主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金12万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人采女英幸作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり(なお,弁護人は,被告人は,被害者の左頬を1回殴打しただけであり,その結果,左頬に傷害が生じたことは認めるが,それ以外の傷害は,被告人の行為によるものではない,と釈明した。),これに対する答弁は,検察官清水徹作成の答弁書に記載されたとおりである(なお,検察官は,原判決は,被告人の暴行の態様について,殴打の回数を1回とし,首を絞めていないとする点で事実を誤認したものであり,これらの点についても被害者の供述にしたがって公訴事実のとおりの事実を認めるべきであるから,その点について職権調査を促すものである,と釈明した。)から,これらを引用する。 1 弁護人の論旨は,要するに,原判決は,被告人は,平成12年10月15日午前7時30分ころ,群馬県高崎市a町b番地cのF方において,A(当時52歳,以下「A」という。)に対し,その左目の部分及び鼻の左側面部分を含む左顔面を右手拳で1回殴打し,うつ伏せになった同人に馬乗りになり,その頚部に右腕を巻き付けるなどの暴行を加え,よって,同人に加療約3週間を要する顔面打撲,顔面挫創,頚部挫傷,腰部打撲の傷害を負わせたとの事実を認定しているが,・被告人の暴行は,Aの左頬を右手拳で1回殴打したというものであるのに,Aの眉間の切創まで被告人の暴行によるものと認定している点,・被告人は,Aに馬乗りになり,その頚部に右腕を巻き付ける暴行を加えていないのに,これを加えたとして頚部挫傷,腰部打撲の傷害まで負わせたと認定している点において,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明 被告人は,Aに馬乗りになり,その頚部に右腕を巻き付ける暴行を加えていないのに,これを加えたとして頚部挫傷,腰部打撲の傷害まで負わせたと認定している点において,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある,というのである。 2 職権判断【要旨】弁護人の論旨に対する判断に先立ち,本件暴行の態様及び傷害の結果について職権で検討する(弁護人の所論についても,その中で併せて検討する。)。 (1) 原判決が認定した事実は前記のとおりであるところ,本件公訴事実は,被告人は「(A)の顔面を手拳で数回殴打し,うつ伏せになった同人に馬乗りになり,その頚部に右腕を巻き付け首を絞めるなどの暴行を加え,よって,同人に加療約3週間を要する顔面打撲,顔面挫創,頚部挫傷等の傷害を負わせた」というものである。したがって,原判決は,公訴事実に比べると,暴行につき,殴打行為を「(A)の左目の部分及び鼻の左側面部分を含む左顔面を右手拳で1回殴打し」との認定にとどめている点及びAの首を絞めた事実を除外している点において縮小認定をしている。また,原判決は,傷害の結果についても,事実摘示としては必ずしも明瞭ではないが,(罪となるべき事実)における上記殴打行為の認定と(事実認定の補足説明)の中で「被告人の被害者Aへの殴打は,左顔面に1回行われたのみと認定したのであるから,それ以外の頭部等への怪我については,罪となるべき事実から除かれる」と説示していることからして,関係証拠上,Aに本件当時生じたと認められる右目周辺の皮下出血及び腫脹,頭部打撲(これは,前額部から毛髪の部位にかけてのものであるから,顔面打撲と表現してもおかしくないものである。)の各傷害を認定から除外しているもの,すなわち,傷害として認定した「顔面打撲,顔面挫創」は,眉間の創傷と左目周辺の発赤,腫脹及び皮下 てのものであるから,顔面打撲と表現してもおかしくないものである。)の各傷害を認定から除外しているもの,すなわち,傷害として認定した「顔面打撲,顔面挫創」は,眉間の創傷と左目周辺の発赤,腫脹及び皮下出血を指すものと解されるのであって,ごく一部ではあるがこの限度で縮小認定しているものと認められる。 (2) ところで,Aが,平成12年10月15日午前7時51分ころ救急車で群馬県高崎市内のB病院に搬入され,以来同月25日まで同病院に入院するなどして治療を受けたこと,傷病名は加療約3週間を要する頭部打撲,顔面打撲,顔面挫創,頚部挫傷,腰部打撲であったことは,原判決が挙示する証拠から明らかである。 そして,これらの受傷原因について,Aは,原審公判で,「平成12年10月15日午前7時30分ころ,F方4畳半間で,被告人から手拳で顔を数回殴打され,血が流れてきたので顔が切れたと思ってその場にうつ伏せになって倒れ込んだところ,被告人から馬乗りになられて,首に右腕を巻き付けられ絞められた。そのため体がエビ反りの状態になり,腰も痛めた。被告人の右腕が緩んだ隙に,F方玄関を出て,近所のC宅に行ってチャイムを鳴らして助けを求めたところ,Cが出てきてくれて救急車等の手配をしてくれた。F方の玄関と正面の扉を出るまでの間に物にぶつかって怪我をするようなことはなかった」と上記傷害が全て上記の被告人の暴行によるものである旨供述している。 Aの供述は,本件被害の状況などについて,具体的かつ詳細に供述するものであって,その内容も自然であり,同人を診察したB医師の供述やカルテ(甲37)及び看護記録(甲12),また,本件直後のAの状況等を目撃したC並びにAの姉(被告人の妹)のD及びEなどの供述とも符合するものであって,十分信用することができる。 Aの供述について,弁護人の所論は,・ 看護記録(甲12),また,本件直後のAの状況等を目撃したC並びにAの姉(被告人の妹)のD及びEなどの供述とも符合するものであって,十分信用することができる。 Aの供述について,弁護人の所論は,・Aの供述によれば,Aは,被告人とFとの談笑の最中に,被告人に声をかけた途端,被告人の手が飛んできたことになるが,談笑と暴行の間に飛躍がありすぎ,不自然,不合理である,・Aの供述は,Fの存在や位置関係などの具体的な状況について,曖昧で不自然であり,また,一貫性がない,・力一杯殴られたのであれば,仰向けに倒れるのが自然であるのに,その場でうつ伏せに倒れたというのは疑問である,・Aのカルテ等には,「逆行性健忘」「来院時意識あるもショック状態にて断片的にしか分からず」と記載があり,Aの供述内容の多くの曖昧さや矛盾は,逆行性健忘を理解しさえすれば氷解する,として,これを信用できない,という。 しかし,・については,被告人は,本件の前に,Aに対して,兄弟姉妹間の問題の経緯を話したいと申し入れたものの,これを断られており,被告人がAに暴行を加える動機は存在しており,被告人自身,「Aが主のような言動をすると憤りを感じた」というのであるから,被告人の行動に飛躍があるなどとはいえない。・については,被告人から原判示のような暴行を受けていたAが,Fの所在や言動について正確に認識し得なかったとしても不自然とはいえない。・については,力一杯殴られた者は,必ず仰向けに倒れるとはいえないから,Aがうつ伏せに倒れたとしても不自然とはいえない。・については,Aは,「逆行性健忘」と診断されたわけではない。所論が指摘するカルテの記載も,「逆行性健忘ありそう」というものにすぎない。Aの供述の信用性を判断するに当たって考慮すべき前記のような諸事情に照らせば,この一事だけで,Aの供述の信 れたわけではない。所論が指摘するカルテの記載も,「逆行性健忘ありそう」というものにすぎない。Aの供述の信用性を判断するに当たって考慮すべき前記のような諸事情に照らせば,この一事だけで,Aの供述の信用性を否定するのは相当でない。弁護人の所論は採用できない。 これに対し,被告人は,「Aの顔面を右手拳で1回殴っただけである。そのほかに暴行していない。Aは,F方を飛び出した際に,門柱などにぶつかっており,眉間の傷や腰の打撲はそのとき負ったものと考えられる」などと供述している。しかし,Aは,前記のとおり,被告人の暴行以外に受傷の原因となるようなことはなかった旨供述しているし,B医師も,「Aの顔面の傷害は,手拳以外にかたいものにぶつけた可能性は低い」旨供述しており,「AはF方を飛び出した際に,門柱などにぶつかった」とする被告人の供述を裏付ける証跡は何ら存しない。