平成23年11月2日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第30094号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年7月27日判決愛知県西加茂郡<以下略>原告ナトコ株式会社同訴訟代理人弁護士尾関孝彰岡崎士朗鰺坂和浩同訴訟代理人弁理士長谷川芳樹同補佐人弁理士城戸博兒池田正人酒巻順一郎大阪市<以下略>被告積水化学工業株式会社同訴訟代理人弁護士飯田秀郷栗宇一樹早稲本和徳大友良浩隈部泰正和氣満美子戸谷由布子辻本恵太林由希子同訴訟復代理人弁護士森山航洋同補佐人弁理士石井良夫 吉見京子城所宏後藤さなえ主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の 京子城所宏後藤さなえ主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を輸入若しくは生産し,譲渡し,輸出し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,その占有する別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成21年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,液晶用スペーサー及び液晶用スペーサーの製造方法に関する後記2,(2)の特許の特許権者である原告が,被告が製造,販売等する別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)が上記特許権を侵害すると主張して,被告に対し,被告製品の輸入,生産等の差止め,被告製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権(民法709条,特許法102条1項)に基づき,損害賠償金5000万円(一部請求)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,塗料,インキ,合成樹脂,ファインケミカル製品の製造,販売等を業とし,液晶用スペーサーの製造,販売を主たる事業の一つとする株 式会社である。 イ被告は,住宅事業,環境・ライフライン事業,高機能プラスチックス事業等に従事する株式会社である。 (2) 本件特許権原告は,下記の特許の特許権者である(以下,この 式会社である。 イ被告は,住宅事業,環境・ライフライン事業,高機能プラスチックス事業等に従事する株式会社である。 (2) 本件特許権原告は,下記の特許の特許権者である(以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」,本件特許に係る特許請求の範囲の【請求項1】記載の発明を「本件特許発明」という。本件特許に係る明細書を「本件明細書」といい,その特許公報(甲1)を別紙として添付する。)。 記ア特許番号特許第3878238号イ発明の名称液晶用スペーサーおよび液晶用スペーサーの製造方法ウ出願日平成8年1月24日エ登録日平成18年11月10日オ特許請求の範囲【請求項1】表面に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上とからなるグラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子からなることを特徴とする液晶用スペーサー。 (3) 構成要件の分説本件特許発明の構成要件を分説すると,以下のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」~「構成要件F」という。)。 A 表面にB 長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上とC 該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種ま たは二種以上とからなるD グラフト共重合体鎖を導入したE 重合体粒子からなるF ことを特徴とする液晶用スペーサー。 (4) 被告の行為被告は,平成21年度前半期(平成20年11月1日から平成21年4月30日まで)において,少なくとも280㎏の被告製品を製造,販売した。 なお,被告製品のうち,イ-1号製品,ロ-1号 行為被告は,平成21年度前半期(平成20年11月1日から平成21年4月30日まで)において,少なくとも280㎏の被告製品を製造,販売した。 なお,被告製品のうち,イ-1号製品,ロ-1号製品及びハ-1号製品中の製品名「AC3」,イ-2号製品,ロ-2号製品及びハ-2号製品中の製品名「AD-1」,「AL」は廃番となり,製造,販売されていない。(弁論の全趣旨)(5) 被告製品の構成被告製品は,架橋重合体粒子の主成分をジビニルベンゼン(DVB)とする液晶表示用スペーサーであり,●(省略)●別紙被告製品目録記載のイ-1~3号製品はシード重合法により,同目録記載のロ-1~3号製品及びハ-1~3号製品は懸濁重合法により,ジビニルベンゼン(DVB)を主成分とする粒子を重合反応させて架橋重合体粒子を得て製造される。 被告製品は,ジビニルベンゼン(DVB)を主成分とする架橋重合体粒子●(省略)●が形成されている(●(省略)●当事者間に争いがある。)。 被告製品においては,架橋重合体粒子の●(省略)●が形成されている。 (弁論の全趣旨)(6) 構成要件の充足性被告製品は,構成要件B,C,Fを充足する。 (7) 無効審判請求の経過被告は,平成22年1月27日,特許庁に対し,本件特許発明に係る特許ついての無効審判を請求した(無効2010-800016号事件)が,特 許庁は,同年9月7日,同無効審判請求は成り立たない旨の審決をした。被告は,知的財産高等裁判所に対し,当該審決の取消訴訟を提起し(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10324号審決取消請求事件),同裁判所は,平成23年7月7日,本件特許発明は乙7の2に記載された発明と同一であり新規性を欠く,また,本件特許発明は当業者が乙7の3に記載 裁判所平成22年(行ケ)第10324号審決取消請求事件),同裁判所は,平成23年7月7日,本件特許発明は乙7の2に記載された発明と同一であり新規性を欠く,また,本件特許発明は当業者が乙7の3に記載された発明それ自体から容易に想到し得るものであり進歩性を欠くとし,審決の判断には誤りがあるとして,上記審決を取り消す旨の判決をした。 (甲31,乙33) 3 争点(1) 構成要件A,D,Eの充足(文言侵害)(争点1)(2) 均等侵害の成否(争点2)(3) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限(争点3)(4) 損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(構成要件A,D,Eの充足(文言侵害))について〔原告の主張〕(1) 構成要件A,Eについて構成要件A,D,Eのクレーム文言は,「表面に…グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」というものであり,●(省略)●を排除するものではない。 被告製品における重合体粒子の懸濁重合のプロセス又はシード重合のプロセスにおいて添加されるポリビニルアルコールは,α水素が引き抜かれてラジカル活性化し,重合体粒子の他の構成成分であるジビニルベンゼン等と化学結合する。このような化学結合をしていないポリビニルアルコールは,洗浄処理中に水に溶解して洗い流されるものであるから,●(省略)●被告製品においては,少なくとも一部のポリビニルアルコールは,重合体粒子の他 の構成成分と化学結合し,又は徹底的な洗浄処理によっても除去困難な態様で重合体粒子に取り込まれ,分離困難に一体化した重合体となっているといえる。 このように,被告製品における重合体粒子の●(省略)●は,重合体粒子の他の構成成分と化学結合し,又は少なくとも除去困難な態様で重合体粒子に取り込まれて分離困 体化した重合体となっているといえる。 このように,被告製品における重合体粒子の●(省略)●は,重合体粒子の他の構成成分と化学結合し,又は少なくとも除去困難な態様で重合体粒子に取り込まれて分離困難に一体化しているため,重合体粒子を構成する重合体である。したがって,被告製品の重合体粒子の●(省略)●は重合体粒子の「表面」に該当し,構成要件A,Eを充足する。 被告は,被告製品における●(省略)●であるから,被告製品は,重合体粒子の「表面に」グラフト共重合体鎖を導入するものではないと主張するが,ジビニルベンゼン等の単量体を懸濁重合又はシード重合する際に添加されたポリビニルアルコールのα水素が,重合開始剤及びラジカル活性化した単量体に引き抜かれて単量体のビニル基等と化学結合することは明らかである。 (2) 構成要件D,Eについて当業者の技術常識及び本件明細書の記載内容からすると,重合体粒子の表面にグラフト共重合体鎖を「導入」するとは,重合体粒子の表面を幹とするグラフト重合処理(当該重合体粒子を生成した後の後処理)により,当該重合体粒子の表面から延びる鎖状のグラフト重合体を形成する(グラフト重合法により反応基点に共重合体鎖を化学結合させる)ことを意味する。当業者の技術常識において,重合体粒子の表面に導入されたグラフト鎖は,重合体粒子の三次元網目構造とは区別される。 また,本件明細書の発明の詳細な説明には,重合体粒子の生成プロセスにおいて重合体粒子に一体的に取り込まれたポリビニルアルコールに対するグラフト重合処理,更には中間物質(メタクリロイルイソシアナート)を介したグラフト鎖の結合が,重合体粒子の表面にグラフト鎖を「導入」するという技術的範囲に含まれることが記載されている。 