平成12(行ウ)7 公文書公開却下決定に対する異議申立棄却決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年1月31日 奈良地方裁判所 情報公開
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判決文本文9,912 文字)

主文 一被告が、原告に対し、平成一二年一月一三日付でなした、「九九年度中に県警において支出した信号の設置に関する以下の文書、支出命令書等一切の書類(但し年度始めに支出された五件分)」開示請求の異議申立に対する棄却決定を取り消す。 二訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求主文同旨第二事案の概要一本件は、原告が、被告に対し、奈良県情報公開条例(平成八年三月二七日奈良県条例第二八号・以下「本件条例」という。)に基づき、「九九年度中に県警において支出した信号の設置に関する以下の文書、支出命令書等一切の書類(但し年度始めに支出された五件分)」の開示を請求したところ、被告は「請求の内容が記録された公文書は県警本部において管理・保管されており、当課には存在しないため」という理由によって本件請求を却下したので、原告は、本件却下決定を奈良県情報公開審査会に検討してもらうために、被告宛に異議申立をしたところ、被告は本件異議申立について審査会に諮問することなく棄却決定をしたので、原告が被告に対し本件棄却決定の取り消しを求めた事案である。 二争いのない事実及び証拠によって容易に認められる事実 1 当事者原告は奈良県の住民であり、被告は本件条例二条一項の実施機関である。 2 本件条例の規定内容本件条例には以下の定めがある。 「七条一項実施機関は、公文書の開示の請求があったときは、当該請求のあった日から起算して一五日以内に、当該請求に係る公文書の開示をするかどうかの決定をしなければならない。 一三条一項実施機関は、第七条一項の決定について行政不服審査法(昭和三七年法律第一六〇号)による不服申立があった場合は、当該不服申立が不適法であるとき、及び当該不服申立に係る公文書の開示をしない旨の決定を取り消すときを除 七条一項の決定について行政不服審査法(昭和三七年法律第一六〇号)による不服申立があった場合は、当該不服申立が不適法であるとき、及び当該不服申立に係る公文書の開示をしない旨の決定を取り消すときを除き、速やかに、奈良県情報公開審査会に諮問しなければならない。」 3 本件処分の経緯(一) 原告は、平成一一年一一月一一日、被告に対し、「九九年度中に県警において支出した信号の設置に関する以下の文書、支出命令書等一切の書類(但し年度始めに支出された五件分)」の開示の請求をした(以下「本件請求」という。)。 (二) 被告は、同月二二日、原告に対し、「請求の内容が記録された公文書は県警本部において管理・保管されており、当課には存在しないため」という理由によって本件請求を却下した(以下「本件却下決定」という。)。 (三) 原告は、同年一二月七日、本件却下決定を奈良県情報公開審査会(以下「審査会」という。)に検討してもらうために、被告宛に異議申立をした(以下「本件異議申立」という。)。 (四) 被告は、平成一二年一月一三日、本件異議申立について審査会に諮問することなく棄却決定をした(以下「本件棄却決定」という。)。 三争点本件棄却決定の違法性四争点に関する各当事者の主張(原告の主張)本件条例一三条一項の規定によれば、実施機関は、「当該不服申立が不適法であるとき」と「当該不服申立に係る公文書の開示をしない旨の決定を取り消すとき」を除いて、不服申立を審査会に諮問しなければならないことは明らかである。後者の場合非公開決定が取り消されれば審査会に諮問する必要がなくなるから当然のことである。問題はどのような場合が前者に該当するかである。 「奈良県情報公開条例の解釈運用基準」(以下「解釈運用基準」という。)の「解釈」欄では、「『不服申立が不適法であるとき なくなるから当然のことである。問題はどのような場合が前者に該当するかである。 「奈良県情報公開条例の解釈運用基準」(以下「解釈運用基準」という。)の「解釈」欄では、「『不服申立が不適法であるとき』とは、不服申立人に適格性がないこと、不服申立期間が経過していることなどの形式的要件の不備により、当該不服申立を却下する場合をいう。」と説明している。 しかるに原告は不服申立人として適格性に欠けるところはないし、不服申立期間内に本件異議申立を行っているから、「不服申立が不適法であるとき」には該当しない。したがって被告が本件不服申立を審査会に諮問しなかったのは違法である。 