平成17年1月27日宣告平成14年(わ)第243号,第266号,第292号 主文 被告人を死刑に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 Aの指示のもと,B,C及びDと共謀の上,Eが富山県高岡市a町(以下省略)bビル地下1階において経営するクラブ「c」の営業を妨害しようと企て,同店内の設備等を損壊する目的で,平成11年8月4日午前3時ころ,Eが看守する同店内に同店出入口から押し入って侵入し,同所において,カッターナイフでソファーを切り裂き,バールで電話機,ウイスキーボトル等をたたき壊すなどして,同店の営業を困難ならしめ,もって,威力を用いて人の業務を妨害し,第2 F,G及びHと共謀の上,これらの者との間でかねて準備していたA及びその妻I方(以下「A方」という。)への襲撃計画の実行役の中国人らが逮捕された際,同人らが所持していた写真(A及びIが写ったカラー写真の切れ端)等の証拠品が警察に押収されていて,Aらがd警察署に上記証拠品の確認に行くという情報を得たことから,A及びIの口を封じて上記計画の発覚を防ぐなどの目的で,両名を殺害しようと企て, 1 平成12年7月13日午前9時30分ころ,富山県高岡市e(以下省略)のA方1階8畳和室において,A(当時56歳)に対し,殺意をもって,Gが,あらかじめ準備して所持していた自動装てん式けん銃で,Aの頭部等を目がけて実弾2発を発射し,それぞれ同人の左鼻孔前縁及び右下顎角部に命中させ,よって,即時同所において,同人を右下顎角部銃創による脳損傷により死亡させて殺害し, 2 上記1の日時ころ,A方1階北東4.5畳和室において,I(当時52歳)に対し,殺意をもって,Gが,上記自動装てん式けん銃で,Iの後頭部及び背部を目がけて実弾2発を発射し,同人の左後頭部及び右背部にそれぞれ命中させ,よって, 北東4.5畳和室において,I(当時52歳)に対し,殺意をもって,Gが,上記自動装てん式けん銃で,Iの後頭部及び背部を目がけて実弾2発を発射し,同人の左後頭部及び右背部にそれぞれ命中させ,よって,即時同所において,同人を左後頭部銃創による脳損傷により死亡させて殺害し, 3 上記1の日時ころ,A方において,G及びHが,上記自動装てん式けん銃及び回転式けん銃各1丁を,自動装てん式けん銃に適合する実包8個及び回転式けん銃に適合する実包4個とともに携帯して所持し,第3 いずれも法定の除外事由がないのに, 1 Jと共謀の上,平成14年10月12日午後8時ころ,長野県北安曇郡(以下省略)ペンションfにおいて,被告人が,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液をJの腕部に注射し, 2 上記1の日時場所において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の手甲部に注射し,もって,覚せい剤を使用したものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点弁護人は,建造物侵入,威力業務妨害(判示第1),Aに対する殺人及びけん銃加重所持(判示第2の1,3)並びに覚せい剤使用(判示第3の1,2)の各事実についてはいずれも争わないものの,Iに対する殺人(判示第2の2)の共謀の事実について否認し,被告人も,これに沿う供述をするので,以下,検討する。 第2 関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 A及びIの身上経歴等Aは,富山県氷見郡g村(現氷見市)で出生し,同県高岡市内の中学校を卒業後,東京都内及び高岡市内等で工員,土木作業員として稼働していたが,昭和40年代から,暴力団員として活動するようになり,平成12年当時は,有限会社h商事(以下「h商事」という。)の実質的経営者として金融業を営む傍ら,暴 内等で工員,土木作業員として稼働していたが,昭和40年代から,暴力団員として活動するようになり,平成12年当時は,有限会社h商事(以下「h商事」という。)の実質的経営者として金融業を営む傍ら,暴力団五代目i組二代目j会k組l一家の組長をしていた。Aは,昭和48年にI(以下Aと併せて「A夫婦」という。)と婚姻し,長女Kをもうけ,平成12年当時は,判示第2のA方においてIと2人で暮らしていた。 2 被告人の身上経歴等被告人は,昭和22年に北海道m郡o町で出生し,地元の中学校を卒業後,自動車整備工として働いたものの,昭和37年ころから,少年院,刑務所の入出所を繰り返した。被告人は,昭和60年ころから,高岡市内に移り住んでパチンコ店の店員として稼働するなどしていたが,平成元年ころ,Aと知り合い,平成9年夏ころ,正式にn会(上記l一家は,n会が平成11年9月に名称を変更したものである。以下,時期を問わず「l一家」という。)の構成員となり,さらに,平成10年春には,l一家の若頭として活動するようになった。 3 Aのl一家内での行動及びA殺害計画の発端Fは,被告人がl一家の若頭になる以前に若頭を務め,その後はl一家の会長代行ないし副長の地位にあった。 Aは,気性が荒い一面を有しており,配下の組員に対して厳しく当たることがしばしばあった。Aは,特にFに対しては,配下の若い衆の数がAより多く,また,l一家の上部団体である五代目i組二代目j会k組(以下「k組」という。)の組長の覚えがAよりもよかったことなどから対抗意識を持っており,事あるごとに厳しい仕打ちを加えるなどしていた。 Fは,平成10年秋ころ,被告人に対し,高岡市o町(以下省略)l一家事務所前の焼却炉付近において,「おやじ,やっちゃおうか。」などとAの殺害を持ちかけたが,このとき,被告人は,「そ るなどしていた。 Fは,平成10年秋ころ,被告人に対し,高岡市o町(以下省略)l一家事務所前の焼却炉付近において,「おやじ,やっちゃおうか。」などとAの殺害を持ちかけたが,このとき,被告人は,「そんなこと,できんでしょう。」などと答えたにとどまった。 その後,平成11年7月,FらがAの兄弟分である暴力団組長に暴行をはたらき,Aがその後始末に追われたため,k組の組長にFの破門を求めたこと,同年8月ころ,被告人は,日頃利用していた飲食店からの中元が粗末であることなどに立腹したAから,報復の意味で同店の営業を妨害してくるように指示され,判示第1の建造物侵入,威力業務妨害を敢行させられたこと,同年終わりころ,飲食店内で暴れた被告人及びFに対し,その制裁としてAから激しい暴行を受けたことなどの出来事が重なった。被告人は,FがAから疎んじられていることなどに同情したほか,被告人自身もしばしばAから叱責を受けたため,従前からのFの申出に応じてAを殺害することに同調した。被告人及びFは,Aを殺害した事後に自分たちの犯行への関与が発覚することを避けるため,第三者にAの殺害を依頼することにした(なお,この点に関し,被告人は,その後,Fとともに,A殺害を外国人マフィアに依頼しようと考え,高岡市周辺の外国人が集まる地域で聞き込みをしたり,知人である神戸の暴力団組長に殺人を引き受ける外国人マフィアの紹介を依頼するなどしたものの,芳しい情報が得られないでいたと供述している。)。 4 A殺害の実行役探し平成11年3月ころ,当時暴力団五代目i組p組q組r会会長であったGは,Aが以前所属していた暴力団の関係者との間でけん銃等の保管をめぐるトラブルがあり,被告人及びFは,Aの指示で,l一家事務所において,Gと交渉した。