平成24年9月12日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成24年(行ケ)第10103号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年7月11日判決原告 X同訴訟代理人弁護士木内加奈子同弁理士木内光春片桐貞典中島由布子被告アイリスオーヤマ株式会社同訴訟代理人弁護士髙橋淳同弁理士布施行夫大渕美千栄池田恭子 主文 1 特許庁が取消2010-300652号事件について平成24年2月13日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,被告の後記1の本件商標に係る商標登録の取消しを求める原告の後記2の本件審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4のとおりの取消事由があると主張して,原告が本件審決の取消しを求める事案である。 1 本件商標(1) 本件商標(登録第4595454号)は,「エコルクス/ECOLUX」の文字を横書きしてなるものであり,平成13年8月24日に登録出願され,第11類「電球類及び照明器具」を指定商品として,平成14年8月16日に設定登録されたものである(甲1)。 (2) 原告は,平成21年4月14日,本件商標の指定商品のうち,第11類「LEDランプ」について不使用取消審判を請求した(乙1),同月30日,審判の請求の登録がされた(甲2)。特許 る(甲1)。 (2) 原告は,平成21年4月14日,本件商標の指定商品のうち,第11類「LEDランプ」について不使用取消審判を請求した(乙1),同月30日,審判の請求の登録がされた(甲2)。特許庁は,これを取消2009-300446号事件(以下「前件審判」という。)として審理し,同年12月8日,請求が成り立たない旨の審決(以下「第1次審決」という。乙4)をしたが,第1次審決は,知的財産高等裁判所の判決(以下,この判決に係る審決取消訴訟を「前件訴訟」という。)により取り消された。そこで,特許庁は,平成23年3月23日,本件商標の指定商品中,第11類「LEDランプ」についてはその登録を取り消す旨の審決(以下「第2次審決」という。)をし,その後確定した(甲2)。 2 特許庁における手続の経緯原告は,平成22年6月14日,本件商標の指定商品のうち,「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」について,不使用取消審判を請求し,本件審判の請求は,同年6月30日に登録された(甲2)。 特許庁は,これを取消2010-300652号事件として審理し,平成24年2月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その審決書謄本は,同月22日,原告に送達された。 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,本件商標の商標権者(被告)及び通常使用権者(株式会社アイリスプラザ)が,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,乾電池式LEDセンサーライト(光源にLEDを使用した照明器具。以下「本件商品」という。)の包装に本件商標を付したものを販売することにより,請求に係る指定商品 について使用していた(商標法2条3項2号)から,本件商標の登録を取り消すことはできない,というものである。 4 取消事由本件商標の使用の有無 を販売することにより,請求に係る指定商品 について使用していた(商標法2条3項2号)から,本件商標の登録を取り消すことはできない,というものである。 4 取消事由本件商標の使用の有無についての認定判断の誤り第3 当事者の主張〔原告の主張〕(1) 本件審決は,以下の理由から,本件審判の請求に係る指定商品「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」とは,「電球類及び照明器具」から「電球型LEDランプ又は蛍光灯型LEDランプ等のLEDを用いた一般的に光源として利用される電球類(以下「LED電球類」という。)を除いた商品」ということができると判断した。 ①「LEDランプ」は,辞書(甲3,4,87)には掲載されていない語であり,国内規格が制定されていないこと(甲129)②「LEDランプ」は,ごく一部に「照明器具」を表す語として使用されている例が見受けられるものの,それらは,「LED照明」の文字とともに使用される例(甲37)や「LEDランプ」の語と他の語を一体として使用する例(甲28,33,38,58,59)が存在するものであって,「LEDランプ」の大半が,LED電球類を表す語として使用されていること③原告も,「LEDランプ」を「LED電球類」を表す語として使用していること(甲91)(2) 本件審決の理由①についてア本件審決の理由①は,「LEDランプ」が「LED電球類」のみを意味すると限定解釈する理由にはならない。 