- 1 -令和6年4月19日宣告東京高等裁判所第8刑事部判決令和4年第1312号贈賄(被告人A2及びA3)、受託収賄幇助、贈賄(被告人A4)被告事件 主文 本件各控訴を棄却する。 理由 第1 原判決の認定事実の要旨及び控訴の趣意 1 原判決の認定事実の要旨(特に断らない限り、略称は原判決の表記による。)⑴ 分離前の相被告人A1は、平成28年6月21日から平成29年7月10日までの間、文科省大臣官房長として、同省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査、国会との連絡及び同省の所掌事務に関する総合調整に関する事務等を掌理することを職務とし、同月11日から平成30年7月4日までの間、同省科学技術・学術政策局長の職にあったもの、被告人A2は、C大学の理事長であったもの、被告人A3は学長であったもの、被告人A4は、Dの取締役であったものであるが、ア被告人A2及び被告人A3は、共謀の上、A1が、平成29年5月10日、Iにおいて、被告人A2から、文科省の「平成29年度私立大学研究ブランディング事業」に関し、C大学が支援対象校に選定されるように、同大学が提出する「事業計画書」の記載等について助言・指導するとの有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受けたことに関する謝礼として、C大学の平成30年度医学部医学科一般入試試験を受験したA1の二男に対し、平成30年2月4日、点数の加算をした上、同月17日、合格者の地位を付与し、もってA1の職務に関し賄賂を供与し(原判示第1の2)、イ被告人A4は、A1が前記アの請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、A2及びA3から、C大学の前記試験を受- 2 -験したA1の二男に対し、平成30 示第1の2)、イ被告人A4は、A1が前記アの請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、A2及びA3から、C大学の前記試験を受- 2 -験したA1の二男に対し、平成30年2月4日、点数の加算を受けた上、同月17日、合格者の地位の付与を受け、もって自己の職務に関し請託を受けて賄賂を収受するという犯行に及んだ際、その情を知りながら、平成29年5月10日、Iにおいて、A1がA2から前記ア記載の請託を受けるに当たり、同店での会食の場を設けて両者を面会させた上、同年6月上旬頃、A1による「事業計画書」の記載等についての助言・指導の内容をA2に伝えるなどし、もってA1の前記犯行を容易にしてこれを幇助し(原判示第1の3)、⑵ F4は、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間、JAXAの理事として、理事長を補佐して、JAXAの経営に当たるとともに、広報普及など広報部の業務及び契約など契約部の業務等を所管することを職務としていたものであるが、被告人A4は、Dの取締役であったD2と共謀の上、F4に対し、同社の営業相手においてJAXAから宇宙飛行士の講師派遣を受け、あるいは、同社の営業相手に対し被告人A4及びD2がJAXAの人工衛星を利用した業務を提案するに当たり、F4から助言・助力を受けるなど、同社のコンサルタント業務等に関して有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨又はそのような取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに、平成27年8月28日から平成29年3月28日までの間、21回にわたり、東京都内等の各飲食店等において、代金合計147万9848円相当の飲食等の接待をするとともに、平成28年12月5日、タクシーチケット1冊(利用金額合計6万5250円)を供与し、 間、21回にわたり、東京都内等の各飲食店等において、代金合計147万9848円相当の飲食等の接待をするとともに、平成28年12月5日、タクシーチケット1冊(利用金額合計6万5250円)を供与し、もってF4の前記職務に関して賄賂を供与した(原判示第2)。 2 各控訴の趣意被告人A2の控訴趣意は、弁護人片岡匡敏作成の控訴趣意書及び反論書に記載されたとおりであり、論旨は訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張で- 3 -ある。 被告人A3の控訴趣意は、主任弁護人弘中惇一郎、弁護人村山浩昭、同弘中絵里、同大木勇、同品川潤、同白井徹、同竹﨑裕及び同水野遼太作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に記載されたとおりであり、論旨は訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張である。 被告人A4の控訴趣意は、主任弁護人錦織淳、弁護人新阜直茂及び同山内久光作成の控訴趣意書及び意見陳述書に記載されたとおりであり、論旨は、原判示第1の3について訴訟手続の法令違反及び事実誤認、原判示第2について訴訟手続の法令違反、法令解釈の誤り及び事実誤認の主張である。 検察官の答弁は、検察官杉山貴史作成の答弁書記載のとおりであり、各控訴趣意にはいずれも理由がないというのである。 第2 原判示第1の事実について 1 訴訟手続の法令違反の論旨について論旨は、⑴被告人A2の検察官調書(乙12、14から17)について、原審裁判所が、A1、被告人A3及び被告人A4との関係で刑訴法321条1項2号後段に基づき、被告人A2との関係で同法322条1項に基づき、証拠採用したが任意性や特信性の要件を欠く、⑵被告人A3が学長室において提出した証拠に係る捜査報告書(甲90、94)は、無令状の捜索によって得られたもので重大な違法があり、派生証拠である被告人A3の検察官調書(乙21から26、2 件を欠く、⑵被告人A3が学長室において提出した証拠に係る捜査報告書(甲90、94)は、無令状の捜索によって得られたもので重大な違法があり、派生証拠である被告人A3の検察官調書(乙21から26、29。以下「被告人A3の検察官調書等」という。)とともに証拠能力を否定すべきである、⑶被告人A4が送信したメール(甲53)及びメッセージ(甲99)は、非供述証拠として採用されたのに、原判決は実質的に供述証拠として利用しており、採証法則に反する、これらを採用した原審裁判所の証拠決定(甲90、94は証拠排除しなかったこと)には、判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反がある、というのである。 ⑴ 被告人A2の検察官調書- 4 -ア原判決の判断の要旨弁護人は、①検察官は、被告人A2の行為が贈賄罪になると決めつけ、認めて反省しなければ身体拘束が避けられないとほのめかして迎合的にさせた、ほとんどの取調べが録音録画されていないのは何らかの心理的、言語学的見地による操作があったことを示すから、任意性に欠ける、②被告人A2は、高齢で心臓や緑内障の手術を受け、視野に大きな欠損が生じ、うつ病の症状も出て、多種類の薬を服用し、自分の意見をはっきり述べたり相手の言うことを否定したりすることができない精神状態であった、連日にわたり長時間の取調べを受け、肉体的にも精神的にも追い詰められ、記憶にあるか否かを吟味せずに取調べに応じていた、当時の弁護人が起訴猶予を見込み、否認すれば逮捕されるかもしれないと述べていたこともあり迎合的に供述したもので、刑訴法321条1項2号の要件も欠ける旨主張する。 被告人A2に治療経過やうつ病等の症状があったことが認められる。被告人A2に対し、在宅事件として捜査され、平成30年6月18日から7月24日までの間に計26日間取調べがされて も欠ける旨主張する。 被告人A2に治療経過やうつ病等の症状があったことが認められる。被告人A2に対し、在宅事件として捜査され、平成30年6月18日から7月24日までの間に計26日間取調べがされているが、4時間未満の取調べが20日を占め、取調べがなかった計11日間は自宅等で過ごしている。同年6月18日、19日に行われた最も長時間の取調べの最後の部分に限り録音録画がされているが、これによれば、検察官は黙秘してよいと告げ、被告人A2は、正直に話をした、調書の内容も間違いない、体の調子は普通ですなどと供述している。録音録画の際、被告人A2の健康状態が悪化し、あるいは疲弊しきるなどした様子は見受けられない。被告人A2がプレビューの存在を2日目(19日)に明らかにし、その動機も含めて話すなど供述経過も自然であり、弁護人が主張するような供述態度であったとはうかがわれない。 録音録画の内容をみても、被告人A2が、A1の二男の平成29年度入試の時点から、いい成績だったら、何とかなりますよ、あるいは、かなりよい線だったらなどと発言し、平成30年度入試の合格発表前に、A1に対し、電- 5 -話で、80番台にいて補欠の上位であると言うと、A1が、補欠ではね、正規になりませんかねなどと発言したと述べている点は、両日に作成された検察官調書及びその後の供述調書を通じて一貫している。 以上から、被告人A2の自白調書の任意性に疑いはない。また、被告人A2の公判における否認供述には不合理な点があるが、被告人A2は、裏口入学したとの二男に対する誹謗中傷に心から申し訳ないと心情を吐露しており、他の被告人らの否認供述を踏まえて供述していると認められる。このような外部の事情を顕著に意識した公判供述に比し、強い影響を受けなかった捜査段階の供述が相対的にみて特に信用すべきであ を吐露しており、他の被告人らの否認供述を踏まえて供述していると認められる。このような外部の事情を顕著に意識した公判供述に比し、強い影響を受けなかった捜査段階の供述が相対的にみて特に信用すべきであると認められる。 イ当裁判所の判断原審裁判所の決定、判断に訴訟手続の法令違反は認められない。 所論は、被告人A2が、高齢でうつ病や睡眠剤の影響、視野の欠損、長時間の取調べによる疲れから集中力が低下し、検察官に迎合的になった、供述調書を作成する過程が全く録音録画されておらず、取調べの全過程を録音録画していないことが取調べの異常さを裏付けている、録音録画されたレビュー方式の取調べでも、検察官の誘導により検察官のストーリーに沿う解釈を押し付けられ、被告人A2が心理的に圧迫され、迎合的な対応を余儀なくされたことが明らかである、当時の弁護士から、不起訴を狙うので検察官に協力するようになどと不適切なアドバイスを受けたため、検察官のストーリーに合う供述を押し付けられたもので、任意性を欠く、あるいは原審公判供述より特に信用すべき情況にはなかった旨主張する。 しかし、被告人A2の年齢や健康状態、在宅事件として捜査されたこと、1日の取調時間や取調べがなかった日があったこと等の経過等を踏まえ、録音録画された取調べの状況や供述態度を見る限り、検察官に言われるがまま迎合的に答えている態度には解し難く、被告人A2の健康状態が悪化していたり疲弊しきったりした様子が見受けられないこと、被告人A2の検察官調- 6 -書の主要な内容が当初から一貫していることなどから、被告人A2の自白調書の任意性を認め、また、原審公判で他の被告人らの否認供述と矛盾が生じないように明らかに意識した供述をしており、原審公判供述に比べて、捜査段階の供述に特信性が認められるとした原判決の判断 2の自白調書の任意性を認め、また、原審公判で他の被告人らの否認供述と矛盾が生じないように明らかに意識した供述をしており、原審公判供述に比べて、捜査段階の供述に特信性が認められるとした原判決の判断が不合理とはいえない。 所論は、①被告人A2の検察官調書(乙17)では、第一次試験の合格発表日より前に、被告人A2がA1に直接電話で合格の報告をしたとあるが、そもそも発表日が2月8日ではなく7日の誤りである上、被告人A2とA1が電話で話したのは合格発表後の同月8日で、同月6日に被告人A2とA1の通話はないから、上記供述調書の内容は通話履歴と整合せず、争点に関わる枢要部に客観的矛盾があり、これは検察官の誘導によると解されるから、任意性も特信性もない、②被告人A2の検察官調書(乙39)では、被告人A2が被告人A3に対し、第一次試験の後で第二次試験の前に二男を合格させたい旨伝えたと供述し、翌日の調書(乙40)では第一次試験の成績に加点したと変わったところ、被告人A2が加点した試験が第一次か第二次かを間違うはずがなく、当時検察官が第二次試験で加点した疑いを抱いていたことに照らし、被告人A2の迎合的な態度に付け込んで検察官の強い誘導によって作成されたもので、任意性がない、③被告人A2の検察官調書(乙16)では、被告人A2が、被告人A4に対し、A1に事業計画書案を渡すように依頼した際、被告人A4から連絡が来たと供述したが、被告人A4のメール(甲99)によれば、被告人A2から連絡したもので、検察官調書の内容は虚偽であり、任意性がない旨主張する。 合格発表日の誤りや加点した試験を取り違えているのは所論のとおりである。しかし、①は、被告人A2が、二男の第一次試験合格について、まず被告人A4を介して電話でA1に伝えて、その後、A1と直接電話で話したと述べた りや加点した試験を取り違えているのは所論のとおりである。しかし、①は、被告人A2が、二男の第一次試験合格について、まず被告人A4を介して電話でA1に伝えて、その後、A1と直接電話で話したと述べた経過(乙17)は、同月6日に被告人A2、被告人A4、A1の間で順次連続した通話があり、同月8日早朝に被告人A2とA1の間で通話があ- 7 -った履歴と一致しているから明らかに客観証拠と矛盾するとまではいえない。 ②は、取調べ初日の供述で、時間の経過等のために正確に供述していなかったとしてもやむを得ない面があり、翌日の調書では訂正されて、相応の理由も説明されている。③は、どちらから連絡したかはさておき、互いに連絡を取って被告人A2が被告人A4に事業計画書案を預けたという中核部分は揺るがない。したがって、所論の指摘する検察官調書の矛盾や誤りの内容から直ちに任意性等に疑問が生ずるとは認め難い。 所論は、被告人A2の原審公判供述のうち、A1から事業計画書案について助言・指導を受けなかったこと、不正加点が助言・指導の謝礼の趣旨を含まないことは、A1や被告人A4と共通した体験事実ではなく、被告人A2において矛盾が生じないように努める関係にはないから、捜査段階の供述に特信性が認められるとした原判決の判断は不合理であると主張する。しかし、上記の点は、それぞれ賄賂の対価となる便宜供与や対価性に関する争点の判断に重要な内容であり、他の被告人らの否認供述に影響を与え得ることは明らかであって、被告人A2が、原審公判で、他の被告人らの否認供述という外部の事情を顕著に意識した供述をしたなどとして、捜査段階の供述に特信性が認められるとした原判決の判断に誤りはない。 その他所論を踏まえて検討しても、原審裁判所が被告人A2の検察官調書の証拠能力を認めて採用した点に、訴訟手 供述をしたなどとして、捜査段階の供述に特信性が認められるとした原判決の判断に誤りはない。 その他所論を踏まえて検討しても、原審裁判所が被告人A2の検察官調書の証拠能力を認めて採用した点に、訴訟手続の法令違反はない。 なお、所論は、被告人A2の検察官調書(乙12、14から17)の特信性及び信用性の補助証拠として採用された取調べの録音録画記録媒体(乙31、43)について、録音録画されたのは長時間の取調べの終了間際の短時間であり最小限の推認力すら有しない上、上記検察官調書が作成された取調べの録音録画ではないから自然的法律的関連性を欠き、取調べの必要性がなかった旨主張する。しかし、本件の争点や録音録画された供述内容等に照ら- 8 -せば、自然的関連性、取調べの必要性があったことは明らかであり、所論の指摘を考慮に入れても、法律的関連性を欠くとはいえない。 ⑵ 被告人A3の検察官調書等(違法収集証拠)ア原判決の判断の要旨Rの証言等関係証拠によれば、上記証拠の収集、作成状況について、以下の事実が認められる。 Rは、第二次I会食の録音内容や、C大学の元幹部から被告人A2が第二次試験で点数調整をした縁故入学者に係るリストがあるなどの情報を得て、平成30年6月18日午後2時24分から午後6時59分まで、被告人A3の取調べを行った。Rは、黙秘できることを伝えた上、縁故入学について確認すると、被告人A3は不正を否定し、あるとすれば採点後に同じような順位であれば縁故受験生を選ぶくらいである、大学OBや医師仲間の紹介による縁故受験生リストが学長室にあると述べた。Rが官僚の息子がいるか確認すると、被告人A3は、当初いないと述べ、追及されて、厚生省だったかな、文科省、役職や名前は覚えていないと述べた。Rがリストや入試関係の資料の提出を依頼すると、 と述べた。Rが官僚の息子がいるか確認すると、被告人A3は、当初いないと述べ、追及されて、厚生省だったかな、文科省、役職や名前は覚えていないと述べた。Rがリストや入試関係の資料の提出を依頼すると、被告人A3は、リストは捨てたかもしれないと述べたが、結局提出を承諾した。 被告人A3は、その場で手帳や携帯電話の任意提出に応じ、午後7時15分頃、Rと事務官3名とともに車で出発し、学長室まで案内して移動した。 被告人A3は、壁一面にある本棚の中からファイルを取り出して開き、上げてますねと言って「K、文科省、+10」との記載を示し、第一次試験であると答えた。Rは、学長室のパソコンで作成したと聞いてパソコンの提出を求めたが、被告人A3が業務上の利用を理由に拒んだため、データをUSBに移して提出を受けた。Rが入試関係資料の提出を求めると、被告人A3は捨てたかもしれない、どこにあるかも分からないと言ったため、被告人A3の了解を得てRと事務官が本棚等を探すなどし、入試の成績表等の提出を受- 9 -けた。 被告人A3は、午後8時51分頃から午後9時33分頃まで、学長室内で、Rの取調べを受け、被告人A2から、一般入試の前に文科省の幹部の息子が受けるからよろしくと言われた、具体的な役職は聞いていない、第一次試験後に被告人A2と加点を決めた旨述べた。第二次試験での加点を確認されると、はっきり思い出せないと述べ、供述調書に署名押印した。 