したがって,構成要件D,Eにおける「グラ ルイソシアナート)を介したグラフト鎖の結合が,重合体粒子の表面にグラフト鎖を「導入」するという技術的範囲に含まれることが記載されている。 したがって,構成要件D,Eにおける「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」には,重合体粒子の主たる構成成分●(省略)●構成,更には生成された重合体粒子に後の工程で中間物質を導入し,この中間物質を幹としてグラフト重合処理をする構成が含まれるといえる。 よって,●(省略)●重合体粒子に化学結合した,又は分離困難に一体化して取り込まれた上記のポリビニルアルコールを基点としてグラフト重合処理を行い鎖状のグラフト重合体を形成する被告製品の構成は,表面に「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」に該当し,構成要件A,D,Eを充足する。 〔被告の主張〕(1) 構成要件A,D,Eについて本件明細書の記載からすると,重合体粒子の表面にグラフト共重合体鎖が導入されるというのは,重合体粒子の表面に,共重合体からなるグラフト鎖が重合体粒子のポリマー鎖を幹としてグラフト共重合していることを意味するものであり,「表面に…グラフト共重合体鎖を導入」するという工程を経て得られる構造的特徴を有する物として特定された物(液晶用スペーサー)が本件特許発明の発明物である。このような工程をもって特定される発明物は,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの一種であるが,物に関する発明であることからその工程の差異は技術的範囲には影響せず,当該工程の結果得られた構造として発明物が定義されていると理解すべきである。 また,「表面に…グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子からなることを特徴とする液晶用スペーサー」という本件特許発明の特許請求の範囲の文言からすれば,グラフト共重合体鎖を導入する対象が「重合体粒子」であ ,「表面に…グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子からなることを特徴とする液晶用スペーサー」という本件特許発明の特許請求の範囲の文言からすれば,グラフト共重合体鎖を導入する対象が「重合体粒子」であり,その場所が「重合体粒子の表面」であることは明らかである。構成要件Eの「重合体粒子」は,所定の構成(構成要件B及びC)を備えるグラフト共重合体鎖が導入される対象物である。 そして,特許請求の範囲には,「グラフト共重合体鎖を導入」すること以外の処理を重合体粒子に対して行うことは何ら規定していないから,構成要件Eの「重合体粒子」は,表面処理や被覆物などを備えないもので,直接「グラフト共重合体鎖を導入」する対象となる重合体粒子を指称するものであり,本件明細書に記載されているとおり,グラフト共重合体鎖と重合体粒子とは共有結合により直接結合している。 原告は,グラフト鎖について,幹となる重合体(幹重合体)を生成した後,更に当該幹重合体に新たな別の重合処理により付加された鎖状重合体の分岐構造を意味し,製造方法により限定されたものであると主張するが,グラフト鎖は重合反応の結果として生成されたグラフト共重合体における分岐構造の名称であり,製造方法(工程)を限定するものではない。 (2) 被告製品は構成要件A,D,Eを充足しない被告製品においては,●(省略)●このように,被告製品においては,●(省略)●母粒子たるジビニルベンゼンを主成分とする架橋重合体粒子ではない。 したがって,被告製品は,架橋重合体粒子●(省略)●にすぎず,母粒子である「重合体粒子」の「表面に」「グラフト共重合体鎖を導入した」ものではないから,構成要件A,D,Eを充足しない。 なお,本件特許発明の発明物である液晶用スペーサーは,構成要件Eの「重合体粒子」の表面 「重合体粒子」の「表面に」「グラフト共重合体鎖を導入した」ものではないから,構成要件A,D,Eを充足しない。 なお,本件特許発明の発明物である液晶用スペーサーは,構成要件Eの「重合体粒子」の表面にグラフト共重合体鎖を導入して製造した結果物であるため,グラフト共重合体鎖が導入される対象物,すなわち構成要件Eの「重合体粒子」ではない。したがって,被告製品において,●(省略)●は本件特許発明の技術的範囲の属否とは関係ない(そもそも,被告製品において,架橋重合体粒子●(省略)●こともない。)。 2 争点2(均等侵害の成否)について〔原告の主張〕 仮に,「表面に」(構成要件A)又は「導入する」(構成要件D)が減縮解釈され,●(省略)●へのグラフト共重合体鎖の導入が,文言上,本件特許発明の技術的範囲に属しないとしても,以下のとおり,被告製品は本件特許発明の構成と実質的に同一である(均等侵害)。均等論の要件のうち被告が争うのは,非本質的部分の要件,置換可能性の要件及び置換容易性の要件のみである。 (1) 非本質的部分の要件構成要件A及びDに関して,本件特許発明の本質的部分は,重合体粒子に所定の共重合体鎖をグラフト重合処理により結合させ,もって高い重合効率で当該共重合体鎖(グラフト鎖)を形成し,当該共重合体鎖(グラフト鎖)における所望のアルキル濃度を達成し,効率良くスペーサーと液晶の界面に所望の濃度の長鎖アルキル基を存在させることにある。よって,グラフト鎖が,被告が主張する重合体粒子の表面(ポリビニルアルコールを除く架橋重合体粒子の構成成分(ジビニルベンゼンを主成分とする))に直接結合しているか,他の架橋重合体粒子の構成成分と分離困難に一体化したポリビニルアルコールを介して結合しているかは本件特許発明の本質的 橋重合体粒子の構成成分(ジビニルベンゼンを主成分とする))に直接結合しているか,他の架橋重合体粒子の構成成分と分離困難に一体化したポリビニルアルコールを介して結合しているかは本件特許発明の本質的部分ではない。 被告製品は上記の本件特許発明の本質的な技術的特徴点を備えている。 (2) 置換可能性の要件被告製品において,重合体粒子生成中に添加されたポリビニルアルコールは,除去困難に重合体粒子と一体化しており,グラフト共重合体鎖をポリビニルアルコールを幹としてグラフト結合させても,ポリビニルアルコール以外の重合体粒子の構成成分を幹としてグラフト結合させる場合と同様に,スペーサー粒子表面に所望の濃度の長鎖アルキル基を効果的に導入する目的を達成することができ,作用,効果に差異はなく,置換可能である。 (3) 置換容易性の要件当業者において,重合体粒子と一体化して重合体粒子の表面に存在する官能基のうちポリビニルアルコールのアルコール基に着目し,ポリビニルアル コール以外の重合体粒子の構成成分を幹としてグラフト結合させる構成に代えて,ポリビニルアルコールを幹としてグラフト結合させる構成を採用することは,容易に想到可能であった。 〔被告の主張〕(1) 非本質的部分の要件本件特許発明の技術的課題は,重合体微粒子の表面に所定濃度の長鎖アルキル基を導入することが困難であったことである。本件特許発明は,この技術的課題を解決するために,架橋重合体微粒子に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体及び重合開始剤を含浸させることに代えて,①長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上と(該重合性ビニル単量体と共重合可能な)他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上とからなる共重合体を,②グラフト鎖として に代えて,①長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上と(該重合性ビニル単量体と共重合可能な)他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上とからなる共重合体を,②グラフト鎖として,グラフト共重合する対象である重合体粒子のポリマー鎖を幹としてグラフト共重合させることとしたものである。 したがって,本件特許発明の本質的部分は,上記課題を解決するという効果の具体的な動作原理,つまり本件特許発明に固有の解決原理である「長鎖アルキル基を含む共重合体をグラフト重合により重合体粒子(母粒子)を構成するポリマー鎖を幹として結合させ,重合体粒子(母粒子)とグラフト鎖を一体化させる点」にあることは明らかである。 これに対し,被告製品は,長鎖アルキル基を含む共重合体をグラフト重合により重合体粒子(母粒子)を構成するポリマー鎖を幹として結合させておらず,重合体粒子(母粒子)とグラフト鎖を一体化させていない点で異なっている。この異なる部分は本件特許発明の本質的部分であるから,均等論の成立要件を満たさないことは明らかである。 (2) 置換可能性の要件被告製品の製造過程において●(省略)●のであって,●(省略)●から, 一体化を前提とする置換可能性に関する原告の主張は否認ないし争う。 被告製品において長鎖アルキル基をスペーサー粒子表面に効果的に存在させるように構成することができるのは,被告が,●(省略)●という方法を新たに採用することによって,●(省略)●からであり,原告が主張するように,●(省略)●同じ目的,効果を奏するとはいえない。 (3) 置換容易性の要件重合体粒子を製造する際にポリビニルアルコールを分散安定剤として添加することは広く行われているが,液晶との界面にポリビニルアルコールが存在すると垂直配 はいえない。 (3) 置換容易性の要件重合体粒子を製造する際にポリビニルアルコールを分散安定剤として添加することは広く行われているが,液晶との界面にポリビニルアルコールが存在すると垂直配向性能を阻害することが知られているため,液晶用スペーサーの製造過程における重合体粒子の製造において,ポリビニルアルコールを分散安定剤として用いた場合にはこれを洗浄して除去することが技術常識であった。 