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主文 原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人ウイリアム・ローガン・ジユニア、同吉本英雄、同高島信之、同安達徹、同根本博美の上告理由第一点および第六点について。原審の事実認定は、挙示の証拠によつて肯認できないわけではない。所論は畢竟、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定の非難に帰し採用できない。同第三点について。原審の認定したところによれば、昭和二八年一月二二日当時Dは上告会社の日本における代表者であつて、本件契約について上告会社の代表者と同一の権限を有し、当時EはDを代理する権限を有していたというのであり、右認定は挙示の証拠によつて肯認できる。しからば、本件保険約款一五条の規定の存在にもかかわらず、Eが右同日Dを代理してなした出訴期間延長の許諾を有効とした原審の判断は正当である。それ故、論旨は排斥を免れない。同第二点について。本件保険契約締結に当り、Fの提出した陳述書中に同人の前歴として同人が一九四九年九月より一九五〇年七月までlawyerであつたとの記載あることは、当事者間に争のないところである。原判決は、「lawyerは弁護士という意味の外に弁護士をも含めてより広く法律家の意味にも使用されることのあることは当裁判所に顕著である」とし、「Fは一九四九年一月から九月までG大学の法律学生であつたことが認められ……Fは法律について多少の専門知識を有し、広い意味では法律家といえないこともない。しかもFの地位は会計係であつて、純粋の法律職でないことを合せ考えると、lawyerとの記載は虚偽又は真実でないものとは必- 1 -ずしも断定できない」と判示しているが、この点に関する原審挙示の証拠を綜合して考えれば、 あつて、純粋の法律職でないことを合せ考えると、lawyerとの記載は虚偽又は真実でないものとは必- 1 -ずしも断定できない」と判示しているが、この点に関する原審挙示の証拠を綜合して考えれば、本件において右lawyerとは自ら法律事務に従事する弁護士と解すべき余地が充分に窺われるものである。 ものとは必- 1 -ずしも断定できない」と判示しているが、この点に関する原審挙示の証拠を綜合して考えれば、 あつて、純粋の法律職でないことを合せ考えると、lawyerとの記載は虚偽又は真実でないものとは必- 1 -ずしも断定できない」と判示しているが、この点に関する原審挙示の証拠を綜合して考えれば、本件において右lawyerとは自ら法律事務に従事する弁護士と解すべき余地が充分に窺われるものである。しからば、原判決はすべからくこの点についてlawyerの意味するところが何たるかを説示すべきであつたのである。そして本件においてlawyerを右のごとく弁護士の意味に解すべきものであるならば、原判決はFが前示期間に亘つて果して弁護士の実務に従事したか否か、もし従事し、またはしなかつたならば、そのことが本件保険契約の効力に関していかなる影響を及ぼすべきかを、本件約款との関係において明らかにすべきであつたのである。しかるに、原判決はこれらの点につき何等説示するところがないから、原判決はこの点で審理不尽、理由不備の違法ありとせざるを得ないのである。同第四点について。本来保険制度は、将来発生すべき危険の蓋然性を予測し、その危険に曝される多数の者にその危険率を公正に分担せしめようとするものであるが、各種の保険はその性格、危険選択の方法、危険分散の程度等のため、契約内容がそれぞれの特異性を有するに至ることは当然である。しかして、信用保険に関する本件についてこれを見るに、成立に争のない甲一号証によれば、保険者たる上告人の責任がFの不正行為により直接惹起された損害のみに及ぶとの約があつたことが窺われるのである。しかるに、原判決は被上告人が公認会計士に支払つた費用につき、それは「直接発生した損害」ではないが、Fの金員の窃取又は横領と「相当因果関係のある損害」として、上告人にその支払義務あるものと判示したのである。もとより損害保険においては、特別の事情がな につき、それは「直接発生した損害」ではないが、Fの金員の窃取又は横領と「相当因果関係のある損害」として、上告人にその支払義務あるものと判示したのである。もとより損害保険においては、特別の事情がない限り、保険者は契約所定の保険事故が発生したときは、これと相当因果関係のある損害について、保険金支払の義務を負担するものであるが、これと異り、本件信用保険契約において、上告人の填補すべき損害の範囲が直接損害に限定されるならば、特約のない限り、被上告人は公認会計士に支払つた費- 2 -用を保険事故に因る損害として当然その支払を求めうるものではないのである。 。もとより損害保険においては、特別の事情がない限り、保険者は契約所定の保険事故が発生したときは、これと相当因果関係のある損害について、保険金支払の義務を負担するものであるが、これと異り、本件信用保険契約において、上告人の填補すべき損害の範囲が直接損害に限定されるならば、特約のない限り、被上告人は公認会計士に支払つた費- 2 -用を保険事故に因る損害として当然その支払を求めうるものではないのである。要するに、原審はすべからく上告人の責任の範囲が直接損害に限定されるや否や、もし直接損害に限定されるとせば、商法六三八条二項との関係如何について判断し、この観点よりして会計士に支払つた費用の賠償を求めうるや否やを判断すべきであるにかかわらず、これについて何等説示するところがない。従つて、原判決はこの点でもまた審理不尽、理由不備の違法ありといわざるを得ないのである。同第五点について。原審は本件において被上告人が弁護士に支払つた費用は、会計係たるFの金員窃取又は横領行為によつて直接発生した損害ではないが、これと相当因果関係のある損害であるとして上告人にその支払義務ありと判示したのである。思うに、いわゆる弁護士費用が賠償として請求しうる損害の範囲に属するか否かは、相当因果関係との関連において、従来論じられた問題であるが、今本件について、上告人の責任の範囲が直接損害の賠償に限られるならば、被上告人は上告人に対して保険契約に基づき、弁護士費用の支払を求めえないことは明らかである。しからば原判決はすべからく、これらのことにつき判断すべきであつたのにかかわらず、これらについて何等説示することがないから に対して保険契約に基づき、弁護士費用の支払を求めえないことは明らかである。しからば原判決はすべからく、これらのことにつき判断すべきであつたのにかかわらず、これらについて何等説示することがないから、原判決はこの点についても審理不尽、理由不備の違法ありといわざるをえない。よつて、民訴四〇七条一項に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官松田二郎裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官斎藤朔郎は死亡につき署名押印することができない。裁判長裁判官松田二郎- 3 -
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