令和7年5月8日宣告東京高等裁判所第4刑事部判決令和6年(う)第1389号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件 主文 本件各控訴を棄却する。 理由 第1 事案の概要と控訴の趣意 1 原判示の罪となるべき事実の要旨は、次のとおりである(以下、関係者の呼称、略称等は原判決の例によることがある。)。 被告会社は広告代理業等を営む事業者であり、被告人はその従業者等と して、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京大会」という。)に関し、テストイベント計画立案等業務委託契約等(組織委員会が競技、会場ごとに順次発注する各テストイベント計画立案等業務委託契約並びに同契約受注者との間で締結されることとされていた各テストイベント実施 等業務委託契約及び各本大会運営等業務委託契約からなるもの。)の受注等に関する業務に従事していたものであるが、被告人は、組織委員会大会準備運営第一局次長等としてその発注等の業務に従事していたB、被告会社を含む関係事業者7社の従業者として同様の受注等に関する業務に従事していた者等と共謀の上、関係事業者7社の業務に関し、平成30年2月頃 から同年7月頃までの間、面談等の方法により、テストイベント計画立案等業務委託契約等につき関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに、基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行うことなどを合意した上、同合意に従ってテストイベント計画立案等業務委託契約等についてそれぞ れ受注予定事業者を決定するなどし、も 業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行うことなどを合意した上、同合意に従ってテストイベント計画立案等業務委託契約等についてそれぞ れ受注予定事業者を決定するなどし、もって関係事業者7社が共同して、 同委託契約等の受注に関し、相互にその事業活動を拘束し、遂行することにより、公共の利益に反して同委託契約等の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。 2 控訴の趣意は事実誤認ないし法令適用の誤りの主張である。論旨は要するに、被告人とBらとの間には、不当な取引制限罪の成立を認めるために 必要な意思連絡がなく、被告会社は前記合意の枠外にあったし、競争は実質的に制限されていない上、前記取引分野に、テストイベント計画立案等業務のほかに、各テストイベント実施等業務及び各本大会運営等業務が含まれるかどうかには合理的な疑いがあるのに、前記のような事実を認定して被告会社及び被告人を有罪とした原判決には、事実誤認ないし法令適用 の誤りがある、というものと解される。 第2 原判決の概要原判決は原審弁護人の同旨の主張に対し、概略次のように説示した。 1 事実関係等⑴ 東京大会、組織委員会及び各事業者の概要、テストイベント業務の発注 方式の決定経緯、Bらの面談等の経緯等ア東京大会では、本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において、競技や会場ごとに競技運営、会場運営等のテストイベントを行うこととされていた。テストイベント業務は、テストイベント計画立案等業務(以下「計画業務」又は「本件計画業務」という。)とテストイベン ト実施等業務(以下「実施業務」又は「本件実施業務」という。)とに分けられ、入札の単位となった会場、競技の案件(以下「会場案件」という。)ごと 」又は「本件計画業務」という。)とテストイベン ト実施等業務(以下「実施業務」又は「本件実施業務」という。)とに分けられ、入札の単位となった会場、競技の案件(以下「会場案件」という。)ごとに発注されたが、計画業務については入札により、実施業務及び本大会運営等業務(以下「本大会業務」又は「本件本大会業務」という。)は随意契約により発注された。なお、組織委員会における物品、役務等の調達 は、原則として競争入札により、それ以外の方法によって調達するには例 外的な場合に当たる必要があるとされていた。 イ Bは組織委員会内で、テストイベントに関連する業務を担当するテストイベントマネジメント課が置かれていた大会準備運営第一局の次長として、テストイベントに関する業務の発注に中心的に関与していた。被告会社は国内でも有数の広告代理店として競技大会の運営等を行っており、本 件当時、その関連会社や子会社と連携して東京大会に関する事業に当たっていた。株式会社C(令和元年12月31日以前の商号は株式会社D)は国内で圧倒的に最大手の広告代理店として競技大会の運営等を行っており、東京大会でも組織委員会からマーケティング専任代理店に選定され、従業者を同委員会の幹部職員として出向させるなど東京大会全体の運営 に対し大きな影響力を有していた。関係事業者7社、すなわち、両社のほか、広告代理店である株式会社E(平成30年7月16日以前の商号は株式会社F)及びA社、イベントの企画、運営等を行う事業者である株式会社G、株式会社H及び株式会社Iは、経験やノウハウ等に応じ、それぞれ競技大会の運営等を得意とする競技、会場があり、国内でスポーツ競技大 会の運営等を行うことのできる実績、能力のある事業者はこれらをはじめとする一定の範囲の事業者 験やノウハウ等に応じ、それぞれ競技大会の運営等を得意とする競技、会場があり、国内でスポーツ競技大 会の運営等を行うことのできる実績、能力のある事業者はこれらをはじめとする一定の範囲の事業者に限られていた。 