- 1 -平成28年11月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第29586号商標権等に基づく差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年9月8日判決 原告ティーダブリュージーティーカンパニーピーティーイーリミテッド 同訴訟代理人弁護士紺谷宗一同訴訟代理人弁理士杉村憲司 中山健一同補佐人弁理士藤本 一 被告株式会社ジュピターインターナショナルコーポレーション 同訴訟代理人弁護士山本忠雄 福本隆史 山崎道雄主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 - 2 -事実及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告標章目録記載の標章(文字及び図形部分。以下「被告標章」という。)を付した紅茶のティーバッグ(以下「被告商品」という。)を輸入し,販売してはならない。 2 被告は,被告商品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,9985万6680円及びこれに対する平成27年11月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告に対し,別紙謝罪広告目録記載1の内容の謝罪広告を,同目録記載2の要領で同目録記載3の新聞に1回掲載せよ。 第2 事案の概要本件は,別紙商標権目録記載の商標(以下「原告商標」という。)につき商標権を有する原告が,被告による被告標章を付した被告商品の輸入販売が上記商標権を侵害し,原告の商品等表示として周知又は著名な原告商標と同一の商品等表示を使用したものであって不正競争防止法2条1 き商標権を有する原告が,被告による被告標章を付した被告商品の輸入販売が上記商標権を侵害し,原告の商品等表示として周知又は著名な原告商標と同一の商品等表示を使用したものであって不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争に該当すると主張して,①商標法36条1項,2項又は不正競争防止法3条1項,2項に基づき(主位的に商標法,予備的に不正競争防止法に基づく。 以下同じ。)被告商品の輸入販売の差止め及び廃棄,②商標法39条,特許法106条又は不正競争防止法14条に基づき謝罪広告の掲載,③民法709条,商標法38条2項又は不正競争防止法4条,5条2項に基づき損害賠償金9985万6680円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日の翌日)である平成27年11月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者 - 3 -原告は,紅茶,菓子,ティーアクセサリーの販売等を行うシンガポール共和国において設立された法人である。 被告は,被服,飲食料品,雑貨等の輸入卸業及び不動産賃貸業を営む株式会社である。 ⑵ 本件商標権原告は,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」という。)を有している。 ⑶ 被告の行為被告は,本件商標権の登録日の後に,被告商品を輸入し,コストコホールセールジャパン株式会社に対して販売した。 2 争点なお,被告は,被告標章が原告商標と同一であること及び被告商品が本件商標権の指定商品に含まれることを争っていない。 ⑴ 被告の行為の不正競争該当性ア原告商標の周知性又は著名性イ混同のおそれ⑵ 並行輸入による権利侵害の違法性阻却事由該当性 品が本件商標権の指定商品に含まれることを争っていない。 ⑴ 被告の行為の不正競争該当性ア原告商標の周知性又は著名性イ混同のおそれ⑵ 並行輸入による権利侵害の違法性阻却事由該当性⑶ 過失の有無⑷ 損害額⑸ 差止め,廃棄及び謝罪広告の必要性 3 争点についての当事者の主張⑴ 争点⑴(被告の行為の不正競争該当性)について(原告の主張)ア原告商標の周知性又は著名性原告は,日本を含む世界の主要都市で営業を行っていることから,シンガポール共和国を代表する紅茶ブランドの一つとなっており,同国への日 - 4 -本人観光旅行者も非常に多いことから,原告商標は原告の商品等表示として日本の一般需要者の間に広く認識されているし,著名である。 イ混同のおそれ被告標章は原告商標と同一であるから,被告と原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品事業を含むグループに属する関係があると誤認させるおそれがある。 (被告の主張)否認ないし争う。