- 1 - 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2(第1事件)(1) 京都府知事が控訴人に対して平成19年12月27日付けでした京都府営水道の水道用水供給に関する平成19年度の基本水量決定処分を取り消す。 (2) 京都府知事が控訴人に対して平成20年4月24日付けでした京都府営水道の水道用水供給に関する平成20年度の基本水量決定処分を取り消す。 3(第2事件)被控訴人は,控訴人に対し,2億6345万7420円及びうち2億5470万7311円に対する平成21年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1(1) 第1事件は,京都府乙訓地域(向日市,長岡京市,α1町)の地方公共団体である控訴人が,京都府営水道の供給料金等に関する条例(以下「本件条例」という。)2条1項に基づき,平成19年度及び平成20年度の「年間における1日当たりの最大の受水量」を3407㎥と定めて申込みをしたのに対し,被控訴人知事が,平成19年度分及び平成20年度分のいずれについても,控訴人に対する「年間における1日当たりの最大の給水量」(本件条例上「基本水量」と定義される。以下「基本水量」という。)をいずれも7300㎥とする基本水量決定を行ったことが,本件条例2条2項で定められた権限を逸脱あるいは裁量権を逸脱し,又は同条で定める手続を経ない- 2 -で行われた違法な行政処分であると主張して,被控訴人に対し,処分の取消しを求めた訴訟(行政事件訴訟法3条2項)である。 第2事件は,被控訴人知事の前記各基本水量決定を受けて被控訴人に基本料金を納付した控訴人が,各基本水量決定の手続は控訴人と被控訴人との契約である しを求めた訴訟(行政事件訴訟法3条2項)である。 第2事件は,被控訴人知事の前記各基本水量決定を受けて被控訴人に基本料金を納付した控訴人が,各基本水量決定の手続は控訴人と被控訴人との契約であるが,双方の意思の合致によって契約が成立した部分は,控訴人の申込みの範囲である基本水量3407㎥/日に限られ,被控訴人知事が控訴人に通知した基本水量7300㎥/日のうち3407㎥を超える部分(3893㎥/日)に対する支払には法律上の原因がないと主張して,不当利得返還請求権(民法703条)に基づき,控訴人が平成19年度及び平成20年度の基本料金として被控訴人に納付した金額のうち,1日当たりの最大の給水量3407㎥を超える部分に相当する2億5470万7311円(平成19年度1億3108万5096円,平成20年度1億2362万2215円)並びにこれに対する原判決別紙「基準日までの遅延損害金計算書」(以下「別紙計算書」という。)記載のとおり平成21年5月18日までの民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金ないし確定利息(民法704条前段)875万0109円及び同月19日から支払済みまで上記同様の遅延損害金ないし民法704条前段の利息の支払を求めた事案である。 (2) 原審は,第1事件請求について,被控訴人知事の基本水量決定は処分性が認められる行政活動とはいえず,行政行為とは異なる公法上の法律関係に基づく法律行為であるから,第1事件の請求に係る部分は訴えの利益がないとして,第1事件に係る訴えを却下した。他方,原審は,第2事件請求については,控訴人と被控訴人との間には,平成10年3月30日付けで基本水量に関する公法上の給水契約の予約といえる「京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書」が締結されており,同協定書では,控訴人に配分する の間には,平成10年3月30日付けで基本水量に関する公法上の給水契約の予約といえる「京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書」が締結されており,同協定書では,控訴人に配分する1日当たりの水量は7300㎥とされているから,同協定書を前提とする控訴人の基本料金の支払には「法律上の原因」があり,控訴- 3 -人の不当利得返還請求は理由がないとして請求を棄却した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。 なお,控訴人は,原審において,第1事件と第2事件の各請求は選択的併合(順位をつけない)であるとし,当審において,被控訴人知事の基本水量決定に関する法的性質については,第2事件に係る主張が主たる主張であるが,第1事件に係る主張も維持すると述べた。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア控訴人控訴人は,住民約1万5000人の福祉の増進を図ることを基本とする普通地方公共団体であり,地方公営企業法2条1項1号に基づく地方公営企業である「α1町水道事業」を経営する水道事業者(水道法6条1項)である。平成12年10月1日,後記イ(ウ)の京都府営水道(乙訓系)を導入した。 イ被控訴人(ア) 被控訴人知事は,昭和60年9月ころ,水道法5条の2第2項に基づく広域的水道整備計画である「京都府南部地域広域的水道整備計画」(以下「本件広域的水道整備計画」という。)を策定した。 (イ) 京都府営水道被控訴人は,公営企業として水道事業を設置しており(京都府公営企業の設置等に関する条例1条),本件広域的水道整備計画に基づき,水道法第3章に定める水道用水供給事業(水道事業者に水道用水を供給する事業〔水道法3条4項〕)である下記「京都府営 ており(京都府公営企業の設置等に関する条例1条),本件広域的水道整備計画に基づき,水道法第3章に定める水道用水供給事業(水道事業者に水道用水を供給する事業〔水道法3条4項〕)である下記「京都府営水道用水供給事業」(昭和62年3月31日厚生大臣認可)を経営している(甲27,乙12,49)。 - 4 -記水道の名称京都府営水道給水能力(一日最大給水量) 23万6800㎥給水区域宇治市,城陽市,向日市,長岡京市,八幡市,京田辺市,木津川市(平成19年3月11日における相楽郡α2町の区域に限る。),控訴人,久世郡α3町,相楽郡α4町水源 α5川水系(α6ダム,α7ダム,α8ダム)(ウ) 乙訓浄水場被控訴人は,京都府営水道用水供給事業の一環として,下記の乙訓浄水場新設事業(乙訓系)を進めた。乙訓浄水場は,平成12年10月1日,向日市,長岡京市及び控訴人(以下併せて「乙訓2市1町」という。)への給水を開始した(乙49)。 記所在地京都市α9水源 α7ダム(取水量0.86㎥/秒)取水河川 α10川(α11橋上流1.6㎞)一日最大給水量 4万6000㎥/日(計画6万8800㎥/日)給水区域乙訓2市1町建設事業費約306億円(2) 本件条例京都府営水道の供給料金については,本件条例(甲1。昭和62年3月17日京都府条例第9号,ただし,その後改正されたもの)によって,次のとおり規定されている。 「 (趣旨)第1条この条例は,京都府営水道の水道用水供給に関して供給料金その- 5 -他必要な事項を定めるものとする。 (給水の申込み等)第2条水道用水の供給を受けようとする市町は,毎年,年間(毎年4月 この条例は,京都府営水道の水道用水供給に関して供給料金その- 5 -他必要な事項を定めるものとする。 (給水の申込み等)第2条水道用水の供給を受けようとする市町は,毎年,年間(毎年4月1日から翌年3月31日までの間をいう。以下同じ。)における1日当たりの最大の受水量を定めて,府の水道事業の管理者の権限を行う知事(以下「知事」という。)に申し込まなければならない。 2 知事は,前項の申込みを受けたときは,当該市町と協議の上,年間における1日当たりの最大の給水量(基本水量)を決定し,通知する。 3 前2項の規定は,前項の通知を受けた市町(以下「受水者」という。)が基本水量を変更しようとする場合について準用する。 (供給料金)第3条供給料金は月額とし,その額は,別表に掲げる受水者の区分に応じ,基本料金の額,従量料金の額及び超過料金の額の合計額とする。 (供給料金の納付)第4条知事は,毎月,前月分の供給料金を受水者に通知する。 2 受水者は,前項の規定による通知を受けた供給料金を知事が指定する日までに納付しなければならない。 (供給料金の減免)第5条知事は,災害による特別の事情があると認めるときは,供給料金を減免することができる。 (延滞金)第6条延滞金の徴収については,京都府税外収入延滞金徴収条例(昭和39年京都府条例第40号)の規定を準用する。この場合において,同条例第2条中「年10.75パーセント」とあるのは,「年6.5パーセント」と読み替えるものとする。 (以下略)」- 6 -(3) 本件条例別表(第3条関係)京都府営水道の料金は,①水道事業を始めるに当たり,先に投資した水源開発や施設整備にかかった固定費(水源費,減価償却費,人件費,支払利息)を負担する料金である基本料金と 件条例別表(第3条関係)京都府営水道の料金は,①水道事業を始めるに当たり,先に投資した水源開発や施設整備にかかった固定費(水源費,減価償却費,人件費,支払利息)を負担する料金である基本料金と,②日常的な給水に必要な変動費(ダムの維持管理費,修繕費,薬品費,動力費)を負担する料金である従量料金の二部料金制が採られている。乙訓2市1町を受水者とする乙訓系の水道供給料金については,本件条例別表(第3条関係)において,次のとおり定められている(甲1,乙50)。 ア基本料金基本水量にその月の日数を乗じて得た水量に,1立方メートル(以下,原文中の表記が「立方メートル」の場合でも「㎥」の表記を用いる。)につき92円を乗じて得た額。 なお,平成20年度からは,上記の92円が87円に改訂されている(甲20の10~33)。 イ従量料金その月の給水量(供給水量)に,1㎥につき36円を乗じて得た額なお,宇治系(給水地域・宇治市,城陽市,八幡市,α3町)は19円/㎥,木津系(給水地域・京田辺市,α2町,α4町)は39円/㎥である。 ウ超過料金 1日当たりの給水量が「配分水量」(知事が受水者と協議の上,給水能力の水量を受水者に配分した1日当たりの水量)を超える場合のその超える部分の水量のその月における合計水量に,1㎥につき251円を乗じて得た額。 (4) 京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書ア被控訴人知事と,控訴人町長との間では,平成10年3月30日付けで,次の内容の「京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書」(乙1。以下「本件協定書」という。)が作成され,甲欄に「京- 7 -都府知事A」の記名及び被控訴人知事印が,乙欄に「α1町長B」の記名及び控訴人町長印がある。 「被 施設整備等に関する協定書」(乙1。以下「本件協定書」という。)が作成され,甲欄に「京- 7 -都府知事A」の記名及び被控訴人知事印が,乙欄に「α1町長B」の記名及び控訴人町長印がある。 「被控訴人知事(被控訴人の水道事業の管理者の権限を行う知事,甲)と控訴人町長(乙)は,京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備,水配分等に関して,次のとおり協定を締結する。 (施設整備)第1条被控訴人知事は,京都府営水道乙訓浄水場(仮称)の整備にあたっては,乙訓地域の社会経済情勢の推移に伴う水需要の動向を踏まえ,過度の先行投資とならないよう,段階的に行うものとする。 2 前項に基づき,当面整備する施設能力(供用開始時における給水能力)は,1日当たり46,000㎥とする。 (拡張整備)第2条京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る将来の拡張整備については,乙訓地域の地下水から地表水への転換状況など水需要の動向を勘案しながら,被控訴人知事控訴人町長協議調整のうえ進めるものとする。 (配分水量)第3条被控訴人知事が,供用開始に伴い控訴人町長に配分する1日当たりの水量は,7,300㎥とし,控訴人町長はこれを引き受けるものとする。 (協議)第4条この協定書に定めのない事項又はこの協定書の事項について疑義が生じたときは,被控訴人知事控訴人町長協議してこれを定めるものとする。」イ被控訴人知事と向日市水道事業管理者との間には,平成10年3月30日付けで,本件協定書と第1条,第2条及び第4条を同じくするが,被控- 8 -訴人知事が供用開始に伴い向日市水道事業管理者に配分する1日当たりの水量を1万2700㎥とする協定書が作成されている(乙33)。 被控訴人知事と長岡京市水道事業管理者との間には,同日付けで,本件協定書と第1条 開始に伴い向日市水道事業管理者に配分する1日当たりの水量を1万2700㎥とする協定書が作成されている(乙33)。 被控訴人知事と長岡京市水道事業管理者との間には,同日付けで,本件協定書と第1条,第2条及び第4条を同じくするが,被控訴人知事が供用開始に伴い長岡京市水道事業管理者に配分する1日当たりの水量を2万6000㎥とする協定書が作成されている(乙34)。 (5) 控訴人町長は,平成12年10月1日の乙訓浄水場の給水開始から平成18年度まで,被控訴人知事に対し,本件条例2条1項に基づき,1日当たり最大受水量(基本水量)を7300㎥とする給水申込みをし,被控訴人知事は,同申込水量で基本水量を決定してきた(乙25,26の各1~7)。 (6) 平成19年度の給水申込み及び基本水量決定通知ア控訴人町長は,平成19年2月27日,被控訴人知事に対し,平成19年度の給水(給水開始希望年月日平成19年4月1日)を受けたいとして,本件条例2条1項に基づき,1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて申込みをした(甲2。以下「本件第1申込み」という。)。 イ被控訴人は,控訴人に対し,本件第1申込みに記載された基本水量が,本件協定書3条に明記された水量と一致しないため申込みを受け付けることができないとし,再度本件協定書の内容を踏まえて申込書を提出するよう求めて申込書を返送した。控訴人は,平成19年3月5日,被控訴人知事に本件第1申込書を再提出した(乙2,3)。 ウ被控訴人知事は,平成19年12月27日,控訴人の基本水量を7300㎥とする旨決定して控訴人に通知した(甲3。以下「本件第1決定」という。)。 (7) 平成19年度の供給料金(甲20の1~9)ア被控訴人は,控訴人に対し,平成19年度の京都府営水道の給水量及び供給料金について, 訴人に通知した(甲3。以下「本件第1決定」という。)。 (7) 平成19年度の供給料金(甲20の1~9)ア被控訴人は,控訴人に対し,平成19年度の京都府営水道の給水量及び供給料金について,下記表1のとおり通知し,基本料金として,基本水量- 9 -7300㎥/日,1㎥当たり単価92円を前提として,合計2億4580万5600円(7300㎥×92円×366日)を請求した。 イ控訴人は,被控訴人に対し,下記表1中の「支払日」欄記載の各日に,「支払総額」欄の金額を支払い,うち基本料金として「基本料金額」欄記載の各金額を支払った。 〈表1 平成19年度〉月別日数支払日支払総額(従量料金を含む) (円)基本料金額(単価92円,7300㎥/日) (円)4~11 244 20.1.11 186,113,360163,870,400 20.1.25 23,504,12020,819,600 20.2.21 23,420,96020,819,600 20.3.25 21,951,97619,476,400 20.4.25 23,551,49620,819,600計 245,805,600(8) 平成20年度の給水申込み及び基本水量決定通知ア控訴人は,平成20年2月27日,被控訴人知事に対し,平成20年度の給水(給水開始希望年月日平成20年4月1日)を受けたいとして,本件条例2条1項に基づき,1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて申込みをした(甲4。以下「本件第2申込み」という。)。 イ被控訴人知事は,平成20年4月24日,控訴人の基本水量を7300㎥/日とする旨決定して き,1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて申込みをした(甲4。以下「本件第2申込み」という。)。 イ被控訴人知事は,平成20年4月24日,控訴人の基本水量を7300㎥/日とする旨決定して控訴人に通知した(甲5。以下「本件第2決定」という。)。 (9) 平成20年度の供給料金(甲20の10~33)ア被控訴人は,控訴人に対し,平成20年度の京都府営水道の供給料金について,下記表2のとおり通知し,基本料金として,基本水量7300㎥- 10 -/日を前提として,合計2億3181万1500円(7300×87円×365日)を請求した。 イ控訴人は,被控訴人に対し,下記表2中の「支払日」欄記載の各日に,「支払総額」欄記載の金額を支払い,うち基本料金として「基本料金額」欄記載の各金額を支払った。 〈表2 平成20年度〉月別日数支払日支払総額(従量料金を含む) (円)基本料金額(単価87円,7300㎥/日) (円) 20.5.2121,649,68019,053,000 20.6.2522,274,95219,688,100 20.7.2521,592,40419,053,000 20.8.2522,417,72819,688,100 20.9.2522,330,78819,688,100 20.10.24 21,560,18419,053,000 20.11.25 22,395,33619,688,100 20.12.19 21,738,31219,053,000 21.1.23 20.11.25 22,395,33619,688,100 20.12.19 21,738,31219,053,000 21.1.2322,499,12419,688,100 21.2.2522,314,76819,688,100 21.3.2520,286,81617,782,800 21.4.2422,346,73619,688,100計 231,811,500 3 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 本案前の答弁(第1事件)- 11 -〔被控訴人の主張〕ア処分性(行政事件訴訟法3条2項)「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうが(最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁),控訴人は,地方公共団体であって「国民」ではない。また,基本水量決定通知は,被控訴人知事が本件条例2条2項に基づいて,年間における1日当たりの最大の給水量を決定し,通知するものにすぎず,「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」ではないから,取消訴訟の対象たる処分とはいえない。 イ狭義の訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)仮に基本水量決定通知が取消訴訟の対象たる処分に当たるとしても,本件第1決定及び本件第2決定(以下併せて「本件各決定」という。)は,いずれもこれに基づいて被控訴人から控訴人に水道用水が供給され,控訴人から被 量決定通知が取消訴訟の対象たる処分に当たるとしても,本件第1決定及び本件第2決定(以下併せて「本件各決定」という。)は,いずれもこれに基づいて被控訴人から控訴人に水道用水が供給され,控訴人から被控訴人への水道料金支払も終了しているから,現時点において取消しを求める法律上の利益がない。 〔控訴人の主張〕ア処分性について(ア) 被控訴人知事は,本件条例に基づき,控訴人の意思とは関係なく基本水量を決定し,これにより自動的に基本料金を決定する。また,被控訴人知事が基本水量を決定した後,受水者がそれに従わず,決定により特定された基本料金を滞納したときは,被控訴人知事は,本件条例6条,地方自治法231条の3,京都府税外収入延滞金徴収条例により,受水者に対し延滞金を賦課した上,訴訟上の手続を経ずに強制執行を行うこ- 12 -とができる。このように,本件各決定は,直接受水者の義務を一方的に形成する行為で公定力を有しており,処分性を有している。 (イ) 前記昭和39年最高裁判決が行為の客体を「国民」とするのは,行政庁との関係で行政庁の処分行為の相手方となり得るものという意味であり,地方公共団体が抗告訴訟の主体となり得ない旨を含むものとは解釈できない。本件は,水道の卸し供給の問題であって行政組織内の内部行為ではなく,受水市町が一般国民と異なる特別の地位に立つことを根拠付ける法令はない。 イ訴えの利益について基本水量決定が行政処分であるならば,取消しがなされるまでは有効であるから,それに基づいて適法に水道用水が供給され,料金の支払も行われるが,水量決定が取り消されれば,これらには法的根拠がなかったことになり,水道料金も返還しなければならないことになる。よって,水量決定の取消しを求める利益が消滅することはない。 (2) 本件各決定 るが,水量決定が取り消されれば,これらには法的根拠がなかったことになり,水道料金も返還しなければならないことになる。よって,水量決定の取消しを求める利益が消滅することはない。 (2) 本件各決定が行政処分である場合,本件各決定の適法性(第1事件)。 〔控訴人の主張〕ア権限逸脱本件条例2条2項は,被控訴人知事が受水者の最大受水量を超える基本水量を決定することを想定していない。このことは,受水者が被控訴人知事に対し年度途中に受水量の変更の申込みを行うことができること(本件条例2条3項),受水者が配分水量を超えて受水した場合に従量料金よりもはるかに高いペナルティとしての超過料金が課されることから推認される。以上のとおり,被控訴人知事には,各受水者の申込最大受水量を超えて基本水量を決定する権限がないから,本件各決定は,権限を逸脱するものであり,本件条例2条2項に違反する。 イ裁量権逸脱- 13 -(ア) 仮に被控訴人知事に受水者の申込最大受水量を超えて基本水量を決定する権限があるとしても,それは微調整を行うためのものにすぎず,受水者が望まない水を強制的に給水する権限を被控訴人知事に与えたものではない。これまでの経緯や控訴人の実情を考慮した上で公平妥当な決定がなされない限り,被控訴人知事の基本水量決定は,裁量を逸脱した違法なものとなる。 (イ) これまでの経緯a 控訴人は,受水量の前提とされた工業用水の需要調査にも,α7ダムの水量決定にも実質的に関与していない。 (a) 昭和47年9月,経済企画庁(当時)は,α5川水系における水資源開発基本計画を全部変更し,α7ダム建設事業は治水目的のダムから利水も含む多目的ダムに変更された。この時点で水需要調査等は行われていなかったが,α7ダムは,新規利水容量約640万㎥,開発 る水資源開発基本計画を全部変更し,α7ダム建設事業は治水目的のダムから利水も含む多目的ダムに変更された。この時点で水需要調査等は行われていなかったが,α7ダムは,新規利水容量約640万㎥,開発水量3.7㎥/秒と定められた。 (b) 昭和49年6月,被控訴人は企画調査室を主体としてα12川治水利水対策協議会(以下「治利協」という。)