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昭和43(う)2716 業務上過失傷害被告事件

裁判所

昭和44年4月22日 東京高等裁判所

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4,943 文字

主文 原判決を破棄する。被告人は無罪。理由 本件控訴の趣意は、弁護人大西保、同今泉政信、同佐藤敦夫が連名で差し出した控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。本件事故現場は、a方面よりbを経てc方面に通ずる国道d通に、e方面よりの道路が合流する三差路であるが、右国道には、a方面よりきて右側にf線の路面軌道も付設され、幅員一五・九メートルの広い、かつ、一般車両交通の極めて激しい道路であるが、これに交差する右e方面よりの道路は、幅員六・五メートルの比較的狭い道路で、右交差点には信号機の設備はなく、e方面よりの道路左側の交差点入口に一時停止の標識が設けられているにすぎない。<要旨>被告人は右国道上をa方面よりc方面に向つて直進しようとし、Aは、右e方面より右交差</要旨>点に入つて右折してa方面に向おうとして、右交差点において両車が衝突して本件事故に至つたものであるが、本件のような三差路における車両交通のルールとして原則的に言えることは、Aの如くe方面よりきて交差点を右折しようとする場合には先づ交差点入口の一時停止の標識に従つて一旦停車した上、国道上をa方面よりc方面に、また反対にc方面よりa方面に向う各車両の流れの情況を確認し、両方の流れの中断した切れ目を見はからつて、各直進車両の進行を妨げないような速度と方法をもつて右折横断をしなければならないのである。そこでAの原審公判廷における証言によれば、同人は一応右ルールに従つて、交差点入口附近にて一旦停車して、a方面よりの車の流れが跡絶え、同方面より進行してくる車の先頭との距離が一〇〇メートル(当審公判廷においてこれを六五メートルに訂正)あつたので、右折横断が可能と思つ 交差点入口附近にて一旦停車して、a方面よりの車の流れが跡絶え、同方面より進行してくる車の先頭との距離が一〇〇メートル(当審公判廷においてこれを六五メートルに訂正)あつたので、右折横断が可能と思つて横断を開始したというのである。 停車して、a方面よりの車の流れが跡絶え、同方面より進行してくる車の先頭との距離が一〇〇メートル(当審公判廷においてこれを六五メートルに訂正)あつたので、右折横断が可能と思つ 交差点入口附近にて一旦停車して、a方面よりの車の流れが跡絶え、同方面より進行してくる車の先頭との距離が一〇〇メートル(当審公判廷においてこれを六五メートルに訂正)あつたので、右折横断が可能と思つて横断を開始したというのである。なお、当時右国道上c方面よりa方面に向う車両は、記録によれば、B(原審証人)の車両一台で、この車はAが前記右折横断を開始した時点には、右交差点よりc寄り少なくとも二〇〇メートル近く離れていたことが、右Bの証言により認め得るのである。したがつて、Aの証言の如く、a方面よりくる直進車両群の先頭との距離が一〇〇メートル(仮に六五メートルにしても)あつたとすれば、同人は前記通常の右折横断の方法と速度とをもつてすれば、直進車両群の進行を妨げることなく、その右折横断を完了することができて、右直進車両群の先頭の右後方を進行していた本件被告人の車と衝突するおそれは存在しなかつた筈である。ところが、右Aの証言によれば、同人は右折横断を開始したものの、その速度は時速四・五キロメートル、即ち歩速に近い緩い速度(当審においてはこれを時速二〇キロメートルに訂正)で進出したところ、直進車両群の先頭車二台が交差点の手前で停車したので、Aは国道中心線の附近まで進出し、そこで一旦停車したところ、右停車した直進先頭車両の右後方から被告人の車がとび出してきてAの自動車に衝突したというのである。