ウ Bは平成29年7月頃から、テストイベントの実施が遅延する中で検討した結果、各競技について競技大会の運営の実績等を有する事業者を確保するためには、随意契約により発注する必要があると考えた。同年10月、 財務の責任者らに、テストイベント業務の委託先事業者の選定は本大会を見据え、テストイベント及び本大会の準備、実施を遂行できる十分な制作能力等がある事業者を選定するため随意契約により発注することが適当であるなどと説明し、組織委員会内部での調整を進めたが、平成30年1月11日には、テストイベント業務のうち原判示別表記載の会場案件に係る 本件計画業務については、委託先事業者を総合評価方式の入札によって選 定することなどが事実上決定され、同年3月15日には組織委員会の経営会議で、本件計画業務を入札によって発注することが決定された。その場でBは、本大会に向けては別途検討するが、当然本大会を見据えてのテストイベントであるから、基本的には同じ事業者でいくことを考えている旨発言し、事務総長も、テストイベントと本番の委託業者は基本的には一致 しないと意味がないなどと発言した。この後、事業者決定基準が作成され入札の際に公表されたが、技術点中の一部は「対象競技テストイベント事業実施における予算計画の管理手法及び本大会コスト最適化に向けた提案」に当てられた。これはテストイベントのノウハウを生かす観点から、テストイベントの実施業務及び本大会業務を計画業務の受注事業者に随意契約 で委託する方針であったところ、計画業務 化に向けた提案」に当てられた。これはテストイベントのノウハウを生かす観点から、テストイベントの実施業務及び本大会業務を計画業務の受注事業者に随意契約 で委託する方針であったところ、計画業務の発注の段階で、その後の業務委託に関する価格を安くできる仕組みを導入するために決定されたものであった。 エ Bは、入札により本件計画業務が発注されることになったことを受け、東京大会の運営等を遺漏なく行うためには、各事業者に受注してもらいた い競技を伝えたり、その意向を取りまとめたりなどして調整を行うことが必要と考え、平成30年1月25日及び同月30日、Cの従業者らと打ち合わせ、BやCの従業者らで、Cを除く関係事業者7社を含む複数の事業者の従業者らと面談等を行うこととした。 ⑵ 被告会社関係者とBらとのやり取り等 ア被告人は平成29年9月以前に、Cの執行役員から、東京大会の運営はC1社では対応できない旨聞いていた。同月20日には部下のJと共に、同年10月31日には部下のK及びJと共に、テストイベントを含む東京大会の運営等についてBと面談するなどした。さらに、同年11月20日には、Jと共にCのL及びMと面談し、Mに対し、被告会社が受注可能な 競技として、自転車競技、自転車ロードレース、ホッケー、スポーツクラ イミング、バドミントンと伝えた。被告人は平成30年3月2日、K及びJと共にBと面談し、被告会社が受注を希望する競技として、自転車競技、バドミントン、スポーツクライミング、ホッケー、野球を挙げた。Bは、自転車競技とホッケーについてはいいですねなどと返答したが、バドミントンにつきE、スポーツクライミングにつきCを挙げ、野球はどの事業者 でもできるという趣旨の返答をした。この日までの打合せで、Bから被告 技とホッケーについてはいいですねなどと返答したが、バドミントンにつきE、スポーツクライミングにつきCを挙げ、野球はどの事業者 でもできるという趣旨の返答をした。この日までの打合せで、Bから被告人らに対し、本件計画業務が入札により発注される可能性があること、これを受注した事業者がその後の実施業務や本大会業務を受注することが望ましい旨伝えられた。 イ被告人はこの面談を受け、スポーツクライミングの会場案件に関し、平 成30年3月9日又は同月30日、Lに被告会社が同会場案件の計画業務を受注したいと伝え、協業の協議をした。被告人は翌4月頃、Jから本件計画業務が入札により発注されることに決まったと聞き、Bと面談し、Bからスポーツクライミングについて、CとJVを組むかCから再委託を受けたらどうかとの提案を受け、入札参加締切日の前後を通じて協議を継続 した。このように同締切日の時点では協業の調整が整っていない中、被告会社はこれがまとまらなかった時のことを考え、入札に一旦参加したが、最終的にCから再委託を受けることで協議がまとまったため入札を取り下げた。 ウ被告会社の子会社の社長であるNは、平成30年5月頃被告人から、組 織委員会はある程度会場案件ごとに受注させたい業者を決めており、バドミントンについてBがEに担当させるつもりである旨聞き、Eとの協業を検討し被告人やJとも相談した。被告人は同月31日、Bにバドミントンの受注希望を伝えた上で、EとJVを組むか再委託を受けるように動いてもいいかと質問するなどした。Nの部下がEと協業の交渉を行ったが断ら れ、その後被告会社としてバドミントンに関し入札に参加したものの、E が落札した。 エ野球については、Jが被告会社として入札したいと考え、Nに賛同を促すメ 交渉を行ったが断ら れ、その後被告会社としてバドミントンに関し入札に参加したものの、E が落札した。 