継続的行為該当性が否定された裁判例では馬券の購入額が約1700万円から約2億2900万円であったことからすると,上記②の規模にとどまることが明らかである。したがって,被控訴人の通常馬券の購入額は,極めて多額であったとはいえないので,その他の事情を考慮しても,継続的行為該当性は認められない。 ⑵ 営利目的該当性の判断においては,「利益発生の規模,期間その他の状況等」が考慮要素であるところ,どの程度の事実関係が認められれば営利目的該当性が肯定されるのかという点については,通常,馬券の払戻金が偶発的な一時の所得に過ぎないものであることからすれば,偶発的な一時の所得とは性質の異なるものであるといえる程度の「利益発生の規模,期間その他の状況等」がなければならず,原則として,年間を通じた回収率が100%を超えていること(ただし,損失が発生した年分があっても,その理由が客観的に明らかである場合には,例外的に,損失が発生した年分があることをもって直ちに営利目的該当性が否定されない。)を前提に,極めて多額の利益が長期間にわたって発生していなければならない。 被控訴人の年間を通じた回収率をみると,平成22年分から平成26年分までの5年間な 営利目的該当性が否定されない。)を前提に,極めて多額の利益が長期間にわたって発生していなければならない。 被控訴人の年間を通じた回収率をみると,平成22年分から平成26年分までの5年間ないしは平成22年分から平成29年分までの8年間において,約86.4%から約131.3%であり,100%未満となっている年分があるのみならず,乱高下を繰り返し,その下限は100%を大きく割り込むというものである上,そのように損失が発生した理由が客観的に明らかになっていない。また,被控訴人の通常馬券の利益発生の状況をみると,平成22年分から平成26年分の5年間でみた場合,約790万円の損失から約1400万円という利益(損失)発生の規模であったことが認められるが,このような被控訴人の通常馬券による利益発生の状況は,営利目的該当性が肯定された先例の各最高裁判決の規模(約130 0万円〔民事事件の判決文から判明するものは約560万円〕から約2億0800万円の利益発生の規模)とは異なる規模のものであり,営利目的該当性が否定された裁判例の規模にとどまるものである。そして,被控訴人の通常馬券による利益発生の状況は,数千万円から数億円規模の利益が長期間にわたって発生するという特殊な利益発生の状況ではなく,通常,偶発的な一時の所得である馬券の払戻金に係る利益と異質なものであるとは評価できない。以上のことからすると,被控訴人の通常馬券の購入は,回収率が100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたものであったとは評価できず,営利目的該当性を認めることはできない。 5 当審における被控訴人の主張継続的行為該当性の判断において,購入額は重要な考慮要素とはいえない。 また,仮に考慮要素であるとしても極めて多額の馬券を長期間にわたって購入してい できない。 5 当審における被控訴人の主張継続的行為該当性の判断において,購入額は重要な考慮要素とはいえない。 また,仮に考慮要素であるとしても極めて多額の馬券を長期間にわたって購入していることが必要とはいえない。仮に必要であるとしても,控訴人の馬券購入額は極めて多額であり,その期間も十分に長期間であるから,結論として被控訴人の通常馬券購入行為は継続的行為といえる。 ア被控訴人の通常馬券による利益発生状況は,平成22年から平成26年までの5年間のうち4年間で少なくとも500万円を超える規模の利益があり,平成24年は損失であったとしても,期待回収率約75%を相当超える86.4%を維持している。このようなことは一時的な偶然によってもたらされるものとしては到底説明できないものであり,利益を期待し得る独自のノウハウがあると考えざるを得ない。 イ現に平成22年から平成26年の5年間にわたり,1万以上のレースで馬券を購入しながら,うち4年間で回収率100%超を実現し,総額3000万円を超える利益を上げている被控訴人の通常馬券に係る所得は,偶発的な一時所得とは異質の税負担能力があるといえる。 ウ課税の時的区分としての1月から12月までの年という区切りごとに回 収率100%という基準を満たすかどうか検討する必要はなく,総体として観察すれば足りるので,損失を生じた年分の回収率が理論上の回収率(75%)を大きく下回ったり,損失を生じた年分とその他の年分を合算した結果,全体の回収率が100%未満であったりするような場合を除き,営利目的該当性が認められる。 エ平成24年,27年及び29年に回収率が100%を切った具体的な理由は結局のところ不明である。しかし,平成27年以降は,被控訴人は馬券購入額及び購入点数 ,営利目的該当性が認められる。 エ平成24年,27年及び29年に回収率が100%を切った具体的な理由は結局のところ不明である。