平成15(ネ)31 不当利得返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年5月22日 福岡高等裁判所 那覇支部 那覇地方裁判所 平成14(ワ)447
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判決文本文10,435 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,32万9302円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを5分し,その2を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。 3 この判決は,被控訴人勝訴部分に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者双方の申立て 1 控訴人(1) 原判決中,控訴人に対して32万9302円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を超えて金員の支払を命じた部分を取り消す。 (2) 上記取消部分につき,被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。 なお,被控訴人は,当審において,その請求を原判決主文1項記載のとおり(控訴人は,被控訴人に対し,55万6704円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。)に減縮した。 第2 事案の概要本件は,クレジットカードを利用して継続的に控訴人から金員を借り入れていた被控訴人が,これらの貸付けが全体として一個の貸付けであることを前提に,被控訴人が弁済として支払った金員を利息制限法所定の利率に引き直して充当計算すると合計55万6704円の過払が生じていると主張して,控訴人に対し,同額の不当利得返還請求(訴状送達の日の翌日である平成14年6月6日以降民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求を含む。)をした事案である。控訴人は, 過払が生じていると主張して,控訴人に対し,同額の不当利得返還請求(訴状送達の日の翌日である平成14年6月6日以降民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求を含む。)をした事案である。控訴人は,①被控訴人に対する貸付けは,リボルビング払方式によるものを除いてはそれぞれ別個の貸付けであるから,個別に充当計算すべきである,②被控訴人の主張する不当利得返還請求権の一部は時効により消滅した,などと主張して争っている。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 基本契約の締結被控訴人は,昭和56年8月19日,控訴人(当時の商号はA信販株式会社)に対し,クレジットメンバーズカード契約申込書(乙1)を提出した。 控訴人は,これに応じて被控訴人に対して個人カード(以下,単に「カード」という。)及びキャッシュローンブックを発行し,同月ころ,控訴人と被控訴人との間で概要以下のとおりのカード会員契約が成立した(以下「本件基本契約」という。)。 ア会員は,カード及びキャッシュローンブックを控訴人が指定する金融機関窓口又は控訴人支店窓口に提示することにより,利用限度額内で金員を借り受けることができる。借受金及び融資手数料の支払回数は,控訴人が定めた分割回数の中から会員が指定したものとする。(乙1の第8条)イ貸付金(リボルビング方式を除く。以下,リボルビング方式以外の方法による貸付けを「通常貸付け」という。)については,利用した月の翌月以降毎月27日限り支払う。 ウリボルビング払方式による貸付金については,毎月末日現在の利用元本残高に応じて区分した一定額(利用元本残高20万円までは1万円,20万円を超え30万円までは1万5000円,30万円を超え40万円までは2万円,40万円 よる貸付金については,毎月末日現在の利用元本残高に応じて区分した一定額(利用元本残高20万円までは1万円,20万円を超え30万円までは1万5000円,30万円を超え40万円までは2万円,40万円を超え50万円までは2万5000円)を支払う。なお,リボルビング払方式による貸付金についての条項は本件基本契約締結後に追加されたものである。 (2) 金員の貸付けア被控訴人は,カード及びキャッシュローンブックを利用して,別紙計算書AないしE記載の各「取引日」欄記載の日に,利率年28.8パーセントの約定で,各「借入額」欄記載の金員を通常貸付けの方法により控訴人から借り入れた(以下,この貸付けを「本件通常貸付け」という。)。 イ被控訴人は,カード及びキャッシュローンブックを利用して,別紙計算書46ないし50記載の各「貸付年月日又は入金年月日」欄記載の日に,各「貸付金額」欄記載の金員をリボルビング払方式により控訴人から借り入れた(約定利率は明らかでないが,利息制限法所定の利率を超えていたことは当事者間に争いがない。