令和7年2月26日宣告令和元年(わ)第814号、第940号、第1105号強要未遂、恐喝未遂、恐喝各被告事件判決 主文 被告人両名はいずれも無罪。 理由 以下、括弧内の番号等は事実認定に使用した主な証拠であり、証拠等関係カードにおける検察官又は弁護人請求証拠の番号(一部同意書証について特にその旨断らない。)、公判供述として証人名又は被告人名(公判期日回数を区別しない。)で表す。 第1 各公訴事実 1 令和元年9月25日付け起訴状記載の公訴事実(恐喝)a 労働組合b 支部(以下「b 支部」という。)の執行委員長である被告人甲及び副執行委員長である被告人乙は、b支部の組合員7名が社員として在籍していた有限会社c社(以下「c社」ということがある。)の解散に際して、d協同 組合(以下「d協組」という。)の理事らが同社の設立に関与していたことから、d協組がb支部に対して、同社を退職する組合員7名の退職金などを支払う必要があるなどと因縁を付けてd協組から現金を脅し取ろうと考え、共謀の上、平成25年(2013年)3月頃、大阪市内のb支部3階応接室において、被告人甲が、d協組理事のAに対し、前記組合員7名の退職金などとの名目で解 決金1億5000万円を支払う必要がある旨を言い、d協組が任意にその支払に応じなかったことから、平成26年(2014年)3月5日から同月10日までの間及び同年6月2日から同月10日までの間、b支部組合員をd協組に加盟する生コンクリート(以下「生コン」という。)製造会社の敷地内に滞在させ、各社の従業員らの動静を監視させるなどして、各社の生コンの出荷を阻止 し、同月12日、京都市内のホテルの一室において、被告人乙がAらに対し、 前記解決金の 。)製造会社の敷地内に滞在させ、各社の従業員らの動静を監視させるなどして、各社の生コンの出荷を阻止 し、同月12日、京都市内のホテルの一室において、被告人乙がAらに対し、 前記解決金の支払を要求した上、同月26日及び同月27日、前同様の方法で、各社の生コンの出荷を阻止し、もしその要求に応じなければ、Aらd協組理事の身体、財産及びAらが経営する会社の営業等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、同年8月20日、d協組の理事会において、b支部に対して現金1億5000万円を支払うことを決定させ、よって、同月27日、前記 ホテル280号室において、被告人乙がAから現金1億5000万円の交付を受け、もって人を恐喝して財物を交付させた。 2 訴因変更後の令和元年8月7日付け起訴状記載の公訴事実(恐喝)被告人両名は、かねてからd協組に加盟する生コン製造会社がb支部の要求に応じない場合に、b支部が各社の生コンの出荷を阻止するなどの妨害行為を 繰り返した結果、d協組の各理事がb支部を畏怖していることに乗じ、因縁を付けて現金を脅し取ろうと考え、共謀の上、平成28年(2016年)10月26日、京都市内の喫茶店において、d協組理事のAに対し、d協組に加盟するe 株式会社(以下「e 社」という。)が破産申立てをしたことに伴い、d協組から同社に割り当てられていた生コン納入業務のシェアがd協組に加盟する他 の生コン製造会社6社に分配されたのであるからd協組はb支部に解決金6000万円を支払う必要がある旨言い、Aを介してd協組理事長のBに同要求を伝えさせ、さらに、同年11月1日、前記ホテルにおいて、Aらに対し、d協組はb支部に解決金6000万円を支払う必要がある旨言い、もしその要求に応じなければ、Aらの身体、財産及びAらが経営す 同要求を伝えさせ、さらに、同年11月1日、前記ホテルにおいて、Aらに対し、d協組はb支部に解決金6000万円を支払う必要がある旨言い、もしその要求に応じなければ、Aらの身体、財産及びAらが経営する会社の営業等に危害を加 えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、同年11月7日、d協組の理事会において、b支部に対して現金6000万円を支払うことを決定させ、よって、同月16日、前記喫茶店において、Aから現金6000万円の交付を受け、もって人を恐喝して財物を交付させた。 3 令和元年7月10日付け起訴状記載の公訴事実第1(強要未遂) 被告人両名は、株式会社f(以下「f社」ということがある。)取締役Cらを 脅迫して、同社の日雇運転手であるb支部組合員Dを正社員として同社に雇用させ、更に同社がDを雇用している旨の就労証明書を同社に作成・提出させようなどと考え、b支部の執行委員であるE及びF並びにb支部の組合員であるGと共謀の上、平成29年(2017年)10月16日から同年12月1日までの間、京都府木津川市所在の同社事務所に多数回にわたって押し掛けて、C らに対して、同社がDを正社員として雇用すること及びDを雇用している旨の就労証明書を作成・提出することなどを執ように求め、更に同月2日以降、同社周辺にb支部組合員をたむろさせ同社従業員らの動静を監視させるなどした上、同月4日午後3時47分頃から同日午後4時38分頃までの間、前記事務所に押し掛けた上、Cらに対し、Eが「何が弁護士や、関係あらへんがな、書 いてもらわなあかん。」、「お前も何や、何ケチつけとんねん、うちの行動に。こらぁ。おいっ。」、「ほな解決せんかい。」などと怒号しながら、Cに示していた就労証明書を机にたたきつけ、Fが「何をぬかしとんねん、われぇ、おい、こらぁ 前も何や、何ケチつけとんねん、うちの行動に。こらぁ。おいっ。」、「ほな解決せんかい。」などと怒号しながら、Cに示していた就労証明書を机にたたきつけ、Fが「何をぬかしとんねん、われぇ、おい、こらぁ、ほんま。労働者の雇用責任もまともにやらんとやな。団体交渉も持たんと、法律違反ばっかりやりやがって。こら。こんなもんで何ぬかしとんねん、 こら、われ、ほんま。」などと怒号して、Dを同社の正社員として雇用すること等を要求し、もしこの要求に応じなければ、C及びその親族の身体、自由、財産等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、もってCをして義務なきことを行わせようとしたが、Cがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかった。 4 令和元年7月10日付け起訴状記載の公訴事実第2(強要未遂、恐喝未遂)被告人両名は、b支部の組合員が、Dを正社員として雇用することなどを求めて、f社の事務所に多数回にわたって押し掛け、更に同社周辺にたむろして同社従業員らの動静を監視するなどした結果、同社代表取締役Hがb支部を畏怖していることに乗じ、前記監視行為を中止するための条件として、同社が所 有する生コン製造プラントを同社に解体させるとともに同社が所有するミキサ ー車1台を喝取しようと企て、g協働組合(以下「g協組」という。)代表理事のI及びg協組理事のJと共謀の上、平成29年(2017年)12月28日、前記事務所において、Iが、Hに対して、生コン製造プラントの解体及びミキサー車1台の譲渡を同社が誓約する旨の文書を示した上、「これにはんこついてくれたら、連帯は一切手を引くと言うてるから。中身確認して、はんこつい てくれ。」、「はんこつかんかったら、監視はずっと続くし、大変なことになるんと違いますか。」などと申し向け、平成30年 いてくれたら、連帯は一切手を引くと言うてるから。中身確認して、はんこつい てくれ。」、「はんこつかんかったら、監視はずっと続くし、大変なことになるんと違いますか。」などと申し向け、平成30年(2018年)1月16日頃、Iが電話で、京都府内にいたHに対して、「連帯は解体を始めるまでとことん監視活動を続けると言っている。」などと申し向け、更に同年4月20日午前10時50分頃から同日午後0時20分頃までの間、前記事務所において、IがHに 対して、「車1台、でまあ潰すと。もうこれで一切手を引きましょうというのは、一般の常識から言うたら、もうそんなん口惜しい話です。なんで車1台やらなあかんと、うちの車やと。」、「あいつらには一般常識の話は通用しないんで。」、「だから話がつけばもう来ませんよ。だからミキサー1台やって、向こうも潰すと。」などと申し向け、生コン製造プラントの解体及びミキサー車1台の譲渡 を要求し、もしこの要求に応じなければ、H及びその親族の身体、自由、財産等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、もってHをして義務なきことを行わせようとした上、Hからミキサー車1台を喝取しようとしたが、Hがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかった。 第2 前提事実 関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 1 b支部(a 労働組合b 支部)(1) b支部は、関西地区におけるセメント・生コン産業及び運輸・一般産業に関連する労働者で組織され、昭和40年(1965年)10月17日に設立された産業別・職業別労働組合である。 (2) b支部においては、年1 回開催される定期大会で年間の組合の活動方針や ストライキ権、予算等の具体的事項について決定し、これらの決定を執行し、緊急事項を処理する機関と である。 (2) b支部においては、年1 回開催される定期大会で年間の組合の活動方針や ストライキ権、予算等の具体的事項について決定し、これらの決定を執行し、緊急事項を処理する機関として常任委員会及び執行委員会が置かれている。 常任委員会は執行委員長、副執行委員長、書記長、書記次長、財政部長で構成されており、執行委員会は常任委員会の構成員と執行委員とで構成されている。b支部では、日常の活動単位として、組合員のいる職場や地域別に分 会が、地域別にブロックがそれぞれ置かれ、ブロックごとに1名の執行委員とブロック長といった役職が置かれている。常任委員会については週に1回、執行委員会については月に1、2回開催されていた。 常任委員会における決定事項は、執行委員会を通じてブロックや分会に周知されていた。 (3) b支部では、組合員がその就労する企業で争議行為等を行う場合、当該企業で就労していない組合員も動員して争議行為等を行っており、過去には、ストライキと称して、多数の組合員が生コン製造プラントに押しかけ、ミキサー車の前に立ちはだかるなどして生コンの出荷を実力行使をして阻止することもあったが、b支部によるストライキの通告によって企業側が出荷を自 粛した場合には、組合員はその動静を監視するなどしていた(以下、怠業のみならずこのような動静監視等も含めて「ストライキ」ともいう。)。 また、b支部では、労働争議や組合活動に関連して、組合員が就労していない企業に対しては、コンプライアンス啓蒙活動(以下「コンプラ活動」という。)と称して、対象企業の生コン納入先である工事現場等において、諸法 令や品質管理基準等の遵守事項違反がないかを監視し、その違反があれば是正を求めたり、ビラ配布や街頭宣伝活動等を行ったりして、当 )と称して、対象企業の生コン納入先である工事現場等において、諸法 令や品質管理基準等の遵守事項違反がないかを監視し、その違反があれば是正を求めたり、ビラ配布や街頭宣伝活動等を行ったりして、当該企業に対して圧力をかけることもあった。 2 被告人両名のb支部における地位等(1) 被告人甲は、b支部の設立時から令和3年(2021年)10月頃までの 間、執行委員長の地位にあった。 (2) 被告人乙は、平成14年(2002年)10月にb支部に加入し、平成15年(2003年)10月から平成25年(2013年)10月までは執行委員の地位に、同月から令和3年(2021年)10月までは副執行委員長の地位にあり、いずれの期間においても、京津ブロック(当初は京都ブロック)を担当していた。 3 京都府下における生コン生産・運送等の業界に関する事情(1) 生コンは、建設構造物上不可欠な主要資材であり、その建設基礎資料としての重要性から、同業者間の過当競争を正常化して企業の経営基盤を安定させ、品質の向上と安定供給の確保を図る必要があり、そのための方策として、かねてより、協同組合を設立して、共同販売事業を実施するなど、協同組合 活動を充実させることなどが必要である旨が通商産業省(当時)作成の生コンクリート製造業実態調査報告書において指摘されており、京都府においても、d協組等の協同組合による生コンの共同販売事業の形態がとられてきた。 例えば、d協組においては、理事らの協議によって生コンの販売価格が設定された上、個別の加盟社が受注するのではなく、d協組がいわゆるゼネコン や工事業者等から生コンの販売を受注し、もともと決められた割合に応じて加盟社に対して生コンの製造・出荷を割り当てるなどしていた。 (2) 協同組合やb支部で はなく、d協組がいわゆるゼネコン や工事業者等から生コンの販売を受注し、もともと決められた割合に応じて加盟社に対して生コンの製造・出荷を割り当てるなどしていた。 (2) 協同組合やb支部では、本件各当時、協同組合に加入していない生コン製造販売業者(アウトサイダー、アウトなどと呼ばれており、以下「アウト業者」ということがある。)が生コンを安値で販売していることが原因で生コン 価格が不当に下落していると考えていたことから、アウト業者対策が重要な課題とされていた。 第3 令和元年9月25日付け起訴状記載の公訴事実(恐喝)について 1 主たる争点等(1) d協組側がc社を解散させたいとの意向を示したことを端緒として、d協 組側とb支部側との間で協議が行われ、b支部の組合員によってd協組に加 盟していた7社のうち5社に対してストライキと称する出荷を防ぐための動静監視等の活動が行われたこと、d協組側からb支部に対して解決金として現金1億5000万円が交付されたことなどは証拠上明らかに認められ、当事者間にも争いはない。 (2) 被告人両名の弁護人ら(以下、単に「弁護人ら」という。)は、被告人両名 の方から解決金1億5000万円の支払を求めた事実はなく、d協組側との合意内容に即した履行がされなかったことから、正当な争議行為として前記活動等を行ったにすぎないし、d協組の理事らが畏怖した事実も認められないことなどから、被告人両名は無罪である旨主張する。 本件の主たる争点は、①被告人両名が共謀して、d協組加盟の5社に対し てb支部組合員による前記動静監視等の活動を行わせるなどした上で解決金1億5000万円の支払を求めたことがd協組の理事らを畏怖させるに足りる害悪の告知に該当するか、②被告人両名による前記各行 てb支部組合員による前記動静監視等の活動を行わせるなどした上で解決金1億5000万円の支払を求めたことがd協組の理事らを畏怖させるに足りる害悪の告知に該当するか、②被告人両名による前記各行為によってd協組の理事らが畏怖したと認められるか、③被告人両名の前記各行為が違法性阻却事由としての正当行為(労働組合法1条2項、刑法35条)に当たらない と認められるかである。なお、検察官が本件を起訴したことが公訴権の濫用に当たるかも争点となっている。 