平成17(行ウ)221 公文書部分公開処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年8月3日 大阪地方裁判所 情報公開
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判決文本文12,497 文字)

主文 枚方市教育委員会教育長が,原告に対し,平成17年9月16日付けでした原告の同月2日付け公開請求に対する部分公開決定処分(教学指第441号)のうち,非公開とした部分を取り消す。 枚方市教育委員会教育長が,原告に対し,平成16年9月28日付けでした原告の同月14日付け公開請求に対する部分公開決定処分(教学指第497号)のうち,非公開とした部分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,枚方市教育委員会が枚方市立小中学校の生徒を対象にして行った平成15年度及び平成16年度の各枚方市立小中学校学力診断テストのうち,中学校実施部分に関し,原告が枚方市情報公開条例(平成9年枚方市条例第23号。以下「本件条例」という。)に基づいて本件条例所定の実施機関の1つである枚方市教育委員会の委任を受けた枚方市教育委員会教育長(以下「教育長」という。)に対し,各年度の学力診断テストの学校別一覧に係る文書(以下「本件各文書」という。)に記録された情報の公開を請求したところ(以下「本件各公開請求」という。),教育長が本件各文書に記録された情報の一部を公開とし,その余の部分を非公開する旨の部分公開決定処分(以下「本件各処分」)をしたため,原告が,本件各処分のうち本件各文書に記録された情報の一部を非公開とした部分は違法であるとして,それらの取消しを求めている事案である。 本件条例の定め本件条例は,枚方市が保有する情報の公開について定めたものであり,以下の各規定がされている。 (1)第1条(目的)この条例は,市の保有する情報を公開することにより,市政に関する市民の知る権利を保障し,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民の市政参加を促進し,もって地方自治の本旨に即した 1)第1条(目的)この条例は,市の保有する情報を公開することにより,市政に関する市民の知る権利を保障し,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民の市政参加を促進し,もって地方自治の本旨に即した市政を推進することを目的とする。 (2)第5条(情報の公開の請求)次に掲げるものは,実施機関に対し,情報の公開(中略)を請求することができる。 1号市内に住所を有する者(以下省略)(3)第6条(公開しないことができる情報)実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報については,当該情報の公開をしないことができる。 (1号から6号まで省略)7号市又は国等が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるもの(以下省略) 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)(1)当事者等原告は,枚方市内に住所を有する者(本件条例5条1号)である(争いがない)。 教育長は,本件条例2条3号の実施機関の1つである枚方市教育委員会から,情報公開事務その他の事務を委任されている(枚方市教育委員会事務委 任規則2条。乙4)。 (2)原告による本件各公開請求ア原告は,平成16年9月14日,本件条例に基づいて,教育長に対し,「平成15年度枚方市学力診断テストに係る自治体資料2学校別一覧(中学校)」の公開を請求した(争いがない)。 イ原告は,平成17年9月2日,本件条例に基づいて,教育長に対し,「平成16年度枚方市立小中学校学力診断テスト自治体資料学校別一覧(中学校)」の公開を請求した(争いがない た(争いがない)。 イ原告は,平成17年9月2日,本件条例に基づいて,教育長に対し,「平成16年度枚方市立小中学校学力診断テスト自治体資料学校別一覧(中学校)」の公開を請求した(争いがない)。 (3)教育長による本件各処分ア教育長は,平成16年9月28日,上記(2)アの情報公開請求に対し,本件条例6条7号に該当するとして,後記非公開部分((4)イ)を非公開とし,その余を公開する部分公開決定(教学指第497号)を行った(争いがない)。 イ教育長は,平成17年9月16日,上記(2)イの情報公開請求に対し,本件条例6条7号に該当するとして,後記非公開部分((4)イ)を非公開とし,その余を公開する部分公開決定(教学指第441号)を行った(争いがない)。 (4)本件各文書の内容及び非公開部分ア枚方市は,枚方市立小中学校の生徒を対象として,「枚方市立小中学校学力診断テスト」(以下「本件学力テスト」という。)を実施しているところ,本件各文書は,平成15年度及び平成16年度に実施された本件学力テストのうち,中学校実施部分(枚方市立中学校19校の1年及び2年の学力診断テスト)に関して作成された「学校別一覧(中学校)」等と題された書面である(乙1)。 