エ野球については、Jが被告会社として入札したいと考え、Nに賛同を促すメールを送ったが、NはCと被告人とが話をしている関係の中で大丈夫かなどと返信した。結局、Jは平成30年7月5日、自らの判断で入札に参加し、その旨を被告人に事後報告するとともに、CのMに野球も記念受 験することにしたなどと伝えたが、結局Cが落札した。テニスについては、被告人らからBに対し、被告会社として受注を希望する旨伝えていなかったが、Jがその運営等に携わりたいと考え入札に参加した。Jは同月6日、被告人にその旨報告したが体制を整えることができず、同月19日被告人の了解も得て入札を取り下げた。 オホッケーについては平成30年4月17日にも、Bから被告会社がホッケーの国内競技団体と関係性が良いことを再確認されていた。被告会社は入札に参加したものの、他の事業者も応札しているのではないかと考え、先に提出していた参考見積よりも低額の見積書を提出するなどし、結局被告会社が落札した。自転車競技についても同様に、被告人らは同日、Bか ら被告会社がやってもらっていい旨言われるなどしており、入札に参加した上、先に提出していた参加見積よりも低額の見積書を提出するなどし、被告会社が落札することとなった。ボクシングについては、被告人らは同日Bから、受注希望の有無を聞かれ希望しない旨伝えたがその後入札不調となり、被告人は同年12月、Bから受け手がいなくて困っているなどと して受注を依頼され、随意契約により受注した。 ⑶ 被告会社以外の各事業者とBらとのやり取りL、同じくCのOは、本件計画業務が入札により発注されることを認識しつつBと打合 ているなどと して受注を依頼され、随意契約により受注した。 ⑶ 被告会社以外の各事業者とBらとのやり取りL、同じくCのOは、本件計画業務が入札により発注されることを認識しつつBと打合せを行い、これを通じ、競技ごとに実績等を有する事業者を記載した一覧表が作成されるなどした。BやLは、平成29年12月か ら平成30年4月にかけて、関係事業者7社中の被告会社及びC以外の事 業者とも面談を進めた。その際Bは、入札参加を希望する会場案件を聴取し、望ましくなければ他の事業者の名前を挙げたり、協業先として望ましい事業者の名前を挙げたりし、Lは、組織委員会側の依頼で事業者の選定をしていることを伝えるなどした。各事業者はこれら面談等を通じて、Bから受注が望ましいとされたり協業先として望ましいとされたりした別の 事業者が挙げられた場合等には、受注に向けて当該別の事業者と打合せをするなどした。その上で、関係事業者7社のうち被告会社、H及びA社が、Bの意向に反した入札参加をしたことはあったが、その際A社は、その経緯等についてBに事前連絡をするなどしている。これらを除くと、関係事業者7社は、Bらの意向に沿って入札した。BやLらは並行して、各事業 者の実績や受注希望、Bの意向等を考慮して前記一覧表を修正するなどしており、平成30年4月2日には、それまでの面談等の結果を集約するなどしてその最終更新を行った。 ⑷ 入札結果等相当数の会場案件において、Bの意向に沿って関係事業者7社中では1 社のみの入札が行われ、その結果、全26会場案件中二つを除く24会場案件でBの意向に沿った事業者が受注し、そのうち16会場案件でBの意向に沿った事業者のみが入札に参加した。また計画業務の発注後、二つの競技を除き、計画業務の受 果、全26会場案件中二つを除く24会場案件でBの意向に沿った事業者が受注し、そのうち16会場案件でBの意向に沿った事業者のみが入札に参加した。また計画業務の発注後、二つの競技を除き、計画業務の受注事業者が、その会場案件の本件実施業務及び本件本大会業務を随意契約により受注した。入札により受注事業者が決ま った25会場案件についての入札金額を予定価格で除した落札率は、平均約65%であり、90%台が4件、80%台が2件、70%台が7件、60%台が3件、50%台が3件、40%台が1件、30%台が1件、20%台が4件であった。 2 争点に対する判断等 ⑴ 合意の有無について ア不当な取引制限罪が成立するには、複数の事業者間において、取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調を合わせるという意思の連絡が必要と解されるところ、これがあるというためには、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為 を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解される。 イ前記の認定事実によれば、被告人は平成30年3月2日までに、Bとの面談を通じて計画業務が入札により発注される可能性があること、Bにおいて受注が適切と考えている事業者があり、自転車競技、ホッケーは被告会社がそれである一方、バドミントン、スポーツクライミング、野球はそ うではなく、バドミントン、スポーツクライミングは他の会社が特定され、野球は特定されていないこと、Bは計画業務の受注事業者が本大会業務までを受注することが望ましいと考えていること等を認識したと認められる。 加えて、被告人らがBの立場、役割を認識していたことは明らかであるから、被告人ら ないこと、Bは計画業務の受注事業者が本大会業務までを受注することが望ましいと考えていること等を認識したと認められる。 