令和3(行コ)70 特別定額給付金の支給義務付け等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月18日 大阪高等裁判所
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判決文本文10,459 文字)

- 1 -令和4年1月18日判決言渡令和3年(行コ)第70号特別定額給付金の支給義務付け等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和2年(行ウ)第60号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 主位的請求被控訴人大阪市は,控訴人に対し,特別定額給付金の支給決定をせよ。 第1次予備的請求被控訴人大阪市が,控訴人に対し,特別定額給付金の支給決定をしないことは違法であることを確認する。 第2次予備的請求ア控訴人が令和2年5月22日付でした特別定額給付金の支給の申請に対し,被控訴人大阪市長がした不支給決定を取り消す。 イ被控訴人大阪市は,控訴人に対し,10万円を支払え。 3 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して30万円を支払え。 第2 事案の概要(以下,略称は,特に記載しない限り,原判決の例による。) 1 本件は,控訴人が,被控訴人大阪市に対し,憲法29条3項,25条1項,27条等に基づき,特別定額給付金給付事業(内閣の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の閣議決定による国民一人当たり一律10万円の給付を行うとする事業)により給付される特別定額給付金を受給する権利を有するなどと主- 2 -張し,主位的請求として,行政事件訴訟法3条6項の義務付けの訴えにより,特別定額給付金の支給決定の義務付けを求め(控訴の趣旨2項。請求1),第1次予備的請求として,同条5項の不作為の違法確認の訴えにより,控訴人の特別定額給付金の支給の申請に対し,相当の期間内に特別定額給付金の支給決定をすべきであるにもかかわらず,これをしないことの違法確認を求め(控訴の趣旨2項。請求2), 違法確認の訴えにより,控訴人の特別定額給付金の支給の申請に対し,相当の期間内に特別定額給付金の支給決定をすべきであるにもかかわらず,これをしないことの違法確認を求め(控訴の趣旨2項。請求2),第2次予備的請求として,控訴人の特別定額給付金の支給申請に対し,被控訴人大阪市が控訴人に特別定額給付金を支給しないこととした決定(本件不支給決定)の取消し(控訴の趣旨2ア。請求3-1)及び特別定額給付金として10万円の支払(控訴の趣旨2イ。請求3-2)を求めるとともに,被控訴人らに対し,特別定額給付金の給付対象者を令和2年4月27日(本件基準日)において住民基本台帳に記録されている者等と定めたことが違法であるとして,国家賠償法(国賠法)1条1項に基づき,損害賠償金30万円の連帯支払を求める(控訴の趣旨3項。本件国賠請求)事案である。 原審は,被控訴人大阪市に対する請求1から3-1までの各請求に係る訴えを不適法であるとして却下し,被控訴人大阪市に対する請求3-2及び被控訴人らに対する本件国賠請求は理由がないとして棄却したところ,これを不服とした控訴人が控訴した。 なお,控訴人は,原審において,被控訴人大阪市に対し,①控訴人が最高裁令和2年(行ツ)第121号,同年(行ヒ)第127号事件(別件上告等事件)における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認(請求4),②控訴人が原判決別紙物件目録記載の住居を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認(請求5),③控訴人が,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(ホームレス自立支援法)にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地- 3 -位にあることの確 が,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(ホームレス自立支援法)にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地- 3 -位にあることの確認(請求6)をも求めていたところ,原審は,上記①の請求4に係る訴えを不適法であるとして却下し,上記②及び③の請求5及び6を理由がないとして棄却したが,これらについて控訴人は不服申立てをしていない。 2 前提事実次のとおり,補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決5頁4行目から12行目までを削る。 原判決6頁20行目の「とし」を「ので」に,同行目の「する」を「されている」にそれぞれ改める。 原判決7頁17行目の「と」の次に「題」を加える。 