むしろ,辞書(甲3,4,87)の記載によれば,「ランプ」は,電灯などの灯火を意味しており,発光する芯や電球自体ではなく器具であることが示されており,電灯とは,電球による照明器具を指すものであることが示されている(甲87)か ら,辞書には「ランプ」とは電球類のみを指すものではなく,照明器具で や電球自体ではなく器具であることが示されており,電灯とは,電球による照明器具を指すものであることが示されている(甲87)か ら,辞書には「ランプ」とは電球類のみを指すものではなく,照明器具であることを示す記載があるといえる。また,我が国において「ランプ」という語は,種々の照明器具を意味する語として広く知られており,「○○ランプ」という語は,○○という用途,品質,性状,特徴等を備えた「ランプ」(照明器具)を意味することが周知である。 インターネット上では,「LEDランプ」について一般電球と交換できる旨の記載を掲載している企業もある(甲120,123,124)。しかし,これは,LEDを電球類の代わりに使用することがこの数年になって提案されてきたことであり,「LEDランプ」の語がLED電球類のみを意味すると考えるのが不自然であることを前提として,自社が販売する「LEDランプ」について,「LEDを光源とした電球類であり,照明器具ではない」とわざわざ説明しないと,LED電球類を示すとは取引者が理解できないからである。現に,ウィキペディアの発光ダイオードに関する記載(甲98)には,照明器具としての「ランプ」が記載されているにとどまり,電球類としての利用は,記載されていない。 イしたがって,「LEDランプ」とは,「LED」と関連する照明器具を意味する「ランプ」,例えば,「LEDを発光体に使用したランプ」あるいは「LEDの表示灯を設けたランプ」と解釈するのが当然であり,辞書の記載や国内規格の制定がない事実とも平仄が合う。 ウさらに,類似商品・役務審査基準第11類(甲210)に記載されている「電球類及び照明用器具」の例示のうち,照明器具であることが明らかなものには「坑内安全灯,殺菌灯,集魚灯,スポットライト,ダイビング用ライト,太陽灯,探 務審査基準第11類(甲210)に記載されている「電球類及び照明用器具」の例示のうち,照明器具であることが明らかなものには「坑内安全灯,殺菌灯,集魚灯,スポットライト,ダイビング用ライト,太陽灯,探照灯,乗物用発電ランプ」がある。これらは,「ランプ」「灯」「ライト」を置き換え可能なものとして列挙しているばかりか,電球類とも照明器具とも解釈できるものには「アーク灯,蛍光灯,水銀灯」があるから,当該審査基準において「灯」という用語は,電球そのものではなく,照明器具又はそれを含む商品に使用されているといえる。したがって,上記審査基準によれば,「ランプ」とは,単なる電球単体のみ を示す語ではなく,照明器具をも示す語である。 エよって,上記①に関する本件審決の判断は,明らかに誤っている。 (3) 本件審決の理由②についてア 「LEDランプ」の語が電球類ではなく,照明器具全体を意味する取引例(甲28~60,97~209)は,多数(合計52個)にのぼり,本件審決が電球型LEDランプ又は蛍光灯型LEDランプとして認定した使用例の数(合計54個)とほぼ同数であり,本件審決の認定には重大な誤りがある。しかも,本件審決が「LED電球類」として認定した証拠のうち,多くは「LEDランプ」の語を電球類には使用しておらず(甲104,124,155,196(甲213参照),200),あるいは電球類のみに使用しているものではなく(甲118,123,161(甲212参照),162,167,183,199),むしろ照明器具に使用しているものもある(甲124,181)から,本件審決のよりどころとなる使用例の数(合計41個)は,更に少なくなる。 イ本件審決は,照明器具を取り扱う業界においては,「LEDランプ」と「LED照明器具」とを明確に区別して使用している旨を ,本件審決のよりどころとなる使用例の数(合計41個)は,更に少なくなる。 イ本件審決は,照明器具を取り扱う業界においては,「LEDランプ」と「LED照明器具」とを明確に区別して使用している旨を認定したが,その根拠となる記載に係る「可視光LEDボード」及び「パワーLED面照明装置」(いずれも照明器具と認定されている。)は,他の証拠では「LEDランプ」に含まれている(甲109~113)。また,「照明用LEDランプ」の表題の下に,LEDフィラメント電球のほか各種の照明装置が記載されたり(甲118),専ら発光素子のことを「LEDランプ」と呼んでいる証拠もある(甲122)。このように,「LEDランプ」の語は,発光体素子そのもの,発光体を内蔵した電球類及び発光体や電球類を光源とした照明装置全般を示すものとして,取引者が個々の商品の品質性状に合わせて適宜使用しているものであり,電球類と照明器具とをいずれも下位概念として含む上位概念である。 