しかも,被告人は,前記内容の供述を捜査段階においてはしておらず,原審第6回公判になって初めてしたものであって,その理由についても合理的に説明し得ていない。 なお,弁護人の所論は,診断書にある頭部打撲については,Aの供述にも,被告人による暴行の該当部分がない,というが,B医師によれば,頭部打撲は,「Aは前額部から毛髪の部位にかけて疼痛を訴えていた」というものであって,前記のとおり,Aは被告人の暴行以外に受傷の原因はないと供述しており,これは十分信用できることから,これがAが供述するところの被告人のAの顔面に対する殴打行為によるものと考えて何ら不自然ではない(この頭部打撲は,顔面打撲と表現してもおかしくないものであることは前記のとおりである。)。 (3)以上によれば,本件公訴事実記載のとおり,被告人が,原判示の日時,場所で,Aに対し,その顔面を手拳で数回殴打し,うつ伏せになった同人に馬乗りにな くないものであることは前記のとおりである。)。 (3)以上によれば,本件公訴事実記載のとおり,被告人が,原判示の日時,場所で,Aに対し,その顔面を手拳で数回殴打し,うつ伏せになった同人に馬乗りになり,その頚部に右腕を巻き付け首を絞めるなどの暴行を加え,よって,同人に加療約3週間を要する顔面打撲,顔面挫創,頚部挫傷等の傷害を負わせたとの事実が優に認められる(なお,前記のとおり,原判決は,傷害の結果についても,事実摘示の表現には反映させていないものの,ごく一部を除外する縮小認定をしているところ,「加療約3週間を要する」というのは,診断された傷害全体についていえることであり,関係証拠を精査しても,個々の傷害ごとの要加療日数は明らかではないから,原判決が,一部の傷害を除外しながら,「加療約3週間を要する」と判示したのは,厳密にいえば,正確ではないということになる。)。 しかるに,原判決は,前記のような縮小認定をしており,「Aの供述は,関係者の供述及びカルテや医師の所見ともよく合っており,『被告人の殴打が数回であったこと及び首を絞められたという点を除き』自然かつ合理的に述べられたものとして信用性が高い」としている。しかし,原判決を精査しても,何故にAの供述のうち上記の部分を信用できないとしたのか,その理由は判然としない。原判決が信用性を否定した上記除外部分も,その余の供述部分と全く同様に,自然かつ合理的な内容であり,医師の所見や関係者の供述ともよく符合しているのであって,これを区別する理由は全く見当たらないのである。原判決は,被告人の暴行以外に受傷の原因となるようなことはなかったとするAの供述を信用できるとし,「Aが逃げている途中でどこかにぶつかり,認定のような怪我をしたなどということはおよそ想像できない」と説示していながら,Aの右目周辺の皮下 因となるようなことはなかったとするAの供述を信用できるとし,「Aが逃げている途中でどこかにぶつかり,認定のような怪我をしたなどということはおよそ想像できない」と説示していながら,Aの右目周辺の皮下出血や腫脹の傷害及び前額部から毛髪の部位にかけての打撲の傷害,並びにこれらの原因となった被告人の暴行を認定していないが,これは不可解というほかない。また,原判決は,眉間の創傷と左目周辺の発赤,腫脹及び皮下出血を「顔面打撲,顔面挫創」として認定していると解されるものの,不自然にも,これを1回の殴打行為によるものと認定しているのである。 すなわち,被告人の殴打回数の関係で,原判決は,「切創(「挫創」の誤記と認める。)は眉間の1か所にとどまっている上,被告人によれば,右手拳はAの左頬にあたりその拳がAの左顔面の左下へ(被告人から見て)流れ,Aの鼻の左側にぶつかったというのであり,物理的な流れとしては,自然かつ合理的に説明がついており,かような行為態様-特に,拳の大きさと左顔面の面積とを比較するときには-であれば,1回殴打でも前記のような傷病が生じることは十分説明がつく。そこで,被告人の弁解に沿って,殴打は1回であったと認定した」などと説示している。