被告は,●(省略)●技術を開発したものであり,被告は,当該技術を発明として特許出願し特許登録を得ている(甲6の3)。 したがって,●(省略)●被告製品における技術は,被告製品の製造開始時点において,当業者には容易に推考することができないものであった。 3 争点3(特許法104条の3第1項の権利行使の制限)について(1) 乙7の2刊行物の記載に基づく新規性欠如(無効理由1)〔被告の主張〕ア本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平5-232480号公報(乙7の2。公開日:平成5年9月10日。以下,この刊行物を「乙7の2刊行物」という。)には,液晶用スペーサーであって,重合体粒子表面にグラフト重合法によって共有結合された付着層を備え,その付着層が,長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体(①2-エチルヘキシルアクリレート,②シクロヘキシルアクリレート,③2-エチルヘキシルメタクリレート,④ステアリルメタクリレート,⑤ラウリルメタクリレート)と,こ れらと共重合可能な他の重合性ビニル単量体(メチルアクリレート,エチルアクリレート,n-ブチルアクリレート等)との共重合体であるものが開示されている。これは,構成要件A~Fの全ての構成を備え,本件特許発明と同一のものである。 したがって,本件特許は,特許法29条1 アクリレート,n-ブチルアクリレート等)との共重合体であるものが開示されている。これは,構成要件A~Fの全ての構成を備え,本件特許発明と同一のものである。 したがって,本件特許は,特許法29条1項3号違反を理由として特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。 イ乙7の2刊行物の段落【0010】には,付着層として「上記単量体(被告注:列挙された33種類の単量体のことであり,長鎖アルキル基を有するものが5種類含まれている。)の二種以上の共重合体」を用いることが明記されおり,列挙された全ての単量体の二種以上を組み合わせた共重合体のそれぞれが付着層として用いられることが記載されている。 したがって,乙7の2刊行物には,共重合される単量体について,「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」というグループ分けとそのグループ分けに基づいた組合せが具体的に記載されていないにすぎず,段落【0010】に列挙された「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」に該当する単量体と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」との組合せによる共重合体を付着層として用いることが開示されている。 〔原告の主張〕乙7の2刊行物には,段落【0010】に列記された単量体群の中から,本件特許発明の「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」に相当する2-エチルヘキシルアクリレート,2-エチルヘキシルメタクリレート,ステアリルメタクリレート又はラウリルメタクリレート(シクロヘキシルアクリ レートは長鎖アルキル基を含まない。)の単量体を選択した上 ルアクリレート,2-エチルヘキシルメタクリレート,ステアリルメタクリレート又はラウリルメタクリレート(シクロヘキシルアクリ レートは長鎖アルキル基を含まない。)の単量体を選択した上で,更にこれらの単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体とを組み合わせてグラフト共重合体鎖を構成するという技術的思想は開示されておらず,構成要件B及びC所定の単量体からなる共重合体についての記載は見当たらない。 また,乙7の2刊行物記載の発明は,付着層が剥離しやすいという従前の課題に対して,共有結合により粒子表面の付着層を剥離し難くしたものであるのに対し,本件特許発明は,液晶用スペーサーの周りの液晶の異常配向を抑制し,液晶パネル点灯時の光抜けを防止し,これにより液晶パネルのコントラストが向上し表示品質を向上させる等の作用効果を奏し得るものであることから,本件特許発明と乙7の2刊行物記載の発明とは,解決すべき課題も,課題解決の手段も相違しており,乙7の2刊行物には本件特許発明の技術的思想が記載されているとはいえない。 よって,本件特許発明は乙7の2刊行物記載の発明と同一ではない。 (2) 乙7の2刊行物を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2)〔被告の主張〕仮に,乙7の2刊行物には,構成要件B及びCに係る「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」との組合せが開示されていると認められないとしても,本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である乙7の2刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許法29条2項違反を理由として特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により 記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許法29条2項違反を理由として特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。 ア本件特許発明と乙7の2刊行物に記載された発明との相違点本件特許発明における重合体粒子表面に導入される共重合体は,「長鎖 アルキル基を有する重合性ビニル単量体」と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」との組合せからなるものである。 これに対し,乙7の2刊行物には,液晶用スペーサーであって,重合体粒子表面に共有結合(グラフト重合反応による)によって結合された付着層を有する構造が記載され,その付着層は,メチルアクリレート,2-エチルヘキシルメタクリレート等の重合可能な単量体の単独重合体または上記単量体の二種以上の共重合体であることが記載されているが,重合体粒子の表面に共有結合する共重合体が「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」との組合せからなるものであることは開示されていない。 したがって,本件特許発明と乙7の2刊行物に記載された発明との相違点は,乙7の2刊行物には,重合体粒子表面のグラフト共重合体鎖が,「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」と「該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体」との組合せからなるものであることが開示されていない点である。 イ相違点についての検討本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平7-333621号公報(乙7の3。公開日:平成7年12月22日。以下,この刊行物を「乙7の ない点である。 イ相違点についての検討本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平7-333621号公報(乙7の3。公開日:平成7年12月22日。以下,この刊行物を「乙7の3刊行物」という。)には,重合体微粒子表面に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種とからなる共重合体をグラフトさせて得られた液晶表示用スペーサーが記載されている。 乙7の2刊行物記載の発明と乙7の3刊行物記載の発明は,いずれも液晶用スペーサーという全く同一の,かつ,限定的な技術分野に属する発明であるから,乙7の2刊行物記載の発明に乙7の3刊行物記載の発明を適用することの動機付け,示唆がある。 液晶用スペーサーにおいて,スペーサー周辺での液晶分子の配向乱れによる問題を解消するためにスペーサーの表面を垂直配向処理すること,及び長鎖アルキル基を有する垂直配向処理剤は,本件特許の出願時において周知であった。乙7の2刊行物記載の液晶用スペーサーも乙7の3刊行物記載の液晶用スペーサーも,液晶用スペーサーである以上,当然に,上記配向乱れによる問題を解消する必要性を有している。そして,乙7の3刊行物記載の発明は当該問題を解消する技術を開示している。したがって,両発明とも同一の技術的課題を有しているから,乙7の3刊行物に記載された単量体の組合せを,乙7の2刊行物の段落【0010】の付着層の形成における単量体の組合せの選択に適用することは,当業者には極めて自然であり,当然のことである。 乙7の3刊行物記載の発明の分散安定剤となる段落【0009】に列挙された疎水性単量体(1)及び段落【0010】に列挙された親水性単量体(2)からなる共重合体は,いずれも配向基板に対する付 である。 乙7の3刊行物記載の発明の分散安定剤となる段落【0009】に列挙された疎水性単量体(1)及び段落【0010】に列挙された親水性単量体(2)からなる共重合体は,いずれも配向基板に対する付着力を有する付着層になることは明らかである。 したがって,乙7の3刊行物記載の発明の疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)からなる共重合体を乙7の2刊行物記載の発明に適用し,乙7の2刊行物の段落【0010】に列挙された単量体の中から,長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の組合せを選択することは当業者にとって容易である。 