なお,本件審決は,「LED照明」の文字とともに使用する場合には,「LEDランプ」の語が照明器具を示すものではない旨を説示する。しかしながら,本件審決 の根拠となる証拠(甲37)に記載の商品は,照明器具であることが明らかであり,そのような照明器具を表示する商品名として「LEDランプ」を使用した場合に,商品の内容を明確にするなどするために,「LED照明」のような商品の品質,用途,性状等を表す語を併記することは一般的であって,「LED照明」の語が併記されているからといって「LEDランプ」の語が照明器具を意味していないとはいえない。 同様に,「LEDランプ」と「LED照明」とが併記されている証拠(甲104,143,153,164,207)は,いずれも,電球類というよりむしろその商品自体で照明を可能とする「照明 いとはいえない。 同様に,「LEDランプ」と「LED照明」とが併記されている証拠(甲104,143,153,164,207)は,いずれも,電球類というよりむしろその商品自体で照明を可能とする「照明器具」としての意味合いを示すものであるから,「LEDランプ」の語が電球類以外の商品を示す根拠となるものというべきである。 ウ本件審決は,「LEDランプ」の語を他の語と一体化して使用する例(甲28,33,38,58,59)が「LEDランプ」の語の意味を判定する証拠ではないと説示する。しかしながら,一方で,「LEDランプ」が「LED電球類」のみを意味するとの認定の根拠とされた証拠(甲126,130,134,135,137,140,142,143,152,166,171,174,176,182,183,193,197,200,202,206,207)は,いずれも他の語と一体として使用するものであって,その論理には矛盾がある。 エ本件審決は,「LED○○ランプ」以外の「LEDランプ」のみからなる語が散発的な使用例に限られる旨を説示して,「LED○○ランプ」との用例が記載されている原告が提出した証拠を「LEDランプ」の意味を判別する証拠として採用していない。しかしながら「LEDランプ」の語は,辞書にも記載がないのであるから,「LED○○ランプ」という使用例が商取引の場に多数存在する場合,「LEDランプ」の語の意味を解釈するに当たって,「LED○○ランプ」を無視する理由はない。そして,証拠(甲43~52,54~57)に記載のある「LED○○ランプ」との商品は,いずれも照明器具であり,「○○」は,全てその商品の品質,用途又は形状などを示す語であるから,これらの商品が全て「LEDランプ」に含まれることは,当然である。 オ本件審決は,アイリス は,いずれも照明器具であり,「○○」は,全てその商品の品質,用途又は形状などを示す語であるから,これらの商品が全て「LEDランプ」に含まれることは,当然である。 オ本件審決は,アイリスプラザのウェブサイト(甲61)においてその取扱商品について「LEDランプ」あるいは「電球型センサーライト」の語を使用していないから,当該商品がセンサー付きのLED電球であって,照明器具ではない旨を説示する。 しかしながら,「センサー付きLED電球」と「電球型センサーライト」とは,取引者に同義の語として使用されている(甲214。枝番を含む。以下同じ。)から,上記商品は,「電球型センサーライト」であることが明らかであって,アイリスプラザは,電球型LEDランプとLEDを光源としたセンサーライト(照明器具)を同じウェブサイト上で並べて販売していたことになるから,これらがいずれも上位概念の「LEDランプ」に含まれる商品であるとの認識を有していたものというべきである。 カインターネットのショッピングサイトで「LEDランプ」の検索を行うと,照明器具については多数のヒットがある一方で,電球類に属する商品のヒット数は圧倒的に少ないこと(甲215~217)から明らかなように,インターネットで商品を検索する取引者にとって「LEDランプ」は,LED電球類を意味するよりは,むしろ,それ以外の照明器具を意味することが多い。また,類似商品・役務審査基準第11類「電球類及び照明器具」に「懐中電灯,ダイビング用ライト,乗物用発電ランプ」が例示されていることを勘案すれば,「LEDランプ」の語が電球類ではなく,これらの照明器具に使用されることは当然である。このように,取引者は,「LEDランプ」の語を「電球型LEDランプや蛍光灯型LEDランプなどの電球類」,「それ以外の照明器 ンプ」の語が電球類ではなく,これらの照明器具に使用されることは当然である。このように,取引者は,「LEDランプ」の語を「電球型LEDランプや蛍光灯型LEDランプなどの電球類」,「それ以外の照明器具」及び「LED発光体素子」に使用しており,「LEDランプ」は,これらを含む上位概念であることが明らかである。 キ以上のとおり,前記②には,その認定判断に重大な誤りがある。 (4) 本件審決の理由③についてア原告が代表取締役を務める鳥海工業株式会社(以下「訴外会社」という。)