加えて、被告人らがBの立場、役割を認識していたことは明らかであるから、被告人らはBの意向に沿って受注に向けた行動等をとることで、被告 会社が希望する競技に関するテストイベント業務や本大会業務の受注可能性が高まると認識したと認められる。さらに、被告会社以外の事業者の従業者らについても同様に認識していたと認められる。 ウその上で、被告人や他の事業者の従業者らは、BやCの従業者らとの面談等の内容等に照らし、それを通じて、Bが受注を適切と考えている他の 事業者の従業者らとも面談等を行ってその意向を示すなどしているであろうことを認識ないし予測していたことも認められる。そして、スポーツの競技大会の運営等を行っていた事業者にとって、他の同種事業者も東京大会に関連する運営等の業務を受注したいと考えていることは当然想定し得た。そうすると、被告人や他の事業者の従業者らは、他の同種事業者らが 受注の可能性を高めるため、Bの意向に沿って入札等に向けた行動等をと ることを相当程度の確実性をもって相互に予測していたと認められる。 エ以上を踏まえると、被告人らは、Bの意向に沿って受注に向けた行動等を行うことで、受注を希望する競技に関する業務について受注の可能性が高まると認識し、他の事業者もBの意向に沿って入札等に向けた行動等をとることを相当程度確実と予測した上で、Bの意向に沿って他の事業者と 調整を試みており、被告会社は遅くとも、被告人がBの意向に沿った形でスポーツクライミングに関する協業をCのLに持ち掛けた平成30年3月9日又は同月30日の段階(前記1⑵イ)で、相当程度の確実性をもって予測した他の事業者の 社は遅くとも、被告人がBの意向に沿った形でスポーツクライミングに関する協業をCのLに持ち掛けた平成30年3月9日又は同月30日の段階(前記1⑵イ)で、相当程度の確実性をもって予測した他の事業者の入札行動等に協調し、Bの意向に沿った入札等に向けた行動等を行う意思を有するに至っていたというべきである。その後、 前述のとおりスポーツクライミング、バドミントンに関し、調整を行っていることや他の事業者との協業の協議についてBの意向を確認するなどしている(前記1⑵イウ)ことも、このような認定を支える。 オ被告会社以外の事業者についても、遅くとも、BやLらにおいて事業者と面談等を行い、その結果を一覧表に最終的にまとめた平成30年4月2 日までには(前記1⑶)、相当程度の確実性をもって予測した他の事業者の入札行動等と協調して、Bの意向に沿った入札等に向けた行動等を行う旨の意思を有していたというべきである。 カ以上によれば、関係事業者7社の従業者が平成30年2月以降、B又はLらとの面談等を行うことにより、他の事業者がBの意向に沿った入札行 動等をとることを相当程度の確実性をもって相互に予測し、遅くとも同年4月2日までに、自らも他の事業者と歩調を合わせ、Bの意向に沿った入札行動等を行う意思を共有したといえる。このような事実関係に照らすと、関係事業者7社はBを介するなどして、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識し、暗黙のうちに認容したと評価することができ、他の 事業者との間で意思の連絡をしていたと認められ、関係事業者7社間で、 受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該事業者のみが入札を行うことなどを合意していたと認定できる(本件基本合意)。 キまた被告人は、Bがバドミントン等の会場案件について で、 受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該事業者のみが入札を行うことなどを合意していたと認定できる(本件基本合意)。 キまた被告人は、Bがバドミントン等の会場案件について適切と考える他の事業者を分かっていたから、Bが被告会社以外の事業者の従業者らにも意向を示すなどし、それら従業者らもBの意向に沿って行動することで受 注の可能性が高まると認識したことを、当然認識、予測していたと認められる。その上被告人も、関係事業者にとっての東京大会の意義を理解していたと認められるから、Bの意向を示されるなどした事業者の多くが、受注の可能性を高めるためBの意向に沿って行動する意思を有するに至ることも当然予測していたといえる。そうすると、関係事業者7社間で合意が あることにつき被告人の故意に欠けるところはない。 ⑵ 本件基本合意が参加事業者の事業活動を拘束するものといえるかについて本件基本合意に参加した事業者は、本来的には自由に入札に参加する会場案件を決し得るのに、まずはBの意向に沿った形で協議を行う必要があ るなど、これに制約された意思決定を行うことになるという意味で、その事業活動が事実上拘束されたことが明らかであるから、本件基本合意は参加事業者の事業活動を拘束するものであったといえる。 ⑶ 本件基本合意により一定の取引分野における競争が実質的に制限されたといえるかについて ア一定の取引分野における競争を実質的に制限するとは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、一定の入札市場において、入札に参加する事業者の範囲等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には、当該取り決めによって事業者らがその意思で、当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することが て、入札に参加する事業者の範囲等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には、当該取り決めによって事業者らがその意思で、当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態 をもたらすことをいうと解される。 