しかし,平成27年以降は,被控訴人は馬券購入額及び購入点数を大幅に減少させており,かつ使用するソフトのバージョンが変わるなど,馬券購入環境に大きな変化が生じたことから,平成26年までの馬券所得の性質を検討する上で同列に論じることはできない。また,被控訴人が,過去のレースの結果に現れた特定のファクターごとの統計上の傾向が今後も同様に現れると仮定して,過去のレースで投下資本を超える配当が得られた買い目の抽出条件をこれから行われるレースの買い目の抽出条件とする方法を採っていた以上,過去のレースに現れた特定のファクターごとの傾向が過去と全く同様には現れない場合には,回収率が100%を下回る可能性があり,回収率100%を下回った理由も,結局この点に尽きる。結果として単年度でみたときに回収率が100%を下回ることがあったとしても,被控訴人の馬券購入態様からすれば,被控訴人の馬券所得を雑所得と解すべきことに変わりはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件競馬所得は,通常馬券の的中による払戻金に係るものも「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」とはいえず,一時所得に該当するものと認められるから,本件各通知処分は適法であり,被控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。 その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第 3 当裁判所の判断」1から3までに記載のとおりであるから,これを引用す る。 ⑴ 原判決19頁24行目冒頭から21頁12行目末尾までを次のとおり改める。 「⑷ しかしながら,事業所得が事業活動を遂行することで得られる収益に税負担能 れを引用す る。 ⑴ 原判決19頁24行目冒頭から21頁12行目末尾までを次のとおり改める。 「⑷ しかしながら,事業所得が事業活動を遂行することで得られる収益に税負担能力を認めた趣旨に照らせば,「営利を目的とする継続的行為」といえるためには,その行為がある程度の期間継続して客観的にみて利益が上がると期待し得る行為であることが必要であると解すべきであるが,被控訴人の平成22年以降5年間の利益と損失をみると,平成22年は約584万円,平成23年は約1376万円,平成25年は約516万円,平成26年は約601万円と利益を上げたが,平成24年は約790万円の損失となったことが認められる。この内,平成23年の利益額はその他の利益を上げた3年の年間利益額の2倍を超える相当高額なものであったのに対し,平成24年の損失額は,利益を上げた平成22年,平成25年,平成26年の各1年間の利益額より多額のものであった。平成24年の回収率は中央競馬の平成24年事業年度の払戻率(馬券の発売金額に対する払戻金額の割合。約75%)を相当程度超える86.4%を維持してはいるが,営利性の存否の判断(客観的にみて利益が上がると期待し得る行為の存否の判断)という観点からは平成24年の損失及びその額は,看過できない否定的な事情と言わざるを得ない。 これに対し,被控訴人は,損失が生じた年があったことから,直ちに恒常的に利益を上げていたとはいえないと評価すべきではなく,払戻金に係る所得をどのような所得とするかは,その払戻金を得るための行為の評価の問題であって,結果的に利益を上げたか否かの問題ではないし,同じ収支であっても,どの時点で損失が生じたかによって結果が異なることは相当ではなく,本件についても,集計期間を2月から翌年1月までとするだけで,損 て,結果的に利益を上げたか否かの問題ではないし,同じ収支であっても,どの時点で損失が生じたかによって結果が異なることは相当ではなく,本件についても,集計期間を2月から翌年1月までとするだけで,損失を生じた年分が生まれたり生まれなかったりすると主張する。 しかしながら,1年間というある程度長期間で集計してもなお約790万円の多額の損失を計上するということは,年間を通じての収支で利益が得られるように馬券の選別が行われる仕組みに大いに疑問を抱かせるものであり,偶然性の影響が減殺されていないことを推認させるものであって,雑所得としての税負担能力を否定する事情といえる。本件について,集計期間を2月から翌年1月までとしても,別紙「本件の月別収支の状況」記載のとおり,平成24年2月から平成25年1月までの収支は損失となるので,集計期間を変えることにより5年にわたり全ての年において利益を上げていたとは認められない。 また,被控訴人は,同じ収支であっても,どの時点で損失が生じたかによって結果が異なることは相当ではないと主張し,その例として,平成22年1月から平成26年12月までの間,平成24年1月,2月及び12月のみ損失を出し,その余は各月で利益を出したと仮定した別紙「仮想収支表」(甲13)を作成して,当該仮想収支表が平成24年のみ損失を出していることから営利性を否定することは不合理であることを挙げる。