平成19(行ウ)65 認可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年2月25日 福岡地方裁判所 その他
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判決文本文32,528 文字)

- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求福岡県知事が平成19年6月19日付けで社会福祉法人Aに対してした解散認可処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,社会福祉法人A(以下「A」という。)が設置し,経営するB学園に勤務していた原告らが,福岡県知事(以下「県知事」という。)が平成19年6月19日付けで行ったAの解散認可処分(以下「本件処分」という。)は,Aの理事会(以下「理事会」という。)及びB学園の保護者会(以下「保護者会」という。)がB学園労働組合(以下「B労組」という。)に対して行った不当労働行為に加担した違法な処分である,又は裁量権を逸脱又は濫用して行われた違法な処分であると主張して,被告に対し,本件処分の取消しを求めた事案である。 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)ア県知事は,社会福祉法に基づく社会福祉法人の設立,解散等の認可権者であり,かつ,指導監督権者である。 イAは,第一種社会福祉事業として,知的障害者通所授産施設であるB学園を設置,経営していた社会福祉法人である。 平成17年3月1日の時点で,B学園の利用者(以下「利用者」という。)は,24名であった(甲96)。 ウ原告Cは,平成14年4月1日以降,指導員としてB学園に勤務していた者である。 - 2 -原告Dは,平成9年4月1日以降,事務職員としてB学園に勤務していた者である。 また,原告らは,平成17年9月1日に結成されたB労組の組合員である(甲21)。 (2)利用者24名のうち23名の保護者(以下,利用者の保護者のことを,単に「保護者」という。)は,平成18年1月29日,A理事長に対し,同年4月以降の利 されたB労組の組合員である(甲21)。 (2)利用者24名のうち23名の保護者(以下,利用者の保護者のことを,単に「保護者」という。)は,平成18年1月29日,A理事長に対し,同年4月以降の利用契約を締結しない旨の申出書を提出した(甲78)。 Aは,同年2月21日,原告らに対し,事業継続が不可能になったことを理由として,同年3月31日付けをもって解雇する旨の意思表示をした(甲62の1及び2,弁論の全趣旨)。 また,Aは,同年2月23日,県知事に対し,利用者の確保が困難であることを理由に,同年3月末日をもってB学園の事業を廃止する旨の同年2月20日付け社会福祉事業廃止届を提出した(甲67,68,70)。 (3)原告ら,B学園の職員であるE及びFは,平成18年5月17日,福岡地方裁判所飯塚支部(以下「飯塚支部」という。)に対し,Aを債務者として,労働契約上の権利を有する地位を仮に定めること等を求める仮処分を申し立てた(甲85。以下「仮処分申立事件」という。)。 飯塚支部は,平成19年1月12日,Aによる解雇は無効であるとして,原告ら,E及びFの申立てを認容する旨の決定をした(甲42。以下「仮処分決定」という。)。 (4)Aの理事全員は,平成19年1月18日,Aの解散に同意した(甲75)。 また,A評議員会(以下「本件評議員会」という。)は,同年2月10日,Aの解散を決議した(甲76)。 (5)原告ら及びEは,平成19年3月28日,飯塚支部に対し,Aを被告として,労働契約上の権利を有する地位の確認等を求める訴えを提起した(甲- 3 -77。以下「地位確認等請求訴訟」という。)。 (6)Aは,平成19年6月7日,県知事に対し,解散する理由を「利用者の減少により,B学園の運営が不可能な為,又その補充も考えられない事」として,解散認可申請 下「地位確認等請求訴訟」という。)。 (6)Aは,平成19年6月7日,県知事に対し,解散する理由を「利用者の減少により,B学園の運営が不可能な為,又その補充も考えられない事」として,解散認可申請をした(甲102)。 これに対し,県知事は,同月19日,解散を認可する旨の本件処分をした。 争点及びこれに関する当事者の主張(1)原告らは,本件処分の取消しを求める原告適格を有するか。 【原告らの主張】ア処分の取消しの訴えは,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができるところ,法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合においては,当該法令と目的を共通する関係法令の趣旨及び目的をも参酌し,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されるおそれのある利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとされている(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項,2項)。 イ社会福祉法は,社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図ることを目的としているところ(同法1条),社会福祉を目的とする事業とは,社会福祉のために反復継続して行われる諸活動を意味し,人的組織及び物的施設を含む団体活動をいうものと解される。 また,都道府県知事等は,同法等の施行に関し,それぞれの担当職員が行う事務について,その指導監督を行うために必要な計画を樹立し,これを実施しなければならず(同法20条),その実現のため,担当職員に対し,必要な訓練を行わなければならない(同法21条)等,社会福祉事業に従事する者(以下「社会福祉事業従事者」という。)の資質の向上を図- 4 -る義務を負うものとされている。 のため,担当職員に対し,必要な訓練を行わなければならない(同法21条)等,社会福祉事業に従事する者(以下「社会福祉事業従事者」という。)の資質の向上を図- 4 -る義務を負うものとされている。 他方,所轄庁である都道府県知事は,社会福祉法人に対し,必要な措置を採るべきことを命ずることができる等の一般的監督権を有し(同法56条2項),また,厚生労働大臣は,社会福祉事業を経営する者が行う,社会福祉事業従事者に係る処遇の改善及び資質の向上等に資する措置の内容に関する事項についての基本方針を定める義務を負い(同法89条1項,2項2号),これを受けて,国及び都道府県は,社会福祉事業を経営する者に対し,上記措置の内容に即した措置の的確な実施に必要な指導及び助言を行うものとされている(同法91条)等,社会福祉事業従事者に対する処遇の改善等に関する国及び都道府県の指導助言権が定められている。 上記処遇の改善には,社会福祉事業従事者の身分上,給与上,その他精神的,物質的な取扱いの改善が含まれ,社会福祉事業従事者一人一人の処遇が対象となる。 以上によれば,同法の目的には,利用者が受ける福祉サービスの利益の向上のみならず,当該目的の実現に不可欠な手段である,社会福祉事業従事者の処遇の改善,資質の向上等を図ることも含まれる。 したがって,同法46条2項に基づく解散認可処分における審査の対象は,上記趣旨及び目的に照らせば,同法56条2項が規定する法令違反やその運営が著しく適正を欠くか否か等に加え,同法89条2項2号に定める社会福祉事業従事者に係る処遇の改善等の実態が含まれる。 ウ社会福祉法46条1項1号及び3号を理由とする解散認可処分は,当該処分があって初めて解散の効力が生じ(同法46条2項),これを前提として,不可避的に清算手続が開始され,清算が結了すれ 含まれる。 ウ社会福祉法46条1項1号及び3号を理由とする解散認可処分は,当該処分があって初めて解散の効力が生じ(同法46条2項),これを前提として,不可避的に清算手続が開始され,清算が結了すれば,社会福祉法人は消滅することになるのであるから,解散認可処分は,これによって社会福祉法人に関する一切の法律関係が消滅するところに最大の存在価値があり,単なる法律行為を補完してその効力を完成させるだけのものではない。 - 5 -したがって,同法46条1項1号及び3号を理由とする解散に対する認可処分は,解散の効力要件ではなく,社会福祉法人に関する一切の法律関係を消滅させる不可欠な要件として,いわゆる剥権行為としての性格を有する行政処分である。したがって,解散認可処分には公定力が働き,当該処分が取り消されない限り,第三者は,清算手続の違法を主張することは許されない。 ところで,原告らは,Aを被告として,地位確認等請求訴訟を提起し,係属中であるから,本件処分に伴う清算手続は終了しないはずであるが,本件処分によって清算手続が進められたため,Aは,社会福祉法人G(以下「G」という。)に対し,その所有する全不動産を無償譲渡した外,自動車,現金等すべての財産を無償譲渡した。 したがって,原告らは,上記訴訟に勝訴しても,本件処分の公定力により,本件処分が取り消されない限り,原告らの社会福祉事業従事者としての地位及びこれに伴う様々な処遇の確保が著しく侵害されることになる。 エ以上によれば,原告らは,本件処分によって,社会福祉事業従事者としての地位及びこれに伴う様々な処遇を必然的に著しく侵害されるおそれがある者に当たり,本件処分の取消しを求めるにつき原告適格を有する。 【被告の主張】ア取消訴訟における原告適格は,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を 処遇を必然的に著しく侵害されるおそれがある者に当たり,本件処分の取消しを求めるにつき原告適格を有する。 