イ本件基本合意は、関係事業者7社が入札行動等に関して、他の事業者と共に、競争機能を損なう協調的行動をとることを期待して形成されたものであり、これに参加した事業者は、本件計画業務の入札に参加した全11社のうち7社に及んでいること、日本有数の広告事業者である被告会社のほか、売上や事業規模等で他を圧倒し東京大会全体の運営に大きな影響力 を有していたCも参加していたことや、本件基本合意に参加した事業者が入札参加事業者に占める割合のほか、参加事業者の範囲、その規模等を考慮すれば、各事業者らがその意思で当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右できる状態をもたらし得るものであったといえる。 ウそして実際に、相当数の会場で本件基本合意の内容に沿い、Bの意向に沿った形で入札や協業の調整が行われ、入札結果も全26会場案件中24会場案件において、事前にBの意向に沿い受注が望ましいとされた事業者が受注するに至り、そのうち16会場案件については、受注が望ましいとされた事業者のみが入札に参加したこと、本件計画業務を受注した9社中、 本件基本合意と無関係に入札により受注したのは1社にとどまること等を考慮すれば、本件基本合意は事実上の拘束力をもって有効に機能し、前記アの状態をもたらしていたということができ、後述する一定の取引分野において競争を実質的に制限していたと認められる。被告人もLやBとの打合せを通じ、一定の範囲の事業者がBとの面談等を行っていたことは予測 状態をもたらしていたということができ、後述する一定の取引分野において競争を実質的に制限していたと認められる。被告人もLやBとの打合せを通じ、一定の範囲の事業者がBとの面談等を行っていたことは予測 していたと認められ、自らも本件基本合意に従って協業の調整等を行っていたから、本件基本合意が競争を実質的に制限するものと認識していたことは明らかである。 ⑷ 本件基本合意の対象である一定の取引分野の範囲についてテストイベントは本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技 会場で行うものであったから、組織委員会にとって、本件計画業務は本件 実施業務、本件本大会業務と同一の事業者が受注する一連のものと認識されており、この認識の下、本件計画業務が発注されたと認められ、本件基本合意の参加事業者においても、同合意をした際には、そのような一連のものとして同一の事業者が受注する可能性が高いことを前提としていたと認められる。各事業者の従業者がBやLとの面談で、計画業務の受注事 業者については、同業務の実施等に関し特に問題がなければ、同一の会場案件や競技に関するその後の実施業務及び本大会業務も受注することが望ましいなどと伝えられていたこともこれを裏付ける。そうすると、本件基本合意の対象には、本件計画業務に加え本件実施業務、本件本大会業務も含まれていたと認められる。 ⑸ 以上によれば、被告会社は、他の事業者と本件基本合意をして、これに従った個別調整行為により相互に事業活動を拘束、遂行し、他の事業者と共同して、各会場案件における計画業務、実施業務及び本大会業務の受注という一定の取引分野における競争を実質的に制限したと認められ、前記のとおりの不当な取引制限罪が成立する。 第3 当裁判所の判断 1 前記のよう ける計画業務、実施業務及び本大会業務の受注という一定の取引分野における競争を実質的に制限したと認められ、前記のとおりの不当な取引制限罪が成立する。 第3 当裁判所の判断 1 前記のような原判決の認定、判断には、論理則、経験則等に照らし不合理な点は見当たらない。以下、主な所論に鑑み補足して説明する。 2 原判決が事業者間に意思連絡及び基本合意があったと認めた点について所論は、最高裁判所の判例(最高裁平成22年(行ヒ)第278号同24 年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁)等によれば、不当な取引制限における意思連絡を認めるためには、直接的又は間接的コミュニケーションにより、人為的に、一定の競争回避行動をすることを互いに認識、認容し、これに歩調を合わせるという意思が相互に形成されたと認められる必要があるが、原判決はこの理解を誤って規範を定立していて判 例違反ともいえるものであり、本件では被告人が、被告会社として、他の事 業者との間で一定の競争回避行動をすることを認識、認容し、これに歩調を合わせるという意思を人為的かつ相互に通じ合ったと認められて初めて意思連絡があったといえるところ、このような意思連絡は認められないのにこれがあったとした原判決は不合理である、などと主張する。その具体的な理由は次のようなものである。