本件各文書には,本件学力テストの結果をもとに,枚方市全体及び各中学校ごとに,国語,数学,英語,理科,社会の教科全体,観点別,領域別 (ただし,理科,社会については領域別の集計は行われていない。)の平均得点及び到達評価(評価Aと評価A+Bの各割合)が小数点第1位まで記録されている(乙1,3)。 イ本件各文書に記録された情報のうち,各中学校別の平均得点及び到達評価に係る情報(以下「本件情報」という。)が非公開とされた(争いがない)。 (5)不服申立て及び訴訟の提起原告は,枚方市教育委 イ本件各文書に記録された情報のうち,各中学校別の平均得点及び到達評価に係る情報(以下「本件情報」という。)が非公開とされた(争いがない)。 (5)不服申立て及び訴訟の提起原告は,枚方市教育委員会に対し,平成16年11月25日,上記(3)アの部分公開決定を不服として,審査請求をした(甲5)。 原告は,平成17年11月29日,本件各処分の取消しを求める訴えを提起した(顕著な事実)。 枚方市教育委員会は,平成18年3月13日,上記(3)アの部分公開決定に対する審査請求を棄却する裁決をした(乙5)。 争点及び当事者の主張本件の争点は,1本件情報が,「市又は国等が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の事務事業に関する情報」(本件条例6条7号。以下「事務事業情報」という。)に該当するか否か,2本件情報を「公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められる」(本件条例6条7号)か否かであり,この点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (1)争点1(本件情報の事務事業情報該当性)について(被告の主張)ア本件学力テストは,枚方市教育委員会が実施する試験であり,その実施自体が本件条例6条7号にいう「試験」に該当する。 イまた,本件学力テストは,枚方市教育委員会の責務である学校の組織編 成,学習指導,生徒指導及び職業指導といった教育行政の一環として行われたものであるから,本件条例6条7号にいう「その他の事務事業」に該当する。 (原告の主張)ア本件条例について枚方市が作成した「情報公開事務及び個人情報保護事務の手引」(以下「手引」という。乙7)によれば,本件条例6条7号の「試験」とは,資格試験,採用試験等のこととされ,「その 主張)ア本件条例について枚方市が作成した「情報公開事務及び個人情報保護事務の手引」(以下「手引」という。乙7)によれば,本件条例6条7号の「試験」とは,資格試験,採用試験等のこととされ,「その他の事務」とは,許可・認可等の行政処分に係るもののこととされている。 イ本件学力テストは,枚方市教育委員会が学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにすること等を目的として行うものであるから,資格試験,採用試験等には該当しないし,許可・認可等の行政処分に係るものともいえない。 したがって,本件学力テストは,本件条例6条7号の「試験」にも「その他の事務」にも該当しない。 (2)争点2(本件情報を公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるか否か)について(被告の主張)本件学力テストは,学習指導要領に定められた多岐にわたる教育活動のうち,学力テストによって習得状況の把握が容易な国語,数学,英語,理科,社会の5教科についてのみ実施され,この範囲で,各学校における習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,枚方市立小中学校児童生徒の学力の向上を図ること,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより学習意欲を引き出すこと,及び各学校の評価の客観性や信頼性を高めることを目的とするものである。 しかるに,本件情報が公開されると,中学校を評価する指標の一つにすぎ ない本件学力テストの成績に基づいて各中学校のランク付けがなされてしまい,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価することになってしまうおそれがある。 そうすると,①下位順位の中学校に在籍している生徒は,たとえ本件学力テスト実施教科以外の教科 ,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価することになってしまうおそれがある。 そうすると,①下位順位の中学校に在籍している生徒は,たとえ本件学力テスト実施教科以外の教科,特別活動等に秀でていたとしても,何らかの劣等感を抱いたり,そのため,学習意欲や通学意欲を低下させたりし,逆に,上位順位の中学校に在籍している生徒は,本件学力テストの目的から逸脱した間違った優越感を抱くこと,②保護者が自己の子の在籍する中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望し,特定の教職員に対する不相当な働きかけを行うこと等の圧力をかけること,③この圧力を受けるなどした各中学校において意識的な本件学力テスト対策(学校の順位を上げるための学力テストに向けた取組)が行われ,本件学力テスト実施教科以外の教科等を含めて,適切な教育課程を編成するという目的に反する事態が生じるなどの弊害が容易に想定される。 