主文 1 相手方が、申立人に対し、平成12年12月22日までにした住民票消除処分は、本案判決が確定するまでその効力を停止する。 2 申立費用は相手方の負担とする。 理由 第1 当事者の申立て 1 申立ての趣旨主文第1項と同旨 2 相手方の意見本件申立てを却下する。 第2 事実の経緯等本件記録によれば、以下の事実が疎明されたものと認められる。 1 申立人は、宗教団体・アレフの信者である(疎甲1)。申立人は、昭和44年3月8日生まれであって、選挙権を有する者である(疎甲2、3)。 2 宗教団体・アレフは、有限会社豊ハウスとの間で、平成12年12月15日、賃貸期間を平成13年1月1日から平成17年12月31日までとして、申立人肩書地の部屋について賃貸借契約を締結した(疎甲13)。同社は、宗教団体・アレフに対し、上記契約において同団体の信者ならば誰が居住しても差し支えないと約した(疎甲11、13)。 3 申立人は、平成12年12月19日に肩書地の部屋に自己の荷物を運び入れて引っ越しを完了し、同日、相手方に対して転入届を提出し(疎甲1、疎乙1)、相手方は、いったんはこれを受理し、住民票に所定の事項を記載してこれを編成した上で、申立人の請求に応じて住民票の写しを交付した(疎甲1、2)。 また、申立人は、同日、世田谷区に対し、申立人に係る国民健康保険被保険者証の交付を求め、世田谷区は、同日、申立人に係る国民健康保険被保険者証を郵送により交付し、同月20日に申立人に到達した(疎甲1、3)。 4 相手方は、平成12年12月19日、同日正午から20分ほどの間に、東京都世田谷区α及び同区βへの転入届が、世田谷区の12の出張所において、申立人を含めて13件行われたことから、その居住の事実を調査することとし、同区の担当職員において、申立 から20分ほどの間に、東京都世田谷区α及び同区βへの転入届が、世田谷区の12の出張所において、申立人を含めて13件行われたことから、その居住の事実を調査することとし、同区の担当職員において、申立人肩書地での調査を行った。その結果、申立人肩書地の郵便受けなどに居住者の表示がなく、窓にはカーテンがあったため、居住実態については確認できなかった。この際、担当職員は、有限会社豊ハウスの代表取締役をしているaから事情を聴取し、同社が賃貸した部屋は合計8部屋で、既に数人が住んでいるし、明日(同月20日)も引っ越してくる予定であるとの回答を得たが、直接申立人肩書地を訪問して申立人から事情を聴取することは行わなかった(疎甲10、疎乙1、3)。 5相手方は、平成12年12月21日、申立人に係る住民基本台帳上の記録をすべて抹消するとともに、今後、申立人を含む宗教団体・アレフの信者の転入届については受理しないこととし、同月22日付けで転入届を不受理とし国民健康保険被保険者証を無効とする旨の通知書を作成した上、同日に世田谷総合支所の区民部長らが申立人の肩書地を訪れて、転入届を不受理としたので、国民健康保険被保険者証などの返還を願いたい旨を伝えた(疎甲1、疎乙1、5)。 6 申立人は、上記5の相手方の対応に対し、平成12年12月25日、住民票消除処分の取消し等を求める訴え(以下「本件訴え」という。)を提起した。 7 申立人は、平成13年1月15日、東京都知事に対し、上記5の処分について、東京都知事に対して審査請求をした(疎甲4)。 第3 当事者の主張 1 申立人は、相手方がいったん転入届を受理し、住民票を編成した上で、国民健康保険被保険者証などを交付していることから、相手方がした上記第2の5の処分は住民票消除処分に該当するとした上で、申立人は肩書地に転入し居住 手方がいったん転入届を受理し、住民票を編成した上で、国民健康保険被保険者証などを交付していることから、相手方がした上記第2の5の処分は住民票消除処分に該当するとした上で、申立人は肩書地に転入し居住しているのであるから、相手方の住民票消除処分は住民基本台帳法に反する違法なものであって、さらには憲法22条1項、20条1項及び14条1項に反し、生存権、参政権、職業選択の自由、財産権・営業の自由及び人身の自由を侵害するといった憲法上の基本的人権を侵害する違憲なものであると主張する。また、住民票消除処分の効力が停止されないと、参政権及び生存権が侵害されるので「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法25条2項)に該当すると主張する。 2 相手方は、申立人の転入届に基づいて申立人の住民票を調製、記載したが、これは、世田谷区の方針や相手方の明確な意思に反して担当職員が行ったものであるから、錯誤ないし事務処理の過誤に基づくものであって、当該住民票の調製、記載は無効のものであると主張し、相手方が申立人の住民票を破棄等したことは住民票の消除処分には当たらず、いわゆる「不受理」扱いとしたものにすぎないのであるから、そもそも申立人が主張する処分は存在しないのであって、執行停止をしたとしても申立人の住民票等が回復されることはないので、申立人が効力の停止を求める法律上の利益はないと主張する。 また、相手方のした措置が仮に住民票の消除処分に該当するとしても、①住民基本台帳法32条が要求する審査請求の前置をしていないことから適法な本案訴訟の係属がないこと、②申立人には回復困難な損害はないことから本件申立ては執行停止の要件を欠くと主張する。さらに、①地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが がないこと、②申立人には回復困難な損害はないことから本件申立ては執行停止の要件を欠くと主張する。