平成14年4月15日宣告平成13年(わ)第784号覚せい剤取締法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役10年及び罰金200万円に処する。 未決勾留日数中190日をその懲役刑に算入する。 罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。 理由 (犯罪事実)被告人は,Aと共謀の上,みだりに,被告人は営利の目的をもって,平成13年6月28日,北九州市a区b丁目c番d号所在の西日本旅客鉄道株式会社e駅北口前タクシー乗場において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩酸塩の結晶約1966.5グラム(平成13年f領第960号の1,4はその鑑定残量)を所持した。 (証拠)略(法令の適用)罰条刑法65条2項,60条,覚せい剤取締法41条の2第2項,第1項刑種の選択情状により懲役及び罰金刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条(事実認定の補足説明)被告人は,公判廷で本件犯行を全面的に否認している。しかしながら,第3回公判調書中の証人Aの供述部分(以下「A供述」という。)は,同人は,事件当日,被告人と福岡空港から飛行機で上京したところ,羽田空港に男2名が出迎えていたこと,被告人とAは同人らと共にうなぎ料理店に行き,同所で男に多額の現金を渡したこと,その後被告人は,空のショルダーバッグを持って,男たちと別の場所に行き,しばらくして被告人は戻ってきてショルダーバッグをAに渡したが,それには中身があったこと,被告人とAは新幹線でfに向かったが,途中でAはバッグを開けてみて,覚せい剤ではないかと思ったこと,f駅で下車したところで,警察官の職務質問を受け,覚せい剤の共同所持の疑いで現行犯逮捕さ ったこと,被告人とAは新幹線でfに向かったが,途中でAはバッグを開けてみて,覚せい剤ではないかと思ったこと,f駅で下車したところで,警察官の職務質問を受け,覚せい剤の共同所持の疑いで現行犯逮捕されたこと,要旨以上のような内容のものであるところ,この供述は,それ自体不自然,不合理な点はないうえ,関係証拠によって認められる事実,特に,事件の前日に,被告人の内妻名義のh銀行i町支店及びj支店の口座から,合計500万円が払い戻されており,この金額は,相場に照らし本件覚せい剤の仕入代金に匹敵する額であること,使用済みの航空券半券がショルダーバッグの中から発見されたこと,Aの供述するうなぎ料理店が現実に存在すること,Aと被告人がf駅付近において同行しているところが捜査員に目撃されていること,ショルダーバッグの中から本件覚せい剤が押収されたこと,などによって客観的に裏付けられており,十分に信用できる。また,約15グラムの未発見の覚せい剤についても進んで供述していることは,同人の供述の真摯性,信用性を高めている。 上記の信用できるA供述のほか,前掲関係証拠によれば,次の各事実が認められる。すなわち,被告人は,暴力団の相談役という役職に就いており,Aは,妻とともに被告人とは麻雀仲間であるが,被告人は現役の暴力団員であるとのうわさを聞いていたこと,被告人は,平成13年6月27日ころから翌28日にかけて,Aに一緒に東京に行かないかと誘い,Aは承諾したこと,被告人は,Aの妻に頼んで,偽名で,同月28日の福岡空港発羽田行きの航空券2枚を予約させたこと,被告人とAは同日その飛行機で上京し,機内で,被告人がAに小遣いをやろうとしたが,Aは断ったこと,羽田には「やくざ風」の男を含む男2名が車で迎えに来ており,被告人は車の中で迎えの男と話していたが,被告人が「今度 同日その飛行機で上京し,機内で,被告人がAに小遣いをやろうとしたが,Aは断ったこと,羽田には「やくざ風」の男を含む男2名が車で迎えに来ており,被告人は車の中で迎えの男と話していたが,被告人が「今度は2台。」,「1台2・3・5」などと言い,これに対して,男が「2・4・5」などと言い,また,被告人は「この前のは少し良くなかった。色が赤っぽかった。」