①被告人が、Bからの情報によって入 札になる可能性とBに発注希望先があることを認識したとしても、そのことにより、被告会社が発注希望先になっていない会場案件について、Bが被告会社の入札を認めないと言っているとの認識には至らないから、被告人がBにおいて、競争回避の意図を有していると認識した根拠にはならない。②原判決は、被告人がBに発注希望先がありその意向をかなえれば受 注 を認めないと言っているとの認識には至らないから、被告人がBにおいて、競争回避の意図を有していると認識した根拠にはならない。②原判決は、被告人がBに発注希望先がありその意向をかなえれば受 注可能性が上がると認識したことで、Bに競争回避の意図があることを認識したとするが、あくまでも競争下における商慣習上当然の事情を指摘したものにすぎず、被告人がBにおいて、競争回避の意図を有していると認識した根拠にはならない。③被告人も被告会社も、Bの言動に関わらず獲得したい案件はその獲得を目指し続け、およそ他の事業者に譲る意思を有 していなかったから、被告人において、他の事業者も業務を受注したいと考えていると想定したとしても、他の事業者もBから発注希望先と伝えられたもの以外の案件には入札しないと相当程度の確実性をもって予測したことにはならないはずであり、事業者間で競争回避の意図を通じ合っているとの認識を持ち得たことにはならない。④組織委員会には被告会社から の出向者がおらず、被告会社には委託候補先の一覧表が共有されていなかったことや、被告人とB及びLとの面談時の状況、特にBが、Cとの関係が良くなく信頼できない被告会社には、競争回避の意図を明確に隠そうとしていたことなどに照らせば、被告人に意思連絡を認める余地がないことは明らかである。⑤談合事案における落札率はほとんどが90%となるのが 通常であるところ、本件で被告会社が入札に参加した案件の落札率が3 0%台から70%台までの間に低い水準でまだらに分布しているのは、競争回避行動の認識、認容がなく、歩調を合わせなかった被告会社が競争を誘発したことの証左といえる。 しかしながら、原判決の示した不当な取引制限罪の成立要件(前記第2の2⑴ア)は、要するに、意思連絡があ 行動の認識、認容がなく、歩調を合わせなかった被告会社が競争を誘発したことの証左といえる。 しかしながら、原判決の示した不当な取引制限罪の成立要件(前記第2の2⑴ア)は、要するに、意思連絡があったといえるためには、事業者が 直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動に関する行為を認識し、明示の合意又は暗黙の認容によりこれと互いに歩調を合わせる意思があることで足りるというものである。最高裁判所の判例等と同様の理解を示したものということができ、これに反するなどとの主張は当たらない。次に①についてみると、事業者らが互いに歩調を合わせるとの意 思を抱くのに、Bにおいてその希望する事業者以外の入札を認めないという意図を有しているとまで認識する必要はないといえるから、これが必要であるかのようにいう所論は前提を誤ったものというべきである。②についてみると、原判決は指摘のような認定はしておらず、所論は前提を誤っている。③についてみると、スポーツクライミングやバドミントンに関す るC、Eとの協業の調整状況(前記第2の1⑵イウ)だけをみても、被告人及び被告会社において、Bの言動と関係なくおよそ他の事業者に譲る意思がなかったなどと認められないことは明らかであり、所論は前提を欠くというほかない。この点所論は、自転車競技、ホッケー、テニス及び野球に関する被告会社の行動をみれば、Bの意向に反したり、Bの競争回避の 意図を認識せずに行ったりしたものであり、あるいは、他の事業者が競争を回避することを前提としないものであったことが明らかであるから、意思連絡があったと認める余地はない、などともいうが、そもそも全ての入札案件について互いに歩調を合わせる意思がなければ意思連絡が成立しないというものではないというべきである。また自転 かであるから、意思連絡があったと認める余地はない、などともいうが、そもそも全ての入札案件について互いに歩調を合わせる意思がなければ意思連絡が成立しないというものではないというべきである。また自転車競技、ホッケーに ついては、Bが被告会社による受注を適切と考えていた案件で被告人もそ の旨を伝えられていたし、野球については、Jが入札したいと言うのに対し、NはCとの関係を案じ、JもCのMに記念受験することにしたなどと伝えて、被告会社においてCと敵対する意思がないことを示している(前記第2の1⑵エオ)のであるから、これらの競技に関する被告人や被告会社の行動が意思連絡を否定する事情とはならない。④についてみると、組 織委員会に出向者がいたり一覧表が共有されたりしたなどの事実がないからといって、意思連絡の認定を妨げる事情にならないことは明らかである。また、Bと被告人らとの面談状況(前記第2の1⑵アイ)によれば、Bは競争を回避するためなどと明言はしていないだけで、被告会社の受注を許容できる競技と他の事業者の受注が望ましい競技とを明らかにし、後 者について、被告会社に他の事業者とJVを組むなどするよう提案しているのであるから、被告人において、それに完全に従うか否かはともかく、Bの意向を十分認識することはできたと認められる。さらに、Bや他の事業者の従業者らの検察官調書によれば、面談時のBの言動に関し、被告人ら被告会社の従業者に対するものと他の事業者の従業者らに対するもの とで特段の差異はなく、被告会社に対する信頼感等が内心ではどうであったにせよ、Bが被告会社に対し意向を明確に隠そうとしていたなどとはいえない。