しかしながら,指摘の別紙「仮想収支表」の営利性が否定されることが不合理であるのは,平成22年1月から平成26年12月までの60か月のうち,損失を出した月が3か月しかない点にあるが,本件については,別紙「本件の月別収支の状況」記載のとおり,同一期間に損失を出した月は31か月,利益を上げた月は29か月であって,月別に細分化しても営利性を否 を出した月が3か月しかない点にあるが,本件については,別紙「本件の月別収支の状況」記載のとおり,同一期間に損失を出した月は31か月,利益を上げた月は29か月であって,月別に細分化しても営利性を否定することは不合理ではない。 また,被控訴人は,払戻金に係る所得をどのような所得とするかは,その払戻金を得るための行為の評価の問題であって,結果的に利益を上げたか否かの問題ではないし,同じ収支であっても,どの時点で損失が生じたかによって結果が異なることは相当ではないと主張する。しかしながら,本件については,行為の評価の問題として,通常,馬券購入自体,本来偶然 性に左右されるものであって,原則として継続した営利性は認められないところ,恒常的に利益を上げていた場合など,ある程度の期間,継続して客観的にみて利益が上がると期待し得る行為には,営利性を肯定できると解すべきである。本件では,平成22年から2年連続で利益を上げたが,平成24年は相当額の損失となり,平成25年には利益を上げたものの,平成24年の損失額を補うには足りず,平成26年には利益を上げたというにとどまるのであるから,恒常的に利益を上げていたとまでは認められない。 もっとも,平成24年の損失理由によってはこの損失の事実を除外して評価することも考えられるが,被控訴人は,平成24年の損失理由について,馬券購入態様自体は変更しておらず,過去のデータ分析の結果から将来を予想する手法をとっているため,将来が過去と全く同様とはならない点にあり,その原因は不明であるというのであるから,損失を特別事情として除外して評価することもできない。 更に,前記ア,に認定のとおり,被控訴人は平成23年頃からは4台のパソコンで本件ソフトを使用するようになったが,パソコンごとに異なる計算式等を 別事情として除外して評価することもできない。 更に,前記ア,に認定のとおり,被控訴人は平成23年頃からは4台のパソコンで本件ソフトを使用するようになったが,パソコンごとに異なる計算式等を設定していたこと,通常馬券に係る平成24年から平成26年までの中央競馬の開催レース中の購入レースの割合は,67.6%から76.5%に止まり,購入するか否か,どの計算式等を採用するかについてもその態様が明らかでない。 上記のような馬券の購入行為の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等によれば,被控訴人において回収率が総体として100%を超えることが期待し得る独自のノウハウを有していたとまでは認められず,これに基づき馬券を選別して購入を続けていたということはできないので,そのような被控訴人の上記の一連の行為は,客観的にみて営利を目的とするものであったとまではいえない。 ⑸ 以上のとおりであり,平成24年から平成26年までの本件競馬所得のうち通常馬券の的中による払戻金に係るものは,「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として,雑所得に該当するとは認められない。」⑵ 原判決23頁14行目末尾の次に,改行の上,以下のとおり加える。 「4 これまで検討したところによれば,平成24年から平成26年までの本件競馬所得は,通常馬券の的中による払戻金に係るものも,WIN5に係る馬券の的中による払戻金にかかるものも,いずれも一時所得に該当することになる。したがって,本件競馬所得が雑所得に該当することを理由とする本件各更正の請求は,いずれも更正をすべき理由がないこととなり,本件各通知処分は適法である。」 2 当審における被控訴人の主張について 被控訴人は,平成24年は損失であったとしても,期待回収率約75% いずれも更正をすべき理由がないこととなり,本件各通知処分は適法である。」 2 当審における被控訴人の主張について 被控訴人は,平成24年は損失であったとしても,期待回収率約75%を相当超える86.4%を維持しているので,利益を期待し得る独自のノウハウがあると考えざるを得ないと主張する。しかしながら,期待回収率を相当超えたとしても利益を上げない以上,利益は期待できないというほかなく,利益を上げることもあれば上げないこともあるというのでは偶発性は排除できないので,利益を期待し得る独自のノウハウがあるとまでは認められない。 被控訴人は,現に平成22年から平成26年の5年間にわたり,1万以上のレースで馬券を購入しながら,うち4年間で回収率100%超を実現し,総額3000万円を超える利益を上げている被控訴人の通常馬券に係る所得は,偶発的な一時所得とは異質の税負担能力があるといえる旨の主張をする。 