主文 1 被告西日本旅客鉄道株式会社及び被告Aは,原告Bに対し,連帯して金21万1851円及びこれに対する平成14年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告西日本旅客鉄道株式会社及び被告Aは,原告ジェーアール西日本労働組合に対し,連帯して金12万円及びこれに対する平成14年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告西日本旅客鉄道株式会社及び被告Aは,原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部に対し,連帯して金12万円及びこれに対する平成14年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの上記被告らに対するその余の請求及び被告Cに対する請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,原告らと被告西日本旅客鉄道株式会社及び被告Aとの間においては,原告らに生じた費用の30分の1を同被告らの負担とし,その余は各自の負担とし,原告らと被告Cとの間においては,全部原告らの負担とする。 6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告西日本旅客鉄道株式会社が,原告Bに対してなした平成14年2月21日付け懲戒処分(減給2分の1)は,無効であることを確認する。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して金569万8204円及びこれに対する平成14年2月21日(懲戒処分の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合及び原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部に対し,連帯して,それぞれ金550万円及びこれらに対する平成14年2月21日(懲戒処分の日)から各支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告西日本旅客鉄道株式会社(以下「被告会 ,それぞれ金550万円及びこれらに対する平成14年2月21日(懲戒処分の日)から各支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告西日本旅客鉄道株式会社(以下「被告会社」という。)広島支社可部鉄道部運輸科長被告Cが,原告B運転の列車に添乗して同人の落ち度を指摘し同人が反抗したことを理由として,被告会社が同原告を日勤教育や懲戒処分に付し,同鉄道部長被告Aが原告Bに対し,原告ジェーアール西日本労働組合(以下「原告組合」という。略称は「西労」)や原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部(以下「原告組合広島地本」という。)から脱退するよう働きかけたことは,原告Bへの不利益取扱いの又原告組合及び原告組合広島地本に対する支配介入の不当労働行為に当たるなどと主張して,原告らが,被告らに対し,懲戒処分の無効確認,不法行為(共同不法行為又は使用者責任)に基づく損害賠償(含遅延損害金)を請求している事案である。 1 争いのない事実及び証拠上容易に認定できる事実(後者は各項末尾掲記の各証拠により認定)(1) 当事者ア原告Bは,昭和52年4月,日本国有鉄道(以下「旧国鉄」という。)に採用され,昭和62年4月,旧国鉄の分割民営化により被告会社の従業員となった者であり,運転士として可部線の電動車(EC)及び気動車(ディーゼル車,DC)の運転等の業務に従事している。 原告組合は,平成2年5月23日,西日本旅客鉄道労働組合(以下「西労組」という。)に所属していた組合員らが脱退することによって結成された。 原告組合広島地本は原告組合の中央本部の下にある8地方本部の一つであって,原告Bは原告組合広島地本の広島支部可部鉄道部分会に所属している組合員である。 イ被告会社は,昭和62年4月1日,旧国鉄の分割民営化に伴い,西日本地域にお 本部の下にある8地方本部の一つであって,原告Bは原告組合広島地本の広島支部可部鉄道部分会に所属している組合員である。 イ被告会社は,昭和62年4月1日,旧国鉄の分割民営化に伴い,西日本地域において旅客鉄道運輸を業とする株式会社として発足した。 被告Aは被告会社広島支社可部鉄道部の部長職にある非組合員であり,被告Cは可部鉄道部の運輸科長職にある西労組の組合員である。 (2) 原告組合の結成ア旧国鉄には,動力車労働組合,鉄道労働組合,国鉄労働組合などの労働組合が存在していたが,旧国鉄の分割民営化に伴い,国鉄改革労働組合協議会の結成を経て,全日本鉄道労働組合総連合会(略称は鉄道労連。後にJR総連と改称)が結成された。 西日本地域においても,分割民営化に先立ち,西日本国鉄改革労働組合協議会の結成を経て,昭和62年3月14日,西日本旅客鉄道労働組合(略称は西鉄労。後に西労組と改称)が結成された。 イ平成2年6月19日,JR総連の第5回定期大会においてスト権論議が提起されたところ,西労組のD委員長(当時)は平成3年2月19日に西労組第9回中央委員会において,「JR総連との断絶」などを提起した。そこで,西労組の組合員で,JR総連を支持する組合員は,平成3年5月23日,西労組を脱退し,原告組合を結成した。他方,西労組はJR総連を脱退し,その後,鉄道産業労働組合と組織統一をした。 (3) 被告Cの添乗等ア被告Cは,平成13年12月25日,原告Bが運転する列車(可部駅午前9時43分発広島行き)の運転席に大町駅から広島駅まで添乗したが,原告Bが白手袋をしていなかったこと,指差喚呼を右手ではなく左手で行ったこと,ブレーキ弁ハンドルを順手で操作したことから,原告Bに対し,・白手袋をすること,②指差喚呼は右手ですること,③ブレーキ弁ハンドルは逆手で持 していなかったこと,指差喚呼を右手ではなく左手で行ったこと,ブレーキ弁ハンドルを順手で操作したことから,原告Bに対し,・白手袋をすること,②指差喚呼は右手ですること,③ブレーキ弁ハンドルは逆手で持つことの3点につき注意した。 原告Bは,被告Cからの注意に対し,③ブレーキ弁ハンドルの持ち方について被告Cの指導に従った。なお,①白手袋の着用,②右手での指差喚呼の注意に対し,原告Bがどのように対応したかについては争いがある。 イ原告Bは被告Cに対して列車が広島駅に到着した後,「添乗報告をしましょうか。」と話したところ,被告Cは原告Bに対して「決められたことはきちんとやってくれ。」と述べた。 ウ被告Cは,同日午前11時ころ,乗務が終了した原告Bを応接室に呼び,再度上記3点について注意をし,さらに,原告Bに上司の指導に反発したとの非違行為が認められたとして,翌日から日勤勤務になることを告げた。 日勤とは,被告会社における勤務種別の1つであり,勤務種別には,日勤の他に,変形(4形ないし15形),乗務員(指定した乗務行路表によるもの)がある(就業規則54条別表2)。 (乙13)(4) 原告Bの日勤教育及び同人に対する処分等ア被告Aは,原告Bに対し,平成13年12月26日から,被告Cの報告に基づき乗務停止・日勤勤務に指定して教育を行う(以下「本件日勤教育」という。)ことにし,その間,原告Bはレポート作成やテスト受験等を行った。本件日勤教育は,平成14年3月4日までの69日間に及んだ。 イ被告会社は,原告Bに対し,平成14年2月21日,「平均賃金1/2減給する」という懲戒処分とした(以下「本件懲戒処分」という。)。 ウ原告組合広島地本は,被告会社広島支社に対し,平成14年3月14日,本件懲戒処分に対する申入れを行った。これに対し,被告会社は, 減給する」という懲戒処分とした(以下「本件懲戒処分」という。)。 ウ原告組合広島地本は,被告会社広島支社に対し,平成14年3月14日,本件懲戒処分に対する申入れを行った。これに対し,被告会社は,本件懲戒処分は原告Bが上司の注意指導に従わずに反抗的な言動をとったこと,それにより旅客に不安を与え信頼を損ねたことを理由になされたものであるから妥当であるとの基本見解を示した。 2 主要な争点(1) 非違行為の有無(2) 本件日勤教育の適法性(3) 本件懲戒処分の適法性(4) 原告組合及び原告組合広島地本に対する不法行為の成否(5) 損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 非違行為の有無(原告らの主張)ア原告Bは,平成13年12月25日,白手袋を着用せずに列車を運転し,また,列車停車時の「滅」と「出発赤」の指差喚呼を左手で行ったところ,同列車に添乗していた被告Cは,原告Bに対して,白手袋を着用するように叱りとばすように述べたり,右手で指差喚呼するようになっているだろうと述べたりした。原告Bが白手袋を着用しなかったり,左手で指差喚呼したりしたのは,後記イ及びウのとおり合理的な理由に基づいており,被告Cの指導には根拠がない。被告Cは運転作業中の原告Bの背後から執拗に感情的な言葉で添乗指導を行ったのであって,決して安全な列車の運行に資するものではなく,運転士の集中を損ねるものであった。 したがって,原告Bがその場で直ちに被告Cの指導に従わなかったことをもって非違行為とすることはできない。また,原告Bは,被告Cの指導に対して,大声で反発した事実もないから,これをもって非違行為とすることもできない。 なお,被告らは,原告Bの行為について旅客から苦情の電話があったと主張するが,そのような電話はなかった。それは,広島駅ではなくわざわざ可部駅に電 ないから,これをもって非違行為とすることもできない。 なお,被告らは,原告Bの行為について旅客から苦情の電話があったと主張するが,そのような電話はなかった。それは,広島駅ではなくわざわざ可部駅に電話があったという被告らの主張は不自然であるし,被告Aが原告Bに対して苦情電話について初めて言及したのは平成13年12月29日で,電話があったとされる日から時間が経ち過ぎているからである。 イ白手袋を着用しないことの合理性(ア) 原告Bはこれまで運転中に手袋を着用するよう指摘・注意を受けたことはなかった。 (イ) 白手袋を着用すべきとされる根拠もない。被告らが指摘する被告会社厚生業務規程35条はコート・カッパ等の衣類を列車運転中に着用すべきことを意味するのであって,白手袋着用の根拠にはならない。掲示板に掲示されていた「『NO1運動』取り組みについて」と題する書面(乙1。以下「本件NO1掲示書面」という。)も,他の書面が複数掲示されていてその掲示を詳細に確認することは困難であるなど,その周知が不十分かつ不徹底なものであったし,その内容もNO1運動の中の努力目標の1つになっているに過ぎなかったから,白手袋着用の根拠にはならない。 (ウ) 原告Bが列車の乗務に就いた際に白手袋を着用していなかったのは,①運転中に白手袋をするかどうかについて取決めがないこと,②ワンマンカーの気動車に乗務する際には手袋の着用によって様々な不都合,不便が生じること,③気動車と電動車ではブレーキ操作等に違いがあるので,気動車・電動車とで手袋の着用に差を設けることで意識の切替を考慮したからであって,自分なりの取組みとして実践していた。このような行為は,被告会社の運転安全規範の「安全の確保は,輸送の生命である。」との定めに沿うものである。 ウ左手による指差喚呼の合理性(ア) たからであって,自分なりの取組みとして実践していた。このような行為は,被告会社の運転安全規範の「安全の確保は,輸送の生命である。」との定めに沿うものである。 ウ左手による指差喚呼の合理性(ア) 原告Bは指差喚呼を左手で行ったが,被告会社には列車が駅で停車した際の指差喚呼を右手で行うべきとする規程はないし,原告Bも右手で指差喚呼を行うよう指導されたのも本件が初めてであった。また,被告会社金沢支社や和歌山支社のように左手による指差喚呼を求めているところもある。さらに,本件日勤教育が実施された平成13年12月26日以降も,被告らは原告Bに対して,停車時に左手での指差喚呼が許されない理由や,右手による指差喚呼の周知方法等につき説明していない。 (イ) 被告らは,原告Bがブレーキ弁ハンドルの操作を終えた後にハンドルから手を離して右手で指差喚呼をすべきであるにもかかわらず,ブレーキ弁ハンドルの操作をしながら左手で指差喚呼をして,2つの動作を同時に行ったために注意力が散漫になるので注意したと主張する。しかし,運転士が列車を運転する際に,左右どちらかの手で作業をしながらもう一方の手で指差確認を行うことは,自動列車停止装置を解除する作業等多々ある。 また,原告Bが乗務していたのは気動車であって,この列車のブレーキは電動車とは異なり自動ブレーキという構造がとられ,その構造上列車を入線させる場合,所定の停止位置に衝動なく安全に停車させるため,運転士は,最初にブレーキ弁ハンドルを操作した後,さらに追加して大きな制動をかけなければならない(以下「追加ブレーキ」という。)。このとき,最初にブレーキをかけた状態から減圧を開始して追加ブレーキの制動効果が生じるまで約3から4秒間を要する。ところで,被告Cが原告Bに対し右手でするように要求した指差は,列車停車時にド う。)。このとき,最初にブレーキをかけた状態から減圧を開始して追加ブレーキの制動効果が生じるまで約3から4秒間を要する。ところで,被告Cが原告Bに対し右手でするように要求した指差は,列車停車時にドアが開いたことを示す表示灯を「滅」と言いながら指すという動作と,それに引き続き赤信号になっている出発信号機を「出発赤」と言いながら指すという動作であるが,これら2つの指差喚呼は列車停止時に直ちに行うべき確認作業である。したがって,最初のブレーキの状態から追加ブレーキの制動効果が生じるまで3から4秒間かかり,その間は,ブレーキ弁ハンドルを操作する必要があるから,ここで行う指差喚呼は,右手でブレーキ弁ハンドルを操作しながら,それと並行して左手で行うのが極めて自然な動作である。 (被告らの主張)ア被告Cは,原告Bの運転する列車に添乗したところ,原告Bが白手袋を着用せず,また,「滅」と「出発赤」の指差喚呼を左手で行ったことを注意・指導した。 これら指導は後記イ及びウのとおり合理的なものであった。しかし,原告Bは被告Cの指導に従わなかったばかりか,乱暴に運転したり,旅客の面前で声を荒げたりするなどして反発し,旅客が可部鉄道部に苦情の電話をしてきたほどであった。さらに,原告B独自の考えに基づいて,被告Cの注意・指導には従う必要がないとの積極的な態度まで示した。安全かつ確実な輸送の確保を使命とする被告会社においては,職場規律の維持・確保が必要不可欠であるが,原告Bは上司である被告Cの指導に従わずにこれに反発したのであって,このような行為を看過することはできず,原告Bに非違行為が認められる。 イ白手袋着用の必要性と合理性(ア) 運転士が白手袋を着用することは,乗客に対して清廉な印象を与え,規律ある職場であることをアピールして,安全輸送に対する信頼感を高め 告Bに非違行為が認められる。 イ白手袋着用の必要性と合理性(ア) 運転士が白手袋を着用することは,乗客に対して清廉な印象を与え,規律ある職場であることをアピールして,安全輸送に対する信頼感を高めると共に,運転士に対して事業の公共性とその任務の重要性を認識させ,自らの職責に対する自覚を高めることにつながる。安全な輸送の提供と良質なサービスの維持を使命とする被告会社において,運転士に対して白手袋の着用を求めることは合理的なものである。 (イ) 被告会社の厚生業務規程35条は「衣服類の貸与を受けた者は,職務の執行にあたり貸与された衣服類を着用しなければならない。ただし,会社が特に認めた場合はこの限りではない。」と定めているが,白手袋はここにいう「貸与された衣服類」に該当し,被告会社が気動車運転の際に白手袋を着用しないことを「特に認めた」事実はないから,白手袋の着用は同社の規程により定められていたといえる。 また,被告会社可部鉄道部においては,運転士及び車掌に対し,少なくとも平成11年5月10日当時から,本件NO1掲示書面を通じて運転時における白手袋の着用に向けた取組みや指導を行い,自己診断シートの配布や面談による指導を行っており,原告Bも本件NO1掲示書面の周知を図る掲示について確認の捺印をしていた。 さらに,業間訓練や乗務時における指導の際にも白手袋の着用を求めてきたし,白手袋が汚損した場合に備えて点呼場の横の乗務員から目の付きやすい場所に白手袋を常備し,いつでも交換できるようにしていた。 ウ右手による指差喚呼の必要性と合理性(ア) 被告会社には右手により指差喚呼すべきことを定めた規程はなく,左手による指差喚呼を求めている支社もあるが,原告Bが所属する被告会社広島支社では,列車運転の際,原則として右手で指差喚呼を行うようかねがね指 会社には右手により指差喚呼すべきことを定めた規程はなく,左手による指差喚呼を求めている支社もあるが,原告Bが所属する被告会社広島支社では,列車運転の際,原則として右手で指差喚呼を行うようかねがね指導してきた。けだし,運転士に対し,運転動作の際,指差と声出しの動作を加えた確認を行い,乗務員によるヒューマンエラーの防止の徹底を図り,指差喚呼を確実に行うためには,指差喚呼することを体質化する(確実に身につける。)必要があり,そのためには左右いずれか決まった手で常に指差喚呼を行う癖をつけておくことが望ましいからである。 また,本件で被告Cが原告Bに対して右手での指差喚呼を指導したのは,一方で何らかの動作を行いながら他方で同時に他の動作の確認を行うと,1つの動作に専念する場合に比べ注意力が散漫になるきらいがあるので,1つ1つの動作を確実に行う癖をつけさせるという事故防止のためであった。 (イ) 確かに,一方の手で機器を操作しながら他方の手で指差喚呼しなければならないことが稀にはあるが,それは操作と指差喚呼を同時にしなければならないという列車の運転中に認められる例外的な場合であって,被告会社広島支社ではその稀な場合以外は右手による指差喚呼を指導してきた。