⑤についてみると、既に述べたように、およそ全ての入札案件について互いに歩調を合わせる意思が必要とされるも 心ではどうであったにせよ、Bが被告会社に対し意向を明確に隠そうとしていたなどとはいえない。⑤についてみると、既に述べたように、およそ全ての入札案件について互いに歩調を合わせる意思が必要とされるものではない上、被告会社は二つの案件について本件基本合意に反する入札をしたにすぎないか ら、所論指摘のような落札率を踏まえても、歩調を合わせない被告会社が競争を誘発したなどとは評価できない。 その他の所論を検討してみても、原判決が事業者間に意思連絡及び基本合意があったと認めた点に誤りはない。 3 原判決が一定の取引分野における実質的な競争制限があったと認めた 点について ア所論は、原判決はBの意向により受注が望ましいとされた事業者1社のみが入札した案件数と、当該事業者が受注するに至った案件数を重視しているが、オリンピック競技を対象とした本件での入札参加のハードルの高さから、入札に参加できる事業者自体が少ないため1社入札になることも不思議ではないし、発注者側のBが受注させたいと思う事業者が受注しや すいのは当然であって、いずれも直ちに競争の実質的な制限があったとの結論を導くような事情ではなく、むしろ本件基本合意は、26会場案件中8会場案件という約3分の1もの割合で、当事者である事業者らがその意思で落札者等をある程度自由に左右できる状態をもたらすことができていないことになるから、実質的な競争制限が生じたかどうかには著しく疑義 が残る、などと主張する。 しかしながら原判決(前記第2の2⑶イウ)は、本件基本合意に参加したCと被告会社の規模や影響力、これに参加した事業者が入札参加事業者に占める割合等を考慮するとともに、実際の落札結果も併せ考慮すれば、本件基本合意が拘束力をもって有効に機能していたと 本合意に参加したCと被告会社の規模や影響力、これに参加した事業者が入札参加事業者に占める割合等を考慮するとともに、実際の落札結果も併せ考慮すれば、本件基本合意が拘束力をもって有効に機能していたといえると判断したの であり、落札結果を重視しているわけではない。また本来、どの会場案件に入札するかは各事業者が自由に選択できるはずであるところ、26会場案件中約6割に上る16会場案件について、本件基本合意で受注が望ましいとされた事業者のみが入札したこと、本件計画業務を受注した9社中、本件基本合意とは無関係に入札で受注したのは1社にとどまること自体か ら、本件基本合意が拘束力をもって有効に機能していたと推認できるのであって、オリンピック競技の入札に参加できる事業者が限られていることや、8会場案件でBの意向に沿った事業者とそうではない事業者とが競合したことは、これを左右するような事情ではないというべきである。所論は採用できない(なお所論は、原判決は量刑の理由で、本件基本合意の競 争を制限する程度は必ずしも強くはないとしているところ、そうであれば 果たして実質的に制限されたと認定できるか疑問であるのに、このようなごまかしともいえる説示をしているのは、競争制限の理解を誤っているからである、などともいうが、競争制限の度合い、程度を観念することは当然可能であり、それが必ずしも強くないとした原判決の説示に何らの誤りもない。)。 イ所論は、原判決はボクシングの会場案件も本件基本合意の対象である一定の取引分野に含まれるとするが、その判断に当たっては本件基本合意の形成根拠に立ち戻るべきであり、その形成根拠は一覧表の最終更新(前記第2の1⑶)にあるところ、仮に本件基本合意に同案件も含まれるとすれば、その成立時点で一覧表 が、その判断に当たっては本件基本合意の形成根拠に立ち戻るべきであり、その形成根拠は一覧表の最終更新(前記第2の1⑶)にあるところ、仮に本件基本合意に同案件も含まれるとすれば、その成立時点で一覧表に記載されていたGが落札するとの合意が形成 されていたことになるのに、実際にはGの従業者は最終更新前からBに受注希望はない旨伝え、Gとして入札もしなかったのであるから、同案件については合意が成立していたと考える余地はない、などと主張する。 この点原判決は、原審弁護人の同旨の主張に対し、ボクシングも含む全ての会場案件は、関係事業者7社が他の事業者の入札行動等を予測し、そ れと協調する意思を形成するに当たり、その受注希望の有無等に関わらず、いわば不可分一体のものとなっていた旨説示し、ボクシングの会場案件も本件基本合意の対象と認められるとしたところ、本件基本合意の成立時点で、Gのみが入札を拒否していたにすぎず、被告会社を含む他の事業者もそのことを認識していなかった上、Gもボクシング以外の会場案件ではB の意向に沿って他の事業者らと歩調を合わせていたのであるから、原判決の判断は、こうした実態に沿った相当なものといえる。所論は、本件基本合意の形成根拠は一覧表の最終更新にあるのに、この観点から検討していないとして原判決を論難するが、原判決(前記第2の2⑴オカ)は、遅くとも最終的に一覧表をまとめた平成30年4月2日までには本件基本合意 が成立したとしており、一覧表の最終更新は基本合意の成立時期を示すも のとしているにすぎず、その形成根拠であるなどとはしていない。