この件以来,被告人とGは,携帯電話等で連絡を取り合 Aが以前所属していた暴力団の関係者との間でけん銃等の保管をめぐるトラブルがあり,被告人及びFは,Aの指示で,l一家事務所において,Gと交渉した。この件以来,被告人とGは,携帯電話等で連絡を取り合うようになった。 被告人及びFは,けん銃等の密売に携わっているGであれば,殺人を請け負うような外国人マフィアとのつながりもあるのではないかと考え,A夫婦の上京に同行する機会を利用してGから外国人マフィアに関する情報提供を受けることとし,平成12年1月24日,新宿区(以下省略)tホテルにおいて,Gと面談した。被告人及びFは,Gに対し,殺害相手の名前を明らかにすることなく,殺人を実行する外国人の知合いがいないかなどと相談を持ちかけたが,Gは,被告人らの依頼する条件で殺人を実行することとなれば,1500万円程度が必要になる旨告げたにとどまった。なお,そのころ,Gは,知人からサイレンサー付き自動式けん銃が2丁まとめてであれば安く買える旨の話を聞いていたため,被告人らに対し,Gと一緒にけん銃を購入しないかと勧めた。 被告人は,その後も,Gに対し,携帯電話等を通じて殺人の実行役紹介の依頼を重ねる一方,上記けん銃の購入話を受けることとし,同年5月上旬ころ,Gから,サイレンサー付き自動装てん式けん銃1丁及びその適合実包16発を購入した。 5 GへのA殺害の依頼被告人は,同年5月下旬ころ,Fから,「組長やってしまうしかないな。Gは本当に中国マフィアを知っているんだろうな。」,「Gには高岡に来てもらおう。」「そのとき中国マフィアの件を頼もう。」などと言われたため,Gを高岡市に呼んで,中国人マフィアを実行役とするA殺害を依頼することにした。 被告人は,同年6月1日,高岡市x町(以下省略)ホテルv1階の喫茶店において,Gと面談した際,被告人及びFがかねて依頼をしていた 市に呼んで,中国人マフィアを実行役とするA殺害を依頼することにした。 被告人は,同年6月1日,高岡市x町(以下省略)ホテルv1階の喫茶店において,Gと面談した際,被告人及びFがかねて依頼をしていた殺害対象はAである旨告げた。さらに,被告人は,Gに対し,Aがl一家内で組員に対して厳しく当たることなど,Aに殺意を抱くに至った経緯を説明するなどして,中国人マフィアを実行役とするA殺害を依頼した。Gは,知人であるLが,「チャイニーズマフィア」と呼ばれている強盗等の犯罪を敢行する中国人グループと親交があり,Lからそのグループが強盗に押し入る先を探している旨聞かされていたので,被告人らの依頼につきLを介して中国人らに持ちかけることとし,これを了承した。被告人は,当日中に,下見のため,Gを自己の運転する車に乗せ,新湊市にあるAの愛人宅や高岡市内のA方等を案内した。なお,同日中に,被告人とGとの間でA殺害を強盗の仕業に見せかけるという話はなかった。 6 A方襲撃に向けた準備Gは,帰京後,Lに対し,同人の知人である中国人マフィアに強盗に見せかけた殺人を依頼したい旨持ちかけ,Lはこれを了承した。そこで,Gは,被告人らから支払われる約束になっていた1500万円のうち,まず800万円の送金を依頼し,被告人及びFはこれに応じ,Fにおいて,現金1500万円を用立て被告人に渡し,被告人は,同月5日ころ,その中から800万円をGに送付した。 その後,Gは,Lの仲介で,中国人マフィアの中心人物であるMらと会い,Mに対し,強盗に見せかけてA夫婦を殺害してくるように依頼したが,Mは,殺人はしないと断った。Gは,Lから,中国人は強盗を敢行すれば家人まで殺害してしまうことが多い旨聞かされたため,A夫婦が殺害されることを期待して中国人に強盗を行わせることとし,強盗時にAが殺害さ ,殺人はしないと断った。Gは,Lから,中国人は強盗を敢行すれば家人まで殺害してしまうことが多い旨聞かされたため,A夫婦が殺害されることを期待して中国人に強盗を行わせることとし,強盗時にAが殺害されなければ,その後自らが直接ないし強盗で手に入れた金で別の中国人を雇うなどしてAを殺害するつもりで,Mには強盗のみを依頼して承諾を受け,上記800万円の中から準備金として200万円を,Lを介してMに交付した。 被告人は,そのころ,GからA方付近の地図及びA夫婦の写った写真の送付を求められ,また,「中国人は,強盗をやる人間は相当いるが,殺人だけではあまり人がいない。土産が必要だ。」などと言われたため,Gらが,A殺害に際し,A方に押し入り,強盗に見せかけて金を奪ってくるつもりであることを察知したが,自らが依頼したA殺害遂行のためにはやむを得ないと考えてこれを認容した(以下,このとき被告人らの間に成立した共謀の内容を「A方襲撃計画」という。)。被告人は,Gに対し,A夫婦のみが写っている写真(以下「本件写真」という。)やA方付近の住宅地図のコピーを送付したほか,A方の隠し金庫の位置等の説明が付記されているA方内の見取図を送付した。このうち,本件写真は,ゴルフ場で,A夫婦をFと被告人が挟み,4人が横一列に並んで写っていた写真(以下「被告人ら4名の写真」という。)のうち,被告人とFの写っている両端部分が切り取られ,A夫婦の写っている部分のみが残されたものであった。 Gは,同月11日,埼玉県川口市内のカラオケ店等で,Lとともに,Mら中国人グループとA方襲撃計画について打合せを重ねる一方,自分の養子であるHにも同計画を打ち明け,中国人を石川県を経由して富山県まで連れていく自動車運転手役や,宅配便を装ってA方の玄関を開けさせる役をするように申し向け,Hはこれを て打合せを重ねる一方,自分の養子であるHにも同計画を打ち明け,中国人を石川県を経由して富山県まで連れていく自動車運転手役や,宅配便を装ってA方の玄関を開けさせる役をするように申し向け,Hはこれを了解した。また,同月17日,G,H及びLは,A方を下見し,A方に向かうルートやA方の様子をビデオカメラで撮影し,同月21日,東京都武蔵野市内のホテルの一室でMら中国人グループに,この撮影に係るビデオテープを再生して見せるとともに,被告人から入手した本件写真,見取図及び地図等並びにGが入手してきた自動装てん式けん銃1丁,サイレンサー1個及び適合実包16発をMら中国人グループに渡した。さらに,Gは,バール等の強盗の道具や偽造ナンバープレートを用意したほか,Lが普通乗用自動車の手配をするなどしてA方襲撃計画の準備を整えていった。 なお,被告人らとの間では,当初,A方襲撃計画は同月25日に実行する予定であったが,Aに葬儀参列の予定が入ったため,実行予定日が同月28日に変更され,Mは,同月27日,実行行為を担当する中国人らを川口市内のカラオケ店に集めて謀議を行った。しかし,Lが用意してきた自動車の調子が悪かったため,結局,同月30日に実行する手はずとなった。 7 A方襲撃計画の失敗同月29日午後零時30分ころ,中国人らは,埼玉県草加市内の和食レストラン駐車場で,上記自動装てん式けん銃やバール等が積み込まれた普通乗用自動車ほか1台の自動車2台に分乗し,同普通乗用自動車をNが運転し,Hがもう1台の自動車を運転し,N運転の自動車を先導して石川県経由で富山県に向かい,同日午後7時前,金沢市に到着した。その後,Hは,中国人らを引率してA方をもう一度下見し,翌朝に出発することを決めた上,O,N,Pら5名とH及び他の中国人らとに分かれて金沢市内の2つのホテルに宿泊し 同日午後7時前,金沢市に到着した。