本件で問題となっている指差喚呼は,運転中に行うべきものではないから,上記の同時に操作しなければならない例外には当たらない。気動車におけるブレーキの構造上,最初にブレーキをかけた状態から追加ブレーキの制動効果が生じるまで3から4秒間かかり,その間,ブレーキ弁ハンドルを操作する必要はある。しかし,原告Bが行った指差喚呼は列車停車後に確実に行わなければならない確認作業であるが,必ずしも停車後に直ちに行う必要があるものではないから,被告会社広島支社では,ブレーキ弁ハンドルの操作が終わって列車が確実に停車 た指差喚呼は列車停車後に確実に行わなければならない確認作業であるが,必ずしも停車後に直ちに行う必要があるものではないから,被告会社広島支社では,ブレーキ弁ハンドルの操作が終わって列車が確実に停車した後,ブレーキ弁ハンドルを操作した右手で指差喚呼を行うよう求めている。 (2) 本件日勤教育の適法性(原告らの主張)原告らは,本件日勤教育について,必要性がないのに行われ,不当労働行為そのものであり,業務命令権を逸脱濫用しているものであって違法である,という3点を主張する。 ア本件日勤教育の必要性がないこと本件日勤教育は,原告Bには前記(1)(原告らの主張)のとおり非違行為は認められず再教育の必要性もないにもかかわらずなされたものであって,違法,無効なものである。 イ本件日勤教育が不当労働行為として違法であること本件日勤教育は,業務指導に名を借りて原告Bの業務上の落ち度を探し出し,原告Bに反発させた上でこれを理由に日勤教育に陥れ,同人を運転業務から外し,原告組合から脱退させるという目的で実施されたものであった。すなわち,被告Cの添乗から本件日勤教育までの一連の出来事すべてが原告Bを原告組合から脱退させるための不当労働行為であった。したがって,本件日勤教育は原告Bを原告組合から脱退させる手段として企図・実施された不当労働行為そのものであり,違法である。 本件日勤教育の具体的な目的,内容等は次のとおりである。 (ア) 目的本件日勤教育の目的は,原告Bを教育するという点ではなく,原告Bに精神的,肉体的,経済的に深刻な打撃を与え,被告会社への絶対的服従を強い,ひいては被告らが敵視する原告組合からの脱退を慫慂する点にあり,原告Bに対する見せしめ的,懲罰的なものであった。 すなわち,本件日勤教育が白手袋着用の要否,指差喚呼のやり方を への絶対的服従を強い,ひいては被告らが敵視する原告組合からの脱退を慫慂する点にあり,原告Bに対する見せしめ的,懲罰的なものであった。 すなわち,本件日勤教育が白手袋着用の要否,指差喚呼のやり方を巡る平成13年12月25日の原告Bと被告Cの間でのやりとりが発端となったのであれば,日勤教育の初日の同月26日には原告Bに対し非違行為の有無について事情聴取等を行い,それが事実と認められれば,日勤教育となった理由を説諭して反省を求めてしかるべきである。しかし,被告Aは,原告Bに対して事情聴取等を行わなかったばかりか,「渡り鳥してどの組合が1番えーか,2か月ごとにかわって,自分で確かめてみー。渡り鳥したらよーわかる。」と述べ,同月25日の件とは何ら関係のない原告組合への所属を真っ先に問題としている。この渡り鳥といった被告Aの発言は原告組合を脱退するよう慫慂する趣旨であることは明らかであり,そのような趣旨の発言を本件日勤教育の初日に行ったのは,被告Aが従前から原告組合,原告組合広島地本,組合員である原告Bの活動を嫌悪し,日勤教育という手段を用いて原告Bに対し,精神的・肉体的・経済的な圧迫を加えて,原告Bの原告組合からの脱退を慫慂する意図を表明したからである。また,当時,可部鉄道部では社員に増収活動(JRの企画商品を社員が購入すること)を指示していたが,原告組合広島地本はこれに反対する掲示を本件日勤教育が開始される直前の平成13年12月22日に行った。増収活動と日勤教育は無関係であるにもかかわらず,被告Aは本件日勤教育中の原告Bに対する面談において,再三にわたって,原告組合広島地本が行った掲示の問題を取り上げて非難しており,この掲示によって被告Aの嫌悪の情を募らせたことが本件日勤教育実施の大きな動機の1つとなったといえる。さらに,被告Aは,原告B わたって,原告組合広島地本が行った掲示の問題を取り上げて非難しており,この掲示によって被告Aの嫌悪の情を募らせたことが本件日勤教育実施の大きな動機の1つとなったといえる。さらに,被告Aは,原告Bに対し,平成14年1月11日には「お前ら運転士,んふふ,よう知らんけど。知らんで。わしの機嫌とった方がええって。じゃない?」と述べた。この発言は,原告組合に属する運転士らが原告組合に所属するが故に本件日勤教育などの不利益な処遇の対象となるおそれがあるとして,原告Bを威嚇したものであることは明らかである。 被告Cは,原告Bに対し,平成14年3月1日,「指導」になって長門に帰れとの趣旨の発言を行っている。原告Bはその父が一人で住む故郷の長門への転勤を長年にわたって願っていたが,原告組合に所属しているが故に転勤希望はかなわず,被告Cもそのことをよく知っていた。「指導」になるとは,乗務員(運転士)から内勤の管理者に職務を移すと共に,主として乗務員によって構成される原告組合を脱退することを意味する。被告Cの上記発言は,内勤の管理者となって原告組合を脱退すれば,長門への転勤がかなうという趣旨であった。 なお,69日間に及ぶ本件日勤教育中,白手袋の着用や指差喚呼について何ら合理的な教育指導はなされておらず,この点からも,本件日勤教育が教育目的でなかったことは明らかである。 (イ) 場所従前,可部鉄道部の運転士が日勤教育を受ける場合,広島駅にある可部鉄道部乗務員駐在でなされてきたが,原告Bに対する本件日勤教育がなされた場所は,ほぼ可部駅2階会議室(以下「可部駅会議室」という。)であった。同会議室はスタッフ等の作業,様々な会議,中学生の職場研修等に使用されており,原告Bは見せしめの状態を強いられた。また,可部駅会議室を使用することによって,原告Bを同僚運 議室」という。)であった。同会議室はスタッフ等の作業,様々な会議,中学生の職場研修等に使用されており,原告Bは見せしめの状態を強いられた。また,可部駅会議室を使用することによって,原告Bを同僚運転士から隔離して本件日勤教育を行った。 (ウ) 監視原告Bが広島駅乗務員駐在と可部駅本部の間を移動する際や,原告Bが病院で診察を受けた際,必ず運輸科長である被告C又は係長1名が同行したし,被告Aや被告Cは,原告Bに対し,不規則に可部駅会議室に入室して叱責を加えた。また,係長やスタッフが出入りをしたり,部屋を覗いて原告Bの様子を監視したりした。被告らは,原告Bの勤務時間はもちろん勤務終了後の行動まで監視・干渉し,このことによって原告Bに「監視されている。」という精神的な圧迫を与え,本件日勤教育の目的,すなわち原告Bに対する原告組合からの脱退慫慂を達成しようとした。 (エ) 自責ノート(自己責任日誌)の作成原告Bは自責ノートを作成するよう指示されたが,その内容は,①就業規則等の規程類の書き写し作業,②反省文の作成であったが,これら原告Bが自責ノートに記載するよう命じられた事項は,本件日勤教育の理由として被告らが主張している事項と何ら関連しないものが数多く含まれていた。 ①就業規則等の規程類の書き写し作業は非生産的であり,本件日勤教育の端緒が指差喚呼の方法及び運転中の白手袋の着用の要否について上司との見解の相違にあったとの事実経緯に照らすと,かかる作業に教育的意義はない。成人した社会人である原告Bにとって,自発的意思に基づかず本来の業務を離れ漫然と書き写し作業を行う行為はそれ自体相当な肉体的,精神的苦痛を伴うものであり,被告らはこのことを当然承知していた。したがって,被告らが原告Bを長期間運転士としての乗務から外してこのような作業を命じたのは, し作業を行う行為はそれ自体相当な肉体的,精神的苦痛を伴うものであり,被告らはこのことを当然承知していた。したがって,被告らが原告Bを長期間運転士としての乗務から外してこのような作業を命じたのは,上記のような肉体的,精神的苦痛を与えることを意図した見せしめ,懲罰としかいいようがない。 ②反省文の作成に関しても,本件日勤教育の契機は指差喚呼の方法及び運転中の白手袋着用の要否を巡る被告Cとの見解の相違にあるが,原告Bはこの点について被告会社の具体的立場についての説明を受けないまま,多数回にわたり反省文の作成を命じられており,このような反省文の作成に教育的意義はない。原告Bは,継続的に何度も反省文の作成を命じられて精神的苦痛を受け,このことについて被告らは承知していたのであって,反省文の作成も,原告Bに対して効果的に精神的苦痛を与えることを意図した見せしめ,懲罰的意図の下に命じられたものである。 (オ) 部長面談本件日勤教育中,1週間に1ないし3度,午前・午後を問わず,被告Aとの面談の時間が設けられ,その面談は,原告組合及び原告組合広島地本に対する批判・誹謗中傷や原告Bが組合活動に熱心に係わっていることに対する批判・叱責を繰り返すもので,例えば別紙記載のとおりの内容であった。これらは,教育指導目的とはかけ離れており,長いときには1時間以上にわたり被告Aから罵詈雑言を浴びせられ,不当労働行為に該当するものであった。 (カ) キーワードの読み上げ毎朝,可部駅本部での点呼時に,他の社員の面前で「可部鉄道部箇所目標」と名付けられた4項目にわたる「達成するためのキーワード」を声に出して読み上げさせた。このことに教育的効果はなく,乗客や他の社員の見せしめにするもので,原告Bに懲罰的,見せしめ的効果を与え,その自尊心を傷つけて羞恥心を抱かせる目的で るためのキーワード」を声に出して読み上げさせた。このことに教育的効果はなく,乗客や他の社員の見せしめにするもので,原告Bに懲罰的,見せしめ的効果を与え,その自尊心を傷つけて羞恥心を抱かせる目的で実施された。 (キ) 移動時の作業状況観察の強制原告Bが主として出勤・退勤のために広島駅・可部駅間を移動する際,上司が同伴して,列車の運転席のすぐ後ろの客室内に立って,運転士の作業状況を見ることが実施された。これは原告Bを旅客の面前に毎日立たせることで懲罰的,見せしめ的な効果,すなわちもっぱら原告Bに羞恥心を抱かせる目的で実施された。 (ク) 知悉度テストの実施本件日勤教育中,原告Bは,知悉度テストを3度受けさせられたが,テスト問題は被告らが主張する日勤教育の理由・目的から逸脱し,かつ,テストの問題それ自体が難問かつ不合理であり,これに合格することを乗務復帰の条件とすることは不合理である。すなわち,その実施は突然告げられたものであり,その内容も暗記問題ばかりで,それまでの自責ノートの作成と何ら関わりのない問題や,上司の年頭挨拶の穴埋め問題等それ自体不合理な問題であって,本件日勤教育の理由として被告らが主張している事実と無関係なものが数多く含まれていた。さらに,その復習のために試験問題をレポート用紙に書き込んで記録することも禁じられた。被告社員のうち原告Bのみに対してこのような試験を実施すること自体不合理である上,原告Bが本件日勤教育を命じられた事実経緯に照らし,何らの合理性も見いだせない。 また,この知悉度テストは,後に本件日勤教育の適法性が問題となった場合に備え,日勤教育の長期化を正当化すべく,試験結果が悪かったということを方便として主張するという裁判対策目的から実施された。 (ケ) 期間原告Bは,本件日勤教育が始まった当初から,顛 となった場合に備え,日勤教育の長期化を正当化すべく,試験結果が悪かったということを方便として主張するという裁判対策目的から実施された。 (ケ) 期間原告Bは,本件日勤教育が始まった当初から,顛末書や自責ノートに反省の弁を示し,部長面談時には何度も謝罪し日勤教育を終了するよう必死で懇願し,涙まで見せた。それにもかかわらず,本件日勤教育はその後も延々と続き,いくら反省して謝っても,泣いて謝って懇願しても,本件日勤教育は終了しないというのが実態であった。これは,そもそも本件日勤教育を実施した被告Aの動機・意図が,原告Bに対する教育やその反省を促すことにあるのではなく,別のところにあったからである。 また,被告Aは,平成14年1月17日や同年2月6日に,いったん,日勤教育の終了を原告Bに告げながら,結局はこれを撤回してその後も日勤教育を継続した。この点,被告らは,同年2月6日に日勤教育を終了しようとしたが,同月7日の面談で原告Bに意識の改善が見られなかったために,さらに日勤教育を延長したと主張する。しかし,その同月7日以降,E総務科長から乗務復帰の目途を告げられた同月21日まで部長面談は1度も実施されていないし,この間に原告Bがしていたことは,自責ノートに膨大な量の規定類を書き写していただけであり,原告Bの意識面の改善といった事情は全くない。このことからも,被告Aが原告Bに対する教育やその反省を促す目的で本件日勤教育を実施したものではないことが見て取れる。 そして,本件日勤教育は69日間に及んだが,可部鉄道部内での他の日勤教育の事案と比べ際だって長期化しており,運転士の再教育等という抽象的な理由によって正当化できる範ちゅうを越えていた。しかし,被告会社は,再教育という抽象的な根拠では日勤教育が正当化できない場合に備えて,本人の反省等が って長期化しており,運転士の再教育等という抽象的な理由によって正当化できる範ちゅうを越えていた。しかし,被告会社は,再教育という抽象的な根拠では日勤教育が正当化できない場合に備えて,本人の反省等が足りなかった旨主張して長期日勤教育を正当化しようとする。さらに,就業規則を読んで思ったことを書かせたり,知悉度テストを実施したりして,その結果が思わしくなかった等の方便により日勤教育の長期化を正当化させる策を講じていた。 (コ) 判断者被告会社では,建前上,現場長が教育効果を判断して日勤教育の期間が決定されることになっており,本件でも,建前上は現場長である被告Aの判断に基づいて実施された。しかし,現実には被告Aは平成13年12月26日に原告Bに対して日勤教育を指示した際に,「大変なことをした。」,「今朝,早々に支社に呼び出された。」,「まだそんな社員がいるのかとしかられた。」と発言しており,本件日勤教育を指示するにおいて,被告会社広島支社の指示・意向が大きく影響しているといえる。また,被告Aは,本件日勤教育中,原告Bに対し,例えば「現場ちゅうのは弱いもんや。どねーもできりゃせん。裁量権もない。」,「結果は4日の月曜日に支社が最終的に判断すると言ってきている。」などと発言しており,被告Aが本件日勤教育を終了させる意向を被告会社広島支社に伝えたところ,同支社は本件日勤教育をさらに継続せよとの強い意向を示したため,被告Aはこれに従わざるを得なかった。このように,本件日勤教育は,建前上は被告Aがその開始・終了を決定したものとされているが,現実には被告Aは被告会社広島支社の命じるままに決定したのであり,被告会社広島支社の意向と異なる判断をすることはできなかったというのが実態である。 このような実態からすると,本件日勤教育の開始・終了に関して教育的配 告会社広島支社の命じるままに決定したのであり,被告会社広島支社の意向と異なる判断をすることはできなかったというのが実態である。 このような実態からすると,本件日勤教育の開始・終了に関して教育的配慮など存しないことが明らかである。日勤教育が運転士の再教育を目的とし,教育的効果の確認により終了するのであれば,日勤教育の必要性や教育的効果は現場長によって判断されるべきであるが,本件では,被告Aの意向よりもむしろ被告会社広島支社の意向に従って実施されており,教育的効果を判断すべき立場にある被告Aの意向は反映されていない。 ウ業務命令権を逸脱濫用しており違法であること本件日勤教育の具体的内容は前記イのとおりであって,原告Bの人格権を侵害するものである。したがって,本件日勤教育は,被告らが適法に行使し得る業務命令権を著しく逸脱,濫用して実施されたものであって違法である。 (被告らの主張)ア本件日勤教育の必要性被告会社において日勤教育に指定されるのは,教育関係,各種委員会関係,各種発表会関係その他様々な場合があり,業務上の必要性に基づいて適宜指定されている。原告Bには前記(1)(被告らの主張)のとおり被告Cの業務上の指示に反発するという非違行為が認められ,被告会社は原告Bに対してその非違行為についての反省を促しつつ教育指導を行うため日勤教育に指定したのであって,本件日勤教育に必要性はある。 イ本件日勤教育それ自体の違法性本件日勤教育は,次のとおりそれ自体も適法なものであった。 (ア) 目的本件日勤教育の目的は,上司である被告Cの業務上の指示指導に反発する非違行為を行った原告Bに対し,その非違行為の反省を促しつつ必要な教育指導を行うことにより,事故を未然に防止するという点にある。すなわち,鉄道事業を主な業務とする被告会社では,社 指示指導に反発する非違行為を行った原告Bに対し,その非違行為の反省を促しつつ必要な教育指導を行うことにより,事故を未然に防止するという点にある。すなわち,鉄道事業を主な業務とする被告会社では,社員一人一人が職制に従い,決められたことや指示されたことを確実に実行することが肝要である。特に直接運転業務に携わる運転士が上司の指示を無視し,個々が勝手な判断で行動すれば事故に直結する事態にもなりかねないから,決められたことや指示されたことをそのとおりに実行することが必要である。しかし,原告Bはこの点についての理解を欠いており,これに反する行動に出たのであるから,同人に対して日勤教育に指定し,教育を受けるよう指示したことは当然である。また,鉄道事業を営む被告会社では旅客第一の姿勢が求められており,この点においても,原告Bには配慮に欠ける点が認められたから,日勤教育を行って意識の改善を図ることが必要であった。 (イ) 場所従来,可部鉄道部で主に日勤教育が行われていたのは,広島駅構内の可部鉄道部乗務員駐在であったが,ダイヤ改正の準備作業等に駐在にある業間訓練室を使用することが予定されており,原告Bに対する日勤教育の期間いかんによっては,業間訓練室の使用に支障を来すことが懸念された。