しかも審査会は「公平かつ客観的な判断を担保するため」に特に設けられた制度であるから、本件不服申立を審査会に諮問しなかったことは重大な違法であり、本件棄却決定は取り消されるべきである。 なお、解釈運用基準の第一三条の解説頁のうちの「運用」欄で、「次のような場合にも、審査会に対する諮問は要しないものとして取り扱う。」として、審査会に諮問しない場合を拡大している。 「(1)開示請求が不適法なものとして却下された次のような場合に対する不服申立である場合。 ア公文書が不存在であることが判明し、却下された場合イ請求権者でなかったことが判明し、却下された場合ウ請求者が開示請求書の補正指導に従わず、却下された場合」しかしこのような拡大は、解釈運用基準作成職員の判断によってできるものではない。 右アないしウのうちイは形式的な判断が可能であろうから、審査会に諮問しないことに合理性があるといえる。しかしアとウについては必ずしもそのようにいえない。 ウの場合、「補正指導」の内容が適切でないということは実務上あり得ないではない。例えば、請求者は対象文書の正式名称や範囲を明確に示すことができ 。しかしアとウについては必ずしもそのようにいえない。 ウの場合、「補正指導」の内容が適切でないということは実務上あり得ないではない。例えば、請求者は対象文書の正式名称や範囲を明確に示すことができないにもかかわらず、対象文書の特定に関して実施機関から困難を強いる補正指導がなされたというような場合、審査会に諮問する必要がないとは言い切れない。 アの場合については尚更のこと審査会への諮問が重要である。情報公開制度における対象文書の不存在の意義は多義的であるがゆえに、実施機関の判断に委ねてしまってよいとは言えない。第一にそもそも作成していないし取得もしていないという物理的絶対的に存在しない場合でも、審査会に文書を作成しないことの異常性を取り上げ、文書作成の必要性を審査会で議論することには大いに意義がある。第二に文書は物理的には存在するが、当該条例の「公文書」の定義に当てはまらないという場合でも、例えばメモやタクシーチケットなどについては決裁供覧を要件としている条例の場合、決裁供覧の有無が争いになる。第三に公文書性は認められるが実施機関の「管理」下にある文書といえるか否かが問題になることがある。議会(一部の自治体では実施機関になっているが)や公安委員会が実施機関になっていない条例においては、右未実施機関の会計文書を未実施機関に保管させることによって予算執行権限を有する知事の「管理」から免れることになるのかという問題がある。 このように情報公開制度における「不存在」の問題は形式的で単純な問題ではないから、これを審査会で議論しないとすると本件条例の運用について不服申立の意味がほとんどなくなるおそれがあるから、明らかに条例の規定の文言を越えた誤った解釈だといわざるを得ない。 よって本件棄却決定は取り消されるべきである。 (被告の主張)審査 について不服申立の意味がほとんどなくなるおそれがあるから、明らかに条例の規定の文言を越えた誤った解釈だといわざるを得ない。 よって本件棄却決定は取り消されるべきである。 (被告の主張)審査会に諮問する場合として、本件条例一三条一項は、同条例七条一項の決定について行政不服審査法による不服申立があった場合は、当該不服申立が不適法であるとき、及び当該不服申立に係る公文書の開示をしない旨の決定を取り消すときを除き、速やかに審査会に諮問しなければならない、と規定する。 すなわち、審査会への諮問には、本件条例七条一項の決定がなされたことが前提となっている。 本件条例七条一項は、公文書の開示請求のあったときに、実施機関が公文書の開示をするかどうかの決定をするのは、当該請求のあった公文書に非開示事項に該当する情報が記録されているかどうかを判断した上で行うことを規定している(乙第一号証、情報公開事務の手引き、一五頁、解釈の3)。 この場合に開示または非開示の決定を行うのは、開示請求に係る公文書を実施機関が管理(現に保管ないし保存)しており、それが対象公文書に該当すること(本件条例二条二項)を前提とするものであるから、開示請求された公文書が存在しない場合(保管ないし保存されていない場合)には、開示請求の形式的要件を満たさない不適法な開示請求に当たることとなるため、不適法な請求として当該開示請求に対する却下の決定が行われ、当該却下決定の通知が請求者に送付されることになる(乙第一号証、六頁の5、一七頁運用の2、六四頁3の(3)等)。 本件条例七条一項は、実施機関が保有している公文書(現に保管ないし保存)に係る公開請求について当該公文書を公開するかどうかの手続きを規定しているが、実施機関が当該公文書を保有していない場合(すなわち不存在の場合)の手続 実施機関が保有している公文書(現に保管ないし保存)に係る公開請求について当該公文書を公開するかどうかの手続きを規定しているが、実施機関が当該公文書を保有していない場合(すなわち不存在の場合)の手続については何ら規定していない。