平成29年10月5日判決言渡名古屋高等裁判所平成28年(ネ)第480号国家賠償請求控訴事件(原審・岐阜地方裁判所平成23年(ワ)第769号(以下「第1事件」という。),平成24年(ワ)第691号(以下「第2事件」という。))主文 1 1 審原告Aを除く1審原告らの控訴に基づき,原判決中岐阜地方裁判所平成23年(ワ)第769号事件及び平成24年(ワ)第691号事件に関する部分を次のとおり変更する。 2 1審被告は,1審原告Bに対し,21万円及びこれに対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 1審被告は,1審原告Cに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 1審被告は,1審原告Dに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 1審被告は,1審原告Eに対し,5万5000円及びうち2万5000円に対する平成22年9月29日から,うち3万円に対する同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 1審被告は,1審原告Fに対し,5万5000円及びうち2万5000円に対する平成22年8月25日から,うち3万円に対する同年12月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 1審被告は,1審原告Gに対し,3万円及びこれに対 する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 1審被告は,1審原告Hに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 1審被告は,1審原告Iに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月27日から ,1審原告Hに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 1審被告は,1審原告Iに対し,3万円及びこれに対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 10 1 審原告Aを除く1 審原告らのその余の請求を棄却する。 11 1 審原告Aの控訴及び1 審被告の控訴をいずれも棄却する。 12 訴訟費用は,1審原告Aと1審被告との間に当審で生じた部分は1審原告Aの負担とし,その余の1審原告らと1審被告との間に生じた部分は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を同1審原告らの負担とし,その余を1審被告の負担とする。 13 この判決は,第2項ないし第9項に限り,1審被告に送達された日から14日を経過したときは,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 1審原告らの控訴(1) 1審原告らの控訴の趣旨ア原判決のうち1審原告ら敗訴部分を取り消す。 イ 1審被告は,1審原告Bに対し,30万円及びこれに 対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ 1審被告は,1審原告Cに対し,7万3960円及びこれに対する平成23年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ 1審被告は,1審原告Dに対し,6万3180円及びこれに対する平成23年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 オ 1審被告は,1審原告Eに対し,5万1480円及びこれに対する平成22年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 カ 1審被告は,1審原告Fに対し,6万3320円及びこれに対する平成 1審原告Eに対し,5万1480円及びこれに対する平成22年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 カ 1審被告は,1審原告Fに対し,6万3320円及びこれに対する平成22年12月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 キ 1審被告は,1審原告Aに対し,5万2360円及びこれに対する平成22年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ク 1審被告は,1審原告Gに対し,7万4120円及びこれに対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ケ 1審被告は,1審原告Hに対し,7万3960円及びこれに対する平成23年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 コ 1審被告は,1審原告Iに対し,7万3980円及びこれに対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 サ訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 (2) 控訴の趣旨に対する1審被告の答弁ア本件控訴をいずれも棄却する。 イ控訴費用は1審原告らの負担とする。 ウ仮執行の宣言は相当でないが,仮に仮執行宣言を付する場合は,①担保を条件とする仮執行宣言,②その執行開始時期を判決が1審被告に送達された後14日経過した時とすること 2 1審被告の控訴(1) 1審被告の控訴の趣旨ア原判決の主文第2項及び第3項を取り消す。 イ上記アに係る1審原告E及び1審原告Fの請求をいずれも棄却する。 ウ訴訟費用のうち,第2事件に係る部分は,第1審,2審とも1審原告E及び1審原告Fの負担とする。 (2) 控訴の趣旨に対する1審原告E及び1審原告Fの答弁ア本件控訴を棄却する。 。 ウ訴訟費用のうち,第2事件に係る部分は,第1審,2審とも1審原告E及び1審原告Fの負担とする。 (2) 控訴の趣旨に対する1審原告E及び1審原告Fの答弁ア本件控訴を棄却する。 イ訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 第1事件は,W刑務所長がW刑務所に収容中の受刑者である1審原告Bとそれ以外の1審原告ら8名との間の面会申出を不許可としたこと(以下「本件面会不許可処分」という。)について,1審原告らが,同処分はいずれもW刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであると主張して,1審被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,1審原告Bについては慰謝料40万円及びこれに対する遅延損害金の支払を,その余 の1審原告らについては慰謝料各5万円及び面会申出のための往復交通費の合計額並びにこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 第2事件は,W刑務所長が1審原告E及び1審原告Fと1審原告Bとの間の信書の発受を禁止したこと(以下「本件信書発受禁止処分」という。)