被告Aや被告Cは,原告Bの態度からして,1,2日での教育で改善される見込みは薄いと考えていたので,原告Bに対する本件日勤教育は,可部駅構内の可部鉄道部本部にある可部駅会議室で行われることになった。本件日勤教育中に同会議室においてスタッフ等の作業や様々な会議等が行われたことはあるが,作業や会議等の頻度はさほどのものではなかったし,可部駅会議室が中学生の職場研修に使用されたことはあったが荷物おき程度の使用であったから,原告Bが見せしめの状態を強いられたことはなかった。 (ウ が,作業や会議等の頻度はさほどのものではなかったし,可部駅会議室が中学生の職場研修に使用されたことはあったが荷物おき程度の使用であったから,原告Bが見せしめの状態を強いられたことはなかった。 (ウ) 監視原告Bが広島駅乗務員駐在と可部駅本部の間を移動する際,ほとんどの場合に運輸科長である被告C又は係長1名が同行したが,これは運転士がどうあるべきか旅客の立場から身をもって学ばせるためのものであり(後記(カ)),その学習を補助するために管理者が同行したものである。 被告Aや被告Cが可部駅会議室に入室したことは認めるが,これは原告Bの勤務ぶりを見る目的であり,不当視されるいわれはない。また,係長等は可部駅会議室の奥にロッカールームがあり着替え等をするために可部駅会議室の前を通ることがあったに過ぎず,原告Bを監視していたものではないし,本件日勤教育中,原告Bの勤務終了後の行動を監視・干渉したこともない。 (エ) 自責ノートの作成可部鉄道部では,従来から日勤教育を必要とする社員に対して自責ノート(自己責任日誌)を渡して,学習した事柄をノートに記入させるようにしており,原告Bに対する本件日勤教育も主としてこの自責ノートを活用して行うこととされた。 具体的教育内容については,本件の事象が原告Bにおいて社員の服務や職制に対する理解・認識を欠き,また,旅客に対する配慮が欠けていることによって生じたものと考えられたことから,次の3点について学習させることになった。第1に,社員の服務・職制を理解させるために,就業規則の社員の服務・職制に関わる部分を学習させることになった。就業規則が法的にどのように位置づけられているかを理解させるためにも,労基法の就業規則に関する部分も学習させる必要があると考えられた。第2に,運転士の服務である動力車乗務員作業標準の学 ことになった。就業規則が法的にどのように位置づけられているかを理解させるためにも,労基法の就業規則に関する部分も学習させる必要があると考えられた。第2に,運転士の服務である動力車乗務員作業標準の学習が必要であると考えられた。第3に,お客様第一であることを理解させる必要があり,そのために毎日の広島駅から可部駅間の往復の時間を利用して学習させることが考えられた(第3については後記(カ))。 そこで,被告Cは平成13年12月29日に上記第1と第2について学習するのに必要と思われる用語をピックアップした紙を原告Bに渡し,これら用語に関する規定を転記すると共に,その規定に関する自己の考えを自責ノートに記すことによって学習するよう指示した。規定の転記をさせたのは,英単語を暗記する場合同様,転記することで学習させようとしたからである。 (オ) 部長面談被告Aは,原告Bに対し,非違行為の反省を促し,日勤教育の成果を確認するために面談を行ったのであって,不当視されるいわれはない。 被告Aは,平成14年1月10日,原告Bと面談をしていない。 被告Aは平成14年1月11日に原告Bと面談をしているが,被告Aの発言は原告Bに対して非違行為についての反省を求め日勤教育に真摯に取り組むよう促したものに過ぎない。 その他,平成14年1月11日,同月15日,同月16日,同年2月1日,同月6日における被告Aの各発言について,原告は不当労働行為に該当する旨主張するが,その理由及び根拠が明らかでなく失当である。 (カ) キーワードの読み上げ及び移動時の作業状況観察前記(エ)のとおり,原告Bに対してお客様第一であることを理解させる必要があった。そこで,毎日広島駅構内の乗務員駐在から可部駅構内の可部鉄道本部まで通う際に,客室から他の運転士の運転操作を見ることで運転士が )のとおり,原告Bに対してお客様第一であることを理解させる必要があった。そこで,毎日広島駅構内の乗務員駐在から可部駅構内の可部鉄道本部まで通う際に,客室から他の運転士の運転操作を見ることで運転士がどうあるべきかをお客様の立場から見ることによって身をもって学ばせるため,列車の客室内から他の運転士の作業状況を見るよう指導した。また,点呼時に「達成するためのキーワード」を声に出して読み上げるよう指導したことも教育の一環としてなされたものである。 (キ) 知悉度テストの実施原告Bに対し実施された知悉度テストは,運転士としての,あるいは被告会社社員としての一般常識の範ちゅうで実施されたものである。 (ク) 期間日勤教育の期間は,発生した事象の内容,本人の過去の事故歴や発生頻度,発生後の反省度合い,教育・指導に対する理解度等によって異なる。原告Bに対する本件日勤教育の目的は,事故の再発ないし未然の防止という点に存することから,日勤教育を終えるかどうかは,この目的が達成されたかどうかの判断により決定され,具体的には,知識不足については理解度の確認を随時ペーパー試験等によって行い,指導の過程においてある程度の理解が得られたと判断されたときにペーパー試験を実施し,一定の理解度を示す点数が取れれば,日勤教育は終了することになる。また,意識不足については現場長や助役が指導や面談を行う中で本人が自らの問題点を正しく認識して反省し,2度と同じ過ちを犯さないという姿勢,意欲が認められれば,日勤教育は終了することになる。このように,再発防止の観点から総合的に判断されることとなる。 本件日勤教育は,平成13年12月26日から始まったが,原告Bはふてくされて,とても反省しているとは思えないような態度に始終し,上司に対する業務指示違反を理由としている本件日勤教育 ることとなる。 本件日勤教育は,平成13年12月26日から始まったが,原告Bはふてくされて,とても反省しているとは思えないような態度に始終し,上司に対する業務指示違反を理由としている本件日勤教育の期間中であるにもかかわらず,原告Bは,勤務の厳正を欠き,指示に反発しようとするなどの姿勢が見られた。 本件日勤教育が始まって3週間あまり経過したころ,被告AとE総務科長が打ち合わせて,本件日勤教育の成果を確認するために平成14年1月24日に知悉度テストを行うことになった。テスト問題を最終的に作成したE総務科長は,1か月近く勉強してきた原告Bにとっては平易な試験と考えていたが,結果的に原告Bは合格点を取ることができなかった。そのため,やむを得ず,再試験が平成14年1月31日に実施されたが,またもや合格点に達することはできず,同年2月5日の3回目の試験でようやく合格することができた。 被告Aは,平成14年2月6日の可部鉄道部の朝の点呼で,被告会社広島支社運用係長のF主席立会いの下,原告Bの教育を一応終了し,翌日から乗務訓練を行うとの話をした。本来,日勤教育は現場長の判断で行われるが,被告Aは,本件のようなケースは初めてであったから念のため支社に話してアドバイスをもらおうと考えた。これに対し,被告会社広島支社のG人事課長は,日勤教育を終了するに当たって多くの旅客の生命や財産を預かる鉄道の運転士としてその職責の重さや,業務を円滑・安全に遂行するに当たっての職制の重要性を十分に理解していることの確認が必要であるとの認識から,原告Bの意識面の確認をすべきであり,意識面の改善が確認できてから乗務訓練を始めるべきであるとアドバイスした。そこで,被告Aは,同月7日,原告Bの意識面の改善を確認するための面談を行った。ところが,その席で,原告Bは,平成13年1 ,意識面の改善が確認できてから乗務訓練を始めるべきであるとアドバイスした。そこで,被告Aは,同月7日,原告Bの意識面の改善を確認するための面談を行った。ところが,その席で,原告Bは,平成13年12月25日に被告Cから白手袋を着用するよう指示されたことを素直に認めようとせず,その指示に従わなかった事実についてもなかなか認めようとせず,右手での指差喚呼の指示も「根拠がない。」と述べて指示に従う必要さえなかったかのような発言を行った。そのため,被告Aは,原告Bの教育効果が上がっておらず,このような社員に運転を委ねるのは非常に不安であり再乗務させることはできないと考え,日勤教育を継続することになった。 その後,平成14年2月12日以降から,原告Bは,顔を合わせれば明朗な声で挨拶したり,被告Cの指示に対しでも素直に従うようになったりと,原告Bの態度にようやく変化が認められるようになった。被告Aは,原告Bに意識面での改善が見られたことから,同月21日の本件懲戒処分の通知を機に乗務の準備をさせることにし,同月22日から再乗務に向けての訓練が開始された。 このように,原告Bは,当初,本件日勤教育に就いて教育指導を受けること自体に反発し,およそ反省する姿勢が見られず,また,その後,被告会社が行った知悉度テストに2度にわたり十分な成績をあげることができなかったため,必要な教育指導を行うべく69日間の期間を要したものであり,被告らの不当な意図により長期化したのではない。 (ケ) 判断者日勤教育の指定や終了の時期の判断は,現場長(本件では可部鉄道部長である被告A)が行うものである。再発防止の目的が達成できたかどうかは現場長でないと判断できないからである。 被告AやE総務科長は,被告会社広島支社の指示によって本件日勤教育が行われているかのような話し方 告A)が行うものである。再発防止の目的が達成できたかどうかは現場長でないと判断できないからである。 被告AやE総務科長は,被告会社広島支社の指示によって本件日勤教育が行われているかのような話し方をしていたが,これは原告Bの言動が管理者を馬鹿にしたようなものであったことから,被告AとE総務科長が相談の上,被告会社広島支社の存在をクローズアップさせるためであった。すなわち,現場は支社の指示に従って動いており,現場では社員が上司の指示に従って動かなければ会社組織としての体をなさないということを理解させるために,本件日勤教育もすべて支社の指示で行われているという説明を原告Bにすることにしたものである。平成14年2月6日の可部鉄道部での朝の点呼に被告会社広島支社運用車両課のF主席が立ち会ったのも,このような経緯に基づいて被告Aから立会いの要請を受けたからであった。 (3) 本件懲戒処分の適法性(原告らの主張)前記(1)(原告らの主張)のとおり,平成13年12月25日の原告Bの所為に非違行為は認められない。また,原告Bの同日における被告Cに対する対応は,同人の不当な添乗指導に対するものである上,原告Bは顧客の面前で大声で反発などしていないのに,被告会社は原告Bの言い分を聴取することなく,本件懲戒処分としている。そして,被告会社は,被告Aからこの件の報告を受けた時点で,直ちに,懲戒処分にすることを既定のものとして処置している。このように,本件懲戒処分は,処分の理由がないのに,その事実確認すら十分に行われないまま処分のための処分としてなされたものであって,懲戒権の濫用であり違法である。 (被告らの主張)懲戒処分は,企業秩序を乱す行為や信用失墜行為又はそのおそれのある行為を行った者に対して制裁を与え,企業秩序を乱すことなく維持し,社員に社会・会社 ,懲戒権の濫用であり違法である。 (被告らの主張)懲戒処分は,企業秩序を乱す行為や信用失墜行為又はそのおそれのある行為を行った者に対して制裁を与え,企業秩序を乱すことなく維持し,社員に社会・会社のルールを守ることを将来にわたっていさめる目的で行われるが,原告Bには前記(1)(被告らの主張)のとおりの非違行為が認められる。安全かつ確実な輸送の確保を使命とする被告会社においては,職場規律の維持・確保が必要不可欠であり,上司である被告Cの指導に従わずに反発した原告Bの行為を看過することはできない。 また,鉄道輸送業を営む被告会社では,旅客の信頼を得ることが企業存続の前提かつ基盤であるから,旅客に不安を与え,信用を損ねた原告Bの行為を看過することはできない。したがって,同人の行為は,就業規則146条2号(上司の業務命令に服従しなかった場合),3号(職務上の規律を乱した場合),12号(その他著しく不都合な行為を行った場合)に該当し,懲戒処分に付されてしかるべきであった。 そして,被告会社の社員管理規程,広島支社の賞罰審査委員会規程により設置される賞罰審査委員会の審議を経て,その際には過去の類例を参考に慎重に本件懲戒処分とすることが決定された。 したがって,本件懲戒処分は適法である。 (4) 原告組合及び原告組合広島地本に対する不法行為の成否(原告らの主張)ア原告組合及び原告組合広島地本は,被告らが共謀して原告Bに対し同人が組合活動を継続する意思をくじく目的で,同人の非違行為をねつ造し,違法な本件日勤教育を長期間にわたって実施したため,その対応に多大の労力と費用を割くことを余儀なくされたほか,労働組合としての名誉を著しく傷つけられた。さらには,原告Bが違法・無効な本件懲戒処分を受けたことにより,その対応に多大な労力と費用を割くことを余儀な 大の労力と費用を割くことを余儀なくされたほか,労働組合としての名誉を著しく傷つけられた。さらには,原告Bが違法・無効な本件懲戒処分を受けたことにより,その対応に多大な労力と費用を割くことを余儀なくされたほか,労働組合としての名誉を著しく傷つけられた。 そして,被告会社は,原告組合及び原告組合広島地本の組合活動を嫌悪しており,これまで数々の不法行為を繰り返してきたのであって,本件の一連の行為は,被告会社の指示に基づく被告らの共謀による共同不法行為である。 イ仮に,被告A及び被告Cが,原告らに対し,個別に不法行為をなしたとしても,被告会社は,被告A及び被告Cの使用者であるから,使用者として,被告A及び被告Cの不法行為について責任を負う。 (被告らの主張)原告らの不法行為の成否に関する主張は争う。 (5) 損害(原告らの主張)ア原告B(ア) 財産的損害 19万8204円(イ) 慰謝料 500万円(ウ) 弁護士費用 50万円イ原告組合及び原告組合広島地本(ア) 慰謝料各500万円(イ) 弁護士費用各50万円(被告らの主張)原告らの損害に関する主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 背景事情各争点につき検討するに先立ち,本件の前提となる背景事情について判断する。 前記争いのない事実等,証拠(甲1,2,37,40,42,82,85,乙4の1,9,10,15,119,120の2,121,122,123の1ないし19・21ないし24,127ないし129,130の2,131の1・2,143,証人H,同I,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 原告組合及び原告組合広島地本についてア国鉄改革の流れの中,旧国鉄の分割民営化が昭和57年に提言され,昭和6 ,証人H,同I,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 原告組合及び原告組合広島地本についてア国鉄改革の流れの中,旧国鉄の分割民営化が昭和57年に提言され,昭和61年には日本国有鉄道改革法等が成立し,旧国鉄は昭和62年4月1日に分割民営化されて被告会社などの各会社が発足した。旧国鉄には鉄道労働組合(鉄労),国鉄動力車労働組合(動労),国鉄労働組合(国労)などの労働組合が存在していたが,旧国鉄の分割民営化に先立ち,鉄労,動労,日本鉄道労働組合(日鉄労),鉄道社員労働組合(社員労)の4組合が1企業1労働組合の体制を目指して結集し,昭和62年2月に鉄道労連(平成元年にJR総連と改称)が結成された。西日本地域においても,昭和62年3月に西日本旅客鉄道労働組合(略称は西鉄労。後に西労組と改称)が結成され,当時,西鉄労は鉄道労連(JR総連)に加盟していた。 イ平成2年6月19日,JR総連の第5回定期大会が開催された。同大会では,国鉄清算事業団雇用問題に関し外部からの政治的介入があったとして,このことが問題視され,これを契機に労働組合の固有の権利であるスト権確立に向けて職場討議を深め,可能な限り早い時期に各単組でスト権の確立を図るよう努力し,「闘うべきときには,いつでも闘える組織体制を作る。」ことが提起された。このスト権論議が提起されたことを受けて西労組でも職場討議が展開され,同年11月に開催された西労組第8回中央委員会では,JR総連の趣旨に賛同する意見と,これに反対し西労組の主体性を維持すべきとの意見とが表明されたが,後者の意見が大勢であると集約された。そのような中,平成3年2月19日に開催された西労組第9回中央委員会において,当時の西労組のD委員長は,冒頭のあいさつの中で,JR総連との関係を断絶することに言及 者の意見が大勢であると集約された。そのような中,平成3年2月19日に開催された西労組第9回中央委員会において,当時の西労組のD委員長は,冒頭のあいさつの中で,JR総連との関係を断絶することに言及した。すなわち,西労組は自主・自立・独立した単組であるにもかかわらず,JR総連は,それが全国単一組織の中央本部であって西労組を下部組織としてとらえ,西労組の自主性や独立性を認めない姿勢であるとJR総連を批判した上で,JR総連主催の諸機関・諸活動に参加しないこと,西労組主催の諸機関・諸活動へのJR総連役員等の参加を拒否し,招請もしないこと,JR総連会費の納入を凍結することなど,当面,JR総連との関係を断絶することを提起した。このD委員長の発言内容をめぐって議事は紛糾して休会となり,同年3月30日には流会となった。西労組内では,D委員長を支持してJR総連から脱退すべきであるとするグループ(D派)と,D発言に反対し,JR総連内にとどまるべきであるとするグループ(JR総連派)との間で対立抗争が生じ,JR総連派に所属する組合員ら約4300名は同年5月23日に西労組を脱退し,原告組合を結成した。