- 1 -平成22年9月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(行ケ)第10398号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成22年9月1日判決原告ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー訴訟代理人弁護士中村稔田中伸一郎渡辺光木内加奈子弁理士弟子丸健倉澤伊知郎渡邊誠被告特許庁長官指定代理人秋月美紀子横井亜矢子黒瀬雅一田村正明主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1原告の求めた判決- 2 -特許庁が不服2007-19217号事件について平成21年8月3日にした審決を取り消す。 第2事案の概要審決は,原告の特許出願に係る拒絶査定不服審判請求について,手続補正を却下した上,審判請求は成り立たないとした。争点は,手続補正についての独立特許要件の有無及び補正前発明の進歩性の有無である。 特許庁における手続の経緯(1) 本件出願(甲1)及び拒絶査定出願人:原告発明の名称:液体検体収集システム」「出願番号:特願2002-237463出願日:平成14年8月16日パリ条約による優先権主張:平成13年(2001年)8月17日(米国)手続補正:平成19年2月13日付け(補正後の請求項の数6。甲10)拒絶査定:平成19年3月30日付け(甲11)(2) 審判手続及び審決審判請求日:平成19年7月9日(不服2007-19217号)手続補正:平成19年8月7日付け(補正後の請求項の数3。本件補正。甲2)審決日:平成21年8月3日審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない」「。 審決 7月9日(不服2007-19217号)手続補正:平成19年8月7日付け(補正後の請求項の数3。本件補正。甲2)審決日:平成21年8月3日審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない」「。 審決謄本送達日:平成21年8月13日(出訴期間90日附加)2本件補正の内容本件補正は,特許請求の範囲の請求項1の記載を補正することなどを内容とするものであるが本願発明の本件補正前後の請求項1の記載は次のとおりである以,,(下,本件補正前の請求項1に記載された発明を「補正前発明」といい,本件補正後- 3 -の請求項1に記載された発明を「補正後発明」という。 。)(1) 本件補正前平成19年2月13日付け手続補正によるものの請求項1送()(り仮名を改めた部分がある)。 「生物学的流体検体の収集,搬送,分配および廃棄を行う組立体において,カップ型容器を有し,該カップ型容器は上方開端部と,流体検体を収集する容器内部とを備え,収集された流体検体を閉じ込めるべく容器の前記上方開端部に着脱可能に取り付けられる蓋を有し,該蓋はこれを貫通するアクセスポートを備え,該アクセスポート内で前記蓋により支持される自己シーリング閉塞部材と,アクセスポートに着脱可能に挿入できる細長い抽出器具とを更に有し,該抽出器具は,収集された検体と流体連通する一端と,真空型検体収集チューブと,穿刺連通可能な反対側端部とを備え,前記閉塞部材と係合している抽出器具を閉塞部材から取り外すと閉塞部材が自己シーリングすることを特徴とする組立体」。 (2) 本件補正による請求項1(下線部分は補正箇所である)。 「生物学的流体検体の収集,搬送,分配および廃棄を行う組立体において,カップ型容器を有し,該カップ型容器は上方開端部と,流体検体を収集する容器内部とを備え,収集さ (下線部分は補正箇所である)。 「生物学的流体検体の収集,搬送,分配および廃棄を行う組立体において,カップ型容器を有し,該カップ型容器は上方開端部と,流体検体を収集する容器内部とを備え,収集された流体検体を閉じ込めるべく容器の前記上方開端部に着脱可能に取り付けられる蓋を有し,該蓋はこれを貫通するアクセスポートを備え,該アクセスポート内で前記蓋により支持される自己シーリング閉塞部材と,アクセスポートに着脱可能に挿入できる細長い抽出器具とを更に有し,該抽出器具は,収集された検体と流体連通する一端と,真空型検体収集チューブと,穿刺連通可能な反対側端部とを備え,前記閉塞部材と係合している抽出器具を閉塞部材から取り外すと閉塞部材が自己シーリングし,前記抽出器具は,細長い中空チューブと,容器内部に配置される第一端部と,外的にアクセスできる第二端部とを有し,- 4 -,,前記第二端部は真空型検体収集チューブと穿刺係合できる針カニューレを有し前記抽出器具は,真空型検体収集チューブを受け入れるための,前記針カニューレの周囲のカップ型受容器を有することを特徴とする組立体」。 審決の理由の要点(1)補正後発明は,刊行物1(実願平4-22234号(実開平6-22948号)のCD-ROM)に記載された発明並びに刊行物2(特表平7-500048号公報)等に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができず,したがって,本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に違反するから,平成14年法律第24号による改正前の特許法159条1項において準用する同改正前の特許法53条1項の規定により 改正前の特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に違反するから,平成14年法律第24号による改正前の特許法159条1項において準用する同改正前の特許法53条1項の規定により却下すべきものであり,その結果,本件出願の請求項1に係る発明の要旨を本件補正前の請求項1の記載に基づいて認定すると,補正前発明は,補正後発明から一部の構成を省いたものであるから,補正後発明と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2)審決が認定した刊行物1発明の内容,刊行物1発明と補正後発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 