このように,本件情報が公開されることにより,過度の競争や学校の序列化などの弊害が生じ,教育行政及びその一環である本件学力テストの目的を著しく失わせ,又はその適正若しくは公正な執行を著しく妨げることとなる。 (原告の主張)ア本件学力テストが中学校を評価する指標の一つにすぎないのは被告主張のとおりであるが,枚方市教育委員会は,各中学校別の平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)(甲6)の情報公開をしたり,部活動の成果を記載した広報誌(甲7)を発行するなど随時広報活動を行っており,保護者らは,学力及びそれ以外の各中学校の情報についても触れる機会があるから,本件学力テストの成績のみで各中学校を評価するとは考えられない。 仮に,本件学力テストの成績の順位のみをもって各中学校が評価される ことがあったとしても,下位の生徒が劣 ても触れる機会があるから,本件学力テストの成績のみで各中学校を評価するとは考えられない。 仮に,本件学力テストの成績の順位のみをもって各中学校が評価される ことがあったとしても,下位の生徒が劣等感を抱いたり,上位の生徒が優越感を抱くとまでは考えられない。 また,仮に,保護者が特定の教職員に学力の向上を求める働きかけをしたとしても,それ自体は,学習指導要領に基づいた教育実施に向けた要望であるし,その要望が不適切であったとしても,枚方市教育委員会が適切に管理することが可能である。 イ和歌山県では,同県が実施する学力テストについて,学校ごとの正答率のデータを公表しているが,被告が主張するような弊害は生じていない。 また,枚方市教育委員会は,上記のとおり,平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)を情報公開したところ,これをみれば,高偏差値である大阪府下の高校へ進学した人数が各中学校ごとに判明するのであるから,各中学校の学力が自ずと推測されることとなる。そういう意味では,上記一覧表から看取される情報は,本件情報と質的に差異がないが,上記一覧表を情報公開したことで被告が主張するような弊害は生じていない。 ウ被告は,全国的な学力調査により得られた調査データが,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)5条6号イ・ハの不開示情報として取り扱うことが適当であるとした平成18年4月25日付け報告書(文部科学省の全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議)を援用するが,本件条例は,同法と異なり,事務事業の目的を失わせ,あるいは執行を阻害する程度が「著し」いことを要件としているから,上記報告書の意見は本件に直ちに参考となるものではない。 第3争点に対する判断 争点1(本件情報の事務事業情報該当 の目的を失わせ,あるいは執行を阻害する程度が「著し」いことを要件としているから,上記報告書の意見は本件に直ちに参考となるものではない。 第3争点に対する判断 争点1(本件情報の事務事業情報該当性)について(1)本件条例6条7号は,事務事業の内容として,「市又は国等の機関が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の 事務」と規定し,これらに関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるものを非公開とすることができると規定している。そして,上記条項の解釈に当たっては,その文言の他,本件条例の趣旨,目的及び立法者意思を踏まえる必要がある。 そこで,まず,本件条例の趣旨,目的を検討するに,本件条例は,その目的として市民の知る権利の保障を挙げ(1条),一定の非公開情報を限定的に列挙し,これに該当するときは当該情報を公開しないことができると規定し(6条),実施機関に対し市民の知る権利が十分に保障されるように本件条例を解釈し,運用する責務を課しているので(3条1項),非公開情報の定義は,知る権利の保障を没却しないように配慮して解釈すべきであり,しかもこれに該当しない限りはすべての情報を公開すべきであるいう点に,本件条例の趣旨があるものと解される。 そして,本件条例の立法者である枚方市は,本件条例の解釈指針として手引(乙7)を作成しており,これは立法者意思を探る手掛かりになるものであるから,この記載も本件条例の解釈において参考とすべきものである。 このように,本件条例は,知る権利の保障を没却しないように非公開情報を限定的に解釈すべきであるが,その解釈に当たっては,立法者意思に近いと解される手引の記載も参考とすべきことと とすべきものである。 このように,本件条例は,知る権利の保障を没却しないように非公開情報を限定的に解釈すべきであるが,その解釈に当たっては,立法者意思に近いと解される手引の記載も参考とすべきこととなる。 (2)そこで,本件学力テストが,本件条例6条7号の「試験」又は「その他の事務事業」に該当するか否かを検討する。 