平成31(ワ)1580 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月19日 大阪地方裁判所
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令和2年3月19日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成31年(ワ)第1580号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和2年1月16日判決 原告 P1ことP2同訴訟代理人弁護士溝上哲也 被告株式会社ザシティ同代表者代表取締役 P3同訴訟代理人弁護士中田明同松村幸生主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 被告は,原告に対し,4764万円及びこれに対する平成30年10月3日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,その運営するウェブサイト(http://city.saikyou.biz/)に,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を,別紙掲載条件により,1か月間掲載せよ。 第2 事案の概要 本件は,パチンコ・スロット店(以下「パチンコ店」という。)向けの顧客誘引 を目的とするゲームコンテンツを開発・販売する原告が,パチンコ店の企画営業を 行う被告に対し,埼玉県警察が実施する管理者講習会に参加した被告の店長が,同講習会において,原告の販売するコンテンツを利用した広告,宣伝は禁止されるとの説明がなされた旨のメッセージを被告の他の店長らに送信した行為,及びこれを閲覧した被告の他の店長が当該メッセージを社外の第三者に転送した行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布する」不正競 争 の他の店長らに送信した行為,及びこれを閲覧した被告の他の店長が当該メッセージを社外の第三者に転送した行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布する」不正競 争行為(平成30年法律第33号による改正前の不正競争防止法2条1項15号。 令和元年7月1日の改正法施行後は21号であるが,以下改正前の号による。)に該当し,あるいは,被告の店長らが,真偽の確認をせず,また外部拡散の防止等をせず,虚偽の情報を送信,転送したことは,不法行為に当たり,被告に使用者責任が成立するとして,不競法4条,又は民法709条,715条1項に基づき,逸失 利益4764万円の賠償及びこれに対するメッセージ送信の日である平成30年10月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,不競法14条に基づき謝罪文の掲載を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等(甲1,3)原告は,P1の屋号で,主にパチンコ店向けにホームページ制作,システム開発,サーバー構築,販売促進用のツール(以下「販促ツール」という。)の開発・販売等を行う個人自営業者である。 被告は,遊技場経営等を目的とし,東京都,神奈川県,埼玉県等において,14 店舗のパチンコ店の企画・運営を行っている株式会社である。 ⑵ 本件コンテンツ(甲5,6(書証は枝番号を含む。以下同じ。))原告は,商品名を「X1」,「X2」及び「X3」と題する,パチンコ店向けの顧客誘引を目的とするゲームコンテンツ(以下,前二者を「X1」といい,「X1」と「X3」を合わせて「本件コンテンツ」という。)を開発・販売している。 本件コンテンツは,これを導 ンコ店向けの顧客誘引を目的とするゲームコンテンツ(以下,前二者を「X1」といい,「X1」と「X3」を合わせて「本件コンテンツ」という。)を開発・販売している。 本件コンテンツは,これを導入したパチンコ店が,メールやSNSを利用して, 顧客に対し,携帯電話の画面上でスロットゲーム等をするよう促し,ゲームで「大当たり」が出た場合に表示される画面(以下「当選画面」という。)に,特定の遊技機を示唆する画像や,特定の遊技機を示唆する扮装(コスプレ)をした女性の画像を使用することで,当該遊技機がパチンコ店の推奨機種であることを示し,パチンコ店に出向くよう顧客を誘引することができる。 ⑶ 本件講習会の実施及びその内容埼玉県警察は,平成30年10月3日, 同県北部において営業するパチンコ店の管理者(店長等)を対象とした管理者講習会を実施した(以下「本件講習会」という。)。本件講習会において,同警察の担当者は,受講者に対し,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)及び同法に基づく 埼玉県条例違反となり,行政処分の対象となる広告宣伝について説明し,そのような広告宣伝を行わないよう注意を促した。 ⑷ 本件メッセージの送信及び転送等(甲7,8)被告の深谷店店長であるP4は,本件講習会に出席した後,ライン(メッセージや画像・動画のやり取り等を行うSNSアプリ)上の,被告の経営する各店舗の店 長や本社の従業員等17名が参加するメッセージグループ(以下「店長ライン」という。)に,「本日の埼玉県北地域の管理者講習の内容共有です。」として,本件講習会で指摘された事項を,「みなし機について」の表題で3項目,「広告宣伝について」の表題で7項目に要約したメッセージ(以下「本件メッセージ」という 県北地域の管理者講習の内容共有です。」として,本件講習会で指摘された事項を,「みなし機について」の表題で3項目,「広告宣伝について」の表題で7項目に要約したメッセージ(以下「本件メッセージ」という。)を送信し,その中に,「広告宣伝について」の②として「名指しでX1は禁止。(機 種画像を送るなら) 」,同じく③として「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」との記載部分(以下「本件部分」という。)が存在した。 被告の川越店店長であったP5は,本件メッセージを閲覧し,これを,パチンコ店を取材して,広告宣伝を雑誌やウェブ上に掲載することを業とする取材会社2社の担当者に転送するとともに,内容について電話で問い合わせた。 