以上より,本件特許発明は,乙7の2刊行物記載の発明に乙7の3刊行物記載の発明を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。 〔原告の主張〕ア乙7の2刊行物記載の発明は,「従来の液晶スペーサにあっては粒子表 面から付着層が剥離し易く,剥離した付着層は液晶側に混入して液晶の性能を妨害すると云う問題点があった。」(段落【0003】)という従来の課題を踏まえて「付着層」を設けるものである。 他方,乙7の3刊行物記載のスペーサーは,式「RO-」で表わされる特定の化学構造の疎水性基と,式「HO-(R1O)m-」で表わされる特定の化学構造の親水性基とを表面に有する微粒子であり(請求項1及び5),乙7の3刊行物記載の発明は,これら特定の化学構造を有する疎水性基と親水性基とを組み合わせてスペーサーとすることにより,スペーサー周り,又はスペーサー間での液晶の配向異常の防止効果を奏することを目的とするものである。むしろ,乙7の3刊行物は,スペーサー表面を長鎖アルキルシラン等で処理する方法(特開平4-177324号,特開平5-2 又はスペーサー間での液晶の配向異常の防止効果を奏することを目的とするものである。むしろ,乙7の3刊行物は,スペーサー表面を長鎖アルキルシラン等で処理する方法(特開平4-177324号,特開平5-232478号)等によると配向強制力が強すぎるという問題点,すなわち表面処理層に垂直配向成分が存在することの問題点を提示している(段落【0004】)。 このように,両発明は異質の目的を有するものであり,両発明を組み合わせる動機付けはない。 イ乙7の3刊行物記載の発明における疎水性単量体(1)と親水性単量体(2)の共重合体は,懸濁重合の分散安定剤として使用されるものであり,グラフト重合処理により母粒子である重合体粒子表面に共重合体の鎖として形成されるものではなく,乙7の3刊行物記載のスペーサーは長鎖アルキル基を含むグラフト共重合体鎖を表面に有する構成とはならない(親水性基は重合体粒子表面外に引き出されるが,疎水性基である長鎖アルキル基は重合体粒子内に埋没する。)。 また,乙7の3刊行物の段落【0029】では,懸濁重合のプロセスにおける微粒子の原料となるモノマーと分散安定剤のアンカーとの化学結合をもって「グラフト」と称しているが,この「グラフト」は乙7の2刊行 物記載の発明における粒子表面を幹とするグラフト重合法とは異なる。分散安定剤に要求される機能(両媒性)と,粒子表面を被覆する付着層に要求される機能は異質であり,乙7の3刊行物記載の分散安定剤の構成を乙7の2刊行物記載の粒子表面を被覆する付着層に適用することは容易に想起されない。 ウよって,乙7の2刊行物記載の発明に乙7の3刊行物記載の発明を組み合わせて本件特許発明を容易に想到することはできない。 (3) 乙7の3刊行物の記載に基づく新規性欠如(無効 れない。 ウよって,乙7の2刊行物記載の発明に乙7の3刊行物記載の発明を組み合わせて本件特許発明を容易に想到することはできない。 (3) 乙7の3刊行物の記載に基づく新規性欠如(無効理由3)〔被告の主張〕ア本件特許出願前に頒布された刊行物である乙7の3刊行物には,重合体微粒子表面に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種とからなる共重合体をグラフトさせて得られた液晶表示用スペーサーが開示されている。これは,構成要件A~Fの全ての構成を備え,本件特許発明と同一のものである。 したがって,本件特許は,特許法29条1項3号違反を理由として特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。 イ乙7の3刊行物に記載された実施例2(段落【0037】)では,モノマーとしてジビニルベンゼン(架橋重合体微粒子を形成するためのラジカル重合可能な重合性単量体に相当),分散安定剤としてステアリルビニルエーテル(長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体)/ヒドロキシエチルメタクリレート(ステアリルビニルエーテルと共重合可能な他の重合性ビニル単量体)共重合体を用いて懸濁重合を行う方法によって液晶用スペーサーを得ている。したがって,乙7の3刊行物には,重合体粒子表面 に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種とからなる共重合体(ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートとからなる共重合体)をグラフトさせて得られた液晶表示用スペーサーが具体的に 体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種とからなる共重合体(ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートとからなる共重合体)をグラフトさせて得られた液晶表示用スペーサーが具体的に記載されている。 本件特許発明と上記の乙7の3刊行物記載の発明を対比すると,本件特許発明では,重合体粒子表面に「グラフト共重合体鎖を導入した」と規定されているのに対して,乙7の3刊行物記載の発明では,重合体粒子表面にグラフトされていることは明らかであるが,「グラフト共重合体鎖を導入した」といえるか否かという点で一応相違しているともいえる。 しかしながら,本件特許発明における重合体粒子表面にグラフト共重合体鎖が導入された液晶用スペーサーと,乙7の3刊行物に記載された表面に共重合体をグラフトさせて得られた液晶用スペーサーは,いずれも「共重合体鎖」が重合体粒子表面に導入されているという点で同じ構造であって,液晶用スペーサーという「物」としては実質的に同一であり,相違点はない。 〔原告の主張〕ア本件特許発明の構成本件特許発明において,構成要件B及びC所定の重合体からなるグラフト共重合体鎖は,重合体粒子(構成要件E)の表面(構成要件A)を幹とするグラフト重合処理(重合体粒子を生成した後の後処理)により生成される前記表面から延びる鎖状重合体(構成要件D)であり,グラフト共重合体鎖は,重合体粒子の三次元網目構造とは区別される。 イ乙7の3刊行物記載の発明の構成(ア) 乙7の3刊行物の特許請求の範囲の請求項5は,疎水性単量体(1)と,疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)以外のラジカル重合可 能な重合性単量体とを懸濁重合する際に,分散安定剤として,親水性単量体(2)を構成成分とする共重 疎水性単量体(1)と,疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)以外のラジカル重合可 能な重合性単量体とを懸濁重合する際に,分散安定剤として,親水性単量体(2)を構成成分とする共重合体を用いる製造プロセスを特許発明の構成要件として包含している。この製造プロセスでは,疎水性単量体(1)の疎水性基(アルキル基)は重合体粒子の内部にしか存在し得ず,乙7の3刊行物記載の発明における「表面」とは重合体粒子内部の表層部を意味するにすぎない。 (イ) 乙7の3刊行物の特許請求の範囲の請求項5の「疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)の両方を構成成分とする共重合体」は,母粒子である重合体粒子の表面にグラフト重合処理により導入されるのではなく,重合体粒子を生成する際の分散安定剤として添加されるものである。 重合体粒子を生成する際,かかる分散安定剤は,疎水性単量体(1)構成部が油滴又はシードの内側を向き,親水性単量体(2)構成部が油滴の外側(水との界面)を向いた状態で油滴が安定し,水に分散することができる。特に,疎水性基である長鎖アルキル基は,水に弾かれ油滴に馴染むため油滴の内部に埋没する。懸濁重合においては,このようにして安定し,水に分散した油滴の内部にのみ重合開始剤が存在し,過熱されることにより油滴の内部で重合反応が始まり,油滴が三次元網目構造となり重合体粒子が生成される。この際,疎水性単量体(1)は油滴の内部で他の重合体粒子構成成分と重合するが,乙7の3刊行物ではこの重合をもってグラフトと称している(段落【0029】)。このようにして重合体粒子と一体化した分散安定剤は,親水性単量体(2)構成部分のみが重合体粒子表面から延びる鎖状体を構成する可能性があり,疎水性単量体(1)は重合体粒子の三次元網目構造を構成することになる にして重合体粒子と一体化した分散安定剤は,親水性単量体(2)構成部分のみが重合体粒子表面から延びる鎖状体を構成する可能性があり,疎水性単量体(1)は重合体粒子の三次元網目構造を構成することになる。 (ウ) 乙7の3刊行物の実施例2(段落【0037】)の分散安定剤であるステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体(モル比1:9)において,疎水性単量体(1)に相当するステアリ ルビニルエーテル中のステアリル基(炭素数18の長鎖アルキル基)は,水に弾かれ,ジビニルベンゼンと馴染むことにより油滴の内部に埋没し,親水性単量体(2)に相当するヒドロキシエチルメタクリレートのみが水中に引き出される。油滴の内部で重合反応が始まると,ステアリル基の水素が開裂した過酸化ベンゾイル又はジビニルベンゼンラジカル(共に油滴の中にのみ存在する)に引き抜かれ,ジビニルベンゼンと重合する。このようにして生成される重合体粒子の表面から延びる重合体鎖には,親水性単量体(2)に相当するヒドロキシエチルメタクリレートのみが存在し,ステアリル基は存在しない。 