を設立し,その下流部会(以下単に「下流部会」という。)に,被控訴人,京都市,向日市,長岡京市及び控訴人が参加した。昭和54年,下流部会において「α12川下流部における工業用水使用量等調査」(以下「本件アンケート」という。)が実施され,昭和55年11月に治利協に結果が提出された。本件アンケートは,その後の水量決定の基礎となったが,調査内容はすべて京都府が作成し,控訴人ら下流部会参加市町は実質的に関与していなかった。しかも,本件アンケート結果及び昭和55年11月の治利協総会報告によれば,水源費を除いた金額で既に工業用水道の資産単価が事業所の限界費用を超えており,工業用水道として経営が成り立ち得ないことは明らかであ- 14 -った。 (c) 治利協は,本件アンケート結果等を基に,昭和56年,「α12川下流地域に係る新規必要水利権調査」を発表した。上記水利権調査のうち工業用水の需要予測は,前記(b)のとおり需要調査が曖昧である上,被控訴人が一方的に定めた地下水から表流水(京都府営水道)への転換量算出方法が根拠に乏しいという問題があった。 (d) 水利権調査の結果,控訴人における表流水(府営水道)の需要予測は,水道用水が5600㎥/日,工業用水が6400㎥/日とされた。治利協は,上記結果を基に,府内の下流地域(右岸)の新規必要水量を6万8800㎥/日(0.86㎥/秒),控訴人の受水量を1万2000㎥/日 道用水が5600㎥/日,工業用水が6400㎥/日とされた。治利協は,上記結果を基に,府内の下流地域(右岸)の新規必要水量を6万8800㎥/日(0.86㎥/秒),控訴人の受水量を1万2000㎥/日(上水用5600㎥/日,工業用水6400㎥/日)と定め,以後,この数字が,被控訴人が乙訓2市1町に京都府営水道の費用負担を押しつける根拠とされた。 b 被控訴人は,自ら経営責任を果たすべき工業用水分の水量を受水市町に押しつけ,控訴人が再考を求め続けたにもかかわらず取り合わなかった。 (a) 昭和57年11月,京都市が工業用水道事業(一般の需要に応じ工業用水道で工業用水を供給する事業)の計画から離脱し,水道基本計画も乙訓地域のみが対象となったことから,工業用水道の採算がとれないことは一層明白になった。しかし,京都市分として予測されていた水量が減少することはなく,総量0.86㎥/秒はそのまま維持された。 (b) 被控訴人は,昭和59年3月の「乙訓地域水道基本計画調査結果」及び,同年10月23日の同調査結果に係る説明会において,一方的に工業用水道を上水道に一本化させ,受水市町の責任で事業所への配分・料金徴収を行わせるよう方針を転換し,費用負担等の- 15 -責任を受水市町に押しつけた。これに対し,乙訓2市1町の同意や合意の類は一切なく,理解を得た事実もなかった。 (c) 昭和60年7月,控訴人は被控訴人の要請に応じ,「京都府南部地域広域的水道整備計画の策定について(回答)」(乙11)を提出した。しかし,上記同意は,広域的水道整備計画,すなわち,水道事業を自治体を超えて広域化することに対する同意にすぎず,水量の引受けや固定費用の負担等についての同意ではないし,本件広域的水道整備計画の内容が確定していない状態で求められた同意であるから,そ 水道事業を自治体を超えて広域化することに対する同意にすぎず,水量の引受けや固定費用の負担等についての同意ではないし,本件広域的水道整備計画の内容が確定していない状態で求められた同意であるから,その後の受水量を拘束するものではない。 (d) 昭和61年11月27日,乙訓2市1町は,被控訴人に対し,当初被控訴人が工業用水も含めて予測した水量(向日市1万6800㎥/日,長岡京市4万㎥/日,控訴人1万2000㎥/日)での受水申込みを行った。しかし,この申込みは,被控訴人において,1日最大受水量を記載済みの申込書を示し,事業認可申請のための形式的資料と説明することによりなされたものであり,被控訴人から指示された形式的申込みにすぎない。 (e) 控訴人は,昭和61年11月27日,「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」(乙15)を提出するのに併せて,「京都府営水道用水供給事業の推進について」(甲14)を提出し,1万2000㎥/日の水量が押しつけられれば,控訴人の水道事業財政が破綻することを述べ,被控訴人として責任ある対応を求めた。 c 本件協定書は「基本水量」を定めたものではない。 (a) 平成10年3月30日,α7ダム竣工に伴い,被控訴人と乙訓2市1町との間で本件協定書が締結された。本件協定書は,給水能力の限界の枠を受水者に割り当てた「配分水量」を定めたもので,「基本水量」を定めたものではない。このとき,乙訓浄水場の給水- 16 -能力が6万8800㎥/日から4万6000㎥/日に,控訴人の配分水量が1万2000㎥/日から7300㎥/日に減量されたが,これは,6万8800㎥/日という最終的な目標に向けての段階的整備であり,工業用水分が削減されたわけではない。 (b) 控訴人は,平成10年3月30日,事業変更の許可申請を行った。 減量されたが,これは,6万8800㎥/日という最終的な目標に向けての段階的整備であり,工業用水分が削減されたわけではない。 (b) 控訴人は,平成10年3月30日,事業変更の許可申請を行った。これは,当時,控訴人が被控訴人企業局に対し水量の減少を申し出たところ,被控訴人企業局から,1万2000㎥/日の水量でなければ,供給水量確約書を交付しないと返答されたためであり,被控訴人による水量の押しつけの結果である。 (ウ) 控訴人の実情控訴人は,平成12年9月末までは,水道事業として供給する全ての水を地下水で賄っており,平成11年度までの損益計算は毎年4000万円~7000万円の黒字であった。 しかし,控訴人の水道会計は,京都府営水道を導入した平成12年度から,単年度の損益計算が赤字に落ち込み,以後,単年度の損益計算は毎年赤字であり,同年度から平成19年度までの単年度赤字の累積額は,8億4203万2000円に達した。この赤字の原因は,平成12年10月以降の京都府営水道の導入により「原水及び浄水費」が大幅に増加したことに尽きる。 この間,控訴人は,水道事業に関わる人員を削減して人件費を抑制するなどの経営努力を行った結果,平成14年度に1億8948万6000円まで上がった単年度の赤字を,平成19年度には7348万円まで圧縮することに成功した。しかし,控訴人の経営努力による経費削減は既に限界に達しており,「原水及び浄水費」を削減しない限り,控訴人の水道会計は赤字を脱却することができない。 また,控訴人の町民の水道利用料金は,京都市,向日市,長岡京市等- 17 -の他の地方公共団体と比べても高く,住民に負担を転嫁することも不可能な状況であって,このままでは早晩控訴人の水道会計が破綻することは避けられない状態である。 (エ) 日市,長岡京市等- 17 -の他の地方公共団体と比べても高く,住民に負担を転嫁することも不可能な状況であって,このままでは早晩控訴人の水道会計が破綻することは避けられない状態である。 (エ) 以上の事実を考慮すれば,申込最大受水量の2倍もの基本水量を決定する本件各決定は,被控訴人知事に与えられた権限をはるかに逸脱するものであり,本件条例2条2項に違反するだけでなく,府営水道導入前から多量の水を受水することへの懸念を表明し,被控訴人知事に「配慮」「財政的措置」を求めていた控訴人に対し,過大な金銭的負担を負わせ,その会計を破綻に追い込み,自治を破壊するものである。このように,本件各決定は,被控訴人知事の裁量権をはるかに逸脱したものであり,条例2条2項に違反する違法な処分であるから,取り消されなければならない。 ウ本件各処分に至る手続の違法性(ア) 本件条例2条2項では,当該市町との「協議」は,基本水量決定の手続的要件とされ,給水申込みを行う市町と基本水量を決定する被控訴人との間で水量に差異がある場合に,当該市町との協議を行わないまま基本水量決定を行うことは,重大な手続違反といわざるを得ない。そして,当該市町との「協議」とは,単に協議の機会を持つに止まらず,被控訴人側と申込市町の側が,人口の増減などの水需要に関わる事情の変動や実際の使用状況の変化,更には財政状況などを含め様々な要因を把握し,適正妥当な基本水量を定めるための機会として求められているものであるから,相互の状況を把握し得るだけの実質的な内容を伴う協議であることを要し,不利益処分の性質からいえば,控訴人には告知聴聞の機会が与えられなければならない。 (イ) 本件各決定は,次のとおり,いずれも控訴人の水道事業会計の実態や実際の水需要量等を考慮した実質的な協議が行われ 益処分の性質からいえば,控訴人には告知聴聞の機会が与えられなければならない。 (イ) 本件各決定は,次のとおり,いずれも控訴人の水道事業会計の実態や実際の水需要量等を考慮した実質的な協議が行われないままなされ- 18 -たものであり,本件条例2条2項に反する違法な処分である。 a 本件第1決定について被控訴人は,平成19年3月,本件第1申込みの受理を拒絶し,その後も本件第1申込みの白紙撤回を求め,白紙撤回をしない限り協議することはないという態度に終始した。申込み自体の撤回を求める話し合いは,条例にいう「協議」とは解し得ず,申込みを拒絶している以上,協議の機会の提供にも当たらない。 b 本件第2決定について被控訴人は,本件第2申込みについても撤回を求め,撤回しない限り,協議には応じられないという態度に終始した。また,被控訴人は,乙訓上水道事業経営健全化検討会への控訴人の参加について,本件第2申込みの撤回が参加条件であるとして出席自体を拒否し,後には,形式的に案内文を送付するものの,控訴人には事前の日程調整もなく,開催日の1日か2日前に突如として案内文を送付してくるなど,控訴人の出席を露骨に拒む姿勢を見せた。このような態度は,到底「協議」の実態を伴っていないものといわざるを得ない。 〔被控訴人の主張〕ア権限逸脱の主張は争う。 本件条例における基本水量の決定は,被控訴人知事が,関係市町からの要請に基づいて広域的水道整備計画(水道法5条の2第1項,2項)を定めた被控訴人の立場において,受水市町間の調整として行うものとして,その合理的な裁量に委ねられているものであり,申込みにおける最大受水量を超えて決定できないという制約はない。 イ裁量権逸脱の主張は争う。 (ア) 本件協定書は,控訴人と被控訴人との間で,基本水 その合理的な裁量に委ねられているものであり,申込みにおける最大受水量を超えて決定できないという制約はない。 イ裁量権逸脱の主張は争う。 (ア) 本件協定書は,控訴人と被控訴人との間で,基本水量を7300㎥/日とする旨合意したという意味を持つ。 - 19 -a 乙訓系京都府営水道は,水道法5条の2に従い,控訴人,長岡京市及び向日市の共同要請に基づいて策定した本件広域的水道整備計画に基づき整備されたものであり,水道事業の固定費は,受益者負担の原則により,受水市町である控訴人,長岡京市及び向日市が基本料金として負担する。受水市町間での基本料金の分担は,一般には,配分を受ける水量(権利枠)の割合に応じて負担するのが公平とされており,本件においても,乙訓浄水場の整備に向けて控訴人ら市町への配分水量を決める際,それが配分を受ける権利を定めるものであるとともに,配分水量に応じた固定費の負担を引き受けるものであることを前提に協議がされ,本件協議書が締結された。 b 向日市1万6800㎥/日,長岡京市4万㎥/日,控訴人1万2000㎥/日の合計6万8800㎥/日(0.86㎥/秒)という数字は,昭和53年の控訴人ら市町による調査・予測を基に,下流部会が昭和57年に取りまとめた数字である。また,向日市長は,昭和57年治利協総会において,控訴人を含む関係市町を代表する形で,工業用水への参加を検討していた京都市の離脱にかかわらず,乙訓2市1町の将来人口や水需要の予測などを踏まえ,α7ダムにおいて被控訴人が0.86㎥/秒の水利権を確保してほしいと陳情した。控訴人は,これらの事情を理解した上で,配分水量1万2000㎥/日として策定された広域的水道整備計画に同意した。 c 被控訴人は,工業用水の表流水への転換には時間がかかると考えられたこと,控訴人ら 訴人は,これらの事情を理解した上で,配分水量1万2000㎥/日として策定された広域的水道整備計画に同意した。 c 被控訴人は,工業用水の表流水への転換には時間がかかると考えられたこと,控訴人ら受水市町の要望があったことを踏まえて,段階整備を実施することにし,乙訓浄水場を当面4万6000㎥/日の給水能力で建設し,被控訴人が確保した水利権との差を当面被控訴人が負担することにした。その上で,被控訴人と各受水町村との間で本件協定書が締結作成された。 - 20 -最大給水量4万6000㎥/日の各受水市町への割振りとなる配分水量の決定については,配分水量という権利枠の大きさに応じて固定費を分担する責任を果たさせるべく,関係受水市町である控訴人,長岡京市及び向日市の三者で協議調整してもらった。控訴人は,他の2市と協議調整して自ら配分水量を7300㎥と決定し,1日当たり最大給水量として権利を確保するとともに,同量を固定費負担の基となる(将来の給水開始時には基本水量となる)水量として引き受ける旨誓約した。 本件協定書は,配分水量を控訴人の枠として認めると同時に,基本水量という言葉こそ用いていないものの,「甲(京都府知事)が,供用開始に伴い乙(控訴人町長)に配分する1日当たりの水量は,7300㎥とし,乙はこれを引き受けるものとする。」として,控訴人が同水量を引き受ける義務をも規定したことにより,基本水量を7300㎥/日とすることを基本的に合意したものである。各協定書により,控訴人が4万6000㎥/日のうち7300㎥/日,長岡京市が2万6000㎥/日,向日市が1万2700㎥/日をそれぞれ配分水量とするとともに,その割合で基本水量を分担するため,同量を基本水量として引き受けることが合意されているもとでは,配分水量と併せて関係市町と協議するこ 日,向日市が1万2700㎥/日をそれぞれ配分水量とするとともに,その割合で基本水量を分担するため,同量を基本水量として引き受けることが合意されているもとでは,配分水量と併せて関係市町と協議することなしに自分の基本水量のみを変更することは不可能である。 (イ) 本件協定書が,控訴人と被控訴人が基本水量を合意した意味をもつとしても,そのことによって本件条例の構造が変わるわけではない。知事が行う決定は,受水市町の申込みに拘束されるものではなく,申込みを行った受水市町の意向のほか,他の受水市町との調整,その他広域的水道整備事業が実施された経緯や従前の経過なども考慮して,裁量権の合理的な行使をもってなされるべきこととなる。 - 21 -本件においては,控訴人町長と被控訴人知事との間で7300㎥/日をもって基本水量とする本件協定書が締結されていること,控訴人からは平成19年度及び平成20年度とも3407㎥/日を1日当たりの最大の受水量とする申込みがなされたが,基本水量変更に向けての長岡京市及び向日市との協議調整がなされておらず,両市は各協定書どおりの申込みを行っていたこと,控訴人自身,平成12年度の給水開始から平成18年度までは本件協定書を遵守し,7300㎥/日での申込みを継続してきたことなどの事情が認められる。これらの事情によれば,被控訴人知事が平成19年度及び平成20年度の各基本水量を決定するに当たり,裁量権行使の濫用や逸脱があったものとは認められない。 ウ手続の違法性について本件協定書は,被控訴人知事と控訴人とが毎年基本水量についての協議を行うことに代えて,あらかじめ基本水量を合意したものであり,条例2条2項に定める「協議」に代替するものである。 被控訴人と控訴人とは,本件第1決定までに9回,本件第2決定までに3回の協議を 協議を行うことに代えて,あらかじめ基本水量を合意したものであり,条例2条2項に定める「協議」に代替するものである。 被控訴人と控訴人とは,本件第1決定までに9回,本件第2決定までに3回の協議を実施している。 (3) 本件各決定は契約に基づく意思表示であり,控訴人町長の申込水量3407㎥/日を超える部分に対応する基本料金については,意思の合致がないものとして契約が不成立であるか(第2事件)。 〔控訴人の主張〕ア被控訴人知事による「1日当たりの最大の給水量」(基本水量)の決定,通知(本件条例2条2項)は,契約上の行為である。 水道利用の法律関係は,水の売買であり,水道が敷設されても,住民は水を買う義務を負わない。京都府営水道事業は,水道法第3章(同法26条以下)が規定する水の卸売業であるが,小売業と同じく水の売買であり,利用強制の制度,特に権力関係とするような規定はない。 - 22 -本件条例2条1,2項によれば,基本水量の決定は,被控訴人知事が一方的に行うのではなく,受水市町の「年間における1日当たりの最大の受水量」を定めた「申込み」を受けて,受水市町との「協議」を必須の要件として行うとされており,協議がまとまらないまま被控訴人知事が基本水量を定めて通知しても,当事者間で合意に達したものではないので,契約上の効力は生じないことになる。 イ控訴人と被控訴人の関係が給水契約である以上,被控訴人知事の決定,通知は,意思の合致の過程とみるほかはなく,法理論上,申込水量を下回る決定はあり得ても,申込水量を上回る決定はあり得ない。したがって,本件第1申込み及び本件第2申込みのいずれについても,被控訴人知事が7300㎥/日の「決定」「通知」をした時点で,より数量の少ない3407㎥/日の範囲で意思が合致し,契約が成立したと解すべきで て,本件第1申込み及び本件第2申込みのいずれについても,被控訴人知事が7300㎥/日の「決定」「通知」をした時点で,より数量の少ない3407㎥/日の範囲で意思が合致し,契約が成立したと解すべきである。 よって,支払義務が発生する基本料金は,平成19年度分は3407㎥×366日×92円=1億1472万0504円を日割計算で各月に割り付けた金額,平成20年度分は3407㎥×365日×87円=1億0818万9285円を日割計算で各月に割り付けた金額となる。逆にいえば,被控訴人が7300㎥/日を前提にして控訴人に基本料金を請求した場合,その請求のうち3407㎥/日を超える3893㎥/日分については法律上の原因がないことになる。 控訴人は,被控訴人に対し,いずれも基本水量7300㎥は容認できない旨の異議をとどめた上で,控訴人の主張が最終的に実現しなかった場合に発生する延滞金の発生を事前に回避するため,前記第2の2(7)及び(9)のとおり,被控訴人主張の基本料金額を支払った。その結果,被控訴人には,平成19年度分について3893㎥×366日×92円=1億3108万5096円,平成20年度分について3893㎥×365日×87円=1億2362万2215円の不当利得が発生した。 - 23 -ウ被控訴人は,遅くとも第2事件の訴状送達の日である平成20年7月9日から各利得に法律上の原因がないことを覚知しており,利得について悪意である。よって,被控訴人には,上記訴状送達日前に支払済みの分については,訴状送達の日の翌日から遅延損害金ないし利息の支払義務があり,それ以降の分については,控訴人による支払の日の翌日から遅延損害金ないし利息の支払義務があり,平成21年5月18日分までの確定額は,原判決別紙計算書のとおり875万0109円である。 〔被控訴 り,それ以降の分については,控訴人による支払の日の翌日から遅延損害金ないし利息の支払義務があり,平成21年5月18日分までの確定額は,原判決別紙計算書のとおり875万0109円である。 〔被控訴人の主張〕ア被控訴人知事による基本水量の決定は,次のとおり,本件条例を根拠とする行政処分であり,受水市町の申込みと被控訴人知事の承諾という意思表示の合致としてされるものではない。 (ア) 京都府営水道は,控訴人ら受水市町の要望に基づく広域的水道整備計画に基づき,被控訴人が多額の費用を投じて水利権を確保し,施設整備を行った水道用水供給事業(水道法第3章)であって,住民に水を供給する水道事業(同法第2章)とは全く性質を異にしており,買うか買わないかは自由という契約自由の原則が妥当する場面ではない。 (イ) 基本水量は,使用水量のように,その後の実際の使用に応じて変動するものではなく,施設設備費等の固定費を受益者に転嫁するための基本料金を決定する要素である。よって,その変更には,他の受水市町との調整が必要であり,被控訴人知事が受水市町間の調整を踏まえて公平適切に決定すべきものである。 (ウ) 本件条例2条の「協議の上」知事が「決定し,通知する」という文言は,被控訴人知事の決定が市町の申込みの内容に拘束される構造とはなっておらず,あくまで協議を踏まえて被控訴人知事が決定し,受水市町に通知するという趣旨であり,両者の意思表示が合致して成立する私法上の契約とは明らかに性質を異にするものである。 - 24 -(エ) 本件条例6条は,延滞金を徴収することができるとしているが,条例の定めによって延滞金を徴収することができるのは,地方公共団体が有する債権のうち,地方自治法231条の3第1項に規定する「分担金,使用料,加入金,手数料及び過料その他の普 ができるとしているが,条例の定めによって延滞金を徴収することができるのは,地方公共団体が有する債権のうち,地方自治法231条の3第1項に規定する「分担金,使用料,加入金,手数料及び過料その他の普通地方公共団体の歳入」である公法上の債権のみであり(同条2項),水道水供給をめぐる被控訴人と受水市町との関係が私法上の契約関係でないことは,このことからも明らかである。水道用水供給にかかる債権は,地方自治法231条の3第3項の「法律で定める使用料」以外の使用料債権として,滞納処分の例により徴収することはできないが,だからといって私法上の債権となるものではない。むしろ,本件条例は,督促状を発付し(同法231条の3第1項),延滞金を徴収することができることを予定しており(同条2項),水道供給料金を公法上の債権として扱おうとしている。 イ本件各決定は,その内容の適否にかかわらず,取り消されない限り効力を有し(公定力),しかも,前記(2)〔被控訴人の主張〕のとおり,手続的にも内容的にも本件条例及び本件協定書に適合し,裁量権の逸脱又は濫用もないから取り消すべき事由がない。よって,平成19年度及び平成20年度の基本料金には,本件各決定という「法律上の原因」がある。 (4) 仮に基本水量の決定が意思表示(契約)によって行われるものであるとしても,本件協定書が締結され,被控訴人知事がこれに基づいて本件各決定をしている以上,被控訴人が控訴人から支払を受けた基本料金には「法律上の原因」があるか。 〔被控訴人の主張〕ア被控訴人知事が控訴人に1日当たりの水量7300㎥を配分することを約し,控訴人がこれを引き受ける旨を約した本件協定書が締結され,被控訴人知事が本件協定書に基づいて本件各決定をした以上,被控訴人が控訴人から支払を受けた基本料金には「法律上の 00㎥を配分することを約し,控訴人がこれを引き受ける旨を約した本件協定書が締結され,被控訴人知事が本件協定書に基づいて本件各決定をした以上,被控訴人が控訴人から支払を受けた基本料金には「法律上の原因」がある。 - 25 -(ア) 被控訴人知事と控訴人の間では,本件協定書をもって基本水量を7300㎥/日とする双方の予約がなされている。被控訴人知事及び控訴人は,基本水量を7300㎥/日とする場合には,予約完結権を行使すればよく,相手方の承諾は不要であるが,それと異なる基本水量を求める場合には,予約完結権を行使することなく,改めて申込みの意思表示をして相手方の承諾を得なければならない。