以下,この貸付けを「本件リボ貸付け」といい,本件通常貸付けと併せて「本件貸付け」という。)。 (3) 弁済ア被控訴人は,別紙計算書AないしE記載の各「取引日」欄記載の日に,控訴人に対し,各「支払額」欄記載の金員を貸付金の弁済として支払った。 イ被控訴人は,別紙計算書46ないし50記載の各「貸付年月日又は入金年月日」欄記載の日に,控訴人に対し,各「入金額」欄記載の金員を貸付金の弁済として支払った。 (4) 消滅時効の援用控訴人は,平成14年10月7日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人に対し,被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権の一部(後記2の(2)の「控訴人の主張」記載のと 消滅時効の援用控訴人は,平成14年10月7日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人に対し,被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権の一部(後記2の(2)の「控訴人の主張」記載のとおり本件通常貸付けについての過払分相当額)について,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 2 争点(1) 過払金の額-弁済金の充当計算方法-(被控訴人の主張)本件貸付けは,本件リボ貸付けのみならず本件通常貸付けについても,全体として一個の貸付けとみるべきである。このことは,本件貸付けが本件基本契約に基づいて反復継続的に行われたものであること,控訴人が本件貸付けにつき同一の番号で管理していること,借主である被控訴人の主要な関心は借受金の残高の総額にあり,別個独立の債権であるという認識はなかったことから明らかである。 本件貸付けを全体として一個の貸付けとした上で被控訴人による弁済金を利息制限法所定の上限利率に引き直して充当計算すると,原判決添付別紙「修正計算書」記載のとおり,過払額は55万6704円となる。 (控訴人の主張)本件リボ貸付けが全体として一個の貸付けであることは争わない。本件通常貸付けは,本件基本契約に基づくものではあってもそれぞれ別個独立の貸付けであって,手形の書換のような場合とは異なり,これを1個の貸付けとみるべき根拠はない。控訴人が管理している契約番号は整理のための番号に過ぎず,これによって債権の性質に影響を及ぼすいわれはない。 本件通常貸付けについて,それぞれ別個独立の貸付金債権として,各貸付け(35件)について利息制限法所定の上限利率に引き直して弁済金を個別に充当計算すると,原判決添付別紙11ないし45のとおり,過払額は合計7万1940円(同別紙「過払額一覧表」記載の各「元 ,各貸付け(35件)について利息制限法所定の上限利率に引き直して弁済金を個別に充当計算すると,原判決添付別紙11ないし45のとおり,過払額は合計7万1940円(同別紙「過払額一覧表」記載の各「元本残高」の合計〔ただし,同記載の「分割払方式C-9」欄の過払額「-56」を「56」に,「合計」欄の過払額「401,354」を「401,242」に各改める。〕)である。また,本件リボ貸付けについては,全体として1個の貸付けとして利息制限法所定の上限利率に引き直して充当計算すると,別紙計算書46ないし50のとおり,過払額は32万9302円となる。 (2) 消滅時効の成否(控訴人の主張)本件通常貸付けについての過払金(合計7万1940円)は,原判決添付別紙11ないし45のとおり,いずれも平成2年3月2日までに生じたものである。したがって,遅くともそれから10年後である平成12年3月2日の経過により,本件通常貸付けについての不当利得返還請求権は時効により消滅した。 (被控訴人の主張)本件通常貸付けと本件リボ貸付けとは全体として1個の貸付けであるから,本件通常貸付けについての不当利得返還請求権のみが時効により消滅することはない。 仮に,本件通常貸付けが別個の貸付けであるとしても,債務者の承認によって時効が中断するのと同様に,同一の基本契約に基づき新たな貸付けがされた場合には時効の中断(又は類推)に当たるというべきであって,過払金についての不当利得返還請求権の消滅時効の起算点は,最終の貸付日又は全取引終了時とすべきである。なぜなら,取引継続中に被控訴人が不当利得返還請求をすればかえって貸金の一括請求をされるおそれがあるため,取引継続中は事実上不当利得返還請求ができないからである。 (3) 相殺の可否(被控 なぜなら,取引継続中に被控訴人が不当利得返還請求をすればかえって貸金の一括請求をされるおそれがあるため,取引継続中は事実上不当利得返還請求ができないからである。 (3) 相殺の可否(被控訴人の主張)仮に,不当利得返還請求権の一部について消滅時効の主張が認められるとしても,民法508条により,時効により消滅した債権であってもこれを自働債権として相殺することができる。