その後,西労組はJR総連から脱退して新たにJR連合を組織し,他方,原告組合がJR総連に加入した。 原告組合には中央本部の外に8地方本部があり,原告組合広島地本はその一つである。同組合広島地本は,被告会社広島支社管内の組合員によって組織されており,平成15年当時,約330名の組合員で構成されていた。 (2) 可部鉄道部についてア被告会社広島支社の可部鉄道部は平成13年4月に発足し,JR可部線の横川駅から可部駅を経由して三段峡駅に至るまでの区間を受け持っていた(なお,本件後の平成15年11月に可部駅から三段峡駅の間は廃線となった。)。横川駅から可部駅までの14. 月に発足し,JR可部線の横川駅から可部駅を経由して三段峡駅に至るまでの区間を受け持っていた(なお,本件後の平成15年11月に可部駅から三段峡駅の間は廃線となった。)。横川駅から可部駅までの14.0㎞は電化区間で,電動車(EC)と気動車(ディーゼル車,DC)が運行されており,可部駅から三段峡駅までの46.3㎞は非電動区間で,気動車のみが運行されていた。 可部鉄道部の乗務員が乗務するのは広島駅から三段峡駅までの区間であったが,その路線区間内での停留駅は次のとおりであった。 広島駅横川駅三滝駅安芸長束駅下祇園駅古市橋駅大町駅(途中,5駅を経由する。)可部駅(途中,20駅を経由する。)三段峡駅イ被告Aは,本件当時,可部鉄道部長であり,可部鉄道部の鉄道部業務全般の管理及び運営に携わっている非組合員であった。 被告Cは,本件当時,可部鉄道部の運輸科長として,主に乗務員の管理・指導を担当しており,また,西労組の組合員であった。 ウ原告組合は主として運転士と車両検修職が中心に結成された組合で,本件当時,可部鉄道部には約40名の運転士が在籍していたが,そのうちの38名が原告組合に,2名が西労組に所属していた。 (3) 原告Bについてア勤務歴など原告Bは,昭和33年9月に山口県長門市で生まれ,地元の高校を卒業後,昭和52年4月1日に旧国鉄(広島鉄道管理局)に入社した。同人は運転士になることを目標としており,機関助士を経て運転士本科の試験に合格し,昭和57年9月に気動車運転士となった。 当時,原告Bは広島で勤務しており,2か月に1回程度の割合で長門市の実家に帰省していて,実家に戻り家族と一緒に生活したいと考えるようになった。そのような折り,昭和58年に原告Bの母親が死亡し,その後祖母が死亡し,平成2年 務しており,2か月に1回程度の割合で長門市の実家に帰省していて,実家に戻り家族と一緒に生活したいと考えるようになった。そのような折り,昭和58年に原告Bの母親が死亡し,その後祖母が死亡し,平成2年の春には原告Bの妹が結婚して実家を離れたため,原告Bの父親は1人暮らしとなった。このような家庭の事情があったことから原告Bは長門市への転勤を希望しており,旧国鉄時代より被告会社発足後も,転勤希望調査や面談の際にはその家庭の事情と長門市への転勤希望を述べていた。 原告Bは,平成6年8月,可部鉄道部への転勤の辞令を受けた。長門市への転勤希望が叶わなかったため,被告会社に父親が1人暮らしをしていることなどの事情を知ってもらおうと,原告Bは苦情申告を提出した。原告Bは,その後も,折に触れ長門市への転勤を希望している旨を可部鉄道部総務科長などに述べていたが,平成9年9月には大阪への転勤となり,平成10年4月には可部鉄道部へと転勤となった。 イ事故歴など原告Bは,運転士としての業務に就いて以来,一度も事故を起こしたことはなく,被告会社の無事故表彰を連続して3度受賞するなどしてきた。 また,被告会社では年度初めに将来の希望などを記入して提出することになっているが,原告Bは,毎年,「自分の強み」との欄に「プロとしてこだわりを持って仕事を行う。」と記載し,運転士の仕事に対して高い意識で当たっていることを表明していた。 ウ組合歴原告Bは,旧国鉄時代には動労に所属し,昭和62年4月の被告会社発足の後は西労組に所属した。その後,西労組内での対立抗争に伴い,平成3年5月に結成された原告組合に所属し,平成8年からは原告組合可部鉄道部分会執行委員を務めている。 2 争点(1)(非違行為の有無)について(1) 前記争いのない事実等,証拠(甲12,8,33,42 年5月に結成された原告組合に所属し,平成8年からは原告組合可部鉄道部分会執行委員を務めている。 2 争点(1)(非違行為の有無)について(1) 前記争いのない事実等,証拠(甲12,8,33,42,54,82,92,乙9,10,14,証人E,原告B本人,被告A本人,被告C本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア原告Bは,平成13年12月25日,可部駅午前9時43分発広島行きに乗務したところ,被告Cが午前9時59分に大町駅から添乗し,運転席の右後方にある運賃箱付近の客室側に立った。原告Bが運転していた列車は気動車(ディーゼル車,DC)で,運転席と客室の間を遮蔽する壁はなく,客室から直接,運転席に話し掛けることができる構造になっていた。 被告Cは大町駅で添乗するとすぐに,原告Bに対して,「なぜ手袋をしていないのか。」と述べた。これに対し,原告Bは,「ECとDCで意識を切り替えるため,ECではしますが,DCではしません。」と答えたところ,被告Cは,「そんなの関係ない。手袋はするようになっとるじゃろうが。」と述べた。原告Bは,被告Cから白手袋をするよう注意を受けたが,これに従わず,次の停車駅である古市橋駅に向けて列車を発車させた。 イ続いて,原告Bの運転していた列車は,古市橋駅に入構した。 原告Bが運転していた列車は気動車であり,確実に列車を停車させるために,ブレーキを掛けた後に,更に追加ブレーキを掛けるようになっていた。なお,ブレーキ弁ハンドルの操作は右手で行う。 列車が停車すると,車掌が客室の乗降ドアを開け,戸ジメ表示灯が消える。運転士は,乗降ドアの開閉をしないまま列車が駅を通過してしまい,旅客が列車から乗降できないような事態を防止するために,確実にドアが開いたことを確認すべく,戸ジメ表示灯を指差した上で,「滅」 消える。運転士は,乗降ドアの開閉をしないまま列車が駅を通過してしまい,旅客が列車から乗降できないような事態を防止するために,確実にドアが開いたことを確認すべく,戸ジメ表示灯を指差した上で,「滅」と喚呼するように定められていた。続けて,列車が停車していることを意識付けるために,出発信号機が赤であることを確認すべく,出発信号機を指差した上で,「出発赤」と喚呼するように定められていた。 古市橋駅で,原告Bが最初にブレーキを掛けたことから列車は停車し,車掌がドアを開け,戸ジメ表示灯が消えた。原告Bは,続けて追加ブレーキを掛ける必要があったことから,ブレーキ弁ハンドルの操作を右手で行いながら,同時に,戸ジメ表示灯に対する「滅」の指差喚呼と,出発信号機に対する「出発赤」の指差喚呼を左手で行った。 原告Bが左手で指差喚呼したことに対して,被告Cは,「停車中は指差喚呼は右手で行うようになっとるだろう。」と述べたところ,原告Bは,「それは絶対ですか。ブレーキを使ってるのに,左手ではいけないのですか。それは絶対ですか。」と感情的になって答えた。これに対し,被告Cも声を荒げ,「絶対である。決まっとろうが。」と述べ,停車中の指差喚呼は右手で行うよう指導した。 ウ原告Bは,次の停車駅である下祇園駅でも,安芸長束駅でも,三滝駅でも,「滅」と「出発赤」の指差喚呼を左手で行った。原告Bはまずいと思ったが,被告Cは左手で指差喚呼を行ったことについて,特に注意を与えなかった。 三滝駅発車後,被告Cは,原告Bがブレーキ弁ハンドルを逆手ではなく順手で持っていたことを指摘して逆手で持つよう注意したところ,原告Bは,被告Cの注意に従って,すぐにブレーキ弁ハンドルの持ち方を順手から逆手に替えた。しかし,原告Bは,被告Cからの指導に対し立腹し,1つ1つの運転動作をことさら大 手で持つよう注意したところ,原告Bは,被告Cの注意に従って,すぐにブレーキ弁ハンドルの持ち方を順手から逆手に替えた。しかし,原告Bは,被告Cからの指導に対し立腹し,1つ1つの運転動作をことさら大きく行って運転に集中しようとした。 エ次の停車駅である横川駅で列車が停車した際も,原告Bは「滅」と「出発赤」の指差喚呼を左手で行った。被告Cは原告Bに対し「左手でやるんじゃなかろう。」と声高に注意したところ,原告Bは「私はプロ意識を持ってやっています。」と感情的になって述べ,被告Cの注意に従わなかった。 オ列車は午前10時19分に終点である広島駅に到着した。 原告Bは,被告Cに対して,「添乗報告をしましょうか。」と尋ねた。添乗報告とは,役員又は管理,監督,指導の任にある者が乗務員室に添乗したとき,業務遂行に支障のない早い時期に運転士が添乗者に対して列車運行状況の報告を行うことである。これに対し,被告Cは,再度,原告Bの所為を注意をしたところ,原告Bは「DCはワンマンが多く,接客する際に手袋がない方がよい。」と述べた。そのころは旅客は既に列車から降りており,客室内には旅客はいない状態であった。原告Bも被告Cも列車から広島駅のホームに降りたが,そこで,被告Cは,原告Bが被告Cの注意に従おうとしなかったことから,「B君ももう大人なんじゃけぇ,決められたことをちゃんとやってくれ。」と述べた。すると,原告Bは,感情的になって,「自分で考えてプロ意識を持ってやっています。」と答えた。被告Cも感情的になって声高に,「手袋をしてやってくれ。そのようになっている。決められたことをやってくれ。」と述べ,これに対し,原告Bも感情的になって声を荒げ,「接客するのに手袋がない方がよいし,ECとDCの切替えのためプロ意識を持って仕事をしています。なぜそれがいけないので られたことをやってくれ。」と述べ,これに対し,原告Bも感情的になって声を荒げ,「接客するのに手袋がない方がよいし,ECとDCの切替えのためプロ意識を持って仕事をしています。なぜそれがいけないのですか。」と言った。 カ被告Cが原告Bの運転する列車に添乗した当初は,被告Cも原告Bも双方共に冷静であったが,被告Cからの指導に対して原告Bがだんだんと感情的に反応するようになり,それに応じて被告Cも感情が高ぶっていき,広島駅のホーム上での両者は,傍目にはまるでけんかをしているように言い合いをしているかのような状態であった。 キ原告Bは,広島駅にある駐在に戻って次行路の乗務表を作成していると,午前11時ころに被告Cから応接室に呼ばれた。 まず,被告Cは原告Bが白手袋を着用していなかったことについて言及した。これに対し,原告Bは,電動車(EC)と気動車(ディーゼル車,DC)では運転方法に異なる点があることから,自分なりの取組みとして,意識を切り替えるために電動車では白手袋を着用し,気動車は着用しないようにしていることを改めて説明した。また,ワンマンの場合,運転士が旅客から直接,運賃を受け取ることがあり,その場合に白手袋をしていると失礼に当たるので,ワンマンの多い気動車では白手袋を着用しないようにしていることを説明し,被告Cに対し,見下したように,「分かる?分からんじゃろうね。」と言った。そして,原告Bは被告Cに対し白手袋を着用しなければならない旨を定めた規程があるかと尋ねたところ,被告Cは着用するよう決められていると答えるにとどまった。 続いて,被告Cは,原告Bが列車停車中に左手で指差喚呼したことに言及した。 これに対し,原告Bは,「滅」と「出発赤」の指差喚呼の際には,右手でブレーキ弁ハンドルを操作していることから,左手で指差喚呼をするのが一番 Cは,原告Bが列車停車中に左手で指差喚呼したことに言及した。 これに対し,原告Bは,「滅」と「出発赤」の指差喚呼の際には,右手でブレーキ弁ハンドルを操作していることから,左手で指差喚呼をするのが一番よい方法だと考え,そのように実行していることを説明した。被告Cは,左手で指差喚呼してよいのは運転中にブレーキ弁ハンドルを操作しているときだけであって,列車が停車しているときは右手で指差喚呼するようになっていると指摘した。原告Bは,被告Cの指摘について定めた規程があるか尋ねたところ,被告Cはそのように決まっていると答えるにとどまり,原告Bについて枠から外れていると述べた。原告Bは,「私はプロ意識を持って左手でやってきた。それがだめなら今日から考える。」と答えた。被告Cは,「注意したとき返事もしないし,すぐに刃向かう。日ごろから態度が悪い。」と述べた。 最後に,被告Cは,原告Bがブレーキ弁ハンドルを順手で持ち操作していたことについて,「それは注意したらすぐに直ったが,後から基本動作が悪くなった。」と述べた。そして,「いろいろとアドバイスしたが,業務指示に文句を言ったり無視したりした。」と述べたところ,原告Bは,「業務指示や業務命令などとは一切言っていないので,私には業務指示だとはわからなかった。はっきり業務指示だと言わないとわからない。」と答えた。被告Cは,原告Bが反抗的態度を取っていることから,原告Bに対して,2,3日の間,日勤勤務をしてもらうと告げた。その後,被告Cは,被告Aに架電し,原告Bの所為を報告すると共に,同人を日勤教育としたい旨を伝えた。 ク同日午前10時30分ころ,可部駅にある可部鉄道本部に旅客から電話があり,E総務科長がこれに応じた。その旅客は,原告Bと被告Cが広島駅到着後に言い合いをしていたときに居合わせた者であって,E総 ク同日午前10時30分ころ,可部駅にある可部鉄道本部に旅客から電話があり,E総務科長がこれに応じた。その旅客は,原告Bと被告Cが広島駅到着後に言い合いをしていたときに居合わせた者であって,E総務科長に対し,「可部線の列車に乗っていた社員が広島駅で大声を出していた。JRはどうなっているのですか。」などの苦情を述べた。 ケ被告Aは,E総務科長から苦情の電話について報告を受け,さらに,被告Cから原告Bの所為についての報告を受けたことから,原告Bを日勤勤務に指定して教育することとした。 (2)ア前項の認定事実に関し,原告らは,被告Cが執拗かつ感情的に指導を行ったと主張し,原告Bは当法廷において,自分は声を荒げておらず,被告Cの方が強い口調で大声であった旨の供述をしている。これに対し,被告らは,原告Bの方が感情的になり声を荒げて反発したと主張し,被告Cは当法廷において同趣旨の供述をしている。このように原告Bと被告Cの態度について,両当事者の主張が異なる。 そこで,検討すると,原告Bは,被告Cからの指導に対し,「頭に来ていた」と自ら再現し(甲54),自責ノートに「感情的になってしまった。」,「直ぐ熱くなり,あの場面,かなり感情的になっていたのはたしかです。」と記載し(乙4の1),平成14年2月7日の部長面談において,当時を振り返ると声を荒げたことや舞い上がって熱くなったことを認め(甲32の1,54),当法廷においても,感情的になったと供述している。また,原告Bは,被告Cからの指導を受けた後,運転に集中するために1つ1つの動作を大きく行ったことを認めている(原告B本人)が,このことは,特に意識しなければ運転作業に集中できないほどに原告B自身の感情が高ぶっていたことを示しているといえる。さらに,原告Bは,列車が終点の広島駅に到着した後,被告C ている(原告B本人)が,このことは,特に意識しなければ運転作業に集中できないほどに原告B自身の感情が高ぶっていたことを示しているといえる。さらに,原告Bは,列車が終点の広島駅に到着した後,被告Cに「添乗報告しましょうか。」とわざわざ言っているところ,添乗報告とは列車の運行状況を報告することであって,終点に到着した後に行っても意味はない(乙10)のであるから,このことは原告Bが被告Cに対して既に強硬な態度に出ていたからと考えるのが自然である。 他方,原告Bが強硬になり,運転に集中するために意識しなければならないほどに感情的になっていたことからすると,被告Cもその指導において原告B同様に感情的になっていたと見るのが自然である。また,平成14年1月13日に被告Aが可部鉄道部の運転士であるJに対し,本件での原告Bと被告Cの列車内でのやりとりについて,「営業車でけんかするとは。」と述べ(甲33),本件日勤教育中に行われた平成14年2月7日の部長面談において,E総務科長が広島駅でのやりとりについて,「その光景いうのはの,周りのお客様からまるで,けんかをしかけられて,けんかしとるように見受けられたと。わしのところに電話があったんよ。」と述べている(甲32の1,54)ことからしても,原告Bのみならず,被告Cも感情的になっていたと認めるべきである。 したがって,本件では,原告B,被告Cの双方共に感情を高ぶらせて,だんだんと声を荒げていったと認めるのが相当であり,この認定に反する主張及び供述はいずれも採用できない。 イ原告らは,原告Bと被告Cのやりとりを見た旅客が可部鉄道本部に苦情の電話をした事実はないと主張する。しかしながら,本件日勤教育中の朝の点呼や部長面談において,既に被告Aは客からの苦情の件について言及しており(平成13年12月29日につき 旅客が可部鉄道本部に苦情の電話をした事実はないと主張する。しかしながら,本件日勤教育中の朝の点呼や部長面談において,既に被告Aは客からの苦情の件について言及しており(平成13年12月29日につき甲82。平成14年2月6日,7日につき甲31の1,32の1,54),本件日勤教育の違法性の有無という問題が訴訟として顕在化する前から,苦情電話があったことは当事者間において共通認識となっていたこと,確かに広島駅での出来事であるにもかかわらず,可部鉄道部に電話がなされた点は不自然ともみえなくもないが,JR可部線での出来事である上,E総務科長は平成14年2月7日の面談の際に「原告Bの名札に可部鉄道部と書いてあったことから可部鉄道本部に電話があった。」