控訴人がした基本水量を3407㎥/日とする申込みは,被控訴人知事が承諾しなかったため不成立となり,7300㎥/日を基本水量とする被控訴人知事の決定については,予約完結権の行使として契約が成立することになるので,「法律上の原因」があることになる。 (イ) 基本水量を定める契約自体は,本件条例に基づく申込みと承諾の意思表示によって,留保や制限なくなされ得るが,本件協定書による引受義務に反する控訴人の申込みは別途債務不履行となる。本件条例に基づいてなされる契約自体には留保を認めない結果,契約としては意思表示の合致する3407㎥/日の範囲でしか成立しないこととなるが,そうした控訴人の行為は,7300㎥/日を引き受けるとした本件協定書に基づく義務に違反することになり,控訴人は,被控訴人に対し,基本水量を7300㎥/日とした場合の基本料金との差額分について,債務不履行に基づく損害賠償義務を負うことになる。その結果,3407㎥/日の基本料金を超える分についても「法律上の原因」があることとなり,不当利得は成立しない。 (ウ) 控訴人は,自ら,被控訴人知事に水道水供 基づく損害賠償義務を負うことになる。その結果,3407㎥/日の基本料金を超える分についても「法律上の原因」があることとなり,不当利得は成立しない。 (ウ) 控訴人は,自ら,被控訴人知事に水道水供給事業の整備を要請して,その費用を支出させておきながら,そうした固定費を水道料金の基本料金として反映させるための基本水量について責任ある分担をせず,工業用水分の負担などへの配慮として1万2000㎥/日を7300㎥/日に軽減する合意を取り付けた。にもかかわらず,控訴人が更にその半- 26 -分近い3407㎥/日での申込みをし,その差額を「不当利得」として請求することは,権利の濫用として許されない。 イ時機に後れた攻撃防御方法の却下申立てに対する反論被控訴人は,当初から,仮に基本水量の決定が契約であるとされる場合でも,本件協定書の存在により「法律上の原因」があるから,基本料金のうち3407㎥/日を超える部分に対応する金員の受領が不当利得とならないと主張しており,前記アの各主張は,本件協定書の存在により「法律上の原因」があることになるという従前からの主張について,いくつかの法律構成を例示して敷衍したものにすぎず,禁反言の法理違反や時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 〔控訴人の主張〕ア上記〔被控訴人の主張〕アの主張は,禁反言の法理に違反して許されず,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきである。 控訴人は,原審第1回口頭弁論期日前から,行政処分法理に基づく行政処分取消請求訴訟と契約法理に基づく給付請求訴訟の双方を提起し,原審第1回口頭弁論期日で,いずれかの訴訟形式に固執するものではないとの態度を明らかにしており,その後の口頭弁論期日において,今後契約法理の側面に比重を移すとの見解も明らかにした。 上記経緯を経た後,被 1回口頭弁論期日で,いずれかの訴訟形式に固執するものではないとの態度を明らかにしており,その後の口頭弁論期日において,今後契約法理の側面に比重を移すとの見解も明らかにした。 上記経緯を経た後,被控訴人は,平成20年12月25日の原審第4回口頭弁論期日において,「本件について当事者間の意思の合致は要しない。この点に関し,意思の合致の主張はしない。」と言明したが,上記〔被控訴人の主張〕アは,「意思の合致」による契約法理に基づく主張であり,上記言明,主張に違反するから,禁反言の法理に違反し,許されない。 また,被控訴人の上記主張は,平成21年7月17日の原審第8回口頭弁論期日において,原審での審理の終結に向け,証拠調べの期日と最終弁論期日が指定された後に提出されたものであるから,時機に後れて提出さ- 27 -れた防御方法として主張自体却下されるべきである。 イ本件協定書は,控訴人に対する法的拘束力がなく,その存在をもって,基本料金の支払に法律上の原因があるとすることはできない。 本件協定書は,協定締結の当事者が,京都府知事Aとα1町長Bとされ,権利義務の帰属主体(地方自治法147条,234条5項)である被控訴人と控訴人を表す形になっていないから,控訴人を法的に拘束する契約ではなく,政治家としての控訴人町長の意思表示にすぎない。また,本件協定書は,「配分水量」の対価である水道料金の規定も契約期間の定めもなく,具体的な権利義務を定めていないから,控訴人に対し当然に「配分水量」を申し込まなければならないという拘束力を発生させるものではない。 ウ本件協定書をもって,基本水量を7300㎥/日とする双方の予約がなされていると解することはできない。 (ア) 本件協定書は配分水量についてのものであり,基本水量と配分水量は明確に異なる。このよ ウ本件協定書をもって,基本水量を7300㎥/日とする双方の予約がなされていると解することはできない。 (ア) 本件協定書は配分水量についてのものであり,基本水量と配分水量は明確に異なる。このような性格の異なるものを公的な文書について意味を読み替えることはあってはならない。 (イ) 被控訴人は,本件協定書締結までに繰り返された非公式の協議において,本件協定書の趣旨を「給水能力についての協定書」と説明し,「配分水量」が,控訴人が基本水量を義務として引き受けたことを意味するとは一度も説明しなかった。控訴人は,府営水道料金の負担が過大になることを強く危惧し,繰り返し被控訴人に質問したが,被控訴人は,本件協定書の締結が控訴人が危惧する事態に結びつくものではないとの説明を繰り返しており,表示行為と認識が配分水量についてのものとして一致している。 (ウ) 控訴人が平成12年から平成18年まで基本水量を7300㎥/日とする給水申込みをした事実及び,被控訴人が乙訓系各受水市町水道- 28 -事業管理者に平成12年5月10日付け通知(乙37)を発し,「年間における一日当たりの最大の受水量」を「平成10年3月30日付けで京都府知事と各受水市町水道事業管理者等との間で締結した協定書による配分水量」とするよう指示した事実は,どちらも本件協定書締結後の事実であり,本件協定書締結行為の意味内容を判断する前提にはならない。そもそも,本件協定書が基本水量に関して合意したものであるならば,被控訴人が上記通知を行う必要はない。 (エ) 被控訴人は,平成16年4月1日から,乙訓2市1町が負担する基本料金を87円から92円に増額し,自ら負担すると宣言した68800分の22800の建設事業費を既に乙訓系の水道料金に転嫁している。これは,控訴人に対して7300㎥/日 ら,乙訓2市1町が負担する基本料金を87円から92円に増額し,自ら負担すると宣言した68800分の22800の建設事業費を既に乙訓系の水道料金に転嫁している。これは,控訴人に対して7300㎥/日を超える費用負担を強いていることに他ならず,被控訴人は,ダム建設費についても,将来的には水道料金に転嫁することを当然の前提としている。 (オ) 本件協定書を給水契約の予約ととらえ,予約完結権の行使による給水契約の成立を認めることは,本件条例の定めを全く無視して条例外で基本水量について合意することを正面から認めることを意味する。本件条例は,基本水量の決定について,まず受水申込みをする市町に,年間における1日当たりの最大の受水量を定めて申し込む権限を認めている。本件協定書を基本水量に関する公法上の給水契約の予約ととらえるならば,被控訴人が同意しない,すなわち予約完結権を行使する場面において,「予約」に反する申込みは一切不可能な事態を招くことになり,受水申込みをする市町の権限を本件条例を離れて剥奪することになる。 第3 当裁判所の判断 1 本件に至る経緯前記第2の2の前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を左右するに足りる証拠はない。 - 29 -(1) 控訴人の水道事業は,昭和35年9月の給水開始以来,生活用水及び工業用水ともに全量地下水を水源としてきたが,昭和40年代以降,急激な都市化による人口の急増と水道普及率の上昇,大規模開発や生活様式の変化により水需要が急増し,地下水の過剰汲上げが行われた結果,取水井戸の水位低下や水質悪化,地盤沈下の問題が発生し,緊急課題として,地下水保全や代替水源の確保が検討されるようになった。被控訴人は,昭和46年ころまでに「α5川水系等にかかる水需要量調査」を実 取水井戸の水位低下や水質悪化,地盤沈下の問題が発生し,緊急課題として,地下水保全や代替水源の確保が検討されるようになった。被控訴人は,昭和46年ころまでに「α5川水系等にかかる水需要量調査」を実施し,同年10月27日,経済企画庁(当時)でその結果を説明し,控訴人について,昭和55年の1日最大受水量を1万2450㎥,1日最大取水量を1万3380㎥と予測した上で,同需要量の全量を賄うべく,昭和50年には水源を地下水から表流水(α12川)に全面的に転換するという供給目標を掲げた。 (甲23,26,乙14,27,28)(2) 内閣総理大臣は,昭和47年4月,被控訴人知事に対し,水資源開発促進法4条5項において準用される同条1項に基づき,「α5川水系における水資源開発基本計画の全部変更」について意見を求めた。同全部変更は,従前の計画(昭和37年8月17日閣議決定)では洪水調節,不特定かんがいを目的とする治水ダムとされたα7ダムに,被控訴人,大阪府等の水道用水等を確保するという事業目的を付加するものであった。昭和47年4月24日,被控訴人知事が関係市町に意見を求めたところ,控訴人町長は,同月28日,「(4)のα7ダム建設事業については早期着工を望むものであります。」と回答した。「α5川水系における水資源開発基本計画」は,昭和47年9月19日閣議決定され,その中で,α7ダム事業の開発水量は3.7㎥/秒とされた。また,昭和48年6月には近畿地方建設局により建設事業計画が策定され,都市用水の供給のために必要な貯水容量が640万㎥と定められた。 (甲6,7,乙4~6)- 30 -(3) α7ダムの取水量決定までア昭和49年6月,被控訴人は,α12川の治水事業及び利水事業を円滑に推進することを目的として,被控訴人並びに,α12川流域の市 ,7,乙4~6)- 30 -(3) α7ダムの取水量決定までア昭和49年6月,被控訴人は,α12川の治水事業及び利水事業を円滑に推進することを目的として,被控訴人並びに,α12川流域の市町(京都市,亀岡市,向日市,長岡京市,控訴人,α13町,α14町,α15町及びα16町)の首長及び市町議会議長を理事とし,被控訴人企画調整室を事務局として治利協を設立した。その下流部会には,被控訴人,京都市,向日市,長岡京市及び控訴人の各自治体が参加した。 (弁論の全趣旨)イ下流部会は,昭和52年度事業として,α12川下流部における水利用の現況を調査し,昭和53年11月の下流部会会議で,控訴人町長,町議会副議長,総務水道常任委員長出席の下,「α12川下流部における水需給等調査報告書」を作成した。同報告書第1編「α12川下流部における水受給調査報告」では,表流水の転換を検討する前提として,水資源開発費負担など財政上の立場からではなく,地盤沈下等の障害を防止する立場から行うこととされ,水道用水及び工業用水道を建設すると仮定した場合の工業用水の試算がされた。また,同報告書第3編「α12川下流部における地下水位及び地盤沈下調査報告」では,乙訓地域について,地下水の静止水位の低下や,α12川沿岸の低平地部を中心としたかなり広範囲にわたる毎年1㎝以上の地盤沈下が指摘され,α12川沿岸地域における水道用水,工業用水等の水源を安定した表流水に転換していくための十分な検討をしていく必要があるという問題点が示された。 (乙19,28,30)ウ本件アンケート(ア) 下流部会は,昭和54年度事業として,京都市及び乙訓2市1町で工業用水等を使用する合計402事業所(控訴人は14事業所)を対象に本件アンケート(甲8)を実施し,工業用水の使用状況,将来 ト(ア) 下流部会は,昭和54年度事業として,京都市及び乙訓2市1町で工業用水等を使用する合計402事業所(控訴人は14事業所)を対象に本件アンケート(甲8)を実施し,工業用水の使用状況,将来予測,- 31 -用水コストを調査した。本件アンケートは,昭和55年10月21日の下流部会幹事会において,控訴人水道課長出席の下取りまとめられた上,同月11月20日の下流部会及び同月29日の総会において,控訴人町長出席の下報告がなされ,今後京都市南部及び乙訓2市1町において工業用水の円滑な表流水への転換を図るためには,次の事項について更に調査検討を進める必要があるとされた。 ① 事業所の大部分が京都市南部地域に集中していることから,地下水取水の適正化を図るために,京都市を含め一体的に検討する必要がある。 ② 井戸水取水の平均現状費用が18.0円/㎥,平均限界費用が21. 6円/㎥と,下流部会の「α12川下流部における水道計画調査」における工業用水道試算単価30.3円/㎥より低く,円滑な表流水転換を進めるためには,事業所の限界費用について分析調査等を行う必要がある。 (イ) 昭和55年11月29日の治利協総会において,事務局長(京都府企画調整室長)は,次のとおり補足説明した。 ① 平均的な取水費用は現在1トン当たり11円~26円である。 ② 事業所の限界費用として食料品製造業が1トン当たり40円という高い数値が出ているが,他の業種は30円未満という状況である。 ③ 本件アンケートも,直接職員が行って聞き取りをした場合と郵送の場合があり,調査のやり方にも多少の違いもあるので,今後この調査をもう少し分析検討していきたい。 ④ 下流部会による水道計画調査では,工業用水道の試算単価が,水源費を除いて30円30銭であるが,現在の限界費用が平均 やり方にも多少の違いもあるので,今後この調査をもう少し分析検討していきたい。 ④ 下流部会による水道計画調査では,工業用水道の試算単価が,水源費を除いて30円30銭であるが,現在の限界費用が平均21円60銭で,水道の試算単価よりも安くなっている。 (甲8,9,乙30)- 32 -エ α7ダムに係る利水配分(ア) 昭和56年11月開催の昭和56年度治利協総会において,下流部会長の京都市長(代理)は,「α12川下流域のα7ダムに係る利水配分については,上水道用水,工業用水の表流水転換量を都市用水としてα12川右岸地域で毎秒0.65tから0.86tまでの間で,関係市町の意向を配慮して調整検討を進めること」が下流部会の意見の中心の一つとなったと報告した。 (乙31)(イ) 平成56年11月,治利協は,「α12川下流地域に係る新規必要水利権調査結果」(乙29)を発表した。同結果は,控訴人の水道用水需要量については,治利協が同年3月から7月に実施した水道用水需要量調査に基づき5600㎥/日と算出し,工業用水需要量については,昭和53年治利協調査地下水需要見通しと,100㎥/日以上地下水使用事務所の使用量を用いて6400㎥/日と試算するものであった。 (乙28,29)(ウ) 昭和57年11月開催の昭和57年度治利協総会において,京都市長(代理・計画局次長)は,下流部会のまとめとして,「α7ダムの建設に係る都市用水の水配分は,α12川右岸地域において0.86㎥/秒とし,被控訴人及び関係市町は協力してこの事業化に努めるものとする」と報告した。他方,同総会において,向日市長は,被控訴人に対し,0.86㎥/秒の上水道・工業用水道の事業化について,乙訓2市1町は,被控訴人の力添えを得たいと考えていると陳情し,被控訴人副知事は,この陳 した。他方,同総会において,向日市長は,被控訴人に対し,0.86㎥/秒の上水道・工業用水道の事業化について,乙訓2市1町は,被控訴人の力添えを得たいと考えていると陳情し,被控訴人副知事は,この陳情を了承し,0.86㎥/秒を1つの目標として確保するようにしたいと回答した。なお,京都市は,工業用水道事業への参加を検討していたが,このころ同事業からの離脱を表明した。 (乙20)- 33 -(4) 本件広域的水道整備計画の策定ア控訴人ら16市町村(城陽市,向日市,長岡京市,八幡市,控訴人,α3町,α17町,α18町,α19町,α20町,α2町,α21町,α22町,α23町,α4町,α24村)は,昭和59年2月10日,宇治市長に対し,京都府水道整備基本構想による南部水道圏に適合した広域的水道整備計画の策定を被控訴人知事に要請するよう依頼した。宇治市長は,同月15日,被控訴人知事に対し,水道法5条の2第1項に基づき,他の16市町村と共同して,広域的水道整備計画の策定を要請した。 (乙8,9,弁論の全趣旨)。 イ被控訴人は,昭和59年10月23日,「乙訓地域水道基本計画調査結果に係る説明会」を開催し,「乙訓水道の事業化に当たって整理すべき事項」として,次のとおり説明した。 ① 工業用水道0.39㎥/秒は,58年度工業用水道基準料金45円/㎥の6倍の原価(約270円/㎥)となるため,事業が不可能である。 ② 0.47㎥/秒の上水単独水道による用水供給事業では,供給原価が250円/㎥となり,事業が困難である。 ③ 0.86㎥/秒の用水供給事業では,表流水への転換は,75年度における1日最大給水量の71%(従来の計画63%)となる。なお,工業用水道が不可能であるため,全量上水として配分することして,早急に配分量を決定する必要がある。 業では,表流水への転換は,75年度における1日最大給水量の71%(従来の計画63%)となる。なお,工業用水道が不可能であるため,全量上水として配分することして,早急に配分量を決定する必要がある。 ④ 0.86㎥/秒で用水供給事業を行った場合,供給原価は責任水量制を基に算定すると,約180円/㎥となる。 Ⅰ 現在,用水供給事業として建設中の限界コストは,全国平均で169円/㎥である。 Ⅱ 180円/㎥を二部料金制にすると,基本料金96~100円,従量料金12~17円/㎥となる。 - 34 -Ⅲ なお,用水供給事業の料金体系は,二部料金制とする。 ⑤ 京都府と受水関係市町の間で,0.86㎥/秒の配分について,覚書を交換する。 (甲10,乙7)ウ被控訴人知事は,昭和60年6月ころ,控訴人ら関係地方公共団体の長に対し,本件広域的水道整備計画(案)について,水道法5条の2第2項に基づく協議を申し入れた。同計画案には,根幹的水道施設の配置(同条3項3号)として,既存「α25水道」と「第二α25水道」の統合及び乙訓地域への拡張を骨子とする府営水道用供給事業を整備するとの記載があるものの,各受水市町の受水量の記載はなかったが,控訴人は,同年7月10日,本件広域的水道整備計画に同意した。被控訴人は,同年9月ころ,同計画を正式に策定し,同計画添付の表では,控訴人の昭和70年度の京都府営水道からの受水量(開発見込分)は1万2000㎥/日とされた。 (乙10の1・2,11,13)エ被控訴人知事は,昭和60年9月30日,本件広域的水道整備計画を定めることについて,水道法5条の2第2項に定める被控訴人府議会の同意を求め,同年10月16日,被控訴人議会定例会の本会議で,当該計画の策定に賛同する旨の同意がされた。 (乙12)(5) 府 定めることについて,水道法5条の2第2項に定める被控訴人府議会の同意を求め,同年10月16日,被控訴人議会定例会の本会議で,当該計画の策定に賛同する旨の同意がされた。 (乙12)(5) 府営水道受水要望書ア宇治市長は,昭和61年10月8日,被控訴人知事に対し,1日最大受水量6万9200㎥,計画目標年次昭和75年次として京都府営水道用水供給事業に係る受水申込みをする一方,施設の整備・拡張に当たっては,①申込の受水量(各年度別需要水量を含む。)について,今後需要予測の変動等がある場合には協議を行うこと,②料金制度等についても協議を行- 35 -うことについて配慮を求めた。 (乙39,40)イ被控訴人企業局長は,昭和61年11月7日,控訴人ら受水市町の長に対し,本件広域的水道整備計画に基づく府営水道用水供給事業の経営認可申請(水道法26条)を行うため,申請に必要な受水量の申込みをするよう求め,目標年次(昭和75年)の1日最大需要量を,向日市1万6800㎥/日,長岡京市4万㎥/日,控訴人1万2000㎥/日と示した。 (甲11)ウ控訴人の対応(ア) 控訴人水道事業部主幹は,昭和61年11月19日,控訴人町長に対し,被控訴人企業局から,①控訴人の1日最大受水量1万2000㎥は,治利協が現在までに調査した新規必要水利権調査に基づいて,被控訴人企業局が需要水量を試算したものであり,その数量の中には工業用水道需要量を含めたものである,②今回の数量は事業認可を受けるためのものであり,細部については今後協議する旨の説明を受けたと報告し,受水量要望申込みの提出と共に申入書を提出することについて,回議書を提出した。 (甲12)(イ) 控訴人町長は,同月27日,被控訴人知事に対し,府営水道の受水量について,1日最大受水量1 し,受水量要望申込みの提出と共に申入書を提出することについて,回議書を提出した。 (甲12)(イ) 控訴人町長は,同月27日,被控訴人知事に対し,府営水道の受水量について,1日最大受水量1万2000㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望する一方,同日付けで,京都府営水道事業の実現に向けて協力をするが,表流水受水の具体化に際しては,次のとおり,控訴人水道事業を取り巻く諸般の情勢の中で種々解決しなければならない問題があるので,被控訴人においても特段の理解と配慮を願いたいと求めた。 (甲13,14)① 受水量について- 36 -乙訓2市1町が,α7ダム完成によって生じる利水については,地下水の将来展望に立って,水道水としての水源確保と共に工業用水への利用を大きな目的としていたが,結果的に水道水及び工業用水としての都市用水から,水道用水としての利水配分となったことにより,水道事業財政のみでは対応できるものでなく,極端な危機に直面することが予想されるので,被控訴人としてこの現状を賢察のうえ十分な配慮をされたい。 ② 水道水について乙訓2市1町は,飲料水を地下水によって賄ってきた歴史的な経過から,表流水への転換に当たっては,町民に理解と協力を得るため,行政としての対応に時間的なものが必要であり,供給開始時期については特段の配慮を願いたい。 ③ 工業用水について乙訓2市1町,特に控訴人においては,利水配分のうち半数余の工業用水分が水道用水の中に含まれることになったが,水道事業やその利用者で対応すべきものではなく,商工行政等を含めた中での対処を必要とするので,被控訴人においては,特に工業用水の扱いについて,政策的に格段の配慮を願いたい。 ④ 水道料金について控訴人としては,今般,府営水道実施による先行投資負担,又は受 た中での対処を必要とするので,被控訴人においては,特に工業用水の扱いについて,政策的に格段の配慮を願いたい。 ④ 水道料金について控訴人としては,今般,府営水道実施による先行投資負担,又は受水料金原価などによる水道財政への高額負担とならないよう,府営水道建設に際し何らかの財政措置を講じられたい。 (ウ) 控訴人町長は,昭和61年11月27日,被控訴人企業局長に対し,次の3点について配慮を求めた。 ① 受水量-上水道について府営水道の年次受水量については,自己水との関連において,今後- 37 -の需要予測に基づき,供給開始時期及び年次受水量等の協議をされたい。 ② 受水量-工業用水について工業用水が水道用水の中に含まれることになった経過を踏まえ,政策的に格段の配慮を願うとともに十分協議をされたい。 ③ 料金制度等について表流水導入に伴う先行投資負担等,水道料金への急激な負担増とならないよう配慮を願うとともに十分協議をされたい。 (甲15)エ向日市の対応向日市長は,被控訴人知事に対し,昭和61年11月27日,1日最大受水量1万6800㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望する一方,控訴人の前記ウ(イ)の申入れと同趣旨の申入れをした。また,向日市長は,同日,被控訴人企業局長に対しても,控訴人の前記ウ(ウ)の申入れと同趣旨の申入れをした。 (乙35の1~3)オ長岡京市の対応長岡京市長は,被控訴人知事に対し,昭和61年11月27日,1日最大受水量4万㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望する一方,①今回工業用水が水道用水に一本化されることに伴い,事業の実施に当たっては,特に工業用水の扱いについて政策的に格段の配慮をし,②府営用水供給事業からの受水が高額な負担にならないよう,建設に当たり特段の財政的措置 が水道用水に一本化されることに伴い,事業の実施に当たっては,特に工業用水の扱いについて政策的に格段の配慮をし,②府営用水供給事業からの受水が高額な負担にならないよう,建設に当たり特段の財政的措置を講じるよう申し入れた。また,長岡京市長は,同日,被控訴人企業局長に対し,控訴人の前記ウ(ウ)の申し入れと概ね同趣旨の申入れをした。 (乙36の1~3)カ被控訴人は,厚生大臣に対し,京都府営水道用水供給事業の経営につい- 38 -て認可申請(水道法26条)をし,乙訓浄水場(計画給水能力6万8800㎥/日)の新設を主な事業計画の一つとした。京都府営水道用水供給事業は,昭和62年3月31日に認可されたが,被控訴人は,これに先立つ同月17日,本件条例(昭和62年京都府条例第9号)を制定し,同年4月1日から本件条例を施行した。事業認可後,乙訓2市1町から被控訴人に対し段階的整備の要請があり,調整の結果,乙訓浄水場は,当面4万6000㎥の施設能力で整備されることとなった。 (甲1,26,乙49)(6) 府営水道料金の決定から本件協定書締結までア α7ダムは,平成9年度完成,平成10年4月供用開始となり,乙訓浄水場(平成4年度に建設着工)も,平成11年度を目処に給水が開始される見込みとなった。そこで,乙訓2市1町からなる乙訓上水道事業連絡協議会は,平成9年6月2日,被控訴人企業局公営企業課に対し,市町の水道事業の財政計画の策定のため早く料金を決めてほしいと要望し,同月4日,向日市及び長岡京市の水道事業管理者,控訴人建設部長,被控訴人企業局長らの出席により,京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)が開催された。その際,被控訴人企業局は,正式な供給原価を算出するためには,ダム建設費や浄水場建設費等を精査し,原価算出要素の枠組みを整理していく 席により,京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)が開催された。その際,被控訴人企業局は,正式な供給原価を算出するためには,ダム建設費や浄水場建設費等を精査し,原価算出要素の枠組みを整理していく必要があり,今後の管理者会議や担当課長会議でひとつひとつ整理をしていきたいと述べ,具体的な供給原価を示すことはなかった。 (乙41,42,証人C)イ平成9年10月16日,乙訓上水道事業連絡協議会と被控訴人企業局との間で「京都府営水道に係る情報交換会」が開催された。このとき,被控訴人企業局側は,乙訓浄水場建設事業の進捗状況を説明するとともに,給水原価の試算要素である建設事業費・水源費の参考資料を提出し,当初(昭和57年度)73億6176万円であった被控訴人のα7ダム建設費負担- 39 -が,第1回変更(平成5年度)で97億5433万2000円,第2回変更(平成8年度)で112億6349万3000円に増額したことを説明した。他方,被控訴人企業局側は,給水原価の試算に当たっては,給水に必要な経費を乙訓2市1町の受水量全体で除する必要があることから,受水市町から明確な受水量が示されれば試算は可能であると説明し,乙訓2市1町との間においても表流水への転換水量及び転換時期の目標を定め,積極的に転換を図る必要があると述べた。 (乙41~44)ウ平成9年11月13日,京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)担当課長会議において,京都府営水道の受水計画が協議された。同会議において,被控訴人企業局公営企業課長は,給水原価の試算の要素である費用(建設事業費・水源費等)が概ね固まってきたことから,受水市町の受水量が明らかになれば試算が可能になるので,具体的な受水計画を固めていくと述べ,①乙訓2市1町における最終受水量は6万8800㎥/日である,②現 ・水源費等)が概ね固まってきたことから,受水市町の受水量が明らかになれば試算が可能になるので,具体的な受水計画を固めていくと述べ,①乙訓2市1町における最終受水量は6万8800㎥/日である,②現在整備を進めている浄水場の施設能力は4万6000㎥/日であるが,取水,導水及び送水施設は6万8800㎥/日規模で整備を行っている,③浄水場施設能力4万6000㎥/日に対する各市町の配分水量については市町間で整理調整してもらいたいと求めた。 (乙32,41)エ平成10年2月6日,京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)が開催された。同会議においては,被控訴人及び各受水市町が,市町間で調整された次の結果を確認し,今後協定書(案)の内容で協定の締結手続を行うことで合意した。 ① 施設整備計画施設能力(1日最大給水量)最終の規模 6万8800㎥/日- 40 -給水開始時点の規模 4万6000㎥/日② 配分水量向日市 1万3000㎥/日長岡京市 2万6000㎥/日控訴人 7000㎥/日(乙41,45)オその後,乙訓2市1町の間で更に調整が行われ,最終的に配分水量について,向日市1万2700㎥/日,長岡京市2万6000㎥/日,控訴人7300㎥/日ということで合意された。そこで,被控訴人企業局長は,平成10年3月17日,控訴人町長に対し,被控訴人知事印が押捺された本件協定書用紙2部を送付して,本件協定書の締結を依頼した。控訴人町長は,同用紙に控訴人町長印を押して返送し,同月30日付けで本件協定書が締結された。同様の協定書は,同日付けで向日市及び長岡京市との間でも締結されたが,この段階においても,乙訓浄水場が最終的には6万8800㎥/日の給水を行うことが,計画の前提となっ 付けで本件協定書が締結された。同様の協定書は,同日付けで向日市及び長岡京市との間でも締結されたが,この段階においても,乙訓浄水場が最終的には6万8800㎥/日の給水を行うことが,計画の前提となっていた。 (乙1,33,34,41,46,47,証人C)。 (7) 給水申込みに至る経緯ア水道事業変更認可申請(ア) 控訴人は,平成9年度,被控訴人知事(水道法46条1項,同法施行令14条により厚生労働大臣の権限に属する事務の一部を行うことができる。)に対し,給水人口を1万9000人から2万2000人に,1日最大給水量を9880㎥(520ℓ/人)から1万7700㎥(805ℓ/人)に増加させる内容の水道事業変更認可申請(水道法10条1項)をした。 (乙21)(イ) 控訴人町長は,被控訴人企業局長に対し,平成10年3月30日,- 41 -事業変更申請に必要となる京都府営水道の供給水量確約書の交付を求めた。その内容は,①開始年次平成11年度,②目標年次平成24年度,③一日最大給水量(受水量)1万2000㎥,④年次別供給水量(一日最大給水量)を平成11年度から平成13年度まで3650㎥,平成14年度から平成18年度まで7300㎥,平成19年度8000㎥,平成20年度8800㎥,平成21年度9600㎥,平成22年度1万0400㎥,平成23年度1万1200㎥,平成24年度1万2000㎥とするものであった。 (乙22)(ウ) 被控訴人企業局長は,控訴人に対し,平成10年4月16日付け「α1町水道事業変更(第4次拡張事業計画変更)認可に係る京都府営水道からの用水供給水量について(回答)」と題する書面により,控訴人には平成24年度を目標として1日最大1万2000㎥を供給する旨回答した。 (乙23)イ平成11年6月30日,乙訓2 都府営水道からの用水供給水量について(回答)」と題する書面により,控訴人には平成24年度を目標として1日最大1万2000㎥を供給する旨回答した。 (乙23)イ平成11年6月30日,乙訓2市1町の水道事業管理者は,被控訴人知事との間で「給水に関する協定」を締結し,平成12年度から平成18年度の間に,地下水から表流水へ段階的に水源を転換し,平成18年度には,府営水道から施設能力相当(4万6000㎥/日)の給水を受ける目標を定めた。控訴人は,平成12年度から平成14年度までは3650㎥,平成15年度は4650㎥,平成16年度は5650㎥,平成17年度は6650㎥,平成18年度には7300㎥の供給を受けることにした。 (甲26)ウ被控訴人知事は,第三者機関である京都府営水道事業経営懇談会(以下「水道懇」という。)に対し,乙訓浄水場の供給料金のあり方について意見を求め,水道懇は,平成11年11月22日,「京都府営水道事業の経- 42 -営のあり方及び施設設備の方向についての提言(第4次)」(乙24)をした。同提言は,乙訓浄水場の供給料金のあり方として,水道事業運営の基本原則(独立採算の原則,受益者負担の原則)及び地方公営企業の料金について地方公営企業法21条の定める原則に基づき,①料金体系を二部料金制とし,②料金算定期間を平成12年秋の給水開始から平成18年度末までの6.5年間とし,③基本水量及び供給水量を被控訴人と受水市町との協定によって定められた水量(配分水量)とし,④費用を料金算定期間において発生する費用として算定すると,固定費に係る供給原価は1㎥当たり112.4円,変動費に係る供給原価は1㎥当たり40.0円となるとした。しかし,地方公営企業法及び公営企業会計の原則に基づき,施設能力を超える水利権の試算を建設仮勘定に 費に係る供給原価は1㎥当たり112.4円,変動費に係る供給原価は1㎥当たり40.0円となるとした。しかし,地方公営企業法及び公営企業会計の原則に基づき,施設能力を超える水利権の試算を建設仮勘定に据え置き,固定費を約18億円繰り延べることにより,基本料金を基本水量1㎥当たり95.7円,従量料金を40.0円とすることが適当であると提言した。 (乙24,48,49)エ被控訴人企業局長は,乙訓系各受水市町水道事業管理者に対し,平成12年5月10日,給水申込みを速やかに進めるよう求め,給水申込みに当たっては,給水申込書の「年間における1日当たりの最大の受水量」を「平成10年3月30日付けで被控訴人知事と各受水市町水道事業管理者等との間で締結した協定書による配分水量」とするよう求めた。 (乙37)(8) 給水開始後ア乙訓浄水場は,平成12年10月1日,給水を開始した。控訴人町長は,被控訴人知事に対し,同日以降,平成18年度まで,毎年本件協定書に基づいた基本水量7300㎥/日(1日当たり受水量〔予め定めた当該年度の一日当たりの受水量〕3650㎥)の給水申込みをし,被控訴人知事は,控訴人町長に対し,給水開始年月日を毎年4月1日,基本水量7300㎥- 43 -/日で給水する旨の基本水量決定通知をした。 (乙25及び26の各1~7)イ乙訓2市1町では,産業社会構造が大きく変化し,人口が横ばいないし微減傾向になったことや,節水型ライフスタイルの浸透により,生活用水が平成10年ころから減少傾向にあった。それでも,控訴人の水道事業は,平成11年度には約3850万円の黒字を計上していたが,京都府営水道の供給が開始した平成12年度から赤字に転じた。また,控訴人においては,平成12年以降,業務,営業用水の使用量が減少し,このような水需要 1年度には約3850万円の黒字を計上していたが,京都府営水道の供給が開始した平成12年度から赤字に転じた。また,控訴人においては,平成12年以降,業務,営業用水の使用量が減少し,このような水需要の停滞のため,前記(7)イの「給水に関する協定」で定めた府営水道への転換が計画通り進まなくなった。そこで,被控訴人は,開業時の激変緩和措置として平成12年度及び平成13年度に実施した暫定基本料金(基本料金の減額措置)を平成14年度及び平成15年度も延長適用し,上記協定水量についても平成22年度まで4年間の延伸をした。 (甲16,22,26)ウ控訴人議会は,平成15年12月18日,被控訴人知事に対し,企業使用の予測水量は契約水量から外してほしい旨要望した。控訴人の水道事業は,平成19年度までの8年間に合計8億4000万円を超える累積赤字を計上し,平成20年度は4958万7000円の赤字を計上している。 また,控訴人の水道料金は,京都市,向日市,長岡京市などの他の近隣地方公共団体と比較して高額となっている。 (甲16,17,18の1~4,22~24) 2 争点(1)(本案前の答弁〔第1事件〕)について(1) 本件各決定の処分性についてア 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められて- 44 -いるものをいう(最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 本件各決定は,地方公共団体である被控訴人が,同じく地方公共団体である控訴人に対して行った京都府営水道の基本水量の決定であり,私人を名宛人とする行為ではない。しかし,京都府営水道用水供給事業は,控訴 件各決定は,地方公共団体である被控訴人が,同じく地方公共団体である控訴人に対して行った京都府営水道の基本水量の決定であり,私人を名宛人とする行為ではない。しかし,京都府営水道用水供給事業は,控訴人を含む関係市町の要請により策定された広域的水道整備計画に基づく水道用水供給事業,すなわち,水道により水道事業者に対して水道用水の卸売りを行う事業であるから,水道用水供給事業者たる被控訴人と水道事業者たる控訴人との関係は,基本的には,水の供給契約(卸売契約)における売主と買主の関係に相当し,行政組織上,一般的な上級行政庁とその指揮監督に服する下級行政庁という関係とはいえない。 もっとも,水道用水供給事業者と水道事業者との間の関係が水の供給契約であるとしても,水道用水供給事業者が供給した用水は,水道事業者の送配水施設を通じて一般の需要者に供給されるものであり,水道用水供給事業は水道事業の一部を代替するものである。このように,水道用水供給事業者と水道事業者との供給契約は,契約上の給付が国民の福祉,公共の利益に密接な関係を有することから,自由競争の原理が妥当する私人間の契約と同視することはできず,むしろ,公共事業(上水道)の利用に関する行政契約として,法律や条例により一部を行政処分の形式を採って規律することが可能なものと解される。しかも,京都府営水道は,地方公共団体が住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために設けた公の施設(地方自治法244条)であるから,その料金は,公の施設の管理に関する事項として,条例で定めなければならない(同法244条の2第1項)。この意味で,本件条例は,公共事業の利用に関する契約について,公益上の見地から,契約自由の原則を修正する性格を有するものと解される。 - 45 -イ本件条例2条2項は,「年間にお 第1項)。この意味で,本件条例は,公共事業の利用に関する契約について,公益上の見地から,契約自由の原則を修正する性格を有するものと解される。 - 45 -イ本件条例2条2項は,「年間における1日当たりの最大の給水量」(基本水量)について,当該市町と「協議の上」,被控訴人知事が「決定し,通知する」と規定しており,文言上,協議において受水市町と被控訴人知事との合意ができないときは,被控訴人知事が,協議を踏まえて,一方的に基本水量を決定することができる構造となっている。 また,基本水量とは,被控訴人が京都府営水道事業を始めるに当たり投資した水源開発費や施設整備費等の固定費を適正に供給料金に反映させる手段である基本料金を定める基準であるところ,京都府営水道事業は,地方公営企業法の適用を受ける企業であり,常に企業の経済性を発揮するとともに,公共の福祉を増進するように運営されなければならず(地方公営企業法3条,京都府公営企業の設置等に関する条例2条1項),その料金は,公正妥当なものでなければならず,かつ能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし,地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならない(同法21条2項)。そして,ここでいう料金の公正妥当性は,①料金が原価を償うに足りるものであり,かつ企業が提供する財・役務が料金に相応する内容であるかという料金水準の観点及び,②利用者の側に合理的な理由を欠く不公平な取扱いがされておらず,社会的に均衡が保たれているかという料金体系の観点から判断されるところ,京都府営水道事業(乙訓系)は,控訴人を含む17関係地方公共団体の要請を受けて被控訴人知事が策定した本件広域的水道整備計画に基づき,被控訴人が多額の費用(一部に国庫補助金及び被控訴人の一般会計出資金が充てられている。)を )は,控訴人を含む17関係地方公共団体の要請を受けて被控訴人知事が策定した本件広域的水道整備計画に基づき,被控訴人が多額の費用(一部に国庫補助金及び被控訴人の一般会計出資金が充てられている。)を投じて水源開発及び施設整備を行い,給水区域である乙訓2市1町のために経営する水道用水供給事業であるから,その基本料金の算定要素である基本水量の決定に当たっては,基本料金が取得原価を実質的に償うに足りるものであり,受水市町以外の住民からも納得性が確保され得ることの要請とともに,給水区域を構成する複数の受- 46 -水市町間の平等性・公平性を保つことの要請があり,このような各種要請を考慮すると,基本水量については,申込みをした当該市町の利害のみならず,他の受水市町との均衡を含めた総合的調整をも考慮して決せられなけばならない。したがって,本件条例2条2項は,かかる総合的調整のために基本水量の決定を被控訴人知事の裁量に委ね,当該市町との協議という手続を経た上で,被控訴人知事が行政処分として,その裁量により一方的に基本水量を決定する権限を付与したものと解するのが相当である。 ウ以上によれば,基本水量の決定は,公権力の主体たる地方公共団体である被控訴人が行う行為のうち,その行為によって,行政契約たる水道用水供給契約の相手方として,被控訴人との関係では「国民」と同一の地位に立つ受水市町の権利義務を直接形成すること(受水市町には,基本水量の範囲内で,使用する水量を従量料金で使用できる権利が発生するとともに,供給料金の支払義務が発生することになる。)が条例により認められているものと解すべきであり,取消訴訟の対象たる「行政庁の処分」に当たるものと認められる。 なお,本件条例には,基本料金の徴収について,滞納処分の例により処分すること(地方自治法231条 認められているものと解すべきであり,取消訴訟の対象たる「行政庁の処分」に当たるものと認められる。 なお,本件条例には,基本料金の徴収について,滞納処分の例により処分すること(地方自治法231条の3第3項)を根拠付ける規定はないが,行政処分の本質は,法令に基づく行政庁の一方的な行為によって法効果が発生し,取消訴訟によってその効力が否定されない限りその公定力が認められるところにあり,自力執行力がないことをもって処分性を否定することはできない。 (2) 訴えの利益について本件各決定については,これに基づいて被控訴人から控訴人に平成19年度分及び平成20年度分の水道用水が供給され,控訴人から被控訴人への水道料金の支払も終了しているが,仮に本件各決定が違法で取り消されるということになれば,既に控訴人が支払った基本料金のうち,基本水量3407- 47 -㎥を超える部分に相当する部分の支払には法的根拠がなかったことになり,控訴人には,その分について被控訴人に対する不当利得返還請求権が生じるなどの回復すべき利益があることになる。したがって,平成19年度及び平成20年度の水道用水の供給及び水道料金の支払により,控訴人が水量決定の取消しを求める利益が消滅することはないから,第1事件請求に係る訴えには,訴えの利益が認められる。 3 争点(2)(本件各決定が行政処分である場合,本件各決定の適法性〔第1事件〕)について(1) 権限逸脱本件条例2条2項は,「知事は,前項の申込みを受けたときは,当該市町と協議の上,年間における1日当たりの最大の給水量を決定し,通知する。」と規定するのみであり,文言上,被控訴人知事の基本水量決定権限が,受水者の申込みに係る範囲に限定されていると解することはできない。また,同条3項は,受水者たる市町が年度途中で基 決定し,通知する。」と規定するのみであり,文言上,被控訴人知事の基本水量決定権限が,受水者の申込みに係る範囲に限定されていると解することはできない。また,同条3項は,受水者たる市町が年度途中で基本水量変更の申込みができることを前提にしているが,変更申込みについても,本件条例2条2項が準用されるのであるから,これをもって知事の基本水量の決定権限が受水者の申込みの範囲に限定されていると解すべき根拠にはなり得ない。したがって,本件各決定が権限を逸脱するものであるという控訴人の主張は理由がない。 (2) 裁量権逸脱ア前記2のとおり,本件条例2条2項は,受水市町に京都府営水道に係る水源開発費や施設整備費等の固定費の負担を求める要素である基本水量を公正妥当に決定するためには,当該申込市町のみならず他の受水市町との間の調整が必要不可欠であることから,その決定を被控訴人知事の裁量に委ねたものと解される。このような裁量権の趣旨にかんがみると,被控訴人知事の基本水量決定が本件条例に基づく裁量権を逸脱する場合とは,受水市町の申込みに対して被控訴人知事が決定した基本水量が,他の受水- 48 -市町との均衡を含めた総合的調整や従前の経緯にかんがみて合理性を欠いていると判断される場合をいうものと解すべきである。 イ前記1で認定した事実によれば,乙訓2市1町においては,昭和40年代後半までに,地下水の水位低下や水質悪化,広範囲にわたる地盤沈下の問題が発生し,これらの障害を防止する立場から,それまで地下水に依存してきた水道用水,工業用水の水源を地下水から表流水に全面的に転換するという目標が設定され,これを受けて,当初は治水ダムとして計画されていたα7ダムが,治水及び利水を目的とする多目的ダムへと計画変更されたこと,控訴人は,上記計画変更を踏まえた上で に全面的に転換するという目標が設定され,これを受けて,当初は治水ダムとして計画されていたα7ダムが,治水及び利水を目的とする多目的ダムへと計画変更されたこと,控訴人は,上記計画変更を踏まえた上で,昭和47年にα7ダム建設事業の早期着工を要望し,昭和49年6月以降参加した治利協においても,下流部会が実施した「α12川下流部における水受給調査」(工業用水需要量の転換量算定方法を含む。)