結局、本件条例は実施機関が保有していない公文書に係る公開請求の取扱いについては想定していないのである。 公文書が不存在であることを理由とする却下処分を本件条例七条一項の「公文書の開示をしない旨の決定」と同様に取り扱うような規定を置くか否かは立法政策の問題であるが、本件条例七条一項に規定する決定の中には係る却下処分を含めないこととしたのである。 そこで存在しない公文書について公開請求のあった場合については、本件条例ではなく、情報公開事務取扱要綱第三の三の規定により不適法な請求として却下処分を行うこととした(乙第一号証、六四頁3の(3))。 それゆえ、当該却下処分は本件条例に基づかない行政処分として位置づけられるのである。この場合の却下決定は本件条例に基づかない処分ではあるが、行政処分であることから不服申立の教示を行っている(乙第一号証、一七頁、運用の2)。 係る公文書の不存在を理由とする却下処分の根拠は、奈良県行政手続条例(平成八年三月二七日奈良県条例第二六号)七条及び八条の規定に基づいている。 奈良県行政手続条例七条は、条例等に基づき許認可等を求める申請(同条例二条四号)を行政庁が受けたときに、条例等に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については補正を求めるか、または当該申請された許認可等を拒否しなければならない、と規定している。この許認可等の拒否処分とは却下処分を含むものである。また同条例八条はかかる拒否処分をする場合には理由を提示することを規定している。 以上により、係る却下処分については、 らない、と規定している。この許認可等の拒否処分とは却下処分を含むものである。また同条例八条はかかる拒否処分をする場合には理由を提示することを規定している。 以上により、係る却下処分については、異議申立てがあったときも、本件条例によらない処分であるため審査会に諮問しない場合となるのは当然である。 また、審査会における審議は公文書の開示・非開示決定における非開示事項の適用についての実施機関の判断の違法性または不当性の有無について行われるものであって、公文書の有無についての確認、判断等のために行われるものではないのである(本件条例一三条、七条一項、乙第一号証、三九頁、運用の1)。 これらの公文書が不存在の場合の却下処分に関する法令解釈と取扱いは、本件条例七条一項と同様の規定を設けている他の都道府県等の情報公開条例においても広く一般に同様の解釈が行われている。 そのため、最近他府県においても情報公開条例を改正して新たに公文書が不存在の場合をも公文書の非開示決定の中に含めるための規定を設けることにより、このような場合も審査会の諮問対象に入れることを明文で規定することを検討している例が見受けられる。 ちなみに、情報公開法九条二項においても、「開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。)」と規定することにより、条文を自然に読めば(存在する行政文書について)「行政文書の全部を開示しないとき」と解釈されるところを、わざわざ(行政文書を保有していないときを含む。)と特別に規定することにより、このような文書の不存在の場合をも含めることを明文で規定している。 以上により明らかなとおり、公文書が不存在の場合は本件条例七条一項の決定には含まれないことから、条 )と特別に規定することにより、このような文書の不存在の場合をも含めることを明文で規定している。 以上により明らかなとおり、公文書が不存在の場合は本件条例七条一項の決定には含まれないことから、条例外の手続として当該公文書の開示請求を却下する決定は相当であって、係る決定が本件条例一三条の規定による審査会に対する諮問の対象とならないことも当然である。 よって本件却下処分の違法を理由とする本件異議申立に対する棄却決定が適法であることも当然である。 (被告の主張に対する原告の反論)本件条例七条一項は、「実施機関は、公文書の開示の請求があったときは、当該請求のあった日から起算して一五日以内に、当該請求に係る公文書の開示をするかどうかの決定をしなければならない。」と規定しているのであって、当該請求のあった公文書に非開示事項に該当する情報が記録されているかどうかを判断した上で行うことを規定しているものではないことは、条文の文言から明らかである。 「公文書の開示をするかどうか」という問題は当該文書の存否の問題も当然に含んでいるのであって、非公開事由の問題はないがそもそも「公文書」(本件条例二条二項)に該当するか否かが問題となるということもあれば、「公文書」性と非公開事由への該当性とが問題になることもあるのである。