しかしながら,既に述べたとおり,5年間のうち4年間で利益を上げたとはいうものの,利益を上げたのは2年連続が2度続いたというにとどまることや,平成23年の利益額は,その他の利益を上げた年の年間利益額の2倍以上の相当額に上ったことや,平成24年の損失額は,平成23年を除くその他利益を上げた3年の年間利益額を超える額に上っており,平成26年まで の利益の計上によって回復することができたというのであるから,その利益と損失は年によって乱高下しており,結果として利益を上げているのも,平成23年の利益額が大きかったからであって,その利益は偶発性によるものと考えることが可能であり,偶発的な一時所得とは異質の税負担能力があるとはいえない。被控訴人は,1万以上のレースで馬券を購入したことを積極事情として主張するが,各レースでの利 利益は偶発性によるものと考えることが可能であり,偶発的な一時所得とは異質の税負担能力があるとはいえない。被控訴人は,1万以上のレースで馬券を購入したことを積極事情として主張するが,各レースでの利益と損失の有無は明らかでなく,多数のレースで馬券を購入し,利益を上げたのも偶発的な結果であると考えることも可能である。以上より,被控訴人の主張は採用できない。 被控訴人は,課税の時的区分としての1月から12月までの年という区切りごとに回収率100%という基準を満たすかどうか検討する必要はなく,総体として観察すれば足りるので,損失を生じた年分の回収率が理論上の回収率(75%)を大きく下回ったり,損失を生じた年分とその他の年分を合算した結果,全体の回収率が100%未満であったりするような場合を除き,営利目的該当性が認められる旨の主張をする。しかしながら,理論上の回収率(75%)をどの程度上回るかどうかは利益を上げるかどうかとは関係がないことは既に述べたとおりである。また,結果的に利益を上げていれば営利目的該当性が認められるとはいえないことも既に述べたとおりである。利益を上げるかどうかの判断として1月から12月までの年という区切りごとに検討する必要がないとしても,営利目的該当性の判断のためには,何らかの区切りごとに検討する必要があると解されるが,本件において,「年」よりも大きな区切りごとに検討することの合理性は認められず,1月から12月までではない12か月で区切ったり,「年」よりも小さな「月」や「日」によって細分化したりすれば営利目的該当性が認められるとの証拠もない。以上のとおりであり,被控訴人の主張は採用できない。 被控訴人は,平成24年,27年及び29年に回収率が100%を切った具体的な理由は結局のところ不明であるが,平成 められるとの証拠もない。以上のとおりであり,被控訴人の主張は採用できない。 被控訴人は,平成24年,27年及び29年に回収率が100%を切った具体的な理由は結局のところ不明であるが,平成27年以降は,被控訴人は 馬券購入額及び購入点数を大幅に減少させており,かつ使用するソフトのバージョンが変わるなど,馬券購入環境に大きな変化が生じたことから,平成26年までの馬券所得の性質を検討する上で同列に論じることはできない旨主張する。しかしながら,被控訴人が主張するような事情があったとしても,平成27年以降の損失は,被控訴人が客観的にみて利益が上がると期待し得るノウハウを有していなかったことを推認させる事情の1つといえる。また,被控訴人は,平成24年の損失について,過去のレースに現れた特定のファクターごとの傾向が過去と全く同様には現れない場合には,回収率が100%を下回る可能性があり,結果として単年度でみたときに回収率が100%を下回ることがあったとしても,被控訴人の馬券購入態様からすれば,被控訴人の馬券所得を雑所得と解すべきことに変わりはない旨主張する。しかしながら,この点も,被控訴人が客観的にみて利益が上がると期待し得るノウハウを有していなかったことを推認させる事情の1つといえ,前記認定を左右しない。 3 そうすると,被控訴人の請求は,いずれも理由がないから全部棄却すべきところ,これと異なり,本件各通知処分のうち,平成25年分の所得税に係るものの全部,平成24年分及び平成26年分の所得税に係るものの原判決別紙4記載の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分につき更正をすべき理由がないとする部分の取消しを認容し,その余を棄却した原判決は一部失当であって,控訴人の本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り 得金額及び納付すべき税額を超える部分につき更正をすべき理由がないとする部分の取消しを認容し,その余を棄却した原判決は一部失当であって,控訴人の本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消して,取消し部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官秋吉仁美 裁判官田村政巳 裁判官小西洋 (別紙すべて省略)
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