疎水性部分が油滴側を向いてアンカーとなり,親水性部分が水側を向いた状態で安定するという分散安定剤の基本的機能,水に弾かれて油滴に引き寄せられるという長鎖アルキル基の性質に鑑み,重合体粒子の表面から延在する鎖に長鎖アルキル基を有する単量体(疎水性単量体(1))が含まれているとは考えられない(偶発的に含まれていても全体として無視できる分量である。また,仮に長鎖アルキル基を有する単量体の長鎖アルキル基部分が表面に出現したとしても,本件特許発明のグラフト共重合体鎖として長鎖アルキル基が導入される構成とは相違する。)。 このように,乙7の3刊行物記載の発明においては,重合体粒子 体の長鎖アルキル基部分が表面に出現したとしても,本件特許発明のグラフト共重合体鎖として長鎖アルキル基が導入される構成とは相違する。)。 このように,乙7の3刊行物記載の発明においては,重合体粒子の表面から延在する鎖は長鎖アルキル基を有しない単量体(親水性単量体(2))で構成され,長鎖アルキル基を有する単量体(疎水性単量体(1))は重合体粒子の表層部で三次元網目構造に組み込まれている。 ウ本件特許発明と乙7の3刊行物記載の発明との相違点したがって,本件特許発明と乙7の3刊行物記載の発明は,以下の点で相違し,本件特許発明は乙7の3刊行物記載の発明と同一ではない。 ①本件特許発明ではグラフト鎖と幹とのグラフト分岐点が重合体粒子の表面にあるのに対し,乙7の3刊行物記載の発明では分散安定剤とその他 の重合体粒子構成成分とが共有結合している箇所が重合体粒子の内部にある点②本件特許発明では長鎖アルキル基が重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在するグラフト鎖中に存在するのに対し,乙7の3刊行物記載の発明では長鎖アルキル基が重合体粒子の内部に偏在し,分散安定剤中の重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在する箇所には長鎖アルキル基は実質的に存在しない点③本件特許発明では重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在するグラフト鎖が長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上と該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上との共重合体であるのに対し,乙7の3刊行物記載の発明では分散安定剤中の重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在する箇所が共重合体であるかのか否か明らかでない点④本件特許発明では重合体粒子の表面にグラフト鎖を導入するプロセスによりグラフト共 明では分散安定剤中の重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在する箇所が共重合体であるかのか否か明らかでない点④本件特許発明では重合体粒子の表面にグラフト鎖を導入するプロセスによりグラフト共重合体鎖が形成されるため,当該グラフト共重合体鎖中のアルキル基濃度が的確に調整されているのに対し,乙7の3刊行物記載の発明では分散安定剤中の長鎖アルキル基を重合体粒子外部に引き出すのが困難であり,仮に引き出せたとしても濃度を調整することは不可能である点(4) 乙7の3刊行物を主引用例とする進歩性欠如(無効理由4)〔被告の主張〕仮に,本件特許発明と乙7の3刊行物記載の発明に相違点が認められるとしても,本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である乙7の3刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許法29条2項違反を理由として特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項によ り,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することができない。 ア本件特許発明と乙7の3刊行物記載の発明との相違点仮に相違点があるとすれば,本件特許発明は重合体粒子を形成してからグラフト鎖を導入する(特許請求の範囲には全く記載されていない事項である。)のに対し,乙7の3刊行物記載の発明は,あらかじめ用意された共重合体が重合体粒子の形成に当たり重合体粒子表面にグラフトされる点が相違点である。 イ相違点について乙7の3刊行物記載の発明におけるグラフト重合法は,共重合体(長鎖アルキル基を有する単量体とこれと共重合可能な単量体からなる共重合体)をあらかじめ分散剤として用意しておき,重合体粒子を例えば懸濁重合法により 行物記載の発明におけるグラフト重合法は,共重合体(長鎖アルキル基を有する単量体とこれと共重合可能な単量体からなる共重合体)をあらかじめ分散剤として用意しておき,重合体粒子を例えば懸濁重合法により生成する際にこれを分散剤として用いて架橋重合体粒子の表面にグラフト重合するものであるところ,このグラフト重合法に代えて,乙7の2刊行物に開示された方法,例えば,架橋重合体粒子をあらかじめ析出重合法やシード重合法により得た後,グラフト重合法により共重合体(長鎖アルキル基を有する単量体とこれと共重合可能な単量体からなる共重合体)を粒子表面に共有結合させる(グラフト鎖として共有結合させる)方法を採用することにより,相違点に係る構成に至る。 乙7の3刊行物記載の発明に乙7の2刊行物に開示された方法を適用する動機付け等があることは上記(2)のとおりであり,当業者は容易に適用することができたといえる。 以上より,本件特許発明は,乙7の3刊行物記載の発明に乙7の2刊行物に開示された技術を組み合わせれば,当業者が容易に発明をすることができたものである。 〔原告の主張〕 ア被告は,あらかじめ枝となるグラフト鎖を生成した後それを幹にグラフトするグラフト重合処理が周知であったことを根拠に,乙7の3刊行物記載の発明の分散安定剤を,重合体粒子生成後にグラフト重合処理により当該重合体粒子の表面にグラフトさせて構成要件B及びC所定の重合体からなるグラフト共重合体鎖とすることは容易に想到可能であった旨主張する。 しかしながら,分散安定剤なしに懸濁重合することは不可能であり,懸濁重合に必須の分散安定剤を懸濁重合終了後に使用するのが突飛な発想であることは明らかである。また,懸濁重合終了後(重合体粒子生成後)に分散安定剤を重合体粒子に導入する 重合することは不可能であり,懸濁重合に必須の分散安定剤を懸濁重合終了後に使用するのが突飛な発想であることは明らかである。また,懸濁重合終了後(重合体粒子生成後)に分散安定剤を重合体粒子に導入する必要性はない(液滴の安定,分散を確保する必要性はない。)。 よって,本件特許発明は乙7の3刊行物記載の発明に乙7の2刊行物記載の発明を組み合わせて容易に想到することはできない。 イ乙7の2刊行物記載の発明と乙7の3刊行物記載の発明とを組み合わせる動機付けがないことは上記(2)と同様である。 4 争点4(損害額)について〔原告の主張〕被告は,平成21年度前半期(平成20年11月1日から平成21年4月30日まで)において,少なくとも被告製品を280㎏製造,販売した。 原告における被告製品との競合品である本件特許発明の実施品の平成21年度前半期の平均売上単価(円/g)は少なくとも2400円であり,その利益率は少なくとも7.5%である。 したがって,被告による本件特許権の侵害行為による原告の損害額は,少なくとも5040万円であり(280,000g×2,400 円×0.075=5040 万円。特許法102条1項),原告は,被告に対し,このうちの5000万円の支払を請求する。 〔被告の主張〕 原告の主張は否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(構成要件A,D,Eの充足(文言侵害))について(1) 構成要件A,D,Eの解釈アまず,構成要件Aの「表面に」について検討する。 本件特許発明は,「スペーサー表面に導入した長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖によって液晶分子をスペーサー表面に垂直配向させることが出来るため,液晶用スペーサーの周りの液晶の異常配向を抑制し,液晶パ 発明は,「スペーサー表面に導入した長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖によって液晶分子をスペーサー表面に垂直配向させることが出来るため,液晶用スペーサーの周りの液晶の異常配向を抑制し,液晶パネル点灯時の光抜けを防止する。これによって液晶パネルのコントラストが向上し表示品質を向上させることが出来る。」という効果を奏するものである(本件明細書の【0032】)。 上記効果からすると,本件特許発明は,液晶用スペーサーとして使用する際に,液晶との界面となるスペーサーの表面に長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖が存在することによって,スペーサー周りの液晶の異常配向を抑制するものといえる。したがって,構成要件Aの「表面」は「スペーサーの表面」を意味すると解するのが相当である。 そして,構成要件Aの「表面に」は,構成要件Dの「導入した」に係るものであるから,グラフト共重合体鎖が導入される位置を示すものと解すべきである。 イ次に,構成要件Dの「グラフト共重合体鎖を導入した」について検討する。 本件特許発明は,液晶用スペーサーという物の発明であり,その特許請求の範囲においてグラフト共重合体鎖を導入する方法について特定の方法を規定するものではないから,特許請求の範囲は結果物の構成や形状で特定されると解すべきであり,本件明細書にはグラフト共重合体鎖の製造方法についての記載(【0005】~【0013】等)があるが,当該製造 方法に限定されるものではない。