一般に,「試験」とは,人の知識,能力等又は人の性能等を試すことをいい,本件学力テストもここにいう「試験」の一般的な定義に含まれる。また,手引には,「試験」の定義として「資格試験,採用試験等をいう。」と記載されているところ,本件学力テストは,生徒の学力を測るために行うものであり,資格試験,採用試験とは性質を異にするが,手引の定義においても, 資格試験や採用試験とは異なる性質の試験を排除するまでの趣旨を読みとることができないことに照らせば,本件学力テストは,本件条例6条7号にいう「試験」に該当すると解するのが相当である。 争点2(本件情報を公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるか否か)について(1)前記1(2)のとおり,本件学力テストは,本件条例6条7号の「試験」に該当すると解されるので,被告は,本件情報を公開することが,「試験」としての本件学力テストの目的を著しく失わせ,又は,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げることを立証する必要がある。 (2)そこで,この点について判断するに,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア枚方市教育委員会は,本件学力テストを,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,枚方市立小中学校児童生徒の学力の向上を図ること,学 ア枚方市教育委員会は,本件学力テストを,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,枚方市立小中学校児童生徒の学力の向上を図ること,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより学習意欲を引き出すこと,及び各学校の行う評価の客観性や信頼性を高めることを目的として,毎年度行うこととしている(甲2)。 本件学力テストの実施後,受験した児童生徒及び保護者へは,当該個人及び枚方市全体の各観点別等の分析結果等を送付するが,各学校ごとの各観点別等の分析結果等(本件情報)については,児童生徒及び保護者に送付する取扱いにはしておらず,枚方市教育委員会及び各学校校長が保有している(甲2)。 イ枚方市教育委員会は,原告からの情報公開請求を受け,各中学校別の「平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)」(甲6)を公開した。上記一覧表には,各中学校の進学先高校名及び進学者数 が記載されている(甲6)。 また,枚方市教育委員会学校教育部が発行する広報誌によれば,各中学校の部活動の成績などについての記事が掲載されている(甲7)。 ウ平成17年度までに2年おきあるいは3年おきに学力テストを実施している44都道府県を対象にしてみると,都道府県全体の調査結果を公表する自治体数が35,市区町村単位までの調査結果を公表する自治体数が8,学校単位までの調査結果を公表する自治体数が1となっている(乙8)。 エ文部科学省に設置された「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」の平成18年4月25日付け「全国的な学力調査の具体的な実施方法等について(報告)」によれば,全国的な学力調査の公表の具体的方法について,個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度の競争に 討会議」の平成18年4月25日付け「全国的な学力調査の具体的な実施方法等について(報告)」によれば,全国的な学力調査の公表の具体的方法について,個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度の競争につながるおそれがあるとして,公表する場合も,全国的な学力調査の結果に基づいて順位付けがなされることや過度の競争をあおらないよう細心の注意を払う必要があること,得られた調査データは,情報公開法5条6号イ又はハに該当するものとして取り扱うことが適当と考えられることなどが指摘されている(乙8)。 オ本件学力テストを受験した中学生は,枚方市立各中学校の生徒であり,これらの中学校には,入学試験はなく,また,生徒(保護者)が通学する学校を選択できる「学校選択制」を採用していない(弁論の全趣旨)。 (3)以上の認定事実を前提として,本件情報を公開することにより被告が主張する弊害が発生し,これにより本件学力テストの目的を著しく失わせ,又はその適正若しくは公正な執行を著しく妨げることとなるのかを検討する。 ア被告は,本件情報公開による弊害が生じる前提として,本件学力テストの結果が公開されると,これのみに基づいて各中学校のランク付けがなされてしまい,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価するおそれがあると主張する。 