刊行物1発明:プラスチック製有底円筒体の開放端部にフランジ部を有し,該「円筒体の底部には尿誘導針定着部を突設し,尿誘導針は一端を先端を平坦部とし,,,他端を斜めにカットした先鋭部とし略中央部に取付ねじ部からなる固定部を設け該固定部には係合突起を設け,前記尿誘導針の固定部を尿誘導針定着部にねじ込んで定着された採尿器具,採尿器具の尿誘導針の平坦部を挿入する採尿コップ,採尿器具の筒体の開放端部内に挿入され,ゴム栓を尿誘導針の先鋭部に突き刺して尿を採取する真空採尿管からなる,尿を採取する組立体」一致点:生物学的流体検体の収集を行う組立体において,カップ型容器を有し,- 5 -該カップ型容器は上方開端部と,流体検体を収集する容器内部とを備え,細長い抽出器具とを更に有し,該抽出器具は,収集された検体と流体連通する一端と,真空型検体収集チューブと,穿刺連通可能な反対側端部とを備え,前記抽出器具は,細長い中空チューブと,容器内部に配置される第一端部と,外的にアクセスできる第二端部とを有し,前記第二端部は,真空型検体収集チューブと穿刺係合で と,穿刺連通可能な反対側端部とを備え,前記抽出器具は,細長い中空チューブと,容器内部に配置される第一端部と,外的にアクセスできる第二端部とを有し,前記第二端部は,真空型検体収集チューブと穿刺係合できる針カニューレを有し,前記抽出器具は,真空型検体収集チューブを受け入れるための,前記針カニューレの周囲のカップ型受容器を有する組立体。 相違点1:カップ型容器が,補正後発明では,収集された流体検体を閉じ込めるべく容器の前記上方開端部に着脱可能に取り付けられる蓋を有し,該蓋はこれを貫通するアクセスポートを備え,細長い抽出器具がアクセスポートに着脱可能に挿入できるものであり,該アクセスポート内で前記蓋により支持される自己シーリング閉塞部材を有し,前記閉塞部材と係合している抽出器具を閉塞部材から取り外すと閉塞部材が自己シーリングするものであるのに対し,刊行物1発明は,アクセスポートや閉塞部材を有する蓋を備えたカップ型容器でない点。 相違点2:組立体が,補正後発明では,生物学的流体検体の収集,搬送,分配および廃棄を行う組立体であるのに対し,刊行物1発明は,尿を採取する組立体であり,搬送,分配および廃棄を行うことを規定していない点。 (3)審決は,刊行物2等に記載の周知技術を認定した上,相違点1に係る補正後発明の構成は当事者が適宜なし得る設計事項であるとし,相違点2に係る補正後発明の構成とすることに格別の困難性はないとし,補正後発明の効果も,刊行物1記載の構成及び周知例に記載の構成から予測されるもので格別顕著な効果が奏されるとはいえないとし,また,補正前発明も,前記補正事項の構成を省いたものであるから,同様の理由で刊行物1及び周知技術に基づいて当事者が容易に発明できたものであるとした。 第3原告主張の審決取消事由- 6 - 取消事由1(補正前発 ,前記補正事項の構成を省いたものであるから,同様の理由で刊行物1及び周知技術に基づいて当事者が容易に発明できたものであるとした。 第3原告主張の審決取消事由- 6 - 取消事由1(補正前発明の進歩性に関する判断の誤り1)以下のとおり,補正前発明を得るために,刊行物1の記載と刊行物2等に記載された周知技術とを結び付けることは,当業者にとって想到容易とはいえない。 (1)相違点1について審決は,刊行物1発明を認定する際に,刊行物1の記載のうち「・・・本考案は,各家庭において真空採尿管内に尿を採取し,これを検査機関に郵送する尿郵送システムにおける採尿器具に関するもので,・・・折りたたみ採尿コップ9,採尿管郵送ケース10・・・を入れたステリーバックに梱包し・・・(段落【0006「・・・検」】),査尿を採取した真空採尿管7を採尿器具から取り外し・・・,これを図3に示す郵送ケース10内に収納し,検査所へ郵送すればよい。このため,各家庭において真空採尿管内に尿を採取し,これを検査機関に郵送することができることになる(段。」落【0007)の各部分を省略している。この記載部分から明らかなとおり,刊】行物1においては,採尿コップから別体の真空採尿管7に採取された検査尿につい,,,,て持ち運び搬送分配等を行うには更に別体の採尿管郵送ケースを用いておりこの郵送ケースの使用により,尿検体がこぼれたり汚染したりするのを防いでいるのであるから,刊行物1発明の採尿コップをその上方開端部に着脱可能に取り付けられた蓋を有するカップ型容器とするというような示唆は存在せず,刊行物1発明の採尿コップに蓋を取り付けるならば,刊行物1における発明の目的・効果を達成しないことになる。 また,刊行物1発明の採尿コップは「折りたたみ採尿コップ」であって いうような示唆は存在せず,刊行物1発明の採尿コップに蓋を取り付けるならば,刊行物1における発明の目的・効果を達成しないことになる。 また,刊行物1発明の採尿コップは「折りたたみ採尿コップ」であって,通常,は使い捨ての紙コップであり,検査尿が真空採尿管7に採取された後は不要となる,,ものであるからこれに蓋を着脱可能に取り付けて繰り返し使用するようなことはその用途から考えられず,加えて,折りたたみ式の採尿コップは,折りたたまれた,,状態から展開してコップ状にしても決して安定性の良いコップとはならないからこれに蓋を取り付けるというようなことは技術的に困難でもあり,当業者がそのような試みをするとは考えられない。 - 7 -以上のとおり,刊行物1発明の採尿コップを蓋を有するカップ型容器とするという発想は,刊行物1発明からは生じ得ない。 被告は「刊行物1発明において,尿を収集してから搬送,分配及び廃棄までを,安全に行うことは自明の課題であって,採尿コップに蓋をすることでより搬送,分配及び廃棄の安全性を高めようとすることは,十分動機付けがあるというべきである」と主張している。しかし,刊行物1においては,検体尿は真空採尿管に抽出。 