原告商標の周知性又は著名性については基礎となる事実が何ら具体的に主張立証されていない。また,被告は被告商品を真正な並行輸入品として販売したにすぎないから,原告の主張する誤認のおそれはない。 ⑵ 争点⑵(並行輸入による権利侵害の違法性阻却事由該当性)について(被告の主張)被告商品は,原告からある第三者(以下「本件第三者」という。)に,本件第三者からアーバン・エクスポート・エスエー(以下「アーバン社」という。)に,アーバン社から被告に順次販売されることにより日本に輸入されたものであるから,被告商品に付された被告標章は,本件商標権を有する原告により適法に付されたものであり,かつ,原告商標と同一の出所を表示するものである。加えて,被告は,被告商品に具体的な変更 入されたものであるから,被告商品に付された被告標章は,本件商標権を有する原告により適法に付されたものであり,かつ,原告商標と同一の出所を表示するものである。加えて,被告は,被告商品に具体的な変更を加えることなく販売しているから,被告商品につき原告による品質管理を行い得る。したがって,被告商品の販売が本件商標権及び原告の主張する不正競争による営業上の利益の侵害に当たるとしても,違法性が阻却される。 原告は後記のとおり被告商品につき品質が損なわれると主張するが,被告は搬送用の段ボール箱に詰められた被告商品に何ら改変を加えずに透明なビニール袋に入れたにすぎない。原告の販売する商品が全て化粧箱に入れるなどの包装がされたものでないし,紅茶としての品質が変化するものでないから,原告の主張は失当である。 - 5 -(原告の主張)本件第三者が何者であるか不明である以上,被告商品に付された被告標章を原告が付したものであるかどうか,外国における商標権者と原告が同一人又はこれと同視できる者かどうかは分からない。原告が有する書類に基づけば,本件第三者は原告の真正商品の販売先のうち2社のいずれかであると推測されるが,被告はこれを明らかにしない。 また,原告が販売する真正商品はティーバッグを入れた化粧箱をビニールで包装した高級品であるのに対し,被告が販売したものは被告商品をプラスチック又はビニール製の透明袋に入れたものであり,高級品であるという印象がないこと,被告の貼付した食品表示の内容を原告が管理し得ないこと,被告による小分け,詰め替え及び再包装の過程で異物が混入したり品質が変化したりするおそれがあることから,原告商標によって保証する商品の品質に対する信用を害する。 したがって,被告商品の輸入販売行為による本件商標権及び原告の営業上 装の過程で異物が混入したり品質が変化したりするおそれがあることから,原告商標によって保証する商品の品質に対する信用を害する。 したがって,被告商品の輸入販売行為による本件商標権及び原告の営業上の利益の侵害につき違法性は阻却されない。 ⑶ 争点⑶(過失の有無)について(原告の主張)被告は,被告商品を輸入したことにつき過失がある。 (被告の主張)被告は,被告商品が真正商品であると信じてこれを輸入販売したから,被告の輸入販売行為につき過失はない。 ⑷ 争点⑷(損害額)について(原告の主張)被告は被告商品を少なくとも22万2200個販売したと思われるところ,被告商品は20ティーバッグ入りの袋当たり1498円であり,その利益率は30%程度であるから,原告は商標法38条2項又は不正競争防止法5条 - 6 -2項に基づき,9985万6680円の損害を被った。 (被告の主張)否認ないし争う。被告は,被告商品を約1万1500袋しか輸入販売していない。 ⑸ 争点⑸(差止め,廃棄及び謝罪広告の必要性)について(原告の主張)被告による被告商品の輸入販売は原告の本件商標権を侵害するとともに不正競争行為に該当して営業上の利益を侵害するものであるから,被告商品の販売等差止め及び廃棄,謝罪広告の必要がある。 (被告の主張)争う。被告は被告商品を現在輸入販売していないから,差止め及び廃棄の必要性はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑵(並行輸入による権利侵害の違法性阻却事由該当性)について事案に鑑み,争点⑵について判断する。 ⑴ 被告は,被告商品を原告から本件第三者を経由して輸入し,販売したものであり,この行為がいわゆる並行輸入による商標権及び不正競争による営業上の利益の侵害の違法性阻却事由に該当す ついて判断する。 ⑴ 被告は,被告商品を原告から本件第三者を経由して輸入し,販売したものであり,この行為がいわゆる並行輸入による商標権及び不正競争による営業上の利益の侵害の違法性阻却事由に該当すると主張する。 そこで判断するに,後掲証拠(書証の枝番は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,アーバン社に対し,平成27年頃,被告商品(ロイヤルダージリン,ブレックファーストアールグレイ,フレンチアールグレイ及びイングリッシュブレックファーストを各288箱。