その後,Hは,中国人らを引率してA方をもう一度下見し,翌朝に出発することを決めた上,O,N,Pら5名とH及び他の中国人らとに分かれて金沢市内の2つのホテルに宿泊した。 しかし,同月30日午前7時12分ころ,Oらが上記自動装てん式けん銃等が入ったかばんを持ってバール等が積載された普通乗用自動車に乗り込み出発しようとした際,不審者が宿泊しているという通報を受けて付近に張り込んでいた警察官が,Oらを逮捕し,上記自動装てん式けん銃や本件写真等の証拠品を押収した。GとLは,L運転の普通乗用自動車(以下「甲車」ともいう。)で石川県内に来ていたが,Gは,Hからの連絡により中国人らが警察官に検挙されたと判断し,当日の計画を中止した。Gは,同日午前,被告人にA方襲撃計画の失敗を電話で連絡した際,被告人との間で機会をうかがって再度計画を実行することとする一方,Gが中国人らに渡した本件写真等が押収されていないかなどの捜査に関する情報を教えてもらうよう被告人に依頼した上,GとLは,甲車に積載されていた偽造ナンバープレートや脇差しを,石川県羽咋郡(以下省略)所在のwダム近くの駐車場付近に隠した。その後,Gは,被告人に対し,A方襲撃計画を再度実行するため中国人らに支払う追加資金の提供を要求し,被告人はこれに応じて,同年7月4日と同月6日の2度に分けて,Gに合計400万円を送金した。 8 共謀成立状況被告人は,同月12日午前,Aから,翌日13日に石川県警察d警察署に赴き,逮捕された中国人が所持していた本件写真等の確認をする予定になっている旨聞かされた。被告人は,本件写真の元となった被告人ら4名の写真が被告人,F及びA夫婦しか所持していないものであったため,本件写真をAが確認すれば,自己ないしFがA方襲撃計画に関与していたことが発 る旨聞かされた。被告人は,本件写真の元となった被告人ら4名の写真が被告人,F及びA夫婦しか所持していないものであったため,本件写真をAが確認すれば,自己ないしFがA方襲撃計画に関与していたことが発覚し,Aから厳しい制裁を受けることになり,また,Iが本件写真を確認しても,やはり同計画への関与が発覚することは避けられないことから,Gにその旨の連絡をするとともに,Fと善後策を協議した。その結果,被告人とFは,Aが本件写真を確認する前に,A夫婦を殺害するほかはないとの結論に至った。 そこで,被告人は,Gに対し,電話でA夫婦を直ちに殺害するよう執拗に依頼したところ,Gは,Aが警察署に本件写真等を確認に行く予定であるとの話を伝えたLからもAの口封じを促されたこともあり,A方襲撃計画の発覚を免れるためには,A夫婦が本件写真を警察署で確認する前に殺害するほかはないと考えるに至った。被告人は,同月12日午後,Gからの電話で,A夫婦殺害の要請に応じる旨の回答を受けたので,両名を殺害する際に凶器として使用するけん銃2丁を用意しておく旨伝え,A夫婦殺害について合意した。 Gは,その直後,Hを連れて東京都内のスポーツ用品店に立ち寄り,A夫婦殺害を実行する際に使用するジャンパーや帽子を各自購入した。Hは,この際,Gが自分と2人でAを殺害する意図であることを認識するとともに,A方襲撃計画が発覚して報復を受けることを避けるためにはAを殺害し,また,Aを殺害する際にその場に居合わせた家族等に顔を見られた場合,その者も殺害せざるを得ないと考えた。 9 実行準備及び実行直前の状況その後,GとHは,H運転の普通乗用自動車(以下「乙車」という。)に乗り,同日午後8時50分ころ練馬インターから関越自動車道に入り,途中,Lと高坂サービスエリアで合流し,Gが同乗するH運転の乙車及び その後,GとHは,H運転の普通乗用自動車(以下「乙車」という。)に乗り,同日午後8時50分ころ練馬インターから関越自動車道に入り,途中,Lと高坂サービスエリアで合流し,Gが同乗するH運転の乙車及びL運転の甲車の2台で,北陸自動車道を経由して高岡市に向かった。Gは,まず,先に偽造ナンバープレート等を隠しておいたwダムに行き,同所でナンバープレートを取り替えることとし,被告人との間で,同ダムから高岡市方面に向かう道路の途中で被告人と落ち合い,被告人からけん銃等を受け取ることを決めた。被告人は,その旨をFに連絡したところ,同日午後11時24分ころ,Fから呼び出しを受けてF宅に赴き,Fの指摘を受けて,Gにけん銃を渡すための待ち合わせ場所を確認するため,当夜l一家事務所に泊まり込んでいたBらに対し,wダムの場所を電話で問い合わせた。Gは,翌13日午前3時半ころwダムに到着後,Hに指示して甲車のナンバープレートを取り替えさせた上,自ら乙車を運転して同ダムから高岡市方面に向かい,その途中の道路で被告人と落ち合い,被告人は,先にGから購入していた自動装てん式けん銃1丁及びサイレンサー1個,別に被告人らが入手していた回転式けん銃1丁並びにこれらの適合実包をGに渡した。その際,被告人は,Gから「俺たちがやるの。」と聞かれたが,「お願いしますよ。」などと重ねて殺害の実行を依頼した。同日午前5時ころ,wダムに戻ったGは,受け取ったけん銃を試射することとし,H及びLとともに,s町(以下省略)の付近で停車し,同所の林道を奥に入った場所で,Gは自動装てん式けん銃で2発,HはGの指示により回転式けん銃で1発それぞれ試射した。 被告人は,その後もGと携帯電話で連絡を取り合い,前夜安全確保のためにl一家事務所に泊まっていたA夫婦の動静を伝えるなどして,両名を殺害する機 HはGの指示により回転式けん銃で1発それぞれ試射した。 被告人は,その後もGと携帯電話で連絡を取り合い,前夜安全確保のためにl一家事務所に泊まっていたA夫婦の動静を伝えるなどして,両名を殺害する機会をうかがっていた。他方,Gらは,同日午前7時ころ,高岡市xのコンビニエンスストアで朝食を購入したが,このとき,Gの指示でガムテープも購入した。その後,Gらは,A方近くの駐車場に移動して待機し,この時までにGやHは,購入した上記ジャンパー等を着るなどして犯行の準備をした。 同日午前9時前,A夫婦がl一家事務所からいったんA方に戻ることになり,被告人は,この機会に両名の殺害が実行できると考え,同日午前8時57分ころ,上記駐車場の甲車内で待機していたGにこの旨を連絡した。また,被告人は,このころ,犬の散歩のためにA方に行くこととなっていたl一家組員に電話をかけ,l一家事務所にAらが忘れていったバッグ等を取りに来させてA方に近づかないようにした。そして,同日午前9時20分過ぎころ,被告人は,Gに対し,電話で「今なら大丈夫だから。5分間は絶対誰も来ないから,今すぐ行ってくれ。」などと言ってA夫婦殺害を指示した。そこで,Gら3名は直ちにA方に向かい,A方付近で,GがLに対し,数分後に門扉前道路で待機しておくよう指示した上,Gが自動装てん式けん銃を,Hが回転式けん銃をそれぞれ持って甲車から降り,A方に入って,判示第2の各犯行(以下「殺人等」という。)に及んだ。 殺人等の犯行後の状況Gらは,犯行直後,同自動車に乗り込んで速やかに逃亡し,犯行に使用したけん銃2丁,連絡に使用した携帯電話,ジャンパーや帽子,偽造ナンバープレート等を投棄するなどした。 他方,被告人は,殺人等の発覚をできるだけ遅らせるため,同日夕方になってからl一家組員にA方の様子を見に行かせ ,連絡に使用した携帯電話,ジャンパーや帽子,偽造ナンバープレート等を投棄するなどした。 他方,被告人は,殺人等の発覚をできるだけ遅らせるため,同日夕方になってからl一家組員にA方の様子を見に行かせた。