原判決11頁8行目の「期間中に」の次に「DV等避難者」を加える。 原判決14頁19行目の「一次的」を「一時的」に改める。 3 主たる争点原判決15頁7行目から15行目までを削り,16行目の「」を「」に改め,同行目の「ついて,」の次に「控訴人は」を加え,17行目の「が」を「を」に,同行目から18行目の「なるところ」を「するため」に,18行目の「3」を「2」にそれぞれ改めるほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の2のとおりであるから,これを引用する。 4 主たる争点に関する当事者の主張後記のとおり補正し,後記のとおり,争点2に関する当審における控訴人の補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の3のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正ア原判決20頁9行目から21頁10行目までを削り,11行目の「」を「」に,「3」を「2」にそれぞれ改める。 - 4 -イ原判決2 であるから,これを引用する。 原判決の補正ア原判決20頁9行目から21頁10行目までを削り,11行目の「」を「」に,「3」を「2」にそれぞれ改める。 - 4 -イ原判決23頁11行目の「国民」の次に「(以下「家賃等支払困難国民」という。)を,14行目の「職員は,」の次に「国会を国権の最高機関と定めた」を加え,16行目の「のであり,」を「のであるから,一定の市区町村の区域内に定住しながら財産・収入が少ないことにより家主・地主に対し,家賃・地代名目の金銭の支払をすることが困難なため,公園内や河川敷に建てた住居又は路上等で眠っている家賃等支払困難国民に対する特別定額給付金の支給手続を定めなかった」に改める。 ウ原判決26頁24行目の「あって,」の次に「特別定額給付金の受給について住民登録を要することを要件とした」を加え,25行目の「との評価を受ける」及び26行目の「d また,」をいずれも削る。 エ原判決27頁14行目の冒頭に「また,」を加え,15行目から16行目の「。そして」を「ところ」に改め,26行目の「①」の次に「現実の生活保護制度の運用では,生活保護を受給できる者は60歳以上の高齢者か疾病のため稼働できない者に限定されており,」を加え,同行目の「ず,」を「ない。また,」に改める。 オ原判決28頁5行目の「また」を「さらに」に,10行目の「。また」を「上」に,12行目の「する」を「できる」にそれぞれ改める。 カ原判決31頁16行目の「発出し,」の次に「これを受けて」を加え,同行目の「総務省」から17行目の「受けて,」までを削る。 キ原判決34頁6行目冒頭の「か」を削る。 ク原判決35頁4行目から15行目までを削り,16行目の「」を「」に改め,25行目の「職員」の次に「に」を加え 行目の「受けて,」までを削る。 キ原判決34頁6行目冒頭の「か」を削る。 ク原判決35頁4行目から15行目までを削り,16行目の「」を「」に改め,25行目の「職員」の次に「に」を加える。 ケ原判決44頁12行目の「一次的」を「一時的」に改める。 争点2(本件実施要領給付基準の違憲性等)に関する控訴人の補充主張ア本件実施要領給付基準の憲法14条1項違反本件実施要領給付基準は,本件基準日に日本国内に居住していた日本- 5 -国民中,住居を所有する日本国民又は家主・地主に地代・家賃名目の金銭の支払が可能であった日本国民には特別定額給付金を支給し,貧困ゆえ住居を所有できず又は貧困ゆえ家主・地主に地代・家賃名目の金銭を支払うことができない最貧困層に属する家賃等支払困難国民には特別定額給付金を一切支給しないというものである。 一定の市区町村の区域内に定住しながら財産・収入が少ないことにより家主・地主に対し家賃・地代名目の金銭の支払をすることが困難なため,公園内や河川敷に建てた住居又は路上等で眠っている家賃等支払困難国民が,本件基準日以降本件申請期限内という短期間(3か月程度)に貧困状態から脱却することは自らの意思や努力では困難であり,貧困であることをもって特別定額給付金の受給の要件に区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては,慎重に検討されなければならない。 事務負担の軽減を図り,迅速に給付を実現するという要請に応えつつ,二重給付を防止する本件実施要領第3の「給付対象者」の制定目的自体には合理性は認められる。しかし,生活保護等に関する行政庁の裁量は広範であり,控訴人ないし多くの家賃等支払困難国民は生活保護等の施策を活用することによって住所を有することができない。他方で,本件実施要領が定める められる。しかし,生活保護等に関する行政庁の裁量は広範であり,控訴人ないし多くの家賃等支払困難国民は生活保護等の施策を活用することによって住所を有することができない。他方で,本件実施要領が定める日本国民に対する特別定額給付金の支給手続が概ね完了した後に家賃等支払困難国民に対する支給手続の執行を開始したり,本件情報集約センターを設置したりすることによって,制定目的を維持しながら家賃等支払困難国民に特別定額給付金を支給することができる。 