Aが何故に前記のような通常の右折横断の速度によらず歩速にも等しい緩速度で進出したか、また、何故に国道中心線附近において一旦停止したものかその合理的理由を明確になし得ないのである。被告人および同乗のC(原審証人)らは原審以来右Aの証言する如き事実関係を全面的に否定し、Aはa方面よりの直進車両が目前に接近してから急遽右折横断を敢行しようとして交差点内に進出した いのである。被告人および同乗のC(原審証人)らは原審以来右Aの証言する如き事実関係を全面的に否定し、Aはa方面よりの直進車両が目前に接近してから急遽右折横断を敢行しようとして交差点内に進出したもので、その際、被告人の左前方の直進先頭車両が停車した事実もなく、むしろAの無謀な進出に狼狽し、進路を右に左に変えながらAの車との接触を避けてかろうじてその後方より直進を続けることができたが、被告人は右直進車両の陰よりとび出してきたAの自動車を至近距離に発見して、避譲の術もなくこれと衝突するに至つた、と主張するのである。 の直進車両が目前に接近してから急遽右折横断を敢行しようとして交差点内に進出したもので、その際、被告人の左前方の直進先頭車両が停車した事実もなく、むしろAの無謀な進出に狼狽し、進路を右に左に変えながらAの車との接触を避けてかろうじてその後方より直進を続けることができたが、被告人は右直進車両の陰よりとび出してきたAの自動車を至近距離に発見して、避譲の術もなくこれと衝突するに至つた、と主張するのである。右の如くAの主張と被告人らの主張は、その重要な点において全面的に対立しているのであるが、前記の如くAの証言には合理的な理由付けの不可能なところが多く、その他全記録を通じてこれを措信し得ないのであつて、畢竟、本件においてはAが冒頭に指摘した車両交通の原則的ルールを無視して、直進車両との接触のおそれを顧慮することなく、無謀にも、右折横断を敢行したため、被告人の左前方を直進した先頭車両はかろうじてAの車との接触を避けて直進を継続したが、被告人は右先頭車両の陰より進出してきたAの車を至近距離に発見して避譲の術なく本件事故の発生に至つたものと認めざるを得ない。原判決は「被告人は左前方の先行車の陰でその左前方の見とおしが悪いのであるから、前方交差点の左方道路から進出してくる車両との安全を確認するため右先行車両の動静を注視し、適宜減速する等右進出車との接<要旨>触を避けるため万全の措置を講すべき業務上の注意義務がある」旨判示するのであるが、前記の如く車両交通</要旨>の原則的ルールを無視して右交差点の右折横断を敢行しようとする車両が、先行車両の陰に隠れて存在することを予測してこれとの安全を確保すべき業務上の注意義務は存在しないものと解 の如く車両交通</要旨>の原則的ルールを無視して右交差点の右折横断を敢行しようとする車両が、先行車両の陰に隠れて存在することを予測してこれとの安全を確保すべき業務上の注意義務は存在しないものと解すべきである。仮に、A証言の如く、被告人の左前方の先行車両がすでに横断中のAの車両を発見して、これに先を譲るため交差点手前に一旦停車した事実があり、被告人もこの先行車両の左前方に障碍(例えば横断歩行者等)の存在することを当然予知すべき特段の状況の存在することが明らかな場合においては、右先行車両の動静を注視して右隠れた障碍につき、その安全を確保すべき注意義務の存在することはこれを否定し得ない。 のと解すべきである。仮に、A証言の如く、被告人の左前方の先行車両がすでに横断中のAの車両を発見して、これに先を譲るため交差点手前に一旦停車した事実があり、被告人もこの先行車両の左前方に障碍(例えば横断歩行者等)の存在することを当然予知すべき特段の状況の存在することが明らかな場合においては、右先行車両の動静を注視して右隠れた障碍につき、その安全を確保すべき注意義務の存在することはこれを否定し得ない。しかしながら、本件において、前記左前方の先行車がAに先を譲つて一旦停車した事実ないし、右の如き特段の状況の存在は原判決もこれを認定せず、前記の如く本件全証拠を仔細に検討しても右事実を認定することができない。