被告人は,A方でA夫婦の死体を発見した同組員からその旨の報告を受けて110番通報し,警察の捜査が開始された。 その後,被告人は,Gとの連絡に使用した携帯電話を投棄したほか,後日Gとの間で,Gが殺人等について捜査機関から追及を受けた場合には,無関係の別人の名前を出すことにするなどの口裏を合わせるなどの罪証隠滅工作を行った。 被告人は,A夫婦の葬儀の際にk組の組長から指名を受け,同月中にAの跡を継いで二代目l一家組長に就任した(なお,二代目l一家は,平成14年4月にy会と名称を改め,被告人が同会会長に就任している。)。 また,被告人は,平成12年9月18日,A夫婦殺害犯人の探索資金名目で,A夫婦の唯一の相続人であるKに銀行口座から3000万円を引き下ろさせてこれを受け取ったほか,平成13年2月28日,k組に対する上納金名目で再びKに3000万円を引き下ろさせた。被告人は,上記金員をk組の組長らにいったん渡したものの,そのうち合計2000万円を再び受け取り,l一家の運営資金等に費消した。さらに,被告人は,Aが2億9000万円の貸付けを行っていた元パチンコ店経営者との間で,貸金返済の交渉を行い,貸付金の返済額を減額するとともに,当該貸付の中からK宛の振込を含めて少なくとも5000万円の返済を受けたり,組長の経費名目で,h商事から月々30万円程度の金員を得ていたほか,平成14年7月以降,捜査機関から逃亡している最中にも,h商事から金員を得ていた。 なお,殺人等につき,G及びHらが逮捕,起訴されたが,その捜査や公判段階において,Gらは共謀状況等の供述 ていたほか,平成14年7月以降,捜査機関から逃亡している最中にも,h商事から金員を得ていた。 なお,殺人等につき,G及びHらが逮捕,起訴されたが,その捜査や公判段階において,Gらは共謀状況等の供述を拒んでいた。しかし,平成14年10月,Gらの公判が一度結審した後,Gが被告人及びFの関与を供述したことにより,被告人が逮捕され,同年12月16日殺人等につき起訴されるに至った。 被告人は,捜査段階では関与を否定していたが,同起訴後,同事件に対する自己及びFの関与を供述するようになり,その後,Fも逮捕,起訴されるに至っている。 第3 以上の事実をもとに,争点について検討する(以下,本項において日付は平成12年のものである。)。 1 まず,被告人がGに高岡市内においてA殺害を依頼した日の翌日である6月2日の段階について検討する。Gは,当公判廷において,同日被告人から電話で,Aに加え,Iをも強盗に見せかけて殺害するよう依頼された旨の供述をし,検察官は,この供述の信用性が高いとして,これを前提とする主張をする。 しかし,上記認定のとおり,Fないし被告人がAに殺意を抱いた発端は,Aの両名に対する仕打ちにあった。そして,前日である同月1日には被告人とGとの間でA殺害を強盗の仕業に見せかけるという話は出ておらず,かえってAの愛人方を下見に行くなどしていたのに,翌2日には強盗に見せかけてIをも殺害するという計画に変更されるというのはやや唐突と思われる。また,Gの供述に沿う可能性のある被告人からGへの通話は同日午後8時37分にされたもののみであるところ,その通話時間は53秒にすぎず,いかに前日に両名の間でIについても話題に上ることがあったとはいえ,殺害する対象を一人加える旨の依頼としては余りにも短い。さらに,被告人らが強盗の実行者が奪ってきた財産を受け取るとい 3秒にすぎず,いかに前日に両名の間でIについても話題に上ることがあったとはいえ,殺害する対象を一人加える旨の依頼としては余りにも短い。さらに,被告人らが強盗の実行者が奪ってきた財産を受け取るという謀議をした事実は殺人等に至る過程を通して何らうかがえず,被告人らがわざわざ強盗に見せかけるように指示する理由も乏しい。加えて,被告人は,強盗の話は自分やFから出た話ではなく,Gから,同月中旬ころ,殺人だけをする中国人はあまりおらず,一応手配はしてあるが,お土産(現金のこと)があると言えばすぐに中国人が集まってくるので,金庫の場所を教えてくれと言われた旨供述しているところ,この供述は,GがかねてLから中国人マフィアが強盗するのに適当な家等を教えてほしいと言われていたことや,Mがそのころ殺人の依頼を拒んでいたことと符合し,一応首肯し得る内容である。これらの諸事情に照らすと,被告人への責任転嫁の危険のあるGの供述をそのまま信用することはできない。 2 しかしながら,被告人は,同月中旬ころ,Gに本件写真を送付していることが認められるところ,この写真は,上記のとおり,もともとFと被告人がA夫婦を挟み,この4名が横一列に並んで撮影されたものを,被告人が,Fと被告人の写っていた両端部分を切り取って送付しているのであるから,被告人が,Iの写っている部分を意図的に残したことは明白である。そして,仮に,Aのみが殺害依頼の対象であれば,わざわざIの撮影されている部分を残して送付する理由はないはずであるから,遅くとも本件写真を送付した段階では,被告人において,AのみならずIも殺害の対象となっていることを認識していたことが強く推認される。 この点について,被告人は,本件写真をGに送付した経緯について,Gから,Iの写真も要求されたので,IとAの愛人とを区別するために必 Iも殺害の対象となっていることを認識していたことが強く推認される。 この点について,被告人は,本件写真をGに送付した経緯について,Gから,Iの写真も要求されたので,IとAの愛人とを区別するために必要であると思って送付しただけであり,殺害を依頼したのはあくまでAのみである旨弁解している。しかし,Aのみを殺害する目的であれば,Aのみが撮影されている部分を送付すれば事足りるのであるし,Iの写真まで必要とする理由について被告人が細かく確認した様子がないことも,事柄の重要さに照らして不自然であるから,被告人の弁解ではIの撮影されている部分まで送付した理由を十分に説明できているとはいえない。そして,その後,被告人は,GにA方の金庫の位置等をも付記したA方内の見取図を送付しており,この段階ではA殺害時に中国人マフィアが強盗もしてくることを容認していること,A方襲撃計画がA夫婦が在宅中の午前中の時間帯を狙って進められていることを知りながら,Iの安全に配慮した形跡がないことが認められる。これらも併せ考えれば,被告人は,Gの提案に応じ,A方でAを殺害するに際し,併せて強盗も行わせることとし,Gに本件写真及びA方内の見取図を送付した段階では,A方襲撃計画において,Iが殺害されるに至る可能性があることを十分に認識しつつ,A殺害のためにはそれもやむを得ないとして,I殺害を未必的に認容したと推認される。 3 次に,A夫婦が本件写真等の証拠品を確認に警察署に行くことが判明した殺人等の前日の段階について検討する。このときGに殺害を依頼した直接の動機が自己のA方襲撃計画への関与が発覚することを恐れたというものであることは被告人も自認している。そうであれば,本件写真の元となった被告人ら4名の写真と同一の写真を持っていると考えられるIが本件写真を確認することによっても, 与が発覚することを恐れたというものであることは被告人も自認している。そうであれば,本件写真の元となった被告人ら4名の写真と同一の写真を持っていると考えられるIが本件写真を確認することによっても,被告人が上記計画に関与したことを疑われる結果となるのであるから,その発覚を免れるためにIの殺害をも依頼したと考えるのが自然である。 