について,1審原告E及び1審原告Fが,1審被告に対し,同処分はいずれもW刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであると主張して,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料各2万5000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,原審においては,本件信書発受禁止処分について,1審原告Bが,1審被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料5万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事件(岐阜地方裁判所平成24年(ワ)第770号。第3事件)も併合審理されていた。 原審は,第1事件に係る1 審原告らの請求について,1審原告Bと1審原告E及び1審原告Hとの本件面会不許可処分に関し (岐阜地方裁判所平成24年(ワ)第770号。第3事件)も併合審理されていた。 原審は,第1事件に係る1 審原告らの請求について,1審原告Bと1審原告E及び1審原告Hとの本件面会不許可処分に関してのみ,刑事収容施設法111条2項に関するW刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであることを認め,かつ,それが1審原告Bとの関係においてのみ,国家賠償法1条1項の適用上も違法となるとして,1審原告Bの請求を慰謝料10万円の範囲で一部認容したが,その余の請求は棄却した。 他方で,原審は,第2事件・第3事件における本件信書発受禁止処分については,1審原告Bとの関係だけでなく,1審原告E及び1審原告Fに対する関係でも,刑事収容施設法128条に関するW刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるこ とを認め,国家賠償法1条1項の適用上違法となるとして,1審原告E及び1審原告Fに係る各2万5000円の慰謝料請求を全額認容するとともに(第2事件),1審原告Bに係る5万円の慰謝料請求についても全額認容した(第3事件)。 そこで,1審原告らが第1事件について控訴するとともに,1審被告が第2事件について控訴した(第3事件については,双方の控訴の対象外であるから,原判決主文第1項中の1審被告に1審原告Bへの5万円の支払を命じた部分は既に確定している。)。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1,2,3(1),同(2),同(4)及び同(5)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決36頁4行目冒頭「(4)」を「(3)」と改める。 (2) 原判決37頁22行目冒頭「(5)」を「(4)」と,同行目の「ないし第3事 (5)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決36頁4行目冒頭「(4)」を「(3)」と改める。 (2) 原判決37頁22行目冒頭「(5)」を「(4)」と,同行目の「ないし第3事件」を「及び第2事件」と,それぞれ改める。 (3) 原判決37頁24行目の「及び本件各信書発受禁止処分」を削除し,同頁25行目の「45万円」から同頁26行目の「5万円)」までを「40万円」と改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,第1事件について,1審原告Aの請求を除き,1審原告らの請求には理由があるから,一部認容すべきであり,また,第2事件についても,原判決と同様,1審原告らの請求には理由があるからこれを認容すべきであると判断する。その理由は,次のとおり付加,訂正し,当事者双方の控訴理由については項を改めて判断するほか,原判決「事実及び理由」の第3の1~ 3,5及び6に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決46頁14行目冒頭から50頁8行目末尾までを次のとおり改める。 「ア刑事収容施設法は,第2編第2章の「刑事施設における被収容者の処遇」の中の「第11節外部交通」において,「第1款受刑者についての留意事項」として同法110条を置き,「この節の定めるところにより,受刑者に対し,外部交通(面会,信書の発受及び第146条第1項に規定する通信をいう。以下この条において同じ。)を行うことを許し,又はこれを禁止し,差し止め,若しくは制限するに当たっては,適正な外部交通が受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものであることに留意しなければならない」と規定している。その上で,同法111条1項は,「刑事施設の長は,受刑者・・・に対し,次に掲げる者から面会の申出があったときは,第148条第3項又は次節 るものであることに留意しなければならない」と規定している。その上で,同法111条1項は,「刑事施設の長は,受刑者・・・に対し,次に掲げる者から面会の申出があったときは,第148条第3項又は次節の規定により禁止される場合を除き,これを許すものとする」として,受刑者の親族(1号),受刑者の重要用務の処理のため面会が必要な者(2号),受刑者の改善更生に資すると認められる者(3号)との面会について権利面会を規定するとともに,同条2項は,それ以外の者からの面会の申出について,「その者との交友関係の維持その他面会することを必要とする事情があり,かつ,面会により,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認めるときは,これを許すことができる」と定めている。 従来の監獄法においては,拘禁の本質が外部交通の厳格な遮断を含む社会からの完全な隔離にあり,また,好ましくない社会関係を遮断するためにも,外部交通は基本的に禁止され,その一部解除として恩恵的かつ制限的にのみ認められていたにすぎず,同法45条2項は,「受刑者及ビ監置ニ処セラレタル者ニハ其親族ニ非サル者ト接見ヲ為サシムルコトヲ得ス但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス」と規定して,その相手方を原則として親族に限定していた。 しかし,受刑者であっても,親族など一定の範囲の者との外部交通は,人道上の要請などから,これを保障するのが適当であると考えられるほか,今日では,一般に親族だけではなく,友人・知人が受刑者と社会との良好な関係の維持に重要な役割を果たすに至っており,その者らとの外部交通は受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を促進するための重要な手段となる。また,こうした交友関係の維持のほかにも,外部交通を との良好な関係の維持に重要な役割を果たすに至っており,その者らとの外部交通は受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を促進するための重要な手段となる。また,こうした交友関係の維持のほかにも,外部交通を必要とする事情がある場合がある。 