しかし,仮に1回の殴打でも原判決が認定しているAの顔面の傷害が生じ得るといえるとしても,それだけでは,殴打された回数についてのAの供述の信用性を否定する理由にはならない上,当審の事実取調べの結果によれば,被告人の右手の大きさは,縦17センチメートル,横9.5センチメートルと通常人と変わりがないことが認められるから,原判決がいうように,「拳の大きさと左顔面の面積とを比較するときには,1回殴打でも前記のような傷病が生じることは十分説明がつく」などとは到底いえないのである。 次に,被告人がAの首を絞めたか否か ,原判決がいうように,「拳の大きさと左顔面の面積とを比較するときには,1回殴打でも前記のような傷病が生じることは十分説明がつく」などとは到底いえないのである。 次に,被告人がAの首を絞めたか否かの関係で,原判決は,被告人から暴行を受けた後にAの首の左側に赤い筋があったこと,Cや妹(Aにとっては姉)2人がこぞって,Aが当時被告人から首を絞められたと言っていたと供述していることなどを指摘していながら,被告人がAの首を絞めた事実を否定しているもので,これまた不可解である。また,原判決が認定したうつ伏せになったAに「馬乗りになり」かつ「頚部に右腕を巻き付ける」だけの暴行で,どうして頚部挫傷や腰部打撲の傷害が生ずるといえるのかも疑問といわざるを得ない。原判決は,この点について,「医師の所見-特に,『首を絞められたかどうかは分からない。カルテには記載がない。であるから,否定も肯定もできない』との供述-からしても,首を絞めるほどの行為があったとするのは早計である。のみならず,首を絞められたのであるならば,息が止まるとか息が苦しくなるといった状態になるのが自然と思われるところ,これらの状態を示すに足りる明確な資料は見当たらない。そうすると,右腕を巻き付けたのは確かであるにしても,首を絞めたとまで認めることはできない。頚部挫傷は,首を絞められたために生じたものというよりも,Aがまず顔面を殴打されて倒れ,被告人から馬乗りになられ右腕を巻き付けられるという一連の暴行の過程において生じたものと見るのが最も真実に近いものと認められる」と説示している。しかし,妹(Aにとっては姉)2人も,Aの左首には赤い筋があったと述べており,これらの供述の信用性を疑うべき理由はない。このような痕跡が生じたのは,被告人がAの頚部に右腕を巻き付けただけでなく,首を絞め付けたことによ っては姉)2人も,Aの左首には赤い筋があったと述べており,これらの供述の信用性を疑うべき理由はない。このような痕跡が生じたのは,被告人がAの頚部に右腕を巻き付けただけでなく,首を絞め付けたことによるものと認めるのが自然である。これらによれば,Aが,「息が止まる」とか「息が苦しくなる状態になった」旨の供述をしていないからといって,Aが首を絞められた事実が認められないと考えるのは相当でない。 結局,公訴事実のとおりの事実を認定せず,前記のとおり縮小認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわざるを得ない。 (4) なお,本件は,被告人のみが控訴しているのに,控訴裁判所である当裁判所が,職権調査により,原判決が認定した犯罪事実よりも被告人に不利益な態様の犯罪事実が認定できるとして,原判決を破棄することができるか,という問題があるので,この点についての見解を示しておく。 第1に,本件においては,単純一罪である傷害につき,原判決が公訴事実の一部を除外して縮小認定したのに対し,当裁判所は公訴事実と同旨の事実を認定できるとするものである。第2に,本件の事実関係の下においては,暴行の態様と傷害の結果はまさしく不可分であって,原判決が認定した暴行のみでは原判決が認定した傷害の結果の多くを説明できないのみならず(この点は,弁護人が控訴趣意で指摘するとおりである。),公訴事実のとおりの暴行を認定すれば原判決が認定から除外した傷害の事実も当然に認定できることになるのである。第3に,原判決による,傷害の結果についての縮小認定は,傷病名や要加療日数の事実摘示の表現にも反映しない程度のものであり,しかも,原判決のように縮小認定すれば,要加療日数を正確に認定することが困難になるのである。