また,被告人は,Gとの間でけん銃2丁を準備することが決まった段階で,けん銃を使ってIを見張るという認識を有していて,Iにけん銃を突き付けることになること,けん銃2丁をGに渡した後Aらの動静をGに伝えていたころには,A殺害時にIがAの近くにいることをいずれも理解していた旨自認している。そうであれば,被告人は,殺害現場の状況次第ではIに向かってけん銃で発砲されてしまう可能性があることをよく分かっていたというほかない。被告人は,そのような認識の下で,Gにけん銃2丁を渡し,しかも,Aとともに行動するIの動静についてもそのまま伝え,特段,Iを殺害しないようにするための明確な指示をしていないのであるから,このことは,被告人がI殺害を容認していたことの現れと見るのが合理的である。 これらの点について,被告人は,Aについては本件写真を見たら殺されるかも知れないと思ったが,Iについては元になった写真の複製を準備しておけば大丈夫だと思っていた旨弁解している。しかし,Iが本件写真を確認すれば,被告人の関与が発覚し,ひいては被告人の立場等が危うくなるのは疑いがなく,元になった写真の複製を準備したところで,写真を持っていた人物が限られている以上,発覚を免れ得るものではないから,被告人の供述する理由が,直ちにI殺害依頼の有無を左右するものとはいえない。また,被告人は,同日GにI殺害をも依頼していたということはなく,Iはガムテープでぐるぐる巻き 覚を免れ得るものではないから,被告人の供述する理由が,直ちにI殺害依頼の有無を左右するものとはいえない。また,被告人は,同日GにI殺害をも依頼していたということはなく,Iはガムテープでぐるぐる巻きにするとGが言っていたことを信じていたのであり,さらに,殺人等の当日未明Gにけん銃2丁を手渡した際,自分はIを縛るためのガムテープをGに渡そうと考えて持っていったが,Gは既に持っているとして受け取らなかった旨も弁解する。しかし,Gは,被告人供述に係る自己の言動や被告人の行動を否定しており,被告人の弁解は裏付けを欠く。しかも,Iを緊縛する際にGらの顔を見られた場合の対応策について被告人がGと協議した様子はうかがわれない。かえってGが同日朝,高岡市内のコンビニエンスストアで独自にガムテープを購入していることなどに照らしても,被告人の弁解は信用できない。 4 そもそも,Gは,G自身にも独自の利益や殺害の必要性がなかったわけではないが,基本的には,被告人から依頼されて殺害を実行しているのであるから,依頼もないのにIまで殺害するとは考え難いところである。もっとも,Gは,I殺害について,当初Iまで殺害する意思はなかったが,Aを殺害した後,命乞いをするIから「お金はないけど。」などとヤクザを馬鹿にするようなことを言われたため,Aを殺害して生じていた興奮状態が高じてI殺害に至った旨弁解する。 しかし,A方に押し入る前にけん銃を試射するなど十分に準備し,被告人からの情報によりIの在宅を知っていたGが,このような事情のみで突然Iに対する殺意を生じたとするのは不自然であるから,この点に関するGの弁解は信用できない(それ故,同供述を前提として,I殺害は偶発的事件であるという弁護人の主張は採用できない。)。 5 以上に加え,殺人等の犯行後,被告人が,Aが組長を務めていた ら,この点に関するGの弁解は信用できない(それ故,同供述を前提として,I殺害は偶発的事件であるという弁護人の主張は採用できない。)。 5 以上に加え,殺人等の犯行後,被告人が,Aが組長を務めていた暴力団の組長となり,これに伴って,種々の経済的利益を容易に得ることができたのも,Iまで殺害されたからであることなどを併せ考えると,被告人は,殺人等の前日の段階では,I殺害を認識かつ認容し,その旨Gと意思を相通じていたことは優に認定することができる。 よって,Iに対する殺人の共謀を否認する弁護人の主張は採用できない。 (累犯前科)被告人は,(1)平成3年9月3日富山地方裁判所高岡支部で覚せい剤取締法違反罪により懲役1年6月(4年間執行猶予,付保護観察,平成5年7月30日その猶予取消し)に処せられ,平成9年6月2日その刑の執行を受け終わり,(2)平成5年7月2日同裁判所同支部で覚せい剤取締法違反,公務執行妨害罪により懲役2年6月に処せられ,平成7年12月2日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は,検察事務官作成の前科調書(乙15)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為のうち,建造物侵入の点は刑法60条,130条前段に,威力業務妨害の点は同法60条,234条,233条に,判示第2の1及び第2の2の各所為はいずれも,行為時においては同法60条,平成16年法律第156号(以下「新法」という。)による改正前の刑法(以下「旧法」という。)199条に,裁判時においては刑法60条,新法による改正後の刑法199条に,判示第2の3の所為は行為時においては包括して同法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項(刑の長期は,行為時においては旧法12条1項に,裁判時においては新法による改正後の刑法12条1項によることに 時においては包括して同法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項(刑の長期は,行為時においては旧法12条1項に,裁判時においては新法による改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)に,判示第3の各所為はいずれも覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条(判示第3の1の所為については更に刑法60条)にそれぞれ該当するところ,判示第2の1及び2は犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条によりいずれも軽い行為時法の刑によることとし,判示第1の建造物侵入と威力業務妨害との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い威力業務妨害罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第1の罪については懲役刑を,判示第2の1の罪については無期懲役を,判示第2の2の罪については死刑をそれぞれ選択し,被告人には上記の前科があるので同法56条1項,57条により判示第1及び第2の3の各罪の刑について,それぞれ再犯の加重(判示第2の3の罪の刑については同法6条,10条により旧法14条の制限内)をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法46条1項本文により判示第2の2の罪の刑で処断して他の刑を科さないこととして被告人を死刑に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)第1 量刑事情本件は,暴力団幹部であった被告人が,その組長から指示を受け,組員らと共謀の上,カッターナイフやバールを用いて飲食店のソファーやウイスキーボトル等を破壊してその営業を妨害した建造物侵入,威力業務妨害(判示第1),幹部組員及び別の暴力 その組長から指示を受け,組員らと共謀の上,カッターナイフやバールを用いて飲食店のソファーやウイスキーボトル等を破壊してその営業を妨害した建造物侵入,威力業務妨害(判示第1),幹部組員及び別の暴力団組長らと共謀の上,組長夫妻をけん銃で射殺した殺人2件,銃砲刀剣類所持等取締法違反(判示第2)及び逃走中に交際相手の女性と覚せい剤を使用した覚せい剤取締法違反2件(判示第3)からなる事案である。 