は,LED発光体と,それを点灯させるための電気回路及び発光体を覆うカバーなどか らなる照明器具であるLED青色防犯灯の商標として,「ECOLUX-Valo(エコルックス・ヴァロ)」を使用しているところ,「Valo(ヴァロ)」とはフィンランド語で「光」を意味することから,LED青色防犯灯の性状・品質を示す用語にすぎない。このように,訴外会社は,「電球型LEDランプや蛍光管型LEDランプ」以外に「LED青色防犯灯」についても「ECOLUX(エコルックス)」を使用しているのであるから,本件商標の指定商品が「LEDランプ」と記載されている場合,当該指定商品には「電球型LEDランプや蛍光管型LEDランプ」以外に「LED青色防犯灯」が含まれることは,明らかである。また,原告及び訴外会社は,「LEDランプ」を「LEDを使用した電球類」と「LED発光体を使用した照明器具全般」とを示すと認識しているから,訴外会社のウェブページにおいて「LEDランプ」との用語で電球型LEDランプを販売すること(甲93)と「LEDランプ」との語を「LEDを使用した照明器具」にも使用していること(甲91,92,218)とは,何ら矛盾しない。むしろ,訴外会社は,LEDを使用した電球類だけではなく照明 ること(甲93)と「LEDランプ」との語を「LEDを使用した照明器具」にも使用していること(甲91,92,218)とは,何ら矛盾しない。むしろ,訴外会社は,LEDを使用した電球類だけではなく照明器具も,「LEDランプ」を構成する商品として製造・販売しており(甲219,220),その上で「エコルックス」との商標について商標登録出願等をしているばかりか,東京都足立区が企画・制作するテレビ番組において青色LED防犯灯(照明器具)が紹介された際に当該商標を訴外会社製品の商標として選択したものである(甲222~224)。 イしかし,本件商標等の存在を指摘されたために,原告は,前件審判において「LEDランプ」についての不使用取消を請求したのであるから,原告が「LEDランプ」との語には「LEDを使用した電球類」のみならず「LEDを光源として使用した照明器具」を含むと考えていたことは,明らかである。 (5) 小括よって,本件審決は,その認定判断に誤りがあり,取り消されるべきである。 (6) 被告の主張について被告は,「LEDランプ」との用語が多義的であることを自白する一方,前件審判 及び前件訴訟において「LEDランプ」との用語がどのような意味で使用されていたかが問題であるなどと論点をすり替えている。 そもそも,指定商品の概念については,商標権の及ぶ商品の範囲を公示するものとして商標公報及び登録原簿に記載された指定商品の記載(表示)を第三者がどのように理解するかという観点からする客観的解釈でなければならない。そして,前件審判及び前件訴訟では,「LEDランプ」の用語解釈は争点となっておらず,また,原告は,「LEDランプ」が「LED電球」と同義であるという前提で主張立証していたという事実はなく,被告によるLED電球への本件商標の使用に関 「LEDランプ」の用語解釈は争点となっておらず,また,原告は,「LEDランプ」が「LED電球」と同義であるという前提で主張立証していたという事実はなく,被告によるLED電球への本件商標の使用に関する主張に直接反論しただけである(乙3,5)。むしろ,原告は,一貫して,「LEDランプ」がLED電球類及びLEDを光源として使用した照明器具を含む広い概念であると主張している。しかも,不使用取消審判の請求人が多義的な用語を選択した場合に,その不利益を甘受すべきであるとの被告の主張は,法的根拠が全く不明であるばかりか,被告の主張する「被告の信頼」も,被告が意図的に作り上げたものにすぎず,そのような信頼の原告への押し付けは,信義則違反を主張する基礎を欠く。被告は,LED電球について「エコルクス」を冠した販売を多大な宣伝広告費を投じつつ継続しているが,これは,第2次審決によりLED電球について商標権を取り消されたことによる原告の信頼を裏切る不誠実な行為といえるから,信義則違反に関する被告の主張は,それ自体失当である。 〔被告の主張〕(1) 本件の争点について本件の争点は,本件商標の指定商品における「LEDランプ」の意味であり,言い換えれば,前件審判において原告が取消しを求めた商品である「LEDランプ」に「LEDを使用した照明器具」が含まれるか否かである。 そして,本件において提出された証拠によれば,「LEDランプ」という用語は,現時点において多義的であって「LED電球類(電球型LEDランプ又は蛍光灯型LEDランプ等のLEDを用いた一般的に光源として利用される電球類)」を意味す る場合と,「LEDを使用した照明用具」を意味する場合とがあると解される。しかるところ,「LEDランプ」との用語は,前件訴訟及び第2次審決当時,「LED電球」 利用される電球類)」を意味す る場合と,「LEDを使用した照明用具」を意味する場合とがあると解される。