平成23年3月17日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成22年(行ケ)第10209号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年3月3日判決原告三星電子株式会社同訴訟代理人弁理士佐藤英昭丸山亮林晴男被告特許庁長官同指定代理人清木泰山崎達也豊田純一田部元史 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1請求特許庁が不服2009-10828号事件について平成22年2月22日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本願発明の要旨を下記2のとおり認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要 旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 特許庁における手続の経緯(1)本件出願及び拒絶査定発明の名称:コンピュータシステムの起動方法,コンピュータシステムおよびハードディスクドライブ出願日:平成18年6月13日(平成14年7月29日にした原出願(特願2002-220078号(乙1))の分割出願であり,原出願の国内優先権主張日は,2002年(平成14年)1月3日(大韓民国)である。)(甲1,乙1 6月13日(平成14年7月29日にした原出願(特願2002-220078号(乙1))の分割出願であり,原出願の国内優先権主張日は,2002年(平成14年)1月3日(大韓民国)である。)(甲1,乙1)出願番号:特願2006-163994拒絶査定日:平成21年3月5日(甲19)(2)審判請求及び本件審決審判請求日:平成21年6月8日(甲20)審決日:平成22年2月22日審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない。 審決謄本送達日:平成22年3月9日 本願発明本件審決が判断の対象とした平成21年12月28日付け手続補正書(甲25)による補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載は,以下のとおりである。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所である。以下,上記請求項2に記載された発明を「本願発明」といい,本願発明に係る明細書(甲1,18,22,25)を「本件明細書」という。 コンピュータシステムにおいて,/メインメモリと;/前記メインメモリと通信を行うハードディスクドライブと;/を含み,/前記ハードディスクドライブは,/前記コンピュータシステムのOSを保存するディスクと;/前記ディスクを駆動する駆動モーターと;/前記OSの起動プログラムを保存するフラッシュメモリー と;/前記駆動モーターが定常速度になる前は,前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし,前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,前記駆動モーターが定常速度になった後は,前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする制御部と;/を含むことを特徴とする,コンピューターシステム 本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本願発明が,下記アの引用例1に記載された発明(以下「 モリにローディングする制御部と;/を含むことを特徴とする,コンピューターシステム 本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本願発明が,下記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基づき,下記イないしオの引用例2ないし5及び下記カないしクの周知例1ないし3を参照して,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 ア引用例1:特開平9-297659号公報(甲2)イ引用例2:特開平10-154101号公報(甲3)ウ引用例3:特開平7-44325号公報(甲4)エ引用例4:特開平8-137622号公報(甲5)オ引用例5:特開2000-285590号公報(甲6)カ周知例1:特開平9-146774号公報(甲26)キ周知例2:特開平4-299425号公報(甲27)ク周知例3:特開平9-128164号公報(甲28)(2)なお,本件審決が認定した引用発明並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明:単一のドライブ番号が割り当てられ,そのドライブ番号によって指定される不揮発性記憶装置において,前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内の第1記憶領域が割り当てられ,電気的にデータの消去及び書き込みが可能なフラッシュメモリーから構成される半導体ディスク装置と,前記不揮発性記憶装置の全記憶領域内における前記第1記憶領域以外の他の第2記憶領域が割り当てられたハード ディスクドライブとを具備し,単一のドライブ番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されている不揮発性記憶装置であって,前記第1記憶領域は,あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使 番号で前記第1記憶領域と前記第2記憶領域を選択的にアクセスできるように構成されている不揮発性記憶装置であって,前記第1記憶領域は,あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用され,そのファイル以外の他の実行ファイルの格納のために前記第2記憶領域が使用されるものであり,前記ハードディスクを制御するハードディスクコントローラと,前記フラッシュメモリを制御するフラッシュメモリコントローラと,これらの双方を統合制御するハイブリッドコントローラを有する不揮発性記憶装置を,2次記憶として用いたコンピュータシステムイ一致点:「コンピュータシステムにおいて,メインメモリと;前記メインメモリと通信を行うハードディスクドライブと;を含み,前記ハードディスクドライブは,前記コンピュータシステムの」ソフトウェア「を保存するディスクと;前記ディスクを駆動する駆動モーターと;前記」ソフトウェア「の起動プログラムを保存するフラッシュメモリーと;「前記フラッシュメモリーから前記」ソフトウェア「の起動プログラムを読み出して前記メインメモリにローディングし,」「前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする制御部と;を含むことを特徴とする,コンピュータシステム」ウ相違点1:本願発明においては,格納されるソフトウェアが「OS」であるのに対し,引用例1には,「コンピュータの起動時」は「フラッシュメモリ6から行うのが速度の面からは望ましい」旨の記載(【0009】)及びOS起動時に読み込まれるファイルであるところの「config.sys」等をフラッシュメモリ領域に記憶する旨の記載(【0036】)があるものの,格納されるファイル群が「OS」であることを直接的に明示する記載はない点エ相違 