といった趣旨のことを述べており(甲32の1,54),この説明に一定の合理性を見い出し得ること,原告らは,被告Aが苦情の電話について初めて言及したのは,電話があったとされる平成13年12月25日から4日後の同月29日であり,時間が経ち過ぎているとして疑義を唱えるが,後記3(2)ウ(ア)の認定事実からすると,当時の被告Aは,原告Bの所為について被告会社から厳しく追及されたと推測され,そのことで被告A自身が余裕を失った状態にあり,客からの苦情よりも被告会社広島支社からの責任追及の方を深刻な問題として受け止めていたと考えられるから,同人がすぐに客からの苦情の件に言及しなかったとしても不自然とまではいえないことなどからすれば,平成13年12月25日に可部鉄道部に対して苦情の電話があったと認めるべきであって,かかる認定事実に反する原告らの主張は採用できない。 (3) 前記(1)及び(2)の認定事実を前提に,原告Bに非違行為が認められるか否かについて検討する。 ア被告会社の就業規則は,「(3条)社員は,会社事業の社 実に反する原告らの主張は採用できない。 (3) 前記(1)及び(2)の認定事実を前提に,原告Bに非違行為が認められるか否かについて検討する。 ア被告会社の就業規則は,「(3条)社員は,会社事業の社会的意義を自覚し,会社の発展に寄与するために,自己の本分を守り,会社の命に服し,法令,規程等を遵守し,全力をあげてその職務の遂行に専念しなければならない。」,「(48条)職制は,別表第1に定める職名,職務内容及び指揮命令系統とする。」と定め,同別表により,運転士は,助役・係長の指揮命令系統下に置かれている(乙13)。そして,前記1(2)イの認定事実及び甲42によれば,本件当時,被告Cは可部鉄道部運輸科長であったから,運転士であった原告Bは被告Cの指揮命令系統下にあったと認められる。かかる状況下において,前記(1)アないしキ認定のとおり,原告Bは,被告Cから白手袋を着用し,右手で指差喚呼を行うよう指導されたところ,列車の運行中で,しかも運転席と客室の間に遮蔽がない構造の列車であったから運転室の声は客室にも聞こえることは容易に推認される状況下で,「それは絶対ですか。」,「自分で考えてプロ意識を持ってやっています。」などと感情的に声を荒げて被告Cの指導に反発したり,広島駅到着後も「なぜそれがいけないのか。」などと述べたりするなど,被告Cの指導に従わずに反発し旅客の面前で反抗的態度をとったことが認められる。 もっとも,被告Cの指導は業務命令としてなされたものであって,同人に広範な裁量は認められるものの,その指導内容が合理性を欠き濫用にわたる場合には,もはや業務命令の範囲を超えた指導というべきであり,そのような指導に従わなかったしても非違行為には該当しないと考えることができる。そこで,被告Cの指導内容が合理性を有するか否かについて検討する。 イ(ア) 業務命令の範囲を超えた指導というべきであり,そのような指導に従わなかったしても非違行為には該当しないと考えることができる。そこで,被告Cの指導内容が合理性を有するか否かについて検討する。 イ(ア) 証拠(甲33ないし36,42,54,64,66ないし75,77ないし80,乙1,10,証人H,同I,原告B本人,被告C本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成11年5月から可部鉄道部では肘を伸ばして信号を確認することがNO1運動の取組みとされ,その一環として,信号確認時に白手袋を着用するよう定められ,原告BはそのNO1運動の取組みについての告知文書である本件NO1掲示書面を閲覧していること,NO1運動とは,平成9年ころからの被告会社での取組みで,職場ごとに固有のテーマを決め,その点では他の職場には負けないでナンバーワンになろうという取組みのことをいい,それは業務として行われていたこと,被告会社の厚生業務規程35条は,「被服類の貸与を受けた者は,職務の執行にあたり貸与(共用を含む。)された被服類を着用しなければならない。ただし,会社が特に認めた場合はこの限りでない。」と定めており,本件で問題となっている白手袋は被告会社から運転士に対して貸与されたものであることが認められる(なお,本件訴訟において陳述書を提出した当時可部鉄道部の原告組合所属の運転士20名(甲65,70は除く。)のうち16名が列車を運転する際には白手袋を着用していると述べており,それらの中にはNO1運動の取組みとして運転中も白手袋を着用すべきことを認識していた者もいたことが窺われる。)。 そこで検討すると,NO1運動の取組みの対象であった信号確認とは,列車を運転しているときに行われるものであるから,可部鉄道部では白手袋を着用して列車を運転することがNO1運動の取組みとして業務の内容と こで検討すると,NO1運動の取組みの対象であった信号確認とは,列車を運転しているときに行われるものであるから,可部鉄道部では白手袋を着用して列車を運転することがNO1運動の取組みとして業務の内容となっていたというべきである。また,厚生業務規程の文言からすれば,被告会社から運転士に貸与された白手袋が同規程35条の「被服類」に該当しないとする理由はないし,同条ただし書に規定される「特に認めた場合」に該当する事情も見当たらない。そして,白手袋を着用して運転していたとする陳述書を可部鉄道部の原告組合所属の運転士の多くが作成し提出したことを勘案すれば,可部鉄道部の運転士のほとんどが白手袋を着用して列車を運転していたと推測される。これらからすれば,白手袋を着用して運転すべき旨を内容とする被告Cの指導は,合理性を有するということができる。 (イ) また,証拠(甲33ないし35,54,64ないし66,69,72,73,75ないし78,乙10,原告B本人,被告C本人)によれば,被告会社広島支社では,原則として右手で指差喚呼するが,ブレーキ弁ハンドルを操作しているときには例外として左手で指差喚呼するよう指導されていたこと,被告Cは原告Bに対して本件の1年半以上前である平成12年5月11日の春の面談で,列車停車中には左手で指差喚呼を行わないように指導していたことがそれぞれ認められる。 そして,旅客鉄道運輸を業とし,安全・正確な輸送の提供を経営理念の第1項目に掲げ,安全確保への取組みを至上命題とする被告会社においては(乙12,15ないし20,22ないし30),運転士各人が自己流の運転操作を行ったがために,会社全体としての安全施策に支障を来し,ひいては旅客の生命,身体,財産を害する結果につながる危険性があることは想像に難くなく,1つの組織体として決められた特定 人が自己流の運転操作を行ったがために,会社全体としての安全施策に支障を来し,ひいては旅客の生命,身体,財産を害する結果につながる危険性があることは想像に難くなく,1つの組織体として決められた特定の方法によって,安全確認のための指差喚呼を正確に反復継続することが重要と考えられることからすれば,右手で指差喚呼すべき旨を内容とする被告Cの指導は,合理性を有するというべきである。 (ウ) そして,本件における問題は,白手袋を着用することや,指差喚呼を右手で行うことに真実合理性や科学的必然性があるか否かということではなく,原告Bが一応の合理性を有する被告Cの指導に特段の理由なく反発し反抗的態度をとったか否かということであって,前記(ア)及び(イ)認定判示のとおり,被告Cの指導は一応の合理性を有しており,業務命令の範囲内にあると考えられるから,特段の理由がないのにこれに原告Bが反発・反抗した以上,原告Bにつき就業規則で定められた指揮命令系統に反したとの非違行為を認めるのが相当である。 ウところで,前記(1)イないしカ認定のとおり,被告Cも感情的になって指導していたことが認められるが,被告Cは原告Bの上司であり,原告Bは被告Cの指揮命令系統下にあるところ,前記イ(ア)及び(イ)認定判示のとおり,被告Cの指導の内容には一定の合理性が認められ,その指導を感情に任せた全く不合理なものと評価することはできない。 3 争点(2)(本件日勤教育の適法性)について(1) 原告らは,本件日勤教育は必要性がないにもかかわらずなされたものであって違法であると主張する。被告会社の就業規則によれば,勤務種別には日勤,変形,乗務員があり,業務上の必要性がある場合には指定した勤務を変更することができるとされている(乙12,13)ので,かかる業務上の必要性の有無について検討す の就業規則によれば,勤務種別には日勤,変形,乗務員があり,業務上の必要性がある場合には指定した勤務を変更することができるとされている(乙12,13)ので,かかる業務上の必要性の有無について検討する。 前記2(3)判示のとおり,原告Bには就業規則上の指揮命令系統に反したとの非違行為が認められるが,その具体的態様は前記2(1)及び(2)認定のとおりであって,これら原告Bの所為はヒヤリハットなどといった過失に基づくものではなく,上司の指導に対し反発・反抗したという故意に基づくもので,態様が過失行為に比してより悪質であるといわざるを得ない(ゆえに,原告Bが運転士の業務に就いて以来,1度も事故を起こしたことはなく,無事故表彰を連続して受賞してきたことは前記1(3)イに認定のとおりではあるが,本件日勤教育の必要性判断には特に関係はないというべきである。)。また,旅客運輸鉄道を業とする被告会社では,経営理念として客本位のサービス提供を掲げ(乙15ないし20),旅客の信頼確保を行動規範としているところ,前記2(1)ク認定のとおり,本件における原告Bの言動は一般乗客からの苦情を招来するなど,その信頼を裏切りかねないものであった。これらからすれば,原告Bを教育する必要性は十分に認められるというべきであって,原告Bの勤務種別を変更するについての業務上の必要性を認めることができるから,本件日勤教育は必要性を欠いており違法であるという原告らの主張は採用できない。 (2) 原告らは,さらに,本件日勤教育について,不当労働行為そのものであって違法である,業務命令権を逸脱濫用しており違法であるとも主張するから,以下検討する。 前記争いのない事実等,証拠(甲4ないし9,19,30の1,31の1,32の1,35,36,43ないし46,47の1,53,54,59,81 濫用しており違法であるとも主張するから,以下検討する。 前記争いのない事実等,証拠(甲4ないし9,19,30の1,31の1,32の1,35,36,43ないし46,47の1,53,54,59,81,82,85,乙4の1ないし3,4ないし10,12ないし14,証人G,同E,原告B本人,被告A・C各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア本件日勤教育の概容被告会社では,社員に対し,その勤務種別を日勤に指定して教育を行うという日勤教育が行われているが,通常,日勤教育をするか否か,その内容をどうするか,いつまで行うかについては,現場長が判断することになっており,原告Bは可部鉄道部の運転士であるから,本来は可部鉄道部長である被告Aが本件日勤教育についての判断権を有しているはずであった。しかし,被告Aは,原告Bに対して本件日勤教育とすることを決めたものの,その後は被告会社広島支社の指示を仰ぎながらこれを継続しており,少なくとも実質的には被告会社広島支社が本件日勤教育の内容や終了時期等の重要な部分を決定しているのと同視できるほど深く関与していた。 原告Bに対する本件日勤教育は,平成13年12月26日から平成14年3月4日まで69日間にわたるものであった。本件日勤教育は可部駅会議室で行われていた(ただし,被告会社広島支社の研修ルームで実施されたこともあった。)ため,原告Bは広島駅から可部駅まで通勤していたが,その際,原告Bに上司の誰かが同伴し,列車の運転席の背後の客室から運転士がどのように運転しているかを見ることとされた。可部駅に到着すると,可部鉄道本部での朝の点呼時に,社員の面前で,「全社員プロ意識を持って,365日間安全安定輸送で完遂し,全社一の鉄道部を創る。」という「可部鉄道部箇所目標」を達成するための4つのキーワード 着すると,可部鉄道本部での朝の点呼時に,社員の面前で,「全社員プロ意識を持って,365日間安全安定輸送で完遂し,全社一の鉄道部を創る。」という「可部鉄道部箇所目標」を達成するための4つのキーワードを読み上げることとされた。 また,就業規則の書き写しや反省文の作成などの課題が与えられて,それに従い自責ノートを作成することとされ,可部鉄道部長である被告Aとの部長面談が繰り返し行われた。さらに,教育効果を確かめるための知悉度テストが行われ,原告Bは3回目にして合格した。 原告Bがテストに合格した日の翌日である平成14年2月6日に,被告Aは,可部鉄道本部で行われた朝の点呼において,本件日勤教育は終了した旨を述べ,原告Bに対し,試験に合格したので乗務復帰してもらうと話した。しかし,被告会社広島支社は,原告Bにさらに日勤教育を継続して行わせるべきと考えてその旨被告Aに伝えたため,原告Bは乗務への勤務変更を受けることができず,その後も本件日勤教育が継続実施された。 平成14年2月21日に本件懲戒処分となり,同月22日から乗務復帰に向けた訓練が開始され,同年3月4日をもって本件日勤教育は終了した。 この本件日勤教育の期間中に,原告組合と原告組合広島地本は,被告会社広島支社に対して抗議活動を行った。平成14年1月16日,原告組合広島地本の当時の執行委員長であったKは,被告会社広島支社G人事課長に対して,電話で抗議を申し入れた。同月22日と同月29日には,原告組合広島地本が,被告会社広島支社に対して,書面で本件日勤教育についての解明要求を行った。同年2月12日には,原告組合のL執行委員長が,被告Cに対して,本件日勤教育は不当労働行為に該当するとして,その中止を申し入れた。 以上が本件日勤教育の概容であるが,これを巡る具体的な事実は次のとおりである 日には,原告組合のL執行委員長が,被告Cに対して,本件日勤教育は不当労働行為に該当するとして,その中止を申し入れた。 以上が本件日勤教育の概容であるが,これを巡る具体的な事実は次のとおりである。 イ自責ノートの作成(ア) 原告Bに対する教育は,主に自責ノートに与えられた課題を書くという方法で実施され,自責ノートは本件日勤教育が終了した時点でA4版40枚綴りの大学ノート3冊分になっていた。 (イ) 自責ノートに記載された内容は次のとおりであった。 本件日勤教育の実質的には初日といえる平成13年12月29日に原告Bに対して,就業規則,労基法,動力車乗務員作業標準の3項目をノートに書き写して,それぞれについて自己の考えを書くという課題が与えられた。就業規則については,その全文を機械的に書き写させるというものではなく,例えば「職制の目的について」,「指揮命令系統について」など具体的な事項が示され,原告Bは,課題に沿った就業規則の条文を取捨選択してノートに書き写し,その規定に対する所感を記入していった。労基法及び動力車乗務員作業標準の課題も就業規則と同様に具体的な事項が示されており,労基法では労働条件や就業規則に関するものを,動力車乗務員作業標準では服装・身だしなみや執務態度等に関するものを自責ノートに書き写すというものであった。 平成13年12月29日付けの自責ノートには,「国鉄から24年間,1度もないが,今回,注意かアドバイスか指示かあいまいのまま,業務指示とか業務命令など一言も発してないのに,無理矢理(懲戒事由)に該当させようと言うのか?全然納得いかない!!」,「今回,注意,アドバイスされた件は,業務指示,業務命令と言っていない限り,認めることはできない。もしも,注意,アドバイスされた事が次回できてなかったら業務指示,業務命令違反 然納得いかない!!」,「今回,注意,アドバイスされた件は,業務指示,業務命令と言っていない限り,認めることはできない。もしも,注意,アドバイスされた事が次回できてなかったら業務指示,業務命令違反になるのか?同じ事だと考える」との記載がされ,平成14年1月3日に被告Cが再度指導しようとすると原告Bはこれに反発したことがあった。そこで,同日には,「なぜ素直になれないのか。」をテーマに反省文を書くという課題が,同月4日には,「自分の改革と今後の取組み」というレポートを作成するという課題が与えられ,原告Bはこれに従って自責ノートに反省文等を書き込んだ。 その後も逐次課題が与えられ,指差喚呼の方法等の基本動作や異常時の取扱いに関する動力車乗務員作業標準,会社の概要,経営理念,愛称線区,接客サービスマニュアル等の書き写しを行った。 その他,原告Bは,自責ノートを持ち帰ることを禁じられていたにもかかわらず,平成14年1月18日帰宅時に自責ノートを無断で持ち帰ったことがあり,また,同月21日には昼休み後の始業時刻に遅れて執務場所に入室したことなどがあった。 ウ部長面談本件日勤教育を通じて,可部鉄道部長である被告Aは,原告Bとの面談を繰り返し行った。E総務科長などが面談に同席することもあった。 本件日勤教育が始まってから平成14年2月6日より前までの部長面談での状況は次のとおりであった。 (ア) 平成13年12月26日の面談被告Aは,原告Bに対して,同日午前中の面談で,「大変なことをした。」,「今朝早々に支社に呼び出された。まだそんな社員がいるのか,としかられた。」,「どうなっているのか。」,「当分,日勤で一から新入社員の教育をしてもらわんといけん。」「1月いっぱいは日勤してもらう。」などと怒鳴りつけた。 同日午後の面談でも同様の趣旨の発言 ,としかられた。」,「どうなっているのか。」,「当分,日勤で一から新入社員の教育をしてもらわんといけん。」「1月いっぱいは日勤してもらう。」などと怒鳴りつけた。 同日午後の面談でも同様の趣旨の発言を行った上,「渡り鳥してどの組合が一番えぇか,2か月ごとに変わって,自分で確かめてみぃ。渡り鳥したら,よぅわかる。 これもひとつの方法。」と述べた。 (イ) 平成14年1月10日の面談被告Aは,退社しようとしていた原告Bを呼び止め,午後4時20分ころから午後5時ころまで面談を行った。その席で,今回の件は原告Bが会社や上司を馬鹿にしている証拠であって,職制の怖さを知らなかったのか,などと述べた。そして,原告組合広島地本が可部鉄道部による増収活動(被告会社の企画商品を社員が購入すること)指示に反対する掲示を平成13年12月22日に行ったことについて,被告Aは,「今回の組合のあの掲示は何か。会社の増収の取組みを可部鉄道部でがんばっているときに,蛸足なんか書いて張りやがって。誰がやったんか。