本件明細書には,「導入」という用語の技術的意義を明らかにする記載はないが,発明の効果として,①重合体鎖の長鎖アルキル基濃度は,グラフト共重合体鎖を導入する際に使用する長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の濃度によって直接的に容易に調節することが出来ること,②重合性ビニル単 果として,①重合体鎖の長鎖アルキル基濃度は,グラフト共重合体鎖を導入する際に使用する長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の濃度によって直接的に容易に調節することが出来ること,②重合性ビニル単量体や重合開始剤は稀釈されることなく,高いグラフト重合効率が得られること,③長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖と重合体粒子とは共有結合によって結合されているので,長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖を有するグラフト共重合体鎖の層と重合体粒子とは一体であり,該グラフト共重合体鎖の層が重合体粒子から剥離することはないこと,④重合体粒子表面のグラフト共重合体鎖の長鎖アルキル基に対して液晶分子が垂直に規則正しく配列するため,液晶スペーサー近傍の液晶分子の配向乱れが抑制されることが記載されている(【0014】)。そして,本件明細書には,物の発明(本件特許発明)と製造方法の発明(請求項2,3)についての記述が含まれるところ,上記①及び②はいずれも製造方法の発明に関する効果であり,物の発明である本件特許発明に関する効果は上記③及び④であると認められる。また,液晶用スペーサーの表面に長鎖アルキル基を存在させることによってスペーサー表面での液晶分子の垂直配向を促進させることができるため(本件明細書の【0002】),上記④の効果は,所定のグラフト共重合体鎖をスペーサーの「表面に」導入することの効果であり,構成要件Aによるものと認められる。本件特許発明が上記③の効果(グラフト共重合体鎖の層が重合体粒子から剥離することがないこと)を奏するのは,「グラフト共重合体鎖と重合体粒子とは共有結合によって結合されている」ためであるところ,これは,構成要件D,Eの「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」と技術的に同義であると解される。そして,グラフト重合とは「 体鎖と重合体粒子とは共有結合によって結合されている」ためであるところ,これは,構成要件D,Eの「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」と技術的に同義であると解される。そして,グラフト重合とは「幹となる高分子物質に任意の高分子物質の枝を接ぎ木する 共重合反応」(乙22)をいうことからすると,構成要件Dの「グラフト共重合体鎖を導入した」とは,重合体粒子の構成成分を幹として共重合体からなる枝鎖が化学結合していることを意味すると解するのが相当である。 したがって,構成要件D,Eの「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」とは,その構成成分を幹として共重合体からなる枝鎖が化学結合している重合体粒子をいうと解され,重合体粒子は,重合体を主たる構成成分とする粒子であり,重合体そのものではないから,構成要件Eの「重合体粒子」は,重合体を主たる構成成分とし粒子として一体化したものを意味すると解するのが相当である。 被告は,構成要件Eの「重合体粒子」は,表面処理や被覆物などを備えないもので,直接「グラフト共重合体鎖を導入」する対象となる重合体粒子を指称するものであると主張する。しかし,本件明細書には,懸濁重合等により得た重合体粒子に表面処理を施したものや被覆物等を備えたものを「重合体粒子」から除外するような記載は認められない。かえって,本件明細書において,「重合体粒子」という用語は,「表面に所定の官能基を有する重合体粒子」(【0005】)のように表面処理等がされていない母粒子を意味するものとして使用されている部分がある一方,「グラフト一次側鎖を形成した重合体粒子」(【0027】),「E-1」,「F-1」等の実施例において得られたスペーサー試料(【表1】)のように表面処置等がされている重合体粒子を意味するものとして使用されている部 側鎖を形成した重合体粒子」(【0027】),「E-1」,「F-1」等の実施例において得られたスペーサー試料(【表1】)のように表面処置等がされている重合体粒子を意味するものとして使用されている部分もあり,さらに,「母粒子とは表面にグラフト共重合体鎖が導入されていない重合体粒子を言う」(【表1】の脚注)との記載のように,表面処理等がされていない母粒子と重合体粒子が明確に区別して使用されている部分もあり,被告が主張する意味に限定して用いられていないことは明らかである。また,表面処理を施す前の重合体粒子や被覆物等を備えない重合体粒子の表面にグラフト共重合体鎖が存在し,当該箇所に長鎖アルキ ル基が存在したとしても,液晶との界面となる部分であるスペーサーの表面に長鎖アルキル基が存在しなければ,上記アで述べたスペーサー周りの液晶の異常配向を抑制するという本件特許発明の効果を奏することはできない。したがって,構成要件Eの「重合体粒子」を表面処理や被覆物等を備えないものに限定する被告の主張には理由がない。 (2) 被告製品の構成要件A,D,Eの充足性上記第2,2(5)のとおり,被告製品においては,ジビニルベンゼンを主成分とする架橋重合体粒子の●(省略)●形成されている。●(省略)●液晶用スペーサーとして使用される際にも●(省略)●グラフト共重合した共重合体が表面に存在することからすると(弁論の全趣旨),被告製品における●(省略)●架橋重合体粒子と一体化しているということができ,被告製品においては,架橋重合体粒子とこれと一体化したポリビニルアルコール層が構成要件Eの「重合体粒子」に該当する。 そして,上記第2,2(5)のとおり,被告製品は,架橋重合体粒子の●(省略)●グラフト鎖が形成されている。 したがって,被告製品における架 ルアルコール層が構成要件Eの「重合体粒子」に該当する。 そして,上記第2,2(5)のとおり,被告製品は,架橋重合体粒子の●(省略)●グラフト鎖が形成されている。 したがって,被告製品における架橋重合体粒子は,その構成成分である●(省略)●架橋重合体粒子であって,この共重合体は液晶用スペーサーの表面に位置しているから(甲6の1,弁論の全趣旨),被告製品は,「表面に」「グラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子からなる」液晶用スペーサーに該当し,構成要件A,D,Eを充足する。 (3) 被告製品が構成要件B,C,Fを充足することは,当事者間に争いがない。 したがって,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するものと認められる。 2 争点3(特許法104条の3第1項の権利行使の制限)の(3)(乙7の3刊行物の記載に基づく新規性欠如(無効理由3))について(1) 乙7の3刊行物の記載 本件特許出願前に頒布された刊行物である乙7の3刊行物には,以下の記載がある。(乙7の3)「【請求項1】 少なくとも表面に下記一般式(1)RO- (1)(式中,R は炭素数1~18 の直鎖又は分岐のアルキル基又はアシル基を示す。)で表される疎水性基と,下記一般式(2)【化1】 (式中,R1は炭素数2~4の直鎖又は分岐のアルキレン基を示し,ヒドロキシ基が置換していても良い。m は1以上30 以下の整数を示し,m 個のR1 は同一でも異なっていても良い。)で表される親水性基を有する微粒子からなることを特徴とする液晶表示用スペーサ。」「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,新規な液晶表示用スペーサ及び液晶表示装置に関するものであり,特に通電時におけるスペーサまわり,又はスペーサ間での液晶の配向 液晶表示用スペーサ。」「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,新規な液晶表示用スペーサ及び液晶表示装置に関するものであり,特に通電時におけるスペーサまわり,又はスペーサ間での液晶の配向異常を防止し,均質な表示を可能とする液晶表示用スペーサ及び液晶表示装置に関するものである。」「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】…【0003】ところで,TN(ツイステッドネマティック),STN(スーパーツイステッドネマティック)液晶パネルでは,通電中に,スペーサまわり又はスペーサ間での液晶の配向異常が起こり,その領域が通電時間とともに拡大するという問題があり,この原因は明らかにはなっていないが,液晶分子と液晶スペーサの表面の相互作用に起因するものと推測される。更に,保護フィルムを除去する際に静電気が発生しやすく,これによりスペーサ周囲の部分で液晶分子の異常配向が発生するという問題もしばしば発生した。 これらを防止する目的で,液晶パネル製造においては液晶パネルのいわゆるエージング操作(アニール工程)が行われているが,生産効率が低下するなどの問題があった。 【0004】さらに,臨界表面エネルギーが30dyn/cm 以下のスペーサを用いる方法(特開平2-297523 号),スペーサ表面を長鎖アルキルシラン等で処理する方法(特開平4-177324 号,特開平5-232478 号)等が提案されている。これらの方法は,スペーサ表面に配向強制力をもたせて液晶分子をスペーサ表面に垂直配向させる試みである。