Rは、同月19日以降も被告人A3の取調べを行い、第一次試験後のプレビューでの加点状況を確認するなどした。20日の取調べでは、ブランディング事業でC大学が選定されたことを確認し、被告人A3は、事業計画書の作成に関わっていないが、被告人A2から、二男の父親に申請書類を出す前に見てもらい、いくつか指導が入り、今年はいけるかもしれ ディング事業でC大学が選定されたことを確認し、被告人A3は、事業計画書の作成に関わっていないが、被告人A2から、二男の父親に申請書類を出す前に見てもらい、いくつか指導が入り、今年はいけるかもしれないと聞いた、当初、文科省の幹部としか聞いていなかったが、平成30年度一般入試の前、プレビューする前の頃に、被告人A2から、「今年も文科省の幹部の子息が受ける。ブランディングの関係でお世話になった。」と聞いてつながったなどと述べる一方、第一次試験後のプレビューの場では、文科省幹部の息子としか聞いておらず、ブランディング事業との発言はなかったと断言した。被告人A3は、加点の趣旨について、ブランディング事業の事業計画書を見てもらい、大学が選定されたお礼の趣旨であった旨述べた。 Rの証言は不自然・不合理な点はなく客観的証拠に符合している。RらがC大学のキャンパスのどこに縁故受験生リストが保管されているかを把握していなかったこと、学長室に多数の資料が収納され、どこにリストがあるか即座に把握できる状況ではなかったことなどに照らすと、被告人A3がファイルを取り出して二男の記載部分を示したとのRの供述は自然で合理的な内容である。Rの証言は基本的に信用できる。 被告人A3は、公判で要旨以下のとおり供述した。6月18日にRから、主任検事がかんかんになって怒っていると言われた。入試資料の在りかを聞- 10 -かれ、学長室にあると答えると、見せてほしいと言われ、まずいと思い、記憶違いと弁解すると、にらみつけて怒るように、うそをついたなと言われ、恐怖を感じた。誰に対する何の捜査かも分からず、従うしかなかった。学長室ではあらゆるところを探され、プライベートな手帳20冊位を押収された。 学長室で供述調書を作成した記憶はなく、検察庁に戻って再度取調べを受けた。その する何の捜査かも分からず、従うしかなかった。学長室ではあらゆるところを探され、プライベートな手帳20冊位を押収された。 学長室で供述調書を作成した記憶はなく、検察庁に戻って再度取調べを受けた。その後の取調べでは、被告人A2の判断で加点したのに、被告人A2と2人で話し合って加点したことにされた。逮捕勾留される恐怖があり、異議も出せず、黙秘もできず、取調べを拒否できなかった。Rは読み聞かせの際に傍らに立って威圧してきた。二男の得点なら何もしなくても補欠に入ると言ったら叱責され、正規合格も補欠合格も変わりないと言ったが正規合格の方がいいに決まっているだろうと言われ、加点して正規合格させたと調書に書かれた。記憶どおりに話せば否定され、自由に話せる雰囲気はなく、一度作成した調書は変更できないと思っていた。 Rは、被告人A3の取調べで、主任検事が怒っていると述べたことはあるが、取調べの初日ではなく、後にC大学のサーバーを分析した結果、10点以上の加算が見つかり、10点までしか加算がなかったとする供述と齟齬がある中、7月4日以降に再度確認した際の発言である旨具体的根拠を示して述べている。他方、被告人A3は、別の期日では、Rの前記発言の時期に関する供述を曖昧なものへ変遷させている。学長室に多数の書棚等がある中で、Rが即座に入試関係のファイルを発見できたというのも不自然である。押収された手帳の数も4冊にとどまる。学長室で供述調書を作成した記憶はなく、学長室から検察庁に連れていかれ、取調べを受けたと思うなどと客観的には存在しなかった取調べがあったと述べていることからすると、真の記憶を述べているのか疑問がある。被告人A3は、検察庁に呼び出されて文科省の子息がいるだろうと問い詰められた旨述べていたが、その後、文科省との言葉は自分かRのどちらかが出したと思 とからすると、真の記憶を述べているのか疑問がある。被告人A3は、検察庁に呼び出されて文科省の子息がいるだろうと問い詰められた旨述べていたが、その後、文科省との言葉は自分かRのどちらかが出したと思うなどと供述を変遷させている。被告人- 11 -A3の公判供述は全体として信用性に乏しい。 弁護人は、Rが学長室で被告人A3に縁故受験生リストを探させ、本棚を確認したり引出しを開けさせたりしたのは、形式は任意提出でも実質的には無令状で行われた違法な捜索差押えである旨主張する。しかし、被告人A3は、自ら学長室を案内してファイルを取り出し、問題となる箇所も開いてRらに示した上、入試関係の資料をRらが探すことに同意した一方、ノートパソコンの提出を拒んでUSBによるデータの移転によることを選択しており、被告人A3が任意に関係証拠の提出を行ったことは明らかである。また、Rらは、被告人A3が入学関係の書類がある場所を案内することを確認して学長室に移動したものの、被告人A3がどの場所にあるか分からないと述べたために学長室内を探すことになったもので、当初から書類等を探す目的があったとは認め難い。また、探索せざるを得ない状況になった後も、被告人A3の袖机の棚は自分で開けてもらうなど、その意思に基づいて入試関係の書類の有無を確認している。以上によれば、検察官らが建造物内で証拠物を探索したことは、令状主義を潜脱する意思はなく、証拠排除すべき重大な違法はなかったと認めるのが相当である。 イ当裁判所の判断原審裁判所が被告人A3の検察官調書等を採用し、あるいは証拠排除しなかった点に違法はない。 所論は、①Rの原審証言によっても、被告人A3が学長室への同行やリストの提出を承知した経緯が明らかにされていない上、Rら4名に取り囲まれて夜間に車で学長室に移動し 除しなかった点に違法はない。 所論は、①Rの原審証言によっても、被告人A3が学長室への同行やリストの提出を承知した経緯が明らかにされていない上、Rら4名に取り囲まれて夜間に車で学長室に移動したのは、恐怖や困惑に乗じて承諾させられたもので、真摯な同意があったとは考えられない、②原判決が、検察官らに当初から書類等を探す目的があったとはいえないと判断したのは非常識である、被告人A3がノートパソコンの提出を拒んだのは、さすがに業務に大きな支障が生じるためで、結局データの提出には応じたもので、原判決のように一- 12 -部の提出を拒んだことから任意性を推認するのは誤りである、実質的に無令状で捜索が始まった以上、パソコンの提出を拒むことがあったとしても、全体として真摯な同意に基づく任意なものであったとはいえない、③被告人A3は、当時の記憶に混乱があるにすぎないから、原審公判供述の信用性を排斥することはできないなどと主張し、検察官らが無令状で捜索差押えを行ったのは憲法35条に違反し、令状主義の精神を没却する重大な違法があるから、原審裁判所の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるという。 ①について、Rは、被告人A3に対し、縁故入学や入試の得点操作、縁故受験生リストの所在や記載内容、大学関係者以外の官僚の子弟の縁故入学の有無等を尋ねた上で、被告人A3が学長室にあると述べていたリスト等の提出を求めると、捨てたかもしれないと述べたことから、再度提出を依頼したなど被告人A3が学長室に同行してリスト等を提出することを承諾した具体的なやり取りについて説明し、その流れは具体的で不自然な点はない。また、被告人A3からリストや入試関係書類が任意提出されれば、直ちに検察庁まで運ぶ必要があったことなどに照らすと、Rと運転役を含む検 的なやり取りについて説明し、その流れは具体的で不自然な点はない。また、被告人A3からリストや入試関係書類が任意提出されれば、直ちに検察庁まで運ぶ必要があったことなどに照らすと、Rと運転役を含む検察事務官3名が車で同行したことは必要かつ合理的な対応である。さらに、学長室のあるビルやその入口、学長室までの動線を被告人A3が自ら案内したことに照らすと、被告人A3が学長室への同行を承諾していた旨の原判決の判断が不合理とはいえない。②について、被告人A3がリスト等を任意提出した場合、検察官らが自ら探す必要はないから、Rらに当初から書類等を探す目的があったとはいえないとの原判決の判断は不合理ではない。また、被告人A3が自らファイルを取り出し、不正加点に関する箇所を開いてRらに示し、入試関係の資料を探すことに同意したとの原判決の判断にも不合理な点はない。 さらに、被告人A3が、パソコンの提出を拒み、データの提出に同意したのは、被告人A3の意思に基づいて選択されたもので、原判決がこの点を任意- 13 -性の判断に当たり考慮したことも不合理とはいえない。③について、被告人A3の原審公判供述について、客観的事実との食い違いや恐怖を感じたなどの任意性に関する重要な部分に変遷や記憶違いがあることを指摘して信用性に欠けるとした原判決の判断も不合理とはいえない。 その他、所論を踏まえて改めて検討しても、Rらに、令状主義を潜脱する意図はなく、捜査手続に重大な違法はなかったとした原判決の判断に誤りはなく、原裁判所の決定に違法はない。 ⑶ 被告人A4が送信したメール及びメッセージ所論は、被告人A4が被告人A2に送った「今、A1さんにお渡ししました」旨のメール(甲53)及び被告人A4がD3に送った「A1さんには、パクリはいいけど……と言われて、私の方で修正 及びメッセージ所論は、被告人A4が被告人A2に送った「今、A1さんにお渡ししました」旨のメール(甲53)及び被告人A4がD3に送った「A1さんには、パクリはいいけど……と言われて、私の方で修正して伝えて有ります」旨のメッセージ(甲99、以上を「メール等」という。)は、非供述証拠として採用されたのに、原判決は、これらによりA1が被告人A4からブランディング事業の事業計画書案を受け取った、あるいは、A1が事業計画書案の記載等について助言・指導したと認定しており、メール等の記載内容が真実でなければ価値のない文書を実質的に供述証拠として利用したものであって、採証法則に反する旨主張する。 原審において、上記メール等は、立証趣旨が「被告人A1、被告人A2及び被告人A4間におけるメールの授受状況及びその内容等」、「D関係者らの送受信に係るメールの存在、内容等」とされ、各被告人の関係で同意書証として採用された。被告人らの検察官調書が不同意となったため、その添付資料が客観証拠(非供述証拠)として採用されたものである。そうすると、上記メール等から、その内容自体の真実性、すなわち、記載された行為の存在等を直接認定することは許されないが、その文書の外観や記載等から合理的に事実を推認することは許されるというべきである。原判決は、メール等の記載内容に加え、メール等の送受信者、その関係や前後の行動等の事実関- 14 -係と併せて合理的に事実を推認しているもので、採証法則に反するとはいえない。所論は理由がない。 以上から、訴訟手続の法令違反の論旨は理由がない。 2 事実誤認の論旨について論旨は、原判決が、⑴A1が、被告人A2から請託を受けたこと、⑵A1の二男が点数の加算を受けた上、正規合格者の地位の付与を受けたことが賄賂たり得る利益であること、 2 事実誤認の論旨について論旨は、原判決が、⑴A1が、被告人A2から請託を受けたこと、⑵A1の二男が点数の加算を受けた上、正規合格者の地位の付与を受けたことが賄賂たり得る利益であること、⑶請託の対象となった行為が、A1の職務に密接に関係する行為に該当すること、⑷A1に受託収賄罪の故意があること、⑸被告人A2及び⑹被告人A3にそれぞれ贈賄罪の故意及び共謀があること、⑺被告人A4がA1の受託収賄罪を幇助し、その故意があることをそれぞれ認めたことについて、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのである。なお、被告人A3及び被告人A4の弁護人はA1の控訴趣意を援用するので、事実誤認に関するA1の趣意を含めて判断を示す。 ⑴ 請託を受けたかア原判決の判断の要旨証拠上明らかな事実A1は、平成28年6月から文科省大臣官房長に任じられた。被告人A4は、Dの取締役に就任する一方、国会議員の私設秘書、政策顧問として政治活動にも参加し、政治活動を応援していたL3を通じて紹介されたA1と親交を深め、L3から被告人A2を紹介された。被告人A2は、C大学の学長を経て、平成25年7月から平成30年7月までC大学の理事長を務めた。 被告人A3は、平成26年7月、C大学の学長に就任した。 文科省は、平成28年、ブランディング事業を実施した。文科大臣が委嘱した学識経験者等の委員で構成する事業委員会の下、審査部会が申請校の事業計画書を採点し、採点結果を踏まえて事業委員会が審査し、同事業の趣旨に沿った取組みを行う私立大学等を選定して支援対象校とすることとされた。 - 15 -C大学は、平成28年度ブランディング事業に申請して不選定となったが、平成29年度に再度申請して、支援対象校に選定され、設備整備費等補助金として約589万 対象校とすることとされた。 - 15 -C大学は、平成28年度ブランディング事業に申請して不選定となったが、平成29年度に再度申請して、支援対象校に選定され、設備整備費等補助金として約589万円の交付を受けた。 被告人A2は、平成28年度ブランディング事業の申請後、被告人A4を通じてA1との会食を求めた。A1には、当時、医学部進学を志望する高校3年生の二男がいて、進学先としてC大学を話題にすることもあった。A1は、会食で二男のことを伝えようと考え、二男の部活動(野球部)での新聞記事等を用意した。 平成28年9月、Iで、A1、被告人A2及び被告人A4が会食した(第一次I会食)。被告人A2はブランディング事業に申請していることを、A1は二男が医学部に進学希望であることを伝えた。同年11月にも、上記3名がMで会食し、その後、被告人A2は、A1の自宅宛てに、C大学の願書を郵送した。 C大学では、以前より、縁故受験生の一部について入学試験の得点を加算して順位を繰り上げ、優先的に合格させていた。被告人A2が理事長、被告人A3が学長となってからは、入試委員会に先立ち、両名及び医学科学務課長の3名が優遇措置を依頼された縁故受験生の得点調整を検討するプレビューを実施した。プレビューは、第一次、第二次試験の両方について実施され、平成29年度と平成30年度入試では、大学に2000万円を寄付する縁故受験生のうち、一定水準以上の得点だった者に加点し、順位を繰り上げることがあった。 二男は、平成29年2月にC大学医学部医学科入試の第一次試験を受験した。縁故受験生リストには二男が含まれていたが、得点が低かったため、プレビューで加点の対象とされず、二男は第一次試験に不合格となった。その頃、A1は、被告人A4を通じて被告人A2から、二男の第一次試 た。縁故受験生リストには二男が含まれていたが、得点が低かったため、プレビューで加点の対象とされず、二男は第一次試験に不合格となった。その頃、A1は、被告人A4を通じて被告人A2から、二男の第一次試験の結果を伝えられ、「C 400点 200点 1000番 230 1051番- 16 -200」などと手帳に記載した。 被告人A2は、被告人A4を通じて再びA1との会食を持ち掛け、同年5月10日、3名がIで会食した(第二次I会食)。被告人A4はその際の会話を秘かに録音した。被告人A2は、A1に対し、ブランディング事業の趣旨の説明のために文科省の担当者の紹介を依頼した。 A1は、翌11日、Qホテルで、被告人A2に対し、記入要領等に係る問合せは、公平の観点から原則として電話とし、個別大学の申請内容に関わる問合せには対応できない旨の記載部分にマーカーで着色した、平成29年度ブランディング事業の公募通知を交付し、担当者を紹介できない旨を伝えた。 被告人A2は、「文科ブランディング」「5月20日-23日」「素案」と封筒にメモをした。 被告人A2は、同月22日、被告人A4に面会を申し入れ、同月25日、被告人A4と面会した後、C1に事業計画書案の作成について指示した。被告人A2は、同月31日午前、C1から事業計画書案を受け取り、同日午後、A1に対し、「ブランディングの書類一応できましたのでお目通し頂けますでしょうか?先生のご指示のところへお持ちしますし、お時間があれば遅くてもお目にかかることができれば幸いです。」などとメールを出し、被告人A4に対し、事業計画書案等を入れた封筒を預け、A1に渡すように依頼した。被告人A4は、同年6月1日、文科省大臣官房長室にA1を訪れ、事業計画書案を持参し、その後、被告人A2に対し、「今、A1さんにお渡しし 、事業計画書案等を入れた封筒を預け、A1に渡すように依頼した。被告人A4は、同年6月1日、文科省大臣官房長室にA1を訪れ、事業計画書案を持参し、その後、被告人A2に対し、「今、A1さんにお渡ししました。今週末迄には、A1さんと会って打合せします。」とメールを送り、同月3日、A1と会った後、「ブランディングの資料は拝見させて頂きました。A1さんとも打合せしました。少し修正が必要な感じですが、どの様にお伝えしましょうか?」とメールを送った。被告人A4は、同月5日、書き込みがされた事業計画書案を被告人A2に渡し、翌6日、D3に対し、事業計画書案について、「A1さんには、パクリはいいけど、表紙の表題と図が- 17 -全く的外れと言われて、私の方で修正して伝えて有ります。」とメッセージを送った。 被告人A2は、書き込みを入れた事業計画書案を受け取った直後、C1に対し、やさしい医科大学は曖昧だ、メタボロームはP1大学等が進めているので弱い、イメージ図が分かりづらい、他大学が追随できない、他大学に先導して、拠点の整備を前面に打ち出して、C大学の行く先、方向性を明記し、ブランドを目指すように、などと事業計画書案の修正を指示した。C1は、同月6日、被告人A4に修正した事業計画案を送信し、同日夜、被告人A4から、イメージ図がまだ分かりづらいなどと電話で言われた。 C大学は、同月7日、事業計画書等を文科省に提出し、同年10月、支援対象校に選定された。A1は、担当課長から結果を聞き、公表に先立ち、被告人A2に対し、電話でC大学の選定を連絡した。 A1の二男は、平成30年2月、C大学医学部医学科の第一次試験を受験した。同月4日、被告人A2と被告人A3らは、第一次試験後のプレビューを行い、二男の合計点に10点を加点して236点とした(合格ライン2 の二男は、平成30年2月、C大学医学部医学科の第一次試験を受験した。