- 1 -平成21年3月25日判決言渡平成20年行ケ第10247号審決取消請求事件()平成21年2月16日口頭弁論終結判決原告ハイピリオンカタリシスインターナショナルインコーポレイテッド同訴訟代理人弁理士浅村皓同浅村肇同岩井秀生同長沼暉夫同高松武生被告特許庁長史同指定代理人鈴木由紀夫同山田靖同中田とし子同小林和男主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1請求特許庁が不服2005-6869号事件について平成20年2月26日にした審決を取り消す。 - 2 -第2事案の概要 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「ランダムに配向されたカーボンフィブリルの三次元の巨視的集合体およびそれを含有する複合物」とする発明につき,平成6年5月3日,国際特許出願をし(パリ条約による優先権主張1993年(平成5年)5月5日,アメリカ合衆国,以下「本願」という。),その一部を平成15年11月5日,新たな特許出願をしたが,平成17年1月14日付けの拒絶査定を受けたので,同年4月18日,これに対する審判請求(不服2005-6869号事件)をすると共に,平成19年11月6日付けの手続補正書(甲11)を提出した。 特許庁は,平成20年2月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(付加期間90日),その謄本は同年3月7日に原告に送達された。 特許請求の範囲平成19年11月6日付け手続補正書(甲11)による補正後の本願の請求項1,8,14は,下記のとおりである(請求項の数は16である。)。 の謄本は同年3月7日に原告に送達された。 特許請求の範囲平成19年11月6日付け手続補正書(甲11)による補正後の本願の請求項1,8,14は,下記のとおりである(請求項の数は16である。)。 【請求項1】「(a)多数のランダムに配向されたカーボンフィブリルの三次元の巨視的集合体であって,前記フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直なc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,かつ3.5~70nmの直径を有しており,前記集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している,前記集合体;および(b)(i)粒状固体,または(ii)電気活性物質,または(iii)触媒活性の金属または含金属化合物からなる第二成分をフィブリル1部当り50部以下の量で含んでいる複合材料。」【請求項8】「多数のランダムに配向されたカーボンフィブリルの三次元の- 3 -巨視的集合体であって,前記フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直なc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,かつ3.5~70nmの直径を有しており,前記集合体がその少なくとも一平面において比較的等方性の物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している,前記集合体。」【請求項14】「(a)多数のランダムに配向されたカーボンフィブリルの三次元の巨視的集合体であって,前記フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直未満のc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,かつ3.5~70nmの直径を有しており,前記集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質および0. その円筒軸に対して実質的に垂直未満のc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,かつ3.5~70nmの直径を有しており,前記集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している,前記集合体;および(b)(i)粒状固体,または(ii)電気活性物質,または(iii)触媒活性の金属または含金属化合物からなる第二成分をフィブリル1部当り50部以下の量で含んでいる複合材料。」 審決の内容別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願に係る特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しないし,発明の詳細な説明には,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえないから,本願は,特許法(判決注平成6年法律第116号による改正前のもの,以下「旧特許法」という。)36条4項又は5項及び6項に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができないとするものである。 上記結論を導くに当たっての審決の判断の要点は,以下のとおりである。 (1)ア請求項1には,「円筒軸に対して実質的に垂直なc軸」の記載が,請求項14には,「円筒軸に対して実質的に垂直未満のc軸」の記載が認め- 4 -られるが,ここに記載の「c軸」,「円筒軸に対して実質的に垂直」及び「円筒軸に対して実質的に垂直未満」の技術的内容が不明である。 イ以上のとおり,請求項1,14には,その技術的内容が明確とはいえない記載が認められ,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しているとはいえない(以下「審決の判断1」と とはいえない記載が認められ,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しているとはいえない(以下「審決の判断1」という。)。 (2)ア請求項1には「物理的性質」との記載があり,同文言については,段落【0011】に,「集合体の固有の測定可能な性質,たとえば,抵抗率,を意味する。」