され,真空採尿管は採尿管郵送ケースに収納した上で搬送され,所定の場所に搬送された後に,分配,廃棄等が行われるのであるから,採尿コップに蓋をするかどうかは,安全な搬送,分配等とはいかなる関係もない。また,刊行物1に記載された発明においては,採尿は各家庭において直接に行われるのであって,採尿後,採尿コップを別の場所に運ぶというようなことは考えられないし,各家庭において残りの尿を廃棄するのにも何ら問題は生じないのであって,被告の主張するような動機付けはない。 (2)相違点2について審決は,刊行物1発明につき「尿を いうようなことは考えられないし,各家庭において残りの尿を廃棄するのにも何ら問題は生じないのであって,被告の主張するような動機付けはない。 (2)相違点2について審決は,刊行物1発明につき「尿を採取する組立体」であると認定した上,相違「,」点2として刊行物1発明は搬送分配および廃棄を行うことを規定していない点を認定した。 しかし,刊行物1においては,家庭内において蓋のないカップ内の尿を真空採尿管に収集する技術のほか,その搬送,分配等はこの真空採尿管を収納した採尿管郵送ケース10によって行うことも開示している。したがって,刊行物1発明は,採尿コップと真空採尿管と搬送等を行う採尿管郵送ケースとがそれぞれ別体であって,1個の組立体ではないから,刊行物1発明につき「組立体」であるとした審決の認定には誤りがある。また,刊行物1発明においては,上記のとおり,真空採尿管の搬送等について規定しているので,審決が相違点2に関して「搬送等について規定していない」とした認定も誤りである。この部分に関する刊行物1発明と補正前発明との相違点となるべきは,刊行物1発明には1個の組立体によって収集,搬- 8 -送,分配等を行う,という示唆が存在しないという点にある。 したがって,刊行物1発明には,1個の組立体によって収集,搬送,分配等を行うという示唆はまったく存在しないから,これに刊行物2等に記載された周知技術を適用して,1個の組立体によって収集,搬送,分配等を行う構成のものにするというような発想は生じ得ない。 取消事由2(補正前発明の進歩性に関する判断の誤り2)以下のとおり,仮に,刊行物1発明と刊行物2等に記載された周知技術とを結び付けたとしても,当業者は,補正前発明に到達することはできない。 (1)刊行物2には「特に,キャップは容器の中に入れられた )以下のとおり,仮に,刊行物1発明と刊行物2等に記載された周知技術とを結び付けたとしても,当業者は,補正前発明に到達することはできない。 (1)刊行物2には「特に,キャップは容器の中に入れられたサンプルの吸出し,のためにピペットのような端部の鋭くない器具の容易な受入れが可能であり,その構成内で使用される材料の本来の弾性によるよりも,むしろキャップの開口部を閉鎖状態に維持するための確実な特性を具備することが望ましい(4頁左上欄7行」~12行)と記載されている。このように,弾性体の自己シーリング閉塞部材の場合,鋭くない中空の細いチューブからなる抽出器具が挿入されると,抽出器具が取り除かれた後に,シーリング閉塞部材の弾性によりシーリング状態に復元する力が働くが,必ずしも閉塞状態にならないので,搬送中に流出したり,漏出したりする危険がある。このため,刊行物2記載の発明では,容器内の検体が流出したり漏出したりすることを防ぐために「ばね要素」を用いることを必須の要件とし,発明,の特徴としている。 このように,刊行物2では,自己シーリング閉塞部材が公知であったことは記載しているけれども,この従来公知の自己シーリング閉塞部材の有する欠点を克服するために「ばね要素」を使用する刊行物2記載の発明がなされたのであるから,,刊行物2から当業者が学ぶことは,従来公知の自己シーリング閉塞部材を用いたのでは,容器に収容された検体を,流出等することなく,確実に搬送,分配等することはできない,ということである。 したがって,当業者が,刊行物1発明に刊行物2記載の技術を組み合わせて補正- 9 -前発明に思い至ることはない。また,補正前発明は「ばね要素」を備えていないから,刊行物1発明と刊行物2記載の技術とを強いて結びつけるような構成を考えたとしても,補正前発 組み合わせて補正- 9 -前発明に思い至ることはない。また,補正前発明は「ばね要素」を備えていないから,刊行物1発明と刊行物2記載の技術とを強いて結びつけるような構成を考えたとしても,補正前発明に至ることはあり得ない。 なお,審決は,自己シーリング閉塞部材に関する周知技術が記載されているもの,,として特開平5-107246号公報や特開平8-57020号公報を挙げるがこれらに記載の内容は自己シーリング閉塞部材を使用するものではないから,補正。 ,,前発明とは無関係であるまた審決が挙げる特開昭59-10349号公報にはセグメントに挿入したピペットを引き抜くと,セグメントがそれ自体の弾性により容器を閉塞位置に保つという密栓が開示されているが,これは刊行物2における従来公知の自己シーリング閉塞部材の一例を示しているにすぎず,刊行物2に開示されている以上の技術を開示しているものではない。 (2)審決は,抽出器具挿入部を蓋と別部材で構成することは,刊行物2及び国際公開第99/45360号に記載されたとおり周知の手段といえると判断した。 しかし,これらの文献には,補正前発明の特徴である,自己シーリング閉塞部材を蓋と別部材で構成し,蓋に設けた貫通孔であるアクセスポートで支持するようにすることは,全く開示されていない。 上記国際公開には「穿孔が多数回例えば3~4回程度拡張されると,隔膜のエ,ラストマーは弾性を喪失する傾向があり穿孔された隔膜の封止性が低下する甲,。」(8の抄訳8頁14行~16行「もしも隔膜が現在のところ好ましいエラストマー),材料で製作されると,最小厚さの穿孔可能な領域32は最初にピペットのチップ先端Eがそれに対して押し当てられると伸長しようとするが,最後には弾性限界に達するので,領域32は切り裂かれ,ピペットのチ ,材料で製作されると,最小厚さの穿孔可能な領域32は最初にピペットのチップ先端Eがそれに対して押し当てられると伸長しようとするが,最後には弾性限界に達するので,領域32は切り裂かれ,ピペットのチップTは図3のように切れ目42を貫通する(甲8の抄訳7頁4行~7行)と記載されている。