【DRY-RUN】主 文 被告人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中被告人Bに関する部分を破棄する。 被告人Bを懲役六月に処する。 但し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶
主 文 被告人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中被告人Bに関する部分を破棄する。 被告人Bを懲役六月に処する。 但し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人海野普吉、同竹下甫、同白石信明連署の控訴趣意書に 記載されたとおりであるから、ここにこれを引用する。 控訴趣意第一点について 所論は、原判決には、被告人両名に対する本件各公訴をいずれも不法に受理した 違法があるばかりでなく、被告人Bに対して既に確定裁判を経た罪と同一の事実に つき重ねて有罪の言渡をなした違法がある、と主張するのである。 よつて記録を調査して按ずるに、被告人両名に対する本件各公訴事実の要旨は、 「一、被告人Aは将来運転免許を得る目的で練習のため反復して自動車を運転して いたものであるが、(一)、昭和三九年五月一二日午後三時一五分頃、浜松市a町 b番地先道路において普通貨物自動車を無免許で運転し、(二)、前同時刻頃、右 貨物自動車を運転して時速約四〇粁の速度で前同所を北進通過するに際し、同所が 幅員約五・五米の、右カーヴとなつている山沿いの道路で、前方の見とおしの利か ない状況にあつたのに拘らず、自車の前方を注視しないで漫然従前の速度のまま進 行を続けた過失により、折柄同所を対向進行して来たC(当四五年)運転の軽自動 車を約一五米に迫つて初めて発見し、直ちに停止避譲の措置をとつたが及ばず、自 車の右前部を右Cの自動車の前部に衝突させ、その際の衝激により同人に全治まで 約一ケ月を要する左胸部挫傷等の傷害を負わせ、二、被告人Bは右Aの雇主である が、同人から右事故を起した旨の報告を受けるや、同人が罰金以上の刑に該る前記 業務上過失傷害等の罰を犯した者であることの情を知りながら、同日右事故におい て 傷害を負わせ、二、被告人Bは右Aの雇主である が、同人から右事故を起した旨の報告を受けるや、同人が罰金以上の刑に該る前記 業務上過失傷害等の罰を犯した者であることの情を知りながら、同日右事故におい て、担当警察官に対して自己が右犯罪を犯したものである旨申立てて真犯人たる右 Aを隠避せしめた」というのであり、これに対し原審は右各訴因事実を全面的に認 容したうえ被告人両名にそれぞれ有罪の言渡をなしたものであるが、一方被告人B は、右一の(二)の業務上過失傷害事故の所謂身替り犯人となつて、本件公訴提起 に先立つ昭和三九年七月一八日浜松簡易裁判所において略式命令により罰金一万五 千円に処せられ、右裁判はそのまま確定するに至つたことが明らかである。従つて 本件において被告人Aは、既に被告人Bが犯人として処罰を受けた罪と同一の罪に つき改めてその犯人として公訴の提起を受けて有罪を言渡され、また被告人Bは、 既に自己が犯人として処罰された罪と同一の罪につきさらにその犯人(被告人A) 隠避の罪責を問われるという一見奇異な事態を生じていることは所論の指摘すると おりであつて、かかる事態は、それが被告人B等の、司直を欺いて憚らない悪質、 不埒な所為に帰因するとはいえ、たしかに矛盾であり、混乱であつて、法的安定性 の見地からしても、或いは刑事司法の運営上からみても決して望ましい現象ではな く、前記確定裁判は再<要旨>審手続により速みやかに是正されて然るべきものであ る。然しながら被告人Bに対する右確定裁判はもとも</要旨>とその効力を被告人A に及ぼし得ない筋合のものであり、また、右確定裁判を経た業務上過失傷害の罪と 被告人Bに対する本件犯人隠避の罪とは、なるほどその一方が認められるときは、 他方がその成立する余地を失う関係にあることを否定し得ないけれども、両者はそ の罪質、被害法益、行為の客体 務上過失傷害の罪と 被告人Bに対する本件犯人隠避の罪とは、なるほどその一方が認められるときは、 他方がその成立する余地を失う関係にあることを否定し得ないけれども、両者はそ の罪質、被害法益、行為の客体及び態様等その主要な犯罪構成要素を全く異にし、 その間に所論のいうような公訴事実の同一性は到底認めることはできないから、被 告人Bに対する本件公訴もまた右確定裁判の既判力の影響を受け得ないものであつ て、所論のいうように右確定裁判について再審による取消を経たのちでなければ本 件各公訴の提起並びにこれに対する有罪の言渡をなし得ないと解すべきいわれは毫 も存しない。原判決には何等所論主張の違法はなく、論旨は排斥を免れない。 控訴趣意第二点について 所論は、原判決が、被告人Aに対する本件業務上過失傷害、被告人Bに対する本 件犯人隠避の各訴因につきそれぞれ同判示のような有罪の認定したのは、被告人B に対する前記確定裁判(略式命令)の所謂「拘束力」乃至証明力を不当に無視した ことによるものであつて、事実誤認のそしりを免れない、というのである。 しかしながら確定裁判といえども決して無制限の対外的効力を有するものでない ことはここに改めていうまでもないところである。それは主観的には被告人の同一 により、客観的には所謂公訴事実の同一性によつてそれぞれ限定された領域におい て一定の所謂外部的効力(既判力)を有するに過ぎないのである(なお確定裁判の 所謂内容的確定力の対外的効果として、確定裁判においてなされた事実認定に規準 性を附与し、これを当該被告人に対する他の訴訟にまで広く及ぼそうとする見解の 存することは所論の指摘するとおりであるが、俄かに賛同し難い)。 本件において、被告人Aに対する前記業務上過失傷害及び被告人山木に対する同 犯人隠避の各訴因事実と被告人Bに対する前記確定裁判を経た の 存することは所論の指摘するとおりであるが、俄かに賛同し難い)。 本件において、被告人Aに対する前記業務上過失傷害及び被告人山木に対する同 犯人隠避の各訴因事実と被告人Bに対する前記確定裁判を経た罪との間に公訴事実 の同一性が認められないことは曩に判示したとおりであつて、右両者は互いに別個 独立の関係にあるものであるから、後者が前者に対して所論のいうような法律的効 力(所謂「拘束力」乃至証明力)を及ぼし得る余地はないものといわなければなら ない。論旨は独自の見解に立脚して原判決の正当な事実認定を非難するものであつ て、到底採用することができない。 (その余の判決理由は省略する。) (裁判長裁判官 兼平慶之助 裁判官 関谷六郎 裁判官 小林宣雄)
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