掲示板はあんないたずら書きをするためにあるんじゃないんど。あんなことするんなら,掲示板,ないようにしてもえぇんど。」と述べた。また,原告Bが原告組合の集会に参加したことについて,「誰が集会に行っているか,会社はちゃんと調べてわかっとるんど。そんなに組合が大切なら組合に全部面倒見てもらえ。泣きついて全部やってもらえ。何もできゃあ,せんよ。何もできゃあすまぁが。よう分かったじゃろ。誰も助けてくれまぁが。」と述べた。原告Bは泣いて謝ったが,被告Aは「泣いてどうなるもんじゃあない。男は1人で解決せんにゃいけんのど。」などと述べた。 (ウ) 平成14年1月11日の面談午前10時45分ころからE総務科長の同席の下,被告Aによる面談が行われた。まず,被告Aは,「仕事が終わっ 。男は1人で解決せんにゃいけんのど。」などと述べた。 (ウ) 平成14年1月11日の面談午前10時45分ころからE総務科長の同席の下,被告Aによる面談が行われた。まず,被告Aは,「仕事が終わってから組合の地本事務所に寄って帰っているだろう。何のために行っているのか。そんなに組合が大事なのか。それじゃ,全部組合に助けてもらえ。」と,かなり興奮して怒った。その後も原告組合広島地本について,「お前ら,何をしようと思うとるんか。お前は,今,謹慎の身ど。そのことが全然分かっちゃあ,おらんのぅ。反省が全然足らん。なっちゃおらん。」,「馬鹿みたいにストをやるとか,スト権1票投票じゃあ言うて,ストなんか打てりゃあせんのに言うばっかりで,もし打ったら組織がなくなることをよぉく知っとけよ。」などと述べた。 続けて,平成13年12月25日の原告Bの所為は上司に盾突き,客にも迷惑を掛けた大変な事件であるとして,「もう運転士はできんかもしれん。辞めにゃあいけんかもしれん。上司に逆ろうたんじゃけぇ,戒告か減給は免れまい。下手したら懲戒で辞めるようになる。」と述べた。原告Bは,運転士を辞めることになるかもしれない等言われたため,なんでこんなことになったのかとの思いにかられ,泣き出した。その後も,被告Aは,平成13年12月25日の件について,上司に逆らったのは原告Bが日ごろから会社を甘く見ているからで,何かしらの処分が出るであろうといった趣旨のことを繰り返した。また,「組合の事務所に寄ったり,動員に行ったりしとったらよくない。行けばすぐ情報が入るから,よう考えた方がよい。」と原告Bの組合活動を牽制した。 (エ) 平成14年1月15日の面談午前9時ころから行われ,被告Aは,原告Bに対して,原告組合広島地本による「蛸足増収強制反対」の掲示に関連して,原告組合らが い。」と原告Bの組合活動を牽制した。 (エ) 平成14年1月15日の面談午前9時ころから行われ,被告Aは,原告Bに対して,原告組合広島地本による「蛸足増収強制反対」の掲示に関連して,原告組合らが「戦争」を検討しているのではないか,などと述べた。 (オ) 平成14年1月16日の面談午前10時ころから約30分にわたって行われた。被告Aは,原告組合広島地本による「蛸足増収強制反対」の掲示について再三言及し,原告Bが運転士を続けることができるかに関連して,「なんで運転士にこだわるん。」,「決まってないよ。それだけの話よ。科長,わかりました,ほれじゃあ運転士しましょう,言うたらなるそいや。何で運転士ということじゃないよ。お前ら運転士,よう知らんけど知らんで。わしの機嫌とった方が絶対ええって。」などと述べた。「なんぼでも,はいわかりましたと言うときゃ時間かからんのに。何をあんた,これだけのことを何。」,「そっちの味方は誰がいるんかい。言うてみんさいや。正直な話を。あんたのことを本当に思うとるの誰がいるんかって,真剣に考えてくれたのは。言いんさいや。」などと述べた。 (カ) 平成14年1月17日の面談午前11時過ぎころからE総務科長,M係長の同席の下で行われた。被告Aは,可部鉄道部の運転士で,原告組合の組合員であるNが被告Aに対して早く原告Bを復帰させてほしいと言ったことにいたく感動したとの趣旨の話をした。 (キ) 平成14年2月1日の面談午後1時30分ころからE総務科長の同席の下で行われた。被告Aは,2回目の知悉度テストの結果を知らせ,しばらくはテストの話がなされた。しかし,その後には,「聞くところによると,2,3日前に申を支社に持っていったとかいう話を聞いたが。嘘か本当か知らんが。玄関払いを食うたんじゃろうが。」,「あんなもん書きやが テストの話がなされた。しかし,その後には,「聞くところによると,2,3日前に申を支社に持っていったとかいう話を聞いたが。嘘か本当か知らんが。玄関払いを食うたんじゃろうが。」,「あんなもん書きやがって。Bがひどう惨めになるだけいや。寄って集まって,いたぶりやがって,馬鹿たれが。格好つけるなよ。至らんことしてくれんでえぇんじゃ,わしに言わしゃ。出すのは勝手よ,向こうの。何しょうるんか,至らんことすな,言いたいよ。」と述べ,原告組合広島地本が被告会社広島支社に平成14年1月22日と29日に本件日勤教育の解明要求をしたことに話が及び,そのような原告組合広島地本の組合活動のために問題が大きくなったとして,「大きゅうなり出したやろうが。今ごろやったら,乗っとるわ,お前は。馬鹿が,他の方から至らんことしやがってから。おれは,ぶち殴ってやりたいくらい腹が立っとる。何しょうるんや,お前は。至らんことすな。こっちの段取りは大狂いじゃいやぁ。」,「至らんことをしてくれんでええ。向こうは責任とりゃせんじゃないか。社員管理ちゅうなぁ,組合に管理を頼むようなこたぁ,ありゃせんのんじゃ。どの組合でも一緒。おたくだけじゃない。組合と会社の役員いうのは,わけが違うんで。もう,あんた乗っちょるわい,楽々。何至らんことしてくれるんか。」と述べて,本来であれば原告Bは既に乗務に復帰しているはずだが,原告組合広島地本の組合活動のために本件日勤教育が継続しているという趣旨の発言を行った。さらに,原告組合広島地本が組合活動をすることによって,原告Bが苦しむことになるなどと述べ,組合活動を牽制した。 エ知悉度テストの実施(ア) 平成14年1月17日,被告Cは,原告Bに対して,それまでの学習の効果を確かめるために,就業規則,作業標準,基本動作についての知悉度テストを行うので,テ を牽制した。 エ知悉度テストの実施(ア) 平成14年1月17日,被告Cは,原告Bに対して,それまでの学習の効果を確かめるために,就業規則,作業標準,基本動作についての知悉度テストを行うので,テストに向けた勉強を行うよう伝えた。 平成14年1月24日,知悉度テストが実施された(1回目)。同テストは一般教養,就業規則,運転関係業務の3科目各100点で,採点及び合否の判断は被告会社広島支社が行った。その結果,運転関係業務では良好な成績を収めたものの,一般教養と就業規則の成績が悪く,平均45点で,不合格とされた。 平成14年1月31日に2回目の知悉度テストが実施された。1回目と同様に3科目各100点で,被告会社広島支社が採点と合否の判断を行った。運転関係業務は高得点であったが,平均54点で,不合格とされた。 平成14年2月5日,3回目の知悉度テストが実施された。前2回と同様に3科目各100点で,被告会社広島支社が採点と合否の判断を行った結果,合格とされた。 (イ) 知悉度テストの内容は次のとおりであった。 1科目の一般教養では,被告会社の資本金,発行済株式数,事業内容,営業利益,経常利益,経営理念などが問われたり,可部鉄道部の収入,収益,達成率,箇所目標などが問われたりした。また,被告会社広島支社の支社長・次長の年頭の挨拶が虫食い問題として出題されるなどした。 2科目目の就業規則では,被告会社の就業規則について虫食い問題や正誤問題の形式で出題された。 3科目目の運転関係業務は,動力車乗務員作業標準等からの出題で,例えば点呼の目的,基本動作の目的・効果,運転士の禁止事項,指差喚呼の目的・方法などが出題された。 オ平成14年2月6日以降の経緯(ア) 被告Aは,可部鉄道部での平成14年2月6日の朝の点呼において,原告Bについて,本件日勤 的・効果,運転士の禁止事項,指差喚呼の目的・方法などが出題された。 オ平成14年2月6日以降の経緯(ア) 被告Aは,可部鉄道部での平成14年2月6日の朝の点呼において,原告Bについて,本件日勤教育期間中に就業規則等の学習を行い,同日で一定の教育は終わった旨を述べた。この点呼には被告会社広島支社の運用車両課のF主席が立ち会った。 E総務科長は,被告会社広島支社の運用車両課から,前日に行われた3回目の知悉度テストは合格であったと言われたことから,点呼が終わった後,原告Bに対してテストに合格したことを伝えた。そして,被告会社広島支社から原告Bの反省文も提出するよう指示があったことから,原告Bは反省文を書いた。原告Bが反省文を仕上げ,被告Aに提出した後,部長面談が行われた。 (イ) 被告Aらも本件日勤教育は終了したものと考えそのような対応を取っていたが,被告Aは念のために被告会社広島支社人事課のG課長に相談したところ,同課長から呼び寄せられ,原告Bが上司の業務指示に従わなければならないということを認識しているかどうかを再度確認すべきであると言われた。 そこで,平成14年2月7日午前10時40分ころから,被告A,被告C,E総務科長の3名による面談が行われた。E総務科長は,原告Bに対し,「昨日支社に行って簡単にぱっと色々と話をしてきたんやけど,その中で,まぁ,あれじゃ,これまでの教育の結果を踏まえての,もう1回,12月25日に起きたことを確認してくれぇ,いうことやけぇ。」と述べ,平成13年12月25日に原告Bが運転する列車に被告Cが添乗・指導した際に原告Bがとった態度等についての事実確認がなされた。まず,被告Cから白手袋を着用するよう言われたことと,それに対する原告Bの対応が確認され,次いで,被告Cから「滅」と「出発赤」の指差喚呼を右手で行 原告Bがとった態度等についての事実確認がなされた。まず,被告Cから白手袋を着用するよう言われたことと,それに対する原告Bの対応が確認され,次いで,被告Cから「滅」と「出発赤」の指差喚呼を右手で行うよう指導されたことと,それに対する原告Bの対応が確認され,続けて,列車が広島駅に到着した後の原告Bと被告Cのやりとりについて確認された。原告Bは,これらの質問に対して,当時を顧みてどのような態度をとったのか,そのときどのようなことを考えたのかについて述べ,さらに,「もう痛いほど反省しております。その場面に帰れるものなら帰りたいです。」,「職制の理解が日ごろから欠けておりました。」などの反省の弁を述べた。この面談では,そのやりとりについて聴取書が作られ,原告Bはそこに署名押印した。これも被告会社広島支社からの指示であった。 事実確認が終わった後,E総務科長と被告Cは,原告Bに対し,関連会社への「出向情報(出向先の勤労条件等)」という書面を示し,E総務科長が「出向へ行けない理由はないということじゃろ。あなたを現場から推薦しておく。」と述べた。原告Bは出向を希望しないことを伝えた。 被告Aは,上記面談を通じて,原告Bの意識面での改善が十分ではないと考えるようになり,G課長と相談の上で,本件日勤教育を再開し継続することを決定した。 (ウ) 平成14年2月7日以降,再び本件日勤教育が再開継続され,原告Bは,接客サービスマニュアルを学習することを新たな課題として与えられ,自責ノートに学習を続けた。日勤教育の延長が決まってからは,部長面談は行われなくなった。 平成14年2月21日,被告会社は原告Bに対して本件懲戒処分とし,処分通知後に同月7日以来の面談が行われ,その場でE総務科長は原告Bに対して本件日勤教育を終了し,翌日からは乗務復帰に向けた訓練が開始 平成14年2月21日,被告会社は原告Bに対して本件懲戒処分とし,処分通知後に同月7日以来の面談が行われ,その場でE総務科長は原告Bに対して本件日勤教育を終了し,翌日からは乗務復帰に向けた訓練が開始されることを伝えた。 平成14年2月28日,原告Bは見極め審査を受けた。 平成14年3月1日,被告Cは,原告Bに対し,運転士を辞め,指導すなわち運転士を指導する内勤職に変わって長門に帰れと述べた。原告Bは,指導になることに興味はないと答えた。 平成14年3月4日に見極め審査に合格したことが伝えられ,同日をもって本件日勤教育は終了した。 (3) 前項の認定事実に関し,被告らは,本件日勤教育の決定権は現場長である被告Aにあり被告会社広島支社は関与していないと主張し,同支社のG人事課長とE総務科長は同趣旨の証言をし,被告Aも同趣旨の供述をしている。しかしながら,被告Aは,平成14年1月28日に原告Bからもう勘弁してくださいと懇願されると,「こらえる,こらえんなんて,お前,何ちゅうことを言いよるん。わしがこらえる,こらえんの判断をするんじゃないんでよ。お前,村ちゃん,錯覚すなよ。」と述べ,同年2月6日の部長面談では,「現場ちゅうのは弱いもんいや。どねぇもできりゃせん。裁量権もない。」,「裁量権がないんじゃけぇ,そういうこといや。向こうは関係箇所が意見を述べ合って進めてきたんじゃけぇ。」と述べる(甲31の1,49の1,54)など,被告A自身が本件日勤教育の判断権は被告会社広島支社にあることを認める発言を行っている(なお,被告らの主張によれば関係箇所とは被告会社広島支社人事課と運用車両課を指す。)。また,E総務科長は,平成14年2月1日に知悉度テストで不合格になった原告Bに対し,「今回,ほんま最後になるかもわからんけど,もう1回,チャンス,支社に頼もう 社広島支社人事課と運用車両課を指す。)。また,E総務科長は,平成14年2月1日に知悉度テストで不合格になった原告Bに対し,「今回,ほんま最後になるかもわからんけど,もう1回,チャンス,支社に頼もう思うんよ。あんたが受ける気があるんなら。」と述べ(甲30の1,54),同年1月25日には第三者であるOに対して同テストの採点と合否判断も被告会社広島支社が行っていると電話で述べている(甲81。E総務科長は,同日のOとの電話で,被告会社広島支社の関与があるという言い方をしたことは認める旨の証言をしている。)。そして,前記(2)オ(ア)認定のとおり,被告Aが可部鉄道部の社員を前にして,原告Bの本件日勤教育を終了すると述べた平成14年2月6日の朝の点呼には,被告会社広島支社の運用車両課の主席が立ち会っている。これらからすれば,少なくとも実質的には被告会社広島支社が本件日勤教育の重要事項を決定しているのと同視できるほど深く関与していたというべきであって,同支社の関与を否定する被告らの主張は採用できない。 (4) 前記(2)及び(3)の認定事実を前提に,本件日勤教育が不当労働行為あるいは業務命令権の逸脱濫用として違法であるか否かについて検討する。これは,本件日勤教育が教育目的で実施されたのか,不当労働行為意思のもとに実施されたのかという問題と密接に関わる事柄であるから,以下これについて検討する。 ア平成13年12月25日に原告Bは上司である被告Cの指示に反発し反抗的態度を示すという非違行為を行っており,本件日勤教育には原告Bを教育する必要性が認められるのは前記(1)認定判示のとおりであって,本件日勤教育を開始したことには合理的な理由が認められる。次に,実際に行われた教育の内容を検討すると,前記(2)ア及びイ認定のとおり,本件日勤教育は主に与えられた課題 (1)認定判示のとおりであって,本件日勤教育を開始したことには合理的な理由が認められる。次に,実際に行われた教育の内容を検討すると,前記(2)ア及びイ認定のとおり,本件日勤教育は主に与えられた課題に基づき自責ノートを作成するという方法で実施されたが,この自責ノートの作成作業は原告Bを教育するという目的で実施されたと認めるのが相当である。けだし,本件日勤教育の原因は上司への反発・反抗という原告Bの非違行為にある以上,同人の教育として被告会社における会社組織全体の有り様を学ばせることは必要であって,社員の服務,職制や指揮命令系統などに関する就業規則,労働条件や就業規則の法的位置付けに関する労基法,職務態度に関する動力車乗務員作業標準,会社の概要等の基本的な事項を学ぶことは,まさに組織の実態の基礎を学ぶことといえるからである。また,原告Bの非違行為は白手袋の着用や指差喚呼の方法についての指導に端を発するものであるから,安全対策という観点からすれば,指差喚呼の方法等の基本動作や異常時の取扱いについての規程を書き写すという課題にも教育目的があることは否定できないというべきであるし,原告Bの所為は,前記2(1)ク認定のとおり一般旅客からの苦情を招くなど客の信頼を損ないかねない行為ともいうべきであるから,被告会社の経営理念や接客サービスマニュアルを学ばせるという課題にも教育目的を認めることができる。さらに,非違行為を行った社員に対し反省を求めることは当然に必要な教育であるから,反省文や自己改革のレポートを書かせることにも教育目的が認められる。 本件日勤教育では,自責ノートの作成以外にも,前記(2)ア認定のとおり,広島駅・可部駅間の移動の際に上司が同伴して,運転席の背後から運転の状況を見学することとされたり,朝の点呼時に可部鉄道部箇所目標と4つのキ 育では,自責ノートの作成以外にも,前記(2)ア認定のとおり,広島駅・可部駅間の移動の際に上司が同伴して,運転席の背後から運転の状況を見学することとされたり,朝の点呼時に可部鉄道部箇所目標と4つのキーワードを読み上げることとされたりしたが,指差喚呼の方法など基本動作を学習し,かつ,客の視点からの理解を深めるために他の運転士の動作を客室から観察することも有意義であるということができるし,普段は他の運転士の行うキーワードの読上げについても,可部鉄道部に所属する運転士として同部の目標を認識させ自覚を深めさせることは原告Bの非違行為の内容を考慮すると有用なものというべきであって,これらも教育目的をもって実施されたと認めるのが相当である。 そして,知悉度テストは,これら教育の効果が出ているかを判断するために実施されたものであり,教育の成果の判断が恣意的にならないようにテストという客観的な基準を判断材料の1つとすることはむしろ望ましく,不合理なものとはいえない。