原告は,同月23日ころ,取引先からの情報提供により,被告以外のパチンコ店 に本件部分の内容が流布していることを知った。 2 争点⑴ 原告と被告は,「競争関係」にあると認められるか。 ⑵ 本件部分の内容が,「虚偽の事実」に当たるか。 ⑶ 本件メッセージの送信行為及び転送行為等が,「告知又は流布」に当たるか。 ⑷ 不法行為責任及び使用者責任の有無⑸ 損害の発生及びその額⑹ 信用回復措置の必要性 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点⑴(原告と被告は,「競争関係」にあると認められるか。)について 【原告の主張】被告は,訴外株式会社シティコミュニケーションズ(以下「訴外シティコミュニケーションズ」という。)のグループ会社の中の1社として,同社と支配・従属関係にある(以下,訴外シティコミュニケーションズとそのグループ会社を全体として「シティグループ」という。)。また,別のグループ会社である訴外株式会社シ ティデザイン(以下「訴外シティデザイン」という。)は 下,訴外シティコミュニケーションズとそのグループ会社を全体として「シティグループ」という。)。また,別のグループ会社である訴外株式会社シ ティデザイン(以下「訴外シティデザイン」という。)は,主たる事業として,広告,Web,デザインの企画,製作,スマートフォンアプリ開発を行っており,シティグループ内のシステム開発からゲームアプリまで様々なコンテンツの企画と開発を行うところ,被告の経営するパチンコ店に関してもこれらの業務を行っていることは明らかである。 そうすると,これらの業務と,原告の事業内容である「ホームページ制作,システム開発(モバイルサイト構築システム,各種予約システム他,多数),サーバー構築,メール配信サービス」とは,広告を目的とするコンテンツないし販促ツールの制作という点で,広く同種の商品を扱い,あるいは同種の役務を提供するという関係にある。 また,被告は,自らの経営するパチンコ店において,顧客が登録したメールやラ インのアドレス宛てに,各店の最新情報を送信するというサービスを提供しているから,原告の業務と広く同種の商品を扱い,あるいは同種の役務を提供するという関係にあると評価されるべきである。原告は,東京都・神奈川県・埼玉県内のパチンコ店に対する営業,宣伝広告や取引を行っているため,被告と営業地域も共通している。被告にとって,原告が近隣のパチンコ店の顧客増加のための広告宣伝を行 うことを阻止することは,自己の利益となる。 したがって,原告と被告は,「競争関係」にある。 【被告の主張】原告は,自ら開発した携帯販促ツール(商品)をパチンコ店に販売することを業務としており,被告は,その商品の買主である。 訴外シティコミュニケーションズは,労働者派遣事業を営む会社であ 張】原告は,自ら開発した携帯販促ツール(商品)をパチンコ店に販売することを業務としており,被告は,その商品の買主である。 訴外シティコミュニケーションズは,労働者派遣事業を営む会社であり,被告の親会社ではない。そのグループ会社である訴外シティデザインの業務内容は,シティグループのホームページ作成や社内システム全般の管理等であり,パチンコ店向けの携帯販促ツールを販売するものではない。 したがって,原告と被告は,同種の商品を扱っておらず,将来において競争関係 が現実化する潜在的競争関係も存在しない。 ⑵ 争点⑵(本件部分の内容が,「虚偽の事実」に当たるか。)について【原告の主張】ア 「虚偽の事実」について本件講習会は,各風俗営業者の営業所ごとに選任された,業務の実施を統括管理 する管理者を対象とし,3年に1回の定期講習として埼玉県警察により実施されたものであって,講習事項は,①法その他営業所における業務の適正な実施に必要な法令に関すること,及び②管理者の業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること,とされる。 本件講習会において,担当者が,本件コンテンツの具体的名称を挙げたという事 実や,講習資料中における本件コンテンツの名称の記載はなく,担当者の説明中に, 受講者において,本件コンテンツが広告宣伝規制の対象となると理解するような発言もなかった。 また,「X1」の当選画面は各店舗が独自に設定でき,他の類似サービスの当選画面と区別することも困難であるから,受講者において,一見して「X1」と分かるような画面が本件講習会において映写されたということはあり得ない。 さらに,「X3」は,本件講習会時点において埼玉県内の店舗には納品されておらず,埼玉県警察もその存在を知らなか X1」と分かるような画面が本件講習会において映写されたということはあり得ない。 さらに,「X3」は,本件講習会時点において埼玉県内の店舗には納品されておらず,埼玉県警察もその存在を知らなかった上,その内容は,ルーレットとスポットライトの2種類のゲームであってスロットゲームではないから,担当者の説明中,「同様にスロットゲームを行い」という発言が「X3」を指すことはあり得ない。 P4は,以前の店長会議において「X3」が話題になったことから,安易に担当者 から言及があったものと思い込み,本件メッセージを作成したものである。 P4は,本件の発覚後,原告からの問合せに対し,本件講習会において本件コンテンツの具体的名称が挙げられなかったことを認め,謝罪した。 以上より,本件メッセージのうち本件部分の内容は,「虚偽の事実」に当たる。 イ風営法の規制について そもそも,本件コンテンツは,風営法において規制される広告宣伝に当たらない。 風営法が直接禁止しているのは,「著しく射幸心をそそるおそれがある」遊技機を設置して営業する行為(同法20条1項)や,「清浄な風俗環境を害するおそれのある方法」(同法16条)による広告又は宣伝であるが,これに関する具体的な定めはない。埼玉県の風営法施行条例には,遵守事項として,「④著しく射幸心を そそるおそれのある方法で営業しないこと」(同条例6条2項)が定められ,平成24年7月13日付けの警察庁生活安全課保安課長による通達(「ぱちんこ営業における広告,宣伝等に係る風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反の取締り等の徹底について(通達)」。甲11。以下「本件通達」という。)においては,風営法において,上記「清浄な風俗環境を害するおそれのある方法」によ る広告又は宣伝として禁止さ する法律違反の取締り等の徹底について(通達)」。甲11。