令和5(ワ)4333 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月29日 東京地方裁判所
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令和5年11月29日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和5年(ワ)第4333号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和5年9月21日判決 原 告富源株式会社同訴訟代理人弁護士上野貴史 被告株式会社ラザフォードインターナショナル同訴訟代理人弁護士阿 野 光 男 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、5500万円及びこれに対する令和2年8月7日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、原告がパッケージに入ったマスク(以下、パッケージとマスクが一体となった商品として「原告商品」という。)を製造、販売していたところ、被告が製造、販売したパッケージに入ったマスク(以下、パッケージとマスクが一体となった商品として「被告商品」という。)が原告商品を模倣したものであり、被告による被告商品の販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為、不法行為 に当たるとして、同法4条又は民法709条に基づき、5500万円及び被告が 同マスクの販売を開始した日である令和2年8月7日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による金員の支払を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア原告は、日用雑貨等の輸出入業、卸売業、小売業を営む株式会社である。 (争いなし)イ被告は、日用品雑貨品等の卸売、小売及び輸入を営む株式会社で の全趣旨によって容易に認められる事実)ア原告は、日用雑貨等の輸出入業、卸売業、小売業を営む株式会社である。 (争いなし)イ被告は、日用品雑貨品等の卸売、小売及び輸入を営む株式会社である。(争いなし)原告は、令和2年4月2日に委託先から原告商品のパッケージのデザインの納品を受け、同月30日までに原告商品の予約販売を開始し、その旨を同日イ ンターネット上でプレスリリースした。原告商品のパッケージは、別紙マスク比較写真の上段「富源マスク」と付されたもののとおりである。(甲1、3、13)原告は、令和2年4月20日、マルチワークスプロジェクト株式会社(以下「本件取引会社」という。)との間で、原告から本件取引会社に対し原告商品 (10万箱)を代金1億4000万円で売り渡す旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。(甲4)被告は、令和2年8月7日から、被告商品の販売を開始した。被告商品のパッケージは別紙マスク比較写真の下段「ラザフォードマスク」と付されたもののとおりである。(甲1、2) 本件取引会社は、令和2年10月16日、原告商品と類似する被告商品が安価に販売されていることを挙げて本件売買契約を解除する旨の通知をした。 (甲6) 3 争点に対する当事者の主張被告商品の形態は原告商品の形態と実質的に同一か(争点1) (原告の主張) 原告商品と被告商品のパッケージは、いずれも、①パッケージの背景の色が青色、②文字の色が白字であり、③デザイン(文字と絵の配置)も次のとおり同一である。 アマスク(絵)の配置、サイズ(ふつうサイズ)の表示位置、文字の配置、数字(カット率、枚数等)の配置が全て同じである。 イマスクの特徴に関する表現が同一(「肌に優し とおり同一である。 アマスク(絵)の配置、サイズ(ふつうサイズ)の表示位置、文字の配置、数字(カット率、枚数等)の配置が全て同じである。 イマスクの特徴に関する表現が同一(「肌に優しい素材」、「99%カットフィルターでブロック」等)かつ文字の配置も同じである。 ウマスクの効果が生じる対象について「花粉」、「ウィルス飛沫」、「PM2. 5」、「ほこり」に関する記載も、黄色い四角で囲まれた背景に青字で記載されており、配置及び配列も同一である。 エ商品の情報、使用上の注意等が記載されている面は、販売元の記載以外は、同一である。 (被告の主張)ア原告商品及び被告商品のパッケージのデザインは不正競争防止法2条4項所定の商品の形態には当たらない。 イありふれた商品形態は、不正競争防止法2条4項で保護される商品形態に含まれない。