被控訴人は,平成14年10月7日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権と控訴人の被控訴人に対する貸付金返還請求権とを相殺する旨の意思表示をしたから,相殺の効力が相殺適状時に遡るので,結局,本件貸付けを全体として1個の貸付けとして順次充当計算したのと同じ結果になる。したがって,被控訴人の不当利得返還請求権は時効によっては消滅しない。 (控訴人の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について(1) まず,本件リボ貸付けについては,これを全体として一個の貸付けとみて弁済金を充当計算すべきことにつき当事者間に争いがなく,その実態に即してみても,リボ貸付けの場合には,貸付けの都度既存の債務残額に新たな貸付金額を加算した上でその合計金額に応じて毎月の支払額が変動するという仕組みとなっているのであるから,リボ貸付けの都度,既存のリボ貸付けによる借受金債務と新たなリボ貸付けによる借受金債務とが一本化され,全体として1個のリボ貸付けによる借受金債務になると解することがリボ貸付けの方式を利用して取引を行う契約当事者双方の合理的意思にも合致するというべきである。 (2) そこで,本件リボ貸付けについて,全体として一個の貸付けとみて利息制限法所定の上限利率に引き直して弁済充当すると,別紙計算書46ないし50のと 合理的意思にも合致するというべきである。 (2) そこで,本件リボ貸付けについて,全体として一個の貸付けとみて利息制限法所定の上限利率に引き直して弁済充当すると,別紙計算書46ないし50のとおり,平成14年4月27日の時点で過払額は32万9302円となる。 (3) 次に,本件通常貸付けについて検討するに,被控訴人は,本件通常貸付けについても本件リボ貸付けと併せて全体として1個の貸付けであると主張する。しかしながら,本件通常貸付け及び本件リボ貸付けは,いずれも本件基本契約に基づいて反復継続的に行われたものである点で相互に経済的に密接に関連した取引であるということはできても,本件通常貸付けは,リボ貸付けのように既存の借受金債務と新たな借受金債務とが一本化されることが当然に予定されているものではないし,また,本件においては,手形の書換のように実質的に弁済期を猶予したに過ぎないと認められる場合,すなわち,既存の借受金債務と同額の金員を同一の条件で借り入れることにより計算上の処理のみで借り換えを行い現実に金員の授受が行われないような場合とは異なり,被控訴人は,本件通常貸付けの都度個別に現実に金員の交付を受けているのであって,本件通常貸付けは,それぞれに金銭消費貸借における要物性の要件を充足しているのであるから,本件通常貸付けは,それぞれに独立した別個の取引と認めるのが相当である。被控訴人は,控訴人が本件貸付けにつき同一の番号で管理していたから本件貸付けは全体として1個の貸付けであると主張するけれども,控訴人が債務者ごとに又は基本契約ごとに同一の番号で管理をしていたとしても,それは債権者である控訴人の内部的な事務処理の問題にとどまり,そのことによって契約ないし債権の個数が定まるということはできない。被控訴人は,また,借主である被控訴人の の番号で管理をしていたとしても,それは債権者である控訴人の内部的な事務処理の問題にとどまり,そのことによって契約ないし債権の個数が定まるということはできない。被控訴人は,また,借主である被控訴人の主要な関心は借受金の残高の総額にあり,別個独立の債権であるという認識はなかったとも主張するけれども,被控訴人の関心が主として借受金残高の総額にあり,債権の個数については関心の外にあったとしても,そのことから直ちに,本件通常貸付けが全体として1個の貸付けになると解することはできず,他に,本件通常貸付けがそれぞれ別個独立の貸付けであるとの上記の認定判断を覆すに足りる証拠はない。 したがって,本件通常貸付けについては,各貸付けごとにそれぞれ別個の貸付けであることを前提に,被控訴人による弁済金の充当計算を行うべきである。 (4) 本件通常貸付けについて,利息制限法所定の上限利率に引き直した場合の弁済充当の具体的な計算方法について検討するに,控訴人は,本件通常貸付けが別個の貸付けであることを前提に,原判決添付別紙11ないし45のとおりの計算方法によるべきであると主張する。しかしながら,本件通常貸付けがそれぞれ別個の貸付けであることは上記(2)に認定したとおりであるけれども,控訴人主張の上記計算方法をそのまま採用することはできない。なぜなら,債務者(被控訴人)が債権者(控訴人)に対して同種の目的を有する数個の債務を負担する場合において,弁済の充当に関する当事者間の合意又は一方による弁済充当の指定がない場合には(本件において弁済充当に関する合意又は弁済充当の指定があったことについての主張立証はない。),民法488条,489条及び491条の規定に従い法定充当すべきところ,控訴人の主張する上記計算方法では,1個の債務について利息制限法所定の上限 済充当の指定があったことについての主張立証はない。),民法488条,489条及び491条の規定に従い法定充当すべきところ,控訴人の主張する上記計算方法では,1個の債務について利息制限法所定の上限利率に引き直して充当計算した結果当該債務残額が零円となった後に支払われた弁済金(例えば,原判決添付別紙11〔C-1〕の昭和59年7月28日に支払われた3000円)について,当該弁済の時点で他に同種の借受金債務(例えば原判決添付別紙16〔C-6〕や同別紙17〔C-7〕等)が存在したから,本来は上記の3000円をこれらの債務の弁済に充当した上で計算すべきこととなるにもかかわらず,そのような計算処理がされていないからである。 