平成13(行ウ)1 損害賠償代位請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年10月22日 山形地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文7,391 文字)

- 1 -主文 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,小国町に対し,金897万4800円及びこれに対する平成13年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,小国町(以下「町」という)の住民である原告らが,町長であった被告。 に対し,被告が町有地にある砂利を第3セクター方式で町も出資している会社に売却した行為には後記2の各違法があり,それによって町は後記1(5)イの損害を受けたとして,地方自治法(以下「法」という)242条の2第1項4号(地方自治。 「法等の一部を改正する法律(平成14年法律第4号)による改正前のもの)に基づ」き,町に代位して,この損害金とこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年6月2日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の町への支払を求めた事案である。 前提事実(争いのない事実及び後掲の証拠から認められる事実)(1)当事者等ア原告らはいずれも町の町民である。 イ被告は,昭和63年8月から平成12年7月まで町の町長の地位にあった。 ウ被告は,後記(2)アないしウの各契約及び(3)の本件売却当時,株式会社A(以下「A」という)の代表取締役であった。 。 エAは町が70パーセント以上を出資する第3セクター方式の会社である丙,。(1の1ないし5)(2)本件売却に至る経緯アAは,平成10年3月9日,株式会社B(以下「B」という)との間で,同。 年9月30日までに町有地から採取する砂利約2万0150.01mを,Aが 消費税を含み代金525万円(1m当たり約260円54銭)でBへ売り渡す 旨の契約を結び,その後,砂利及び代金の授受を終えた(丙4の5,弁論の全。 趣旨) る砂利約2万0150.01mを,Aが 消費税を含み代金525万円(1m当たり約260円54銭)でBへ売り渡す 旨の契約を結び,その後,砂利及び代金の授受を終えた(丙4の5,弁論の全。 趣旨)イ町は,同月10日,Aとの間で,同年9月30日までにAをして町有地から砂利を無償で採取させる旨の契約を結んだ(丙4の3,7の8)。 ウAは,平成11年3月28日,Bとの間で,同年9月30日までに町有地から採取する砂利約2万4460mを,Aが消費税を含む代金1155万7350 円(1m当たり約472円50銭)でBへ売渡す旨の契約を結び,その後,砂 利及び代金の授受を終えた(丙4の10,弁論の全趣旨)。 (3)本件売却(以下のア及びイを「本件売却」という)。 ア被告は,平成12年3月8日,Aとの間で,上記(2)イにより同社が採取した町有普通財産である砂利が2万0150mであることを確認し,同社が町へ 砂利採取料として1m当たり20円の合計40万3000円を支払う旨を合意 - 2 -した(丙7の8)。 イ被告は,前同日,Aとの間で,同社が上記(2)ウの期間,町の同意のもとに2万4460mの町有普通財産である砂利を無償で採取したことを確認し,同 社が砂利採取料として町へ1m当たり20円の合計48万9200円を支払う 旨合意した(丙7の9)。 ウAは,同月10日,町に対し,上記採取料合計89万2200円を支払った。 (丙7の10)(4)町議会による補正予算の可決町議会は,平成12年3月17日の定例会において,本件売却により町へ支払われた上記採取料89万2000円を財産収入として計上した一般会計補正予算を可決した(以下「本件補正予算「本件補正予算の可決」という(丙7の11,」,。)。 12)(5)監査請求の経由 払われた上記採取料89万2000円を財産収入として計上した一般会計補正予算を可決した(以下「本件補正予算「本件補正予算の可決」という(丙7の11,」,。)。 12)(5)監査請求の経由ア原告らは,平成13年2月23日,町監査委員に対し,本件売却は町有財産を違法に安価に処分して町に後記イの損害を与えたものであるとして,被告へ損害賠償のため必要な措置を講ずるよう求める監査請求をした。 