同月4日、被告人A2と被告人A3らは、第一次試験後のプレビューを行い、二男の合計点に10点を加点して236点とした(合格ライン217点)。同月7日、第一次試験の合格発表がされ、翌8日、被告人A2は、A1に対し、二男の合格に関し電話をかけた。 二男は、同月10日、第二次試験を受け、計301点(87位)となった。 被告人A2と被告人A3らは、同月11日、第二次試験後のプレビューを行ったが二男を含め誰にも加点しなかった。同月13日、被告人A2、被告人A4、A1と順次電話がされ、A1は、手帳に「450名→ 70番正規2/13 80番補欠調整中」と記載した。同月14日、A1は被告人A4と相談の上、二男の入試結果について被告人A2に電話で連絡を入れた。適性検査等による不合格者5名及びセンター試験利用者8名が一般入試の合格者枠から除かれた結果、二男は合格者75名中74位となり、同月17日、正規合格の発表がされた。 - 18 -請託を受けたかa 第二次I会食における会話音声データによれば、被告人A2が文科省担当者の紹介をA1に依頼しただけでなく、二男の平成29年度入試に関して加点ができなかった経過が暗に示された上、被告人A2からA1に対し、ブランディング事業に関してC大学が支援対象校に選定されるよう、同大学が提出する事業計画書の記載等について助言・指導するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の申入れがあり、A1、被告人A4もそれを容認していたとみるのがごく自然であったと認められる。 すなわち、A1は、以前の会食において、医学部を受験する予定の二男がC大学も話題としていたと話し、その後、被告人A2は、A1に願書を送り、わざわざ二男の第一次試験の結果を であったと認められる。 すなわち、A1は、以前の会食において、医学部を受験する予定の二男がC大学も話題としていたと話し、その後、被告人A2は、A1に願書を送り、わざわざ二男の第一次試験の結果を伝えていた。被告人A2は、公判で、第一次I会食において、A1に対し、二男の入試について、「ある程度いい線行っていたら何とかなりますよ。」と言ったこと、以前にブランディング事業に関してA1の指摘を受けて選定されないと思ったが、次を見越して「来年は事前に指導をお願いするかもしれない。」と言ったところ、A1が「分かった。」旨言ったこと、二男の入試結果を被告人A4に伝えた際、「400点満点で200点で1051位だった、申し訳ないけど今回は無理だ。1000番を超えると難しい。一次の足きりが230点だったから、もうちょっと取ってくれればいいね。」などと説明し、被告人A4も「それじゃ仕方ない。1000番台じゃあな。500番とは違いますしね。」と答えたことを供述している。この公判供述は、A1の手帳の記載とよく整合し、信用できる。一方、A1は、230点取れば1000番台になるなどと聞いたと供述するが、客観的な結果と異なり、わざわざ虚偽の事項を連絡する理由もなく、信用性に乏しい。 以上のとおり、信用できる被告人A2の公判供述等によれば、第二次I会- 19 -食の目的は、事業計画書の書き方について、A1から助言・指導を得るとともに、二男の医学部入試を併せて話題にすることにあり、被告人A2はもちろん、A1と被告人A4も同様の認識であったといえる。 音声データによっても、A1が、開口一番に、本当に申し訳ない、浪人して頑張っているなどと二男の不合格に関して唐突に話し出し、被告人A2も「来年は、絶対大丈夫だと思いますので。」「もうあと5点、10点欲しいなとね。 ても、A1が、開口一番に、本当に申し訳ない、浪人して頑張っているなどと二男の不合格に関して唐突に話し出し、被告人A2も「来年は、絶対大丈夫だと思いますので。」「もうあと5点、10点欲しいなとね。」などと言い、準備していた二男の第一次試験の各科目の点数、合計点、順位を記載した書面を渡している。この会話の内容は、第二次I会食で二男の医学部入試が話題になることがあらかじめ想定されていたことと整合するだけでなく、二男の得点が低すぎたために加点できなかったことについて、あらかじめA1と被告人A2に共通認識があったことを前提にすると、よく理解できる。 A1は、既に被告人A4を通じて、二男の第一次試験の成績が200点と伝えられ、順位の繰上げができなかった経過も併せて伝えられていたと推認できることからすると、二男の成績が合格ラインに30点足りないにもかかわらず、「あと5点、10点」あればという被告人A2の発言は、合格ラインに30点足りなくても、5点、10点あれば加点するなどの有利な取り計らいをして合格できることを暗に伝える趣旨の発言と認められ、A1及び被告人A4はそのような趣旨と理解できたと考えられる。 A1と被告人A4は、二男の得点が合格最低点に達しない場合、被告人A2が加点等の優遇措置を講じて、二男を合格させることができるとよく認識していたとみるのが自然な内容の会話をしていたといえる。 A1は、C大学の縁故受験生の不正入試について知らなかった旨供述する。 しかし、一部の私立大学に入学者選抜の公平を疑わしめる事態があったことを指摘する文科省事務次官の通知が出た当時、A1が高等教育局に配属されてその内容を当然に把握していたと認められる上、A1が、第二次I会食で、- 20 -通知以前から私立大学に高額の寄付金が求められる実態があったことを話題 通知が出た当時、A1が高等教育局に配属されてその内容を当然に把握していたと認められる上、A1が、第二次I会食で、- 20 -通知以前から私立大学に高額の寄付金が求められる実態があったことを話題にしており、不正入試がその後も実質的に継続している可能性があり得ることを認識していたといえる。 また、A1は、第二次I会食において、ブランディング事業の申請に際し、文科省の担当者からC大学の担当者に対し、事業の趣旨を説明するのみならず、意見交換を行って、ブランディング事業の趣旨に合っているかどうかをサジェスチョンできるとした上で、前年度の事業計画書の内容が趣旨に合っていないことなど具体例を挙げて教示し、このような問合せのため文科省の担当者を求めても通常は断られる内容であるが、一番良い者を付けるなどと発言し、被告人A4も、C大学の担当者が文科省に来庁する際、同行して担当者の来庁が記録に残らないようにするなどと同調する発言をしたと認められる。両名の一連の発言内容からすれば、通常は問い合わせても断わられるような実質的な記載内容に関する具体的な助言・指導を受けられると容易に理解できるもので、被告人A2が、事業計画書の記載等につき助言・指導することを依頼し、A1がこれを承諾したとみるのが自然な内容の会話がなされていたと認められる。 これに対し、A1は、担当者間の意見交換の部分について、「制度の趣旨を説明するだけで内容を説明することはない。リップサービスで一番良い担当者を付けると言った。」などと供述するが、発言内容から明らかにかけ離れており、また、A1が担当者を紹介できないことを翌日わざわざ被告人A2に伝えていることからも、酔余のリップサービスの類とは考え難い。被告人A2は、公判で、文科省の高官の人が私たちに教えるのは役職柄まずいものなので、名前 当者を紹介できないことを翌日わざわざ被告人A2に伝えていることからも、酔余のリップサービスの類とは考え難い。被告人A2は、公判で、文科省の高官の人が私たちに教えるのは役職柄まずいものなので、名前を出さないようにと言っているのではないか、私たちにだけそうしてくれるのかなと思った、ブランディングの全体的な趣旨を、特にA1の意見を言ってくれていると思っていた旨述べており、A1から助言・指導を受けられると期待していたと認められる。 - 21 -以上から、第二次I会食の会話は、被告人A2は、二男の得点が合格最低点に達しない場合には、加点等の優遇措置を講じられることを、A1との共通認識とした上、A1に対し、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼し、A1がこれを承諾したとみるのが自然な内容であったと認められる。 b 事業計画書の記載等についての助言・指導の有無第二次I会食で録音された会話内容、Qホテルの面会、被告人A2の「ブランディングの書類ができたのでお目通しをしてほしい」、被告人A4の「今、A1さんにお渡ししました。今週末迄には、A1さんと会って打合せします」、「ブランディングの資料は拝見させて頂きました。A1さんとも打合せしました。少し修正が必要な感じですが、どの様にお伝えしましょうか?」旨の一連のメールの記載内容やA1、被告人A2、被告人A4らの行動等からすれば、A1が被告人A4を通じて事業計画書案を受け取り、その記載内容について被告人A4と打ち合わせたことが優に推認できる。また、被告人A2は、Qホテルで会ったことを受けて、封筒に「5月20-23日」「素案」等とメモを記載し、同月22日に被告人A2が被告人A4に面会を求めて、同月25日にはC1に事業計画書案の作成を指示しているのである 、Qホテルで会ったことを受けて、封筒に「5月20-23日」「素案」等とメモを記載し、同月22日に被告人A2が被告人A4に面会を求めて、同月25日にはC1に事業計画書案の作成を指示しているのであるから、被告人A2による事業計画書作成の着手がA1との打合せに関連していることが裏付けられる。 もっとも、A1と被告人A2の間の直接のやり取りがなく、いずれも被告人A4が介在しているが、被告人A4が、第二次I会食で間に立つ旨発言している上、6月6日にD2に対し「ブランディング(文科省認定)を取る為にA2理事長がA1さんにお願いしてる件で、私が全て間に入って進めてる」とメールを送ったことに照らすと、被告人A4が間に入って連絡を取り持っていても不自然ではない。 また、被告人A2は、書き込みの入った事業計画書案を被告人A4から受- 22 -け取りその助言を受けたと認められるところ、その内容はDの従業員が事業計画書に書き込みするなどした内容と整合するものもあり、A1ではなく、被告人A4の判断によりなされた助言のようにも思われる。しかし、被告人A4がD3に対し「A1さんには、パクリはいいけど、表紙の表題と図が全く的外れと言われて、私の方で修正して伝えて有ります」とメッセージを送ったことからすると、被告人A4の助言内容には、A1の助言を踏まえた内容が含まれていると推認できる。 以上からすると、A1は、被告人A4を通じて、被告人A2が依頼した事業計画書案の記載内容を確認して助言・指導したと認められる。 A1は、公判で、第二次I会食後にブランディング事業の公募通知を見て、大学からの問合せには電話のみ対応と知り、非常に驚き、被告人A2に電話して、Qホテルで会い、担当者を紹介できない、私自身もブランディング事業の件について会うことができない旨伝え、被告人 通知を見て、大学からの問合せには電話のみ対応と知り、非常に驚き、被告人A2に電話して、Qホテルで会い、担当者を紹介できない、私自身もブランディング事業の件について会うことができない旨伝え、被告人A2は了解したものの、誰かに見てもらえないかと再三言ったため、被告人A4に相談してはと提案した旨供述する。しかし、公募通知を見て驚愕し、その日の夕方に慌てて被告人A2と会い、ブランディング事業の件で関わることを断ったという上記供述は、極めて強い印象に残るはずの重要な内容であるにもかかわらず、Qホテルでの出来事を思い出せなかったと述べていた捜査段階の不自然な供述内容から明らかに変遷している。また、A1は、担当者の紹介を断ったことを被告人A4に知らせていなかったと述べるが、第二次I会食で、被告人A4を通じて文科省の担当者を連絡するとしていたもので、その後、被告人A4を通じて事業計画書案を渡されそうになったにもかかわらず、被告人A2の依頼を断ったことを被告人A4に全く話さなかったとは考え難い。A1の上記公判供述は信用性に乏しい。 被告人A2も、公判で、QホテルでA1から担当者の紹介を断られ、その後、助言・指導を受けていない旨供述する。しかし、被告人A2は、捜査段- 23 -階において、A1が公募通知のマーカー部分を示しながら、記載してあるとおり、対応できないことになっているのでA1の名前を絶対に出さないでほしいと要請してきた旨供述しており、公判になってその供述を変遷させたことを認めている。また、被告人A2は、A1にブランディングの書類のお目通しをしてほしいとのメールを出し、その後も被告人A4との間でA1の関与を前提としたやり取りをしている点について、A1に断られたことを被告人A4に隠し、相談しなかった、A1と相談している旨の被告人A4のメー てほしいとのメールを出し、その後も被告人A4との間でA1の関与を前提としたやり取りをしている点について、A1に断られたことを被告人A4に隠し、相談しなかった、A1と相談している旨の被告人A4のメールは、自分を喜ばせるためにしたと思った旨供述するが、メール内容と明らかに矛盾し、内容も場当たり的で、信用性に乏しい。 被告人A4も、公判で、A1に事業計画書案を見るのを断られたが、被告人A2の要請をむげに断れないため、D3らと打ち合わせて事業計画書案にコメントを入れた、A1の名前があったほうが被告人A2が安心するかなと思っていたが、実際にはA1に事業計画書案を一切伝えておらず、政治家と官僚の間の調整としての二枚舌のような役割だと思った旨供述する。しかし、その内容自体が不自然な感を免れず、L3の大切な支援者であった被告人A2に対する対応として不合理である。A1が事業計画書案を見ることを前提としたメールのやり取りとも整合しない上、同様のメッセージを送ったD3に二枚舌を使う必要性も見出せない。被告人A4の前記供述は信用性に乏しい。 c 結論A1は、第二次I会食から事業計画書を提出するまでの間に、事業計画書の記載内容の助言・指導をしたと認められる。そもそもC大学側から何の依頼もなく、かつ何らの見返りもないのに、公募通知でできないとされている助言・指導をあえて行う理由は想定できない上、第二次I会食で、二男の入試で加点等の優遇措置を取ることができることが共通認識となっている中で、被告人A2が上記助言・指導を依頼し、A1が承諾したとみるのが自然な内- 24 -容の会話であったことを考え合わせると、優遇措置が見返りになるという共通認識の下、被告人A2がA1に対し、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼 4 -容の会話であったことを考え合わせると、優遇措置が見返りになるという共通認識の下、被告人A2がA1に対し、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼する請託をし、A1がこれを承諾したと推認できる。 10点を加算した理由及び趣旨弁護人は、文科省高官であるA1と人脈をもつことは私立大学として重要かつ有用であり、二男に10点を加点したのはC大学にとって有用な人材の確保の観点からであり、A1による事業計画書の記載等の助言・指導に対する謝礼の趣旨を含むものではない旨主張し、被告人A2もこれに沿う供述をする。 しかし、①被告人A2の第二次I会食の目的が、ブランディング事業の事業計画書の記載等についてA1から助言・指導を得るとともに、優遇措置が講じられることを前提に、二男の医学部入試の話題をすることであったこと、②実際にA1の助言・指導を受けて、C大学が支援対象校に選ばれていること、③被告人A2が、平成30年度入試の縁故受験生リストの二男の氏名の後に「(ブラン)」と記載し、連絡先として被告人A4の携帯電話番号を記載していたことからすると、二男に加点した趣旨には、請託を受けて、それに応じた助言・指導に対する謝礼の趣旨が含まれていたと推認できる。他の縁故受験生の寄付金の目安が2000万円であったことに照らすと、単に人脈形成目的のみで得点を加算したとは考え難く、被告人A2の前記供述は信用できない。 上記及びの事実認定は被告人A2の検察官調書によっても補強される。同検察官調書の内容は、客観的証拠等に基づく認定事実とよく符合し、十分に信用できる。被告人A2の供述は公判で部分的に変遷しているが、第二次I会食で、A1に事業計画書の記載の助言・指導を求め、A1が応じ、被告人A4を介して助言・指導し 基づく認定事実とよく符合し、十分に信用できる。被告人A2の供述は公判で部分的に変遷しているが、第二次I会食で、A1に事業計画書の記載の助言・指導を求め、A1が応じ、被告人A4を介して助言・指導してくれたので、恩返しの気持ちもあって、- 25 -平成30年度入試の二男の点数に加点し、第二次試験後に補欠合格ができる旨A1に伝えたところ、正規合格にするよう依頼されたという中核部分については、取調べの当初から一貫している。被告人A2が公判で供述を変遷させた部分に合理的な理由はなく、信用できない。 イ当裁判所の判断第二次I会食での会話の趣旨原判決の認定、判断に論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 所論は、第二次I会食において、①A1は、C大学の事業計画書の内容について助言・指導してほしいとの被告人A2の依頼を明確に断った、ブランディング事業に関する言動は一般論や公になっている内容にとどまり、個別案件に踏み込んでおらず、文科省の担当課で行っている通常の行政サービスの範囲内の説明であり、事業計画書に関する助言・指導に当たらない、②A1の二男に関する発言は、不合格となったふがいなさを詫びる一般的な儀礼として挨拶したもので、被告人A2が二男の入試の成績を踏まえて発言し、成績を記載した書面を渡したのは、A1に対する励ましや文科省との人脈作りの観点からであって、①②のやり取りから、A1が助言・指導の依頼を承認したことや加点の優遇措置が可能であることが共通認識になっていたと推認することはできない旨主張する。 しかし、①について、C大学のブランディング事業の申請の経緯や、被告人A2の第一次I会食から第二次I会食までの言動等に照らせば、被告人A2は、第二次I会食において、平成29年度ブランディング事業の申請に当たり、A1に担当者の指 ランディング事業の申請の経緯や、被告人A2の第一次I会食から第二次I会食までの言動等に照らせば、被告人A2は、第二次I会食において、平成29年度ブランディング事業の申請に当たり、A1に担当者の指導を依頼することを目的の1つとし、現に依頼したことが容易に認められる。