ァイルであるところの「config.sys」等をフラッシュメモリ領域に記憶する旨の記載(【0036】)があるものの,格納されるファイル群が「OS」であることを直接的に明示する記載はない点エ相違点2:本願発明においては,「前記駆動モーターが定常速度になる前は」前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出しているのに対し,引用例1には,「データ読み出し速度の早いフラッシュメモリ6にはそのプ ログラム起動時に使用されるファイルが格納され,そのファイル以外の他のファイルについては記憶容量の大きいハードディスクドライブ5に格納され」,「これにより,そのプログラムの起動を高速に行うことが可能となる」旨の記載はある(【0025】)ものの,前記「プログラム起動時に使用される実行ファイル」の読み出しが「駆動モーターが定常速度になる前」である旨の直接的な明示がない点オ相違点3:本願発明においては,「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,前記駆動モーターが定常速度になった後は」前記ディスクから必要なプログラムを読み出しているのに対し,引用例1には「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断」することは記載されておらず,また「他の実行ファイル」の読み出しが「前記駆動モーターが定常速度になった後」になされる旨の直接的な明示もない点 取消事由引用発明に基づく本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(1)一致点の認定の誤り(取消事由1)(2)相違点を看過した誤り(取消事由2)(3)相違点2及び3についての判断の誤り(取消事由3)第3当事者の主張 取消事由1(一致点の認定の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,引用発明の「不揮発性記憶装置」が本願発明の「ハードディスクドライブ」に対応していると判断する )第3当事者の主張 取消事由1(一致点の認定の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,引用発明の「不揮発性記憶装置」が本願発明の「ハードディスクドライブ」に対応していると判断する一方で,「不揮発性記憶装置」が「フラッシュメモリー」等をも具備している旨を判断している。 しかしながら,引用例1によれば,引用発明の「不揮発性装置」は,「ハードディスクドライブ」,「フラッシュメモリー」及び「フロッピーディスク」をも具備している(【0020】~【0022】)。また,引用発明ではハードディスクとフラッシュメモリーとが互いの利点で互いの欠点を補うように1つのドライブ番号が割 り当てられた統合ドライブユニットとして実現されている(【0020】~【0023】【図1】)から,本願発明の「ハードディスクドライブ」に対応するものは,「統合ドライブユニット」である。 (2)本件審決は,引用発明の「あるプログラムを構成するファイル群」が本願発明の「OS」に,引用発明の「フラッシュメモリ」が本願発明の「フラッシュメモリー」に,それぞれ対応していると判断している。 しかしながら,プログラムとは解釈・動作できるデータの総称であり,OSの構成要素であるプログラムもあれば,OSの構成要素ではないプログラムもある一方,OSとは,コンピュータの管理やユーザインターフェースとその動作を実現するなど明確な機能を有するソフトウェアであるから,プログラムとOSとが対応しているということはできない。 さらに,引用発明の「フラッシュメモリ」は,あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用される一方,本願発明の「フラッシュメモリー」は,OSの起動プログラムを保存するものであり,保存される対象を異にするから,両者は,対応す の中でそのプログラム起動時に使用される実行ファイルの格納に使用される一方,本願発明の「フラッシュメモリー」は,OSの起動プログラムを保存するものであり,保存される対象を異にするから,両者は,対応するものではない。 (3)本件審決は,引用発明の「ハードディスクコントローラ」,「フラッシュメモリコントローラ」及び「ハイブリッドコントローラ」を本願発明の「制御部」に対応していると判断している。 しかしながら,引用発明の「ハードディスクコントローラ」等は,いずれも,本願発明の特許請求の範囲の記載にある「制御部」のような記載や示唆がないから,本願発明の「制御部」に対応するものではない。 (4)以上のように,本件審決は,引用発明と本願発明との対比判断を誤り,一致点の認定を誤っている。 〔被告の主張〕(1)引用例1は,「不揮発性記憶装置」という用語を,フロッピーディスクドライブ,ハードディスクドライブ及びフラッシュメモリー等の,電源を投入していな いときにも記憶内容が消えない記憶装置の総称として用いているのであって,これらの3つの記憶装置を備えた装置に限定して用いているわけではない(【0020】参照)。現に,引用例1の請求項1は,「不揮発性記憶装置」が「磁気ディスク装置」(すなわちハードディスクドライブ)と「不揮発性半導体記憶装置から構成される半導体ディスク装置」(すなわちフラッシュメモリー)を具備する旨を記載しているにとどまる。 また,原告は,ハードディスクドライブとフラッシュメモリーとを具備する構成について,「不揮発性記憶装置」との用語を用いるか,「統合ドライブユニット」との用語を用いるかの違いを主張するにすぎず,当該主張は,本願発明の進歩性の有無の判断を左右するものではない。そして,本願発明も,「フロッピーディスクドライブ」の存在を排除 「統合ドライブユニット」との用語を用いるかの違いを主張するにすぎず,当該主張は,本願発明の進歩性の有無の判断を左右するものではない。そして,本願発明も,「フロッピーディスクドライブ」の存在を排除するものではないから,仮に引用発明にいう「不揮発性記憶装置」には「フロッピーディスクドライブ」が含まれると解釈しても,審決が,本願発明の「ハードディスクドライブ」が引用発明の「不揮発性記憶装置」に対応すると判断したことに誤りはない。 (2)引用発明における「あるプログラムを構成するファイル群」は,広義のソフトウェアに係るプログラムを構成するファイル群であるから,「OS」の上位概念に当たる。 本件審決は,引用発明の「そのプログラム起動時に実行される実行ファイル」により起動される対象が「あるプログラムを構成するファイル群」であるのに対し,本願発明の「OSの起動プログラム」により起動される対象が「OS」であることを踏まえて,起動される対象であるソフトウェアという点の共通性に着目して,「あるプログラムを構成するファイル群」が「OS」に対応すると判断したものである。 