2 認定事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1) d協組(j社クリート協同組合)等 ア d協組は、その加盟社の取り扱う生コンの共同販売等を目的として、昭和52年(1977年)9月1日に設立された中小企業等協同組合法上の協同組合であり、その加盟社は、基本的には、h株式会社(以下「h社」という。)、e 社(e 社株式会社)、株式会社i(以下「i 社」という。)、j株式会社(なお、同社は平成15年(2003年)頃に廃業し、平成16年 (2004年)頃から株式会社jとして設立し、さらに平成27年(20 15年)には同社から新j株式会社に事業承継が行われているが、以下、時期で区別することなく「j社」という。)、k株式会社(以下「k社」という。)、l株式会社(以下「l社」という。)及び株式会社m(以下「m社」という。)の7社であった。 イ d協組では、理事会によってその活動方針が決められており、理事会は 加盟社から一人ずつ選出された7名の理事によって構成されていたところ、i 社の取締役であったKは昭和52年(1977年)から、j社の代表取締役であったAは昭和54年(1979年)頃から、e 社の代表取締役であったLは昭和60年(1985年)から、l社 ていたところ、i 社の取締役であったKは昭和52年(1977年)から、j社の代表取締役であったAは昭和54年(1979年)頃から、e 社の代表取締役であったLは昭和60年(1985年)から、l社のM及びm社の代表取締役であったNはいずれも平成8年(1996年)から、h社の代表取締役 であったOは平成13年(2001年)から、k社の代表取締役であったB(B喜和)は平成18年(2006年)から、それぞれd協組の理事の地位にあった。また、d協組の活動方針等については、理事のうち理事長であるO、副理事長兼財務担当であるL及び営業本部長であるKの3名で構成された執行部の意向が反映されることが多く、取り分けKの発言力は 大きかった。 (2) c社を巡る主な出来事ア c社は、d協組の執行部、すなわちO、L及びKの方針の下、一般貨物自動車運送事業等を目的とし、平成9年(1997年)12月5日、有限会社nを商号変更して設立された有限会社であり、当初、Kの知人である Pが代表取締役の地位にあったが、d協組はその設立時にPに対して6000万円を貸し付けていた。 c社は、生コン輸送に供する小型ミキサー車を扱うd協組加盟社専属の傭車会社として機能しており、その受注する仕事は全てd協組からのものである上、所有するミキサー車の車体にはd協組を示すKRCCの文字が 印字されていたほか、小型ミキサー車の傭車会社としてc社を利用しない 加盟社に対しては、d協組において生コンの出荷の割り当てを制限するなどしていた。 イ b支部は、平成14年(2002年)10月15日、Pに対し、b支部執行委員長の被告人甲及びc社分会長連名の書面によって、c社の従業員がb支部に加入して同社内にb支部の分会ができたことを通知する(b支 部ではこれ 年(2002年)10月15日、Pに対し、b支部執行委員長の被告人甲及びc社分会長連名の書面によって、c社の従業員がb支部に加入して同社内にb支部の分会ができたことを通知する(b支 部ではこれを公然化と称している。)とともに、団体交渉の要求と分会からの要求事項を告げた。 しかし、Pがこれらの対応を拒絶し、さらに従業員の中からb支部組合員を探し出し、退職勧奨を行うなどしたことから、b支部は、同月22日、大阪府地方労働委員会に対し、c社に団体交渉に応じることなどを命じる よう不当労働行為救済申立てを行うとともに、同月23日付けで、c社の設立の経緯や使用者性の強さを根拠としてd協組加盟各社に対し、被告人甲ら名義の書面によって、c社が違法行為を改めるようd協組も厳しい対応を行うことなどを求める要請書を提出し、さらに、d協組のうちb支部組合員が在籍している加盟社(専属傭車会社のみに在籍している場合も含 む。)、すなわちj社、h社、l社、e 社、k社(以下「加盟5社」という。)に対し、ストライキと称して、多人数で各製造プラントに押しかけたり、ミキサー車の前に立ちはだかったりするなどして生コンの出荷妨害を行うなどした。 ウその後も、d協組は、c社に関するb支部との労働争議等について、c 社側としてb支部に対応するなどしており、平成20年(2008年)5月頃も、加盟5社はb支部によるストライキを受けていた。 生コンが練り始めから90分以内に打設しなければ廃棄処分となってしまうという特性等から、その頃には、ストライキ通告があった場合には、d協組において加盟5社には、出荷を割り当てないようにし、その結果、 加盟5社では、生コンの製造・出荷を自粛し、ストライキを受けていない i 社やm社がそれらの分を引き受けて出荷 には、d協組において加盟5社には、出荷を割り当てないようにし、その結果、 加盟5社では、生コンの製造・出荷を自粛し、ストライキを受けていない i 社やm社がそれらの分を引き受けて出荷するなどの対応をしていたが、全ての受注に対応できていたわけではなく、また、ゼネコン等の発注元との関係で信用がなくなることなどが問題視されていた。 エ前記ウのストライキについては、d協組からb支部側に対して6000万円の解決金を支払うとともに、平成20年(2008年)6月1日から 被告人乙ほかb支部組合員6名がc社の正社員になることなどによって解除された。 これ以降、被告人乙らの給料のみならずb支部の組合活動費の一部やb支部が支援する相撲部屋後援会費、ゴルフコンペ等の費用についてもc社が支出することとなり、c社において不足する金額については、d協組か らc社に対する貸付名目で支払われていた。加えて、c社が所有ミキサー車の数を減らしたことやアウト業者による生コン販売価格の値下げ攻勢等の影響によってc社の売上が減少したことで、平成20年(2008年)8月から平成26年(2014年)7月までのd協組からc社への貸付は合計4億円以上に上った。 オ平成20年(2008年)10月27日には、それまでもb支部との交渉窓口を担っていたAがc社の取締役に就任し、同年11月には、c社がb支部に対し、組合差別や偽装閉鎖等といった度重なる不当労働行為を謝罪した。 カ平成24年(2012年)2月から3月にかけて、d協組側の依頼に基 づき、反社会的勢力と噂される人物らが被告人甲の下を訪れ、金銭の支払と引き換えにc社の閉鎖を認めるよう求めた。なお、この頃、Aはc社の取締役を辞任し、前記人物らのうち1名が取締役に就任している。 被告人甲 社会的勢力と噂される人物らが被告人甲の下を訪れ、金銭の支払と引き換えにc社の閉鎖を認めるよう求めた。なお、この頃、Aはc社の取締役を辞任し、前記人物らのうち1名が取締役に就任している。 被告人甲は、前記要求を断り、この出来事を契機として平成24年(2012年)4月、加盟5社に対してストライキが実施され、j社、h社、 l社及びk社については、同社らが、d協組がc社を意図的に債務超過に 陥れたことなどを謝罪する旨記載した謝罪文を作成したことによってストライキは解除された。他方、e 社については、同謝罪文の作成を拒否したことなどから、同年6月25日にd協組からb支部に対して4000万円程度の解決金が支払われるまでの間、前記ストライキが継続した。 なお、b支部としては、c社の閉鎖(清算)問題については、d協組が c社廃業後の組合員の雇用を確保するか、d協組の責任でc社を黒字経営にした上で事業を継続させるかの二者択一であるとの見解を示しており、また、d協組側に対し、c社の代表者をAに戻すよう要求していた。 キ b支部は、平成25年(2013年)1月1日、Kがc社に関する労働問題の足かせになっているとして、多数の組合員がKの自宅前に集まり、 シュプレヒコールを行うなどした(元旦行動と呼ばれる。)。 ク Aは、Kからc社を潰すためにb支部との間で金銭解決を行うよう指示を受け、平成25年(2013年)3月頃から、被告人甲と面談し、d協組から解決金を支払うことでc社を廃業する方針について打診したが、被告人甲は、解決金だけでの解決は難しく、同社で働くb支部組合員7名の 雇用保障等が必要である旨回答した。 なお、解決金の金額について、当初幾らの金額が提示されたのか、Aと被告人甲のどちらが1億5000万円を提示したのかについ く、同社で働くb支部組合員7名の 雇用保障等が必要である旨回答した。 なお、解決金の金額について、当初幾らの金額が提示されたのか、Aと被告人甲のどちらが1億5000万円を提示したのかについては争いがある。 ケ Aは、平成25年(2013年)4月4日、Bに対し、c社の清算に関 するb支部との協定案の内容について、同社に在席する組合員7名のうちの被告人乙1名についてはb支部の預かりとし、他の6名をb支部系列の会社(o 有限会社。以下「o 社」という。)に移籍させた上、d協組加盟各社が1台ずつミキサー車を譲渡し、前記6名分について優先的に傭車契約を依頼するほか、Kに口止めされていて金額は言えないものの解決金を支 払う内容であることを告げた。これを聞いたBは、十分に合格点である旨 回答した。 また、Lは、同月12日頃、弁護士に依頼し、b支部とd協組を当事者とするc社清算に関する協定書案を作成した。同協定書案では、d協組がb支部に対して解決金1億5000万円を支払うこと、大型ミキサー車6台を譲渡すること、それらが履行された場合、b支部はd協組に一切要求 しないことを約束するといった内容であった。 コ他方、被告人甲は、Aから提示されたc社の清算に関する協定内容案を京津ブロックや分会で協議させたが、その協議結果は、飽くまでもd協組に雇用保障を求めるとの意見であった。そのため、d協組の雇用責任を条項に盛り込むことについて強く反対するKの意向とは折り合わなかった。 サその後、j社、k社、h社及びl社の4社(以下「加盟4社」という。)は、平成25年(2013年)10月29日に開催された京都集団交渉の席上において、b支部との間で、c社の清算に関して協定した。具体的な協定内容は、平成26年(2014年)2月 「加盟4社」という。)は、平成25年(2013年)10月29日に開催された京都集団交渉の席上において、b支部との間で、c社の清算に関して協定した。具体的な協定内容は、平成26年(2014年)2月末を期限として、①c社を廃止し、組合員7名中6名をo 社に移籍する、②大型ミキサー車6台を無償 で譲渡する、③6台については、傭車の順番1番から6番までを優先配車とする、④傭車の料金は1台4万5千円/1日(定時)とする、⑤協定の内容をd協組が遵守することを保証するなどというものであった。なお、解決金として1 億5000万円を支払うことは前提とされていた。 もっとも、前記協定締結時、同席していたLは、前記協定内容はd協組 で決まっておらず、異議がある旨発言した。 シ b支部は、平成26年(2014年)1月1日、Kがc社に関する労働問題の足かせになっているとして、被告人乙の指示の下、多数の組合員がKの自宅前に集まり、シュプレヒコールを行うなどした。 ス b支部は、d協組が前記サの協定内容を履行しなかったことから、平成 26年(2014年)3月5日から同月10日までの間、加盟5社に対し、 複数名の組合員を各工場敷地内に赴かせ、これからストライキに入る旨告げた上で事務所等の動静を監視し(以下「本件ストライキ①」という。)、残り2社(i 社、m社)に対しては、コンプラ活動を行った。なお、前記ウのとおり、加盟5社においては出荷を自粛したが、h社については、京都方面の出荷のみ自粛し、大津方面への出荷は構わない旨b支部から告げら れていた。 本件ストライキ①については、d協組側がb支部に対して協定内容の履行を前向きに検討する旨伝えたことで、同日、解除された。 セ被告人甲は、平成26年(2014年)3月13日、d協組の理事ら いた。 本件ストライキ①については、d協組側がb支部に対して協定内容の履行を前向きに検討する旨伝えたことで、同日、解除された。 セ被告人甲は、平成26年(2014年)3月13日、d協組の理事らが出席している近畿地区生コン関連団体懇談会において、約束を履行しない からストライキになっている、今、ストライキをすれば潰れるところが出てくるかもしれないが、それでもストライキせざるを得ない旨発言した。 ソ加盟4社とb支部は、平成26年(2014年)3月17日付けで協定書を交わした。同協定書の内容は、同年5月末までを期限とし、d協組が、①o 社に移籍した6名6台については1台5万5000円/1日(定時) として最低20日分を保障すること、②o 社が倒産等した場合は同6名の雇用を確保すること、③本協定の履行責任はd協組であることを確認すること、④合意に当たりd協組がb支部に対して解決金を支払うことのほかは、前記サの協定内容と同趣旨であり、解決金が1億5000万円であることは前提とされていた。 タその後も、集団交渉の場面で被告人甲らと加盟5社の理事らとの間で前記ソの協定内容について確認するも、協定内容が履行されないことから、被告人甲は、平成26年(2014年)5月31日、b支部の中央委員会において、5月末までに解決すると言いながら履行されておらず、その履行を妨害している会社がある、約束を履行しなければどうなるか、来週か ら直ちに行動を起こすなどと発言した。その上で、b支部は、同年6月2 日、d協組が前記協定内容を履行しないことを理由に、加盟5社に対して前同様にストライキ(以下「本件ストライキ②」という。)を開始した。なお、加盟5社において出荷を自粛したことなどは従前のとおりである。 本件ストライキ②は、A 行しないことを理由に、加盟5社に対して前同様にストライキ(以下「本件ストライキ②」という。)を開始した。なお、加盟5社において出荷を自粛したことなどは従前のとおりである。 本件ストライキ②は、Aが被告人乙に対して協定書の内容を履行するなどと伝えたことで、e 社以外の4社については翌日に、e 社については同月 10日に解除された。 チ被告人乙は、平成26年(2014年)6月12日、A、L、B、Mらが参加する話合いの場において、c社の問題について、解決金の支払い方を含む問題の解決についてどうしていくのか、いついつまでにどうするというものが明示されなければ、これはまた違う問題に発展していくなどと 発言し、期限として同月25日を告げた(以下「本件要求行為①」という。)。 ツ d協組の理事7名は、平成26年(2014年)6月24日、c社の問題について話し合ったところ、Kは、Aに対し、3月の協定を破棄するようもう一度話して来いと告げた上、納得する金銭であれば手切れ金としていくらでも支払うが、金の根拠の裏付けがない、ミキサー車分を合わせれ ば3000万円、4000万円の退職金になる、言うことをきかないととめると脅されているなどと発言した。 テ b支部は、平成26年(2014年)6月26日、同月25日までに協定内容が履行されなかったことから、加盟5社に対して前同様にストライキ(以下「本件ストライキ③」といい、本件ストライキ①及び②と併せて 「本件各ストライキ」という。)を開始した(なお、加盟5社において出荷を自粛したことなどは従前のとおりである。)。その後、同月28日、Aが被告人甲に対し、前記ソの条項①につき5000円値引きした1台5万円/1日(定時)にした上で協定内容を履行する旨約束したことで、本件ストライキ③は解除 前のとおりである。)