以下「本件通達」という。)においては,風営法において,上記「清浄な風俗環境を害するおそれのある方法」によ る広告又は宣伝として禁止される表示は,「①入賞を容易にした遊技機の設置をう かがわせる表示,②大当たり確率の設定変更が可能な遊技機について設定状況等をうかがわせる表示,③賞品買取行為への関与をうかがわせる表示,④遊技客が獲得した遊技球等の数を示し,これに付随して賞品買取所における買取価格等を直接的又は間接的に示す表示,⑤著しく多くの遊技球等の獲得が容易であることをうかがわせる表示,⑥風営法第19条の遊技料金等の規制等に違反する行為が行われるこ とを直接的又は間接的に示す表示,⑦遊技の結果について客の技量により差異が生じる余地をなくしていることをうかがわせる表示」であるとする。 本件コンテンツには,上記①ないし⑦の表示が組み込まれていないことから,法令の規制対象にも行政上の取締対象にも該当しない。また,「X1」の直近5年間の売上は年●(省略)●円前後であるが,平成22年1月の発売以来,一度も摘発 されたことはなく,同様のサービスを行う複数の業者もこれまで摘発されたことはないから,原告のサービスが法令上問題のないものであることは明らかである。 仮に,本件講習会において,担当者が「機種を示唆する」ことに言及したとすれば,店舗において不特定多数の顧客に対して実施する,「来店イベント」又は「取材イベント」に関する言及であったと考えられる。 したがって,本件講習会において,担当者が,本件コンテンツが規制の対象になると述べることはあり得ず,本件部分の内容は,「虚偽の事実」である。 【被告の主張】ア本件コンテンツについてパチンコ店の営業にお 本件講習会において,担当者が,本件コンテンツが規制の対象になると述べることはあり得ず,本件部分の内容は,「虚偽の事実」である。 【被告の主張】ア本件コンテンツについてパチンコ店の営業においては,過度の射幸心を煽るような行為は禁止されており, 当たりやすい遊技台やおすすめの機種を示唆するような広告宣伝もこれに当たる。 本件コンテンツは,以下のような仕組みにより,この規制を回避しつつ顧客を誘引しようとするものである。すなわち,①パチンコ店が,原告から提供された本件コンテンツを会員の携帯電話に送信する,②会員がゲームをプレイすると,「大当たり」となり,当選画面に特定の画像が表示される,③その画像は,当日の当たり やすい遊技台等を示唆するものとなっており,これを見た会員がパチンコ店に出向 く,という仕組みである。 被告も,過去には全店舗において本件コンテンツを導入していたが,違法なサービスのおそれがあることから,現在は使用していない。 イ本件講習会について本件講習会においては,本件コンテンツの名称自体には言及されなかったものの, 担当者が,埼玉県内のパチンコ店の店長等である受講者には,一見して「X1」のものと分かる当選画面を表示し,「こういうものはだめです。処分の対象になります。」と述べ,また,「X3」と分かるように,「最近では同様にスロットゲームを行い機種画像ではなく機種を示唆するようなコスプレをしている女性の画像を送るやり方」があると述べ,これも規制の対象となる旨を説明した。 ウまとめ以上より,本件部分の内容は,「虚偽の事実」に当たらない。 ⑶ 争点⑶(本件メッセージの送信行為及び転送行為等が,「告知又は流布」に当たるか。)について【原告の主張】 P4が本件メッセ 以上より,本件部分の内容は,「虚偽の事実」に当たらない。 ⑶ 争点⑶(本件メッセージの送信行為及び転送行為等が,「告知又は流布」に当たるか。)について【原告の主張】 P4が本件メッセージを作成して送信し,P5が取材会社2社の担当者に対して本件メッセージを転送し,電話で「広告協議会で何か話があったか。」と問い合わせた行為は,「告知又は流布」に該当する。広告協議会の正式名称は,「一般社団法人ぱちんこ広告協議会」(以下「広告協議会」という。)であり,広告関連会社や業界大手ホール企業が数十社参加する団体であるから,上記のような問い合わせ は,多数の会員企業に対し本件メッセージの内容を広めることを許容するものである。また,上記取材会社は,いずれも「X1」に類似した販促ツールも取り扱っており,原告の直接の競争相手に当たるから,それだけで不正競争行為に当たるというべきである。 なお,被告は,上記行為がいずれも自然な行為であると主張するが,「告知又は 流布」に該当するか否かは,行為の目的によらない。 【被告の主張】P4は,上記本件講習会の内容を受けて,被告の経営する12店舗の各店長及び本社の従業員5名の合計17名が参加する店長ラインに,本件メッセージを送信し,情報を共有した。この行為は,通常の業務行為であり,むしろ社会的に必要とされる行為であって,外部への「告知又は流布」に当たらない。 また,P5は,広告宣伝規制について取材会社の果たす役割が大きいことや,本件メッセージには,「④取材会社が雑誌やWebで店を広告宣伝すること(写真の掲載など)は営業処分になります。勝手に乗せられましたは通用しません。」という,取材会社に関連した内容もあったことから,取材会社2社の担当者に対して本件メッセージを転送し を広告宣伝すること(写真の掲載など)は営業処分になります。勝手に乗せられましたは通用しません。」という,取材会社に関連した内容もあったことから,取材会社2社の担当者に対して本件メッセージを転送し,「広告協議会で何か話があったか。」と問い合わせた。な お,P5は,このとき,本件メッセージを他に転送しないよう要望した。この行為も,広告宣伝に対する規制について取材会社に問い合わせを行う自然な行為であって,「告知又は流布」に当たらない。 ⑷ 争点⑷(不法行為責任及び使用者責任の有無)について【原告の主張】 ア P4及びP5による不法行為についてP4は,虚偽の事実を内容とし,原告の信用を毀損し,営業を妨害することが明白な本件メッセージを,店長ラインに送信した。同グループラインは,共有された情報について第三者への提供が一般的に禁止される運用になっておらず,P4は,本件メッセージの内容が外部に漏えいすることを容易に予見できたにもかかわらず, 何らそれを防止する措置を執ることなく本件メッセージを送信したのであるから,P4による本件メッセージの作成及び店長ラインへの送信は,過失による不法行為に当たる。 また,P5は,本件メッセージの内容が原告の信用を毀損し,営業を妨害することを認識しながら,その真偽をP4に確認したり,上司に相談したり,内容が拡散 されないような措置を講ずることなく,安易に外部の取材会社2社の担当者に対し て本件メッセージを転送した上,電話で情報収集を依頼した。