【被告の主張】ア取消訴訟における原告適格は,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限定されるところ,当該処分を受けた相手方以外の者について法律上の利益を有する者に当たるか否かを判断するには,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとされ,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮する場合には,当該法令と目的を共通にする法令があれば,その法令の趣旨及び目的も参酌し,考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮する場合には,- 6 -当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることになる利益の内容及び性質,害される態様及び程度をも勘案した上で(行訴法9条2項),当該処分の根拠となる法令の規定が,不特定多数の具体的利益を専ら公益の中に吸収させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むものか否かを検討しなければならない。 イ社会福祉法の目的は,福祉サービス利用者の利益の保護や社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保と健全な発展による社会福祉の増進等にある(同法1条)。また,同法の趣旨は,福祉サービスの利用者の視点に立ち,利用者が心身ともに健やかに育成されること等を支援するものとして,福祉サービスの提供が良質かつ適切なものとなるように,福祉サービス提供者の能力・資質等を規定し,同規定の遵守を指導監督する所轄庁の責務と権限を定めているものといえる(同法3ないし6条,56ないし59条等)。すなわち,社会福祉法及びそれと目的を同じくする社会福祉関連法令の趣旨及 質等を規定し,同規定の遵守を指導監督する所轄庁の責務と権限を定めているものといえる(同法3ないし6条,56ないし59条等)。すなわち,社会福祉法及びそれと目的を同じくする社会福祉関連法令の趣旨及び目的は,福祉サービス利用者の利益や福祉が害されることのないように保護するため,福祉サービス提供者に対し,一般的公益的見地から規制を行おうとするものであり,福祉サービス提供者に雇用される従業員等個々人の個別的具体的利益をも保護しようとする趣旨や目的を含むものではない。 また,社会福祉法20条及び21条は,社会福祉制度の複雑さや社会福祉事業が人に対するサービスであることから,査察指導の重要性及び担当職員が社会福祉関連法令の事務を円滑に行うためには十分な訓練が必要な実情を踏まえ,都道府県知事等に対し,行政担当者の資質向上の責任を課しているものであって,社会福祉事業従事者に対する義務ではなく,まして,これらの指導監督や訓練は,社会福祉事業の円滑な推進に資するものであって,社会福祉事業従事者の労働条件等の指導,改善等のための訓練- 7 -等は含まれていない。 さらに,社会福祉法は,厚生労働大臣に対する基本方針の策定義務を定め(同法89条),国及び都道府県に対し,上記基本方針に規定する措置の内容に即した措置の的確な実施に必要な指導及び助言を行う責務を課しているが(同法91条),仮に,社会福祉事業従事者の労働条件等の遵守,労働者としての権利確保まで保護するものと考えているのであれば,都道府県知事等に対し,労働基準監督官と同程度の司法警察権を付与する等の規定があってしかるべきであるが,そのような規定はない。そもそも前記基本方針に定める措置を講じることは,雇用主である社会福祉事業を経営する者に対する努力義務であり(同法90条),前記基本方針の内容も,概 あってしかるべきであるが,そのような規定はない。そもそも前記基本方針に定める措置を講じることは,雇用主である社会福祉事業を経営する者に対する努力義務であり(同法90条),前記基本方針の内容も,概括的一般的な努力目標を規定するにとどまる。 同法第9章は,福祉人材の不足によって利用者に対する福祉サービスの質の低下の発生を未然に防ぎ,将来にわたる福祉サービスの質を確保するという公益目的から規定されたものであって,各社会福祉事業従事者の個別具体的な労働環境ないし労働状況を直接に改善,是正する趣旨を含むものではなく,仮に,結果として社会福祉事業従事者に係る処遇の改善がされることがあっても,それは,反射的利益にすぎない。 ウ社会福祉法46条2項に規定する認可は,同条1項1号による解散決議の効力を補充する行為にとどまり,仮に,当該法律行為が無効であれば,本件処分が取り消されなくても,原告らは,Aとの間で,解散の効力を争うことができるのであるから,本件処分によって,直接原告らに何らかの利益侵害が発生したわけではない。また,本件処分とAの全財産がGに譲渡されたこととの間には直接の因果関係は存しないし,本件処分自体が,原告らのAに対して有する権利の執行に重大な影響を与えるという関係にもない。 また,仮に,社会福祉法46条に違反した処分がされた場合,当該社会- 8 -福祉法人による福祉サービスの提供を受けていた利用者は,当該社会福祉法人による福祉サービスの提供を受けられなくなるという多大な損害を被る。他方,当該社会福祉法人において就労していた社会福祉事業従事者は,解雇,失業等の重大な不利益が生じる可能性があるが,その不利益は,適法な解散認可処分であっても,また,解散認可処分によらずとも,法人であれば常に生じ得るリスクであり,労働基準法その他の関連法規 は,解雇,失業等の重大な不利益が生じる可能性があるが,その不利益は,適法な解散認可処分であっても,また,解散認可処分によらずとも,法人であれば常に生じ得るリスクであり,労働基準法その他の関連法規によって様々な担保が講じられているところである。 したがって,当該社会福祉法人に就労していた社会福祉事業従事者の個々の具体的利益は,解散認可処分において考慮されるべき利益の内容には含まれない。 エ以上のとおり,原告適格の有無を判断するために必要な要素を考慮しても,社会福祉法は,解散認可処分を受ける社会福祉法人に雇用されていた社会福祉事業従事者の個別具体的利益まで保護する趣旨を有しておらず,原告らが主張する不利益は,考慮すべき利益に含まれないことは明らかである。また,仮に,本件処分が違法であったとしても,それによって原告らが害されたといえる具体的な利益は存しない。 したがって,原告らは,本件処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しない。 (2)本件処分の違法性の有無。 【原告らの主張】ア私法人は,原則として団体自治が保障されていることから,行政庁による規制は最小限にとどめられ,その解散は,民法(平成18年法律第50号による改正前のもの。以下同じ。)68条以下に定められている外は何ら規制がなく,また,法人の最高議決機関である総会の決議が優先され,法人の目的たる事業の成功又はその成功の不能の有無にかかわらず,解散の効力が生じるものとされている(民法68条2項1号)。 - 9 -これに対し,公法人は,その設立,管理,運営及び組織等に公権力が介入することが多く,私法人とは異なった取扱いがされる。加えて,社会福祉法は,憲法25条を受けて,国の事務を地方公共団体に機関委任した法律であり,福祉サービスの利用者の利益保護及び地域における社会福祉の推進 とが多く,私法人とは異なった取扱いがされる。加えて,社会福祉法は,憲法25条を受けて,国の事務を地方公共団体に機関委任した法律であり,福祉サービスの利用者の利益保護及び地域における社会福祉の推進を図るとともに,社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発展を図り,もって社会福祉の増進に資することを目的として(同法1条),この目的達成のため,都道府県知事等に社会福祉法人に対する監督権を与えており(同法56条等),社会福祉法人の解散についても,公権力による厳しい審査監督を受ける。 ところで,社会福祉法施行規則(以下「施行規則」という。)5条によれば,社会福祉法人は,解散の認可又は認定を申請する場合,解散の理由及び残余財産の処分方法を記載した書面に同条各号が定める書類を添付して,所轄庁に提出しなければならないところ,Aが県知事に提出した解散申請書の理由欄には,「利用者の減少により,B学園の運営が不可能な為」と記載されており,本来は,社会福祉法46条1項1号ではなく同項3号に基づいて申請すべきところ,同項1号に基づいて申請されている。 上記のとおり,施行規則5条により解散理由の記載が義務付けられていることに加え,社会福祉事業の高度の公共性及び所轄庁の監督権に照らせば,解散理由として,社会福祉法46条1項3号の解散事由が記載されている以上,県知事は,所轄庁としての審査権に基づき,上記解散理由の適否を厳格に審査すべき義務がある。 イ不当労働行為に基づく違法性理事会及び保護者会は,B労組が結成された直後から,同労組を嫌悪し,非難,攻撃を加えてきた。労働者の団結権,団体交渉権及び争議権は,憲法28条で保障された憲法上の権利であり,労使関係がない第三者であっても,憲法上の権利である労働基本権を侵害する行為は,違法行為 ,非難,攻撃を加えてきた。労働者の団結権,団体交渉権及び争議権は,憲法28条で保障された憲法上の権利であり,労使関係がない第三者であっても,憲法上の権利である労働基本権を侵害する行為は,違法行為として- 10 -取り扱われる。