や本件アンケートの取りまとめに参加し,かつ下流部会会長がこれらを下流部会の意見として報告することを容認することにより,これを控訴人の意見として提示し,後の広域的水道整備計画の内容形成に反映させてきたこと,控訴人は,昭和56年以降,α7ダムの建設に係る都市用水の水配分(上水道用水,工業用水の表流水転換量)を0.86㎥/秒とするという下流部会の報告や,向日市長が乙訓2市1町を代表して行った陳情に異議を唱えることなく,昭和59年2月,他の16市町村と共同して広域的水道整備計画の策定を要請したことが認められる。 もっとも,本件広域的水道整備計画の策定に当たり,被控訴人は,それまで工業用水道事業による表流水への転換を検討していた工業用水について,採算の問題から工業用水道事業の経営を断念すると表明し,水道用水,工業用水を含めた全量を水道用水供給事業により配分すると説明した上で,目標年次(昭和75年)における控訴人の受水量を1万2000㎥/日と提示したことが認められる。しかし,控訴人ら乙訓2市1町は,被- 49 -控訴人に対し,被控訴人が厚生大臣に水道用水供給事業の経営認可申請をするため必要な受水量の申込みをするに当たり,工業用水が水道用水に一本化されたことにより受水市町の水道事業財政が危機に直面することが予想されることへの理解と配慮を求める旨留保を付した上で, 可申請をするため必要な受水量の申込みをするに当たり,工業用水が水道用水に一本化されたことにより受水市町の水道事業財政が危機に直面することが予想されることへの理解と配慮を求める旨留保を付した上で,被控訴人が提示した受水量(控訴人1万2000㎥/日)に同意し,昭和62年3月31日の事業認可後に段階的整備を求めたこと,被控訴人は,工業用水については表流水への転換が困難であることに配慮し,乙訓2市1町の受水量を6万8800㎥/日から約3分の2である4万6000㎥/日に減量して,乙訓浄水場の施設を整備したことが認められる。しかも,平成9年6月以降,乙訓系の京都府営水道料金を算出するに当たり,料金算定の要素となる受水量については,乙訓2市1町間で自ら調整して控訴人の配分水量を7300㎥/日と決定し,控訴人は,平成10年3月30日,同配分水量を引き受ける旨の本件協定書を締結したこと,被控訴人の諮問を受けた水道懇は,平成11年11月,基本水量及び供給水量を本件協定書により定められた配分水量とする前提で,原価を基礎として償うことができるよう試算した上で基本料金と従量料金を提言し,これを受けて本件条例3条及び別表の料金が決定されたこと,被控訴人は,乙訓浄水場の給水開始に当たり,平成12年5月10日付けで,基本水量を本件協定書による配分水量とする給水申込みを求め,控訴人は,同年10月1日の給水開始以降,平成18年度まで,毎年,本件協定書に基づく基本水量7300㎥/日の給水申込みをし,被控訴人知事は,同申込水量での基本水量決定をしたこと,被控訴人は,給水開始後,乙訓2市1町の表流水への転換が計画通り進まなかったことから,基本料金の減額措置を平成15年度まで延長適用し,転換目標についても,平成22年度まで4年間の延伸をしたことが認められる。 以上の事 ,乙訓2市1町の表流水への転換が計画通り進まなかったことから,基本料金の減額措置を平成15年度まで延長適用し,転換目標についても,平成22年度まで4年間の延伸をしたことが認められる。 以上の事実を考慮すれば,控訴人は,利水事業により乙訓2市1町の水- 50 -道用水,工業用水の水源を表流水に転換するという行政計画の実現に向けて行政上の手続を進行しており,それを前提として他の行政機関の行為が積み重なることにより,原価を基礎とした基本料金額が算定されたことが認められ,その後も,控訴人は,本件第1申込みまでは,本件協定書記載の配分水量が基本料金算定の前提となることを踏まえた行動をしてきたことが認められる。 ウこのような経緯に加え,他の受水市町である向日市と長岡京市は,平成19年度及び平成20年度も,被控訴人に対し,本件協定書の配分水量を基本水量とする給水申込みを行ったこと,上記2市は,負担軽減のために,被控訴人の乙訓地域上水道事業経営健全化検討会に参加したが,被控訴人との間で基本水量の変更に向けての調整はしておらず,控訴人の基本水量の減額分を受け入れることを同意した形跡もないこと(弁論の全趣旨)を考慮すれば,被控訴人知事が,本件各決定に当たり,基本水量を本件協定書記載の配分水量7300㎥と決定したことは,他の受水市町である2市との均衡を含めた総合的な調整に基づくものというべきである。 エしたがって,本件各決定が裁量権を逸脱するものであるとの控訴人の主張は理由がない。 (3) 手続の違法性についてア本件条例2条2項は,当該市町との「協議」を基本水量決定の手続的要件とするが,前記2のとおり,基本料金が,府営水道の水源確保及び施設整備等に先行して要した固定費を適正に供給料金に反映させ,受水市町である乙訓2市1町に公平に負担さ 「協議」を基本水量決定の手続的要件とするが,前記2のとおり,基本料金が,府営水道の水源確保及び施設整備等に先行して要した固定費を適正に供給料金に反映させ,受水市町である乙訓2市1町に公平に負担させる意味を有するものであり,基本水量が基本料金の算定基準であることにかんがみれば,ある受水市町が被控訴人知事に対し基本水量の減額を求めることは,他の受水市町の負担増加に直結するものであり,基本水量の変更は,本来,被控訴人知事と一受水市町長による個別の合意によりなし得るものではないというべきである。し- 51 -たがって,本件条例2条2項が定める当該市町との「協議」は,必ずしも基本水量の変更を基礎付ける実質的内容にわたる必要はなく,不意打ちを回避するための手段として,当該受水市町に主張の機会を与えるものであれば足りると解される。 イ本件第1決定(平成19年度)について証拠(乙2,3,16,17)によれば,被控訴人は,平成19年2月,控訴人に対し,本件第1申込みが本件協定書の配分水量と一致しないという理由で申込書を返戻したが,控訴人は,同年3月5日,被控訴人に対し,本件第1申込みを受け入れるよう求め,以後,控訴人町長は,同年6月13日までに副知事と2回,企業局長と8回,計10回の協議を行い,同日時点も協議が継続中であったこと,控訴人と被控訴人との間では,それ以外にも,同年3月以降,企業局の担当室長と事務担当レベルでの情報交換が実施されていたことが認められる。確かに,その内容は,被控訴人が,控訴人に対し,基本水量を3407㎥とする申込書をいったん撤回し,本件協定書の水量を土台にした議論をするよう求めるものであり(乙17),基本水量の変更に向けた実質的協議には至っていない。しかし,前記協議の経過によれば,被控訴人が平成19年12月27日に 撤回し,本件協定書の水量を土台にした議論をするよう求めるものであり(乙17),基本水量の変更に向けた実質的協議には至っていない。しかし,前記協議の経過によれば,被控訴人が平成19年12月27日に本件第1決定をするに先立ち,控訴人には,少なくとも不意打ちを回避するための主張の機会は提供されていたというべきであるから,本件第1決定に至る手続に瑕疵があったということもできない。 ウ本件第2決定(平成20年度)について証拠(控訴人代表者)によれば,控訴人は,平成20年2月27日に本件第2申込みをする直前に,被控訴人副知事と協議を行ったことが認められるが,控訴人町長が本件第2申込みを行ってから,被控訴人知事が本件第2決定をした同年4月24日までに,控訴人と被控訴人との間で具体的な協議が行われた形跡はない。 - 52 -しかしながら,本件第2申込みは,本件第1申込みと全く同一の内容であり,前記のとおり,控訴人と被控訴人との間では,平成19年度の本件第1申込みについての協議及び本件第2申込み直前の協議により,相互に相手方がいかなる主張をするかが認識されており,平成19年度と平成20年度の間で客観的状況に変化はなかったものと認められる。以上によれば,控訴人には,本件第2申込みについても,不意打ちを回避するための手段は与えられていたものと認められ,本件第2決定に至る手続に瑕疵があったということはできない。 (4) 以上によれば,本件各決定が違法な行政処分であるとして取消しを求める控訴人の第1事件請求は理由がない。 4 争点(3)(本件各決定は契約に基づく意思表示であり,控訴人町長の申込水量3407㎥/日を超える部分に対応する基本料金については,意思の合致がないものとして契約が不成立であるか〔第2事件〕)について控訴人は,控訴人と被控 約に基づく意思表示であり,控訴人町長の申込水量3407㎥/日を超える部分に対応する基本料金については,意思の合致がないものとして契約が不成立であるか〔第2事件〕)について控訴人は,控訴人と被控訴人との関係が給水契約である以上,被控訴人知事の決定,通知は意思の合致の過程とみるほかはなく,控訴人町長の3407㎥/日の申込みに対し,被控訴人知事が7300㎥/日の決定,通知をした時点で,控訴人と被控訴人との間に,より少ない3407㎥/日の範囲で給水契約が成立したと主張する。 しかし,被控訴人知事の基本水量決定が行政処分であり,契約関係に基づく意思表示の合致とはいえないことは前記2のとおりであり,上記基本水量決定が契約関係であることを前提とする控訴人の第2事件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない(なお,基本水量は水の供給契約の要素である基本料金を算定するための基準であるから,基本水量7300㎥/日という条件で水道用水を供給することと,基本水量3407㎥/日という条件で水道用水を供給することは全く異なる内容である。この意味からも,基本契約3407㎥/日の限度で意思が合致するものとは解されない。)。 - 53 -第4 結論以上の次第で,控訴人の第1事件請求及び第2事件請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,原判決中第2事件請求を棄却した部分は相当であるが,基本水量決定には処分性がないとして第1事件に係る訴えを却下した部分は失当である。しかし,第1事件請求を棄却することは原審の結論よりも控訴人に不利益になるところ,被控訴人から附帯控訴がなされていない本件では,原判決を不利益に変更することは許されない。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 から附帯控訴がなされていない本件では,原判決を不利益に変更することは許されない。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官小松一雄 裁判官塚本伊平 裁判官阿多麻子 (原裁判等の表示) 主文 1 第1事件の請求に係る訴えを却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じて,原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求- 54 - 1 第1事件(1) 京都府知事が原告に対して平成19年12月27日付けでした京都府営水道の水道用水供給に関する平成19年度の基本水量決定処分を取り消す。 (2) 京都府知事が原告に対して平成20年4月24日付けでした京都府営水道の水道用水供給に関する平成20年度の基本水量決定処分を取り消す。 2 第2事件被告は,原告に対し,2億6345万7420円及びうち2億5470万7311円に対する平成21年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 紛争の概要(1) 第1事件本件は,京都府乙訓地域の地方公共団体である原告が,被告知事において条例に定める協議を経ることなく,2度にわたって,原告の申込水量を超える基本水量決定を行ったと主張し,これらが違法な行政処分であるとして,処分の取消を求めた事案である。 (2) 第2事件本件は,原告が,基本水量決定の手続が契約であり,意思の合致が原告の申込の範囲に限られると主張し,これを超える部分の支払について,法律上の原因がないもの 案である。 (2) 第2事件本件は,原告が,基本水量決定の手続が契約であり,意思の合致が原告の申込の範囲に限られると主張し,これを超える部分の支払について,法律上の原因がないものとして,不当利得に基づき支払額及び遅延損害金ないし利息の支払を求めた事案である。 (3) 第1事件と第2事件は,選択的併合の関係にあるものである。 2 争いのない事実等(1) 当事者等ア被告知事は,京都府営水道の供給料金等に関する条例(以下「条例」という。)に基づき,京都府営水道の水道用水供給事業の管理者として,毎- 55 -年,水道用水の供給を受けようとする市町から,年間における1日当たりの最大の受水量の申込を受けた後,当該市町と協議の上,当該市町に対する年間における1日当たりの最大の給水量(条例上「基本水量」と定義される。以下「基本水量」という。)を決定し,通知する権限を有している。 イ原告は,住民1万5000人の福祉の増進を図ることを基本とする普通地方公共団体であり,地方公営企業である水道事業を経営し,条例に基づき,毎年,年間における1日当たりの最大の受水量を定めて,これを被告知事に申し込み,知事との協議の後,知事から基本水量の決定,通知を受けた上で毎月額の供給料金を知事が指定する日までに納付する義務を負うものである。 (2) 水道法(以下「法」という。),条例,地方公営企業法,京都府公営企業の設置等に関する条例,地方財政法の定めア(ア) 国及び地方公共団体は,水道が国民の日常生活に直結し,その健康を守るために欠くことのできないものであり,かつ,水が貴重な資源であることにかんがみ,水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければな 健康を守るために欠くことのできないものであり,かつ,水が貴重な資源であることにかんがみ,水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならない。(法2条1項)(イ) 地方公共団体は,当該地域の自然的社会的諸条件に応じて,水道の計画的整備に関する施策を策定し,及びこれを実施するとともに,水道事業及び水道用水供給事業を経営するに当たつては,その適正かつ能率的な運営に努めなければならない。(法2条の2第1項)(ウ) 地方公共団体は,この法律の目的を達成するため水道の広域的な整備を図る必要があると認めるときは,関係地方公共団体と共同して,水道の広域的な整備に関する基本計画(以下「広域的水道整備計画」という。)を定めるべきことを都道府県知事に要請することができる。(法5条の2第1項)- 56 -(エ) 都道府県知事は,前項の規定による要請があつた場合において,この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは,関係地方公共団体と協議し,かつ,当該都道府県の議会の同意を得て,広域的水道整備計画を定めるものとする。(法5条の2第2項)(オ) 水道事業は,原則として市町村が経営するものとし,市町村以外の者は,給水しようとする区域をその区域に含む市町村の同意を得た場合に限り,水道事業を経営することができるものとする。(法6条2項)イ(ア) 供給料金は月額とし,その額は,別表に掲げる受水者の区分に応じ,基本料金の額,従量料金の額及び超過料金の額の合計額とする。(条例3条,甲1)別表によれば,原告の場合,基本料金は「基本水量にその月の日数を乗じて得た水量に,1立方メートルにつき92円を乗じて得た額」とされている。なお,平成 合計額とする。(条例3条,甲1)別表によれば,原告の場合,基本料金は「基本水量にその月の日数を乗じて得た水量に,1立方メートルにつき92円を乗じて得た額」とされている。なお,平成20年度からは,上記の92円が87円に改訂されている。(甲1,20の10~33)(イ) 水道用水の供給を受けようとする市町は,毎年,年間(毎年4月1日から翌年3月31日までの間をいう。以下同じ。)における1日当たりの最大の受水量を定めて,府の水道事業の管理者の権限を行う知事(以下「知事」という。)に申し込まなければならない。(条例2条1項,甲1)(ウ) 知事は,前項の申込みを受けたときは,当該市町と協議の上,年間における1日当たりの最大の給水量(以下「基本水量」という。)を決定し,通知する。(条例2条2項,甲1)(エ) 延滞金の徴収については,京都府税外収入延滞金徴収条例(昭和39年京都府条例第40号)の規定を準用する。この場合において,同条例第2条中「年10.75パーセント」とあるのは,「年6.5パーセント」と読み替えるものとする。(条例6条,甲1)- 57 -ウ(ア) 地方公営企業は,常に企業の経済性を発揮するとともに,その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。 (地方公営企業法3条)(イ) 地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合(これを企業団という。)の管理者の名称は,企業長とする。(地方公営企業法39条の2第1項)(ウ) 地方公営企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得,管理及び処分については,地方自治法96条1項5号から8号まで及び237条2項及び3項の規定にかかわらず,条例又は議会の議決によることを要しない。(地 企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得,管理及び処分については,地方自治法96条1項5号から8号まで及び237条2項及び3項の規定にかかわらず,条例又は議会の議決によることを要しない。(地方公営企業法40条1項)地方公営企業の業務に関する負担附きの寄附又は贈与の受領,地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て,訴えの提起,和解,あつせん,調停及び仲裁並びに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定については,条例で定めるものを除き,地方自治法96条1項9号,12号及び13号の規定は,適用しない。(地方公営企業法40条2項)なお,地方公営企業法40条1項,同条2項の規定により,議会の議決を経ていない本件訴え提起は適法である。 エ(ア) 府民の生活の向上と府下の産業経済の発展に寄与するため,次に掲げる事業(以下「公営企業」という。)を設置する。 a 電気事業b 水道事業c 工業用水道事業(京都府公営企業の設置等に関する条例1条,甲27)(イ) 公営企業は,常に企業の経済性を発揮するとともに,公共の福祉を増進するように運営するものとする。(京都府公営企業の設置等に関す- 58 -る条例2条1項,甲27)オ地方公共団体は,その財政の健全な運営に努め,いやしくも国の政策に反し,又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。(地方財政法2条1項)(3) 条例における基本水量(水道料金)決定のプロセスア受水者が府営水道を利用するには,条例2条1項のとおり,被告知事に対して1日当たりの最大の受水量を定めて申込みをする。 イこれに対して,被告知事は,同条2項のと )決定のプロセスア受水者が府営水道を利用するには,条例2条1項のとおり,被告知事に対して1日当たりの最大の受水量を定めて申込みをする。 イこれに対して,被告知事は,同条2項のとおり,受水者と協議の上,1日当たりの最大の給水量である「基本水量」を決定し,受水者に通知する。 ウそして,供給料金については,条例3条のとおり,基本水量に応じた基本料金と実際の受水量に応じた従量料金を合計したものを,さらに,1日当たりの給水量が「配分水量」を超える場合は,その超過分につき超過料金を合計したものを月額で支払う。被告知事によって基本水量が決定されれば,実際の受水量に応じて機械的に供給料金が決定される仕組みになっている。 ここで「配分水量」とは,条例別表(3条関係)の「超過料金」の区分にあるとおり「知事が受水者と協議の上,給水能力の水量を受水者に配分した1日当たりの水量」をいう。「配分水量」とは,被告知事が各受水者に対して給水できる能力を配分したいわば利用枠というべきものである。 そして,受水者が配分水量を超えて府営水道を受水したときは,上記のとおりその超過分につき超過料金を支払わなければならない。 原告については,月額基本料金は「基本水量にその月の日数を乗じて得た水量」について92円/㎥(平成20年度からは87円/㎥),従量料金は36円/㎥,超過料金は251円/㎥となっている(条例別表3条関係)。 (4) 平成18年10月22日投票の原告長選挙において,府営水道問題が主た- 59 -る争点となり,水道代引下げを公約とした原告代表者が当選した。 原告は,上記公約をふまえて,平成19年2月16日,同月26日の両日,被告との間で,平成10年3月30日付け京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る 代引下げを公約とした原告代表者が当選した。 原告は,上記公約をふまえて,平成19年2月16日,同月26日の両日,被告との間で,平成10年3月30日付け京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定書(以下「本件協定書」という。)で定められた配分水量7300㎥の引下げ等による健全化について交渉を行った。また,それ以外にも,同年1月から2月にかけて,企業局長又は企業局次長との間で計7回にもわたって交渉を繰り返した。 しかしながら,本件協定書に基づく配分水量7300㎥の引下げについて,被告との間で交渉が成立することはなかった。 (5) 原告は,平成19年2月27日,被告知事に対し,1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて申込をした(以下,この申込を「本件第1申込」という。)。 (6) 被告は,原告に対し,本件第1申込を白紙撤回し,上水道事業経営健全化検討会に参加することを求めた。 原告と被告との間で,照会書と回答書がやりとりされた。 (7) 被告知事は,平成19年12月27日,原告の基本水量を7300㎥とする旨決定して原告に通知した(以下,この決定を「本件第1決定」という。)。 (8) 原告は,平成20年2月27日,被告知事に対し,1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて申込をした(以下,この申込を「本件第2申込」という。)。 本件第2申込についても,原告と被告との間で,依頼書と回答書のやりとりがされた。 (9) 被告知事は,平成20年4月24日,原告の基本水量を7300㎥とする旨決定して原告に通知した(以下,この決定を「本件第2決定」という。)。 3 争点(1) 第1事件について訴えの利益はあるか(被告の本案前の主張)。 - 60 -ア被 0㎥とする旨決定して原告に通知した(以下,この決定を「本件第2決定」という。)。 3 争点(1) 第1事件について訴えの利益はあるか(被告の本案前の主張)。 - 60 -ア被告(ア) 本件の原告は,地方公共団体であって国民ではない。