現在における情報処理技術の水準等からすれば,総務省内に本件情報集約センターを設置するなどの支給手続をとることによる事務負担の増加が相当に大きいとは到底いえないし,新型コロナウイルス感染症に係る予防接種では家賃等支払困難国民に対して一人2回の接種が完全に実施- 6 -できている以上,上記の方法により,家賃等支払困難国民に対する特別定額給付金の支給についても容易に実施できる。 したがって,本件実施要領が貧困ゆえ住所を有することができない家賃等支払困難国民に対し住所を有することを受給要件としたことには,制定目的との間における合理的関連性は一切認められず,合理性を欠き過剰であり,憲法14条1項に違反する不合理な差別である。 本件実施要領が家賃等支払困難国民にもたらす区別(以下「本件区別」という。)の憲法適合性について比較衡量論を採用して審査するのであれば,何よりもまず家賃等支払困難国民各個人が特別定額給付を受給できないことによって負う不利益の程度を検討・確認しなければならない。 しかるに原判決は,本件実施要領下において全体としての家賃等支払困難国民が特別定額給付金を受給することができる可能性の程度,すなわち法令の規定がもたらす不利益を代替的方法によって回避する可能性の程度により憲法14条1項の適合 領下において全体としての家賃等支払困難国民が特別定額給付金を受給することができる可能性の程度,すなわち法令の規定がもたらす不利益を代替的方法によって回避する可能性の程度により憲法14条1項の適合性を判断しており,平成20年大法廷判決に明白に違反している。原判決は,立法がもたらす区別が立法目的達成のために過剰か否かを審査することなく,憲法14条1項適合性審査において適用できない比較衡量論及び合理性の有無基準と同旨の基準を適用して本件区別の憲法14条1項適合性を審査しており,結局,本件区別の憲法14条1項適合性審査を何らしていない。これまで憲法14条1項違反と判断した最高裁の判決の各事案に,原判決が適用した違憲審査基準を適用するといずれも優に合憲の判断となるのであり,原判決が適用した違憲審査基準は違憲審査制度を没却せしめる程度に過酷なものであることは明らかである。 イ本件実施要領給付基準の憲法31条違反本件実施要領給付基準は,住民基本台帳法(以下「住基法」という。)に違反して本件基準日に居住実態のない建造物に住民登録していた家賃- 7 -等支払困難国民については直ちに特別定額給付金の受給申請をさせるにもかかわらず,控訴人ら住基法を遵守することによって本件基準日に居住実態のない建造物に住民登録していなかった家賃等支払困難国民については,住民登録を可能とする住居を確保して同住居に居住しなければ特別定額給付金の受給申請をさせず,受給申請期限内に同住居確保に失敗したならば特別定額給付金を受給させないのであるから,適正な行政手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反している。 家賃等支払困難国民が,特別定額給付金を受給できないのは,本件実施要領に家賃等支払困難国民に係る特別定額給付金の支給手続が定められていないことに積極的 利を保障した憲法31条に違反している。 家賃等支払困難国民が,特別定額給付金を受給できないのは,本件実施要領に家賃等支払困難国民に係る特別定額給付金の支給手続が定められていないことに積極的な原因がある。 本件実施要領において住所を有さない家賃等支払困難国民が特別定額給付金を受給するためには,居住する市区町村に住民異動届を受理させるほかない。しかし,被控訴人国(総務省)が新たに示した家賃等支払困難国民の住所に係る住民異動届受理基準や被控訴人大阪市が新たに定めた住民異動届受理基準は住基法に違反している。このため,総務省職員らは,住所を有さない家賃等支払困難国民については,住所を有さない状態を継続しながら特別定額給付金の受給を可能とする手続を定めなければならないにもかかわらず,それを怠り続けた。総務省職員らが特別定額給付金の受給申請期限内に住所を有することができない家賃等支払困難国民に係る特別定額給付金の受給手続を定めなかったことは憲法31条に反し違憲である。 また,日本国内に居住する家賃等支払困難国民のうち一部しかシェルターに宿泊することができず,大部分の家賃等支払困難国民は,シェルターに数日間宿泊すれば特別定額給付金の受給が可能となることを受給申請期限内に知り得なかったのであるから,仮に新たに示された住民異動届受理基準が合憲であっても,総務省職員らが特別定額給付金の受給- 8 -申請期限内に住所を有することができない家賃等支払困難国民について,住所を有さない状態で特別定額給付金の受給を可能とする手続を定めなかったことは適正な行政手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反している。 ウ本件実施要領給付基準の信義則違反ホームレス状態になった者が以前の住所地から退出したことを市町村に届出をすることにより,選挙 な行政手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反している。 