しかるところ,「LEDランプ」との用語は,前件訴訟及び第2次審決当時,「LED電球」を意味していたことはいうまでもない。 仮に,「LEDランプ」との用語が前件訴訟及び第2次審決当時,「LED電球」のみを意味していなかったとしても,「LEDランプ」との用語が現時点において多義的である以上,問題は,前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」という用語がどのような意味で使用されていたかである。 (2) 「LEDランプ」の解釈前件審判及び前件訴訟の経過をみると,原告は,その審判請求書(乙1)において,取消請求に係る「LEDランプ」の意味を定義しておらず,それが「LEDを使用した照明器具」を当然に含むと理解していたことを示唆する記載はない。これに対して,被告は,「LEDランプ」の意味を「LED電球類」と理解した上で,被告製のLED電球を「本件商品」と定義した答弁書(乙2)を提出したところ,原告は,弁駁書(乙3)を提出したが,そこでは,「LEDランプ」が「LEDを使用した照明器具」を当然に含むと理解していたことを示唆する記載はないばかりか,むしろ,「LED電球類」に言及した記載がある。そして,第1次審決は,「指定商品「LEDランプ」と同一といえる」商品と説示するように,そこで問題となったLED電球が「LEDランプ」と同義であるとの前提で判断している。そして,原告は,前件訴訟における準備書面(乙5)において,「LEDランプ」が上記LED電球と同一であるとする第1次審決の判断を認め,その後も,「LEDランプ」が当該LED電球と同一であることを前提とした主張立証をした。 原告は,そもそも,本件商標の指定商品の一部である「LEDランプ」 球と同一であるとする第1次審決の判断を認め,その後も,「LEDランプ」が当該LED電球と同一であることを前提とした主張立証をした。 原告は,そもそも,本件商標の指定商品の一部である「LEDランプ」に自ら限定して取消しを求めたものであるところ,商標権の権利範囲の明確性の観点から,多義的な用語を選択して一部取消しを求めた以上,それに伴う不利益を甘受すべきものである。すなわち,上記用語は,最狭義の意味に解釈されるべきである。したがって,多義的である「LEDランプ」の意味は,その最狭義の意味である「LE D電球類」であると解釈すべきである。 よって,前件審判において原告が取消しを求めた商品である「LEDランプ」は,「LEDを使用した照明器具」を含まないから,原告主張の取消事由は,存在しない。 (3) 信義則違反被告は,前記のとおり,前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」の意味を「LED電球類」と理解した上でその使用の事実を主張立証し,原告も,これに何ら異議を唱えずにLED電球の使用の事実について反論を加えている。以上に加えて,被告は,LED電球以外の照明器具については,前件審判及び前件訴訟の対象ではないと信じ,本件商標を本件商品その他の照明器具について使用し(乙6),本件商標の価値を高めるべく,総額16億9876万7000円という多額の費用を負担して宣伝広告を行ってきたものであり,これは,現在も継続中である(乙7~14)。しかも,原告は,前件訴訟提起後,半年近くの間,「LEDランプ」以外の電球類及び照明器具についての不使用取消審判を請求すべき必要性を認識しながらこれをしなかったから,被告の本件商標に関する上記信頼は,より強固なものになった。 しかるに,原告は,本件審判を請求し,「LEDランプ」の意味についてLED電球 判を請求すべき必要性を認識しながらこれをしなかったから,被告の本件商標に関する上記信頼は,より強固なものになった。 しかるに,原告は,本件審判を請求し,「LEDランプ」の意味についてLED電球以外の照明器具も含まれるとの趣旨の主張を展開しているが,当該主張は,前件審判及び前件訴訟の過程において形成された被告の上記信頼を裏切るものである。 以上のとおり,原告の上記主張は,信義則(禁反言の原則)に反して許されないから,原告主張の取消理由は,存在しない。 第4 当裁判所の判断 1 本件の争点について本件商標は,前記第2の1及び2に記載のとおり,「エコルクス/ECOLUX」の文字を横書きしてなるものであり,その指定商品は,「電球類及び照明器具」であるが,第2次審決確定の結果,前件審判の請求の登録の日(平成21年4月30日) に「LEDランプ」について消滅したものとみなされることになる(商標法54条2項)。 商標権者である被告及び通常使用権者であるアイリスプラザが,平成21年8月4日頃から原告による本件審判の請求の登録の日(平成22年6月30日)までの間に,本件商標と同一又は社会通念上同一のものというべき「エコルクス」又は「ECOLUX」との標章を,本件商品(乾電池式LEDセンサーライト)の包装に付して,日本国内で第三者に対して譲渡したことは,当事者間に争いがない(甲64~86)。