また,原告が取消を求めている基本水量決定通知は,被告知事が条例2条2項に基づいて,年間における1日当たりの最大の給水量を決定し,通知するものにすぎず,「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を画することが法律上認められているもの」ではない。 したがって,基本水量の決定通知は,取消訴訟の対象たる処分とはいえない。 (イ) また,仮に,取消訴訟の対象たる処分に当たるとしても,本件第1決定については,これに基づいて被告から原告に水道供給がなされ,原告から被告への水道料金支払も終了しているのであるから,もはやこれを取り消すべき訴えの利益がない。 本件第2決定についても,その決定を前提として,被告から現に水道供給を行い,原告から水道料金の支払がなされているのであるから,経過分については,やはり訴えの利益がないというべきである。 (ウ) 以上のとおり,本件第1決定及び本件第2決定は,処分性が認められず,また,狭義の訴えの利益がないというべきであるから,原告の訴えはいずれも却下されるべきである。 イ原告(ア) 被告は,条例に基づき,原告の意思とは関係なく基本水量,基本料金を決定している。このような行為は「公権力の主体たる公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接原告の権利義務を形成することが法律上認められているもの」に他ならない。 (イ) 地方公共団体も抗告訴訟の原告になり得るし,本件は,行政組織内の内部 行う行為のうち,その行為によって,直接原告の権利義務を形成することが法律上認められているもの」に他ならない。 (イ) 地方公共団体も抗告訴訟の原告になり得るし,本件は,行政組織内の内部行為ではない。 (ウ) 被告知事のした本件第1決定及び本件第2決定は,その行為によっ- 61 -て受水者の意思を排除し,直接受水者の義務を一方的に形成する行為であり,受水者がそれに従わないときは訴訟上の手続を経ずに強制執行すらできるという公定力を有しているから,行政処分性を有している。したがって,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」である。 (2) 被告知事のした本件第1決定及び本件第2決定が行政処分であるとして,本件各決定が適法であるか否か。 ア原告(ア) 条例2条2項の被告知事の決定については,各受水者の申込最大受水量の合計が府の給水能力を超えた場合に受水者が申込みをした受水量を下回る基本水量が決定されることは想定しているが,受水者の最大の受水量を超える基本水量を決定することはそもそも想定していない。 このことは,条例2条3項において受水者が被告知事に対して年度の途中に受水量の変更の申込を行うことができることから明らかである。 受水者は水の需要を予想した上で実際の使用量よりもかなり余裕をもって申込受水量を決定していることから,被告知事が受水者の申込最大受水量を超えて基本水量を決定できるのであれば,受水者に基本水量の変更申込権を与える意味はないのである。 また,このことは条例については受水者が配分水量を超えて受水した場合に通常の従量料金よりもはるかに高いペナルティたる超過料金が課されるという制度設計がされていることからも強く推認される。配分 また,このことは条例については受水者が配分水量を超えて受水した場合に通常の従量料金よりもはるかに高いペナルティたる超過料金が課されるという制度設計がされていることからも強く推認される。配分水量は受水者が過量の水を受水した場合のペナルティを課す基準となる数値であることから,配分水量≧基本水量となることは明らかだが,基本水量が受水者の1日当たりの最大の受水量を超過している場合,給水量が配分水量を超過することは起こらず,ペナルティの料金たる超過料金を設定する意味がなくなるのである。 - 62 -(イ) このように,そもそも被告知事には申込最大受水量を超えて基本水量を決定する権限がない。それにもかかわらずなされた本件第1決定及び本件第2決定は,条例2条2項に違反する処分であるから取り消されなければならない。 (ウ) 百歩譲って,被告知事に申込最大受水量を超えて基本水量を決定する権限があったとしても,本件第1決定及び本件第2決定は,被告知事に与えられた権限をはるかに逸脱するものであり,条例2条2項に違反して違法であるから取り消されるべきである。 7300㎥の水は全く不必要であって,原告は過剰な負担を強いられているものであり,このことについて,原告は,当初から懸念を表明し,配慮や財政的措置を求めていた。 そもそも条例2条2項においては,被告知事が受水者の申込最大受水量を超えた量の基本水量を決定する権限がない。仮にそのような権限を想定できたとしても,それは微調整を行うためのものにすぎず,受水者が望まない水を強制的に給水する権限を被告知事に与えたものではない。それにもかかわらず,このような申込最大受水量の2倍もの基本水量を決定することは条例2条2項に違反するだけでなく,府営水道の導入前 が望まない水を強制的に給水する権限を被告知事に与えたものではない。それにもかかわらず,このような申込最大受水量の2倍もの基本水量を決定することは条例2条2項に違反するだけでなく,府営水道の導入前から多量の水を受水することに懸念を表明し配慮や財政的措置を求めていた原告に対して過大な金銭的負担を負わせるものであり,原告の会計を破綻に追い込み,原告の自治を破壊するものである。 このような被告知事の決定は,裁量をはるかに逸脱したものであり,条例2条2項に違反する違法な処分であるから取り消されなければならない。 (エ)a 条例2条2項において,当該市町との協議は,基本水量決定の手続的要件となっている。とりわけ,給水申込を行う市町と基本水量を決定する被告との間で,水量に差異がある場合に当該市町との協議を- 63 -行わないまま基本水量決定を行うことは,重大な手続違反であるといわざるを得ない。そして,当該市町との協議とは,単に協議の機会を持ったというに止まらず,水量の必要性等について実質的な協議の機会を持つ必要がある。 本件第1決定について,原告からなされた給水申込は3407㎥であったのに対し,被告が決定した基本水量は7300㎥である。そもそも,被告は原告の給水申込を超えて基本水量を決定することはできないが,仮に原告の給水申込を超えて基本水量を決定できるとしても,被告としては,水量に差異があり,特に,申込水量を超える基本水量を決定しようとしたのであるから,当該市町である原告との協議は,基本水量を決定するに当たって必要欠くべからざる手続的要件であったといわざるを得ない。 しかしながら,本件第1決定は,平成19年2月27日付けで本件第1申込がなされた後,条例2条2項に基づく協議が一切行われない 必要欠くべからざる手続的要件であったといわざるを得ない。 しかしながら,本件第1決定は,平成19年2月27日付けで本件第1申込がなされた後,条例2条2項に基づく協議が一切行われないまま,同年12月27日付けでなされている。 被告は,同年11月30日付け「京都府営水道とα1町水道事業に係る京都府の考え方について(回答)」において,条例2条2項に基づく協議を行っている旨回答しているが,かかる回答は,それまでの被告の対応とは全く異なったものであり,実体としても,被告は,原告に対し,一貫して本件第1申込の白紙撤回を求め続けていたのであって,協議が行われてきたとは到底いい難い。 したがって,本件第1決定は,条例2条2項に反する違法な処分であり,取り消されなければならない。 b 本件第2決定については,被告が平成20年3月21日付け「京都府営水道給水申込みに係る協議の場の設定について(回答)」と題する書面において,「本日(3月21日)の協議についても,そうした- 64 -協議の場である」などと述べているが,その実体は,本件協定書に定められた7300㎥ありきで,原告の水道事業会計の実態や実際の水需要量などについて一切関知せずに進められたものであり,到底「協議」の実態を伴っていないものといわざるを得ない。 したがって,本件第2決定についても,条例2条2項に反する違法な処分であり,取り消されなければならない。 イ被告(ア) 条例における基本水量の決定は,被告知事が,関係市町からの要請に基づいて広域的水道整備計画を定めた被告の立場において,受水市町間の調整として行うものであり,その合理的な裁量に委ねられているものである。 (イ) 被告知事による基本 関係市町からの要請に基づいて広域的水道整備計画を定めた被告の立場において,受水市町間の調整として行うものであり,その合理的な裁量に委ねられているものである。 (イ) 被告知事による基本水量の決定は,一般の契約における承諾の意思表示のように受水市町からの申込に拘束されるものではない。受水市町からの申込及び当該市町との協議を踏まえて被告知事が裁量により決定するものであるから,申込における最大受水量を超えて決定できないという制約はない。 (ウ) 基本水量は,水道事業の固定費をまかなう基本料金を算定するための基礎であって,実際の使用料と直接関係するものではない。また,もともと,原告は,1万2000㎥/日の配分水量を求めて,被告に広域的水道設備を要請し,同水量で策定された広域的水道整備計画に同意しているものであり,現在の基本水量7300㎥は,段階的整備や工業用水が別立てとならなかった事情による原告の要望などをふまえ,1万2000㎥/日を大幅に減少させて協定した水量である。 原告の営むα1町水道事業について,自ら行った申込や協定に企業として責任を負わなければならないのは当然であり,財政が厳しいからといって,それを他者のせいにしたり,一方的に約束を反故にするような- 65 -ことは到底許されない。 自らが本件協定書において引き受けることを約した最大受水量の半分以下で申込を行った原告の行為こそが本件協定書違反の行為である。 本件第1決定及び本件第2決定について,被告知事に裁量権の逸脱などはなく,違法との主張には理由がない。 (エ) 被告知事と原告とは,条例2条2項に定める「協議」に代替するものとして本件協定書を締結し,原告の基本水量を7300㎥/日とすることをあらかじめ合意して 違法との主張には理由がない。 (エ) 被告知事と原告とは,条例2条2項に定める「協議」に代替するものとして本件協定書を締結し,原告の基本水量を7300㎥/日とすることをあらかじめ合意しているから,本件第1決定及び本件第2決定において,「協議」を経ていないから手続違反があるとする原告の主張は失当である。 また,現実には,被告と原告とは,本件第1決定までに9回,本件第2決定までに3回の協議を実施しており,「協議」を経ていないとする原告の主張は正しくない。 (オ) 被告知事による本件第1決定及び本件第2決定が,原告の財政に不当な費用負担を生ぜしめるものであるとの批判も当たらない。 (3) 本件第1決定及び本件第2決定が契約に基づく意思表示(承諾)であり,被告は,原告に対し,意思の合致を超える部分の基本料金を不当利得として請求できるか否か。 ア原告(ア) 仮に,条例2条2項に基づく被告知事の「決定」が行政処分ではないとした場合,原告が被告に対して府営水道の供給料金を支払う根拠は契約に求めるしかない。 条例の流れを契約法的に理解すると,条例2条1項に基づく市町の「申込」を契約成立条件の申込と捉え,条例2条2項に基づく「協議」までの過程を契約の申込ないし契約条件の交渉,合意形成の過程と捉え,条例2条2項の「決定」「通知」が契約の成立要件としての承諾行為であ- 66 -ることになる。そして,結局,基本水量(基本料金)に関する原・被告間の意思の合致が原告による府営水道供給料金支払義務が発生する根拠となる。 (イ)a 平成19年度分については,平成19年2月27日,原告は,条例2条2項に基づき,被告に対し,平成19年度の1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて本件 発生する根拠となる。 (イ)a 平成19年度分については,平成19年2月27日,原告は,条例2条2項に基づき,被告に対し,平成19年度の1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて本件第1申込をした。 これに対して,被告知事は,条例に定められた「協議」を行わないまま,同年12月27日付けで平成19年度の原告の基本水量を1日当たり7300㎥とする本件第1決定をした。 しかし,原告と被告知事は,基本水量について数量的に倍以上の開きがある数値を主張しており,「協議」すらなされていない以上,1日当たり基本水量7300㎥について両者の合意の形成を想定することは不可能であり,被告知事が1日当たり7300㎥の「決定」「通知」をした時点で,より数量の少ない1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の間の意思の合致がなされたとみるほかない。 b 原告は,平成20年2月27日,被告に対し,平成20年度の1日当たりの最大の受水量を3407㎥と定めて本件第2申込をした。 そして,またしても実質的には「協議」すらなされないまま,同年4月24日付けで平成20年度の原告の基本水量を1日当たり7300㎥とする本件第2決定をした。 平成20年度についても,原告と被告知事は,基本水量について数量的に倍以上の開きがある数値を主張しており,実質的な「協議」すらなされていない以上,1日の基本水量7300㎥について両者の合意の形成を想定することは不可能であり,平成20年度についても,被告知事が1日当たり7300㎥の「決定」「通知」をした時点でより数量の少ない1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の間- 67 -の意思の合致がなされたとみるほかない。 (ウ)a 上記のように原告と被 7300㎥の「決定」「通知」をした時点でより数量の少ない1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の間- 67 -の意思の合致がなされたとみるほかない。 (ウ)a 上記のように原告と被告知事の意思が合致し,契約が成立したのは1日当たりの基本水量3407㎥の範囲である。したがって,支払義務が発生する基本料金は,3407×366×92円=1億1472万0504円を日割計算で各月に割り付けた金額についてのみである。逆にいえば,被告が1日当たり7300㎥を前提にして,原告に対して基本料金を請求した場合,その請求につき1日当たり7300-3407=3893㎥分については法律上の原因がないことは明白である。 それにもかかわらず,被告は,原告に対し,1日当たり7300㎥を前提に,7300×92円×366日(平成20年2月は閏年のため1日多い。)=合計2億4580万5600円について,下記表1「被告要求基本料金額」欄記載の各金額の支払を請求した。 原告は,平成20年1月4日,基本水量7300㎥については容認できない旨の異議をとどめた上,原告の主張が最終的に実現しなかった場合に生じる延滞金の発生を事前に回避するため,被告主張の基本料金について,下記表1中の「支払日」欄記載の各日に「被告要求基本料金額」欄記載の各金額を支払った。 〈表1 平成19年度被告不当利得額〉 平成19年度基本料金(単価92円)月別日数支払日支払総額(従量料金を含む)被告要求基本料金額(7300㎥/日)契約成立基本料金額(3407㎥/日)被告不当利得額(3893㎥/日)4~11 244 20.1.11 186113360 163870400 76480336 /日)契約成立基本料金額(3407㎥/日)被告不当利得額(3893㎥/日)4~11 244 20.1.11 186113360 163870400 7648033687390064- 68 - 20.1.25 2350412020819600971676411102836 20.2.21 2342096020819600971676411102836 20.3.25 2195197619476400908987610386524 20.4.25 2355149620819600971676411102836計 245805600 114720504 131085096その結果,被告には,表1「被告不当利得額」欄記載の各不当利得が生じ,その合計額は1億3108万5096円となる。 b 平成20年度についても,上記のように原告と被告知事の意思が合致し,契約が成立したのは1日当たりの基本水量3407㎥の範囲である。したがって,支払義務が発生する基本料金は,3407×365×87円=1億0818万9285円を日割計算で各月に割り付けた金額についてのみである。逆にいえば,被告が1日当たり7300㎥を前提にして,原告に対して基本料金を請求した場合,その請求につき,1日当たり7300-3407=3893㎥分については法律上の原因がないことは明白である。 それにもかかわらず,被告は,原告に対し,1日当たり7300㎥を前提に,7300×87円×365日=合計2億3181万1500円について,下記表2「被告要求基本料金額」欄記載の各金額の支払を請求した。 かかわらず,被告は,原告に対し,1日当たり7300㎥を前提に,7300×87円×365日=合計2億3181万1500円について,下記表2「被告要求基本料金額」欄記載の各金額の支払を請求した。 原告は,平成20年5月9日,基本水量7300㎥については容認できない旨の異議をとどめた上,原告の主張が最終的に実現しなかった場合に生じる延滞金の支払を事前に回避するため,被告主張の基本料金について,下記表2中の「支払日」欄記載の各日に「被告要求基本料金額」欄記載の金額を支払った。 〈表2 平成20年度被告不当利得額〉- 69 - 平成20年度基本水量(単価87円)月別日数支払日支払総額(従量料金含) 被告要求基本料金額(7300㎥/日)契約成立基本料金額(3407㎥/日)被告不当利得額(3893㎥/日) 20.5.21 2164968019053000889227010160730 20.6.25 2227495219688100918867910499421 20.7.25 2159240419053000889227010160730 20.8.25 2241772819688100918867910499421 20.9.25 2233078819688100918867910499421 20.10.2 2156018419053000889227010160730 20.11.2 2239533619688100918867910499421 20.1 19053000889227010160730 20.11.2 2239533619688100918867910499421 20.12.1 2173831219053000889227010160730 21.1.23 2249912419688100918867910499421 21.2.25 2231476819688100918867910499421 21.3.25 202868161778280082994529483348 21.4.24 2234673619688100918867910499421計 231811500 108189285 123622215その結果,被告には,「被告不当利得額」欄記載の不当利得1億2362万2215円が生じた。 (エ) 原告は,被告に対して,第2事件の訴状の送達をもって,上記不当利得返還の請求をしている。被告は,遅くとも第2事件の訴状送達の日- 70 -である平成20年7月9日から各利得について法律上の原因がないことを覚知しており,利得について悪意である。 いずれにせよ,被告には,上記訴状送達日前に原告による支払が済んでいる分については訴状送達の日の翌日から遅延損害金ないし利息の支払義務があり,それ以降の分については,原告による支払の日の翌日から遅延損害金ないし利息の支払義務があり,平成21年5月18日分までの確定額は,別紙計算書のとおり875万0109円である。 イ被告(ア) 条例2条に基づき,給水の申込を行う市町 ら遅延損害金ないし利息の支払義務があり,平成21年5月18日分までの確定額は,別紙計算書のとおり875万0109円である。 イ被告(ア) 条例2条に基づき,給水の申込を行う市町と基本水量を決定して通知する被告知事との関係,あるいはそれにより市町と被告との間に成立する関係が契約であるとの主張については争う。 条例2条によれば,被告知事は,市町から申込を受けたときは,当該市町と協議の上,基本水量を決定し,通知するとされているのであり,被告知事の決定が市町の申込内容に拘束される構造とはなっていない。 「協議」を経ることとされているものの,あくまで被告知事が決定する裁量を有しているのである。両者の意思表示が合致して成立する私法上の契約とは明らかに性質を異にするものである。 また,条例6条によれば,延滞金を徴収することができるものとされている。私法上の遅延損害金と異なり,条例の定めによって延滞金を徴収することができるのは,地方公共団体が有する債権のうち,地方自治法231条の3第1項に規定する「分担金,使用料,加入金,手数料及び過料その他の普通地方公共団体の歳入」である公法上の債権のみであり(同条2項),このことからも水道水供給をめぐる被告と市町との関係が私法上の契約関係でないことは明らかである。 以上のとおり,被告知事による基本水量決定は,公法上の行政行為であるから,基本水量決定を原・被告間の意思表示の合致ととらえ,それ- 71 -により成立する契約が水道料金支払義務の根拠であるとする原告の主張は誤りである。 (イ) 原告は,本件第1決定及び本件第2決定について,いずれも1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の間の意思が合致したと主張する。 しかしながら, 張は誤りである。 (イ) 原告は,本件第1決定及び本件第2決定について,いずれも1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の間の意思が合致したと主張する。 しかしながら,原告による申込は意思表示としてのものでないことは上述したとおりであり,基本水量決定も意思表示(効果意思)の効果として生じるものではないのであるから,そこに両者の意思表示の合致というようなものを観念する余地はそもそもない。 また,基本水量は,使用水量のようにその後の実際の使用に応じて変動するものではなく,水道水供給における基本料金を決めるものである。すなわち,被告が,原告に,基本料金をいくらとして水道水を供給するかという供給の前提条件を定めるものである。したがって,基本水量7300㎥/日という条件で水道水を供給するというのと,基本水量3407㎥/日という条件で供給するというのでは,条件が全く異なるのであって,3407㎥/日の限度で重なり合う(合致する)というものではない。 いずれにしても,1日当たり3407㎥の範囲で原告と被告知事の意思表示が合致したとする原告の主張は認められない。 (ウ) 平成19年度及び平成20年度のいずれにおいても,基本水量を7300㎥/日とする被告知事の決定が存在しており,基本料金の支払と徴収について「法律上の原因」があることは明らかである。 被告知事による基本水量決定は,契約ではなく行政処分であり,行政処分はその内容の適否にかかわらず,取り消されない限り効力を有するものである(公定力)。 