本件条例二条二項によって「公文書」の定義を定めている以上、「公文書」に当てはまるか否かは重要な争点になり得るのである。 また、被告は、公文書の不存在を理由とする却下処分の根拠は、奈良県行政手続条例七条及び八条の規定に基づいている、と主張するが、行政手続として情報公開条例と行政手続条例は特別法と一般法の関係にあり、特別法は一般法に優先し、特別法でカバーしきれない場面において初めて一般法の適用が問題になる。本件は条例の条文の解釈によっ が、行政手続として情報公開条例と行政手続条例は特別法と一般法の関係にあり、特別法は一般法に優先し、特別法でカバーしきれない場面において初めて一般法の適用が問題になる。本件は条例の条文の解釈によって対応できる問題であって、一般法である行政手続条例の適用が問題となる場面ではない。 なお、情報公開法九条二項括弧書きは、運用の際の混乱を避けるための確認規定である。東京都情報公開条例一一条も右と同様の規定の仕方をしている。この点に関して東京都制作報道室都民の声部情報公開課発行の「情報公開事務の手引き」(甲第一一号証)では、「文書の不存在を理由とする請求拒否をする場合についても明確に処分として位置づけることを定めたものである。」(五一頁)と説明している。これは従来「『文書不存在』通知は観念の通知であり処分ではないから、その取消しを争うことはできない。」という、一般市民には理解困難な概念的な言い訳で公開を拒絶していた地方自治体があることを踏まえて、実務の混乱を生じないようにするために明確な規定を置くことにしたのである。括弧書きという体裁からも窺えるように、括弧内の規定は創設的規定ではなく、確認的規定なのである。 第三争点に対する判断一本件条例一三条一項は、実施機関は、同条例七条一項の決定について行政不服審査法による不服申立があった場合は、「当該不服申立が不適法であるとき」、及び「当該不服申立に係る公文書の開示をしない旨の決定を取り消すとき」を除き、速やかに審査会に諮問しなければならない、と規定する。後者の場合非公開決定が取り消されれば審査会に諮問する必要がなくなるから当然のことである。問題はどのような場合が前者に該当するかである。 「不服申立が不適法であるとき」とは、不服申立人に適格性がないこと、不服申立期間が経過していることなどの形式的 必要がなくなるから当然のことである。問題はどのような場合が前者に該当するかである。 「不服申立が不適法であるとき」とは、不服申立人に適格性がないこと、不服申立期間が経過していることなどの形式的要件の不備により、当該不服申立を却下する場合をいうと解するのが相当である。 しかるに原告は不服申立人として適格性に欠けるところはないし、不服申立期間内に本件異議申立を行っているから、「不服申立が不適法であるとき」には該当しない。 二被告の主張のうち、本件条例一三条一項によって審査会への諮問が要求されるのは、本件条例七条一項の決定がされていることが前提である、とする点については条例の文言上明らかというべきである。 しかしながら文書の不存在を理由とする公文書開示請求の却下処分は、奈良県行政手続条例七条及び八条に基づく処分であって、本件条例七条一項の決定ではないとする被告の主張はこれを採用することができない。蓋し本件条例七条一項は、公文書の開示請求を受けた実施機関は、当該請求に係る公文書の開示をするかどうかの決定をしなければならないと定めるものであり、かかる開示請求を受けながら、実施機関が開示をするかどうかの決定をしなくてもよい場合が存在するものとは解されないからである。 これを実質的に見ても、文書の存否の問題は単に物理的に存在するかしないかの問題に限られるものではなく、当該文書に対して実施機関の管理が及んでいるかどうかの観点に照らして問題となる場合も存在することが予想されるから(本件条例二条二項参照)、必ずしも形式的画一的な判断でまかなわれるものでもない。このことに鑑みると実施機関が文書の不存在を理由に文書開示請求を却下したときにおいても、審査会への諮問を行う実際上の必要性も存在するというべきである。 以上によれば公文書の開示請求に対し、当 ない。このことに鑑みると実施機関が文書の不存在を理由に文書開示請求を却下したときにおいても、審査会への諮問を行う実際上の必要性も存在するというべきである。 以上によれば公文書の開示請求に対し、当該文書が存在しないことを理由に実施機関がする却下処分は本件条例七条一項の決定の一つであると解すべきであり、これに対する不服申立がある場合は、実施機関としては本件条例一三条一項の定めに従って審査会に対する諮問を行わなければならないというべきである。 