したがって,理事会のB労組に対する不当労働行為はもちろん,保護者会が理事会と共謀して行った行為も,不当労働行為に当たり,保護者会は,その責任を免れない。 B労組は,被告に対し,理事会による団交拒否及び保護者会と共謀したB労組攻撃について,Aに対する是正勧告等,行政上の措置を求める要請書を何度も提出し,また,被告担当職員に対し,口頭で何度も要請した。 したがって,被告は,理事会及び保護者会のB労組に対する不当労働行為を認識し,又は認識し得たものである。 しかし,被告は,B労組からの要請を無視して何ら措置を採らず,Aから提出された社会福祉事業廃止届及び解散認可申請書を受理した上,前記のとおり,社会福祉法の趣旨及び目的に照らし,解散理由の適否を厳格に審査すべきであるにもかかわらず,理事会及び保護者会の不当労働行為について,何ら調査せずに放置し,本件処分を行った。 したがって,被告が行った本件処分は,理事会及び保護者会の不当労働行為に加担するものであり,労働組合法7条1号及び2号に違反する違法な処分である。 ウ裁量権の逸脱又は濫用の違法性(ア)社会福祉法46条2項が,所轄庁に認可権限を与えている趣旨は,社会福祉法人に関する一切の法律関係を消滅させる解散は,やむを得ない場合の外,できる限り防止することが,当該社会福祉法人の果たしてきた公益的役割の見地からも,また,当該社会福祉法人と債権債務関係を有する第三者の保護という観点からも望ましいからである。したがって,被告は,B学園の事業不能という客観的事実が,真にAの存続 たしてきた公益的役割の見地からも,また,当該社会福祉法人と債権債務関係を有する第三者の保護という観点からも望ましいからである。したがって,被告は,B学園の事業不能という客観的事実が,真にAの存続を不能とするものかについて,厳格に審査すべきである。 ところで,仮処分決定は,利用者24名のうち10名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示は,真意に基づいてされたものと認- 11 -めることはできないと認定している。したがって,被告が真摯に調査をすれば,Aが解散認可申請書に記載した解散理由である事業継続の困難が虚偽であること,その根拠となっている利用者23名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示が虚偽であることは,容易に判明したはずである。 それにもかかわらず,被告は,上記解散理由について,実体的な審査や,新規利用者による契約が困難であった理由の究明等,客観的かつ厳格な審査をしなかったため,上記解散理由として記載された事実を真実と誤認して本件処分を行ったものであり,本件処分は,事実誤認の違法がある。 (イ)仮処分決定は,利用者24名のうち14名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示が真意であると認めたが,他方,14名の保護者が利用契約を締結しない旨の意思表示をしたとしても,これをもって,直ちにB学園を閉鎖するまでの必要性があったとまで認めることはできない旨認定した。 このように,仮処分決定において,B学園を閉鎖する必要性が認められなかったにもかかわらず,被告は,Aの社会福祉事業廃止届及び解散認可申請を手続上の問題として処理し,多額の補助金の交付によって運営されているAの公益性を十分考慮せず,解散認可申請書に記載された解散理由について実体的な審査をしなかったため,B学園を閉鎖する必要性までは認められないという実 処理し,多額の補助金の交付によって運営されているAの公益性を十分考慮せず,解散認可申請書に記載された解散理由について実体的な審査をしなかったため,B学園を閉鎖する必要性までは認められないという実態を正しく把握せず,その評価を誤って本件処分を行った違法がある。 (ウ)Aが県知事に社会福祉事業廃止届を提出した平成18年2月20日から被告が本件処分を行った平成19年6月19日までの約1年4か月間,B労組は,被告に対し,合計13回にわたり,Aが行った社会福祉事業廃止届や解散認可申請に関する要望書,申入書等を提出し,Aによ- 12 -る社会福祉事業廃止届及びその根拠となっている保護者の申出書並びに理事会による団交拒否等が,B労組に対する攻撃であるとして,公正な調査権の発動を求めた。 被告は,平成17年度において,Aに対する実地指導,Aからの聴取,B学園の職員からの事情聴取,保護者との面談等の指導,調査を行っていることから,被告は,理事会及び保護者会の役員が,B労組に対し,感情的な攻撃を繰り返していた等の事実を知っていた。また,被告担当職員は,平成18年2月19日に行われた保護者会とB学園の職員との間における話合いに立ち会った際,保護者が,職員に対し,著しく無礼な差別的発言を繰り返していた状況を見聞しており,理事会及び保護者会が一体となって,B労組及びその正当な活動を嫌悪し,保護者会が申出書を提出した真意が,B労組に対する攻撃にあることを理解できたはずである。 したがって,被告は,理事会及び保護者会から,B労組に対する攻撃目的で社会福祉事業廃止届が提出され,解散認可処分申請がされたことを知りながら,これに加担する違法な動機,目的によって本件処分を行ったものである。 (エ)前記のとおり,被告は,労働者の憲法28条等の諸権利を踏まえ,公益 が提出され,解散認可処分申請がされたことを知りながら,これに加担する違法な動機,目的によって本件処分を行ったものである。 (エ)前記のとおり,被告は,労働者の憲法28条等の諸権利を踏まえ,公益性の強い知的障害者通所授産施設を経営する理事会及び保護者会のB労組に対する不当労働行為等の実態を考慮しなければならないにもかかわらず,これを考慮せず,かえって,考慮してはならないAの理事及び保護者らのB労組に対する誹謗を考慮して本件処分を行った。 したがって,本件処分は,社会観念上著しく妥当性を欠くものであり,違法である。 【被告の主張】ア社会福祉法46条1条1項1号,3号,同条2項によれば,同条1項1- 13 -号に基づく解散の場合には,所轄庁の認可が,他方,同項3号に基づく解散の場合には,所轄庁の認定が必要とされている。このように,認可と認定が使い分けられているのは,理事等の自然人の自由意思を中心とする社会福祉法46条1項1号の解散事由と,事業の不成功という客観的事実が当該法人の存続を不能とするものかどうかという程度の認定が基準となる同項3号の解散事由とでは,解散事由の適否に関する所轄庁の審査権に質的及び量的な差異があるためである。 また,解散認可・認定申請書の様式は,厚生労働省局長通知の別記第1様式第3に定められているところであり,認可及び認定の区別により,表題部分を変更するようになっている。したがって,解散を申請しようとする社会福祉法人が,所轄庁である被告に対し,社会福祉法46条1項3号に基づく解散を申請しようとするのであれば,表題部分が「認定」となっている解散認定申請書を希望し,被告においても,それを交付するはずである。しかし,Aが申請し,被告が受領したのは,解散認可申請書及び同添付書類であり,また,同添付書類である理事会議事 「認定」となっている解散認定申請書を希望し,被告においても,それを交付するはずである。しかし,Aが申請し,被告が受領したのは,解散認可申請書及び同添付書類であり,また,同添付書類である理事会議事録,評議員会議事録には,いずれも,それぞれの会で,解散を決定ないし同意する旨議決されたことのみが記載されていた。 したがって,被告が行った本件処分は,社会福祉法46条1項1号に規定する自主解散に対する認可処分であって,同項3号に関する認定処分ではない。 イ被告は,Aに対し,保護者や職員と話合いを行い,協力して利用者サービスの向上に努めるよう,随時指導を行ってきており,何らの処置も採らなかったものではない。したがって,被告が,Aの不当労働行為を容認した事実も,加担した事実もない。 また,被告には,不当労働行為意思がない。社会福祉法46条2項の認可をするかどうかは,当該自主解散が同条1項1号の要件を充足している- 14 -かどうかに基づいて判断することとなるが,要件を充足していると認められる場合,被告は,認可をしなければならない。このような場合に,他の事情を考慮して認可しないことは,同条2項の規定ないし趣旨に反し,許されないものである。 ウ前記のとおり,本件処分は,社会福祉法46条1項1号,2項に基づく認可処分であり,被告は,所轄庁として,法定手続を履践しているか否かを確認する義務があるところ,添付書類等により,手続の履践を確認し,本件処分を行ったものである。 関係法令上,被告が解散認可処分の判断をするに当たり,自由な裁量を有するものではなく,法定手続履践の有無,規定上の確認事項等以外の事項を別途調査する義務はない。 したがって,被告が,本件処分を行うに当たり,Aの不当労働行為の有無を調査及び判断しなかったからといって,裁量権を逸脱又は濫用 手続履践の有無,規定上の確認事項等以外の事項を別途調査する義務はない。 したがって,被告が,本件処分を行うに当たり,Aの不当労働行為の有無を調査及び判断しなかったからといって,裁量権を逸脱又は濫用したということはできない。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲1,7ないし47,62の1及び2,67ないし71,72の1ないし6,74ないし78,85,89,99,102,124の1及び2・9ないし11・13ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)アB学園の職員数名は,平成13年6月19日,労働条件の改善,当時のA理事長の職員に対するセクハラ問題の解決等を目的として,B労組を結成した。 