他方,被告は,これ以外に,本件商標又はこれと社会通念上同一の標章を本件商標の指定商品について使用したとの事実を何ら主張立証していない。 ところで,本件商品は,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものである。そして,本件商品が第2次審決によ ,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものである。そして,本件商品が第2次審決による取消し前の本件商標の指定商品である「電球類及び照明器具」に該当することは,明らかである。 したがって,本件の争点は,本件商品が,第2次審決の確定により取り消された「LEDランプ」に該当しないといえるか否かである。 2 本件商標の指定商品についての使用の有無について(1) 「LEDランプ」の意義ア本件商品が第2次審決により本件商標の指定商品から取り消された「LEDランプ」に該当しないといえるか否かを検討する上で,まず,「LEDランプ」との用語の意義について検討すると,そのうち「LED」との部分は,「発光ダイオード」を意味する英語である「LightEmittingDiode」の頭文字を採用した略語であることが明らかである(甲98)。しかしながら,「LEDランプ」との用語は,それ自体として,辞書類には掲載されておらず(甲3,4,87),発光ダイオードを利用する歴史が浅いため国内規格も制定されていないこと(甲129)から,必ずしも厳密な定義がされているものではない。 また,一般に,日本語で「ランプ」とは,辞書類によれば,石油を燃料としガラスのほやで周りを覆う洋風の灯火又はその照明器具のほか,電灯などの灯火の総称として使用されている(甲3,4,87)ところ,「LEDランプ」に限らず「○○ランプ」という場合,「○○」という性質又は用途等を備えた電球類(甲8~11,19,174)に限らず,そのような性質又は用途等を備えた各種の照明器具類を指称することも多い(甲5~7,12~17,20,21,26,27)。 イ以上を踏まえて, 等を備えた電球類(甲8~11,19,174)に限らず,そのような性質又は用途等を備えた各種の照明器具類を指称することも多い(甲5~7,12~17,20,21,26,27)。 イ以上を踏まえて,「LEDランプ」との用語の実際の使用例をみると,「LEDランプ」又は「LED○○ランプ」と称する商品は,現在,例えばインターネットを通じた商品売買により広く流通している。そして,そこでの「LEDランプ」との用語がいかなる商品を指称しているかについての使用例をみると,これらには,例えば,①LED電球類(甲91~93,95,97,99~102,104,105,107~113,118,120~126,129~135,137~144,146,149,151,152,155~170,172,173,175,176,178~184,187~189,191~193,196~198,200~202,205,207,209,211,212,215~217)も多い一方で,②室内にインテリア等として備置することを目的とした乾電池等を電源とする照明器具(甲28~30,33,34,36,37,39,106,150,177,186,194,204),③防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするもの(甲32,58,59),④災害時の使用を想定した多目的懐中電灯であって手回し又は太陽光を電源とするもの(甲35),⑤USB等から電源を得るいわゆる卓上電気スタンド又は読書灯(甲38,42,147),⑥熱帯魚水槽用ライト(甲40),⑦防犯目的で室内又は室外に設置するために防犯カメラの容器を擬態して作られた,人の動きの探知とは無関係に点灯する乾電池を電源とするいわゆるダミー・ ,42,147),⑥熱帯魚水槽用ライト(甲40),⑦防犯目的で室内又は室外に設置するために防犯カメラの容器を擬態して作られた,人の動きの探知とは無関係に点灯する乾電池を電源とするいわゆるダミー・ドームカメラ(甲41),⑧引出し内部に設置されて引出し内部を照らす乾電池を電源とする器具(甲60,203),⑨機械の 状態を明らかにする信号機であってLEDを光源とするもの(甲145,195),⑩交流電源による室内での植物育成用の照明(甲171,206),⑪具体的な内容を特定せずに,他のLED利用商品の名称とともに列挙されているもの(甲103,119)がある。また,例えば,原告が代表取締役を務める訴外会社のホームページにおける「LEDランプ」との用語についてみると,専らLED電球類を指称する使用例(甲91~93,220)のほか,光源としてLEDを使用した防犯灯を指称する使用例(甲218,220,222,223)がある。 