1箱当たりティーバッグ200個)を発注した。(乙1)イ上記発注を受けて,アーバン社は本件第三者を通じて原告に対し被告商品を発注した。原告は本件第三者に対し,本件第三者は平成27年5月4 - 7 -日頃にアーバン社に対し,原告が製造した被告商品を順次販売した。アーバン社は,同月7日付けで被告に対して請求書を発行し,被告に向けて被告商品を輸出した。被告商品は,同年6月9日,神戸港に到着し,翌10日,被告による輸入が許可された。(乙2~11)ウ被告商品は,密封された包装袋の中に紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められたものである。上記包装袋は背景色を黄色とし,表面は上部に被告標章,下部に二重線の角丸四角形の枠線で囲まれた紅茶の種類及び産地の記載が,裏面は上部に上記枠線で囲まれた紅茶の種類,産地,英語による説明文その他の記載,中央部に英語,日本語その他の言語によるティーバッグについての説明の記載,下部に上記枠線で囲まれた飲み方を示す記載,被告標章のうち楕円形の図形部分及びウェブサイトのURLがそれぞれ付されている。 被告商品は,輸入時において,種類別に200個ずつ段ボール箱に詰められていた。この箱には原告の会社名等を記載 記載,被告標章のうち楕円形の図形部分及びウェブサイトのURLがそれぞれ付されている。 被告商品は,輸入時において,種類別に200個ずつ段ボール箱に詰められていた。この箱には原告の会社名等を記載したラベルが貼付されているが,箱自体はビニール等で覆われていない。また,箱内に間仕切りや中箱等はなく,200個の被告商品が詰め込まれている。 被告は,箱詰めされていた被告商品を20個ずつ透明のビニール袋に詰めた上,品名,原材料名,内容量,賞味期限等を記載したシールを同袋に貼付して販売した。 (甲7,10,21,乙32,34)エ原告が我が国で販売する商品は,透明のビニールで包装された化粧箱の中に被告商品の包装袋と同一の外観を有する包装袋が詰められており,密封された上記包装袋の中に紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められている。(甲20,乙4,34)⑵ 上記⑴の事実関係によれば,①被告商品は,原告から本件第三者及びアーバン社を経て被告が輸入し,外観及び内容が変えられることなく販売された - 8 -ものであり,原告が我が国で販売する商品と包装袋の外観及びその内容物が紅茶のティーバッグである点で同一であることが明らかである。加えて,②原告商標と被告標章は別紙商標権目録及び被告標章目録記載のとおり同一であること,③原告商標の商標権者が原告であること(前提事実⑵)を併せ考えれば,被告商品の包装袋に記載された被告標章は原告が付したものであって我が国の登録商標である原告商標と同一の出所を表示するものと認められる。また,上記①によれば被告商品は原告において製造されたままの状態で流通されたものであるから,被告商品の品質管理を原告が直接的に行い得ると認められる。 そうすると,被告商品と原告が販売する商品とが原告商標の保証する品質にお は原告において製造されたままの状態で流通されたものであるから,被告商品の品質管理を原告が直接的に行い得ると認められる。 そうすると,被告商品と原告が販売する商品とが原告商標の保証する品質において実質的に差異がないということができるから,被告商品の輸入及び販売は,いわゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。同様に,仮に被告商品の輸入及び販売が不正競争防止法2条1項1号ないし2号の不正競争行為に該当し,原告の営業上の利益が侵害されたとしても,実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。 ⑶ これに対し,原告は,①本件第三者が何者であるか不明である以上,被告商品に付された被告標章を原告が付したものであるかどうか,外国における商標権者と原告が同一人又はこれと同視できる者かどうかが分からない,②被告による被告商品の包装方法は原告の方法に比べて高級品であるという印象がなくなること,被告の貼付した表示の内容を原告が管理し得ないこと,被告による包装の過程で品質が変化するおそれがあることから,原告商標によって保証する商品の品質に対する信用を害すると主張する。 