そして、A1は、第二次I会食で、書き方の指導は違反であり名前を口外されると指導できなくなると明言する一方で、豊富な経験に基づき事業計画書の作成上留意すべき点について、担当者と意見交換すれば、制度の趣旨に合っているかどうかサジェスチョンができる、書き- 26 -方で変わってしまい添削が重要である、平成28年度の事業計画書はかなり厳しい状況であり、(C大学の)同じ担当者がその延長線上だと今年も無理だと思う、私が指示して一番良いの(文科省の担当者)をつける、日本一なのか世界一なのか分かるようなタイトルを入れる、50字以内で全てが分かるなどと具体的に説明しており、それ自体が実質的な助言・指導に当たる上、被告人A2において、今後事業計画書の記載内容に関する具体的な助言・指導を受けることができると容易に理解することができるといえる。②について、第二次I会食までの間に、被告人A2とA1の間で、特段の理由もないのに、ブランディング事業申請に関する助言・指導を依頼し、これを承諾するような関係があったとはうかがわれず、それ以前の会食で、二男の医学部受験が話題となり、被告人A2は、原審公判で、第一次I会食において、A1に対し、いい線までいけば何とかなりますよというぐらいのことを言った旨、また、被告人A4に対し、平成29年度入試の二男の成績について、1000番台以上だったからちょっと無理だったと述べ、被告人A4が、1000番台じゃあな、500番とは違いますしねと答えた旨の供述をしており、そ 人A4に対し、平成29年度入試の二男の成績について、1000番台以上だったからちょっと無理だったと述べ、被告人A4が、1000番台じゃあな、500番とは違いますしねと答えた旨の供述をしており、その信用性も高い。そして、第二次I会食では、A1が、二男が浪人して再び医学部を受験する旨を述べ、被告人A2が二男の入試成績を交付した上、あと5点、10点ほしい旨の発言を行っている。これらによれば、第二次I会食でのやり取りが単なる一般的な儀礼の挨拶、励ましや人脈作りではなく、A1はもちろん、被告人A4においても、二男の入試の得点が合格最低点に達しない場合、被告人A2が加点等の優遇措置を講じて、二男を不正に合格させることができることをよく認識していたとみるのが自然な内容の会話であるとの原判決の判断が不合理とはいえない。したがって、被告人A2が、事業計画書の助言・指導を依頼し、A1が承諾したとみるのが自然な内容の会話であると認定した原判決の判断に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 - 27 -所論は、被告人A2が、原審公判で述べた「あと5点、10点」とは、各科目にそれぞれ加えれば合格できるという意味で話した旨供述し、原判決のような意味にはならないと主張するが、会話内容や前後の文脈からしてそのような意味とは理解し難く、採用できない。 所論は、被告人A2らが第一次試験で合格ラインを超えた二男の得点に加点していることと、第二次I会食における認識が合格最低点に達しなかった場合に加点することだったとする原判決の認定とが整合しないから、第二次I会食の目的や認識は原判決の指摘するようなものではなかった旨主張する。 しかし、原判決が、二男が合格できるように加点等の措置を講じて配慮してくれるとの認識があったと認定したことは明らかであり、第二次試験を経 目的や認識は原判決の指摘するようなものではなかった旨主張する。 しかし、原判決が、二男が合格できるように加点等の措置を講じて配慮してくれるとの認識があったと認定したことは明らかであり、第二次試験を経て確実に合格できるように第一次試験で加点することと原判決の認定とが整合しないとの所論は当を得ない。所論は理由がない。 所論は、A1は、前記事務次官通知を認識していなかった、事務次官通知によって寄付金の収受による不正入試がなくなったと理解するのが自然であり、A1がC大学における不正入試をそもそも認識していなかった旨の公判供述が信用できないとした原判決の判断は不当である旨主張する。しかし、同旨の主張に対し、A1が高等教育局で勤務していたことに加え、第二次I会食で、私立大学の入学に高額の寄付金が求められる実態があったことを話題にし、そのような不正入試が継続している可能性があり得ることを職務上の知識、経験として認識していたといえるなどとして、A1の上記供述は信用できないとした原判決の判断が不合理とはいえない。 所論は、①A1が二男の成績を聞いたのは第二次I会食より3か月以上も前であり、職務が多忙で、二男の成績や合格ラインを忘れていたから、「あと5点、10点」と言われても思い出すことができず、もう少し点を取らないといけないという意味に受け止めた、②A1が名前を口外しないように要望したのは、過去にお役所のお墨付きを得ているように勝手に名前を利用さ- 28 -れて迷惑を被ったからであり、不当な便宜供与の口外防止を依頼したものではない、③A1は、平成28年度のブランディング事業計画書を見ておらず、申請の件を忘れていたことを悟られないように、自分の経験から想像して話したにすぎないから、個別案件に関する助言・指導に当たらない、④一番良い担当者を付ける旨 のブランディング事業計画書を見ておらず、申請の件を忘れていたことを悟られないように、自分の経験から想像して話したにすぎないから、個別案件に関する助言・指導に当たらない、④一番良い担当者を付ける旨のA1の発言はリップサービスで述べたもので、また、A1が助言・指導の依頼を明確に断ったことから、普通にいったらこれは聞かない旨の発言も、担当者が忙しいと後回しにされ、紹介者がいれば担当者との面談が円滑にできるとの一般論を表現したにすぎないから、原判決が、通常は文科省の担当者に断られる問合せである旨発言したとか、リップサービスの類とは考え難いとしたのは誤りである、これらを根拠に被告人A2が事業計画書に助言・指導を受けられると理解できたと認定したのも誤りである旨主張する。 しかし、①について、A1が、二男の成績、合格ライン等を手帳に記載し、会食の冒頭で二男の不合格に触れており、合格ラインに大きく足りない成績であったことを忘れるとは考え難い。②は所論が主張するような趣旨とは理解し難いから、採用できない。③について、A1の発言には事業申請に関する実質的なポイントの指摘が含まれており、被告人A2らにもそのように理解し得る内容であるから、所論は理由がない。④のうちリップサービスとの点は、その発言内容からかけ離れている上、被告人A2は、原審公判で、A1が意見を言ってくれていると思った旨述べたもので、記載内容について助言・指導を受けられると被告人A2が期待することを想像すらしなかったというのは不合理であるとの原判決の判断に誤りはない。普通にいったらこれは聞かない旨の発言の点も、前後の会話の内容から、一般論を述べたとは到底考えられないから、所論は理由がない。 その他、所論が主張する諸点を踏まえて検討しても、第二次I会食において、被告人A2は、二男の入試成 旨の発言の点も、前後の会話の内容から、一般論を述べたとは到底考えられないから、所論は理由がない。 その他、所論が主張する諸点を踏まえて検討しても、第二次I会食において、被告人A2は、二男の入試成績が合格最低点に達しない場合、加点等の- 29 -優遇措置を講じることを、A1及び被告人A2との共通認識とした上、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼し、A1がこれを承諾したとみるのが自然な内容の会話であると認めた原判決の判断に誤りはない。 第二次I会食以降の助言・指導の有無原判決の認定、判断に論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 所論は、A1は、Qホテルで被告人A2と会った際、被告人A2が事業計画書について話題にしたので、第二次I会食で話したような一般論を繰り返し述べ、相槌を打った程度の対応をした旨主張する。しかし、被告人A2は、原審公判で、自身が記載した封筒のメモに基づいて、A1から、全体的な骨格(素案)が非常に大切で、第三者を入れておおもとの素案を検討して書かなければならない、理事長も交えて始めから検討しなければならない、前年度に選定されたところを参考にして、同じレベルかそれ以上に、ブランディング事業の重要性、制度というものを強調して、日本一、世界一に属するような書き方を検討してみたら、などと言われた旨供述し、その信用性は高く、こうした発言も事業計画書の記載について相応に具体的な助言・指導をしているといえるとした原判決の評価が不合理とはいえない。 所論は、A1は、被告人A4から事業計画書案を受け取っていないし事業計画書案の記載等について助言・指導しなかったとして、①平成29年6月1日午後6時にDで事業計画書案がPDF化され、そのPDF画像にはステイプラーの跡が一か所し 事業計画書案を受け取っていないし事業計画書案の記載等について助言・指導しなかったとして、①平成29年6月1日午後6時にDで事業計画書案がPDF化され、そのPDF画像にはステイプラーの跡が一か所しかなく、被告人A4がA1に渡さないで持ち帰った原本をPDF化したとしか考えられない、原判決が、被告人A4があらかじめ事業計画書案のコピーを取っていた可能性があるとしたのは抽象的可能性の指摘にとどまる、②被告人A4は、D3らに依頼して事業計画書案を検討させ、D3らが書き込みした事業計画書案を被告人A2に渡したもので、D2に対する同月6日のメールで、A1が目を通したことを報告していない、- 30 -③被告人A4がD3に宛てた「A1さんには、パクリはいいけど……的外れと言われて、私の方で修正して伝えて有ります」とのメッセージは、同月1日にA1が被告人A4の的外れといった発言にうなずいた内容を記載した、④同年5月22日に被告人A4が被告人A2に面会を求め、同月25日は病院リートに関する打合せをしたもので、「5月20日―23日」との封筒のメモ書きは、A1の指示とは無関係であるから、助言・指導の依頼を断ったとするA1及び被告人A2の供述の信用性を裏付けるなどと主張する。 しかし、①について、原判決は、被告人A4の「A1さんに渡した」旨のメールやA1らの一連の行動から、A1が被告人A4から事業計画書案を受け取ったことが推認できるとした上、PDF画像のステイプラーの跡が一か所であるとしても、その経緯には様々な可能性が考えられ、1つの例として被告人A4が事前にコピーを取っていたこともあり得ると指摘したものと解され、いずれにしても所論の指摘は上記推認を覆すような事情には当たらないとしたもので、その判断が不合理とはいえない。②③について、メッセージの内容等 ピーを取っていたこともあり得ると指摘したものと解され、いずれにしても所論の指摘は上記推認を覆すような事情には当たらないとしたもので、その判断が不合理とはいえない。②③について、メッセージの内容等に照らすと、被告人A4が被告人A2に助言した内容には、D3らが事業計画書に書き込みを行った内容も含まれるものの、A1が事業計画書案を確認して被告人A4に助言した内容が含まれていたと推認できるとした原判決の判断が不合理であるとはいえない。④の指摘によっても、「5月20日―23日」のメモがA1側に事業計画書案を提出する期限の目安であったかどうかはともかく、被告人A2がブランディングの書類に目を通してほしい旨のメールをA1に送り、被告人A4を介して事業計画書案をA1に渡すよう依頼するなどした経緯に照らせば、A1が事業計画書案を受け取り、助言・指導したとした原判決の認定に疑問を差しはさむとは考えられない。 所論は、原判決が、被告人A2の依頼を断ったとするA1の公判供述は、これを思い出せなかったとする捜査段階の供述から変遷して信用できないとした点について、取調べまでに時間が経過し、直ちに思い出せなかったとし- 31 -ても不自然ではない、供述の変遷とはいえない旨主張する。しかし、A1は、原審公判で、公募通知を見て非常に驚き、ラインマーカーを引くなどの準備をして被告人A2に面会を求め、担当者を紹介できないしブランディング事業の件に関わることができなくなった旨伝えて、その後、事業計画書案について助言・指導したことはない旨述べるところ、第二次I会食の翌日にわざわざ被告人A2を呼び出して直接依頼を断ったという嫌疑を晴らす上で重要な事柄について、捜査段階では直ちに思い出すことができなかった旨の供述が不自然であるとした原判決の判断が不合理とはいえない。 所 わざ被告人A2を呼び出して直接依頼を断ったという嫌疑を晴らす上で重要な事柄について、捜査段階では直ちに思い出すことができなかった旨の供述が不自然であるとした原判決の判断が不合理とはいえない。 所論は、原判決が、A1に依頼を断られたことを被告人A4に相談しておらず、A1と相談しているとの被告人A4のメールは自分を喜ばせるために送ったと思っていた旨の被告人A2の公判供述について、メールの内容と明らかに矛盾して信用できないとした点について、被告人A2は、依頼を断られてどのような行動を取るか決められず、結局A1に再度依頼しようと考えてメールを送ったもので、矛盾はしない旨主張する。しかし、被告人A2は、断られた経緯等に一切触れず、いきなり「A2でございます。ブランディングの書類一応できましたのでお目通し頂けますでしょうか?」などとA1にメールを送った上、被告人A4との間でA1が助言・指導してくれることを前提としたやり取りをしたもので、前記公判供述がメールの内容と明らかに矛盾して整合的でなく場当たり的であって、信用性に乏しいとした原判決の判断に不合理な点はない。 所論は、被告人A4が、被告人A2にA1と相談しているとの前記メールを送ったのは、L3の支援者であった被告人A2を安心させるために、政治家秘書がよく行う調整として行った旨の被告人A4の原審公判供述に合理性があると主張するが、その内容自体が不自然な感を免れず、A1が事業計画書案を見ることを前提としたメールのやり取りとも整合しないなどとして、上記供述が信用できないとした原判決の判断に不合理な点はない。 - 32 -所論は、原判決が、被告人A2がA1に謝礼のメールを送信していないのは、A1がブランディング事業に関する被告人A2とのやり取りについて、被告人A4を通じて行うことを徹底したと い。 - 32 -所論は、原判決が、被告人A2がA1に謝礼のメールを送信していないのは、A1がブランディング事業に関する被告人A2とのやり取りについて、被告人A4を通じて行うことを徹底したとしても不自然ではないとした点について、被告人A2と被告人A4の間で、A1の名前を出してメールのやり取りをするなどしているから、原判決の指摘は抽象的な可能性にすぎず、裏付けもない旨主張する。しかし、第二次I会食やQホテルの面会で、A1が自分の名前を口外しないように求め、その後被告人A4を介して被告人A2と連絡を取っていたことは優に認められるから、被告人A2がA1に直接謝礼のメールを送信していないことが、A1が事業計画書の助言・指導を行ったことに疑問を生じさせるものではない旨の原判決の判断が不合理であるとはいえない。 原判決は、前記一連のメールやその前後のA1らの行動から、A1が、被告人A4を通じて被告人A2から事業計画書案を受け取り、その記載内容について被告人A4と打ち合わせて助言・指導をした旨認定したところ、この認定は動かし難い一連の客観的証拠を積み上げた相応に強固な根拠に基づくもので、被告人らの原審公判供述等に依拠した所論の指摘は、いずれも上記推認を覆すものではないというべきである。その他、所論が指摘する点を踏まえて検討しても、原判決の認定に論理則、経験則等に照らして不合理な誤りは認められない。 10点を加算した理由及び趣旨原判決の認定、判断に、論理則、経験則等に照らして不合理な誤りはない。 所論は、①被告人A2は、スポーツで活躍した二男の素質と文科省幹部との人脈づくりのために獲得したい人材と考えて縁故受験生としたもので、平成29年度入試では成績が足りなかったために加点せず、平成30年度入試では成績が加点条件を充たしたから加点し の素質と文科省幹部との人脈づくりのために獲得したい人材と考えて縁故受験生としたもので、平成29年度入試では成績が足りなかったために加点せず、平成30年度入試では成績が加点条件を充たしたから加点しただけで、ブランディング事業の申請とは関係がない、②10点の加点は他の縁故受験生と比べると最も少な- 33 -く、獲得したい人材という以外に謝礼の意味がなかったことを示す、③被告人A2が直接謝意を述べていないことからも、A1に謝礼するほど恩義を感じていなかった旨の原審公判供述の信用性は高い、④被告人A2が、平成30年度の縁故受験生リストの二男の箇所に「ブラン」と記載したのは、縁故関係を思い出しやすくするためであり、ブランディング事業との対価性を示すものではない旨主張し、10点の加点に助言・指導に対する謝礼の趣旨が含まれていないと主張する。 しかし、①は、事業計画書の助言・指導に関する謝礼の趣旨が含まれていたことを排斥する事情とはいえない。②③の指摘によっても、10点の加点に助言・指導に対する謝礼の趣旨が含まれていたとした原判決の判断が不合理とはいえない。④について、被告人A2が作成した縁故受験生リストには、紹介者の属性や姻戚関係等縁故受験生に対する加点の有無や程度を決定する事情が記載されていたと認められ、二男の欄の「ブランディング、ブラン、文科」の記載は、被告人A2が、A1との関係で事業計画書の助言・指導を受けたことを重視していたことと整合する。所論は理由がない。 所論は、原判決が、縁故受験生らに2000万円の寄付金を目安としていたことを根拠に本件の不正加点が人脈形成目的のみで加点したとは考え難いとしたことについて、寄付金は縁故受験生だけでなく一般受験生にも同様に依頼していたから、誤った理解に基づく不合理な認定である旨主張する。しか に本件の不正加点が人脈形成目的のみで加点したとは考え難いとしたことについて、寄付金は縁故受験生だけでなく一般受験生にも同様に依頼していたから、誤った理解に基づく不合理な認定である旨主張する。