ウ以上に加えて,「LEDランプ」との用語によるインターネット上の記事の検索結果一覧(甲94,96,190,199,215~217)が,「LEDランプ」との上記①ないし⑪にみられるような多様な使用例を示していることを併せ考えると,「LEDランプ」との用語は,本件審決が説示するようにLED電球類を指称するものに限定して使用されているものとは認め難く,むしろ,取引者により,現時点において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,前記③の複数の使用例にみられるように,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LED かりか,少なくとも,前記③の複数の使用例にみられるように,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されているものと認められる。 そして,発光ダイオード(LED)を利用する歴史が浅いことを併せ考えると,このことは,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間においても同じであったものと推認される。 なお,被告も,「LEDランプ」という用語が現時点において多義的であることを自認しているところ,「LEDランプ」との用語の本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間における意義は,上記のとおりと認められるので,これに反する被告のその余の主張は,採用することができない。 (2) 使用の有無について 登録商標の指定商品又は指定役務は,第三者との関係で当該登録商標の権利の範囲を確定するものであるから,その用語については取引者による通常の使用法に基づいて客観的に解釈されるべきものである。 そして,前記1のとおり,商標権者である被告及び通常使用権者であるアイリスプラザは,平成21年8月4日頃から本件審判の請求の登録の日までの間,本件商標と同一又は社会通念上同一のものというべき「エコルクス」又は「ECOLUX」との標章を,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものである本件商品の包装に付して,日本国内で第三者に対して譲渡したものである。 しかるところ,前記(1)のとおり,「LEDランプ」との用語は,取引者により,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間において,光源としてL 本国内で第三者に対して譲渡したものである。 しかるところ,前記(1)のとおり,「LEDランプ」との用語は,取引者により,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されていたものと認められる。 したがって,本件商品は,上記のとおり,第2次審決の確定により前件審判の請求の登録の日(平成21年4月30日)に本件商標の指定商品から消滅したものとみなされる「LEDランプ」に該当するから,同日から本件審判の請求の登録の日(平成22年6月30日)までの間において,本件商標の指定商品に該当しない。 そして,被告は,上記期間内における本件商品に対する本件商標の使用のほかに,本件商標又はこれと社会通念上同一の標章を本件商標の指定商品について使用したとの事実を何ら主張立証していない。 以上によれば,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品の いずれかについて本件商標の使用をしていることを証明していないというほかない。 (3) 小括よって,この点の認定判断を誤る本件審決は,取消しを免れないものというべきである。 3 被告の主張について(1) 以上に対して,被告は,原告が前件審判の請求に当たって,「LEDランプ」という多義的な用語を選択して一部取消しを求めた以上,それに伴う不利益を甘受すべきものであるから 被告の主張について(1) 以上に対して,被告は,原告が前件審判の請求に当たって,「LEDランプ」という多義的な用語を選択して一部取消しを求めた以上,それに伴う不利益を甘受すべきものであるから,その最狭義の意味である「LED電球類」として解釈すべきであり,また,原告が前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」がLED電球と同一であることを争わなかったから,本件審判請求に当たって「LED電球類」以外の照明器具も含まれると主張することは,被告の信頼を裏切るものであって信義則に反する旨を主張する。 (2) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,かねてより訴外会社の代表取締役を務めており,同社は,遅くとも平成19年7月10日頃には,光源としてLEDを使用する電球類のほか,LEDを光源として使用する青色防犯灯を販売するようになっており,平成20年8月11日頃,当該青色防犯灯を「ECOLUX エコルクス」と命名するに至った。 