ウ本件実施要領給付基準の信義則違反ホームレス状態になった者が以前の住所地から退出したことを市町村に届出をすることにより,選挙権等憲法に明記された各基本的人権が侵害されるのであるから,被控訴人らはホームレス状態になった者が憲法に違反して基本的人権を侵害されることがないように上記の届出義務がないことの周知を図らなければならなかった。家賃等支払困難国民に係る住民票の問題が顕著になったのは扇町公園住所裁判(大阪地裁平成17年(行ウ)第39号住民票転居届不受理処分取消請求事件)1審判決及び同控訴審判決が宣告され,大阪市A区長がB等の所在地を住所として受理されていた2088名の住民票を一斉に消除した平成19年頃から,被控訴人らが上記周知を図っていたのであれば,控訴人ないし家賃等支払困難国民は,市区町村に旧住所地から退出した旨の届出をせず,その結果,本件実施要領に基づき特別定額給付金を受給することができたのである。このように,被控訴人らは約13年間にわたり,同届出義務がないことの周知を怠ってきたのであるから,住基法を遵守しようとした控訴人ないし家賃等支払困難国民に対し,特別定額給付金の受給申請をさせないことは信義則に違反している。 エ本件国賠請求控訴人ら家賃等支払困難国民の多くが特別定額給付金受給権を獲得できなかった理由は,本件実施要領が特別定額給付金の受給権獲得の要件としている住所要件が著しく曖昧かつ不明瞭であり,「住所要件」の成否について総務省職員らが極めて恣意的な運用をしていたからである。 - 9 -総務省職員らは,住民基本台帳に記録されることの基準が不明瞭な結果,特別定額給付金を受給できない者がいるのであれば,憲法31条の要請に基づき,その者を救済する 用をしていたからである。 - 9 -総務省職員らは,住民基本台帳に記録されることの基準が不明瞭な結果,特別定額給付金を受給できない者がいるのであれば,憲法31条の要請に基づき,その者を救済するための手続を定めておかなければならなかった。本件実施要領第3の「給付対象者」の定めは,控訴人が憲法31条によって保障された適正な行政手続を受ける権利を侵害するものであり,このため,控訴人は特別定額給付金受給権を獲得できなかったのであるから,控訴人は本件実施要領によって何らの権利も侵害されていないとする原判決の判断の論理は誤りである。 控訴人ら最貧困層に位置する家賃等支払困難国民は,特別定額給付金を受給できない結果,憲法29条1項が保障される財産権を侵害されるのであるから,特別定額給付金を受給できなかったところで,何らの権利も侵害されないという原判決の判断は失当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求1から3-1までに係る訴えは不適法であり,請求3-2の請求及び本件国賠請求は理由がないと判断する。その理由は,後記のとおり原判決を補正し,後記のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正ア原判決47頁8行目の「るもの」を「たこと」に改める。 イ原判決49頁14行目から52頁14行目までを削り,15行目の各「3」をいずれも「2」に改める。 ウ原判決65頁14行目の「4」を「3」に改め,15行目の「,請求4」,19行目の「及び」から20行目の「4)」までをいずれも削る。 エ原判決66頁2行目から8行目までを削り,9行目の「」を「」に改め,11行目の「が」の次 改め,15行目の「,請求4」,19行目の「及び」から20行目の「4)」までをいずれも削る。 エ原判決66頁2行目から8行目までを削り,9行目の「」を「」に改め,11行目の「が」の次に「あるといえ」を加える。 - 10 - 当審における控訴人の補充主張についてア本件実施要領給付基準の憲法14条1項違反について控訴人は,住民登録を支給要件としなくてもより容易な支給方法があるとして,貧困ゆえ住所を有することができない家賃等支払困難国民について,住所を有することを受給要件とすることは,本件実施要領の制定目的との関係で合理性を欠く過剰なものであり,憲法14条1項に違反する不合理な差別であると主張する。 しかし,特別定額給付金給付事業は,新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下,感染症拡大防止のために,生活に必要な場合を除き,外出を自粛し人と人との接触を最大限削減すべく,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うという本件緊急経済対策を受けて,全国民を対象として実施されるものである(原判決前提事実)。