しかし、原判決は、10点の加点であっても、縁故受験生が高額の寄付をすることと見合うような加点である旨を説示したものと理解することができ、原審公判で、被告人A2及び被告人A3が、寄付金の額の多寡と不正加点の大きさとは関係がある旨供述したことにも沿うものである。そうすると、その他の事情と総合して、単に文科省幹部との人脈形成の目的のみで加算したとは考え難いとした原判決の判断が不合理であるとはいえない。 被告人A2の検察官調書- 34 -上記及びの事実認定が、信用できる被告人A2の捜査段階の供述からも裏付けられ、補強されるとした原判決の判断に不合理な点はない。 所論は、第2の1⑴と概ね同旨の事情から、被告人A2の検察官調書は信用できない旨主張する。確かに前記の誤りや変遷が見受けられるものの、被告人A2が事業計画書の助言・指導を依頼し、A1がこれに応じ、被告人A4を介して助言・指導したこと、被告人A2が恩返しのため二男の成績に加点し、補欠合格することをA1に伝えたところ、補欠ではなく正規合格を希望された、という中核部分については、捜査段階から一貫し、客観証拠に基づく事実と整合しているなどとして、信用性を肯定した原判決の判断に誤りはない。所論は理由がない。 ⑵ 賄賂たり得る利益か所論は、本件で検察官の主張する賄賂は、10点の加点自体ではなく、正規合格することであり、二男は10点の加点がなくとも補欠合格発表日には合格者の地位を得たことになるから、補欠合格発表日を基準に考えれば、何らの利益も生じていない旨主張する。しかし、賄賂の利益は財産上の 合格することであり、二男は10点の加点がなくとも補欠合格発表日には合格者の地位を得たことになるから、補欠合格発表日を基準に考えれば、何らの利益も生じていない旨主張する。しかし、賄賂の利益は財産上の利益にとどまらず、およそ人の需要・欲望を満足させるに足りるものであればよいところ、本件の加点がC大学一般入試の募集要項に反し、第一次試験及び第二次試験について不相当に有利に扱うものであることは明らかで、賄賂たり得る利益に該当するとした原判決の判断に誤りはない。また、二男は、本件加点がなければ補欠合格に留まっていたが、本件加点により正規合格者の地位を得ているから、加点により正規合格者の地位を与えられたことも賄賂たり得る利益に該当するとした原判決の判断にも誤りはない。 所論は、10点の加点は正規合格させるための加点としては小さく、二男のがんばりと適性検査等で例年以上に多くの者が除外されたという偶然の事情によってぎりぎり正規合格となったもので、正規合格させる原因力を有する加点だったとはいえない、被告人A2が10点加点の時点で正規合格者の- 35 -地位を付与する認識があったことを裏付ける証拠はないから賄賂とはいえない、原判決が、補欠合格させることの認識があれば条件付きで正規合格者の地位を付与することの認識まであると決めつけたのは誤りである、原判決が、前年の二男の第一次試験の得点からの増加が26点に留まることに照らし、10点の加点が小さなものではない旨説示した点について、二男が取った得点の方が不正加点の点数より桁違いに大きく、また、異なる年度の入試の得点を単純に比較して10点の加点を小さなものではないと結論づけるのは誤りである旨主張する。 しかし、入学試験の点数に不正に加点するのは、募集要項に反して試験の公平性を損ない、他の受験生と比して 得点を単純に比較して10点の加点を小さなものではないと結論づけるのは誤りである旨主張する。 しかし、入学試験の点数に不正に加点するのは、募集要項に反して試験の公平性を損ない、他の受験生と比して不当に有利な取扱いであり、10点の加点が二男の合格を意図した行為であることは明らかである。また、被告人A2らは、二男の得点が226点(246位)にとどまり、このままだと危ないなどと考えて、10点を加算し、236点(169位)に位置付けたもので、従来のプレビューにおける不正加点の経験や、第二次試験では現役から3浪までの男子全員に加点する有利な取扱いがされていたこと、第二次試験後にもプレビューを実施していたことなどから、二男を最終的に確実に合格させることができると考えていたと認められる。被告人A2らは、10点の加点の時点においても、条件付きにせよ二男に正規合格者の地位を付与することを認識認容していたものと認められるから、所論は採用できない。 その他、所論が種々主張・指摘する諸点を踏まえて検討しても、原判決の判断に事実誤認はなく、所論は理由がない。 ⑶ 職務関連性ア原判決の判断の要旨ブランディング事業は高等教育局の所管であり、補助金に関する決裁は高等教育局長の専決事項である。大臣官房は支援対象校の選定自体に関与せず、関与する可能性も認められないから、事業計画書の記載等について助言・指- 36 -導することは、大臣官房長の職務行為に当たるとは認め難い。 しかし、大臣官房は、文科省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関することを所掌し、補助金適正化法等の関係法令に基づいて適正かつ効率的に交付・支出されるよう、ブランディング事業の補助金交付の前後を通じて監査の形で関与している。すなわち、高等教育局で支援対象校が することを所掌し、補助金適正化法等の関係法令に基づいて適正かつ効率的に交付・支出されるよう、ブランディング事業の補助金交付の前後を通じて監査の形で関与している。すなわち、高等教育局で支援対象校が選定された後、大臣官房の関係部局において、補助金交付決定から金額確定までの場面、交付決定取消しの場面での事前監査だけでなく、会計年度末までの事後監査を実施するなどして、ブランディング事業の補助金に監査という形で複数の場面で関与することとなっている。 大臣官房長は大臣官房の事務を掌理するものとされ、官房部局の職員に対する指揮監督権があることを踏まえると、大臣官房長が特定の私立大学の申請するブランディング事業の事業計画書の記載内容等について助言・指導を行ったことにより、その後に行われる各監査の場面で、当該支援対象校の補助金の交付が実現する方向で監査の判断に影響が及ぶ可能性があると認められ、大臣官房長が所掌する職務に影響を及ぼす可能性があるといえる。また、大臣官房はブランディング事業に関する補助金の予算要求を所管し、補助金が関係法令に基づいて適正かつ効率的に交付・支出されるように職務権限を行使する職務を有し、その反面、適切かつ効率的な交付を妨げてはならないことも職務に伴う義務として負う。 ブランディング事業は、いわゆる競争的資金であり、その性質上、選定過程において公平らしさを含む公平性の確保が厳に要求され、高等教育局が申請者に対し、事業の趣旨説明を超えて事業計画書の記載内容について直接助言・指導をして特定の申請者を特別に扱うことは制度の趣旨に反し許されない。この要請は補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならない職務を負う大臣官房長にも当てはまる。 大臣官房は、各所管部局を調整するなどして所管事項の情報収集をし、説- 37 -明要求をする い。この要請は補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならない職務を負う大臣官房長にも当てはまる。 大臣官房は、各所管部局を調整するなどして所管事項の情報収集をし、説- 37 -明要求をする職務権限があり、同権限に基づき、ブランディング事業の非公表情報を確認し、収集することが可能である。採点基準等は公表されているが、各委員の氏名は非公表とされ、実際にも各委員の個性が反映される。審査委員であったB1がキーワードに着目して審査していた旨証言するとおり、採点者毎に重視する事項があるものと推察される。大臣官房事務を掌理する大臣官房長が、同事業の申請に際して助言・指導すると、公表されている以上の情報に基づいて助言・指導がなされる期待が当然に生じ、公平らしさを含めた公平性の確保の要請に反し、許されるものではなかった。以上によれば、このような助言・指導は、補助金の適正な交付を妨げるから、職務遂行上得られた機密情報を利用することなく公表されている情報や自己の公務員としての経験に基づいてなされたものであったとしても、純然たる私的な行為といえず、公的な性格をもつ行為というべきである。 以上から、本件の助言・指導は、A1の職務に密接に関係する行為と認めるのが相当である。 イ当裁判所の判断原判決の認定、判断に不合理な誤りはない。 所論は、原判決が、高等教育局における支援対象校の選定過程における公平性の確保を妨げてはならないという不作為の義務に違反したことを理由に、A1の助言・指導が公的な性格をもつとした点について、大臣官房長としての地位やその本来的職務権限から負う義務ではなく、公務員としての一般的義務違反を根拠に公務性を認めることはできない、このような一般的義務違反により公務的性格を認めることは、罪刑法定主義に反する旨主張するほか、①本件で 務権限から負う義務ではなく、公務員としての一般的義務違反を根拠に公務性を認めることはできない、このような一般的義務違反により公務的性格を認めることは、罪刑法定主義に反する旨主張するほか、①本件で支援対象校の選定手続は適正に行われている、外部の助言を受けることはどの大学にも許され、個人的知見に基づく助言・指導を受けても、選定過程における適正公平な選定を妨げるとはいえない、②支援対象校選定後の補助金支出までの過程における大臣官房会計課監査班の関与は形式面の審- 38 -査で、事後の会計実地監査も手続面の適正を審査するものであって、ブランディング事業の趣旨に沿った事業が選定されたかを監査するものではなく、事業計画書を審査することもない、③補助金交付決定の取消しの段階で、監査班が受ける合議は、形式面の確認であり、支援対象校の選定前に助言・指導があっても、偽りその他不正な手段で補助金の交付を受けたこと(補助金適正化法29条1項)に該当しないから、事業計画書の記載についての助言・指導と全く関係がない、④所管事務の実行には予算執行を伴うことが通常であり、会計監査権限を理由に職務関連性を認めると、本来的職務に関係のない行政事務全般に関して賄賂罪が成立することになり、職務関連性を要求する意味を失わせることになる、⑤A1は情報収集を行っておらず、情報収集の必要性もなく、実際にもブランディング事業を担当する私学助成課の職員等に報告要求することは想定できない、などと主張する。 しかし、原判決は、大臣官房が事前、事後の監査という形でブランディング事業の補助金手続に関与すること、各部局に対する情報収集権限を有することから、大臣官房事務を掌理し、官房部局の職員を指揮監督する権限を有する大臣官房長が、特定の大学が補助金を申請する際の事業計画書に助言・指導す 続に関与すること、各部局に対する情報収集権限を有することから、大臣官房事務を掌理し、官房部局の職員を指揮監督する権限を有する大臣官房長が、特定の大学が補助金を申請する際の事業計画書に助言・指導すれば、事業計画書の審査に直接関与することはないとしても、公平らしさを含む公平性の確保が厳に要求される競争的補助金の適正な交付を妨げるおそれがある、公表されている情報や自己の経験等に基づいてなされた助言・指導であったとしても、純然たる私的な行為といえず、公的な性格をもつとしたもので、公務員としての一般的な義務違反を根拠にしているとする所論は失当である。また、職務の公正及びその公正に対する社会の信頼という賄賂罪の保護法益に照らし、原判決の判断が「職務」の範囲を曖昧にして処罰範囲を不当に拡大するものとは考えられない。さらに、所論は、職務密接関連行為に関する判例を挙げて、職務密接関連行為に該当するには、当該助言・指導に係る事項が当該公務員の本来の職務の対象となるものであって、- 39 -そのため当該助言・指導行為が本来の職務を左右する実質的な影響力を持つことが必要であると解すべきであると主張するが、所論が挙げる各判例の事案と本件とは、公務員の地位や立場、本来の職務内容、当該公務員が行った具体的な行為の内容等が異なり、所論の主張は失当である。 所論のその他の主張を考慮しても、大臣官房の事務を掌理する大臣官房長が、特定の私立大学におけるブランディング事業の補助金の申請をするに当たり作成する事業計画書の記載内容について助言・指導することは、同補助金の交付に関する大臣官房長の職務に影響を及ぼす可能性があり、大臣官房長としての公的な性格をもつ行為であるから、職務に密接に関係する行為と認めるのが相当であるとした原判決の判断に誤りはなく、この点に関する論旨 する大臣官房長の職務に影響を及ぼす可能性があり、大臣官房長としての公的な性格をもつ行為であるから、職務に密接に関係する行為と認めるのが相当であるとした原判決の判断に誤りはなく、この点に関する論旨は理由がない。 ⑷ A1の受託収賄罪の故意原判決は、第一次、第二次試験後のA1、被告人A4、被告人A2の間の通話履歴、A1が手帳の平成30年2月12日の欄に「450名→ 70番正規(略)80番補欠調整中」と記載し、被告人A2が、公判で、同月14日の電話(2分58秒の通話)で、A1に対し、「正規であれば70番台まで、補欠はそれ以降、補欠の上の方に入る。」旨言うと、A1から「正規じゃないんですか。」と言われ、「それは難しい。入試委員会次第だ。」と言ったと思う旨供述したこと等から、A1は、前記助言・指導の謝礼として、加点等の優遇措置が講じられ、二男が正規合格者の地位の付与を受けるに至った可能性を認識していたと認めた。以上の原判決の認定、判断に論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 所論は、第一次試験のプレビュー後の電話は、被告人A4が二男の成績を確認したものの発表前で合否がまだ決まっていないとの連絡であり、また、同月7日の合格発表後の電話は、A1が被告人A4と個人的に喜びを分かち合うために電話したもので、発表前には第一次試験の合格を被告人A2から- 40 -伝えられていないとのA1の原審公判供述と整合し、信用できる、被告人A2の検察官調書(乙17)には、被告人A2が第一次試験の発表前にA1に電話をした際、こちらでもある程度の配慮はした旨を伝えた旨の記載があるが、発表前という点で通話履歴に反している上、二男が実力で合格したのに優遇措置を講じて一次試験に通ったと述べるのは不合理であると主張する。 しかし、原審記録によれば、第一次 旨を伝えた旨の記載があるが、発表前という点で通話履歴に反している上、二男が実力で合格したのに優遇措置を講じて一次試験に通ったと述べるのは不合理であると主張する。 しかし、原審記録によれば、第一次試験後のプレビューの翌日である同月5日以降、A1から再三被告人A4に電話をかけ、同月6日午後3時1分と午後3時18分にもA1が被告人A4に電話し、午後3時23分に被告人A4が被告人A2に電話をかけ、午後4時2分から午後4時18分の間に、被告人A2から被告人A4、被告人A4からA1、A1から被告人A4(2回)にほぼ連続して通話があり、二男に加点等の優遇措置を講じることができることがA1らにおいて共通認識となっていたことに照らすと、上記一連の連絡は、優遇措置の可否を含めて二男の成績に関して確認するため、被告人A4を介して、A1と被告人A2が連絡を取っていたものと推認できる、また、A1に恩義を感じて関係を深めたいと考えている被告人A2において、その謝礼の趣旨をA1に認識してもらおうとするのはごく自然な心理・行動であると考えられることからすると、被告人A2がA1に対し、加点等の優遇措置を取ったことを伝えたと推認できるとした原判決の判断は不合理とはいえない。所論は理由がない。 所論は、同月13日の被告人A2の電話がだみ声で聞きとりづらく、70、80という数字とまだ決まっていないみたいな感じだった旨の被告人A4の原審公判供述、そして、被告人A4から、70番が正規合格、80番台が補欠合格になるがまだ調整中で決まっていないと聞いた、同月14日、被告人A4と話し合い、二男の結果が出ているかもしれないと思って被告人A2に電話をしたが、だみ声で何を言っているか分からず、70、正規、80、補欠という単語と、結果がまだ出ていないと聞いた旨のA1の原審公判供述は、 い、二男の結果が出ているかもしれないと思って被告人A2に電話をしたが、だみ声で何を言っているか分からず、70、正規、80、補欠という単語と、結果がまだ出ていないと聞いた旨のA1の原審公判供述は、- 41 -それぞれ被告人A2の体調が悪く滑舌が悪かったことなどに裏付けられている、A1らの原審公判供述を排斥することはできず、A1に上記認識があったとは認められない旨主張する。しかし、二男の入試結果という最も関心のあるはずの事柄について、被告人A2とわざわざ電話で話しながら、だみ声で聞きづらかったため確認しなかった、募集要項に記載されていた正規合格等の人数を発表直前に伝えられて手帳に記載した旨のA1と被告人A4の上記公判供述は、不自然不合理で信用性に乏しく、結論において同旨の原判決の判断に誤りがあるとはいえない。 以上から、A1は、被告人A2から二男が補欠合格できることの連絡を受けたと推認できるとした原判決の認定、判断が不合理とはいえない。 所論は、①原判決は、A1が正規じゃないんですかと言った旨の被告人A2の公判供述が信用できるとしたが、被告人A2は、体調の悪化等のため、思い込みで供述している可能性があり信用できない、A1が上記発言をしたとしても、正規合格と言ったのか確認する意味で問い返したにすぎず、また、被告人A2の「補欠の上の方」との発言は聞こえていない、②被告人A2の「それは難しい、正規になるかは入試委員会次第だ。」との発言は、A1に感謝していたとする原判決の説示と整合しない、被告人A2の取り計らいで順位を繰り上げられないという意味ではなく、入試委員会での順位変動のことを述べただけである、③A1は、二男がC大学に正規合格した後も、他大学の医学部を受験させており、賄賂として二男への優遇措置を依頼していた者の行動とはそぐわないと はなく、入試委員会での順位変動のことを述べただけである、③A1は、二男がC大学に正規合格した後も、他大学の医学部を受験させており、賄賂として二男への優遇措置を依頼していた者の行動とはそぐわないと指摘し、A1に受託収賄の故意はなかったと主張する。 