イ損害Aが上記(2)ア及びウによりBから取得した砂利代金合計1680万7350円から,Aの砂利採取経費合計447万3600円を差し引いた収益金1233万3750円のうち,Aの利益率として2割を差し引いた残金986万7000円が,町がAへ砂利を譲渡する際の適正な対価である。しかるに本件売却により町がAから取得した代金は89万2200円にすぎないから,町はその差額である897万4800円の損害を受けた。 ウ町監査委員は,同年4月23日ごろ,原告らに対し,監査請求は理由がないとしてこれを斥ける旨の通知をした。 本件売却の違法性についての原告らの主な主張(1)法237条2項違反,「」ア本件売却の価格は極端に低廉であり法237条2項の適正な対価なくしての譲渡に該当する。 すなわち,本件売却に先行してAとBとの間でされた上記(2)アの砂利売却契約では,1m当たりの単価は261円55銭,経費は300万3600円, 収益は224万6400円であり,また上記(2)ウの砂利売却契約では,単価は473円,経費は147万円,収益は1008万7350円であった。また,これらの売却価格は当時の相場あるいはそれ以下の価格であった。 したがって,町は,本件売却の価格を決める際,AとBとの上記の単価,経費及び収益を参考にすべきであり,これによれば,本件売却の た。また,これらの売却価格は当時の相場あるいはそれ以下の価格であった。 したがって,町は,本件売却の価格を決める際,AとBとの上記の単価,経費及び収益を参考にすべきであり,これによれば,本件売却の単価20円は著しく低廉である。 しかるところ,本件売却は,後記イのとおり,条例又は議会の議決による場合でないのにされたのであるから,法237条2項に違反し違法である。 イ議会の議決等の欠如- 3 -町は,条例において,適正な対価なくして普通財産の譲渡をできる場合を定めているが,本件売却はこの場合に該当しない。また,本件売却について,あらかじめの議会による法237条2項の議決はない。 ところで,本件売却は,Aが町民や議会のコントロールのないまま採取した砂利を売却して利益を得た後,これが町有財産の譲渡に当たると指摘されると事後的に町と売買契約を締結したものであり,町の代表者はAの代表取締役を兼ねて,,いたのであるから法237条2項の立法目的である地方公共団体の損失の防止特定者との癒着の防止等からして,その売却に際しては厳格に法定手続の履行が要求される。したがって,本件売却について法237条2項の議決ありとするためには,法96条1項6号議案として議会へ上程され,適正な対価でないこと及び譲渡の必要性,妥当性について十分説明審議の上,237条2項の議決を行うとの認識のもとに議決されることを要するというべきである。しかるに,本件補正予算の審議では,本件売却は適正な対価での譲渡として,予算の一項目として上程されたにすぎず,また,転売価格や利ざや等の重要事項は審議の対象とされていないから,その可決をもって法237条2項の議決とみることはできない。 (2)民法108条違反ア本件売却は,被告が町とAの双方を代表してなした双方代表行為であり,民法 審議の対象とされていないから,その可決をもって法237条2項の議決とみることはできない。 (2)民法108条違反ア本件売却は,被告が町とAの双方を代表してなした双方代表行為であり,民法108条が類推適用され,事前に議会による承認の議決がなければ違法,無効と解されるところ,この議決はない。 イ町長のなす双方代表行為については,地方自治法上,事後の追認のような議会の議決は予定されていないから,事後的に追認治癒されるものではない。 仮に事後の議決による追認をなし得るとしても,個別議案として議会に上程され,追認の内容について論議が尽くされる必要があるところ,本件補正予算の可決はこれに当たらない。 被告の反論(1)本件売却の価格の適正性法237条2項の「適正な対価なくして」とは,無償または市場価格(時価)に比し低廉な価格を言うのであるが,この市場価格ないし時価は一定の幅ないし許容範囲を有している。町は,本件売却の価格を定めるにあたり,採取地周辺の民間取引事例を参考にしたが,その平成4年から平成8年までの1mあたりの単価は2 0円から42円で,この5年間はほぼ一定であった。したがって,1m当たり2 0円は裁量の範囲を逸脱するものではなく「適正な対価なくして」には当たらな,い。 (2)本件補正予算の可決による瑕疵の治癒本件売却が条例で定めた適正な対価なくして普通財産の譲渡をできる場合に該当しないこと及びあらかじめの議会による法237条2項の議決のないことは争わない。 町議会は,本件補正予算を審議するに当たり,本件売却の単価の設定方法,AからBへの転売の事実及びその転売価格等について説明を受け,本件売却の価格の適正性について十分な審議を遂げた上でこれを可決した。 - 4 -したがって,この可決により事後的に法237条2項の議会の議決 らBへの転売の事実及びその転売価格等について説明を受け,本件売却の価格の適正性について十分な審議を遂げた上でこれを可決した。 - 4 -したがって,この可決により事後的に法237条2項の議会の議決があったということができるから,仮に本件売却に瑕疵があったとしても,これは治癒したものである。 (3)双方代表の追認被告が町とAの双方を代表して本件売却をするについて,議会による事前の議決のないことは争わない。 当事者の一方が地方公共団体の長の場合に民法108条が類推適用されるとしても,議会が明示または黙示にその法律行為の効果を地方公共団体に帰属させる意思を表明することでその行為を追認したときは,民法116条の類推適用により,本人である地方公共団体に法律効果が帰属し,双方代表行為は有効となるというべきである。 町議会は,上記の予算審議において,本件売却は被告が町とAの双方を代表してなしたことを認識した上でこれを可決しているから,追認があったものである。 主な争点(1)仮に本件売却が法237条2項の議会の議決によることを要する譲渡であったとしても,本件補正予算が可決されたことで,議会の議決なくしてした瑕疵は治癒されたといえるか。 (2)本件補正予算が可決されたことで,町について双方代表の追認があったといえるか。 第3争点に対する判断 争点1(瑕疵の治癒)について(1)法237条2項が普通地方公共団体の財産の適正な対価によらない譲渡等を条例と並んで議会の議決にかからせた趣旨は,適正な対価によらない財産の譲渡等は,地方公共団体の財産の実質的な減少をもたらすものであって,その財政的基盤を脆弱にする危険があることから,特にかかる譲渡等をすることが必要であるか,妥当であるかどうかについて議会に審査させ,その結果議会の議決が得られた場合に限って をもたらすものであって,その財政的基盤を脆弱にする危険があることから,特にかかる譲渡等をすることが必要であるか,妥当であるかどうかについて議会に審査させ,その結果議会の議決が得られた場合に限ってこれを許すこととする点にあるものと解される。そうすると,普通地方公共団体が法237条2項の議会の議決を経ずに財産を譲渡等した後,議会が,その対価に着目して当該譲渡等の必要性,妥当性について審査を加え,これを妥当なものとして認める趣旨の議決をしたときは,仮に当該譲渡等が法237条2項の適正な対価なくしての譲渡に該当する場合であっても,同項の議決を欠いた瑕疵は治癒されると解するのが相当である。 そして,この議会の議決は,前記趣旨の議決である限り,法96条1項6号議案のような個別の議案としてされるかそれとも譲渡等に係る歳入歳出項目が一部として計上された予算(補正予算を含む)に対する議決のようにその余の部分と一括。 してあるいは前提事項としてされるかを問わないというべきである。 (2)これを本件についてみるに,丙7の11,12によれば,以下の事実が認められる。 ア平成12年3月9日に開催された町議会定例会に提出された補正予算の議案には,本件売却に係る歳入が,歳入歳出予算の補正の財産収入中の物品売払収入と- 5 -して「砂利採取料89万2000円」と記載されていた。 ,イ同月17日の定例会では上記補正予算案が議題とされ,本件売却に係る砂利採取料89万2000円の妥当性について主に審議がされた。出席議員からは,法237条2項の条文を挙げた上,本件売却の1m当たり20円の単価がこの条 項に照らして適正な対価といえるのかどうか質問があり,町側は,この単価を設定した方法を,町は本件売却は埋蔵された状態の砂利を取引の対象としたものと,,,とらえ民間で り20円の単価がこの条 項に照らして適正な対価といえるのかどうか質問があり,町側は,この単価を設定した方法を,町は本件売却は埋蔵された状態の砂利を取引の対象としたものと,,,とらえ民間では埋蔵された状態の取引では砂利の数量等が明確でないものの砂利を採取させる権利として,採取する面積当たりの採取料を定めて契約しているところ,こうした契約によって実際に採取された砂利につき,その1m当た りの単価が計算上いくらについたかを近傍区域の類似の取引事例に従い算出し,それをもとに本件売却の1m当たりの単価を設定した旨説明した。