その後,同労組は,平成15年9月1日に解散したが,B学園の職員と理事会が再び対立したため,同年12月30日,再び同労組が結成された。 同労組は,平成16年9月30日に再び解散したが,B学園の職員と理事- 15 -会が再度対立したため,平成17年9月1日,再度同労組が結成された。 イ平成17年3月5日,当時のA理事が手続を失念したため,同理事及び監事が,任期切れにより資格を喪失し,不在となった。また,同年5月25日,理事会が評議員会の開催を失念したため,評議員が任期切れにより資格を喪失し,不在となった。 そこで,当時のB学園施設長は,同年6月15日,被告に対し,仮理事選任を申し立て,また,B労組から交渉代理人として委任を受けていたHは,同月17日,被告に対し,仮理事選任を申し立てた。なお,そのころ,当時のA理事長も,被告に対し,仮理事選任を申し立てた。 これに対し,被告は,同月17日,Aの運営とB学園の経営に携わってきた実績と経験を有し,A及びB学園の継続性,安定性を確保できる役員,評議員の選出が可能 事長も,被告に対し,仮理事選任を申し立てた。 これに対し,被告は,同月17日,Aの運営とB学園の経営に携わってきた実績と経験を有し,A及びB学園の継続性,安定性を確保できる役員,評議員の選出が可能であること,理事の任期が失効したのは,単に手続をミスしたことによるものであること,直近の監査結果においても,特にAの運営及びB学園の経営に支障がある程度に重大な瑕疵は認められないことを理由として,A理事長が申し立てた仮理事候補者8名を仮理事に選任した。 ウB労組は,同年9月7日以降,Aに対し,何度も団体交渉を申し入れたが,これを拒否された。 そこで,B労組は,同年10月27日,被告担当職員と面会し,同人に対し,Aが団体交渉を拒否していること等を訴え,その改善指導を要求した。これに対し,被告担当職員は,労働条件については指導をし難いが,その他の点については,被告が確認する旨述べた。 (以上につき,甲21ないし41,43ないし47,124の1及び2・9ないし11・13,弁論の全趣旨)(2)アAは,平成17年11月11日,被告に対し,利用者が徐々に減少し,同月から24名となり,利用者確保が難しく,また,職員との軋轢もあり,- 16 -このままB学園の運営を続けても経営が厳しくなる旨報告した。 これに対し,被告は,Aに対し,新たな利用者確保に努めること,B学園の職員と協力した体制作りや,保護者会と連携し,その意向を十分に把握した運営に努めること等を指導した。なお,このとき,被告は,I養護学校に確認したところ,「ここ2,3年,B学園への実習希望はない。養護学校の生徒の保護者は横のつながりが強い。噂はすぐに広まる。希望がない以上どうしようもない。」旨の回答を得た。 イAは,同年11月21日,被告に対し,同月以降,利用者確保のため努力を行ったが,叶 護学校の生徒の保護者は横のつながりが強い。噂はすぐに広まる。希望がない以上どうしようもない。」旨の回答を得た。 イAは,同年11月21日,被告に対し,同月以降,利用者確保のため努力を行ったが,叶わなかった旨報告した。 (以上につき,甲68,70,弁論の全趣旨)(3)理事会は,平成17年12月27日,保護者が平成18年4月以降の利用契約を締結しない旨の情報を得たことから,B学園経営の断念及び同学園職員解雇の可能性を決議した。 また,Aは,平成17年12月28日,被告に対し,上記情報を報告したところ,被告は,Aに対し,保護者の意向を十分確認すること等を指導した。 (以上につき,甲68,70,弁論の全趣旨)(4)ア被告担当職員数名は,平成18年1月11日,Aに対する実地指導を行った。 その際,被告担当職員は,保護者数名と面談した外,B学園の運営に係る収支状況を確認し,Aに対し,逼迫する財政状況に対応するため,利用者の確保及び経費節減等に努めること,適切な労使関係を確保すること,利用者及び保護者との信頼関係の改善に努めること等を指導した。 このとき,被告担当職員は,B学園の職員に対しては,事情聴取をしなかった。 イ利用者24名のうち23名の保護者は,同年1月29日,Aに対し,同年4月以降の利用契約を締結しない旨の申出書を提出した。 - 17 -(以上につき,甲70,71,72の1ないし6,78,89,124の1及び13,弁論の全趣旨)(5)アAは,平成18年2月1日,B学園を閉鎖することを決意し,同月2日,被告に対し,B学園の廃園はやむを得ない旨報告した。 このとき,被告は,Aに対し,保護者及びB学園の職員との間で話合い等を行う等して,同学園の存続に向けた努力をするよう指導した。 イ被告担当職員は,同年2月6日,保護者16名との間で, い旨報告した。 このとき,被告は,Aに対し,保護者及びB学園の職員との間で話合い等を行う等して,同学園の存続に向けた努力をするよう指導した。 イ被告担当職員は,同年2月6日,保護者16名との間で,話合いを行い,B学園の職員との間で話合いを行うよう伝えた。 そして,被告は,同月7日,Aに対し,上記話合いの状況を伝えるとともに,保護者とB学園の職員との間における話合いの場を設定するよう指導した。 ウAは,同年2月10日,B学園の職員に対し,口頭で,同年3月31日をもってB学園を閉鎖し,職員を全員解雇する旨通告した。 また,Aは,同年2月10日,被告に対し,B学園の職員に対して同学園の経営が今後困難であることを口頭で告知した旨報告したところ,被告は,Aに対し,保護者との話合いの場を早急に設定するよう指導した。 エ被告は,同年2月13日,B学園を訪問し,Aの理事及びB学園施設長に対し,同学園の適正な運営及び利用者の処遇確保に努めること,今後,利用者の登園状況及びB学園の職員の出勤状況を被告へ毎日報告するよう指導した。 このとき,B労組は,被告に対し,保護者のほとんどは,B学園が廃園になることを知らずに,同学園を存続させる意思で申出書に署名押印したものである旨報告した。 オAは,同年2月14日,被告に対し,保護者の代表と職員との間で話合いが行われたが,双方の理解は得られなかった旨報告したところ,被告は,Aに対し,引き続き両者の協議が行われるよう指導した。 - 18 -カ理事会は,同年2月15日,B学園を閉鎖することを正式に決定した。 Aは,同月16日,被告に対し,上記決定を報告したところ,被告は,Aに対し,保護者とB学園の職員との間で話合いを行い,同学園の事業継続に努めるよう指導した。 キ保護者20名,Aの理事4名,B学園施設長,同学園の 日,被告に対し,上記決定を報告したところ,被告は,Aに対し,保護者とB学園の職員との間で話合いを行い,同学園の事業継続に努めるよう指導した。 キ保護者20名,Aの理事4名,B学園施設長,同学園の職員8名及び被告担当職員は,同年2月19日,B学園に集まり,話合いを行った。この話合いは,保護者らのB学園の職員に対する非難で終始した。話合いの最後に,被告担当職員は,保護者,B学園の職員及びAとの間で引き続き話合いをするよう指導した。 クAは,同年2月21日,原告らに対し,事業継続が不可能になったことを理由として,同年3月31日付けをもって解雇する旨の意思表示をした。 ケAは,同年2月23日,被告に対し,利用者の確保が困難であることを理由に,同年3月末日をもってB学園の事業を廃止する旨の同年2月20日付け社会福祉事業廃止届を提出した。 被告は,これを受理した上で,Aに対し,利用者の処遇確保に努めること,社会福祉事業廃止届の関係資料を提出するよう指導した。 (以上につき,甲62の1及び2,67ないし70,74,85,89,99,弁論の全趣旨)(6)アAは,同年3月1日,被告に対し,利用者の同年4月1日以降の利用意向を報告したところ,被告は,Aに対し,同日以降の処遇が決定していない利用者の処遇確保に努めるよう指導した。 イ被告担当職員は,同年3月2日,B学園を訪問し,同学園施設長から現状を聴取するとともに,同学園の適正な運営と利用者の処遇確保に努めるよう指導した。 ウB労組は,同年3月6日,県知事に対し,理事会及び保護者会のB労組に対する攻撃の実情を訴え,これに対する善処を要望するとともに,保護- 19 -者23名の申出書に対し,B学園の職員を事情聴取しなかった理由の説明等,10項目を要望し,同月14日までに書面で回答するよう求める要 実情を訴え,これに対する善処を要望するとともに,保護- 19 -者23名の申出書に対し,B学園の職員を事情聴取しなかった理由の説明等,10項目を要望し,同月14日までに書面で回答するよう求める要望書を提出した。 エ被告は,B学園の職員から前記要望書が提出され,処遇が決定していない利用者に対し,今後どのような処遇を望んでいるか率直な意見を直接聞くよう要望があったため,同年3月17日,Aの理事及び保護者会に対し,その協力を求めた。 オ被告は,同年3月18日,同年4月1日以降の処遇が決定していない利用者と個別に面談した。その結果,3名の利用者が,引き続きB学園の利用を希望した。 そこで,被告は,同年3月20日,Aに対し,上記個別面談の結果を伝え,上記3名を含む,同年4月1日以降の処遇が決定していない利用者8名に対する処遇確保に努めるよう指導した。 カ被告は,同年3月24日,Aの理事及び保護者会に対し,同年4月1日以降,他の施設との利用契約を締結済みの利用者16名に直接その意向等を確認できるよう協力を求めたところ,保護者会は,これを拒否した。そこで,被告は,Aの理事及び保護者会に対し,上記確認等を依頼した。 キAは,同年3月27日,被告に対し,利用者24名全員の処遇についての最終確認を報告したところ,被告は,Aに対し,他の施設との間で仮契約を締結した利用者を含む7名の利用者に対する処遇確保に努めるよう指導した。 また,被告担当職員は,同日,B学園を訪問し,同学園施設長から現状を聴取するとともに,同学園の適正な運営及び利用者の処遇確保に努めるよう指導した。 