- 1 -平成22年1月21日宣告平成21年(わ)第345号等住居侵入,強盗強姦,強姦,強姦未遂被告事件判決主文被告人を懲役13年に処する。 未決勾留日数中140日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1Aを強姦する目的で,平成21年5月8日午前零時25分ころ,静岡県a市b番地の同人方に,同人(当時19歳)が帰宅して玄関ドアを開閉する際のすきに乗じて侵入し,同所において,同人に対し,その口を手でふさぎながら,「騒いだら殺すぞ。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧した上,着衣を脱がせるなどして強いて同人を姦淫した第2Bを強姦する目的で,同年5月17日午前零時10分ころ,同県a市c番地の同人方に,同人(当時22歳)が帰宅して玄関ドアを開閉する際のすきに乗じて侵入し,同所において,同人に対し,その口を手でふさぎながら,「おとなしくしろ。殺すぞ。」などと言って脅迫するなどし,その反抗を抑圧して強いて同人を姦淫しようとしたが,同人が泣きながら「どうしてこんなことするんですか。」などと訴えたため,姦淫の気持ちが萎えて中止し,その目的を遂げなかった第3Cを強姦する目的で,同年5月26日午後7時30分ころ,同県a市d番地の同人方に,同人(当時18歳)が帰宅して玄関ドアを開閉する際のすきに乗じて侵入し,同所において,同人に対し,その口を手でふさぎながら,「騒いだら殺すぞ。」などと言って脅迫し,左側頭部をこぶしで数回殴るなどの暴行を加えて,その反抗を抑圧した上,更に仰向けになった同人に馬乗りになりな- 2 -がら,学生証在中の財布の提示を求めるうち,この状態に乗じて強盗を決意し,その財布から同人所有の現金7000円を奪い取って強取した後,同人の着衣を脱がせるなどして強いて同人を姦淫し,その際,前記暴行によ ,学生証在中の財布の提示を求めるうち,この状態に乗じて強盗を決意し,その財布から同人所有の現金7000円を奪い取って強取した後,同人の着衣を脱がせるなどして強いて同人を姦淫し,その際,前記暴行により,同人に全治約2週間を要する左側前頭部打撲,左肩打撲及び膣入口部裂傷の傷害を負わせた第4Dを強姦する目的で,同年6月9日午前零時12分ころ,東京都e市f番地の同人方に,同人(当時29歳)が帰宅して玄関ドアを開閉する際のすきに乗じて侵入し,同所において,同人を床上に押し倒すなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して強いて同人を姦淫しようとしたが,同人が大声を上げるなどして抵抗したため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示第1の所為のうち住居侵入の点は刑法130条前段に,強姦の点は同法177条前段に,判示第2及び第4の各所為のうち各住居侵入の点はいずれも同法130条前段に,各強姦未遂の点はいずれも同法179条,177条前段に,判示第3の所為のうち住居侵入の点は同法130条前段に,強盗強姦の点は同法241条前段にそれぞれ該当するが,判示第1の住居侵入と強姦との間,判示第2及び第4の各住居侵入と各強姦未遂との間,判示第3の住居侵入と強盗強姦との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条によりいずれも1罪として,判示第1については重い強姦罪の刑で,判示第2及び第4についてはそれぞれ重い強姦未遂罪の刑で,判示第3については重い強盗強姦罪の刑で処断し,判示第3の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,判示第2の罪は中止未遂であるから同法43条ただし書,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の 選択し,判示第2の罪は中止未遂であるから同法43条ただし書,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役13年に処し,同法21- 3 -条を適用して未決勾留日数中140日をその刑に算入することとする。 なお,判示第3について,被告人は,強姦目的の暴行・脅迫により被害者の反抗が抑圧されている状態で,その身体に馬乗りになりながら,身上を把握するため学生証の提示を求めている際に財物を取得したのであり,そのような被告人の財物取得行為は,実質的には暴行・脅迫が継続した中でのものというべきであるから,強盗にあたると解するのが相当である(東京高判平20.3.19高刑集61巻1号1頁参照)。 したがって,被告人が財物強取後に被害者を姦淫したことにより,被告人には強盗強姦罪が成立することを付言しておく。 (量刑の事情)本件は,被告人が,約1か月間に4回にわたり,全く面識のない被害者の自宅に侵入した上,強盗強姦1件,強姦既遂1件及び強姦未遂2件を敢行したものであり,女性の人格を全く無視した犯行を繰り返したことのみに照らしても,被告人を厳しく非難すべきである。 