しかし,前記(2)イのとおり,枚方市教育委員会は,原告の情報公開請求に応じて,各中学校別の「平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)」(甲6)を公開しているところ,進学実績と在校生の学力との間に有意な相関関係があることは経験則上明らかであるから,これによって各中学校の学力レベルは,既に一定の限度で開示されている。 しかも,本件学力テストが前記5教科だけについて実施されたものであることは本件情報の公開 係があることは経験則上明らかであるから,これによって各中学校の学力レベルは,既に一定の限度で開示されている。 しかも,本件学力テストが前記5教科だけについて実施されたものであることは本件情報の公開によって自ずから示されるから,これを見る者もその範囲における各中学校の学力を示す資料として理解することが明らかである。そして,前記(2)イのとおり,枚方市教育委員会は,部活動の成績などを記載した広報誌を発行するなどして,各中学校における教育状況の広報をしており,生徒,保護者及び市民等は,これらの広報により,各中学校における部活動その他,上記学力テストの結果以外の情報を知ることができる状況にある。 これらのことを併せて考えれば,本件情報が公開されたとしても,これが各中学校を評価する唯一の指標になるとまでは認められない。 もっとも,本件学力テストの結果は,点数又はパーセントという形で計量化された情報であるため,本件情報が公開された場合,各中学校の平均得点等を比較したり,この得点を基に中学校の順位を付けることが可能となるから,このような順位付けがされるおそれは一概に否定できず,この限度において,被告の上記主張は理由がある。 イ次に,被告は,このような順位付けがなされることによって,下位順位の中学校に在籍している生徒は,たとえ本件学力テスト実施教科以外の教科,特別活動等に秀でていたとしても,何らかの劣等感を抱いたり,そのため,学習意欲や通学意欲を低下させたりし,逆に,上位順位の中学校に在籍している生徒は,本件学力テストの目的から逸脱した間違った優越感を抱くことになると主張する。 しかし,前記(2)エのとおり,本件学力テストを受験する中学生は,入学試験がなく,学校選択制も採用されていない枚方市立各中学校の生徒であり,また,受験した生徒は,本人及 ことになると主張する。 しかし,前記(2)エのとおり,本件学力テストを受験する中学生は,入学試験がなく,学校選択制も採用されていない枚方市立各中学校の生徒であり,また,受験した生徒は,本人及び市全体の各観点別評価等の分析結果の送付を受け,自己の成績及び市全体における自己の相対的な順位(位置)を既に知っていることに照らせば,本件情報が公開され,自己が在籍する中学校全体の成績や他の市立中学校の成績と比較した相対的順位等を知ることになったとしても,そのことによって,生徒が劣等感を抱いて学習意欲や通学意欲を低下させたり,行きすぎた優越感を抱くことになるとは考えにくい。被告が主張する,本件学力テスト実施教科以外の教科や特別活動等に秀でている生徒が本件学力テストの結果に劣等感を持つという事態は,むしろ本人の成績が悪かった場合に生じ得るものであり,教職員は,このような場合,生徒に対し,実施教科についての学力の向上を働きかけるとともに,他の優れている教科や活動を積極的に評価するなど,生徒が過度の劣等感を持たないような指導を行う必要がある。しかし,少なくとも,入学試験がなく,学校選択制もない枚方市立中学校に通う生徒について,本人の成績ではなく,その通う中学校の成績が悪かったことから,その生徒が劣等感を抱き,学習意欲等を低下させるまでの劣等感を抱くことは,通常,考え難い。また,本件学力テストの結果によって,行き過ぎた優越感を持つ生徒がいるとすれば,それは,本人の成績が良かった場合であり,本人の成績ではなく,その在籍する中学校の成績が良かったことから,その生徒が,教育上支障を来すほどの優越感を持つことになるとは,これまた,考え難い。 確かに,自己の在籍する中学校が成績下位校であることにより何らかの劣等感を感じたり,逆に成績上位校であることにより一 の生徒が,教育上支障を来すほどの優越感を持つことになるとは,これまた,考え難い。 確かに,自己の在籍する中学校が成績下位校であることにより何らかの劣等感を感じたり,逆に成績上位校であることにより一定の優越感を感じることは否定できないが,これは,教職員が必要に応じて指導や注意をすれば足りる程度の感情であって,本件学力テストの目的(前記(2)ア)を 著しく失わせたり,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げる要因になるものとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 ウ次に,被告は,保護者が自己の子の在籍する中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望し,特定の教職員に対する不相当な働きかけを行うこと等の圧力をかけることになり,この圧力を受けた各中学校において意識的な学力テスト対策(学校の順位を上げるための学力テストに向けた取組)が行われ,本件学力テスト対象教科以外の教科を含めて,適切な教育課程を編成するという目的に反することになると主張する。 