クB労組は,同3月31日,県知事に対し,従前から県知事に対して指導を求めてきたが何ら解決されていないとして,理事会に対する指導を求め- 20 -る要望書を提出した。 (以上につ よう指導した。 クB労組は,同3月31日,県知事に対し,従前から県知事に対して指導を求めてきたが何ら解決されていないとして,理事会に対する指導を求め- 20 -る要望書を提出した。 (以上につき,甲7,8,70,弁論の全趣旨)(7)原告ら,E及びFは,同年5月17日,福岡地方裁判所飯塚支部に対し,Aを債務者として,労働契約上の権利を有する地位を仮に定めること等を求める仮処分を申し立てた(仮処分申立事件。甲42,85,弁論の全趣旨)。 (8)B労組は,同年10月27日,県知事に対し,B学園の開園を求める陳情書を提出した(甲9)。 (9)B労組は,同年11月22日,県知事に対し,B学園の事業廃止は,理事会のB労組に対する攻撃であることを訴えるとともに,B学園の開園を求める要望書を提出した(甲10)。 (10)ア福岡地方裁判所飯塚支部は,平成19年1月12日,Aによる解雇は無効であるとして,原告ら,E及びFの申立てを認容する決定をした(仮処分決定)。 イAの理事全員は,同年1月18日,Aの解散に同意した。また,本件評議員会は,同年2月10日,Aの解散を議決した。 (以上につき,甲42,75,76,弁論の全趣旨)(11)アB労組は,同年3月16日,県知事に対し,理事会によるB学園の事業廃止が偽装であることを訴えるとともに,Aに対する指導及びB学園の開園を求め,同月23日までに書面で回答するよう求めた要望書を提出した。 イ原告ら及びEは,同年3月28日,福岡地方裁判所飯塚支部に対し,Aを被告として,労働契約上の権利を有する地位の確認等を求める訴えを提起した(地位確認等請求訴訟)。 (以上につき,甲11,77,弁論の全趣旨)(12)B労組は,同年4月5日,県知事に対し,Aの解散に応じないこと,Aに対して団体交渉に応じるよう指導す める訴えを提起した(地位確認等請求訴訟)。 (以上につき,甲11,77,弁論の全趣旨)(12)B労組は,同年4月5日,県知事に対し,Aの解散に応じないこと,Aに対して団体交渉に応じるよう指導すること及びB学園を開園することを求- 21 -める要望書を提出した(甲12)。 (13)B労組は,同年5月11日,県知事に対し,Aに対する指導の内容の説明を求めるとともに,Aの解散を認可しないこと,B学園を開園すること等を求める要望書を提出した(甲13)。 (14)被告は,同年5月22日,B労組に対し,要旨,以下のとおり回答した(甲14)。 ア平成17年度においては,以下のとおり,B学園の職員の意見及び要望等を聴取した。 (ア)平成17年7月19日B学園において聴取(イ)同年10月27日県庁において聴取(ウ)平成18年1月11日B学園において聴取(エ)同年2月13日同上(オ)同月19日同上(カ)同年3月17日県庁において聴取イAに対し,平成17年度において,実地指導を2回(平成17年7月19日,平成18年1月11日),Aからの聴取を18回,B学園の職員からの事情聴取を6回,保護者との面談を5回,それぞれ行った。 ウ以前から,利用者が減少している旨報告があったことから,Aに対し,利用者本位の運営に向け,職員と協力するよう指導し,利用者確保のための努力を求め,平成18年2月以降も,B学園存続に向けて努力するよう指導したが,Aから,利用者の確保が困難であることを理由として,社会福祉事業廃止届が提出されたため,これを受理した。 (15)ア理事会及び本件評議員会は,同年6月6日,A解散後の残余財産の帰属先を,Gとすることを決定した。 イAは,同年6月7日,県知事に対し,解散する理由を「利用者の減少により,B学園 した。 (15)ア理事会及び本件評議員会は,同年6月6日,A解散後の残余財産の帰属先を,Gとすることを決定した。 イAは,同年6月7日,県知事に対し,解散する理由を「利用者の減少により,B学園の運営が不可能な為,又その補充も考えられない事」として,- 22 -「解散認可申請書」と題する書面を提出した。 ウB労組は,同年6月14日,県知事に対し,被告担当職員による前記回答は,B労組の質問に答えていないことから,再度,同月22日までに回答するよう求める要望書を提出した。 また,B労組は,同日,県知事に対し,同月20日までに日時を調整の上,面会の場を設けるよう申し入れた。 エ県知事は,同年6月19日,Aによる解散手続について,社会福祉法46条並びにAの定款14条及び26条に基づいて適正に行われていること,申請書類等に不備がないこと,解散後における残余財産の帰属先選定手続についても,定款14条及び27条に基づく手続を経ていることを確認したことから,Aの解散を認可する本件処分を行った。 (以上につき,甲1,15ないし17,76,102,弁論の全趣旨)(16)アB労組は,同年7月3日,県知事に対し,同月13日までに,書面で誠実に回答するよう求める申入書を提出した。 イB労組は,同年7月26日,県知事に対し,本件処分を取り消すこと,本件処分の根拠及び理由を明示すること,AがB学園の事業を廃止してから本件処分をするまでの間,Aに対してどのような指導,監督を行ったのかを明示すること等を同年8月2日までに書面で回答するよう求める要望書を提出した。 また,B労組は,同年7月26日,県知事に対し,県知事との面談及び従前の要望に対する誠実な回答を同年8月2日までに書面でするよう求める申入書を提出した。 (以上につき,甲18ないし20,弁論の全趣旨) ,B労組は,同年7月26日,県知事に対し,県知事との面談及び従前の要望に対する誠実な回答を同年8月2日までに書面でするよう求める申入書を提出した。 (以上につき,甲18ないし20,弁論の全趣旨)(17)Aは,原告ら,E及びFとの間の仮処分申立事件における平成18年8月31日付け準備書面において,Aは,その設立から運営に至るまで,所轄庁の指導監督を受けており,その収入は全面的に所轄庁に依存しているため,- 23 -Aが独自の判断で事業廃止又は事業再開をすることができないことは当然である旨主張した。 また,Aは,上記仮処分申立事件に係る保全異議申立抗告事件における平成19年8月6日付け準備書面において,Aが廃園後直ちに解散認可申請をしなかったのは,原告ら,E及びFが解雇に納得せず,仮処分申立事件が係争中であり,かつ,係争中に解散認可申請があっても被告がこれを認めない意向を示していたからである旨主張した。 (以上につき,甲124の14及び15,弁論の全趣旨) 争点(1)(原告らは,本件処分の取消しを求める原告適格を有するか)について(1)行訴法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するところ,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も,上記法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有 のとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も,上記法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとし,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考- 24 -慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項)。 (2)上記見地に立って,原告らが,本件処分の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。 ア社会福祉法は,社会福祉を目的とする他の法律と相まって,福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉の推進を図るとともに,社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り,もって社会福祉の増進に資することを目的とし(社会福祉法1条),福祉サービスの内容が,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならないものとされ(同法3条),そのために,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,地域における社会福祉の推進に努めるべきこと( かつ適切なものでなければならないものとされ(同法3条),そのために,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,地域における社会福祉の推進に努めるべきこと(同法4条),社会福祉を目的とする事業を経営する者は,その提供する多様な福祉サービスについて,利用者の意向を十分に尊重し,創意工夫を行いつつ,これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めること(同法5条),国及び地方公共団体は,社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して,社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう,福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策等必要な措置を講ずべきこと(同法6条)を定めている。 