換言すれば,原判決が除外した傷害を加えて初めて,原判 療日数の事実摘示の表現にも反映しない程度のものであり,しかも,原判決のように縮小認定すれば,要加療日数を正確に認定することが困難になるのである。換言すれば,原判決が除外した傷害を加えて初めて,原判示の加療日数が正確なものといえるのである。第4に,検察官としては,本件は兄妹間の重大とまではいえない傷害事件であるところ,原判決も,事実摘示としては,公訴事実とほぼ同様の傷害を認定し,これを被告人の暴行によるものと認めて,被告人を罰金12万円(求刑同20万円)に処したのであるから,その犯罪事実の認定や量刑に若干の不満を覚えたとしても,この判決がそのまま確定するのであれば構わないと判断して,控訴の申立てには及ばなかったものと思われるところ,そのような判断は本件事案にかんがみ首肯し得るものである。第5に,当審において,検察官は,公訴事実のとおりの事実を認めるのが相当であるとして,職権調査を促しており,当裁判所の上記のような判断も被告人にとって不意打ちにはならない。このような諸点にかんがみると,本件のような場合には,職権調査の結果,上記のような理由により原判決を破棄することは許されると解するのが相当である。 3 破棄自判よって,刑訴法397条1項,382条により,原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,被告事件について更に判決する。 (罪となるべき事実)原判決の罪となるべき事実中2行目ないし3行目に「その左目の部分及び鼻の左側面部分を含む左顔面を右手拳で1回」とあるのを,「その顔面を手拳で数回」と,同4行目に「右腕を巻き付ける」とあるのを,「右腕を巻き付け首を絞める」とそれぞれ改めるほかは,同事実記載のとおりである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法204条に該当するので,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額 腕を巻き付け首を絞める」とそれぞれ改めるほかは,同事実記載のとおりである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法204条に該当するので,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で被告人を罰金12万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,原審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,実妹である被害者の言動に立腹するなどして,同人に対し,その顔面を殴打し,馬乗りになって頚部に右腕を巻き付け首を絞めるなどの暴行を加え,同人に加療約3週間を要する傷害を負わせた,という事案である。 被告人は,女性である被害者に対し,一方的に暴行を加えたものであり,悪質な犯行である。被害者の受傷の程度も軽いものとはいえない。被告人は,暴行の態様等について不合理な弁解をしており,真摯に反省しているか疑問が残る。以上によれば,被告人の刑責を軽くみることはできない。 しかしながら,他方,被告人は,被害者に暴行を加えて傷害を負わせたことについては反省の弁を述べ,被害者に謝罪し,入院費用等を支払っていること,被告人に前科はないことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 これらの諸事情を総合考慮すると,原判決が宣告したよりも若干多額の罰金刑が相当と判断されるが,本件が被告人のみによる控訴であるから,刑訴法402条に従い,原判決の刑と同様の刑にとどめるほかない。 よって,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官安廣文夫裁判官竹花俊徳裁判官平塚浩司) のとおり判決する。 裁判長裁判官 安廣文夫 裁判官 竹花俊徳 裁判官 平塚浩司
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