そこで,刑事収容施設法110条以下は,好ましくない社会関係を遮断する必要性を重視していた監獄法の考えを改め,外部交通により,好ましくない社会関係が維持され,改善更生の妨げとなるような場合でない限り,面会により積極的・具体的に改善更生に資するという事情がなくとも,相手方との関係が維持されること自体が改善更生と円滑な社会復帰に資することを留意して,広く外部交通が認められるようにすべきことを規定し,親族等の一定の者との面会は基本的に保障する(権利面会)とともに,それ 以外の面会についても,これを必要とする事情があるなど,一定の要件を充足した場合には,刑事施設の長の裁量により,これを許すことができる(裁量面会)としたものである。 イこのように受刑者の外部交通を積極的に認め,友人・知人との交友関係の維持それ自体が面会を許す理由になることを明確にした刑事収容施設法の趣旨に照らせば,同法111条2項にいう「交友関係の維持」の意義は,特に文言を限定する必要はなく,むしろ広く解釈することが法の趣旨に合致するから,通常の交友関係があれば足り,その長短や濃淡は問わないと解するのが相当である。そして,このように解したとしても,同条項は「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがない」との要件により,面会による不都合がないよう絞りをかけているのであるから,特段不都合は生じない。 ウまた,監獄法と異なり,外部交通を広く認めようとする刑事収容施設法の前記趣旨 ずるおそれがない」との要件により,面会による不都合がないよう絞りをかけているのであるから,特段不都合は生じない。 ウまた,監獄法と異なり,外部交通を広く認めようとする刑事収容施設法の前記趣旨からすれば,「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認めるとき」との要件は,刑事施設の長において,単に抽象的な懸念を抱いているという程度では足りず,個々のケースの実情に即して,合理的な根拠をもってそのおそれがあると認められる場合でなければならないと解される(平成17年4月26日の第162回国会参議院法務委員会会議録第15号12頁の政府参考人答弁参照)。 エそして,刑事収容施設法111条2項による裁量面会は,上記(1)イ及びウの要件の下で「これを許すことができる」と規定しているから,刑事施設の長には,面会申出の許否の判断に当たり,一定の裁量があることは否定できない。しかし,相手方との関係が維持されること自体が改善更生と円滑な社会復帰に資することを留意して,広く外部交通が認められるようにすべきことを規定した同法110条は,裁量面会の許否判断の指針として働くとみるべきである。その上,「交友関係の維持」は,受刑者と面会申出者との個人的な関係を基礎とするものであるから,受刑者がその交友関係の維持を望む限り尊重されるべきものである。 そうすると,刑事施設の長は,「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれ」がない限り,交友関係がある友人・知人との面会それ自体が,その関係を維持し,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰に資するものであるとして,基本的にこれを許さなければならないというべきであり,その意味で,刑事施設の 友関係がある友人・知人との面会それ自体が,その関係を維持し,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰に資するものであるとして,基本的にこれを許さなければならないというべきであり,その意味で,刑事施設の長の裁量の幅は相当程度制限されるものと解される。 以上を前提に,1審原告らについての本件面会不許可処分の違法性について検討する。」(2) 原判決50頁9行目冒頭「(3)」を「(2)」と,52頁7行目冒頭「(4) 」を「(3) 」と,56頁18行目冒頭「(5) 」を「(4)」と,62頁12行目冒頭「(6)」を「(5)」と,64頁11行目冒頭「(7)」を「(6)」と,67頁15行目冒頭「(8)」を 「(7)」と,69頁12行目冒頭「(9)」を「(8)」と,74頁5行目冒頭「(10)」を「(9)」と,それぞれ改める。 (3) 原判決50頁23行目の末尾の次に,行を改めて次のとおり付加する。 「また,一審原告Cは,一審原告Bに対して,自らの著書11冊を差し入れたほか,平成21年2月からJの機関誌を毎月差し入れている(甲32・20頁)。」(4) 原判決51頁12行目冒頭から52頁6行目末尾までを,次のとおり改める。 「(ア) 上記認定事実のとおり,1 審原告Cと1 審原告Bは,平成21年5月21日にW刑務所において面会したことがあるほか,信書のやり取りが合計10通あり,1 審原告Cが著書や機関誌を差し入れている関係にある。また,信書の内容(甲2A-1ないし3,甲2B-1ないし5)に照らしても,両者の交友関係は十分にうかがわれ,1 審原告Bも1 審原告Cとの面会を希望していることが認められる(甲32・20頁参照)。 これらの事実を総合すれば,両者の間に通常の交友関係があるといえるから,「交友関係の維持」という面会を必 審原告Bも1 審原告Cとの面会を希望していることが認められる(甲32・20頁参照)。 これらの事実を総合すれば,両者の間に通常の交友関係があるといえるから,「交友関係の維持」という面会を必要とする事情があったと認められる。 (イ) また,平成21年5月21日に1 審原告Cが1 審原告Bと面会したことにより,刑事施設の規律及び秩序や同人の矯正処遇の実施に問題が生じたことはうかがわれないから,「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれ」も認められない。 (ウ) これに対して,1 審被告は,1 審原告Cが1 審原告Bに対し,『昭和53年にKさんがJの機関誌「T」にBさんのことを書きました。それ以来,右翼の人も皆,Bさんを尊敬しております』(甲2B-2)などと,受刑中の刑事事件を賛美する内容の信書を送付しているとして,1 審原告Bの改善更生を妨げる結果を生じるおそれが高いと主張している。 しかし,1審被告の指摘する上記信書の内容をもって犯罪行為を賛美したものとは認められない。また,上記信書により,1審原告Bの矯正処遇の実施に支障をもたらすおそれがあったとも認め難い。よって,1審被告の主張は理由がない。 (エ) 以上によれば,1 審原告Cとの本件面会不許可処分は,W刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものというべきであるから,刑事収容施設法111条2項に反する違法がある。」(5) 原判決53頁14行目末尾の次に,行を改めて次のとおり付加する。 「なお,本件面会不許可処分後の事情であるが,1 審原告Dは,その後も1 審原告B宛に手紙,葉書,年賀状を送付しており,それが1 審原告Bの下に届いている。その内容は,1 審原告D自身や知人等の近況 なお,本件面会不許可処分後の事情であるが,1 審原告Dは,その後も1 審原告B宛に手紙,葉書,年賀状を送付しており,それが1 審原告Bの下に届いている。その内容は,1 審原告D自身や知人等の近況を伝えたり,1 審原告Bが提起している別の裁判に関する話題などである(甲59ないし69)。」(6) 原判決54頁3行目冒頭から56頁17行目末尾までを,次のとおり改める。 「 よって,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情 があったものと認められる。 (イ) 次に,1 審原告Dとの面会により,『刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれ』があるか否かを検討する。 