と定義されているが,同定義では,請求項1に係る発明の十分な特定とはいえず,発明の明確性を欠く。 イ段落【0023】に,「光学的濃度」なるものが「物理的性質」の例として示されているが,その技術的内容が不明である。 ウ以上のとおり,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しないし,発明の詳細な説明には,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえない(以下「審決の判断2」という。)。 (3)請求項1には,「集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している」と記載されているが,同記載の物理的性質の例として,その具体的な性質が特定されている訳ではなく,また,物理的性質の例とされている光学的濃度の技術的内容が不明であることから,集合体が一次元に沿って均一な物理的性質を有していることを確認する手段は不明である。 以上のとおり,発明の詳細な説明には,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえない(以下「審決の判断3」という。)。 - 5 -(4)請求項1には,「フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸 の発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえない(以下「審決の判断3」という。)。 - 5 -(4)請求項1には,「フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直なc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,」と記載されているが,「実質的に」の用語を定義した段落【0011】の記載からも,技術的内容が明確であるとはいえない。 以上のとおり,請求項1は,その技術的内容が不明であり,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとした発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しているとはいえない(以下「審決の判断4」という。)。 (5)請求項8には,「集合体がその少なくとも一平面において比較的等方性の物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している,」とあり,「等方性」との語が用いられているが,本願に係る明細書(甲1,11。以下「本願明細書」という。)には,「等方性」について,「集合体の平面または体積の範囲内で物理的性質の全測定が測定方向に依存することなく一定の値を有することを意味する。かかる非中実組成物(non-solidcomposition)の測定はボイド空間(voidspace)の平均値を勘定に入れるように集合体の代表試料に対してなされているはずであることが理解される。」(段落【0011】)と説明されている。しかし,「かかる非中実組成物(non-solidcomposition)の測定はボイド空間(voidspace)の平均値を勘定に入れるように集合体の代表試料に対してなされているはずであることが理解される。」との説明では,「等方性」の技術的内容が不明である。 以上のとおり,請求項8には,その技術的内容が不明確な記載が認められ, れるように集合体の代表試料に対してなされているはずであることが理解される。」との説明では,「等方性」の技術的内容が不明である。 以上のとおり,請求項8には,その技術的内容が不明確な記載が認められ,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しているとはいえない(以下「審決の判断5」という。)。 第3取消事由に係る原告の主張- 6 -以下のとおり,審決の判断1ないし5は,いずれも誤りがあり,本願は,旧特許法36条4項又は5項及び6項に規定する要件を満たしていないとした審決は誤りであるから,取り消されるべきである。 審決の判断1について(1)「c軸」に関して①本願に係る特許請求の範囲において,「前記フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直なc軸を有し」と記載されていること,②「c軸」がフィブリル等の結晶軸の主軸を表わす用語として当業者に周知のものであること(甲15ないし20)に照らすならば,フィブリルがc軸を有する,すなわち結晶軸を有することは明らかである。したがって,審決の判断1は誤りである。 (2)「円筒軸に対して実質的に垂直」,「円筒軸に対して実質的に垂直未満」に関して「円筒軸に対して垂直未満」に関しては,本願明細書の段落【0020】に「いわゆるフィッシュボーン形態のフィブリルはそのc軸がフィブリルの円筒軸に対して垂直より若干小さい角度であるものとして特徴付けられる。」と記載され,また,特開昭61-239019号公報(甲21)には,そのc軸がフィブリルの円筒軸に対して垂直より若干小さい角度である形態のフィブリルが記載されているから,不明確とはいえない。 「実質的」に関しては,本願明細書の段落 239019号公報(甲21)には,そのc軸がフィブリルの円筒軸に対して垂直より若干小さい角度である形態のフィブリルが記載されているから,不明確とはいえない。 「実質的」に関しては,本願明細書の段落【0011】に,「それぞれの場合に応じて集合体の軸に沿って又は平面または体積の範囲内で測定されたときの物理的性質の値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する。」と定義されているから,「実質的に垂直」と「実質的に垂直未満」について,当業者であれば十分に理解できる。 したがって,審決の判断1は誤りである。 審決の判断2,3について- 7 -「物理的性質」は,本願明細書に記載された抵抗率等の,集合体についての測定可能な性質を意味し,本願に係る特許請求の範囲には,それらの測定可能な物理的性質が比較的均一であることを記載している。 