原告商品のパッケージ及び被告商品のパッケージに印刷されている文字、文言(同項の「模様」に当たる)やその他のデザインはありふれているから、保護に値する形態には当たらない。 ウ被告商品のパッケージには、被告のマークとブランド名「PanaSu ru」が明示されており、商品全体から見て重要な意味を有する部分に相違点があるから、実質的に同一とはいえない。 被告商品は原告商品に依拠したものか(争点2)(原告の主張)被告商品は原告商品に依拠して製造されたものである。このことは、被告商 品の発売のタイミング、両製品のパッケージが酷似していること、原告商品の パッケージの誤植まで再現されていること、被告商品のパッケージの一つの側面に「らくらくマスク」という原告商品の商品名が記載されている(反対側の側面には同部分に被告商品の商品名である「不織布マスク」の記載が ージの誤植まで再現されていること、被告商品のパッケージの一つの側面に「らくらくマスク」という原告商品の商品名が記載されている(反対側の側面には同部分に被告商品の商品名である「不織布マスク」の記載がある。)ことから明らかである。被告がパッケージの製造を他社に委託していたとしてもその委託先は被告の履行補助者に当たる。 (被告の主張)被告商品は「他人の商品の形態に依拠」しているわけではない。被告は、パッケージの生産を他の会社に委託し、その際、被告のマークとブランド名を入れることを指示したのみである。 故意、過失(争点3) (原告の主張)被告商品は、原告商品を模倣することによって製造され、これを販売した被告には故意又は過失があることは明らかである。仮に被告商品が他の会社に委託して製造されたもので、被告が模倣を直接指示していなかったとしても、同社は被告の履行補助者に当たるから、被告は責任を免れない。 (被告の主張)被告は、他の会社に製造を依頼する際に、被告のマークとブランド名を入れることを指示したにすぎないから、模倣について故意も過失もない。製造会社は被告から独立した地位にあり、また、債務の履行のために使用したものではないから、履行補助者にも当たらない。 損害及び因果関係(争点4)(原告の主張)本件売買契約の売買代金は1億4000万円であり、これに係る輸入金額、輸入税金、倉庫代/運搬費、マスクの広告費を控除した原告の利益は、1億1752万6110円が予定されていた。被告が被告商品を販売したことを理由 に本件売買契約は解除されたから、同額が被告の行為と因果関係のある原告の 損害である。原告は同額の一部として5000万円を請求するとともに、弁護士費用相当損害金500万円 ことを理由 に本件売買契約は解除されたから、同額が被告の行為と因果関係のある原告の 損害である。原告は同額の一部として5000万円を請求するとともに、弁護士費用相当損害金500万円を請求する。 (被告の主張)被告商品の販売と原告が主張する損害には相当因果関係がない。このような損害は通常生ずべき損害には当たらないし、被告に予見もできない。 第3 当裁判所の判断 1 被告商品の形態は原告商品の形態と実質的に同一か(争点1)について甲1によれば、原告商品と被告商品の形態等は次のとおりである。 ア原告商品及び被告商品は、50枚の不織布製の使い捨てマスクが青色の紙製の直方体のパッケージに入ったものである。原告商品及び被告商品のパッ ケージの上面(以下「上面」という。)は、いずれも縦長の長方形に構成されており、上部に商品名、中部にマスクを斜め方向から見た図(商品の説明をするポップアップが二つ付されている。)、下部に商品の特徴が掲載されている。パッケージの側面のうち、略正方形の面(以下「略正方形面」という。)には、いずれも、商品名とその特徴が掲載されている。いずれのパッケージ も、パッケージの側面のうち、長方形の面は、横長に構成されており、そのうち一方(以下「長方形面1」)については左半分に前記略正方形面とほぼ同様の記載が、右半分にマスクを斜め方向から見た図が掲載されており、他方の面(以下「長方形面2」という。)には、左側に商品の特徴及び基本情報が、右側に使用上の注意事項、保管上の注意事項及び販売元が記載されて いる。 イ原告商品と被告商品のパッケージの上面のデザインは、中部のマスクの色合いが被告商品の方が若干青みかかっており、被告商品のみに小さく「※イラストはイメージです」という文言が付 て いる。 イ原告商品と被告商品のパッケージの上面のデザインは、中部のマスクの色合いが被告商品の方が若干青みかかっており、被告商品のみに小さく「※イラストはイメージです」という文言が付されている点、下部の商品の特徴を列挙している4つのブロックを貫く青線の太さ及び濃さが多少異なる点を 除いて、基本的に同じデザイン(マスクの形状についても差異が認められな い。)になっている。