しかし,各中学校ごとの本件学力テストの成績が,その在校生の高校入試の際に直接反映されるような制度の下であればともかく,そのような制度設計がされてない本件学力テストについて,本件情報が公開されたことから,保護者が中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望したり,特定の教職員に対し,不相当な圧力をかけることになるとは考えにくい。もちろん,本件情報が公開された場合,保護者が,その結果を踏まえ,各中学校に対し質問をしたり,要望をしたりすることは予想できるところであり,平均得点や到達評価が他の学校に比べて低い科目等に関しては,その教育内容の改善を求めるということも予想できる。しかし,前記のとおり,本件学力テストの目的(前記2(ア))の1つが,同テスト結果を各中学校における教育課 が他の学校に比べて低い科目等に関しては,その教育内容の改善を求めるということも予想できる。しかし,前記のとおり,本件学力テストの目的(前記2(ア))の1つが,同テスト結果を各中学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,生徒の学力の向上を図ることであること,枚方市においては学校選択制を採用しておらず,保護者は自己の子が通う市立中学校を選べないことに照らせば,保護者が,中学校に対し,上記のような質問をし,意見を述べる機会を持つこと,そして,中学校がその意見も参考にして,教育課程や指導方法の改善を図ることは,本件学力テストの前記目的に反するものとはいえない。そして,仮に,本件学力テストの目的を誤解するなどして,中学校や特定の教職員 に対し不相当な圧力を加える保護者がいたとしても,それは,各中学校において,保護者の誤解を解き,あるいは指導方法の改善案を提示するなどによって対応することが十分可能というべきである。被告が主張するように,保護者からの圧力を受けて,本件学力テストにおける学校の順位を上げるためだけの取組(例えば,本件学力テストに向けた試験対策を念入りにするなど)を行うような見識に欠けた中学校が枚方市に存在することをうかがわせる証拠はなく,被告の上記主張は一般的な可能性ないし危惧を述べたものにすぎないというべきである。 このように,本件情報の公開によって,被告が主張する上記弊害が発生するとは認められず,本件学力テストの目的(前記(2)ア)を著しく失わせたり,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げる事態が発生するともいえない。 エ前記(2)エのとおり,文部科学省に設置された「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」は,全国的な学力調査の結果得られた調査データは個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度の競争につな 記(2)エのとおり,文部科学省に設置された「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」は,全国的な学力調査の結果得られた調査データは個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度の競争につながるおそれがあるとして,公表する場合は,その学力調査の結果に基づいて順位付けがなされることや過度の競争をあおらないよう細心の注意を払う必要があること,情報公開法5条6号イ又はハに該当するものとして不開示情報として取り扱うことが適当であることを指摘している。 しかし,枚方市立中学校の生徒を対象とする本件学力テストについて,本件条例所定の非公開情報該当性を基礎づけるほどの競争激化が発生すると認めるに足りないことは前述したとおりである。また,情報公開法5条6号は,不開示情報として,事務事業の性質上,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなどと規定しており,本件条例6条7号と比較した場合,事務支障の「おそれ」があれば足りるとしている点,事務支障の程度が「著し」いことを要件としていない点の2点において,不開示情報 の範囲が広げられているのであるから,情報公開法上の不開示情報への該当可能性があることをもって,本件条例の非公開情報への該当性を基礎づけることはできない。そうすると,上記専門家検討会議の意見を考慮したとしても,本件情報を非公開とする理由を基礎づけるに足りず,本件情報を公開することにより,本件学力テストの目的を著しく失わせ,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げるとは認められない。 (4)したがって,教育長のした本件情報を非公開とする本件各処分はいずれも違法である。 以上のとおり,原告の請求にはいずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官 分はいずれも違法である。 以上のとおり,原告の請求にはいずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一裁判官森永亜湖

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