原告は,同年10月23日,訴外会社のために「ECOLUX」との商標を登録するために登録出願をしたが,平成21年3月13日,本件商標等の存在を理由として拒絶理由通知を受けた。そこで,原告は,同年4月14日,本件商標について,その指定商品のうち,「LEDランプ」に限定して前件審判を請求した(甲222~224,乙1)。 イ被告は,平成21年7月21日,前件審判において,被告が特定のLED電球の包装に本件商標を付したとの事実を主張して,これに関連する証拠を提出した(乙2)。そこで,原告は,同年8月26日,被告の提出した各証拠について,それらがいずれも本件商標の使用事実を立証するものではない旨を主張する弁駁書を提 出したが(乙3),特許庁は,同年12月8日,被告が前件審判の請求の登録前3 日,被告の提出した各証拠について,それらがいずれも本件商標の使用事実を立証するものではない旨を主張する弁駁書を提 出したが(乙3),特許庁は,同年12月8日,被告が前件審判の請求の登録前3年以内に,「LEDランプ」と同一といえる上記LED電球の包装に本件商標を付する行為を行った旨を認定して不成立審決をした(第1次審決。乙4)。そこで,原告は,第1次審決について審決取消訴訟(前件訴訟)を提起し,その準備書面において,上記LED電球が「LEDランプ」に該当することを前提とした主張をした(乙5)。 (3) 前記(2)に認定のとおり,被告は,前件審判及び前件訴訟において,特定のLED電球の包装に本件商標を付したとの事実を主張し,それ以外の使用に関する事実を主張していなかった。そのため,これを争う原告は,前件審判及び前件訴訟において,上記LED電球に関する本件商標の使用事実を否認して争えば足り,これ以上に,「LEDランプ」との用語が,例えば防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものを含むものである旨を主張する理由も必要もなかった。そうすると,原告が前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」との用語についてこの点を明確に主張していないからといって,そのことは,何らかの意味において被告の信頼の根拠となるものではない。 また,原告は,前件審判の請求に当たり,「LEDランプ」との用語が光源としてLEDを使用する照明器具を含む意図であった旨を主張し,原告の陳述書(甲224)の記載は,これに沿うものである。 前記2に認定のとおり,「LEDランプ」との用語が,当時,取引者により,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するも を主張し,原告の陳述書(甲224)の記載は,これに沿うものである。 前記2に認定のとおり,「LEDランプ」との用語が,当時,取引者により,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではなかったと認められることに加えて,前記(2)アに認定のとおり,原告は,光源としてLEDを使用する電球類のほか,LEDを光源として使用する青色防犯灯を販売する訴外会社の代表取締役であり,前件審判も,「ECOLUX」との商標を登録してこれを訴外会社の商品に使用する目的で請求したものであることを併せ考えると,原告の陳述書の上記記載は,これを自然なものとして信用することができ,原告は,前件審判の 請求に当たり,「LEDランプ」との用語が光源としてLEDを使用する防犯灯を含む意図を有していたものと認められる。 したがって,被告の信義則違反の主張は,採用することができない。 (4) また,不使用取消審判が,いったん登録された商標を遡及的に消滅させる制度であることに照らすと,指定商品の一部について不使用取消審判が請求され,取消審決が確定した場合において,遡及的に消滅する指定商品は,従前の指定商品との関係で何が除かれるのか,除く指定商品を明確にして行うべきである。前件審判において取消しの対象となった「LEDランプ」との用語は,辞書にも掲載されておらず,「電球類」と「照明器具」のいずれに含まれるのか,双方に含まれるのか,被告にも特許庁にも誤解を招いたことは否めないものの,それが多義的であるからといって直ちに最狭義ないし特定の意義(例えば,「LED電球類」)に解釈されるべき理由にはならず,本件商品が「LEDランプ」に含まれることに変わりはない。 よって,被告の上記主張は, 義的であるからといって直ちに最狭義ないし特定の意義(例えば,「LED電球類」)に解釈されるべき理由にはならず,本件商品が「LEDランプ」に含まれることに変わりはない。よって,被告の上記主張は,採用できない。 4 結論以上の次第であるから,原告の主張する取消事由には理由があり,本件審決は,取り消されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光
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