しかし、被告人A2が原審公判で供述したA1との前記やり取りは臨場感のある具体的な内容で、被告人A2にとっても不利な内容であり、勘違いや思い込みをする内容とは解し難い。それまで助言・指導した経過等から、A1が、補欠合格と聞いて正規合格を求めることは不自然ではなく、被告人A- 42 -2の公判供述が信用できると認定した原判決の判断が不合理とはいえない。 所論の指摘を検討しても、A1は、前記助言・指導の謝礼として、加点等の優遇措置が講じられ、その結果、正規合格者の地位の付与を受けるに至った可能性を認識していたと認められるとした原判決の判断に誤りはない。 所論はその他にも種々主張するが、A1の故意を認めた原判決の判断に不合理な点は認められず、A1に受託収賄罪が成立するとした原判決の判断に誤りはない。 ⑸ 被告人A2の贈賄罪の故意及び共謀所論は、被告人A2が、いきなり第一次試験に加点してA1に感謝の意を示すことや、正規合格が難しいなどと発表前に水を差すような発言をしたというのは不自然であるから、被告人A2の原審公判供述は信用できない、正規合格者の地位の付与に関する被告人A2の認識は、同人の検察官調書においてすら記載されていない内容であり、そのような認識があれば当然に供述していたはずであり、記載がないことは贈賄の故意がないことを示すと主張する。しかし、前年は第一次試験で不合格となった二男が確実に補欠合格すれば、被告人A2にとって相応の感謝の意を示すことになり、正規合格は難しいとの発言が特に不 ことは贈賄の故意がないことを示すと主張する。しかし、前年は第一次試験で不合格となった二男が確実に補欠合格すれば、被告人A2にとって相応の感謝の意を示すことになり、正規合格は難しいとの発言が特に不自然とは考えられない。所論の指摘を踏まえても、被告人A2が正規合格者の地位を与える強い意図があったとまでは認め難いが、正規になるかは入試委員会次第だとも述べて、条件付きで正規合格者の地位の付与について認識認容していたと認められるとした原判決の判断が不合理とはいえない。所論はいずれも採用できない。 所論は、被告人A2は、A1の職務について国会対応等の総務的な仕事程度の認識しかなかったから、請託に関わる職務を担当する公務員との認識を認めた原判決には誤りがある旨主張する。しかし、被告人A2の供述自体から大臣官房長として省内の部局を横断する職務上の関わりがあることを概括的に認識し得たといえる。被告人A2が、A1の職務権限について、大臣官- 43 -房長の地位にあったこと以上に具体的に認識があったとまでは認め難いものの、ブランディング事業の申請に際し、それに関連する職務権限のある立場にあることは未必的にも認識していたと認められるとした原判決の判断に不合理な点はない。 その他の所論を検討しても、原判決の判断が不合理とはいえず、贈賄罪の成立を認めた判断にも誤りはない。所論は理由がない。 ⑹ 被告人A3の贈賄罪の故意及び共謀ア原判決の判断の要旨被告人A3の検察官調書の任意性弁護人は、被告人A3が、初日の取調べからRの威圧的な言動を受け、恐怖で言いなりの心理状態となり、体調が悪く、精神状態も落ち込んでいた、取調べで、第二次試験の小論文の答案の採点を強要されるなど拷問を受けた、当初から被告人A2との共謀が疑われたのに被疑事実も告げられず、実 いなりの心理状態となり、体調が悪く、精神状態も落ち込んでいた、取調べで、第二次試験の小論文の答案の採点を強要されるなど拷問を受けた、当初から被告人A2との共謀が疑われたのに被疑事実も告げられず、実質的に黙秘権を侵害する取調べが続いた、調書の読み聞かせの際、Rが間近に立って威圧した、被告人A3が正規も補欠も変わりがないと述べると、正規の方がいいに決まっているだろうと否定されるなどして供述内容の変更を強要された、取調べが録音録画されず、取調べメモも廃棄され、不当な取調べを隠滅している、弁護人を選任するまで検察官から弁護人選任権を告げられなかった旨主張する。しかし、所論が依拠する被告人A3の公判供述は、信用性に乏しい上、小論文の採点は第二次試験で加点をしていないとの供述の信用性を検討するために行われたもので、拷問のような効果を与えるとは考えられない。その他の主張を考慮しても、被告人A3の検察官調書の任意性は認められる。 被告人A3の検察官調書の信用性被告人A3の検察官調書の内容には不自然不合理な点は見当たらない上、捜査段階を通じて一貫しており、変遷も見当たらない。当時被告人A3が持- 44 -参した縁故受験生リストとも整合し、客観的証拠に反する部分もない。 また、被告人A3は、取調べの初日に上記リストの存在を認めていたにもかかわらず、縁故受験生の中に官僚の息子がいないか追及されると最初は否定し、最終的に文科省の関係者がいたことを述べた上、リストを捨てたかもしれないなどと明らかに虚偽の弁解をして隠そうとしたから、二男に対する加点が贈賄として問題となることを認識していたと強くうかがわれる。 被告人A2の縁故受験生リストには、二男について「ブランディング、文科」と記載があり、被告人A2の検察官調書でも、第一次試験後のプレビューにお して問題となることを認識していたと強くうかがわれる。 被告人A2の縁故受験生リストには、二男について「ブランディング、文科」と記載があり、被告人A2の検察官調書でも、第一次試験後のプレビューにおいて、改めて被告人A3に対し、二男の父親が文科省の官僚で、ブランディング事業のことで指導してもらいお世話になった旨説明したと述べていた。そうすると、取調官が、被告人A3に対し、二男への加点とブランディング事業との関連について確認しないとは考え難く、その点を何度も質問をしたが、被告人A3は、第一次試験後のプレビューでは被告人A2がブランディングという言葉を発言したことはなかった旨述べていたというRの証言の信用性は高い。そして、被告人A3の一連の検察官調書では、昨年一次で不合格になった文科省の幹部の子息が今年も受験することや父親にブランディングの関係で世話になったことをあらかじめ被告人A2から聞いたが、第一次試験後のプレビューの場では従前被告人A2から言われていたことの認識の下で加点したと記載され、被告人A3は、ブランディング申請に関して文科省の幹部から助言・指導を受け、その謝礼として息子に加点することを認識した時期という最も肝心な点について、検察官に対し、自らの記憶に基づき、否定すべきことは否定していたと認められる。 被告人A3は、Rの威圧的、脅迫的な言動等で事実関係を全く否定できずに、言われるがまま供述調書が作成されたとの弁護人の主張は採用できない。 上記検察官調書は、被告人A3の記憶に基づいて自発的に供述されたと認められる。 - 45 -弁護人は、被告人A3と緊張関係にあった被告人A2が、贈賄と疑われかねない二男に加点した理由を被告人A3に話すわけがない旨主張し、被告人A3も同旨の供述をする。しかし、被告人A2がプレビュー以外の場でも 人は、被告人A3と緊張関係にあった被告人A2が、贈賄と疑われかねない二男に加点した理由を被告人A3に話すわけがない旨主張し、被告人A3も同旨の供述をする。しかし、被告人A2がプレビュー以外の場でも、C2に指示して加点をさせていたことからすると、被告人A3に秘匿したいのであれば、二男の存在を被告人A3に告げずに、C2に加点を指示すれば足りるもので、被告人A2が被告人A3に秘匿しようとしていたとは考え難い。また、被告人A3は、学長就任後直ちに縁故受験生への加点を止めたわけではなく、大学への寄付金とは別に自らも現金を受け取っていたことを認めており、被告人A3が贈賄の事実を明らかにすれば、自身の不相当な行為も当然に発覚することとなり、被告人A3が贈賄の事実を暴露することを被告人A2が想定していなかったとしても不自然ではない。 贈賄罪の成否以上からすれば、被告人A3は、第一次試験後のプレビューまでに、被告人A2との間で、二男の父である文科省の幹部から、C大学のブランディング事業の申請に関する助言・指導を受けたことに対する謝礼をすることの意思を相通じて、第一次試験後のプレビューで加点し、学長として正規合格者としての地位を付与する決定をしたことが認められ、贈賄の故意と被告人A2との共謀も認められる。被告人A3は、A1について文科省の幹部としか聞かされていないが、謝礼として加点する以上ブランディング事業の申請に際し、密接に関係する職務権限を有する立場にあることを未必的に認識していたと認められる。 イ当裁判所の判断原判決の判断に論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、被告人A3の贈賄罪の故意や被告人A2との共謀を認めた点に誤りはない。 所論は、被告人A3の検察官調書について、当初は文科省幹部の子息に入試で加点して合格させたとの内 に照らして不合理な点はなく、被告人A3の贈賄罪の故意や被告人A2との共謀を認めた点に誤りはない。 所論は、被告人A3の検察官調書について、当初は文科省幹部の子息に入試で加点して合格させたとの内容だけで(乙41)、その後、被告人A- 46 -2の依頼で事業計画書の記載内容をチェックして助言・指導してくれた文科省の幹部に対するお礼の意味で二男を合格させるつもりであると分かっていた、被告人A3も承知した旨の記載はあるが、具体的に、いつ、どのように被告人A2から説明されたか記載がない(乙21)、ある程度具体的となった検察官調書(乙26)でも、助言・指導を受けた文科省幹部の氏名や立場、その経緯、受けた箇所等について全く供述されておらず、具体性、迫真性がなく、被告人A2の発言を基に、被告人A3が推測をしたとの内容にとどまる、文科省幹部に助言・指導を受けることは印象的な話題で、被告人A3自身も公平を害するおそれがあると感じていながら、それほど深く考えずに応じたなど不自然・不合理な内容が多い、被告人A3の検察官調書のうち特にブランディング事業への関与、二男の点数の加算等の部分に不自然な部分が多いから、被告人A3の検察官調書は信用できないと主張する。 しかし、被告人A3は、上記検察官調書において、ブランディング事業申請について、被告人A2や大学担当者に完全に任せていて、提出の直前か直後の頃、提出版の事業計画書を見た程度である、被告人A2とは、会議の合間等に短時間の会話で連絡事項を伝え合うことが多く、被告人A2からブランディング事業や二男の受験について聞かされた具体的な日時や場所は思い出すことができないが、第一次試験後のプレビューより前には聞いていたと供述し、この点は前記⑴イのとおり、信用できる被告人A2の検察官調書と一致している。また、被 聞かされた具体的な日時や場所は思い出すことができないが、第一次試験後のプレビューより前には聞いていたと供述し、この点は前記⑴イのとおり、信用できる被告人A2の検察官調書と一致している。また、被告人A3は、ブランディング事業や二男の受験について、A1や被告人A4との間で会食したり電話等で連絡したりしたことがなく、これを主導した被告人A2から伝えられる立場であったもので、所論の指摘が被告人A3の検察官調書の信用性を左右するとは考えられない。 加えて、所論は、被告人A3の検察官調書について、①縁故受験生の点数調整に関し、被告人A2と相談しながら、学長として被告人A3が取り仕切っていかなければならないと思っていた旨、また、プレビューで、被告人A- 47 -3と被告人A2が相互に検討して加点を決定した旨の各供述は、いずれも被告人A3が不正加点に消極的で加点の幅も抑えようとしていたことと整合しない、プレビューで、具体的な加点の指示をしたのは被告人A2であり、A1の名前やブランディング事業の関係でお世話になったと聞いた記憶がないという、C4の原審証言とも相違して不自然であり、検察官の強い誘導によるものである、②C2が異動後も成績表の書き換えを行わせるようC4に指示したのは被告人A2であり、被告人A3が指示したとの記載は検察官が作り上げた虚偽供述である、③二男について補欠合格よりも正規合格させた方がより良いと思っていたとの供述は、被告人A3が気に掛ける内容ではなく不自然であるなどと主張する。しかし、①について、C4は、プレビューで、指示された受験番号、氏名、加点する得点と順位をメモするだけで、縁故関係の説明は聞かないようにしていたと供述するから、C4の原審証言に反するとはいえない上、被告人A2がプレビューにおける縁故受験生の得点の不正加点 号、氏名、加点する得点と順位をメモするだけで、縁故関係の説明は聞かないようにしていたと供述するから、C4の原審証言に反するとはいえない上、被告人A2がプレビューにおける縁故受験生の得点の不正加点を主導していたとしても、被告人A3も自ら縁故受験生の情報を収集してリストを作成し、プレビューで被告人A2に意見を述べたこと、加点を10点に留めるなどと提案した一方、学長として縁故受験生への不正加点を継続していたことに照らすと、整合しないとはいえない。②について、直接指示したのが被告人A2であったとしても、その場に学長である被告人A3も同席していたことがあったと思うとC4が述べるように、被告人A3が学長としてこれを容認していたとうかがわれることに照らし、必ずしも虚偽とはいえない。③を含む所論の指摘によっても、被告人A3の検察官調書が不自然・不合理な内容であるとは認められない。 所論は、被告人A3の検察官調書の信用性を認めた原判決の説示について、①事業計画書の記載内容に関する助言・指導について、被告人A2がお願いしたと被告人A2から「聞いた(乙21)」との供述が「お願いしたのだろうと思いました(乙26)」と被告人A3が推測したことに変遷している、- 48 -②被告人A3が、取調べの初日にリストの存在に関して曖昧な供述をしたのは、不正入試が発覚して縁故受験生らに迷惑をかけることを恐れたためであり、官僚の子息の縁故受験生について確認されて贈賄が問題になることを認識していたとしたのは誤りである、③被告人A3が使用した縁故受験生リストには、二男について「文科省」としか記載されていないから、検察官調書と整合するとしたのは誤りである、などと主張する。 しかし、①について、乙21号証では、被告人A2から、二男が文科省の幹部の息子であること、その幹部は選 科省」としか記載されていないから、検察官調書と整合するとしたのは誤りである、などと主張する。 しかし、①について、乙21号証では、被告人A2から、二男が文科省の幹部の息子であること、その幹部は選定されたブランディング事業に関し、被告人A2がお願いして、事業計画書の記載内容をチェックして助言・指導してくれた方であることなどを聞いていた旨供述し、乙26号証では、被告人A2から、文科省の幹部が書類を見てくれた、いくつか指導が入ったので、それを踏まえて、検討する、今年は行けるかもしれないなどと伝えられた、被告人A2と文科省幹部との関係性や、被告人A2が具体的にどういう方法や場面で助言・指導を受けているかまで聞かなかったが、文科省の幹部が、そのような公平性に反することを、お願いもせずに自主的に行うわけがないので、被告人A2の方から、その文科省の幹部に助言・指導をお願いしたのだろうと思った旨供述したもので、前後の記載をみれば、乙26号証は、乙21号証における供述を被告人A2の発言に即して具体的にしたもので、変遷があるとは認められない。②について、被告人A3は、取調べの当初、縁故入学や不正加点について否定し、縁故受験生リストが学長室にあると述べていたが、文科省の官僚の息子がリストに記載されているか追及されてこれを認めた後にリストの提出を求められると、捨てたかもしれないなどと供述を変えたもので、二男に対する加点が贈賄として問題となることを認識していたと強くうかがわれるとした原判決の判断が不合理とはいえない。③についても、被告人A3は、第一次試験後のプレビューで使用したリスト等を示されて、被告人A2とともに二男に10点を加点し、これが入試委員会の配- 49 -布資料に反映されていることを確認したと供述したもので、検察官調書における供述がリスト ューで使用したリスト等を示されて、被告人A2とともに二男に10点を加点し、これが入試委員会の配- 49 -布資料に反映されていることを確認したと供述したもので、検察官調書における供述がリストと整合するとした原判決の判断が不合理とはいえない。 所論は、被告人A3が取調べの当初から検事に睨まれるなどして精神的ダメージを受けて逆らえない状態に陥った上、相当な時間と回数にわたる取調べによる精神的、肉体的疲労感、逮捕を恐れる不安感、不正入試に関わった罪悪感が大きかった、被告人A2から、外部の人が事業計画書を見てくれると聞かされ、大学の顧問弁護士から、この件は文科省の者に事業計画書のことでお願いしたことがまずかったと言われたことが合わさり、検察官の誘導に抵抗できず、もとから認識があったように錯覚するなどして調書の作成に応じてしまった可能性が高い、贈賄の故意や共謀に関する被告人A3の検察官調書は信用性を欠く旨主張する。しかし、被告人A3は、文科省の幹部の子息が今年も受験することや父親にブランディングの関係で世話になったことをあらかじめ被告人A2から聞いたが、第一次試験後のプレビューの場では、ブランディング申請について聞いていないと供述し、文科省の幹部から助言・指導を受け、その謝礼として二男に加点することを認識したという最も肝心な点について、自らの記憶に基づき、否定すべきことは否定していたと認められる。被告人A3は、取調べにおいて、自発的に供述していたもので、一連の検察官調書は信用できるとした原判決の判断が不合理とはいえない。所論は理由がない。 所論は、被告人A3が学長に就任後も、被告人A2は、C大学内で強い影響力を発揮し、入試における縁故受験生の優遇も主導してきたもので、縁故受験生の情報収集や入試委員会の手続等のために、学長の被告人A3を 論は、被告人A3が学長に就任後も、被告人A2は、C大学内で強い影響力を発揮し、入試における縁故受験生の優遇も主導してきたもので、縁故受験生の情報収集や入試委員会の手続等のために、学長の被告人A3を巻き込んだにすぎない、被告人A3は、縁故受験生の情報について、被告人A2から十分に説明されず、「文科省関連」といえば了承する関係にあったから、A1のことを文科省の関係者という認識しかなかったとして、被告人A3に贈賄の故意は認められない旨主張する。