三ところで被告は、本件条例七条一項は、公文書の開示請求のあったときに、実施機関が公文書の開示をするかどうかの決定をするのは、当該請求のあった公文書に非開示事項に該当する情報が記録されているかどうかを判断した上で行うことを規定していることから(乙第一号証、情報公開事務の手引き、一五頁、解釈の3)、審査会への諮問には、本件条例七条一項の決定がなされたことが前提となっており、この場合に開示または非開示の決定を行うのは、開示請求に係る公文書を実施機関が管理(現に保管ないし保存)し、それが対象公文書に該当すること(本件条例二条二項)を前提とするものであるから、開示請求された公文書が存在しない場合(保管ないし保存されていない場合)には、開示請求の形式的要件を満たさない不適法な開示請求に当たることとなるため、存在しない公文書について公開請求のあった場合については、本件条例ではなく、情報公開事務取扱要綱第三の三の規定により不適法な請求として却下処分を行うこととしたものであり(乙第一号証、六四頁3の(3))、それゆえ、当該却下処分は本件条例に基づかない行政処分として位置づけられ、係る却下処分については、異議申立てがあったときも、本件条例によらない処分であるため審査会に諮問しない場合となるのは当然である旨主張する。 却下処分は本件条例に基づかない行政処分として位置づけられ、係る却下処分については、異議申立てがあったときも、本件条例によらない処分であるため審査会に諮問しない場合となるのは当然である旨主張する。 しかし、本件条例七条一項は、「実施機関は、公文書の開示の請求があったときは、当該請求のあった日から起算して一五日以内に、当該請求に係る公文書の開示をするかどうかの決定をしなければならない。」と規定しているだけであって、当該請求のあった公文書に非開示事項に該当する情報が記録されているかどうかを判断した上で公開・非公開の決定を行うことを規定しているものと限定的に解釈すべき実質的な理由はない。 四また、被告は、審査会における審議は公文書の開示・非開示決定における非開示事項の適用についての実施機関の判断の違法性または不当性の有無について行われるものであって、公文書の有無についての確認、判断等のために行われるものではないと主張するが(本件条例一三条、七条一項、乙第一号証、三九頁、運用の1)、前示のとおり、文書の存否の問題は単に物理的に存在するかしないかの問題に帰属するものではないから、被告の右主張は採用できない。 さらに、被告は、最近他府県においても情報公開条例を改正して新たに公文書が不存在の場合をも公文書の非開示決定の中に含めるための規定を設けることにより、このような場合も審査会の諮問対象に入れることを明文で規定することを検討している例が見受けられ、また、情報公開法九条二項においても、「開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。)」と規定することにより、条文を自然に読めば(存在する行政文書について)「行政文書の全部を開示しないとき」と解釈されるところ 求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。)」と規定することにより、条文を自然に読めば(存在する行政文書について)「行政文書の全部を開示しないとき」と解釈されるところを、わざわざ(行政文書を保有していないときを含む。)と特別に規定することにより、このような文書の不存在の場合をも含めることを明文で規定していることから、公文書が不存在の場合について特に明文で規定しない奈良県の場合、本件条例一三条の規定による審査会に対する諮問の対象とならないことも当然であると主張する。 しかし、法令の条文中の明文の規定が常に創設的規定であるとは必ずしもいえず、確認的規定の場合もあるのであるから、被告の引用する条例や情報公開法において、文書の不存在の場合をも含めることを明文で規定されているからといって、公文書が不存在の場合について特に明文で規定しない奈良県の場合、本件条例一三条の規定による審査会に対する諮問の対象とならないと限定的に解釈することが当然ということはできない。 五結論以上のとおり、本件異議申立を審査会に諮問することなく棄却したのは違法であるから、原告の本件棄却決定の取消し請求を認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六四条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官永井ユタカ裁判官川谷道郎裁判官前田泰成

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