そして,法令上の定めのない給付事業である本件特別定額給付金給付事業の実施方法を決定するに際しては,高度の専門的知見に基づく政策的判断が必要であるから,給付のための具体的な仕組みについては,これを決定する行政機関に広い裁量があると認めるのが相当であるところ,原判決が摘示するとおり(原判決52頁16行目~61頁19行目),想定される膨大な事務作業について特別定額給付金給付事業の事業主体となる各地方自治体の事務負担を軽減しつつ,迅速かつ公平な給付を実現するための仕組みとして,住民登録の有無を受給要件とすることは,特別定額給付金給付事業の目的を実現するための合理的な仕組みであるとい なる各地方自治体の事務負担を軽減しつつ,迅速かつ公平な給付を実現するための仕組みとして,住民登録の有無を受給要件とすることは,特別定額給付金給付事業の目的を実現するための合理的な仕組みであるといえ,他にも想定し得る支給方法があること自体は上記の合理性の判断を左右するものではないから,本件実施要領給付基準が憲法14条1項に違反しているとはいえない。 この点,控訴人は,貧困のため住居を失い住民登録が抹消されたホームレス等は,申請期限までに自力で生活の本拠となる住居を確保することは- 11 -できず,生活保護や生活困窮者住居確保給付金の制度といった被控訴人らによるホームレス等に対する各種の支援制度等により住居を確保することも事実上できないなどと主張するが,控訴人の上記主張を裏付けるに足る証拠はない。 そして,憲法14条1項に関する控訴人のその他の主張もいずれも上記認定判断を左右するものではない。 したがって,本件実施要領給付基準が憲法14条1項に反する旨の控訴人の主張は認められない。 イ本件実施要領給付基準の憲法31条違反について控訴人は,本件実施要領給付基準は,住基法に違反した者による特別定額給付金の受給申請を認めながら,住基法を遵守した者による特別定額給付金の受給申請を認めないことや,特別定額給付金の受給申請期限内に住所を有することができないホームレス等について住所を有さない状態で特別定額給付金の受給を可能とする手続を定めるべきであるにもかかわらず,このような手続を定めなかったことが,適正な行政手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反していると主張する。 しかし,原判決が摘示するとおり(原判決63頁4行目~13行目),本件特別定額給付金給付事業を実施するに際し,どのような仕組みを用いるのかということについては 31条に違反していると主張する。 しかし,原判決が摘示するとおり(原判決63頁4行目~13行目),本件特別定額給付金給付事業を実施するに際し,どのような仕組みを用いるのかということについては,憲法31条が定める適正手続の保障の及ぶところではない。また,控訴人の上記主張は,被控訴人らに受給申請期限内に住所を有することができないホームレス等について,住民登録以外の方法で特別定額給付金の受給を可能とする手続を定める義務があることを前提とするものであるが,上記アで説示したとおり,特別定額給付金を支給する具体的な方法の決定については,行政機関の裁量に委ねられていると解するのが相当であるから,控訴人が主張するような住民登録以外の方法による支給手続を定める義務が行政機関にあるとも認められない。 - 12 -以上のとおり,本件実施要領給付基準が憲法31条に違反するとの控訴人の主張は,被控訴人らの不作為をいう点も含め認められない。 ウ本件実施要領給付基準の信義則違反について控訴人は,被控訴人らは,ホームレス状態になった者に対し,旧住所地からの退出届をする義務がないことの周知を図らなければならなかったにもかかわらず,長年これを行わず,上記の届出が不要であることを知らずに届出をした控訴人は,その結果,本件実施要領に基づき特別定額給付金を受給することができなくなったのであるから,被控訴人らが特別定額給付金の受給申請をさせないことは信義則に違反すると主張する。 しかし,被控訴人らにおいて,法令上,旧住所地からの退出届が不要であることを一般に周知すべき義務があることを認めるに足る証拠はなく,控訴人の上記主張はその前提を欠くものであって認められない。 エ国賠請求について控訴人は,本件実施要領が特別定額給付金の受給権獲得の要件としている 義務があることを認めるに足る証拠はなく,控訴人の上記主張はその前提を欠くものであって認められない。 エ国賠請求について控訴人は,本件実施要領が特別定額給付金の受給権獲得の要件としている住所要件は著しく曖昧かつ不明瞭であり,控訴人が憲法31条によって保障された適正な行政手続を受ける権利を侵害している,特別定額給付金を受給できない結果,憲法29条1項が保障する財産権が侵害されたなどと主張する。 しかし,上記イで説示したとおり,本件実施要領給付基準が憲法31条に違反するものとは認められない。また,原判決が摘示するとおり(原判決47頁3行目~16行目),特別定額給付金事業は特定の者を対象としたものではないから,憲法29条違反をいう控訴人の主張も認められない。 したがって,本件特別定額給付金給付事業を行うに際し,被控訴人らに国賠法上の違法行為があるとする控訴人の主張は認められない。 2 結論以上のとおり,控訴人の請求1から3-1までに係る訴えは不適法であるか- 13 -ら却下すべきであり,請求3-2及び本件国賠請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官山田明 裁判官川畑公美 裁判官柴田義人 (別紙省略) - 14 -

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