さらに、①地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが責務とされているところ、相手方は、上記の責務を果たすためにやむなく申立人の住民票を消除したものであること、②申立人の住民票を調製ないし記載したことは、市区町村長がなすべき審査義務を尽くしていないという重大な瑕疵があるから、住民基本台帳法施行令8条の「その他その者についてその市区町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」に該当すること、③申立人が平成12年12月19日から、肩書地を生活の本拠としているという事実を確認し得ず、直ちに申立人の住民票を消除する必要があったことを理由として、相手方が申立人の住民票を消除したことは適法であって、本件申立ては「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条3項)に該当すると主張する。 第4 当裁判所の判断 1 相手方がした処分について相手方は、処分の存在及び訴えの利益の存在を否定し、その前提として、世田谷区においては宗教法人・アレフ(元オウム真理教)に対する基本方針として、「オウム真理教の信者からの転入届は拒否すること」を明確に宣言しており、これは世田谷区職員に周知され、相手方は所属職員に対して職務命令として示達していたところ、住民票の調製、記載という行為は住民基本台帳を管掌する市区町村長の意思に基づいて行われる行為であることは明らかであるから、上記のような世田谷区の行政方針、相手方の明確な意思に反して職員により行われた申立人住民票の調製等の行為は、錯誤あるいは事務処理上の過誤に基づくものであって無効であると主張する。 しかしながら、市区町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に所定の事項を記載 て職員により行われた申立人住民票の調製等の行為は、錯誤あるいは事務処理上の過誤に基づくものであって無効であると主張する。 しかしながら、市区町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に所定の事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関する事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であって、当該事実関係が存在すれば、届出ないし職権によってその事実関係を住民票に記載しなければならないのである。 このことは、住民基本台帳法3条が、市区町村長は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めなければならないとしていること、他方、国民は、住民としての地位に変更が生じた場合(転入、転居、転出等)には、一定の期間内に当該事実を届け出る義務を負い(住民基本台帳法22条等)、正当な理由がなくかかる届出をしない者は5万円以下の過料に処するとされていること(同法51条2項)からも明らかである。そうすると、転入届を受理するか否かは当該転入の事実の有無のみによって決すべきであって、相手方が上記基本方針に基づいて転入届を拒否することは許されないのである。したがって、相手方にその主張のような基本方針があり、本件の住民票の編成がこれに反するものであったとしても、前記認定のとおり申立人が肩書地に居住している以上、相手方は転入届を受理し住民票を編成すべき義務を有するのであるから、相手方がいったん住民票を編成したことはこの義務に従った適法かつ有効な行為というほかなく、相手方の上記主張は、その前提に誤りがあり、採用することができない。 すなわち、相手方が、平成12年12月21日に、申立人に係る住民基本台帳上の記録をすべて抹消したことは、いったん有効に編成された住民票を消除したものというほかなく、相手方は、この時点で申立人に 。 すなわち、相手方が、平成12年12月21日に、申立人に係る住民基本台帳上の記録をすべて抹消したことは、いったん有効に編成された住民票を消除したものというほかなく、相手方は、この時点で申立人に対し、住民基本台帳法8条に基づく住民票消除処分(以下「本件処分」という。)を行ったというべきである。そうすると、本件処分の効力が停止されれば、申立人が世田谷区において住民登録されているという効果が復活するので、本件申立てに法律上の利益があることは明らかである。 2 「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法252項)に該当するかどうかについて疎甲第8号証、第26号証によると、平成13年6月15日に東京都議会議員選挙の告示がされる見込みであること、同年7月12日に参議院議員選挙の公示がされる見込みであるとが認められる。選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は投票をすることができず(公職選挙法42条1項)、選挙人名簿は、選挙を行う場合においてその登録が行われるが(同法19条2項)、選挙人名簿の登録資格は、当該市町村(同法266条により、市に関する規定は特別区に適用される。以下同じ。)の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民でその者に係る当該市町村の住民票が作成された日から引き続き3か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者とされている(同法21条1項)ことから、本件処分に基づいて申立人の住民票が消除されると、公職選挙法21条1項の要件を満たさず、申立人が上記の参議院議員選挙及び東京都議会議員選挙において選挙権を行使することができなくなることは明らかである。 