「光学的濃度」は,「opticaldensity」の和訳で,物質が光を吸収する程度を表わす量として,当業者が普通に使用する術語である。 したがって,審決の判断2,3は,誤りである。 審決の判断4について本願明細書の段落【0011】には,「実質的に」の定義が記載されているから,「実質的に一定の直径を有する」,「実質的に円筒状であり」と「実質的に熱分解堆積炭素を実質的に含まず」については,当業者が十分に理解できるものである。したがって,審決の判断4は誤りである。 審決の判断5について本願明細書の段落【0011】のとおり,「等方性」は,集合体の平面又は体積の範囲内で物理的性質が測定方向に依存することなく一定の値を有することを意味し,かつ,非中実組成物である集合体の代表試料を採るに際しては当然のこととして,ボイド空間の平均値を考慮することを記載したものである。 したがって,審決の判断5は誤りである。 第4被告 ることを意味し,かつ,非中実組成物である集合体の代表試料を採るに際しては当然のこととして,ボイド空間の平均値を考慮することを記載したものである。 したがって,審決の判断5は誤りである。 第4被告の反論審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。 審決の判断1について(1)「c軸」について請求項1,14に記載のフィブリルが結晶構造を持つものとして特定されているわけではない。したがって,技術的内容は明確であるとはいえない。 (2)「円筒軸に対して実質的に垂直」,「円筒軸に対して実質的に垂直未満」について本願明細書の段落【0011】によれば,「実質的に」は「物理的性質の- 8 -値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する」とされるが,上記定義に照らしても,c軸に関し,「円筒軸に対して実質的に垂直」や「円筒軸に対して実質的に垂直未満」の技術的内容を理解することができない。 また,本願明細書には,それぞれにつき複合材料としての効果などの技術的意義が記載されておらず,請求項1に記載の「円筒軸に対して実質的に垂直」と請求項14に記載の「円筒軸に対して実質的に垂直未満」との違いによる技術的意義の差異も記載されていないことから,「円筒軸に対して実質的に垂直」や「円筒軸に対して実質的に垂直未満」の技術的内容を理解することができない。 したがって,審決の判断1に誤りはない。 審決の判断2,3について(1)「物理的性質」について本願明細書の段落【0011】によれば,「物理的性質」は,「集合体の固有の測定可能な性質」と定義されているから,同定義によれば,本願明細書にある「抵抗率」など,測定可能な性質のすべてを網羅した,総体としての性質ということになる。ところが,請求項1に係る発明が対象とする「多数のランダ 」と定義されているから,同定義によれば,本願明細書にある「抵抗率」など,測定可能な性質のすべてを網羅した,総体としての性質ということになる。ところが,請求項1に係る発明が対象とする「多数のランダムに配向されたカーボンフィブリルの三次元の巨視的集合体」の場合は,カーボンフィブリルの配置が均質でないから,物理的性質が比較的均一であることはあり得ない。本願明細書の段落【0035】~【0039】に記載の実施例1から3には,実際に測定されたとされている物理的性質としては,電気抵抗率が挙げられているのみで,物理的性質という総体としての性質について比較的均一であることが確認されているわけではない。そもそも,網羅されるすべての性質を確認することは不可能である。 したがって,「集合体が比較的均一な物理的性質を有している」との事項は,発明を特定しているとはいえない。 (2)「光学的濃度」について- 9 -本願明細書には,「光学的濃度」の測定方法についての記載がなく,仮にそれが慣用語であったとしても,その技術的内容が明確であるとはいえない。 したがって,審決の判断2,3に誤りはない。 審決の判断4について前記1(2)のとおり,「実質的に」は,「物理的性質の値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する」とされるが,かかる定義に照らしても,「フィブリルの直径が一定であること」,「フィブリルが円筒状であること」及び「フィブリルが熱分解堆積炭素を含んでいないこと」が「実質的」であることの技術的内容が理解できない。また,本願明細書には上記の効果等の技術的意義が記載されておらず,本願明細書の記載では,技術的内容を理解することができない。 したがって,審決の判断4に誤りはない。 審決の判断5について本願明細書の段落【0011】の「かかる非中実組成物 義が記載されておらず,本願明細書の記載では,技術的内容を理解することができない。 したがって,審決の判断4に誤りはない。 審決の判断5について本願明細書の段落【0011】の「かかる非中実組成物の測定はボイド空間の平均値を勘定に入れるように集合体の代表試料に対してなされているはずであることが理解される。」との記載は,測定部位のサンプリング手法に関するものと理解できるとしても,それが具体的にどのような手立てと解するのか理解することができない。 したがって,審決の判断5に誤りはない。 第5当裁判所の判断当裁判所は,審決の判断2ないし5についての認定判断に誤りはなく,審決の判断1中,本願に係る特許請求の範囲の「c軸」についての認定判断部分に誤りがあるが,この点は審決の結論に影響を及ぼすものではないから,原告の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 審決の判断1について- 10 -(1)「c軸」について本願の請求項1には,「円筒軸に対して実質的に垂直なc軸」の記載が,請求項14には,「円筒軸に対して実質的に垂直未満のc軸」の記載があり,円筒状のフィブリルがその円筒軸に対して特定の位置関係を有することが特定されている。そして,本願出願前の刊行物(甲15ないし20)によれば,「c軸」は結晶軸の用語であることが認められる。そうだとすると,請求項1及び14におけるフィブリルは結晶構造を持つものであると理解するのが合理的であり,「c軸」に関する技術内容は特定されているというべきである。したがって,この点に関する審決の認定判断部分は,誤りである。 (2)「円筒軸に対して実質的に垂直」,「円筒軸に対して実質的に垂直未満」について原告は,本願明細書の段落【0011】に,「それぞれの場合に応じて集合体の軸に沿って又 判断部分は,誤りである。 (2)「円筒軸に対して実質的に垂直」,「円筒軸に対して実質的に垂直未満」について原告は,本願明細書の段落【0011】に,「それぞれの場合に応じて集合体の軸に沿って又は平面または体積の範囲内で測定されたときの物理的性質の値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する。」と定義されているから,「実質的に垂直」と「実質的に垂直未満」の意義について,当業者が十分理解できると主張する。 しかし,原告の主張は失当である。すなわち,確かに,本願明細書の段落【0011】によれば,「実質的に」について,「それぞれの場合に応じて集合体の軸に沿って又は平面または体積の範囲内で測定されたときの物理的性質の値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する。」との定義は存在するが,同定義は,集合体の物理的性質に関するものであり,フィブリルの円筒軸とc軸との角度等の位置関係に関するものではなく,他に円筒軸とc軸との角度等を確定する記載はない。また,本願明細書の上記記載を根拠として,「実質的に」に関する技術的な意義を確定することは到底できない。したがって,「円筒軸に対して実質的に垂直」,「円筒軸に対して- 11 -実質的に垂直未満」との記載について理解することができないというべきであるから,「実質的に垂直」,「実質的に垂直未満」に関する審決の判断1に誤りはない。 審決の判断2,3について「物理的性質」について,本願に係る特許請求の範囲には,「前記集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質」(請求項1ないし8,15,16),「前記集合体がその少なくとも一平面において比較的等方性の物理的性質」(請求項9ないし14)と記載され,また,本願明細書には,「集合体の固有の測定可能な性質,たとえば,抵抗率,を意味 ,15,16),「前記集合体がその少なくとも一平面において比較的等方性の物理的性質」(請求項9ないし14)と記載され,また,本願明細書には,「集合体の固有の測定可能な性質,たとえば,抵抗率,を意味する。」(段落【0011】),「抵抗率は等方性であり」(段落【0039】)と記載され,多様な意義を有するものとして記載されている。また,一般に「物理的性質」には,熱的,電気的,磁気的,光学的,機械的等の諸性質を含むものと理解される。 以上を総合すると,本願の請求項1に係る「集合体がその少なくとも一次元軸に沿って比較的均一な物理的性質・・・」との記載中の「物理的性質」について,どのような要素までを含むのか,また,どのようにして測定した結果均一であると判断するのかを確定することができないから,本願の請求項1は不明確である。したがって,「物理的性質」の技術内容が理解できず不明確であるとした審決の判断2,3に誤りはない。 審決の判断4について本願の請求項1の「フィブリルが実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状であり,その円筒軸に対して実質的に垂直なc軸を有し,熱分解堆積炭素を実質的に含まず,」の技術的意義については,以下のとおり,確定することができない。 すなわち,「実質的」の意義について記載した「それぞれの場合に応じて集合体の軸に沿って又は平面または体積の範囲内で測定されたときの物理的性質- 12 -の値の95%が平均値の±10%以内にあることを意味する。」(段落【0011】)との定義によっても,フィブリルの各直径の平均値,各円筒の変形度合いの平均値,熱分解堆積炭素の含有平均値を確定することはできない。また,本願明細書の他の記載を総合考慮しても,上記記載の意義を明確にすることはできない。したがって,本願の請求項1に係る発明の技術的範囲が明 均値,熱分解堆積炭素の含有平均値を確定することはできない。また,本願明細書の他の記載を総合考慮しても,上記記載の意義を明確にすることはできない。したがって,本願の請求項1に係る発明の技術的範囲が明確であるとはいえないとした審決の判断4に誤りはない。 審決の判断5について本願の請求項8には「集合体がその少なくとも一平面において比較的等方性の物理的性質および0.001~0.50g/ccの嵩密度を有している,」と記載されているが,「等方性」については,以下のとおり,いかなる技術的内容を定義としているのかが不明である。 すなわち,本願明細書の段落【0011】には,「用語『等方性』は,集合体の平面または体積の範囲内で物理的性質の全測定が測定方向に依存することなく一定の値を有することを意味する。かかる非中実組成物(non-solidcomposition)の測定はボイド空間(voidspace)の平均値を勘定に入れるように集合体の代表試料に対してなされているはずであることが理解される。」との記載がある。このうち,「ボイド空間の平均値を勘定に入れる」との記載は,測定に当たり何らかの要素を考慮することを理解することはできても,具体的にどのような要素を考慮をするのか,また「平均値」とは,何を指すのかが本願明細書の記載を参酌しても不明であって,上記の記載は明確性を欠く。したがって,本願の請求項8の「等方性」の記載は不明確であるとした審決の判断5に誤りはない。 結論 以上のとおり,その余の点(「光学的濃度」の用語が明確か否か)について判断するまでもなく,審決を取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文の- 13 -とおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明 ,審決を取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文の- 13 -とおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明裁判官中平健裁判官上田洋幸
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