同様に,本件審決は,引用発明の「そのプログラム起動時に実行される実行ファイル」をフラッシュメモリーが保存するものであるのに対し,本願発明の「OSの起動プログラム」を「フラッシュメモリー」が保存するものであることを踏まえた 上で,起動するためのものを保存する記録媒体としての共通性に着目して,引用発明の「フラッシュメモリ」が本願発明の「フラッシュメモリー」に対応すると判断したものである。 本件審決は,別途相違点1を認定していることからも明らかなように,「対応付けられる」との表現を,発明の構成要素の一致点を示す趣旨で用いているわけではない。 (3)本件審決は,引用発明の「ハードディスクコント ,別途相違点1を認定していることからも明らかなように,「対応付けられる」との表現を,発明の構成要素の一致点を示す趣旨で用いているわけではない。 (3)本件審決は,引用発明の「ハードディスクコントローラ」等がハードディスクドライブ等を制御するものであり,ハードディスクドライブ等から読み出したものをメインメモリにローディングするものである点を踏まえた上で,引用発明のこれらのコントローラと本願発明の「制御部」との間にシステム内で果たす役割の共通性があることに着目して,対応関係についての判断を行ったものである。 本件審決は,別途相違点2及び3を認定していることからも明らかなように,「対応付けられる」との表現を,発明の構成要素の一致点を示す趣旨で用いているわけではない。 取消事由2(相違点を看過した誤り)について〔原告の主張〕(1)本願発明のディスクには,フラッシュメモリーの領域に保存・格納されているOSの起動プログラム(OSの一部であることは,自明である。)も保存・格納されるのに対し,引用発明のハードディスクには,フラッシュメモリーに保存・格納されているプログラムの起動時に使われる実行ファイルは,保存・格納されず,むしろ,OSのプログラムのみならず,もっと広義の,例えばアプリケーションソフトウェアに係るプログラムを構成するファイル群を保存・格納するものである。 (2)しかしながら,本件審決は,本願発明と引用発明との間の前記の相違を相違点として認定しなかったという違法がある。 (3)なお,被告は,原告が本願発明の請求項から「OSの起動プログラムを保存するディスク」との構成を削除したことをもって,本願発明のディスクがOSの 起動プログラムを必ず保存するものとは解釈することができない旨を主張する。 しかしながら,原告は,上記「OSの起動プ を保存するディスク」との構成を削除したことをもって,本願発明のディスクがOSの 起動プログラムを必ず保存するものとは解釈することができない旨を主張する。 しかしながら,原告は,上記「OSの起動プログラムを保存するディスク」との構成が請求項に残された「前記コンピュータシステムのOSを保存するディスク」に含まれるものと理解した上で削除したものであって,意図的にその構成要件から削除したものではない。このことは,本件明細書に,なおOSの起動プログラムをディスクに保存する旨の記載があることにより裏付けられる(【0020】【0024】)。 したがって,本願発明が,ディスクにOSの起動プログラムを必ず保存するものであることは,上記補正後も変わりない。 (4)本願発明の「マイコンは,フラッシュに起動プログラムが保存されたか否かを確認してフラッシュに起動プログラムが保存されない場合,ディスクに保存された起動プログラムをフラッシュに保存する」(本件明細書【0025】)ものであるが,本件審決は,この点を相違点として認定していない誤りがある。 〔被告の主張〕(1)原告は,拒絶理由通知書(甲23)を受けて,従前の請求項に記載されていた「前記コンピュータシステムのOSと前記OSの起動プログラムを保存するディスク」との発明特定事項を,「前記コンピュータシステムのOSを保存するディスク」に補正したものである(甲25)。したがって,本願発明のディスクがOSの起動プログラムを必ず保存するものと解釈することはできない。 (2)仮に,本願発明のディスクがOSの起動プログラムを必ず保存するものと解釈されるとしても,バックアップ等のために2つの媒体に同一又は同種のファイルを記録することは,周知慣用技術であり(引用例1【0039】),起動プログラムをその対象とすることも,同 ず保存するものと解釈されるとしても,バックアップ等のために2つの媒体に同一又は同種のファイルを記録することは,周知慣用技術であり(引用例1【0039】),起動プログラムをその対象とすることも,同様である(引用例4【0023】【0039】【0040】【0050】参照)。そして,引用発明の「プログラム起動時に使用される実行ファイル」には「OSの起動プログラム」が当然含まれるから,引用発明に当該周知慣用技術を適用して,引用発明の「プログラム起動時に使用される実行ファイ ル(OSの起動プログラムを含む。)」をハードディスクドライブに保存するようにすることは,当業者が適宜採用し得る設計的事項である。 したがって,上記相違点が認定されるとしても,それは,当業者であれば適宜に採用し得た構成である。 (3)マイコンがフラッシュメモリーに起動プログラムが保存されていないことを認識した場合に,ディスクに保存された起動プログラムをフラッシュメモリーに保存する制御は,本件明細書に記載があるだけで,本願発明の請求項には記載も示唆もないから,原告の主張は,当該請求項に基づかないもので失当である。 取消事由3(相違点2及び3についての判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,①相違点2について,ディスクとは別に設けられた記憶装置からのデータの読み出しがディスクの回転にかかわらず可能であることは,当業者に自明であるから,引用発明においても,「プログラムの起動を高速に行う」ため「そのプログラム起動時に使用される実行ファイル」の読み出しをハードディスクの回転数にかかわらず読み出すようにすることや,「前記駆動モーターが定常速度になる前は」前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出すようにすることも,「ファイル群」をコンピュータの起動時 転数にかかわらず読み出すようにすることや,「前記駆動モーターが定常速度になる前は」前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出すようにすることも,「ファイル群」をコンピュータの起動時に起動されるソフトウェアであるところのOSとした際には,当然に採用される技術常識的な事項にすぎない,②相違点3について,ディスクからの読み出しが駆動モーターが定常速度になった後でなければならないことは,当業者の技術常識であり,そのために当該駆動モーターが定常速度になったか否かを判断することも適宜に採用されている事項であるから,引用発明においても「前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,前記駆動モーターが定常速度になった後は」前記ディスクから必要なプログラムを読み出すようにすることも適宜に採用される技術常識的な事項にすぎない旨を説示して,これらが容易に想到できるものであると判断した。 (2)しかしながら,本願発明は,フラッシュメモリーには消去・書き込み可能 回数に制限がある(引用例1【0005】【0042】)ことを前提として,フラッシュメモリーに保存されているOS起動プログラムの読み出しができない場合に,駆動モーターが定常速度になったか否かを確認して,これが定常速度になれば,メモリーフラッシュではなく,ディスクに保存・格納されているOS起動プログラムを「必要なプログラム」として第1番目に読み出してメインメモリーにローディングするものであり(本件明細書【0028】),フラッシュメモリーの不具合に対応できるコンピュータシステムの起動方法,コンピュータシステム及びハードウェアドライブを提供するものである。なお,本件明細書は,「OSプログラムのなかでシステムの起動に関する部分はハードディスクドライブの起動領域に保存する」旨を記載している ピュータシステム及びハードウェアドライブを提供するものである。なお,本件明細書は,「OSプログラムのなかでシステムの起動に関する部分はハードディスクドライブの起動領域に保存する」旨を記載している(【0024】)から,「必要なプログラム」に「OSの起動プログラム」が含まれるのは,明らかである。 すなわち,本願発明は,ディスクの駆動モーターが定常速度になったか否かの監視をして,所定のタイミングでフラッシュメモリーの不具合に対応できる制御装置を有する,OS及びOSの起動プログラムに特化した制御システムである。 他方,引用発明は,ハードディスクドライブなどの磁気ディスク装置と統合して互いの欠点を補う制御システムであって,対象がOSに限られず,また,ファイルの種類や使用頻度及びファイル管理方式によりハードディスクドライブとフラッシュメモリーの欠点を補う制御方法を実現しているのであって,本願発明とは全く異なる。また,引用例2ないし5に記載の発明は,いずれも,OS及びOSの起動プログラムに特化した本願発明の制御システムとは全く異なる。 (3)したがって,引用発明について,駆動モーターが定常速度になる前にはフラッシュメモリーからOSの起動プログラムを読み出すようにし,駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,駆動モーターが定常速度になった後にはディスクから必要なプログラムを読み出すようにすることは,適宜採用される技術常識的な事項ではなく,その旨を説示する本件審決は,誤りである。 (4)なお,本件明細書には,フラッシュメモリーの一過的な不良や不具合によ って読み出しに時間がかかり,読み出しが行えない場合は,駆動モーターが定常速度になる方が先になり,制御部が,ディスクに保存された「OSの起動プログラム」を読み出してメインメモリーに転送することにつ って読み出しに時間がかかり,読み出しが行えない場合は,駆動モーターが定常速度になる方が先になり,制御部が,ディスクに保存された「OSの起動プログラム」を読み出してメインメモリーに転送することについて示唆がある(【0007】)。また,仮に,本件明細書にこの点の示唆がないとしても,フラッシュメモリー等のアクセス制御において,当該フラッシュメモリーの不具合によりそこからの読み出しが行えない場合があることは,当業者に周知である(引用例1【0005】【0042】)。 〔被告の主張〕(1)本件明細書には,フラッシュメモリー等のアクセス制御において,当該フラッシュメモリーの不具合によりそこからの読み出しが行えない場合についての記載も示唆もない。 (2)前記のとおり,本願発明におけるディスクがOSの起動プログラムを必ず保存するものとは解釈できないから,このことを前提として,本願発明が「必要なプログラム」としてディスクから「OSの起動プログラム」を読み出す制御を行うものであるとの主張は,失当である。 また,本件明細書にはOSの起動プログラムをディスクに保存する旨の記載はあるものの,保存された当該起動プログラムの技術的意義や,当該起動プログラムをディスクからシステム本体にローディングすることについては,本件明細書に記載も示唆もない。すなわち,本件出願は,特願2002-22078号(乙1)を原出願とする分割出願であるところ,当該原出願にあっては,本願発明の当初明細書(甲1)には記載がある「駆動モーターが定常速度になった後,ディスクから起動プログラムを読み出すこと」が記載されていなかった。原告は,拒絶理由通知(甲16)がこの点を指摘して出願日の遡及を認めないとしたのに対して,手続補正書により,請求項の「前記ディスクに保存された前記起動プログラムが前記メ こと」が記載されていなかった。原告は,拒絶理由通知(甲16)がこの点を指摘して出願日の遡及を認めないとしたのに対して,手続補正書により,請求項の「前記ディスクに保存された前記起動プログラムが前記メインメモリにローディングされるようにする」との記載を「前記ディスクに保存された必要なプログラムが前記メインメモリにローディングされるようにする」と補正する ことで,本件出願の出願日を原出願の出願日に遡及させるようにしたものである(甲18)。したがって,本願発明にいう「必要なプログラム」を「OSの起動プログラム」と解釈することはできない。 むしろ,本件明細書には,フラッシュメモリーからシステム本体に起動プログラムをローディングし,駆動モーターが定常速度になるまで待ち合わせ,次いでディスクからシステム本体へ必要なプログラム及びデータをローディングする処理体制が示されているのみである(【0025】~【0028】【図3】)。 (3)また,フラッシュメモリーのメモリセルには消去・書き込みについて制限があることは,当業者の技術常識であるが,必ずしも当該メモリセルからの読み出しができなくなるとまではいえない。 そして,本願発明と引用発明とは,フラッシュメモリーに起動のために必要なものを保存する点では共通するところ,ディスクとは別に設けたフラッシュメモリーからのデータの読み出しがディスクの回転速度にかかわらず可能であることは,当業者には自明であるから(引用例1,周知例3),引用発明において駆動モーターが定常速度になる前にはフラッシュメモリーからOSの起動プログラムを読み出すようにすることは,格別なことではない。また,駆動モーターが定常速度になった後でなければディスクからの読み出しができないことは,当業者の技術常識であり,駆動モーターが定常速度になったか否 を読み出すようにすることは,格別なことではない。また,駆動モーターが定常速度になった後でなければディスクからの読み出しができないことは,当業者の技術常識であり,駆動モーターが定常速度になったか否かを判断することも,適宜採用されているから(引用例3,5),引用発明において駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,駆動モーターが定常速度になった後はディスクから必要なプログラムを読み出すようにすることは,格別のものではない。 (4)原告は,本願発明が,フラッシュメモリーからのOSの起動プログラムの読み出しを,駆動モーターが定常速度になったことをトリガにして,ディスクからのOSの起動プログラムの読み出しに切り替えるものであるかのように主張する。 しかしながら,前記のとおり,本願発明のディスクがOSの起動プログラムを必ず保存するものとは解釈できない。また,本件明細書には,フラッシュメモリーか らシステム本体に起動プログラムをローディングし,次いで駆動モーターが定常速度になるまで待ち合わせ,次いでディスクからシステム本体へ必要なプログラムをローディングする処理体制が記載されているのみで(【0025】~【0028】【図3】),ローディング中に駆動モーターが定常速度に達した場合に,即刻ディスクからの必要なプログラムのローディングに移行するという構成が記載されていない。したがって,本願発明の「前記駆動モーターが定常速度になった後は」との構成は,駆動モーターが定常速度に達した場合に即刻移行する状態のみに限定されるものではなく,定常速度になってからの継続した状態をも包含し,フラッシュメモリーからのOSの起動プログラムの読み出しを継続する構成を排除するものと解釈することはできない。 仮に,本願発明が,駆動モーターが定常速度になると,起動プログラムをそ た状態をも包含し,フラッシュメモリーからのOSの起動プログラムの読み出しを継続する構成を排除するものと解釈することはできない。 仮に,本願発明が,駆動モーターが定常速度になると,起動プログラムをそれまで読み出していたフラッシュメモリーではなく,ディスクから読み出す構成を採用しているとすると,フラッシュメモリーは,駆動モーターが定常速度になるまでの間だけ起動プログラムの読み出しのために用いられることになり,フラッシュメモリーの最低限必要な容量は,その間に読み出せるデータ量により定まることになるはずである(引用例5【0051】)。しかし,本件明細書は,フラッシュメモリーの容量をOSの起動プログラムのサイズにより定めている(【0023】)。したがって,本件明細書は,まずOSの起動プログラムをフラッシュメモリーから読み出し,その完了後に駆動モーターが定常速度になったことを確認した後で,ディスクからOSの起動プログラム以外の必要なプログラムを読み出すことを想定していると解釈するのが普通である。 また仮に,原告の主張のとおり,本願発明においてディスクから読み出される「必要なプログラム」が「OSの起動プログラム」を含み,かつ,駆動モーターが定常速度に達するとOSの起動プログラムがフラッシュメモリーからではなく,ディスクから読み出される構成が採用されているとしても,引用例5には,ハードディスクの回転速度が定常の回転速度になった状況において,データをそれまで読み 出していたバッファメモリからではなく,ハードディスクから続きのデータを読み出す制御を採用する趣旨の技術事項が記載されている(【0049】~【0050】)から,本願発明は,結局,当業者が容易に想到できるものである。 第4当裁判所の判断 取消事由1(一致点の認定の誤り)について(1)本 旨の技術事項が記載されている(【0049】~【0050】)から,本願発明は,結局,当業者が容易に想到できるものである。 第4当裁判所の判断 取消事由1(一致点の認定の誤り)について(1)本願発明について本願発明の要旨は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,その技術的意義等を明らかにするために本件明細書の発明の詳細な説明欄を参酌すると,同欄には概要次の記載がある。 ア一般のコンピュータシステムにおいては,電源が印加されると,中央処理装置(CPU)は,BIOS(BASICINPUTOUTPUTSYSTEM)を利用してPOST(POWERONSELFTEST)過程等を行ってから(【0002】),メインメモリーにローディングされたHDD(HARDDISKDRIVE)の起動領域に保存された起動プログラムを読み出してシステムを起動させる(【0003】)。しかし,BIOSがHDDの起動領域を読み出すためには,HDDのディスク駆動モーターが所定の回転速度に達する必要があるが(【0004】),そのためには時間が長くかかるのに加えて,BIOSがHDDの起動領域を読み出すのにも時間がかかるので,システムの起動に長時間を要するという問題がある(【0005】)。 イOSを始めとする全てのプログラムは,メインメモリーにローディングされなければCPUがこれを解読して実行することができないが(【0013】),本願発明は,前記第2の2に記載の構成を採用し,HDDが所定の回転速度に達する前に,起動プログラムを本体に転送することができる非揮発性メモリ(フラッシュメモリー)を設けることで,電源の印加後,HDDの駆動モーターが定常速度になる時まで待つ必要がなく,HDDの起動時間を短縮することが可能なコンピュータシステムを提供する目的を達成するもの フラッシュメモリー)を設けることで,電源の印加後,HDDの駆動モーターが定常速度になる時まで待つ必要がなく,HDDの起動時間を短縮することが可能なコンピュータシステムを提供する目的を達成するものである(【0006】~【0008】【0010】【0011】【0027】)。 ウ本願発明のHDDは,HDDを全体的に制御する制御部として機能するマイコンを備えている(【0014】【0020】)。マイコンは,OS(オペレーティングシステム)をインストールする時に起動プログラムをディスクの起動領域に保存してから,これをフラッシュメモリーに保存させ(【0020】【0024】【0025】),システムが起動される時には,駆動モーターが定常速度になったか否かを判断して,定常速度にならないと判断すると,フラッシュメモリーに保存された起動プログラムをシステムバスを通じてシステム本体に伝送してメインメモリーにローディングさせる(【0021】【0026】【0027】)。そして,マイコンは,駆動モーターが定常速度になれば,ディスクから必要なプログラム及びデータを読み出してシステム本体に伝送する。このようにして,本願発明では,電源が印加されてから起動プログラムを読み出すのにかかる時間を短縮することができる(【0028】)。 (2)引用発明について他方,引用発明は,前記第2の3(2)アに記載のとおりであるが,引用例1には,引用発明について概要次の記載がある。 ア従来の不揮発性記憶装置では,ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を使うと速度が遅いなどの問題がある一方,フラッシュメモリーなどの不揮発性半導体装置を使うと書換え回数に限度があるなどの問題があり,また,これらの各装置が別々のドライブユニットとして実現されているので,別々のデータ管理が必要となり,これ フラッシュメモリーなどの不揮発性半導体装置を使うと書換え回数に限度があるなどの問題があり,また,これらの各装置が別々のドライブユニットとして実現されているので,別々のデータ管理が必要となり,これらのドライブユニットにまたがって1つのソフトを記憶することが実際上困難であった(【0011】)。なお,フラッシュメモリーでは,1つのメモリセルあたりの書換え可能な回数は,100万回程度である(【0005】)。