そのうち1社において,本件メッセージが社内で共有されたり,さらに第三者に対して転送されたりし,本件メッセージの内容が流布された。よって,上記P5の行為は,過失による不法行為を構成する。 したがって,被告につき不正競争行 メッセージが社内で共有されたり,さらに第三者に対して転送されたりし,本件メッセージの内容が流布された。よって,上記P5の行為は,過失による不法行為を構成する。 したがって,被告につき不正競争行為が成立しないとしても,P4及びP5によ る上記行為は,民法上の過失による不法行為に当たる。 イ事業の執行・指導監督についてP4が本件メッセージを作成し,店長ラインに送信した行為及びP5が本件メッセージを社外に転送して告知した行為は,いずれも被告の業務遂行の過程でなされたものであるから,前記P4らの過失行為は,被告の事業の執行についてなされた ものであるといえる。 また,被告と,P4及びP5の間には使用関係が存したのであって,被告は,指導監督義務を負っていた。すなわち,本件メッセージを閲覧した被告の役員及び店長は,P4に対して真偽を確認したり,その内容を外部に拡散しないように注意喚起を行ったりすべきであったにもかかわらず,被告は,これを怠った。 したがって,被告は,P4及びP5の上記不法行為につき,使用者責任を負う。 【被告の主張】P4及びP5の行為が事業に執行につきなされたことは認め,不法行為となることは争う。 P4が埼玉県警から受けた指導の内容を他の店長に伝え注意喚起することは通常 の業務行為であり,むしろ社会的に必要とされる行為である。 広告宣伝規制の関係で,P5が取材会社に問い合わせを行うのは自然な行為であるし,P5は他に転送しないよう取材会社に依頼した。 ⑸ 争点⑸(損害の発生及びその額)について【原告の主張】 ア被告による不正競争行為及び不法行為により,原告は,以下のとおり,営業 上の多大な損害を被るとともに,信用を害された。 イ本件コンテンツの新規導入契約に 告の主張】 ア被告による不正競争行為及び不法行為により,原告は,以下のとおり,営業 上の多大な損害を被るとともに,信用を害された。 イ本件コンテンツの新規導入契約について原告において,パチンコ店との間で本件コンテンツの新規導入契約を締結する場合には,いずれも,契約期間1年間(自動更新),初期制作費15万円(税別),保守料月額4万円(税別)としており,平均して,新規導入契約から3年間は契約 が継続している。 ウ新規導入契約締結の中止等による逸失利益原告においては,パチンコ店8店舗との間において,「X1」の新規導入契約の締結が予定されていたが,本件メッセージの流布により,見送られた。 また,本件メッセージが流布されたことにより,原告は,本件コンテンツの新規 導入契約に向けた商談を行っていた20店舗以上から,商談中止の回答を受けた。 これまでの実績によれば,商談を継続すれば少なくともそのうちの3割と新規導入契約に至っていたのであるから,本件メッセージの流布がなければ,少なくとも6店舗との間で新規導入契約の締結に至っていたはずである。 さらに,原告は,日本各地において営業活動を行っており,平成30年7月から 11月までの5か月間において,約150店舗において営業活動を行い,合計56店舗との間において本件コンテンツの新規導入契約が締結されていた。したがって,本件メッセージの流布がなければ,その後の2か月間においても,上記と同じ割合で,少なくとも22店舗との間で新規導入契約の締結に至っていたことが合理的に推定される。ところが,実際にその2か月間において契約締結に至った店舗は2店 舗であった。そうすると,少なくとも,上記22店舗から2店舗を控除した20店舗のうち6割である12店舗について 的に推定される。ところが,実際にその2か月間において契約締結に至った店舗は2店 舗であった。そうすると,少なくとも,上記22店舗から2店舗を控除した20店舗のうち6割である12店舗については,本件メッセージの流布がなければ,新規導入契約に至った蓋然性が高い。よって,原告の営業活動不能に伴う損害は,12店舗分となる。 以上による原告の損害は,少なくとも4134万円である。 (計算式)(1店舗当たりの初期制作費15万円+保守料36か月分144万 円)×(8店舗+6店舗+12店舗)=4134万円エ契約更新拒絶による逸失利益原告は,本件メッセージの流布以前に本件コンテンツの新規導入契約を締結していたパチンコ店5店舗から,本件メッセージの流布後,新規導入契約締結後1年未満で契約の更新をしない旨の通知を受けた。上記のとおり,原告との間で新規導入 契約を締結した店舗との間においては,自動更新条約により,平均して3年間は契約が継続していたのであるから,上記更新拒絶は,本件メッセージの流布によるものと推認される。 以上による原告の損害は,少なくとも480万円である。 (計算式)保守料24か月分96万円×5店舗=480万円 オ民訴法248条による推定上記逸失利益(合計4614万円)について,その損害の発生自体は明らかであるものの,損害額については,侵害前の売上等から合理的に推計する他なく,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるといえるから,民訴法248条に基づき,同条の規定する相当な損害額としても,上記の損害額が認められるべき である。 カ弁護士費用上記被告による不正競争行為又は不法行為と相当因果関係にある弁護士費用相当額は,150万円である。 【被告の主張】 額としても,上記の損害額が認められるべき である。 カ弁護士費用上記被告による不正競争行為又は不法行為と相当因果関係にある弁護士費用相当額は,150万円である。 【被告の主張】 争う。 ⑹ 争点⑹(信用回復措置の必要性)について【原告の主張】前記⑸のとおり,原告の取引先であるパチンコ店においては,本件メッセージの流布により,原告の主力商品である本件コンテンツが規制の対象となるかのように 誤解し,導入を見合わせた店舗が多数存在し,原告の社会的評価が大きく害された ことは明らかである。 被告は,原告が本件メッセージにつき事実確認及び訂正措置を求めたにもかかわらず,何ら措置を講じなかった。 したがって,原告の営業上の信用を回復するためには,被告のウェブサイトのトップページにリンクを貼る方法により,別紙謝罪広告目録の謝罪文を一か月間掲載 させる必要がある。 