なお,被告知事が受水市町に対して基本水量を決定し,供給料金を請- 72 -求できる根拠は,条例である。 (エ) 本件第1決定及び本件第2決定は,手続的にも内容的 公定力)。 なお,被告知事が受水市町に対して基本水量を決定し,供給料金を請- 72 -求できる根拠は,条例である。 (エ) 本件第1決定及び本件第2決定は,手続的にも内容的にも条例及び本件協定書に適合したものであり,京都府営水道事業の管理者の職務を行う被告知事の立場において,裁量権の行使に逸脱又は濫用があるとは到底認められない。 したがって,原告が不当利得と主張する平成19年度及び平成20年度の基本料金について,各基本水量決定という「法律上の原因」があることはもとより,それらの決定が適法なもので取り消すべき事由がないことも明らかである。 (オ) 被告知事は,原告に1日当たり7300㎥を配分することを約し,原告がこれを引き受ける旨を約した本件協定書が締結されており,被告知事がこれに基づいて本件第1決定及び本件第2決定をしている以上,被告が原告から支払を受けた水道料金について「法律上の原因」がある。 (カ) 「法律上の原因」があるとする法律構成については,いくつか考えることができる。 1つは,基本水量の決定が申込と承諾という意思表示(契約)によって行われるものだとしても,本件協定書をもって基本水量を7300㎥/日とする双方の予約がなされているとみる構成である。被告知事及び原告は,基本水量を7300㎥/日とする場合には,予約完結権を行使すればよく,相手方の承諾は不要であるが,それと異なる基本水量を求める場合には,予約完結権を行使することなく,改めて申込の意思表示をして相手方の承諾を得なければならないということである。 こうした法律構成によれば,原告がした3407㎥/日という申込については,被告知事が承諾しなかったため不成立となり,7300㎥/日を基本水量と 諾を得なければならないということである。 こうした法律構成によれば,原告がした3407㎥/日という申込については,被告知事が承諾しなかったため不成立となり,7300㎥/日を基本水量とする被告知事の決定については,予約完結権の行使として契約が成立することになるので「法律上の原因」があることになる。 - 73 -もう1つは,基本水量を定める契約自体は,あくまで条例に基づく申込と承諾の意思表示によって,留保や制限なくなされ得るが,本件協定書による引受義務に反する原告の申込は別途債務不履行となるという構成である。条例に基づいてなされる契約自体には留保を認めない結果,契約としては意思表示の合致する3407㎥/日の範囲でしか成立しないこととなるが,そうした原告の行為は,7300㎥/日を引き受けるとした本件協定書に基づく義務に違反することとなるので,基本料金の差額分について損害賠償義務を負うことになる。 こうした法律構成によれば,基本水量を定める契約としては,原告が申込をした3407㎥/日の範囲でしか成立しないが,原告は基本水量を7300㎥/日とした場合の基本料金との差額を損害賠償すべき義務を負うので,結局は,3407㎥/日の基本料金を超える分についても「法律上の原因」があることとなり,不当利得は成立しない。 また,原告自ら,被告知事に水道水供給事業の整備を要請して,その費用を支出させておきながら,そうした固定費を水道料金の基本料金として反映させるための基本水量について責任ある分担をせず,工業用水分の負担などへの配慮として1万2000㎥/日を7300㎥/日に軽減する合意を取り付けたにもかかわらず,更にその半分近い3407㎥/日での申込をし,その差額を「不当利得」として請求するなどというのは権 負担などへの配慮として1万2000㎥/日を7300㎥/日に軽減する合意を取り付けたにもかかわらず,更にその半分近い3407㎥/日での申込をし,その差額を「不当利得」として請求するなどというのは権利の濫用として許されないというべきである。 (4) 被告の上記(3)イ(カ)の主張は,禁反言の法理に違反して許されず,時機に後れた攻撃防御方法であるか否か。 ア原告原告は,既に本件第1回口頭弁論期日前から,行政処分法理に基づく行政処分取消請求訴訟と契約法理に基づく給付請求訴訟の双方を提起しており,本件第1回口頭弁論期日当日は,口頭弁論で原告としてはいずれか- 74 -の訴訟形式に固執するものではないとの態度を明らかにした。その後の,本件口頭弁論期日においては,原告は,今後契約法理の側面に比重を移すとの見解も明らかにした。 そのような経緯を経た後,平成20年12月25日の本件第4回口頭弁論期日において,被告は「本件について当事者間の意思の合致は要しない。 この点に関し,意思の合致の主張はしない。」と言明した。 前記の被告の新たな主張は,「意思の合致」による契約法理に基づく主張をしているものであり,明らかに上記言明,主張に違反する。 このような主張は,禁反言の法理に違反し,許されない。 本件の審理の進行予定としては,既に平成21年7月17日の本件第8回口頭弁論期日において,訴訟の終結に向け,証拠調べの期日と,最終弁論期日までもが指定された。 被告の上記主張は,これまで何度も機会があったもので,被告がこれをしなかったのは,過失によって忘れていたなどというものでは全くない。 むしろ,積極的にしないと言明していたのである。 にもかかわらず,今になってこのような重大 会があったもので,被告がこれをしなかったのは,過失によって忘れていたなどというものでは全くない。 むしろ,積極的にしないと言明していたのである。 にもかかわらず,今になってこのような重大な主張を新たにすることはあまりに時機に後れて提出された防御方法として,主張自体却下されるべきである。 イ被告被告としては,仮に基本水量の決定が契約であるとされる場合でも,本件協定書が存在し,「法律上の原因」があるから不当利得とならないことは当初から主張してきているものである。契約であるとなった場合には何らの主張もすることなく請求を認諾するような訴訟態度を示したことはない。上記主張は,本件協定書の存在により,「法律上の原因」があるとする従前からの主張について,いくつかの法律構成を例示して敷衍したものにすぎない。 - 75 -また,被告が主張しないとした「意思の合致」は,平成19年度及び平成20年度のそれぞれにおいてなされた原告の3407㎥/日という意思表示と被告知事の7300㎥/日という意思表示の合致のことである。 原告が平成19年度も平成20年度も3407㎥/日でしか申し込んでいないのに,7300㎥/日の基本料金を強制できる根拠は何かと聞いたのに対し,被告としては,行政処分であるから意思の合致は要しない,契約という性質であるとしても,本件協定書が存在しているから,毎年度ごとになされる双方の意思表示が合致することは必要でないとの考えを明らかにしたものに他ならない。 本件協定書自体も,「協定」である以上,意思の合致であり,1つの契約であることは当然であるが,そうした意思の合致や契約の存在については当初から主張しているところである。被告の本件第4回口頭弁論期日における釈明が,そうした従前 ある以上,意思の合致であり,1つの契約であることは当然であるが,そうした意思の合致や契約の存在については当初から主張しているところである。被告の本件第4回口頭弁論期日における釈明が,そうした従前からの主張を撤回するような意味合いでないことは当然であり,本件協定書という契約(予約)や意思の合致があることを前提にしてこそ,毎年度ごとには意思の合致がなくても基本水量を決定できると主張しているのである。 上記主張の法律構成は,いずれも平成19年度及び平成20年度のそれぞれにおいて双方がした意思表示の合致を主張するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争いのない事実等及び証拠(甲1,6~17,18の1~4,21~24,26,乙1~9,10の1・2,11~24,25の1~7,26の1~7,27~34,35の1~3,36の1~3,37~50,52,53,証人C,原告代表者。なお,特に関連する証拠については,各文の末尾に掲げた。)並びに弁論の全趣旨によれば,本件の経緯につき,以下のとおり認められる。 (1) 被告は,昭和46年,経済企画庁に対し,α5川水系等に係る水需要量調査結果の説明を行ったが,その中の上水道用水需要量調査において,原告は,- 76 -昭和50年以降の水源を地下水から表流水に転換し,昭和55年における1日最大受水量を1万2450㎥とする旨回答した。(乙27)(2) 被告,大阪府等の水道用水等の確保を事業目的として,洪水調節,不特定かんがい等の用に供する機能を有するα7ダム建設事業を行うことなどを内容とするα5川水系における水資源開発基本計画の全部変更について,昭和47年4月,内閣総理大臣から,被告知事に対し,意見照会がなされた。 被告知事は,これを関係市町に照会し,原告町長から,α7ダム建設 5川水系における水資源開発基本計画の全部変更について,昭和47年4月,内閣総理大臣から,被告知事に対し,意見照会がなされた。 被告知事は,これを関係市町に照会し,原告町長から,α7ダム建設事業については早期着工を望むものである旨の回答がなされた。(乙4~6)(3) 昭和47年9月19日閣議決定のα5川水系における水資源開発基本計画では,α7ダムについて,開発水量は3.7㎥/sとされていた。(甲6)(4) 昭和48年6月付け近畿地方建設局作成のα5川α7ダム建設事業計画書には,α7ダムは,京阪神地区に都市用水3.7㎥/sを供給するとの記載がある。(甲7)(5) 昭和52年,「α1町地下水採取の適正化に関する条例」が制定された。 同条例では,有限な地下水資源を適正な採取と合理的な利用を図ることによって保護し,併せて大量採取による地盤沈下などを防ぎ,もって住民の福祉に寄与することが目的とされた。(乙18)(6) 昭和53年11月付けα12川治水利水対策協議会下流部会作成のα12川下流部における水需給等調査報告書には,地盤沈下の調査の結果,α12川沿岸の低平地部を中心にかなり広範囲にわたって毎年1㎝以上の地盤沈下の現象がみられ,α12川沿岸地域における水道用水,工業用水等の水源としては安定した表流水に転換していくための十分な検討をしていく必要があるとの記載がある。(乙19)(7) α12川治水利水対策協議会下流部会は,昭和54年度の事業として,下流の地下水取水の適正化を図るため,工業用水等の取水状況等がどうなっているかを調査するため,α12川の下流部における工業用水の使用量等の調- 77 -査(アンケート)を実施した。実施対象は,京都市,向日市,長岡京市及び原告(以下,後3者を併せて「乙訓2市1町」 ているかを調査するため,α12川の下流部における工業用水の使用量等の調- 77 -査(アンケート)を実施した。実施対象は,京都市,向日市,長岡京市及び原告(以下,後3者を併せて「乙訓2市1町」という。)であり,昭和55年10月,下流部会幹事会において,原告の水道課長出席の下,とりまとめがなされ,同月11月の下流部会及び総会において,原告町長出席の下,報告がなされた。 同調査は,京都市及び乙訓2市1町の合計402の事業所(うち原告の事業所は14)を対象とし,(昭和)65年,70年に向けての全般的な用水使用量は,繊維工業,金属工業が横ばい傾向を示し,その他業種は上昇を予測し,特に機械器具製造業は著しい上昇予測をしているのが目立っている,地域的には,京都市の用水使用量が全域的に上昇予測しているのに対し,向日市が使用水量の減少を予測し,また,原告が著しい使用水量増加を予測するなど,乙訓2市1町の中でも予測が異なっている,この地域予測を水源別で見ると,原告が回収水を高める予測をしているのが目立っているとされている。また,原告の工業用水将来予測では,昭和53年を100とすると,昭和65年が312,昭和70年が323であった。また,水源別構成比では,昭和65年では,回収水が62.1%,井戸水が34.1%となっており,昭和70年では,回収水が61.3%,井戸水が34.8%となっている。 なお,今後における主要検討課題として,事業所の大部分が京都市南部地域に集中していることから,地下水取水の適正化を図るために,京都市を含め一体的に検討する必要がある,井戸水取水の平均現状費用が18.0円/㎥,平均限界費用が21.6円/㎥と,α12川治水利水対策協議会「α12川下流部における水道計画調査」における工業用水道試算単価30.3円/㎥ する必要がある,井戸水取水の平均現状費用が18.0円/㎥,平均限界費用が21.6円/㎥と,α12川治水利水対策協議会「α12川下流部における水道計画調査」における工業用水道試算単価30.3円/㎥より低くなっており,円滑な表流水転換を進めるためには,事業所の限界費用について分析調査等を行う必要があるとしている。 同総会において,事務局長は,工業用水の取水の費用については,現在1- 78 -t当たり11円~26円となっており,事業所の限界費用として食料品製造業が1t当たり40円という高い数値が出ているが,他の業種は30円未満という状況である,アンケートも,直接職員が行って聞き取りをした場合と郵送の場合があり,調査のやり方にも多少の違いもあるので,今後この調査をもう少し分析検討していきたい,α12川治水利水対策協議会下流部会による水道計画調査で,工業用水道の試算単価が,水源費を除いて30円30銭であり,現在の限界費用が平均21円60銭で,水道の試算単価よりも安くなっていると説明した。(甲8,9,乙30)(8) 昭和56年度のα12川治水利水対策協議会総会において,理事(技監)から,α12川下流域のα7ダムに係る利水配分については,上水道用水,工業用水の表流水転換量を都市用水としてα12川右岸地域で毎秒0.65tから0.86tまでの間で,関係市町の意向を配慮して調整検討を進めるとの発言があった。(乙31)(9) 昭和53年11月付けα12川治水利水対策協議会下流部会作成のα12川下流部における水需給等調査報告書の転換量の計算式等と平成56年11月のα12川治水利水対策協議会のα12川下流地域に係る新規必要水利権調査結果に基づき,原告の工業用水需要量が6400㎥/日と算出された。(乙28,29)(10) 昭和 式等と平成56年11月のα12川治水利水対策協議会のα12川下流地域に係る新規必要水利権調査結果に基づき,原告の工業用水需要量が6400㎥/日と算出された。(乙28,29)(10) 昭和57年度のα12川治水利水対策協議会総会において,理事(代理計画局次長)から,α7ダムの建設に係る都市用水の水配分は,α12川右岸地域においても0.86㎥/sとし,被告及び関係市町は協力してこの事業化に努めるとの発言があり,向日市長から,0.86㎥/sの上水道・工業用水道の事業化については,乙訓2市1町は,被告の力添えを得たいとの陳情があった。(乙20)このころ,京都市が工業用水道から離脱することになった。 (11) 原告町長や宇治市長らは,昭和59年2月,水道法5条の2第1項の規- 79 -定に基づき,京都府水道整備基本構想による南部水道圏に適合した広域的水道整備計画の策定を被告知事に求めた。(乙8,9)(12) 昭和59年10月,被告により,乙訓地域水道基本計画調査結果に係る説明会が開かれたが,工業用水道は,原価が高くなるため,事業が不可能であり,全量上水として配分することとして,早急に配分量を決定する必要があるとの説明がされた。(甲10,乙7)(13) 原告町長や宇治市長らの上記要望に対し,被告は,昭和60年9月ころ,京都府南部地域広域的水道整備計画を策定した。この計画では,原告の京都府営水道からの受水量は1万2000㎥/日とされた。なお,この策定に当たっては,同年6月ころ,被告知事が関係市町に対し,京都府南部地域広域的水道整備計画について計画案に基づき協議を申し入れていた。同計画案には,各市町の具体的な水量については記載がなかった。既存「α25水道」と「第二α25水道」の統合及び乙訓地域への拡張を骨子と 広域的水道整備計画について計画案に基づき協議を申し入れていた。同計画案には,各市町の具体的な水量については記載がなかった。既存「α25水道」と「第二α25水道」の統合及び乙訓地域への拡張を骨子とする府営水道用水供給事業を根幹的水道施設として整備するとされ,施設整備に当たっては,給水区域内における給水サービス等の平等化を考慮すると共に,渇水時や災害時の対策として,近隣市町村との連携についても考慮し,より安全で安定した給水を図るとされた。また,市町村水道事業の主たる水源は,地下水源であるとしている。 原告は,昭和60年7月10日,この計画に同意し,同年10月,被告議会定例会の本会議でも同意がされた。(乙10の1・2,11~13)(14) 昭和61年10月8日付けで宇治市長から被告知事に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面には,府営水道の受水量について1日最大受水量6万9200㎥,計画目標年次昭和75年次として申し込む旨の記載がある。 また,同日付けで宇治市長から被告知事に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面において,- 80 -宇治市長は,申込の受水量について,今後需要予測の変動等がある場合には協議を行うこと,料金制度等についても協議を行うことへの配慮を要望した。(乙39,40)(15) 昭和61年11月7日付けで被告企業局長から原告町長に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について(依頼)」と題する書面が作成されたが,同書面は,原告に対し,申請に必要な受水量について申込をするように求めるものであり,目標年次(昭和75年)の1日最大需要量は,1万2000㎥/日とされた。 被告企業局として 作成されたが,同書面は,原告に対し,申請に必要な受水量について申込をするように求めるものであり,目標年次(昭和75年)の1日最大需要量は,1万2000㎥/日とされた。 被告企業局としては,今回の数量は事業認可を受けるためのものであり,細部については今後協議するとのことであった。(甲11,12)(16) 原告町長は,被告知事に対し,昭和61年11月27日,1日最大受水量1万2000㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望した。 同日付けで原告町長から被告知事に対して「京都府営水道用水供給事業の推進について」と題する書面が作成されたが,同書面には,受水量について,乙訓2市1町が,α7ダム完成によって生じる利水については,地下水の将来展望に立って,水道水としての水源確保と共に工業用水への利用を大きな目的としていたものであったが,結果的に水道水及び工業用水としての都市用水から,水道用水としての利水配分となったことにより,水道事業財政のみでは対応できるものでなく,極端な危機に直面することが予想されるので,被告としてこの現状を察して十分な配慮をしてほしいとの記載がある。 また,同日付けで原告町長から被告企業局長に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面においても,府営水道の年次受水量については,本町自己水との関連において,今後の需要予測に基づき,供給開始時期及び年次受水量等の協議をしてほしい,工業用水が水道用水の中に含まれることになった経緯をふまえ,政策的に格段の配慮を願うと共に十分協議をしてほしい,表流水導入に伴う先行投- 81 -資負担等,水道料金への急激な負担増とならないよう配慮を願うと共に十分協議をしてほしいとの記載がある。(甲13~15,乙15)(1 に十分協議をしてほしい,表流水導入に伴う先行投- 81 -資負担等,水道料金への急激な負担増とならないよう配慮を願うと共に十分協議をしてほしいとの記載がある。(甲13~15,乙15)(17) 向日市長は,被告知事に対し,昭和61年11月27日,1日最大受水量1万6800㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望した。 同日付けで向日市長から被告企業局長に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面には,要望した受水量は,あくまでも都市用水としての必要水量であり,この間の経過をふまえ,事業実施に際しては,地域の実情を十分斟酌し,経済的に市民への負担転嫁とならないよう格段の配慮をしてほしい旨の記載がある。 また,同日付けで向日市長から被告知事に対して「京都府営水道用水供給事業の推進について」と題する書面が作成されたが,同書面には,要望に基づく府営による水道事業の実施に当たり,経営認可申請に必要な府営水道受水量についての添付資料を提出した,乙訓2市1町が,α7ダム完成によって生じる利水については,地下水の将来展望に立って,水道水としての水源確保と共に工業用水への利用を大きな目的としたものであったが,結果的に都市用水から水道用水としての利水配分となったことにより,受け皿としての水道財政が極端な危機に直面することが予想されるとの記載がある。(乙35の1~3)(18) 長岡京市長は,被告知事に対し,昭和61年11月27日,1日最大受水量4万㎥(計画目標年次昭和75年次)を要望した。 同日付けで長岡京市長から被告企業局長に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面には,受水量について,都市用水として進めた経緯があることから,事 同日付けで長岡京市長から被告企業局長に対して「京都府営水道用水供給事業に係る受水について」と題する書面が作成されたが,同書面には,受水量について,都市用水として進めた経緯があることから,事業の実施に当たっては乙訓地域の実情を十分くみ取り,格段の配慮をしてほしいとの記載がある。 また,同日付けで長岡京市長から被告知事に対して「京都府営水道用水供- 82 -給事業の推進について」と題する書面が作成されたが,同書面には,被告としては,利水配分に係る全水量について水道用水として事業を実施する以外に良策がないとのことであるので,この事業の実現に向けて協力するために,必要書類等を企業局長宛てに提出した,乙訓地域では,水道用水及び工業用水をα7ダムの利水配分によって確保したいと考えていたが,今回これが水道用水として一本化されることに伴い,事業の実施に当たっては,特に工業用水の扱いについて政策的に格段の配慮をしてほしいとの記載がある。 (乙36の1~3)(19) 平成9年度に原告が作成した「α1町の水道」と題する文書には,原告における水源は,すべて地下水の揚水によってまかなっていることから,このままでは将来の住民生活や産業活動への影響が予測され,緊急課題として地下水保全や代替水源の確保について論議,検討をしてきた,京都府営用水供給事業によって,0.86㎥/sを水源とする仮称乙訓浄水場が平成12年度供用開始をめどに建設工事が進められており,乙訓2市1町がこれを受水することができるようになったとの記載がある。(乙14)(20) 京都府営乙訓水道の基本料金,従量料金の検討を開始した平成9年6月4日に開催された京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)において,事業費は304億3800万円となる,施設整備事業費(水源費を除く。 