いずれも,被告人が,夜間若い女性がいそうな場所を徘徊してターゲットを探し,狙いを定めた女性を尾行しながら,軍手等を手にはめた上,女性が自宅玄関ドアを開閉したすきを狙って屋内に侵入し,密室状態の中で強姦しようとしたものであって,計画性の高い常習的犯行というべきである。一連の犯行を通じて,被告人の犯意は強度である。 そこで,まず量刑上最も考慮すべき重大犯罪である強盗強姦の事案(判示第3)を見る。被告人は,被害者に対して強度の暴行・脅迫を加えて抵抗力を排除した上,強盗に及び,泣いて 被告人の犯意は強度である。 そこで,まず量刑上最も考慮すべき重大犯罪である強盗強姦の事案(判示第3)を見る。被告人は,被害者に対して強度の暴行・脅迫を加えて抵抗力を排除した上,強盗に及び,泣いている被害者の心情を意に介さず,種々のわいせつ行為をした挙げ句,被害者を姦淫しているのであって,思いやりに欠けた卑劣な態様である。その際に,前記のとおり軽いとはいえない傷害を負わせており,財産的被害も少なくない。被害者は,親元を離れ希望に満ちた新生活を開始した矢先,全く落ち度がないのに突然被害を受けたのであり,肉体的苦痛はもとより,恐怖感,屈辱感等の精神的苦痛は甚大であって,痛ましい限りというほかない。事件から7か月余り経っ- 4 -た時点でも,被害者は,襲われたときのことをよく夢に見て,目覚めては涙を流すことが多くある,犯人と似た体格や年齢の男性を見ると不安になるなどと,いまだ精神的苦痛が続いている旨を述べ,厳しい被害感情を表明している。本件の結果は重大である。加えて,被告人は,犯行直後に被害者に氏名等を紙に書かせるなどして口止め工作までしており,犯行後の情状も極めて悪い。 次に,強姦既遂の事案(判示第1)を見ても,被告人は,被害者に対して強度の脅迫を加えて抵抗力を排除した上,種々のわいせつ行為をした挙げ句,被害者を姦淫しているのであって,前同様に卑劣な態様である。被害者は,親元を離れて生活していたところ,全く落ち度がないのに突然被害を受けたのであり,その際,犯人に殺されてしまうのではないかとの恐怖から痛みに耐えたというのであって,その肉体的,精神的苦痛は甚大である。被害者は,事件から8か月経った時点でも,襲われたときのことを思い出して不安になるなどと,いまだ精神的苦痛が続いている旨を述べ,厳しい処罰感情を表明している。本件の結果も重い。しか 苦痛は甚大である。被害者は,事件から8か月経った時点でも,襲われたときのことを思い出して不安になるなどと,いまだ精神的苦痛が続いている旨を述べ,厳しい処罰感情を表明している。本件の結果も重い。しかも,被告人は,犯行直後に被害者に氏名等を紙に書かせるなどして口止め工作をしており,犯行後の情状も極めて悪い。 さらに,2件の強姦未遂の事案(判示第2及び第4)を見ても,被害者方に押し入った際にいきなり暴行又は脅迫を加えたのであり,結果として姦淫は未遂に終わったとはいえ,被害者の受けた恐怖感は大きく,その精神的苦痛は軽視できない。 なお,弁護人は,被告人が勤務先の職場環境等によりストレスをためていたことも犯行の原因の一つであることを有利に考慮されたいと主張する。しかし,本件が全く無関係の被害者に対する犯行であることに照らして,そのような事情はいささかも犯行を正当化できるものではない。 以上の諸事情によれば,被告人には,法を守ろうとする意識が欠けていたといわざるを得ず,その刑事責任は重大である。 他方,判示第2について,被告人が,抵抗しなくなった被害者に対し,立ち去る際も含めて2回にわたって接ぷんをしたことに照らしても,後悔の気持ちを主たる- 5 -原因として姦淫行為を中止したとはいい難いものの,中止犯が成立すること,判示第3について,強盗行為自体は計画的ではなかったこと,被告人は,捜査段階から一貫して本件各犯行を認めており,余罪についても話すなど反省の態度を示していること,各被害者に対して謝罪の意思を表明し,両親の援助を得て,弁護人を通じて被害弁償を申し入れていること,その結果,判示第3の被害者に対し350万円を支払い,判示第4の被害者に対しては120万円を支払って,それぞれ示談を成立させていること,これまでに前科前歴は全くないこと,母親が公判廷 入れていること,その結果,判示第3の被害者に対し350万円を支払い,判示第4の被害者に対しては120万円を支払って,それぞれ示談を成立させていること,これまでに前科前歴は全くないこと,母親が公判廷で,被告人の帰りを待ち,家族らで協力して就業先を確保するなど被告人の更生を支援する意思を表明していること等の酌むべき事情も認められる。 本件において,行為の悪質性や結果の重大性等を考慮すると,弁護人の主張する懲役8年は到底採用できず,検察官が求刑する懲役16年はあながち不当とはいえないが,2件の被害弁償の内容や被告人の反省態度等を慎重に見ると,いささか重すぎるように思われる。当裁判所は,行為責任の観点を踏まえ,量刑の動向にも照らした上,主文の量刑を定めたものである。 (求刑懲役16年)平成22年1月21日静岡地方裁判所沼津支部刑事部裁判長裁判官片山隆夫裁判官松岡崇裁判官西谷大吾
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