。その後、同月28日、Aが被告人甲に対し、前記ソの条項①につき5000円値引きした1台5万円/1日(定時)にした上で協定内容を履行する旨約束したことで、本件ストライキ③は解除された。 ト平成26年(2014年)8月20日に開催されたd協組の理事会にお いて、c社への貸付名目で1億5000万円をb支部に支払うことが理事全員一致で可決され、同月27日、公訴事実記載のホテル客室において、Aから被告人乙に対して現金1億5000万円が交付された。 同金銭については、c社に在席していたb支部組合員7名に退職金として各200万円ずつ交付されたほかは、b支部の活動費として処理された。 d協組においては、前記金銭を用立てるため、d協組名義の定期預金6000万円を解約したほか、e 社及びKから各2000万円、Kの親族から5000万円を借り入れた。なお、前記各借入金は、後日、d協組から返済されている。 ナ加盟4社とb支部は、平成26年(2014年)9月1日付けで協定書 を交わした。その具体的な内容は、①o 社に移籍しない組合員1名についてはj社に移籍した上でその賃金等を加盟4社の均等割りで負担すること、②前記ソの条項①につき1台5万5000円であったのを5万円とすることのほかは、基本的には前記ソの内容と同趣旨であり、解決金1 億5000万円の支払が明記された。 ニ c社に在席していた被告人乙を含むb支部の組合員7名は、いずれも、平成26年(2014年)9月末をもって同社を退職し、同月30日、同社の清算は結了した。 3 脅迫該当性についての検察官の主張の概要検察官は、b支部が、d協組やその加盟各社に対して圧倒的な優位性を有し ており、これまでの争議の都度、その要求に応じるまでスト 算は結了した。 3 脅迫該当性についての検察官の主張の概要検察官は、b支部が、d協組やその加盟各社に対して圧倒的な優位性を有し ており、これまでの争議の都度、その要求に応じるまでストライキを実行して解決金の支払を含む要求に応じさせるスキームを確立していたことを前提として、(ⅰ)被告人甲が平成25年(2013年)3月頃にAに対して解決金1億5000万円の支払を要求した行為、(ⅱ)平成26年(2014年)3月及び同年6月に行われた本件各ストライキ、(ⅲ)被告人乙が同年6月12日にAら に対して解決金の支払を要求した行為(本件要求行為①)が、いずれも脅迫に 該当する旨主張する。 4 平成25年(2013年)3月頃に、被告人甲の方からAに対して、c社在籍のb支部組合員7名の退職金等の名目で1億5000万円の支払を要求したことが脅迫に該当すると認められるかについて((ⅰ)について)(1) 本件においては、Aから被告人甲に対していわゆる金銭解決を持ち掛けて いることからすれば、それに応じて被告人甲が具体的な金額を提案したとしても、そのことが直ちに脅迫に該当するとは解されない。ただ、Aからの申入れを奇貨として、法外な金銭の支払を要求したとすれば、脅迫に該当する場合もあり得ると考えられるが、ここで問題となっている1億5000万円については、c社閉鎖に伴う解決金であって、何ら根拠のないものとはいい 難いこと(前記2(2)ク~ニ)、h社及びk社がいわゆるh社闘争の解決のためにb支部に対して裁判上の和解に基づいて支払った金額が3億円であったことなどからすれば、本件において1億5000万円という金額が法外な金額であるということはできないし、また、後記5(2)及び(3)で詳述するとおり、スキーム等を前提とする検察官の主 が3億円であったことなどからすれば、本件において1億5000万円という金額が法外な金額であるということはできないし、また、後記5(2)及び(3)で詳述するとおり、スキーム等を前提とする検察官の主張には理由がないから、被告人甲が 具体的な金額を提案したとしても、脅迫に該当するとは解されない。 (2) また、前記の点を措くとしても、以下のとおり、被告人甲の方からAに対し、c社在籍のb支部組合員7名の退職金等の名目で1億5000万円の支払を要求した事実は認められない。 ア平成25年(2013年)3月頃、Aが被告人甲に対してc社を清算す るために話し合った際のやり取りについて、証人Aは、当公判廷において、要旨、①Kからは附帯条件のない金銭の支払のみでb支部との解決を図るよう指示を受けたが、Kとの間では解決金額について何ら話はしていなかった、②公訴事実記載のとおり、被告人甲からは、金銭支払だけでの解決は難しく、同社在籍の組合員の雇用保障等に加えて、退職金やそれに関す る諸経費等を含めて解決金1億5000万円程度は必要であると要求され た旨供述する。 これに対し、被告人甲は、当公判廷において、前記のやり取りの際、①Aから、Kが1億5000万円でc社を解散するという内容で解決して来いと言っているなどとして話を持ち掛けられた、②しかし、同社在籍の組合員の雇用の問題をはっきりさせることなく金銭の支払のみで解決する のは難しいと回答した旨供述するので、以下、この点について検討する。 イ前記2(2)カ、ク及びコのとおり、もともとd協組側がc社を清算するためにb支部に対して金銭を支払うことで解決を図ろうとしたこと、b支部としては、当初から、金銭の支払だけでは了承できず、d協組側がc社在籍の組合員の雇用を保障することが もとd協組側がc社を清算するためにb支部に対して金銭を支払うことで解決を図ろうとしたこと、b支部としては、当初から、金銭の支払だけでは了承できず、d協組側がc社在籍の組合員の雇用を保障することが必要であるし、そもそも同社の黒字化 によって問題を解決すべきであるとの方針に基づいてd協組側に回答していたことが認められるのであって、こうした経緯からすれば、c社清算の打診があった平成25年(2013年)3月当初の段階で、被告人甲の方からAに対して、c社を清算するために具体的な金額を示して解決金を要求するとは考え難い。かえって、d協組側からすれば、以前にも金銭解決 を図ろうとしたことでストライキ等の問題に発展していたこと(前記2(2)カ)、平成25年(2013年)3月頃、Aと被告人甲との間では、雇用保障に関する条件とともに解決金5000万円の支払での解決案について協議したものの、被告人甲が拒絶した形跡があること(被告人甲の手帳にある「キンサン5本」等の記載。)からすれば、同解決案を踏まえ、雇用保障 のない形での金銭解決を図ろうとして、Aの方から、以前に協議した金額よりも増額した1億5000万円という解決金額を提示したと考えても不自然ではない。 たしかに、前記2(2)ス、タ、ツ及びテのとおり、その後、d協組は、解決金の支払を含む協定内容の履行をせず、理事の集まりでもKやLが解決 金の額について根拠がないなどの不満を述べている。しかしながら、d協 組は、協定成立前の早い段階で、解決金額1億5000万円を前提にした協定書案を弁護士に依頼して作成している(前記2(2)ケ)上、雇用保障の条件面ではb支部との間で減額交渉が行われているにもかかわらず(同テ及びナ)、関係証拠を精査しても、協定締結に至るまでd協組側がb支部に を弁護士に依頼して作成している(前記2(2)ケ)上、雇用保障の条件面ではb支部との間で減額交渉が行われているにもかかわらず(同テ及びナ)、関係証拠を精査しても、協定締結に至るまでd協組側がb支部に対して解決金の減額を求めた形跡は全く見られない。また、前記理事の集 まりにおいて、Kは納得のいく金額であればいくらでも出す旨発言し、Mはこれまでのc社への支払分を考えれば、1億5000万円でも3年で元がとれる旨発言しているし、前記2(2)コのとおり、Kが問題視していたのは、解決金額よりも雇用保障の問題であったとみるほかなく、Lも、当公判廷において、同金額自体については問題はなかった旨供述している。こ れらの事情も併せて考慮すれば、d協組が協定内容の履行を渋り、あるいは理事同士で金額の不満を述べたという事情をもって、Aの方から1億5000万円という金額を提示した疑いを払拭することはできない。 以上のほか、Aの前記供述内容を裏付ける的確な証拠が見当たらないこと(検察官がA供述の裏付けとして主張〔論告要旨10、11 頁〕するAとB との会話〔前記2(2)ケ〕や協定書については、被告人甲の供述を前提にしても十分に説明がつくのであるから、いずれもA供述の裏付けと評価することはできない。)も踏まえれば、平成25(2013年)3月頃に、被告人甲の方からAに対し、c社在籍のb支部組合員7名の退職金等の名目で1億5000万円の支払を要求したと認めるには合理的な疑いが残る。 ウこれに対し、検察官は、当時のd協組の財政状態からすれば、d協組側が1億5000万円もの多額の解決金の支払を自ら提案することは考え難い旨主張する。 たしかに、平成25年(2013年)当時のd協組の財政状態は債務超過であったと認められる。しかしながら、そもそも、 が1億5000万円もの多額の解決金の支払を自ら提案することは考え難い旨主張する。 たしかに、平成25年(2013年)当時のd協組の財政状態は債務超過であったと認められる。しかしながら、そもそも、c社への資金提供自 体がd協組の財政を圧迫する要因の一つとなっていたのであり、一時的に 多額の金銭を支払うことになってでも、その要因を取り除こうと考えることはあり得べきことである。前記イで述べたとおり、金銭解決自体はd協組から申し出ている上、理事らの間でも金額自体は大きな問題とはされておらず、b支部との間で減額交渉がされた形跡もないことなどからすれば、d協組側から前記金額を提示したことがおよそあり得ないとまではいえな い。 したがって、検察官の前記主張は採用できない。 エ以上の次第であるから、検察官が脅迫行為の一つと主張する、平成25年(2013年)3月頃に、被告人甲の方からAに対し、c社在籍のb支部組合員7名の退職金等の名目で1億5000万円の支払を要求した事実 は認められない(なお、そもそも、被告人甲の方から1 億5000万円という金額を提示したとしても、脅迫に該当するとはいえないことは前述したとおりである。)。 5 本件各ストライキ及び本件要求行為①について((ⅱ)(ⅲ)について)(1) 本件各ストライキ及び本件要求行為①そのものの評価について ア本件各ストライキの経緯について(ア) 前記2(2)クからテによれば、(ⅰ)平成25年(2013年)10月29日の集団交渉の際、d協組加盟7社のうち加盟4社(j社、l社、k社及びh社)の理事4名は、b支部に対して、c社の閉鎖に伴って同社在籍の組合員6名のo 社への移籍等の内容を協定して平成26年(20 14年)2月までに履行する旨明 ち加盟4社(j社、l社、k社及びh社)の理事4名は、b支部に対して、c社の閉鎖に伴って同社在籍の組合員6名のo 社への移籍等の内容を協定して平成26年(20 14年)2月までに履行する旨明言しており、同集団交渉までには、c社を廃業する際の条件としてb支部に対して1億5000万円の解決金の支払がされることが想定されていたこと、(ⅱ)前記期限までに協定内容が履行されなかったことで本件ストライキ①が実施されるに至っていること、(ⅲ)同年3月17日頃には、加盟4社とb支部との間で、d協 組が履行責任を負うとの文言や解決金の支払の記載を含む協定書が交わ されていること、(ⅳ)その後、同年5月末までとの履行期限を徒過したことで本件ストライキ②が実施され、(ⅴ)さらに同年6月25日までとの履行期限を徒過したことで本件ストライキ③が実施されるに至ったことが認められる。 こうした事実経過を踏まえれば、b支部は、c社に在籍する組合員の 労働問題についての協定内容の履行を求めて本件各ストライキを敢行したと認められる。 (イ) 以上に対し、検察官は、c社の労働問題についてd協組は労働組合法7条の「使用者」に当たらず、また、加盟4社は、先行するストライキやそれを示唆する言動という圧力によって協定締結に応じざるを得なか ったのであるから、本件の解決金は本来何ら支払義務のないものであるなどと主張する。 しかしながら、前記2(2)のとおり、c社設立の経緯を含むd協組の関わりや10年以上にわたってc社の労働問題についてd協組が使用者側として実質的に対応していたこと、本件の協定がc社の雇用問題を解決 するためのものであったことは明らかである上、7名中4名の理事がd協組が履行責任を負う旨の条項がある協定に賛同していたこと、も として実質的に対応していたこと、本件の協定がc社の雇用問題を解決 するためのものであったことは明らかである上、7名中4名の理事がd協組が履行責任を負う旨の条項がある協定に賛同していたこと、もともとd協組側からc社を閉鎖するための条件交渉を提案した結果、1億5000万円の解決金の支払が協定内容となっていたという経過に加え、従前、b支部が労働争議の場面等でそれに比類する解決金の支払を受け る内容で和解等を行うこともあったことを併せ鑑みれば、本件の解決金が本来何ら支払義務のないものとまでは言い切れないし、d協組側の内部事情はともかく、少なくともb支部からすれば、d協組に対して前記協定内容の履行を求め、その実現のためにストライキを行おうとすることも自然な発想であったといえる。 したがって、検察官の前記主張を踏まえても、本件各ストライキの経 緯について、解決金名目で金銭を要求することが何ら理由がないなどとは認められない。 イ本件各ストライキの態様また、証拠上認定できる本件各ストライキの態様については、連続した6日間、2日間、又は9日間にわたり、b支部の組合員複数名が、加盟5 社の敷地にそれぞれ赴いた上で、無期限のストライキを通告し(なお、当日までにもストライキ通告はされている。)、出荷を防ぐべく、各プラント敷地内に滞在した上で事務所や従業員の監視行為を行い、h社については、大津方面への出荷は構わない旨告げ、出荷しようとするミキサー車運転手に対して出荷方面を確認したという程度にとどまっており、多人数で実力 行使をして生コンの出荷を阻止したり、威圧的な言動を行ったりしたとは認められない。証拠上は、ストライキの現場では、生コンの出荷を巡って言い合い等のトラブルすらなかったことがうかがえる。 ウ 行使をして生コンの出荷を阻止したり、威圧的な言動を行ったりしたとは認められない。証拠上は、ストライキの現場では、生コンの出荷を巡って言い合い等のトラブルすらなかったことがうかがえる。 ウ本件要求行為①の態様さらに、証拠上認定できる本件要求行為①の具体的態様については、被 告人乙が、Aらd協組の理事らが参加する話合いの場において、生コンの販売価格の値戻しについて協議した上で、c社の問題について、「5月いっぱいというような期限が過ぎてですね、6月2日からですね、また、再ストというような形になりましたけども、現行2日前までは、e 社のみが止まっていた」、「いったん2週間の期限をくくってですね、解決に向けて全 力で取り組むというような確認がありましたので、それを踏まえた部分の中で経営側に議論していただきたいという問題で、積み残してる問題があります。それは、解決金踏まえて。」、「解決金の支払い方はどうしていくのか」、「いついつまでにどうするというものが明示されなければ、これはまた違う問題に発展していきますよ」、「しかるべき回答をくださいと、2週 間で」、「現状の条件が下がる、下げてくれとかいう話ではないですよ、履 行するせえへんという話ですよ」などと発言したものである。