選挙権は憲法で保障された基本的人権であって、国民主権原理を支える重要な人権であるところ、上記の参議院議員選挙及び東京都議会議員選挙におい いて選挙権を行使することができなくなることは明らかである。 選挙権は憲法で保障された基本的人権であって、国民主権原理を支える重要な人権であるところ、上記の参議院議員選挙及び東京都議会議員選挙において選挙権を行使するという地位は、仮に申立人が本案事件について勝訴判決を得ても回復される性質のものではないのであるから、申立人は、本件処分の効力により回復の困難な損害を被ると認められ、上記のとおり、参議院議員選挙及び東京都議会議員選挙が迫っていること、公職選挙法21条1項によると、3か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されていることが選挙人名簿の登録の要件とされていることにかんがみると、本件においては、この点のみをとらえても、本件処分の効力を停止すべき緊急の必要があるというべきである。 3 「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条3項)に該当するかどうかについて(1) 市区町村長が住民基本台帳に所定の事項を記載する行為は、前記1で説示したとおり、公の権威をもって住民の居住関係について所定の事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であって、その性格上、市区町村長は、居住の事実があれば、届出に基づき又は職権で、これを住民基本台帳に記載すべき義務を負っているものというべきである。 そうすると、新たに市区町村の区域内に住所が定められ、住民基本台帳法22条に基づく届出がされたのであれば、市区町村長は、その者について住民票を編成する義務を負い、自らの裁量によってこれを拒み又は消除することが許されるものではない。もっとも、住民基本台帳法34条2項が、市区町村長は必要があると認めるときはいつでも調査を行うことができる旨規定し、また、職権で住民票の記載、消除又は記載の修正を行うこととされている(住民基本台帳法8条)ことからす 本台帳法34条2項が、市区町村長は必要があると認めるときはいつでも調査を行うことができる旨規定し、また、職権で住民票の記載、消除又は記載の修正を行うこととされている(住民基本台帳法8条)ことからすれば、市区町村長は必要があると認めるときには調査を行い、調査の結果、転入届が虚偽のものであることが判明し、当該住所地に当該住民の生活の本拠が存在しないと認められるような場合には、当該住民の住民票を消除することもまた市区町村長の責務であるが、これは客観的な事実と住民票の記載に齟齬がある場合に行われるべきもので、それ以上に市区町村長が恣意的に住民票の記載を拒み又は住民票を消除することができることを認めたものではないことは明らかである。 (2) これを本件についてみるに、申立人は、平成12年12月19日に肩書地に新たに住所を定め、その旨の届出をしたと主張しているところ、申立人の陳述書(疎甲1、10)及びaの陳述書(疎甲11)にはこれに沿う記載があり、有限会社豊ハウスと宗教団体・アレフとの肩書地の賃貸借契約が同月15日付で締結されていること(疎甲13)、疎甲第14号証、第15号証によると、申立人の肩書地における居住の実態が疎明されていると認められる上、相手方の調査結果をみても、世田谷区の職員が同月19日に肩書地を訪れた際には、部屋にはカーテンが掛けられていて内部は確認できず、aから申立人が転入したことをうかがわせる供述を得られていること(疎乙1、3)にかんがみると、前記疎明を左右するに足りる資料は存在せず、現段階において転入届が虚偽のものであるとは到底いい難い。 (3) この点について、相手方は、地方公共団体は、公共の福祉の増進に努めることが役割とされ、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが責務とされているところ、肩 。 (3) この点について、相手方は、地方公共団体は、公共の福祉の増進に努めることが役割とされ、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが責務とされているところ、肩書地を含め、宗教団体・アレフの信者13名が転入した住所は同教団の教団施設となることは明らかであり、同教団が再び無差別大量殺人行為に走る危険性は否定できないので、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することを目的としてやむなく申立人の住民票を消除したのであるから、本件処分は違法ではないと主張する。 しかし、前記(1)のとおり、住民基本台帳は、その性質上、住民の居住の事実があればそれを公証するために作成されるものであって(住民基本台帳法3条、51条2項参照)、住民票を編成することによって当該住所に居住する権原を付与するなどの法的効果を伴うものではないから、居住の実態があれば市区町村長はこれを住民票に記載する責務を負い、居住の実態があるにもかかわらずこれを住民票に記載しないことが許されるものではない。 相手方が抽象的に住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持するとの責務を負っていることは相手方主張のとおりであるが、仮に、その責務を果たす必要が生じているとしても、これを果たす手段として、住民票の記載をしないとかこれを消除するといった手段をとることは、住民基本台帳の性格からして認められないというべきである。 