このうち,被告人に対する量刑を判断する上で最も重要なものは,殺人等の事案(以下「本件」という。)であるから,以下,これを中心に検討する。 1 本件に至る経緯及び犯行の動機本件犯行の動機は,A夫婦が本件写真等の証拠品を確認に行くことでA方襲撃計画が発覚することを被告人らが恐れたため,A夫婦の口を封じる目的で敢行されたものである。それは,まさに被告人ら自身の違法行為に起因するものであって,身勝手極まりなく,およそ正当化の余地がない。 この点について,検察官は,本件の動機は被告人及びFによるl一家の乗っ取りやl一家に関連する経済的利益の確保であって,そのためIも初期の段階から殺害の対象となっていたのであり,A夫婦が警察署に本件写真を確認に行くことはその実行を早める契機となったにすぎない旨主張する。確かに,被告人及びFは,本件当時,l一家の若頭と副長の地位にあって,組長であるAが死亡すれば,その地位を承継し得る立場にあった上,実際にも,本件後被告人が組長の跡目を継いで,種々の経済的利益をその手に収めたことからすると,A殺害の依頼からA夫婦殺害までの間,被告人及びFにおいて,Aないしl一家の活動から生じる経済的利益を得る目的があったことは十分に認められる。 したがって,本件には利欲的な側面があることは否定できず,検察官の主張にも相当な根拠があるといえる。しかしな いて,Aないしl一家の活動から生じる経済的利益を得る目的があったことは十分に認められる。 したがって,本件には利欲的な側面があることは否定できず,検察官の主張にも相当な根拠があるといえる。しかしながら,平成12年6月2日の段階では,被告人はGに対してI殺害を依頼しておらず,強盗に見せかけてAを殺害するという計画はGの提案であったこと,Iがl一家の運営やAの営んでいた金融業にある程度関与していたことは認められるものの,被告人及びFのl一家での地位からして,Iまで殺害しなければ組長の跡目を継ぐことが困難であったとは考えられないことからすると,被告人らが当初から経済的利益の確保を主たる目的としてA夫婦殺害を企図していたとは認め難い。かえって,本件の発端がAから厳しい仕打ちを受けていたFが被告人に対してA殺害を持ちかけたものであること,未だAが何らかの攻撃を積極的に仕掛けるような状況にはなかったとはいえ,A夫婦が本件写真を確認すれば,被告人らのA方襲撃計画への関与が発覚してAから激しい制裁を受けることは容易に想定されること,本件が,A夫婦が本件写真を確認しに警察署へ出向くことを被告人らが知った翌朝に敢行されていることからすれば,本件の直接の動機は,上記のとおり,被告人らがA方襲撃計画に関与していることがAに発覚し,制裁を受けることを避けるためであったと見るのが自然である。そうすると,検察官の上記主張は,けん銃殺人の直接的動機としては採用できない。もっとも,このことは,自らの犯罪行為の罪証隠滅を図るという犯行動機の身勝手さや悪質さを何ら減じるものではなく,結局,本件の動機に酌量の余地が全くないという点には変わりがない。 2 犯行の態様本件犯行の態様は,強固な殺意に基づき,高度の殺傷能力を有する自動装てん式けん銃で2発ずつ発砲して射殺したと なく,結局,本件の動機に酌量の余地が全くないという点には変わりがない。 2 犯行の態様本件犯行の態様は,強固な殺意に基づき,高度の殺傷能力を有する自動装てん式けん銃で2発ずつ発砲して射殺したという手口の冷酷かつ残忍なものであり,とりわけ,必死に命乞いをするIを殺害した点は,無慈悲この上ないというべきである。 実行犯であるGは,けん銃の扱いに手慣れ,高い射撃能力を有しており,試射により性能を確認済みの自動装てん式けん銃を所持してA方に押し入っている。そして,Gは,A方においてAと顔を合わせるや,ためらうことなく至近距離からAの顔面をけん銃で狙撃し,そのまま後ろに倒れたAにとどめを刺す目的でAの下顎角部を狙撃している。また,Iに対しては,けん銃を突き付け,いわば人質に取った状態でAの居場所へ案内させた上,Iが,その目前でAが射殺されたのを見て慌てて別室に逃れ,床にひれ伏し金品の提供を申し出るなどして必死に命乞いをするのも構わず,至近距離からIの後頭部を狙撃し,そのまま崩れるようにしてうつぶせに倒れたIにやはりとどめを刺す目的でその背部を狙撃している。被害者両名は,いずれもその場で血まみれになって絶命しており,凄惨を極めている。そこには生命の尊厳に対する思いや被害者らに対する憐憫の情が微塵も感じられず,極悪非道な行為態度というほかない。 3 計画性及び被告人の地位ないし役割本件は,A方襲撃計画の段階から謀議を重ね,周到な準備をした上,同計画失敗後,被告人と共犯者らとが緊密な連絡を取り合いながら,周到な準備のもとに遂行された計画性の高い犯行である。 まず,A方襲撃計画において,被告人は,Fとの間でA殺害を他人に実行させようと謀った上,高岡市内で面談したGに対し,Aへの殺意を抱くに至った経緯等を訴えるなどしてAの殺害を依頼し,A方やAの立 る。 まず,A方襲撃計画において,被告人は,Fとの間でA殺害を他人に実行させようと謀った上,高岡市内で面談したGに対し,Aへの殺意を抱くに至った経緯等を訴えるなどしてAの殺害を依頼し,A方やAの立ち寄り先等を案内した後,その実現に向けて,A夫婦の写真,A方付近等の住宅地図の写し,A方内の見取図等をGに渡すなどの情報提供をした。その後,Gは,高岡市内のA方に赴いて下見をし,その様子をビデオカメラで撮影した上,中国人マフィアらとの間でそのビデオテープや写真,地図等を使って綿密な謀議を行い,バールや脇差し等の犯行道具や,犯行に使用する自動車,犯行発覚を免れるための偽造ナンバープレートを用意するなど,共犯者間で役割を分担しながら周到に準備を進めていたが,A方襲撃計画の実行に向かった中国人らの逮捕により同計画が失敗に終わった。 その後,被告人は,A夫婦が中国人らから押収された写真等を確認するため警察署に出向くことになると知るや,直ちにこれをFに報告し,Fから口封じのため写真を確認する前にA夫婦を殺害することを提案され,GにA夫婦の殺害を実行させることを決意し,Gに対してすぐに東京から富山に来てA夫婦を殺害するよう執拗に要請し,GにA夫婦殺害を決心させた。そして,Gらは,犯行時に着用するためのジャンパーや帽子を購入し,自動車で富山県に向かい,途中で被告人からけん銃2丁を受領してこれを試射するなどの準備をした上,A方付近に駐車して待機していた。他方,被告人は,前夜l一家事務所に泊まったA夫婦の側でその動向を監視して殺害の機会をうかがい,A夫婦がいったん自宅に戻ることを聞き知るや,Gらに電話で連絡した後,A方にA夫婦を2人きりにさせて実行を容易にする目的で,犬の散歩のためにA方に向かっていた組員を2度にわたりl一家事務所に呼びつけてA方から遠ざけた 宅に戻ることを聞き知るや,Gらに電話で連絡した後,A方にA夫婦を2人きりにさせて実行を容易にする目的で,犬の散歩のためにA方に向かっていた組員を2度にわたりl一家事務所に呼びつけてA方から遠ざけた上,Gに対し,直ちに殺害を実行するよう指示した。