【被告の主張】争う。 ⑺ 請求【原告の主張】 ア不競法に基づく請求前記⑴ないし⑶によれば,P4が本件部分を含む本件メッセージを他の店長らに送信した行為,及びP5がこれを取材会社に転送した行為は,いずれも,被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知,流布する不正競争行為(不競法2条1項15号)にあたる。 P4及びP5は,被告の店長としてこれを行ったものであるから,使用者である被告は,これによって原告に生じた損害を賠償する義務を負い(不競法4条,民法715条),その損害額は,前記⑸のとおり,逸失利益及び弁護士費用合計4764万円と算定,あるいは推定(民訴法246条)される。 よって,原告は,被告に対し,4764万円及びこれに対する本件メッセージ送 信の日である平成30年1 り,逸失利益及び弁護士費用合計4764万円と算定,あるいは推定(民訴法246条)される。 よって,原告は,被告に対し,4764万円及びこれに対する本件メッセージ送 信の日である平成30年10月3日から支払済みまで,民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 また,原告は,被告に対し,不競法14条の信用回復措置として,前記⑹記載の謝罪文の掲載を求める。 イ不法行為に基づく請求 P4,P5は,前記⑷のとおり,外部への漏えいに注意することなく,本件メッ セージを送信,転送して,虚偽の事実である本件部分を流出させ,原告に損害を与えたのであるから,過失による不法行為が成立する。 よって,原告は,前記アの不競法に基づく請求と選択的に,P4,P5の使用者である被告に対し,前記アと同じ額の損害賠償の支払を求める。 【被告の主張】 ア不正競争行為について原告と被告は競争関係にないこと,本件部分の内容は虚偽ではないこと,P4,P5が本件部分を告知,流布したといえないことは前記⑴ないし⑶で述べたとおりであり,P4,P5の行為は不正競争行為にあたらないから,原告の請求はいずれも理由がない。 イ不法行為について前記⑷で述べたとおり,P4,P5の行為は不法行為にもあたらないから,原告の請求は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(前提事実及び後掲各証拠又は弁論の全趣旨から認定できる事実) ⑴ シティグループについて(甲2ないし4,22)訴外シティコミュニケーションズは,不動産の売買,交換又は賃貸借並びにその代理媒体業務,経営コンサルタント業務,労働者派遣事業等を目的とする株式会社であり,被告及び訴外シティデザインを含む7社をグループ会社(シティグループ)と は,不動産の売買,交換又は賃貸借並びにその代理媒体業務,経営コンサルタント業務,労働者派遣事業等を目的とする株式会社であり,被告及び訴外シティデザインを含む7社をグループ会社(シティグループ)とする。 訴外シティデザインは,広告,Web,デザインの企画,製作,スマートフォンアプリ開発を事業内容とする株式会社であり,シティグループの店舗内で使用するディスプレイや販促物のデザイン制作等を行っている。 他のグループ会社の事業内容は,インターネット・マンガ喫茶等の企画・運営,スパ事業の企画・運営,アニソンカラオケカフェ等サブカルチャー事業の企画・運 営,スクールの運営,不動産賃貸及び管理等である。 訴外シティコミュニケーションズと被告の本店所在地は同一であるが,訴外シティデザインの本店所在地はこれらと異なる。また,訴外シティコミュニケーションズの代表者は被告の取締役であり,被告の代表者は訴外シティコミュニケーションズの取締役となっている。 ⑵ 本件コンテンツ及びその他のパチンコ店用販促ツールについて ア 「X1」について(甲5,12ないし15,19,20,26,証人P4,原告本人)「X1」は,これを導入したパチンコ店が,顧客のメールやラインのアドレス宛てに,「ただ今より『X1』配信!」等と記載したメッセージ及びスロットゲームに誘導する画像等を送信し,顧客がゲームをプレイして「大当たり」となった場合 に,特典として携帯電話用待ち受け画像等を含む当選画面を表示させることを特徴とする集客用のコンテンツである。 当選画面は,各パチンコ店において独自に設定することができ,様々な情報提供に利用することができるが,典型的には,「大当たりおめでとうございます!!」といった文章やカラフルな星印 ンテンツである。 当選画面は,各パチンコ店において独自に設定することができ,様々な情報提供に利用することができるが,典型的には,「大当たりおめでとうございます!!」といった文章やカラフルな星印や矢印等と共に,特定のアニメのキャラクターとそ のアニメの名称を記載した待ち受け画像を表示することで,これを見た顧客が,その特定のアニメに関連する機種が当日の推奨機種であると推測し,パチンコ店に出向くことを期待するものである。 「X1」は,原告の看板企画として売上の約●(省略)●%を占め,原告が営業を開始した平成21年ころの販売開始以来,全国のパチンコ店数百店舗において導 入されている。また,「X1」は,類似の販促ツールの中で先駆け的な存在であり,その占めるシェアは約●(省略)●割であったが,「X1」を導入した店舗のうち●(省略)●割以上が,特定の機種を示唆する画像を当選画面に使用しているとされる。 なお,原告以外が作成する「X1」に類似するコンテンツは複数あり,いずれも, 当選画面には,「当たりおめでとうございます。待受け画像を保存してお楽しみ下 さい。」等の文章と共に,特定の機種を示唆する画像を表示することができる。 イ 「X3」について(甲6,20,証人P4,原告本人)「X3」は,「X1」の姉妹企画として,平成30年8月から販売開始された。 同コンテンツは,「X1」と同様,顧客のメールやラインのアドレス宛てに,「X3配信!」,「X5」,「PUSH」等の文字を配して,ゲーム(ルーレットゲー ム等,スロットゲーム以外の4種類)に誘導する画像等を配信し,当選画面に,「X6」等の文字及び女性の写真を表示させることを特徴とする集客用のコンテンツである。 当選画面は,各パチンコ店が独自に設定すること ロットゲーム以外の4種類)に誘導する画像等を配信し,当選画面に,「X6」等の文字及び女性の写真を表示させることを特徴とする集客用のコンテンツである。 