そして,町 側は,この方法で近傍区域での類似の取引事例における砂利1m当たりの単価 を算出すると,平成4年から平成8年までの4件の事例で,20円,27円,29円,37円と算出できたので,これらに照らしつつ,民間の取引に影響を及ぼさないように,本件売却の単価を20円と設定した旨説明した。これに対し,出席議員からは,Aは町から採取した砂利を本件売却以前に1m当たり平均34 0ないし350円で実際に転売していたのであるから,その後になされた本件売却ではこの転売価格を参考にして単価を定めるべきであったとの見解や,本件売却を埋蔵されたままの砂利を採取する権利の譲渡とみるのであれば,採取した砂利の単価ではなく採取面積当たりの単価を定めるべきではないかとの見解,あるいは,砂利そのものは物品である等の見解が示され,これらの見解に基づき,町を質す形で活発な質疑がなされた。 これらの審議を経て,本件補正予算案は賛成多数により,原案のとおり可決された。 (3)上記認定の事実によれば,町議会は,本件補正予算の審査において,対価との関連で本件売却の必要性,妥当性について審査し,これを妥当なものと認めた上,これを前提に本件補正予算を可決 可決された。 (3)上記認定の事実によれば,町議会は,本件補正予算の審査において,対価との関連で本件売却の必要性,妥当性について審査し,これを妥当なものと認めた上,これを前提に本件補正予算を可決したということができる。 そうすると,仮に本件売却が法237条2項の適正な対価なくしての譲渡に該当するとしても,上記の議決により,同項の議会の議決を欠いた瑕疵は治癒されたというべきである。 したがって,原告らの主張する同項の議決を欠いた違法(法237条2項違反)は,これを認めることはできない。 争点2(双方代表の追認)について(1)地方公共団体の長が,自らが代表者である他の団体との間で,双方を代表して契約を締結する場合には,民法108条が類推適用され,地方公共団体の長による利益相反行為として,その効果は本人である地方公共団体には帰属しないというべきであるが,本人である地方公共団体がその行為を追認した場合には,民法116条の類推適用により,本人である地方公共団体に法律効果が帰属するものと解すべきである。そして,本人である地方公共団体のため追認をすべき機関は議会であると解される。 - 6 -,,,また議会による追認は長による双方代表行為がなされたことを認識した上でその行為の法律効果を地方公共団体に帰属させる意思が表明されれば足り,追認の個別議案として明示的に議決されることまでは要しないと解すべきである。 (2)これを本件についてみるに,丙7の11及び12によると,町議会が上記のとおり平成12年3月17日の定例会で本件売却による歳入が計上された本件補正予算を審議した際,出席議員から,本件売却は被告が町とAの双方を代表してなしたものであることの指摘がなされていたことが認められる。 そうすると,町議会が,本件売却による収入を歳費収入として計上され 正予算を審議した際,出席議員から,本件売却は被告が町とAの双方を代表してなしたものであることの指摘がなされていたことが認められる。 そうすると,町議会が,本件売却による収入を歳費収入として計上された本件補正予算を可決したことで,本件売却が被告による双方代表行為であることを認識した上でその法律効果を町に帰属させることを黙示に表明したということができ,これによって町について双方代表行為は追認されたと認めることができる。 したがって,原告らの主張する双方代表の禁止違反(民法108条違反)の違法は,これを認めることはできない。 なお,原告らの主張には,被告による本件売却以外の違法行為を主張する部分があるが,これらは,監査請求を経た代位請求としての本件の請求原因とはなりえないものであるから,主張自体失当である。 結論 以上の次第であって,本件請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 山形地方裁判所民事部裁判長裁判官畑中芳子裁判官石橋俊一裁判官白川敬裕

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