確かに,1審原告Dは,元Lの構成員であるところ,前記認定事実によれば,Lは,多数のテロ,ハイジャック事件を起こしており,極めて犯罪性の強い組織であったといえる。また,未だ国際手配中の構成員7名が逃亡しており,そのうちの1名は支援者らによるU事件の記念集会に声明を寄せるなどした事実が認められる。 しかし,平成13年4月には,拘禁中の最高幹部であったMが解散を宣言し,同年5月,Lも解散の決定を表明した事実が認められる(乙41・4枚目)。なお,平成24年版警察白書には,その後も別名称を使用して活動を継続している旨の記載があるが(乙41・4枚目),仮にそのような事実があるとしても,その別名称の活動又は組織に1審原告Dが関係していると認めるに足りる証拠はない。 また,1審原告Dにおいて,Lが実行したテロやハイジャック事件に直接関与したことをうかがわせる証拠はなく,同人は,Lの活動の中で犯した有印公文書偽造・同行使などの罪についても平成15年に服役を終え,以後,犯罪行為に及んでおらず,畜産業や人 ハイジャック事件に直接関与したことをうかがわせる証拠はなく,同人は,Lの活動の中で犯した有印公文書偽造・同行使などの罪についても平成15年に服役を終え,以後,犯罪行為に及んでおらず,畜産業や人権活動などを行いながら,一般市民として通常の生活を送っていると認められる(原審D本人1~2頁)。しかも,同人は,現時点では,武力で問題を解決するというLの考え方は誤っていたと供述しており(原審D本人4頁),本件面会不許可処分までの約 4年間における3回の面会及び合計76通の信書のやり取りにおいても,1審原告Bに対し,L関係者の意思伝達をしたり,Lの思想に言及したことは認められない。 さらに,1審原告Dとの外部交通により,1審原告Bの矯正処遇の実施に具体的な支障が生じたことを裏付ける証拠もない。かえって,成立に争いのない甲13号証によれば,1審原告Dとの面会後である平成22年7月22日,当時のW刑務所長Nが,1審原告Bの処遇成績が良好で,改悛の情も認められるとして,今後,仮釈放の申出も視野に入れた処遇を行うため,東京高等検察庁検事長宛に刑の執行順序変更の指揮申請をした事実が認められる。 そうすると,1審原告Dとの面会により,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は1審原告Bの矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあったとは認められない。 (ウ) これに対して,1審被告は,1審原告Dが1審原告Bに送付した信書には『(1審原告Bの)手紙はコピーしてMさんにも読んでもらうようにしています』(甲3B-4・1枚目)などと記載したものがあるから,これが1審原告Dを介してMらと意思疎通を行っていることを示すものであるとして,Lからの離脱を指導しているW刑務所の矯正処遇に支障を生じることは明らかである旨主張する。 したものがあるから,これが1審原告Dを介してMらと意思疎通を行っていることを示すものであるとして,Lからの離脱を指導しているW刑務所の矯正処遇に支障を生じることは明らかである旨主張する。 しかし,1審原告Bから1審原告Dに送付された手紙にMとの意思疎通を図る趣旨の記載があったことを認めるに足りる証拠はないから,上記信書の内容をもって,1審原告Dを介して1審原告BとMとが意思疎通を行っているとは認められない。また,1審原告Bの近況が1審原告Dを 介して元L構成員らに伝わったからといって,それが直ちに1審原告Bの矯正処遇の実施に支障をもたらす根拠になるとも認め難い。よって,1審被告の上記主張は採用できない。 (エ) また,1審被告は,国際テロリズム要覧(乙57・4枚目)には,平成27年2月にLメンバーであるOが逮捕され,同人の裁判に向けて救援組織が始動するなどの事案も生じており,現在もなお危険な体質に変化はみられないとして,Mらと面会を重ねている1審原告Dと面会させることは,1審原告Bの矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあると主張する。 しかし,前記のとおり,既にLは解散した組織であり,仮にそのメンバーであったOの裁判に向けて救援組織が別名称を使用して危険な活動を継続している事実があるとしても,それに1審原告Dが関与していると認めるに足りる証拠はない。また,1審原告Dが,平成15年に出所後,Mらと面会している事実があるとしても,それにより直ちに1審原告Bの矯正処遇の実施に支障をもたらすとも認め難い。1審原告Bは,原審本人尋問期日当時(平成27年3月3日),すでに77歳の高齢であることからしても,1審被告の主張は抽象的な懸念の域を出るものではない。 よって,この点の1審被告の主張 も認め難い。1審原告Bは,原審本人尋問期日当時(平成27年3月3日),すでに77歳の高齢であることからしても,1審被告の主張は抽象的な懸念の域を出るものではない。 よって,この点の1審被告の主張も採用できない。 (オ) 以上によれば,1審原告Dとの本件面会不許可処分は,W刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものというべきであるから,刑事収容施設法111条2項に反する違法がある。」 (7) 原判決59頁8行目冒頭から同頁15行目末尾までを,「したがって,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情があったと認められる。」と改める。 (8) 原判決59頁17行目冒頭「生じ,又は」の次に「受刑者の」を加える。 (9) 原判決60頁24行目末尾から同頁25行目冒頭にかけての「Lの元構成員などではなく,」を削除する。 (10) 原判決63頁15行目冒頭から64頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「(ア) 上記認定事実によれば,1審原告Fと1審原告Bは,平成19年10月24日に1審原告Bが1審原告Fからの信書を受信して交流を持つに至り,その後,本件面会不許可処分までの約3年間で,面会が1回,信書のやり取りも合計10通(そのうち1審原告Bからの信書は1通)に及んでいる。その信書の内容(甲5A-1,甲5B-1ないし8)に照らしても,両者の交友関係が十分にうかがわれ,1審原告Bも1審原告Fとの面会を希望していることが認められる(甲32・27~28頁参照)。 これらの事実を総合すれば,両者の間に通常の交友関係があるといえるから,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情があったというべきである。 (イ) また,1 審原告Fは,平成22年2月25日,1審原告BとW刑務所において面会した事実があるところ,これ いえるから,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情があったというべきである。 (イ) また,1 審原告Fは,平成22年2月25日,1審原告BとW刑務所において面会した事実があるところ,これにより刑事施設の規律及び秩序や1 審原告Bの矯正処遇の実施に問題が生じたことは何らうかがわれない。仮に1審原告Fから1審原告B宛に届いた信書の中に,Pの病状が重 篤であることやMに面会に行った旨近況を伝える記載があったとしても,これにより1審原告Bの矯正処遇の実施に直ちに支障をもたらすとも認め難い。 