そこで,本件通常貸付けについて,それぞれ別個の貸付けであることを前提に,法定充当の規定に従って弁済金を充当計算すると,別紙計算書AないしEに記載したとおりとなる。なお,本件通常貸付けはそれぞれ別個の貸付けであるから,本来であれば,各弁済の時点で弁済期の到来している複数の貸付けにつき,各債務残額に応じて弁済額を按分して充当計算した上で各貸付けについての債務残高をそれぞれ計算すべきであるが,本件では,本件通常貸付けによる借受金債務がいずれも全額支払済みであって過払金が生じていることは明らかであるので,個別の貸付金の残額をそれぞれ明らかにする必要はないから,計算の便宜上,各弁済の時点で存在する複数の借受金債務の合計額を基礎にして,利息制限法所定の上限利率に引き直して遅延損害金,利息の額を計算し,弁済金を遅延損害金,利息,残元金(いずれも複数の借受金債務の合計額)に順次充当して借受金債務残額(複数の借受金債務の合計残額)を計算する方法によることも可能である(各借受金債務額に応じて弁済金を按分して個別に充当計算した上で複数の借 れも複数の借受金債務の合計額)に順次充当して借受金債務残額(複数の借受金債務の合計残額)を計算する方法によることも可能である(各借受金債務額に応じて弁済金を按分して個別に充当計算した上で複数の借受金債務残額を合計した場合とで合計金額は異ならない。)。したがって,各弁済の時点で,同種の複数の借受金債務が存在する場合には,計算上は,あたかも一個の貸付けとして充当計算を行った場合と異ならなくなるが(別紙計算書Aは,被控訴人の主張する原判決添付別紙修正計算書のうち昭和60年6月29日の欄までの記載と同一である。),これは,計算の便宜上,複数の貸付けの債務額を合計して充当計算を行ったことによるものであって,本件通常貸付けが全体として1個の貸付けであることを前提とするものではない。 しかしながら,利息制限法所定の上限利率に引き直して法定充当の規定に従い順次弁済充当を行った結果,複数の借受金債務の残額がいずれもマイナスとなった場合には,充当すべき借受金債務が存在しないにもかかわらず弁済として金員が交付されているので,その時点で被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権が発生し(例えば,別紙計算書Aの最下段記載のとおり,昭和60年6月29日の弁済により9003円の不当利得が生じている。),さらに借受金債務が存在しないまま弁済が行われれば不当利得返還請求権の金額が増加することになる。そして,その後に同一の当事者間で新たな貸付けが行われたとしても,特段の意思表示がない限り,いったん発生した不当利得返還請求権が当然に新たな貸付けによる債務の弁済に充当されると解すべき根拠はないし,また,被控訴人としても,新たな貸付けを受ける時点で,既に過払いが生じているとか控訴人に対して不当利得返還請求権を有しているということを念頭においていたというような形跡は ると解すべき根拠はないし,また,被控訴人としても,新たな貸付けを受ける時点で,既に過払いが生じているとか控訴人に対して不当利得返還請求権を有しているということを念頭においていたというような形跡は一切窺われないから(むしろ,このような可能性があることについてすら全く認識していなかったものと認められる。),新たな貸付けを受けた時点で,過去の過払金ないし不当利得返還請求権相当額を新たな貸付けによる債務額から控除することが当事者の合理的意思に合致するということもできない。したがって,被控訴人の主張する計算方法(原判決添付別紙修正計算書)は,本件通常貸付けによる借受金債務がいずれもマイナスになった後に行われた新たな貸付けについて,その元金から当然に過去の過払額を控除して計算している点で採用することができない。 (5) 以上によれば,別紙計算書AないしE記載のとおり,被控訴人による各弁済の時点で本件通常貸付けによる複数の借受金債務残額が存在する場合には,便宜上借受金債務残額の合計額を基礎にして,遅延損害金,利息,元金(いずれも複数の借受金債務の合計額)に順次弁済金を充当する方法により充当計算を行い,いったん借受金債務額が零円又はマイナスになった場合には,その時点で不当利得返還請求権が発生し(さらに重ねて弁済が行われた場合には不当利得返還請求権の額が増加することとなる。),その後に新たな貸付けが行われたとしても,既に発生した不当利得返還請求権が当然に貸付額から控除されることはなく,その後に行われた弁済についてこれを同様の方法により充当計算することが相当である。