また,従来のコンピュータでは,不揮発性記憶装置として,フロッピーディスクドライブ,ハードディスクドライブ及びフラッシュメモリードライブが用いられている(【0006】【0007】【図9】)。 イそこで,引用発明は,単一のドライブ番号で割り当てられる1つのドライブ ユニットの中にフラッシュメモリーなどの半導体ディスク装置と磁気ディスク装置とを設け,両者に選択的にアクセスできるようにすることで,各装置の互いの欠点を補えるようになると共に,1つのディスクドライブと同様に両者のデータ管理を行うことが可能とするものである(【0013】~【0015】)。例えば,あるプログラムを構成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用されるファイルが書き込み対象ファイルであれば,それを半導体ディスク装置に格納することで,高速アクセスが可能となる(【0019】)。 ウ引用発明の実施形態としては,ハードディスクとフラッシュメモリーが1つのドライブ番号が割り当てられた統合ドライブユニットとして実現され(【0020】),フロッピーディスクドライブとは別に名付けられるが(【0021】【図1】),例えば1つのソフトウェアをハードディスクドライブとフラッシュメモリーとにまたがって格納する場合には,データ読み出し速度の早いフラッシュメモリーにはそのプログラム起動時に使用 0021】【図1】),例えば1つのソフトウェアをハードディスクドライブとフラッシュメモリーとにまたがって格納する場合には,データ読み出し速度の早いフラッシュメモリーにはそのプログラム起動時に使用されるファイルが格納され,それ以外のファイルについては記憶容量の大きいハードディスクドライブに格納される。これにより,そのプログラムの起動を高速に行うことが可能となる(【0025】【0035】)。 エ引用発明のフラッシュメモリーコントローラは,フラッシュメモリーを制御してそれを半導体ディスク装置として動作させるためのエミュレーションを行うものであり,ハイブリッドコントローラを介してCPUから受け取ったディスクアドレスやディスクコマンドのアドレス変換やコマンド変換等を行う(【0029】)。 また,引用発明のハードディスクコントローラは,ハードディスクドライブに設けられているディスク,モータ及びヘッドなどの機械的な機構を制御するためのものであり,通常,ハードディスクドライブの一部として設けられている(【0030】)。そして,引用発明のハイブリッドコントローラは,CPUにより指定される単一のドライブ番号に応答してハードディスクコントローラとフラッシュメモリーコントローラの双方を統合制御するものであり,CPUから発行されるディスクアドレス及びディスクコマンドを選択的にハードディスクコントローラとフラッシュ メモリーコントローラに渡すほか,ハードディスクドライブとフラッシュメモリーのそれぞれの記憶領域の管理や記憶領域間のファイルの移動などの機能が設けられている(【0031】)。 (3)一致点の認定についてア本件審決が認定した本願発明と引用発明との一致点は,前記第2の3(2)イに記載のとおりであるところ,原告は,まず,引用発明の「不揮発性記憶装置」 る(【0031】)。 (3)一致点の認定についてア本件審決が認定した本願発明と引用発明との一致点は,前記第2の3(2)イに記載のとおりであるところ,原告は,まず,引用発明の「不揮発性記憶装置」がフロッピーディスクドライブも含んでいることから,これと本願発明の「ハードディスクドライブ」とが対応していない旨を主張する。 しかしながら,前記(2)に認定のとおり,引用発明は,単一のドライブ番号で割り当てられる1つのドライブユニットの中に,いずれも不揮発性記憶装置である半導体ディスク装置(フラッシュメモリー)と磁気ディスク装置(ハードディスク)とを設け,両者に選択的にアクセスできるようにすることで,各装置の互いの欠点を補えるようにするなどしたものであって,引用例1に記載の実施例において磁気ディスク装置の一種であるフロッピーディスクドライブを統合ドライブユニットと別に設けたからといって,フラッシュメモリー及びハードディスクが不揮発性記憶装置ではなくなるというものではない。したがって,統合ドライブユニットを構成するフラッシュメモリーとハードディスクの総体を「不揮発性記憶装置」と認定し,これが,磁気記憶装置であるハードディスクと半導体記憶装置であるフラッシュメモリーとを備える本願発明の「ハードディスクドライブ」に対応するとした本件審決の認定に誤りはない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 イ原告は,プログラムとOSとは一致しないから,引用発明の「あるプログラムを構成するファイル群」と本願発明の「OS」とが対応しておらず,また,保存される対象を異にするから,引用発明の「フラッシュメモリ」と本願発明の「フラッシュメモリー」とが対応していない旨を主張する。 しかしながら,前記(2)イに認定のとおり,引用例1には,あるプログラムを構 成するフ するから,引用発明の「フラッシュメモリ」と本願発明の「フラッシュメモリー」とが対応していない旨を主張する。 しかしながら,前記(2)イに認定のとおり,引用例1には,あるプログラムを構 成するファイル群の中でそのプログラム起動時に使用されるファイルが半導体ディスク装置に格納される旨の記載がある(【0019】)ことに照らすと,引用発明の「あるプログラムを構成するファイル群」は,所定のプログラムを構成するファイルの集合を意味する一方,前記(1)イに認定のとおり,本件明細書には,OSを始めとする全てのプログラムは,メインメモリーにローディングされなければCPUがこれを解読して実行することができない旨の記載がある(【0013】)ことに照らすと,本願発明の「OS」もまた,プログラムであることが明らかである。また,引用発明の「フラッシュメモリ」と本願発明の「フラッシュメモリー」とでは,その格納する対象が,いずれも所定のプログラムを起動させるものであるという点で機能が共通しているばかりか,本件審決は,相違点1において,本願発明において格納されるプログラム(ソフトウェア)が「OS」である旨を別途認定しているから,一致点の認定に当たって,上記機能の共通性に基づき,引用発明の「あるプログラムを構成するファイル群」が本願発明の「OS」に,引用発明の「フラッシュメモリ」が本願発明の「フラッシュメモリー」に,それぞれ対応するとした本件審決に誤りはない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 ウ原告は,引用発明の「ハードディスクコントローラ」,「フラッシュメモリコントローラ」及び「ハイブリッドコントローラ」には本願発明の「制御部」のような記載や示唆がないから,これらが本願発明の「制御部」に対応していない旨を主張する。 しかしながら,前記(2)イ及びエに認定 ントローラ」及び「ハイブリッドコントローラ」には本願発明の「制御部」のような記載や示唆がないから,これらが本願発明の「制御部」に対応していない旨を主張する。 