よって,1審原告Fとの面会により,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は1審原告Bの矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあったとは認められない。 (ウ) これに対して,1審被告は,1審原告Fが『Mさんを支える会(関西)』の小冊子を1審原告Bに交付することで同人との外部交通を開始した者で,Mから会いに行ってあげて下さいと言われて面会に行った者であるとし,矯正処遇の適切な実施のためには,L関係者との交友関係を断ち切ることが必要であるから,『面会することを必要とする事情』があるとは認められない旨主張する。 しかし,1 審原告Fは,Mから1 審原告Bの面会に行くよう言われて面会したという事実はない旨述べており(甲25・1頁),1審被告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。また,当初の面会の経緯はともかく,その後,手紙のやり取り等を通じて両者の間に交友関係が生じたことが認められ,1審原告Bも1 審原告Fとの面会を求めている以上,『交友関係の維持』を否定する理由は見当たらない。 なお,1審被告は,L関係者との交流を断ち切る必要があるとも主張するが,1審原告Fは「Mさんを支える会」を通じてMの支援を行っているにすぎ 以上,『交友関係の維持』を否定する理由は見当たらない。 なお,1審被告は,L関係者との交流を断ち切る必要があるとも主張するが,1審原告Fは「Mさんを支える会」を通じてMの支援を行っているにすぎず,L関係者でもない。よって,1審被告の上記主張は採用できない。 (エ) 以上によれば,1審原告Fとの本件面会不許可処分は, W刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用があるというべきであるから,刑事収容施設法111条2項に反する違法がある。」(11) 原判決67頁18行目末尾の「事務局長であった者」を「事務局長を30年以上にわたって務めている者」に改め,同頁19行目冒頭の「ある。」の次に「Qは,昭和44年3月,その当時,市民運動や学生運動が盛んで機動隊との衝突により多数の逮捕者が出たため,弁護士を派遣するなどの救援活動を行うために発足された組織であり,現在では活動領域を拡大し,死刑廃止運動や受刑者に対する処遇の改善などの取組も行っている(甲15)。なお,平成18年12月に第●回X人権賞を,平成19年に第●回Y人権賞を受賞した(甲16ないし18)。」を加える。 (12) 原判決67頁22行目冒頭「した」の次に,「ほか,毎年,同人が主宰して法要を執り行っている(甲33,甲50・2頁)」を加える。 (13) 原判決68頁7行目末尾の次に,行を改めて次のとおり付加する。 「また,1審原告Gは,1審原告Bに対して,Qの機関誌である『V』を毎月差し入れている(甲32・34頁)。」(14) 原判決68頁13行目冒頭から69頁11行目末尾までを次のとおり改める。 「(ア) 上記認定事実によれば,1審原告Gは,従前からQの職員として1審原告Bの支援活動を行い,同人の兄の葬儀を執り行うなどした上,平成18年11月13日に1審原 末尾までを次のとおり改める。 「(ア) 上記認定事実によれば,1審原告Gは,従前からQの職員として1審原告Bの支援活動を行い,同人の兄の葬儀を執り行うなどした上,平成18年11月13日に1審原告Bが1審原告Gに対して信書を発信して直接の交流を持つ に至り,その後も本件面会不許可処分までの約4年間で,面会が1回,信書のやり取りも合計10通に及んでいる。 また,1審原告Bも,1審原告Gに恩義を感じ,同人との面会を希望していることが認められる(甲32・35頁参照)。 これらの事実を総合すれば,両者の間に通常の交友関係があるといえるから,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情があると認めるのが相当である。 (イ) また,1 審原告Gは,平成21年1月27日,1審原告BとW刑務所において面会した事実があるところ,これにより刑事施設の規律及び秩序又は1 審原告Bの矯正処遇の実施に問題が生じたことはうかがわれない。よって,1審原告Gとの面会により,「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれ」も認められない。 (ウ) これに対して,1審被告は,1審原告Gが1審原告Bの兄の祭祀を執り行ったのは,Qの事務局長の立場にあったからであり,この当時,1審原告Bとは面識がなく,両者の外部交通が始まるのは平成18年になってからであり,信書のやり取りの中にも親密な関係を裏付ける内容は存しないと主張する。 しかし,たとえ1審原告Bの兄の祭祀を執り行った理由がQの事務局長の立場からであったとしても,その後,両者は面会及び信書を通じて交流を継続している事実が認められ,1審原告Bも面会を望んでいる以上,『交友関係の維持』を否定する理由は見当たらない。また,法文上, 『 ったとしても,その後,両者は面会及び信書を通じて交流を継続している事実が認められ,1審原告Bも面会を望んでいる以上,『交友関係の維持』を否定する理由は見当たらない。また,法文上, 『交友関係』に親密さは要求されていないから,信書の中に親密さを裏付ける内容がないとの主張も理由がない。よって,1審被告の上記主張は採用できない。 (エ) 以上によれば,1審原告Gとの本件面会不許可処分は,W刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものというべきであるから,刑事収容施設法111条2項に反する違法がある。」(15) 原判決71頁19行目冒頭から同頁25行目末尾までを,次のとおり改める。 「よって,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情はあったと認められる。」(16) 原判決72頁1行目冒頭「生じ,又は」の次に,「受刑者の」を加える。 (17) 原判決72頁25行目冒頭から73頁6行目末尾までを削除する。 (18) 原判決74頁8行目の「原告Iは,」の次に,「現在,食品スーパーに勤務している者である。同人は,」を加え,同頁11行目の「法要に出席するなどして」を「法要に毎年出席しているほか,平成15年の夏,R教会のS司祭に会いに行き,1審原告Bの身柄引受人を依頼するなどして」と改める。 (19) 原判決75頁2行目冒頭から76頁11行目末尾までを次のとおり改める。 「 (ア) 前記認定事実のとおり,1審原告Iは,従前から1審原告Bの刑事裁判を傍聴したり,同人の兄の法要に参加している者である。両者は,平成19年10月24日に1審原告Bが1審原告Iに信書を発信して初め て直接の交流を持ち,その後も,本件面会不許可処分までの約3年間で,面会が1回,信書のやり取りも合計12通に及んでいる。その信書 0月24日に1審原告Bが1審原告Iに信書を発信して初め て直接の交流を持ち,その後も,本件面会不許可処分までの約3年間で,面会が1回,信書のやり取りも合計12通に及んでいる。その信書の内容(甲9A-1ないし5,甲9B-1ないし8)に照らしても,両者の交友関係が十分にうかがわれ,1審原告Bも1審原告Iとの面会を希望していることが認められる(甲32・31~32頁参照)。 これらの事実を総合すれば,両者の間に通常の交友関係があるといえるから,『交友関係の維持』という面会を必要とする事情を認めるのが相当である。 (イ) また,1 審原告Iは,平成21年4月16日,1審原告BとW刑務所において面会した事実があるところ,これにより刑事施設の規律及び秩序又は1審原告Bの矯正処遇の実施に問題が生じたことはうかがわれない。 よって,1審原告Iとの面会により,「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれ」も認められない。 (ウ) これに対して,1審被告は,1審原告IはL関係者らの裁判の支援を行っていた者であり,その活動の過程で1審原告Bを知り,支援活動を開始したにすぎず,外部交通を開始したのは平成19年に入ってからであり,また,刑の執行順序変更の裁判等に向けた援助についても,結局,Lメンバーとしての1審原告Bを支援する活動にすぎないから,面会することを必要とする事情を基礎づけるとは認められないなどと主張 する。 しかし,1審原告Bが1審原告Iとの面会を希望していることに照らすと,同人は,単に1審原告Bの活動を支援しているにとどまらず,面会や信書のやり取りを通じて1審原告Bとの間に交友関係が生じたものと認めることができるから,1審被告の上記主張は採用できな とに照らすと,同人は,単に1審原告Bの活動を支援しているにとどまらず,面会や信書のやり取りを通じて1審原告Bとの間に交友関係が生じたものと認めることができるから,1審被告の上記主張は採用できない。 (エ) また,1審被告は,1審原告Bが1審原告Iに対する信書の中で,『獄中にある諸兄姉の皆様に(信書の発信が)出来ぬことは残念であります』,『直接の文通は適いませんが,皆さんの状況は伝わっております』などと記載しているから(甲9A-1・4枚目),本来,信書の発受が許されないMらとの意思疎通の手段として1審原告Iとの信書の発受を用いていることが認められるとして,裁量面会を認めることはできないと主張する。 しかし,上記信書の内容をもって,信書の発受が許されないMらとの意思疎通を図るための手段として1審原告Iとの信書を用いたとは認められない。また,機関誌などを通じて1審原告B又はMの近況が他方へ伝わったからといって,1審原告Bの矯正処遇の実施に直ちに支障を生ずるとも考え難い。よって,1審被告の上記主張も採用できない。 (オ) 以上によれば,1審原告Iとの本件面会不許可処分は,W刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものというべきであるから,刑事収容施設法111条2 項に反する違法がある。 (10) 小括以上の検討によれば,本件面会不許可処分は,1審原告Aとの面会を除き,刑事収容施設法111条2項に関するW刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであり,少なくとも1審原告Bとの関係では,国家賠償法1条1項の適用上も違法な処分というべきである。 そして,前記判示に照らせば,W刑務所長が本件面会不許可処分をしたことにつき過失があるというべきであるから,1審被告は,1審原告Bに対し,国家賠償法1条1項に 用上も違法な処分というべきである。 そして,前記判示に照らせば,W刑務所長が本件面会不許可処分をしたことにつき過失があるというべきであるから,1審被告は,1審原告Bに対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務を負う。」(20) 原判決76頁15行目冒頭から80頁1行目末尾までを次のとおり改める。 「(1) 1審原告Aの請求について前記2で検討したとおり,本件面会不許可処分のうち,1審原告Aとの面会不許可については,W刑務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったということはできないから,刑事収容施設法111条2項に基づき適法に行われた処分であって,国家賠償法1条1項の適用上も違法とはいえない。したがって,1審原告Aの請求は,その余の点について検討するまでもなく,理由がない。 (2) 上記(1)以外の面会申出をした1審原告らの請求についてア一般に,人が友人・知人と面会して会話を交わすことや,友人・知人とのコミュニケーションを通じてその関係性を維持・発展させることは,親族のいない者に とってはもちろん,親族のいる者にとっても,人生を豊かにする上で不可欠なものであるから,面会を申し出る者は,憲法13条により保障される幸福追求権又は同法21条の表現の自由の一内容として,受刑者との面会を求めることにつき固有の利益を有している。 イところで,刑事収容施設法111条2項は,裁量面会を許す場合の要件として,「交友関係の維持その他面会することを必要とする事情」を要求しているところ,同条項は,法文上,受刑者にとって面会を必要とする事情に限定していない上,「交友関係の維持」は,事柄の性質上,受刑者・面会申出者のいずれか一方だけの意向では成り立ち得ないものであるから,受刑者の利益の観点のみから規定しているものとは 必要とする事情に限定していない上,「交友関係の維持」は,事柄の性質上,受刑者・面会申出者のいずれか一方だけの意向では成り立ち得ないものであるから,受刑者の利益の観点のみから規定しているものとは解されない。 また,一般に「交友関係の維持」以外の「面会することを必要とする事情」がある場合として,例えば,被害者が受刑者の心情を聴きたいと望む場合や,受刑者の証人尋問を請求しようとする者がそれに先立ち事情を聴取するために受刑者に面会しようとする場合,さらには報道関係が取材のために受刑者に面会しようとする場合(ただし,積極的に取材のための面会を許すべき事情がある場合に限られる)などがあると解されており,受刑者以外の面会申出者にとっての事情が含まれている。 そうすると,同条2項は,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰の促進という受刑者の利益を主眼に置きつつも,それにとどまらず,面会申出者にとっての利益も考慮し て裁量面会ができる場面を定めたものであり,そのような受刑者及び面会申出者の固有の利益と刑事施設内の規律及び秩序の確保並びに受刑者の適切な処遇の実現の要請との調整を図る趣旨を含むものと解することができる。 したがって,刑事施設法111条2項は,親族以外の者から受刑者との面会の申入れを受けた刑務所長に対し,面会の許否を判断するに当たり,面会を求める者の固有の利益にも配慮すべき法的義務を課しているというべきである。 ウまた,刑事施設の長は,被収容者と外部の者との面会に関する許否の権限を有しているところ,当該施設の規律及び秩序の維持,被収容者の矯正処遇の適切な実施等の観点からその権限を適切に行使するよう職務上義務付けられている(刑事収容施設法第2編第2章第11節第2款)。 そして,前記のとおり,同法110条が,相手方との ,被収容者の矯正処遇の適切な実施等の観点からその権限を適切に行使するよう職務上義務付けられている(刑事収容施設法第2編第2章第11節第2款)。 そして,前記のとおり,同法110条が,相手方との関係が維持されること自体が,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰に資することを留意して,広く外部交通が認められるようにすべきことを規定し,刑事施設の長の裁量の幅が相当限定されていること,人が友人・知人と直接会ってコミュニケーションを図る利益が,受刑者だけではなく,面会申出者にとっても重要な基本的人権であることに照らすと,刑事施設の長は,面会に関する許否の権限を行使するに当たり,その規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使するとともに,面会を求める外部の者の面会の利益をも十分に尊重しなければならないというべきで ある。 