これによれば,別紙計算書AないしE記載のとおり,本件通常貸付けについては,平成2年3月2日までに合計8万8849円が過払いとなり,被控訴人は,同額の不当利得返還請求を取得したも ことが相当である。これによれば,別紙計算書AないしE記載のとおり,本件通常貸付けについては,平成2年3月2日までに合計8万8849円が過払いとなり,被控訴人は,同額の不当利得返還請求を取得したものと認められる。争点1についての被控訴人の主張は,上記の限度で理由がある。 2 争点2について(1) 本件通常貸付けについて利息制限法所定の上限利率に引き直して弁済金を充当計算した結果過払いとなることにより発生した不当利得返還請求権(合計8万8849円)は,いずれも平成2年3月2日より以前に発生したものであるところ,同日から10年が経過したこと及び控訴人が平成14年10月7日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人に対し,上記の不当利得返還請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をしたことの各事実は,いずれも当裁判所に顕著である。 (2) これに対し,被控訴人は,本件通常貸付けと本件リボ貸付けとは全体として1個の貸付けであるから,本件通常貸付けについての不当利得返還請求権のみが時効により消滅することはないと主張するけれども,本件通常貸付けがそれぞれ別個の貸付けであることは,上記1に認定したとおりであるから,被控訴人の上記主張は,前提を欠き,採用することができない。被控訴人は,また,同一の基本契約に基づき新たな貸付けがされた場合には時効の中断(又は類推)に当たると主張するけれども,同一の基本契約に基づいて貸付けが行われたことを過払金についての不当利得返還請求権の消滅時効の中断事由とすべき根拠はない(被控訴人は,取引継続中に過払金の不当利得返還請求をすれば貸金の一括請求をされるおそれがあるため,取引継続中は事実上不当利得返還請求ができないと主張するけれども,過払金について不当利得返還請求をすることが他の貸付けについての期限の 当利得返還請求をすれば貸金の一括請求をされるおそれがあるため,取引継続中は事実上不当利得返還請求ができないと主張するけれども,過払金について不当利得返還請求をすることが他の貸付けについての期限の利益喪失事由となるとは認められず,被控訴人の上記主張は理由がない。)。 (3) したがって,争点2に関する控訴人の主張は理由がある。 3 争点3について(1) 被控訴人は,平成14年10月7日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権と控訴人の被控訴人に対する貸付金返還請求権とを相殺する旨の意思表示をしたところ,相殺の効力が相殺適状まで遡るから,結局,本件貸付けを全体として1個の貸付けとして順次充当計算したのと同じ結果になる,と主張する。被控訴人の上記主張の趣旨は必ずしも明確でないけれども,いずれにしても,被控訴人が相殺の意思表示をした平成14年10月7日の時点では,相殺の受働債権とされた控訴人の被控訴人に対する貸付金返還請求権は,いずれも弁済により既に消滅していたことが明らかであって(被控訴人は,本件貸付けに係る貸金返還請求権が弁済により消滅したことを前提に,さらに過払いがあると主張して本件不当利得返還請求訴訟を提起したものであるし,控訴人も,本件貸付けに係る貸金返還請求権が弁済により全額消滅したことは認めている。),上記相殺の意思表示の時点では,受働債権が既に弁済により消滅して存在しなかったのであるから,この時点で相殺適状は存在しておらず,被控訴人による相殺の意思表示は効力を生じる余地がないものというべきである。なお,自働債権が時効により消滅した場合については,時効消滅前に相殺適状が存在していれば自働債権の債権者は当該債権を自働債権として相殺することができるが(民法508条),同条は,自働債権 きである。なお,自働債権が時効により消滅した場合については,時効消滅前に相殺適状が存在していれば自働債権の債権者は当該債権を自働債権として相殺することができるが(民法508条),同条は,自働債権が時効により消滅した場合について明文で例外を規定したものであって,相殺の意思表示の時点で受働債権が弁済により既に消滅したことにより相殺適状が存在しなくなった場合にまで同条が適用ないし類推適用されるものではない。 (2) したがって,争点3についての被控訴人の主張は理由がない。 第4 結論そうすると,被控訴人の請求は,控訴人に対し,32万9302円及びこれに対する平成14年6月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきところ,当裁判所の上記判断と一部結論を異にする原判決はその限度で不当であるから,これを主文のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部裁判長裁判官渡邉等裁判官永井秀明裁判官増森珠美別紙計算書省略

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