そして,厚生労働大臣は,社会福祉事業が適正に行われることを確保するため,社会福祉事業従事者の就業の動向に関する事項,社会福祉事業を経営する者が行う,社会福祉事業従事者に対する処遇の改善及び資質の向上その他の社会福祉事業従事者の確保に資する措置の内容に関する事項等- 25 -に関する基本的指針を定めるべきものとされ(社会福祉法89条),これを受けて,社会福祉事業を経営する者は,社会福祉事業従事者に対する処遇の改善及び資質の向上その他の社会福祉事業従事者の確保に資する措置の内容に即した措置を講ずるよう努めるべきものとされ(同法90条),また,国及び地方公共団体は,上記措置の内容に即した措置の的確な実施に必要な指導及び助言を行うものとされているが(同法91条),その趣旨は,前記のとおり,福祉サービスの利用者が,心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するためには,福祉サービスの提供者が,その提供する多様な福祉サービスについて,利用者の意向を十分に 心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するためには,福祉サービスの提供者が,その提供する多様な福祉サービスについて,利用者の意向を十分に尊重し,創意工夫を行いつつ,これを総合的に提供することができることが必要不可欠であるところ,福祉人材の不足によって,上記福祉サービスの提供をすることができず,福祉サービス利用者に対して提供する福祉サービスの質が低下することを未然に防ぎ,将来にわたって福祉サービスの質を確保し,もって社会福祉法1条所定の前記目的を実現するため,社会福祉事業従事者の労働条件及び労働環境等,社会福祉事業従事者に対する処遇の改善等についても,その水準を維持するよう努めるべきものとした点にあるものと解される。 社会福祉事業従事者に関するこれらの規定に照らせば,社会福祉法は,福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉の増進を図る手段として,社会福祉事業従事者の処遇の改善及び資質の向上等に資する措置を講ずることもまた,その趣旨及び目的としているものと解される。 イところで,公益社団法人は,総社員の4分の3以上の賛成をもって解散の決議をすることによって解散することができるものとされているが(民法68条2項,69条),その趣旨は,常に総社員全員一致による賛成が必要であるとすると,ごく一部の反対によって解散することができず,なお事業の継続を強いられるという不都合が生じ,他方,通常どおり,総社- 26 -員の過半数の賛成をもって解散することができるとすると,解散に反対をする者の保護に欠けることから,その調整を図ったものと解される。 これに対し,社会福祉法は,社会福祉法人の解散は,その法律関係を一切消滅させるものであることから,やむを得ない場合を除き,できる限り防止 る者の保護に欠けることから,その調整を図ったものと解される。 これに対し,社会福祉法は,社会福祉法人の解散は,その法律関係を一切消滅させるものであることから,やむを得ない場合を除き,できる限り防止することが,社会福祉法人が果たしてきた公益的役割の見地からも,また,当該社会福祉法人と債権債務関係を有する第三者の保護の点からも望ましいという観点から,理事の3分の2以上の同意及び定款でさらに評議員会の議決を要するものと定められている場合には,その議決の外,所轄庁の認可がなければ,その効力を生じないこととしたものと解される(社会福祉法46条1項1号,2項)。そうだとすれば,解散の認可に関する規定は,解散の認可を通じて,理事による解散の同意等が,法令及び定款等に定められた手続に則って適切に行われ,また,理事による賛成が,真意に基づくものであること等を確保し,併せて,解散に反対の理事及び当該社会福祉事業に従事する者の利益等を保護することも趣旨及び目的とするものと解すべきである。 そして,社会福祉法人が,社会福祉法46条1項1号を理由として解散した場合,所轄庁である都道府県知事の認可を受けて初めてその効力が生じ(同法46条2項),その後,原則として,当該社会福祉法人の理事が清算人に就任し(同法55条(平成18年法律第50号による改正前のもの。以下同じ。),民法74条),現務の結了等及びこれに必要な一切の行為を行い(社会福祉法55条,民法78ないし80条),都道府県知事に対し,清算が結了した旨届け出たときに,当該社会福祉法人の法人格が消滅するものとされている(社会福祉法55条,民法73条,83条)。 したがって,社会福祉法に違反した違法な解散の認可がされた場合,当該社会福祉法人と社会福祉事業従事者との間で締結されていた雇用契約は,当事者の一方が消滅 る(社会福祉法55条,民法73条,83条)。 したがって,社会福祉法に違反した違法な解散の認可がされた場合,当該社会福祉法人と社会福祉事業従事者との間で締結されていた雇用契約は,当事者の一方が消滅したことによって当然にその効力を失う結果,当該社- 27 -会福祉事業従事者は,その有する雇用契約上の権利を有する地位を直ちに喪失し,これにより社会生活上の基本的な基盤である労働者たる身分を一方的に剥奪されるという著しい被害を被り,かつその被害は回復不能なものであるところ,このように解散の認可及びこれを基礎とする清算の結了によって著しい不利益を直接的に受けるのは,まさに当該社会福祉法人に就業する社会福祉事業従事者であると考えられるのであるから,このような不利益の内容,性質,程度等に照らせば,この具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。 ウ以上のような解散の認可に関する社会福祉法の規定の趣旨及び目的,これらの規定が保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,社会福祉法は,これらの規定を通じて,社会福祉法人の違法な解散によって著しい不利益を受けるおそれのある当該社会福祉法人において勤務する社会福祉事業従事者に対し,そのような不利益を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 したがって,当該社会福祉法人に勤務する社会福祉事業従事者は,所轄庁による解散の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものと解すべきである。 エこれを本件についてみるに,前記前提事実によれば,原告Cは,平成14年4月1日から,また,原告Dは,平成9年4月1日から,Aとの間で雇用契約を締結し,B学園に勤務していたこ のと解すべきである。 エこれを本件についてみるに,前記前提事実によれば,原告Cは,平成14年4月1日から,また,原告Dは,平成9年4月1日から,Aとの間で雇用契約を締結し,B学園に勤務していたことが認められる。そうだとすれば,原告らは,本件処分によって,著しい不利益を受けるおそれのある者に当たるというべきであるから,本件処分の取消しを求める原告適格を有するものと解するのが相当である。 なお,前記認定事実によれば,原告らは,平成18年3月31日をもって,Aを解雇されており,したがって,本件処分によって著しい不利益を- 28 -受けるおそれはないものとも考えられるが,他方,前記認定事実によれば,原告らは,Aを被告として,上記解雇の無効を主張して,雇用契約上の地位の確認等を求める訴訟を提起したことが認められ,当該訴訟の結果次第では,原告らの雇用契約上の地位が認められる可能性があり,本件処分によって著しい不利益を受けるおそれがあるものと認められるのであって,その限度において,本件処分の取消しを求める原告適格が認められるというべきである。 (3)アこれに対し,被告は,仮に,社会福祉法の規定が,社会福祉法人に雇用された社会福祉事業従事者の労働条件等の遵守,労働者としての権利保護まで保護する趣旨及び目的であれば,都道府県知事等に対し,例えば,労働基準監督官と同程度の司法警察権を付与する等の規定があってしかるべきであるが,そのような規定がないことから,社会福祉法は,社会福祉法人に雇用されている社会福祉事業従事者の個別具体的な労働条件等を直接に改善,是正する趣旨及び目的を含むものではない旨主張する。 しかしながら,社会福祉事業従事者の労働条件等の利益を保護するために,指導及び助言を行う義務のみを定めるか,それとも司法警察権等まで付与するかは,上 正する趣旨及び目的を含むものではない旨主張する。 しかしながら,社会福祉事業従事者の労働条件等の利益を保護するために,指導及び助言を行う義務のみを定めるか,それとも司法警察権等まで付与するかは,上記利益を保護する態様,程度等の相違にすぎず,社会福祉法が,都道府県知事等に対し,司法警察権等を付与していないことをもって,直ちに社会福祉事業従事者の労働条件等の利益を直接に改善,是正する趣旨及び目的を含まないと解することはできないというべきである。 イまた,被告は,社会福祉法46条2項に基づく認可は,同条1項1号による解散決議の効力を補充するにとどまり,仮に,当該法律行為が無効であれば,認可によってそれが有効になることはないことから,本件処分によって,直接原告らの何らかの利益侵害が発生したわけではない旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,社会福祉法46条2項に基づく認可処分- 29 -が行われた場合,これによって必然的に清算手続が開始され,その清算手続が結了したときに,社会福祉法人の法人格が消滅すること,社会福祉法人と社会福祉事業従事者との間で,社会福祉法46条1項1号による解散決議の効力が無効とされるまでの間は,その解散決議及び認可処分を前提として清算手続が進められること等に照らせば,その限度で,本件処分によって,原告らは著しい不利益を受けるおそれがあるものというべきである。 