このような隔膜の。」劣化が生じる原因は,ピペットが中央孔を切り裂いて挿入されるからである。このように,上記国際公開に記載の発明では,ピペット等の管状抽出器具が,自己シーリング閉塞部材の弾性限界を超えた圧力により自己シーリング閉塞部材を切り裂く- 10 -のに対し,補正前発明においては,自己シーリング閉塞部材が,アクセスポート内で蓋により支持され,かつ,アクセスポートを支持して流体の漏洩を防止するのであり,アクセスポートを通してピペット等の管状抽出器具が挿入等されるのであるから,上記国際公開の構成と補正前発明の構成とは異なっている。 取消事由3(独立特許要件に関する判断の誤り)(1)取消事由1及び2の主張は,補正後発明についても当てはまるから,これと同様に,当業者が刊行物1発明と刊行物2等に記載された周知技術とを組み合わせたとしても,補正後発明に想到することはあり得ない。 (2)また,審決は,刊行物1発明の採尿器具の「尿誘導針」は,補正後発明の抽出器具の「細長い中空チューブ」に該当する旨認定した上,両者の一致点として「細長い中空チューブと・・・針カニューレを有」する点を認定した。しかし,刊行物1発明の「尿誘導針」は,刊行物1の図1,2及び5からも明らかなとおり,まさに細い「針」である。これに対して,補正後発明においては,ピペットのような中空チューブを有する針カニューレが用いられており,刊行物1発明と相違している。 そして,刊行物2においては「ピペッ り,まさに細い「針」である。これに対して,補正後発明においては,ピペットのような中空チューブを有する針カニューレが用いられており,刊行物1発明と相違している。 そして,刊行物2においては「ピペットのような鋭くない,しかし細い,中空,のシリンダ型のもの(3頁右下欄,10,11行)と記載され,ピペットのよう」な中空チューブをサンプルの採取に用いている。刊行物2記載の発明では,このようなピペット又はピペットと同様の細い中空チューブを用いるから,葉状体に案内されてスリットに導かれるのに対し,刊行物1発明では,針が用いられており,いかに先端が平坦にしてあっても,針は中空チューブのようなものではないから,こ,,れに刊行物2を適用しても葉状体に案内されてスリットに導かれることが難しく葉状体を貫通する危険があり,仮に僥倖にしてスリットに到達しても針のような細さでは安定,平衡を保つことができない。 このように,刊行物1発明と刊行物2等に記載された周知技術とを組み合わせても,補正後発明を想到することはできない。 - 11 -第4被告の主張 取消事由1に対して(1)取消事由1(1)につきアまず,審決は,刊行物1から「検査尿を採取した真空採尿管を郵送ケースに収納し,郵送するための装置及び方法」のみでなく「尿を採取する組立体」の発,明も把握できることから,後者の発明をいわゆる主引例に係る発明としたものであり,採尿管郵送ケースによって真空採尿管7に採取された検査尿を,持ち運び,搬送,分配等を行うことは「尿を採取する組立体」の発明を構成する上で技術的に,関連性はないことから,これを認定しなかったものである。 次に,刊行物1の「…従って,過まって尿誘導針2が採尿コップ内の底面を突き,。」破ることがなく尿を採取する作業がより一層安全かつ簡 に,関連性はないことから,これを認定しなかったものである。 次に,刊行物1の「…従って,過まって尿誘導針2が採尿コップ内の底面を突き,。」破ることがなく尿を採取する作業がより一層安全かつ簡単に行えることになる(段落【0007)との記載からみて,刊行物1には,尿を採取する作業は,安】全かつ簡単に行えることが必要であることが開示されているといえる。また,刊行物1の【図6】によれば,刊行物1発明の組立体を用いて尿の採取をする際には,一方の手で採尿器具本体1を支えつつ,他方の手で真空採尿管7を挿入して使用するという作業状態になるから,そのような作業をするべく,家庭のトイレで採尿コップに採尿した後,洗面所のような台があり作業がしやすい場所に運んでから真空採尿管で吸い上げることは自然なことといえる。したがって,採尿コップを別の場,,,所に運ぶ際真空採尿管で吸い上げた際及びその後の残りの尿を廃棄する際まで採尿コップから尿がこぼれないようにすることは,安全性からみて当然の要請であるといえる。そうすると,刊行物1発明において,尿を収集してから搬送,分配及び廃棄までを安全に行うことは自明の課題であって,採尿コップに蓋をすることでより搬送,分配及び廃棄の安全性を高めようとすることは,十分動機付けがあるというべきである。 また,刊行物1発明の採尿コップに蓋を設けるようにした場合,蓋を設ける意義- 12 -は上記のとおり「採尿コップを別の場所に運ぶ際,真空採尿管で吸い上げた際,,及び真空採尿管で吸い上げた後の残りの尿を廃棄する際まで採尿コップからこぼれないようにすること」であるのに対し,郵送するのは,あくまでも尿を吸い上げた後の真空採尿管であり,採尿コップではないことから,刊行物1発明の採尿コップに蓋を設けることに,刊行物1発明の課題やそ ぼれないようにすること」であるのに対し,郵送するのは,あくまでも尿を吸い上げた後の真空採尿管であり,採尿コップではないことから,刊行物1発明の採尿コップに蓋を設けることに,刊行物1発明の課題やその技術事項からみて,阻害要因となるものがあるとはいえない。 イ原告は,折りたたみ採尿コップは,検査尿が真空採尿管7に採取された後は不要となることを理由として,蓋を取り付けることが技術的に困難であるとしている。しかし,刊行物1の図6から,刊行物1発明は,片手で採尿器具本体1を支持し,もう一方の手で真空採尿管7を挿入して使用するものであるといえるから,折りたたみ式のコップであっても,使用時は形状を保持した状態で自立できるものといえるので,その開口部に蓋を取り付けることは,技術的に困難であるとはいえない。 (2)取消事由1(2)につきア刊行物1発明の「組立体」は「採尿コップ「採尿器具」及び「真空採尿,」,管」を有しているが,審決は,これらを「1個の組立体」としたものであるとは認定していない。 