そこで判断するに,まず,上記①の点についてみると,被告が提出する証拠(乙2~11)を見ても本件第三者が何者であるか明らかでないものの,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,㋐原告から本件第三者へ,本件第三者 - 9 -からアーバン社へ,アーバン社から被告への各流通過程における商品の内容(茶葉の種類,数量等)が一致していること(乙1~11),㋑原告の本件第三者に対する請求書及び梱包明細書(乙2)には原告商標と同一の標章並びに原告の連絡先及び銀行口座の情報が記載されていること,㋒被告がこれらの文書のほかに原告が発行した製造書(乙4) ,㋑原告の本件第三者に対する請求書及び梱包明細書(乙2)には原告商標と同一の標章並びに原告の連絡先及び銀行口座の情報が記載されていること,㋒被告がこれらの文書のほかに原告が発行した製造書(乙4)及び製品情報シート(乙5)の各写しを保有し,証拠として提出したこと,以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,原告が製造した真正商品につき原告を起点,被告を終点とする取引がされ,当該商品が被告の下に到達したこと,当該商品が被告商品に当たることが明らかである。その上,取引資料(甲18,19)を有する原告においても本件第三者が原告の真正商品の販売先のいずれかであると推測したことにも鑑みれば,本件第三者が何者であるかにかかわらず,本件商標権者である原告が原告商標と同一の被告標章を被告商品に付したものと認めるのが相当である。 次に,上記②の点についてみると,原告商標が保証するのは別紙商標権目録のとおり紅茶その他の指定商品及び指定役務に係る品質であるところ,商品が高級品であるといった印象や食品表示の記載は原告商標が保証するものに当たらず,上記指定商品等の品質に直ちに影響しない。また,前記⑴ウのとおり被告商品は密封された包装袋内に茶葉が納められたものであって,被告はこれを段ボール箱から取り出した上,20個ずつ透明な袋に入れたというにとどまり,被告商品それ自体には改変を加えていないから,その包装方法によって紅茶の品質が直ちに影響するとは考え難い。なお,本件の証拠上,原告が化粧箱に詰めて販売する商品と被告が上記のように包装した被告商品がその包装方法あるいは流通,保管等の状況により紅茶(茶葉)としての品質を異にしていることはうかがわれない。 したがって,原告の上記主張はいずれも失当である。 2 結論 - 10 -よって,原告の請求は いは流通,保管等の状況により紅茶(茶葉)としての品質を異にしていることはうかがわれない。 したがって,原告の上記主張はいずれも失当である。 2 結論 - 10 -よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官萩原孝基 裁判官中嶋邦人 - 11 -(別紙)被告標章目録 - 12 -(別紙)謝罪広告目録 1 掲載の内容謝罪広告 ティーダブリュージーティーカンパニーピーティーイーリミテッド様 弊社は,貴社の承諾を得ず,貴社ブランドを示す標章を付した弊社商品を輸入し,販売し,貴社に多大のご迷惑をおかけしてきました。 このような行為は,商標法違反,不正競争防止法違反及び民法上の不法行為に該当する行為であり,弊社はただちに,貴社ブランドを示す標章の使用を中止し,今後貴社に上記のようなご迷惑をかけないことを誓約し,陳謝の意を表します。 平成年月日 株式会社ジュピターインターナショナルコーポレーション 2 掲載の要領⑴ 広告の大きさ縦2段,幅20センチメートル⑵ 使用活字 - 13 -標題 18級(12ポ)ゴシック体活字名義人・名宛人 16級(11ポ)ゴシック体活字本文 13級(9ポ)明朝体活字日付・住所 12級(8ポ)明朝体活字なお,広告中空欄となっている年月日については,新聞掲載日を表示する。 3 掲載の新聞日本経済新聞夕刊の広 文 13級(9ポ)明朝体活字日付・住所 12級(8ポ)明朝体活字なお,広告中空欄となっている年月日については,新聞掲載日を表示する。 3 掲載の新聞日本経済新聞夕刊の広告欄 - 14 -(別紙)商標権目録 登録番号第5340591号商標 出願日平成21年4月14日登録日平成22年7月23日商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第21類ティーポット,ティーカップ及びその受け皿,皿,食品用容器,椀,茶こし器,茶缶,茶あみ(茶かご),茶器,ティーセット第30類紅茶,フルーツティー,チャイティー,ルイボス茶,緑茶,日本茶,ウーロン茶(中国茶),茶,茶エキス,煎じ用茶,ケーキ,ペストリー菓子,ペストリー(生地),マカロン(ペストリー菓子)第43類ティーを主とする飲食物の提供及びその他の飲食物の提供,ティー及び飲食物の提供に関する情報の提供(オンラインを含む)
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