その発言内容自体から、多人数で実力行使をして生コンの出荷を阻止することを示唆するものとは理解できないし、ストライキの実施さえ明示的には告げてもいない。また、その発言態度等についても、威圧的な言動がとられたとも認められず、終始落ち着いた話合いが行われていたことがうかがわれる。 エまとめ以上の事情によれば、本件各ストライキは、それ自体のみを取り上げて見る限り、d協組側が協定内容を履行しなかったことに応じてされたものであって、労働問 ていたことがうかがわれる。 エまとめ以上の事情によれば、本件各ストライキは、それ自体のみを取り上げて見る限り、d協組側が協定内容を履行しなかったことに応じてされたものであって、労働問題を解決するためという目的以外の目的を主として行ったものであるとか、あるいは、労務の不提供又は平和的な協力要請を超え るような態様での脅迫的な言動があったとまでは立証されていないというほかない。 したがって、前記経緯や態様からすれば、本件各ストライキそのものや、本件各ストライキの際に実際に行われたような態様でのストライキの実施を示唆して協定内容の履行を求めた本件要求行為①自体が、直ちに、人を 畏怖させるに足りる程度の害悪の告知、すなわち脅迫に該当すると評価することはできない。 (2) 本件における問題の所在ア以上に対し、検察官は、平成14年(2002年)5月頃までに行われていたb支部によるストライキと称する行為は、二、三十人の組合員がマ イクロバスでプラント内に立ち入り、ミキサー車の前に立ち塞がって出荷を阻止するなど違法な実力行使を伴うものであり、本件各ストライキ当時も、違法な実力行使を手段としてでも出荷を妨害する意図があったのであり、このことは、使用者側への圧力をかけるために業務を妨害する目的で違法なコンプラ活動を行っていたことからも裏付けられるとした上で、こ のようなストライキと称する行為が重ねられてきた結果、d協組の理事ら は、本件当時、b支部による要求に従わない場合には、違法な実力行使を手段として生コンの出荷妨害が行われ、d協組加盟各社の経営等に甚大な損害が生じることになるとの畏怖の念を抱いており、b支部がd協組の理事らのそのような畏怖に乗じて、ストライキや威力を背景に自らの要求に応じ て生コンの出荷妨害が行われ、d協組加盟各社の経営等に甚大な損害が生じることになるとの畏怖の念を抱いており、b支部がd協組の理事らのそのような畏怖に乗じて、ストライキや威力を背景に自らの要求に応じさせるスキームを確立していたことを踏まえれば、本件各ストライキ 及び本件要求行為①は人を畏怖させるに足りる害悪の告知に該当する旨主張するようである。 イところで、このような検察官の主張は、つまるところ、遅くとも平成14年(2002年)以降は、b支部がd協組に対してどのような要求をしても、それらはいずれも脅迫に該当するといっているに等しいが、仮に、 d協組の理事らが、b支部からストライキを受けることを恐れ、それを避けるためにb支部からの要求を全て受け入れざるを得ないと考えていたとしても、そのことから直ちにb支部による要求行為の全てが脅迫に該当するとは解し難い。そもそも、ストライキをはじめとする争議行為は、その性質上、労働組合が使用者に一定の圧力をかけ、その主張を貫徹すること を目的とする行為であって、業務の正常な運営を阻害することはもともと当然に予定されているものであるし、そうした意味で、使用者側がストライキを避けたいと考えることは当然の前提になっているといえる。 そして、刑法上は、飽くまでも構成要件に該当する行為が行われ、かつ、その行為が正当行為等として違法性が阻却されない場合に限ってはじめ て犯罪が成立するのであるから、ここでも、まずは構成要件である脅迫に該当する行為があったと認められるかが問題となる。 その上で、前記(1)で説示したとおり、本件各ストライキの態様それ自体が人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知とまでは評価し得ない以上、本件において、本件各ストライキ及び本件要求行為①が恐喝罪の脅迫に該 記(1)で説示したとおり、本件各ストライキの態様それ自体が人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知とまでは評価し得ない以上、本件において、本件各ストライキ及び本件要求行為①が恐喝罪の脅迫に該 当するといえるためには、それらが行われた当時の状況(各当事者の属性・ 関係性、それまでの経緯等)やその具体的な態様等に照らして、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があったと同視し得る必要があると解すべきであり、検察官の前記主張も、このような意味合いを主張するものとして理解することができる。 そこで、以下、このような視点をもって、検察官の前記主張に即して、 本件各ストライキが行われた際の状況や具体的な態様等に照らして、b支部の要求を飲まなければ、多人数の組合員がプラント内に立ち入り、ミキサー車の前に立ち塞がるなどして実力で出荷を阻止するなどの違法な実力行使を伴う態様でのストライキが行われるなどと相手方に想起させるものであったかどうかについて検討する。 (3) 過去のストライキ等を踏まえた検討ア関係証拠によれば、①平成2年(1990年)頃、h社での労働争議において、b支部の組合員多数が、関連会社の事務所を角材等で破壊し、同社従業員等にけがを負わせたり、生コンを搬出しようとするミキサー車の前に多数の組合員が立ち塞がって出荷を妨害したりしたこと(いわゆるh 社闘争。)、②また、平成14年(2002年)頃におけるc社に関するk社での労働争議においては、二、三十人のb支部組合員がプラント内に立ち入ってミキサー車の前に立ち塞がって生コンの出荷を阻止したり、e 社やl社では、同組合員がミキサー車に足を突っ込むなどしてその運行を妨害したりしていたこと、③他方で、その後は、ストライキ通告がされれば、 d協組 に立ち塞がって生コンの出荷を阻止したり、e 社やl社では、同組合員がミキサー車に足を突っ込むなどしてその運行を妨害したりしていたこと、③他方で、その後は、ストライキ通告がされれば、 d協組においてストライキ対象企業への生コン出荷の割り当てをなくすことなどによってストライキ対象企業が生コンの出荷を自粛するようになっており、それにより前記①及び②のような態様での同組合員の行動は見られなくなっていたこと(前記2(2)ウ)が認められる。 イたしかに、前記ア①や②のようにそれ自体が威力業務妨害等に当たり得 る行為を行うことを示唆して何らかの要求をした場合に、それが脅迫に該 当し得ることを否定するものではない。 (ア) しかしながら、前記ア③のとおり、本件各ストライキに至るまでの10年以上の期間において、相当回数のストライキが実施されていることがうかがわれるものの、そこでは、d協組ないしd協組加盟各社の自粛の結果とはいえ、前記のような威力業務妨害等に当たり得る行為が行わ れたり、行われようとしたりしたとの立証は何らなされていない。また、前記(1)イ及びウのとおり、本件各ストライキや本件要求行為①に際して、b支部側が、前記のようなかつての態様での出荷妨害等を行うことを明示的にしろ黙示的にしろ示唆したとの事実も何ら立証されていない。 (イ) この点について、d協組の理事らが、本件各ストライキによって生コ ンの出荷を自粛せざるを得なくなり、生コンの出荷を再開して会社経営上の損失等を防ぐために協定を履行せざるを得ないと考えるに至っていたとしても、前記(ア)の結論を左右するものではない。また、平成24年(2012年)当時のストライキに関して、当時、b支部の組合員であった証人Qは、出荷をしようとする動きがあれば、実力 るに至っていたとしても、前記(ア)の結論を左右するものではない。また、平成24年(2012年)当時のストライキに関して、当時、b支部の組合員であった証人Qは、出荷をしようとする動きがあれば、実力行使で出荷を妨 害することになる旨供述するものの、一部の組合員にそのような意気込みを有する者がいたとしても、それがその個人の意向を超えて被告人両名を含むb支部全体で共有されていたと認めるに足りる証拠はないし、そもそも、Qの前記供述を踏まえても、結局、d協組側の自粛によってそうした事態は生じなくなっていたことに変わりなく、前記(ア)の結論を 左右するものではない。 (ウ) 以上の事情からすれば、d協組とb支部との従前の関係性や本件に至る経緯等を踏まえても、d協組の理事らにとって、本件各ストライキや本件要求行為①を含む一連の金銭要求行為が違法な実力行使を伴う態様でのストライキが行われることなどを想起させるものであったとは認め られないというべきである。 ウしたがって、検察官の前記主張は採用できない。 (4) まとめ本件各ストライキや本件要求行為①を含む一連の金銭要求行為が脅迫に該当するとはいえない。 6 結語 以上のとおり、本件においては、恐喝罪の実行行為があったとは認められない。 そうすると、その余の点を考慮するまでもなく、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになるから、被告人両名は無罪である。 第4 訴因変更後の令和元年8月7日付け起訴状記載の公訴事実(恐喝)について 1 主たる争点等(1) e 社が破産を申し立てたことに起因して、b支部の組合員らがe 社のプラントを占拠したこと、被告人乙がd協組側に対して、同占拠に関連して金銭の支払を要求した結果、d協組からb支部 る争点等(1) e 社が破産を申し立てたことに起因して、b支部の組合員らがe 社のプラントを占拠したこと、被告人乙がd協組側に対して、同占拠に関連して金銭の支払を要求した結果、d協組からb支部に対して現金6000万円が交付されたことなどは証拠上明らかに認められ、当事者間にも争いはない。 (2) 弁護人らは、被告人乙は、d協組のAから、e 社のプラントについてアウト業者に購入されないように同プラントを占拠するよう頼まれ、その費用等も補償する旨告げられており、被告人乙とd協組との協議の結果、6000万円が支払われることが合意され、その合意に基づいて現金が交付されたにすぎず、被告人乙による恐喝行為は行われていないし、前記支払要求は正当 な組合活動である、また、被告人甲は恐喝について共謀もしていないから、被告人両名は無罪である旨主張する。 本件の主たる争点は、①被告人乙がd協組に6000万円の支払を要求したことがd協組の理事らを畏怖させるに足りる害悪の告知に該当するか、②被告人乙による前記支払要求によってd協組の理事らが畏怖したと認められ るか、③被告人両名が恐喝について共謀したと認められるか、④被告人両名 による行為が違法性阻却事由としての正当行為(労働組合法1条2項、刑法35条)に当たらないと認められるかである。なお、検察官が本件を起訴したことが公訴権の濫用に当たるか否かも争点となっている。 2 認定事実前記第3の2で認定した事実関係に加えて(なお、同事実関係の認定根拠と して掲げた証拠には、検察官において本件の立証に用いていないものも含まれるが、それらの証拠を除いても同様の事実を認定することができる。)、関係証拠によれば、以下の事実が認められる(以下、特に断りのない限り、平成28年のことと おいて本件の立証に用いていないものも含まれるが、それらの証拠を除いても同様の事実を認定することができる。)、関係証拠によれば、以下の事実が認められる(以下、特に断りのない限り、平成28年のこととする。)。 (1) d協組の体制変更等について ア d協組では、平成27年(2015年)1月にはl社のMから同社取締役工場長のRに、同年11月から12月にかけて、h社のOから同社のSに、i 社のKから同社のTにそれぞれ理事が入れ替わり、Bが理事長、Rが副理事長にそれぞれ選任され、体制が変更された。 イ前記アのd協組の理事会の体制が変更されて以降、d協組は、生コンの 販売価格を適正価格に戻す(「値戻し」と称している。)ため、b支部やアウト業者と協調して運営等を進める方針に転換した。なお、b支部は、値戻しや値上げの効果によって組合員の労働条件の改善を目指しており、被告人乙がのちにp協同組合を組織するアウト業者7社の取りまとめに関わっていた。また、前記アの体制変更後、b支部側から、交渉の場等におい てストライキを示唆されることはなかった。 (2) e 社の破産を巡る経過についてア A、B、R及びSは、2月13日、被告人乙から、e 社が破産を申し立てる旨の知らせを受け、被告人乙との間で対応を協議した後、e 社の代表であるLと面談し、破産を思いとどまるよう説得するなどした。当時、値戻 しを目指して京都府下一協組体制(いわゆる連合会構想)に向けた話合い がまさに進行してきていたこともあって、Aらとしては、e 社のプラントがアウト業者に売却されることによってシェアが奪われたり、値戻しに向けた体制が崩れ、値戻しが実現できなくなったりすることを懸念していた。 イ e 社は、2月16日、破産を申し立てた。これを受けて、 がアウト業者に売却されることによってシェアが奪われたり、値戻しに向けた体制が崩れ、値戻しが実現できなくなったりすることを懸念していた。 イ e 社は、2月16日、破産を申し立てた。これを受けて、b支部は、同日から、組合員を動員した上で、e 社の敷地内に立ち入り、24時間体制で のプラントの占拠を開始した。b支部としては、前記プラント占拠について、同プラントがアウト業者に売却されることを阻止する目的のほか、e 社に在籍していた従業員の労働債権を守るという目的があった。 プラントの占拠に当たって持ち込まれた発電機やその燃料等の費用については、被告人乙からの要請をAが了承したことで、破産申立て直後から d協組が負担することとなっており、また、b支部からの要請を受け、4月25日に開催されたd協組の理事会において、e 社の問題が解決するまでの間、d協組が前記従業員の給料相当額を立て替えて支払うことが決議された。 なお、b支部による占拠開始前に被告人乙がAに対して占拠にかかる費 用もd協組に負担してほしい旨依頼したか否かについては事実関係に争いがある。 ウ Rは、5月頃、e 社のプラントがアウト業者に売却されないようにするための方策について弁護士と協議した。 エ 7月25日、e 社のプラント売却の内覧会が行われたが、その際、b支 部は、前記プラントの購入を希望する生コン業者がいるかどうかを確認するために、内覧会に来た業者の企業名等の調査などを行った。 オその後、生コン業者以外の業者がe 社のプラントを購入し、同プラントが解体されるに至ったことなどから、10月28日にはb支部組合員による同プラントの占拠は解除された。 カ 10月下旬頃、被告人乙から、e 社のプラント占拠に要した費用等をd 協組に支払 解体されるに至ったことなどから、10月28日にはb支部組合員による同プラントの占拠は解除された。 カ 10月下旬頃、被告人乙から、e 社のプラント占拠に要した費用等をd 協組に支払ってほしい旨の要求(以下「本件要求行為②」という。)