当選画面は,各パチンコ店が独自に設定することができるが,画像により機種を示唆しようとする場合,パチンコ店は,特定の機種を示唆する格好をした(いわゆ るコスプレ)女性の写真を原告より入手する必要がある。 原告の作成した「X3」の営業資料(甲6)には,「取り扱い機種(X7)の一覧」として,パチンコ・スロット台の機種が複数記載され,また,「X7の画像で機種示唆も可能!!」,「メイン機種を示唆する,女性の画像は弊社でご用意しています。」等と記載されており,当選画面における女性の服装や所持品等により特 定の機種を示唆することができ,写真を見た顧客が,示唆された機種が当日の推奨機種であると推測して,パチンコ店に出向くことを期待できることが,同ゲームを導入するメリットであるとして宣伝されている。 なお,同年10月当時,埼玉県内において「X3」を利用するパチンコ店はなかった。 ウその他の販促イベント等について(甲27ないし34,証人P5,原告本人)本件コンテンツやその類似品のような,顧客にゲームをプレイさせ,当選画面において機種を示唆することができる販促ツール以外の顧客誘引手段として,パチンコ店においては,「来店イベント」や「取材イベント」等と称し,店舗において企画やイベントを催し,その企画名,来店する人物の服装や配られる景品等により, 当たりの出やすい機種を示唆するなどして顧客を誘引することが行われることもあ る。 さらに,特定の機種を示唆するのではなく,顧客のメールアドレス等に対し,店舗情報等の配信を行う場合もある。 このような販促ツ して顧客を誘引することが行われることもあ る。 さらに,特定の機種を示唆するのではなく,顧客のメールアドレス等に対し,店舗情報等の配信を行う場合もある。 このような販促ツールや販促イベントに対する規制の厳しさは,各県により若干の差があり,「X3」の利用に際しても,店舗の所在地により,機種を示唆する画 像を配信する店舗と,単に店舗情報のみを配信する店舗がある。 エ被告における販促ツールの利用状況(甲24,25,乙1,2,証人P4,証人P5)P4は,被告の深谷店の店長を務める前は,被告の川崎市内の店舗に勤務したり,埼玉県の東松山店の店長を務めたりしており,その中で,販促ツールとして「X1」 を利用し,当選画面を作成したことがあった。また,東松山店及び深谷店においては,SNSを通じて新台入替え等の情報を顧客に伝える販促ツールを利用することはあったが,ゲームを使用する販促ツールは利用しておらず,最近では,P4が,他店の情報を入手するため,近隣のパチンコ店の会員になったところ,「X1」の配信を受け,その画面を目にするということがあった。 被告の店長会議において,「X3」が今後商材として販売される旨の説明があり,平成30年7月23日,雑色店で使用するものとして,原告と被告は,「X3」の導入契約を締結した。 ⑶ 本件講習会について(乙2,証人P4)ア本件講習会の開催 本件講習会は,平成30年10月3日,埼玉県公安委員会の通知により開催され,埼玉県警察の担当者が,講師として説明を行ったものである。 本件講習会は,風営法24条6項,風営法施行規則39条2項ないし4項に定める管理者講習のうち,定期講習とされる講習会であり,P4のほか,風営法24条1項に定める埼玉県北地域の管理 たものである。 本件講習会は,風営法24条6項,風営法施行規則39条2項ないし4項に定める管理者講習のうち,定期講習とされる講習会であり,P4のほか,風営法24条1項に定める埼玉県北地域の管理者が約100名参加した。本件講習会は,風営法 その他営業所における業務の適正な実施に必要とされる法令に関して行われるもの とされることから(風営法施行規則39条3項),受講者は,ここで規制の対象になると説明されたことを店舗で行った場合,営業停止等,風営法に基づく行政処分の対象になり得る旨認識するものと解される。 イ本件講習会における説明埼玉県警察の担当者は,本件講習会において,要旨以下の説明をした。 「みなし機」について① 3分の2の店舗に「みなし機」が残っていること② 10日に撤去の通達を出すので,該当機種は速やかに撤去すること③ 整備中などと貼って電源を落とす行為は禁止であること 広告宣伝について ① 埼玉県の取締を今月から徹底的に強化すること② 言い訳は聞かず処分すること,外部がそう感じる広告宣伝をしてはいけないこと③ 店舗からメールでスロットゲームの配信を行い,そのスロットゲームに当選した人に対して,待ち受け画面をプレゼントという形で画像を送り,それにより機 種を示唆するような行為は禁止されること④ 同じようにゲームをして,当選した者に対し,女性が機種を連想させるようなコスプレしている画像を送って販促するものもあるが,これも同様に禁止されること⑤ 取材会社が雑誌やウェブ上で,写真を掲載するなど店の宣伝をすれば処分と なり,勝手に掲載されたというのは処分を免れる理由にならないこと⑥ 店の中でスタッフが,機種を連想させるコスプ ⑤ 取材会社が雑誌やウェブ上で,写真を掲載するなど店の宣伝をすれば処分と なり,勝手に掲載されたというのは処分を免れる理由にならないこと⑥ 店の中でスタッフが,機種を連想させるコスプレをする行為は禁止であること⑦ 機種を示唆するものでなくても,特定日にだけ制服を変更し,変更に法則性があれば処分すること ⑧ 「絆プロジェクト」又はこれに類似する宣伝広告は禁止すること ウ P4の理解 「X1」について担当者の前記イ③の説明は,特定のコンテンツの名称を挙げるものではなかったが,プレゼンテーションソフトにより,規制の対象となる当選画面の例を映写するものであり,その当選画面には,「当選おめでとうございます」という内容の文 字,星印と矢印等と共に特定の機種を示唆する待ち受け画像が表示されていた。P4は,この画面が,かつて自身が利用し,近隣のパチンコ店から送信されてきた「X1」の当選画面と酷似していたこと,及び他に類似したコンテンツを知らなかったことから,担当者は,「X1」を利用して機種を示唆する広告を送信した場合,処分の対象になる旨を説明しているものと認識した。 「X3」について担当者の前記イ④の説明は,特定のコンテンツの名称を挙げたり,画像を示したりするものではなかったが,P4は,以前,店長として出席した会議の中で,「X3」が発売されると聞いたことがあり,その商品の特徴から,曖昧な記憶で,「X4」を利用して,機種を示唆する宣伝を行った場合,処分されるものと認識した。 ⑷ 本件メッセージの送信及び転送(乙2,3,証人P4,証人P5)ア P4の送信P4は,本件講習会の説明により,埼玉県の広告宣伝規制が厳しくなり,本件講習会で禁止された た。 ⑷ 本件メッセージの送信及び転送(乙2,3,証人P4,証人P5)ア P4の送信P4は,本件講習会の説明により,埼玉県の広告宣伝規制が厳しくなり,本件講習会で禁止された事項に違反することのないよう他の店長らにも伝える必要があると考え,本件講習会後,個人的な判断で,店長ラインに本件メッセージを送信した。 その際,P4は,担当者の説明が,「X1」及び「X4」と特定し,これを利用して機種やメーカーを示唆する宣伝を行った場合,処分の対象になるというものであったとの自身の理解に従い,これを店長らに分かりやすく伝えるために,「名指しでX1は禁止。(機種画像を送るなら)」,「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」とする本件部分を,本件メッセージに記載した。 店長ラインは,被告の各店長12名及び被告本社の従業員5名の合計17名が参 加し,必要な情報を共有する目的で使用されるもので,店舗での出来事,近隣の店舗の情報や所轄警察からの注意喚起等の内容で,ほぼ毎日のようにメッセージがやり取りされている。店長ラインの参加者は,そこに記載された内容については,被告の社内のみで共有するものと認識していた。 イ P5の転送 P5は,平成30年10月3日に本件メッセージを閲覧したところ,取材会社が雑誌やウェブに写真を掲載して店を広告宣伝した場合,処分される旨の記載があり,自己の店舗において取材会社2社を利用していたことから,取材会社の各担当者に本件メッセージを転送し,電話で,両会社が加盟している広告協議会で同様の話題が出たかの問合せを行い,その際,本件メッセージは社内の共有内容なので,他に 転送等行わないよう要望した。なお,広告協議会とは,「ぱちんこ業界の諸問題に積極的に関 ている広告協議会で同様の話題が出たかの問合せを行い,その際,本件メッセージは社内の共有内容なので,他に 転送等行わないよう要望した。なお,広告協議会とは,「ぱちんこ業界の諸問題に積極的に関わりを持ち,広告に関して対応及び浸透させる」こと等を目的として,平成28年5月に設立された,上記取材会社両者を含む数十社が加盟する団体である(甲21)。 本件メッセージは,取材会社のうち1社において社内で共有され,さらにその1 社の代表者が,社外に転送した。 ⑸ その後の経緯(甲7,8,16ないし18,20,原告本人)原告は,平成30年10月ころ,営業先のパチンコ店から,「X3」の導入を控えたい旨伝えられるとともに,本件メッセージの転送を受けたことから,本件メッセージについて被告に問い合わせたところ,被告の従業員から,コメントする立場 にないと回答された。また,原告は,同年11月2日,被告の深谷店に電話を掛けたところ,対応したP4は,被告の内部において,会社に迷惑をかけて申し訳ないと謝罪している旨を答えた。 また,原告は,同月30日,埼玉県警察に電話を掛け,本件講習会の内容について問い合わせた。対応した同警察の職員は,本件講習会において,本件コンテンツ の具体的な名称を挙げたり,個人や業者を特定するものを使用したりはしていない 旨回答した。 被告において,本件メッセージについて訂正や,原告に対する謝罪を行ったことはない。 2 争点⑴(原告と被告は,「競争関係」にあると認められるか。)について⑴ 競争関係 不競法2条1項15号は,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為を不正競争行為と定めており,競争関係の要件につき,告知者と相手方が商品の ⑴ 競争関係 不競法2条1項15号は,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為を不正競争行為と定めており,競争関係の要件につき,告知者と相手方が商品の販売を競っているといった現実の競争関係が存する場合には限られないとしても,これが不正競争行為とされている趣旨に照らすと,相手方の商品を誹謗したり,信用を毀損したりするような虚偽の事実を告知すること によって,相手方を競争上不利な立場に立たせ,これによって告知者が競争上不当な利益を得るような関係が存することは必要と考えられる。 ⑵ 原告と被告の関係原告は,パチンコ店向けの販促ツールの開発・販売を行う事業者であり,被告は,パチンコ店を経営する株式会社であるから,被告は原告の商品を購入する顧客とい う立場にあり,同種の商品を取り扱ったり,同種の役務を提供したりするという関係にはない。また,原告の需要者・取引者は主にパチンコ店等の経営者である一方,被告の需要者・取引者は一般顧客であって,被告が他のパチンコ店に販促ツールを販売するといった事実は認められないから,両社の顧客は共通しない。 原告は,①被告が訴外シティコミュニケーションズを筆頭とするシティグループ のグループ会社であり,同グループのうち他のグループ会社である訴外シティデザインが原告と競合する事業を行っていることや,②被告が自らの店舗の顧客に対し,メール等で店舗情報を配信するサービスを行っていることから,原告と被告は競争関係にあると主張する。 しかし,訴外シティコミュニケーションズ,訴外シティデザイン及び被告は,本 店所在地や役員の構成から,グループ会社として近しい関係にあることは認められ るとしても,親子会社の関係にあるとか,一体となって事 ションズ,訴外シティデザイン及び被告は,本 店所在地や役員の構成から,グループ会社として近しい関係にあることは認められ るとしても,親子会社の関係にあるとか,一体となって事業を行っているなど,実質的に同一の会社であることを示す証拠はない。また,訴外シティデザインの主な事業内容は,シティグループの各会社が経営する店舗において使用するディスプレイや販促物のデザイン制作であると考えられ,他のシティグループの会社の事業内容に鑑みても,原告が開発・販売するような,パチンコ店の販促に利用されるコン テンツの作成を行っているとは考えられず,これを裏付ける証拠もない。 原告は,被告の店舗の競合店が原告の販促ツールを導入することを阻止すれば被告の利益となると主張するが,このような関係が競争関係にあるとしても,それは被告と他のパチンコ店との間に存するのであって,被告と原告との間に存するものではない。 ⑶ 本件メッセージの送信と転送前記1⑷アで認定したとおり,P4は,被告の店長らのグループ宛てに本件メッセージを送信したものであるが,仮にそれによって被告が得る利益があるとすれば,それは被告が風営法上の行政処分を受ける可能性を低減する利益であって,競争上,原告を不利な立場に置くことによって得られる利益ではない。 また,同イで認定したとおり,P5は,取材会社を利用した宣伝広告も処分の対象とされる可能性があるとされたことから,取引のある取材会社に確認をするために,本件メッセージを転送したものであるが,これによって得られる利益があるとしても,上記同様,競争上,原告を不利な立場に置くことによって得られる利益とはいえない。 ⑷ まとめ以上によれば,本件メッセージの送信,転送は,競争関係にある他人の れる利益があるとしても,上記同様,競争上,原告を不利な立場に置くことによって得られる利益とはいえない。 ⑷ まとめ以上によれば,本件メッセージの送信,転送は,競争関係にある他人の営業上の信用に関しなされたものとはいえないから,不競法2条1項15号の不正競争行為に,そもそも該当しない。 3 争点⑵(本件部分の内容が,「虚偽の事実」にあたるか。)について ⑴ P4の送信 前記1⑶で認定したとおり,本件講習会において埼玉県警察の担当者は,「X1」あるいは「X3」といった具体的な商品に言及することはなかったが,P4は,プレゼンテーションソフトの画像,説明内容,自己の従前の体験から,「X1」及び「X3」を指摘して,これらを用いて特定の機種を示唆する宣伝を行った場合は行政処分の対象となり得る旨の説明がなされたものと理解したものであり,その理解 が誤りであったとすべき理由はない。 そして,P4は,前記1⑷のとおり,被告の店長らにその趣旨を伝達する目的で,「名指しでX1は禁止。(機種画像を送るなら)」,「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」とする本件部分を本件メッセージにより送信したものである。 担当者の説明と本件部分とを対比すると,担当者が本件コンテンツの名称には直接言及していないのに,本件部分は,本件名称を明示したものとなっているが,上記のとおり,P4の立場では,担当者の説明は,本件コンテンツを特定して説明したと理解し得る内容であり,その理解も誤りとはいえない。また,本件部分の文意も,行政処分の対象となり得るのは,本件コンテンツを利用して特定の機種を示唆 する画像を送る等の行為であると理解し得るものであり,担当者の説明と齟齬はない。 そうすると, ,本件部分の文意も,行政処分の対象となり得るのは,本件コンテンツを利用して特定の機種を示唆 する画像を送る等の行為であると理解し得るものであり,担当者の説明と齟齬はない。 そうすると,本件内容は,担当者の説明を,P4において理解したところに従って伝えたものであり,上述したところを総合すると虚偽の事実とはいえない。 ⑵ P5の転送 同様に,P5が転送した本件メッセージも,虚偽の事実とはいえない。 4 争点⑷(不法行為責任及び使用者責任の有無)について⑴ P4の行為について原告は,P4が,原告の信用を毀損する内容を含む本件メッセージを,外部への漏えい防止策等の手段を講じることなく送信し,最終的に外部に漏えいさせたこと は,過失による不法行為に当たると主張する。 しかしながら,既に検討したとおり,本件メッセージの送信は,本件講習会で受けた説明に基づいて,被告において風営法上の行政処分を受けないよう注意喚起することを目的に,店長らのグループに対してなされたものであって,原告の信用毀損を意図してなされたものではなく,その内容も,前記3で検討したとおり,虚偽というべきものではない。 また,前記1⑷ア認定のとおり,店長ラインは,主に被告の経営する店舗の店長らが,日々の店舗での出来事や近隣の店舗の情報,警察からの指導の内容についての注意喚起の内容等を共有するために使用するものであり,基本的にグループ外の者が閲覧することや外部への公表又は伝達は予定されていない。 以上によれば,P4が店長ラインに本件メッセージを送信したことが,原告の信 用を毀損したり営業を妨害したりする違法な行為に当たるということはできず,また,P4が何らかの注意義務に違反したということもできないから,P4の不 ンに本件メッセージを送信したことが,原告の信 用を毀損したり営業を妨害したりする違法な行為に当たるということはできず,また,P4が何らかの注意義務に違反したということもできないから,P4の不法行為を理由とする被告の使用者責任も成立しない。 ⑵ P5の行為について原告は,P5についても,外部への漏えい防止の措置を講じることなく,本件メ ッセージを取材会社に転送し,その結果これが外部に流出して原告の信用が毀損されたとして,過失による不法行為が成立すると主張する。 しかしながら,本件メッセージの内容は,P4が本件講習会で説明された内容を社内向けに分かりやすく記載したものであって,前述のとおり虚偽とはいえず,P5としては,取材会社を利用した広告宣伝により行政処分を受ける可能性につき, 取材会社の担当者に確認する趣旨で本件メッセージを転送したものであり,その際,社内共有の内容であるから他に共有しないよう要望したのであるから,本件部分が外部の第三者に流布することを予定していたとはいえない。 そうすると,P5が本件メッセージを転送した行為は,社会的相当性を逸脱するような態様で原告の信用を毀損したり営業を妨害したりする違法な行為に当たると いうことはできず,また,取材会社からさらに外部の者に対し本件メッセージの内 容が伝わったとしても,P5が何らかの注意義務に違反したということもできないから,P5の上記行為を理由とする被告の使用者責任も成立しない。 5 結論前記2及び3で検討したところによれば,原告と被告は,不競法2条1項15号が予定する競争関係にはなく,本件内容を含む本件メッセージを送信,転送したこ とは,虚偽の事実の告知,流布には当たらないから,不競法に基づく原告の請求は理由がない と被告は,不競法2条1項15号が予定する競争関係にはなく,本件内容を含む本件メッセージを送信,転送したことは,虚偽の事実の告知,流布には当たらないから,不競法に基づく原告の請求は理由がない。また,前記4で検討したところによれば,不法行為に基づく原告の請求も理由がない。よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官野上誠一 裁判官島村陽子

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