したがって,面会不許可処分が刑事施設の長の裁量権の濫用又は逸脱により違法となる場合,同処分は,受刑者の面会をする利益を侵害するだけではなく,面会申出者の面会に対する固有の利益も侵害しているということができる。 エこれに対して,1審被告は,平成20年判決の判示が刑事収容施設法111条2項にも妥当するから,W刑務所長は,1審原告Cらによる1審原告Bとの面会に係る固有の利益に配慮すべき法的義務を負っておらず,1審原告Cらとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となる余地はない旨主張する。 しかし,平成20年判決は,外部交通が恩恵的かつ制限的にのみ認められていた監獄法の規定を前提とするものであるから,これと趣旨を異にする刑事収容施設法111条2項の解釈には妥当しない。よって,1審被告の上記主張は採用できない。 (3) 小括以上によれば,本件面会不許可処分が刑事施設の長の裁量権の範囲を逸脱又 と趣旨を異にする刑事収容施設法111条2項の解釈には妥当しない。よって,1審被告の上記主張は採用できない。 (3) 小括以上によれば,本件面会不許可処分が刑事施設の長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用している場合は,受刑者のみならず,1審原告Cら(1審原告Aを除く)との関係においても,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるというべきである。 そして,前記2の認定事実に照らせば,W刑務所長には,本件面会不許可処分をしたことにつき過失があるというべきであるから,1審被告は,1審原告Aを除く面 会申出をした1審原告らに対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償義務を負う。」(21) 原判決84頁15行目冒頭「5」を「4」と,同頁17行目冒頭「争点(4)」を「争点(3)」と,それぞれ改める。 (22) 原判決85頁17行目の「前記判示のとおり」を「そして,1 審原告Eらは,刑事収容施設法128条にいう『犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより,刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者』に当たらないと認められるから(なお,同旨の判断をした第3事件について,1 審被告は控訴していない。)」と,同行目から18行目にかけての「刑事収容施設法128条」を「同条」と,それぞれ改める。 (23) 原判決85頁26行目冒頭「6」を「5」と,同行目の「ないし第3事件」を「及び第2事件」と,同行目「争点(5)」を「争点(4)」と,それぞれ改める。 (24) 原判決86頁3行目冒頭から同頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「前記のとおり,本件面会不許可処分は,1審原告Aとの面会を除き,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,その経緯や内容,その他本件に顕れた一 3行目冒頭から同頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「前記のとおり,本件面会不許可処分は,1審原告Aとの面会を除き,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,その経緯や内容,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,これにより1審原告Bが被った精神的苦痛の慰謝料は21万円,その他の1審原告らの慰謝料については各3万円と認めるのが相当である。 なお,1審原告らは,それぞれ交通費の出費についても損害として主張するが,その支出を認めるに足りる証拠はないから,いずれも採用できない。」 (25) 原判決86頁7行目の「及び第3事件」,同頁8行目の「原告B及び」,同頁11行目の「原告Bが被った精神的苦痛の慰謝料は5万円,」を,それぞれ削除する。 (26) 原判決86頁12行目末尾の次に,行を改めて次のとおり付加する。 「(3) 小括(損害額)よって,1審原告らの損害額は次のとおりとなる。 ア 1審原告B 21万円イ 1審原告C 3万円ウ 1審原告D 3万円エ 1審原告E 5万5000円(慰謝料3万円+2万5000円)オ 1審原告F 5万5000円(慰謝料3万円+2万5000円)カ 1審原告G 3万円キ 1審原告H 3万円ク 1審原告I 3万円」 2 1審原告らの控訴理由についての判断(1) 1 審原告らは,1 審原告Aが面会申出時に健康保険証を忘れて提示しなかったところ,窓口ではそれ以外の本人確認に必要な書類の提示を求められないまま受付が完了し,その後,「非親族は面会できません」と説明されたものであり,本人確認ができなかったとの主張は,本件訴訟提起後に後付けで考えた主張であると主張する。 しかし,1 審原告A られないまま受付が完了し,その後,「非親族は面会できません」と説明されたものであり,本人確認ができなかったとの主張は,本件訴訟提起後に後付けで考えた主張であると主張する。 しかし,1 審原告Aが「非親族は面会できません」との説明を受けた事実を認めるに足りる証拠はなく,かえって,本件面会 不許可処分当日の面会申出書(乙12)には「身分証明書不携帯」の印が押されているから,W刑務所の表門勤務者が1 審原告Aに対して身分証明書の提示を求め,これに対して同人が健康保険証を忘れたため,提示できなかったことが認められる(1審原告らもこれを認めている。)から,1審原告らの上記主張は採用できない。 (2) また,1 審原告らは,刑事収容施設法施行規則67条2項が証明書類の提示がなかった場合に面会を拒否できるとは規定しておらず,法律の授権なくして規則で定めることはできないし,仮に規則あるいは運用によって拒否できるとしても,身分証明書の提示ができない場合はこれに代わる手段で身分を確認すべきであったから,1 審原告Aに対する関係でも裁量権の濫用であって許されない旨主張する。 しかし,刑事収容施設法111条は面会の相手方を定めているから,その相手方を確認するために,同法施行規則67条が,氏名,生年月日等を記載した申出書の提出を求めるとともに(同条1項各号),「同項各号に掲げる事項を証明する書類その他の物件の提出又は提示を求めることができる」(同条2項)と規定したものと解され,同規則の内容は,法を施行する上で必要最低限の手続的事項を規定したものであって,規則によって定め得る事項といえる。そして,身分証明書の提示がない場合,刑事施設の長として確実に相手方を確認する手段はないから,その面会不許可処分について,裁量権の範囲を逸脱又は濫 ものであって,規則によって定め得る事項といえる。そして,身分証明書の提示がない場合,刑事施設の長として確実に相手方を確認する手段はないから,その面会不許可処分について,裁量権の範囲を逸脱又は濫用したと評価することはできない。よって,1審原告らの上記主張も採用できない。 