しかし、原判決が指摘するとおり、- 50 -被告人A2がプレビューで決めた加点以外にもC2に加点を指示していたことからすると、被告人A3に秘匿したいのであれば、被告人A3に告げずに個別に処理すれば足りたはずであり、被告人A3に対し、二男に関する情報を殊更伝えなかったとは考え難く、また、被告人A3の検察官調書の信用性を疑わせる事情ともいえない。所論は理由がない。 所論は、被告人A3は、被告人A2から請託の事実を告げられていないから、請託の認識がなく、贈賄罪が成立しない旨主張する。しかし、二男に関する被告人A2の従来の説明やプレビューの経験等から、被告人A2が、文科省の幹部に事業計画書の助言・指導を依頼し、その謝礼の意味で二男に加点措置を講じて合格させようとしていると思ったという被告人A3の認識はごく自然なものである。所論を踏まえても、被告人A3は未必的にも請託の認識があったと認められる。 所論は、被告人A2の平成30年7月15日付け検察官調書(乙17)について、被告人A3に対し、第一次試験後のプレビューに先立って、ブランディング事業でお世話になったこととA1の二男が受験していることをセットで伝えた、プレビューでも、改めてA1にお世話になったため二男を合格させたいと言ったと供述しているが、①被 ーに先立って、ブランディング事業でお世話になったこととA1の二男が受験していることをセットで伝えた、プレビューでも、改めてA1にお世話になったため二男を合格させたいと言ったと供述しているが、①被告人A3に対し、ブランディング事業でA1に世話になったと伝えたことについて、それ以前の検察官調書には全く記載がなく、突然供述したのは不自然である、②被告人A2が「セット」で伝えることを意識したとは考え難く、検察官が強く誘導した可能性が高いと指摘し、同調書は信用できないと主張する。 しかし、①について、上記(乙17)以前の原審で調べた検察官調書では、A1、被告人A4との関係を中心に供述していたことに照らし、不自然とまではいえない。②について、被告人A3に対し、ブランディング事業申請でA1に世話になったことと二男の受験を結び付けて伝えることは、縁故関係のポイントとなる事柄であるから、被告人A2が「セット」で説明したと述- 51 -べたことが不自然とはいえない。所論は理由がない。 その他の所論を踏まえても、被告人A3に贈賄罪の故意及び共謀が認められるとした原判決の判断に誤りはない。所論は理由がない。 ⑺ 被告人A4の受託収賄幇助罪の故意所論は、被告人A4が、被告人A2の依頼に協力したのは、L3の大切な支援者の一人だったからで、A1のためではないから、A1の受託収賄に対する幇助には当たらない、被告人A4は、謝礼の趣旨や10点加点について認識がなく、A1の職務権限について被告人A2と同様の認識を有していたともいえない旨主張する。 しかし、被告人A4は、Dの営業活動を行うに当たり、政治家や官僚と接待を繰り返すなどし、A1に対しても、二男の受験勉強の世話をするなどして関係を深めようとしていたが、これまで認定したとおり、第二次I会食における被告 は、Dの営業活動を行うに当たり、政治家や官僚と接待を繰り返すなどし、A1に対しても、二男の受験勉強の世話をするなどして関係を深めようとしていたが、これまで認定したとおり、第二次I会食における被告人A2の目的やA1の認識を理解して両名に会食の機会を提供し、その会話の趣旨を理解した上で、A1と被告人A2の間に入って、事業計画書の記載等の助言・指導を取り持つなどしており、被告人A2の手助けをしたにとどまらず、入試における優遇措置を受ける可能性を前提に、請託及び賄賂収受の実現を容易にしており、A1の犯行を強く手助けしたと認められるとして幇助行為を認定した原判決の判断に誤りはない。 所論は、原判決が、被告人A4の幇助行為を認定した時点では、A1の収賄の実行行為に係る認識と予見がないから、故意を欠く旨主張する。しかし、被告人A4は、上記幇助行為時に、ブランディング申請に関する助言・指導の対価としてA1の二男に対し優遇措置を講じる蓋然性があることを少なくとも未必的に認識認容していたと認められる。このことは、被告人A4が、第二次I会食の会話内容を秘密裏に録音して、A1及び被告人A2にとって重要な内容の会話であると認識していたとうかがわれることとも整合的である。また、被告人A4は、A1の職務権限について、少なくとも被告人A2- 52 -と同様の認識を有していたと認められるとした原判決の判断に誤りはない。 所論は理由がない。 その他の所論を踏まえても、原判決の認定に不合理な点はなく、被告人A4に受託収賄罪の幇助犯が成立するとした判断にも誤りはない。 事実誤認の論旨は理由がない。 第3 被告人A4の原判示第2の事実について 1 訴訟手続の法令違反の論旨について論旨は、原審裁判所が、W1及びL3の証人請求を却下したのは、訴訟手続の法令違反がある 誤認の論旨は理由がない。 第3 被告人A4の原判示第2の事実について 1 訴訟手続の法令違反の論旨について論旨は、原審裁判所が、W1及びL3の証人請求を却下したのは、訴訟手続の法令違反がある旨主張する。 しかし、原審記録によれば、各証人請求の立証趣旨に掲げられた事項については、いずれも録音等の客観証拠に加えて相当数の証人等を調べ、各証人の尋問が必要不可欠であったとうかがわれる事情は見当たらない。原審裁判所が各証人尋問請求を却下したことに裁量の逸脱はない。 訴訟手続の法令違反の論旨は理由がない。 2 事実誤認及び法令解釈の誤りの論旨について事実誤認の論旨は、被告人A4が、①F4から宇宙飛行士の講師派遣及び人工衛星の利用に関して便宜供与を受けた、②その謝礼等として、F4に対して一連の飲食等の提供を行ったことがF4の職務に関する賄賂に当たる、としたことについて、被告人A4は無罪であるから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのである。また、法令解釈の誤りの論旨は、②について、一連の飲食等をすべて賄賂に当たるとした判断には、賄賂罪の法令解釈の誤りがあり、それが判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。 ⑴ 宇宙飛行士の講師派遣との関係等ア原判決の判断の要旨F4は、文化庁文化部長を務めた後にJAXAに出向し、平成26年7月- 53 -に参与、平成27年4月1日から平成29年3月31日まで理事を務めた。 被告人A4は、国会議員秘書として活動する傍ら、平成27年に、病院、診療所等に関するコンサルタント業等を目的とし、D4が代表取締役を務めるDの取締役に就任した。D2も、平成27年に同社の取締役に就任し、被告人A4と共に病院リート(病院不動産を対象とした投資信託)を実施・ 等に関するコンサルタント業等を目的とし、D4が代表取締役を務めるDの取締役に就任した。D2も、平成27年に同社の取締役に就任し、被告人A4と共に病院リート(病院不動産を対象とした投資信託)を実施・設定するために政治家、官僚、病院関係者との会食等の接待をしたり説明会を開いたりした。被告人A4は、平成25年10月24日の会食で、L3からF4を紹介され、平成27年7月30日まで計12回にわたり、F4、L3らと共に、高級料理店で会食をし、2回を除き、共に二次会で銀座の高級クラブで飲食し女性の接待を受けた。 被告人A4は、L3が同席しないでF4と会食等を繰り返すようになり、JAXA理事であったF4に対し、21回にわたり、代金合計147万9848円相当の飲食等の接待をし、うち13回は高級クラブで女性の接待を伴い、また、平成28年12月にタクシーチケット1冊を交付した(以下「本件会食等」という。)。F4は、これらの飲食等につき全く費用を負担しなかった。 Dは、平成23年10月、H1が代表取締役を務めるHと業務委託契約を締結し、その後、H1は病院リートに取り組むこととし、引き続きDに業務委託した。D2は、病院リートに関わる官僚、政治家の接待のほとんどを被告人A4に行わせた。H1は、接待のための会食等の費用をH又はH2を通じて支出した。被告人A4とD4は平成26年にH2の取締役にも就任した。 H1は、D2らに高級クラブでの接待禁止を伝え、同年8月、被告人A4を翌月で解任すると伝えた。H1は、病院リートを実現する目途が立たないと考え、平成27年4月頃、事業を譲渡して清算した。被告人A4名義の接待費は、平成26年5月から同年8月まで合計約1611万円、被告人A4による会食を含めたD4名義の接待費等は同年6月から平成27年4月まで合- 54 -計 を譲渡して清算した。被告人A4名義の接待費は、平成26年5月から同年8月まで合計約1611万円、被告人A4による会食を含めたD4名義の接待費等は同年6月から平成27年4月まで合- 54 -計約1320万円であった。 F4は、被告人A4について、L3の支援者で会社を経営していると紹介され、被告人A4から、H営業顧問及びH2顧問の名刺を受け取り、その後、D代表取締役のD4、H2社員としてD2を紹介され、D4を被告人A4のグループと認識した。 以上によれば、被告人A4、D2及びD4は、Hとの業務委託契約に基づき病院リートの取組みを進める中で、F4との会食の機会を設けたと認められる。F4も、D4やD2との関係を把握し、遅くとも6回目の会食である平成26年4月頃には被告人A4がDにも関与していることを認識していたと推認できる。 被告人A4は、同年6月、L3を通じてA2(第3において、被告人A2をA2と記載する。)を紹介された。A2は、平成28年11月に予定されたC大学の創立100周年記念事業において、宇宙飛行士による講演会の実施を考えて、平成26年7月、L3に宇宙飛行士の講師派遣の可能性を打診し、L3は、自分と被告人A4がF4と親しくしている旨返信した。同年8月、被告人A4、L3、A2、D2らが会食し、A2はL3に宇宙飛行士の派遣を相談し、被告人A4はA2に病院リートの説明を行った。この会食の費用はH2が負担した。被告人A4は、同年9月、C大学で、A2らに病院リートの仕組み等を説明した。 同年10月3日、被告人A4、L3、A2、F4らがNで会食を行った(N会食)。A2は、F4に対し、100周年記念事業に宇宙飛行士の派遣を依頼し、被告人A4は、A2に対し、病院リートの説明を行った。A2は、病院リートを進めるため、被告人A4に対し、大 会食を行った(N会食)。A2は、F4に対し、100周年記念事業に宇宙飛行士の派遣を依頼し、被告人A4は、A2に対し、病院リートの説明を行った。A2は、病院リートを進めるため、被告人A4に対し、大学の財務部長への説明説得を依頼した。同日夜、被告人A4は、D2に対し、「REIT(リート)は理事長はやる気満々。来週、大学の財務部長と会って説明して説得して欲しいとの事です。F4さんと前打合せして、良かったです。A2理事長にF4- 55 -さんが、検討討員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよって、言ってくれたらA2理事長のスイッチが入りました。」とメールを送信した。翌4日、H、H2とDの合同会議で、「来週にもC大学の財務部長と打ち合わせを行うことが決定した。説明後に、機密保持契約を締結し、具体的なスケジュールについて協議する。C大学の総資産は1500億円を超える。」との議事録が作成された。 N会食後の上記メールは、被告人A4がF4と打ち合わせたとおり、F4が病院リートの検討を進める国交省に関して発言し、これが奏功して、A2が病院リートの実現に積極的になったことを報告したとみるほかない。また、被告人A4とD2は、N会食の直前に打合せを行って、A2に対して病院リートの検討を促す計画を立てたが、直前の会食において、A2が100周年記念事業に宇宙飛行士の派遣を希望していることを把握し、それを前提に打合せを行ったと推認できる。そうすると、被告人A4らは、L3と共に宇宙飛行士の派遣についてF4への口利きに応じた上、N会食では、A2の面前でF4に対して口利きを行い、これにより、C大学への病院リートの導入についてDに有利な方向に検討を促そうとしたと推認できる。F4の前記発言は、被告人A4の意図に応じ、A2に病院リートの検討を促したものと認めら て口利きを行い、これにより、C大学への病院リートの導入についてDに有利な方向に検討を促そうとしたと推認できる。F4の前記発言は、被告人A4の意図に応じ、A2に病院リートの検討を促したものと認められ、F4も、被告人A4とA2との上記利害関係をよく認識していたと推認できる。 F4は、N会食の3日後の同月6日、JAXA広報部長F1に対し、C大学が宇宙飛行士による講演企画を考えていると伝え、平成27年3月6日、A2や大学担当者と会食して、講師派遣申請書の書き方や、宇宙と医学というテーマ等からみて医学者でもある宇宙飛行士U2が適任であるなどと助言し、その後、担当者が作成した申請書案を確認した。F4は更にA2と会食を重ねて、元文科大臣のL5と会食で同席した際、A2に対し、L5側からJAXAに電話があれば動きやすい旨を伝え、A2は、L5の秘書にF4の- 56 -電話番号を伝えて電話をかけるよう依頼した。F4は、F1に対し、前記申請書が提出されているか確認し、L5が関係していると伝えた。JAXA総務部では、C大学の申請は、宇宙飛行士講演活動審査会の最優先活動案件として準備され、平成28年4月、F4が構成員である同審査会で派遣が決定した。 上記事実に加え、JAXA内で、宇宙飛行士の講演派遣について、政治家等からの依頼について最優先で決定する取扱いがあり、これが公表されていなかったことを考え合わせると、F4がC大学への宇宙飛行士の講師派遣について有利かつ便宜な取り計らいをしたことが認められる。 また、上記について、被告人A4及びF4は、Dのコンサルタント業務等に関し、有利かつ便宜な取り計らいになると認識していたといえる。 イ当裁判所の判断原判決の認定、判断に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 所論は、N会食について、①L3が ト業務等に関し、有利かつ便宜な取り計らいになると認識していたといえる。 イ当裁判所の判断原判決の認定、判断に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 所論は、N会食について、①L3が有力な支援者であるA2から宇宙飛行士派遣の陳情を受けてF4を紹介し、F4から得た情報をA2に提供するとともにA2とF4を直接引き合わせるために開いたものでこの陳情に被告人A4は関わっていない、②被告人A4とF4が親しくなったのは平成27年12月以降で、F4はDがC大学に病院リートの営業活動をしているのを知らなかったため、F4が被告人A4に恩義を感じ、Dに便宜供与する関係になかった、③F4は、当時JAXAの参与であり、職務に関して便宜供与を期待できる立場にはなかった、A2が宇宙飛行士派遣の口利きを期待したのはL3であり、原判決が、N会食で、F4がDに便宜供与することを認識して、宇宙飛行士派遣に関して助言等をしたと認定したのは事実誤認である旨主張する。 しかし、①について、L3は、宇宙飛行士の派遣について、A2に対し、F4と被告人A4が親しいと伝えており、A2がF4に影響力のある被告人- 57 -A4に宇宙飛行士派遣の口利きを期待したと容易に推認でき、L3に期待していたこととも両立するとの原判決の判断に不合理な点はない。②について、F4は、N会食に至るまで、7回にわたり高級飲食店等で飲食等の接待を受け、被告人A4が参加した会食では、被告人A4側で支払をしたと分かっていた旨供述し、被告人A4に恩義を感じる関係にあったといえる。③について、N会食において、A2がF4に宇宙飛行士の派遣を依頼していることからも、被告人A4らは、当時F4が便宜供与が可能な立場であると考えていたと認められ、F4が参与であったことが原判決の上記認定に疑問を生じさせる いて、A2がF4に宇宙飛行士の派遣を依頼していることからも、被告人A4らは、当時F4が便宜供与が可能な立場であると考えていたと認められ、F4が参与であったことが原判決の上記認定に疑問を生じさせるとはいえない。所論を踏まえても、A2の面前で宇宙飛行士の派遣に関する口利きをして、これにより、A2に対し、病院リートの導入についてDに有利な方向への検討を促そうとした被告人A4の意図や、被告人A4とA2の利害関係について、F4がよく認識していたと推認できるとした原判決の判断に誤りはない。 所論は、①N会食の当時、H1は被告人A4と絶縁状態で、平成27年4月に病院リートから撤退しており、それ以降に開催された会食は、Dの病院リートの実現に向けた営業活動とは関係がない、②F4は、N会食以後、A2らC大学関係者と4回会食をしているが、これに被告人A4が同席していないことからも、F4がDの便宜供与のために宇宙飛行士派遣に向けた助言等をしたとはいえない旨主張する。 しかし、①について、原審記録によれば、被告人A4らは、H1が撤退後も、引き続きC大学で説明会を開催するなどDとして病院リートの営業活動を行っていたと認められる。②について、被告人A4が、N会食後に行われたF4とA2や100周年事業担当者らとの会食に同席しなかったとしても、前記認定を左右しない。 その他の所論の主張を踏まえて検討しても、被告人A4は、DのC大学に対する病院リートのコンサルタント業務等に関して有利かつ便宜な取り計ら- 58 -いになるよう、C大学に対する宇宙飛行士の講師派遣について、F4から助言、助力を受けたもので、F4もこれを認識していたといえるとした原判決の判断が不合理とはいえない。 ⑵ JAXAの人工衛星を利用した業務の提案との関係等ア原判決の判断の要旨 、F4から助言、助力を受けたもので、F4もこれを認識していたといえるとした原判決の判断が不合理とはいえない。 ⑵ JAXAの人工衛星を利用した業務の提案との関係等ア原判決の判断の要旨JAXAの人工衛星を管理し宇宙飛行士の訓練等を担っていたSは、平成27年3月頃、民間活用を考えてDにコンサルタントを依頼した。被告人A4、D2は、Sの危機管理等の知識を生かして防災分野への進出を計画し、平成28年1月、Sの関係者らと共にGセンターを見学し、同年2月、海外のGも視察した。