しかしながら,これらの方法によると配向強制力が強すぎるために光透過時にも液晶分子の配向がスペーサ表面に対して垂直,すなわち基板に対して水平のままとなり易く,その結果,光透過度低下によるスペーサ周囲のコントラスト れらの方法によると配向強制力が強すぎるために光透過時にも液晶分子の配向がスペーサ表面に対して垂直,すなわち基板に対して水平のままとなり易く,その結果,光透過度低下によるスペーサ周囲のコントラストの低下をしばしば誘発するものであった。又,静電気からのスペーサの帯電によるスペーサ周囲の液晶分子の配向異常に対して何ら効果をもたらすものではなかった。 【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記のような従来技術の欠点を解決し,液晶スペーサ周囲及びスペーサ間で液晶の配向異常の起こらない液晶スペーサ及び液晶表示装置を得るべく鋭意検討を重ねた結果,本発明を完成するに至った。」「【0008】本発明に係わる,少なくとも表面に前記一般式(1)で表される疎水性基と,前記一般式(2)で表される親水性基を有する微粒子は,例えば,下記製造方法1~4に示す方法により製造することができる。 【0009】尚,以下の製造方法に用いられる一般式(1)で表される疎水性基を有する単量体(以下疎水性単量体(1)と略記)としては,例えば,メチルビニルエーテル,…2-エチルヘキシルビニルエーテル,ステアリルビニルエーテル等の炭素数1~18 の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル類,酢酸ビニル,…等の炭素数1~18 の直鎖又は分岐カルボン酸 のビニルエステル類,エチル(メタ)アクリレート,…2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート,ラウリル(メタ)アクリレート,ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1~18 の直鎖又は分岐のアルキルエステル類が挙げられる。これらの疎水性単量体(1)は,単独又は2種以上混合して用いることができる。 【0010】また,前記一般式(2)で表される親水性基を有する単量体(以下親 又は分岐のアルキルエステル類が挙げられる。これらの疎水性単量体(1)は,単独又は2種以上混合して用いることができる。 【0010】また,前記一般式(2)で表される親水性基を有する単量体(以下親水性単量体(2)と略記)としては,例えば,ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,…ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの親水性単量体(2)は単独又は2種以上混合して用いることができる。」「【0029】<製造方法4>本方法は,さらに,より確実に,かつ簡便に表面に前記一般式(1)で表される疎水性基,及び前記一般式(2)で表される親水性基を有する重合体微粒子を得る方法であり,疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)以外のラジカル重合可能な重合性単量体を懸濁重合する際に,分散安定剤として,疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)の両方を構成成分とする共重合体を用いるか,あるいは疎水性単量体(1)又は親水性単量体(2)のどちらか一方と,疎水性単量体(1)及び親水性単量体(2)以外のラジカル重合可能な重合性単量体とを懸濁重合する際に,分散安定剤として,疎水性単量体(1)又は親水性単量体(2)の他方を構成成分とする共重合体を用いて重合を行い粒子表面に該分散安定剤をグラフトさせる方法である。本方法で用いられる分散安定剤としては,例えば疎水性単量体(1)及び/又は親水性単量体(2)と,水溶性高分子を構成する単量体,例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の親水性単量体(2);(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物;ビニルピロリドン,エチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有するもの等の共重合体が挙げられる。これらの 性単量体(2);(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物;ビニルピロリドン,エチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有するもの等の共重合体が挙げられる。これらの共 重合体は公知の方法により合成することができ,例えば,化学同人発行の「高分子合成の実験法」p139,9行目以降に記載されている方法,実験例507,“酢酸ビニルのメタノール溶液重合”等の方法で合成できる。」「【0036】実施例1化学同人発行「高分子合成の実験法」p139,実験例507“酢酸ビニルのメタノール溶液重合”に従って,酪酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体(モル比1:1,分子量22 万)を得た。ジビニルベンゼン(純度81%,新日鐵化学(株)製DVB-810)65 部,エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NK-エステル1G)10 部,ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製,ブレンマーPE350,平均EO 付加モル数m=8)25 部及び過酸化ベンゾイル4部の混合液に,分散安定剤として,前記の酪酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体の5%水溶液800 部を加えて微分散させ,攪拌しながら窒素気流下80℃で15 時間懸濁重合を行い,分級操作を施し平均粒径6.3µm,標準偏差が0.5μm である架橋重合体微粒子を得た。得られた架橋重合体微粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後,単離乾燥して液晶表示用スペーサを得た。以上の方法により得られたスペーサを用いて,セルサイズ対角約10 インチ,ドット数640×480,セルギャップ6.0µm のスーパーツイスト型液晶表示装置を作成した。この表示装置に走査電圧を印加してその表示特性を観察したところ,全面に亘って表示むらのない高品位の表示が得られており 0×480,セルギャップ6.0µm のスーパーツイスト型液晶表示装置を作成した。この表示装置に走査電圧を印加してその表示特性を観察したところ,全面に亘って表示むらのない高品位の表示が得られており,また,スペーサまわりやスペーサ間での液晶の配向異常は認められなかった。 【0037】実施例2実施例1と同様な方法でステアリルビニルエーテル/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モル比1:9,分子量35 万)を得た。モノマーとして,ジビニルベンゼン100 部,分散安定剤として上記のステアリルビニルエーテル/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体を用いた以外は実施例1と同 様な方法で懸濁重合を行い,平均粒子径6.5µm,標準偏差が0.5µm である架橋重合体微粒子を得た。得られたスペーサを用いた液晶表示装置の場合について,実施例1と同様の方法で液晶表示装置を作成した。得られた表示装置に走査電圧を印加してその表示特性を観察したところ,全面に亘って表示むらのない高品位の表示が得られており,また,スペーサまわりやスペーサ間での液晶の配向異常は認められなかった。」「【0044】【発明の効果】上記実施例の結果からも明らかなように,本発明で得られる液晶表示用スペーサは,スペーサまわり及びスペーサ間での液晶の配向異常の防止効果に優れており,液晶表示用スペーサとして好適である。」(2) 乙7の3刊行物記載の発明上記(1)の記載によると,乙7の3刊行物には,液晶用スペーサーの周囲及びスペーサー間で液晶の配向異常が生じないようにするために,表面に特定の構造の疎水性基及び親水性基を有する微粒子からなることを特徴とする液晶用スペーサーが開示されている(【請求項1】,【0005】~【0007】)。 そして,乙7の3刊行 するために,表面に特定の構造の疎水性基及び親水性基を有する微粒子からなることを特徴とする液晶用スペーサーが開示されている(【請求項1】,【0005】~【0007】)。 そして,乙7の3刊行物の実施例2(【0037】)には,モノマーとしてジビニルベンゼン,分散安定剤としてステアリルビニルエーテル(疎水性基)とヒドロキシエチルメタクリレート(親水性基)の共重合体を用いた懸濁重合により製造される架橋重合体粒子からなる液晶用スペーサーが開示されている。実施例2は製造方法4(【0029】)に該当するものであるところ,同方法は懸濁重合を行い重合体粒子表面に分散安定剤をグラフトさせる方法であり,実施例2において,ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体からなる分散安定剤が,架橋重合体粒子の構成成分であるジビニルベンゼンの重合体と化学結合していることは当事者間に争いがない。 