他方で補正前発明も請求項の記載からしてカップ型容器蓋及び抽,,,「」,「」,「出器具」を有する組立体を「生物学的流体検体の収集,搬送,分配および廃棄を,行う組立体」と特定しており,これらを1個の組立体として,収集,搬送,分配等を行うものであるとは特定されていない。また,本願明細書の記載を参酌しても,「流体検体が吸引されると,抽出器具が取り外され,尖鋭器具として廃棄される。 ゴムストッパが蓋の開口をシールし,容器組立体は安全かつ容易に搬送され,かつ適当な方法で廃棄される(段落【0008「本発明の組立体10の容器12。」】),は,尿検体90を容器内に収集するのに使用される。尿検体90が容器12の内部28に収容されたならば 送され,かつ適当な方法で廃棄される(段落【0008「本発明の組立体10の容器12。」】),は,尿検体90を容器内に収集するのに使用される。尿検体90が容器12の内部28に収容されたならば,蓋20を容器12の開上端部18に螺着する。…この状- 13 -態で尿検体90を研究室または他の設備に安全に搬送でき,ここで尿検体の試料が抽出されて試験される(段落【0017)と記載されている。このように,補。」】正前発明は「分配」に関しては「蓋」を有する「カップ型容器」と「抽出器具」,を一体に組み立てて行っているが収集搬送に関しては蓋を有するカ,「」,「」「」「ップ型容器」で行われているといえることから,本願明細書の記載を参酌しても,補正前発明では「蓋「カップ型容器「抽出器具」といった構成要素を組み立て」,」,「」,,。 た1個の組立体によって収集搬送分配等を行っているのではないといえるしたがって,相違点2に関して「刊行物1には1個の組立体によって収集,搬,送,分配等を行う,という示唆が存在しないという点にある」という原告の主張。 は,補正前発明の構成に基づかない主張であり,失当である。 イまた,刊行物1発明を「尿を採取する組立体」と認定したことの妥当性につ,,,「」,「」,「」いては上記のとおり補正前発明においてカップ型容器蓋抽出器具をまとめて「組立体」と称していることからして,刊行物1発明においても「採尿コップ「採尿器具「真空採尿管」をまとめて「組立体」と審決で認定したこと」,」,に誤りはない。 取消事由2に対して(1) 取消事由2(1)につき審決は,刊行物2の記載から,液体サンプルを研究や分析のために取り出すために「容器に収集された検体をピペッ したこと」,」,に誤りはない。 取消事由2に対して(1) 取消事由2(1)につき審決は,刊行物2の記載から,液体サンプルを研究や分析のために取り出すために「容器に収集された検体をピペット等の抽出器具を使用して蓋をしたまま外部,,,」へ抽出できるように蓋にスリット部材つまり自己シーリング閉塞部材を設けるという技術事項が開示されていると指摘したにとどまる。すなわち,審決は,蓋に自己シーリング用閉塞部材を設けることの周知例の一つとして,刊行物2を挙げているのであって,刊行物2に記載された技術事項をそのまま刊行物1発明に適用するとはしていない。 また,刊行物2の記載からすると「ばね要素」は蓋に必須のものではないこと,は明らかである仮に原告の主張のとおりであったとしても刊行物2には中。 ,,,「- 14 -空のばね要素34もボス26の底部から下に出ている。各ばね要素34の薄い円筒の壁は,夫々の葉状体28と一対の公差線を形成する(4頁左下欄24行~右下。」欄1行)と記載され,FIG.5には「葉状体28にばね要素34が形成されて,いる」ことが示されており「ばね要素」が「葉状体」に形成され「葉状体」を構,,「」「」「」成する一つの部材であるともいえるので葉状体すなわち蓋にばね要素は包含されることになるから,上記周知の技術事項は,刊行物2に記載されているといえる。 したがって,原告の主張は失当である。 (2) 取消事由2(2)につき国際公開第99/45360号記載の発明は,臨床検査に用いる試料容器であって「蓋14」は,容器本体の頂部開口を着脱可能に取り付けられ「蓋14」を閉,,鎖すると液密封止され,その中央に「蓋14」を貫通する「中央孔20」が形成されて容器本体の内部への連通を行っ 器であって「蓋14」は,容器本体の頂部開口を着脱可能に取り付けられ「蓋14」を閉,,鎖すると液密封止され,その中央に「蓋14」を貫通する「中央孔20」が形成されて容器本体の内部への連通を行っており,また「中央孔20」をシール可能に閉塞するためにエラストマー材料から製作された「隔膜18」を「中央孔20」に保持して,ピペットをピペットが穿孔した「隔膜18」から抜いた後においても「隔膜18」を通る液体に対して自己再封止状態を維持するものである。そうすると,「蓋14「中央孔20「隔膜18」は,その構造,機能,作用等からみて,そ」,」,れぞれ,補正前発明の「蓋「アクセスポート「アクセスポート内で蓋により支」,」,持される自己シーリング閉塞部材」に相当する。 また,国際公開第99/45360号には「容器の蓋は…蓋の開口に支持され,た穿孔可能な弾性材料よりなる隔壁とその周りの比較的硬い材料のリムを有しても良い(甲8の抄訳4頁32~33行)と記載されており,ここでにいう「開口」。」は「中央孔20」であり,上記のとおり補正前発明の「アクセスポート」に相当,するものであるから,自己シーリング閉塞部材を蓋と別部材で構成し,アクセスポートで「支持」することも示されている。 さらに,国際公開第99/45360号の記載からすると,隔膜18(自己シー- 15 -リング閉塞部材に相当する)は,少なくとも2~3回程度のサンプルの採集では。 自己シーリング機能が低下することなく使用できるものである(仮にそれ以上のサンプルの採集においても自己シーリング機能が低下するとのみ記載されているのであって,自己シーリング機能が無くなるとまでの記載されているものではない)。 から,隔膜18は,その自己シーリング機能により補正前発明の自己シーリング閉塞部材 機能が低下するとのみ記載されているのであって,自己シーリング機能が無くなるとまでの記載されているものではない)。 