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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告理由は末尾添付の上告理由書記載のとおりである。第一点について<要旨第一>民法第七百六十一条は、夫婦の一方が日常の家事に関し第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれに</要旨第一>よつて生じた債務につき連帯してその責に任ずる旨規定し、直接には夫婦の一方のなした法律行為の効果について規定するのみであるけれども同条にいわゆる第三者との法律行為中には夫名義の財産を妻が処分したような場合も含まれることを考えれば右規定は単に夫婦の他の一方に責任あることだけを定めたものでなく、同時にその連帯責任の生ずべき前提として、夫婦相互に日常の家事に関し自己の法律行為の効果を他の一方に及ぼし得る権限をもつことをも間接に規定しているものと解するのが相当である。しかして右の権限は厳密にいえば民法の代理権と異る面をもたないわけではないが、そのことから表見法理の適用を否定すべきものとも考え難く、また旧法第八百四条のように直接に日常家事の代理権について規定していないことから、夫婦相互間に代理関係が生じないものとしひいては表見法理の適用を否定すべしとの結論を導くのは妥当でない。もつとも昭和二十二年法律第二百二十二号による民法改正の前後において、夫婦関係を規律する法は旧法と著しく趣旨を異にするに至つたものであるが、前示の権限に関する限り新法においてもその趣旨は受け継がれているのだから、現行法の下において夫婦の財産的独立の尊重されなければならないことは所論のとおりであるけれども、日常家事の範囲において夫婦の一方がその共同生活の維持のためになした法律行為に基く債務は夫婦共同の債務たる実質をもつものというべく、この範囲において夫婦が相互に他を代 は所論のとおりであるけれども、日常家事の範囲において夫婦の一方がその共同生活の維持のためになした法律行為に基く債務は夫婦共同の債務たる実質をもつものというべく、この範囲において夫婦が相互に他を代理する権限をもつと解<要旨第二>することが新法の精神に反するとは考え難い。 その共同生活の維持のためになした法律行為に基く債務は夫婦共同の債務たる実質をもつものというべく、この範囲において夫婦が相互に他を代 は所論のとおりであるけれども、日常家事の範囲において夫婦の一方がその共同生活の維持のためになした法律行為に基く債務は夫婦共同の債務たる実質をもつものというべく、この範囲において夫婦が相互に他を代理する権限をもつと解<要旨第二>することが新法の精神に反するとは考え難い。もつとも所論の新法の精神殊に夫婦の財産的独立の尊重という</要旨第二>点は表見法理を適用するにあたり考慮して然るべきことであり、また日常家事に関する前記権限の範囲は一応抽象的に定まつており、第三者に公知せしめられているともいい得るのであるから、第三者において日常家事の範囲に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときに限り右権限を基礎にして表見法理を適用するのが、当事者の利益の調和からも前記新法の趣旨からしても相当であると解される。右のように解するときは、表見代理の規定の適用の範囲につき原審と異る点がない訳ではないがそれにもかかわらず本件においても表見代理の法理に従うべきものとする結論において原審と異るものでないことは第二点に述べるとおりであり従つて右表見代理の規定の適用の範囲に関する見解の相違は判決の結果に影響を及ぼすことがないから所論は採用しがたい。第二点について。原判決の確定した事実によれば、本件消費貸借の額は金三万円であり、また被上告会社の専務取締役Aは上告人の妻Bから本件金員借用の申込を受けた翌日上告人方に調査に赴きその際BはAに対し右金員は家屋新築のための費用の一部にあてられるもので夫も承知している旨述べ夫の依頼により取つて来たという印鑑証明書と実印を差出したので被上告人の代理人AはBが上告人から右消費貸借につき代理権を授与されていたと信じたというのである。原審は右調査における経緯のほか右のような比較的少額の金員の借用につき同居の妻が夫から代理権を授与され 被上告人の代理人AはBが上告人から右消費貸借につき代理権を授与されていたと信じたというのである。原審は右調査における経緯のほか右のような比較的少額の金員の借用につき同居の妻が夫から代理権を授与されることは屡々あり得ることをも考慮し被上告人において本件消費貸借につき右Bに上告人を代理する権限があつたと信ずべき正当の理由があるとしたのであり、右判断は是認することができる。 の妻が夫から代理権を授与され 被上告人の代理人AはBが上告人から右消費貸借につき代理権を授与されていたと信じたというのである。原審は右調査における経緯のほか右のような比較的少額の金員の借用につき同居の妻が夫から代理権を授与されることは屡々あり得ることをも考慮し被上告人において本件消費貸借につき右Bに上告人を代理する権限があつたと信ずべき正当の理由があるとしたのであり、右判断は是認することができる。また前記原審認定の事実によれば、右BのAに告げた借入金の使途は上告人夫婦が家屋を新築するためのものというのであるけれどもそれは既に夫婦協議の上夫婦共同生活の必要上決定されたもので、本件の三万円は右建築の費用の一部を補うためのものであるとの趣旨が窺われるのであるから、右Bの説明を受けたAにおいて本件金員借入が日常家事の範囲に属するものと信ずべき正当の理由も存したと解することができ、民法第百十条の適用につき第一点に説示した制限を付しても、なお原審が同条を適用したことはこれを是認すべきものと考えられる。上告人がさして収入の多くない公務員であること、被上告人が上告人宅を訪れただけで、その勤務先において上告人本人に直接確かめる方法をとらなかつたことその他所論の点は本件において右の結論を左右するに足らず、論旨引用の判例は必ずしも本件に適切ではない。よつて本件上告は理由がないから、民事訴訟法第四百一条、第九十五条、第八十九条の各規定に則り主文のとおり判決した。(裁判長判事梶村敏樹判事室伏壮一郎判事安岡満彦)
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