また、被告人の左前方の先行車両が一時的に若干その進路を右に変えたため、被告人がこれとの接触を避けるために道路中心線より右に出て進行した事実は、証拠上これを否定することはできない。しかしながら、対向車の有無、その距離、速度等を勘案して、苟も対向車の接触のおそれのない場合、一時的に道路の中心線を右に出て進行することも、一般車両交通のルールに照し必ずしも不法な運転方法とは言えない。本件の場合、前記Bの運転する対向車両との距離は一〇〇メートルを遥かに越えておりこれとの接触のおそれのなかつたことが明らかであるから、被告人が右中心線を右に出て進行した点を非難することはできない。前記の如く交通ルールを無視して右折横断を敢行しようとする車両を予測してこれとの安全を確保するため必ず中心線内を直進すべき業務上の注意義務も存在しないのである。以上の如く、本件はAの無謀 きない。前記の如く交通ルールを無視して右折横断を敢行しようとする車両を予測してこれとの安全を確保するため必ず中心線内を直進すべき業務上の注意義務も存在しないのである。以上の如く、本件はAの無謀な右折横断によつて惹起された事故であつて、被告人には原判示の如き業務上の注意義務は存在せず、被告人に右違反ありとして有罪を言い渡した原判決は事実を誤認し、かつ法令の解釈適用を誤つた違法があり、右は判決に影響を及ぼすことが明らかである。よつて、本件控訴は理由があるから、刑訴法三九七条三八〇条三八二条により、原判決を破棄した上、同法四〇〇条但書に従い、さらに、自ら次のように判決する。本件公訴事実は、被告人は自動車運転の業務に従事するものであるが、昭和四二年六月四日午後一一時一五分頃普通乗用自動車を運転し東京都世田谷区b町g番地先の交通整理の行われていない交差点をb方面からc方面に向い進行中、前方には交差点があり、かつ当時自車の左側前方には同方行に進行中の車両があり、同車両の陰となつて左前方の見とおしが悪く前方交差点の左方道路から進行してくる車両との安全を確認することが困難な状況であつたらえ、当時の自車の進路は道路中央線沿いであつたから、前記先行車両の動静を注視し同車が右変進してきたときは、道路右側部分に進行しないよう減速するほか、右先行車両が減速したときは、これに対応して減速の上、同車の前方、とくに前方交差点内に左方から進行してくる車両との安全を確認して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、前記先行車両が若干右変進するや、減速することなく、右変進して道路中央線を右へはみ出したばかりでなく、同車の動静を十分注視せず、かつ同車が交差点手前で減速したのにも気づかず、前方交差点左方の安全を十分確認することなく漫然進行した過失により、同交差点を たときは、これに対応して減速の上、同車の前方、とくに前方交差点内に左方から進行してくる車両との安全を確認して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、前記先行車両が若干右変進するや、減速することなく、右変進して道路中央線を右へはみ出したばかりでなく、同車の動静を十分注視せず、かつ同車が交差点手前で減速したのにも気づかず、前方交差点左方の安全を十分確認することなく漫然進行した過失により、同交差点を 進して道路中央線を右へはみ出したばかりでなく、同車の動静を十分注視せず、かつ同車が交差点手前で減速したのにも気づかず、前方交差点左方の安全を十分確認することなく漫然進行した過失により、同交差点をb方向に右折しようとしたA運転の普通乗用車自動車に自車を衝突させ、その衝撃により自車に同乗していたC(当二〇年)に加療約一カ月間を要する下顎部耳朶部挫傷等の傷害を負わせたものであるというのであるが、前記のとおり右過失の点につき証明がないから、刑訴法三三六条により、被告人に対し無罪の言渡をすることとして、主文のとおり判決をする。(裁判長判事関谷六郎判事東徹判事中島卓児)

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