そこで,Gらは,現場から即刻離脱できるよう,あらかじめLに対し,数分後にA方前路上に自動車で待機しておくよう指示した上,A方に押し入り,A夫婦の殺害に及んだ。 被告人は,本件において,計画立案から準備,実行に至るまで一貫して主体的に行動しているのみならず,上記経過のとおり,A夫婦の殺害を実行させることとしたGに対し,けん銃2丁を手渡した上,A夫婦の動静について逐一情報を提供し,殺害の具体的時機を指示するなど,不可欠かつ極めて重要な中心的役割を果たしながら,本件を推し進めてきた者である。被告人と実行犯であるGとは当初から相当高額の報酬の授受を約束する対等の間柄であり,被告人の共犯者間における地位は,実行犯の中で主導的な立場にあるGやA殺害の発案者であるFと比べても何ら遜色はなく,首謀者の一人といわなければならない。しかも,被告人が犯行の発覚を免れるため,自ら手を下すことなく,Gに依頼してA夫婦殺害の目的を遂げている点は,誠に卑劣で狡猾というべきである。 4 犯行の結果及び遺族の処罰感情2名もの尊い生命が奪われたという結果は,極めて重大であって,量刑上最も重視すべき事情であることは詳論するまでもない。自宅で突然の襲撃に遭い,死の恐怖に直面したA夫婦の驚愕や,A殺害の様子を目の当たりにさせられた上,床にひれ伏して必死の命乞いをしたときのIの絶望感は,想像に難くなく,非業の死を遂げるに至ったA夫婦の無念さは察するに余りある。 遺族の処罰感情は,峻厳を極め,被告人の極刑を求めている。Aは暴力団組長,I れ伏して必死の命乞いをしたときのIの絶望感は,想像に難くなく,非業の死を遂げるに至ったA夫婦の無念さは察するに余りある。 遺族の処罰感情は,峻厳を極め,被告人の極刑を求めている。Aは暴力団組長,Iはその妻であったとはいえ,その娘,Aの父及びIの姉ら親族にとってかけがえのない存在であることはいうまでもない。とりわけ,本件によって一度に両親を失ったKは,「私からかけがえのない両親を奪った犯人に対しては到底許せるはずはありません。…どうか,私の両親を殺した犯人を死刑にしてほしいと心から願っています。」と峻烈な処罰感情を述べ,Aの配下であり,また,A夫婦の死後に相続人である自分から犯人探索費名目で金を引き出した被告人やFについて,「結局,裏切られていたと思うと,当然怒りを感じます。」としながらも,「QやFがこの事件に関わっていたということを両親が知ったらどのように思うでしょうか。こんな苦しい思いをするならば,両親にはそのことを教えない方がいいのかも知れません。」と亡き両親の心情まで気遣う姿勢には,かけるべき慰めの言葉も見つからない。 なお,遺族に対し損害賠償等の見るべき慰謝の措置は全くとられておらず,今後そのような措置がとられる見込みも乏しい。 5 社会的影響本件は,複数の暴力団組員らが,共謀の上,白昼,市街地の住宅内において,夫婦2名を一度にけん銃で射殺したという凶悪かつ重大な事件であり,近隣住民や地域社会に与えた衝撃は大きく,深刻な不安を招いたことも明らかであって,その社会的影響は軽視することができない。 ところで,検察官は,Aが暴力団組長の地位にあったことを被告人に有利な情状として過大視すべきでなく,Iが暴力団組長の妻であったことは本件を正当化する事情にならないと主張する。これに対し,弁護人は,暴力団組長が暴力団員に殺害された点で,社 にあったことを被告人に有利な情状として過大視すべきでなく,Iが暴力団組長の妻であったことは本件を正当化する事情にならないと主張する。これに対し,弁護人は,暴力団組長が暴力団員に殺害された点で,社会的影響は割り引いてよく,A夫婦が億単位の資産を形成していたことは,Aが暴力団の威力を背景に違法な金利や取立により金融業を営んでいたことの証左であるから,本件を一般人が殺害された場合と同列に論じることはできないと主張する。確かに,本件は,Aが組長を務める暴力団内部でのAとFとの確執を発端としたものであるから,Aは暴力団組長であったからこそ殺害されるに至ったという側面があることは否定できない。しかし,Aの金融業がたとえ暴力団組長の地位を背景にその威力を利用していたとしても,被告人らは,A亡き後の組長の地位を承継することでこの金融業をある程度引き継ぐことを見込んでいたものであるから,Aの地位や経済活動は,それ自体,被告人の刑事責任を相当程度軽減するような事情とはならない。また,Aの妻にすぎないIは,犯行当日の段階では,A方襲撃計画の発覚を防ぐ口封じのために殺害されたのであるから,本件においては,むしろ一般市民に近い立場にあったものというべきである。したがって,この点に関する検察官の主張には理由があり,弁護人の主張は採用できない。 6 犯行後の情状本件犯行後の情状については,罪証隠滅行為のほか,経済的利益の取得に加え,被告人の供述態度等を見ても,甚だ芳しくない。 本件犯行直後,Gらは,現場から速やかに逃走し,けん銃2丁,携帯電話,ジャンパーや帽子,偽造ナンバープレート等を順次投棄するなど,入念な罪証隠滅を行い,被告人も,携帯電話を処分し,さらに,後日Gとの間で口裏を合わせるなどの罪証隠滅工作を行った。 のみならず,被告人は,上部団体の組長の指名を ンバープレート等を順次投棄するなど,入念な罪証隠滅を行い,被告人も,携帯電話を処分し,さらに,後日Gとの間で口裏を合わせるなどの罪証隠滅工作を行った。 のみならず,被告人は,上部団体の組長の指名を受け,Aの後継者としてl一家の組長となった上,Kから犯人探索費名目や上納金名目で6000万円を受け取り,そのうち2000万円は自ら消費したり,配下の組員に分配して費消し,また,Aから貸付けを受けた元パチンコ店経営者から貸金返済の名目で数千万円を受け取り,その一部を自己の用途に使用するなど,自己の犯罪に起因する多額の経済的利益を受けている。 加えて,被告人は,判示第1の事実で逮捕された後,病気入院のため身柄拘束を解かれるや,警察から本件等について追及されることを恐れて逃亡し,本件で逮捕された後も,Gらの供述内容が明らかでない捜査段階においては本件について否認を続けていた。なお,被告人は,本件起訴後,第2回公判前にI殺害の共謀を除いて本件を自白してからは,これを維持しているものであるが,公判審理の最終段階に至ってから,けん銃を試射した場所や上部団体の組長への報告時期等を明らかにするなど,本件に関する全ての事情を包み隠さずに供述していたものとは認められない。 7 被告人の前科等被告人は,多数の前科を有し,服役を繰り返している上,暴力団員としての生活態度等も芳しくない。 被告人は,少年時代から非行を重ねて少年院に2回送致され,昭和40年12月には恐喝罪等で不定期刑に処せられ,成年後は懲役刑に8回処せられ,いずれも服役し,その期間は通算10年を超えるほか,罰金刑にも2回処せられているものであって,前科11犯を有する。比較的近時の前科に限っても,上記累犯前科のとおり,平成3年9月覚せい剤取締法違反罪で懲役1年6月,4年間執行猶予,保護観察付きの判決を 金刑にも2回処せられているものであって,前科11犯を有する。比較的近時の前科に限っても,上記累犯前科のとおり,平成3年9月覚せい剤取締法違反罪で懲役1年6月,4年間執行猶予,保護観察付きの判決を受けたにもかかわらず,平成5年7月には覚せい剤取締法違反,公務執行妨害罪で懲役2年6月の実刑判決を受け,前刑と併せて服役し,その後も,平成10年7月脅迫罪で罰金20万円に処せられている。 