したがって,乙7の3刊行物には,モノマーとしてジビニルベンゼン,分散安定剤としてステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体を用いた懸濁重合により製造される架橋重合体粒子からなる液晶用スペーサーであって,当該分散安定剤が架橋重合体粒子表面にグラフトしているもの(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 (3) 本件特許発明と引用発明との対比ア上記1(1)アで説示したように,本件特許発明は,液晶との界面であるスペーサーの表面に長鎖アルキル基を有するグラフト共重合体鎖が存在することによって,スペーサー周りの液晶の異常配向を抑制できるものであり,構成要件Aの「表面」は「スペーサーの表面」を意味する。 引用発明は,上記(1)のように,スペーサー周囲及びスペーサー間で液晶の配 ,スペーサー周りの液晶の異常配向を抑制できるものであり,構成要件Aの「表面」は「スペーサーの表面」を意味する。 引用発明は,上記(1)のように,スペーサー周囲及びスペーサー間で液晶の配向異常の起こらない液晶スペーサーを提供すること等を目的とするものであり,その目的のために表面に特定の疎水性基と親水性基を配したことを特徴とする液晶用スペーサーである(乙7の3刊行物の【請求項1】,【0005】,【0044】)。そして,引用発明について走査電圧を印加して表示特性を観察したところ,スペーサー周りやスペーサー間での液晶の配向異常は認められなかったことが認められる(乙7の3刊行物の【0037】)。 したがって,引用発明において,「ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体」が存在する位置は,本件特許発明と同様,液晶との界面となるスペーサーの「表面」と認められ,引用発明は構成要件Aに相当する構成を有するといえる。 イ構成要件Bの「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体」としては,炭素数が6以上の長鎖アルキル基を有するものが好ましいところ(本件明細書の【0011】),引用発明の「ステアリルビニルエーテル」は炭素数18のアルキル基を有する重合性ビニル単量体であり,本件特許発明の 「長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種」に相当することは当事者間に争いがない。 ウ引用発明の「ヒドロキシエチルメタクリレート」が,構成要件Cの「該重合性ビニル単量体(判決注:長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体)と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種」に相当することも当事者間に争いがない。 エ上記1(1)イで説示したように,構成要件Dの「グラフト共重合体鎖を導入した」とは,重合体粒 単量体)と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種」に相当することも当事者間に争いがない。 エ上記1(1)イで説示したように,構成要件Dの「グラフト共重合体鎖を導入した」とは,重合体粒子の構成成分を幹として共重合体からなる枝鎖が化学結合していることを意味する。そして,上記(2)のように,乙7の3刊行物の実施例2(【0037】)は,製造方法4(【0029】)に該当するものであるから,引用発明は,重合体粒子表面に分散安定剤である「ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体」をグラフトさせたものであり,この共重合体が重合体粒子の構成成分と化学結合していることは当事者間に争いがない。 したがって,引用発明の液晶用スペーサーは,重合体粒子の構成成分を幹として,ステアリルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体からなる枝鎖が化学結合した重合体粒子からなることを特徴とするものであり,構成要件D,E,Fに相当する構成を有するといえる。 オしたがって,引用発明は,本件特許発明の構成を全て有するものと認められる。 (4) 原告の主張についてア原告は,本件特許発明と引用発明は下記①~④の点で相違すると主張する。 ①本件特許発明ではグラフト鎖と幹とのグラフト分岐点が重合体粒子の表面にあるのに対して,引用発明では分散安定剤と重合体粒子構成成分とが共有結合している箇所が重合体粒子の内部にある点 ②本件特許発明では長鎖アルキル基が重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在するグラフト鎖に存在するのに対して,引用発明では長鎖アルキル基が重合体粒子の内部に偏在し外部には実質的に存在しない点③本件特許発明では重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在するグラフト鎖が構成要件B, に存在するのに対して,引用発明では長鎖アルキル基が重合体粒子の内部に偏在し外部には実質的に存在しない点③本件特許発明では重合体粒子の表面上(重合体粒子の外部)に存在するグラフト鎖が構成要件B,C所定の各単量体の共重合体であるのに対して,引用発明では分散安定剤中の重合体粒子の表面上(外部)に存在する箇所が共重合体であるのか否か明らかではない点④本件特許発明では重合体粒子の表面にグラフト鎖を導入するプロセスによりグラフト共重合体鎖が形成されるため,当該グラフト共重合体鎖中のアルキル基濃度が的確に調整されるのに対して,引用発明では分散安定剤中の長鎖アルキル基を重合体粒子外部に引き出すのが困難であり,仮に引き出せたとしても濃度を調整することは不可能である点イしかしながら,本件特許発明は特許請求の範囲においてグラフト分岐点について規定していないため,グラフト分岐点に関する上記①の点は相違点とはならない。 上記②,③の点については,上記(3)において説示したとおり,引用発明においては,本件特許発明と同様に,長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種であるステアリルビニルエーテルと該重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の一種であるヒドロキシエチルメタクリレートからなる共重合体が,液晶用スペーサーの表面に存在すると認められるため,いずれも相違点ではない。 また,本件特許発明は物の発明であるから,製造方法の違いは相違点とはならず,特許請求の範囲において結果物である液晶用スペーサーにおける長鎖アルキル基の濃度は規定されていないから,上記④の点も相違点とはならない。 したがって,原告の上記アの主張は,いずれも理由がない。 (5) 以上のとおり,本件特許発明は,その特許出願前に頒布された乙7の3刊 いないから,上記④の点も相違点とはならない。 したがって,原告の上記アの主張は,いずれも理由がない。 (5) 以上のとおり,本件特許発明は,その特許出願前に頒布された乙7の3刊行物に記載された発明であり,本件特許は,特許法29条1項3号に違反し,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本 岳 裁判官 鈴木和典 裁判官 坂本康博 被告製品目録被告製品目録被告製品目録被告製品目録 【イ-1号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「EX」が含まれ,表面処理タイプ名が「AC」,「AC3」又は「AC4」である液晶表示用スペーサー 【イ-2号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「EX」が含まれ,表面処理タイプ名が「AD」,「AD-1」,「ADW」,「AL」,「AS」又は「KA」である液晶表示用スペーサー 【イ-3号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「EX」が含まれ,表面処理タイプ名が「VAD」,「VAD2」又は「RX」である液晶表示用スペーサー 【ロ-1号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「SP」が含まれ,表面処理タイプ名が「AC」,「AC3」又は「AC4」である液晶 晶表示用スペーサー 【ロ-1号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「SP」が含まれ,表面処理タイプ名が「AC」,「AC3」又は「AC4」である液晶表示用スペーサー 【ロ-2号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「SP」が含まれ,表面処理タイプ名が「AD」,「AD-1」,「ADW」,「AL」,「AS」又は「KA」である液晶表示用スペーサー 【ロ-3号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「SP」が含まれ,表面処理タイプ名が「VAD」,「VAD2」又は「RX」である液晶表示用スペーサー 【ハ-1号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「KB」が含まれ,表面処理タイプ名が「AC」,「AC3」又は「AC4」である液晶表示用スペーサー 【ハ-2号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「KB」が含まれ,表面処理タイプ名が「AD」,「AD-1」,「ADW」,「AL」,「AS」又は「KA」である液晶表示用スペーサー 【ハ-3号製品】「ミクロパール」/”Micropearl”シリーズのうち基材タイプ名に「KB」が含まれ,表面処理タイプ名が「VAD」,「VAD2」又は「RX」である液晶表示用スペーサー
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