上面の上部についても、上から順に、各商品のロゴ、商品の特徴、「肌にやさしい素材」、「99%カットフィルターでブロック」、商品の名称となっている点は共通しており、ロゴ、商品の特徴(原告商品は「-耳にやさしい-」、被告商品は「個包装携帯に便利」との記載)、商品名(原告商品は「らくらくマスク」、被告商品は「不織布マスク」)に異なる 部分があるが、文字のデザインは基本的に同じである。 ウ略正方形面については、原告商品、被告商品のいずれも、上から、前記イ記載の各上部の記載(ただし、片面について被告商品は商品名の欄に「らくらくマスク」と記載されている。)があり、基本的に上面の下部分と同じデザインとなっている。 エ長方形面1については、原告商品、被告商品のいずれも、左側が略正方形面と基本的に同じデザインで、右側は上面の中部分と基本的に同じデザインになっている。 オ長方形面2については、原告商品、被告商品のいずれも、左上の商品特徴を記載した4つのブロックを貫く線が、原告商品が白抜きで被告商品が青抜 きである点及び販売元に関する記載と商品バーコードの有無以外の点は、記載内容が同一である(商品は、原告商品と被告商品のいずれも「らくらくマスク」とされている。)。 不正競争防止法2条4項所定の商品の形態とは、「需要者が通常の用法に従 バーコードの有無以外の点は、記載内容が同一である(商品は、原告商品と被告商品のいずれも「らくらくマスク」とされている。)。 不正競争防止法2条4項所定の商品の形態とは、「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の 形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感」である。 原告商品及び被告商品につき、パッケージの中の不織布製の多数枚(50枚)のマスクは、その性状からもそれぞれのマスク単体ではなくパッケージに入った状態で流通し、販売されて消費者がこれを購入することが予定されており、原告商品及び被告商品のパッケージ全体は、中に入ったマスクと一体となって 「商品」を構成し、そのパッケージのデザインは、商品の「模様、色彩」に当 たるとするのが相当と解する。 前記で認定したとおり、原告商品と被告商品は、そのパッケージの基本的なデザインが同じであるほか、マスクの写真に付されたポップアップのデザイン及び説明文言、商品特徴の説明文言及び配置、商品の特徴を列挙している4つのブロックを青色の線が貫くデザイン等の細かい点まで一致している。原告 商品と被告商品のパッケージは、商品名やロゴ、販売元に関する記載等について一部異なる点があるものの、それらの記載等が商品全体において占める部分は非常に小さく、全体的な印象に与える影響は限定的であり、原告商品と被告商品の形態は実質的に同一であるというべきである。 被告は、原告商品のパッケージのデザインがありふれたものである旨主張す る。 原告商品のパッケージにおける個々の模様のデザイン、説明文言等は、そのそれぞれに着目すると同種商品に同じデザイン、文言等が記載されているものもある(乙4~9)。しかし、原告商品のパッケージは多 。 原告商品のパッケージにおける個々の模様のデザイン、説明文言等は、そのそれぞれに着目すると同種商品に同じデザイン、文言等が記載されているものもある(乙4~9)。しかし、原告商品のパッケージは多数の具体的な模様、表示等からなり、それらを組み合わせたデザインがありふれたものであることを 認めるに足りる証拠はなく、原告商品のパッケージのデザインが全体としてありふれたデザインであるとは認めるには足りない。 2 被告商品は原告商品に依拠したものか(争点2)について被告商品は原告商品の後に発売されたものであり(前提事実、)、前記1で認定したとおり、原告商品と被告商品のパッケージは細部まで一致している。ま た、原告商品のマスクの画像に付されたポップアップの誤記(「側は肌にやさしい滑らか素材」との記載について、原告は、「内側は肌にやさしい滑らか素材」とすべきであったところ誤植したと述べる。)が被告商品にもそのままあり(被告商品の記載も「側は肌にやさしい滑らか素材」との記載である。)、被告商品では、商品名として、上面及び長方形面1、略正方形面の一方では「不織布マスク」と 記載されているものの、略正方形面の他方及び長方形面2では「らくらくマスク」 (原告商品の商品名)と記載されていて、これらは、いずれも原告商品の記載をそのまま利用してしまい、変更することを失念したものと推認できることを考慮すると、被告商品は原告商品に依拠して製造されたものと認められる。 3 故意、過失(争点3)について弁論の全趣旨によれば、被告は、別会社にデザインまで含めた商品の内容につ いて指示を出し、被告商品の製造を委託したことが認められる。前記2で認定したとおり、被告商品は原告商品に依拠してデザインされ、製造されたものである。 