3 1 審被告の控訴理由についての判断 (1) まず,1審被告は,W刑務所長が,本件信書発受禁止処分を行うに当たり,1 審原告Eらの固有の利益に配慮すべき法的義務を負うものではなく,仮にそのような法的義務を認める余地があるとしても,それは外部の者の立場からみて重要な価値を有する利益に限られ,1 審原告Eらのように,単に交友関係があるとか,受刑者を支援しているというだけでは足りないとして,1 審原告Eらとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法とはならないと主張する。 しかし,他人と信書を発受することは,憲法21条又は同法13条によって保障された重要な基本的人権であり,重要な価値を有する利益である。そうすると,刑事収容施設法128条に基づく信書発受禁止の権限を適切に行使するよう職務上義務付けられている刑事施設の長としては,その許否を判断するに当たって,信書を発受する外部の者の利益についても十分に尊重しなければならないというべきである。 したがって,刑事施設の長は,1 審原告Eらの固有の利益に配慮すべき法的義務を負っていると解するのが相当であり,これと異なる1 審被告の上記主張は,採用できない。 (2) また,1 審被告は,受刑者との信書の発受を求める外部の者が固有の利益を有する場合において,そのことのみから,直ちに刑事施設の長が当該外部の者の固有の利益に配慮すべき職務上の法的義務を負うと結論付けた原判決の判断には誤りがあり,外部の者の固有の利益 者が固有の利益を有する場合において,そのことのみから,直ちに刑事施設の長が当該外部の者の固有の利益に配慮すべき職務上の法的義務を負うと結論付けた原判決の判断には誤りがあり,外部の者の固有の利益の有無の問題と刑事施設の長の職務上の法的義務の存否の問題を混同していると主張する。 しかし,受刑者との信書の発受を求める外部の者の固有の利益が重要な基本的人権である本件においては,刑事施設の長に はこれに配慮すべき職務上の法的義務が生ずるというべきであるから,上記2つの問題を混同しているとの批判は当たらない。 また,刑事収容施設法126条が,受刑者の信書の発受について,犯罪性のある者その他その発受により刑事施設の規律秩序を害し,又は矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(同法128条)を除き,相手方の制限なく,基本的にこれを権利として保障していることに鑑みれば,同法128条本文は,受刑者及び外部の信書を発受する者の固有の利益と刑事施設内の規律及び秩序の確保並びに受刑者の適切な処遇の実現の要請との調整を図る趣旨を含むものと解することができるから,その点からしても,刑事施設の長は,当該外部の者の固有の利益に配慮すべき職務上の法的義務を負っているというべきである。 よって,これと異なる1 審被告の上記主張も採用できない。 (3) さらに,1 審被告は,刑事収容施設法126条及び同法128条の規定の内容及び趣旨等を検討すれば,平成20年判決の判断は,同法における信書の発受にも妥当する旨主張する。 しかし,監獄法当時の規定を解釈・判断した平成20年判決が刑事収容施設法の下での面会不許可処分に妥当しないことは前記のとおりである。 その上,監獄法令の下では,面会だけでなく,信書の発受についても,親族以外の者とは, 定を解釈・判断した平成20年判決が刑事収容施設法の下での面会不許可処分に妥当しないことは前記のとおりである。 その上,監獄法令の下では,面会だけでなく,信書の発受についても,親族以外の者とは,特に必要があると認められる場合でなければ許してはならないものとされ(監獄法46条2項),親族との信書の発受を含め,その許否は所長の裁量によるものとされていた(同条1項)のに対し,刑事収容施設法 は,受刑者の信書の発受について,犯罪性のある者その他その発受により刑事施設の規律秩序を害し,又は矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者を除き,相手方の範囲の制限なく,基本的にこれを権利として保障している。そうすると,現行法においては,信書の発受についても監獄法当時の立法趣旨はそのまま妥当しないというべきであるから,平成20年判決の射程は本件発受禁止処分には及ばないと解するのが相当である。 よって,1 審被告の上記主張も採用できない。 第4 結論以上によれば,1 審原告らの請求は,①1審原告Bにつき21万円及びこれに対する最終の違法行為日後の日である平成23年1月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,②1審原告Cにつき3万円及び本件面会不許可処分(C)がされた日である平成23年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,③1審原告Dにつき3万円及び本件面会不許可処分(D)がされた日である平成23年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,④1審原告Eにつき5万5000円及びうち2万5000円に対する本件信書発受禁止処分(E)がされた日である平成22年9月29日から,うち3万円に対する本件面会不許可処分(E)がされた日である同月30日から各支払済みまで 5000円及びうち2万5000円に対する本件信書発受禁止処分(E)がされた日である平成22年9月29日から,うち3万円に対する本件面会不許可処分(E)がされた日である同月30日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,⑤1審原告Fにつき5万5000円及びうち2万5000円に対する本件信書発受禁止処分(F)がされた後の日である平成22年8月25日から,うち3万円に対する本件面会不許可処分(F)がされた日である同年12月20日から各支払済みま で民法所定の年5分の割合による遅延損害金,⑥1審原告Gにつき3万円及び本件面会不許可処分(G)がされた日である平成23年1月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,⑦1審原告Hにつき3万円及び本件面会不許可処分(H)がされた日である平成23年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,⑧1審原告Iにつき3万円及び本件面会不許可処分(I)がされた日である平成23年1月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきところ,これと異なる原判決は一部失当といわざるを得ない。よって,1 審原告らの控訴の一部は理由があるが,1 審被告の控訴は理由がないから,原判決を上記のとおり変更することとし,また,仮執行宣言については,本判決送達日から14日間の猶予期間を定めるとともに,仮執行免脱宣言の申立てについては,その必要がないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官藤山雅行 裁判官水谷美穂子 主文 のとおり判決する。 理由 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官 藤山雅行 裁判官 水谷美穂子 裁判官 金久保茂
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