京都府営乙訓水道の基本料金,従量料金の検討を開始した平成9年6月4日に開催された京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)において,事業費は304億3800万円となる,施設整備事業費(水源費を除く。)については,おおむね300億円としたいとの話があった。これ以前に,原告を含む関係市町に対して,具体的な府営水道料金が示されたことはなく,また,同会議においても,供給原価が示されることはなかった。 原告を含む乙訓2市1町からなる乙訓上水道事業連絡協議会は,被告に対し,府営水道受水に係る企業との協議を始め,水道事業の財政計画の策定には,料金抜きでは先に進まないので,早く決めてほしいとの要望をした。 なお,施設整備事業費については,当初250億円であったが,最終的には,300億円から1割以上は増額した。これについて,だれがどのような- 83 -割合で負担するということは,被告と原告を含む乙訓2市1町との間で協定はなかった。(乙42,証人C)(21) 平成9年10月16日に開催された府営水道に係る情報交換会では,府営水受水量については被告及び市町全体として未だ正式に確認がされておらず,市町から明確な受水量が示されれば被告としては試算は可能であるとされた。この情報交換会に提出された参考資料では,α7ダムの建設費の被告の負担について,当初(昭和57年度)は73億6176万円,第1回変更(平成5年度)では97億5433万2000円,第2回変更(平成8年度)では112億6349万3000円と試算されている。(乙43,44)(22) 平成9年11月13日の京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)において,乙訓2市1町における最終受水量は6万8800㎥/日であるが,現在整備を進めている浄水場の施設能力は4万6000㎥/日であ ) 平成9年11月13日の京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)において,乙訓2市1町における最終受水量は6万8800㎥/日であるが,現在整備を進めている浄水場の施設能力は4万6000㎥/日であるとされ,これに対する各市町の配分水量については市町間で整理調整することとなった。(乙32)(23) 平成10年2月6日,京都府営水道受水市町管理者会議(乙訓系)が開催され,あらかじめ受水市町間で調整された結果である,施設能力(1日最大給水量)として,最終の規模を6万8800㎥/日,給水開始時点の規模を4万6000㎥/日とし,乙訓浄水場の供給開始に伴う配分水量は向日市1万3000㎥/日,長岡京市2万6000㎥/日,原告7000㎥/日とすることが被告及び各市町で確認された。(乙45)(24) 平成10年3月17日付けで被告企業局長から原告町長に対して「京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備等に関する協定の締結について」と題する書面が作成され,被告企業局長から原告町長に対して本件協定書の締結の依頼があった。(乙46)(25) 被告知事と原告町長との間で平成10年3月30日付けで,本件協定書が締結された。 - 84 -本件協定書の体裁は,下記のようなものである。 記被告知事(被告の水道事業の管理者の権限を行う知事,甲)と原告町長(乙)は,京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る施設整備,水配分等に関して,次のとおり協定を締結する。 (施設整備)第1条甲は,京都府営水道乙訓浄水場(仮称)の整備に当たっては,乙訓地域の社会経済情勢の推移に伴う水需要の動向を踏まえ,過度の先行投資とならないよう,段階的に行うものとする。 2 前項に基づき,当面整備する施 営水道乙訓浄水場(仮称)の整備に当たっては,乙訓地域の社会経済情勢の推移に伴う水需要の動向を踏まえ,過度の先行投資とならないよう,段階的に行うものとする。 2 前項に基づき,当面整備する施設能力(供用開始時における給水能力)は,1日当たり4万6000㎥とする。 (拡張整備)第2条京都府営水道乙訓浄水場(仮称)に係る将来の拡張整備については,乙訓地域の地下水から地表水への転換状況など水需要の動向を勘案しながら,甲乙協議調整の上,進めるものとする。 (配分水量)第3条甲が供用開始に伴い乙に配分する1日当たりの水量は,7300㎥とし,乙はこれを引き受けるものとする。 (協議)第4条この協定書に定めのない事項又はこの協定書の事項について疑義が生じたときは,甲乙協議してこれを定めるものとする。 なお,甲欄には,「京都府知事A」の記名と被告知事の印が,乙欄には,「α1町長B」の記名と原告町長の印がある。 同様の協定書は,向日市(名義は向日市水道事業管理者),長岡京市(名義は長岡京市水道事業管理者)との間でも締結された。 この段階でも,事業は6万8800㎥/日を前提に進行していた。(乙1,- 85 -33,34,47,証人C)(26) 原告から,被告知事に対し,平成10年3月ころ,平成9年度京都府乙訓郡α1町水道事業(第4次拡張計画変更)変更認可申請書による申請がされた。同申請の理由は,原告において,近年地下水低下や,水質悪化が生じ始めたため,水道用水の安定供給のため,安定した地下水と表流水の二元水源確保の必要が生じ,α7ダムを水源とした京都府営水道による用水供給事業が本格化し,平成11年度から導入が実現することとなったというものであった。また,1日 給のため,安定した地下水と表流水の二元水源確保の必要が生じ,α7ダムを水源とした京都府営水道による用水供給事業が本格化し,平成11年度から導入が実現することとなったというものであった。また,1日最大給水量について,520ℓ/人を805ℓ/人に変更するとされた。 これに伴う平成10年3月30日付けの原告町長から被告企業局長に対する「水道事業変更(第4次拡張計画変更)に伴う府営水道からの供給水量の確約書交付について(依頼)」と題する書面には,開始年次を平成11年度,目標年次を平成24年度,一日最大給水量(受水量)を1万2000㎥とする旨の記載があり,これに対する平成10年4月16日付けの被告企業局長から原告に対する「α1町水道事業変更(第4次拡張事業計画変更)認可に係る京都府営水道からの用水供給水量について(回答)」と題する書面には,原告には平成24年度を目標として1日最大1万2000㎥を供給する旨の記載がある。(乙21~23)(27) 平成11年11月,京都府営水道事業経営懇談会は,「京都府営水道事業の経営のあり方及び施設設備の方向についての提言(第4次)」として,水道事業は,その経営に要する経費について,法令等により国庫や一般会計で負担されるものを除き,料金収入をもって充て,事業を継続していくという独立採算の原則と,この原則に沿って,その経費は利益を受ける者が負担するという受益者負担の原則の下に運営していくこととされるとし,基本水量及び供給水量は,被告と受水市町との協定によって定められた水量であり,また,配分水量(基本水量)として,平成10年3月30日付けで被告- 86 -知事と各受水市町水道事業管理者等との間で締結した協定書によるとした。 そして,施設能力を超える水利権等の資産を建設仮勘定に据え置き,そ )として,平成10年3月30日付けで被告- 86 -知事と各受水市町水道事業管理者等との間で締結した協定書によるとした。 そして,施設能力を超える水利権等の資産を建設仮勘定に据え置き,それらに係る費用を最大限繰り延べることとして積み上げると,固定費を約18億円繰り延べることが可能となるとした。なお,α7ダム建設費の被告負担分は約130億円とされた。 この提言は,記者発表を通じて公表された。記者発表資料には,懇談会としては,被告の財政状況を考慮し,一般会計からの支援を前提とした提言はできないと判断したが,今後,府財政の見直しを進められる中で可能であれば,受水市町の負担を軽減するための一般会計からの支援についても配意されたいとの記載がある。(乙24,48,49)(28) 平成12年5月10日付けで被告企業局長から乙訓系各受水市町水道事業管理者に対して「京都府営水道乙訓浄水場の供給開始に係る給水申込みについて(通知)」と題する書面が作成されたが,同書面には,年間における1日当たりの最大の受水量として,平成10年3月30日付けで被告知事と各受水市町水道事業管理者等との間で締結した協定書による配分水量をいうとの記載がある。(乙37)。 (29) 府営水の給水が開始された平成12年10月1日以降,平成18年度まで,原告から,毎年,本件協定書に基づいた基本水量7300㎥/日の給水申込がなされ,被告知事は,同申込水量で給付する決定をした。(甲22,乙25の1~7,26の1~7)(30) 平成13年2月28日付けで,被告知事と城陽市公営企業管理者との間で京都府営水道の供給料金等に関する条例に基づく府営水道の給水等に関する協定書が締結されているが,同協定書では条例2条1項の規定する「1日当たりの最大の受水量」及び 知事と城陽市公営企業管理者との間で京都府営水道の供給料金等に関する条例に基づく府営水道の給水等に関する協定書が締結されているが,同協定書では条例2条1項の規定する「1日当たりの最大の受水量」及び条例2条2項の規定する「1日当たりの最大の給水量」という記載があり,これが「配分水量」とは区別されている。(乙38)- 87 -(31) 平成15年11月付け京都府営水道事業経営懇談会作成の「第6次提言乙訓浄水場系の運営のあり方について」と題する書面では,料金の決定基準として,「公正妥当なもの」との理由から「受益者負担の原則」を導いている。また,導送水施設等の有形資産(約47億円)については,実態的には,既に供用している施設で経常的に資産価値の減耗が発生している事実があり,早期に減価償却を開始することが適切であるから,今回の料金算定に組み入れるべきであるとしている。(甲26)(32) 平成15年12月18日,原告議会は,被告知事に対し,企業使用の予測水量は,契約水量から外してほしい旨要望した。(甲24)(33) 被告は,原告に対し,本件第1申込が本件協定書の水量と一致しないので,申込を受けることはできず,再度,本件協定書の内容を踏まえて申込をするよう求めたが,原告は,被告に対し,平成19年3月5日,被告から原告に返送された本件第1申込の「給水申込書」を受け取ることはできない旨回答した。(乙2,3)(34) 平成19年6月13日の原告議会の平成19年第2回定例会において,原告代表者は,「被告とは,平成19年1月18日以降,副知事と2回,企業局長と8回,計10回の協議をして,現在も協議が継続中である。」と発言した。(乙17)(35) 平成19年10月2日の被告議会総務常任委員会において,企業局長は,「34 ,副知事と2回,企業局長と8回,計10回の協議をして,現在も協議が継続中である。」と発言した。(乙17)(35) 平成19年10月2日の被告議会総務常任委員会において,企業局長は,「3400㎥あまりの申込書はいったん戻して議論をしませんかという呼びかけをしており,そういう意味では協議はしていない状況になっていると思うが,被告としては話合いをするということをずっと言っている。」と発言した。(乙16)(36) 原告の水道事業は,平成11年度には3850万1000円の黒字を計上していたが,平成12年度から平成19年度までの8年間に合計8億4000万円を超える累積赤字を計上している。また,平成20年度は,495- 88 -8万7000円の赤字を計上している。 原告の水道料金は,京都市,向日市,長岡京市などの他の地方公共団体に比べ,高額となっている。(甲16,17,18の1~4,22,23)(37) 乙訓府営水道の料金については,日常的な給水に必要な費用(変動費)を負担する料金である従量料金と,水道事業を始めるに当たり,先に投資した水源開発や施設整備にかかった経費(固定費)を負担する料金である基本料金の2部料金制がとられている。 従量料金については,宇治系は19円/㎥,木津系は39円/㎥,乙訓系は36円/㎥である。(甲1,乙50) 2 争点(1)(第1事件について訴えの利益はあるか(被告の本案前の主張))についてまず,本件第1決定及び本件第2決定が行政処分であるか否かについてみるに,確かに,京都府営水道は原告ら市町の要望により策定された広域的水道整備計画に基づく水道用水供給事業として実施されたものであること,基本水量は,被告知事が関係市町間の調整をふまえて決定すべきものであることが認めら 営水道は原告ら市町の要望により策定された広域的水道整備計画に基づく水道用水供給事業として実施されたものであること,基本水量は,被告知事が関係市町間の調整をふまえて決定すべきものであることが認められ,上記各決定は,純粋な私法上の法律行為とはいい難い面を有するものである。 しかしながら,一般に処分性が認められる行政活動とは,行政庁による公権力の行使として行われる国民の権利義務の範囲を形成し又はその範囲を具体的に確定する行為をいうところ,本件第1決定及び本件第2決定は,地方公共団体である被告が同じく地方公共団体である原告に対してしたものであること,「年間における1日当たりの最大の給水量」の決定は,被告知事が一方的に行うのではなく,市町からの申込を受けて協議の上で行うものであること,基本料金の徴収について,滞納処分の例によることができるとの規定はないこと,基本水量の決定は,条例の名称にも趣旨にも何らの規定がなく,むしろ(給水の申込み等)との見出しの下に規定されているにすぎず,条例自体も基本水- 89 -量の決定が行政処分であることを前提としているとはいい難いことが認められ,以上の点にかんがみれば,本件第1決定及び本件第2決定は処分性が認められる行政活動とはいえず,むしろ,行政行為とは異なる公法上の法律関係に基づく法律行為と解するのが相当である。 そうすると,本件訴えのうち,第1事件の請求に係る部分は,訴えの利益がないことになり,争点(2)(被告知事のした本件第1決定及び本件第2決定が行政処分であるとして,本件各決定が適法であるか否か)について判断するまでもなく,同部分は却下を免れない。 3 争点(3)(本件第1決定及び本件第2決定が契約に基づく意思表示(承諾)であり,被告は,原告に対し,意思の合致を超える部分の基本料金を )について判断するまでもなく,同部分は却下を免れない。 3 争点(3)(本件第1決定及び本件第2決定が契約に基づく意思表示(承諾)であり,被告は,原告に対し,意思の合致を超える部分の基本料金を不当利得として請求できるか否か)及び争点(4)(被告の前記第2の3(3)イ(カ)の主張は,禁反言の法理に違反して許されず,時機に後れた攻撃防御方法であるか否か)について(1)ア前記認定の事実によれば,α12川沿岸地域においては,広範囲にわたって地盤沈下の現象がみられ,水道用水,工業用水用の水源として安定した表流水に転換していく必要があり,このような状況の下,原告町長は,当初から,α7ダム建設事業の早期着工を要望しており,工業用水の扱いをめぐって紆余曲折はあったものの,被告の京都府南部地域広域的水道整備計画は,基本的にはこのような原告を含む関係市町の要請に基づき策定されたものであったこと,同計画において,原告の京都府営水道からの受水量は1万2000㎥/日とされ,原告はこの計画に同意していること,その後,乙訓2市1町における受水量は6万8800㎥/日から4万6000㎥/日に減量され,確かに,原告を含む乙訓2市1町は府営水道料金がいくらになるのかについては関心を持っていたものの,最終的にこの受水量につき乙訓2市1町が自ら調整してその分配を決め,原告は7300㎥/日(当初は7000㎥/日)となったものであること,本件協定書は- 90 -このような経緯を経て締結されたものであり,配分水量として,配分する1日当たりの水量は,7300㎥とした上で,原告はこれを「引き受けるものとする」としていること,本件協定書の水量は前記のとおり,当初の水量から大幅に減量したものとなっており,段階的整備や工業用水分への配慮等の原告の意向や要望を踏まえて減量さ 告はこれを「引き受けるものとする」としていること,本件協定書の水量は前記のとおり,当初の水量から大幅に減量したものとなっており,段階的整備や工業用水分への配慮等の原告の意向や要望を踏まえて減量されたものであること,平成11年11月の京都府営水道事業経営懇談会による「京都府営水道事業の経営のあり方及び施設設備の方向についての提言(第4次)」において,基本水量及び供給水量は,被告と受水市町との協定によって定められた水量であり,配分水量(基本水量)として,本件協定書によるとし,平成12年5月10日付けの「京都府営水道乙訓浄水場の供給開始に係る給水申込みについて(通知)」と題する書面においても,年間における1日当たりの最大の受水量は本件協定書による配分水量である旨の記載があること,原告は,平成12年以降,平成18年度まで,毎年,本件協定書に基づいた基本水量7300㎥/日の給水申込をし,被告知事は,同申込水量で給水するとの決定をしていることが認められ,以上によれば,本件協定書の締結に至る経緯は,被告の原告に対する一方的な押し付けといったものではなく,むしろ,原告の要望等をふまえ,原告の意向を十分に尊重しながらなされたものであるということができる。こうした経緯を経て作成された本件協定書は,給水についての原告の申込及び被告の決定の基本となるべきものであり,本件協定書の締結は原告と被告との間の基本水量に関する公法上の給水契約の予約であると認められる。そして,このような予約の下で,本件協定書と異なる申込及び決定をするには,原告と被告の協議の上,これを変更するとの合意に至ることが必要であるというべきであり,協議に基づく変更がなされない以上,本件協定書に基づく予約の効果が存続するものと解するのが相当である。 イ確かに,本件協定書には,「配分 するとの合意に至ることが必要であるというべきであり,協議に基づく変更がなされない以上,本件協定書に基づく予約の効果が存続するものと解するのが相当である。 イ確かに,本件協定書には,「配分水量」との記載はあるものの,何ら「基- 91 -本水量」との記載がないが,本件協定書が給水開始前において作成されたことにかんがみれば,前記1(30)記載の城陽市の協定書と体裁が異なっていても不自然ではない。 ウまた,条例自体は,市町が毎年,基本水量を被告知事に申し込まなければならず,他方,知事は,申込を受けたときは,市町と協議の上,基本水量を決定し,通知するとしているだけであり,基本水量に関する給水契約の予約をすること自体を明示的に禁止しているわけではないから,本件協定書の締結が条例に反するものとまでいうことはできない。 エそして,前記1(33)~(35)記載の事実によれば,本件第1決定及び本件第2決定に当たって,原告と被告との間において協議自体は行われているか,少なくとも協議の機会は提供されているということができる。したがって,本件第1決定及び本件第2決定に至る手続に瑕疵があったということもできない。 オ本件協定書に基づく基本水量は,現時点において,原告の必要とする水量を上回っているものであることがうかがわれるが,水道用水供給事業においては,投資した水源開発や施設整備にかかった経費(固定費)を捻出する必要があるところ,同事業の公共性・公益性にかんがみれば,このような経費は,被告や国に加え,受益者である原告ら乙訓2市1町の負担によってまかなうべきものである。したがって,原告が基本水量の減額を求めることは,他の地方公共団体の負担が増加することに直結するものであり,これらの地方公共団体が基本水量の減額分を受け入れる の負担によってまかなうべきものである。したがって,原告が基本水量の減額を求めることは,他の地方公共団体の負担が増加することに直結するものであり,これらの地方公共団体が基本水量の減額分を受け入れることを同意するなどの事情のない限り,原告が一方的にこのような要求をすることは許されないものというべきである。 そして,このような水道用水供給事業における特殊性にかんがみれば,上記のような原則が地方財政法や地方公営企業法,京都府公営企業の設置等に関する条例等に違反するものであるともいえない。 - 92 -確かに,原告の財政状況については必ずしも良好なものとはいえないが,このことが直ちに本件協定書の効力を否定する理由とはなり得ない。 カなお,原告町長は,平成19年9月6日の原告議会の平成19年第3回定例会において,京都府営水道は,受水市町の申込に基づき多額の資本の投下をし,水源開発及び施設整備を行っているという点から,その施設維持に係る経費(固定費)については基本料金として確実に回収するなどにより,府営水道事業の基盤を維持することができる,ただし,それぞれの自治体水道事業は府営水道から供給を受ける受水事業であり,適切応分にその負担に応えていくものであって,とりわけ公平を欠く状況が生じた場合には常に調整の努力を求めていく必要がある,基本料金は算定期間内に発生する固定費をその間の基本水量の合計で除した1㎥当たりの単価である,料金算定は,あらかじめ受水市町に受水計画の提出をさせた水量の合計によって算定されると答弁し(乙52),また,平成19年12月10日の原告議会の平成19年第4回定例会において,本件協定書は,施設整備に関するものであり,乙訓浄水場の施設能力を1日当たり4万6000㎥とし,うち原告は7300㎥を配分水 また,平成19年12月10日の原告議会の平成19年第4回定例会において,本件協定書は,施設整備に関するものであり,乙訓浄水場の施設能力を1日当たり4万6000㎥とし,うち原告は7300㎥を配分水量とするものであり,この水量は基本水量を算定する際の基となるものであると答弁した(乙53)との議事録も証拠として提出されているが,これらの証拠はD証人の証言の弾劾証拠として尋問の当日に提出されたものであり,上記の答弁内容自体を本件協定書の内容を評価する直接の証拠として用いることはできない。 (2) 原告は,被告の主張について,禁反言に反し,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨主張するが,被告の予約等の主張は,本件第1申込及び本件第1決定,本件第2申込及び本件第2決定についての意思の合致をいうものではなく,むしろこのような主張は本訴提起当時から明示ないし黙示にされていたものである。他方で,本訴において,被告がかかる主張をしたことによって,新たに主張の整理が必要となったり,証拠調べが必- 93 -要となるなど,訴訟が遅延したなどの事情は認められないから,原告の主張は採用できない。 (3) 以上によれば,本件協定書を前提とする原告の基本料金の支払には「法律上の原因」があるから,原告の不当利得返還請求は理由がないというべきである。 4 そうすると,本件第1決定及び本件第2決定を行政処分として,その取消を求める第1事件の請求に係る訴えは,不適法であるから却下し,第2事件の不当利得返還請求は理由がないから棄却する。 京都地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官瀧華聡之 裁判官佐野義孝 裁判官 方裁判所第3民事部 裁判長裁判官 瀧華聡之 裁判官 佐野義孝 裁判官 梶山太郎
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