ウさらに,被告は,社会福祉法46条に違反して当該社会福祉法人に係る解散認可処分が行われることによって,社会福祉法人に雇用されている社会福祉事業従事者が受ける解雇,失業等の不利益は,社会福祉法46条に違反しない解散認可処分がされた場合であっても,また,解散認可処分によらずとも,法人であれば常に生じるリスクであるから,社会福祉法46条によって考慮されている利益 業等の不利益は,社会福祉法46条に違反しない解散認可処分がされた場合であっても,また,解散認可処分によらずとも,法人であれば常に生じるリスクであるから,社会福祉法46条によって考慮されている利益とはいえない旨主張する。 しかしながら,仮に,被告が主張するとおり,社会福祉法人に雇用されている社会福祉事業従事者が受ける不利益が,適法な解散認可処分によっても,また,解散認可処分によらなくても生じるものであったとしても,当該社会福祉事業従事者が,違法な解散認可処分によって上記不利益を受けることを甘受すべきいわれはないのであるから,被告の主張は,前記認定を左右するものではないというべきである。 エ以上のとおり,被告の各主張は,いずれも採用することができない。 争点(2)(本件処分の違法性の有無)について(1)社会福祉法46条1項1号,2項に基づく解散認可の際における所轄庁の審査範囲についてア社会福祉法人が,理事の3分の2以上の同意,及び定款でさらに評議員会の議決を要するものと定められている場合にはその議決をもって,解散しようとするときは,所轄庁の認可がなければ,その効力を生じないとこ- 30 -ろ(社会福祉法46条1項1号,2項),社会福祉法人が,社会福祉法46条1項1号を理由として,同条2項にいう所轄庁の認可を受けようとするときは,解散の理由及び残余財産の処分方法を記載した申請書に,理事の3分の2以上の同意及び評議員会の議決を経たことを証明する書類,財産目録及び貸借対照表並びに負債があるときは,その負債を証明する書類を添付して,所轄庁に提出しなければならないものとされている(施行規則5条1項)。 ところで,社会福祉法46条1項は,同項1号に定める解散事由の外,同項3号において,社会福祉法人の目的である事業の成功の不能を解散事由 提出しなければならないものとされている(施行規則5条1項)。 ところで,社会福祉法46条1項は,同項1号に定める解散事由の外,同項3号において,社会福祉法人の目的である事業の成功の不能を解散事由として定めているが,事業の成功が不能か否かは,客観的に認められる必要があることから,同条2項は,同条1項3号を理由とする解散の場合には,所轄庁の認定を要すると定めたものと解される。この場合,仮に,客観的に事業の成功が不能であるとは認められなくても,社会福祉法人が,理事の3分の2以上の同意等,同項1号所定の手続を経た上で,所轄庁の認可を受ければ解散することができる。 以上のとおり,社会福祉法の規定及びその趣旨に照らせば,社会福祉法人が,所轄庁に対し,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散の認可を申請した場合,仮に,解散認可申請書における解散の理由欄に,目的たる事業の成功の不能に該当する事実が記載されていたとしても,所轄庁は,解散認可申請書及びその添付書類の記載によって,社会福祉法46条1項1号所定の手続を経ているか否かを審査すれば足り,上記解散の理由欄に記載された事実の有無を審査する必要はないものと解すべきである。 これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,Aは,解散につき,その理事全員の同意及び本件評議員会の議決を経て,かつ,残余財産の帰属先につき,理事会及び本件評議員会において,Gとする旨決定した上で,所轄庁である県知事に対し,解散認可申請書と題する申請書に,上記各手- 31 -続を証明する書類等,施行規則5条所定の添付書類を添付して提出したことが認められ,これらの事実によれば,Aが行った申請は,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散認可申請であり,被告としては,上記申請書及びその添付書類によって,同号所定の手続を経ているか否か たことが認められ,これらの事実によれば,Aが行った申請は,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散認可申請であり,被告としては,上記申請書及びその添付書類によって,同号所定の手続を経ているか否かを審査すれば足りるものというべきである。 イこれに対し,原告は,その設立等に公権力が介入することが多い公法人は,私法人とは異なる取扱いを受けること,社会福祉事業が憲法25条を受けた高度の公益性を有していることから,社会福祉法56条は,所轄庁の社会福祉法人に対する一般的監督権を定めていること,施行規則5条1項が申請書に解散の理由を記載することを義務付けていることを根拠として,所轄庁は,社会福祉法46条1項1号に基づく解散認可申請であっても,その申請書に記載された解散の理由について,法令違反の有無等を厳格に審査しなければならない旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,社会福祉法46条1項が,社会福祉法人の解散事由として,同項3号に定める目的たる事業の成功の不能の外,同項1号に理事の3分の2以上の同意及び評議員会の議決を定めていることに照らせば,社会福祉法は,客観的に社会福祉法人の事業の成功が不能か否かを問わず,理事の3分の2以上の同意等があれば,社会福祉法人の解散を認める趣旨であると解される。そうだとすると,同項1号所定の手続を経たことが認められ,したがって,同項1号によって解散が認められる場合にまで,これに加え,所轄庁に対し,同項3号所定の事実の有無を審査すべきものとすることは,社会福祉法の上記趣旨に沿わないものといわざるを得ない。 そうだとすると,原告らが主張する点は,いずれも,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散認可申請に対し,所轄庁が,同条2項に基づく認可をするに当たり,同号所定の手続が経られたか否かを厳格に審査すべ- 32 と,原告らが主張する点は,いずれも,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散認可申請に対し,所轄庁が,同条2項に基づく認可をするに当たり,同号所定の手続が経られたか否かを厳格に審査すべ- 32 -きであることの根拠とはなり得ても,解散認可申請書において解散の理由として記載された事実についてまで審査すべきことの根拠にはなり得ないというべきである。 したがって,原告らの主張は,採用できない。 (2)本件処分の違法性の有無についてア次に,前記社会福祉法46条1項1号,2項に基づく解散認可における所轄庁の審査範囲についての判断を前提として,本件処分の違法性の有無について判断するに,前記認定事実によれば,県知事は,Aから提出された解散認可申請書及びその添付書類によって,解散について,Aの理事全員の同意及び本件評議員会の議決が経られていること,並びに,残余財産の処分方法について,理事会及び本件評議員会において,残余財産の帰属先をGとする旨決定されたことを,それぞれ確認し,社会福祉法46条1項1号所定の手続が経られたことを認め,本件処分を行ったことが認められる。 したがって,本件処分は,適法にされたものというべきである。 イこれに対し,原告らは,本件処分の違法性についてるる主張するので,以下,これらの主張について判断する。 (ア)不当労働行為に基づく違法性について原告は,被告は,B労組から,理事会及び保護者会のB労組に対する不当労働行為を是正するよう要請されたにもかかわらず,これを放置し,本件処分を行ったのであるから,本件処分は,上記不当労働行為に加担し,又は容認するものであり,違法である旨主張する。 この点,前記認定事実によれば,被告は,B労組から,理事会による団交拒否,理事会及び保護者会によるB労組に対する攻撃等について,指導監督等 に加担し,又は容認するものであり,違法である旨主張する。 この点,前記認定事実によれば,被告は,B労組から,理事会による団交拒否,理事会及び保護者会によるB労組に対する攻撃等について,指導監督等を要望されていたこと,被告担当職員が,数回にわたり,A,保護者会及びB学園の職員に対して事情聴取を行ったこと,被告担当職- 33 -員が,平成18年2月19日にB学園で行われた話合いに同席し,保護者らのB学園の職員に対する非難の現場を目の当たりにしたこと等が認められ,これらの事実によれば,被告は,少なくとも,原告らが不当労働行為と主張する事実について認識していたものということができる。 しかしながら,他方,前記認定事実によれば,被告は,Aに対し,数回にわたり,B学園の職員と協力すること,保護者とB学園の職員との間で話合いの場を設けること等,B学園存続に向けた努力をするよう指導したこと,平成18年1月11日に,B学園を訪問し,保護者と面談した外,Aに対し,利用者の確保,適切な労使関係の確保並びに利用者及び保護者との信頼関係を改善すること等を指導したこと(この点について,原告らは,上記実地指導の結果を記載した書面(甲71)には,これらの事実が記載されていないと主張するが,上記書面には,「現地において係員が指示した事項も併せ」と記載されており,全く指導を行わなかったわけではないことは明らかである。),被告担当職員は,上記話合いの席において,保護者及びB学園の職員に対し,理事会,保護者会及びB学園の職員との間で,話合いを続けるよう指導したこと等が認められ,これらの事実によれば,被告は,理事会及び保護者会とB労組との間の対立について,これを放置していたものではなく,これを改善するよう指導,監督していたものというべきである。