などと言っており,Aはこれらの会話を聴いていたこと,被告人ら4名は都内のうなぎ料理店に寄り食事をしたが,その際,被告人は所持してきた現金を男に渡したが,Aは被告人に言われて,100万円の束から10万円を抜くのを手伝ったこと,同店の食事代は男が支払ったこと,店を出て車で移動中,被告人はAに雑貨店でショルダーバッグを買わせたこと,その後被告人はショルダーバッグを持ち,男たちと車を降り,しばらくして戻ってきて,同バッグをAに渡したこと,その時点でショルダーバッグに何か重い品物が入っていたこと,被告人とAは男たちに車でJRの駅まで送ってもらい,被告人は同所でf駅までの新幹線切符を,Aの分も含め,2枚買ったこと,新幹線でfに向かっている間,Aはショルダーバッグを座席近くの網棚に置いていたが,k駅を過ぎた付近で,被告人が座席を離れた隙に,Aはショルダーバッグを開けてみたところ,チャック付きポリ袋に入った本件覚せい剤2袋が入っていたこと,Aはそれが覚せい剤であることは見当が付いたが,引き続き被告人のためにこれを運んでやる意思で,f駅に着いたあと,同バッグを肩にかけて改札口を出たこと,両名は,同駅に待機していた警察官に呼び止められたが,Aはショルダーバッグについて,「バッグはひらったもので,知らん。」などと弁解したこと,以上の各事実が認められる。 ところで,被告人は,上京したのは借金返済のためであるなどと に呼び止められたが,Aはショルダーバッグについて,「バッグはひらったもので,知らん。」などと弁解したこと,以上の各事実が認められる。 ところで,被告人は,上京したのは借金返済のためであるなどと弁解するけれども,その根拠となる借用書は存在しない,担保はない,領収書ももらわなかったなどとも供述しているところ,その内容は取引一般の経験則に照らし不自然,不合理であって,採用の限りでない。 前記の認定事実によれば,被告人は覚せい剤の仕入れのために東京に行き,そこで密売組織から大量の覚せい剤を購入したものであり,その経緯や量等に照らし,被告人に営利の目的があったことが強く推認されるが,帰途,覚せい剤が盗難にあったり,警察官による職務質問を受けたり,さらには,検挙され,覚せい剤を押収されるなどの危険を何としても防ぐ必要があり,そのため被告人単独ではなく,かねて懇意な仲ではあるが,覚せい剤とは縁のなかったAに目を付け,これにその運搬を依頼したものと認めるのが相当である。そして,Aは,これに応じ,当初は上京の目的やショルダーバッグの中身を知らなかったが,遅くとも新幹線のk駅を過ぎた付近で,被告人から運搬を依頼されたショルダーバッグの中に覚せい剤が入っていることを知るに至ったこと,そして,その後も被告人のために覚せい剤の運搬を引き受け,これを実行したものであることが認められる。 そうすると,被告人とAの両名は,共謀のうえ,被告人は営利の目的で(Aにはこれなく,),本件覚せい剤を所持したものであると認めるのが相当であり,判示のとおり,犯罪事実が認められる。 (量刑事情)本件は,被告人が,Aと共謀のうえ,被告人は営利の目的で,約2キログラムもの大量の覚せい剤を新幹線で運搬したもので,それが所持罪に問われた事案である。 覚せい剤の健康に対 る。 (量刑事情)本件は,被告人が,Aと共謀のうえ,被告人は営利の目的で,約2キログラムもの大量の覚せい剤を新幹線で運搬したもので,それが所持罪に問われた事案である。 覚せい剤の健康に対する有害性,社会に対する悪影響,それが暴力団の資金源になることなどからして,覚せい剤事案は軽視できず,その流布状況を考えると,なおさらその感があるが,本件は所持量が約2キログラムと大量のものであり,それだけでも事案として重大である。本件取引の経緯,覚せい剤の量等からして,覚せい剤の仕入れ先に相当大きな密売組織の存在がうかがわれるのはもちろん,被告人自身暴力団の一員であるうえ,その背後に覚せい剤の密売組織が控えていると考えざるを得ないが,被告人は,そのような覚せい剤密売ルートの一翼を担い,大量の覚せい剤を仕入れ,運搬,所持したものであり,しかも,本件の主犯である。 捜査及び公判を通じ,不合理な弁解に終始しており,犯行について反省がみられない。 その他,被告人にはやや古いものの覚せい剤取締法違反の前科があることなどの情状に照らすと,被告人の刑責は相当重く,かつ事案に照らすと罰金刑も併科するのが相当である。 そうすると,本件の覚せい剤は全量が押収されたことなど,被告人のために酌むべき情状を考慮しても,被告人の刑責はなお大きいから,主文のとおり刑を量定した。 (求刑懲役12年及び罰金300万円)(出席した検察官山口浩)平成14年4月15日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部裁判長裁判官若宮利信裁判官川野雅樹裁判官坂本好司 坂本好司
▼ クリックして全文を表示