のみならず,被告人は,高岡市内で正業に就いていた時期もあるものの,暴力団員としての活動歴が長くなりつつあり,判示第1の建造物侵入,威力業務妨害は,暴力団特有の反社会性を顕著に示すものである。しかも,被告人は,覚せい剤事犯による同種前科4犯を有するのに,薬物への依存傾向を更に強めていて,判示第3の覚せい剤使用は,その害悪を他人にも及ぼしながら行われている。 したがって,被告人の反社会的な人格態度は,相当強く固着しており,過去の矯正教育で有意な効果があったとは認められず,現在57歳という被告人の年齢等をも併せ考えると,被告人が今後更生する可能性は,極めて乏しいといわざるを得ない。 8 被告人のために斟酌すべき事情しかしながら,他方,被告人には以下のような酌むべき事情も存在する。 既に述べたように,本件に至る経緯においては,A殺害計画の発案者は,被告人ではなく,当初からIの殺害まで企図していたわけではないこと,本件の動機においても,経済的利益の取得が直接の目的ではなかったこと,共犯者との関係では,被告人が実行犯であるGに命令をするような上下関係はなかったことが認められる。 そして,被告人は,I殺害の共謀の点を除き,各公訴事実をいずれも認め,自分がA殺害を依頼していなければIも命を落とすことはなかったとしてその責任の一端を自覚するとともに,被害者夫婦の娘ら遺族に対 。 そして,被告人は,I殺害の共謀の点を除き,各公訴事実をいずれも認め,自分がA殺害を依頼していなければIも命を落とすことはなかったとしてその責任の一端を自覚するとともに,被害者夫婦の娘ら遺族に対し深い悲しみと苦しみを与えたことを謝罪し,被害者らの冥福を祈り続けていく旨述べるなど,現在では反省悔悟の情を示している(弁護人は,被告人が被害者の冥福を祈る気持ちの強さもいうが,この点は必ずしも明確にされているものではない。)。 加えて,被告人は,判示第1の建造物侵入,威力業務妨害については,首謀者ではなく,被害者に賠償金100万円を支払って示談し,宥恕を得ており,また,判示第3の覚せい剤使用については,30万円の贖罪寄附をしている。 なお,本件発覚後被告人と離婚した妻は,本件後間もなく生まれた被告人の子を養育している。 ただし,以上のような被告人にとって有利な事情や被告人のために斟酌すべき事情は,いずれもその刑責を大幅に軽減するようなものとは認められない。 9 まとめ本件においては,何よりも2名の生命を奪ったという結果が極めて重大であり,口封じという動機には酌むべきところが全くないばかりでなく,その態様は,Aに対しては何らのためらいなく,Iに対しては必死の命乞いを無視して,けん銃で発砲してとどめを刺すという冷酷かつ残虐なものである上,周到かつ綿密な計画に基づき共犯者らと緊密な連絡を取って極めて冷静に遂行されており,さらに,遺族の処罰感情は峻烈であって,本件の社会的影響も軽視できない(なお,被害者らが暴力団組長の夫とその妻であったことを被告人に有利な情状として過大に評価することはできない。)。しかも,被告人は,首謀者の地位にあって,共犯者らと謀議を重ね,主体的に犯行の準備をし,殺害の機会を捉えてGにその実行を指示するなど,一貫して主導的かつ 情状として過大に評価することはできない。)。しかも,被告人は,首謀者の地位にあって,共犯者らと謀議を重ね,主体的に犯行の準備をし,殺害の機会を捉えてGにその実行を指示するなど,一貫して主導的かつ中心的な役割を果たしている上,犯行後の情状や前科等も芳しくない。 そうすると,被告人のために斟酌すべき事情をできるだけ有利に考慮しても,被告人の刑事責任は甚だ重大であるといわざるを得ないから,被告人に対しては厳しい刑罰を科するほかない。 第2 死刑選択の当否検察官は,被告人に対し死刑を求刑しているところ,死刑は,被告人の生命を奪うという究極の峻厳な刑罰であり,慎重に適用すべきものであることは疑う余地がない。しかし,死刑制度を存置する現行法制の下では,犯罪の罪質,動機,態様殊に殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかないものといわなければならない。そこで,被告人に対し極刑を選択せざるを得ないものかについて,死刑の選択を回避すべき理由がないかという観点を含めて更に検討する。 1 弁護人の主張に対する判断まず,弁護人は,死刑反対の理由として誤判の可能性を指摘するが,事実認定の問題と刑の量定とを混同する議論である。 次に,弁護人は,国家の刑罰は遺族の被害感情に左右されるものであってはならないと主張するが,刑罰権を独占する国家は,遺族の被害感情を十分に考慮しなければならない。 また,弁護人は,国家が更生の不可能を宣言する前に,更生への努力をすべきであると主張するが,被告人の多数の服役前科,暴力団員としての経歴,そ 国家は,遺族の被害感情を十分に考慮しなければならない。 また,弁護人は,国家が更生の不可能を宣言する前に,更生への努力をすべきであると主張するが,被告人の多数の服役前科,暴力団員としての経歴,その年齢等に照らすと,服役による更生は期待できないといわざるを得ない。 加えて,弁護人は,暴力団p組組長がz駅前のホテルの喫茶室においてけん銃で射殺され,同席していた歯科医も死亡したという著名事件に関し,多数の共犯者に対する刑は最高でも懲役20年であったことを指摘し,これとの均衡を図るべきであるとも主張する。しかし,当該事件は,暴力団組員によるけん銃を使用した2名の殺人事件という限度でこそ共通性があるとはいえ,対立する暴力団組織の抗争事件という罪質が異なる事案であって,本件の経緯や動機とも大きな隔たりがあるから,比較の対象にならない。 そうすると,弁護人の上記各主張はいずれも採用できない。 2 共犯者に対する刑との均衡なお念のため,共犯者間の刑の実質的均衡の観点からも検討する。 実行犯であるGは,第一審で死刑の言渡しを受けて現在控訴中であり,Hは,懲役18年の刑が自然確定している(なお,Lは,殺人幇助,強盗予備の罪で懲役7年の刑が控訴棄却により確定している。)。本件の首謀者である被告人の犯情は,これら共犯者と比較してもより重いものといわなければならず,少なくとも実行犯であるGと同等の刑責を負うべきであるから,Gの最終的な量刑の帰すうにかかわらず,この点は死刑の選択を回避する理由にはならない。 そうすると,本件の犯情は極めて悪質であって,被告人の罪責は誠に重大であるから,当裁判所は,被告人のために斟酌すべき諸事情を最大限有利に考慮しつつ,慎重に熟慮を重ねたけれども,極刑を回避すべき理由が見当たらず,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも,被告人 大であるから,当裁判所は,被告人のために斟酌すべき諸事情を最大限有利に考慮しつつ,慎重に熟慮を重ねたけれども,極刑を回避すべき理由が見当たらず,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも,被告人に対する死刑の選択はやむを得ないという結論に達した。 よって,主文のとおり判決する。 平成17年1月27日富山地方裁判所刑事部裁判長裁判官手 﨑 政人裁判官大多和泰治裁判官五十嵐浩介
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