この点,上記話合いの際, ,これらの事実によれば,被告は,理事会及び保護者会とB労組との間の対立について,これを放置していたものではなく,これを改善するよう指導,監督していたものというべきである。この点,上記話合いの際,被告担当職員は,保護者のB学園の職員に対する非難等を制止することはしていないが,これをもって直ちに,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したとまで推認することはできない。 また,被告は,平成17年11月11日,Aに対し,新たな利用者確保に努めること,B学園の職員と協力した体制作りや,保護者会と連携し,その意向を十分に把握した運営に努めること等を指導したが,その- 34 -10日後である同月21日に,Aは,被告に対し,利用者確保に努めたが叶わなかった旨報告し,その後,被告から数回にわたって指導されたにもかかわらず,B学園の事業を廃止したことが認められ,これらの事実によれば,被告のAに対する指導監督が実効性のある結果をもたらすものでなかった可能性はあるが,他方,前記認定事実によれば,被告担当職員は,B学園を数回訪問し,又はAの理事及び保護者を県庁に呼び,指導を行った事実が認められるのであるから,被告による上記指導監督は,結果として功を奏さなかったものであったとしても,これが形式的にされたものにとどまるということはできず,上記各事実をもって,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したとまで推認することはできない。 さらに,前記認定事実によれば,被告は,B学園施設長,H及びA理事長から,仮理事選任を申し立てられた際,Aの運営とB学園の経営に携わってきた実績と経験を有し,A及びB学園の継続性,安定性を確保できる役員,評議員の選出が可能であること,理事の任期が失効したのは,単に手続をミスしたことによ てられた際,Aの運営とB学園の経営に携わってきた実績と経験を有し,A及びB学園の継続性,安定性を確保できる役員,評議員の選出が可能であること,理事の任期が失効したのは,単に手続をミスしたことによるものであること,直近の監査結果においても,特にAの運営及びB学園の経営に支障がある程度に重大な瑕疵は認められないことを理由として,A理事長が申し立てた仮理事候補者8名を仮理事に選任したことが認められるが,被告は上記の相当な理由に基づいて仮理事の選任を決定したというのであるから,上記事実をもって,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したとまで推認することはできない。 加えて,前記認定事実によれば,Aは,原告ら及びEとの間の地位確認等請求訴訟において,事業廃止後直ちに解散認可申請をしなかったのは,係争中に解散認可申請があっても,被告がこれを認めない意向を示していたからである旨主張したことが認められるが,これらの事実によ- 35 -って,被告が,Aの解散に消極的であったことは推認することができるとしても,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したとまで推認することはできない。 また,前記のとおり,被告は,社会福祉法46条1項1号を理由とする解散認可申請に対し,同条2項に基づく解散認可処分を行うに当たり,同条1項1号所定の手続が経られたか否かを審査すれば足りること,同法46条及び施行規則5条は,所轄庁が社会福祉法人の解散について認可処分をする場合の要件を定め,同要件を充足しながら認可しないことを許容する規定はおかれていないことから,所轄庁は,解散認可申請書及びその添付書類によって社会福祉法46条1項1号所定の手続を経たことを認めたときは,解散認可処分を行わなければならないものと解すべきことに照 規定はおかれていないことから,所轄庁は,解散認可申請書及びその添付書類によって社会福祉法46条1項1号所定の手続を経たことを認めたときは,解散認可処分を行わなければならないものと解すべきことに照らせば,被告は,理事会及び保護者会による不当労働行為の事実を認識していたとしても,これを理由に,本件処分を行わないことはできないのであるから,被告に単なる認識を超えた不当な動機,目的が認められるような特段の事情がない限り,被告が,上記不当労働行為の事実を認識した上で本件処分を行ったとしても,これをもって直ちに,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したものと推認することはできない。 その他,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認する意思をもって本件処分を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの主張は,採用できない。 (イ)裁量権の逸脱又は濫用の違法性についてa原告らの主張原告らは,次のとおり,被告には,裁量権の逸脱又は濫用がある旨主張する。 - 36 -(a)被告には,Aによる社会福祉法46条1項1号に基づく解散認可申請について認可処分をするに当たり,同号所定の事実のみならず,申請書において解散の理由として記載された事実についても審査義務があるところ,利用者24名のうち少なくとも10名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示は,真意に基づいてされたものではないのに,被告は,その事実について何ら実体的な審査等をすることなく,これを真実と認めて本件処分を行った違法がある。 (b)仮に,利用者24名のうち14名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示が真意であったとしても,これによってB学園を閉鎖する必要性までは認められないにもかかわらず,被告は,B学園 。 (b)仮に,利用者24名のうち14名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示が真意であったとしても,これによってB学園を閉鎖する必要性までは認められないにもかかわらず,被告は,B学園を閉鎖する必要性について何ら実体的調査をせず,その必要性について評価を誤って本件処分を行った違法がある。 (c)被告は,原告らを含むB労組から,Aによる団交拒否等の不当労働行為の事実及びその是正を要望されたこと,Aの理事に対する聴取及び保護者との面談等によって,保護者による利用契約を締結しない旨の申出書及びAによる解散認可申請が,B労組に対する攻撃を目的としてされたものであることを知っていたにもかかわらず,これについて何ら調査,指導等をせず,これに加担する違法な動機,目的をもって本件処分を行った違法がある。 (d)被告は,本件処分を行うに当たり,B学園の職員が有する憲法28条等の諸権利を考慮しなければならないにもかかわらず,これを考慮せず,かえって,理事会及び保護者会による団交拒否等の不当労働行為を容認して,本件処分を行ったものであり,社会観念上著しく妥当性を欠く違法な処分である。 b原告らの各主張に対する判断- 37 -以上における原告らの各主張について判断するに,被告は,本件処分を行うに当たり,社会福祉法46条1項1号所定の手続を経たか否かを審査,判断すれば足り,その他の事実についてはこれを審査,判断する必要がないと解すべきことは,前記のとおりであるから,被告が,利用者23名の保護者による利用契約を締結しない旨の意思表示が真意に基づくか否か,利用者24名のうち14名の保護者が利用契約を継続しなかった場合に,これによってB学園を閉鎖する必要があるか否か等について何ら実体的な審査等をすることなく,本件処分を行ったとしても,これをも 否か,利用者24名のうち14名の保護者が利用契約を継続しなかった場合に,これによってB学園を閉鎖する必要があるか否か等について何ら実体的な審査等をすることなく,本件処分を行ったとしても,これをもって,事実誤認の違法があるとか,事実評価を誤った違法があるということはできない。 また,前記のとおり,前記認定事実によっても,被告に,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担し,又は容認したものと推認することができないのであるから,被告が,理事会及び保護者会による不当労働行為に加担する違法な動機,目的をもって本件処分を行った違法があるとか,これを容認して本件処分を行った違法があるということはできない。 そして,前記のとおり,被告は,Aから提出された解散認可申請書及びその添付書類によって,社会福祉法46条1項1号及び施行規則5条所定の要件に該当する事実が認められるものと判断し,本件処分を行ったことが認められるのであるから,被告が,本件処分を行うに当たり,原告らが主張する,裁量権を逸脱又は濫用したことを基礎付ける事実は認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの上記各主張は,いずれも採用できない。 (3)以上によれば,原告らの各主張は,いずれも採用することができず,したがって,原告らの請求は,理由がない。 結論 - 38 -以上のとおり,原告らの被告に対する請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部裁判長裁判官木村元昭裁判官藤田正人裁判官大川恭平 判官大川恭平

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