なお,原告らは,自責ノートや知悉度テストの不合理性,本件日勤教育の実施された場所の不合理性等を主張して,本件日勤教育には教育目的はなく当初から全くの不当労働行為意思でなされたとの趣旨の主張をするが,後記(6)認定判示のとおり,これらの主張は採用できない。 したがって,本件日勤教育は原告Bを教育する目的で行われもので相当程度の合理性を有する(ただし,平成14年2月7日以降の日勤教育については同月6日以前の日勤教育に比して合理性,必要性に疑問があることは後述)と認めるのが相当である。 イしかしながら,他方において,本件日勤教育はその全体ではないとしても不当労働行為意思をもって実施されたという側面も有している。 (ア) すなわち,前記(2)ウ(ア)認定のとおり,平成13年12月26日の部長面談 ,他方において,本件日勤教育はその全体ではないとしても不当労働行為意思をもって実施されたという側面も有している。 (ア) すなわち,前記(2)ウ(ア)認定のとおり,平成13年12月26日の部長面談において,被告Aは,原告Bに対して,渡り鳥をしてどの組合が1番かを確かめればわかるという趣旨の発言をしたことが認められるが,これは原告組合に所属する原告Bが同組合を脱退して他の組合に加入することを慫慂する発言と解することができる。そして,鉄道部長たる被告Aが本件日勤教育の初日の部長面談という場で,原告Bの非違行為について支社から叱責を受けたと述べ,それに続けて渡り鳥をすればよくわかるという発言をしており,この被告Aの発言は,支社からの叱責と組合の変更とを関連づけてなされたものといえる。これらを考慮すると,被告Aの発言は,被告会社として原告Bに原告組合から脱退するように勧奨するものといえるから,労組法7条3号が禁止する原告ら組合活動に対する支配介入として,不当労働行為に該当するというべきである。平成14年1月10日には,前記(2)ウ(イ)認定のとおり,被告Aは,蛸足増収強制反対の掲示を非難し,掲示板を撤去することもできると述べたり,原告組合の集会に原告Bが参加したことを非難して,誰が集会に参加しているのか把握しており,それほどまでに組合が大切であるならば組合に助けてもらえと発言したりしている。当時,原告Bはいつ終わるとも分からない本件日勤教育の最中であり,不安・焦燥などに駆られた精神状態にあり(甲82),このような状況下で,日勤教育の継続につき決定権限ないし少なくとも強い影響力を有する被告会社上級管理者である被告Aから組合活動を非難されれば,活動に対する妨害・抑制となるといわざるを得ない。したがって,この被告Aの発言は単なる使用者の意見表明の域 いし少なくとも強い影響力を有する被告会社上級管理者である被告Aから組合活動を非難されれば,活動に対する妨害・抑制となるといわざるを得ない。したがって,この被告Aの発言は単なる使用者の意見表明の域を超えており,原告らの組合活動を妨害する行為であるから,労組法7条3号が禁止する支配介入として,不当労働行為に該当するというべきである。平成14年1月11日には,前記(2)ウ(ウ)認定のとおり,被告Aは,原告Bが終業後に原告組合広島地本の事務所に寄っていることを批判し,事務所に行くと被告Aに情報が入るのでよく考えた方がよいと原告Bの組合活動を妨害する発言を行ったり,原告組合がストライキに出れば組織としてなくなると牽制したりしたが,かかる発言も同様である。前記(2)ウ(オ)認定の平成14年1月16日の「お前ら運転士,よう知らんけど知らんで。わしの機嫌とった方が絶対ええって。」,「そっちの味方は誰がいるんかい。言うてみんさいや。」などの被告Aの発言,前記(2)ウ(キ)認定の同年2月1日における原告組合の組合活動によって原告Bが苦しむことになるとの被告Aの発言も同様に支配介入に該当すると考えられる。 このような点を考慮すると,被告Aは原告組合の存在や原告らの組合活動を嫌悪していたと認められ,原告Bが原告組合の組合員であることないしは組合活動をしたことを理由として本件日勤教育を開始し継続した側面もあったと認めざるを得ない。 (イ) そして,前記(2)ア及び(3)認定のとおり,少なくとも実質的には本件日勤教育の内容や終了時期等については被告会社広島支社が判断しているのと同視できるほど深く関与していたと認められるから,被告会社広島支社もまた不当労働行為意思をもって本件日勤教育を実施した側面があったと認められる。 ウこのように本件日勤教育には,教育目的か ているのと同視できるほど深く関与していたと認められるから,被告会社広島支社もまた不当労働行為意思をもって本件日勤教育を実施した側面があったと認められる。 ウこのように本件日勤教育には,教育目的から実施されたという正当な理由が存在すると同時に,他方では不当労働行為意思の存在も認められる状況にあり二つの理由がいわば競合していると認められる。かかる場合,本件日勤教育の適法性についての判断は,当該教育を実施した決定的原因がこの二つの理由のいずれにあるのかという観点から行うのが相当である。 そこで検討すると,前記(2)ア,イ及びエ認定のとおり,平成14年1月中は原告Bには必ずしも十分な反省,悔悟の情が認められなかったところ,原告Bは同年1月24日と31日に行われた2回の知悉度テストは不合格で,同年2月5日の3回目のテストで合格とされた。そして,前記(2)ア及びオ認定のとおり,3回目の知悉度テストに合格した翌日である平成14年2月6日の可部鉄道部の朝の点呼時に,被告Aが同部の多数の社員を前にして本件日勤教育を終了する旨を述べ,その点呼に立ち会ったFは,同テストの採点と合格判断を行った被告会社広島支社運用車両課の主席であった上,E総務科長も,原告Bに対して,直接,同日をもって日勤教育を終了すると明言しているのである。このように日勤教育の開始及び継続につき決定権限があるとされる被告Aにおいて客観性と合理性を有するものとして実施した知悉度テストに合格したと判定され,被告Aにおいて原告Bと直接面談を繰り返し,同原告の毎日作成した自責ノートを詳細に点検し同原告を継続的に観察して,同原告において十分な反省と悔悟がなされたと認定した上,被告会社広島支社とも相談して,本件日勤教育を終了することを決定したはずであって,本件日勤教育開始から1か月以上も経過した平 継続的に観察して,同原告において十分な反省と悔悟がなされたと認定した上,被告会社広島支社とも相談して,本件日勤教育を終了することを決定したはずであって,本件日勤教育開始から1か月以上も経過した平成14年2月6日の段階では被告会社広島支社運用車両課にも特段の異議がなく,被告Aにおいて一般の被告会社社員に対しても本件日勤教育を終了する旨を言明したものであるから,同月6日を経過する段階においては,本件日勤教育を継続する理由及び必要性は既に実質的にはほとんど消滅していたものといわなければならない。このことは,同月7日以降の日勤教育では,教育の成果を確認するための部長面談が1度も行われず,ただ自責ノートの作成が続けられたに過ぎないことによっても裏付けられる。 したがって,平成14年2月6日までの本件日勤教育の開始及び継続は,正当な教育目的から実施された合理的理由を有するもので,不当労働行為意思によって実施されたものではなく,適法なものであるといえる(もっとも被告Aによる個々の支配介入行為が不当労働行為に該当することは別論である。)が,同月7日以降同年3月4日までに実施された本件日勤教育は不当労働行為意思に基づくものであって違法であるといわなければならない。そして,上記不当労働行為に該当する行為は,被告らの業務命令権を逸脱濫用するものとして,その意味でも違法である。 (5) 被告らの主張に対して前項の判示につき,被告らは,平成14年2月6日で本件日勤教育を終了するとしながら,これを撤回し延長した理由は,同月7日の部長面談において,被告Cから白手袋を着用するよう指示されたことを率直に認めようとせず,その指示に従わなかった事実についてもなかなか認めようとせず,右手での指差喚呼の指示も根拠がないと述べて指示に従う必要さえなかったかのような発言を行う 用するよう指示されたことを率直に認めようとせず,その指示に従わなかった事実についてもなかなか認めようとせず,右手での指差喚呼の指示も根拠がないと述べて指示に従う必要さえなかったかのような発言を行うなど,原告Bに反省が見られず,さらに教育を継続する必要があったからであると主張する。しかしながら,同月7日の部長面談は,被告Aらが再度本件の事実関係の確認をするとの前提で原告Bが質問に答える形でなされたものであるところ,原告Bは,被告Cから白手袋を着用するように言われたこと自体は率直に認めているし,被告Cの指示に従わなかった事実についても特に否定する趣旨の発言をしたわけではないし,右手での指差喚呼の指示につき「はい,指示されましたけど,あの~はっきりした根拠がないもんで。」と本件当時の自己の認識を含めた事実関係を率直に述べてはいるが,指示に従う必要さえなかったかのような発言はしていないことが認められるだけでなく,部長面談の全般にわたって,当日の面談の趣旨に従って,本件当時の自分の心理状態を含めた事実関係を包み隠すことなくありのまま率直かつ正直に述べており,若干理屈っぽい面を被告Aなどから注意されると率直に訂正して謝罪するなどしており,「もう痛いほど反省しております。その場面に帰れるものなら帰りたいです。」,「職制の理解が日ごろから欠けておりました。」などと,真摯に深く反省した態度を示していたことが認められる(甲54)。 仮に被告らが,上司の指示には特段の事情のない限り服すべきであるという点が本件日勤教育の眼目であると考え,その旨原告Bに回答させたいにもかかわらずその点の回答につき不十分な部分があったと判断したというのであれば,それまでの長期間に及ぶ本件日勤教育においてその点につき原告Bに対し言葉の上でもうまく表現できるように噛み砕いて繰り返 もかかわらずその点の回答につき不十分な部分があったと判断したというのであれば,それまでの長期間に及ぶ本件日勤教育においてその点につき原告Bに対し言葉の上でもうまく表現できるように噛み砕いて繰り返し教育すべきであって,それまでの本件日勤教育における被告らの努力が欠けていたというべきである。なお,原告Bは,上司の指示には特段の事情のない限り服すべきであるという点については,言葉の表現において拙い点があったとはいえ,実質的には十分に理解するに至っていたと認められるところである(甲54)。また,前記(4)ウに認定したように,被告A及び被告会社において,長期間を掛けて慎重に直接面談を繰り返して原告Bを観察し検討した上でいったんは同月6日には本件日勤教育を終了する旨宣言したことからすれば,同月7日の面談結果は到底その決定を覆すに足りるものではないといわなければならない。これらからすれば,被告らの上記主張は採用できない。 (6) 原告らの主張に対してア前記(4)判示につき,原告らは,被告Cが業務指導に名を借りて原告Bの業務上の落ち度を探し出して指摘し,その反発行為を誘発して日勤教育となるように仕向けたとし,被告Cの添乗から本件日勤教育までの一連の出来事がすべて,被告らが共謀した上での原告Bを原告組合から脱退させるための不当労働行為であったと主張する。 そこで検討すると,前記争いのない事実等及び証拠(甲31の1,42,53ないし55,59,82,被告A本人)によれば,平成13年12月22日に可部鉄道部の掲示板に「蛸足増収強制反対」とする書面が掲示されたが,その内容は,被告会社が同社の企画商品をその社員に強制的に購入させることで収益を上げようとしており,原告組合としてそのような施策に反対するという趣旨であったこと,この掲示に対し,被告Aは本件日 が,その内容は,被告会社が同社の企画商品をその社員に強制的に購入させることで収益を上げようとしており,原告組合としてそのような施策に反対するという趣旨であったこと,この掲示に対し,被告Aは本件日勤教育での部長面談において蛸足増収の掲示についてしばしば言及し,原告組合に対する敵意ともいえる感情をあらわにしていること,原告Bの列車に被告Cが添乗して指導を行ったのは上記「蛸足増収強制反対」の掲示がなされた3日後であったこと,原告Bは原告組合に所属し,原告組合可部鉄道部分会執行委員であったことがそれぞれ認められる。 しかしながら,そもそも被告Cが添乗した際に原告Bに落ち度があり,かつ,同原告が日勤教育に値するほどの激しい反発をすること自体も通常は予想できないところであるから,被告Cが原告Bの反発を誘発し日勤教育となるように仕向けたとする主張自体が不自然であるだけでなく,被告Aは原告B以外の乗務員に対しても蛸足増収の掲示についての不平不満を述べて怒鳴ったり,原告組合の可部鉄道部分会のI執行委員長に対して掲示に関する面談を求めたりしており(甲33,42,73),被告Aの不満は専ら「蛸足増収強制反対」の掲示それ自体に向けられているにとどまり,この掲示が原因・契機となって,原告Bをねらい打ちにして本件日勤教育が仕組まれたと認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。また,原告らは,本件以前においても被告会社によって原告組合に対して不当労働行為が繰り返されたと主張するが,原告ら主張のそれら事実だけをもって原告らの上記主張事実を推認することはできないし,他に原告ら主張の事実を認める足りる証拠はない。 イ原告らは,自責ノートの作成に教育的意義を見出すことはできないと主張するが,原告Bの非違行為を勘案すると,前記(4)ア判示のとおり同人に与えられた課題 告ら主張の事実を認める足りる証拠はない。 イ原告らは,自責ノートの作成に教育的意義を見出すことはできないと主張するが,原告Bの非違行為を勘案すると,前記(4)ア判示のとおり同人に与えられた課題は教育目的を有するといえるし,自責ノートに条文等を書き写すことによって,社員として遵守すべき事項を認識し会得することができるから,「書写し」という方法にも一応の合理性が認められる。しかも,本件日勤教育で実施された自責ノートへの書写し作業は,例えば条文を頭からただ機械的に転記させるというものではなく,前記(2)イ(イ)認定のとおり原告Bの非違行為とある程度関連づけて課題が与えられ,それに従って行われており,この点からも合理性を否定することはできない。したがって原告らの上記主張は採用できない。 ウ原告らは,被告Cが長年長門市への転勤を希望していた原告Bに対して,平成14年3月1日に指導職になって長門に帰れと述べたことを捉えて,不当労働行為に該当すると主張する。しかしながら,従前の原告Bに対する不当労働行為に該当する発言は専ら非組合員で被告会社の上級管理者である被告Aが部長面談の場などで行ってきたのであって,西労組組合員で被告会社の下級管理者である被告Cはこれまで原告Bに不当労働行為に該当する発言を行ったとは認められないこと,上記被告Cの発言がなされたのは,同年2月7日を最後に被告Aの部長面談が行われなくなって久しいころで,原告Bに対する本件日勤教育終了の直前で,実質的には本件日勤教育が終了することが事実上決まっていた段階でのことであり,同年3月1日の午後5時ころ業間訓練室において,たまたま特段の用事のない原告Bと同室でPCの修理をしていた被告Cが2人だけで同室した際に,個人的な雑談の中で出た発言であるから,被告会社の立場を離れて,被告Cが原告Bの 5時ころ業間訓練室において,たまたま特段の用事のない原告Bと同室でPCの修理をしていた被告Cが2人だけで同室した際に,個人的な雑談の中で出た発言であるから,被告会社の立場を離れて,被告Cが原告Bの身の上を案じて個人の立場から忠告したのではないかとの疑いが払拭できず,直ちに不当労働行為に該当すると断定することはできない(仮に万が一,不当労働行為に該当する余地があるとしても,上記被告Cの行為は,上記の動機態様に照らすと,社会的相当性を著しく欠く損害賠償を命じるに足りる不法行為を構成するものとはいえない。)。 エ原告らは,実施された知悉度テストの問題は被告らが主張する日勤教育の理由・目的から逸脱し,かつ,テストの問題それ自体が難問かつ不合理であり,これに合格することを乗務復帰の条件とすることは不合理であると主張する。しかしながら,本件日勤教育の原因は,前記2(1)及び(3)認定判示のとおり,原告Bの非違行為にあるから,原告Bに職制を初めとして会社組織全体の有り様について認識・学習させる必要性は十分に認められ,その成果をテストという形で客観的に判断することは有益であると考えられる。そこで,出題された問題の内容について検討する(なお,前記(2)エ(ア)認定のとおり,原告Bは運転関係業務については良好な成績であったから,同問題の合理性判断は行わない。)。前記(2)エ(イ)認定のとおり一般教養として出題された問題は被告会社や可部鉄道部の概要等であって,原告Bが被告会社の一員である以上これらは当然に知っておくべき事項であるし,上司に対して反抗的態度を取ったという原告Bの非違行為は組織体である会社の根幹に関わることであって,基本に立ち戻り被告会社や可部鉄道部の概要を知ることは,原告Bの将来にとっても決して無駄ではないというべきであるから,これら問題 という原告Bの非違行為は組織体である会社の根幹に関わることであって,基本に立ち戻り被告会社や可部鉄道部の概要を知ることは,原告Bの将来にとっても決して無駄ではないというべきであるから,これら問題をもって直ちに不合理とすることはできない。もっとも一般教養として出題された問題の中には前記(2)エ(イ)認定のように,被告会社の支社長や次長の年頭の挨拶の虫食い問題(しかも,その虫食い部分は多岐にわたっており(甲45),前後の文脈から推測することさえ困難と考えられる。)が含まれており,一般教養の範ちゅうのものとは考え難い問題も見受けられないわけではない。しかしながら,テストとして出題された問題の中に1問でも不合理とされる余地のある問題があるからといって,それだけでテスト全体が不合理と評価されるものではない。