所論は当を得ないというべきである(なお所論は、原判決は量刑の理由で、ボクシングの会場案件を除いて被告会社の売上額を認定しており、一定の取引分野に同案件が ず、その形成根拠であるなどとはしていない。所論は当を得ないというべきである(なお所論は、原判決は量刑の理由で、ボクシングの会場案件を除いて被告会社の売上額を認定しており、一定の取引分野に同案件が含まれるとした判断とはやや不整合に見受けられる、などとも指摘するが、原判決は、被告会社が入札により受注した2つの会場案 件に関する費目に限ってみても、売上額は20億円を下らないと説示しており、いわば控えめに認定したにすぎないから、その判断、説示に不整合などない。)。 ウ所論は、原判決はテストイベントについて、組織委員会が本大会の運営能力向上のためのものと位置付けており、各事業者もそのつもりで入札し たとするが、これは単に取引通念上当然のことを説示しているにすぎず、それのみをもって、本件計画業務と本件実施業務、本件本大会業務とが一連一体であったと認定するのは困難なはずであるし、むしろ、計画業務を受注した事業者に実施業務や本大会業務も運営させたいとのBの意向が各事業者に共有されていたのであれば、各事業者はテストイベントに関して は利益率を度外視することができ、アウトサイダーの存在を懸念するのであれば、本大会業務の受注まで見越した赤字覚悟の入札ばかりをしたはずであるのに、実際はほとんどの事業者が、利益率を考慮した落札率で落札しているから本大会業務まで意識していたとは考えられない、などと主張する。 しかしながら、取引通念上当然のことでもあるからこそ、Bら組織委員会側も各事業者の従業者らも、テストイベントが実施業務及び本大会業務を受注させるに当たっての運営能力向上のためのものであるとの認識を共通にし、ひいては、本件計画業務と本件実施業務、本件本大会業務とが一連一体であるとの認識の下に各事業者らが互いに歩調を合わせるこ 務を受注させるに当たっての運営能力向上のためのものであるとの認識を共通にし、ひいては、本件計画業務と本件実施業務、本件本大会業務とが一連一体であるとの認識の下に各事業者らが互いに歩調を合わせることがで きたともいえるのであって、本件基本合意の対象に本件実施業務及び本件 本大会業務も含まれていたと認定した原判決の判断に誤りはない。また本件では、そもそも各事業者らが赤字覚悟の入札ばかりをしなければならないような状況があったとはうかがわれないし、本件基本合意が成立していたからこそ、各事業者らは赤字覚悟の入札をする必要はなかったともいえる。所論は採用できない。 エ所論は、テストイベントに関する契約が締結されてから本大会までは予定の上ですら約2年の開きがあり、本大会業務まで随意契約で発注できるか否かを本件基本合意時に決定するのは困難であったといわざるを得ないから、一定の取引分野には本件実施業務及び本件本大会業務を含まないと考えるのが自然かつ合理的である、などと主張する。 しかしながら、そもそもBは、既に決定されていた本大会の開催日程を踏まえた上で、本大会まで遺漏なく運営できるよう、各競技に関する業務を担わせるのに適した事業者に当該業務を受注させるべく調整を行うことを考えたのであり、各事業者の従業者らもそのことを認識していたと認められるから、本件本大会業務まで一定の取引分野に含まれるとした原判決 に誤りはない。 オ所論は、全契約完了後の令和元年12月頃から新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大が起き、その影響により本大会が延期されたところ、こうした事態を本件基本合意の成立時点で織り込むことはおよそ不可能であったから、延期に伴う業務が一定の取引分野に含まれるとした原判決は 不合理で 起き、その影響により本大会が延期されたところ、こうした事態を本件基本合意の成立時点で織り込むことはおよそ不可能であったから、延期に伴う業務が一定の取引分野に含まれるとした原判決は 不合理である、などと主張する。 しかしながら本件基本合意は、どの会場案件について、その計画業務から本大会業務までをどの事業者が受注するかという点に関し形成されたものであるから、各会場案件に関し延期に伴う何らかの業務が生じたとしても、基本的には当該会場案件を受注した事業者がそれを担うというもので あったとみるのが合理的である。そして現に、ほぼ本件基本合意の枠組み のとおりに、本件計画業務を落札した各事業者が本大会までの各業務を担ったとうかがわれる。原判決も同様の観点から、延期に伴う業務が本件基本合意の対象として一定の取引分野に含まれるとしたものと解され、その判断に誤りはない。 カその他の所論を検討してみても、原判決が一定の取引分野における実質 的な競争制限があったと認めた点に誤りはない。 4 ほかにも所論は、原判決には証拠上認定できない事実を認定した誤りや、本来認定して判断の基礎とすべき事実を認定しなかった誤りがあるなどとも主張するが、いずれも、所論を前提にしたとしても判決に影響を及ぼすものではなく、その余の主張を踏まえても、原判決の判断を動揺させるよ うなものは見当たらない。 論旨は理由がない。 第4 結論よって、刑訴法396条により、主文のとおり判決する。 令和7年5月8日 東京高等裁判所第4刑事部 裁判長裁判官家令和典 裁判官早川幸男 4刑事部 裁判長裁判官家令和典 裁判官早川幸男 裁判官安藤祥一郎
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