から,隔膜18は,その自己シーリング機能により補正前発明の自己シーリング閉塞部材と同様に尿をこぼすことなく安全に搬送,分配等を行うことができるものである。 なお,補正前発明では「アクセスポート」及び「自己シーリング閉塞部材」に関して「該蓋はこれを貫通するアクセスポートを備え「該アクセスポート内で前,」,記蓋により支持される自己シーリング閉塞部材」及び「前記閉塞部材と係合している抽出器具を閉塞部材から取り外すと閉塞部材が自己シーリングし」と特定されているのみで,抽出器具による自己シーリング閉塞部材の開閉回数は特定されていない。そのような補正前発明における特定を前提とすれば,国際公開第99/45360号の「蓋14「中央孔20「隔膜18」と補正前発明の「蓋「アクセス」,」,」,ポート「アクセスポート内で蓋により支持される自己シーリング閉塞部材」との」,間に差異があるとはいえない。 そして,自己シーリング閉塞部材を蓋と別部材で構成し,蓋に設けた貫通孔であるアクセスポートで支持するようにすることは当業者が適宜になし得る設計的事項といえるから,審決の判断に誤りはない。 取消事由3に対して(1)取消事由3(1)につき取消事由1及び2に対して主張したのと同様に,補正後発明についても,審決の判断に誤りはない。 (2)取消事由3(2)につき一般に「中空」とは「内部の空虚なこと。がらんどう。から(株式会社岩波,。」書店広辞苑第四版)を意味し「チューブ」とは「管。筒(株式会社岩波書店,,」- 16 -広辞苑第四版)を意味するから,補正後発明の「中空チューブ」とは,文字とおり解釈すると「内部がからの管」 書店広辞苑第四版)を意味し「チューブ」とは「管。筒(株式会社岩波書店,,」- 16 -広辞苑第四版)を意味するから,補正後発明の「中空チューブ」とは,文字とおり解釈すると「内部がからの管」を意味する。そして,補正後発明において「中空チューブ」は「抽出器具は,細長い中空チューブと,容器内部に配置される第一端,部と,外的にアクセスできる第二端部とを有し,前記第二端部は,真空型検体収集チューブと穿刺係合できる針カニューレを有し,前記抽出器具は,真空型検体収集,」チューブを受け入れるための前記針カニューレの周囲のカップ型受容器を有するとのみ特定され,明細書を参酌しても,補正後発明において「中空チューブ」の直径・材質等は特定されていない。 一方,刊行物1の記載からみて「尿誘導針」とは,細長い形状の内部が空の管,で,採尿カップ9内部に配置される一端2と外的にアクセスできる他端2とを ,,,有し前記他端2は真空採尿管7と穿刺係合できる斜めにカットされた先鋭部 つまり針カニューレを有するもので,尿を抽出するためのものである。 ,「」,,,,してみると刊行物1発明の尿誘導針はその構造機能作用等からみて補正後発明の「細長い中空チューブ」に相当するから,審決の認定に誤りはない。 第5当裁判所の判断 補正前発明の意義(1)本願明細書(公開特許公報。甲1)の発明の詳細な説明及び図面には,次の記載がある。 ・発明の詳細な説明】「【【発明の属する技術分野】本発明は,広くは生物学的流体検体の収集,搬送および分配に使用される容器に関し,より詳しくは,尿のような液体検体を収容しかつ抽出器具を挿入できるシール可能通路を形成するカップ型容器に関する(段落【0001)。」】・発明が解決しようとする課 分配に使用される容器に関し,より詳しくは,尿のような液体検体を収容しかつ抽出器具を挿入できるシール可能通路を形成するカップ型容器に関する(段落【0001)。」】・発明が解決しようとする課題】従って,流体検体を安全に収集し,搬送しかつ分配「【できかつ使用後に容易かつ安全に廃棄できる改善された検体収集容器を提供することが望まれている(段落【0005)。」】- 17 -・課題を解決するための手段】本発明は,流体検体を収集し,搬送しかつ分配する容「【器組立体に関する。本発明の容器組立体は,好ましくは,流体検体を収集するための,開端部を備えたカップ型容器を有している。容器の開端部を閉じるべく容器には蓋を取り付けることができる。この蓋は,カバーを介して,収集された流体検体との連通を行うためのアクセスポートを備えている。自己シーリング閉塞部材がアクセスポート内で蓋により支持され,抽出器具のシールされた挿入を可能にする(段落【0006)。」】・図2】流体検体収集組立体【図3】収集組立体を示す【を示す分解図垂直断面図,,(2) 上記本願明細書その他の記載によれば本願発明は本件補正の前後を通じて研究室等において尿等の液体検体を収集,分配等するための道具であって,上方が開いたカップ型容器に尿等を収集し,これに蓋をして搬送し,搬送後に細長い抽出器具を用いて,カップ型容器から真空型検体収集チューブへと尿等を移動させ,その後は,真空型検体収集チューブと抽出器具をそれぞれ外し,抽出器具と蓋がされたカップ型容器をそれぞれ廃棄するというものであることが認められ,その特徴としては,細長い抽出器具を蓋とは別体とした上,蓋にこれを貫通する穴であるアクセスポートを設け,そこに自己シーリング閉塞部材を設け,自己シーリング閉塞部- 18 ものであることが認められ,その特徴としては,細長い抽出器具を蓋とは別体とした上,蓋にこれを貫通する穴であるアクセスポートを設け,そこに自己シーリング閉塞部材を設け,自己シーリング閉塞部- 18 -材に抽出器具を挿入するようにすることで,蓋をしたままカップ型容器内の尿を真空型検体収集チューブに抽出する機能を維持し,かつ,抽出後には,尖鋭器具である抽出器具を外して廃棄することが可能となり,また,カップ型容器についても蓋の開口部が閉塞部材の自己シーリング機能によりシールされるので,安全に廃棄することができるというものであることが認められる。 刊行物1発明の意義刊行物1(甲3)の記載によれば,刊行物1発明は,尿を収集,分配するための道具であって,折りたたみ採尿コップ,採尿器具,真空採尿管からなり,採尿コップを組み立てて尿を採取し,組み立てた採尿器具を用いて,採尿コップ内の尿を吸い上げ,真空採尿管に移すというものであること,そして,採尿器具は尿誘導針を有し,尿誘導針の一端を採尿コップ内の尿中に入れ,他端を真空採尿管に突き刺すことで抽出を行うものであることが認められる。 ,,,,なお刊行物1の記載によれば刊行物1記載の発明は病院等に赴くことなく家庭内で真空採尿管への尿の採取を行うことができることを目的としており,そのための構成として,採取後の真空採尿管を別体のバッグ(採尿管郵送ケース)に入れて検査機関に郵送することも規定していることが認められる。 取消事由1(補正前発明の進歩性に関する判断の誤り1)(1)相違点1についてア原告は,刊行物1発明では採尿管郵送ケースの使用により尿検体がこぼれたりすることを防いでいるのであるから,採尿コップに蓋をすることについての示唆がない,あるいは阻害事由になる旨主張する。 しかし,上記1 は,刊行物1発明では採尿管郵送ケースの使用により尿検体がこぼれたりすることを防いでいるのであるから,採尿コップに蓋をすることについての示唆がない,あるいは阻害事由になる旨主張する。 しかし,上記1のとおり,補正前発明は,尿等をカップ型容器に収集し,これを抽出器具を用いて真空型検体収集チューブに分配するまでの過程と,分配後のカップ型容器や抽出器具の廃棄を内容としており,分配後の真空型検体収集チューブの取扱いについては構成に含まれていない。他方で,上記2のとおり,刊行物1発明における採尿管郵送ケースは,尿等を採取した後の真空採尿管を郵送するためのも- 19 -,,のであってこれに対応する構成が補正前発明には含まれていないことになるから,,。 補正前発明との対比においては別途のものであって不要な構成であるといえるこのように,真空採尿管から尿がこぼれること等を防止する手段と,採尿コップから尿がこぼれること等を防止する手段とは別途のものであって,刊行物1発明に真空採尿管を郵送する際の漏出防止等の構成があるからといって,採尿コップに蓋をすることにつき示唆がない,あるいは阻害事由になるとする原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,刊行物1発明の採尿コップは折りたたみコップであって,尿が真空採尿管に採取された後は不要となるので,蓋を取り付けることは用途から考えられないなどと主張する。しかし,審決が刊行物1発明として認定した構成の使途が家庭内での採尿に限定されるものではないことは後記ウで説示するとおりであり,そうすると,刊行物1発明においても,補正前発明と同様に,尿等の採取,搬送,廃棄という手順の中で,検体がこぼれたりすることを防止する必要がある場合を排除するものではないことになるから,原告の上記主張は採用することができない。 ま ても,補正前発明と同様に,尿等の採取,搬送,廃棄という手順の中で,検体がこぼれたりすることを防止する必要がある場合を排除するものではないことになるから,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,刊行物1発明の採尿コップは折りたたみコップであって,これを開いてコップ状にしても,安定性の良いコップにならないので,これに蓋を取り付けることは技術的に困難であるとも主張する。しかし,折りたたみコップであっても,展開・組立後に自立し,蓋を付けることのできる形状とすることは,当業者であれば,適宜なし得る事項であるといえる。したがって,原告の上記主張も採用することはできない。 ウ原告は,動機付けに関する被告の主張に対し,刊行物1発明において,採尿・廃棄は各家庭で行われるので,採尿コップを搬送することはなく,廃棄にも問題は生じない旨反論する。 しかし,上記2で認定したとおり,刊行物1発明は,家庭内での検査用の尿の採取を予定しているものの,家庭内での採取という目的は,専ら真空採尿管の郵送に係る構成により実現されるものである。他方,審決が刊行物1発明として認定した- 20 -採尿コップから採尿器具を用いて真空採尿管に尿を採取するという構成は,その内容に照らし,家庭内で尿を採取する場合に使用が限定されるものではなく,病院等での採取においても利用可能な構成であると認められる。そして,病院等において尿等の検体を収集する場合,尿等を容器に採取し,これを運搬し,抽出器具を用いて検査用の器具等に分配し,分配後に容器や抽出器具を廃棄するという手順は,通常行われることであるし,その際に,衛生面等の観点から検体がこぼれたりすることなどを防止する必要性があることは,当該技術分野において自明の課題であるといえる。 ,,,したがってそのような課題を解決するた ことであるし,その際に,衛生面等の観点から検体がこぼれたりすることなどを防止する必要性があることは,当該技術分野において自明の課題であるといえる。 ,,,したがってそのような課題を解決するために技術分野を同じくする周知技術すなわち,尿等の検体を搬送・抽出する容器に蓋をし,自己シーリング閉塞部材を設け,これを蓋と別部材により構成するなどの技術と刊行物1発明とを組み合わせることは,当業者にとって適宜なし得る事項であるというべきである。 (2)相違点2について原告は,審決が刊行物1発明を「組立体」と認定したことにつき,1個の組立体,。 ,,でないからその認定に誤りがある旨主張するしかし上記1で認定したとおりそもそも,補正前発明についても,採尿後にカップ型容器に蓋をし,抽出する場所に搬送した後に抽出器具を用い,採取後には抽出器具を外して,抽出器具とカップ型容器を別個に廃棄することが予定されているのであって,1個の組立体によって,,。 ,,収集搬送分配等を行うとはいえないそしてそのような補正前発明において各構成を合わせて「組立体」と称していることからすれば,刊行物1発明についても「組立体」と認定し得るのであって,審決の認定に誤りはない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 この主張を前提とする相違点2についての審決の判断を誤りとする原告の主張は理由がない。 