その後、被告人A4は、ジャカルタ・G社長に対し、Dの調査が必要とのレコメンレターの送付を依頼した上、同年3月1日、DのD4名義で、Gセンター長宛てに、JAXA、S、Dの活動内容を記載したメールを、災害時のBCPに関する提案書と共に送信し、同月10日、D2らと共に、G幕張本社で、上記センター長に対し、説明した。同月28日、被告人A4、D4、D2、S関係者、G関係者による打合せが行われ、Dと契約するメリットやJAXAの人工衛星画像を使用する際のメリット等が協議されたが、協議は持ち越しとなった。 被告人A4は、D2との間で、同年2月初め、F4に話す内容として「GとSとの関係構築も順調に進んでいるので、弾みをつけるために援護射撃をお願いします、の方が得策だと思います。」「Gも上手くいけばF4さんの遊びも増えるよ、くらいで。」などとメールで連絡し、F4に対し、同月9日、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使うことを考えているなどと話し、同年3月29日、JAXAの人工衛星を利用した防災訓練をしたいと申し入れた。 F4は、同月30日、JAXA衛星利用運用センター長のF5に対し、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使いたいと考えており、6月頃イベント- 59 - 利用した防災訓練をしたいと申し入れた。 F4は、同月30日、JAXA衛星利用運用センター長のF5に対し、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使いたいと考えており、6月頃イベント- 59 -を行うなどと伝え、同センター担当理事にも同様の説明を行った。F4とF5は、同年4月11日にGとDと面会することとし、F4から連絡を受けた被告人A4は、D2に対し「F4さんから連絡があり、(略)JAXA事務所にてと決まりました。F4さんからのお願い(略)防災訓練の内容がいかに公的な物なのかをアピールして欲しい。JAXAの技術を使うのは試験的では無く、2020までの将来を通じて自社で完結出来る様にJAXAの力を借りたい。みたいな感じの内容にして欲しいとの事でした。」とメールを送った。F5、F4ら4名とD2、被告人A4が、同日、JAXA東京事務所で協議を行った。 前記認定事実によれば、被告人A4が、Gに対しJAXAの人工衛星の利用を提案したのは、Dの営業活動として行われたことは明らかである。F4は、被告人A4が、Dの業務として、Gの防災訓練でJAXAの人工衛星を利用するため、JAXAの担当者に面会を申し入れたことをよく認識した上で、その連絡役を担い、担当者や理事に概要を伝え、日程調整を行った上、被告人A4にはあらかじめJAXAとの協議に必要な検討事項を伝えるなどの助力、助言をするなどの根回しまで行い、面会に同席している。これに加え、F5が他の担当者に対し、今後のことを考えると、G側から連絡があったとの外形を整えるように後で提案していることからすると、F4の関与は、単にJAXA側の窓口を紹介したにとどまらず、JAXAの人工衛星をGの防災訓練に使用することの実現に向けて、自らJAXAの担当者らに取次等を行い、F4がDの営業に関して有利かつ便宜な取 4の関与は、単にJAXA側の窓口を紹介したにとどまらず、JAXAの人工衛星をGの防災訓練に使用することの実現に向けて、自らJAXAの担当者らに取次等を行い、F4がDの営業に関して有利かつ便宜な取り計らいをしたと認められる。 イ当裁判所の判断原判決の認定、判断に、論理則、経験則等に照らし不合理な点はない。 所論は、F4は、JAXAの担当窓口を紹介したにすぎず、理事でなくてもできることしかしていない、平成28年4月11日の面談に同席したが打- 60 -合せ内容に関して発言していない、Gの衛星利用について、「無理せず良い話であれば乗るということで」と説明し、衛星利用運用センターが独自に検討したもので、F4の影響は皆無であるとして、F4が人工衛星を利用した業務提案について有利な取り計らいをしたとする原判決は誤りである旨主張する。 しかし、原審記録によれば、F4がF5に直接話を持ち込んだことで、担当部門での検討が直ちに始まり、2週間足らずのうちに被告人A4らとJAXA担当者との面会が実現するなど提案の検討が迅速に進んだと認められる。 所論は、F5がG側から新事業促進部に相談があったという形を整えようとしたのは自身の発案であり、F4の指示ではないと主張するが、そのような提案自体がF4の根回しを踏まえた対応であることが明らかである。また、最終的に衛星利用運用センターにおいて実施の有無が検討されたとしても、F4がDの営業に関して有利かつ便宜な取り計らいをしたとの原判決の認定を左右しない。所論は理由がない。 所論は、G防災訓練における衛星利用は、Dの営業のためではなく、防災対策・国土強靭化の政策実現のためであり、被告人A4らが平成28年4月11日の面会に持参した資料をみれば、被告人A4が防災対策・国土強靭化に関する発言をしなかったと は、Dの営業のためではなく、防災対策・国土強靭化の政策実現のためであり、被告人A4らが平成28年4月11日の面会に持参した資料をみれば、被告人A4が防災対策・国土強靭化に関する発言をしなかったと認定した原判決は誤りである旨主張する。しかし、F5が被告人A4から防災対策・国土強靭化に関連させた提案はなかった旨を具体的な根拠を挙げて説明したこと、被告人A4がGやJAXAの担当者にDの肩書で連絡し、政策顧問の立場を示すものはないことなどから、上記政策実現のためとする主張は採用できないとした原判決の判断に不合理な点はない。上記資料にBCP等の策定や協定先との連携訓練について記載されていることが防災対策・国土強靭化そのものであると所論が指摘する点を考慮しても、上記判断を左右しない。所論は理由がない。 ⑶ 本件会食等の趣旨及びF4の職務権限、収賄の故意- 61 -ア原判決の判断の要旨 本件会食等の趣旨被告人A4は、F4と知り合って約2か月後である平成25年12月19日から平成29年3月28日までの間、30回以上にわたり、F4に一切費用を負担させることなく、高級飲食店等で飲食等を提供しており、知り合って間もない時期から上記頻度で高額の飲食等の提供すること自体、一定の見返りや便宜を求める趣旨であることが強くうかがわれる。 のみならず、F4は、被告人A4がDの営業相手であるA2に病院リートの検討を求め、A2が100周年記念事業に宇宙飛行士の講師派遣を求めている状況で、派遣に向けた便宜供与を行うとともに、JAXAの人工衛星をGの防災訓練で使用するという、被告人A4のDの営業に関して有利かつ便宜な取り計らいを行っており、前者の便宜供与がDの病院リートの営業に有利かつ便宜な取り計らいとなることを被告人A4及びF4が認識 Gの防災訓練で使用するという、被告人A4のDの営業に関して有利かつ便宜な取り計らいを行っており、前者の便宜供与がDの病院リートの営業に有利かつ便宜な取り計らいとなることを被告人A4及びF4が認識していたことからすると、F4への一連の飲食等の提供は、上記便宜供与を受けることを期待し、実際に便宜を受けた後はそれに対する謝礼としてなされ、今後も同様の便宜供与を図ることも期待してなされたと推認できる。 加えて、本件会食等の費用を負担したEのE1は、公判で、国の仕事をしているという被告人A4から、政治家や官僚を紹介してあげると言われて、政治家や官僚の接待を繰り返して、すべて支払を負担した、被告人A4らは自分たちのビジネスの口利き等の便宜を図ってもらうため、進めたい分野の監督官庁の役人を紹介してもらっていたなどと証言している。E1の証言は、支払に関する領収書等に裏付けられ、会食の趣旨については被告人A4らの会話の録音内容に裏付けられて、基本的に信用できる。そして、被告人A4とD2が、G担当者に文科省、JAXA、S、行政に働きかけて上から下ろしていけるのがDであるなどと説明していることなども合わせると、被告人A4らがF4ら多くの官僚や政治家に接待を繰り返したのは、官僚等との関- 62 -係を利用して便宜を受けることで、Dの営業をより有利に行うためであったと認められる。そうすると、本件会食等の趣旨は、Dの営業相手に対する宇宙飛行士の派遣や人工衛星の利用に当たり、実際に便宜な取り計らいを受けた謝礼を含むと推認できる。 また、被告人A4が、Sと密接な関係にあるJAXAの理事であるF4に対し、その後も同様に便宜を受けられる関係を維持したいと考えるのは当然といえる。「GとSとの関係構築も順調に進んでいるので、(F4へ話す内容として)弾みをつけ な関係にあるJAXAの理事であるF4に対し、その後も同様に便宜を受けられる関係を維持したいと考えるのは当然といえる。「GとSとの関係構築も順調に進んでいるので、(F4へ話す内容として)弾みをつけるために援護射撃をお願いします、の方が得策だと思います。」「Gも上手くいけばF4さんの遊びも増えるよ。」といった被告人A4とD2の会話内容にも照らせば、F4を利用することがSの民間活用に資するものであり、それにより継続的な営業利益を上げることを意図したと認められる。結局、平成28年4月11日のJAXAとDらの面会当日の会食等が謝礼の趣旨であることはもちろん、以降の会食等についても、同様に、Dの営業に関し、JAXAの人工衛星の利用を含め、便宜な取り計らいを受けることを期待して行われたと認められる。 F4の職務権限F4は、JAXA理事として、理事長を補佐して機構の経営に当たり、理事長の定めに従い、広報部、総務部、契約部、宇宙教育推進室等を所管し、JAXAの業務運営の基本方針、業務の実施に関する重要事項その他重要な意思決定を要する事項に関する審議を行う理事会議の構成員であった。JAXAでは、広報部が宇宙飛行士の広報活動を所管し、講演依頼の最優先活動対応案を決定し、政治家等案件は、総務部が優先案件として判断し、かつ、必須条件を満たす案件を最優先活動候補として識別し、宇宙飛行士講演活動審査会に付議し、同審査会が審議して対応方針を決めるところ、審査会の構成員には広報部の担当理事が含まれている。したがって、F4が宇宙飛行士の講師派遣に関し、所管する権限を有していることは明らかである。 - 63 -また、JAXAでは、第一宇宙技術部門が衛星利用推進センターの業務を所管していたが、F4は理事長を補佐してJAXAの経営に当たる権限を有している上、人 していることは明らかである。 - 63 -また、JAXAでは、第一宇宙技術部門が衛星利用推進センターの業務を所管していたが、F4は理事長を補佐してJAXAの経営に当たる権限を有している上、人工衛星の社会化実験の一つとしてGが使用することになれば報告事項として理事会議に付議されることも予想され、また、Gが有償使用する場合には所管する契約部の理事として権限を有していたと認められる。 以上によれば、F4が人工衛星をGの防災訓練に利用することに関し、自ら第一宇宙技術部門の担当者らに取次ぎを行うなどした一連の行為は、F4の職務権限に属する。 F4の収賄の故意F4は、被告人A4の依頼に対応し、高額の接待等を繰り返し受けたことが賄賂に該当すると認識していたものと推認できる。F4は公判でこれを否定しているが、被告人A4に対し、「秘書と会食する際には、私の話は一切しないで。5000円以上の接待は倫理法に基づいて届け出が必要であることにも留意」「A4さんとかの会食については届け出なんかしてないですが、本来は必要。」「私はこんなことで失脚したくないので、私とA4さんが会食していることはご内密に。」などとメッセージに記載していることや、F4自身、銀座のどこどこに被告人A4と行ったこと自体のダメージが大きく、これは出せないなと思っていた旨証言していることなどに照らすと、社会的に見て、不相当な利益を自己の職務に関して受けていたと認識していたことを裏付ける。 イ当裁判所の判断原判決の認定に、論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、各飲食等の提供が賄賂に該当するとした判断にも法令解釈の誤りはない。 本件会食等の趣旨所論は、各会食にはそれぞれ個別の目的があり、政治家秘書、政策顧問と官僚という関係を基礎とした職務権限に関わりのない の提供が賄賂に該当するとした判断にも法令解釈の誤りはない。 本件会食等の趣旨所論は、各会食にはそれぞれ個別の目的があり、政治家秘書、政策顧問と官僚という関係を基礎とした職務権限に関わりのない会合や私的な会食であ- 64 -って、被告人A4がF4に便宜供与を依頼する趣旨で行ったものはない、原判決がすべてをF4の職務に関して便宜供与を受けるための会食と認定し、明らかにF4の職務権限外であるスポーツコンプライアンスに関する活動についても、不可分なものとして包括して賄賂性を帯びると判示したのは事実誤認である、また、包括して賄賂性を帯びるとした判断は賄賂罪の法令解釈を誤っている旨主張する。 しかし、同旨の主張に対し、原判決は、①政治家といえども、別の職を有して事業を営み、その事業の利益のために行う場合は国家公務員法上も事業者に該当し、職員との関係で利害関係があれば利害関係者となるもので、当該職務に関する対価として利益を与えるものならば賄賂に該当するから、弁護人の主張は採用できない、②被告人A4らは、高額の接待を繰り返して官僚らを懐柔し、被告人A4らの要望に自然に沿う関係にさせ、Dの営業活動に便宜を受けることを意図したもので、いずれも国会議員の秘書等の肩書を隠れ蓑として(私的接待に)利用していたことを前提にするとよく理解できる、③F4の職務権限外であるスポーツコンプライアンスに関する被告人A4の活動は、団体の設立手続等にDが関与しており、純然たる政治活動とはいえないから、上記活動を中心とした会食であっても、従前から行われていた人工衛星の利用に関する取り計らいへの謝礼や、今後も同様の有利な取り計らいへの期待を排除する趣旨ではない、④観劇後の家族ぐるみの会食は、被告人A4らの会話内容から、上記会食をも利用してF4を懐柔しようとしていた に関する取り計らいへの謝礼や、今後も同様の有利な取り計らいへの期待を排除する趣旨ではない、④観劇後の家族ぐるみの会食は、被告人A4らの会話内容から、上記会食をも利用してF4を懐柔しようとしていたもので、純然たる私的な交際とは認め難いとしたもので、以上の原判決の判断に不合理な点はない。そして、このような会食ではF4の職務行為に関する利益と職務権限外の便宜供与の利益が混在していることになるが、飲食等の利益は不可分であり、これらは包括して賄賂性を帯びるとした原判決の判断にも事実誤認及び法令解釈の誤りはない。 所論は、原判決が、現役のときに海外に行ったらアウト、Eさんで行くわ- 65 -けでしょ、まずいよといったF4の発言について、明らかに収賄の危険があるとして失職する旨の発言と認定しているが、F4は公務員倫理上の問題があると発言したにすぎない、原判決は、公務員倫理の問題と収賄罪を混同したもので、上記発言を根拠に賄賂性を認めた点に事実誤認がある旨主張する。 しかし、F4の上記発言は、利益供与が発覚すれば職責を問われるとの認識を述べたもので、公務員倫理法に違反するとともに収賄になり得るとの趣旨を含むことは明らかである。所論は理由がない。 所論は、会食の趣旨に関するE1の原審証言は争いのない事実の裏付けしかなく、E1は被告人A4らに恨みを抱いているから、その証言は信用できない、原判決が指摘する録音データの内容は、E1が供述する会食の趣旨を裏付けるようなものではない、E1証言に依拠して会食の趣旨を認定したのは事実誤認である旨主張する。しかし、原判決は、E1証言について、支出に関する領収証等の裏付けがあることに加えて、録音された会話内容から、被告人A4、D2らが政治家や官僚らを接待し、その関係を便宜供与に利用しようとする意図が明らかにうか 決は、E1証言について、支出に関する領収証等の裏付けがあることに加えて、録音された会話内容から、被告人A4、D2らが政治家や官僚らを接待し、その関係を便宜供与に利用しようとする意図が明らかにうかがわれることと符合し、基本的に信用できると判示したもので、その判断が不合理とはいえない。所論は理由がない。 F4の職務権限所論は、N会食の当時、F4はJAXAの理事ではなく参与であり、宇宙飛行士派遣に関する職務権限はなかった、A2とF4が会食するようになった平成27年3月にはH1の業務委託に基づく病院リートの実現に向けた活動はとん挫し、Dが営業活動をする関係になかったから、F4がJAXA理事となった同年4月以降に、宇宙飛行士派遣に関して、被告人A4やDに便宜供与したことがないのは明らかである旨主張する。しかし、既に認定したとおり、Dは、H1が業務委託を解消した同年3月以降も病院リートの実現に向けて営業活動を続けていた上、贈収賄の時点でF4の職務に関した受供与であれば足りるから、所論は理由がない。 - 66 -所論は、人工衛星の利用に関する職務に関し、Gによる人工衛星の利用はJAXAの審議事項でなく報告事項にすぎない、報告事項として理事会に付議されたとしても、担当理事ではないF4が影響を及ぼす地位にはなかった、Gの受託契約額はせいぜい数百万円程度となり、G6契約第2課副課長の専決事項で、契約部長に対する報告も必要ないとされていたから、担当理事のF4の権限が及ぶことはなかった旨主張する。しかし、原審記録によれば、理事会の付議事項になれば、理事はその審議に加わることとなり、F4の職務権限に属することは明らかである。また、締結した有償受託契約は契約部の所管となり、契約部に関する業務は、金額の多寡を問わず、契約部所管理事の指揮監督に服 理事はその審議に加わることとなり、F4の職務権限に属することは明らかである。また、締結した有償受託契約は契約部の所管となり、契約部に関する業務は、金額の多寡を問わず、契約部所管理事の指揮監督に服する契約部長が統括すると認められ、契約部所管の理事であるF4の職務権限に属するといえる。所論は理由がない。 以上によれば、事実誤認及び法令解釈の誤りの論旨は理由がない。 第4 結論よって、刑訴法396条により本件各控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 令和6年4月19日東京高等裁判所第8刑事部 裁判長裁判官齊藤啓昭 裁判官佐藤弘規 裁判官兒島光夫
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