があり、d協組では、11月7日に開催された理事会において、e 社のプラント占拠等に関してb支部に対して6000万円を支払うことが理事全員一致で決議された。そして、Aは、11月16日、公訴事実記載の喫茶店において、被告人乙に対し、d協組名義の口座から払い戻した現金6000万円 を交付した。 なお、被告人乙がd協組側に対してプラント占拠費用等を要求した時期や状況等については、当事者間に争いがある。 3 検察官の主張及び被告人乙の供述の概要(1) 検察官は、 ア被告人乙が、Aから、e 社のプラント占拠の依頼を受けたり、その費用負担について事前に了承を得たりしたことはなく、同プラント売却後の10月26日、Aに対し、プラント占拠費用について、e 社が倒産して他のd協組加盟各社のシェアが増えた分を含めて6000万円を支払ってほしいと要求し、更に、11月1日、A、R及びBが同席する場で同様の要求 をした旨の証人Aの供述が信用できることを前提に、イ d協組にとっては、前記6000万円を支払う根拠は何らないものの、従前の経緯からすると、これを拒否すればストライキが実施され、d協組や加盟各社の存亡に影響するというd協組の理事らの認識に乗じて、被告人乙が同6000万円の支払を求めたことからすれば、本件要求行為②は 脅迫に該当する旨主張する。 (2) これに対し、被告人乙は、当公判廷において、要旨、以下のとおり供述する。 ア e 社の破産申立て前に、Aから、e 社の後にアウト れば、本件要求行為②は 脅迫に該当する旨主張する。 (2) これに対し、被告人乙は、当公判廷において、要旨、以下のとおり供述する。 ア e 社の破産申立て前に、Aから、e 社の後にアウト業者に新規参入されないようにしてほしいと言われ、それがb支部にプラント占拠を依頼してい るものと理解したことから、Aに対し、①e 社在籍のb支部組合員の従業 員に対する給与の支払や雇用保障、②e 社に割り当てられていた優先日々雇用3枠の確保、③プラント占拠費用のd協組での負担を要求したところ、Aはこれらを了承した。 イプラントの売却が終了したことから、10月31日、R、B、A及びSとの間で前記ア①から③について協議の場を設け、そこで同②及び③につ いては金銭処理を行うことになり、同人らに対して1億円を提示し、交渉の末、6000万円の支払で決着した。 4 本件要求行為②が脅迫に該当すると認められるかについて(1) まず、そもそも、検察官が前提とするAらd協組の理事らによる供述内容によっても、本件要求行為②に際して、被告人乙は、b支部によるe 社のプ ラント占拠の費用として6000万円を支払ってほしい旨を述べたにすぎず、その発言内容において、例えば、c社に関する争議の場面のようにストライキ等を示唆するなどの要求拒絶の場合に生じる具体的な不利益等を想起させるようなものは何ら含まれていないし、被告人乙の態度等についても、威圧的な言動があったとは認められない。 (2) 他方、検察官は、b支部がこれまでd協組に対し、違法な実力行使を伴うストライキを用いて自らの要求に応じさせてきており、抗えば直ちに実力行使を伴うストライキを実施する旨の強権的な姿勢を示した上で、前記第3のc社に関する事件で解決金1億5000万 違法な実力行使を伴うストライキを用いて自らの要求に応じさせてきており、抗えば直ちに実力行使を伴うストライキを実施する旨の強権的な姿勢を示した上で、前記第3のc社に関する事件で解決金1億5000万円を支払わせていたところ、被告人乙は、その要求を拒否すれば前同様のストライキが実施され、d協組や加 盟各社の存亡に影響するというd協組の理事らの認識に乗じて本件要求行為②を行った旨主張する。 アしかしながら、そもそも、前記(1)のような単なる金銭の支払を求めるにすぎない要求行為が、過去に行われた脅迫等の結果畏怖している状態を利用したとして脅迫に該当し得る場合があるとしても、本件では、被告人乙 において、d協組の理事らが畏怖していることを利用したと見られるよう な言動は何ら認められないし、前記第3の5で説示したとおり、平成26年(2014年)当時でさえ、違法な実力行使を伴う態様でのストライキが行われるなどと相手方に想起させるような態様での争議行為等は何ら行われていなかったのであって、害悪を暗示したと評価することもできない。 イまた、以上の点を措くとしても、c社に関する問題のときでさえ、d協 組は協定内容を繰り返し履行していなかった(前記第3の2(2)クからテ)ことや、体制が変更された平成27年(2015年)終わり頃からは、d協組は、b支部と協調する方針をとっており、ストライキ等を示唆されるような状況にはそもそもなかったこと(前記2(1))からすれば、d協組の理事らにおいて、b支部のあらゆる要求に応じざるを得ないとまで畏怖し ていたとは考え難い。本件要求行為②が行われた場面についても、前記(1)の被告人乙の言動等からすれば、c社に関する問題のとき以上に、被告人乙の要求に応じなければ出荷妨害等が行われると具体的に ていたとは考え難い。本件要求行為②が行われた場面についても、前記(1)の被告人乙の言動等からすれば、c社に関する問題のとき以上に、被告人乙の要求に応じなければ出荷妨害等が行われると具体的に想起される状況にはなかったというべきである。 かえって、①d協組の理事らにとって、アウト業者の廉売による生コン 価格の下落やシェアの減少等の問題は深刻な懸案事項であり、本件当時、d協組は、生コン販売価格の値戻しのため、b支部との協調路線を取っており、いわゆる連合会構想に向けてまさに話合いが進められていたこと(前記第2の3(2)、前記2(1)、(2)ア)、②e 社が破産を申し立てる旨の一報を受けたAらが、真っ先に被告人乙と対応を協議した上で、Lの説得に 向かっていること(同(2)ア)、③Rが弁護士との間でプラントがアウト業者に売却されないようにするための方策について協議していること(同ウ)などからすれば、少なくともb支部との交渉の窓口となっていたA個人が、値戻しという共通の目的を有する被告人乙に対し、b支部によるプラントの占拠を念頭に、アウト業者によるプラント購入阻止への協力を求めた可 能性は否定し難いし、少なくとも、アウト業者の参入阻止につながるプラ ント占拠によるメリットを享受するために、d協組側においてそれを黙認し、利用しようとしていたことが認められる。 また、Rは、3月28日にB、A及びSとの間で打合せを行っているところ、b支部から占拠費用の負担を求められた場合には、各社でその費用を負担するとの話題が出ていた旨供述しており、破産申立てから近い時期 において、d協組の理事らの間で占拠費用の負担の話が出ていたと認められる。さらに、d協組は、同申立てに近い時期において、b支部がプラント占拠に使用している発電機 ており、破産申立てから近い時期 において、d協組の理事らの間で占拠費用の負担の話が出ていたと認められる。さらに、d協組は、同申立てに近い時期において、b支部がプラント占拠に使用している発電機等の費用やe 社に在籍していたb支部組合員の給与相当額を支払うことを決めていたのであって(前記2(2)イ)、占拠に伴う設備面での費用を負担している以上、その人件費等の負担も求めら れることになるであろうことは十分に予見できていたと考えられるが、d協組内でそれを問題視したり、反対したりするような話合いがなされた形跡は見当たらない。むしろ、プラント占拠終了後に被告人乙からの要求を受けて短期間でさしたる抵抗もなくb支部への6000万円の支払が決定されている(同カ)上、Rのスケジュール帳の記載によれば、当時、b 支部に対する支払金額を1億円から6000万円に減額する交渉があったこともうかがわれる。 以上のような経過等からすれば、d協組の理事らにおいては、b支部によるプラント占拠をd協組の利益や目的に沿うものと受け止め、その占拠に要する費用等についてはd協組で負担することになってもやむを得な いものと当初から考えていたとみることが自然であるし、本件要求行為②の際の状況としても、b支部の要求があれば嫌でも従わざるを得ないようなものであったとまでは認められず、d協組の理事らにおいても、そうした状況をよく理解していたとみるべきであって、本件の局面においてストライキ等がされる具体的な可能性を念頭に置いていたとは考え難い。 たしかに、d協組の理事らにおいても、b支部に対する考えやスタンス には様々なものがあったことがうかがわれ、本件においても、値戻しに向けてb支部と共同歩調をとろうとするAがほかの理事らを強く説得した可 、d協組の理事らにおいても、b支部に対する考えやスタンス には様々なものがあったことがうかがわれ、本件においても、値戻しに向けてb支部と共同歩調をとろうとするAがほかの理事らを強く説得した可能性はあるものの、そのことによって前記の認定判断が左右されるものではない。 したがって、当時のb支部とd協組との関係性やd協組の理事らが置か れていた状況等によれば、かつて威力業務妨害等に当たり得るような争議行為が行われていたことを踏まえても、本件要求行為②によって、害悪を暗示した、あるいは、畏怖に乗じて現金を脅し取ったなどとは到底評価できない。 ウ以上に対し、検察官は、d協組理事らの供述を前提に、①d協組の体制 が刷新されたのは、アウト業者との共闘を求めてストライキをされたことでその選択を余儀なくされたからにすぎないし、②d協組が発電機等の費用を負担したのは、b支部側から負担を求められ、b支部に対する恐怖からやむなく応じたにすぎず、③何の根拠もなく要求されるがまま6000万円もの高額の現金を支払っていること自体、b支部を畏怖していたこと が推認され、被告人両名は、その畏怖に乗じて、もっともらしい名目で因縁をつけ、何ら根拠のない現金の支払を求めたものであるから、脅迫に該当する旨主張する。 しかしながら、少なくとも証人Aは、アウト業者との共闘は自らの考えに基づく方針であった旨明言しているし、前記イで説示したとおり、少な くとも、被告人乙の前記供述(前記3(2)ア))のようにA個人が被告人乙に対してe 社のプラント占拠を依頼した可能性は否定し難く、d協組が、値戻しという自らの目的・利益のためにb支部によるプラント占拠を利用した側面も指摘できるのであって、d協組が全く根拠のない費用負担を行ったとみること ント占拠を依頼した可能性は否定し難く、d協組が、値戻しという自らの目的・利益のためにb支部によるプラント占拠を利用した側面も指摘できるのであって、d協組が全く根拠のない費用負担を行ったとみることはできないし、そもそも、この頃は、d協組とb支部は値 戻しに向けて協調関係にあり、d協組がb支部からのあらゆる要求を一方 的に受け入れなければならないような関係性にあったと見ることもできない。 したがって、検察官の前記主張は採用できない。 (3) 以上によれば、本件要求行為②をもって害悪の告知、すなわち脅迫に該当すると評価することはできない。 (4) なお、仮に、検察官が主張するように、d協組の理事らが、b支部と揉めた場合にストライキを受けるであろう可能性を認識していたとしても、本件要求行為②の態様や当時の関係性や状況等からすれば、現実に違法な実力行使を伴う出荷妨害を受ける具体的な可能性まで想起するような状況にはなかったと認められ、d協組の理事らの認識を前提にしても、前記認定を左右し ない。 5 結論以上のとおり、本件においては、恐喝罪の実行行為があったとは認められない。 そうすると、その余の点を考慮するまでもなく、本件公訴事実については、 犯罪の証明がないことになるから、被告人両名は無罪である。 第5 令和元年7月10付け起訴状記載の公訴事実第1(強要未遂)について 1 主たる争点等(1) E、F及びGらがf社の取締役であったCらに対し、同社において日雇いのミキサー車運転手をしていたDの正社員化や就労証明書の作成・交付(以 下、併せて「作成等」という。)を繰り返し要求したことや、b支部の組合員が同社の事務所等に対して監視行為を行ったこと、E又はFが公訴事実記載の発言をしたことについては証 明書の作成・交付(以 下、併せて「作成等」という。)を繰り返し要求したことや、b支部の組合員が同社の事務所等に対して監視行為を行ったこと、E又はFが公訴事実記載の発言をしたことについては証拠上明らかに認められ、当事者間に争いもない。 (2) 弁護人らは、Eらによる前記監視行為や要求行為は、f社側の不当労働行 為等によって余儀なくされた正当な組合活動であるし、f社においては就労 証明書を作成等すべき信義則上の義務を負っていたこと、平成29年(2017年)12月2日以降の監視行為は偽装廃業ではないかを確認するためのものであったことなどからすれば、社会通念上受忍すべき限度を超える態様での脅迫があったとは認められず、また、Eらと被告人両名との間で共謀もしていないから、被告人両名は無罪である旨主張する。 本件の主たる争点は、①Eらによる前記監視行為や要求行為が強要(未遂)罪の脅迫に該当すると認められるか、②被告人両名がEらと共謀したと認められるか、③被告人両名らの行為が違法性阻却事由としての正当行為(労働組合法1条2項、刑法35条)に当たらないと認められるかである。なお、検察官が本件を起訴したことが公訴権の濫用に当たるか否かも争点となって いる。 2 認定事実関係証拠によれば以下の事実が認められる(以下、特に断りのない限り、平成29年のこととする。)。 (1) f社(株式会社f社)について f社は、生コンの製造販売等を目的とし、昭和51年(1976年)7月22日に設立された株式会社であり、本店所在地が京都府木津川市q町内にあったことから、通称「q生コン」と呼ばれていた。平成28年(2016年)当時、Hは代表取締役、Hの妻であるC及び子であるUは取締役の地位にあった。また、f社には平成 所在地が京都府木津川市q町内にあったことから、通称「q生コン」と呼ばれていた。平成28年(2016年)当時、Hは代表取締役、Hの妻であるC及び子であるUは取締役の地位にあった。また、f社には平成29年(2017年)10月16日までb支 部組合員は在籍していなかった(なお、f社は、その後、r商事に吸収合併されているが、その前後にかかわらず、「f社」という。)。 (2) g協組(洛南生コンクリート協働組合)についてg協組は、その加盟社の取り扱う生コンの共同販売等を目的として、昭和53年(1978年)頃に設立された協同組合であり、平成28年(201 6年)頃の加盟社には、f社、s株式会社(以下「s社」という。)、株式会 社t(以下「t社」という。)が含まれていた。g協組では、理事会によってその活動方針が決められており、平成28年(2016年)当初は、f社の代表取締役であるHが理事長、s社の取締役であるI及びt社のJはそれぞれ理事の地位にあった。 (3) b支部の組合員について 平成29年(2017年)10月当時、Fはb支部の京津ブロックの執行委員、Eは奈良ブロックの執行委員、Gは奈良ブロックの組合員であった。 (4) 本件の経過ア b支部は、平成28年(2016年)夏頃、f社が他府県等に越境して販売をしてはならないという業界の暗黙のルールを破ったとして、約1か 月間にわたり、同社やHが理事長を務めるg協組の加盟社の生コン搬入先である工事現場等を対象にコンプラ活動を行った。