【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役壱年に処する。 但し本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する 原審並び当審における訴訟費用は被告人の負担とする
主文原判決を破棄する。 被告人を懲役壱年に処する。 但し本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する原審並び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由主任弁護人森静の陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人名義の控訴趣意書の記載と同一であるから、これを引用する。 控訴趣意第一点について、原判決は、被告人が金銭貸付業を目的とする株式会社Aの代表取締役として同会社の業務に関しB外六十二名から七十六回に亘り預り金をなしたという貸金業等の取締に関する法律第七条第一項違反の事実を認定し、右個々の金銭受入行為を別個独立の所為と認め、これに対し併合罪の規定を適用処断したこと<要旨>は所論のとおりである。しかし、右条項により貸金業者が行うことを禁止されている預り金とは、同条第二項</要旨>においてその意義を明らかにしているとおり、「不特定多数の者からの金銭の受入で預金、貯金、掛金その他何らの名義をもつてするを問わず、これらと同様の経済的性質を有するものをいう」のである、即ち金銭を受け入れる相手方が不特定多数の者であることが預り金の概念要素をなすものであるから、原判決の認定するように、不特定多数の者から多数回に亘り金銭を受け入れた場合であつても、これを包括的に観察し預り金禁止違反の一罪として処断すべきものと解するのを相当とする。されば、原判決が原判示所為を併合罪として処断したのは法令の適用を誤つたものであり、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。 同第二点について、原判決挙示の証拠によれば、被告人は昭和二十六年十二月頃金銭貸付業を目的とする株式会社Aを設立してその代表取締役となり、同会社の業務一切 いて破棄を免れない。論旨は理由がある。 同第二点について、原判決挙示の証拠によれば、被告人は昭和二十六年十二月頃金銭貸付業を目的とする株式会社Aを設立してその代表取締役となり、同会社の業務一切を統轄していたがに同会社にはその設立の当初より貸付資金が皆無であつたため、該資金を獲得する方法として、期間満了の時において一定の割合による配当金を付して返還することを契約の内容とする利殖投資金名義の預り金を一般より募集することを企図し、その情を知つているC外数名の従業員をして右既定の計画に基き原判決別表記載のとおり不特定多数の者から多数回に亘り右趣旨の金銭の受入をなさしめ、以て右従業員等と共謀の上会社の業務に関し貸金業等の取締に関する法律第七条第一項の規定に違反して預り金をなした事実を認定することができる。 所論は、被告人は昭和二十八年初頃から会社業務の執行権及び従業員に対する指揮監督権を奪われた旨主張するのであるが、所論引用の証拠によるも右の主張事実を認めるに由なく、却つて原判決挙示の証拠に当審において取り調べた証人Cの証言を綜合すれば、被告人はその頃より劇場の経営に関係するようになつたため、会社に出勤する回数がその以前程に多くはなくなつたが、依然として名実共に会社の代表取締役としてその業務全般を総轄する責任者の地位にあつたことを認めうるのである。従つて、被告人は所論のように箇々の契約に直接関渉しなかつたとしても預り金禁止違反の所為の共同正犯としての罪責を免れることはできない。されば、論旨中被告人が責任者の地位になかつたことないしは実行行為に関与したかつたことを理由としてその罪責を否定する部分は採用しえないが、原判決が罪となるべき事実として原判示のように被告人が単独で本件預り金禁止違反の所為をなしたという趣旨の認定をしたのは失当であつて誤 たかつたことを理由としてその罪責を否定する部分は採用しえないが、原判決が罪となるべき事実として原判示のように被告人が単独で本件預り金禁止違反の所為をなしたという趣旨の認定をしたのは失当であつて誤認と解するの外はなく、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点においても破棄を免れない。 論旨は結局理由がある。よつて、爾余の控訴趣意に対する判断は後記自判の際自ら示されるのでこれを省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条第三百八十二条により原判決を破棄し、同法第四百条但書により当裁判所は改めて次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)被告人は静岡県吉原市ab番地のcに本店を有し金銭貸付業を目的とする株式会社Aの代表取締役であつて同会社の業務一切を統轄しているものであるが、C外数名の従業員と共謀の上、同会社の業務に関し、貸付資金を獲得するため、別表記載のとおり、昭和二十八年一月十三日頃から昭和二十九年一月二十九日頃までの間七十六回に亘り、宮城県登米郡d町字ef番地のg所在の同会社D営業所において、B外六十二名から、一口の出資金(利殖投資金名義)を五千円ないし二十万円、期間を一箇月ないし一年と定め、右期間満了の時において右出資金に月三分ないし五分の配当金を付した金額を給付する契約の下に、それぞれ約束手形を振出し交付して合計金二百二十七万四干円を受け入れ、以て預り金をしたものである。 (証拠の標目)原判決の挙示する証拠の標目と同一であるから、これを引用する。 (法令の適用)被告人の判示所為は昭和二十九年法律第百九十五号出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律附則第十一項により貸金業等の取締に関する法律第二十一条第一項第十八条第二号第七条第一項罰金等臨時措置法第二条に該当するので、所定刑中懲役刑を選 五号出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律附則第十一項により貸金業等の取締に関する法律第二十一条第一項第十八条第二号第七条第一項罰金等臨時措置法第二条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内において被告人を懲役壱年に処し、情状に鑑み刑法第二十五条第一項を適用し本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、原審並びに当審における訴訟費用の負担につき刑事訴訟払第百八十一条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官松村美佐男裁判官蓮見重治裁判官有路不二男)
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