上記年頭の挨拶が出題されたのは2回目の知悉度テストであった(甲45,46)が,そのテストでは,それら以外にも可部鉄道部箇所目標とそれを達成するための4つのキーワードが一般教養問題として問われており,これらは,前記(2)ア認定のとおり原告Bが毎朝の点呼時に読み上げていたものである上,そもそも可部鉄道部に所属する運転士としてはまさに一般教養の範ちゅうのものといわなければならないが,これらも原告Bは解答できていない(甲30の1,54)ところである。次いで就業規則について検討すると,前記(4)ア及び(6)イ認定判示のとおり,就業規則の学習を初めとする自責ノートの作成には合理性が認められるところ,その自責ノートの内容と,原告B自らが再現した知悉度テストの問題(甲43ないし46)とを比較対照すると,出題された就業規則の条文のほとんどが学習済みのものと認められるから,就業規則の問題も必ずしも不当なものとはいい難い。 また,被告Cは原告Bに対し1回目の知悉度 甲43ないし46)とを比較対照すると,出題された就業規則の条文のほとんどが学習済みのものと認められるから,就業規則の問題も必ずしも不当なものとはいい難い。 また,被告Cは原告Bに対し1回目の知悉度テストの1週間前である平成14年1月17日に,テストの範囲として「就業規則なり,作業標準なり,のう。就業規則は頭から全部やりゃええ。」と述べており(甲47の1,54),その範囲についての一応の告知も行われているというべきである。これらからすれば,知悉度テストの問題内容を直ちに不合理なものとすることはできず,本件日勤教育との関連性も認められるというべきであって,原告らの主張は採用できない。 なお,原告らは,知悉度テストは日勤教育の長期化を正当化するために裁判対策として実施されたものに過ぎないとも主張する。証拠(甲29)及び弁論の全趣旨によれば,本件訴訟の被告ら代理人弁護士が平成12年に被告会社において,日勤教育に対する司法判断について,「知悉度テストの成績不良等知識技術の不足など客観的根拠を理由とする場合は長期日勤もやむを得ない。」とした上で,「教育期間中に定期的に知悉度テストを行う。節目で事実を残す。」との趣旨の講演を行い,被告会社広島支社もこれに列席していたことが認められる。本件での知悉度テストが本件日勤教育を正当化するための単なる戦術として実施されたのであれば,そのテストの正当性を揺るがしかねないところではあるが,本件では上記判示のとおりそのテスト内容を直ちに不合理とすることはできず,本件日勤教育との関連性も認められるのであるから,専ら日勤教育の長期化を正当化するために実施されたと推認するに足りず,他に原告らが主張する事実を認めるに足りる証拠はない。 オ原告らは,本件日勤教育を可部駅会議室で実施したこと,その間原告Bを監視したこと,同 長期化を正当化するために実施されたと推認するに足りず,他に原告らが主張する事実を認めるに足りる証拠はない。 オ原告らは,本件日勤教育を可部駅会議室で実施したこと,その間原告Bを監視したこと,同人が広島駅と可部駅を移動する間も上司が同伴したこと,毎朝の点呼時にキーワードを読み上げさせて見せしめにしたことは不合理であるとして,これらを不当労働行為性を基礎付ける事実として主張する。しかしながら,本件日勤教育を可部駅会議室で実施したことをもって原告Bに対する見せしめとするのは早計に過ぎ,可部駅会議室で実施した理由として被告らが主張する事由には首肯し得るものがあるし,日勤教育中の原告Bの勤務態度を確認する必要はあるから原告Bを監視したなどとする原告らの主張は失当である。また,移動時に上司が同伴したのも,前記(4)ア判示のとおり,他の運転士の運転動作を観察することに教育目的が認められる以上,その現場に上司が同行することも当然といえるし,キーワードの読上げも,前記(4)ア判示のとおりにわかに不合理なものとはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 4 争点(3)(本件懲戒処分の適法性)について(1) 前記争いのない事実等及び証拠(甲7,乙12,13,証人G)によれば,次の各事実が認められる。 ア就業規則の定め被告会社の就業規則146条は,社員が次の各号の1つに該当する行為を行った場合は懲戒すると定めている。 1号;法令,会社の諸規程等に違反した場合2号;上長の業務命令に服従しなかった場合3号;職務上の規律を乱した場合イ経緯(ア) 被告会社の社員管理規程16条1項は,「社員等の懲戒等は,社長が行う。」と定め,同条2項によって,被告会社広島支社では,広島支社長が次長等の一部社員を除いた他の社員に対しての懲戒等を代行して (ア) 被告会社の社員管理規程16条1項は,「社員等の懲戒等は,社長が行う。」と定め,同条2項によって,被告会社広島支社では,広島支社長が次長等の一部社員を除いた他の社員に対しての懲戒等を代行している。そして,支社長の行う表彰及び懲戒等について公平適切な審査を期するため,広島支社賞罰審査委員会規程により,賞罰審査委員会が設置されている。同委員会の委員長は支社長,副委員長は次長(企画担当),委員は次長(営業担当)の外,必要に応じて事案に関係する支社内の各課長等が臨時委員として指名される。 就業規則違反と思われる行為が発生した場合,人事課が調査を行い事実関係を把握して,その内容について必要な資料と共に委員会へ提出する。委員会は提出された内容を基に事実認定,懲戒処分等の必要性と量定のあり方などにつき十分な審議を尽くし,この審議に基づいて,最終的には委員長である支社長が判断し,処分の可否,その内容を決定することになる。 (イ) G人事課長は,原告Bが非違行為を行った翌日の平成13年12月26日に速報的な報告を受け,場合によっては懲戒処分を含めた何らかの措置が必要であろうと考えた。その後,平成14年1月9日に被告Aから事実関係の確認状況についての報告を受け,懲戒処分について検討の必要性を認めたため,人事課において調査を行ったところ,人事課としては何らかの処分が必要であるとの結論に至った。 そこで,支社長に上申して,委員会に付議されることになった。 平成14年2月13日に賞罰審査委員会が開催され,審議の結果,原告Bの行為は,就業規則146条1号,2号及び3号に該当することから,本件懲戒処分に付することとされた。 (2) 前項の認定事実を前提に,本件懲戒処分の適否について検討する。 前記2(3)ア及びイに認定判示したとおり,被告会社の就業規則3条,4 号に該当することから,本件懲戒処分に付することとされた。 (2) 前項の認定事実を前提に,本件懲戒処分の適否について検討する。 前記2(3)ア及びイに認定判示したとおり,被告会社の就業規則3条,48条によって,原告Bは上司たる被告Cの指揮命令系統に服すべきところ,被告Cの指示に従わずに反発・反抗した非違行為を行ったことが認められる。したがって,就業規則3条,48条の規定に違反したことになるので「法令,会社の諸規程等に違反した場合」,「上長の業務命令に服従しなかった場合」という懲戒事由に該当することになる。また,被告会社は安全・正確な輸送の提供,客本位のサービス提供を経営理念とする鉄道業を営む者である(乙15ないし20)ところ,原告Bの所為は,前記2(1)ク認定のとおり旅客からの苦情を招くなど,その信頼を損ないかねないものであったから,「職務上の規律を乱した場合」という懲戒事由にも該当するというべきである。 そして,本件懲戒処分は,前記(1)イ認定のとおり,所定の手続に従ってなされたと認められる。 したがって,本件懲戒処分は適法である。 5 争点(4)(原告組合及び原告組合広島地本に対する不法行為の成否)について(1) 本件日勤教育の平成14年2月6日以前の時期における被告Aによる個々の支配介入行為が,不当労働行為に該当すると同時に業務命令権を逸脱濫用するものであることは既に判示したとおりであり(前記3(4)イ(ア)及びウ),この行為は,原告組合及び原告組合広島地本の団結権等を侵害するものとして両原告に対する不法行為が成立するだけでなく,原告Bの人格権を侵害するものとして同原告に対する不法行為も成立する。 そして,平成14年2月7日以後の時期における被告A及び被告会社による本件日勤教育の再開継続もまた,不当労働行為に該当すると同時に Bの人格権を侵害するものとして同原告に対する不法行為も成立する。 そして,平成14年2月7日以後の時期における被告A及び被告会社による本件日勤教育の再開継続もまた,不当労働行為に該当すると同時に業務命令権を逸脱濫用するものであることは既に判示したとおりであって(前記3(4)ウ),この行為も,原告組合及び原告組合広島地本の団結権等を侵害するものとして両原告に対する不法行為が成立するだけでなく,原告Bに対する不利益取扱いであって同原告の人格権を侵害すると共に経済的不利益を与えるものとして同原告に対する不法行為も成立する。 被告Cについては,原告らの主張することさら原告Bを陥れる不法行為があったとは認められず,また,同被告につき不当労働行為が成立するとも認められないことは,既に判示したとおりである。 (2) したがって,被告A及び被告会社は,共同不法行為ないし使用者責任に基づき,原告らに生じた損害を賠償する責任がある。 6 争点(5)(損害)について(1) 原告Bについてア財産的損害証拠(乙138,146)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社において,乗務勤務の運転士が日勤勤務に指定された場合,諸手当の不支給等によって,一般的に1か月につき平均10万円の減収になることが認められ,かかる事実からすれば,原告Bについても,原告らが主張するとおり,平成14年2月分の手当として9万8012円,同年3月分の手当として9万2670円が減額になったことが推認される。そして,前記3(2),(3))及び(4)認定判示のとおり,本件日勤教育が実施された69日間のうち,原告Bに対する平成14年2月7日から同年3月4日までの26日間の本件日勤教育は不当労働行為として違法である。したがって,2月分と3月分の手当の減額分を基準として,69日のうち26日に相当す のうち,原告Bに対する平成14年2月7日から同年3月4日までの26日間の本件日勤教育は不当労働行為として違法である。したがって,2月分と3月分の手当の減額分を基準として,69日のうち26日に相当する期間の手当の減額分を案分計算によって算出して,これを財産的損害とするのが相当であり,次の計算式によれば,原告Bが被った財産的損害は7万1851円となる(円未満切り捨て)。 19万0682円×(26日/69日)=7万1851円イ慰謝料原告Bは,被告らによる業務命令権を濫用逸脱した不当労働行為によって,不法な1か月近くにわたる不利益取扱いである日勤教育の再開継続を余儀なくされ,その間原告Bは不安な日々を過ごし,高血圧傾向を示すなど体調にも影響が出た(甲84の1・2)こと,部長面談の場によって,現場長である被告Aから平然かつ露骨に人格権を否定されるような組合からの脱退慫慂がなされており,その態様も悪質といわざるを得ないこと,他方,原告Bの経済的損害の回復は別途認められているし,そもそも本件事件の発端は,同原告の不心得で職制を無視した軽はずみな対応にあったことなど諸般の事情を考慮すれば,原告Bが被った精神的損害を慰謝するには10万円を要するというべきである。 ウ弁護士費用本件訴訟の経緯,難易,認容額など諸般の事情を考慮すれば,弁護士費用は4万円とするのが相当である。 (2) 原告組合及び原告組合広島地本についてア慰謝料原告組合及び原告組合広島地本は,同組合員である原告Bが自ら招いたことであるとはいえ,同原告に対する原告組合からの脱退慫慂が繰り返された上,原告Bの日勤教育が再開継続されるなど,被告A及び被告会社広島支社による業務権限を濫用逸脱した不当労働行為によって団結権等が侵害される危険が生じたこと,本件日勤教育での部長面談等の 繰り返された上,原告Bの日勤教育が再開継続されるなど,被告A及び被告会社広島支社による業務権限を濫用逸脱した不当労働行為によって団結権等が侵害される危険が生じたこと,本件日勤教育での部長面談等の様子を録音したテープの反訳などの煩雑な作業を行わざるを得なかった(甲54)ことなど諸般の事情を考慮すれば,原告組合及び原告組合広島地本が被った精神的損害(無形の損害)を慰謝するにはそれぞれ10万円を要するというべきである。 イ弁護士費用本件訴訟の経緯,難易,認容額など,本件訴訟に現れた諸般の事情を考慮すれば,弁護士費用はそれぞれ2万円とするのが相当である。 7 結語以上より,原告Bの本訴請求は,被告会社及び被告Aに対して金21万1851円,原告組合及び原告組合広島地本の本訴請求は,被告会社及び被告Aに対して各金12万円及びこれらに対する日勤教育の終了した平成14年3月4日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 平成16年12月22日広島地方裁判所民事第1部裁判長裁判官坂本倫城裁判官次田和明裁判官古川大吾・別紙(1)被告Aの原告Bに対する発言① 2001年(平成13年)12月26日・部長室にて「渡り鳥してどの組合が1番えーか2か月ごとにかわって,自分で確かめてみー。渡り鳥したらよーわかる。」(甲53・ノートの記録「12月26日欄,甲54・5頁,被告A本人211~213項)② 2002年(平成14年)1月10日・業間訓練室にて「今回の組合のあの掲示は何か!会社の増収の取り組みを可部鉄道部で頑張ってやっている時に,タコ足か何か,書いて貼りやがって。誰がやったんか。掲示板はあんないたず 14年)1月10日・業間訓練室にて「今回の組合のあの掲示は何か!会社の増収の取り組みを可部鉄道部で頑張ってやっている時に,タコ足か何か,書いて貼りやがって。誰がやったんか。掲示板はあんないたずら書きをするためにあるんじゃないんど。あんなことするんなら,掲示板無いようにしてもええんど。」「徳山のP田か(P野の誤り)?Pなんか?知らんが,今回加入したとか喜んで書いて貼っているが,あんなやつは全然ダメで,西労組の組合も出て行ってもらって助かった,良かったといっていたんど。それをわざわざ徳山で集会やって騒いで喜んでいるが,何しとるんかお前らは。Bちゃんも行ったんじゃろ。」「誰が集会に行っているか会社はちゃんと調べてわかっとるんど。組合に全部面倒みてもらえ。」「何もできゃーせんよ。」(甲54・15頁9~13項)③同年1月11日・部長室にて「仕事が終わってから組合の地本事務所に寄って帰っているだろう。」「何のために行っているのか。そんなに組合が大事なのか。それじゃ全部組合に助けてもらえ。」(甲54・17頁~,被告A本人290~297項)④同年1月15日・可部鉄道部本部内にて「何か,組合の方で,例えばあーいうふうにやれよとかなもんがあったんか。 『情報』にしちゃる(組合掲示に書く)とか,そういうものはなかったんか。」「タコ足をフン。あんときにあれか,組合の方から例えば戦争にしちゃれとか,そういう話はないん?」(甲54・録音反訳21頁)⑤ 同年1月16日・可部鉄道部本部内にて「I君に、タコ足じゃ強制じゃとかいうて書いた者があったんじゃけど,どういう思いで書いたんか,誰の指示があったんか,わしゃー聞いて見たかった。」「あんた一人でグチャグチャにしたん。」「お前ら運転士,んふふ,よう知らんけど。 知らんで。わしの機嫌をとった方が絶対え ,どういう思いで書いたんか,誰の指示があったんか,わしゃー聞いて見たかった。」「あんた一人でグチャグチャにしたん。」「お前ら運転士,んふふ,よう知らんけど。 知らんで。わしの機嫌をとった方が絶対ええって。じゃない?」(甲54・録音反訳22頁1項,同23頁33項,同24頁36項)⑥ 同年2月1日・部長室にて「(原告地本が)2~3日前に申(シン=上申書)を支社に持って行ったとかいう話を聞いた。」「あんなもん書きやーがって,Bがヒドウ惨めになるだけいや。寄って集まってイタブリやがってバカたれが。かっこうつけるな。至らんことしてくれんでええんじゃ,わしに言わしゃ。出すのはかってよ。向うの。何しょーるんか,いたらんことすな,言いたいよ。」「大きゅうなりだしたろうがや。今頃やったら,乗っとる(乗務復帰している)わ,お前は。いたらんことすな。こっちのダンドリは大狂いじゃいやー。あんたをいたぶって何したけー何のメリットがあるか。バカ。おれの本音を言うたらそっちの方を怒りたいよ。」(甲54・録音反訳70~71頁,被告A本人156~192項)⑦ 同年2月6日・部長面談時に「(組合の)掲示なんかでも,なんじゃかんじゃ,あんまり刺激的なばかなこと書くなって。そこを言いようるわけよ。文字やったら消えんのじゃから。口やったら,言うた言わんじゃない。」(甲54・録音反訳76頁,被告A本人281~284項)(2)E総務科長の原告Bに対する発言証人Eは,本件日勤勤務中,原告Bに対し,次のような発言を行っている。 ⑧ 2002年1月17日・可部鉄道部2階会議室にて「部長(被告A)が何で怒っとってか,よう考えてみんさい。」「あの掲示を出して,強制じゃなんか書いとるじゃろ。強制なんかしとるまあ,一つも。つまらんことを掲示に書くけー頭に来るんよ。のう。」「それなの 部長(被告A)が何で怒っとってか,よう考えてみんさい。」「あの掲示を出して,強制じゃなんか書いとるじゃろ。強制なんかしとるまあ,一つも。つまらんことを掲示に書くけー頭に来るんよ。のう。」「それなのにワァワァ騒ぐけえ頭にくる。」「何か,K(=当時の原告地本執行委員長)がぐずぐず言うてきたらしい支社に…」「頭にきちゃったんよ。又脅しとるとか何とか言うたらしい。」「I君個人(当時の原告地本可部鉄道分会長)と話するんは別にええけど,分会長と話しするんはできんのじゃけえ,支社にばれたら大事よ,怒られるいや。」(甲54・録音反訳33~35頁)(3)被告Cの原告Bに対する発言⑨ 2002年3月1日・業間訓練室にて「指導で長門へ帰れーやー。」「色々勉強したし,B君は,よく知っているから指導をすれば良いと思う。」(甲54・91頁22~24項)以上
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