このような事態を踏まえ、Hは、同年9月7日にg協組の理事長を辞任し、同月15日、Iが理事長に就任した。 イ b支部では、10月6日に開催された執行委員会において、f社で日雇 いのミキサー車運転手として業務に従事して は、同年9月7日にg協組の理事長を辞任し、同月15日、Iが理事長に就任した。 イ b支部では、10月6日に開催された執行委員会において、f社で日雇 いのミキサー車運転手として業務に従事していたDがb支部に加入したとして、同社に対して団体交渉を求めていくことなどが報告された。 F、E及びGらは、同月16日、Hに対し、b支部執行委員長の被告人甲及び分会長D連名の書面によって、f社の従業員(D)がb支部に加入して同社内にb支部の分会ができたことを通知する(公然化)とともに、団 体交渉要求と分会からの要求事項を告げた。 これに対し、Hは、Dはf社の正社員ではないなどとして交渉を拒否した。 b支部は、同日頃から継続的に、Dの業務を意図的に減らすなどの不当労働行為がないかを確認するため、f社に対する監視行為を開始した。 ウ Dは、京都府木津川市内の保育所に子を預けており、平成25年(20 13年)から平成28年(2016年)まで、毎年、保育所の継続利用等のため保育の必要性を証する書類としてf社が作成等した就労証明書を同市に提出してきており、11月初旬、Uに対して就労証明書の作成等を求めたところ、同月14日、Uから、f社は平成29年(2017年)一杯で廃業するから就労証明書は出せない旨告げられた。 エ他方、FやEらb支部組合員は、10月16日以降も団体交渉の申入れ等のためにf社の事務所を訪れていたところ、11月7日以降はHの体調不良を理由にCやUが代わりに対応していたが、同月14日、Cから、f社が11月末で廃業するから団体交渉には応じられない旨告げられた。 被告人両名は、遅くとも同月9日の執行委員会においてFからf社の公 然化について報告を受けており、また、被告人乙は、同月14日にはEからf社が から団体交渉には応じられない旨告げられた。 被告人両名は、遅くとも同月9日の執行委員会においてFからf社の公 然化について報告を受けており、また、被告人乙は、同月14日にはEからf社が廃業予定である旨の報告を受けていた。 Iは、同日頃、Hからf社廃業の連絡を受けたことで、その旨をJにも伝えたところ、Jは被告人乙に対して連絡を取り、f社の廃業やそれに伴うプラント(生コン製造プラント)の処理等について話をした。なお、こ の時点で被告人乙がJに対して、プラントの解体をf社に要求するよう伝えたかについては争いがあるが、少なくとも被告人乙とJとの間でプラント解体に関する話をしている。 オ 11月16日、g協組において緊急理事会が開かれ、f社の廃業について協議がされ、b支部はプラントの解体を要求している旨の報告がされた。 カ b支部の組合員は、11月14日以降も複数回にわたってf社の事務所を訪れ、CやUに対し、労働組合を認めるよう申し入れ、さらに、同月22日以降は複数回にわたって就労証明書の作成等も要求するなどしていたが、対応したCはそれらの要求に応じることはなく、明確な回答もしなかった。 E及びGは、同月27日、f社の事務所を訪れ、CやUに対し、就労証 明書の作成等を要求していたところ、Cが体調不良を訴え、救急搬送される事態となったが、E及びGは、Cの仮病を疑い、Uからの退室の求めにも応じなかった。 Dは、11月28日、木津川市役所の担当課と相談した上で就労証明書以外の保育の必要性を証する申立書を作成して保育所の継続利用の手続 を進めることとなった。Eもこれを知っていたが、EやGらは、その後も、複数日にわたってf社を訪れ、繰り返し(12月1日までに合計12回)就労証明書の作成等を求め続けたが 保育所の継続利用の手続 を進めることとなった。Eもこれを知っていたが、EやGらは、その後も、複数日にわたってf社を訪れ、繰り返し(12月1日までに合計12回)就労証明書の作成等を求め続けたが、f社側がその要求に応じることはなく、対応したCは、12月4日には何らかの回答を出す旨述べた。 なお、被告人甲は、11月18日、f社に対し、10月16日に団体交 渉を申し入れたが、これに応じず、一方的に自主廃業を告げたことを非難する内容の通知書を送付しており、また、いずれかの時点で、被告人乙も、b支部がf社に対してDの就労証明書の作成等を要求していることを知っていた。 キ他方、Iは、Jから、被告人乙が①f社の廃業について書面をもらって ください、②プラントを解体することが事実かどうか確認してほしいなどと言っている旨連絡を受けたことから、11月23日、Hに対し、その旨を伝え、さらに、同月29日、Cに対し、H名義のg協組理事長宛ての「お詫び」と題する書面を交付し、同書面を見本に作成して提出するように告げた。同書面は、11月末日をもって出荷を停止し、12月末日をもって 廃業することを決定したことを謝罪する旨を内容とするものであったが、Hは、提出を拒否した。 ク Dは、11月末まではf社で勤務していたが、12月1日からは別の稼働先で勤務することになった。 ケ b支部組合員によるf社への監視行為は依然として継続していたが、1 2月2日には10名ほどの組合員がf社の出入口の道路を挟んだ場所から 事務所や従業員の動静を監視するようになった。その態様としては、事務所等の動静確認のほか、f社に出入りする訪問者を確認したり、その確認のために訪問者を追尾したりするなどしてはいたものの、f社の敷地内に入る、訪問者の出入りを するようになった。その態様としては、事務所等の動静確認のほか、f社に出入りする訪問者を確認したり、その確認のために訪問者を追尾したりするなどしてはいたものの、f社の敷地内に入る、訪問者の出入りを妨げる、訪問者等に対して怒鳴るなどはしておらず、また、その後、動員される組合員の人数も減っていき、平成30年(2 018年)1月以降はf社の敷地から離れた場所から監視をするようになった。 コ E及びFは、Cから12月4日には、就労証明書の作成等について何らかの回答を出す旨言われていたため、同日、f社の事務所を訪れると、期待に反してCから、案件を全て弁護士に任せることにしたなど告げられた ことから、Eは、机に置かれた就労証明書の用紙を指でたたきながら、「何が弁護士や。」、「書いてもらわなあかん。」などと述べ、さらに、f社の従業員がスマートフォンでEらを盗撮していることを疑って、謝罪を要求するとともにCとも向かい合った状態で、「お前も何や、何ケチつけとんねん、うちの行動に。こらあ。おいっ。撮っとるがなお前。」と怒号し、「ケチつ けていませんやん。」との同従業員の応答を受け、「ほな解決せんかい、これ。」などと怒号しながら、Cに示していた前記用紙を机にたたきつけるなどした。その後、Eらは、f社側が警察を呼んだことや盗撮したことについて謝罪を求めるなどし、また、Fは、Cに対し、激しい巻き舌口調の大声で、「何をぬかしとんねん、われえ、おい、こらあ、ほんま。謝れ言うと んねん、こっちは。謝罪せえ。」などと怒号した。 サ他方、Iは、Jに対し、Hがb支部による監視行為で困っている旨伝えたところ、Jから、被告人乙の伝言として、プラントの撤去とミキサー車1台を退職金代わりに譲渡することが監視行為をやめる条件である旨聞き、12月 、Jに対し、Hがb支部による監視行為で困っている旨伝えたところ、Jから、被告人乙の伝言として、プラントの撤去とミキサー車1台を退職金代わりに譲渡することが監視行為をやめる条件である旨聞き、12月4日、その旨をHに対して伝えた。これを聞いたHは、仕方が ない旨回答した。 なお、実際に被告人乙がJに対し、プラントの解体を監視行為をやめる条件として告げたかについては争いがあるが、同月上旬に被告人乙がJに対してDのためにf社のミキサー車1台の譲渡を求めたことについてはおおむね争いはない。 シ f社が出入口の門扉を閉めたこともあって、12月5日以降、b支部の 組合員がf社の事務所を訪れて就労証明書の作成等を要求することはなくなった。 なお、f社は、基本的には11月末で出荷をやめており、12月以降はミキサー車を用いて生コンを出荷することはなくなったが、一部の在庫については製造・出荷を行った。 ス f社は、12月14日付けで、g協組に対し、同月31日をもってg協組を脱退する旨の脱退届を提出した。 Jは、同月14日、Iに対し、「朝からバンバン乙氏、連帯の人間共に加茂社の件で電話入ってます」とメッセージを送信した。 セ f社は、12月14日付けで、弁護士を通じて、b支部に対し、Dの就 労証明書の作成等を求めることなどを目的に繰り返しf社を訪問し、11月14日は、立ち会っていた社会保険労務士に対して資格をなくすこともできるなどと威圧的に脅すような言動を行い、その後も毎日のように複数人でf社に押しかけては執拗にHとの面会を求め、会えなければ自宅まで行くと恫喝したり、同社に出入りする人物に声をかけたり、遠巻きに監視 するなど、近隣から不安の声が出るような状況が続き、12月4日には、多人数で事務所に押しか 面会を求め、会えなければ自宅まで行くと恫喝したり、同社に出入りする人物に声をかけたり、遠巻きに監視 するなど、近隣から不安の声が出るような状況が続き、12月4日には、多人数で事務所に押しかけ、帰るよう伝えても応じず、大声で怒鳴るなどして警察を呼ばざるを得ない状況に至ったとして、今後は訪問や監視を行わないよう申し入れる内容の書面を送付した。 これに対し、被告人甲は、同月16日付けで、f社に対し、就労証明書 の作成等を求めるために毎日のようにf社に行くことは当然であるなど と記載した書面を送付した。 ソ Iは、12月28日頃、Hに対し、「1.3月末日迄に貴協同組合と協議の上プラントを撤去致します。」「2.大型ミキサー車1台(車検証添付)を譲渡致します。」と記載されたg協組理事長宛てのH名義の書面を示した上で、この文書に押印して提出すれば監視行為はとまるであろうと告げ た。Hは、当初は押印を拒否したものの、Iから、押印しなければ監視はずっと続くし、大変なことになるのではないかなどと告げられた後、同書面に押印し、ミキサー車の車検証の写しを交付した。 被告人乙は、12月末頃、前記書面の写しを受け取った。 タ Iは、平成30年(2018年)1月16日頃、Hから、依然としてb 支部による監視行為が続いている旨連絡を受け、それをJに伝えたが、Jから、b支部としては解体工事の着手までは信用できないと伝えられたので、同内容をHに伝えた。 チ g協組では、平成30年(2018年)1月17日に開催された理事会において、f社について、同年3月末までにプラント解体がされる動きが あり、解体に向けての見積りの段階に入っている旨の報告がされ、同年2月14日に開催された理事会においては、同年3月末ま 事会において、f社について、同年3月末までにプラント解体がされる動きが あり、解体に向けての見積りの段階に入っている旨の報告がされ、同年2月14日に開催された理事会においては、同年3月末までの解体に向けてg協組主導で進めていることや解体費用の概算の報告がされた。 もっとも、Hは、Iに対し、同年3月初旬には、前記ソの文書は無効である旨告げた。また、Jから聞いた被告人乙の意向として、Iは、同月5 日、Hに対し、同月31日にg協組を脱退してプラント解体を完了する旨の覚書を送付して署名等を求めたが、Hから拒絶された。 なお、f社は、同年2月5日、同社と敷地を同じくし、Hが代表取締役を務める株式会社r商事に吸収合併された。 ツ Iは、平成30年(2018年)4月20日、f社の事務所において、 Hに対し、公訴事実記載のとおり告げ、プラントの解体とミキサー車1台 の譲渡に応じなければb支部による監視行為は続く趣旨を伝えた。しかし、Hはこれに応じず、その後も、プラントの解体及びミキサー車1台の譲渡は実行されていない。 テ b支部によるf社に対する監視行為は、平成30年(2018年)10月頃まで続いた。 3 共謀に関する検察官の主張及び被告人両名の供述の概要(1) 検察官の主張の概要検察官は、要旨、以下のとおり主張する。 ア Eらによる①10月16日から11月20日までの間における訪問・要求行為(以下「本件訪問・要求行為1」という。)、②同月27日の訪問・ 要求行為(以下「本件訪問・要求行為2」という。)、③同月28日から12月1日までの訪問・要求行為(以下「本件訪問・要求行為3」という。)、④b支部組合員を動員しての12月2日から同月4日までの監視行為(以下「本件監視行為」という。) という。)、③同月28日から12月1日までの訪問・要求行為(以下「本件訪問・要求行為3」という。)、④b支部組合員を動員しての12月2日から同月4日までの監視行為(以下「本件監視行為」という。)、⑤12月4日の訪問・要求行為(以下「本件訪問・要求行為4」といい、前記本件訪問・要求行為1から3と併せて 「本件各訪問・要求行為」という。)のいずれもが強要(未遂)罪の脅迫に該当することを前提に、被告人両名がEらに対し、f社側の人間を無理矢理にでも自らの意に沿わせ、b支部の要求に全て応じさせようとする意図の下で前記の脅迫行為を指示した。 イ仮に、Eらの行為に関して被告人両名による前記アの指示があったと認 められないとしても、f社がb支部側の要求に応じずに敵対的な姿勢を示していたと認められるところ、監視行為のような長期にわたる組織的な活動について被告人両名の認識・認容のない状態で行われたとは考えられないから、少なくともEらによる監視行為は、被告人両名の了承の下、組織的な活動として行われた。 (2) 被告人両名の供述の概要 ア被告人乙は、当公判廷において、①10月16日にf社に団体交渉等の申入れを行うことは事前に知っており、f社の対応の報告を受け、不当労働行為として労働委員会に救済を申し立てる準備を行うよう指示をしたが、Eらから日々報告を受けていたわけではない、②11月14日、f社が廃業するという話をEから聞き、g協組のJとf社の廃業を踏まえた事 業の集約化の話をした、③同月22日頃、f社に対してDの就労証明書の作成等を求めていることも知っていた、④平成30年(2018年)2月か3月頃、J及びIから、b支部の組合員がf社の監視行為をしていることを聞かされ、b支部の組合員に確認したところ、偽装廃 労証明書の作成等を求めていることも知っていた、④平成30年(2018年)2月か3月頃、J及びIから、b支部の組合員がf社の監視行為をしていることを聞かされ、b支部の組合員に確認したところ、偽装廃業を監視している旨報告を受けた旨供述する。 イ被告人甲は、当公判廷において、f社に対する団体交渉等の申入れや、f社の自主廃業宣言については後から知ったが、当時、f社との交渉経過や現場の出来事等について報告を受けたことはない旨供述する。 4 当裁判所の判断(1) はじめに 被告人両名とEらとの共謀の成否を検討するに当たっては、検察官がEらのいかなる言動をもって脅迫と主張しているのかを踏まえた上で、被告人両名がそのようなEらの言動を指示し、あるいは了承していたかが問題となる。 そこで、以下、まずは検察官が主張する個別の脅迫の内容を見た上で被告人両名における認識等について検討する。 (2) 検察官が主張する脅迫の具体的内容ア本件訪問・要求行為1(10月16日から11月20日までの行為)H及びCは平成28年(2016年)8月頃にb支部によるコンプラ活動を受けたことでb支部を恐れていたこと、b支部の組合員十数名でf社を訪問したり、11月7日にはCが体調不良を訴えてもEがそれを一切考 慮していないこと、同月14日には、Eが「戦いになりますわ」と告げた り、立ち会った社会保険労務士に対して「アホなこと言うてたら、先生、懲戒請求されるで」などと侮蔑的かつ威圧的な発言に及んだりしていること、同月20日には、E及びGが過去に1年以上にわたって要求を続けた実例を挙げるなどしていること、これらの行動によってH及びCが体調不良を来していること、b支部が求めたDの正社員化等の要求はf社が応ず 0日には、E及びGが過去に1年以上にわたって要求を続けた実例を挙げるなどしていること、これらの行動によってH及びCが体調不良を来していること、b支部が求めたDの正社員化等の要求はf社が応ず べき義務はないことからすれば、本件訪問・要求行為1は、Cらを畏怖させるに足る害悪の告知に当たる。 イ本件訪問・要求行為2(11月27日の行為)11月27日、b支部組合員が5回にわたって事務所を訪問した上で、E及びGが、Dの就労証明書の作成等を要求し、対応していたCが体調不 良を訴え、救急搬送を求めた後も、Cの体調不良を仮病と疑い、事務所から退去することなく執拗かつ過剰に要求を続けていることからすれば、本件訪問・要求行為2は、Cらを畏怖させるに足る害悪の告知に当たり、また、社会通念上受忍すべき限度を逸脱している。 ウ本件訪問・要求行為3(11月28日から12月1日までの行為) Eらが、11月27日から12月1日まで毎日、f社を訪問して要求行為を繰り返しているところ、その中には、f社が廃業しても就労証明書の作成等を要求し続ける旨告げたり、12月4日までという期限を切って追い込んだり、「重大な決意」、「もうこのままやったら、こういう話できへんからね」などと平成28年(2016年)8月のコンプラ活動での経済的 損失を想起させるような発言を行っていることからすれば、本件訪問・要求行為3は、Cらを畏怖させるに足る害悪の告知に当たり、また、社会通念上受忍すべき限度を逸脱している。 エ本件監視行為(12月2日から同月4日までの行為)Eらは、12月1日にf社を訪れ、同月4日を回答期限と定めた上で、 同月2日から、それまでの監視行為の方法と異なり、Gらb支部組合員多 数が長時間にわたってf社の事務所周辺にた 行為)Eらは、12月1日にf社を訪れ、同月4日を回答期限と定めた上で、 同月2日から、それまでの監視行為の方法と異なり、Gらb支部組合員多 数が長時間にわたってf社の事務所周辺にたむろし、同事務所付近の道路に座り込むなどして、同社の従業員の動静等を監視するようになっているところ、本件監視行為は、就労証明書の作成等を求めた更なる圧力行為であり、その監視行為の態様についても多大な不快感や恐怖感を覚えさせるものであることからすれば、黙示的な害悪の告知に当たり、また、社会通 念上受忍すべき限度を逸脱している。 オ本件訪問・要求行為4(12月4日の行為)について12月4日に至るまでの訪問・要求行為の経過に加えて、同日における公訴事実記載のE及びFの発言内容やその態度のほか、事務所内の状況等からすれば、本件訪問・要求行為4は、Cらを畏怖させるに足る害悪の告 知に当たり、また、社会通念上受忍すべき限度にとどまるものとはいえない。 (3) 認定できる事実に基づく検討ア被告人両名が10月6日のb支部の執行委員会において、f社に対してDの正社員化等を求めて団体交渉を要求することなどの報告を受けており、 同月16日にHに対して提出された書面が被告人甲名義のものである上、同日以降、組合員を動員して監視行為を行うなどしていたこと(前記2(4)イ)、被告人乙は当時、副執行委員長として京津ブロックを担当していたこと(前記第2の2(2))からすれば、被告人両名は、b支部としてf社に対して前記要求を行うことを認識し、これを了承していたものと認められる。 加えて、b支部のトップである執行委員長の被告人甲が自らの名義で、f社がb支部との交渉について不誠実な対応を取り続けていることに対して抗議する内容の書面を送 を了承していたものと認められる。 加えて、b支部のトップである執行委員長の被告人甲が自らの名義で、f社がb支部との交渉について不誠実な対応を取り続けていることに対して抗議する内容の書面を送付するに至っていること(前記2(4)カ)からすれば、被告人両名は、f社に関する労働問題の経過について、b支部の他の組合員から一定程度の報告を受けていたと認められる。 また、関係証拠によれば、当時、f社は11月末で自主廃業する旨述べ ていたところ、Eらは、同社がDとの雇用関係そのものを否定し、団体交渉に応じることなく、また、b支部からの文書等の受取りも拒否した上で、b支部によるいわゆる公然化の直後に廃業する旨述べるに至っており、過去には組合潰しを目的に偽装廃業した企業もあったことから、組合潰しのための偽装廃業を疑い、その稼働状況を見るために12月2日からf社の 正面において監視行為を行うようになっており、被告人乙も、その前日である同月1日には、Eからの電話でf社の稼働状況を聞いていることが認められる。その上で、被告人乙の前記の立場や、b支部にとってもアウト業者による参入の防止に関心があったこと(前記第2の3(2))、現に被告人乙は11月14日頃にf社の廃業後のプラントの処理等についてg協組 側と話をしていること(前記2(4)エ)のほか、被告人乙がIらを通じて監視行為をやめてほしい旨のHの訴えを聞いていると考えられるだけでなく、12月末にはHが押印したプラント解体及びミキサー車譲渡を約束する文書を受領していること(同キ、サ及びソ)を併せて考慮すれば、少なくとも被告人乙においては、12月当初から、f社に対して偽装廃業かどうか を確認するための監視行為がb支部組合員によって行われていると認識していたと認められる。 びソ)を併せて考慮すれば、少なくとも被告人乙においては、12月当初から、f社に対して偽装廃業かどうか を確認するための監視行為がb支部組合員によって行われていると認識していたと認められる。 イもっとも、b支部は、京都のみならず関西地区におけるセメント・生コン産業等に関する労働者で組織され、当時、多数のブロックや分会が存在し、他の分会でも問題が生じていたことがうかがわれること(前記第2の 1(1)、(2)等)からすれば、Eらとf社側との交渉経過の詳細についてまで、被告人両名が日々、逐次の報告や相談を受けていなかったとしても何ら不自然ではないし、被告人両名がそうした報告等を受けていたことを推認させるに足りる的確な証拠もない。取り分け、検察官は、前記(2)のとおり、Cが体調不良になったにもかかわらず要求を続けたことや、EやGらの個 別の発言内容や要求行為を繰り返した執拗さ等の態度を前提に、Eらの言 動が脅迫に該当する旨主張しているが、Cが体調不良を訴えたのは当日の予期せぬ出来事であったといえるし、Eらの現場における個々の発言内容や態度等についてまで、被告人両名がその都度、把握していたり、指示したりしていたことを認めるに足りる証拠はない。なお、被告人両名において、EやGらがDの正社員化や団体交渉、就労証明書の作成等を要求する ためにf社を訪問することについて事前に知っていたとしても、そうした要求や訪問をすること自体は、f社が平成28年(2016年)にb支部からコンプラ活動を受けていたことを踏まえても脅迫におよそ該当するものではないのであるから、そもそも被告人両名の共謀や故意が問題となる余地はない。 また、12月2日から同月4日までの監視行為についても、前記のとおり、偽装廃業かど そ該当するものではないのであるから、そもそも被告人両名の共謀や故意が問題となる余地はない。 また、12月2日から同月4日までの監視行為についても、前記のとおり、偽装廃業かどうかを確認する目的での監視行為として被告人乙が認識していたことがうかがわれるものの、同監視行為の具体的態様等のほか、同日にも就労証明書の作成等が要求されるとか、就労証明書の作成等を要求するために監視行為を利用しようとしているかどうかまで被告人乙が 認識していたことを認めるに足りる証拠はない。被告人甲についても、f社で監視行為が行われていることはともかく、その具体的態様等を知っていたと認めるに足りる証拠はない。 ウ以上によれば、被告人両名が、本件各訪問・要求行為の時期において、f社に対して団体交渉等を要求していたことを知っていたとは認められ るものの、f社側とのやり取りを踏まえた訪問・要求時の具体的な言動や、就労証明書の作成等を要求するために監視行為を利用するかどうかについて事前に相談を受けるなどして把握し、それを了承あるいは指示していたとまでは認められない。 このような事実関係を前提にすれば、被告人両名が、検察官が主張する ような脅迫に該当する行為についてEらと共謀したとは認められない。 (4) 共謀に関する検察官の主張の検討ア以上に対し、検察官は、①被告人乙のメモ帳の10月6日の欄にf社を表す「q」との記載があること、②同日と11月9日の各執行委員会ではf社の公然化に関して協議がされていること、③EがCからf社の廃業予定を聞いた直後、被告人乙と合計5分間程度通話し、その後、被告人乙が J、被告人甲に順次電話をかけて通話した後、Eと通話しており、廃業の報告を受けて被告人両名の間で今後の対応方針の f社の廃業予定を聞いた直後、被告人乙と合計5分間程度通話し、その後、被告人乙が J、被告人甲に順次電話をかけて通話した後、Eと通話しており、廃業の報告を受けて被告人両名の間で今後の対応方針の意思統一を図り、被告人乙からEに対して指示をしたとみるのが自然であること、④被告人甲の手帳の11月25日の欄に「q(注:qを片仮名で表記)生コンノウと言う」と記載され、被告人甲において、f社が要求を拒否していることを認 識していたこと、⑤本件訪問・要求行為4の直後、Fが被告人乙と通話した後、被告人乙が被告人甲と通話し、情報を共有していること、⑥被告人甲の手帳の平成30年(2018年)2月の欄に、f社がu 協同組合と策動している旨の記載があり、f社の事情について随時報告を受け、廃業後のプラントの帰趨について重大な関心を有していたと認められることか らすれば、被告人両名がEらとf社とのやり取りの経過を適時に把握していたと認められるし、敵対的な姿勢をとるf社への対処方針について、上位者の被告人両名が何ら指示等しなかったことは到底考え難い旨主張する。 しかしながら、検察官が指摘する事情は、いずれも、f社との間で労働 問題が生じていることを示していることはともかく、それ以上に、Eらとf社側との具体的な交渉経過等について被告人両名が報告を受けていたことを示したり、まして、被告人両名がEらに対し、具体的な交渉方法等について言動を含めて指示していたことを示したりするようなものとは評価できない。廃業予定と聞かされた直後や本件訪問・要求行為4の直後 における通話についても、自主廃業、あるいは警察が臨場する事態となっ たという直ちに報告を要するような出来事があったからこそ被告人乙に連絡があったとみるのが自然であり、か 行為4の直後 における通話についても、自主廃業、あるいは警察が臨場する事態となっ たという直ちに報告を要するような出来事があったからこそ被告人乙に連絡があったとみるのが自然であり、かえって、他の場面でその都度連絡をとって指示を仰いでいたことをうかがわせるような証拠はない。また、b支部としては、抗議の書面を送付したり、労働委員会に対して救済を求めるなど必要に応じてf社に対して措置を講じている(前記2(4)カ、セ等) ものの、だからといって、本件各訪問・要求行為の時点において、Cらに対する個々具体的な言動を含む交渉方法等を指示するなどしていたとは認められないことは、先に説示したとおりである。まして、被告人両名が、Eらに対し、いかなる手段を用いてでも要求を実現するようになどと指示していたとも認められない。 なお、検察官は、証人Qの、12月頃、被告人乙が被告人甲に電話で、f社について、何月何日までにプラントの解体とミキサー車の譲渡の2点で進めていく旨告げて被告人甲の了承を得る場面を見た旨の供述を前提に、f社をめぐる問題について節目節目に報告がされていたことをもって被告人両名の共謀を示す事情として主張するが、両者の間でf社の問題に ついて一定の報告等があったにせよ、先に述べたとおり、このことをもって被告人両名の共謀が裏付けられるものでもない。 以上によれば、検察官の前記主張は採用できない。 イ次に、検察官は、b支部は、①業務委託費等名目で協同組合から多額の利益を得たり、労働問題の解決と称して多額の金銭を要求したり、平成2 8年(2016年)におけるb支部のf社へのコンプラ活動や長期間にわたって本件各訪問・要求行為をしたりしていることからすれば、f社に対してDの雇用関係を認め て多額の金銭を要求したり、平成2 8年(2016年)におけるb支部のf社へのコンプラ活動や長期間にわたって本件各訪問・要求行為をしたりしていることからすれば、f社に対してDの雇用関係を認めさせた上で、不当・過大な要求を行うための足掛かりとして就労証明書の作成等を要求したといえるのであり、かつ、②京都府南部地域での分会設立を目標とするとともにf社のプラントにアウ ト業者が参入することを強く警戒していたこと、③組織的に平成30年 (2018年)10月頃までの長期的にわたってf社に対して監視行為を行ったことからすれば、本件各訪問・要求行為や監視行為は、一組合員にすぎないEら現場の判断ではなく、b支部の幹部である被告人両名による指示によるものと考えるのが合理的である旨主張する。 たしかに、前記(3)アで述べたとおり、b支部はf社のプラントの帰趨に ついて関心を有しており、少なくとも被告人乙については、12月以降の監視行為についてもその頃から把握していたと認められ、そうした意味では、同日以降の監視行為については、b支部の組織的な方針であったとも考えられる。 しかしながら、そのような事実関係があったとしても、本件各訪問・要 求行為の時点において、被告人両名において、Cらに対する個々具体的な言動等を指示したり、いかなる手段を用いてでも要求を実現するよう指示したりなどしていたと認めるに足りる証拠はないことや、就労証明書の作成等を求めた監視であったとも認められないことは、先に説示したとおりである。さらに、Dが実際に子の保育の関係で就労証明書を必要としてい たことや、被告人両名を含むb支部組合員が監視行為をやめるための条件として就労証明書の作成等を求めた形跡は何らなく、かえって、前記(3)アの が実際に子の保育の関係で就労証明書を必要としてい たことや、被告人両名を含むb支部組合員が監視行為をやめるための条件として就労証明書の作成等を求めた形跡は何らなく、かえって、前記(3)アのとおり、12月以降の監視行為は偽装廃業を疑ったことによるものと理解できること、平成28年(2016年)のコンプラ活動についてもf社の越境問題というb支部なりの理由があったことからすれば、f社にDの 雇用関係を認めさせ、不当・過大な要求を行うための足掛かりとして就労証明書の作成等を要求したとの検察官の前記主張は、証拠に基づかない憶測にすぎないというほかない。 したがって、検察官の前記主張は採用できない。 