取消事由2(補正前発明の進歩性に関する判断の誤り2)(1)原告は,刊行物2について,自己シーリング閉塞部材は従来公知であった- 21 -が,その欠点を克服するために「ばね要素」を用いることを必須としているのであるから,当業者は,刊行物2から,ばね要素を用いない自己シーリング閉塞部材では確実な搬送等を行うことができないと考えるのであり, その欠点を克服するために「ばね要素」を用いることを必須としているのであるから,当業者は,刊行物2から,ばね要素を用いない自己シーリング閉塞部材では確実な搬送等を行うことができないと考えるのであり,したがって,これを刊行物1発明に結び付けることは容易ではないなどと主張する。 しかし,刊行物2(甲4)では,血液のような液体サンプルを入れる容器について,キャップに自己シーリング閉塞部材を用いることを従来技術として位置付けており,そのような技術が周知であったことは原告も争っていないところ,刊行物2,(),では従来技術の主な欠点は複雑さとコストであるとされ4頁左上欄2行~3行自己シーリング閉塞部材の材料の弾性によるよりも,確実な特性(ばね要素)によ(),り閉鎖状態とすることが望ましいとしている4頁左上欄7行~15行にすぎずこれに接した当業者が,ばね要素のない自己シーリング閉塞部材では確実な搬送等を行うことができないため,周知技術として適用を断念するというほどの欠点があると認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,補正前発明は「ばね要素」を備えていないので,刊行物1発明と刊行物2に記載された発明とを結び付けても補正前発明に至らないと主張する。しかし,本願明細書(甲1)の記載に照らすと,補正前発明においては「ばね要素」について明示していないというにとどまり,これを除外するものとは解されないので,原告の上記主張も採用することができない。 ,,,なお原告は周知技術が記載されているものとして審決が挙げた文献について,,自己シーリング閉塞部材が使用されているかどうかなどを争っているがそもそも上記のとおり,原告は,自己シーリング閉塞部材が周知技術であることは特に争っておらず,原告の上 決が挙げた文献について,,自己シーリング閉塞部材が使用されているかどうかなどを争っているがそもそも上記のとおり,原告は,自己シーリング閉塞部材が周知技術であることは特に争っておらず,原告の上記主張についての判断の必要はない。 (2)原告は,刊行物2及び国際公開第99/45360号には,蓋と別部材の自己シーリング閉塞部材を設け,これをアクセスポートにより支持する構成は開示されていない旨主張する。 - 22 -しかし,国際公開第99/45360号(甲8)には,尿等の採取・移送のために用いる容器であって,①蓋14,②エラストマー材料から製作され,ピペットを抜いた後は自己再封止状態とするよう形成された隔膜18,③中央孔20を有し,蓋と隔膜は別部材により形成され,隔膜は中央孔に保持されるという発明が記載されているのであって,その構造や機能に照らし,国際公開第99/45360号の「蓋「隔膜「中央孔」が補正前発明の「蓋「自己シーリング閉塞部材「ア」,」,」,」,クセスポートにそれぞれ該当しかつ隔膜が中央孔に保持されることは自」,,「」「己シーリング閉塞部材がアクセスポートにより支持される」ことに相当するものと認められる。したがって,この点に関する審決の認定に誤りはない。 また,原告は,国際公開第99/45360号記載の発明と補正前発明とで自己シーリングの態様が異なる旨主張しているが,本願明細書(甲1)によれば,補正前発明においては他のストッパ構造も本発明の思想の範囲内にある段落 ,「。」(【014)として,閉塞部材(ストッパ)が有する自己シーリング機能の構造を限】定しておらず,また,本願明細書(甲1)の記載によっても,自己シーリング機能の強度や回数は特に限定されていないことが認められるのであるか ,閉塞部材(ストッパ)が有する自己シーリング機能の構造を限】定しておらず,また,本願明細書(甲1)の記載によっても,自己シーリング機能の強度や回数は特に限定されていないことが認められるのであるから,国際公開第99/45360号記載の発明と補正前発明とで自己シーリング閉塞部材の構成が異なっているとは認められない。 したがって,この点に関する原告の主張も採用することができない。 取消事由3(独立特許要件に関する判断の誤り)(1)補正後発明に関する取消事由3(1)は,取消事由1及び2と同じである。 したがって,上記3及び4で説示したのと同様に,補正後発明に関する審決の判断に誤りはなく,この点に関する原告の主張は採用することができない。 (2)原告は,取消事由3(2)として,刊行物1発明の採尿器具の「尿誘導針」は細い「針」であるのに対し,補正後発明ではピペットのような中空チューブを有する針カニューレが用いられているので,審決の一致点認定に誤りがあり,故に,刊行物1発明に刊行物2等の周知技術を組み合わせても補正後発明に至らない旨主張- 23 -する。 しかし,本願明細書(甲1)の記載によっても,補正後発明においては,細長い流体吸引チューブと規定されているのみで,その太さは何ら規定されていないところ,刊行物1発明の「針」も,刊行物1の記載,特にその中を尿が通過することに照らし,細長い中空チューブであると認められる。したがって,これらが一致するとした審決の判断に誤りはない。また,自己シーリング閉塞部材を用いた場合に,抽出器具の中空チューブの太さを調節することは当業者であれば適宜なし得る事項であるといえる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 第6 結論 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求 することは当業者であれば適宜なし得る事項であるといえる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 結論 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩月秀平裁判官清水節裁判官古谷健二郎
▼ クリックして全文を表示