しかしながら,前記(2)イ及びエに認定のとおり,引用発明の「ハードディスクコントローラ」等は,いずれも,CPUにより単一のドライブ番号でハードディスクドライブの記憶領域とフラッシュメモリーの記憶領域を選択的にアクセスすることができるようにするものである一方,本願発明の特許請求の範囲に記載のとおり,本願発明の「制御部」は,「前記駆動モーターが定常速度になる前は,前記フラッシュメモリーから前記OSの起動プログラムを読み出して前記メインメモリにロー ディングし,前記駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,前記駆動モーターが定常速度になった後は,前記ディスクから必要なプログラムを読み出して前記メインメモリにローディングする」機能を備えたものであるから,両者は,いずれもディスク及びフラッシュメモリーに記憶されたプログラムを読み出すための制御に関するものであるという点で機能が共通しているばかりか,本件審決は,駆動モーターが定常速度になる前はフラッシュメモリーからOSの起動プログラムを読み出している点及び駆動モーターが定常速度になったか否かを判断し,駆動モーターが定常速度になった後はディスクから必要なプログラムを読み出している点を,それぞれ別途相違点2及び3として認定している。したがって,一致点の認定に当たって,上記機能の共通性に基づき,引用発明の「ハードディスクコントローラ」等が本願発明の「制御部」に対応するとした本件審決に誤りはない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 取消事由2(相違点を看過した誤り)について(1)原告は,本願発明のディスクに保存される「OS」にはO 「制御部」に対応するとした本件審決に誤りはない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 取消事由2(相違点を看過した誤り)について(1)原告は,本願発明のディスクに保存される「OS」にはOSの起動プログラムが含まれることが自明である一方,引用発明のフラッシュメモリーに保存されるプログラム起動時に使用されるファイルがハードディスクには保存されず,この点で本願発明と引用発明とが相違する旨を主張する。 (2)そこで検討すると,本願発明の特許請求の範囲の記載には,ディスクに保存される対象としては「OS」と記載されるにとどまり,OSのうちの起動プログラムを積極的に排除する記載がないばかりか,前記1(1)ウに認定のとおり,本件明細書には,本願発明のマイコンが,OS起動プログラムをディスクの起動領域に保存してからこれをフラッシュメモリーに保存させる旨を記載している(【0020】【0024】【0025】)ことに照らすと,本願発明の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明欄は,いずれも,HDDのディスクに保存される「OS」にその起動プログラムが含まれる実施形態を開示しているということができる。 (3)しかしながら,原告は,本件の分割出願以来,本願発明の請求項の記載においてフラッシュメモリーの保存対象としてコンピュータシステム又はOSの起動プログラムを特定している一方,分割出願当時の本願発明の請求項の記載ではディスクの保存対象について特定をしていなかったところ(甲1【請求項3】),その後,ディスクの保存対象を「コンピュータシステムのOS」と特定し(甲9【請求項4】),更に「コンピュータシステムのOSと前記OSの起動プログラム」と特定し直したものであって(甲12【請求項3】),以後,これを踏襲していたものであるが(甲15【請求 S」と特定し(甲9【請求項4】),更に「コンピュータシステムのOSと前記OSの起動プログラム」と特定し直したものであって(甲12【請求項3】),以後,これを踏襲していたものであるが(甲15【請求項2】,甲18【請求項2】,甲22【請求項2】),拒絶理由通知書において,起動プログラムが不揮発性保存部(フラッシュメモリー)に保存されるのであれば技術常識から見れば起動プログラムをディスクに保存する必要はないと考えられるし,本件明細書には「OSの起動プログラムを保存するディスク」との発明特定事項の必要性やその作用効果についての説明が見当たらない旨を指摘されるや(甲23),本願発明の特許請求の範囲から,「OSの起動プログラムを保存するディスク」との発明特定事項を自ら削除したものである(甲25【請求項2】)。 (4)また,原告は,本件の原出願以来,本願発明の特許請求の範囲の記載において,駆動モーターが定常速度になった後に制御部がディスクから読み出される対象について何ら触れておらず,当初明細書の発明の詳細な説明欄では,「必要なプログラム及びデータを読み出してシステム本体に伝送する」旨の記載があるにとどまっていた(乙1【0027】)。そして,原告は,本件の分割出願後,本願発明の特許請求の範囲の記載として,「前記駆動モーターが定常速度になった後に,前記ディスクに保存された前記起動プログラムが前記メインメモリにローディングされるようにする」旨の付加したものの(甲12【請求項3】),拒絶理由通知書において,明細書には上記の記載があるだけで当該付加部分に係る事項が記載されておらず,当該事項を読み出すことを導き出すことができないから,分割の要件を満たさず,出願日の遡及を認めない旨の指摘を受けるや(甲16),当該付加部分のうち「起動プログラム」との文言を「必要 載されておらず,当該事項を読み出すことを導き出すことができないから,分割の要件を満たさず,出願日の遡及を認めない旨の指摘を受けるや(甲16),当該付加部分のうち「起動プログラム」との文言を「必要なプログラム」に自ら変更したものである (甲18【請求項2】)。なお,被告は,これを受けて,同年3月5日の拒絶査定の備考欄において,出願日の遡及を認める旨を記載している(甲19)。 (5)以上の手続経過に鑑みると,原告は,拒絶査定を避けるべく,本願発明の特定に当たりディスクに保存される対象からOSの起動プログラムを排除した(前記(3))ほか,分割出願の要件を満たして出願日を遡及させるべく,駆動モーターが定常速度になった後に制御部がディスクから読み出す対象からOSの起動プログラムを除外した(前記(4))ものと認められる。 そして,他に本願発明の特許請求の範囲の記載中にはディスクの保存対象としてOSの起動プログラムが含まれると解するに足りる記載が見当たらないことも併せ考えると,本願発明の解釈に当たり,ディスクにOSの起動プログラムが保存されていないものと認定し,引用発明との関係で相違点を認定しなかった本件審決に誤りがあるとまではいえない。 (6)また,本願発明は,前記1(1)イに認定のとおり,OSの起動プログラムをフラッシュメモリーに格納して読み出すことで,駆動モーターが定常速度になる時まで待たずに,HDDの起動時間を短縮するものである(本件明細書【0006】~【0008】【0010】【0011】【0027】)一方,引用発明も,前記1(2)ウに認定のとおり,データ読み出し速度の速いフラッシュメモリーにプログラム起動時に使用されるファイルを格納することで,そのプログラムの起動を高速に行うものである(引用例1【0025】【0035】)。