原告商品 にデザインまで含めた商品の内容につ いて指示を出し、被告商品の製造を委託したことが認められる。前記2で認定したとおり、被告商品は原告商品に依拠してデザインされ、製造されたものである。 原告商品のデザインに依拠したパッケージデザインを具体的に発案した者は必ずしも明らかではないが、被告商品の内容について最終的な決定権を有するのは被告であったといえ、原告商品に依拠してこれと実質的に同一の被告商品を販売 したことについて、被告には少なくとも過失があったというべきである。 4 損害及び因果関係(争点4)について証拠によれば次の事実が認められる。 ア本件売買契約に係る売買契約書(甲4)には次の記載がある。 第1条(目的) 甲(判決注:原告)は乙(判決注:本件取引会社)に対し、以下の条項にしたがい、本件商品を売り渡し、乙はこれを買い受ける。 物品の表示 「らくらくマスク」JANコード (略)「DISPOSABLEFACEMASK 50PCS/BOX」 数量 2500ケース(100,000箱-50枚/箱)総量5,000,000枚数単価 28円/枚 (税込み)第2条(売買代金)第1条の数量に基づいて、売買代金総合計を計算した。売買代金は総額1 40,000,000円(税込み)、指定納品日は2020年10月22日 と定め、甲乙は、双方はこれに合意をした。(略)第8条(期限の利益の喪失と契約解除)甲または乙が次の各号の1つでも該当したときは、該当した当事者は当然に期限の利益を失い、通告、催告なくして相手側との本契約を直ちに解除できるものとする。 本契約上の義務に重大な違反があったとき資産につき、仮差押、仮処分、差押、保全差押、滞納処分又はこれに 限の利益を失い、通告、催告なくして相手側との本契約を直ちに解除できるものとする。 本契約上の義務に重大な違反があったとき資産につき、仮差押、仮処分、差押、保全差押、滞納処分又はこれに類する法的手続が開始されたとき破産、民事再生、会社更生、特別清算の各手続開始の申立があったとき銀行取引停止処分を受けたとき 事業を廃止し又は解散の決議を行ったとき余りにも大きな粗悪品、ダメージ品が出た場合第7条以外で極端な納期遅れ、または、何らかの不履行は(判決注:ママ)生じた場合業務、サービスの不履行 商品の不具合や品質保証違反相当にあたる場合不適合責任(取扱い商品の種類、類似、品質、または、数量に関して契約内容との不具合、不適合が発見された場合上記のほか、信用状態の悪化が認められるときイ本件取引会社は、令和2年10月16日付けで、原告に対し本件売買契約 を解除する旨記載された契約解除通知書(以下「本件通知書」という。)を送付した。本件通知書には、「貴社と締結いたしました商品売買契約につきまして、下記の理由をもちまして、本書面をもって解除いたします。」と記載され、下記の記載があった。当時、被告商品を999円/箱で販売している小売店が存在した。原告は、本件通知書の内容を了承して、本件売買契約 は履行されなかった。(甲5、6、15) 記「1.雑貨店で同じ包装の商品が安く売られていることが判明しました。 2.雑貨店の定価(税別999円/箱)は貴社からご提示いただいた価格(税込1400円/箱)よりも低いことが判明しました。 3.貴社は当該商品売買契約(判決注:本件売買契約)の第8条に違反し ました。」 9円/箱)は貴社からご提示いただいた価格(税込1400円/箱)よりも低いことが判明しました。 3.貴社は当該商品売買契約(判決注:本件売買契約)の第8条に違反し ました。」以上原告は、被告商品が販売されたことが原因で本件売買契約が解除されたので、本件売買契約に基づく履行利益(売買代金から経費を控除した額)が損害に当たると主張する。 前記で認定したとおり、本件取引会社は、被告商品が、本件売買契約における単価(1400円/箱)よりも安価に販売されていることを指摘して、本件通知書を送付したことが認められる。 しかし、本件通知書には、本件売買契約8条に違反したとの記載はあるものの、同条のいずれの項に違反したとも特定されていない。この点について、原 告は、本件売買契約は8条で規定されている「信用状態の悪化」があったため解除されたと主張する。しかし、一般的に取引契約における解除原因として規定される「信用状態の悪化」は、当事者の支払能力等の経済的信用を問題とする趣旨で用いられるところ、原告にそのような事情があったことはうかがえず、また、被告商品の販売がこれに関連するとも認められない。仮に「信用状 態の悪化」を、当事者が信頼関係を損なう背信的行為をしたこと(道義的信用が悪化したこと)を意味するとしても、その趣旨からして少なくとも原告に帰責性のある事情があることが前提とされるところ、被告が原告商品の形態を模倣して販売したことは、原告に何の帰責性もない。