したがって、相手方の上記主張は採用することができない。 (4) また、相手方は、申立人の住民票を編成する際に審査義務を尽くしていないから、住民基本台帳法施行令8条に規定する「その他その者についてその市区町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」に該当すること、申立人が平成12年12月19日から肩書地を生活の本拠としてい いないから、住民基本台帳法施行令8条に規定する「その他その者についてその市区町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」に該当すること、申立人が平成12年12月19日から肩書地を生活の本拠としているという事実を確認し得ていないから申立人の住民票を消除する必要があったことを理由に、本件処分は違法ではないと主張する。 しかしながら、住民基本台帳は、住民が居住していればこれを記載して居住の事実等を公証するものであるから、仮に審査義務を尽くしていなかったり、当該住所地を生活の本拠としているという事実を確認し得ていなかったとすると、そのことは住民票の記載に当たって相手方の尽くすべき義務を尽くさなかったと評価し得ないでもないが、いったん住民票の記載がされ、しかも、当該住民が現に当該住所に居住している以上、結局、住民票の記載は居住の事実と合致する適正なものであったということができるから、もはやその住民票を消除することは許されないというべきである。このことは、住民票の記載、消除又は記載の修正について、住民基本台帳法8条の委任によって規定されている同法施行令7条ないし13条が審査義務を尽くしていないとか居住の事実等を市区町村長において確認し得たかどうかということを住民票の記載、消除又は記載の修正の要件とはしておらず、かえって、住民票の記載、消除等をすべき事実が生じた場合にこれを行うとしていることからも明らかであり、相手方が指摘する同令8条の定めは、同条が明示的に規定している「住民基本台帳に記録されている者が転出をし、又は死亡したとき」に準ずるような事由に限るものと解すべきである。そして、申立人が肩書地を生活の本拠としていたかどうかについては、前記(2)のとおりであって、現段階では住民票の記載が居住の事実に合致していなかったとは認め難く、「本案について ものと解すべきである。そして、申立人が肩書地を生活の本拠としていたかどうかについては、前記(2)のとおりであって、現段階では住民票の記載が居住の事実に合致していなかったとは認め難く、「本案について理由がないとみえるとき」に該当すると認めることはできないのである。 したがって、上記の相手方の主張も採用することができない。 4 「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」(行政事件訴訟法25条3項)に該当するかどうかについて住民票を編成して住民基本台帳を作成する行為は、住民の居住関係に関する事項を証明し、それに公の証拠力を与える公証行為にすぎず、住民票を編成することによって、当該住所に居住する権原を付与するなどの法的効果を伴うものではないから、本件処分の執行停止をしたとしても、申立人の居住関係に関する事項を公証する効果が復活するにすぎないので、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときには該当しないというべきである。 5 適法な本案訴訟の係属があるかどうかについて執行停止の申立てが適法であるためには、本案訴訟としての適格を有する訴訟が係属しており、かつ、その訴訟が訴訟要件を満たす適法なものであることを要するものである。本件においては、住民基本台帳法32条が同法により市町村長(同法2条により特別区の区長が含まれる。)がする処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求の裁決を前置しなければならないと規定しているところ、前記第2の7記載のとおり、申立人は、本件訴えの提起後である平成13年1月15日に至って、東京都知事に審査請求をしているが、その裁決はされていないことから、相手方は、本件訴えが訴訟要件を充足しない不適法なものであると主張する。 しかし、前記2のとおり、申立人には回復の困難な損害が認められ、その損害を避けるため いるが、その裁決はされていないことから、相手方は、本件訴えが訴訟要件を充足しない不適法なものであると主張する。 しかし、前記2のとおり、申立人には回復の困難な損害が認められ、その損害を避けるため本件処分の効力を停止すべき緊急の必要が認められる以上、本件については、行政事件訴訟法8条2項2号の「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当する事情があるというべきであるから、申立人は住民基本台帳法32条の規定にかかわらず、裁決を経ないで本件処分の取消しの訴えを提起できるのであって、本件訴えは適法なものというべきである。 6 以上によると、本件申立ては理由があるというべきである。 第5 結論よって、本件申立ては理由があるからこれを認容することとし、申立費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり決定する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官谷口豊裁判官加藤聡
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