したがって とおり,データ読み出し速度の速いフラッシュメモリーにプログラム起動時に使用されるファイルを格納することで,そのプログラムの起動を高速に行うものである(引用例1【0025】【0035】)。したがって,本願発明及び引用発明は,いずれもプログラム起動時に使用される実行ファイルがフラッシュメモリーに保存されていることで起動時間を短縮するという効果が得られる点で共通するから,仮に本願発明においてOSの起動プログラムが,フラッシュメモリーのほか,ハードディスクに保存されていたからといって,このことが引用発明との相違点となり,更には容易想到性の判断に影響するものではない。 したがって,原告の前記主張は,採用できない。 (7)なお,原告は,本願発明の「マイコンは,フラッシュメモリーに起動プロ グラムが保存されたか否かを確認してフラッシュメモリーに起動プログラムが保存されない場合,ディスクに保存された起動プログラムをフラッシュメモリーに保存する」(本件明細書【0025】)ものであるのに,本件審決がこの点を相違点として認定していない誤りがある旨も主張する。 しかしながら,この点は,本願発明の特許請求の範囲に記載されていないから,原告の上記主張は,それ自体失当である。 取消事由3(相違点2及び3についての判断の誤り)について(1)原告は,本願発明ではフラッシュメモリーには消去・書き込み可能回数に制限があることを前提として,駆動モーターが定常速度になればディスクに保存されているOSの起動プログラムを「必要なプログラム」として読み出すことにより,フラッシュメモリーの不具合に対応できるものであり,引用例1ないし5に記載の発明とは全く異なるものであり,本件審決がこの点についての判断を誤っている旨を主張する。 (2)しかしながら,前記2(4)に認定のとおり リーの不具合に対応できるものであり,引用例1ないし5に記載の発明とは全く異なるものであり,本件審決がこの点についての判断を誤っている旨を主張する。 (2)しかしながら,前記2(4)に認定のとおり,原告は,分割出願の要件を満たして出願日を遡及させるべく,駆動モーターが定常速度になった後に制御部がディスクから読み出される対象からOSの起動プログラムを除外したものであって,現に,本件明細書にも,「必要なプログラム」にOSの起動プログラムが含まれると認めるに足りる具体的な記述はない。 次に,前記1(2)アに認定のとおり,フラッシュメモリーの書換え可能な回数には制限があることが技術常識である(引用例1【0005】)としても,本件明細書には,本願発明の作用効果としてこのようなフラッシュメモリーの不具合に対応する旨に関する記載がない。 なお,原告は,本件明細書【0007】には,この点についての示唆がある旨を主張するが,本件明細書の当該箇所は,本願発明(前記第2の2)の記載それ自体を上回るものではなく,原告の主張するような示唆は,見当たらない。 したがって,原告の前記主張は,その前提を欠く。 (3)むしろ,引用例1は,前記1イ及びウに認定のとおり,データ読み出し速度の速いフラッシュメモリーにあるプログラム起動時に使用されるファイルを格納することで,当該プログラムの起動を高速化するものであるばかりか,引用例2は,「データ記憶システム及び同システムに適用するキャッシュ制御方法」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,磁気ディスク装置(HDD)と半導体ディスク装置(フラッシュメモリー)とからなるコンピュータシステムのデータ記憶システムにおいて(【0001】),OSの起動に必要な起動情報を半導体ディスク装置の恒久的保存領域に保存し(【0 と半導体ディスク装置(フラッシュメモリー)とからなるコンピュータシステムのデータ記憶システムにおいて(【0001】),OSの起動に必要な起動情報を半導体ディスク装置の恒久的保存領域に保存し(【0009】),OSの起動時に当該起動情報にアクセスすることにより,OSの起動が高速化できることが開示されている。 そして,駆動モーターが定常速度になる前には,HDDからプログラムを読み出すことができないことは,技術常識であるから,引用例1及び2には,フラッシュメモリーにOSの起動プログラムを保存することで,駆動モーターが定常速度になる前からその読み出しを行い,もってOSの起動を高速化することについて示唆があるといえる。 したがって,当業者は,引用発明に基づき,引用例2の記載を参照することで,本願発明の相違点2に係る構成を採用することを容易に想到することができたものといえる。 (4)また,引用例3は,「ディスク記憶装置の起動およびデータ読み書き方法」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,計算機の起動方法において,電源投入後,ディスク記憶装置は,ディスクの回転数が正規の値に整定したことを確かめ,ディスクに記憶された設定データを読み取った上で,計算機に準備完了を報告し,計算機は,報告を受けた後,ディスク記憶装置にアクセスしてOS等の基本プログラムを読み取ること(【0003】【0005】)及びディスク記憶装置に不揮発性メモリを組み込み,そこに設定データをあらかじめ格納しておき(【0012】【0019】),ディスクの起動完了を待つ動作と平行して設定データを読み込むことにより,計算機の起動時間を大幅に減少させること(【0012】 【0021】【0022】)が記載されている。そして,引用例5は,「ディスク装置」という名称の発明に関する公 定データを読み込むことにより,計算機の起動時間を大幅に減少させること(【0012】 【0021】【0022】)が記載されている。そして,引用例5は,「ディスク装置」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,ハードディスク装置(HDD)において,電源が立ち上げられた後,HDDが記録再生可能な回転速度に立ち上がったか否かを判断し,回転速度が定常の回転速度に立ち上がるのを待ってデータの読み出しを開始すること(【0043】【0044】)が記載されている。 このように,ディスクからのプログラム等の読み出しは,駆動モーターが定常速度になった後でなければならないことは,技術常識であって,そのために駆動モーターの回転速度が定常速度になったか否かを判断することについては,複数の公開特許公報に記載があるように,当業者の周知技術であるといえる。 したがって,当業者は,引用発明に基づき,引用例3及び5の記載を参照することで,本願発明の相違点3に係る構成を採用することを容易に想到することができたものといえる。 (5)さらに,引用発明について本願発明の相違点2及び3に係る構成を採用したことによる効果が格別に顕著であると認めるに足りる証拠はない。 (6)よって,相違点2及び3について当業者が容易に想到できるとした本件審決の判断に誤りはない。 結論 以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官高部眞規子裁判官井上泰人 部眞規子 裁判官 井上泰人
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