その他、原告において「信用状態の悪化」が認められる事情が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、 本件売買契約8条のその余の条項に当たる事情があったことを認めるに足り る証拠もない。原告は、 告において「信用状態の悪化」が認められる事情が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、 本件売買契約8条のその余の条項に当たる事情があったことを認めるに足り る証拠もない。原告は、原告代表者の配偶者の陳述書(甲15)を提出し、そこには、令和2年10月、本件取引会社の販売先が原告商品と同じパッケージのマスクを見かけ、本件取引会社は、原告は本件取引会社に1400円/箱の卸価格で提案したのに、店で999円で売られていることがありえないことだと怒っていて、これは本件売買契約8条に違反するので、キャンセルするなど と電話連絡をして、その後本件通知書が送付され、原告は、原告商品と被告商品の販売価格に乖離があったためやむを得ずキャンセルを了承することとしたとの記載がある。この陳述書によっても、本件取引会社は、本件取引会社への販売価格よりも低廉な価格で商品が販売されていたことを問題視していることはうかがえるが、それにより、結局本件取引会社が何を問題としていたの かは必ずしも明らかではなく、原告が原告商品を本件取引会社以外の者に対しては本件取引会社に対する価格よりも廉価で販売していたと誤解した可能性もうかがわれないではない。原告が本件取引会社以外の者に対して廉価販売したと誤解したことについては誤解を解くべき話といえる。なお、被告商品の販売が本件取引会社による原告商品の販売数量に影響を与えることはあり得る ものの、そもそも本件売買契約では当該商品について本件取引会社に対してのみ販売することが定められてはおらず(甲4)、他社が同種の商品を販売したこと自体を本件取引会社は問題視できるものではない。 これらによれば、本件売買契約については、契約において定められた解除理由は存在しなかったというべきであり、これが履行されなかったの 商品を販売したこと自体を本件取引会社は問題視できるものではない。 これらによれば、本件売買契約については、契約において定められた解除理由は存在しなかったというべきであり、これが履行されなかったのは、原告と 本件取引会社との間の合意によるものといえる。 被告商品を販売することは不正競争行為であり、被告は、これにより原告に生じたといえる損害を賠償する義務がある。もっとも、侵害者は、侵害行為が他社間の契約の存続に影響を与えることを当然に予見できるものではなく、また、他社間の契約の内容は当該他者間で自由に定められるもので侵害者がその 内容を通常は知ることはできず、侵害者にその契約の履行利益を前提とする損 害を負担させることは当事者間の衡平に反する場合があるといえる。少なくとも本件のように、原告と第三者との間に解除権の発生原因がないが、両者間の合意によってこれを履行せず、また、本件売買契約における販売価格も当時の相場に比べて高額といえるような場合(甲11は、マスクの平均価格は、令和2年4月24日には1枚当たり78円だったが、その後急速に値下がりし、同 年8月13日には1枚当たり12円だったとする。被告の侵害行為の時点(前記第2の2)では、本件売買契約のマスクの単価は上記平均価格に比べて相当に高かった。原告は本件売買契約によって相当多額の利益を得られたはずであると主張している(前記第2の3))、本件で原告が主張する損害は、通常生ずべき損害には当たらず、また、被告にはその発生が予見できなかったもの ということが相当である。 以上の事情を考慮すると、本件において原告が主張する損害は、被告商品の販売との間の因果関係を欠くというべきであり、被告がそれを賠償すべきであるとは認められない。なお、原告は、本件におい である。 以上の事情を考慮すると、本件において原告が主張する損害は、被告商品の販売との間の因果関係を欠くというべきであり、被告がそれを賠償すべきであるとは認められない。なお、原告は、本件において不正競争防止法5条に基づく主張はしない旨述べた(令和5年9月12日付け原告第3準備書面)。 第4 結論よって、原告が主張する損害と被告による被告商品の販売には因果関係があるとは認められないため、不正競争防止法4条及び不法行為に基づくいずれの原告の請求にも理由がないから、これを棄却するものとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官杉田時基 裁判官仲田憲史

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