5 結論 以上のとおり、本件では、現場におけるb支部組合員に脅迫に該当すると評 価されるような行為があったとしても、同人らと被告人両名との間にその行為について共謀があったとは認められない。 そうすると、その余の点について論ずるまでもなく、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人両名は無罪である。 第6 令和元年7月10付け起訴状記載の公訴事実第2(強要未遂、恐喝未遂)に ついて 1 主たる争点等(1) 公訴事実記載の事実のうち、b支部の組合員がf社の事務所等に対して監視行為を行っていたことや、Iが同社代表取締役であったHに対し、b支部の組合員による監視行為がとまる条件として公訴事実記載の各文言とおおむ ね同旨の発言をしたことについては証拠上認められ、当事者間にも特段争いはない。 (2) 弁護人らは、Hが畏怖していた事実はない上、b支部の組合員によるf社に対する監視行為は偽装廃業であるか否かを確認するためのものであり、被告人両名がHの畏怖に乗じてミキサー車を得ようとした事実 (2) 弁護人らは、Hが畏怖していた事実はない上、b支部の組合員によるf社に対する監視行為は偽装廃業であるか否かを確認するためのものであり、被告人両名がHの畏怖に乗じてミキサー車を得ようとした事実はないし、Iの 発言内容もHを畏怖させるに足りる程度の害悪の告知には当たらず、被告人乙がミキサー車を要求した行為は労働組合の正当な活動に当たり、また、Iらと被告人両名との間で共謀もしていないなどとして、被告人両名は無罪である旨主張する。 本件の主たる争点は、①被告人両名が、I及びJと共謀して、プラントの 解体及びミキサー車1台の譲渡を要求したと認められるか、その要求行為が強要(未遂)罪又は恐喝(未遂)罪の脅迫に該当すると認められるか、②被告人両名の行為が違法性阻却事由としての正当行為(労働組合法1条2項、刑法35条)に当たらないと認められるかである。なお、検察官が本件を起訴したことが公訴権の濫用に当たるか否かも争点となっている。 2 認定事実 本件について関係証拠によって認定した事実は前記第5の2のとおりである。 3 検察官の主張及び被告人両名の供述の概要(1) 構成要件該当性についての検察官の主張の概要検察官の主張の概要は、以下のとおりである。 ア b支部は、12月2日以降、約10名もの多数でf社の正面に陣取り、 営業時間中ずっと同社敷地内の動静を監視し続けたのであり、b支部の人数や組織力を殊更に誇示し、Cらに不安や恐怖を与える態様であったことなどを踏まえれば、同監視行為は人を畏怖させるに足りる害悪の告知に当たり、その監視行為を中断する条件として、何らかの要求をすること自体が、f社側の意思決定の自由を侵害してその要求に応じさせることにほか ならないから、IがHに対してb るに足りる害悪の告知に当たり、その監視行為を中断する条件として、何らかの要求をすること自体が、f社側の意思決定の自由を侵害してその要求に応じさせることにほか ならないから、IがHに対してb支部による監視行為の中断のための条件としてプラントの解体とミキサー車1台の譲渡を要求した行為は、強要(未遂)罪及び恐喝(未遂)罪の構成要件に該当する。 イ被告人乙は、12月初旬頃、Jを通じてIに対して監視行為をやめる条件としてプラントの解体とミキサー車1台の譲渡を挙げており、Iは、そ れに従ってHに対して公訴事実記載の要求行為を行った。また、被告人甲は、f社側が畏怖していることを認識した上で、監視行為をやめる条件として前記要求をすることについて、被告人乙に指示し、あるいは被告人乙の方針を了承していた。 (2) 被告人両名の供述の概要 ア被告人乙は、当公判廷において、①11月14日、f社が廃業の意向を示しているという話をEから聞き、g協組のJとの間で、f社が廃業した場合の事業の集約化の話をした、②12月上旬にJから、Hがb支部に解決金を支払うと言っている旨聞いたが、その申出を断った上、Dの雇用を確保する関係で、できればf社のミキサー車を1台譲渡していただければ 助かりますと告げただけであり、ミキサー車の譲渡を監視行為をやめる条 件としたことはないし、Hがg協組宛てに提出したプラントの解体とミキサー車1台の譲渡を誓約する文書についても自分が指示したものではない、③平成30年(2018年)2月か3月頃、J及びIから、b支部の組合員がf社の監視行為をしていることを聞かされ、b支部の組合員に確認したところ、偽装廃業を監視している旨報告を受けた、④IがHに対して公 訴事実記載の内容を告げたことは把握していなかっ 支部の組合員がf社の監視行為をしていることを聞かされ、b支部の組合員に確認したところ、偽装廃業を監視している旨報告を受けた、④IがHに対して公 訴事実記載の内容を告げたことは把握していなかった旨供述する。 イ被告人甲は、当公判廷において、f社に対して団体交渉等を申し入れていることや、f社が廃業の意向を示していることについては後から知ったが、当時、FやEからf社との交渉経過や現場の出来事等について報告を受けたことはない旨供述する。 4 当裁判所の判断(1) 前記第5の2(4)のとおり、b支部の組合員は、10月16日以降、f社の事務所を多数回にわたって訪問し、時には威圧的な言動をするなどして団体交渉や就労証明書の作成等を要求し、また、f社がDに対する不当な扱い等に及ばないかどうかを確かめることを目的として監視行為をしていたものと 認められる。その過程において、前記第5の4(3)アのとおり、f社は11月14日、b支部の組合員に対し、同月末をもって自主廃業する旨告げたが、b支部の組合員は、それまでのf社側の対応を余りにも不誠実で、組合敵視の態度が目に余ると感じていたこともあり、組合員であるDを排除するための偽装廃業ではないかと疑い、12月以降は、f社の廃業が偽装であるかど うかを確かめることを目的として監視行為を行っていたものと認められる。 (2) その上で、12月以降の監視行為の態様についてみるに、前記第5の2(4)ケのとおり、当初は10名ほどの組合員がf社の出入口の道路を挟んだ場所において、事務所等の動静を監視し、f社に出入りする訪問者の確認やそのための追尾を行うなどしたというものであり、その態様は相応に威圧的であ ったとはいえるものの、f社の敷地内へ立ち入ったり、訪問者の出入りを妨 げた し、f社に出入りする訪問者の確認やそのための追尾を行うなどしたというものであり、その態様は相応に威圧的であ ったとはいえるものの、f社の敷地内へ立ち入ったり、訪問者の出入りを妨 げたりするなどの行動はしておらず、その後は動員人数も減り、平成30年(2018年)1月以降はf社の敷地から離れた場所からの動静監視のみになっていたことが認められる。 (3) そして、12月以降の監視行為は、偽装廃業かどうかを確認するために敷地外から動静監視をするだけであり、それ以上の目的があったとまでは認め られないのであって、団体交渉や就労証明書の作成等を要求していた従前の局面とは状況が大きく異なっているということができる。そして、f社側としても、Hが12月4日の時点において、Iから、b支部がプラントの解体とミキサー車1台の譲渡を要求していると聞かされていること(前記第5の2(4)サ)や、同日を最後に、b支部の組合員がf社の事務所を訪れたり、就 労証明書の作成等を要求したりしなくなったという経過(同シ)からすれば、少なくとも12月5日以降については、従前の局面とは状況が大きく異なっているということを認識できたと認められる。 加えて、f社が当時、廃業に向けてほとんどの生コン製造をやめた上で、廃業する意向を対外的に告げていた(同ウ及びエ)ことを併せて考慮すれば、 前記目的の監視行為による事業への影響は基本的には考え難いというべきであるし、もとより、b支部側において、前記の目的を超えて、f社の事業を妨害しようとしたり、Hらの生活に何らかの悪影響を与えようとしたりする意図があったとも認められない(そもそも、前記目的の監視行為によってf社の事業やHらの生活等に具体的にどのような支障が生じたのかなどについ ては十分には立証されてい 影響を与えようとしたりする意図があったとも認められない(そもそも、前記目的の監視行為によってf社の事業やHらの生活等に具体的にどのような支障が生じたのかなどについ ては十分には立証されていない。)。 (4) 以上のとおり、b支部の組合員による監視行為は、当初は、公然化後の不当労働行為の有無の確認を目的とし(ただし、その規模、態様等については明らかではない。)、12月以降は、偽装廃業かどうかを確認するという目的であって、公然化後の、b支部からみて不誠実といわれてもやむを得ないf 社の一連の対応等からすれば、その目的が不当であるとまではいえないし、 その態様を見ても、12月初旬こそは相応に威圧的な態様であったことは否定できないものの、その後は基本的には、敷地から離れた場所からの動静監視のみであったことが認められる。 そうすると、仮に、10月16日から12月4日までのEらb支部組合員の言動等によってHやCらが畏怖するようなことがあったとしても、同日頃 以降の監視行為が前記のような目的・態様であったことからすれば、これによって従前と同様の言動(多数回の訪問や威圧的な言動等)が繰り返されると想起される事態には最早なかったといえる。 とすれば、それまでの経緯等を踏まえても、同日頃以降の監視行為、ことに、公訴事実記載のIの12月28日以降の各発言当時の監視行為をもって 人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知とはいえないというべきである。 (5) そして、プラント解体とミキサー車譲渡の要求に応じなければ、監視行為が続くことになる旨のIのHに対する各発言(前記第5の2(4)ソ、タ及びツ)についても、前示のとおり監視行為自体が人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知とはいえないことからすれば、監視行為が続くことになる旨の になる旨のIのHに対する各発言(前記第5の2(4)ソ、タ及びツ)についても、前示のとおり監視行為自体が人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知とはいえないことからすれば、監視行為が続くことになる旨の前記 各発言をもって人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知ということはできないというべきである。 また、Iの前記各発言は、プラント解体に対するHの態度の変化等に応じ、後記(6)で説示するようなg協組の利益等を図るためにも、f社とb支部とのトラブルが早期に解決できるようにHに対し、その相談に乗ってアドバイス をしたり、説得しようとしたりしているにすぎない発言とみることができるのであって、それまでの経緯等を踏まえても、Iの前記各発言をもって人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知と評価することはできない。 (6) そもそも、Iは、当公判廷において、Jから、被告人乙が監視行為をやめる条件としてプラントの解体とミキサー車1台の譲渡を挙げていると聞き、 その後も、Jを通じて被告人乙の時々の意向を確認しながら前記各発言に至 った旨供述するものの、他方で、被告人乙は、当公判廷において、監視行為をやめる条件としてプラントの解体やミキサー車の譲渡を告げたことはない旨供述しているところ、ミキサー車の譲渡が偽装廃業かどうかを確認するための監視行為をやめる条件になるとは思えないし、プラントの解体はg協組にとってアウト対策・プラント集約化という意味でより直接的で大きな利害 関係がある一方、f社を除くg協組加盟社に組合員のいないb支部にとっては、偽装廃業ではないことの証左であって、アウト対策・プラント集約化という点からみれば間接的な利益があるにすぎないこと、また、プラントを解体し、ミキサー車を譲渡する旨の書面に押印しただけでは前記の監視目的 装廃業ではないことの証左であって、アウト対策・プラント集約化という点からみれば間接的な利益があるにすぎないこと、また、プラントを解体し、ミキサー車を譲渡する旨の書面に押印しただけでは前記の監視目的が達成されるとは思えないこと、そもそも、IとJの供述は多くの部分で齟齬 していることなどからすれば、被告人乙が監視行為の存在を認識した上でミキサー車1台の譲渡を求めたり、f社廃業後のプラント解体についてJと話をしたりしていること(前記第5の4(3)ア)を踏まえても、Jが被告人乙の意向としてIに告げた内容や、Iが被告人乙の意向としてHに告げた内容が、果たして被告人乙の意向が、ニュアンス等を含めて正しく伝えられたものな のか、被告人乙に忖度する一方で、被告人乙の意向を装いながら、プラントが他社に売られたり、貸されたりしないようにしたいといったg協組の利益を考えたり、g協組や自らにb支部の矛先が向けられるのを避けたいと考えるIやJらの独自の思惑が付け加えられたりしていないか大いに疑問があるといわざるを得ない。 なお、被告人乙が被告人甲に対してf社についてはプラント解体及びミキサー車譲渡で進めていく旨告げて了承を得る場面を見た旨の証人Qの供述については、何ら裏付けがない上、Qは、本件の後、b支部を脱退し、b支部と敵対関係にあるu 協同組合に加入しており、b支部側と対立する関係に至ったことなどからすれば、その供述の信用性を直ちに認めることはできず、 同供述によっても前記の疑問を払拭するには至らない。 (7) 以上のとおり、前述した監視行為の目的やIの各発言時における監視行為の態様、それらによるf社の事業やHらの生活への影響、さらにHらの受け止め、また、Iの各発言への被告人両名の関わりなどを併せ考慮すれば、被告人両 前述した監視行為の目的やIの各発言時における監視行為の態様、それらによるf社の事業やHらの生活への影響、さらにHらの受け止め、また、Iの各発言への被告人両名の関わりなどを併せ考慮すれば、被告人両名にI及びJとの共謀による強要行為ないし恐喝行為、もしくは、I及びJを介した強要行為ないし恐喝行為があったとするには合理的な疑いが 残るといわざるを得ない。 5 結論そうすると、その余の点について論ずるまでもなく、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人両名は無罪である。 第7 まとめ 以上の次第で、被告人両名に対する本件各公訴事実についてはいずれも犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人両名に対しいずれも無罪の言渡しをする。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑・被告人両名につき、それぞれ懲役10年) 令和7年2月26日京都地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官川上 宏裁判官檀上信介裁判官中谷洸
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